発明の技術分野
本発明は、抗菌化合物を用いて該化合物を布地材料に化学的に結合又は付着させることにより、布地、糸及び/又は繊維などの布地材料を製造又は処理する方法に関し、また、それ自体で消毒剤又は滅菌剤として機能する処理済み布地材料に関するものである。この処理済み布地材料は、洗浄耐久性及び非浸出特性を呈する。本発明は、さらに、粒子及び/又は微生物をフィルタすることにより水を浄化するための装置及びシステムに関するものである。この装置及び/又はシステムは、好ましくは電気を使うことなく重力に基づいて動作し、発展途上国などの安定した電源のない地方において使用することができる。
発明の背景
消毒/滅菌は日々の生活において非常に重要なプロセスである。消毒/滅菌は様々なレベルで評価されている。例えば米国農薬情報センターやリンクhttp://npic.orst.edu/factsheets/antimicrobials.htmlで見ることができる性能レベルに対する条件について様々な記録が存在する。そこに記載されている表を以下に見ることができるが、この表は、公衆衛生のための抗菌殺虫剤には3つの大きな種類があることを示している。
この3つのグループの相違は抗菌力という点で顕著である。
現在市販されている消毒剤は付与又は使用の時点では効くが、その性質が継続したり長持ちしたりすることはない。このため、汚染された面にクロルヘキシジンを噴霧すると、その時点では消毒されるが、薬品が蒸発したり拭い取られたりすると、その面は再び汚染され得ることになる。例えば塩素を用いて水を浄化する場合には、水の量が増えると必要とされる塩素の量も増えるので、再利用可能な資源が必要になってくる。
織地、糸、及び/又は繊維のような布地材料は、様々な目的で様々な環境下で使用される。このため、布地表面における微生物学的な汚染の危険が現実的になっている。これらの基材は空気や水を濾過するために使用されるが、阻止することによってのみ作用し、汚染を除去することはない。近時、布地は、病院内で患者間の院内感染を引き起こすことが研究で示されている。兵士は、洗濯することなく長い間衣服を着ていることが多いが、これにより、その服の着用者に真菌感染や細菌感染が生じることが多い。
ケチャップ、蜂蜜、唾、血液、し尿、及び水分によって服に染みがつくおそれがあることも様々な状況において利用者が直面する問題である。そのような染みは、見た目が悪いだけではなく、布地の基材上で様々な有害な細菌、菌類、及びウィルスが繁殖できる温床となる。
衣服として使用される際は、布地の内面や死んだ組織、汗、湿度、及び水分は、様々な病原体の成長及び蔓延を助長する。ジャケットやオーバーなどの衣服は、皮膚に直接接触することはないが、汚染される可能性のある内側の衣服との接触を介して感染の媒介ともなる。このため、微生物の病原体による布地汚染が大きな懸念となっていることは明らかである。
保安要員、軍人、飛行機の客室乗務員、及び他の航空会社従業員は、特に、1日よりも長い間同じ衣服を着用しなければならないことがあるので、病気や皮膚のトラブルを生じやすい。軍人は、立て続けに28日もの間衣服を着用しなければならないことがある。汚れた衣服は、着用者に健康上の問題を引き起こすだけでなく、細菌、菌類、及びウィルスに起因する病気が蔓延する温床となり得る。
病院においては、微生物の存在はずっと脅威である。布地が使用される環境の性質により、これらの布地に対するニーズがずっと専門的になる。医師、看護師、患者、及び病院や医師の診療所、そのような他の場所における関係者が着用する通常の布地は別として、手術着、ガウン、ラボコート、ベッドシーツ、及び枕カバーの形態で用いられる布地は様々な割合で微生物を媒介する。患者は、体内からの排泄物に起因する細菌や微生物の増殖による汚染のリスクが極めて高いシーツや枕カバーの上で寝ている。また、マットレスや枕は、洗濯されていないことによって汚染されやすい。これらは、その結果、感染を患者に移すことがある。シーツ、枕カバー、ガウン、及びカーテンは、開いた傷口及び咳や喘鳴などの他の健康状態による汚染を受ける。患者のガウンは、汗及び/又は尿、便、及び嘔吐物のような人間の排泄物によって汚染されている。これは、細菌、ウィルス、及び菌類のような微小生物の増殖につながる。医療従事者は、患者によって使用された汚染布地から、あるいは体内からの排泄物による汚染にさらされることが非常に多い。医療関係者は、患者間で細菌感染を伝達する主な要因となっている。現在の医療用織地では何ら保護バリアが提供されない。病院における現在の状況や問題を以下に述べる。
・病院又は医療機関で感染した病気の大部分は布地に起因する感染である。
・医師と患者は布地の接触を介して互いに感染する傾向にある。
・現在の洗浄方法は布地のダメージをもたらす。
・枕、マットレス、及びカーテンはたまにしか洗浄又は消毒されない。
・洗浄後の細菌の増殖は瞬間的である。
・汗や剥がれた皮膚のような身体残留物は細菌の温床となる。
標準的な布地の洗濯は水を過度に消費することにつながる。衣服を洗濯するために大量の洗剤が使用され、洗濯時間が長いために、このプロセスには過度に時間がかかる。
現在、世界の人口の80%の人は、自治体による処理がなされておらず、本質的に汚くて微生物により汚染された水を飲んでいる。飲料水を提供するコストは、特に、下水処理システム、水道水路、及び水処理設備などの必要なインフラが高価であるために、財政的な制約により政府の手の届かないところにあることが多い。このため、自治体による処理がなされた浄水は、発展途上国の広い範囲において利用できるに至っていない。
今日、微生物学的な意味での飲料水に対して差し迫ったニーズがある。淡水資源は利用可能であるが、その中の水は大腸菌や他の病気を引き起こす様々な微生物で汚染されていることが判明することが多い。実際、入浴から衣服の洗濯、家畜の水浴びなどまで様々な活動のために地域住民によって多くの淡水資源が使用されている。このため、これらの水資源の大部分における汚染レベルは考慮すべき事項である。世界中の研究によって実際に明らかになっているように、そのような汚染された水が飲料に用いられた場合、下痢、コレラ、及び他の多くの病気の急激な増加を引き起こす可能性がある。
微生物を死滅させ及び/又は除去する、あるいは微生物が繁殖するのを少なくとも防止するのに適した煮沸、UV浄化、及びオゾン水消毒などの既知の浄水技術は、電気的に動力を得る装置やシステムに基づいている。地球上の広い範囲において、特に発展途上国においては、安定した電源供給が利用可能でないことが多いので、これらの既知の浄水技術も利用できない。
ヨウ素や塩素を用いる水の消毒などの化学的消毒は、浄化された、本質的に微生物が含まれていない水を提供するのに適している。しかしながら、現在知られている消毒剤は、付与又は使用されるときに一時的に消毒することができるが、その性質が継続したり長持ちしたりすることはない。塩素やヨウ素のような消毒剤を用いて水を浄化する際に、水の量が増えると必要とされる上記消毒剤の量も増える。化学的消毒は電気に依存しているわけではないが、一時的に消毒をするに過ぎず、ランニングコストが発生するので、化学的消毒は発展途上国の多くの地域には適しているものではない。これらのランニングコストは、浄化された飲料水を入手する方法がない多くの貧しい人々にとっては問題となる。さらに、長期間にわたりそのような化学的消毒剤を使用することは人間の体に対して有害なものとなる。
多くの人々はその土地に固有の方法で布地及び/又は粒子フィルタを用いて水を濾過し、より飲用に適したものにしているが、これらの布地は微生物学的な意味での病原体を死滅させることができない。このため、従来の布濾過技術を用いて、これを病気の原因となる微生物を死滅させることができる技術と組み合わせた単純な方法で微生物学的に安全な飲み水を提供できるようにする課題に取り組む必要がある。
浄水を提供する他の装置は、浄水を提供するカートリッジフィルタ内に消毒織地を使用している。例えば、臭気フィルタの上流側で、活性炭と1マイクロメートルのフィルタとを備えた粗フィルタを用いて、浄化する水の前置濾過を行うシステムが知られている。典型的には、上記1マイクロメートルのフィルタは、ステープル不織布及び/又はスパンボンド不織布である。ステープル不織布及びスパンボンド不織布のいずれも、最初は、その内部にもそれ自身にも機械抵抗がない。少なくとも一定の機械抵抗を提供するために、ステープル不織布及び/又はスパンボンド不織布の繊維が付加的な結合プロセスにおいて互いに接続される。しかしながら、1つの問題は、結合された不織布の機械抵抗が、洗浄処理や水を浄化する装置内での使用中に起きるスクラビングなど他の機械的処理に耐えるには不十分であることである。さらに、既知の臭気フィルタは、カートリッジフィルタであり、投入容器の中で垂直に設けられる。しかしながら、上記臭気カートリッジフィルタは、目詰まりが酷く、圧力損失が高いため、流量が減ってしまい、フィルタ寿命も短い。
米国特許第2,791,518号には、まず水溶性塩基窒素化合物(例えばアンモニア)と、その中に溶解した1価銀塩とを含む水溶液に対象物を浸した後、他の溶液への2回目の浸漬を行うことにより、布地のような対象物を殺菌するために処理する方法が記載されている。
米国特許第4,721,511号は、不織基材と特定の第4級アンモニウムオルガノシラン化合物とを有する抗菌織地について言及している。
米国特許第5,190,788号は、繊維を処理して抗菌性を付与するとともに電気的に導通可能にする方法を開示しており、この方法では、2価銅イオンと還元剤とチオ硫酸ナトリウムの源及びヨウ化物イオンの源の水溶液を含む浴槽に繊維を浸漬し、これによりヨウ化銅が繊維に吸収される。
米国特許第6,962,608号は、抗菌繊維を調製するプロセスを教示しており、このプロセスでは、a)少なくとも2つのカルボキシル基を有する有機酸を含む処理水溶液に布地を浸漬し、b)酸化剤で上記繊維を処理して過カルボン酸官能基を生成し、これにより有機酸を平均で6重量パーセント含む抗菌布地を調製する。この抗菌布地を全く洗浄しなかった場合には大腸菌が99%以上減少した。
米国特許第8,906,115号は、有機プライマ成分、有機第4級アンモニウム化合物、及び金属塩成分の水溶液を繊維に付与して合成繊維に抗菌性を持たせる方法に向けられている。
本発明の目的は、上述した従来技術文献のいずれか又はすべての問題を克服することができる布地材料を提供することにある。本発明のさらなる目的は、何回も洗浄した後でさえも抗菌特性を発揮することができる布地材料を提供することにある。さらに、本発明の目的は、布地材料が細菌、臭い、臭気の拡大をできるだけ完全に妨げることにある。布地材料が空気又は水のような媒体を殺菌/消毒するフィルタとしての特性を発揮することをさらなる目的としている。さらなる目的は、非浸出的な方法又は実質的に非浸出的な方法で抗菌剤を布地に固定することにある。さらなる目的は、抗菌特性を有する生物分解性の布地を提供することにある。本発明のさらなる目的は、抗菌特性を有する布地を製造するために使用される抗菌剤及び他の薬品を人間、動物及び/又は環境に対して無害とすることにある。最後に、本発明の目的は、抗菌特性を有する布地の費用効率の良い製造方法を提供することにある。
これらの目的の1つ以上は、独立請求項に係る発明により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
本発明は、1以上の抗菌剤が非常に強く結合又は付着することで、布地材料自体が殺菌剤、殺生物剤、消毒剤、殺真菌剤、及び/又は殺細菌剤として機能する布地材料を提供する。さらに、本発明は、そのような布地材料を製造するためのプロセス及び水濾過における、又は自己消毒特性を有する医療用衣服としての布地材料の使用を提供する。
いずれの理論にも拘束されることなく、以下に述べる反応メカニズム又は発生し得る反応生成物はどのような反応が起こるかを示していると考えられる。しかしながら、本発明は、いずれの反応メカニズム又は発生し得る反応生成物にいかなる形においても拘束されない。これらは、説明の目的のためだけに提供される。
以下のすべてのパーセンテージは、特に示さない限り重量について述べたものである。「%owf」又は「%o.w.f.」は、「of weight fabric」を意味しており、織地に対する抗菌剤の取込の重量パーセンテージである。
本発明の文脈において使用される「抗菌性」という用語は、少なくともいくつかの種類の微小生物を殺す能力又は少なくともいくつかの種類の微小生物の成長又は繁殖を阻止する能力に関係する。上記用語は、本発明の文脈において使用される1以上の「微小生物」に対して害を及ぼす化合物、薬剤、製品、又はプロセスに関係する。好ましくは、1以上の「微小生物」は「抗菌性」を有する製品又はプロセスにより殺される。
「微小生物」及び「微生物」という用語は、本発明の文脈において相互に交換可能に用いられ、特に単細胞生物のような裸眼では見えないぐらい小さな生物を含むものとして定義される。特に、「微小生物」及び「微生物」という用語は、ウィルスに加え、細菌及び古細菌を含む原核生物や原生生物を含む真核生物、チリダニやハダニのような動物、菌類、緑藻類のような植物を含むものである。
本明細書において述べられる粒子サイズの値は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、透過型電子顕微鏡(TEM)により、あるいはレーザ回折により決定することができる。
布地材料の製造プロセス:
本発明の第1の実施形態は、布地材料に抗菌性を付与するプロセスであって、
パディング又は好ましくは吸尽プロセスなどの液剤付与プロセスを用いて上記布地材料を処理し、その液剤は、1以上の抗菌剤を含み、
上記処理された布地材料を熱処理し、
好ましくは上記熱処理された布地材料を洗浄し、
好ましくは上記洗浄された布地材料を乾燥すること
を含む第1のプロセスサイクルを含む、プロセスである。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態において、上記1以上の抗菌剤が上記布地の断面にわたって実質的に均一に拡散されるように、上記吸尽プロセス中の上記液剤の温度を十分に高くし、上記吸尽時間を十分に長くする。
第3の実施形態によれば、第1又は第2の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセスの結果として、上記布地材料が変色しないように及び/又は黄色にならないように及び/又は、好ましくは上記布地材料が織地の場合はASTM規格D 5035-11に従って、上記布地材料が糸の場合はASTM規格D 2256/D 2256M-10e1に従って測定したときに、その破断(引っ張り)強さが15%を超えて、好ましくは10%を超えて、より好ましくは7%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しないように、上記吸尽プロセス中の上記液剤の温度を十分に低くし、及び/又は上記吸尽時間を十分に短くする。
第4の実施形態によれば、第1から第3の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセス中に、上記液剤は、45℃以上、特に50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、最も好ましくは約80℃以上の温度を有する。
第5の実施形態によれば、上記第1から第4の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセス中に、上記液剤は、沸点温度よりも低く、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、特に85℃以下、最も好ましくは約80℃以下の温度を有する。
第6の実施形態によれば、第1から第5の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽時間は、30分以上、好ましくは45分以上、より好ましくは50分以上、特に55分以上、最も好ましくは約60分以上である。
第7の実施形態によれば、第1から第6の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽時間は、120分以下、特に90分、好ましくは80分以下、より好ましくは75分以下、さらにより好ましくは70分以下、さらにより好ましくは65分以下、最も好ましくは約60分以下である。
第8の実施形態によれば、第1から第7の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセス中に、好ましくは30秒未満の間隔で、より好ましくは連続的に上記液剤を攪拌する。
第9の実施形態によれば、第8の実施形態のプロセスにおいて、攪拌は、撹拌器で、好ましくは200rpm以上の速度で、より好ましくは250rpm以上の速度で、最も好ましくは300rpm以上の速度で行われる。
第10の実施形態によれば、第9の実施形態のプロセスにおいて、上記撹拌器は、羽根を有する、好ましくは最低3枚の羽根を有する、好ましくは10cm以上の羽根長を有する、好ましくは2cm以上の羽根幅を有するミキサである。
第11の実施形態によれば、第8から第10の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、攪拌が循環ポンプの手段により行われる。
第12の実施形態によれば、第1から第11の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセスは、糸染色機、ジェット染色機、連続染色機、又は好ましくはジガー内で行われる。
第13の実施形態によれば、第1から第12の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセスの吸尽率は、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは約98%以上である。
第14の実施形態によれば、第1から第13の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセスの液剤に対する材料の比率は、1:10以上、好ましくは1:5以上、より好ましくは1:3以上、最も好ましくは約1:2以上である。
第15の実施形態によれば、第1から第14の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記吸尽プロセスの液剤に対する材料の比率は、1:1以下、好ましくは1:1.5以下、より好ましくは1:1.7以下、最も好ましくは約1:2以下である。
第2のサイクル:
第16の実施形態は、第1から第15の実施形態のいずれか1つのプロセスが、上記第1のプロセスサイクルの後に行われる第2のプロセスサイクルを備え、この第2のプロセスサイクルは、
吸尽又は好ましくはパディングプロセスのような液剤付与プロセスを用いて上記布地材料を処理し、その液剤は1以上の抗菌剤を含み、
上記処理された布地材料に対して熱処理を行い、
好ましくは上記熱処理された布地材料を洗浄し、
好ましくは上記洗浄された布地材料を乾燥させる
ことを含んでいる。
第17の実施形態によれば、第16の実施形態において、上記第2のプロセスサイクルは、上記布地材料の抗菌作用を増大させる。
第18の実施形態によれば、第16又は第17の実施形態のいずれか1つにおいて、上記パディングプロセスは、好ましくは上記布地材料上の上記液剤のウェットピックアップ(wet pick up)を最適なものとするために、1以上のロールを適用することを含む。
第19の実施形態によれば、第16から第18の実施形態のいずれか1つにおいて、上記パディングプロセスは、パディングマングル内で0.5バールから4バール、好ましくは1.0バールから3.0バール、より好ましくは1.5バールから2.5バール、最も好ましくは約2バールの圧力で行われる。
第20の実施形態によれば、第16から第19の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記パディングプロセスの上記ピックアップ率は、25%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、特に60%以上、最も好ましくは約65%以上である。
第21の実施形態によれば、第16から第20の実施形態のいずれか1つにおいて、上記パディングプロセスの上記ピックアップ率は、90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、特に70%以下、最も好ましくは約65%以下である。
液剤:
第22の実施形態によれば、第1から第21の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は溶媒を含む。
第23の実施形態によれば、第22の実施形態において、上記溶媒が水である。
第24の実施形態によれば、第23の実施形態において、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤に含まれる上記溶媒の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは100%が水である。
第25の実施形態によれば、第1から第24の実施形態のいずれか1つにおいて、上記1以上の抗菌剤及び/又は上記抗菌剤を架橋させるために使用される他の薬剤が、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤に溶解している。
第26の実施形態によれば、第1から第25の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤内で、上記1以上の抗菌剤及び/又は上記抗菌剤を架橋させるために使用される他の薬剤と上記溶媒とが均質な混合液を形成する。
第27の実施形態によれば、第1から第26の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤内で、上記1以上の抗菌剤及び/又は上記抗菌剤を架橋させるために使用される他の薬剤と上記溶媒とはスラリを形成しない。
第28の実施形態によれば、第1から第27の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、乳化剤、特にポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコール400モノラウレート、エチレンオキシド縮合体、脂肪アルコールエトキシレート、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される乳化剤を含有する。
第29の実施形態によれば、第1から第28の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、上記布地材料の重量に基づけば、0.05重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から2.5重量%の量で、あるいは、液剤1リットル当たり1グラムから50グラムの量で乳化剤を含有する。
第30の実施形態によれば、第1から第29の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、6.9以下、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.3以下、特に6.0以下、最も好ましくは約5.5以下のpH値を有する。
第31の実施形態によれば、第1から第30の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、3.0以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.5以上、特に5.0以上、最も好ましくは約5.5以上のpH値を有する。
第32の実施形態によれば、第1から第31の実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、好ましくは液剤1リットル当たり1グラムから5グラム、より好ましくは2グラムから4グラム、特に2.5グラムから3.5グラム、最も好ましくは約3グラムの濃度で有機酸、特にクエン酸、酢酸又はそれらの組合せ、好ましくはクエン酸を用いて調製される。
第33の実施形態によれば、第1から第32の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤の20℃及び/又は80℃におけるセンチポアズ(cP)での動的粘度の値は、20℃及び/又は80℃における水の動的粘度よりもそれぞれ20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に2%以下、最も好ましくは約0%以下だけ高い。
乾燥:
第34の実施形態によれば、第1から第33の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のサイクルの上記熱処理は、上記布地材料の乾燥を含む。
第35の実施形態によれば、第1から第34の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料の乾燥の工程の1つ又はいくつかは、100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは約120℃以上の周囲温度で少なくとも部分的に行われる。
第36の実施形態によれば、第1から第35の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料の乾燥の工程の1つ又はいくつかは、190℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下の周囲温度で行われる。
第37の実施形態によれば、第1から第36の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料の乾燥の工程の1つ又はいくつかは、160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、特に130℃以下、最も好ましくは約120℃以下の周囲温度で行われる。
第38の実施形態によれば、第1から第37の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料の乾燥の工程の1つ又はいくつかは、上記処理された布地材料をテンタ又は類似の乾燥装置に通過させることにより行われる。
キュアリング:
第39の実施形態によれば、第34から第38の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のサイクルの上記熱処理は、上記乾燥された布地材料をキュアリングすることを含む。
第40の実施形態によれば、第39の実施形態において、上記布地材料の洗浄後に、上記布地材料が第154の実施形態に規定される上記抗菌剤の浸出値を呈するように、及び/又は、上記布地材料が第147から第153の実施形態のいずれか1つにおいて規定される抗菌性能を呈するように、上記1以上の抗菌剤が上記布地材料に対して十分に強く固定されるように、上記吸尽プロセス中の上記液剤の温度を十分に高く、吸尽時間を十分に長く、キュアリング温度を十分に高く、キュアリング時間を十分に長くする。
第41の実施形態によれば、第40の実施形態において、上記洗浄は、好ましくは20℃から60℃の範囲の温度を有する水を用いて、好ましくは30分以上90分以下の間、より好ましくは第67から第69の実施形態のいずれか1つにおいて規定されるように上記布地材料を洗浄することを含む。
第42の実施形態によれば、第40又は第41の実施形態において、上記吸尽プロセスの結果として、上記布地材料が変色しないように及び/又は黄色にならないように及び/又は、好ましくは上記布地材料が織地の場合はASTM規格D 5035-11に従って、上記布地材料が糸の場合はASTM規格D 2256/D 2256M-10e1に従って測定したときに、その破断強さが15%を超えて、好ましくは10%を超えて、より好ましくは7%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しないように、上記吸尽プロセス中の上記液剤の温度を十分に低く、吸尽時間を十分に短くする。
第43の実施形態によれば、第40から第42の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記キュアリングの結果として、上記布地材料が溶けないように及び/又は焼けないように及び/又は黄変しないように、及び/又は、上記キュアリングプロセスの結果として、好ましくは上記布地材料が織地の場合はASTM規格D 5035-11に従って、上記布地材料が糸の場合はASTM規格D 2256/D 2256M-10e1に従って測定したときに、上記布地材料の布地強さが、15%を超えて、好ましくは10%を超えて、より好ましくは7%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しないように、上記キュアリング温度を十分に低く、上記キュアリング時間を十分に短くする。
第44の実施形態によれば、第39から第43の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、キュアリングは、150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、特に175℃以上、最も好ましくは約180℃以上のキュアリング温度で少なくとも部分的に行われる。
第45の実施形態によれば、第39から第44の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、キュアリングは、205℃以下、好ましくは195℃以下、より好ましくは190℃以下、特に185℃以下、最も好ましくは約180℃以下の周囲温度で行われる。
第46の実施形態によれば、第44又は第45の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たり350グラム未満の重量を有する織地であり、キュアリングは、30秒以上、好ましくは40秒以上、より好ましくは50秒以上、最も好ましくは約60秒以上の期間にわたって、第36の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第47の実施形態によれば、第44又は第45の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たり350グラムから500グラムの重量を有する織地であり、キュアリングは、45秒以上、好ましくは60秒以上、より好ましくは75秒以上、最も好ましくは約90秒以上の期間にわたって、第36の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第48の実施形態によれば、第44又は第45の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たりグラムよりも大きい重量を有する織地であり、キュアリングは、60秒以上、好ましくは80秒以上、より好ましくは100秒以上、最も好ましくは約120秒以上の期間にわたって、第4の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第49の実施形態によれば、第44又は第45の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たり350グラム未満の重量を有する織地であり、キュアリングは、120秒以下、好ましくは90秒以下、より好ましくは80秒以下、特に70秒以下、最も好ましくは約60秒以下の期間にわたって、第36の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第50の実施形態によれば、第44、第45、又は第48の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たり350グラムから500グラムの重量を有する織地であり、キュアリングは、180秒以下、好ましくは150秒以下、より好ましくは120秒以下、最も好ましくは約90秒以下の期間にわたって、第44の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第51の実施形態によれば、第44、第45、又は第48の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、m2当たり500グラムより大きい重量を有する織地であり、キュアリングは、240秒以下、好ましくは200秒以下、より好ましくは160秒以下、最も好ましくは約120秒以下の期間にわたって、第44の実施形態において規定される上記キュアリング温度で行われる。
第52の実施形態によれば、第39から第51の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料の乾燥とキュアリングとの間で上記布地材料が実質的に冷却されることなく、キュアリングの直後に上記布地材料の乾燥が行われる。
第53の実施形態によれば、第52の実施形態において、上記布地材料は織地であり、上記布地材料の乾燥とキュアリングは、平方メートル当たりの織物重量100グラムに対して、合計で45秒以上、好ましくは50秒以上、より好ましくは55秒以上、最も好ましくは約60秒以上の期間にわたって行われる。
第54の実施形態によれば、第52又は第53の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は織地であり、上記布地材料の乾燥とキュアリングは、平方メートル当たりの織物重量100グラムに対して、合計で75秒以下、好ましくは70秒以下、より好ましくは65秒以下、最も好ましくは約60秒以下の期間にわたって行われる。
第55の実施形態によれば、第44から第54の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地は、第44の実施形態において規定される上記キュアリング温度に至る前に、好ましくは少なくとも2つの中間ステップで、好ましくは少なくとも3つの中間ステップで、より好ましくは連続的に、徐々に上昇する温度に曝される。
第56の実施形態によれば、第55の実施形態において、上記徐々に上昇する温度は、100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは約120℃以上の温度で開始する。
第57の実施形態によれば、第55又は第56の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記徐々に上昇する温度は、140℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、最も好ましくは約120℃以下の温度で開始する。
第58の実施形態によれば、第55から第57の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は織地であり、上記温度は、平方メートル当たりの織物重量100グラムに対して、15秒以上、好ましくは18秒以上、より好ましくは20秒以上、最も好ましくは約22秒以上の期間にわたって徐々に上昇する。
第59の実施形態によれば、第55から第58の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は織地であり、上記温度は、平方メートル当たりの織物重量100グラムに対して、30秒以下、好ましくは27秒以下、より好ましくは25秒以下、最も好ましくは約23秒以下の期間にわたって徐々に上昇する。
第60の実施形態によれば、第53から第59の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地の乾燥は、上記徐々に温度が上昇する期間中、少なくとも部分的に、好ましくはずっと行われる。
第61の実施形態によれば、第39から第60の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、キュアリングは、上記布地材料をテンタに通過させることによって行われる。
第62の実施形態によれば、第61の実施形態において、第55の実施形態に従属する場合に、第43の実施形態に規定される上記キュアリング温度に達する前における上記温度の漸進的な上昇は、上記テンタの少なくとも2つ、好ましくは3つ、より好ましくは4つのチャンバ内で生じる。
第63の実施形態によれば、第62の実施形態において、第43の実施形態に規定される上記キュアリング温度に達する前における上記温度の漸進的な上昇は、上記テンタの3つのチャンバ内で生じ、第1のチャンバでは、上記布地材料が、100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは約120℃以上の温度に曝され、第2のチャンバでは、上記布地材料が、115℃以上、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上、最も好ましくは約135℃以上の温度に曝され、第3のチャンバでは、上記布地材料が、130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、最も好ましくは約150℃以上の温度に曝される。
第64の実施形態によれば、第62又は第63の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、第43の実施形態に規定される上記キュアリング温度に達する前における上記温度の漸進的な上昇は、上記テンタの3つのチャンバ内で生じ、第1のチャンバでは、上記布地材料が、140℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、最も好ましくは約120℃以下の温度に曝され、第2のチャンバでは、上記布地材料が、155℃以下、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下、最も好ましくは約135℃以下の温度に曝され、第3のチャンバでは、上記布地材料が、170℃以下、好ましくは160℃以下、より好ましくは155℃以下、最も好ましくは約150℃以下の温度に曝される。
第65の実施形態によれば、第61の実施形態において、上記布地の乾燥とキュアリングとが、上記布地材料を上記テンタに通過させることにより1つのパスで行われ、好ましくは上記布地材料は織地であり、上記テンタ内の上記ドウェル時間は、第53又は第54の実施形態のいずれか1つで規定された上記布地の乾燥とキュアリングの合計時間である。
第66の実施形態によれば、第39から第49又は第61から第65の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地の乾燥とキュアリングとが、最初に乾燥のために上記布地材料をテンタに通過させ、次にキュアリングのために上記布地材料をテンタに通過させることにより2つの異なるパスで行われる。
洗浄:
第67の実施形態によれば、第1から第66の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルでは、上記洗浄ステップにおいて、上記布地材料が、水の中で、好ましくは洗剤や他の同様の布地薬剤を使用することなく洗浄される。
第68の実施形態によれば、第67の実施形態において、上記布地材料は、30℃から50℃、好ましくは35℃から45℃の温度の浴槽内で洗浄される。
第69の実施形態によれば、第67又は第68の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、20分以上、好ましくは30分以上、特に35分以上、好ましくは約40分以上の間、浴槽内で洗浄される。
上記プロセスが開始する前:
第70の実施形態によれば、先行する実施形態のいずれか1つにおいて、上記布地材料には、上記第1のプロセスサイクルを行う前に染色プロセスが施される。
第71の実施形態によれば、先行する実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1のプロセスサイクルの開始時に、上記布地材料には、薬剤及び/又はシリコーンが付与されておらず、スカーリング、漂白、又は洗浄のようなプロセスによりこれらが除去される。
実施形態71aによれば、先行する実施形態のいずれか1つにおいて、上記第1のプロセスサイクルの開始時に、上記布地材料が、自然吸収状態にある及び/又は上記布地材料の吸収性を低減する薬剤により処理されない。
出発布地材料:
第72の実施形態によれば、第1から第70の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、出発布地材料は、水酸基、ペプチド基、及び/又はカルボニル基、特に水酸基及び/又はペプチド基を含んでいる。
第73の実施形態によれば、第1から第72の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、出発布地材料は、セルロース系布地材料、好ましくは非不活性の合成布地材料、又は好ましくは25%以上のセルロース系布地材料及び/又は好ましくは非不活性の合成布地材料を含む混紡である。
第74の実施形態によれば、第73の実施形態において、上記セルロース系布地材料は、綿、ビスコース、レーヨン、リンネル、麻、ラミー、ジュート、及びその組み合わせ(混紡)からなる群より選択された1以上のものを含んでいる。
第75の実施形態によれば、第73の実施形態において、上記合成布地材料は、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、アクリル系ポリエステル、スパンデックス(エラスタン、ライクラ)、アラミド、モダール、硫黄、ピリラクチド(PLA)、リヨセル、ポリブチルテトラクロリド(PBT)、及びそれらの組合せ(混紡)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含んでいる。
第76の実施形態によれば、第1から第75の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記出発布地材料は、綿、ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡を含んでいる。
第77の実施形態によれば、第1から第76の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記出発布地材料は、20%から60%の綿、好ましくは25%から50%の綿、より好ましくは30%から40%の綿を含んでいる。
第78の実施形態によれば、第1から第77の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記出発布地材料は、40%から80%のポリエステル、好ましくは50%から75%のポリエステル、より好ましくは60%から70%のポリエステルを含んでいる。
第79の実施形態によれば、第1から第78の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、繊維、糸、又は織地、特に、好ましくはマルチフィラメント糸又は好ましくはマルチフィラメント織地、特に好ましくはマルチフィラメント織地である。
第80の実施形態によれば、第1から第79の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、織布、ニット地、クロッシェ地、ボンディッド地、経編み地、及び不織布からなる群から選択される。
第81の実施形態によれば、第1から第80の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記布地材料は、紡績されたもの、電界紡績されたもの、延伸されたもの、又は押し出されたものである。
抗菌剤、架橋剤、及び他の活性剤:
第82の実施形態によれば、第1から第81の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される。
第83の実施形態によれば、第1から第82の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の薬剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上、最も好ましくは5つすべての抗菌剤を含む。
第84の実施形態によれば、第1から第83の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の薬剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つすべての抗菌剤を含む。
第85の実施形態によれば、第1から第84の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の薬剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物と、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、最も好ましくは4つすべての抗菌剤とを含む。
第86の実施形態によれば、第1から第85の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の薬剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物と、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つすべての抗菌剤とを含む。
第87の実施形態によれば、第1から第86の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の薬剤は、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つすべての抗菌剤を含む。
第88の実施形態によれば、第1から第87の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1及び第2のプロセスサイクルの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物を含む。
第89の実施形態によれば、第82から第88の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、式
を有し、
上記ラジカルは、
R
1、R
2及びR
3は、C
1〜C
12アルキル基、特にC
1〜C
6アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R
4及びR
5は、C
1〜C
18アルキル基、C
1〜C
18ヒドロキシアルキル基、C
3〜C
7シクロアルキル基、フェニル基、又はC
7〜C
10アラルキル基、特にC
1〜C
18アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R
6は、C
1〜C
18アルキル基、特にC
8〜C
18アルキル基であり、
X
−は、アニオン、特にクロリド基、ブロミド基、フルオリド基、ヨージド基、アセテート基又はスルホネート基であり、好ましくは塩化物又は臭化物であり、
nは、1〜6の整数、特に1〜4の整数、好ましくは3である
という意味を互いに独立して持つ。
第90の実施形態によれば、第82から第89の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド又はジメチルテトラデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、特にジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドを含んでいる。
第91の実施形態によれば、第82から第90の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1のプロセスサイクル、好ましくは上記第1のプロセスサイクルだけの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、銀カチオン、特に無機又は有機マトリクスに捕捉された銀カチオン、好ましくはアルミノケイ酸塩又は重合体マトリクスに捕捉された銀カチオンを含む。
第92の実施形態によれば、第91の実施形態において、上記アルミノケイ酸塩はナトリウム−ポリ(シアレート−ジシロキソ)化合物である。
第93の実施形態によれば、第91の実施形態において、上記重合体マトリクスはアクリル重合体である。
第94の実施形態によれば、第1から第93の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1のプロセスサイクル、好ましくは上記第1のプロセスサイクルだけの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、ポリグルコサミンを含む。
第95の実施形態によれば、第1から第94の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1のプロセスサイクル、好ましくは上記第1のプロセスサイクルだけの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、ポリヘキサメチレンビグアニドを含む。
第96の実施形態によれば、第1から第95の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1及び第2のプロセスサイクル又は上記第2のプロセスサイクルだけの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、アゾール系化合物を含む。
第97の実施形態によれば、第1から第95の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は架橋剤を含む。
第98の実施形態によれば、第1から第97の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記1以上の抗菌剤のうち1つの以上、特にアゾール系化合物の配合は、架橋剤を含む、あるいは、架橋剤が上記1以上の抗菌剤のうち1つの以上の抗菌剤の一部である。
第99の実施形態によれば、第97又は第98の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記架橋剤は80℃で膜を形成しない。
第100の実施形態によれば、第97から第99の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記架橋剤は、好ましくはブロックイソシアネート架橋剤である。
第101の実施形態によれば、第97から第100の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は特に上記第2のプロセスサイクル、特に上記第1及び第2のプロセスサイクル又は上記第2のプロセスサイクルだけの液剤は、アゾール系化合物を含む。
第102の実施形態によれば、第1から第101の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物及び銀カチオンを含む。
第103の実施形態によれば、第1から第102の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む。
第104の実施形態によれば、第1から第103の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む。
第105の実施形態によれば、第1から第104の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、及びアゾール系化合物を含む。
第106の実施形態によれば、第1から第105の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリヘキサメチレンビグアニド、及びポリグルコサミンを含む。
第107の実施形態によれば、第1から第106の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリヘキサメチレンビグアニド、及びアゾール系化合物からなる群から選択される抗菌剤のうち2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つすべての抗菌剤を含む。
第108の実施形態によれば、第1から第107の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む。
第109の実施形態によれば、第1から第83及び第91から第101の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の上記1以上の抗菌剤は、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む。
第110の実施形態によれば、第1から第109の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクル、特に上記第1のプロセスサイクルの液剤は、上記布地材料の重量に基づけば、上記1以上の抗菌剤を0.1重量%から20重量%、特に0.1重量%から15重量%、好ましくは0.1重量%から10重量%、より好ましくは0.1重量%から8重量%、最も好ましくは0.1重量%から5重量%の量含む。
第111の実施形態によれば、第1から第110の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記抗菌剤は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に0.6重量%以上、最も好ましくは0.7重量%以上の量付与される。
第112の実施形態によれば、第1から第111の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記抗菌剤は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に2.5重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.7重量%以下、特に1.5重量%以下、最も好ましくは1.3重量%以下の量付与される。
第113の実施形態によれば、第1から第112の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記出発布地材料を、さらなる抗菌剤、特に塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;塩化ベンゾキソニウム;デカリニウム;塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム;ヒドロキシル基又はメトキシ基若しくはエトキシ基のようなアルコキシ基を有する反応性アミノシリコーンと必要に応じて組み合わせた臭化セトリモニウム;2−フェニルフェノール、アシベンゾラール、パクロブトラゾール、アゾキシストロビン、エポキシコナゾール、ビナパクリル、イプロジオン、トリアジメホン、フベリダゾール、フルシラゾール、2,4,6−トリブロモフェノール、ビンクロゾリン、ピラゾホス、テブコナゾール、メタラキシル、ジクロフルアニド、ストロビルリン、ミクロブタニル、ブロックイソシアネートを有するフェンプロピモルフ、塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、フェンチクロール、9−アミノアクリジン、ジブロモプロパミジン、クロロタロニル、ポビドン−ヨード、フェナミドン、ペンシクロン、セチルピリジニウムクロリド、セトリモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ブピリマート、フルオピコリド、ヘキサクロロフェン、トリクロカルバン、ニトロフラン、クリオキノール、メチルパラベン、プロパモカルブ、シンナムアルデヒド、ヘキサミジン、及びファルカリンジオールからなる群から選択される少なくとも1つで処理する。
第114の実施形態によれば、第1から第113の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、撥水剤及び撥油剤、フルオロカーボン化学剤、耐摩耗剤、帯電防止剤、抗ピリング剤、ケアが簡単な樹脂、湿潤剤、ウィッキング化学剤、軟化剤、防蚊剤又は防虫剤、UV保護剤、汚れ放出剤、粘度調整剤、難燃剤、親水性ポリマー、ポリウレタン、香料、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの機能性剤をさらに含む。
第115の実施形態によれば、第14から第114の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1のプロセスサイクルの液剤は、上記第2のプロセスサイクルの液剤とは異なる。
第116の実施形態によれば、第115の実施形態において、上記第1のプロセスサイクルでは、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドが抗菌剤として使用され、上記第2のプロセスサイクルでは、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物が抗菌剤として使用される。
第117の実施形態によれば、第82から第116の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、最も好ましくは0.3重量%以上の量付与される。
第118の実施形態によれば、第82から第117の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に5重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.2重量%以下、特に1.0重量%以下、最も好ましくは0.8重量%以下の量付与される。
第119の実施形態によれば、第82から第118の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中で無機又は有機マトリクスに捕捉された上記銀カチオンは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.02重量%以下、最も好ましくは約0.01重量%以下の量付与される。
第120の実施形態によれば、第82から第119の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中で無機又は有機マトリクスに捕捉された上記銀カチオンは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.001重量%以上、好ましくは0.002重量%以上、より好ましくは0.003重量%以上、最も好ましくは約0.005重量%以上の量付与される。
第121の実施形態によれば、第82から第120の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記ポリグルコサミンは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下の量付与される。
第122の実施形態によれば、第82から第121の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記ポリグルコサミンは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.05重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.12重量%以上、最も好ましくは0.15重量%以上の量付与される。
第123の実施形態によれば、第82から第122の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記ポリヘキサメチレンビグアニドは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下の量付与される。
第124の実施形態によれば、第82から第123の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記ポリヘキサメチレンビグアニドは、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.03重量%以上、好ましくは0.05重量%以上又は0.10重量%以上、好ましくは0.15重量%以上の量付与される。
第125の実施形態によれば、第82から第124の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記アゾール系化合物は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.6重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.4重量%以下、最も好ましくは0.3重量%以下の量付与される。
第126の実施形態によれば、第82から第125の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクルの液剤中の上記アゾール系化合物は、上記布地材料の重量に基づけば、合計で上記布地材料に0.05重量%以上、好ましくは0.10重量%以上、より好ましくは0.15重量%以上、最も好ましくは0.20重量%以上の量付与される。
第127の実施形態によれば、第82から第116の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクル合計で、
上記布地材料の重量に基づけば、上記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、上記布地材料に0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上の量で、0.7重量%以下、好ましくは0.6重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下の量付与され、及び/又は無機又は有機マトリクスに捕捉された上記銀カチオンは、上記布地材料に0.004重量%以上、好ましくは0.006重量%以上、より好ましくは0.008重量%以上の量で、0.03重量%以下、好ましくは0.02重量%以下、より好ましくは0.15重量%以下の量付与され、及び/又は
上記ポリグルコサミンは、上記布地材料に0.5重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.10重量%以上の量で、0.3重量%以下、好ましくは0.25重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下の量付与され、
及び/又は上記アゾール系化合物は、上記布地材料に0.1重量%以上、好ましくは0.15重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上の量で、0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下の量付与され、
及び/又は上記ポリヘキサメチレンビグアニドは、上記布地材料に0.2重量%以上、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上の量で、0.2重量%以下、好ましくは0.15重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下の量付与される。
第128の実施形態によれば、第82から第116の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、すべてのプロセスサイクル合計で、
上記布地材料の重量に基づけば、上記第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、上記布地材料に0.3重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは0.6重量%以上の量で、0.9重量%以下、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.7重量%以下の量付与され、
及び/又は無機又は有機マトリクスに捕捉された上記銀カチオンは、上記布地材料に0.004重量%以上、好ましくは0.006重量%以上、より好ましくは0.008重量%以上の量で、0.03重量%以下、好ましくは0.02重量%以下、より好ましくは0.15重量%以下の量付与され、
及び/又は上記アゾール系化合物は、上記布地材料に0.1重量%以上、好ましくは0.15重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上の量で、0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下の量付与され、
及び/又は上記ポリヘキサメチレンビグアニドは、上記布地材料に0.5重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.10重量%以上の量で、0.3重量%以下、好ましくは0.25重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下の量付与される。
第129の実施形態によれば、第113から第128の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記さらなる抗菌剤は、上記布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から10重量%の量、好ましくは0.1重量%から5重量%の量だけ、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中で使用される。
第130の実施形態によれば、第114から第129の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記機能剤は、上記布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から10重量%の量、好ましくは0.1重量%から5重量%の量だけ、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は上記第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中で使用される。
第131の実施形態によれば、第1から第130の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、ナノ粒子ではなく及び/又はナノ粒子の形態ではない。
第132の実施形態によれば、第1から第131の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中の上記1以上の抗菌剤のすべての寸法(長さ、幅、高さ)における粒子サイズは、250ナノメートル以上、好ましくは500ナノメートル以上、より好ましくは750ナノメートル以上、最も好ましくは1,000ナノメートル以上である。
第133の実施形態によれば、第1から第132の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中の上記1以上の抗菌剤は、非イオン性又は陽イオン性である。
第134の実施形態によれば、第82から第133の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記アゾール系化合物は、カルベンダジム、チアベンダゾール又はトリアゾール系化合物である。
第135の実施形態によれば、第134の実施形態において、上記トリアゾール系化合物はプロピコナゾールである。
第136の実施形態によれば、第1から第135の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記1以上の抗菌剤は、抗菌剤は、特に薬剤が第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、ポリグルコサミン、又はポリヘキサメチレンビグアニドである場合に直接、あるいは、特に薬剤が銀カチオンである場合に上記布地材料に直接結合した無機若しくは有機マトリクスにより、あるいは、特に上記薬剤がアゾール系化合物である場合に架橋によって布地材料に結合する。
第137の実施形態によれば、第1から第136の実施形態のいずれか1つのプロセスにおいて、上記1以上の抗菌剤のうち1つ以上は、シクロデキストリン及び/又は包接錯体を用いることなく、特に繊維反応性シクロデキストリン誘導体及び抗菌剤の包接錯体を用いることなく、上記布地材料に結合し、及び/又は上記第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は、シクロデキストリン及び/又は包接錯体、例えば繊維反応性シクロデキストリン誘導体及び抗菌剤の包接錯体を含んでいない。
布地材料に対する請求:
プロダクトバイプロセス:
第138の実施形態は、上記第1から第137の実施形態のいずれか1つにおけるプロセスにより取得可能な布地材料である。
抗菌剤が付着した布地材料:
本発明の第139の実施形態は、1以上の抗菌剤が付着、結合、又は共有結合した布地材料である。
第140の実施形態によれば、第139の実施形態において、上記布地材料は、第138の実施形態による材料である。
第141の実施形態によれば、第139又は第140の実施形態のいずれか1つの上記布地材料において、上記1以上の抗菌剤は、第82から第137の実施形態のいずれか1つにおいて規定されているように選択及び/又は付与される。
第142の実施形態によれば、第139又は第140の実施形態のいずれか1つの上記布地材料において、上記布地材料に付着、結合、又は共有結合した上記抗菌剤は、第111及び/又は第112の実施形態において規定されるような総重量を有し、及び/又は第116から第128の実施形態のいずれか1つにおけるそれぞれの抗菌剤に対して規定されるような個々の重量を有する。
第143の実施形態によれば、第139から第142の実施形態のいずれか1つの上記布地材料において、上記(未処理)布地材料は、第72から第81の実施形態のいずれか1つにおいて規定されているような材料である。
第144の実施形態によれば、第139から第143の実施形態のいずれか1つの布地材料において、上記1以上の抗菌剤は、上記布地の断面にわたって実質的に均一に拡散される。
第145の実施形態によれば、第139から第144の実施形態のいずれか1つの布地材料において、上記1以上の抗菌剤は、非浸出的な方法で上記布地材料に付着、結合、又は共有結合される。
第146の実施形態によれば、第145の実施形態のいずれか1つの布地材料において、非浸出は、上記布地材料の重量に基づけば、上記布地材料に付着、結合、又は共有結合された抗菌剤の0.1重量%の量に関して、第154の実施形態において抗菌剤の浸出が規定されているようなことを意味している。
布地材料の抗菌作用:
第147の実施形態によれば、第139から第146の実施形態のいずれか1つの布地材料は、ASTM規格E 2149-10及び/又はAATCC試験法100-1999及び/又はAATCC試験法100-2012に従って測定した、大腸菌ATCC 25922及び/又は黄色ブドウ球菌ATCC 6538及び/又はATCC 43300及び/又はクレブシエラ・ニューモニエATCC 4352及び/又はATCC 13883及び/又はコレラ菌ATCC 14035及び/又はクロストリジウム・ディフィシレATCC 43598胞子の減少値が、24時間の接触時間内で、好ましくは6時間の接触時間内で、より好ましくは1時間の接触時間内で、さらにより好ましくは15分の接触時間内で、特に15分の接触時間内で、最も好ましくは5分の接触時間内で、99.9%以上、好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上、最も好ましくは99.9999%以上となる。
第148の実施形態によれば、第147の実施形態の布地材料において、上記減少値は、85±15℃の洗濯機内で、好ましくは非抗菌、非イオン性の非塩素含有洗濯洗剤の製品を使用して、40分間から50分間にわたって25回以上洗濯し、好ましくはその後に標準すすぎサイクルを行い、好ましくは62℃から96℃で20分間から30分間にわたって乾燥させた後であっても得られる。
第149の実施形態によれば、第139から第148の実施形態のいずれか1つの布地材料は、EPA 90072PA4プロトコルに従って試験した場合に、10分以内の連続再接種に続く交互の乾式及び湿式摩耗サイクルにおいて、25回の洗濯後に、黄色ブドウ球菌ATCC 6538及び/又はATCC 43300及び/又は大腸菌ATCC 11229及び/又は緑膿菌ATCC 15442及び/又はサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)ATCC 10708及び/又は黄色ブドウ球菌(MRSA)ATCC 33592及び/又はATCC 43300及び/又はクレブシエラ・ニューモニエATCC 13883及び/又はコレラ菌ATCC 14035及び/又はクロストリジウム・ディフィシレATCC 43598胞子の減少値が、99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上、さらにより好ましくは99.999%以上、最も好ましくは99.9999%以上となる。
第150の実施形態によれば、第139から第149の実施形態のいずれか1つの布地材料は、標準試験ASTM F1671/1671M-13に従い、1.23×108PFU/mlのPhi-X174バクテリオファージ懸濁液60mlを圧力138mbarで1分間この布地材料に通過させた後のPhi-X174バクテリオファージの減少値が、99.9%以上、好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上、より好ましくは99.9999%以上、最も好ましくは99.99999%以上である。
第151の実施形態によれば、第150の実施形態において、上記減少値は、85±15℃の洗濯機内で、好ましくは非抗菌、非イオン性の非塩素含有洗濯洗剤の製品を使用して、40分間から50分間にわたって25回以上洗濯し、好ましくはその後に標準すすぎサイクルを行い、好ましくは62℃から96℃で20分間から30分間にわたって乾燥させた後であっても得られる。
第152の実施形態によれば、第139から第151の実施形態のいずれか1つの布地材料は、AATCC試験法30-2013パートIII(寒天平板、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus Niger))に従って試験した場合に、微生物のゼロ成長を呈する。
第153の実施形態によれば、第152の実施形態において、上記ゼロ成長値は、85±15℃の洗濯機内で、好ましくは非抗菌、非イオン性の非塩素含有洗濯洗剤の製品を使用して、40分間から50分間にわたって25回以上洗濯し、好ましくはその後に標準すすぎサイクルを行い、好ましくは62℃から96℃で20分間から30分間にわたって乾燥させた後であっても得られる。
布地材料の非浸出特性:
第154の実施形態によれば、第139から第153の実施形態のいずれか1つの布地材料において、好ましくは、
布地材料10グラム当たり水1000mlの比率で好ましくは蒸留曝露水に上記布地材料を浸漬し、
試験期間中、好ましくは21℃から25℃の温度で上記布地材料全体を上記曝露水に浸漬し続け、
上記試験期間後、曝露水を抽出し、好ましくはGC-MS法を用いて上記抗菌剤のそれぞれの存在について上記曝露水を試験する
方法により試験を行った場合に、24時間の試験期間内、好ましくは48時間の試験期間内、より好ましくは72時間の試験期間内、最も好ましくは7日間の試験期間内水に曝露されたときの上記1以上の抗菌剤のうちの1つ、いずれか、又はすべての浸出が、5.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、より好ましくは1.0ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下、最も好ましくは0.1ppm以下となる。
布地材料の使用:
本発明の第155の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つによる布地材料、特に第132の実施形態の方法により得られる布地材料の浄水のための使用である。
本発明の第156の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つによる布地材料、特に第133の実施形態の方法により得られる布地材料の医療領域又は病院内での使用である。
布地材料を含む製品:
本発明の第157の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つによる布地材料、特に第133の実施形態の方法により得られる布地材料からなる又はこれを含む衣服、特に医療用衣服、より具体的には手術室ガウンである。
本発明の第158の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つの布地材料を濾過材として含むエアフィルタである。
本発明の第159の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つの布地材料からなる又はこれを含む、キッチン布地又は製パン布地、特にタオル、エプロン又はオーブン手袋、下着、靴下、医療用衣服、特に手術着又は医療用マスク、戦闘服、航空乗務員の制服、Tシャツ、寝具、特にベッドシーツ、枕カバー、又は布団カバー、カーテン、子供服、学生服、バスタオル、足ふきマット、椅子張り、テーブルトップ、車の内装、建築織地、特にテント又はオーニング、健康用具、特にフィットネス用マット、ボクシング用グローブ、犬用ベッド、包帯又は失禁おむつである。
フィルタ:
本発明の第160の実施形態は、粒子フィルタと、抗菌作用を有する織地を含む抗菌フィルタとを備えた、水を浄化する装置であり、上記織地は、好ましくは第139から第154の実施形態のいずれか1つによる織地、特に第132の実施形態の方法によって得られる織地材料であり、上記粒子フィルタ及び上記抗菌フィルタは、上記装置の使用中に、浄化される水が最初に上記粒子フィルタを通過した後に上記抗菌フィルタを通過するように構成されている。
最初に水を粒子フィルタに案内し、その後に抗菌フィルタに案内することで、抗菌フィルタが汚染粒子で目詰まりしてしまうことが防止される。抗菌フィルタで水を浄化するために、抗菌作用を有する織地に汚染水を接触させる必要がある。これにより、微生物を死滅させ及び/又は無害にし、抗菌フィルタを出るときには水が浄化される。抗菌フィルタが懸濁汚染粒子のような粒子で目詰まりした場合には、微生物で汚染された水が織地に接触することになり、抗菌フィルタ特性が減少する可能性がある。したがって、抗菌フィルタの上流側に汚染粒子を濾過する確実な粒子フィルタを設けることにより、抗菌フィルタの寿命を延ばし、性能を上げることができる。
さらに、抗菌フィルタの目詰まりを防止することにより、水の流量が多くなり、これにより浄化済みの水の出力が多くなる。したがって、最小限の装置を使って、より多くの人々に浄水を供給することができる。さらにまた、浄化済みの水の出力を増やすことにより、浄水の1リットル当たりのコストを削減することができ、これにより装置が貧しい人々に対しても入手可能なものとなる。
上記装置は濾過の原理に基づいているので、上記装置に基づいた浄水プロセスは、その土地に固有の方法で用いられ、したがってそれらの人々によく知られた布地濾過プロセスと同様である。このため、コストがかかり複雑なユーザ訓練を省略することができる。
第161の実施形態によれば、第160の実施形態の装置において、上記粒子フィルタは、織地、好ましくは不織布を含むか、織地、好ましくは不織布である。
また、薬品が埋め込まれた織布に比べて洗浄などの機械的処理に対してより堅牢な不織布を用いることができる。例えば、粒子フィルタが汚染粒子で目詰まりした場合には、フィルタから汚染粒子を洗い流すことにより粒子フィルタを修復することができる。したがって、好ましくは、粒子で汚染された水が粒子フィルタを通過する方向とは反対の方向に、フィルタを清浄な水でフラッシュする。しかしながら、単一のフラッシュでは、粒子フィルタを完全に清浄する、すなわち修復するのに不十分であることが多く、このため、フィルタをスクラビングするなどの機械的処理が必要である。粒子フィルタの機械的耐久性を上げることにより、粒子フィルタの寿命が延び、このため、浄水1リットル当たりのコストを最小限にすることができる。
第162の実施形態によれば、第161の実施形態の装置において、不織布は、メルトブロー型織地を含むかメルトブロー型織地である。
メルトブロー不織布は、延伸するときに繊維の上に熱い空気を通過させることによりポリマー繊維などの溶融した繊維を延伸して長くて薄い繊維を形成し、これを伸ばして典型的には冷却することにより生成される。このように、延伸とこれに続く繊維収集の間に、静止した溶融繊維が互いに絡み合い同時に固着する。したがって、安定した機械的に耐久性の高い不織布フィルタを得ることができる。好ましくは、得られたウェブをロールに集めた後い、最終製品に変換する。メルトブロー型織地を含む又はメルトブロー型織地からなるフィルタは、微細濾過を可能とし、圧力低下が低く、耐久性が高い。
本発明者等による実際の試験により、そのようなフィルタの繊維は濾過及び修復中に変位しない傾向のあることが特に示された。このため、不織布フィルタを長い間にわたって使用し及び/又は再利用し及び/又は修復し及び/又は洗浄した場合においても、不織布フィルタの孔サイズ及び/又は初期フィルタ特性は安定したままである。さらに、メルトブロー不織布は、スクラビングなどの機械的処理にも耐えることができ、したがって、メルトブロー不織布は、水を浄化する粒子フィルタに使用するのに非常に好適であることが示された。さらにまた、メルトブロー織地フィルタにより既知のフィルタに比べて圧力低下が低くなるので、装置は流量を多くすることができる。このため、著しく寿命の延びたフィルタと浄化済みの水の出力が増えた装置とを提供することができる。
第163の実施形態によれば、第160から第162の実施形態のいずれかの装置において、上記粒子フィルタは、上記装置から取り外し可能であり、洗浄可能である。
取り外し及び洗浄可能な粒子フィルタにより、粒子フィルタを装置から分離して洗浄することが可能となる。このため、汚染粒子のような汚染物質を装置から効果的に除去することができる。フィルタから流し出された粒子は、装置及び/又は隣接するフィルタ内に戻るように流れ込むことがなく、したがって、汚染物質を永久に除去することができる。
第164の実施形態によれば、第160から第163の実施形態のいずれかの装置において、上記粒子フィルタは、9マイクロメートルから16マイクロメートルの範囲の平均孔サイズを有し、好ましくは第2の実施形態において規定されるタイプである。上記孔サイズの範囲により、砂、沈殿物及び/又はこれに類するもののように非常に粗い粒子を濾過することが可能となる。
第165の実施形態によれば、第160から第163の実施形態の装置において、上記粒子フィルタは、7マイクロメートルから13マイクロメートルの範囲、好ましくは8マイクロメートルから12マイクロメートル、より好ましくは約10マイクロメートルの平均孔サイズを有しており、好ましくは第2の実施形態において規定されるタイプである。上記孔サイズの範囲により、細かい砂及び/又はこれに類するもののように粗い粒子を濾過することが可能となり、上記孔サイズの範囲が初期の濁り除去フィルタとして作用する。
第166の実施形態によれば、第160から第163の実施形態の装置において、上記粒子フィルタは、3マイクロメートルから7マイクロメートルの範囲、好ましくは4マイクロメートルから6マイクロメートル、より好ましくは約5マイクロメートルの平均孔サイズを有し、好ましくは第2の実施形態において規定されるタイプである。第123の実施形態の範囲の孔サイズを有するフィルタは、濁り及びより微細な汚染粒子の前置濾過を可能にする。
第167の実施形態によれば、第160から第163の実施形態の装置において、上記粒子フィルタは、0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲、好ましくは0.5マイクロメートルから1.5マイクロメートル、より好ましくは約1マイクロメートルの平均孔サイズを有し、好ましくは第3の実施形態において規定されるタイプである。
上記の実施形態による孔サイズを有するフィルタは、非常に微細な汚染粒子だけではなく、シストや他の単細胞生物を濾過することができる。上記の実施形態による粒子フィルタを抗菌フィルタの上流側で使用した場合、抗菌フィルタの目詰まりを効果的に防止することができる。上記の実施形態による微細な孔サイズに対しては、特にメルトブロー不織布の孔サイズ及び/又は初期粒子フィルタ特性が粒子フィルタの寿命の期間にわたって本質的に安定したままであるので、メルトブロー不織布が好ましい。本発明者等による実際の試験により、メルトブロー不織布フィルタは、ボンドステープル不織布フィルタ及び/又はスパンボンド不織布フィルタに比べて機械的耐久性が著しく向上されることが特に示された。先行技術において使用されるステープル不織布フィルタ及び/又はスパンボンド不織布フィルタの繊維は、洗浄後に剥離する傾向があった。したがって、先行技術において使用されるフィルタの繊維が変位し、フィルタの孔サイズが大きくなった。これは、フィルタ特性の損失を引き起こし、さらに洗浄中に粒子をフィルタ内の奥深くに移動させてしまう。これに対して、メルトブロー不織布フィルタを用いることにより、繊維の剥離が起きないか、少なくとも繊維の剥離が減少した。メルトブロー不織布フィルタは、繊維の変位のリスクを負うことなく、スクラビングなどの荒っぽい洗浄工程を耐えることができることが示された。したがって、複数回の洗浄工程の後においても、メルトブロー不織布フィルタは、本質的に安定した孔サイズとフィルタ特性を示した。
第168の実施形態によれば、第160から第167の実施形態の装置において、第2から第8の実施形態のいずれか1つに規定される2以上の粒子フィルタを備え、上記粒子フィルタは異なる孔サイズを有し、より大きな孔サイズを有する粒子フィルタは、より小さな孔サイズを有する粒子フィルタの上流側に配置される。上記の実施形態によるフィルタ構成は、抗菌フィルタだけではなく、装置の少なくとも2つの粒子フィルタが目詰まりしてしまうことを防止する。したがって、装置の動作時間を長くすることができ、1つ粒子フィルタだけを設けた装置に比べて、少なくとも2つの粒子フィルタを洗浄しなければならない頻度が減る。このように、装置の総寿命を長くすることができる。また、フィルタの目詰まりを防止することにより、流量が長い間にわたって本質的に安定した状態となり、浄水の安定供給を保証する。
第169の実施形態によれば、第160から第168の実施形態の装置において、上記装置の使用中に上記浄化される水が通過するように配置された活性炭フィルタをさらに備える。活性炭フィルタは、吸着又は化学反応のために利用される表面積を増加させる小さな低容積の孔を提供する。このため、浄化される水の味と臭気を効果的に除去することができる。好ましくは、味や臭気に影響を与える有機化合物が濾過される。このため、特に、塩素及びヨウ素残留物、洗剤、ラドン、多くの農薬などの人工的な有機薬品、及び塗料用シンナーなどの揮発性有機薬品を効果的に除去することができる。
第170の実施形態によれば、第169の実施形態の装置において、上記活性炭は固体ブロックとして形成され、好ましくは、上記固体ブロックは加圧粒状体からなる又は加圧粒状体を含む。活性炭の固体ブロックは、上述したように、臭気、味及び何らかの化学的不純物に加えて有機材料を除去するのに好適である。緩く配置された活性炭粒に代えて固体ブロックとすることで、活性炭の粒子フィルタ特性を改善することができ、臭気などを除去することに加えて、活性炭の固体ブロックにより濁りや他の微小粒子を効果的に除去することができる。さらに、活性炭の固体ブロックは、緩く配置された活性炭よりも機械的な安定性が高いので、特に洗浄中及び修復中に活性炭の固体ブロックを取り扱うことが容易である。
第171の実施形態によれば、第170の実施形態の装置において、上記活性炭は粒子フィルタであり、好ましくは第164から第167の実施形態のいずれか1つに規定されるものである。さらにまた、加圧粒状体を含む固体ブロックを設けることにより、好適な臭気フィルタ特性を維持しつつ、活性炭フィルタの圧力低下を減少させることができる。このように、上記活性炭フィルタは、入力圧力を低減して動作可能であり、及び/又は流量を増加させることができる。さらに他の実施形態は、利用可能なキャビティ内で、ヒ素、硬度やフッ化物などのような水の中の化学的汚染物質を除去するための樹脂及び他の既知の材料を、小さなペレットの形態、スポンジの形態、管状構造の形態など、又はこれらの組み合わせの形態でこれらの樹脂を埋め込んで配置することができる。
第172の実施形態によれば、第169から第171の実施形態の装置において、好ましくは初期の濁り除去のための、好ましくは第165の実施形態に規定されるような第1の不織布フィルタと、好ましくはより微細な汚染粒子の除去のための、好ましくは第166の実施形態に規定されるような第2の不織布フィルタと、活性炭フィルタと、第167の実施形態に規定されるようなメルトブロー型織地フィルタとを備え、これらのフィルタは、好ましくは、上記装置の使用中は、上記浄化される水がこの列挙した順番で上記フィルタを通過するように配置される。
複数のフィルタ、特にうまく選択された孔サイズと耐久性を有する粒子フィルタと、活性炭フィルタと、抗菌フィルタとを設けることにより、微生物だけではなく、粒子、臭気なども効率的に除去することができる。このように、ほとんどすべての淡水源からの原水を濾過により浄化することができる。さらに、異なるフィルタ特性を有する複数のフィルタにより、個々の特定のタイプの汚染物質を原水から除去することができる。本発明者等による実際の試験により、先の実施形態の文脈において規定される第1の不織布フィルタ、すなわち、7マイクロメートルから13マイクロメートルの範囲の孔サイズを有する第1の不織布フィルタを、他の実施形態の文脈において規定される第2の不織布フィルタ、すなわち3マイクロメートルから7マイクロメートルの範囲の孔サイズを有する第2の不織布フィルタの上流側に設けることにより、例えば、当該技術分野において知られている、活性炭からなる臭気フィルタの上流側に10マイクロメートルのフィルタだけを有する前置濾過装置と比べて、動作時間を著しく延ばすことができることが特に示された。
例えば、活性炭からなる臭気フィルタが粒子フィルタとして作用する場合、臭気フィルタが目詰まりを起こし、臭気フィルタの圧力低下が著しく上昇し、流量の低下を引き起こす。また、臭気フィルタから粒子を除去することは難しいため、フィルタの寿命が非常に短くなる。このように、第123の実施形態の文脈において規定される付加的な第2の不織布フィルタを設けることにより、活性炭フィルタの目詰まりを効果的に防止することができる。さらにまた、臭気フィルタよりも極めて簡単に第2の不織布フィルタを洗浄することができる。
上記の実施形態によるフィルタの好ましい配置は、水の流れ経路の方向に沿って以下の順序である。約10マイクロメートルの平均孔サイズの第1の不織布フィルタ/約5マイクロメートルの平均孔サイズの第2の不織布フィルタ/活性炭フィルタ/約1マイクロメートルの孔サイズのメルトブロー型織地フィルタ/抗菌フィルタ。
フィルタ構造(「キャンドル」):
第173の実施形態によれば、第160から第172の実施形態の装置において、キャビティの周囲に1以上のフィルタが配置され、上記装置の使用中に、上記浄化される水が上記1以上のフィルタのそれぞれを通過して上記キャビティに入るように又は上記キャビティから出るようなフィルタ構造を形成する。好ましくは、上記キャビティは、好適な透水性支持構造により、さらにより好ましくは、上記1以上のフィルタにより構成される。例えば、キャビティの周囲に上記フィルタ織地を巻き付けて上記フィルタを形成することができ、あるいは、上記フィルタ織地をスリーブ状にすることができ、この結果、上記フィルタ織地を上記キャビティに被せることができる。上記フィルタ織地をスリーブ状にした場合には、必要に応じてフィルタ織地を継ぎ目なく製造することができる。浄化される水を上記1以上のフィルタのそれぞれに案内することで、適切な水の浄化を確実なものとすることができる。
第174の実施形態によれば、第173の実施形態の装置において、上記装置の使用中に、上記フィルタ構造が濁りフィルタとして使用される場合には、上記浄化される水が上記1以上のフィルタを通過して上記キャビティに入るように、上記フィルタ構造が抗菌フィルタを含む場合には、上記浄化される水が上記1以上のフィルタを通過して上記キャビティから出るように、上記1以上のフィルタが配置される。上記フィルタ構造が濁りフィルタとして使用される場合に、浄化される水が1以上のフィルタを通過してキャビティに入るように浄化される水を案内することにより、上記キャビティの内部における粒子の沈降を防止することができる。このため、フィルタ構造が目詰まりから保護されるので、フィルタ構造の動作時間を延ばすことができる。さらに、粒子/濁りがフィルタ構造の外面に付着するので、フィルタ構造の洗浄が容易になる。例えば、浄水が1以上のフィルタを通過する間に、フィルタ構造のキャビティをフラッシュして、キャビティから出るように浄化済みの水を案内することにより、フィルタ内に付着した粒子又は上記フィルタに詰まった粒子を効果的にフィルタの外部に洗い流す(フラッシュ)ことができる。このように、濁りフィルタのキャビティを汚染されていない状態に維持することができる。
上記フィルタ構造が抗菌フィルタを含む場合に、浄化される水が1以上のフィルタを通過してキャビティから出るように浄化される水を案内することにより、上記フィルタ構造の最外層に抗菌フィルタを配置することが可能となる。このように、抗菌フィルタの有効表面を広げることができ、微生物の除去が向上する。さらに、抗菌フィルタがフィルタ構造の最外層である場合には、抗菌フィルタを含むフィルタ構造の周囲に浄化済みの水を集めることにより、抗菌フィルタの抗菌織地を浄化済みの水と接触させ続けることができる。このため、既に浄化済みの水と接触させ続けられる抗菌織地の少なくとも一部は、さらに水を浄化することができ、既に浄化済みの水の中の微生物の成長又は繁殖を防止することができる。
第175の実施形態によれば、第173又は第174の実施形態の装置において、上記フィルタ構造は、角柱又は円柱の形状を実質的に有しており、上記角柱の側面上又は上記円柱の湾曲側面上に上記1以上のフィルタがそれぞれ配置される。例えば包装により円柱又は角柱形状のフィルタ構造の側面の周囲にフィルタ織地を簡単に配置することができる。同様に、スリーブ状に製造される場合には、円柱又は角柱形状のフィルタ構造上にフィルタ織地を簡単に被せることができる。しかしながら、上記フィルタ織地を配置する他の方法も考えられる。角柱の側面又は円柱の曲面上にフィルタを配置することにより、大きなフィルタ表面を確保でき、このため流量も大きくなる。さらにまた、角柱及び/又は円柱の軸が垂直方向に向き、浄化される水がフィルタ構造のキャビティに入るかフィルタ構造のキャビティから出る場合には、粒子がフィルタの下部領域近傍に沈殿し、フィルタの上部領域が詰まってしまうリスクが減少する。
第176の実施形態によれば、第173から第175の実施形態の装置においては、上記フィルタ構造はカートリッジフィルタである。カートリッジフィルタは、表面積が大きいため、長期間にわたり大流量で動作することが可能となる。また、このタイプのフィルタは、浄化済みの水でフラッシュすることにより最も簡単に洗浄することができる。典型的には、カートリッジフィルタは、少なくともエンドキャップと、キャビティを形成する支持構造と、上記フィルタ織地とを提供する。簡単な構成であるため、カートリッジフィルタは安価である。さらに、カートリッジフィルタは最低限のメンテナンスで済む。典型的には、適切に動作させ続けるためには、カートリッジフィルタを単に洗い流す(フラッシュ)だけで十分である。
第177の実施形態によれば、第173から第176の実施形態の装置において、上記フィルタ構造は、開口を有し、上記装置の使用中は、上記浄化される水が上記1以上のフィルタを通過して上記キャビティに入る場合には、上記浄化される水が上記開口を通って上記フィルタ構造を出て、上記浄化される水が上記1以上のフィルタを通過して上記フィルタ構造を出る場合には、上記浄化される水が上記開口を通って上記フィルタ構造に入るように構成されている。上記開口は、水をキャビティの外部に又はキャビティの内部に案内する。さらに、使用中に、浄化される水が上記1以上のフィルタを通過してキャビティに入る、すなわち粒子がフィルタ構造の実質的に外側に付着する場合には、開口を介して水をフラッシュすることができるので、上記開口はフィルタの洗浄を容易にするものである。使用中に、浄化される水が1以上のフィルタを通過してフィルタ構造から出る場合には、上記開口を介して濾過された粒子を取り除くことができる。
第178の実施形態によれば、第177の実施形態の装置において、第175の実施形態に従属する場合には、上記開口は、上記角柱又は円柱の底面に配置されている。上記開口を上記角柱又は円柱の底面に配置することにより、上記角柱の側面又は上記円柱の曲面の全周にわたって1以上のフィルタのフィルタ織地を配置することが可能となる。このように、最大限のフィルタ表面を提供することができる。さらに、上記底面は、典型的には平坦面であり、この結果、例えば穿孔などにより上記開口を簡単に製造することができる。さらにまた、平面に形成された開口は、上記円柱の曲面などの曲面に形成された開口よりも簡単に封止することができる。
第179の実施形態によれば、第173から第178の実施形態の装置において、上記フィルタ構造の上記1以上のフィルタは、好ましくは初期の濁り除去のための、好ましくは第165の実施形態に規定されるような第1の不織布フィルタと、好ましくはより微細な汚染粒子の除去のための、好ましくは第166の実施形態に規定されるような第2の不織布フィルタと、活性炭フィルタと、第167の実施形態に規定されるような織地フィルタと、上記抗菌フィルタとを含み、これらのフィルタは、好ましくは、上記装置の使用中は、上記浄化される水がこの列挙した順番で上記フィルタを通過するように配置される。
複数のフィルタ、特に粒子フィルタと、活性炭フィルタと、抗菌フィルタとを設けることにより、上記の実施形態のいずれか1つによるフィルタ構造の利点に加え、微生物だけではなく、粒子、臭気なども効率的に除去することができる。特に、それらのフィルタ構造は、製造が容易で安価であり、洗浄/洗濯が容易である。上記の実施形態による上記フィルタの好ましい配置は、水の流れ経路の方向に沿って以下の順序である。約10マイクロメートルの平均孔サイズの第1の不織布フィルタ/約5マイクロメートルの平均孔サイズの第2の不織布フィルタ/活性炭フィルタ/約1マイクロメートルの平均孔サイズのメルトブロー型織地フィルタ/抗菌フィルタ。そのような設定により、上記フィルタ、特に上記抗菌フィルタが目詰まりしてしまうことを効果的に防止できることが示されている。このように、異なる孔サイズの既知のフィルタ配置と比べて、装置の総寿命及びフィルタの動作時間を延ばすことができる。
キャンドルが内側にある投入容器:
第180の実施形態によれば、第173から第179の実施形態の装置は、投入容器をさらに備え、上記装置の使用中に、上記浄化される水が上記投入容器から上記フィルタ構造の上記キャビティに入り、上記フィルタ構造を通って上記容器から出るように、上記フィルタ構造が上記投入容器の底部に配置され、上記投入容器の内側に突き出ている。内側に突き出るフィルタ構造を備えた投入容器は、浄化される水の濾過を容易にする。例えば、浄化される水を投入容器に単に充填するだけでよく、フィルタ上に再度注ぐ必要がない。さらにまた、砂のような粒子を濾過する前に投入容器の底に沈殿させることができる。このため、フィルタの目詰まりが生じるリスクが低減され、フィルタが長い期間にわたって動作可能となる。
キャンドルが外側にある投入容器:
第181の実施形態によれば、上記第173から第179の実施形態の装置は、投入容器をさらに備え、上記装置の使用中に、上記浄化される水が上記フィルタ構造の上記キャビティに入り、上記フィルタ構造の上記1以上のフィルタを通って上記フィルタ構造から出るように、上記フィルタ構造が上記投入容器の底部に配置され、上記投入容器の外側に突き出ている。
外側に突き出るフィルタ構造を備えた投入容器は、浄化される水の濾過の速度を上げる。外側に突き出る投入容器の底部にフィルタ構造を配置することで、フィルタ構造を動作させるための最大投入圧力を得ることができ、流量を大きくすることができる。この第138の実施形態は、好ましくは最も外側のフィルタにおける抗菌フィルタを含むフィルタ構造に特に好適である。このため、特に第131の実施形態に関して述べた利点が得られる。
キャンドルが内側と外側にある投入容器:
第182の実施形態によれば、第173から第178の装置は、投入容器をさらに備え、上記装置の使用中に、上記浄化される水が上記投入容器から上記内側フィルタ構造の上記1以上のフィルタを通って上記内側フィルタ構造の上記キャビティに入り、上記内側フィルタ構造の上記開口を通って上記内側フィルタ構造から出るように、第177の実施形態において規定される内側フィルタ構造が、上記容器の底部に配置され、上記容器の内側に突き出ており、上記装置の使用中に、上記浄化される水が上記外側フィルタ構造の上記開口を通って上記外側フィルタ構造の上記キャビティに入り、上記外側フィルタ構造の上記1以上のフィルタを通って上記外側フィルタ構造から出るように、第177の実施形態において規定される外側フィルタ構造が、上記容器の底部に配置され、上記容器の外側に突き出ており、上記内側フィルタ構造の上記開口は、上記外側フィルタ構造の上記開口と直接又は間接的に接続される。
本実施形態による配置は、先の実施形態の利点を組み合わせたものであり、濾過を促進し、フィルタの動作期間を長くし、流量を改善することができる。
第183の実施形態によれば、第182の実施形態の装置において、上記内側フィルタ構造の上記1以上のフィルタは、第164から第166の実施形態のいずれか1つにおいて規定される1以上の不織布フィルタと、第169から第171の実施形態のいずれか1つにおいて規定される活性炭フィルタとを含む。
先の実施形態のいずれか1つの文脈において規定される3マイクロメートルから16マイクロメートルの範囲の孔サイズを有する1以上のフィルタと活性炭フィルタとを含む内側フィルタ構造により、上述したように粒子及び臭気の除去が可能となり、続いて浄化される水が上記外側フィルタ構造に入る。このように、粗い粒子、濁り、及び汚染粒子を特に投入容器、内側フィルタ構造内にそれぞれ保持することができ、外側フィルタ構造に前置濾過水が供給され、外側フィルタ構造に目詰まりが生じることが防止される。これにより、フィルタ構造の寿命が長くなり、流量が改善される。さらにまた、活性炭フィルタの上流に1以上の不織布フィルタを設けることにより、多くの流量を確保しつつ、活性炭フィルタに目詰まりが生じることを防止することができる。活性炭フィルタを洗浄することは、1以上の不織布フィルタを洗浄することよりもずっと難しいので、この実施形態は好ましいものである。好適な孔サイズを選択することにより、活性炭フィルタの目詰まりを効果的に防止することができる。
第184の実施形態によれば、第183の実施形態の装置において、上記1以上の不織布フィルタは、第164又は第165の実施形態のいずれか1つにおいて規定される第1のフィルタと、好ましくは上記第1のフィルタの下流に配置され、第166の実施形態において規定される第2のフィルタとを含む。本実施形態によるフィルタ構成により、上記抗菌フィルタだけではなく、上記装置の上記少なくとも2つの粒子フィルタの目詰まりも防止することができる。特に、濁り及び例えば平均孔サイズが5マイクロメートルのより微細な汚染粒子の前置濾過を可能とする、先の実施形態の文脈において規定されるフィルタが、先の実施形態の文脈において規定される、平均孔サイズが例えば10マイクロメートルの第2のフィルタの上流に第1のフィルタを設けることにより、微細な砂及び/又はこれに類するものなどの粗い粒子で目詰まりを起こしてしまうことが効果的に防止されることが示されている。したがって、上記1以上の不織布フィルタの動作時間を延ばすことができ、1つの不織布フィルタだけを設けた場合と比べて、上記1以上の不織布フィルタを洗浄しなければならない頻度が減る。このように、上記1以上の不織布フィルタの総寿命を長くすることができ、流量を改善することができる。さらに、フィルタの目詰まりを防止することにより、流量が長い間にわたって本質的に安定した状態となり、浄水の安定供給を保証する。
第185の実施形態によれば、第183又は第184の実施形態の装置において、少なくとも最も外側の不織布フィルタは取り外し可能であり、好ましくはスリーブを形成するか、スリーブ上に配置される。取り外し可能な不織布フィルタは、フィルタ構造から分離することができるので、不織布フィルタの洗浄を容易にする。このため、汚染粒子のような汚染物質を、取り外し可能な不織布フィルタから効果的に除去することができる。さらに、取り外し可能な不織布フィルタが痛んでしまった場合には、フィルタ構造/装置全体を交換することなく、簡単に不織布フィルタを交換することができる。スリーブ形状の不織布フィルタは、キャビティの周囲にフィルタを再配置することを容易にする。このため、スリーブ形状の不織布フィルタを簡単にキャビティ又はフィルタ構造に被せることができる。さらにまた、スリーブ形状の不織布フィルタは、上記キャビティへの又は上記フィルタ構造への締まりばめを提供し、浄化される水が不織布フィルタの周囲に流れることを防止することができ、このため、適切な浄化が保証される。
第186の実施形態によれば、第182から第185の実施形態の装置において、上記外側フィルタ構造の上記1以上のフィルタは、第124の実施形態において規定されるメルトブロー型織地フィルタと、上記メルトブロー型織地フィルタの下流に配置された上記抗菌フィルタとを含む。
第一に、内側フィルタ構造によって、外側フィルタ構造が粒子で目詰まりしてしまうことから保護される。さらに、外側フィルタ構造に設けられた、第119及び第124の実施形態に関して述べた利点を有するメルトブロー型織地フィルタは、例えば非常に微細な粒子で目詰まりしてしまうことから抗菌フィルタを保護する。このように、非常に効果的な前記濾過により、浄化される水に含まれる粒子によって抗菌フィルタがダメージを受けることがない。さらにまた、当該分野において知られているフィルタと比べて、メルトブロー型織地フィルタは、メルトブロー型フィルタ織地を通過する水を、特に水がメルトブロー型織地を出るときに再度方向付け、このため、水が極めてより非層流の形態(すなわち、より乱流の形態)で抗菌フィルタを通過し、この結果、水は、好ましくは抗菌フィルタの半径方向厚さよりも大きな距離だけ抗菌フィルタ中を移動する。したがって、水が繰り返し抗菌フィルタに接触し、抗菌フィルタの浄化効果が改善される。
第二に、外側フィルタ構造に設けられたメルトブロー不織布フィルタは、従来技術において用いられていたステープル不織布フィルタ及び/又はスパンボンド不織布フィルタと比べて、機械的耐久性が非常に上がったことを示した。
第187の実施形態によれば、第180又は第182から第186の実施形態の装置において、上記フィルタ構造が、上記投入容器の底面から上部に達する。
第188の実施形態によれば、第180から第187の実施形態の装置において、上記装置の使用中に、上記浄化される水が粗フィルタを通って上記投入容器に入るように、上記投入容器の上部に粗フィルタが配置される。この粗フィルタは、粗い粒子が投入容器に入ることを防止する。このため、容器内の粒子の沈殿を防止することができ、さらに考えられるフィルタの目詰まりのリスクを低減することができる。
第189の実施形態によれば、第188の実施形態の装置において、上記粗フィルタは、カップ状構造により保持された面フィルタであり、好ましくは円形断面を有し、好ましくは上記面フィルタを着脱自在に受け入れる実質的に平坦な底面を有する。カップ状構造によって保持されることにより、好ましくは実質的に平坦な底面を有するカップ状構造に対する粗フィルタの締まりばめが提供され、浄化される水が粗フィルタの周囲を流れ投入容器に流れ込むことを防止することができる。さらに、締まりばめを提供することにより、例えばカップ状構造に注がれた水により粗フィルタが変位しにくくなる。カップ状構造は、好ましくは、所定量の浄化する水を受け入れる形状となっており、浄化される水を永遠に再度注ぐ必要がない。さらに、カップ状構造は、好ましくは、平坦な底面と反対側の前端上にカラーを提供し、浄化される水がカップ状構造の周囲に流れて投入容器に流れ込むことが防止される。上記カラーは、カップ状構造が偶然に投入容器内に落ちてしまうことをさらに防止する。さらにまた、カップ状構造を受け入れる投入容器の開口に対してだけではなく面フィルタに対しても円形断面を有するカップ形構造をより簡単に封止することができる。従来技術において使用されているバッグ形状のフィルタのような他の形状の粗フィルタに比べて、より簡単に面フィルタを取り外し、また設置することができることを試験が示している。さらに、平坦面を有する面フィルタを設けることにより、バッグ形状のフィルタに比べてフィルタの洗浄が容易になる。
第190の実施形態によれば、第180から第189の装置において、貯蔵容器をさらに備え、上記投入容器は上記貯蔵容器の上方に配置される。貯蔵容器を設けることにより、上記浄水を安全に貯蔵することができ、この水の新たな汚染を防止することができる。さらに、貯蔵容器の上方に投入容器を配置することにより、重力に基づく好ましい水の流れ経路を維持することができ、好ましくは、浄化済みの水を貯蔵容器に案内するのに付加的なエネルギーを必要としない。さらにまた、貯蔵容器の上方に投入容器を配置することにより、流れ経路の長さを最小限にして、新たな汚染を低減することができる。
第191の実施形態によれば、第190の実施形態の装置において、上記貯蔵容器はタップを含む。タップにより、貯蔵容器を開けることなく、貯蔵容器から浄水を注ぎ出すことができる。このように、浄水を取り出す間の新たな汚染のリスクをなくすことができる。
第192の実施形態によれば、第190又は第191の実施形態の装置において、上記投入容器及び上記貯蔵容器は着脱自在に接続される。投入容器と貯蔵容器との間の着脱自在な接続により、容器の洗浄及びフィルタ構造、フィルタ織地それぞれの取り外しが容易になる。
第193の実施形態によれば、第190から第192の実施形態の装置において、上記容器の寸法は、上記容器を分解した際に、上記貯蔵容器の開口を通じて上記投入容器を上記貯蔵容器の内部に置けるような寸法となっている。このため、充填寸法を小さくすることができ、移送や発送が容易になり、運送コストを削減することができる。
第194の実施形態によれば、第190から第193の実施形態の装置において、上記投入容器と貯蔵容器との間に、好ましくは上記貯蔵容器の開口の上縁部から遠ざかるように上記投入容器の外面上を流れ落ちるように水を案内する形状とされた支持リング及び/又はシールリングをさらに備える。支持リング及び/又はシールリングを用いて投入容器と貯蔵容器とを接続することにより、これらの構成要素間の締まりばめが実現され、汚染粒子及び/又は微生物のような汚染物質が貯蔵容器に入ることが防止される。さらに、支持リング及び/又はシールリングを用いることにより、例えば、投入容器と貯蔵容器の封止面の角度のずれ、半径のずれ、高さのずれ、平坦性のずれなどのずれを上記支持リング及び/又はシールリングによって補償することができるので、投入容器と貯蔵容器との間の封止が著しく改善される。さらに、支持リング及び/又はシールリングの形状を、貯蔵容器の開口の上縁部から遠ざかるように投入容器の外面上を流れ落ちるように水を案内する形状にすることにより、未浄化の水で浄化済みの水が再汚染されることを防止することができる。例えば、浄化される水がこぼれて正しく投入容器及び/又はカップ状構造に入らなかった場合に、水が投入容器の外面上を流れ落ちる。
第195の実施形態によれば、第190から第194の実施形態の装置において、上記装置の使用中に上記抗菌作用を有する織地は、上記貯蔵容器内に集められた水と接触する。抗菌作用を有する織地を貯蔵容器に集められた水と接触させることにより、抗菌作用を有する織地が、集められた水をさらに浄化できるようになり、集められた水の中の微生物の成長又は繁殖を防止できるようになる。集められた水が、例えば貯蔵容器に偶然入った未浄化の水によって(少なくともわずかにでも)再汚染された場合であっても、抗菌作用を有する織地は、集められた水を再浄化できる。
第196の実施形態によれば、第180から第195の実施形態の装置において、第180から第182又は第190の実施形態のいずれか1つにおいて規定される容器の容量は、1リットルから25リットルの範囲にある。
第197の実施形態によれば、第180から第196の実施形態の装置において、水の流量は、1時間当たり1リットルから10リットル、好ましくは1時間当たり2リットルから6リットルの範囲にある。WHOは、60kgの1人の大人に対して1日約2リットル、体重10kgの1人の子供に対して1リットルの飲み水が必要であると示している。このため、1リットルから25リットルの容積で、上記実施形態において規定される流量の容器を装置に設けることにより、大家族にまで浄水を供給することができる。
第198の実施形態によれば、第180から第197の実施形態の装置において、第180から第182又は190の実施形態のいずれか1つにおいて規定される容器は、食品用のポリエチレンテレフタレート(PET)からなる又は食品用のポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
PETは、水及び湿気に対して優れたバリア特性を持っており、したがって、水の容器として非常に好適である。さらに、PETは透明であり、容器における目に見える汚染を簡単に発見することができる。PETは、半硬質から硬質の特性を持っているので、PET製容器は、ガラス容器に比べて、耐久性があり、破壊耐性がある。さらに、PETは重量が軽いため、装置を簡単に移動することができる。
第199の実施形態によれば、第160から第198の実施形態の装置において、上記装置は、電気を必要とすることなく重力に基づいて動作する。このため、上記装置は、どこでも使用することができ、既存のインフラに依存しない。発展途上国における使用、特に家庭のような小さな組織ユニットにおける使用が可能である。
コミュニティシステム:
本発明の第200の実施形態は、好ましくは濁りを除去するためのモジュールと、好ましくはフッ化物を除去するためのモジュールと、臭気を除去するためのモジュールと、好ましくは素を除去するためのモジュールと、好ましくは水を軟化させるためのモジュールと、好ましくはより微細な汚染粒子を除去するためのモジュールと、好ましくはシスト及び/又は微細汚染粒子を除去するためのモジュールと、微生物を除去するためのモジュールとを備えた、水を浄化するためのシステムであり、上記モジュールは、上記システムの動作中に、浄化される水が上記モジュールを通過するように、好ましくはこの列挙した順番で配置される。
複数のモジュール、微生物を除去するためのモジュールだけではなく、特に濁りを除去するためのモジュール及び臭気を除去するためのモジュールを設けることにより、微生物だけではなく、粒子や臭気などの除去も可能となる。ほとんどすべての淡水源からの原水を濾過により浄化することができる。さらに、異なる除去特性を有する複数の異なるモジュールにより、異なるタイプの特定の汚染物質を原水から除去することが可能となる。このため、上記システムは、動作のそれぞれの現場における特定の環境状態に適用可能である。
第201の実施形態によれば、第200の実施形態のシステムにおいて、上記モジュールのうち1つ、いくつか又はすべてが別個のハウジングに収容される。モジュールに対して別個のハウジングを設けることにより、システムのモジュール構造が維持される。好ましくは、単一のモジュールは、パイプライン又はチューブを介して接続される。このため、例えば、浄化される水がヒ素やフッ化物により汚染された場合に必要となる任意的なモジュールを、好ましくは少なくとも濁りを除去するためのモジュールと臭気を除去するためのモジュールと微生物を除去するためのモジュールとを含む基本システムに簡単に追加することができる。
第202の実施形態によれば、第201の実施形態のシステムにおいて、上記濁りを除去するためのモジュールは、好ましくはマルチグレード砂を含む圧力砂濾過器である。圧力砂濾過器は、典型的には、好ましくは小石と砂利を含む層によって支持される珪砂を含み、好ましくは投入された水を上記圧力砂濾過器の断面全体に均一に分配する上部デュストリビュータをさらに含む。投入された原水は濾過器を好ましくは下方に流れ、その後排水管に案内される。小さな砂粒子により表面積が増え、フィルタ特性が向上し、その結果、好ましくは10マイクロメートル未満の粒径を有し、より好ましくは5マイクロメートル未満の粒径を有する微細な粒子を除去することができる。マルチグレード砂は、異なるサイズとグレードの砂粒子を含み、これによりフィルタ特性を調整することができる。好ましくは、異なるサイズとグレードの砂粒子は、別個の層に配置され、これにより、濾過される汚染粒子が濾過器の異なる層で除去される。これにより、濾過器の目詰まりが防止され、動作時間が延びる。さらに、上記砂濾過器は、大きな流量と小さな圧力損失を提供する。
第203の実施形態によれば、第200から第202の実施形態のシステムにおいて、上記フッ化物を除去するためのモジュールは、樹脂を含む。上記樹脂をベースとするモジュールは、好ましくは活性アルミナ、処理済みゼオライト及び/又はこれに類するもののような樹脂を含む。ゼオライトは、微細孔を有するものであり、吸収特性が良い。活性アルミナも多孔質材料であり、例えばグラム当たり200平方メートルを大きく超える表面積を有している。活性アルミナは、浄水システムにおけるフッ化物、ヒ素、及びセレニウムに関するフィルタ特性が良い。上記フッ化物などの化学物質の除去は、イオン交換に基づいており、したがって、電力に依存するものではない。
第204の実施形態によれば、第200から第203の実施形態のシステムにおいて、上記臭気を除去するためのモジュールは、粒状化活性炭を含む活性炭フィルタを含む。活性炭フィルタは、吸着又は化学反応のために利用される表面積を増加させる小さな低容積の孔を提供する。このため、浄化される水の味と臭気を効果的に除去することができる。好ましくは、味や臭気に影響を与える有機化合物が濾過される。このため、特に、塩素及びヨウ素残留物、洗剤、ラドン、多くの農薬などの人工的な有機薬品、及び塗料用シンナーなどの揮発性有機薬品を除去することができる。
粒状化活性炭は、粉状活性炭に比べて比較的大きな粒子サイズを有し、その結果、外表面が小さくなる。このため、粒状化活性炭は、表面積に対する粒子サイズのバランスが良く、圧力低下特性とともに好適なフィルタ特性を提供する。
第205の実施形態によれば、第200から第204の実施形態のシステムにおいて、上記濁りを除去するためのモジュール上記フッ化物を除去するためのモジュール及び/又は上記臭気を除去するためのモジュール及び/又は上記ヒ素を除去するためのモジュール及び/又は上記水を軟化させるためのモジュールは、好ましくはガラス繊維強化プラスチックからなり、好ましくは逆流洗浄システムを有する別個のキャニスターにより構成される。
別個のキャニスターは、必要に応じて単一のキャニスターを組み合わせて配置することができるので、上記システムのモジュール性を維持する。ガラス繊維強化プラスチックからなるキャニスターは、軽量であるが、機械的安定性が良い。このように、上記システムは移送しやすく、道路へのアクセスのない領域のようにたどり着きにくい領域にも設置することができる。逆流洗浄システムにより、それぞれのモジュールのそれぞれのフィルタを洗い流す(フラッシュ)ことができ、システムの寿命を延ばすことができる。逆流洗浄水は、浄水中の流れ経路とは反対方向にフラッシュされる。逆流洗浄は、システム全体に対して行うことも、それぞれの単一のモジュールに対して行うこともできる。このため、粒子や濾過された汚染物質をモジュールから効果的に除去し、システムから取り除くことができる。
第206の実施形態によれば、第200から第205の実施形態のシステムにおいて、上記より微細な汚染粒子を除去するためのモジュールは、第164から第166の実施形態のいずれか1つにおいて規定される粒子フィルタを含む。先の実施形態の文脈において規定されるような3マイクロメートルから16マイクロメートルの孔サイズを有する粒子フィルタは、砂や微細な砂、微細な汚染粒子、沈殿物及び/又はこれに類するもののような粗い粒子の濾過を可能とし、初期濁り除去フィルタとして作用する。
第207の実施形態によれば、第200から第206の実施形態のシステムにおいて、上記シスト及び/又は微細な汚染粒子を除去するためのモジュールは、第167の実施形態において規定される粒子フィルタを含む。第124の実施形態による孔サイズ、すなわち、好ましくは、0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲の孔サイズ、最も好ましくは約1マイクロメートルの平均孔サイズを有するフィルタは、非常に微細な汚染粒子だけではなく、シスト又は他の単細胞生物を濾過することができる。第124の実施形態による粒子フィルタを抗菌フィルタの上流で用いる場合には、抗菌フィルタの目詰まりを効果的に防止することができる。第124の実施形態による微細な孔サイズに対しては、特に、不織布の孔サイズ及び/又は初期粒子フィルタ特性が粒子フィルタの寿命にわたって本質的に安定したままであるので、メルトブロー不織布が好ましい。
第208の実施形態によれば、第200から第207の実施形態のシステムにおいて、上記微生物を除去するためのモジュールは、好ましくは第139から第154の実施形態のいずれか1つによる抗菌作用を有する織地を含む。
第209の実施形態によれば、第208の実施形態のシステムにおいて、上記微生物を除去するためのモジュールは、抗菌作用を有する織地の上流に配置される、第167の実施形態に規定される粒子フィルタをさらに含む。抗菌作用を付与するために、微生物に汚染された水は、抗菌作用を有する織地と接触しなければならない。これにより、微生物を死滅させ及び/又は無害にし、上記微生物を除去するためのモジュールを出るときには水が浄化される。
第210の実施形態によれば、第208又は第209の実施形態のシステムにおいて、上記微生物を除去するためのモジュールは、第173から第178の実施形態のいずれか1つにおいて規定されるフィルタ構造を含み、上記抗菌作用を有する織地は、上記フィルタ構造の上記1以上のフィルタのうちの1つであり、収容パイプを含み、上記システムの運転中は、浄水される水が上記フィルタ構造に入り、上記抗菌作用を有する織地を通過し、上記収容パイプにより集められ、上記収容パイプの流出口を通って上記収容パイプから出る。そのような設定は、先の実施形態の利点を収容パイプの利点に組み合わせるものである。
第211の実施形態によれば、第210の実施形態のシステムにおいて、第209の実施形態に従属する場合に、第167の実施形態において規定される上記粒子フィルタは、上記フィルタ構造の上記1以上のフィルタのうちの1つである。これにより、上記実施形態を参照して述べた相乗効果が得られる。
第212の実施形態によれば、第200から第211の実施形態のシステムにおいて、水の流量が、1時間当たり20リットルから100リットルの範囲である。
第213の実施形態によれば、第200から第211の実施形態のシステムにおいて、水の流量が、1時間当たり100リットルから2500リットルの範囲である。
水の流量をそのような範囲とすることで、学校及び/又は工場、道路、小さな集落又は区域のような、より大きな組織に浄水を供給することが容易になる。
第214の実施形態によれば、第200から第213の実施形態のシステムにおいて、上記システムは、電気を必要とすることなく重力に基づいて動作する。電気を必要とすることなく重力に基づいて動作させることで、上記システムをどこでも使用することができ、上記システムは既存のインフラに依存しない。このため、発展途上国における使用が可能である。
第215の実施形態によれば、第200から第214の実施形態のシステムにおいて、上記システムの動作中に、上記システムの要素中を水が流れるのに必要な投入圧力は、2.5バール未満、好ましくは2.0バール未満、より好ましくは1.5バール未満である。上記必要とされる投入圧力により、付加的なポンプなしで、したがって電気を使うことなくシステムを動作させることができる。2.5バールの投入圧力は、およそ2.5メートルの水柱に相当する。このため、最初のモジュールの入口の上方2.5メートルに配置された原水貯蔵容器により、システムを運転させるための十分な投入圧力を提供することができる。したがって、電気のような既存のインフラから独立してシステムを運転することができる。
布地材料を含む水フィルタ:
本発明の第216の実施形態は、第139から第154の実施形態のいずれか1つの布地材料、特に第127の実施形態の方法により得られる布地材料を濾過材として含む水フィルタである。
第217の実施形態によれば、第216の実施形態の水フィルタは、汚染物質を除去するための付加的なフィルタを含む。
第218の実施形態によれば、第216又は第217の実施形態の水フィルタは、電気を必要とすることなく、重力又は投入水圧力によってのみ動作可能である。
第219の実施形態によれば、第216から第218の実施形態の水フィルタにおいて、上記水フィルタは、第160から第199の実施形態のいずれか1つにおける水を浄化するための装置又は第200から第215の実施形態のいずれか1つにおける水を浄化するためのシステムである。
第220の実施形態によれば、第216から第219の実施形態の上記水フィルタは、
通常の動作で上記フィルタを通過する水に含まれる大腸菌ATCC 25922及び/又はコレラ菌ATCC14035細菌の数を、99.9%以上、好ましくは99.99%以上、より好ましくは99.999%以上、最も好ましくは99.9999%以上低減でき、
通常の動作で上記フィルタを通過する水に含まれるクロストリジウム・ディフィシレATCC 43598胞子の数を90%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上、最も好ましくは99.99%以上低減でき、及び/又は
通常の動作で上記フィルタを通過する水に含まれるシストの数を90%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上低減できる。
以下では、本発明の好ましい実施形態が以下の図を参照して述べられる。
図1は、本発明の一実施形態による布地材料を製造するプロセスを示すフローチャートである。
図2は、本発明の一実施形態によるテンタの模式的設定を示している。
図3〜図5は、本発明のある例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図3は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての布地材料の破断強さを示している。
図3〜図5は、本発明のある例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図4は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての細菌の減少を示している。
図3〜図5は、本発明のある例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図5は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての抗菌剤の浸出を示している。
図6〜図8は、本発明の他の例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図6は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての布地材料の破断強さを示している。
図6〜図8は、本発明の他の例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図7は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての細菌の減少を示している。
図6〜図8は、本発明の他の例示的な実施形態の性能測定データを示しており、図8は、吸尽プロセス中の吸尽時間及び液剤の温度の関数としての抗菌剤の浸出を示している。
図9〜図12は、本発明の異なる例示的な実施形態により達成される細菌の測定減少量を示している。
図9〜図12は、本発明の異なる例示的な実施形態により達成される細菌の測定減少量を示している。
図9〜図12は、本発明の異なる例示的な実施形態により達成される細菌の測定減少量を示している。
図9〜図12は、本発明の異なる例示的な実施形態により達成される細菌の測定減少量を示している。
図13は、本発明のある例示的な実施形態において測定された浸出性能を示している。
図14は、本発明の他の例示的な実施形態において測定された浸出性能を示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図15A〜図15C及び図15D〜図15Fは、個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図16A及び図16Bは、80℃の吸尽プロセス温度における個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図16A及び図16Bは、80℃の吸尽プロセス温度における個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図17A及び図17Bは、60℃の吸尽プロセス温度における個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図17A及び図17Bは、60℃の吸尽プロセス温度における個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図18A及び図18Bは、溶液付与量が多い場合の個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図18A及び図18Bは、溶液付与量が多い場合の個々の抗菌剤の性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図19A及び図19Bは、綿織地及びポリエステル織地における個々の抗菌剤の性能結果をそれぞれ示している。
図19A及び図19Bは、綿織地及びポリエステル織地における個々の抗菌剤の性能結果をそれぞれ示している。
図20A及び図20Bは、異なるキュアリング温度に対する織地の性能及び引っ張り強さを示している。
図20A及び図20Bは、異なるキュアリング温度に対する織地の性能及び引っ張り強さを示している。
図21A及び図21Bは、異なるキュアリング時間に対する180℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図21A及び図21Bは、異なるキュアリング時間に対する180℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図22A及び図22Bは、キュアリング時間に対する170℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図22A及び図22Bは、キュアリング時間に対する170℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図23A及び図23Bは、キュアリング時間に対する190℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図23A及び図23Bは、キュアリング時間に対する190℃での性能及び浸出結果をそれぞれ示している。
図24A及び図24Bは、キュアリング温度が180℃のときの綿及びポリエステルの性能結果をそれぞれ示している。
図24A及び図24Bは、キュアリング温度が180℃のときの綿及びポリエステルの性能結果をそれぞれ示している。
図25A及び図25Bは、キュアリング温度が180℃のときの100GSM綿及び300GSM綿の性能結果をそれぞれ示している。
図25A及び図25Bは、キュアリング温度が180℃のときの100GSM綿及び300GSM綿の性能結果をそれぞれ示している。
図26A及び図26Bは、キュアリング温度が180℃のときの100GSMポリエステル及び300GSMポリエステルの性能結果をそれぞれ示している。
図26A及び図26Bは、キュアリング温度が180℃のときの100GSMポリエステル及び300GSMポリエステルの性能結果をそれぞれ示している。
図27A及び図27Bは、パディングプロセスにより得られる布地の性能及び浸出結果を示している。
図27A及び図27Bは、パディングプロセスにより得られる布地の性能及び浸出結果を示している。
図28A及び図28Bは、抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図28A及び図28Bは、抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図29A及び図29Bは、付与量が多い場合の抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図29A及び図29Bは、付与量が多い場合の抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図30A及び図30Bは、パディングプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図30A及び図30Bは、パディングプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図31A及び図31Bは、パディングプロセスと後洗浄における抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図31A及び図31Bは、パディングプロセスと後洗浄における抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図32A及び図32Bは、吸尽とパディングの2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図32A及び図32Bは、吸尽とパディングの2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図33A及び図33Bは、吸尽に続いて洗浄しその後パディングを行う2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図33A及び図33Bは、吸尽に続いて洗浄しその後パディングを行う2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図34A及び図34Bは、吸尽に続いてパディングを行いその後洗浄する2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図34A及び図34Bは、吸尽に続いてパディングを行いその後を洗浄する2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図35A及び図35Bは、吸尽に続いて洗浄しその後パディングを行い続いて再洗浄する2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図35A及び図35Bは、吸尽に続いて洗浄しその後パディングを行い続いて再洗浄する2サイクルプロセスにおける抗菌剤の混合物の性能及び浸出結果を示している。
図36は、本発明に係る8つの例を製造するためのレシピを特定する表である。
図37は、図36の表の8つの例のうち7つに対する浸出試験及び抗菌性能試験の結果を示す表である。
図38は、図37の表に示された性能試験の結果を可視化したグラフである。
図39は、本発明に係る10の例を製造するためのレシピといくつかの浸出及び性能試験結果を特定する表である。
図40は、水を浄化するための装置の分解図である。
図41は、水を浄化するための装置の模式的側断面図である。
図42Aは、粗フィルタ構造の模式的側断面図である。
図42Bは、図42Aに示される粗フィルタ構造の上面図である。
図43は、第1のフィルタ構造の模式的側断面図である。
図44は、第2のフィルタ構造の模式的側断面図である。
図45は、支持リング及び/又はシールリングの模式的断面図である。
図46は、水を浄化するためのシステムの模式的系統図である。
図47は、微生物を除去するためのモジュールの模式的断面図である。
好ましい実施形態の詳細な説明
布地材料に抗菌性を付与するプロセス
図1は、本発明の一実施形態における布地材料に抗菌性を付与するプロセス10のステップを示している。本明細書において使用される「布地材料に抗菌性を付与する」という用語は、布地に抗菌特性を与えること、又は布地の抗菌特性を改善することを意味する。一般的に、任意の布地材料を上記プロセス10により処理することが可能であり、この布地材料は、繊維、好ましくは糸又は織地であり、最も好ましくは織地である。布地材料が織地である場合、一般的に、例えば100、200、又は300g/m2のような任意の比重量、すなわち織物重量を有し得る。
図1のプロセス10は、第1のプロセスサイクル10aと任意的な第2のプロセスサイクル10bという2つのプロセスサイクルに分けることができる。両方のプロセスサイクルでは、液剤付与プロセスを用いて布地材料を処理する。液剤は布地に付与する薬品を含んだ液体である。本発明においては、液剤は、1以上の抗菌剤を含んでいる。液剤付与プロセスは、布地を液剤に接触させてこの布地を薬品で処理するプロセスである。本発明のプロセスサイクルのそれぞれにおける液剤付与プロセスの後に布地材料を熱処理する。好ましくは、熱処理後に布地材料を洗浄し、その後、好ましくは乾燥させる。
第1のプロセスサイクル10aの液剤付与プロセス11は、パディングプロセス又は他の液剤付与プロセスであってもよいが、好ましくは吸尽プロセスが用いられる。当該技術分野において知られているように、吸尽プロセス中は、布地材料を、吸尽プロセス中に対象物に移送される成分を含む液剤と接触させる。これは、液剤が充填された容器に布地材料を案内することにより行うことができる。糸及び織地は、典型的には、吸尽プロセスで処理される。一般的な吸尽プロセスにおいては、必要とされる材料−液剤比で、布地材料に付与される薬品が溶媒、例えば水の中に溶解又は拡散される。材料−液剤比は、処理される布地の重量と液剤の重量との間の比である。例えば、所望の材料−液剤比が1:2である場合、吸尽される布地材料300kgに対して液剤は600kgとなる。例えば、布地材料を液剤に浸漬することにより布地材料を液剤に接触させ、これにより、薬品が好ましくは繊維に接触し、より好ましくは繊維内に入っていく。薬品の適切な拡散と薬品の繊維内への適切な浸透のために、運動学上及び熱力学上の反応が必要とされているように起こるように、それぞれの液剤温度とそれぞれの吸尽時間が設定される。布地材料とその繊維が薬品を吸収するので、液剤内の薬品の濃度は下がる。当該技術分野において知られているように、経過時間の関数としての液剤吸尽の程度は、吸尽プロセスの程度と呼ばれる。プロセスの最後には布地上で吸尽されるが最初に液剤に存在していた薬品の割合は、吸尽率(exhaustion rate)又は排出率(exhaust rate)と呼ばれる。本発明によれば、吸尽プロセスの液剤は、1以上の抗菌剤を含んでいる。以下では、液剤についての詳細な説明がなされる。好ましくは、室温よりも高い周囲温度の雰囲気下で吸尽プロセス11がなされる。
第1のプロセスサイクルにおいて吸尽プロセスを用いることは、第1のプロセスサイクルの後にさらなるプロセスサイクル、以下に述べる第2の抗菌プロセスサイクル又は親水性や疎水性のような他の特性を布地に与えるプロセスサイクルがある場合に特に利点がある。これは、吸尽プロセスにおいては、布地が開き、繊維が個々に抗菌剤による浸透に曝されるからである。これは、マルチフィラメント糸又はマルチフィラメント糸からなる織地については特に当てはまる。マルチフィラメント糸又はマルチフィラメント糸からなる織地は、強くて、表面積が大きく、混合可能であるので、多くの用途に対して好まれる。このように、吸尽プロセスを利用することにより、薬剤が、繊維の中に拡散していくことができ、パディングや噴霧のようなより表面的な液剤付与プロセスの場合ほどには繊維の表面空間を占有しない。したがって、第1のプロセスサイクルにおいて放出プロセスを利用することにより、第2の抗菌プロセスサイクル、特にパディングプロセスを使用する第2のプロセスサイクルが抗菌性能を改善することが可能となり、あるいは、さらなるプロセスサイクルにおいて他の機能的な薬剤を布地に付与することが可能となる。これに対して、反復してパディングを適用するように反復して表面に液剤を付与しても、性能が改善されることはなく、少なくとも同程度には性能が改善されることはない。さらに、本発明者等は、第1のプロセスサイクルにおいて放出が用いられた場合にはじめて浸出が最も低い値になることを見出した。他方、不織布の場合は、不織布はジガーのような放出装置が及ぼす力に耐えられないことが多いので、放出は好ましくない場合がある。
吸尽プロセス11を任意の好適な技術によって、糸染色装置、ビーム装置、ウィンチ装置、ジェット染色機、連続染色機(CDR)、連続漂白機(CBR)、又はジガー装置のような任意の好適な装置上で行ってもよい。ジガー装置においては、拡布織地が2つのメインローラ上を回転する。織地は、1つのローラから装置の底部で液剤浴槽を通過し、その後、別の側にある被駆動テークアップローラに送られる。織地のすべてが浴槽を通過したときに、方向が転換される。それぞれの経路はエンドと呼ばれる。このプロセスは、典型的には、偶数個のエンドを伴うものである。液剤浴槽は、1以上のガイドローラを有し、その周囲を布が移動する。浸漬中にプロセス液剤との所望の接触がなされる。液剤浴槽を通過する際に、織地は適切な量の液剤を取り込み、余分な液剤は吸尽されるが、依然として十分な量が織地内に保持される。ローラの回転中に、液剤に含まれる薬剤が織地に浸透して拡散する。ある時点では非常に短い長さの織地のみが液剤浴槽内に存在し、織地の多くの部分はローラ上にあるので、拡散プロセスの最も多くの部分は、液剤浴槽内ではなく、織地がローラ上にあるときに起こっている。ジガー装置は非常に経済的であり、また、材料−液剤比を高くして使用することができるので、ジガー装置が好まれる。
吸尽プロセス11により、好ましくは液剤に接触しない布地材料の部分が生じないように布地材料の断面全体にわたって液剤が均等に広がる。この結果、このときに、布地材料と1以上の抗菌剤との間で相互作用及び/又は結合が生じ得る。好ましくは、液剤の抗菌剤の多くは布地材料の断面全体に均等に吸尽される。好ましくは、吸尽プロセスの放出率は75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であり、最も好ましくは布地材料が吸尽液剤に含まれる抗菌剤の約95%を取り込む。この放出率により、液剤の成分の多くが布地材料によって吸尽されるので、コストを低減することが可能となる。また、取込率の低いプロセスに比べてよりエコロジカルである。
概して、織地上に多くの熱を加えると結合に良い。したがって、好ましくは、液剤中の1以上の抗菌剤が吸尽プロセスの結果として布地材料の断面にわたって実質的に均一に拡散されるように、吸尽プロセス中の液剤の温度を十分に高くし、吸尽時間も十分に長くする。このように、好ましくは布地材料に十分に浸み込み、抗菌剤が布地材料全体にわたって拡散するように、液剤の温度を十分に高くし、吸尽時間を十分に長くすべきである。好ましくは、以下に概説するように、それぞれのキュアリングプロセスの後に布地材料が所望の抗菌性能を発揮できるように、吸尽時間を十分に長く、吸尽プロセス中の液剤の温度を十分に高くする。
しかしながら、過度の熱は、黄変を引き起こし、織地を弱くしてしまう。したがって、好ましくは、吸尽プロセスの結果として、布地材料が変色しないように及び/又は黄色にならないように及び/又はその破断(引っ張り)強さが15%を超えて、好ましくは10%を超えて、より好ましくは7%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しないように、吸尽プロセス中の液剤の温度を十分に低くし、及び/又は吸尽時間を十分に短くする。当該技術分野において知られているように、過度の熱は布地材料の黄変を招く。この黄変は好ましいものではない。したがって、液剤の温度は高すぎてはいけない。温度が高すぎると、形成される蒸気が多くなりすぎ、プロセスの効率が下がってしまう。さらに、液剤の温度が高すぎると、液剤浴槽内で乱流が発生することが考えられ、布地材料が傷つく可能性がある。また、吸尽時間が増えると、布地材料が弱くなり得る、すなわちその破断強さが低下し得る。
吸尽時間という用語は、本発明の文脈において使用される場合には、好ましくは、布地材料の全体バッチのうちの少なくとも一部が初めて液剤と接触した時点からそのバッチの最後の部分が液剤から取り出されるときまでの期間として定義される。与えられた用途に対して、理想的な吸尽時間は大きく変わり得る。布地が織地である場合には、理想的な吸尽時間は、装置の種類、液剤浴槽のサイズ、及び織地の長さと重量に依存する。例えば、長さ1,500メートルの織地に対する理想的な吸尽時間が60分である場合、3,000メートルの織地に対する理想的な吸尽時間は、他の点で同一の条件であると100分になり得る。本明細書において吸尽時間が特定される場合には、吸尽時間とは、長さ1,500メートル、重量200g/m2の織地についての、標準的な織地速度(例えば50メートル/分)で動作される標準的なジガー装置(例えばYamuda社製モデル番号Y1100)での吸尽時間と等価な時間をいう。任意の与えられた布地材料と放出装置に対して、当業者は、一般技術常識を用いれば、上述したパラメータに対して特定される吸尽時間に等価な吸尽時間を決めることができるであろう。
破断強さは任意の好適な手法を用いて測定することができ、好ましくはASTM規格D 5035-11により(布地材料が織地の場合)又はASTM規格D 2256/D 2256M-10e1により(布地材料が糸の場合)測定される。
好ましい一実施形態においては、吸尽プロセスの液剤は、45℃以上、特に50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上、最も好ましくは約80℃以上の温度を有する。このように、吸尽プロセス11中の液剤の温度が十分に高いことは理解できよう。好ましくは、吸尽プロセス中、液剤は、沸点温度以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、特に85℃以下、最も好ましくは約80℃以下の温度を有している。このように、吸尽プロセスの液剤の温度が十分に低いことが理解できよう。吸尽プロセス中の液剤の温度は約80℃であり、これにより、後に概説するように、特に有利な効果が得られる。本明細書において吸尽液剤の最低温度が規定されるときは、すべての吸尽プロセス中にその最低温度が維持されなければならないということを意味するものではない。本明細書において吸尽液剤の最高温度が規定されるときは、好ましくはこの最高温度を超えてはならず、あるいは吸尽プロセスの期間の50%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは10%以下の間だけ越えるだけである。
好ましくは、吸尽時間は、45分以上、好ましくは50分以上、より好ましくは55分以上、最も好ましくは約60分以上である。このように、吸尽時間が十分に長いことが理解できよう。好ましくは、吸尽時間は、120分以下、特に90分以下、好ましくは80分以下、より好ましくは75分以下、さらにより好ましくは70分以下、さらにより好ましくは65分以下、最も好ましくは約60分以下である。このように、吸尽時間が十分に短いことが理解できよう。好ましい吸尽時間は約60分であり、これにより、後に概説するように、特に有利な効果が得られる。
本発明者等は、吸尽プロセス中の液剤の好ましい温度と吸尽時間は、布地材料の重量と種類や液剤中の抗菌剤から実質的に独立していることを見出した。これは、理想的な吸尽プロセスのパラメータが、概して、布地、特にマルチフィラメント糸及び織地の振る舞いにより決定されるからである。布地を80℃の温度で60分間処理すると、伸縮して開き、薬剤が最も遠くのスポットにまで届いて、薬剤の分散が生じるように個々の繊維が露出する。したがって、同じように最善の結果を得ながら、吸尽プロセスのパラメータを変える必要なく、吸尽プロセス11によって異なる布地材料を容易に処理することができる。
好ましくは、吸尽プロセス11中に液剤を攪拌する。この攪拌は30秒未満の間隔で行うべきである。換言すれば、中断を30秒以下としつつ吸尽プロセス中に攪拌を定期的に行う。好ましくは、特定の用途に応じて他の好適な間隔を設定してもよいことは理解できよう。理想的には、吸尽プロセス中に攪拌を連続して行う。吸尽浴槽における薬品の相互混合により、1以上の抗菌剤が浴槽内でより均等に分布するので、吸尽プロセスの確実性が高まり、その結果、布地材料全体にわたって均等な質の製品が得られる。好ましくは、攪拌は循環ポンプによりにより行う。循環ポンプは、吸尽浴槽内部で液剤を循環させるもので、典型的には従来の吸尽装置が有しているものである。他の実施形態では、吸尽浴槽に挿入された撹拌器により攪拌を行う。この撹拌器は、200rpm以上の速度で、より好ましくは250rpm以上の速度で、最も好ましくは300rpm以上の速度で動作し得る。本発明者等により使用される撹拌器は、標準的な家庭用ミキサと似ているがそれよりも大きな簡単なミキサである。好ましくは、ミキサは、少なくとも3枚の羽根を有し、これらの羽根は、好ましくは10cm以上の長さであり、好ましくは2cm以上の幅である。従来の吸尽装置には撹拌器がないため、本発明者等は、使用する吸尽装置に撹拌器を追加した。最も好ましくは、液剤は、循環ポンプと撹拌器の両方の手段により攪拌される。液剤の十分な混合により、吸尽プロセスが維持され、吸尽プロセス中に1以上の抗菌剤が布地材料の断面にわたってよく分散する。当該技術分野において知られているように、吸尽プロセスは、典型的には、例えば布を染めるために適用されるものである。そのような用途においては、典型的には、浴槽の流体特性を適切に維持するために循環ポンプだけが適用され、浴槽内には染剤分子の均質な分散が存在する。しかしながら、本発明の文脈で用いられる抗菌剤は、染剤と比較すると水に溶けにくい場合があるので、撹拌器と循環ポンプの両方を利用することで、抗菌剤が溶解しないということがなく、浴槽の底部に沈殿することがない。一方で、両方の攪拌手段の組み合わせにより、抗菌剤が浴槽全体で均一かつ均質に分散する。
したがって、吸尽プロセス11により、布地材料の断面にわたって1以上の抗菌剤が実質的に均一に分散し、これにより、布地材料自体が黄変することがなく、本質的にその破断強さが低下しないという効果が得られる。
吸尽プロセス11の後に熱処理が行われる。たった1つのプロセスサイクルがある場合、熱処理は乾燥とキュアリングとを含む。キュアリングは、高温、好ましくは180℃で生じるが、このキュアリングは、抗菌剤を非浸出的又は実質的に非浸出的な方法で布地材料に完全に結合させるために必要である。布地中の水分が蒸発するまで布地の温度は100℃を超えることができないので、キュアリングに先立って、布地を乾燥しなければならない。第1のプロセスサイクルの後にさらなるプロセスサイクル、すなわち、本明細書において後述するような第2の抗菌プロセスサイクル、あるいは親水性や疎水性のような他の特性を布地に与えるプロセスサイクルが行われる場合、この段階、すなわち第1のプロセスサイクルでは、好ましくはキュアリングをしない。これは経済的な理由によるものであるが、キュアリングが布地を封じてしまい、あるいはシールしてしまい、さらなるプロセスサイクルにおける処理の効果が低下するからでもある。しかしながら、特に、次のプロセスサイクルでの液剤付与の前に布地が洗浄される場合には、さらなるプロセスサイクルの場合においても、布地を熱処理により乾燥すべきである。この熱処理により、布地に対する薬剤の基本的な結合がなされ、その後の洗浄工程において薬剤が洗い流されることがない。
したがって、熱処理は乾燥プロセス12を含んでいる。乾燥は、実際に使用される布地材料に応じて通常のヒートセットプロセスにより行うことができる。好ましくは、布地材料の乾燥を100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらにより好ましくは115℃以上、最も好ましくは約120℃以上の温度で少なくとも部分的に行う。温度が低くなると、必要となるドウェル時間が長くなる。ドウェル時間が長くなると、黄変の観点から布地に悪影響を与え、織地の強度にも悪影響を与えるので、望ましいものではない。
好ましくは、布地材料の乾燥は、190℃以下、より好ましくは180℃以下、特に170℃以下の温度で行われる。さらにより好ましくは、布地材料の乾燥は、150°C以下、より好ましくは140℃以下、特に130℃以下、最も好ましくは約120℃以下の温度で行われる。
好ましくは、上記の温度での乾燥時間は、(布地材料が織地の場合)m2あたりの織物重量100gごとに30秒以上、好ましくは40秒以上、より好ましくは50秒以上、最も好ましくは約60秒以上である。さらに好ましくは、乾燥は、(布地材料が織地の場合)m2あたりの織物重量100gごとに120秒以下、好ましくは90秒以下、より好ましくは75秒以下、最も好ましくは約60秒以下の期間にわたって行う。(m2あたりの)織物重量が増えれば乾燥時間も増えることは理解できよう。当業者であれば、布地材料が糸である場合にも同様の乾燥時間が適用されることを理解するであろうし、糸の径に依存した乾燥時間を選択することを理解するであろう。
乾燥プロセス12は、典型的には、テンタ又はテンタフレーム(時として「tenter」とも呼ばれる)は類似の乾燥装置に布地材料を通過させることにより行われる。テンタの例示的セットアップについては図2を参照して後に述べる。布地材料を乾燥させることにより、好ましくは余分な水分を除去する。
さらに図1を参照すると、それ以上のプロセスサイクルがない場合には、乾燥プロセス12の後にキュアリングプロセス13が行われる。この場合において、このキュアリングプロセスは、以下でキュアリングプロセス17に関して述べるようなものであってもよい。しかしながら、第1のプロセスサイクルにおいては、キュアリングプロセス17は、好ましくはテンタを介して1つの単一パスにおいて乾燥プロセス16とともに行われるが、プロセスサイクルが1つだけの場合には、好ましくは、乾燥とキュアリングのためにテンタを介した2つの別個のパスが存在する。これは、プロセスサイクルが1つだけの場合は、布地が典型的に濡れやすく、したがって、テンタを介した別個のパスで乾燥プロセスを行えば、乾燥プロセスをよりうまく制御することができるからである。
他方で、さらに抗菌又は液剤付与プロセスサイクルがある場合には、好ましくは、乾燥プロセス12の後に洗浄プロセス14が行われる。洗浄プロセス14中、布地材料は、好ましくは水の中で、さらに好ましくは洗剤を用いることなく洗浄される。好ましくは、布地材料は、30℃から50℃、さらに好ましくは35℃から45℃の温度を有する例えば水浴のような浴槽内で洗浄される。洗浄時間は、好ましくは35分以上、より好ましくは40分以上である。洗浄プロセス14は、好ましくは、液剤付与プロセス11に起因する表面汚染を除去する。さらにプロセスサイクルがある場合には、次の液剤付与プロセスのための空間を清浄する。洗浄は、プロセスサイクルが1つだけの場合や布地が以下に述べるような後続の第2のプロセスサイクル10bにより処理される場合のいずれの場合においても、特に布地の非浸出特性を改善する。後者の場合、洗浄をしないと、布地材料上の表面汚染粒子は、第2のプロセスサイクル10bにおいて布地に結合し、第2のプロセスサイクル10bの最後に布地の洗浄があるにもかかわらず、布地の寿命中ずっとそれらの粒子の浸出が起こり得るようになる。好ましくは、洗浄プロセス13の後に布地材料(図示せず)の乾燥工程が行われる。この乾燥は、好ましくは、上述したのと同様に、すなわち好ましい最高温度120℃で、約60秒間、m2当たりの織物重量100gで、テンタによって行うことができる。
第1のプロセスサイクル10aの後、得られた布地材料はすでに抗菌特性の特徴を有している。しかしながら、任意的な第2のプロセスサイクル10bを行うことによって抗菌特性をさらに改善することができる。図1の第2のプロセス2は、布地材料を処理するパディングプロセス15を含んでいる。これに代えて、例えば、吸尽プロセス、コーティングプロセス、又は噴霧プロセスなどの他の液剤付与プロセスを用いることができる。しかしながら、パディングプロセスは必要な時間が短く、したがって吸尽よりも安価であり、噴霧よりもさらに均一な液剤の分布を提供し(さらに噴霧と異なり、織地の両面に同時に適用することができ)、コーティングペーストが典型的に漏れやすい成分を含んでいるためコーティングよりも非浸出特性の点で良好な結果を生ずるので、パディングプロセスが特に有益であることが分かっている。
パディングプロセス15を行うために任意の好適な手法を用いることができる。好ましくは、それぞれの液剤(吸尽プロセス11の液剤と同一の液剤であってもよいし、同一の液剤でなくてもよいが、後に詳述する)を用意し、ポンプを介してそれぞれのパディングマングルに供給する。したがって、パディングプロセス15は、好ましくは、布地材料上の液剤のウェットピックアップを最適なものとするために1以上のロールを適用することを含んでいる。典型的には、布地材料の質に応じて適切なパディングマングル圧が予め決められ、一般的には、抗菌剤のウェットピックアップが最適化されるように設定される。液剤は室温であってもよく、あるいは、パディングプロセス中に加熱してもよい。
好ましくは、パディングプロセスは、パディングマングル内で0.5バールから4バール、より好ましくは1.0バールから3.0バール、さらにより好ましくは1.5バールから2.5バール、最も好ましくは約2バールの圧力で行われる。ピックアップ率(又は「ウェットピックアップ」)は、付与された液剤の量を示すものであり、乾燥した未処理布地の重量に対するパーセンテージとして次のように定義される。%ピックアップ率=適用された液剤の重量×100/乾燥布地の重量。例えば、65%のピックアップ率は、1kgの布地に650グラムの液剤が付与されることを意味している。本発明に係るパディングプロセスのピックアップ率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは55%以上、特に60%以上、最も好ましくは約65%以上である。本発明に係るパディングプロセスのピックアップ率は、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらにより好ましくは75%以下、特に70%以下、最も好ましくは約65%以下である。しかしながら、第1のプロセスサイクルの後では、布地にはすでにある程度化学薬剤が浸み込んでいるので、織地上にパディングされた抗菌剤の残りは織地に永久的に定着することはなく、後続の洗浄工程18中に洗い流されるという意味において、抗菌剤に対する有効ピックアップ率は約40%に過ぎないと思われる。
パディングプロセス15の後、乾燥16とキュアリング17とを含む熱処理が行われる。この熱処理は乾燥16から始まる。乾燥プロセス16は、第1のプロセスサイクル10aの乾燥プロセス12と同一又は類似のものである。乾燥プロセス16の後、布地材料は99%水分のないものでなければならない。しかしながら、布地が室温まで冷却されたときに、布地材料には、例えば綿については約7〜8%、ポリエステルについては約4〜5%水分が戻る。
第2のプロセスサイクル10bの熱処理は図1に示すようにキュアリングプロセス17を続ける。キュアリングは、乾燥状態の布地材料に対する、本出願において言及した温度における熱処理として定義し得る。乾燥は、布地には99%水分がないことを意味する。キュアリングプロセス17を行うために任意の好適な装置を用いることができ、これにより十分な熱と十分なドウェル時間が得られる。典型的には、キュアリングプロセス17のためにテンタが用いられる。そのようなテンタの例示的構成は図2を参照して後で述べる。
好ましくは、吸尽され布地材料上にパディングされた液剤の1以上の抗菌剤が、布地材料に対して十分に強く固着又は結合するように、キュアリング温度を十分に高く、キュアリング時間を十分に長くする。好ましくは、抗菌剤が布地材料に結合し、場合によっては重合し、布地材料の本質的な部分となり、布地材料の所望の抗菌特性及び非浸出特性を提供するように、キュアリング温度及びキュアリング時間が設定されるべきである。また、使用される薬剤及び薬品によっては、キュアリング工程中に抗菌剤の架橋が生じる。この結果として、得られた布地材料は、その抗菌特性を失うことなく何回かの洗浄を耐えることができる。布地材料が織地である場合、キュアリング時間は(m2あたりの)織地の重量に依存する。しかしながら、本発明者等は、後に詳述する、好ましいキュアリング温度が布地材料の種類から実質的に独立していることを見出した。
好ましくは、後に詳述するが、布地材料の洗浄後に、好ましい非浸出特性が得られるように及び/又は好ましい抗菌性能が得られるように、吸尽プロセス中の液剤の温度を十分に高く、吸尽プロセスを十分に長く、キュアリング温度を十分に高く、キュアリング時間を十分に長くする。得られた布地材料の洗浄は水で行うことができ、好ましくは約1時間残留薬品を除去するために温水から湯を用いた浴槽内で行うことができる。好ましくは、この水は、20℃から60℃の範囲の温度を有し、洗浄は、好ましくは30分から90分、さらに好ましくは洗浄工程18に関して以下に概説した洗浄手順により行う。
好ましくは、布地材料が変色及び/又は黄変しないように、及び/又はその破断強さが著しく低下しない、すなわち、15%を超えて、好ましくは10%を超えて、より好ましくは7%を超えて、最も好ましくは5%を超えて低下しないように、キュアリング温度を十分に低くし、キュアリング時間を十分に短くする。さらに好ましくは、キュアリングの結果として、布地材料が溶けないように及び/又は焼けないように及び/又は黄変しないように及び/又は布地材料の色が実質的に変化(変色)しないように、キュアリング温度を十分に低く、キュアリング時間を十分に短くする。好ましくは、吸尽プロセス中の液剤の温度及びキュアリング温度は、上記好ましい特性が達成できるように設定される。最も好ましい実施形態では、吸尽プロセス中の液剤の温度は80℃、吸尽時間は60分、最高キュアリング温度は180℃である。これらの値は、好ましくは、プロセス10で処理される布地材料から独立している。
このように、好ましくは、キュアリングプロセス17は、150℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらにより好ましくは175℃以上、最も好ましくは約180℃以上のキュアリング温度で少なくとも部分的に行われる。好ましくは、キュアリングプロセス17は、205℃以下、好ましくは195℃以下、より好ましくは190℃以下、さらにより好ましくは185℃以下、最も好ましくは約180℃以下の温度で行われる。このように、好ましいキュアリング温度は約180℃である。
好ましくは、キュアリングプロセス17は、(布地材料が織地の場合)m2当たりの織物重量100gに対して20秒以上、好ましくは24秒以上、より好ましくは28秒以上、最も好ましくは約30秒以上の期間にわたって上述した温度で行われる。好ましくは、この温度が適用される期間は、(布地材料が織地の場合)m2当たりの織物重量100gに対して50秒以下、好ましくは45秒以下、より好ましくは40秒以下、さらにより好ましくは35秒以下、最も好ましくは約30秒以下である。このように、最も好ましい実施形態においては、約180℃のキュアリング温度が、m2当たりの織物重量100gに対して約30秒間適用される。しかしながら、重い織地の場合、好ましいキュアリング時間はこれよりも長く、350g/m2から500g/m2の織地に対しては上述した温度で45秒、500g/m2を超える織地に対しては60秒となる。これは、織地の厚さが増えると、熱線が織地の中心部に至るまでにより多くの時間がかかるからである。布地材料が糸の場合には、修正された温度が適用され、ドウェル時間及びキュアリング温度が糸の径に依存することは理解できよう。キュアリング温度は実質的に布地材料から独立しているので、異なる布地材料を使用する際には、キュアリング時間(及び乾燥時間)だけを調整する必要がある。本発明者等は、布地材料の重量が増加するにつれてキュアリング時間又はドウェル時間がほぼ線形的に増加することを見出した。
好ましくは、キュアリングプロセス17は、図1に示される第2のプロセスサイクル10bの乾燥プロセス16の直後に行う。このように、好ましくは、布地材料は、乾燥プロセス16とキュアリングプロセス17との間においては実質的に冷却されない。したがって、乾燥プロセス16とキュアリングプロセス17とを直接相次いで行う場合には、両方のプロセスは、好ましくは、(布地材料が織地である場合)m2当たりの織物重量100gに対して45秒以上、好ましくは50秒以上、より好ましくは55秒以上、最も好ましくは約60秒以上の期間通算して行われる。さらに好ましくは、乾燥プロセス16及びキュアリングプロセス17は、(布地材料が織地である場合)m2当たりの織物重量100gに対して75秒以下、好ましくは70秒以下、より好ましくは65秒以下、最も好ましくは約60秒以下の期間通算して行われる。典型的には、第2のプロセスサイクルにおいては、(特にオルガノシランのような疎水性薬剤が使用される場合には、第1のサイクルにおける薬剤の飽和によって布地の保水能力が下がることにより)布地材料が典型的に第1のプロセスサイクルにおける液剤付与プロセスの後よりも濡れにくいので、キュアリングプロセス17が乾燥プロセス16の直後に行われる場合には、乾燥プロセス16及びキュアリングプロセス17は、布地材料をテンタに通すことにより1つのパスで行われる。これは、テンタを通過する2つの別個のパスよりも経済的である。
最後に、好ましくは、洗浄プロセス18が行われる。これは、典型的には、上述した第1のプロセスサイクル10aの洗浄プロセス14と同一である。洗浄は、パディングプロセス15に起因する表面汚染を除去する必要がある。好ましくは、洗浄プロセス18の後に乾燥プロセス(図示せず)が行われる。この乾燥プロセスは、典型的には、上述した第1のプロセスサイクル10aの乾燥プロセスと同一である。
プロセス工程15から18を含む上記第2のプロセスサイクル10bを行うことにより、布地材料が1以上の抗菌剤によりより完全に被覆されるので、得られた布地材料の抗菌特性が改善する。工程11〜14を含む1つのプロセスサイクルを行うだけの場合、布地材料が、全く抗菌特性により特徴付けられないか、あるいは他のスポットに比べて性能の劣るスポットにより特徴付けられてしまう可能性がある。これらのスポットは、特に、織地が(例えばジガー上で)巻き付けられる場合に摩耗が発生することによるものであり得る。第2のプロセスサイクルを行うことにより、これらのスポットや孔が閉じられ、布地材料全体にわたって均一な品質の製品が得られる。これは、後述するように浄水用抗菌布地の用途に関して特に重要である。浄水用抗菌布地の用途においては、上述したスポットや孔が、浄水器の使用者の健康に対する深刻な脅威となり得る。第2のプロセスサイクルを行うことの他の利点は、繊維のコアとは異なる薬剤を表面に付与できることである。
図1のプロセス10の個々のプロセスの間に1以上の付加的なプロセスを導入してもよいことは理解できよう。特に、2つよりも多くのプロセスサイクルがある場合には、キュアリングは、典型的には、最後の液剤付与プロセスの後にのみ行われる。さらに、図1のプロセス10を行う前又は行った後に、1以上の付加的なプロセスを行ってもよい。例えば、液剤付与プロセス11からプロセス10を開始する前に、好ましくは、布地材料をテスト、洗浄、及び/又は清浄すべきである。好ましくは、織地は最初にテストされ、必要に応じて洗浄又は清浄され、これにより織地が本来的に親水性の性質を有し、織地には布地上での化学反応の作用を阻害するすべての化学的汚染物質がなくなる。これにより、織地には、後のプロセスの適用を阻害する化学的汚染物質がなくなる。特に好ましい実施形態においては、図1のプロセス10を行う前に、次の工程のうち1つ以上を行ってもよい。布地材料がそれぞれの選択基準を満足していることを検証及び確認するために布地材料に対する実験質的規模のテストを行うこと、フレーム上に個々の布地片をバッチングして綴じること、布地材料の欠陥を完全に検査すること、織地が親水性の性質を有し、織地には化学的汚染物質がなくなることを確保すること。
布地材料を製造するプロセス10を行う前に布地材料を染めてもよい。他の好ましい実施形態においては、布地材料は多機能となるように製造される。プロセス10を行った後、すなわち、抗菌処理の後、それぞれの多機能処理が行われる。そのような多機能処理により、布地材料には、UV阻止、防水、吸水、防蚊及び/又は類似の特性が付与され得る。また、例えばパディングプロセス15について述べたようなパディングプロセスにおいて多機能処理を行うことも可能である。このパディングプロセスでは、パディング液剤は、抗菌剤に加えて、それぞれの機能剤を含んでいる。
布地材料が糸の場合には異なる装置を用いてもよいことは理解できよう。例えば、加圧糸染色機を用いて吸尽プロセスを行ってもよく、その後、余分な水分を除去するために糸を脱水機で処理してもよい。糸の乾燥及びキュアリングは、無線周波数RF乾燥器及びキュアリング装置内で行ってもよい。これにより、上述した温度は依然として当てはまり、ドウェル時間は糸の径に依存する。
図2は、テンタ20の例示的構造を示している。テンタ20は、布地材料の乾燥及び/又はキュアリングのために用いることができる。このように、図1のプロセス工程を参照すると、乾燥プロセス12、キュアリングプロセス13、乾燥プロセス16、及び/又はキュアリングプロセス17のためにテンタ20を用いることができる。さらに、図1のプロセス10の洗浄プロセス14及び/又は洗浄プロセス18の間に布地材料を乾燥するためにテンタ20を用いることができる。
例示的テンタ20は、8つのチャンバ21〜28を備えており、これらは好ましくは別々に制御され得る。これは、異なるチャンバに異なる温度を設定できることを意味する。図1のプロセス10の乾燥プロセス12又は乾燥プロセス16のために、あるいは、洗浄後の乾燥のためにテンタ20を使用する場合、チャンバ21〜28は、好ましくは、上記で概説した仕様に基づいた乾燥温度を有している。例示的な実施形態においては、チャンバ内の温度は次のようになっている。チャンバ1は好ましくは120℃、残りのチャンバ2〜8は好ましくは130℃〜135℃である。他の例示的な実施形態においては、8つのすべてのチャンバにおける温度が120℃に設定される。
布地材料は、通常、コンベアベルトを使って一定速度でテンタ20に通される。この速度は、布地材料の重量によって設定される。例えば、24メートルの長さのテンタについては、100g/m2の織地に対しては24m/sの速度を設定することができ、200g/m2の織地に対しては12m/sの速度を設定することができ、280g/m2の織物重量に対しては9m/sの速度を設定することができる。このように、織物重量が増加するとドウェル時間も長くなる。
図2に示されるテンタのすべてのチャンバが乾燥プロセスのために使用される場合、好ましくは、m2当たりの織物重量100gに対して60m/sの速度が設定され、m2当たりの織物重量200gに対して30m/sの速度が設定され、m2当たりの織物重量280gに対して22m/sの速度が設定される。それぞれのチャンバが約3メートルの長さであるので、m2当たりの織物重量100gに対して、それぞれのチャンバ内のドウェル時間は約3sであり、総ドウェル時間は約24sである。m2当たりの織物重量200gの場合には、総ドウェル時間は48sであり、m2当たりの織物重量280gの場合は72sである。ドウェル時間は、織物重量に対して実質的に線形的に増加することが理解できよう。
テンタ20のすべてのチャンバが図1のプロセス10のキュアリングプロセス13又はキュアリングプロセス17に使用される場合、テンタ20の少なくとも1つのチャンバ、好ましくは6つのチャンバ、より好ましくは8つのチャンバの温度が、以下に概説されるキュアリング温度に従って設定される。例示的な実施形態においては、チャンバ1及び8は140°Cの温度を有していてもよく、チャンバ2〜7の温度が180℃であってもよい。あるいは、チャンバ2及び7が160℃でチャンバ3〜6が180℃であってもよい。好ましくは、以下の移送速度が設定される。m2当たりの織物重量100gの場合には42m/s、m2当たりの織物重量200gの場合には21m/s、m2当たりの織物重量280gの場合には16m/s。このように、織物重量100g/m2に対しては、総キュアリング時間は約34秒であり、チャンバ当たりのドウェル時間は約4秒である。織物重量200g/m2に対しては、総キュアリング時間は約68秒であり、それぞれのチャンバにおけるドウェル時間は約8秒である。280g/m2に対しては、総キュアリング時間は約103秒であり、それぞれのチャンバにおけるドウェル時間は約13秒である。ドウェル時間は、織物重量に対して実質的に線形的に増加することが理解できよう。
上記設定例においては、最初に布地材料を乾燥のためにテンタ20に通過させた後、その布地材料を異なる速度及び温度でキュアリングのために再びテンタ20に通過させることにより、布地材料の乾燥とキュアリングが2つの異なるパスで行われる。
テンタは必ずしも8つのチャンバを有していなくてもよいが、任意の数のチャンバにより特徴付けられ得ることは理解できよう。しかしながら、布地材料をテンタ20に通過させることにより布地材料の乾燥とキュアリングが1つのパスで行われる場合には(その理由は以下で明らかになるであろう)、少なくとも6つのチャンバ、好ましくは少なくとも8つのチャンバを有していることが有利である。
この場合、乾燥とキュアリングの通算時間は、上述したパラメータによる。このプロセスは、好ましいキュアリング温度に至る前に、好ましくは少なくとも2つの中間ステップで、好ましくは少なくとも3つの中間ステップで徐々に上昇する温度に布地が曝されるようにすべきである。このように、布地材料は直ぐに好ましいキュアリング温度に曝されるわけではないが、徐々に上昇する多くの温度に曝されることになる。これは、布地材料の表面(瞬時に加熱される)と布地材料の(例えば糸の)内部(一定の遅れをもって加熱される)との間の温度差の結果として、実質的にダメージを受けることを避けるために、濡れた布地材料が180℃もの高いキュアリング温度に直ぐに曝されるべきではないからである。このように、温度勾配が布地材料の内部で形成されると、布地材料の内部応力及び劣化の可能性を引き起こす。
徐々に温度を上昇させる(「ランプアップ」)プログラムを、100℃以上、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、最も好ましくは約120℃以上の温度で開始してもよい。このランプアップは、好ましくは、140℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、最も好ましくは約120℃以下の温度で開始する。このランプアップは、(布地材料が織地の場合)m2当たりの織物重量100gに対して、好ましくは15s以上、好ましくは18s以上、より好ましくは20s以上、最も好ましくは約22s以上の期間続いてもよい。さらに、このランプアップは、(布地材料が織地の場合)m2当たりの織物重量100gに対して、好ましくは30s以下、好ましくは27s以下、より好ましくは25s以下、最も好ましくは約23s以下の期間にわたって続く。再び、当業者は、布地材料が例えば糸のように織地とは異なる場合には、好適なパラメータを選ぶことができることを理解するであろう。
好ましくは、布地の乾燥は、上記温度を徐々に上昇させる期間中の少なくとも部分的にわたって、より好ましくはずっと行われる。図2に示されるテンタ20を参照すると、個々のチャンバの温度を以下のようにしてもよい。チャンバ1が120℃で、チャンバ2が135℃で、チャンバ3が150℃で、チャンバ4〜7が180℃で、チャンバ8が140℃である。乾燥プロセスは、本質的にチャンバ1〜3において行われ、残りのチャンバはキュアリングプロセスを行う。しかしながら、チャンバ1〜3のいずれか1つにおいてキュアリングがすでに部分的に設定されていてもよいことは理解できよう。好ましくは、織物重量100g/m2に対して、それぞれのチャンバにおけるドウェル時間は7.5sであり、この結果、乾燥時間は22.5sとなり、最高温度でのキュアリング時間は30sとなる。このように、布地材料が急激な温度変化に曝されるのを避けるために、チャンバ8がランプダウンの段階を提供していることは理解できよう。織物重量200g/m2に対して、それぞれのチャンバにおけるドウェル時間は15sであり、この結果、乾燥時間は45sとなり、最高温度でのキュアリング時間は60sとなる。織物重量280g/m2に対して、それぞれのチャンバにおけるドウェル時間は22.5sであり、この結果、乾燥時間は67.5sとなり、最高温度でのキュアリング時間は90sとなる。したがって、与えられた例においては、ランプアップがチャンバ1〜3、すなわちテンタ20の3つのチャンバにおいて行われる。しかしながら、温度を徐々に上昇させるプログラムを行うために3つよりも多くのチャンバ又は3つよりも少ないチャンバを利用してもよいことは理解できよう。
以下に、本発明の製造プロセスを用いて得られる試験材料の性能特性を、ある特定の試験結果を参照して詳述する。使用する2つのタイプの織地の例について、後述するように以下の液剤(吸尽プロセスサイクル、また該当する場合には第2のプロセスサイクルに使用する)の組成物を選択した。
100%綿織地(すなわち実施例A)については、
1%のポリヘキサメチレンビグアニド、0.15%の銀、0.8%のオルガノシラン(ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド)、0.15%のプロピコナゾール及び1%のポリグルコサミン。
65%ポリエステル/35%綿織地(すなわち実施例B)については、織地の重量に対して0.35%のポリヘキサメチレンビグアニド、0.15%の銀、0.8%のオルガノシラン(ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド)、0.15%のプロピコナゾール。
上記組成物を水に添加した。液剤及びそれぞれの組成物に関する具体的な詳細については下記を参照されたい。
以下の異なる組成を特徴とする2つの織地の例を使用した。
実施例A:
100%綿からなる織地重量265g/m2、幅150cmの織地を選択した。得られる布地材料は、例えば下記のように水濾過用途に用いることができ、本明細書では「水フィルタ織地」と呼ぶこととする。
実施例B:
35%綿と65%ポリエステルとを含む織地重量200g/m2、幅150cmの混紡織地を選択した。得られる布地材料は、例えば衣料生産に使用することができ、本明細書では「衣料織地」と呼ぶこととする。
実施例A及び実施例Bによる織地を吸尽プロセスに供した。本発明の効果を証明するため、特に処理済み布地材料の抗菌性能及び非浸出特性に対する吸尽温度(浴内の吸尽液剤の温度)及び吸尽時間の影響を明らかにするために、吸尽プロセスを3つの異なる吸尽温度及び7つの異なる吸尽時間で行った。吸尽プロセス中の液剤の温度は40℃、60℃、及び80℃とし、吸尽時間は15分、30分、45分、60分、75分、90分、及び120分とした。得られる布地材料を120℃で乾燥させ、適切なドウェル時間にて180℃でキュアリングした。
吸尽プロセス中の液剤の温度及び吸尽時間の両方の影響を研究するために、3つの異なる測定を行った。破断強さの測定はASTM規格D 5035に従って行った。抗菌性能の測定はASTM規格2149に従い、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:スタフィロコッカス・アウレウス)(ATCC 43300)を試験微小生物として用いて行った。さらに、処理済み布地からの抗菌剤の浸出を測定した。測定手順を下記でより詳細に述べる。
次に、実施例Aによる「水フィルタ織地」に基づく布地材料について得られる測定結果を図3〜図5を参照して説明し、続いて実施例Bによる「衣料織地」に基づく布地材料について得られる測定結果を図6〜図8を参照して説明する。
図3に、様々な吸尽時間及び様々な吸尽プロセス中の液剤温度で加工した布地材料(実施例Aに基づく)の破断強さを示す。吸尽プロセスにより処理していないサンプル(すなわち吸尽時間0分)は、1600Nをわずかに上回る破断強さを特徴とする。15分から120分の吸尽時間を検討すると、吸尽プロセス中の液剤の温度を40℃又は60℃とした場合に、サンプルの破断強さは1600Nをわずかに下回る。しかしながら、液剤の温度を80℃とすると、吸尽時間を75分以上とした場合に破断強さの急激な低下を観察することができる。このため、低い液剤温度及び短い吸尽時間が大きな破断強さを得るために望ましいことが図3から示される。
図4に抗菌性能、すなわち処理済み布地上での細菌の対数(「Log」)減少を示す。未処理サンプル(すなわち吸尽時間0分)では抗菌性能の特徴は見られない。吸尽プロセス中に40℃又は60℃の液剤温度を適用したサンプルは、2〜3の範囲の細菌の対数減少を特徴とする。しかしながら、80℃の液剤温度を適用したサンプルにおいては、60分以上の吸尽時間で抗菌性能の強い増大を観察することができる。したがって、図4に提示したデータから導き出すことができるように、高い液剤温度及び長い吸尽時間が良好な抗菌性能を得るために望ましい。
図5に試験サンプルについて測定された抗菌剤の浸出を示す。抗菌剤はポリヘキサメチレンビグアニド、銀、オルガノシラン及びプロピコナゾール、すなわち液剤の成分を含む。吸尽プロセスによって処理していないサンプル(すなわち吸尽時間0分)では、液剤に全く曝されていないため抗菌剤は浸出しない。吸尽プロセス中に40℃の液剤温度で処理したサンプルについては、吸尽時間の増加とともに非浸出性能の改善を観察することができる。吸尽プロセス中に60℃の液剤温度で処理したサンプルでも同様であり、浸出する抗菌剤の絶対値がより低く、ひいてはより有利である。最良の(非)浸出特性は、吸尽プロセス中に80℃の液剤温度、60分の吸尽時間で処理したサンプルに観察することができる。この吸尽温度では、吸尽時間が60分を超えると浸出特性が損なわれる(浸出が大きくなる)。これは図3で観察することができるように、布地の破断強さの減少に起因すると考えられる。このため図5から分かるように、最適な浸出特性は吸尽プロセス中の液剤の温度を80℃とし、吸尽時間を60分とした場合に観察することができる。
図3〜図5に示す測定結果から以下の結論を導き出すことができる。最良の浸出特性は、80℃の液剤温度かつ60分の吸尽時間で得られる。これらのパラメータにより、最適な抗菌性能を有し、その破断強さの低下が10%未満とわずかである布地材料も得られる。
次に、「衣料織地」に基づく、すなわち実施例Bの布地材料について得られる測定結果を検討する。図6にそれぞれの破断強さを示す。吸尽プロセス中に適用した3つ全ての液剤温度について、1200Nを超える幾分高い破断強さを60分までの吸尽時間で観察することができる。未処理サンプルと比較すると、破断強さの相対的低下は5%未満である。しかしながら、75分以上の吸尽時間では破断強さの顕著な低下を観察することができ、破断強さは吸尽時間の増加とともに低下する。この影響は、吸尽プロセス中により高温の液剤で処理したサンプルについてより顕著である。このため、図3に示す測定結果から導き出した結論と同様に、低い液剤温度及び短い吸尽時間が破断強さの点から望ましく、適用した全ての温度について、60分の最大吸尽時間で破断強さの損失は相当に小さい。
図7に図4と同様に実施例Bの抗菌性能を示す。この場合も、吸尽プロセスにより処理したサンプルについて細菌の減少を観察することができる。最適な細菌の減少は液剤温度を80℃とし、吸尽時間を60分とした場合に観察することができ、この場合も、より長い吸尽時間を適用した場合に強い抗菌性能が見られる。
図8に実施例Aについて上述したような浸出特性を示す。図5に示す試験結果とは対照的に、吸尽プロセス中に温度が40℃又は60℃の液剤で処理したサンプルは、60分以下の吸尽時間でほぼ一定の浸出性能を特徴とする。吸尽時間が60分を超えると、浸出特性は吸尽時間の増加とともに悪化する。温度が80℃の液剤で処理したサンプルの挙動についても同様である。このサンプルでは、最適な浸出特性は45分及び60分の吸尽時間で観察される。
このため、実施例Bによる「衣料織地」に基づくサンプルについては、図6〜図8に示す測定値から以下の結論を導き出すことができる。吸尽プロセス中の最適ピックアップは、吸尽プロセス中の液剤の温度を80℃とし、吸尽時間を60分とした場合に達成される。かかる状況では、抗菌性能及び非浸出特性が最大に達し、布地材料の破断強さはごくわずかしか低下しない。
以下で抗菌性能及び浸出特性に対するキュアリングプロセスの影響を述べる。この目的でも、実施例A及び実施例Bによる織地を準備し、加工した。特に、織地を吸尽プロセスにより処理したが、吸尽プロセスの液剤は上述の特定の組成物を含有する。吸尽プロセス中に液剤は80℃の温度に維持し、吸尽時間は60分とした。上記のように、これらのパラメータが最も好ましいことが見出された。
吸尽プロセス後にサンプルを乾燥させ、キュアリングした。キュアリング温度の影響を明らかにするために、キュアリングプロセスを様々なキュアリング温度(すなわち120℃、150℃、180℃)で行い、さらに、洗浄していないサンプルを加工後に25回洗浄したサンプルと比較した。換言すれば、キュアリング温度に対する抗菌性能及び特性を試験した。キュアリング時間は全サンプルで2分に設定した。
まず、抗菌性能について述べる。それぞれの測定は、黄色ブドウ球菌(ATCC 43300)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:シュードモナス・エルギノーサ)(ATCC 15442)を試験生物として用いて行った。測定手順を下記により詳細に説明する。測定はそれぞれの接種の15分、30分、1時間及び6時間後に行った。したがって、それぞれの生物とサンプルとの接触時間を変化させた。
図9に「水フィルタ織地」サンプルについて得られる測定値を示し、図10に「衣料織地」サンプルに対応する値を示す。図9及び図10のどちらにおいても、サンプルにはATCC 43300を接種している。
図に見られるように、細菌減少は接触時間、すなわちそれぞれの生物とサンプルとの接触時間の増加とともに増大する。さらに、洗浄していないサンプルのみを検討すると、180℃でキュアリングしたサンプルが最良の抗菌性能を特徴とし、接種の1時間後、すなわち1時間の接触時間後の対数減少値は最大5〜6である。120℃及び150℃でキュアリングしたサンプルも、洗浄していない状態でのみ良好な抗菌性能を有する。サンプルを25回洗浄した後、120℃及び150℃でキュアリングしたサンプルの抗菌性能は激減する。しかしながら、このことは180℃でキュアリングしたサンプルには当てはまらない。これらのサンプルについては、洗浄していないサンプルと洗浄したサンプルとを比較した場合に、抗菌性能のわずかな変動しか観察することができない。したがって、抗菌性能だけでなく、洗浄耐久性、ひいては非浸出特性も良好であると結論付けることができる。
図11及び図12に、「水フィルタ織地」サンプル及び「衣料織地」サンプルのそれぞれについての抗菌性能を示す。図9及び図10に示す測定とは異なり、サンプルにはATCC 15442を接種した。
概して、先と同じ依存性を観察することができる。細菌減少はこの場合も接触時間の増加とともに増大し、180℃でキュアリングしたサンプルは概して、120℃及び150℃でキュアリングしたサンプルと比較してより良好な抗菌性能を特徴とする。この場合も、180℃でキュアリングしたサンプルについて接種の約1時間後にLog5〜6の減少を観察することができる。さらに、これらの例の洗浄耐久性は、より低温でキュアリングしたサンプルと比較してはるかに良好である。
このため、布地材料を吸尽プロセスに供した後に180℃でキュアリングした場合、驚くほど高い洗浄耐久抗菌性能が得られる。
次に、浸出特性について述べる。ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、オルガノシラン、銀及びプロピコナゾール等の抗菌剤の浸出を液浸時間に対して試験した。浸出測定をより詳細に以下に説明する。測定は1日間、5日間及び9日間の液浸時間後に行った。
図13に「水フィルタ織地」サンプルの浸出性能を示し、図14に「衣料織地」サンプルの浸出性能を示す。図に見られるように、どちらの場合も浸出はサンプルを120℃でキュアリングした際にすべての抗菌剤で高かった。低温でキュアリングしたサンプルの洗浄耐久性が低いことが見出されているため(図9〜図12に関する上記の詳細な説明を参照されたい)、当然ながら、抗菌剤が既にサンプルから洗い流されている可能性が高いことから、それぞれの抗菌剤の浸出が同様に洗浄したサンプルで減少する。
図13及び図14に提示したグラフから観察することができる更なる傾向は、キュアリング時間の増加とともに浸出が減少する、すなわち非浸出特性が増大することである。換言すれば、抗菌剤は布地材料に十分に結合している、又は布地材料に十分に組み込まれていると想定される。さらに、180℃でキュアリングしたサンプルは浸出がごくわずかであることを特徴とし、対応する値は提示のグラフにはほとんど見られない。
このため、液浸時間及び布地材料の洗浄にかかわらず、180℃でキュアリングしたサンプルが極めて有利な抗菌特性及び浸出特性を特徴とすることが図9〜図14から明らかである。
上記で図1〜図14を参照して述べた測定結果は、本発明の改良の初期段階で得られた。このため当然のことながら、現在ではさらに良好な抗菌特性及び浸出特性を本発明による製造プロセスを用いて得ることができるが、上記で導き出した最適な吸尽パラメータ及びキュアリングパラメータに関する結論が依然として当てはまる。
本発明者等はさらなる包括的実験を行い、個々の抗菌剤の各々及びそれらの混合物の両方について異なるプロセスパラメータの影響を決定した。特に指定のない限り、綿−ポリエステル混紡織地(番手 縦糸20s及び横糸20s、構造108×84、ポリエステル綿混紡染色織地(65%ポリエステル及び35%綿)、シェード セイルブルー、幅150cm、織地重量210g/m2)を実験例に使用した。化学物質の濃度は特に指定のない限り、織地重量に対するパーセント(%o.w.f.)又はgpl(グラム/リットル)で表す。一部の織地は以下に記載のプロセスを用いて作製し、それ以外はそのプロセスによく似せた実験室条件下で作製した。
布地の抗細菌作用は、AATCC試験法100-2012に従って試験した。試験の前に織地を2×4インチのクーポンに切り分け、別々に25回洗浄し、US EPAプロトコル90072PA4(以下でさらに説明する)の通りに12回の摩耗サイクルに供した。試験は大腸菌(E. coli)(ATCC 25922)に対して行った。接触時間は、1クーポン当たり108CFUの接種後60分とした。
浸出試験手順は以下のようにした。100g(グラム)の織地及び対照織地を、密閉広口瓶内で10リットルの停滞蒸留水に液浸した。3日(72時間)後に、水サンプルを標準分析法の通りに浸出物質について試験した。
実験例I.個々の抗菌剤の吸尽パラメータ
I.1.液剤の温度及び抗菌剤の濃度
I.1.(1)布地材料の処理
1500メートル(483.75kg)の布地材料をジガー装置(Yamuda社製モデル番号Y1100)に装填し、約905リットルの水を添加して、材料対液剤比を約1:2とした。0.10%o.w.f.の溶液(活性物質ではない)濃度を達成するために、20%のポリヘキサメチレンビグアニドを含有する溶液(Swissol社のTexguard-20)、又はマトリクスに捕捉された1.0%の銀カチオンを含有する溶液(Rohm and Haas社のSilvaDur AQ)、又は72%のジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(オルガノシラン)を含有する溶液(AEGIS Environments社のAEM 5772 Antimicrobial)、又は25%のプロピコナゾールを含有する溶液(Beyond Surface Technologies社のBiogard PPZ 250)、又は20%のポリグルコサミン(キトサン)を含有する溶液(Go Yen Chemical社のGoyenchem-102)のいずれか0.483kgを水に添加した。0.20%、0.50%、0.80%、又は1.00%o.w.f.の液剤の溶液濃度を達成するために、それに応じてより多量の溶液を添加した。液剤のpHを0.03gplのクエン酸で調整し、pH5〜pH6、好ましくはpH5.5に維持した。液剤の温度はそれぞれ40℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、及び95℃に設定した。
ジガー装置を始動し、50m/sの速度で運転し、その後60分間運転を継続した(2回の停止、その間の中断は30秒未満とした)。吸尽プロセス全体を通して液剤を撹拌機により300rpmの速度で撹拌し続けた。吸尽率は約98%とした。その後、処理浴を排水し、布地材料を即座に乾燥及びキュアリングのためにテンタ装置に移した。すなわち、吸尽時間を60分とした。
布地を、8つのチャンバを有する長さ24メートルのテンタに毎秒12メートルの速度で通すことによって乾燥させた。120℃の最高温度を8つすべてのチャンバ内で、すなわち120秒間にわたって適用した。布地を再度テンタに同じ速度(すなわち毎秒12メートル)で通すことによってキュアリングしたが、180℃の最高温度をチャンバ3〜6内で、すなわち60秒間にわたって適用した。チャンバ1、2、7及び8内の温度はそれぞれ120℃、150℃、及び150℃、120℃とした。
I.1.(2)処理済み布地材料の性能及び浸出の試験
吸尽プロセス及びキュアリングプロセスによって得られた布地材料に対して性能試験及び浸出試験を行ったところ、以下の結果(図15A〜図15Fのグラフにも示される)が達成された。吸尽プロセスは、液剤の温度及び液剤中の活性成分の濃度の両方を変化させて行った。上述のように、活性成分を含有する溶液を0.1%から1.0%o.w.f.の溶液付与量で添加し、温度を40℃から90℃で変化させた。以下の性能が観察された(図15A〜図15Cにも示す)。
吸尽プロセス中に40℃の液剤温度を適用したサンプルは性能を示さなかった(図15Aを参照されたい)。液剤の温度を80℃まで上昇させると、各サンプルの抗菌性能も増大した。温度80℃の液剤中で処理したサンプルは、75℃から強く増大し、個々の抗菌剤について1%o.w.f.の溶液濃度で2.4〜2.8の対数減少値を示した。しかしながら、液剤温度を80℃以上としたサンプルの抗菌性能は停滞状態に達した。
処理済み布地材料の浸出試験の結果を下記に提示し、図15D〜図15Fのグラフにも示す。
40℃の液剤温度で処理した布地材料からの浸出は見られなかった。これは、これらの布地の性能データから明らかなように、抗菌剤が布地に全く結合していないためである。60℃の液剤温度で処理した布地材料からの個々の抗菌剤の浸出は高かったが、80℃の液剤温度で処理した布地材料では負のピークまで激減した(図15Eを参照されたい)。実際に、抗菌剤は吸尽プロセスを80℃、溶液濃度0.50%、0.80%及び1.00%o.w.f.で行った布地から1ppmから1.5ppm(重量パーツパーミリオン)しか浸出しなかった。液剤温度を80℃超とした布地材料は、12ppmまで浸出の増大を示した(図15Fを参照されたい)。
したがって、上記の結果で提示したデータ及び図15A〜図15Fのグラフから導き出すことができるように、良好な抗菌性能及び非浸出特性の両方を得るためには、少なくとも60分の吸尽時間についての最適液剤温度は80℃であり、各抗菌剤の最適溶液濃度は1%o.w.f.である。吸尽は基本的には布地の飽和を意味する。様々な種類の吸尽パラメータが異なる吸尽用途に用いられる。80℃の適用がある特定の染色用途に好適であることが知られている。しかしながら、本発明者等が試験した布地のタイプ及び薬剤のタイプにかかわらず、80℃及び/又は60分が抗菌剤の付与に理想的であることは従来技術では知られていなかった。
上述のような溶液中の活性物質濃度を踏まえて、1.00%o.w.f.の溶液濃度は以下の活性物質濃度に対応するものであった。PHMB:0.20%o.w.f.、銀:0.01%o.w.f.、オルガノシラン:0.72%o.w.f.、プロピコナゾール:0.25%o.w.f.、キトサン:0.20%o.w.f.。
I.2.液剤温度80℃での吸尽時間
布地材料の処理を上記のプロセスに記載のように行った。すなわち、布地を上記のパートI.1.(1)に記載の一般パラメータを用いて吸尽プロセス、続いて乾燥プロセス及びキュアリングプロセスによって処理した。ただし、液剤温度を80℃と一定に維持し、成分を含有する各溶液について溶液の活性物質濃度を1%o.w.f.とした上で、吸尽時間を10分から90分で変化させた。次いで、上記の吸尽プロセスを含むプロセスにより得られる布地を性能試験及び浸出試験に供した。
上記の各吸尽プロセスによって得られた布地材料に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図16Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果から観察され、添付の図16Aに示すグラフで明らかなように、布地を10分のプロセス時間で処理した場合に織地は低い抗菌性能を示す。時間を60分まで増加させることで性能は改善する。しかしながら、60分を超えてさらに吸尽プロセスの時間を増加させると、性能はわずかな増大を示すが、達成される性能の増大は60分未満で達成されるよりも顕著に低くなる。本発明者等が行った他の実験では、60分を超える吸尽時間で性能のわずかな減少も見られた。したがって、性能試験の結果から、80℃で行われる吸尽プロセスに最適な時間がすべての溶液濃度で60分であることが示される。
上記の結果から観察され、添付の図16Bに示すグラフから明らかなように、布地を10分のプロセス時間で処理した場合に織地は低い浸出特性を示し、浸出はいくつかの成分で50ppmと高い。プロセス時間を55分まで増加させると浸出は低下し、浸出ppmの一定した減少が示される。時間を60分まで増加させた場合、最大でも4ppmの活性成分しか浸出しないことが見出される。しかしながら、60分を超えてさらに吸尽プロセスの時間を増加させると、浸出特性は増大するようである。
したがって、性能試験及び浸出試験のどちらの結果からも、80℃、活性物質濃度1%o.w.f.で行われる吸尽プロセスに最適な時間が60分であることが判明する。
I.3.液剤温度60℃での吸尽時間
布地材料の処理を上記のプロセスに記載のように行った。すなわち、布地を上記のパートI.1.(1)に記載の一般パラメータを用いて吸尽プロセス、続いて乾燥プロセス及びキュアリングプロセスによって処理した。液剤温度を60℃と一定に維持し、活性成分を含む各溶液について溶液濃度1%o.w.f.の液剤を吸尽プロセスに使用した。時間を10分から90分で変化させた。次いで、プロセスにより得られる布地を性能試験に供した。結果は下記に示す通りであり、グラフを図17Aに示す。
上記の結果に見られるように、60分のプロセス時間で得られる布地は抗菌特性に関して最大1.7の対数減少値を示すが、180分のプロセス時間では、布地は最大2.3の対数減少値を示す。しかしながら、80℃のプロセス温度で行った先の性能試験の結果と比較すると、60分のプロセス時間であっても2.9の対数減少値というより良好な抗菌特性を示す布地が得られた。実際に、時間を240分まで増加させた場合、抗菌特性はわずかに低減する。
上記の結果から、また図17Bに見られるように、60℃の上記プロセスにより得られる布地の浸出値は、80℃で得られる布地の浸出値と比較して13ppmから23ppmと比較的高い。したがって、60℃の温度は用いることができるが、80℃ほど吸尽プロセスに良好ではない。
I.4.抗菌剤を含有する溶液の濃度(最大5%o.w.f.)
布地材料の処理を上記のプロセスに記載のように行った。すなわち、布地を上記のパートI.1.(1)に記載の一般パラメータを用いて吸尽プロセス、続いてキュアリングプロセスによって処理した。ただし、液剤の温度を80℃と一定に維持した上で、吸尽プロセス中の抗菌剤を含有する溶液の濃度を1%o.w.f.から5%o.w.f.で変化させた。次いで、上記の吸尽プロセスを含むプロセスにより得られる各布地を性能試験及び浸出試験に供した。
上記の各吸尽プロセスによって得られた布地材料に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図18Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果から観察され、添付の図18Aに示すグラフで明らかなように、布地を濃度が5%o.w.f.の溶液で処理した場合であっても、濃度が1%o.w.f.の溶液で処理した布地と比較して織地はほぼ同じレベルの抗菌性能を示す。したがって、溶液濃度を1%o.w.f.を超えて増加させても性能の大幅な改善は示されないようである。
さらに、同じ布地を浸出について試験したところ、以下の結果が示された(図18Bのグラフにも示す)。
上記の結果から観察され、添付の図18Bに示すグラフで明らかなように、抗菌剤を含有する溶液の濃度を1%o.w.f.を超えて増加させた場合に織地は浸出特性の急激な増大を示す。
上記の2つの試験から、溶液付与量を1%o.w.f.から5%o.w.f.まで増加させた場合に、性能の改善がもたらされないどころか、高い浸出作用が生じることが分かる。したがって、結果から最適な溶液付与量が1%o.w.f.であることが示される。
I.5.様々な布地材料及び抗菌剤の濃度
布地材料の処理を上記のプロセスに記載のように行った。すなわち、布地を上記のパートI.1.(1)に記載の一般パラメータを用いて吸尽プロセス、続いて乾燥プロセス及びキュアリングプロセスによって処理した。ただし、プロセスを2つの異なる織地に対して行った。純(100%)綿及び純ポリエステルの織地(番手 縦糸20s及び横糸20s、染色織地、シェード オフホワイト、幅150cm、織地重量220g/m2)についての吸尽パラメータを、抗菌剤を含有する溶液を所定の濃度(0.10%、0.20%、0.50%、0.80%及び1.00%o.w.f.)として試験した。次いで、上記の吸尽プロセスを含むプロセスにより得られる各布地を性能試験及び浸出試験に供した。以下の結果(図19Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果から観察され、添付の図19Aに示すグラフから明らかなように、溶液付与量を1%o.w.f.とした場合に純綿織地は最良の抗菌性能を示す。
これは他の織地、例えばポリエステル織地を下記に示すように試験した場合にも観察される。上記の各吸尽プロセスによって得られる純ポリエステル布地材料に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図19Bのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果から観察され、添付の図19Bに示すグラフからも明らかなように、溶液付与量を1%o.w.f.とした場合にポリエステル織地も最良の抗菌性能特性を示す。ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)及びポリグルコサミン(キトサン)がポリエステル織地と結合せず、したがっていかなる抗菌作用も示さなかったことに留意されたい。
したがって、使用する織地の種類にかかわらず、活性成分を含有する溶液の液剤適用量1%o.w.f.、温度80℃で吸尽プロセスを60分間行った場合に、抗菌性能特性が達成される。
実験例II.個々の抗菌剤のキュアリングパラメータ
II.1.吸尽後のキュアリング温度
II.1.(1)布地材料のキュアリング
キュアリングを、実験例I.1.(1)によって得られる布地材料をテンタ装置に2分間にわたって通す間に100℃、120℃、140℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、及び195℃の最高温度を少なくとも60秒間適用して(少なくとも上述の8チャンバテンタのチャンバ3〜6)、液剤温度80℃、吸尽時間60分、抗菌剤を含有する各溶液の濃度1.00%o.w.f.で行った。
II.1.(2)キュアリングした布地材料の性能の試験
先の試験から最適と観察された吸尽プロセスのパラメータを維持した上で、キュアリングパラメータを変化させることで得られる布地に対して試験を行った。
キュアリング温度を変化させてキュアリングした布地に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図20Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果及び図20Aに示すグラフでは、キュアリングした布地材料での抗菌性能、すなわち(先の例と同様に)細菌の対数(「log」)減少を示す。キュアリングプロセスの温度を上昇させると、サンプルの抗菌性能も増大する。180℃でキュアリングしたサンプルは2.4〜2.8の対数減少値を示したが、結果及び図20Aのグラフから明らかであるように、180℃を超えてさらにキュアリング温度を上昇させてもサンプルの抗菌性能は影響を受けなかった。
次に、キュアリングした布地材料の引っ張り強さ又は引っ張り強さの損失をそれぞれ試験した。結果を下記に示し、グラフを図20Bに示す。各温度でキュアリングした布地材料の引っ張り強さを、ASTM規格D5035-11に従って測定した。
185℃でキュアリングした布地の引っ張り強さは、180℃でキュアリングした場合と比較して急激な減少を示した。その一方で、引っ張り強さの損失は185℃でキュアリングしたサンプルで急上昇を示した(図19Bのラインを参照されたい)。したがって、布地への抗菌剤の安定した結合は、180℃のキュアリング温度で完了するようであった。
II.2.(1)キュアリングのドウェル時間
先の試験から最適と観察された吸尽プロセスのパラメータを維持した上で、キュアリングパラメータを変化させることで得られる布地に対して試験を行った。
キュアリング温度を180℃に維持した上で様々なキュアリングのドウェル時間(テンタ内での時間に対応する)でキュアリングした布地に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図21Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果及び図21Aに示すグラフでは、キュアリングした布地材料での抗菌性能、すなわち細菌の対数(「log」)減少を示す。上記の結果から観察され、添付の図21Aに示すグラフから明らかなように、キュアリングのドウェル時間を0.5分から1.5分まで増加させた場合に布地の抗菌性能特性はわずかにしか増大しない。しかしながら、キュアリングのドウェル時間を1.5分から2分に増加させた場合に、抗菌性能が2の対数減少値から3.5超の対数減少値まで顕著に増大することが認められた。また、2分を超えるキュアリングのドウェル時間で布地を試験した場合、布地の抗菌特性が実際にはわずかに減少することが観察された。
最大キュアリング温度を180℃に維持した上でキュアリングのドウェル時間を変化させてキュアリングした布地に対して浸出試験を行ったところ、以下の結果(図21Bのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果及び添付の図21Bのグラフから観察することができるように、キュアリングのドウェル時間を30秒とした場合に浸出値は28ppmと高い。しかしながら、キュアリング温度180℃でキュアリングのドウェル時間を2分に設定すると、浸出は2ppmと低い値まで激減する。一方、キュアリングのドウェル時間を2分超まで増加させると、浸出も増大する。
したがって、キュアリング温度180℃で2分というキュアリングのドウェル時間が、キュアリングした織地の性能及び浸出特性の両方で最適な結果をもたらすことが明らかである。
II.2.(1)キュアリング温度170℃での吸尽後のキュアリングのドウェル時間
先の試験から最適と観察された吸尽プロセスのパラメータを維持した上で、キュアリングパラメータを変化させることで得られる布地に対して試験を行った。特に、キュアリング温度の変化により異なる最適なキュアリングのドウェル時間が得られるかを試験した。
キュアリング温度を170℃に維持した上で様々なキュアリングのドウェル時間でキュアリングした布地に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図22Aのグラフにも示す)が達成された。
180℃の(最大)キュアリング温度でキュアリングした布地の性能と比較して、170℃でキュアリングした布地の性能はより良好な結果を示さないが、キュアリングのドウェル時間を2分に維持して得られる布地が、最大キュアリング温度が170℃であっても依然として最良の抗菌性能をもたらすことが試験結果から明らかである。
キュアリング温度を170℃に維持した上でキュアリングのドウェル時間を変化させてキュアリングした布地に対して浸出試験を行ったところ、以下の結果(図22Bのグラフにも示す)が達成された。
この場合も、性能試験において注目されるように、キュアリング温度180℃でキュアリングした布地の浸出特性は、170℃でキュアリングした布地と比較してより少ない浸出をもたらす。キュアリングのドウェル時間を2分とした場合に、より短い又は長いキュアリングのドウェル時間と比較して浸出値が最小のままであることが注目された。
II.2.(2)キュアリング温度190℃での吸尽後のキュアリングのドウェル時間
先の試験から最適と観察された吸尽プロセスのパラメータを維持した上で、キュアリングパラメータを変化させることで得られる布地に対してさらなる試験を行った。特に、キュアリング温度の増大の変化により異なる最適なキュアリングのドウェル時間が得られるかを試験した。
キュアリング温度を190℃に維持した上で様々なキュアリングのドウェル時間でキュアリングした布地に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図23Aのグラフにも示す)が達成された。
ここで、キュアリング温度180℃でキュアリングした布地の性能と比較して、190℃でキュアリングした布地の性能がより良好な結果を示すことが認められた。さらに、試験結果から明らかであるように、キュアリングのドウェル時間を2分に維持して得られる布地が最良の抗菌特性を示す。
キュアリング温度を190℃に維持した上でキュアリングのドウェル時間を変化させてキュアリングした布地に対して浸出試験を行ったところ、以下の結果(図23Bのグラフにも示す)が達成された。
布地を180℃でキュアリングした場合の浸出と比較して、190℃でキュアリングした布地において抗菌性能が増大することが示されたが、浸出が顕著に高いことが認められた。しかしながら、布地を2分というキュアリングのドウェル時間でキュアリングした場合に浸出が最小であることも認められた。
同じ試験を160℃及び200℃のキュアリング温度でキュアリングした布地に対しても行ったが、この場合もキュアリング温度にかかわらず、キュアリングのドウェル時間を2分とした場合に特性が最良であることが観察された。
したがって、キュアリング温度にかかわらず、2分というキュアリングのドウェル時間が最良の時間であることが試験から判明した。
II.2.(3)様々な織地を用いた吸尽後のキュアリングのドウェル時間
布地材料の処理を上記のプロセスに記載のように行った。すなわち、布地を理想的と観察された一般パラメータを用いて吸尽プロセス、続いて乾燥プロセス及びキュアリングプロセスによって処理した。さらに、様々なキュアリングのドウェル時間でのキュアリングプロセスを2つの異なる織地で行った。純(100%)綿及び純ポリエステルの織地(番手 縦糸20s及び横糸20s、染色織地、シェード オフホワイト、幅150cm、織地重量220g/m2)の吸尽パラメータを、様々な時間のキュアリングにより試験した。次いで、プロセスにより得られる布地を各々性能試験に供した。
キュアリング温度を180℃に維持した上で様々なキュアリングのドウェル時間でキュアリングした布地に対して性能試験を行ったところ、以下の結果(図24Aのグラフにも示す)が達成された。
上記の結果及び添付の図24Aのグラフから分かるように、最良の結果はキュアリングのドウェル時間を2分とすることで達成される。
これは下記試験に示されるように、純ポリエステル布地についても観察された。キュアリングした織地は上記と同じプロセスで得た。キュアリング温度を180℃に維持した上で、キュアリングのドウェル時間を変化させてキュアリングしたポリエステル布地に対して性能試験を行ったところ、下記の結果が達成された。
上記の結果及び添付の図24Bのグラフから分かるように、ポリエステル織地を使用した場合であっても、最良の結果は織地のキュアリングのドウェル時間を2分とすることで達成される。
II.3.異なる種類の布地材料の性能の試験
上記の試験では、後洗浄し、キュアリングした布地が浸出特性の大きな改善を示すことが観察された。ここで、異なる織地重量でも同じ特性が認められるかを観察する。
この試験のために2つの異なる重量の綿織地を採用した。初めに、織地重量100g/m2(GSM)、幅150cmの100%綿を使用した。次に、同じ試験を300GSMの織地重量で行った。先の試験を織地重量210GSMの織地で行っていることに注意する。織地を、活性成分の濃度を変化させた80℃の液剤中で60分の吸尽プロセスに供した。以下の結果が観察され、これらを図25A及び図25Bのグラフに示す。
上記の結果から観察されるように、吸尽プロセス時間を60分、液剤温度を80℃に維持した場合に、使用する綿織地の重量にかかわらず、溶液濃度が1%o.w.f.の液剤を用いた場合の布地の性能特性はより高い。
これは密度を変化させた様々な織地を代わりに試験した場合にも明らかである。吸尽プロセス及びキュアリングプロセスを含む上記のプロセスによって得られた、100GSM及び300GSMの2つの異なる混紡の2つのポリエステル織地を用いた。織地を性能試験に供した場合に下記の結果が達成される(図26A及び図26Bのグラフにも示す)。
上記の結果から観察されるように、吸尽プロセスのパラメータを60分及び80℃に維持した場合に、使用するポリエステル織地の重量にかかわらず、溶液濃度が1%o.w.f.の布地の性能特性はより高い。
したがって、1%o.w.f.という活性成分を含む液剤溶液の最適な値が、上記で選択されたプロセスパラメータとともに、使用する織地の重量又は織地のタイプにかかわらず性能特性の改善をもたらす。
II.3.様々なキュアリング温度でのパディングプロセスの抗菌剤の濃度
II.3.(1)布地材料の処理
1gpl、5gpl又は10gplの溶液濃度を達成するのに十分な量のポリヘキサメチレンビグアニド、銀カチオン、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(オルガノシラン)、プロピコナゾール又はポリグルコサミン(キトサン)を含有する溶液を水に添加することによってパディング液剤を作製した。様々な溶液中の活性物質の濃度は、上記実験例II.1(1)の吸尽プロセスと同じにした。液剤は、上記実験例II.1(1)のようにブロックイソシアネート及びクエン酸をさらに含むものとした。液剤のpHを0.03gplのクエン酸で調整し、pH5〜pH6、好ましくはpH5.5に維持した。
パディングプロセスの液剤の温度は20℃から40℃とした。液剤はそれぞれのパディングマングルにポンプから供給した。パディングマングル圧は2バールとした。ピックアップ率は65%とした。次いで、布地材料を上記実験例I.1.(2)のように120℃で2分間乾燥させ、上記実験例II.1(1)のように120℃、140℃、150℃、160℃、及び180℃の(最大)キュアリング温度で2分間のキュアリングのドウェル時間にわたってテンタ内でキュアリングした。
II.1.(2)パディングプロセスにより得られる布地材料の性能の試験
パディング液剤の組成及びキュアリング温度を変化させたパディングプロセスに供した布地に対して性能及び浸出の試験を行った。特に、試験を5g/l(gpl)及び10g/lという2つの異なる溶液濃度で行い、キュアリングのドウェル時間を120℃から180℃で変化させた。以下の結果が布地に対する性能試験で達成された。
上記の結果及び図27Aのグラフに布地材料の抗菌性能を示す。濃度10gplでパディングし、180℃でキュアリングした布地材料は1.8〜2.2の対数減少値を示した。
処理済み布地材料の浸出試験の結果を図27Bに示す。布地材料からの個々の抗菌剤の浸出は、180℃でキュアリングした布地材料で激減した。例えば、濃度5gpl及び10gplでパディングした布地材料は、それぞれ最大1ppm及び2ppmの浸出を示した。
したがって、本発明者等はパディングプロセス後の所望のキュアリング温度が同様に180℃であると結論付けた。
実験例III.抗菌剤の混合物の吸尽パラメータ
III.1.混合物の吸尽パラメータ:抗菌剤の濃度
先の試験から、様々な種類の布地及び様々な活性剤について1%o.w.f.の吸尽液剤溶液での個々の抗菌剤の性能が、性能と浸出との最適なバランスをもたらすのに最適であることが見出された。また、上記の様々な試験から最適な吸尽液剤温度が80℃、吸尽時間が60分であると決定された。
個々の薬剤の各々の1%o.w.f.溶液しか使用しなかったが、様々な薬剤の混合物を作製することができる。次いで、このような様々な%o.w.f.の各薬剤を含有する混合物を性能及び浸出について試験した。結果は下記の通りであり、図28A及び図28Bにも示す。
先の試験で注目されたように、任意の個々の薬剤の1%o.w.f.溶液の対数減少値は、3未満の対数減少値にとどまり(図15Cを参照されたい)、5%というより高いo.w.f.で最大2.8の対数減少値が観察された(図18Aを参照されたい)。しかしながら、上記の結果から分かるように、1%o.w.f.の各溶液を含有する混合物は4.8の対数減少値という著しい性能をもたらした。これは、個々の薬剤を準備した場合に観察された最高の性能よりも100倍以上良好である。
また、結果に見られるように、浸出は性能の高い個々の薬剤を準備した場合に観察されたものの半分である(図18Bを参照されたい)。
III.2.吸尽及びキュアリング後のさらなる加工、すなわち洗浄及び乾燥
任意の残留化学物質を除去するために、先の試験で述べられたような様々な混合物に供した布地をキュアリング後にさらに洗浄プロセスに供する。布地は通常、40℃のジガー装置内で30分間洗浄し、120℃のテンタ装置内で2分間乾燥させる。次いで、布地の性能及び浸出を試験すると、下記結果が示され、これらを図29A及び図29Bに示す。
先の結果と比較した場合、性能はほぼ同じままであるが、浸出は予洗浄した布地と比較して大幅に低下し、一方で抗菌特性はいくらか低下したが、概して同じままである。上記から分かるように、活性成分を含有する全溶液が0.2%o.w.f.という液剤混合物を用いた吸尽プロセスによって布地を処理した場合に、後洗浄した布地の各活性成分の浸出は0.2ppmから0.4ppmと低い。混合物中に1%と高o.w.f.の各活性成分を含有する溶液を使用した場合であっても、布地は依然として、洗浄していない布地と比較して最大1ppmという比較的低い浸出を示す。
個々の活性成分が各々そのように低いppm量で浸出するということは、様々な構成成分のそのような低いレベルが限界をはるかに下回るレベルを保つために非常に有利であることに留意すべきである。
III.3.パディングプロセスの抗菌剤混合物の濃度
様々な活性成分の混合物が同様にパディングプロセスに使用され、優れた布地特性をもたらすことが可能であるかを決定するために試験を行った。
活性成分を含有する各溶液を所定の濃度(それぞれ1g/l、5g/l及び10g/l)として混合物を調製し、この濃度をパディングプロセスに用いた。パディングプロセスのピックアップ率は約65%とした。次いで、上記実験例I.1.(1)のように布地材料を乾燥させ、最高温度180℃で2分間キュアリングした。上記のパディングプロセスによって得られる各布地について性能試験及び浸出試験を行ったところ、以下の結果が達成された。
吸尽プロセスで注目される傾向と同様に、結果並びに図30A及び図30Bから、混合物が個々の薬剤よりも良好な結果をもたらすことが明らかである。
III.4.パディング及びキュアリング後のさらなる加工、すなわち洗浄及び乾燥
パディングプロセスで得られる任意の残留化学物質を除去するために、キュアリング後に布地を40℃のジガー装置内で30分間洗浄し、120℃のテンタ装置内で2分間乾燥させた。以下の結果が観察され、これらを図31A及び図31Bにも示す。
混合物による吸尽プロセス後に洗浄した布地についても観察されたように、性能は比較的同じままであるが、浸出が大幅に低下することが観察される。
実験例IV.混合物を用いた2サイクルプロセス(吸尽プロセス及びパディングプロセス)
これまで、キュアリング前の布地の吸尽又はパディングという単一のプロセスサイクルのみを説明した。以下では、吸尽及びパディングの2つのプロセスサイクルで処理した布地に対する試験を述べる。
吸尽プロセスについては、活性成分を含む各溶液を所定の濃度(0.1%、0.2%、0.5%及び1%o.w.f.)として混合物を調製した。溶液は上記実験例I.1に記載したものと同じにした。吸尽温度を80℃、時間を60分に設定した。次いで、布地材料を120℃の温度で2分間乾燥させた(キュアリングは行わない)。
パディングプロセスについては、活性成分を含む各溶液(吸尽プロセスと同じ溶液)を所定の濃度(それぞれ1g/l、5g/l及び10g/l)として混合物を調製し、この濃度をパディングプロセスに用いた。パディングプロセスのピックアップ率は約65%とした。しかしながら、1回目のプロセスサイクル後に、布地は既に化学物質である程度まで飽和しているため、織地にパディングした抗菌剤の残りが織地に恒久的に固定されず、その後の洗浄工程18中に洗い流されるという点で、効果的な抗菌剤のピックアップ率はわずか約40%であると考えられる。次いで、布地材料を乾燥させ、最高温度180℃でテンタに1回通すことで合計2分間にわたってキュアリングした。最大キュアリング温度は60秒間適用した(テンタの8つのうち4つのチャンバ内)。
各プロセス後に布地を乾燥の要件及び必要性に応じて乾燥させた。通常は、布地をテンタ内、120℃の温度で2分間の乾燥に供する。上述のように、布地を吸尽プロセスに供した後、洗浄プロセスの前に乾燥させることで、活性剤が布地中に保持され、洗浄プロセス中に完全には洗い流されないようにする。同様に、例えば次のサイクルに供する前に布地が乾燥しているように、各洗浄プロセス後に乾燥プロセスを行った。
IV.1.吸尽プロセスに続くパディングプロセス
この2サイクルプロセスでは、吸尽プロセスに続いてパディングプロセスを行った。布地を上記の条件に従って吸尽プロセスに供した後、同様に上記で説明したパディングプロセスを行った。吸尽プロセスとパディングプロセスとの間に布地を120℃のテンタ内で2分間乾燥させた。得られる結果は下記の通りであり、図32A及び図32Bに示す。
上記に見られるように、2サイクルプロセスにより6.5を超える対数減少値という非常に高い性能を有する布地が得られ(図32A)、これは以前の結果によって達成されるものの1000倍超である。しかしながら、図32Bに見られるように浸出は比較的高い。
IV.2.洗浄サイクルを有する吸尽プロセスに続くパディングプロセス
先の試験に見られるように、布地の洗浄は薬剤の浸出を低下させる。したがって、洗浄工程を有する2サイクルプロセスを行う。
第1の試験については、吸尽プロセスにより得られる布地を120℃で乾燥させた後、パディングサイクルの前に洗浄する。以下の結果が観察され、これらを図33A及び図33Bにも示す。
浸出値が高レベルから大幅に減少することが認められる。
次の試験については、吸尽に続く乾燥、パディング及び乾燥/キュアリングの2サイクルプロセスにより得られる布地を洗浄に供した後、先に記載のように乾燥させる。以下の結果が観察され、これらを図34A及び図34Bにも示す。
この場合も、浸出値は減少を示すが、依然として望ましいものではない。
IV.3.各サイクルに洗浄工程を有する吸尽プロセスに続くパディングプロセス
最後に、2つのサイクルの各々に洗浄工程を用いた試験を導入する。すなわち、吸尽プロセス後に布地を乾燥(120℃で2分間)させた後、洗浄する。次いで、洗浄した布地を乾燥(120℃で2分間)に供した後、洗浄及び乾燥させた布地をパディングプロセスに供する。パディングプロセス後に得られる布地を乾燥させ、テンタに1回通すことでキュアリングし、再度洗浄に供する(続いて120℃で2分間乾燥させる)。サイクル後に洗浄工程及び乾燥工程を有する2サイクルプロセスにより得られる布地に対して試験を行ったところ、以下の結果が得られた(図35A及び図35Bのグラフにも示す)。
上記の結果は浸出の著しい低下を示す。実際に、各サイクルに洗浄を含む2サイクルプロセスについては、吸尽プロセス中に0.1%o.w.f.、パディングプロセス中に1g/lと低い適用量の混合物であっても、依然として5.7の対数減少値という非常に高い性能をもたらすが、浸出値は0.2ppmと低いままである。
液剤
以下の記載は、第1のプロセスサイクル及び/又は第2のプロセスサイクルに使用することができる液剤に関する。
好ましい実施形態によれば、液剤は溶媒を含有する。溶媒は特に水である。好ましい実施形態では、液剤中に含有される溶媒の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは100%が水である。しかしながら、液剤は液剤の他の構成成分に適合する他の溶媒、例えばメチルアルコールを含有していてもよい。さらに、抗細菌化学物質は水中での溶解プロセスを促進し、加速する微量の溶媒を含有していてもよい。
布地材料上の抗菌剤の均等な分布がその抗菌性能に重要である。したがって、抗菌剤と、好ましくは抗菌剤の架橋に使用する任意の薬剤と、溶媒とが均一混合物を形成するものとする。すなわち、1以上の抗菌剤と、架橋に使用する任意の薬剤と、溶媒とはスラリを形成すべきではない。抗菌剤と、架橋に使用する任意の薬剤とを液剤に溶解することが好ましい。
一実施形態では、液剤は乳化剤、特にポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコール400モノラウレート、エチレンオキシド縮合体、脂肪アルコールエトキシレート、及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される乳化剤を含有する。液剤は、布地材料の重量に基づけば、0.05重量%から5重量%、好ましくは0.1重量%から2.5重量%の量で乳化剤を含有することができる。あるいは、液剤は、液剤1リットル当たり1グラムから50グラム、好ましくは液剤1リットル当たり1グラムから25グラムの量で乳化剤を含有することができる。使用する薬剤及び化学物質に応じて、乳化剤を吸尽液剤又はパディング液剤に使用することができ、吸尽液剤に使用するのが好ましい。他の例示的な実施形態では、用途に応じて乳化剤を布地材料重量100グラム当たり5mgから100mgの濃度で使用する。
本発明の一実施形態では、液剤は6.9以下、好ましくは6.5以下、より好ましくは6.3以下、特に6.0以下、最も好ましくは5.5以下のpH値を有する。液剤は3.0以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは4.5以上、最も好ましくは5.0以上のpH値を有するものとする。アルカリ性液剤溶液は腐食性であり、抗菌剤が布地材料に十分に付着しないという影響を有し、後に高い浸出をもたらすため、本発明の目的に奏功しない。弱酸性の液剤により薬剤と布地材料とが結び付けられると考えられる。pH値は有機酸を用いて設定又は調整することができる。クエン酸、酢酸又はそれらの組合せが特に好適であり、クエン酸を使用するのが好ましい。所望のpH値を達成するために、無機酸を好ましくは液剤1リットル当たり1グラムから5グラム、より好ましくは2グラムから4グラム、特に2.5グラムから3.5グラム、最も好ましくは約3グラムの濃度で使用する。
液剤の粘度は水の粘度よりも実質的に高くないのが好ましい。粘度が低いほど、液剤が布地材料の糸及び繊維により良好に浸透する。さらに、沈着物又はスケール生成の影響が高粘度の液剤に生じる可能性もある。これは、ローラ及び機械の他の部品上でより厚い液剤が蓄積し始め、スケール又は沈着物が形成されることを意味する。好ましくは、20℃及び/又は80℃での第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤の動的粘度(センチポアズ(cP))は、それぞれ20℃及び/又は80℃での水の動的粘度の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に2%以下、最も好ましくは約0%以下高い。
布地材料
概して、任意の布地材料を出発布地材料として使用することができる。本発明の一実施形態によれば、出発布地材料はヒドロキシル基、ペプチド基及び/又はカルボニル基を含む。これらの基により、1以上の抗菌剤が布地材料に固定、結合、付着又は接着することが可能になる。例示的な実施形態では、出発布地材料はペプチド基及び/又はヒドロキシル基、特にヒドロキシル基を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、布地材料はセルロース系布地材料、好ましくは非不活性の合成布地材料、又は少なくともその25%を含む混紡、特にセルロース系布地材料と合成布地材料との混紡である。セルロース系布地材料及び非不活性の合成布地材料はどちらも、1以上の抗菌剤を布地材料に結合する能力を有する官能基を含む。
本発明の特定の実施形態によれば、セルロース系布地材料は、綿、セルロース、ビスコース、リネン、レーヨン、ヘンプ、ラミー、ジュート、及びそれらの組合せ(混紡)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。それらの布地材料は綿及び/又はビスコースであるのが好ましく、綿が特に好ましい。
本発明の別の特定の実施形態によれば、合成布地材料は、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、アクリル系ポリエステル、スパンデックス(エラスタン、ライクラ)、アラミド、モダール、硫黄、ピリラクチド(PLA)、リヨセル、ポリブチルテトラクロリド(PBT)、及びそれらの組合せ(混紡)からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。それらの布地材料はポリエステル及び/ポリアミド、特にポリエステルであるのが好ましい。
本発明のさらに具体的な実施形態によれば、布地材料は、綿、ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡を含む。布地材料は20%から60%の綿、より好ましくは25%から50%の綿、特に30%から40%の綿を含むのが好ましい。特に、布地材料は40%から80%のポリエステル、好ましくは50%から75%のポリエステル、より好ましくは60%から70%のポリエステルを含む。
純絹又は純ウールのような純タンパク質系布地は好ましくない。しかしながら、25%以上のセルロース系布地及び/又は合成布地を含むタンパク質系布地の混紡では、本発明を良好に実施することができる。ケブラー系織地を使用してもよく、本発明で好ましいと言及される温度よりも高温でもキュアリングすることができる。しかしながら、ケブラーは大抵の用途で法外に高価である。
「布地材料」という用語は本明細書で使用される場合、任意の形態の布地材料を意味し、繊維、糸、縫糸、諸撚糸、繊維及び/又は糸から作製される織地、並びに繊維、糸及び/又は織地から作製される最終製品が含まれる。布地材料は、織り、編み、かぎ針編み、接着及び/又は不織の織地であり得る。布地材料は、紡績されたもの、電界紡糸されたもの、延伸されたもの又は押出されたものであってもよい。
好ましい布地材料は、マルチフィラメント織地、すなわちマルチフィラメント糸でできた織地である。織地は、処理が糸又はさらには繊維の処理よりも顕著に低コストであることから好ましい。マルチフィラメント糸できた織地は、より強く、より高表面積であり、混紡することができることから、モノフィラメント糸でできた織地と比べて好ましい。
出発布地材料は、本来親水性であり、液剤(複数の場合もある)を障害又は干渉なしに布地に付与することができるようにすべての助剤及び汚染物質が取り除かれている必要がある。
抗菌剤及び他の薬剤
多種多様な抗菌剤を、上述した本発明のプロセスを用いて布地に固定することができる。しかしながら、ナノ粒子又はナノ粒子形態の抗菌剤は好ましくない。
さらに、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤中の抗菌剤は、非イオン性又はカチオン性であり、アニオン性ではないのが好ましい。本発明者等は、アニオン性化合物が布地に十分に結合せず、例えば塩によって容易に除去され得ることを見出した。
抗菌剤は、特に薬剤が第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、ポリグルコサミン、無機若しくは有機マトリクス内に捕捉され得る銀カチオン、若しくはポリヘキサメチレンビグアニドである場合に直接、又は特に薬剤がアゾール系化合物である場合に架橋によって布地材料に結合するのが好ましい。シクロデキストリン、及び/又は包接錯体、例えば繊維反応性シクロデキストリン誘導体及び抗菌剤の包接錯体の使用は、特にシクロデキストリンが大抵の用途で法外に高価であることから抗菌剤の結合に好ましくない。
本発明の一実施形態によると、抗菌剤は第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン(キトサン)、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドから選択される。一実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤は第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも1つの抗菌剤を含む。
ある実施形態では、液剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される抗菌剤のうち2つ以上、3つ以上又は4つ以上の抗菌剤を含む。
複数の抗菌剤の使用は、単一の薬剤の使用に比べて以下の利点を有する。
第一に、異なる薬剤は異なる抗菌効果を有する。一部は細菌、一部はウィルス、また一部は真菌に対してより良好に作用し得る。様々な薬剤の添加は、抗菌布地によって殺菌され得る微生物の範囲を増大する。
第二に、様々な薬剤の使用は同じ生物であっても顕著に高い殺菌率をもたらすことができる。このことは上記実験例IIIに示し、さらに下記例LG/BP 01〜07の説明に示す。より高い殺菌率は異なる薬剤間の相乗効果によるものと考えられる。クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella Pneumoniae)又はカンジダ菌等のより難解な構造の微生物に関しては、単一の薬剤では十分に効果的でない可能性がある。しかしながら、異なる薬剤は異なる殺菌機構のために相乗的に作用することができる。さらに、様々な薬剤の使用はより高い総量の薬剤を布地に結合することを可能し得る。上記実験例I.1.及びI.4.によって示されたように、試験した薬剤については、浸出せずに又は実質的に浸出せずに布地に接着することができる薬剤の量に固有の限界が見られる。例えば、この限界はオルガノシランでは約0.7%o.w.f.、プロピコナゾールでは約0.25%o.w.f.、キトサン及びPHMBでは約0.2%o.w.f.、無機又は有機マトリクス内に捕捉された銀カチオンでは約0.01%o.w.f.であることが決定された。しかしながら、布地材料が1つの薬剤について飽和した場合であっても、別の薬剤のための「空間」が依然として存在し得る。例えば、0.25%o.w.f.のプロピコナゾール、0.2%o.w.f.のキトサン及び0.2%o.w.f.のPHMBを同じ1つの布地に接着することができた。本発明者等は、本発明の好ましい布地材料に接着することができる抗菌剤の総量が約0.7%から1.3%o.w.f.であると考える。
第三に、いくつかの薬剤の使用により薬剤当たりの浸出率を低下させることが可能となる。0.6%o.w.f.のオルガノシランの代わりに各0.2%o.w.f.のオルガノシラン、PHMB及びキトサンを織地に接着すると、オルガノシランの浸出が少なくとも3分の2低下すると予想することができる。PHMB及びキトサンの浸出が追加されるが、3つすべての薬剤が低濃度でしか使用されないため、薬剤当たりの浸出値は低い。健康及び環境に対する脅威を決定する浸出物質の総量ではなく、物質当たりの量が低くなる。このため、上記の例の浸出物質の総量が同じであっても薬剤当たりの浸出値は低くなり、非常に有益である。
第四に、いくつかの薬剤の使用によって物質の望ましくない固有の影響を低減するか、又はさらには相殺することができる。例えば、オルガノシランは本質的に疎水性であり、これは多くの布地の用途に望ましくない特性である。かかる用途については、オルガノシランの濃度を最低限に維持しなくてはならない。
第五に、本発明の好ましい薬剤のいくつかは他の薬剤、例えば銀カチオン及びキトサンよりも高価である。これらの薬剤の濃度を低下させ、他の薬剤により補うことで、抗菌性能を実質的により低コストで達成することができる。
本発明の利点の1つは、いくつかの抗菌剤を併用することの利点が認識されたことである。本発明の別の功績は、布地材料に結合することができるいくつかの非常に効果的な抗菌剤が特定されたことである。本発明のさらなる功績は、1以上の付与サイクルの同じ1回の液剤付与プロセスで、多くの異なる薬剤を浸出させずに又は実質的に浸出させずに布地材料に付与することができるプロセスが特定されたことである。
ある実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの抗菌剤を含む。かかる組合せにより高価である銀カチオンの使用が不要となり、したがって、低コストで効率的な抗菌布地を得ることができる。
好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物と、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの抗菌剤とを含む。オルガノシランは非常に良好に布地に接着し、広範な生物に対して効果的であるため好ましい。
いくつかの好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物と、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの抗菌剤とを含む。かかる選択により先の2つの段落で述べた実施形態の利点が組み合わせられる。
さらに好ましい実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン及びアゾール系化合物を含む。これら3つの薬剤の組合せは、ポリエステル又はポリアミドのような純合成布地であっても付与できるという利点を有する。このことは、例えばキトサン及びPHMBには合成布地に接着することができないため当てはまらない。
ある実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の1以上の抗菌剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリヘキサメチレンビグアニド及びアゾール系化合物を含む。かかる組合せにより比較的高価なキトサンの使用が不要となり、したがって、低コストで効率的な抗菌布地を得ることができる。
ある実施形態では、第1及び/又は第2のプロセスサイクルの液剤又は第1及び第2のプロセスサイクル両方の液剤中の1以上の抗菌剤は、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは4つすべての抗菌剤を含む。かかる組合せによりオルガノシランの使用が不要となり得る。用途によっては、オルガノシランは布地をやや疎水性にし、及び/又は生分解性でないために好ましくない。
別の実施形態では、液剤は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物、及びポリヘキサメチレンビグアナイドを含む。かかる抗菌剤の組合せが、例えば布地材料としての綿又はセルロース系材料に特に適している。
好ましい実施形態では、全プロセスサイクルの液剤中の抗菌剤を、布地材料の重量に基づけば、合計で0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に0.6重量%以上、最も好ましくは0.7重量%以上の量で布地材料に付与する。さらに、抗菌剤を布地材料の重量に基づけば、合計で2.5重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.7重量%以下、特に1.5重量%以下、最も好ましくは1.3重量%以下の量で付与するのが好ましい。上述のように、本発明者等は、本発明の好ましい布地材料に浸出せずに又は実質的に浸出せずに接着することができる抗菌剤の最大総量が約0.7%から1.3%o.w.f.であると考える。これは包括的な実証研究で決定された値であり、その研究の一部を上記の実験例の説明において示す。
抗菌剤は第4級アンモニウムオルガノシラン化合物を含み得る。好適な第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は下記式を有する。
ここで、上記ラジカルは、
R
1、R
2及びR
3は、C
1〜C
12アルキル基、特にC
1〜C
6アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R
4及びR
5は、C
1〜C
18アルキル基、C
1〜C
18ヒドロキシアルキル基、C
3〜C
7シクロアルキル基、フェニル基、又はC
7〜C
10アラルキル基、特にC
1〜C
18アルキル基、好ましくはメチル基であり、
R
6は、C
1〜C
18アルキル基、特にC
8〜C
18アルキル基であり、
X
−は、対イオン及びアニオン、例えばクロリド基、ブロミド基、フルオリド基、ヨージド基、アセテート基又はスルホネート基であり、好ましくはX
−は塩化物又は臭化物であり、
nは、1〜6の整数、特に1〜4の整数、好ましくは3である
という意味を互いに独立して持つ。「アルキル基」という用語は本明細書で使用される場合、分岐又は非分岐アルキル基を意味する。
第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は当該技術分野で既知であり、市販されている。かかる化合物は、布地材料の官能基への結合を可能にする特定の官能基を有する。本明細書に開示の反応条件下で、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、オルガノシラン部分と布地の官能基との共有結合を介して布地材料に結合する。さらに、オルガノシラン部分は互いに重合し、-O-Si-O-結合を生じる。考え得るアンモニウムオルガノシランとヒドロキシル基を有する布地材料との反応機構を以下に示す。
考え得るアンモニウムオルガノシランとペプチド基(-CO-NH-)を有する絹との反応機構を以下に示す。
第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド又はジメチルテトラデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、最も好ましくはジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドを含み得る。ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムの構造は以下の通りであり(対イオンなしで示す)、シラン部分及びアンモニウム部分の機能をさらに示す。
ジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドは、例えばAegis AEM 5772/5(Aegis社製)として市販されている。ジメチルテトラデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドは、例えばSanitized T 99-19(Sanitized AG社(スイス連邦)製)として市販されている。他の好適なアンモニウムシラン化合物は、例えば米国特許出願公開第2011/0271873号及び米国特許出願公開第2006/0193816号及び米国特許第8,906,115号に記載されている。第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から10重量%の量、特に0.1重量%から5重量%又は0.1重量%から3重量%の量で使用するのが好ましい。第4級アンモニウムオルガノシラン化合物は、全プロセスサイクルの液剤中で、布地材料の重量に基づけば、合計で0.2重量%から1.5重量%の量、特に0.25重量%から1.2重量%又は0.3重量%から1.0重量%の量で布地材料に付与するのが好ましい。
抗菌剤は銀カチオンを含み得る。特定の実施形態では、銀カチオンは無機又は有機マトリクス内に捕捉される。無機マトリクスはアルミノケイ酸塩であるのが好ましい。有機マトリクスはポリマーマトリクスであるのが好ましい。かかる銀含有抗菌剤は当該技術分野で既知であり、市販されている。
本発明の例示的な実施形態では、アルミノケイ酸塩はナトリウム−ポリ(シアレート−ジシロキソ)化合物である。アルミノケイ酸塩及びシアレート構造の例、並びに布地材料への結合を本明細書に開示の反応条件下で生じさせることができる方法を以下に示す。
本発明の例示的な実施形態では、銀カチオンが捕捉されるポリマーマトリクスはアクリルポリマーである。かかる銀含有抗菌剤は当該技術分野で既知であり、例えばアクリルポリマー(複数の場合もある)、硝酸銀、硝酸及び水を含有するSilvaDur AQ Antimicrobial(Rohm and Haas社製)として市販されている。本発明の別の例示的な実施形態では、銀カチオンがポリマーマトリクス内に捕捉されている。かかる銀含有抗菌剤は当該技術分野で既知であり、例えばポリマー(複数の場合もある)、銀カチオン、アンモニア、エタノール及び水を含有するSILVADUR(商標)930 Antimicrobial(Dow Chemical Company社)として市販されている。無機又は有機マトリクス内に捕捉された銀カチオンは、全プロセスサイクルの液剤中で、布地材料の重量に基づけば、合計で0.001重量%から0.1重量%、好ましくは0.002重量%から0.05重量%の量、より好ましくは0.003重量%から0.02重量%又は約0.01重量%の量で布地材料に付与するのが好ましい。
本発明の別の実施形態では、抗菌剤はポリグルコサミン(キトサン)を含む。キトサンは以下に示す構造を有し、nは当該技術分野で既知のモノマー単位の数を表す。
本明細書に開示の反応条件下で、キトサンは絹の-NH基と反応することができ、下記に示す共有結合を生じる。
本明細書に開示の反応条件下で、キトサンはセルロース系材料の官能基と反応することができ、下記に示す共有結合を生じる。
キトサンは当該技術分野で既知であり、市販されている。キトサンは、布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から5重量%の量、特に0.2重量%から3重量%又は0.2重量%から2重量%の量で使用するのが好ましい。キトサンは、全プロセスサイクルの液剤中で、布地材料の重量に基づけば、合計で0.02重量%から0.5重量%、より好ましくは0.08重量%から0.4重量%、さらにより好ましくは0.12重量%から0.3重量%の量で布地材料に付与するのが好ましい。
本発明の別の実施形態では、抗菌剤はポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を含む。ポリヘキサメチレンビグアニドは以下に示す構造を有し、nは当該技術分野で既知のモノマー単位の数を表す。
本明細書に開示の反応条件下で、ポリヘキサメチレンビグアニドはセルロースのヒドロキシル基と反応して、以下に示す共有結合を形成することができる。
本明細書に開示の反応条件下で、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)は絹繊維のカルボニル基と反応して、以下に示す共有結合を形成することができる。
ポリヘキサメチレンビグアニドは当該技術分野で既知であり、市販されている。ポリヘキサメチレンビグアニドは、布地材料の重量に基づけば、0.05重量%から5重量%の量、好ましくは0.1重量%から3重量%又は0.2重量%から2重量%の量で使用することができる。ポリヘキサメチレンビグアニドは、全プロセスサイクルの液剤中で、布地材料の重量に基づけば、合計で0.02重量%から0.5重量%、より好ましくは0.08重量%から0.4重量%、さらにより好ましくは0.12重量%から0.3重量%の量で布地材料に付与するのが好ましい。
本発明の別の実施形態では、抗菌剤はアゾール系化合物を含む。アゾール系化合物はチアベンダゾール、カルベンダジム又はトリアゾール系化合物であるのが好ましい。トリアゾール系化合物は例えばプロピコナゾールであり得る。プロピコナゾールは以下に示す構造を有する。
プロピコナゾールは当該技術分野で既知であり、例えばBiogard PPZ 250(Beyond Surface Technologies社(スイス連邦)製)として市販されている。プロピコナゾールは架橋剤、特に好ましくはウレタン結合をもたらすブロックイソシアネート化合物、又はアクリレート系製品を用いて布地材料に結合することができる。プロピコナゾールを使用する場合、架橋剤を液剤、特に吸尽液剤中で使用するのが好ましい。プロピコナゾールの配合物が架橋剤を含有するか、又は架橋剤がプロピコナゾール配合物の一部であるのがさらにより好ましい。さらに、プロピコナゾールを乳化剤とともに使用するのが好ましい。プロピコナゾールは、布地材料の重量に基づけば、0.05重量%から5重量%の量、特に0.05重量%から3重量%又は0.1重量%から2重量%の量で使用するのが好ましい。プロピコナゾールは、全プロセスサイクルの液剤中で、布地材料の重量に基づけば、合計で0.05重量%から0.6重量%、より好ましくは0.10重量%から0.5重量%、さらにより好ましくは0.15重量%から0.4重量%、最も好ましくは0.2重量%から0.3重量%の量で布地材料に付与するのが好ましい。
例示的な実施形態では、抗菌剤は第4級アンモニウムオルガノシラン化合物及び銀カチオンを含み、好ましくはポリヘキサメチレンビグアニド及び/又はポリグルコサミン及び/又はアゾール系化合物を含まない。別の例示的な実施形態では、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、ポリヘキサメチレンビグアニド及び銀カチオンの組合せが含まれ、特にポリグルコサミン及び/又はアゾール系化合物は含まれない。かかる組合せは合成材料、綿及びセルロース系材料等の多くの布地材料に好適である。別の例示的な実施形態は、好ましくはアゾール系化合物を含まない、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリグルコサミンの組合せを提供する。別の例示的な実施形態は、第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、好ましくはさらにポリグルコサミンを含まない、銀カチオン、ポリヘキサメチレンビグアニド及びアゾール系化合物の組合せを提供する。
例示的な実施形態では、液剤は、布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から20重量%、特に0.2重量%から15重量%、好ましくは0.5重量%から10重量%、より好ましくは1重量%から8重量%、最も好ましくは1重量%から5重量%又は0.03重量%から4重量%の量で1以上の抗菌剤を含有する。かかる量が吸尽液剤中で特に使用される。
本発明のさらなる実施形態では、出発布地材料を、1以上のさらなる抗菌剤、特に塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;塩化ベンゾキソニウム;デカリニウム;塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム;ヒドロキシル基又はメトキシ基又はエトキシ基のようなアルコキシ基を有する反応性アミノシリコーンと必要に応じて組み合わせた臭化セトリモニウム;2−フェニルフェノール、アシベンゾラール、パクロブトラゾール、アゾキシストロビン、エポキシコナゾール、ビナパクリル、イプロジオン、トリアジメホン、フベリダゾール、フルシラゾール、2,4,6−トリブロモフェノール、ビンクロゾリン、ピラゾホス、テブコナゾール、メタラキシル、ジクロフルアニド、ストロビルリン、ミクロブタニル、ブロックイソシアネートを有するフェンプロピモルフ、塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、フェンチクロール、9−アミノアクリジン、ジブロモプロパミジン、クロロタロニル、ポビドン−ヨード、フェナミドン、ペンシクロン、セチルピリジニウムクロリド、セトリモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ブピリマート、フルオピコリド、ヘキサクロロフェン、トリクロカルバン、ニトロフラン、クリオキノール、メチルパラベン、プロパモカルブ、シンナムアルデヒド、ヘキサミジン、及びファルカリンジオールからなる群から選択される少なくとも1つで処理することができる。さらなる抗菌剤は、布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から10重量%の量、特に0.1重量%から5重量%、0.1重量%から3重量%又は0.1重量%から1重量%の量で使用するのが好ましい。
本発明の他の実施形態では、液剤は、撥水剤及び撥油剤、フルオロカーボン化学剤、耐摩耗剤、帯電防止剤、抗ピリング剤、ケアが簡単な樹脂、湿潤剤、ウィッキング化学剤、軟化剤、防蚊剤又は防虫剤、UV保護剤、汚れ放出剤、粘度調整剤、難燃剤、親水性ポリマー、ポリウレタン、香料、及びpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの機能性剤をさらに含む。機能性剤は、布地材料の重量に基づけば、0.1重量%から10重量%の量、特に0.1重量%から5重量%、0.1重量%から3重量%又は0.1重量%から1重量%の量で使用するのが好ましい。機能性剤は好ましくはパディングプロセスによって付与され、すなわち第2のプロセスサイクルの液剤中に含有されるが、吸尽プロセスサイクルの液剤中には含有されない。布地材料は、所望の機能性剤(複数の場合もある)を初期処理と同時に又はその後の加工段階中に添加することによって多機能性とすることができる。多機能性を付与するために、布地の片面又は両面を別個に又は一緒に処理することができる。
本発明の一実施形態(i)によれば、抗菌剤は第4級アンモニウムオルガノシラン化合物、銀カチオン、ポリグルコサミン、アゾール系化合物及びポリヘキサメチレンビグアニドから選択される。実施形態(i)の例示的な実施形態では、第4級アンモニウムオルガノシランの代わりにヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ又はエトキシを有する反応性アミノシリコーンと組み合わせた塩化ベンザルコニウム、又は塩化ベンゼトニウム、又は塩化ベンゾキソニウム、又はデクアリニウム、又はビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、又は臭化セトリモニウムで布地材料を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、ポリヘキサメチレンビグアニドの代わりにビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、又はジデシルジメチルアンモニウムクロリド、又はフェンチクロール、又は9−アミノアクリジン、又はジプロモプロパミジン、又はクロロタロニルで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、ポリヘキサメチレンビグアニド及び/又はアゾール系化合物の代わりにポビドン−ヨード、又はフェナミドン、又はペンシクロンで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、ポリヘキサメチレンビグアニド及び/又は第4級アンモニウムオルガノシランの代わりに塩化セチルピリジニウム、又はセトリモニウム、セチルトリメチルアミン、又はブピリマートで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、第4級アンモニウムオルガノシラン及びポリヘキサメチレンビグアニド又はアゾール系化合物の代わりにフルオピコリドで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、第4級アンモニウムオルガノシランの代わりにニトロフランで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、キトサン及びポリヘキサメチレンビグアニドの代わりにヘキサクロロフェン、又はトリクロカルバン、又はニトロフラン、又はクリオキノール、又はメチルパラベン、又はプロパモカルブ、又はシンナムアルデヒド、又はヘキサミジンで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、ポリヘキサメチレンビグアニド又はキトサンと組み合わせたファルカリンジオールで布地を処理する。実施形態(i)の例示的な実施形態では、アゾール系化合物の代わりに2−フェニルフェノール又はアシベンゾラール、又はパクロブトラゾール、又はアゾキシストロビン、又はエポキシコナゾール、又はビナパクリル、又はイプロジオン、又はトリアジメホン、又はフベリダゾール、又はフルシラゾール、又は2,4,6−トリブロモフェノール、又はビンクロゾリン、又はピラゾホス、又はテブコナゾール、又はメタラキシル、又はジクロフルアニド、又はストロビルリン、又はミクロブタニル、又はフェンプロピモルフで布地を処理する。
本発明の例示的な実施形態では、液剤はブロックイソシアネート付加物タイプから選択される架橋剤を、好ましくは用途に応じて布地材料重量100グラム当たり10mgから200mgの濃度範囲で含む。
オルガノシランの疎水性のために、抗菌剤としてオルガノシランで処理した布地材料は、その断面全体にわたってやや疎水性である。
本発明のさらなる実施形態では、液剤は、用途に応じて織地重量100グラム当たり10mgから500mgの各化学物質の活性成分という濃度範囲のメチルアルコール、オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド及びクロロプロピルトリヒドロキシシラン、ポリグルコサミン、塩化銀系化合物及びアルミノケイ酸塩担体ベース中の塩化銀、並びにポリヘキサメチレンビグアニドからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤と、用途に応じて織地重量100グラム当たり1mgから500mgの活性成分という濃度範囲の多糖又はオリゴ糖とを含む。
例LG/BP 01〜07
本発明によって処理した織地の特性を最適化するために、2つ以上の抗菌剤を使用することの影響を研究した。結果を図37の表にまとめ、図38にグラフで示す。抗菌特性の強い促進が実現可能であることが示される。
例LG/BP 01〜07では、35%綿及び65%ポリエステルを含む混紡織地(番手 縦糸20s及び横糸20s、構造100×64、未染色織地、幅150cm、織地重量210g/m2)を使用した。すべての織地例を80℃で60分間の吸尽、120℃で2分間の乾燥、洗浄、120℃で2分間の乾燥、パディング、180℃のキュアリング温度を1分間適用する2分間の乾燥/キュアリング、洗浄、及び120℃で2分間の乾燥の工程を含む上記実験例IV.3.において記載のプロセスによって抗菌処理した。例の作製に使用した吸尽液剤及びパディング液剤、抗菌剤、並びに抗菌剤を含有する溶液は、上記実験例におけるものと同じにした。
吸尽プロセスの液剤及びパディングプロセスの液剤中の抗菌剤(活性物質)の濃度(グラム/リットル(gpl))を、各例について図36の表に示す。吸尽率は98%とし、本発明者等は、織地に吸尽した抗菌剤が、実質的に100%の抗菌剤が洗浄後であっても織地に留まるような程度で乾燥後に織地に結合していると考える。パディングプロセスのピックアップ率は65%としたが、本発明者等は、織地にパディングした抗菌剤の残りが織地に恒久的に固定されず、パディング及びキュアリング後の洗浄工程中に洗い流されるという点で、効果的な抗菌剤のピックアップ率はわずか約40%であったと考える。これらの仮説に基づいて、吸尽プロセス及びパディングプロセスによる各活性物質の効果的な重量増加を算出し、図36の表に織地重量に対する(o.w.f.)%として示す。表の下3分の1に、各活性物質についての効果的な総重量増加(吸尽プロセス及びパディングプロセスを合わせた)、並びに吸尽プロセス及びパディングプロセスの各々についての全活性物質を合わせた総重量増加、及び両方のプロセスの全活性物質を合わせた重量増加(「総計」)を示す。表の表示には小数点以下2桁までしか用いていないため、0.02gplというパディング液剤中の銀カチオンの濃度(LG/BP 03〜06の値を参照されたい)が、ゼロに丸められた織地に対する銀の重量百分率を生じることに留意されたい。
図36の表に見られるように、例LG/BP 01はオルガノシランのみで処理し(吸尽及びパディングの両方)、例LG/BP 02はさらにPHMBで処理し(オルガノシランはより少ない)、例LG/BP 03はさらに銀カチオンで処理し、例LG/BP 04はさらに吸尽プロセス中にのみ付与されるキトサンで処理し(オルガノシラン及びPHMBはより少ない)、例LG/BP 05はさらにパディングプロセス中にのみ付与されるプロピコナゾールで処理した(オルガノシランはより少ない)。例LG/BP 06では、プロピコナゾールも吸尽プロセス中に付与した。
下記で述べるように、例LG/BP 06は驚くほど高い抗菌性能を既に有しているが、依然として自己消毒衣服における布地の使用に十分なほど高くはなかった。さらに、高価な成分であるキトサンの使用のために、所望されるほどコスト効率は高くない。したがって、より高い活性物質、特にオルガノシランの総量を有するが、キトサンを含有しない例LG/BP 07において最適化を行った。この例を手術室ガウン(「OTガウン」)の抗菌布地のベースとしたが、その配合はLG/BP 07とほぼ同じであり、図36の右端の欄に示す。OTガウンには例と同じ又は同様の出発織地を使用し(通常は例えば緑色又は薄青色に染色される点を除く)、同じプロセスで作製する。
例に対する浸出試験及び抗菌性能の試験を行った。結果を図37の表に示す。表中の空欄は、それぞれの試験をそれぞれの例又はそれぞれの生物について行っていないことを示す。
浸出試験手順は以下のようにした。100g(グラム)の織地及び対照織地を、密閉広口瓶内で10リットルの停滞蒸留水に液浸した。3日(72時間)後に、水サンプルを標準分析法の通りに浸出物質について試験した。下記でさらに説明する水フィルタの好ましい実施形態では、各フィルタが100gの織地に相当する210g/m2、長さ3メートル、幅0.16メートルの織地片を備えることから、100gの織地重量を選択した。
浸出を例LG/BP 06及びLG/BP 07についてのみ試験した。結果を図37の表に示すが、織地を処理した5つ(LG/BP 06)又は4つ(LG/BP 07)の抗菌剤の各々について1ppm(重量パーツパーミリオン)を下回る。
AATCC 100−2012、EPA試験法90072PA4及び特別指定試験の3つの異なる試験を抗菌性能について行った。
抗菌性能のAATCC 100−2012試験手順は、AATCC Technical Manual 2013の166-168ページに詳細に記載されている。織地及び対照織地のサンプルに図37の表に示す規定量の微小生物を、液体を織地に吸収させるように接種した。24時間後にコロニー形成単位の数を標準方法によって決定し、試験した織地の抗菌作用を算出した。
図37の表では、抗菌剤数の増加に伴う織地の抗菌特性の大幅な増大が示される。抗菌剤の総量(重量増加)が顕著に変化せず、又はさらには低下するにもかかわらず、このことが当てはまる。薬剤の取込みは常に織地重量の約1%である。この予期せぬ増大は、図37の表中の抗菌性能値によって定量的に実証される。値は対数尺度で提示し、すなわち1という値は微生物の90%の減少を表し、2という値は99%の減少を表し、3という値は99.9%の減少を表し、以下同様である。黄色ブドウ球菌の減少値は例LG/BP 01の3.25logから例06の6.45logまで増大する。アスペルギルス・ニガー(A. Niger)の値が最も印象的であり、例LG/BP 01の0.11logから例LG/BP 06の5.43logまで増大する。
例LG/BP 06及びLG/BP 07を、下記でさらに詳細に説明するプロトコル「EPA 90072PA4」を用いて(同様に)試験した。このプロトコルは米国環境保護庁(EPA)によって開発され、頻繁に洗濯される衣服の実生活の状況を模倣する、一連の12回の摩耗及び11回の接種を含む25回の洗浄後の織地の抗菌特性を検証するものである。本特許出願の出願日までに公表されていないプロトコルが、いずれ標準試験ルーチンとされる。
AATCC 100試験による24時間と比べて、EPA 90072PA4プロトコルに従う例LG/BP 06及びLG/BP 07の曝露時間はわずか10分である。結果として、本発明の織地は25回の洗浄後であっても強く迅速な抗菌作用を示す。したがって、例LG/BP 06及びLG/BP 07の結果から本発明の織地の優れた性能が示される。同時に、浸出特性は少なくとも抗菌衣服の生産に非常に有利である。上述のように、使用したすべての抗菌剤で、皮膚刺激を回避するのに十分に低い1ppm未満の値が観察される。このように高い抗菌性能を達成することができ、同時に上記の方法に従って測定した場合に1ppm未満の浸出値を有する従来技術の織地は、本発明者等には認識されていない。
例LG/BP 07では、キトサンを使用しない場合であっても卓越した特性が得られることが示される。EPA試験から、性能が実際に自己消毒性であるとされる衣服への布地の使用に十分なほど高いことが示される。したがって、織地は非常に経済的に生産することができ(キトサンは上述のようにやや高価である)、例えばOTガウン及び他の抗菌衣服の製造に使用される。
最後に、例LG/BP 04〜LG/BP 06を同様に特別指定試験に従って試験した。この試験では、下記でさらに詳細に説明するように20層の織地例をフィルタ材として保持するフィルタ構造を有する水フィルタを使用した。この重力式濾過試験では、初めに1リットルのDI水を織地層に通した。次いで、密度107に調整した割合の24時間齢の試験生物をスパイクした10リットルの試験水をフィルタに通した。流量は1時間当たり4リットルとした。濾過した試験水を滅菌瓶に回収し、中和し、生存試験生物の計数に使用した。選択培地を使用する標準塗抹培養法を試験生物の計数に用いた。濾過前のスパイクした水をベースラインカウントとした。このようにして、濾過の前後の生試験生物の濃度を決定した。
フィルタによって達成された減少値を図37の表に示す。試験した3つすべての例で、6logを超える減少を大腸菌及びコレラ菌(V. Cholerae:ビブリオ・コレラエ)について達成することができた。例LG/BP 04では、わずか1.2logというクロストリジウム・ディフィシレ(C. Difficile)胞子(殺菌が困難である)の減少しか達成されず、例LG/BP 05では3.15log、例LG/BP 06では4.65logの減少率を達成することができた。胞子の減少と同様にウィルスの減少を達成することができると想定され得る。未処理織地を用いた対照フィルタも0.2log未満の最小減少を示したが、これはフィルタの織地層への試験生物の機械的な捕捉によるものであり得る。
このような減少値が、布地織地をフィルタ材として用いた従来技術の水フィルタによってこれまでに達成することができたとは本発明者等には認識されていない。
例LG/BP 08〜16
本発明の織地の別の重要な特徴は、非常に良好な抗菌特性と極めて低い薬剤の浸出率との組合せである。かかる特性を有する織地の主用途は、水精製の分野にある。関連研究の結果を図39の表にまとめる。
上述した例LG/BP 01〜07と同じポリエステル/綿混紡出発織地を使用した例LG/BP 14及びLG/BP 16以外は、出発織地は100%綿からなるものとした(番手 縦糸10s及び横糸10s、構造68×38、未染色織地、幅150cm、織地重量265g/m2)。織地例LG/BP 08〜16は、例LG/BP 01〜07と同じプロセスを用いて作製した。
吸尽プロセスの液剤及びパディングプロセスの液剤中の抗菌剤(活性物質)の濃度(グラム/リットル(gpl))を、各例について図36の表に示す。吸尽プロセス及びパディングプロセスにおける各活性物質の効果的な重量増加を算出し、図36の表に織地重量に対する(o.w.f.)%として示す。表の下3分の1に、各活性物質についての効果的な総重量増加(吸尽プロセス及びパディングプロセスを合わせた)、並びに吸尽プロセス及びパディングプロセスの各々についての全活性物質を合わせた総重量増加、及び両方のプロセスの全活性物質を合わせた重量増加(「総計」)を示す。表示に小数点以下2桁までしか用いていないため、例LG/BP 09〜14の吸尽プロセス、例LG/BP 08及び10のパディングにおける銀カチオンの非常に低い濃度が、ゼロに丸められた織地に対する銀の重量百分率を生じることに留意されたい。
水フィルタ用途のための例LG/BP 06の配合に基づいて開始した試験シリーズは、既に満足のいく抗菌性能を示していた。実際に、実施例LG/BP/08とLG/BP 06との唯一の違いは出発布地材料(綿/ポリエステル混紡の代わりに純綿)である。しかしながら、この例の浸出値は全活性物質について既に1ppmを下回ってはいるが、水精製への使用には依然として高過ぎる。
浸出基準を満たすためには、例LG/BP 01〜07において上記のような浸出試験手順により決定された以下の値に達する必要があることが規定された:第4級アンモニウムオルガノシランについては10ppm未満、銀カチオンについては0.1ppm未満、ポリグルコサミン(キトサン)については75ppm未満、プロピコナゾールについては0.5ppm未満、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)については0.5ppm未満。抗菌性能の基準を満たすためには、EPAのGuide Standard and Protocol for Testing Microbiological Water Purifiers, April 1987に従って、最小減少が細菌についてはlog6、ウィルスについてはlog4、シストについてはlog3であることが例LG/BP 01〜07において上記のような特別指定試験法により決定された。
図39の表の試験シリーズでは、浸出及び抗菌性能の非常に厳しい基準を同時に満たす織地の開発を示す。極めて低い浸出値が浄水器に特に重要である。浄水中の抗菌剤の量は、任意の毒性問題が回避され、浄水器の長期性能が確実となるほど低くする必要がある。使用した5つの抗菌剤の各々について、3つ目の欄(「活性物質の総owf/浸出」)に、例がその活性物質について上記で規定した浸出標準を達成するか否かを「合格」又は「不合格」で示す。図に見られるように、例LG/BP 08〜10は銀カチオン、プロピコナゾール及びPHMBの浸出基準に不合格であった。例LG/BP 11以降は、銀カチオンの浸出は制御されていたが、プロピコナゾール及びPHMBの浸出は依然として問題があった。プロピコナゾールの浸出基準は例LG/BP 15によって初めて満たされた。最後に、例LG/BP 16はすべての活性物質についての浸出試験に合格した。
表の最後の行は、織地例が上記の抗菌性能基準を達成したか否かを示す。例LG/BP 08は依然として性能試験に合格していたが、例LG/BP 09〜12はそれほど十分な性能を有していなかった。例LG/BP 13も性能試験に合格したが、浸出は依然として問題があった。例LG/BP 14及び15は浸出が改善されたが、性能試験に不合格であった。
最後に、例LG/BP 16は浸出試験に合格しただけでなく、上記で規定した性能基準も満たしていた。この例を下記でさらに説明する水フィルタの好ましい実施形態の抗菌布地のベースとしたが、その配合はLG/BP 16とほぼ同じであり、図39の右端の欄に示す。水フィルタにはLG/BP 16と同じ又は同様の出発織地を使用し、同じプロセスを用いて作製する。
本発明者等は、以下の結論を試験シリーズから導き出した。
(1)銀の浸出は、銀カチオンをパディングプロセス中に適用した場合に少なくとも純綿で回避することが困難である。したがって、銀は吸尽プロセス中に付与すべきである。
(2)一方、パディングはプロピコナゾールにより適している。プロピコナゾールは、少なくとも水フィルタ用途について吸尽ではそれほど奏功しないが、パディングで奏功する架橋剤を用いて布地に固定される。このことは、パディングによる付与が吸尽による適用より表面的であるにもかかわらず当てはまる。これは、頻繁に洗濯される衣服とは異なり、水フィルタ材として使用される布地は摩耗に耐え得る必要がないためである。
(3)35%綿/65%ポリエステル織地が水への長期浸漬、ひいては本発明による浄水器への使用に最も適していることが見出された。
(4)例LG/BP 01〜07に見られるように、4つ又は5つ以上の抗菌剤を使用した場合の性能に対する顕著な影響が明らかである。そのように低い浸出値での高い性能は、ポリエステルに対して良好な親和性を有するオルガノシランと、綿に対して非常に良好な親和性を有するPHMB及びキトサンと、ポリエステル及び綿の両方に対して良好な親和性を有するプロピコナゾールとの組合せによるものであると考えられる。さらに、プロピコナゾールは非常に良好な抗真菌剤であり、水への長期浸漬中に綿を腐敗から保護する。
このように低い浸出値が、布地織地をフィルタ材として用い、非常に高い減少率を有する従来技術の水フィルタによってこれまでに達成することができたとは本発明者等には認識されていない。
さらなる実施例
本発明を、布地材料の調製を例示する以下の実施例によってさらに説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
実施例1:水濾過用途のための消毒布地材料
100%綿、又は綿含量が35%以上の綿とポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。織地の糸は混紡繊維でできていても、又は非混紡繊維でできていてもよい。本実施例では、織地は100%綿、又は35%綿と65%ポリエステルとから構成される混紡織地でできている。
次いで、油、脂肪及びワックスが布地材料から除去されるように、織地から精錬により不純物を取り除く。精錬はまた、95℃の温度で1時間のアルカリ性水媒体中の非イオン性界面活性剤による布地材料の加工に続く弱酸を用いた中和を含み、それにより自然に吸収させ、pHを中性とする。次いで、ジッガ又は連続染色装置又はジェット染色装置内で、織地を80℃で1時間洗浄し、表面の過剰な界面活性剤を除去する。次いで、浴を排水する。
100%綿布地材料については、80℃の温度の新たな水浴を準備し、0.15%のジメチルオクタデシル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(以下、オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリドとも呼ばれる)、0.5%の追加の塩化銀系化合物、1%のポリヘキサメチレンビグアニド、0.8%のポリグルコサミン/キトサン、及び0.1%のプロピコナゾール(織地重量に対する)を添加する。浴のpHが5〜6となるようにクエン酸又は酢酸も添加する。ポリエステル綿混紡については、0.35%のポリヘキサメチレンビグアニドを濃度が同じ1%の残りすべての成分の代わりに使用する。実施例中のすべての量は織地重量に基づくものである。
次いで、織地を約80℃のこの浴内で約60分加工し、95%を超える吸尽ピックアップを達成する。浴を排水する。
次いで、織地をテンタフレームに搬送し、上記で詳細に説明したように重合が130℃から190℃で生じ、布地材料にやや疎水性の特性に加えて抗菌特性及び非浸出特性が付与されるように、熱処理によってキュアリングする。
次いで、任意の残留化学物質を除去するために温水(warm to hot water)を用いる浴内で織地を約1時間洗浄し、続いてテンタフレーム上で乾燥させる。織地を乾燥させた後、8g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリドを室温でパディングし、乾燥させ、上記で詳細に説明されるようにテンタフレーム上、130℃から190℃でキュアリングする。
次いで、任意の残留化学物質を除去するために温水を用いる浴内で織地を再び約1時間洗浄する。
織地の重量及び所望の濾過機構の設計に応じて、吸尽又はパディングを用いてプロセスを繰り返した後、材料のタイプ及び特性に応じて再びキュアリング及び洗浄する。
実施例2:キッチンタオル、キッチンエプロン、オーブン手袋の用途のための消毒布地
初めに100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために吸尽プロセスを用いる。このプロセスは断面全体にわたる材料の消毒特性をもたらす。このプロセスのために、材料はやや疎水性の特性も有する。
吸尽プロセスには以下の化学物質を使用した:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をドラムウォッシャに装填し、材料対液剤比(MLR)が1:2に維持されるように水を添加する(すなわち、40kgの布地に対して80リットルの水とする)。上述の化学物質を1つずつ添加した後、ドラムウォッシャの回転を開始する。温度を80℃まで上昇させ、その後30分間ウォッシャの運転を継続する。
30分後に処理浴を排水し、布地材料を取り出す。続いて、5分間脱水を行い、過剰な液剤を布地から絞り出す。最後に、布地を180℃の熱風タンブル乾燥機内で10分間タンブル乾燥する。
実施例3:下着及び靴下の用途のための消毒布地
初めに、下着については100%綿、又は最大5%のエラステイン及び最大5%のライクラを含む90%綿、靴下については100%綿、又は100%ポリエステル、又は最大5%のライクラ及び7%のエラステインを含む88%綿若しくはポリエステルの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために吸尽プロセスを用いる。吸尽プロセスには以下の化学物質を使用した:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をドラムウォッシャに装填し、材料対液剤比(MLR)が1:2に維持されるように水を添加する(すなわち、40kgの布地に対して80リットルの水とする)。上述の化学物質を1つずつ添加した後、ドラムウォッシャの回転を開始する。温度を80℃まで上昇させ、その後30分間ウォッシャの運転を継続する。
30分後に処理浴を排水し、布地材料を取り出す。続いて、5分間脱水を行い、過剰な液剤を布地から絞り出す。最後に、布地を180℃の熱風タンブル乾燥機内で10分間タンブル乾燥する。
実施例4:医療用衣服、手術着及び医療用マスクの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡、又は99%ポリエステルと1%カーボンとを含む混紡から構成される布地材料を選択する。任意に最大10%のエラステインがマスクに使用される。
付与のために吸尽プロセスとこれに続くパディングを次のように用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地を65%ピックアップ、室温でパディングし、120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例5:両面を付加的に水、血液及び他の流体をはじくようにする必要がある医療用衣服の用途のための消毒布地
実施例4に示す布地をさらに処理して、布地の両面が付加的に水、血液及び他の流体をはじくようにすることができる。
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡、又は99%ポリエステルと1%カーボンとを含む混紡から構成される布地材料を選択する。任意に最大10%のエラステインがマスクに使用される。
付与のために吸尽プロセスとこれに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、80g/lのフルオロカーボンモノマー、20g/lのブロックイソシアネート及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地を65%ピックアップ、室温でパディングし、120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例6:布地が防虫処理を加えるのに適する必要がある戦闘服の用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%である綿とポリエステルとの混紡、又はヘッドギアについてはナイロンとライクラとの混紡、又は100%ケブラー、又は適切に調節された比率でのケブラーとポリエステル及びナイロンとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスを用い、続いて2工程のパディングを行った。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程1)に使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。吸尽により処理した織地に、第1のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を150℃で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程2)に使用する化学物質:100g/lのペルメトリンエマルション(10%活性物質)、100g/lのアクリレートモノマー分散液及び0.3g/lのクエン酸。第1のパディング後の織地に、第2のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温で2回目のパディングを行う。次いで、織地を180℃で2分間乾燥させる。
実施例7:布地がUV反射処理及び撥水処理を加えるのに適する必要がある戦闘服の用途のための消毒布地
実施例6に記載の布地を代替的に又はさらに処理して、布地を撥水及びUV反射とすることができる。
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡、又はヘッドギアについてはナイロンとライクラとの混紡、又は100%ケブラー、又は適切に調節された比率でのケブラーとポリエステル及びナイロンとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために吸尽プロセスとこれに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、80g/lのフルオロカーボンモノマー、20g/lのブロックイソシアネート、40g/lの防UV化学物質(UV repellent chemicals)及び0.3g/lのクエン酸。吸尽により処理した織地を65%ピックアップ、室温でパディングし、120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例8:吸汗性Tシャツの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡、又は100%ナイロン、又はナイロンとライクラとエラステインとを含む混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために吸尽プロセスとこれに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:5に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して500リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、100g/lのポリエステルグリコールコポリマー、20g/lのブロックイソシアネート及び0.3g/lのクエン酸。吸尽により処理した織地を65%ピックアップ、室温でパディングし、120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例9:撥水処理、防蚊処理及びUV反射処理が可能なTシャツの用途のための消毒布地
実施例8に記載の布地を代替的に又はさらに処理して、布地を撥水、防蚊及びUV反射とすることができる。
初めに、100%綿、又は綿の最低量が35%の綿とポリエステルとの混紡、又は100%ナイロン、又はナイロンとライクラとエラステインとを含む混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために吸尽プロセスとこれに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:5に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して500リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、80g/lのフルオロカーボンモノマー、20g/lのブロックイソシアネート、40g/lの防UV化学物質及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地を65%ピックアップ、室温でパディングし、120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例10:防蚊処理を加えることが可能なホテル産業用のベッドシーツ、枕カバー、布団カバー、他の寝具及びカーテンの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%絹、又はポリエステルとウールとの混紡、又は100%ナイロン、又はポリエステルとナイロンとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスに続く2工程のパディングを行う。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程1)に使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、第1のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を150℃で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程2)に使用する化学物質:100g/lのペルメトリンエマルション(10%活性物質)、100g/lのアクリレートモノマー分散液及び0.3g/lのクエン酸。第1のパディング後の織地に、第2のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温で2回目のパディングを行う。次いで、織地を180℃で2分間乾燥させる。
実施例11:難燃処理を加えることが可能なホテル産業用のシーツ、枕カバー、布団カバー、他の寝具及びカーテンの用途のための消毒布地
実施例10に記載の布地を代替的に又はさらに処理して、布地を難燃性とすることができる。
初めに、100%綿、又は100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%絹、又はポリエステルとウールとの混紡、又は100%ナイロン、又はポリエステルとナイロンとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスに続く2工程のパディングを行う。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程1)に使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、第1のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を150℃で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程2)に使用する化学物質:200g/lのオルガノホスフェート及び0.3g/lのクエン酸。
第1のパディング後の織地に、第2のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温で2回目のパディングを行う。次いで、織地を180℃で2分間乾燥させる。
実施例12:難燃処理及び撥水性を加えることが可能なカーテンの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%絹、又は絹とビスコースとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスに続く2工程のパディングを用いる。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程1)に使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、第1のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を150℃で2分間乾燥させる。
パディングプロセス(工程2)に使用する化学物質:200g/lのオルガノホスフェート、20g/lのフルオロカーボン、10g/lのブロックイソシアネートモノマー及び0.3g/lのクエン酸。第1のパディング後の織地に、第2のパディング工程に使用される化学物質を用いて65%ピックアップ、室温で2回目のパディングを行う。次いで、織地を180℃で2分間乾燥させる。
実施例13:子供服の用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿が最低35%を占める綿とポリエステルとの混紡、又は100%ポリエステル、又は100%ウール、又は100%ポリエステル、又はウールとポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、パッディングプロセス用の化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例14:学生服及び服飾品の用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿とポリエステルとの混紡、又はセーター及びネクタイについては100%ウール若しくは100%絹から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスのための化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、パッディングプロセス用の化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例15:ホテル用バスタオルの用途のための消毒布地
まず、100%綿、又は綿とポリエステルとの混紡、又はセーター及びネクタイについては100%ウール若しくは100%絹から構成される布地材料を選択する。
用いるプロセスは吸尽プロセスである。
使用する化学物質:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をドラムウォッシャに装填し、材料対液剤比(MLR)が1:2に維持されるように水を添加する(すなわち、40kgの布地に対して80リットルの水とする)。上述の化学物質を1つずつ添加した後、ドラムウォッシャの回転を開始する。温度を80℃まで上昇させ、その後30分間ウォッシャの運転を継続する。
30分後に処理浴を排水し、布地材料を取り出す。続いて、5分間脱水を行い、過剰な液剤を布地から絞り出す。
最後に、布地を180℃の熱風タンブル乾燥機内で10分間タンブル乾燥する。
実施例16:難燃処理を加えることが可能な椅子張りの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%ウール、又は100%絹、又は100%ナイロン、又は100%ビスコース、又は100%リネン、又は100%バンブー、又は100%アクリル、又は様々な割合での上記の材料の混紡から構成される布地材料を選択する。
用いるプロセスは吸尽プロセスである。
使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をドラムウォッシャに装填し、材料対液剤比(MLR)が1:2に維持されるように水を添加する(すなわち、40kgの布地に対して80リットルの水とする)。上述の化学物質を1つずつ添加した後、ドラムウォッシャの回転を開始する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間ウォッシャの運転を継続する。30分後に処理浴を排水し、布地材料を取り出す。続いて、5分間脱水を行い、過剰な液剤を布地から絞り出す。最後に、布地を180℃の熱風タンブル乾燥機内で10分間タンブル乾燥する。
実施例17:付加的な耐摩耗処理が可能な犬用ベッドの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%ナイロン、又はナイロンとポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。吸尽プロセスに続くパディングを用いる。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
パディングプロセスに使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、50g/lのポリウレタンエマルション、80g/lのフルオロカーボンモノマー、20g/lのブロックイソシアネート及び0.3g/lのクエン酸。
吸尽により処理した織地に、パッディングプロセス用の化学物質を用いて65%ピックアップ、室温でパディングを行う。次いで、織地を120℃で乾燥させ、続いて180℃で2分間のキュアリングを行う。
実施例18:失禁おむつの用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は100%ビスコース、又は綿とポリエステルとの混紡、又はビスコースとポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、10g/lのプロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
実施例19:空気清浄システムの用途のための消毒布地
初めに、100%ポリエステル、又は100%アクリル、又は100%ポリプロピレン不織HEPAフィルタから構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、10g/lのプロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
実施例20:包帯の用途のための消毒布地
初めに、100%綿又は100%ポリエステルから構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスを適用する。
吸尽プロセスに使用する化学物質:0.5%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、2%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をジガー装置に装填し、材料対液剤比(MLR)が1:3に維持されるように水を添加する(すなわち、100kgの布地に対して300リットルの水とする)。吸尽プロセスに使用する上述の化学物質を1つずつ添加し、ジガー装置を始動する。
温度を80℃まで上昇させ、その後30分間運転を継続する。続いて、処理浴を排水し、布地材料を取り出し、120℃のテンタ上で2分間乾燥させる。
実施例21:浴室カーテン、タオル及び足ふきマットの用途のための消毒布地
初めに、100%綿又は綿とポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
吸尽プロセスを適用する。
使用する化学物質:アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2%塩化銀、2%ポリヘキサメチレンビグアニド、4%プロピコナゾール、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
布地材料をドラムウォッシャに装填し、材料対液剤比(MLR)が1:2に維持されるように水を添加する(すなわち、40kgの布地に対して80リットルの水とする)。上述の化学物質を1つずつ添加した後、ドラムウォッシャの回転を開始する。温度を80℃まで上昇させ、その後30分間ウォッシャの運転を継続する。
30分後に処理浴を排水し、布地材料を取り出す。続いて、5分間脱水を行い、過剰な液剤を布地から絞り出す。最後に、布地を180℃の熱風タンブル乾燥機内で10分間タンブル乾燥する。
実施例22:テーブルトップ等の事務用品の用途のための消毒布地
初めに、100%綿、又は100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%絹、又は100%ウールから構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、5g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
実施例23:自動車内装の用途のための消毒布地
初めに、100%ポリエステル、又は100%ナイロン、又はアクリルとナイロンとの混紡、又はアクリルとポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、10g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
実施例24:テント及びオーニングのような建築用織地の用途のための消毒布地
初めに、100%ポリエステル、又は綿とポリエステルとの混紡、又は100%ナイロン、又はナイロンとポリエステルとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、10g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
実施例25:フィットネス用マット、ボクシング用グローブ及び他の健康用具の用途のための消毒布地
初めに、100%ナイロン、又は100%ポリエステル、又はポリエステルとナイロンとの混紡から構成される布地材料を選択する。
付与のために噴霧法を用いる。
使用する化学物質:2g/lのオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、アルミノケイ酸塩担体ベース中の0.2g/lの塩化銀、10g/lのポリヘキサメチレンビグアニド、及びpH値を5〜6に調整するための0.03%クエン酸。
すべての化学物質を水に溶解し、スプレーガンのドラムに供給する。次いで、布地材料に室温で噴霧する。続いて、材料を180℃の熱風ガンを用いて2分間乾燥させる。
本発明による布地材料の抗菌特性に関するさらなる実験
以下は、本発明者等が行った本発明による布地材料の抗菌特性の試験の説明である。これらの試験の一部は本発明の改良の初期段階で行われ、現在までに製造プロセス及び抗菌剤の選択が、好ましい製造プロセス並びに好ましい出発布地及び抗菌剤を用いて上記のようにさらにより良好な試験結果を達成することができるようにさらに最適化されていることに留意されたい。
標準試験法「ASTM E2149-10」及び「AATCC試験法100-1999」による抗細菌活性の試験
本発明による布地の抗細菌活性を、標準試験法「ASTM E2149-10」を用い、黄色ブドウ球菌ATCC 43300及び緑膿菌ATCC 15442を細菌としてそれぞれ用いて試験した。試験のための布地材料は65%ポリエステル/35%綿、210g/m2の織地とした。織地を以下の活性成分で処理した:吸尽プロセスでは0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾール、パディングプロセスでは7グラム/リットル(gpl)PHMB、0.75gpl塩化銀、4gplオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び5gplプロピコナゾール。試験の前に、処理済み布地材料を標準産業洗浄プロトコルに従って25回洗浄した。すなわち、布地材料を85±15℃の洗濯機内で非抗菌、非イオン性の非塩素含有洗濯洗剤の製品を使用して洗浄し、続いて標準すすぎサイクルを行い、20分間から30分間にわたって62℃から96℃で乾燥させた。
試験の結果を下記に転載する。
上記のデータに見られるように、「ASTM E2149-10」試験条件下での抗細菌作用は、パディングした織地については黄色ブドウ球菌ATCC 43300がLog1.3〜2.48、緑膿菌ATCC 15442が2.27〜2.59、吸尽した織地については黄色ブドウ球菌ATCC 43300がLog2.18〜2.84、緑膿菌ATCC 15442が2.34〜2.73、吸尽及びパディングした織地については黄色ブドウ球菌ATCC 43300がLog2.43〜4.2、緑膿菌ATCC 15442が3.19〜4.04の範囲の細菌減少であった。未処理の織地、すなわち吸尽及びパディングしたが、活性成分で処理していない織地は、抗細菌作用を示さなかった。
織地を0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾールで処理する、本発明による製造プロセスの改良の後期段階で製造した改善された抗菌布地材料の試験により、標準試験法「ASTM E2149-01」を用い、黄色ブドウ球菌ATCC 6538及びクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)ATCC 4352を細菌としてそれぞれ用いて試験した場合に以下の結果が示された。
実験から、処理済み織地が細菌懸濁液と処理済み織地との5分間のインキュベート後に既に優れた抗細菌特性を有していたことが示される。黄色ブドウ球菌ATCC 6538については、抗細菌活性は5分後に既にLog5.45であり、1時間後にほぼLog6に達し、クレブシエラ・ニューモニエATCC 4352については、抗細菌活性は15分後にLog5.38であり、1時間後にLog5.05、さらには6時間後にLog6.94に達していた。
「AATCC試験法100−1999」に従って織地を試験する実験では、同様の結果及び対数減少値が得られる。
水濾過使用例シナリオによる抗細菌活性の試験
使用するサンプルは上記実施例1に従って製造したサンプルとした。試験を以下のように行った。試験生物を滅菌蒸留水に接種し、この懸濁液を17ml/分の流量で上述の水フィルタに通した。2リットルの水を通した後に、水フィルタの出口からの純水サンプルのサンプリングを行った。懸濁液中の生物の生菌数をフィルタに通す前後で求めた。試験に用いるすべての細菌種についてこの手順を繰り返した。
フィルタを試験した流量:17ml/分
以下の試験結果が得られた。
細菌の減少/保持の試験(濾水及び供給水中の細菌の生菌数の測定は混釈平板法によって行った):
試験法「EPAプロトコル90072PA4」(「修正AATCC試験法100−1999」)による抗細菌活性の試験
本発明に従って処理した布地材料は非常に高い抗細菌活性と非常に低い抗菌剤の浸出とを同時に示すため、抗菌特性を有する布地の全く新しい用途が可能になる。これらの用途には認可及び分類が必要である。この目的で、「AATCC試験法100-1999」に基づく新たな試験プロトコルを米国環境保護庁(EPA)と共同で設定した。このプロトコル(コード90072PA4)を以下に概説する。
プロトコルの簡単な説明
注記:プロトコルの再検討の過程で、プロトコルのバージョンMRID 493059-01を、最新バージョンMRID 493581-01(バージョン11、2014年4月9日付)に置き換えた。MRID 493581-01の概要は以下の通りである。
名称:
布地の抗菌効力を評価するHealthprotex社のプロトコル−布地の抗菌効力を評価する試験法
目的:
本研究の目的は、本プロトコルで指定した試験パラメータ下での試験系(微小生物)に対する試験物質の効力を実証することである。
活性成分濃度:
Bioshield 7200(登録番号53053-5)1.0%、Silverdur ET(登録番号707-313)0.2%、プロピコナゾール(登録番号83529-31)0.5%、クエン酸(無登録の活性物質)0.2%
方法参照:
MTCC 100-2012(抗細菌加工の評価)
注記:
本プロトコルは上述の試験法の修正バージョンを記載するものである
試験系(微小生物):
黄色ブドウ球菌ATCC 6538
大腸菌ATCC 11229
緑膿菌ATCC 15442
サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)ATCC 10708
黄色ブドウ球菌(MRSA)ATCC 33592
研究パラメータ(参照による引用)
非連続減少パラメータ:
有効「接触」時間:2時間以下
洗濯していない対照布地の反復試験:1試験微小生物当たり3回
洗濯した対照布地の反復試験:1試験微小生物当たり3回
洗濯していない処理済み布地の反復試験:1試験微小生物/ロット当たり3回
洗濯した処理済み布地の反復試験:1試験微小生物/ロット当たり3回
非連続減少パラメータ(すべて洗濯した):
有効「接触」時間:2時間以下
摩耗させた対照布地の反復試験:1試験微小生物当たり3回
摩耗させていない対照布地の反復試験:1試験微小生物当たり2回
摩耗させた処理済み布地の反復試験:1試験微小生物/ロット当たり3回
手順:
処理済み布地及び対照布地の洗濯、環境ストレス負荷及び再接種
・十分な量の切断していない処理済み布地及び対照布地を各々、85±15℃の洗濯機内で非抗菌、非イオン性の非塩素含有洗濯洗剤の製品を使用して洗浄し、続いて標準すすぎサイクルを行い、20分間から30分間にわたって62℃から96℃で乾燥させる。
・洗濯したサンプルを、相対湿度85%から100%の36±2℃のインキュベーター内に2時間(±10分)置き、続いてUV光を当てた20℃から25℃のクラスIIバイオセーフティーフード内に15±2分間置くことによってUVに曝露する(織地を完全に曝露するために処理済み織地及び対照織地を平らに広げる)。
・UV曝露後に、各担体(処理及び対照)に0.100mlの再接種培養物を1担体当たり1×104CFU以上となるように接種し、室温で15±5分間静置し、その時点で次の洗濯サイクルを開始する。
・再接種培養物の調製の詳細については、再接種培養物の接種材料の調製を参照されたい。
・25回目のサイクルでは、効力試験に備えて先のサイクルによる残留洗剤を除去する目的で洗濯洗剤を含有しないが、上述の熱、UV及び再接種を受ける。
摩耗及び再接種
・処理担体及び対照担体に摩滅及び再接種レジメンを行う。一連の12回の摩耗及び11回の再接種を下記表に従って行う。すべての摩耗及び再接種が完了した後、最終効力評価試験を少なくとも初回接種の24時間後(但し48時間を超えない)に行う。この工程は室温で行う。下記表に本研究における全担体の処置をまとめる。
・摩耗を45%から55%相対湿度(RH)で行う。摩耗プロセス全体を通して定期的に温度及び室内湿度を測定し、記録する。
・完全に組み立てた摩耗ボート(abrasion boats)の重量を摩滅及び再接種レジメンの開始前に記録し、1084±1.0gに等しくする必要がある。
・摩耗試験機は、1摩耗サイクル全体でおよそ4秒間から5秒間の全表面接触時間にわたって速度2.25〜2.5に設定する。
・本試験の各摩耗サイクルは合計4回のパス(例えば左から右、右から左、左から右及び右から左)とする。
・各回の表面摩滅間にガードナー装置上の担体と接触する全表面を無水エタノールで除染し、完全に乾燥させて、汚染が残らないようにする。
・各回の表面摩滅間に摩耗試験機上のフォームライナ及び綿布を交換する。
・各回の摩耗が完了した後(すべての対照担体及び試験担体を摩耗させる)、担体を再接種前に少なくとも15分間静置する。
・0.100mlの再接種培養物を、試験担体の端から3mm以内に収まるように注意してスポット接種により担体に再接種し、常温で10分間から20分間又は完全に乾燥するまで乾燥させた後、次回の摩耗を開始する。
・湿式摩耗の一環として使用される綿布は、各湿式摩耗サイクル前に消毒したPreval噴霧器を用いて滅菌RO水を布に75±1cm離して1秒内で吹き付けることによって個別に調製し、即座に使用する。
成功基準:
・初期減少について従う実験の成功(対照)基準(非連続クレーム):
1.すべての培地滅菌対照が成長に対して陰性でなくてはならない。
2.担体汚染対照が無視することのできる汚染を示さなくてはならない。
3.培地成長対照が成長に対して陽性でなくてはならない。
4.すべての試験微小生物が培養純度を示さなくてはならない。
5.中和を前述のように確認する。
6.汚れ滅菌対照が成長に対して陰性である。
7.再接種培養物の計数により1担体当たり1×104CFU以上が示される。
8.対照の計数の初期数が1担体当たり1×106CFU以上を示す。
9.最終(接触時間後)の対照担体数の計数結果が1担体当たり1×106CFU以上を示す。
・連続減少について従う実験の成功(対照)基準:
1.すべての培地滅菌対照が成長に対して陰性でなくてはならない。
2.担体汚染対照が無視することのできる汚染を示さなくてはならない。
3.培地成長対照が成長に対して陽性でなくてはならない。
4.すべての試験微小生物が培養純度を示さなくてはならない。
5.中和を前述のように確認する。
6.汚れ滅菌対照が成長に対して陰性である。
7.有効な試験のためには初期接種対照担体が1担体当たり平均1×106CFU以上を示さなくてはならない。
8.有効な試験のためには再接種対照担体が1担体当たり平均1×104CFU以上を示さなくてはならない。
9.有効な試験のためには最終効力対照担体が1担体当たり平均1×106CFU以上を示さなくてはならない。
・試験物質性能基準
1.処理した担体(洗濯した及び洗濯していない)の結果が、並行未処理対照と比較して少なくとも99.9%の細菌減少を示さなくてはならない。
結論及び注釈
1.提出するプロトコル(MRID 493581-01)は、LivingGuard技術により処理した織地表面の細菌減少特性の試験に適している。
2.これらのクレームの試験方法は新規かつ発展的である。任意の現在認められているプロトコル及び/又はラベルが将来変更される可能性がある。
3.製品をCSFについて提唱される認定下限(又は織り材料の許容される最低パーセンテージ)で試験する必要があることに注意されたい。
4.試験は最悪のシナリオを用いて行わなくてはならない(すなわち、布地の混紡の結合を最小及び最大にして、可能な限り低い又はそれに近い全布地組成物当たりのパーセンテージの活性成分(複数の場合もある)を試験する)。全布地組成物当たりの活性成分(複数の場合もある)のパーセンテージを決定しなくてはならない。布地のタイプ及び/又は混紡を指定し、織地を列挙しなくてはならない。
5.データ生成の前に方法の潜在的変動性に対処しなくてはならない。政府機関は、試験室に任意の大幅な方法の修正によって生じる変動性の程度及び原因を評価するよう促している。この情報をGLP試験の前に政府機関に提供する必要がある。例えば、対照担体及び処理担体と関連する変動性の程度を決定するために予備研究を行う必要がある。変動性が過度に高い場合、担体の数を増加させる必要がある。
6.プロトコルに挙げられるすべての標準方法の最新のバージョンを特定し、使用する。試験培養物の生成のためのブロス培地及び各試験微生物の回収のための平板培地を指定する(緑膿菌(ATCC 15442)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)(ATCC 10708)又は黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)の培養物の調製にAOACのUse-dilution法を用いる)。
7.対照研究はプロトコルに詳述した基準に従って行わなくてはならない。対照許容基準のいずれかが満たされない場合、試験を繰り返してもよい。
8.標準方法に対する任意の変更又は修正のリストを提供する。
ラベル
1.試験した材料が5分以下の接触時間で最低3.0Log10の減少を示さない場合は、すべての浄化(sanitization)についてのクレームを削除しなくてはならない。
2.確立されていないHBIについてクレームを作成する。加えて、「患者又は衣服と接触する者全員に対する任意の二次汚染の予防」についてのクレームは許容されない。
3.細菌減少のクレームは、定期的に洗浄することができる抗菌処理織地の布地に限定される。登録者は、実証される連続減少有効時間の直後又は直前に洗浄しなければ抗微生物有効性が保証されないことを、織地ラベル(縫い込みラベルを含む)に明確に示さなくてはならない。
4.データが生成及び提出されない場合は、真菌(カビ(mold and mildew))及び藻類についてのクレームをラベルから削除しなくてはならない。
5.クレームを表示するためには、処理した織地の静菌特性を実証しなくてはならない。
6.残留細菌減少率のクレームを表示する場合、その減少率を達成するのに必要な時間を付記する。
7.減少率、接触時間、洗浄回数、多重曝露時間及び減少率、織地の有効性に影響を及ぼす可能性がある任意の洗濯洗剤に関する警告(該当する場合)は、「ラベル」及び「縫い込みラベル」上に明確に示さなくてはならない。織地縫い込みラベルを見本のために提出しなくてはならない。
8.以下の文言が登録製品に必要とされる。抗菌処理した布地の使用は、標準的な感染対策の実施を補助するものであり、それに代わるものではない。使用者は、定期的洗浄及び適正衛生規範を含むすべての現行の感染対策の実施に引き続き従う必要がある。織地形態でない布地材料を試験した。抗菌処理した布地は微生物汚染を低減することが示されたが、必ずしも二次汚染を予防するわけではない。
プロトコルの終了
上記の新たなEPA 90072PA4プロトコルに従って、本発明による抗菌布地材料を試験した。65%ポリエステル/35%綿、210g/m2の織地を以下の活性成分:0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾールで処理し、続いて上記抗細菌活性試験で規定した25回の標準産業洗浄を行う。
使用する試験生物は、黄色ブドウ球菌ATCC 6538(3.20×107CFU/ml)とした。
1.サンプルサイズ:1インチ×4インチ、三連
2.試験サンプルの前処理:15分間のUV光への曝露
3.対照サンプルの前処理:自由蒸熱
4.摩耗の回数:12回
5.再接種の回数:11回
6.接種材料の中心:0.1%(v/v)Triton X-100及び5%(v/v)ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝水
7.中和剤:レーゼンブロス
試験手順の概要:
1インチ×4インチの寸法のサンプルの対照及び試験片を滅菌スライドガラスに巻き付け、湿度制御したペトリ皿に置く。密度107の試験生物を、0.1%Triton X-100及び5%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水で105CFU/mlまでさらに希釈する。これを接種材料として試験に使用した。接種方法は織地の端から端までのスポット接種とし、接種材料があふれ出さないように注意する。処理織地及び対照織地1片当たり正確に0.1mlを接種した。試験織地及び対照織地を、15分間の中間乾燥段階を間に挟んだ6回の乾式摩耗及び6回の湿式摩耗に三連で供した。3つの対照織地セットについては中和剤を添加することで終了し、混釈平板法に供して1担体当たりのCFUを決定した。この値を接種材料対照とした。接種後に、およそ1kgの重りを置き、4回往復させることによってサンプルを機械的摩耗に供した。これを対照織地及び試験織地に対して同時に室温、50%湿度で行った。各摩耗後に、ガラスビーズを含有する20mlの中和剤レーゼンブロスを添加することによって試験片のインキュベーションを終了した。これをボルテックスに供し、平板培養して1担体当たりの生存試験細菌のCFUを決定した。適切な中和剤の検証も行った。
結果:接種、摩耗サイクル時に細菌懸濁液と接触する織地片を示す。
減少率=A−B/A×100
Aは接種した対照担体の細菌生存の幾何平均であり、
Bは接種した試験担体の細菌生存の幾何平均である。
本発明による試験織地を65%ポリエステル/35%綿から210g/m2で作製し、以下の活性成分:0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾールで処理し、続いてEPA 90072PA4プロトコルの通りに25回の標準産業洗浄を行った。
処理した試験織地は、連続再接種に続く交互の乾式及び湿式摩耗サイクルにおいてEPA 90072PA4プロトコルに従って試験した場合に、黄色ブドウ球菌生物に対して5分間で99.999%(=Log5)超の細菌減少を示す。
これにより活性成分がどの程度良好に織地に組み込まれ、本発明による布地材料の抗細菌活性がどの程度持続するかが実証される。
修正「AATCC試験法30-2013」による抗ウィルス活性の試験
本発明による布地材料の抗ウィルス活性を、修正標準試験法「AATCC試験法30-2013」に従って試験した。このプロトコルは、バクテリオファージPhi-X174に対する保護衣に使用する材料の耐性、すなわち非浸透性を試験するように設計されているが、バクテリオファージPhi-X174懸濁液を織地に通した際の織地の抗ウィルス活性を測定するようにプロトコルを適合させた。
具体的には、規定の通りにプロトコルに厳密に従うが、試験材料、対照又は処理織地は懸濁液に透過性とし、織地を通して濾過し、回収した懸濁液を残存バクテリオファージについて試験した。
詳細:
試験織地:試験織地を65%ポリエステル/35%綿から210g/m2で作製し、以下の活性成分:0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾールで処理した。
対照織地:65%ポリエステル/35%綿でできた210g/m2の未処理の試験織地。
チャレンジ試薬:Phi-X174バクテリオファージ1.23×108PFU/ml(プラーク形成単位/ミリリットル)
バクテリオファージチャレンジ懸濁液の調製:
1)バクテリオファージ普通ブロスを、1Lの精製水中8gの普通ブロス、5gの塩化カリウム、0.2gの塩化カルシウム及び0.01%の界面活性剤を用いて調製した。これをpH7.2に調整し、オートクレーブ内で最終滅菌した。
2)70mm×70mm平方の試験織地を切断し、試験のために中央57mm部分を開けたフランジにPTFEガスケットを備える試験セルに入れた。試験の検証のために対照織地サンプルについても同様に行った。
3)バクテリオファージチャレンジ懸濁液を、大腸菌C株を含む250ml容フラスコ内の25mlのバクテリオファージ普通ブロスを用いて調製し、振盪し続けながら37℃で一晩インキュベートした。
4)1リットル容フラスコ内で、100mlの新たなバクテリオファージ普通ブロス中100倍希釈の一晩細菌培養物を調製した。1.3×108という培養物の密度が達成されるまで、振盪し続けながら37℃でフラスコをインキュベートした。
5)上記の細菌培養物に、1×109PFU/mlの力価の10mlのPhi-X174バクテリオファージストックを接種した。バクテリオファージ対細菌細胞の比率は1.2に調整した。
6)上記の培養物を遠心分離して大型細胞を除去し、上清を清浄な試験管にデカントした。
7)上記のバクテリオファージ上清を0.22μmフィルタに通して濾過し、得られるファージを4×1010PFU/mlの実験用ストックとした。
8)ストック溶液をバクテリオファージ普通ブロスで1.23×108PFU/mlの濃度に希釈した。
試験手順:
浸透セルチャンバの上部を、60mlのPhi-X174バクテリオファージチャレンジ懸濁液で満たし、13.8kPa(=138mbar)の空気圧を1分間加え、濾過した懸濁液を、排水弁を開けることによって浸透セルの下部から回収し、中和し、標準方法による大腸菌の計数に用いた後、プラークの存在について試験した。適切な中和の検証も行った。
結論:
処理した織地は、バクテリオファージPhi-X174に対して7を超える対数減少値を示す。実験により本発明による布地材料の優れた抗ウィルス活性が実証される。
「AATCC試験法30-2013」による抗真菌活性の試験
本発明による布地材料の抗真菌活性を、標準試験法「AATCC試験法30-2013」に従い、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus Niger)を試験生物として試験した(標準試験法の「試験III」)。
試験する布地材料は、210g/m2の65%ポリエステル/35%綿織地とした。織地を以下の活性成分で処理した:吸尽プロセスでは0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾール、パディングプロセスでは7グラム/リットル(gpl)PHMB、0.75gpl塩化銀、4gplオクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び5gplプロピコナゾール。試験前に、処理した布地材料を上記抗細菌活性試験で規定したように25回洗浄した。
布地材料開発の初期段階での試験の結果を下記に転載する。
上記のデータに見られるように、「AATCC試験法30-2013」試験条件下での抗真菌作用は、パディング及び吸尽した織地の評価2から吸尽及びパディングした織地の評価0までに及ぶ。未処理の織地、すなわち吸尽及びパディングしたが、活性成分で処理していない織地は、抗真菌作用を示さない(評価5)。
したがって、布地材料開発の初期段階で既に、良好(吸尽した織地、パディングした織地)から非常に良好(吸尽及びパディングした織地)という抗真菌活性が示された。
本発明による布地材料からの抗菌剤の潜在的浸出に関する実験
布地材料に固定された抗菌剤の潜在的浸出を試験するために、以下の試験を行った。210g/m2のポリエステル65%/綿35%試験織地を、0.5%ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、0.075%塩化銀、0.4%オクタデシルアミノメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(オルガノシラン)及び0.5%プロピコナゾールで処理した。
処理した布地材料を1:10の比率で蒸留水に入れた。具体的には、10グラムの織地を、100ミリリットルの蒸留水に液浸した。織地を室温、すなわち21℃から25℃の水中で7日間インキュベートした。
上記インキュベーション時間の後、織地を水から取り出し、曝露水を上記5つの活性成分の存在についてガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC-MS)を用いて試験した。
得られる結果を下記に示す。
BDL−検出限界未満
検出限界:1パーツパーミリオン(ppm)
上記の実験結果から直接分かるように、本発明による布地材料に含有される活性成分のいずれの浸出も検出することができなかった。曝露水中の5つすべての活性成分の濃度は、1ppmの検出限界を下回っていた。これにより布地材料の抗菌作用の極めて高い洗浄耐久性が実証される。
浄水装置
以下では、図15から図22を参照して浄水装置を説明する。
図40は、粒子フィルタと抗菌フィルタとを有する浄水装置100の好ましい実施形態の分解図を示している。この装置は、第1のフィルタ構造、すなわち内側フィルタ構造130と第2のフィルタ構造、すなわち外側フィルタ構造150とを有する投入容器140を備えている。第1のフィルタ構造130は、投入容器140の内側に突出しており、投入容器140の底部に配置されている。第2のフィルタ構造150は、投入容器140の外側に突出しており、第1のフィルタ構造130の反対側で投入容器140の底部に配置されている。好ましくは、第1及び第2のフィルタ構造130,150は、投入容器140に螺合されるネジ山を有している。これらのネジ山は、好ましくは、第1及び第2のフィルタ構造130,150を投入容器に対して密閉状態で組み込むためにシール手段をさらに有している。投入容器140の上部に粗フィルタ構造120が配置され、この粗フィルタ構造120はキャップ110で覆うことができる。好ましくは、キャップ110は、投入容器140の流入開口を覆う及び/又はシールするために投入容器140に螺合されるネジ山領域を有している。好ましくは、投入容器130を貯蔵容器170の上方に配置することができる。支持リング及び/又はシールリング160を投入容器140と貯蔵容器170との間に配置することができ、これは、好ましくは、水が投入容器140の表面の外側上を貯蔵容器170の開口の上縁部から遠ざかるように流れ落ちるように案内する形状となっている。貯蔵容器170は、タップ180により貯蔵容器から流れ出ることがある浄化済みの水を貯蔵するように適合されている。
図41は、使用中の組み立てられた状態における図15による浄水装置100の模式的断面図を示している。装置100は、内側フィルタ構造130と外側フィルタ構造150とを有する投入容器140を備えている。内側フィルタ構造130は、投入容器140の内側に突出しており、投入容器140の底部に配置されている。内側フィルタ構造130は、投入容器140の底面から投入容器の上部近傍まで及んでいる。しかしながら、内側フィルタ構造130が投入容器140の底面から投入容器140の上部にまで及ぶ他の実施形態も考えられる。
外側フィルタ構造150は、投入容器140の外側に突出しており、第1のフィルタ構造130の反対側で投入容器140の底部に配置されている。外側フィルタ構造150は、投入容器140の底面貯蔵容器170の底部近傍まで及んでいる。しかしながら、外側フィルタ構造150が投入容器140の底面から貯蔵容器170の底部にまで及ぶ他の実施形態も考えられる。内側フィルタ構造130と外側フィルタ構造150とは、それぞれキャビティ134,154を形成している。それぞれのフィルタ構造の1以上のフィルタは、それぞれのキャビティ134,154の周囲に配置されている。フィルタ構造130,150のキャビティ134,154は、流路145を介して接続されている。
さらに、粗フィルタ構造120が投入容器140の上部に配置されており、キャップ(図示せず)により粗フィルタ構造120を覆うことが可能となっている。好ましくは、投入容器140は、貯蔵容器170の上方に配置することができる。さらにより好ましくは、投入容器140と貯蔵容器170とは着脱自在に接続される。図41から分かるように、貯蔵容器170の内径は投入容器140の外径よりも大きいので、容器(図示せず)の分解状態において貯蔵容器170の好適な寸法の開口を介して投入容器140を貯蔵容器171の内側に配置することができる。上記装置100は、好ましくは、時間当たり1リットルから10リットルの範囲の流量の浄水を供給する。
図示されるように、支持リング及び/又はシールリング160は、投入容器140と貯蔵容器170との間に配置され、これは、好ましくは、水が投入容器140の表面の外側上を貯蔵容器170の開口の上縁部から遠ざかるように流れ落ちるように案内する形状となっている。貯蔵容器170は、タップ180により貯蔵容器から除去されることがある浄化済みの水を貯蔵するように適合されている。
以下では、装置100を通じて浄化される水の例示的流れ経路を説明する。矢印10から17は、流れ経路を流れ落ちる水の方向の例を示している。汚染水を浄化するために、浄化される水10が投入容器140の上部に配置された粗フィルタ構造120内に注ぎ込まれる。粗フィルタ構造120は、浄化される水10を受け入れるカップ状構造121を備えている。続いて、受け入れられた水11は、粗フィルタ構造120により収容された粗フィルタ125により濾過される。粗く濾過された水12は投入容器140内に集められる。集められた水13は、内側フィルタ構造の1以上のフィルタを通過して内側フィルタ構造130のキャビティ134に入り濾過される。濾過された水14は、内側フィルタ構造130の開口を通って内側フィルタ構造130から出て、流路145によって外側フィルタ構造150の開口を通って外側フィルタ構造のキャビティ154内に案内される。キャビティ154に入った水15は、外側フィルタ構造150の1以上のフィルタを通過して外側フィルタ構造150から出る。浄化された水16は、貯蔵容器170内に集められ貯蔵される。この浄水16は、タップ180を介して貯蔵容器170から取り出すことができる。例示的に述べられた、装置100を介して浄化される水の流れ経路は重力により駆動されるので、電力は必要とされない。
図から分かるように、外側フィルタ構造150は、貯蔵されている浄水16と接触している。外側フィルタ構造150の最も外側のフィルタとして抗菌織地が設けられる場合には、上述したように、貯蔵されている浄水16の新たな汚染を防止することができる。粗フィルタ構造120、内側フィルタ構造130及び外側フィルタ構造150の設計例を図17から図19を参照して述べる。
図42Aは、粗フィルタ構造120の模式的側断面図を示しており、図42Bは、図42Aに示される粗フィルタ構造120の上面図を示している。上記粗フィルタ構造120は、好ましくは、図412に示されるように、投入容器140の上部に置かれる。粗フィルタ構造120は、カップ状構造121により保持される面フィルタ125を備えている。図42Bにおいて最もよく分かるように、カップ状構造121及び面フィルタ125は、円形の断面を有している。また、カップ状構造121は、少なくとも1つの貫通孔122を有する実質的に平らな底面を有している。貫通孔122は、円形断面や矩形断面など任意の好適な断面を有していてもよい。面フィルタ構造125は、カップ状構造121に着脱自在に収容され、好ましくは、面フィルタ構造125は洗浄可能である。さらにより好ましくは、面フィルタ構造125は、粗い粒子を濾過するための、9マイクロメートルから16マイクロメートルの範囲の平均孔サイズを有する不織布をベースとした粒子フィルタである。好ましくは、カップ状構造121はカラー123を有している。カラーは、カップ状構造121が投入容器140内に落ちるのを防止し、投入容器140の開口の上縁部から遠ざかるように水を案内することができる。
図43は、好ましくは内側フィルタ構造130である第1のフィルタ構造の模式的側断面図を示している。上記内側フィルタ構造130は、好ましくは、図2に示されるように投入容器140の内側に突出するように投入容器140の底部に配置されている。内側フィルタ構造130は、異なる孔寸法の2以上の粒子フィルタ135,136を有している。大きな孔寸法の粒子フィルタ135が、小さな孔寸法の粒子フィルタ136の上流側に配置されている。好ましくは、大きな孔寸法のフィルタ135は、初期の濁り除去のために、好ましくは7マイクロメートルから13マイクロメートルの範囲、より好ましくは約10マイクロメートルの孔寸法を有する不織布をベースとしている。好ましくは、小さな孔寸法のフィルタ136は、より細かい汚染粒子を除去するために、好ましくは3マイクロメートルから7マイクロメートルの範囲、より好ましくは約5マイクロメートルの孔寸法を有する不織布をベースとしている。さらに、内側フィルタ構造130は活性炭フィルタ137を有しており、好ましくは、この活性炭フィルタ137は、臭気などを除去するために、好ましくは加圧粒状体を含む固体ブロックとして形成されている。フィルタ135,136,137は、キャビティ134の周囲に配置され、フィルタ構造130を形成している。
矢印13及び14は、図41に示される流れ経路の方向の例を示している。使用中は、水13がフィルタ135,136,137を通過し、キャビティ134に入る。濾過された水14は、フィルタ構造130の開口133を通ってキャビティ134を出る。好ましくは、フィルタ構造130は、円形の断面を有しており、円筒を形成する。このように、フィルタ135,136,137は円筒の湾曲面上に配置される。さらに、フィルタ構造130は、フィルタ構造130の一方の基部側をシールする閉鎖ベース131と、開口133を有するベース132とを有している。
好ましくは、フィルタ構造130の最も外側のフィルタ135は、好ましくはスリーブとして形成される不織布フィルタである。図から分かるように、このスリーブは、フィルタ構造132のベース構造131,132にわたって延びており、水がスリーブ135の周囲を流れることを防止している。好ましくは、スリーブ135は着脱可能であり、洗浄可能である。
図44は、好ましくは外側フィルタ構造150である第2のフィルタ構造.の模式的側断面図である。上記外側フィルタ構造150は、好ましくは、図41に示されるように投入容器140の外側に突出するように投入容器140の底部に配置されている。外側フィルタ構造150は、少なくとも1つの粒子フィルタ155と抗菌フィルタ156とを含んでいる。粒子フィルタ155は、抗菌フィルタ156の上流側に配置される。好ましくは、粒子フィルタ155は、非常に微細な汚染粒子に加え、シストや他の単細胞生物を除去するために、好ましくは0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲の孔寸法を有する不織布、さらにより好ましくはメルトブロー型不織布をベースとしている。フィルタ155,156は、キャビティ154の周囲に配置され、フィルタ構造150を形成している。抗菌フィルタ156は、好ましくは、第2のフィルタ構造150の最も外側のフィルタである。
矢印15及び16は、図41に示される流れ経路の方向の例を示している。使用中は、水15が開口153を通って第2のフィルタ構造150のキャビティ154に入り、フィルタ155,156を通過することによってフィルタ構造150を出る。好ましくは、粒子フィルタ155は、特に、水15が粒子フィルタ155を出たときに、粒子フィルタ155を通過した水15の方向を変え、したがって、水15は、ジグザグの矢印で示されるように、非層流の形態で抗菌フィルタ156を通過する。すなわち、水は、好ましくは、抗菌フィルタ156の半径方向の厚さよりも長い距離にわたって抗菌フィルタ156を移動する。したがって、水が繰り返し抗菌フィルタに接触し、抗菌フィルタの汚染除去効果が改善される。
好ましくは、抗菌フィルタ156は、上述したような抗菌剤で処理された織地であり、除菌剤が非浸出的に織地に付着する。フィルタ構造の軸周りに布地材料をいくつかの層で配置することは有利である。そのようにすることで、微生物が1つの層を通過したとしても、それを次の層で殺すことができる。例えば、好ましい実施形態においては、織地は300×16cmの長さのストリップであり、フィルタ構造の軸周りに約20回ほど螺旋状に巻き付けられる。
織地は、非常に目が細かく、マルチフィラメント糸から形成される。好ましい実施形態においては、織地は、たて糸20sカウント、よこ糸20sカウント、108×84の構成の重量210g/m2のポリエステル綿混紡織地(ポリエステル65%及び綿35%)である。これにより、水中の微生物は繊維と強制的に約12〜16回接触することとなる。繊維が濡れると繊維自体が少し伸び、毛細管現象が引き起こされ、接触を介して死滅させることができる。織地の孔は、死滅した(破裂した)細菌の細胞が通過するのに十分大きい。したがって、それらは、生物汚損の問題が多いメンブレンと異なり布を目詰まりさせたり汚染したりすることがない。
好ましくは、フィルタ構造150は、円形断面を有しており、円筒を形成する。このように、フィルタ155,156は円筒の湾曲面上に配置される。さらに、フィルタ構造150は、フィルタ構造150の一方の基部側をシールする閉鎖ベース構造151と、開口153を有するベース152とを有している。このように、フィルタ構造150の開口153は、円筒の基部に配置されている。
図45は、支持リング及び/又はシールリング160の模式的側断面図を示している。支持リング及び/又はシールリング160は、好ましくは、図41に示されるように、投入容器140と貯蔵容器170との間に配置されている。支持リング及び/又はシールリング160は、投入容器140を受け入れる開口163を有している。好ましくは、投入容器140は、シールリング160の内面165で支持リング及び/又はシールリングに対してシールされる。さらに、支持リング及び/又はシールリング160は、貯蔵容器170の開口に受け入れられる外面164を有している。好ましくは、貯蔵容器170は、シールリング160の外面164で支持リング及び/又はシールリングに対してシールされる。支持リング及び/又はシールリング160は、好ましくは、水が貯蔵容器170の開口の上縁部から遠ざかるように投入容器140の外面上を流れ落ちるように案内する形状とされたカラー161をさらに備える。
図46は、水10を浄化するためのシステム200の模式的システム図を示している。水10を浄化するためのシステム200は、好ましくは1.5バール以上の投入圧力を実現するためにシステム200の他のコンポーネントの上方に配置される原水貯蔵タンク210を備えている。図46に示される太い矢印は、システム200を介して浄化される水の流れ経路の例を示している。このように、原水は、まず、原水貯蔵タンク210に充填される。原水貯蔵タンク210は、浄化される水をシステムに供給する。浄化される水は、好ましくは所定の順序で、濁りを除去するためのモジュール230、フッ化物を除去するためのモジュール231、臭気を除去するためのモジュール232、ヒ素を除去するためのモジュール233、水を軟化させるためのモジュール234、シスト及び/又は微細な汚染粒子を除去するためのモジュール240,241、及び微生物を除去するためのモジュール250に入る。好ましくは、これらのモジュールは、浄水のために必要とされる投入圧力が重力だけで得られるように配置される。あるいは、必要とされる投入圧力を得るためにポンプ220を設けてもよい。上記システム200は、好ましくは、1時間当たり20リットルから2500リットルの範囲の流量で浄水を供給する。モジュール230から234及び240,241は、好ましくは、水がモジュールの上部から入り、モジュール内を案内され、再びモジュールの上部から出て行くように構成されている。これは、例えば、2重壁の容器により実現することができる。好ましくは、すべてのモジュールは、好ましくはガラス繊維強化プラスチックにより形成された別個のハウジングに収容されており、これにより、モジュールがパイプライン及び/又はチューブによって簡単に組み合わせられるようになっている。
濁りを除去するためのモジュール230は、好ましくはマルチグレード砂を含む圧力砂濾過器である。フッ化物を除去するためのモジュール231は、好ましくは、活性化アルミニウムなどの樹脂を有する。臭気を除去するためのモジュール232は、好ましくは粒状化活性炭を含む活性炭フィルタを有する。好ましくは、適切に動作させるために、ヒ素を除去するためのモジュール233及び水を軟化させるためのモジュール234は、好ましくはイオン交換に基づいて動作するので、これらのモジュールには塩貯蔵部235に貯蔵された塩が供給される。塩の供給は、図46において曲がった矢印により示されている。
保守上の理由により、システム200は、図46において細い矢印で示されているような逆流洗浄システムを有している。システム200を逆流洗浄するためには、ポンプ220を用いて水の流れの方向を反転させる。これにより、モジュールにより濾過又は除去された汚染物質をモジュールから流し出す(フラッシュ)ことができる。さらに、逆流洗浄中にシステムから汚染物質を取り除くための排水口221,222が設けられている。
より微細な汚染粒子を除去するためのモジュール240は、3マイクロメートルから16マイクロメートルの範囲の孔寸法を有する少なくとも1つの粒子フィルタを有している。シストを除去するためのモジュール241は、好ましくは0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲の孔寸法、より好ましくは1マイクロメートルの平均孔寸法を有する粒子フィルタを有している。微生物を除去するためのモジュール250は、好ましくは、図47に関して詳細に図示されるように、抗菌作用のある織地の上流側に配置される粒子フィルタを有している。
好ましくは、より微細な汚染粒子を除去するためのフィルタ240は、好ましくは第123の実施形態において定義されるような第1の不織布フィルタと、好ましくは第124の実施形態において定義されるような第2の不織布フィルタとを有している。特に、本発明者等によりなされた実地試験では、第123の実施形態に定義されるような、すなわち3マイクロメートルから7マイクロメートルの範囲の平均孔寸法を有する第1の不織布フィルタを、第124の実施形態に定義されるような、すなわち0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲の孔寸法を有する第2の不織布フィルタの上流に設けることにより、従来技術において知られているような1マイクロメートルフィルタの上流に10マイクロメートルフィルタを配置した前置濾過システムと比べて、運転時間を極めて長くすることができることが示された。既知のシステムにおいては、10マイクロメートルよりも小さな粒子は、1マイクロメートルフィルタの上流の10マイクロメートルフィルタを通過することができ、その結果、1マイクロメートルフィルタは1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲の粒子をフィルタする必要があった。試験において示されたように、1マイクロメートルフィルタは急速に目詰まりして1マイクロメートルフィルタの圧力損失が著しく増加し、システムの流量の低下を引き起こした。このように、第123の実施形態に定義されるような不織布フィルタを設けることにより、1マイクロメートルフィルタの目詰まりを効果的に防止することができる。
図47は、フィルタ構造252及び収容パイプ251を有する、微生物を除去するためのモジュール250の模式的断面図を示している。上記フィルタ構造252は、収容パイプ251の内部に配置されており、この結果、破線矢印で示すように、浄水16をフィルタ構造252の周囲に流すことができる。フィルタ構造252は、好ましくは、少なくとも1つの粒子フィルタ255と抗菌作用を有する織地256とを有する。粒子フィルタ255は、抗菌作用を有する織地256の上流に配置されている。好ましくは、粒子フィルタ255は、非常に微細な汚染粒子に加え、シストや他の単細胞生物を除去するために、好ましくは0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの範囲の孔寸法、より好ましくは約1マイクロメートルの平均孔寸法を有する不織布をベースとし、さらにより好ましくはメルトブロー型不織布をベースとしている。
矢印15から17は、微生物を除去するモジュールを通る流れ経路の方向の例を示している。使用中、水15は、開口253を通ってフィルタ構造252に入り、フィルタ255,256を通過することによってフィルタ構造252から出て行く。粒子フィルタ255は抗菌作用256を有する織地の上流に配置されている。濾過された水16は、収容パイプ251によって集められ、収容パイプ251の流出口257を通って収容パイプ251から出て行く。水17は浄化されており、飲料水として供給することができる。
10:原水
11:第1の粒子フィルタ125により濾過される前の水
12:第1の粒子フィルタ125により濾過された後の水
13:投入容器140に貯蔵され、フィルタ構造130により濾過される前の水
14:フィルタ構造130により濾過された後の水
15:フィルタ構造150,252により濾過される前の水
16:貯蔵容器170に集められた浄水
17:浄水
100:浄水装置
110:キャップ
120:粗フィルタ構造
121:カップ状構造
122:流出口
123:カラー
125:粗い面フィルタ
130:第1のフィルタ構造(内側フィルタ構造)
131:閉鎖ベース構造
132:開口133を有するベース
133:開口
134:キャビティ
135:スリーブ 粒子フィルタ (不織布フィルタ)
136:粒子フィルタ
137:活性炭フィルタ
140:投入容器
145:流路
150:第2のフィルタ構造 (外側フィルタ構造)
151:閉鎖ベース構造
152:開口153を有するベース
153:開口
154:キャビティ
155:メルトブロー型織地フィルタ
156:抗菌フィルタ
160:支持リング及び/又はシールリング
161:カラー
162:円筒部
163:開口
164:外側シェル
165:内側シェル
170:貯蔵容器
180:タップ
200:浄水システム
210:原水貯蔵タンク
220:ポンプ
221:排水口
222:排水口
230:濁りを除去するためのモジュール(圧力砂濾過器)
231:フッ化物を除去するためのモジュール(樹脂フィルタ)
232:臭気を除去するためのモジュール(活性炭フィルタ)
233:ヒ素を除去するためのモジュール
234:水を軟化させるためのモジュール
235:塩貯蔵部
240:より微細な汚染粒子を除去するためのモジュール(粒子フィルタ)
241:シスト及び/又は微細な汚染粒子を除去するためのモジュール(粒子フィルタ)
250:微生物を除去するためのモジュール
251:収容パイプ
252:フィルタ構造
253:開口
255:粒子フィルタ
256:抗菌フィルタ
257:流出口