本発明は、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関し、特に電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に未定着画像を加熱定着させる定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置は、発熱体に対し磁場生成ユニットにより生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流により前記発熱体に生じたジュール発熱により、転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上の未定着画像を加熱定着する。
この電磁誘導加熱方式の定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式の定着装置と比較して発熱効率が高く定着速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置が知られている。かかる定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができ、その結果、所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
反面、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、記録媒体が通紙されるだけでも発熱体の熱が奪われて通紙領域の温度が低下してしまう。そこで、この種の定着装置では、その通紙領域の温度が所定の定着温度に維持されるように発熱体を適時加熱している。
このため、この熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、サイズが小さい記録媒体が連続的に通紙されると、発熱体が過熱され続けられてその非通紙領域の温度が通紙領域の温度よりも異常に高くなる現象、つまり非通紙領域の過昇温現象が発生する。
従来、このような非通紙領域の過昇温現象を解消する技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる励磁手段により生成された磁束のうち、前記発熱体の非通紙領域に作用する磁束のみを、発熱体の発熱幅方向に移動可能な磁束吸収部材により吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記非通紙領域の過昇温現象を解消する他の技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる励磁手段の第1磁性体コアの背後に、非通紙領域に対応する第2磁性体コアを配置し、第1磁性体コアと第2磁性体コアとのギャップを変化させて発熱体の長手方向の温度分布を変えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
図1は、特許文献1に開示された定着装置の実施例の概略斜視図である。図1に示すように、この定着装置は、コイルアセンブリ10、金属スリーブ11、ホルダ12、加圧ローラ13、磁束遮蔽板31及び変位機構40などを備えている。
図1において、コイルアセンブリ10は、高周波磁界を生じる。金属スリーブ11は、コイルアセンブリ10の誘導コイル18により誘導電流を誘起されて加熱され記録材14を搬送する方向に回転する。コイルアセンブリ10は、ホルダ12の内部に保持されている。ホルダ12は、図示しない定着ユニットフレームに固定され非回転となっている。加圧ローラ13は、金属スリーブ11に圧接してニップ部を形成しつつ記録材14を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材14が挟持搬送されることにより、記録材14上の未定着画像が発熱した金属スリーブ11により記録材14に加熱定着される。
磁束遮蔽板31は、図1に示すように、誘導コイル18の主として上半分を覆う円弧曲面を呈しており、変位機構40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退される。変位機構40は、磁束遮蔽板31に連結されるワイヤ33と、ワイヤ33が懸架される一対のプーリ36と、一方のプーリ36を回転駆動するモータ34とを有している。
磁束遮蔽板31は、変位機構40により、記録材14のサイズが最大サイズの場合には図1に実線で示す位置に待避するように移動される。一方、磁束遮蔽板31は、記録材14のサイズが小サイズの場合には図1に鎖線で示す位置に進出するように移動される。これにより、誘導コイル18から金属スリーブ11の非通紙領域へ届く磁束が遮蔽され非通紙領域の過昇温が抑制される。
図2A、図2Bは、特許文献2に開示された定着装置の実施例の概略断面図である。図2A、図2Bに示すように、この定着装置は、加熱アセンブリ51、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55、第2コア56、定着ローラ57及び加圧ローラ58などを備えている。
図2A、図2Bにおいて、加熱アセンブリ51は、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55及び第2コア56からなり磁束を発生する。定着ローラ57は、加熱アセンブリ51から発生する磁束の作用により誘導発熱され記録材59を搬送する方向に回転する。
加圧ローラ58は、定着ローラ57に圧接してニップ部を形成しつつ記録材59を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材59が挟持搬送されることにより、記録材59上の未定着画像が発熱した定着ローラ57により記録材59に加熱定着される。
第1コア55は、定着ローラ57の最大通紙領域の幅と同じ幅を有している。一方、第2コア56は、記録材59のサイズが最大サイズの場合には図2Aに示すように、第1コア55に近接した位置に移動される。また、第2コア56は、記録材59のサイズが小サイズの場合には、図2Bに示すように、コア保持回動部材53が180°回転して第1コア55から離間した位置に移動される。これにより、第2コア56に対応する定着ローラ57の非通紙領域の発熱が抑えられる。
特開平10−74009号公報 特開2003−123961号公報
しかしながら、特許文献1に開示された定着装置は、磁束遮蔽板31を変位機構40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退させる構成であるため、図1に示すように、変位機構40の一対のプーリ36がホルダ12の両端部から大きく突出し定着装置本体が大型化してしまう不具合がある。また、特許文献1に開示された定着装置は、図1に示すように磁性材から形成される金属スリーブ11と誘導コイル18の間に磁束遮蔽板31を配置する構成である。誘導加熱方式を用いる定着装置では、誘導コイル18と金属スリーブ11の間の隙間を例えば1mm程度に狭く保って、磁気的な結合を高める必要がある。磁束遮蔽板31はその狭い隙間に挿入するため、厚みを薄くする必要がある。つまり、磁束遮蔽板31は十分な厚みがとれないため電気抵抗が高くなり、自ら発熱しやすくなるという問題がある。磁束遮蔽板31に通孔35を形成することで、渦電流による発熱を抑えることができるが、これにより磁束が金属スリーブ11に届いて金属スリーブの非通紙領域が発熱する。この結果、小サイズの記録材14が連続的に通紙されると、金属スリーブ11の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を抑制できないという問題がある。
また、特許文献2に開示された定着装置は、図2A、図2Bに示すように、コア保持回動部材53の回転により第2コア56が第1コア55に対して変位しても第1コア55と定着ローラ57との間隔が変化しないため、定着ローラ57の通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定である。
このため、この定着装置は、第1コア55に対応する通紙領域の端部から第2コア56に対応する非通紙領域の端部への磁束の回り込みが発生し、定着ローラ57の通紙領域における磁束の抑制効果が低くなってしまう。この結果、この定着装置では、小サイズの記録材59が連続的に通紙されると、定着ローラ57の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を効果的に抑制できないという問題がある。
また、この定着装置では、コア保持回動部材53に1つの記録材サイズに対応した第2コア56しか保持できないため、定着ローラ57の通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。
本発明の目的は、かかる点に鑑みてなされたもので、発熱部材の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することにある。
本発明の定着装置は、磁束を発生する磁束発生部と、薄肉で非磁性の電気導体からなり前記磁束が透過しかつ誘導加熱される発熱体と、前記磁束を遮蔽する少なくとも一つの磁気遮蔽体と、前記発熱体の非通紙領域に対する磁束の遮蔽と解放とを切り換える磁束調整手段と、を備え、前記磁気遮蔽体は前記発熱体に対して前記磁束発生部の反対側に配置されるものである。
本発明によれば、装置の小型化を図ることができ、かつ発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができる。
従来の定着装置の構成を示す概略斜視図
従来の他の定着装置の要部の構成を示す概略断面図
従来の他の定着装置の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の対向コアに磁気遮蔽体を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気遮蔽体を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気遮蔽体を磁路遮断位置に変位させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の対向コアに磁気遮蔽体を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の磁気遮蔽体を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の磁気遮蔽体を磁路遮断位置に変位させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態7に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の対向コアの切欠を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態9に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態10に係る定着装置の対向コアの切欠に電気導体を埋め込んだ要部の構成図
定着装置の対向コアの凹部に電気導体を埋め込んだ要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA3サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図22に示す対向コアをE面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のB4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図24に示す対向コアをF面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図24に示す対向コアをG面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図26に示す対向コアをH面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図26に示す対向コアをI面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA5サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図28に示す対向コアをJ面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図28に示す対向コアをK面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
2つの磁気遮蔽体がA4サイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域に対応した長さを有する定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA3サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
定着装置のB4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
定着装置のA4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
図31A,B,Cに示す対向コアの内部に磁気遮蔽体を配置するようにした定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態12に係る定着装置の構成を示す要部の概略断面図
本発明の実施の形態12に係る定着装置の対向コアの通紙領域磁気遮蔽体を示す概略斜視図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の磁束制御機構の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の磁束制御手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態14に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態14に係る定着装置の他の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態15に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラを構成する板材を示す概略斜視図
本発明の実施の形態17に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の骨子は、磁束発生部と対向コアとの間に移動自在に配置されかつ磁束を透過する発熱体の移動方向に沿って前記磁束発生部に対し相対移動して、前記磁束発生部と前記対向コアとの間の前記発熱体の非通紙領域に対応する磁路を遮断及び解放する磁気遮蔽体を設けたことである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図3に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図3において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、本実施の形態1に係る定着装置について、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。図4は、本実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図である。図4に示すように、定着装置200は、定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱機構としての励磁装置230、定着ローラ240及びベルト回転機構としての加圧ローラ250などを具備している。
図4において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の挟持回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱機構からなり、図4に示すように、定着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁束発生部としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の移動方向に沿って折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の中心と背面の一部に設けられている。コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
この定着装置200は、図4に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。このコイルガイド234は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成されている。このコイルガイド234は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図4に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、後述する定着ベルト210の通紙幅方向(支持ローラ220の長手方向)の加熱制御を行うには、少なくとも50%以上の磁束が定着ベルト210を透過することが望ましい。このため、定着ベルト210は、銀や銅等の非磁性材料で構成することが好ましい。なお、定着ベルト210を磁性材料で構成する場合はできるだけ厚みを薄く(好ましくは50μm以下)にするのが良い。例えば、厚さ40μmのニッケルベルトで構成する場合、励磁装置230の駆動周波数f=25kHzの時、厚さ40μmはニッケル(Ni)の表皮深さの約1/2の厚みとなり、約60%の磁束が定着ベルト210を透過するので、定着ベルト210の通紙幅方向の加熱制御が行いやすくなる。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、厚みが0.04mm程度まで薄くなると鉄やニッケル等の磁性材料でも良いが、磁束を通し易い非磁性材料の方が好ましい。また、できるだけ渦電流を発生し難い方が良く、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
ところで、この種の従来の定着装置は、前述したように、定着ベルトの通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定となるため、通紙領域の端部から非通紙領域への磁束の回り込みが発生し、定着ベルトの通紙領域と非通紙領域との境界部に熱が蓄積して、この境界部に過昇温現象が発生したり、定着装置本体が大型化したりしてしまうという問題がある。また、従来の定着装置では、定着ローラの通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。また、非通紙領域の磁束を遮蔽する磁束遮蔽板は発熱するという問題がある。
そこで、本実施の形態1に係る定着装置200は、図5に示すように、磁気を遮蔽することができる素材からなる磁気遮蔽体301を設ける。この磁気遮蔽体301は、励磁装置230と対向コア233との間に配置されており、磁束を透過する発熱体としての定着ベルト210の移動方向に沿って、励磁装置230に対し相対移動自在に支持されている。
本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301が励磁装置230に対して変位するように構成されている。この磁気遮蔽体301の支持部材としては、例えば、対向コア233に嵌合した筒状のスリーブ(不図示)を用いることができる。なお、本実施の形態1に係る定着装置200では、図6に示すように、磁気遮蔽体301の支持部材として対向コア233を用いている。
また、磁気遮蔽体301は、記録紙109の通紙基準に応じて対向コア233への配設位置が決められる。ここでは、記録紙109の通紙基準をセンター基準とし、図6に示すように、磁気遮蔽体301を対向コア233の両端部に配設している。また、磁気遮蔽体301は、図6に示すように、最大サイズの記録紙に対応した定着ベルト210の最大通紙領域幅をAとし、小サイズの記録紙に対応した定着ベルト210の小サイズ通紙領域幅をBとした場合、小サイズの記録紙を通紙しているときの定着ベルト210の両端部に生じる非通紙領域に対応する長さCを有している。
また、本実施の形態1に係る定着装置200は、その支持ローラ220が励磁装置230により発生した磁束を遮蔽せずに透過する部材、例えば前述した固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成されている。
図5において、磁気遮蔽体301は、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を遮断する磁路遮断位置(図5に破線で示す位置)と、磁路302を解放する磁路解放位置(図5に実線で示す位置)と、に変位する。
図7は、磁気遮蔽体301の支持体である対向コア233を回転して、磁気遮蔽体301を変位させる変位機構500を示す概略斜視図である。この変位機構500は、図7に示すように、対向コア233の支軸に設けた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502の支軸に一体化されたアーム503及びアーム503を揺動させるソレノイド504などで構成されている。
図7において、ソレノイド504がオン(通電)状態になると、ソレノイド504のアクチュエータが移動してアーム503が揺動する。このアーム503の揺動により、大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、対向コア233の支軸が回転して、磁気遮蔽体301が前記磁路解放位置から図8に示す前記磁路遮断位置に変位する。これにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302が磁気遮蔽体301により遮断される。
一方、前記オン状態にあったソレノイド504がオフ(非通電)状態になると、アーム503が図7に示す初期位置に復帰し、大歯車502、小歯車501及び対向コア233の支軸がそれぞれ逆回転して、磁気遮蔽体301が前記磁路遮断位置から前記磁路解放位置に戻る。
このように、本実施の形態1に係る定着装置200は、変位機構500のソレノイド504をオン/オフすることにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を、磁気遮蔽体301により遮断したり解放したりして、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
すなわち、通紙される記録紙109のサイズが最大サイズの場合には、図7においてソレノイド504をオフ状態のままにし、磁気遮蔽体301を前記磁路解放位置に待機させる。これにより、図5に示すように、励磁装置230により発生した磁束が、対向コア233の長手方向の全域を流れて定着ベルト210の最大通紙領域幅Aの全体に作用し、定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布が最大通紙領域幅Aの全体で均一になるように保たれる。
一方、通紙される記録紙109のサイズが小サイズの場合には、図7においてソレノイド504をオン状態にし、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を遮断する磁路遮断位置に磁気遮蔽体301を変位させる。これにより、定着ベルト210の非通紙領域における励磁コイル231との磁気結合が低下して、励磁装置230により発生した磁束が、図6に示す対向コア233の小サイズ通紙領域幅Bの部位のみを通るようになり、定着ベルト210の非通紙領域の発熱が抑制され、この非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。
本実施の形態1に係る定着装置200は、定着ベルト210と磁気遮蔽体301を銀、銅、アルミ等の非磁性の電気導体で構成している。定着ベルト210を非磁性の電気導体を薄肉とした構成としたので、電気抵抗が高くなって発熱するようになる。さらに、定着ベルト210は非磁性材料を用いているので、磁束が定着ベルト210を透過しやすい。このようにすることにより、定着ベルト210に対して励磁装置230の反対側に磁気遮蔽板301を配置することが可能になる。つまり、磁気遮蔽体の厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽体301は電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽体301の発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成される対向コア233に配設されているので、磁気遮蔽体301で生じた熱は対向コア233に伝導して拡散し、磁気遮蔽体301の過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽体301は厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽体301は通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
本実施の形態1に係る定着装置200は、上述のように、励磁装置230と対向コア233との間を通る磁路302を磁気遮蔽体301により遮蔽しているので、定着ベルト210を誘導加熱する非通紙領域の磁束を効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の通紙領域に対応する磁束の非通紙領域への回り込みを防止できる。
このように、本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301により、定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁束を効果的に遮断することができるので、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を防止することができる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200においては、励磁装置230と磁気遮蔽体301との相対移動により、磁路302を遮断したり解放したりできるので、装置本体が定着ベルト210の通紙領域幅方向に大型化することがない。
さらに、本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301により励磁装置230と対向コア233との間の磁路302のみを遮断することで定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁束を遮断することが可能であるので、磁気遮蔽体301を小さく構成することができ、少なくとも2つの磁気遮蔽体301を設けることが可能となる。従って、この定着装置200においては、前記通紙領域幅方向の長さが異なった磁気遮蔽体301を配設することにより、定着ベルト210の通紙領域幅を少なくとも3種類の領域に対応させることが可能になる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200は、定着ベルト210を直接加熱する励磁装置230が支持ローラ220に懸架された部位の定着ベルト210の外周面に沿って配設されている。従って、この定着装置200においては、支持ローラ220自体の通気性が良くなり、連続定着時でも支持ローラ220が過熱状態になることがないので、支持ローラ220からの熱伝導による定着ベルト210の通紙領域の温度と非通紙領域の温度との温度差が許容範囲に収まるようになり、定着ベルト210の通紙幅方向の温度ムラの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200の支持ローラ220は、厚みが0.04mm〜0.2mmの薄肉の金属ローラで構成されているので、その熱容量が非常に小さくなる。従って、この定着装置200においては、ウォーミングアップ時に定着ベルト210の熱が支持ローラ220との接触により大量に奪われることがなくなり、立ち上がり時間を大幅に短縮することができる。
さらに、本実施の形態1に係る定着装置200の支持ローラ220は、固有抵抗が50μΩcm以上であるので、渦電流が流れ難く、支持ローラ220自体の発熱もほとんど無なくなり、投入した電力が定着ベルト210の発熱のみに有効に効率よく使われるようになる。
ここで、支持ローラ220を固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成した場合には、磁束が遮蔽されずに支持ローラ220を透過するので、厚さが0.2mmのものでも発熱が極めて小さい。また、この支持ローラ220は、機械的強度も高く定着ベルト210を懸架するのに必要な強度を確保することができるので、薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、ウォーミングアップ時の立ち上がり時間をさらに短縮することができる。
なお、非磁性の固有抵抗の低い材料(アルミ、銅など)の支持ローラ220を用いた場合には、それを透過した磁束により渦電流が多量に発生し、反発磁界が形成されるため、定着ベルト210を交差する磁束が減少して発熱効率が低下する。また、磁性材料で固有抵抗が低い鉄(Fe)及びニッケル(Ni)等からなる支持ローラ220では、定着ベルト210からの交差磁束は確保できるが発生する渦電流により自身が発熱するため、立ち上がりが遅くなる。
ちなみに、前記固有抵抗(単位μΩcm)は、鉄:9.8、アルミ:2.65、銅:1.7、ニッケル:6.8、磁性ステンレス(SUS430):60、非磁性ステンレス(SUS304):72である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る定着装置について説明する。この定着装置における励磁装置230のコア232は、図9に示すように、励磁コイル231の巻回中心に配置したセンターコア701を有している。また、この定着装置は、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、センターコア701の同方向の幅W2よりも大きくなるように構成されている。なお、この磁気遮蔽体301の幅W1とセンターコア701の幅W2とは、図9に示すように、角度θ1と角度θ2とで規定することもできる。
これにより、この定着装置においては、実施の形態1の定着装置の効果に加えて、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を確実に防止することができるようになる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図10に示すように、その励磁装置230のコア232がセンターコアのない形状を有している。また、この定着装置は、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、励磁装置230の励磁コイル231の巻回中心の同方向の幅W3よりも大きくなるように構成されている。なお、この磁気遮蔽体301の幅W1と励磁コイル231の巻回中心の幅W3とは、角度で規定することもできる。
これにより、この定着装置においては、実施の形態2に係る定着装置と同様に、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を確実に防止することができるようになる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図11に示すように、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、励磁コイル231の巻回部位の同方向の巻回幅W4よりも狭くなるように構成されている。
これにより、この定着装置においては、実施の形態2に係る定着装置又は実施の形態3に係る定着装置の効果に加えて、図11に示すように、磁気遮蔽体301の前記磁路解放位置を磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置とした場合でも、磁気遮蔽体301が励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束に影響を与えることがない。
つまり、この定着装置では、磁気遮蔽体301を励磁コイル231の巻回部位と対向する位置に待避させて定着ベルト210を発熱させても、その通紙領域に温度ムラが発生することがなくなる。従って、この定着装置においては、磁気遮蔽体301の待避位置をより多く確保できるようになり、磁気遮蔽体301を数多く設ける際の設計の自由度を高めることが可能になる。
ここで、上述した実施の形態1から実施の形態4に係る定着装置は、何れも磁気遮蔽体301により定着ベルト210の非通紙領域の磁路302を遮断する磁路遮断位置を、磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回中心に対向した位置としている。この励磁コイル231の巻回中心に対向した位置は、励磁コイル231と対向コア233との間の磁束が最も集中している部位となる。
上述した実施の形態1から実施の形態4に係る定着装置は、上述のように磁束が最も集中している励磁コイル231の巻回中心に対向した位置が磁気遮蔽体301の磁路遮断位置となっているので、定着ベルト210の非通紙領域の過昇温をより効果的に防止することができる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る定着装置について説明する。この定着装置は、例えば、図12に示すように、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cが配設されている場合に、これらの磁気遮蔽体うちの少なくとも1つの磁路解放位置を、磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置としたものである。
この定着装置においては、図12において、磁気遮蔽体301aが前記磁路解放位置に位置した状態で、励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束が磁気遮蔽体301aの影響を受けることがないので、この状態で定着ベルト210を発熱させてもその通紙領域に温度ムラが発生することがない。
また、この定着装置においては、励磁コイル231の巻回部位からから外れた部位を他の磁気遮蔽体301b、301cの磁路解放位置とすることができるので、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを容易に配置できるようになる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図13に示すように、定着ベルト210に複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを備えている。これら磁気遮蔽体301a,301b,301cは定着ベルト210の互いに幅が異なる複数の非通紙領域の各々に対応する長さを有する。
図14は、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを支持している対向コア233を回転して、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを変位させる変位機構1200を示す概略斜視図である。この変位機構1200は、図14に示すように、対向コア233の支軸に設けた小歯車1201、小歯車1201に噛み合う大歯車1202、大歯車1202を軸支して回転するステッピングモータ1203などで構成されている。
図14において、ステッピングモータ1203がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車1202が回転して小歯車1201が従動回転する。この小歯車1201の従動回転により、対向コア233の支軸が回転して、磁気遮蔽体301a,301b,301cのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の磁気遮蔽体が、その磁路解放位置から磁路遮断位置に変位する。ここでは、図15に示すように、磁気遮蔽体301aが、その磁路解放位置から磁路遮断位置に変位する。これにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302が磁気遮蔽体301aにより遮断される。
一方、定着ベルト210の通紙領域の全幅を発熱させる場合には、図12に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cの各々が前記磁路解放位置に位置した状態でステッピングモータ1203への通電を断つ。
このように、この定着装置は、変位機構1200のステッピングモータ1203をオン/オフすることにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を、各磁気遮蔽体301a,301b,301cにより遮断したり解放したりして、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
従って、この定着装置においては、通紙される記録紙のサイズに応じて、前記磁路解放位置から磁路遮断位置に各磁気遮蔽体301a,301b,301cを選択的に変位させることにより、定着ベルト210の通紙される記録紙109のサイズに応じた非通紙領域の発熱を抑制して、定着ベルト210の非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。従って、この定着装置においては、定着ベルト210により複数のサイズの記録紙109の良好な加熱定着が可能となる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図16に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cが、励磁装置230に対して相対回転自在な回転体である対向コア233に設けられ、かつ互いに隣接する2つの磁気遮蔽体の各々の中心を通る法線のなす角度が、30°<θ3<60°又は120°<θ4<180°のいずれかの角度に設定されている。
すなわち、この定着装置は、図16に示すように、磁気遮蔽体301bと磁気遮蔽体301cとの前記角度θ3が30°<θ3<60°に設定され、磁気遮蔽体301aと磁気遮蔽体301bとの前記角度θ4が120°<θ4<180°に設定されている。
この定着装置は、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cのそれぞれが前記磁路解放位置に位置した状態で、励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束が複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cの各々の影響を受けないようになるので、この状態で定着ベルト210を発熱させた際の通紙領域の温度ムラの発生を抑制することができる。
ここで、上述の各磁気遮蔽体301a,301b,301cは、低透磁率の電気導体で構成することが好ましい。この磁気遮蔽体301a,301b,301cを低透磁率の電気導体で構成した定着装置は、磁気遮蔽体301a,301b,301cを銅もしくはアルミなどの安価な部材で構成することができる。
また、上述の各実施の形態に係る定着装置は、その各磁気遮蔽体301a,301b,301cを支持する回転体として対向コア233を用いているので、構成を簡素化することができる。
(実施の形態8)
次に、実施の形態8に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図17に示すように、前記磁気遮蔽体を対向コア233に設けた切欠1501で構成したものである。この定着装置の切欠1501は、図18に示す変位機構500により、通紙される記録紙109のサイズに応じて、前述した磁路遮断位置と磁路解放位置とに変位される。この変位機構500としては、図7に示した変位機構500と同じものを用いることができる。なお、磁気遮蔽体として機能する切欠は1つではなく、図16に示す磁気遮蔽体301a,301b,301cの各位置にそれぞれ設けるように構成することもできる。
この定着装置は、支持ローラ220が磁束を透過するので、対向コア233に設けた切欠1501の位置を記録紙109のサイズに応じて選択的に反転させることにより、支持ローラ220を透過した磁束を吸収もしくは抑制して定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布を容易に制御することができる。
また、この定着装置においては、前記磁気遮蔽体としての切欠1501を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
(実施の形態9)
次に、実施の形態9に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図19に示すように、前記磁気遮蔽体を対向コア233に設けた凹部1701で構成したものである。この定着装置においては、実施の形態8に係る定着装置と同様、前記磁気遮蔽体としての凹部1701を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
また、この定着装置においては、図19に示すように、その磁気遮蔽体の磁路解放位置を凹部1701が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置とした場合でも、凹部1701が励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束に影響を与えることがない。従って、この定着装置においては、凹部1701を励磁コイル231の巻回部位と対向する位置に待避させて定着ベルト210を発熱させても、その通紙領域に温度ムラが発生することがないので、凹部1701の待避位置をより多く確保できるようになる。
(実施の形態10)
次に、実施の形態10に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図20に示すように、前述の切欠1501内に低透磁率の電気導体1801aが埋め込まれている構成としたものである。また、図21に示すように、前述の凹部1701内に低透磁率の電気導体1801bが埋め込まれている構成としたものである。
この定着装置においては、切欠1501又は凹部1701を設けたことによる対向コア233の機械的強度の低下を防止することができる。また、前記切欠1501又は凹部1701内に電気導体1801a又は1801bが埋め込まれることにより対向コア233の重量バランスを均衡化させることができる。
ここで、上述の電気導体1801a又は1801bは、対向コア233の表面と同一面をなしていることが好ましい。このように電気導体1801a又は1801bが対向コア233の表面と同一面をなす構成の定着装置は、定着ベルト210から対向コア233への熱伝導と定着ベルト210から電気伝導体1801a又は1801bへの熱伝導が等しくなるので、定着ベルト210の温度ムラの発生を防止することができる。
(実施の形態11)
次に、実施の形態11に係る定着装置について説明する。この定着装置は、前述した3つの磁気遮蔽体301a,301b,301cが、定着ベルト210のA4サイズ幅、A5サイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域の各々に対応した長さを有している。
従って、この定着装置においては、例えば、図22、23に示すA3サイズの記録紙109の通紙モードと、図24、図25A,Bに示すB4サイズの記録紙の通紙モードと、図26、図27A,Bに示すA4サイズの記録紙の通紙モードと、図28、図29A,Bに示すA5サイズの記録紙の通紙モードとの4つの通紙モードを備えた構成とすることができる。
すなわち、A3サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図23に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cが、全て前記磁路解放位置に待避している。これにより、磁路302は、各磁気遮蔽体301a,301b,301cの何れによっても遮断されることがなく、定着ベルト210の全幅(A3サイズ幅)の通紙領域が発熱される。ここで、図23は、図22に示す対向コアをE面で切断した断面図である。
また、B4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図25A、Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、最も長さが短い磁気遮蔽体301cが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301cによって遮断され、定着ベルト210のB4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301a、301bはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図25Aは、図24に示す対向コアをF面で切断した断面図である。また、図25Bは、図24に示す対向コアをG面で切断した断面図である。
また、A4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図27A,Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、中間の長さの磁気遮蔽体301aが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301aによって遮断され、定着ベルト210のA4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301b、301cはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図27Aは、図26に示す対向コアをH面で切断した断面図である。また、図27Bは、図26に示す対向コアをI面で切断した断面図である。
また、A5サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図29A,Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、最も長さが長い磁気遮蔽体301bが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301bによって遮断され、定着ベルト210のA5サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301a、301cはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図29Aは、図28に示す対向コアをJ面で切断した断面図である。また、図29Bは、図28に示す対向コアをK面で切断した断面図である。
図30に示すように、2つの磁気遮蔽体1801c、1801dがAサイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域の各々に対応した長さを有するようにしてもよい。このような実施の形態では、磁気遮蔽体1801c、1801dが対向コア233の表面と同一面をしているので、定着ベルト210から対向コア233への熱伝導と定着ベルト210から磁気遮蔽体1801c、1801dへの熱伝導とが等しくなり、定着ベルト210の温度ムラの発生を防止することができる。また、3つの磁気遮蔽体を用いる場合に比べて磁気遮蔽体の幅W1(周方向の長さ)を大きくすることができる。つまり、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温をより確実に防止することができる。
なお、上述の各通紙モードは、前記磁気遮蔽体を切欠1501や凹部1701で構成した定着装置でも対応できる。図31A,B,Cは、前記磁気遮蔽体を2つの切欠1501a,1501bで構成した場合の3通りの通紙モードの態様を示す概略断面図である。
図31A,B,Cにおいて、切欠1501aが磁気遮蔽体301aに相当し、切欠1501bが磁気遮蔽体301cに相当するものとすると、A3サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Aに示すように、切欠1501a,1501bが、全て前記磁路解放位置に待避している。これにより、磁路302は、切欠1501a,1501bの何れによっても遮断されることがなく、定着ベルト210の全幅(A3サイズ幅)の通紙領域が発熱される。
また、B4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Bに示すように、各切欠1501a,1501bのうち、長さが短い切欠1501bが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、切欠1501bによって遮断され、定着ベルト210のB4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。
また、A4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Cに示すように、各切欠1501a,1501bのうち、長さが長い切欠1501aが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、切欠1501aによって遮断され、定着ベルト210のA4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。
この定着装置によれば、ビジネス文書としてのA3サイズ画像やA4サイズ画像の連続加熱定着及び公文書や学校教材としてのB4サイズ画像の連続加熱定着が可能になり、多機能の画像形成装置の定着装置として用いることができるようになる。
図32に示すように、図31A,B,Cに示す対向コア233の内部に管状の磁気遮蔽体301を配置するようにしても良い。このような実施の形態において、対向コア233を所定の位置に回転させることにより、図32に示すように対向コア233に設けた切欠1501bを介して磁気遮蔽体301がセンターコア701と対面するので、磁束をより効率的に遮蔽することができる。なお、本変形例では、磁気遮蔽体301は移動する必要がないので固定でよい。また、本変形例では、対向コア233を回転することで磁路を遮断及び解放した例を説明したが、これに限らず、対向コア233の替わりに温度が高くなると磁性を失う整磁合金を用いても良い。定着ベルト210の非通紙領域の温度が上昇して、整磁合金の温度がキュリー点を超えると、整磁合金の非通紙領域の磁性が失われて、磁気遮蔽体301で非通紙領域の磁路が遮断される。この変形例では、自動的に磁路の遮断及び解放が行われるため、変位手段500が不要となる効果がある。
(実施の形態12)
次に、実施の形態12に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図33及び図34に示すように、定着ベルト210の最大通紙領域の幅よりも小さい通紙領域幅に対応した長さの通紙領域磁気遮蔽体2401を定着ベルト210の通紙領域に対応した部位に配置した構成を有している。
この定着装置においては、通紙領域磁気遮蔽体2401で磁路302を遮断することにより、非通紙領域を昇温させることができる。前述した磁気遮蔽体301により発熱が阻止されていた定着ベルト210の非通紙領域の温度が低くなりすぎた場合、通紙領域磁気遮蔽体2401により所定の定着温度に短時間で昇温させることができる。
(実施の形態13)
次に、本発明の実施の形態13に係る定着装置について説明する。図35は、本発明の実施の形態13に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。本実施の形態13に係る定着装置300は、その支持ローラ220が励磁装置230により発生した磁束を遮蔽せずに透過する部材、例えば前述した固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成されている。また、この定着装置300は、図35に示すように、支持ローラ220を透過した磁束を吸収もしくは反発して定着ベルト210の通紙幅方向(長手方向)の発熱分布を制御する磁束制御部310を具備している。
この磁束制御部310は、図36及び図37に示すように、支持ローラ220の内部に配設されており、小サイズ紙(例えばA4)サイズの記録紙幅に対応する小サイズ幅制御部材311と、最大サイズ紙(例えばA3)サイズの記録紙幅に対応する最大幅制御部材312とを、切換軸313に配置した構成を有している。
小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312はフェライトコアからなり、図示の小サイズ幅制御部材311は、断面が真円をなす円柱体で構成されている。また、図示の最大幅制御部材312は、軸方向の一部に切欠312aを設けた断面が扇状をなすフェライトコアから構成されている。
なお、この磁束制御部310は本実施例の構成に限らず、最大幅制御部材312の切欠き部にアルミや銅の導電体を埋め込み、この部分の磁束をより効果的に減少させるよう構成にしたものや、フェライトコア無しに切欠き部に対応する部分にのみにアルミまたは銅の板を付けた物など、磁束を吸収したり反発したりするものを適宜組み合わせて構成することが可能である。
また、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312は、記録紙109の通紙基準に応じて切換軸313への配設位置が決められる。例えば、記録紙109の通紙基準がセンター基準である場合には、図4及び図5に示すように、小サイズ幅制御部材311が切換軸313のセンターに配置され、最大幅制御部材312が小サイズ幅制御部材311の両サイドに配置される。
切換軸313は、通紙される記録紙109のサイズに応じて、図37に示す変位機構500により所定角度(図示の例では、約180度)だけ回転される。図示の変位機構500は、切換軸313に設けられた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502の支軸に一体化されたアーム503及びアーム503を揺動させるソレノイド504などで構成されている。
図37において、ソレノイド504がオン(通電)状態になると、ソレノイド504のアクチュエータが移動してアーム503が揺動する。このアーム503の揺動により、大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、切換軸313が回転して、最大幅制御部材312の切欠312aの位置が約180度反転する。この状態でソレノイド504がオフ(非通電)状態になると、アーム503が初期位置に復帰し、大歯車502、小歯車501及び切換軸313がそれぞれ逆回転して、最大幅制御部材312の切欠312aの位置が元の位置に戻る。
このように、本実施の形態13に係る定着装置300における磁束制御部310は、変位機構500のソレノイド504をオン/オフにより最大幅制御部材312の切欠312aの位置を反転させて、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
すなわち、通紙される記録紙109のサイズが最大サイズの場合には、図37においてソレノイド504をオフ状態のままにし、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312の両方を励磁装置230の励磁コイル231に対向させる。これにより、図35及び図36に示すように、励磁装置230により発生して支持ローラ220を透過した磁束が、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312により支持ローラ220の最大通紙幅Lmの全域で吸収されて、定着ベルト210の最大通紙幅全体に作用し、定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布が最大通紙幅全体で均一になるように保たれる。
一方、通紙される記録紙109のサイズが小サイズの場合には、図37においてソレノイド504をオン状態にし、最大幅制御部材312をその切欠312aの位置が励磁コイル231に対向するように反転させて、小サイズの記録紙幅に対応した小サイズ幅制御部材311のみを励磁装置230の励磁コイル231に対向させる。これにより、励磁装置230により発生して支持ローラ220を透過した磁束が、図36に示すように、小サイズ幅制御部材311のみにより支持ローラ220の小サイズ通紙幅Lsの領域でよく吸収されて、定着ベルト210の小サイズ通紙幅のみに作用する。この結果、定着ベルト210の非通紙領域における励磁コイル231との磁気結合が低下し、定着ベルト210の小サイズ通紙幅Lsの領域の発熱よりも非通紙領域の発熱が抑制されて、定着ベルト210の非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。
このように、本実施の形態13に係る定着装置300は、支持ローラ220が磁束を透過するので、最大幅制御部材312の切欠312aの位置を記録紙109のサイズに応じて選択的に反転させることにより、支持ローラ220を透過した磁束を部分的に増減させて定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布を容易に制御することができる。
(実施の形態14)
次に、本発明の実施の形態14に係る定着装置について説明する。図38及び図39は、本発明の実施の形態14に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図38に示すように、本実施の形態14に係る定着装置の支持ローラ620としては、金属製の薄肉の板材を円筒状に形成し、接合部621を溶接して構成したものを用いることができる。この定着装置は、その支持ローラ620として溶接管を用いることができるので、安価に構成することができる。
また、図39に示すように、本実施の形態3に係る定着装置の支持ローラ720としては、円筒体の母線方向に沿ってリブ状の補強溝721を形成したものを用いることができる。この定着装置は、支持ローラ720を、熱容量が小さい薄肉材料を用いた曲げ強度の高いものに構成することができる。例えば、100μm以下の薄肉材料であってもリブ状の補強溝721を形成することにより、熱容量が小さくかつ曲げ強度の高い支持ローラを形成できる。
しかしながら、図38に示すように、溶接管で構成した支持ローラ620は、その接合部621と非接合部とで熱容量が異なるため、その表面温度に温度ムラが発生する。また、図7に示すように、リブ状の補強溝721を形成した支持ローラ720は、定着ベルト210に対する接触部分と非接触部分とで定着ベルト210からの熱伝導量が異なるため、その表面温度に温度ムラが発生する。
そこで、本実施の形態14に係る定着装置においては、定着ベルト210の周長が、支持ローラ620及び支持ローラ720の外周長の整数倍にならないように構成している。この構成の定着装置は、定着ベルト210と支持ローラ620及び支持ローラ720との回転周期が異なるようになり、定着ベルト210の回転時における支持ローラ620及び支持ローラ720と定着ベルト210との接触点が逐次変化する。従って、この構成の定着装置によれば、支持ローラ620,720に温度ムラが発生しても、この支持ローラ620,720の熱が定着ベルト210の一定部位に伝導されて蓄積されることがないので、定着ベルト210の表面温度をムラなく平滑化させることができる。
(実施の形態15)
次に、本発明の実施の形態15に係る定着装置について説明する。図40は、本発明の実施の形態15に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図40に示すように、本実施の形態15に係る定着装置の支持ローラ820は、円筒体の外周面にローレット状の凹凸821を形成して構成されている。この定着装置は、支持ローラ820と定着ベルト210との接触面積を極力減らすことができる。
従って、本実施の形態15に係る定着装置は、定着ベルト210と支持ローラ820との断熱性を向上させることができ、ウォーミングアップ時における定着ベルト210の発熱エネルギーのロスが少なくなり、立ち上がり時間をより短縮することができる。
ところが、このように凹凸821を形成した支持ローラ820は、その凹凸821のピッチPと定着ベルト210との回転周期が一致していると、定着ベルト210の回転時における支持ローラ820の凹凸821と定着ベルト210との接触点が常に一定した点になるため、その表面温度に温度ムラが発生する。
そこで、本実施の形態15に係る定着装置においては、定着ベルトの210周長が、凹凸821のピッチPの整数倍にならないように構成している。
このように構成した定着装置は、定着ベルト210の周長が支持ローラ820の凹凸821のピッチPの整数倍でないので、定着ベルト210の回転時における支持ローラ820と定着ベルト210との接触点が逐次変化する。従って、この定着装置によれば、支持ローラ820の表面温度に温度ムラが発生しても、この支持ローラ820の熱が定着ベルト210の一定の点に蓄積されることがなく、定着ベルト210の表面温度をムラなく平滑化させることができる。
(実施の形態16)
次に、本発明の実施の形態16に係る定着装置について説明する。図41は、本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図41に示すように、本実施の形態16に係る定着装置の支持ローラ920は、例えば、図42に示すようなチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921を円筒状に組み合わせて構成されている。
このように構成した定着装置は、支持ローラ920がチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921で構成されているので、支持ローラ920を熱容量が小さく、かつ曲げ強度の高い構成とすることができる。また、この定着装置によれば、支持ローラ920を構成する板材921の数量を変えることにより、支持ローラ920の外径を容易に変えることができる。
(実施の形態17)
次に、本発明の実施の形態17に係る定着装置について説明する。図43は、本発明の実施の形態17に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
図43に示すように、本実施の形態17に係る定着装置1100は、その定着ベルト210を懸架するベルト支持部材が、例えば、金属薄板からなる板材を円弧状に形成したガイド部材1120で構成されている。
この定着装置1100は、そのベルト支持部材であるガイド部材1120の占有スペースが、前記ベルト支持部材を支持ローラで構成した場合と比較して、少なくて済むので、定着ベルト210の周長を極力短くすることができる。また、この定着装置1100は、そのベルト支持部材であるガイド部材1120を、前記支持ローラの場合よりも熱容量が小さくかつ安価に構成できる。なお、このガイド部材1120は、例えば、図42に示したチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921で構成した支持ローラ920の一部を切り取って構成したものであってもよい。
なお、上述した実施の形態13から実施の形態17に示す支持ローラは、画像形成装置の定着装置以外の加熱装置に適用可能である。
本明細書は、2003年10月17日出願の特願2003−358024、2003年10月17日出願の特願2003−358330、2004年5月25日出願の特願2004−155165に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、装置を大型化することなく、発熱部材の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の定着装置として有用である。
本発明は、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に用いて有用な定着装置に関し、特に電磁誘導加熱方式の加熱手段を用いて記録媒体上に未定着画像を加熱定着させる定着装置に関する。
電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式の定着装置は、発熱体に対し磁場生成ユニットにより生成した磁場を作用させて渦電流を発生させ、この渦電流により前記発熱体に生じたジュール発熱により、転写紙及びOHPシートなどの記録媒体上の未定着画像を加熱定着する。
この電磁誘導加熱方式の定着装置は、ハロゲンランプを熱源とする熱ローラ方式の定着装置と比較して発熱効率が高く定着速度を速くすることができるという利点を有している。
また、前記発熱体として肉厚の薄いスリーブもしくは無端状ベルトなどからなる薄肉の発熱体を用いた定着装置が知られている。かかる定着装置は、発熱体の熱容量が小さくこの発熱体を短時間で発熱させることができ、その結果、所定の定着温度に発熱するまでの立ち上がり応答性を著しく向上させることができる。
反面、このような熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置は、記録媒体が通紙されるだけでも発熱体の熱が奪われて通紙領域の温度が低下してしまう。そこで、この種の定着装置では、その通紙領域の温度が所定の定着温度に維持されるように発熱体を適時加熱している。
このため、この熱容量の小さい発熱体を用いた定着装置では、サイズが小さい記録媒体が連続的に通紙されると、発熱体が過熱され続けられてその非通紙領域の温度が通紙領域の温度よりも異常に高くなる現象、つまり非通紙領域の過昇温現象が発生する。
従来、このような非通紙領域の過昇温現象を解消する技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる励磁手段により生成された磁束のうち、前記発熱体の非通紙領域に作用する磁束のみを、発熱体の発熱幅方向に移動可能な磁束吸収部材により吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、前記非通紙領域の過昇温現象を解消する他の技術として、発熱体を電磁誘導発熱させる励磁手段の第1磁性体コアの背後に、非通紙領域に対応する第2磁性体コアを配置し、第1磁性体コアと第2磁性体コアとのギャップを変化させて発熱体の長手方向の温度分布を変えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
図1は、特許文献1に開示された定着装置の実施例の概略斜視図である。図1に示すように、この定着装置は、コイルアセンブリ10、金属スリーブ11、ホルダ12、加圧ローラ13、磁束遮蔽板31及び変位機構40などを備えている。
図1において、コイルアセンブリ10は、高周波磁界を生じる。金属スリーブ11は、コイルアセンブリ10の誘導コイル18により誘導電流を誘起されて加熱され記録材14を搬送する方向に回転する。コイルアセンブリ10は、ホルダ12の内部に保持されている。ホルダ12は、図示しない定着ユニットフレームに固定され非回転となっている。加
圧ローラ13は、金属スリーブ11に圧接してニップ部を形成しつつ記録材14を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材14が挟持搬送されることにより、記録材14上の未定着画像が発熱した金属スリーブ11により記録材14に加熱定着される。
磁束遮蔽板31は、図1に示すように、誘導コイル18の主として上半分を覆う円弧曲面を呈しており、変位機構40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退される。変位機構40は、磁束遮蔽板31に連結されるワイヤ33と、ワイヤ33が懸架される一対のプーリ36と、一方のプーリ36を回転駆動するモータ34とを有している。
磁束遮蔽板31は、変位機構40により、記録材14のサイズが最大サイズの場合には図1に実線で示す位置に待避するように移動される。一方、磁束遮蔽板31は、記録材14のサイズが小サイズの場合には図1に鎖線で示す位置に進出するように移動される。これにより、誘導コイル18から金属スリーブ11の非通紙領域へ届く磁束が遮蔽され非通紙領域の過昇温が抑制される。
図2A、図2Bは、特許文献2に開示された定着装置の実施例の概略断面図である。図2A、図2Bに示すように、この定着装置は、加熱アセンブリ51、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55、第2コア56、定着ローラ57及び加圧ローラ58などを備えている。
図2A、図2Bにおいて、加熱アセンブリ51は、ホルダ52、コア保持回動部材53、励磁コイル54、第1コア55及び第2コア56からなり磁束を発生する。定着ローラ57は、加熱アセンブリ51から発生する磁束の作用により誘導発熱され記録材59を搬送する方向に回転する。
加圧ローラ58は、定着ローラ57に圧接してニップ部を形成しつつ記録材59を搬送する方向に回転する。このニップ部により記録材59が挟持搬送されることにより、記録材59上の未定着画像が発熱した定着ローラ57により記録材59に加熱定着される。
第1コア55は、定着ローラ57の最大通紙領域の幅と同じ幅を有している。一方、第2コア56は、記録材59のサイズが最大サイズの場合には図2Aに示すように、第1コア55に近接した位置に移動される。また、第2コア56は、記録材59のサイズが小サイズの場合には、図2Bに示すように、コア保持回動部材53が180°回転して第1コア55から離間した位置に移動される。これにより、第2コア56に対応する定着ローラ57の非通紙領域の発熱が抑えられる。
特開平10−74009号公報
特開2003−123961号公報
しかしながら、特許文献1に開示された定着装置は、磁束遮蔽板31を変位機構40によりコイルアセンブリ10とホルダ12との両端部の隙間に対して進退させる構成であるため、図1に示すように、変位機構40の一対のプーリ36がホルダ12の両端部から大きく突出し定着装置本体が大型化してしまう不具合がある。また、特許文献1に開示された定着装置は、図1に示すように磁性材から形成される金属スリーブ11と誘導コイル18の間に磁束遮蔽板31を配置する構成である。誘導加熱方式を用いる定着装置では、誘導コイル18と金属スリーブ11の間の隙間を例えば1mm程度に狭く保って、磁気的な結合を高める必要がある。磁束遮蔽板31はその狭い隙間に挿入するため、厚みを薄くする必要がある。つまり、磁束遮蔽板31は十分な厚みがとれないため電気抵抗が高くなり
、自ら発熱しやすくなるという問題がある。磁束遮蔽板31に通孔35を形成することで、渦電流による発熱を抑えることができるが、これにより磁束が金属スリーブ11に届いて金属スリーブの非通紙領域が発熱する。この結果、小サイズの記録材14が連続的に通紙されると、金属スリーブ11の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を抑制できないという問題がある。
また、特許文献2に開示された定着装置は、図2A、図2Bに示すように、コア保持回動部材53の回転により第2コア56が第1コア55に対して変位しても第1コア55と定着ローラ57との間隔が変化しないため、定着ローラ57の通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定である。
このため、この定着装置は、第1コア55に対応する通紙領域の端部から第2コア56に対応する非通紙領域の端部への磁束の回り込みが発生し、定着ローラ57の通紙領域における磁束の抑制効果が低くなってしまう。この結果、この定着装置では、小サイズの記録材59が連続的に通紙されると、定着ローラ57の非通紙領域に熱が蓄積し、過昇温を効果的に抑制できないという問題がある。
また、この定着装置では、コア保持回動部材53に1つの記録材サイズに対応した第2コア56しか保持できないため、定着ローラ57の通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。
本発明の目的は、かかる点に鑑みてなされたもので、発熱部材の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができる小型な定着装置を提供することにある。
本発明の定着装置は、磁束を発生する磁束発生部と、薄肉で非磁性の電気導体からなり前記磁束が透過しかつ誘導加熱される発熱体と、前記磁束を遮蔽する少なくとも一つの磁気遮蔽体と、前記発熱体の非通紙領域に対する磁束の遮蔽と解放とを切り換える磁束調整手段と、を備え、前記磁気遮蔽体は前記発熱体に対して前記磁束発生部の反対側に配置されるものである。
本発明によれば、装置の小型化を図ることができ、かつ発熱体の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができる。
本発明の骨子は、磁束発生部と対向コアとの間に移動自在に配置されかつ磁束を透過する発熱体の移動方向に沿って前記磁束発生部に対し相対移動して、前記磁束発生部と前記対向コアとの間の前記発熱体の非通紙領域に対応する磁路を遮断及び解放する磁気遮蔽体を設けたことである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一の構成または機能を有する構成要素及び相当部分には、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
図3に示すように、画像形成装置100は、電子写真感光体(以下、「感光ドラム」と称する)101、帯電器102、レーザービームスキャナ103、現像器105、給紙装置107、定着装置200及びクリーニング装置113などを具備している。
図3において、感光ドラム101は、矢印の方向に所定の周速度で回転駆動されながら、その表面が帯電器102によってマイナスの所定の暗電位V0に一様に帯電される。
レーザービームスキャナ103は、図示しない画像読取装置やコンピュータ等のホスト装置から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム104を出力し、一様に帯電された感光ドラム101の表面をレーザービーム104によって走査露光する。これにより、感光ドラム101の露光部分の電位絶対値が低下して明電位VLとなり、感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
現像器105は、回転駆動される現像ローラ106を備えている。現像ローラ106は、感光ドラム101と対向して配置されており、その外周面にはトナーの薄層が形成される。また、現像ローラ106には、その絶対値が感光ドラム101の暗電位V0よりも小さく、明電位VLよりも大きい現像バイアス電圧が印加されている。
これにより、現像ローラ106上のマイナスに帯電したトナーが感光ドラム101の表面の明電位VLの部分にのみ付着し、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像が反転現像されて顕像化されて、感光ドラム101上に未定着トナー像111が形成される。
一方、給紙装置107は、給紙ローラ108により所定のタイミングで記録媒体としての記録紙109を一枚ずつ給送する。給紙装置107から給送された記録紙109は、一対のレジストローラ110を経て、感光ドラム101と転写ローラ112とのニップ部に、感光ドラム101の回転と同期した適切なタイミングで送られる。これにより、感光ドラム101上の未定着トナー像111が、転写バイアスが印加された転写ローラ112により記録紙109に転写される。
このようにして未定着トナー像111が形成担持された記録紙109は、記録紙ガイド114により案内されて感光ドラム101から分離された後、定着装置200の定着部位に向けて搬送される。定着装置200は、その定着部位に搬送された記録紙109に未定着トナー像111を加熱定着する。
未定着トナー像111が加熱定着された記録紙109は、定着装置200を通過した後、画像形成装置100の外部に配設された排紙トレイ116上に排出される。
一方、記録紙109が分離された後の感光ドラム101は、その表面の転写残トナー等の残留物がクリーニング装置113によって除去され、繰り返し次の画像形成に供される。
次に、本実施の形態1に係る定着装置について、具体例を挙げてさらに詳細に説明する。図4は、本実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図である。図4に示すように、定着装置200は、定着ベルト210、ベルト支持部材としての支持ローラ220、電磁誘導加熱機構としての励磁装置230、定着ローラ240及びベルト回転機構としての加圧ローラ250などを具備している。
図4において、定着ベルト210は、支持ローラ220と定着ローラ240とに懸架されている。支持ローラ220は、定着装置200の本体側板201の上部側に回転自在に軸支されている。定着ローラ240は、本体側板201に短軸202により揺動自在に取り付けられた揺動板203に回転自在に軸支されている。加圧ローラ250は、定着装置200の本体側板201の下部側に回転自在に軸支されている。
揺動板203は、コイルバネ204の緊縮習性により、短軸202を中心として時計方向に揺動する。定着ローラ240は、この揺動板203の揺動に伴って変位し、その変位により定着ベルト210を挟んで加圧ローラ250に圧接している。支持ローラ220は図示されないバネにより定着ローラ240と反対側に付勢され、これにより定着ベルト210には所定の張力が付与されている。
加圧ローラ250は、図示しない駆動源により矢印方向に回転駆動される。定着ローラ240は、加圧ローラ250の回転により定着ベルト210を挟持しながら従動回転する。これにより、定着ベルト210が、定着ローラ240と加圧ローラ250とに挟持されて矢印方向に回転される。この定着ベルト210の挟持回転により、定着ベルト210と加圧ローラ250との間に未定着トナー像111を記録紙109上に加熱定着するためのニップ部が形成される。
励磁装置230は、前記IH方式の電磁誘導加熱機構からなり、図4に示すように、定
着ベルト210の支持ローラ220に懸架された部位の外周面に沿って配設した磁束発生部としての励磁コイル231と、励磁コイル231を覆うフェライトで構成したコア232とを備えている。励磁コイル231は、通紙幅方向に延伸し定着ベルト210の移動方向に沿って折り返して巻回される。また、支持ローラ220の内部には定着ベルト210及び支持ローラ220を挟んで励磁コイル231と対向する対向コア233を備えている。
励磁コイル231は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、支持ローラ220に懸架された定着ベルト210の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。励磁コイル231には、図示しない励磁回路から駆動周波数が25kHzの励磁電流が印加される。これより、コア232と対向コア233との間に交流磁界が発生し、定着ベルト210の導電層に渦電流が発生して定着ベルト210が発熱する。なお、本例では、定着ベルト210が発熱する構成であるが、支持ローラ220を発熱させ、この支持ローラ220の熱を定着ベルト210に伝導する構成としてもよい。
コア232は、励磁コイル231の中心と背面の一部に設けられている。コア232及び対向コア233の材料としては、フェライトの他、パーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
この定着装置200は、図4に示すように、未定着トナー像111が転写された記録紙109を、未定着トナー像111の担持面を定着ベルト210に接触させるように矢印方向から搬送することにより、記録紙109上に未定着トナー像111を加熱定着することができる。
なお、支持ローラ220との接触部を通り過ぎた部分の定着ベルト210の裏面には、サーミスタからなる温度センサ260が接触するように設けられている。この温度センサ260により定着ベルト210の温度が検出される。温度センサ260の出力は、図示しない制御装置に与えられている。制御装置は、温度センサ260の出力に基づいて、最適な画像定着温度となるように、前記励磁回路を介して励磁コイル231に供給する電力を制御し、これにより定着ベルト210の発熱量を制御している。
また、記録紙109の搬送方向下流側の、定着ベルト210の定着ローラ240に懸架された部分には、加熱定着を終えた記録紙109を排紙トレイ116に向けてガイドする排紙ガイド270が設けられている。
さらに、励磁装置230には、励磁コイル231及びコア232と一体に、保持部材としてのコイルガイド234が設けられている。このコイルガイド234は、PEEK材やPPSなどの耐熱温度の高い樹脂で構成されている。このコイルガイド234は、定着ベルト210から放射される熱が定着ベルト210と励磁コイル231との間の空間に籠もって、励磁コイル231が損傷を受けるのを回避することができる。
なお、図4に示したコア232は、その断面形状が半円形になっているが、このコア232は必ずしも励磁コイル231の形状に沿った形状とする必要はなく、その断面形状は、例えば、略Πの字状であってもよい。
定着ベルト210は、基材がガラス転移点360(℃)のポリイミド樹脂中に銀粉を分散して導電層を形成した、直径50mm、厚さ50μmの薄肉の無端状ベルトで構成されている。前記導電層は、厚さ10μm銀層を2〜3積層した構成としてもよい。また、さらに、この定着ベルト210の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる厚さ5μmの離型層(図示せず)を被覆してもよい。定着ベルト210の基材のガラス転
移点は、200(℃)〜500(℃)の範囲であることが望ましい。さらに、定着ベルト210の表面の離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いてもよい。
なお、定着ベルト210の基材の材料としては、上述のポリイミド樹脂の他、フッ素樹脂等の耐熱性を有する樹脂、電鋳によるニッケル薄板及びステンレス薄板等の金属を用いることもできる。例えば、この定着ベルト210は、厚さ40μmのSUS430(磁性)又はSUS304(非磁性)の表面に、厚さ10μmの銅メッキを施した構成のものであってもよい。
また、後述する定着ベルト210の通紙幅方向(支持ローラ220の長手方向)の加熱制御を行うには、少なくとも50%以上の磁束が定着ベルト210を透過することが望ましい。このため、定着ベルト210は、銀や銅等の非磁性材料で構成することが好ましい。なお、定着ベルト210を磁性材料で構成する場合はできるだけ厚みを薄く(好ましくは50μm以下)にするのが良い。例えば、厚さ40μmのニッケルベルトで構成する場合、励磁装置230の駆動周波数f=25kHzの時、厚さ40μmはニッケル(Ni)の表皮深さの約1/2の厚みとなり、約60%の磁束が定着ベルト210を透過するので、定着ベルト210の通紙幅方向の加熱制御が行いやすくなる。
また、定着ベルト210は、モノクロ画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には離型性のみを確保すればよいが、この定着ベルト210をカラー画像の加熱定着用の像加熱体として用いる場合には厚いゴム層を形成して弾性を付与することが望ましい。また、定着ベルト210の熱容量は、60J/K以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、40J/K以下である。
支持ローラ220は、直径が20mm、長さが320mm、厚みが0.2mmの円筒状の金属ローラからなる。なお、支持ローラ220の材料としては、厚みが0.04mm程度まで薄くなると鉄やニッケル等の磁性材料でも良いが、磁束を通し易い非磁性材料の方が好ましい。また、できるだけ渦電流を発生し難い方が良く、固有抵抗が50μΩcm以上である非磁性のステンレス材を用いることが好ましい。ちなみに、非磁性のステンレス材であるSUS304で構成した支持ローラ220は、固有抵抗が72μΩcmと高くかつ非磁性であるので支持ローラ220を透過する磁束があまり遮蔽されず、例えば0.2mmの肉厚のものでは支持ローラ220の発熱が極めて小さい。また、SUS304で構成した支持ローラ220は、機械的強度も高いので0.04mmの肉厚に薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、本構成の定着装置200に適している。また、支持ローラ220としては、比透磁率が4以下であることが好ましく、厚みが、0.04mmから0.2mmの範囲であるものが好ましい。
定着ローラ240は、表面が低硬度(ここでは、JISA30度)、直径30mmの低熱伝導性の弾力性を有する発泡体であるシリコーンゴムによって構成されている。
加圧ローラ250は、硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成されている。この加圧ローラ250の材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂や他のゴムを用いてもよい。また、加圧ローラ250の表面には、耐摩耗性や離型性を高めるために、PFA、PTFE、FEP等の樹脂あるいはゴムを、単独あるいは混合して被覆することが望ましい。また、加圧ローラ250は、熱伝導性の小さい材料によって構成されることが望ましい。
ところで、この種の従来の定着装置は、前述したように、定着ベルトの通紙領域と非通紙領域との磁気的ギャップが一定となるため、通紙領域の端部から非通紙領域への磁束の
回り込みが発生し、定着ベルトの通紙領域と非通紙領域との境界部に熱が蓄積して、この境界部に過昇温現象が発生したり、定着装置本体が大型化したりしてしまうという問題がある。また、従来の定着装置では、定着ローラの通紙領域幅を最大サイズと小サイズとの2種類の記録材の紙幅にしか対応させることができない。また、非通紙領域の磁束を遮蔽する磁束遮蔽板は発熱するという問題がある。
そこで、本実施の形態1に係る定着装置200は、図5に示すように、磁気を遮蔽することができる素材からなる磁気遮蔽体301を設ける。この磁気遮蔽体301は、励磁装置230と対向コア233との間に配置されており、磁束を透過する発熱体としての定着ベルト210の移動方向に沿って、励磁装置230に対し相対移動自在に支持されている。
本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301が励磁装置230に対して変位するように構成されている。この磁気遮蔽体301の支持部材としては、例えば、対向コア233に嵌合した筒状のスリーブ(不図示)を用いることができる。なお、本実施の形態1に係る定着装置200では、図6に示すように、磁気遮蔽体301の支持部材として対向コア233を用いている。
また、磁気遮蔽体301は、記録紙109の通紙基準に応じて対向コア233への配設位置が決められる。ここでは、記録紙109の通紙基準をセンター基準とし、図6に示すように、磁気遮蔽体301を対向コア233の両端部に配設している。また、磁気遮蔽体301は、図6に示すように、最大サイズの記録紙に対応した定着ベルト210の最大通紙領域幅をAとし、小サイズの記録紙に対応した定着ベルト210の小サイズ通紙領域幅をBとした場合、小サイズの記録紙を通紙しているときの定着ベルト210の両端部に生じる非通紙領域に対応する長さCを有している。
また、本実施の形態1に係る定着装置200は、その支持ローラ220が励磁装置230により発生した磁束を遮蔽せずに透過する部材、例えば前述した固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成されている。
図5において、磁気遮蔽体301は、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を遮断する磁路遮断位置(図5に破線で示す位置)と、磁路302を解放する磁路解放位置(図5に実線で示す位置)と、に変位する。
図7は、磁気遮蔽体301の支持体である対向コア233を回転して、磁気遮蔽体301を変位させる変位機構500を示す概略斜視図である。この変位機構500は、図7に示すように、対向コア233の支軸に設けた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502の支軸に一体化されたアーム503及びアーム503を揺動させるソレノイド504などで構成されている。
図7において、ソレノイド504がオン(通電)状態になると、ソレノイド504のアクチュエータが移動してアーム503が揺動する。このアーム503の揺動により、大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、対向コア233の支軸が回転して、磁気遮蔽体301が前記磁路解放位置から図8に示す前記磁路遮断位置に変位する。これにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302が磁気遮蔽体301により遮断される。
一方、前記オン状態にあったソレノイド504がオフ(非通電)状態になると、アーム
503が図7に示す初期位置に復帰し、大歯車502、小歯車501及び対向コア233の支軸がそれぞれ逆回転して、磁気遮蔽体301が前記磁路遮断位置から前記磁路解放位置に戻る。
このように、本実施の形態1に係る定着装置200は、変位機構500のソレノイド504をオン/オフすることにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を、磁気遮蔽体301により遮断したり解放したりして、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
すなわち、通紙される記録紙109のサイズが最大サイズの場合には、図7においてソレノイド504をオフ状態のままにし、磁気遮蔽体301を前記磁路解放位置に待機させる。これにより、図5に示すように、励磁装置230により発生した磁束が、対向コア233の長手方向の全域を流れて定着ベルト210の最大通紙領域幅Aの全体に作用し、定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布が最大通紙領域幅Aの全体で均一になるように保たれる。
一方、通紙される記録紙109のサイズが小サイズの場合には、図7においてソレノイド504をオン状態にし、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を遮断する磁路遮断位置に磁気遮蔽体301を変位させる。これにより、定着ベルト210の非通紙領域における励磁コイル231との磁気結合が低下して、励磁装置230により発生した磁束が、図6に示す対向コア233の小サイズ通紙領域幅Bの部位のみを通るようになり、定着ベルト210の非通紙領域の発熱が抑制され、この非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。
本実施の形態1に係る定着装置200は、定着ベルト210と磁気遮蔽体301を銀、銅、アルミ等の非磁性の電気導体で構成している。定着ベルト210を非磁性の電気導体を薄肉とした構成としたので、電気抵抗が高くなって発熱するようになる。さらに、定着ベルト210は非磁性材料を用いているので、磁束が定着ベルト210を透過しやすい。このようにすることにより、定着ベルト210に対して励磁装置230の反対側に磁気遮蔽板301を配置することが可能になる。つまり、磁気遮蔽体の厚みを薄くする必要性を無くすことができ、例えば1mm程度に厚さを増すことが可能になる。これにより、磁気遮蔽体301は電気抵抗が小さくなるので、磁気遮蔽体301の発熱は抑えられる。また、磁気遮蔽体301は、熱伝導率及び比熱が高いフェライト等の材料で構成される対向コア233に配設されているので、磁気遮蔽体301で生じた熱は対向コア233に伝導して拡散し、磁気遮蔽体301の過度な温度上昇を抑えられる。また、磁気遮蔽体301は厚みを増すことにより電気抵抗が小さくなり、渦電流が流れやすくなる。これにより、反発磁界が強まって磁束をより効果的に遮蔽することができる。さらに、磁気遮蔽体301は通孔35を必要としないので、図1の磁束遮蔽板31に比べて磁束をより効果的に遮蔽できる。
本実施の形態1に係る定着装置200は、上述のように、励磁装置230と対向コア233との間を通る磁路302を磁気遮蔽体301により遮蔽しているので、定着ベルト210を誘導加熱する非通紙領域の磁束を効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の通紙領域に対応する磁束の非通紙領域への回り込みを防止できる。
このように、本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301により、定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁束を効果的に遮断することができるので、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を防止することができる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200においては、励磁装置230と磁気遮蔽体301との相対移動により、磁路302を遮断したり解放したりできるので、装置本体が定着ベルト210の通紙領域幅方向に大型化することがない。
さらに、本実施の形態1に係る定着装置200においては、磁気遮蔽体301により励磁装置230と対向コア233との間の磁路302のみを遮断することで定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁束を遮断することが可能であるので、磁気遮蔽体301を小さく構成することができ、少なくとも2つの磁気遮蔽体301を設けることが可能となる。従って、この定着装置200においては、前記通紙領域幅方向の長さが異なった磁気遮蔽体301を配設することにより、定着ベルト210の通紙領域幅を少なくとも3種類の領域に対応させることが可能になる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200は、定着ベルト210を直接加熱する励磁装置230が支持ローラ220に懸架された部位の定着ベルト210の外周面に沿って配設されている。従って、この定着装置200においては、支持ローラ220自体の通気性が良くなり、連続定着時でも支持ローラ220が過熱状態になることがないので、支持ローラ220からの熱伝導による定着ベルト210の通紙領域の温度と非通紙領域の温度との温度差が許容範囲に収まるようになり、定着ベルト210の通紙幅方向の温度ムラの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態1に係る定着装置200の支持ローラ220は、厚みが0.04mm〜0.2mmの薄肉の金属ローラで構成されているので、その熱容量が非常に小さくなる。従って、この定着装置200においては、ウォーミングアップ時に定着ベルト210の熱が支持ローラ220との接触により大量に奪われることがなくなり、立ち上がり時間を大幅に短縮することができる。
さらに、本実施の形態1に係る定着装置200の支持ローラ220は、固有抵抗が50μΩcm以上であるので、渦電流が流れ難く、支持ローラ220自体の発熱もほとんど無なくなり、投入した電力が定着ベルト210の発熱のみに有効に効率よく使われるようになる。
ここで、支持ローラ220を固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成した場合には、磁束が遮蔽されずに支持ローラ220を透過するので、厚さが0.2mmのものでも発熱が極めて小さい。また、この支持ローラ220は、機械的強度も高く定着ベルト210を懸架するのに必要な強度を確保することができるので、薄肉化して熱容量をさらに小さくすることができ、ウォーミングアップ時の立ち上がり時間をさらに短縮することができる。
なお、非磁性の固有抵抗の低い材料(アルミ、銅など)の支持ローラ220を用いた場合には、それを透過した磁束により渦電流が多量に発生し、反発磁界が形成されるため、定着ベルト210を交差する磁束が減少して発熱効率が低下する。また、磁性材料で固有抵抗が低い鉄(Fe)及びニッケル(Ni)等からなる支持ローラ220では、定着ベルト210からの交差磁束は確保できるが発生する渦電流により自身が発熱するため、立ち上がりが遅くなる。
ちなみに、前記固有抵抗(単位μΩcm)は、鉄:9.8、アルミ:2.65、銅:1.7、ニッケル:6.8、磁性ステンレス(SUS430):60、非磁性ステンレス(SUS304):72である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る定着装置について説明する。この定着装置における励磁装置230のコア232は、図9に示すように、励磁コイル231の巻回中心に配置したセンターコア701を有している。また、この定着装置は、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、センターコア701の同方向の幅W2よりも大きくなるように構成されている。なお、この磁気遮蔽体301の幅W1とセンターコア701の幅W2とは、図9に示すように、角度θ1と角度θ2とで規定することもできる。
これにより、この定着装置においては、実施の形態1の定着装置の効果に加えて、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を確実に防止することができるようになる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図10に示すように、その励磁装置230のコア232がセンターコアのない形状を有している。また、この定着装置は、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、励磁装置230の励磁コイル231の巻回中心の同方向の幅W3よりも大きくなるように構成されている。なお、この磁気遮蔽体301の幅W1と励磁コイル231の巻回中心の幅W3とは、角度で規定することもできる。
これにより、この定着装置においては、実施の形態2に係る定着装置と同様に、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温を確実に防止することができるようになる。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図11に示すように、磁気遮蔽体301の励磁装置230に対する相対移動方向の幅W1が、励磁コイル231の巻回部位の同方向の巻回幅W4よりも狭くなるように構成されている。
これにより、この定着装置においては、実施の形態2に係る定着装置又は実施の形態3に係る定着装置の効果に加えて、図11に示すように、磁気遮蔽体301の前記磁路解放位置を磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置とした場合でも、磁気遮蔽体301が励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束に影響を与えることがない。
つまり、この定着装置では、磁気遮蔽体301を励磁コイル231の巻回部位と対向する位置に待避させて定着ベルト210を発熱させても、その通紙領域に温度ムラが発生することがなくなる。従って、この定着装置においては、磁気遮蔽体301の待避位置をより多く確保できるようになり、磁気遮蔽体301を数多く設ける際の設計の自由度を高めることが可能になる。
ここで、上述した実施の形態1から実施の形態4に係る定着装置は、何れも磁気遮蔽体301により定着ベルト210の非通紙領域の磁路302を遮断する磁路遮断位置を、磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回中心に対向した位置としている。この励磁コイル231の巻回中心に対向した位置は、励磁コイル231と対向コア233との間の磁束が最も集中している部位となる。
上述した実施の形態1から実施の形態4に係る定着装置は、上述のように磁束が最も集中している励磁コイル231の巻回中心に対向した位置が磁気遮蔽体301の磁路遮断位
置となっているので、定着ベルト210の非通紙領域の過昇温をより効果的に防止することができる。
(実施の形態5)
次に、実施の形態5に係る定着装置について説明する。この定着装置は、例えば、図12に示すように、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cが配設されている場合に、これらの磁気遮蔽体うちの少なくとも1つの磁路解放位置を、磁気遮蔽体301が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置としたものである。
この定着装置においては、図12において、磁気遮蔽体301aが前記磁路解放位置に位置した状態で、励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束が磁気遮蔽体301aの影響を受けることがないので、この状態で定着ベルト210を発熱させてもその通紙領域に温度ムラが発生することがない。
また、この定着装置においては、励磁コイル231の巻回部位からから外れた部位を他の磁気遮蔽体301b、301cの磁路解放位置とすることができるので、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを容易に配置できるようになる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図13に示すように、定着ベルト210に複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを備えている。これら磁気遮蔽体301a,301b,301cは定着ベルト210の互いに幅が異なる複数の非通紙領域の各々に対応する長さを有する。
図14は、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを支持している対向コア233を回転して、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cを変位させる変位機構1200を示す概略斜視図である。この変位機構1200は、図14に示すように、対向コア233の支軸に設けた小歯車1201、小歯車1201に噛み合う大歯車1202、大歯車1202を軸支して回転するステッピングモータ1203などで構成されている。
図14において、ステッピングモータ1203がオン(通電)状態になると、その支軸の回転により大歯車1202が回転して小歯車1201が従動回転する。この小歯車1201の従動回転により、対向コア233の支軸が回転して、磁気遮蔽体301a,301b,301cのうちの通紙される記録紙サイズの非通紙領域幅に対応した長さの所定の磁気遮蔽体が、その磁路解放位置から磁路遮断位置に変位する。ここでは、図15に示すように、磁気遮蔽体301aが、その磁路解放位置から磁路遮断位置に変位する。これにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302が磁気遮蔽体301aにより遮断される。
一方、定着ベルト210の通紙領域の全幅を発熱させる場合には、図12に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cの各々が前記磁路解放位置に位置した状態でステッピングモータ1203への通電を断つ。
このように、この定着装置は、変位機構1200のステッピングモータ1203をオン/オフすることにより、励磁装置230と対向コア233との間の定着ベルト210の非通紙領域に対応する磁路302を、各磁気遮蔽体301a,301b,301cにより遮断したり解放したりして、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
従って、この定着装置においては、通紙される記録紙のサイズに応じて、前記磁路解放
位置から磁路遮断位置に各磁気遮蔽体301a,301b,301cを選択的に変位させることにより、定着ベルト210の通紙される記録紙109のサイズに応じた非通紙領域の発熱を抑制して、定着ベルト210の非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。従って、この定着装置においては、定着ベルト210により複数のサイズの記録紙109の良好な加熱定着が可能となる。
(実施の形態7)
次に、実施の形態7に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図16に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cが、励磁装置230に対して相対回転自在な回転体である対向コア233に設けられ、かつ互いに隣接する2つの磁気遮蔽体の各々の中心を通る法線のなす角度が、30°<θ3<60°又は120°<θ4<180°のいずれかの角度に設定されている。
すなわち、この定着装置は、図16に示すように、磁気遮蔽体301bと磁気遮蔽体301cとの前記角度θ3が30°<θ3<60°に設定され、磁気遮蔽体301aと磁気遮蔽体301bとの前記角度θ4が120°<θ4<180°に設定されている。
この定着装置は、複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cのそれぞれが前記磁路解放位置に位置した状態で、励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束が複数の磁気遮蔽体301a,301b,301cの各々の影響を受けないようになるので、この状態で定着ベルト210を発熱させた際の通紙領域の温度ムラの発生を抑制することができる。
ここで、上述の各磁気遮蔽体301a,301b,301cは、低透磁率の電気導体で構成することが好ましい。この磁気遮蔽体301a,301b,301cを低透磁率の電気導体で構成した定着装置は、磁気遮蔽体301a,301b,301cを銅もしくはアルミなどの安価な部材で構成することができる。
また、上述の各実施の形態に係る定着装置は、その各磁気遮蔽体301a,301b,301cを支持する回転体として対向コア233を用いているので、構成を簡素化することができる。
(実施の形態8)
次に、実施の形態8に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図17に示すように、前記磁気遮蔽体を対向コア233に設けた切欠1501で構成したものである。この定着装置の切欠1501は、図18に示す変位機構500により、通紙される記録紙109のサイズに応じて、前述した磁路遮断位置と磁路解放位置とに変位される。この変位機構500としては、図7に示した変位機構500と同じものを用いることができる。なお、磁気遮蔽体として機能する切欠は1つではなく、図16に示す磁気遮蔽体301a,301b,301cの各位置にそれぞれ設けるように構成することもできる。
この定着装置は、支持ローラ220が磁束を透過するので、対向コア233に設けた切欠1501の位置を記録紙109のサイズに応じて選択的に反転させることにより、支持ローラ220を透過した磁束を吸収もしくは抑制して定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布を容易に制御することができる。
また、この定着装置においては、前記磁気遮蔽体としての切欠1501を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
(実施の形態9)
次に、実施の形態9に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図19に示すように、前記磁気遮蔽体を対向コア233に設けた凹部1701で構成したものである。この定着装置においては、実施の形態8に係る定着装置と同様、前記磁気遮蔽体としての凹部1701を別部材として用意する必要がないので、構成の簡素化及び低廉化を実現できる。
また、この定着装置においては、図19に示すように、その磁気遮蔽体の磁路解放位置を凹部1701が励磁コイル231の巻回部位と対向する位置とした場合でも、凹部1701が励磁装置230と対向コア233とにより形成される磁路302を流れる磁束に影響を与えることがない。従って、この定着装置においては、凹部1701を励磁コイル231の巻回部位と対向する位置に待避させて定着ベルト210を発熱させても、その通紙領域に温度ムラが発生することがないので、凹部1701の待避位置をより多く確保できるようになる。
(実施の形態10)
次に、実施の形態10に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図20に示すように、前述の切欠1501内に低透磁率の電気導体1801aが埋め込まれている構成としたものである。また、図21に示すように、前述の凹部1701内に低透磁率の電気導体1801bが埋め込まれている構成としたものである。
この定着装置においては、切欠1501又は凹部1701を設けたことによる対向コア233の機械的強度の低下を防止することができる。また、前記切欠1501又は凹部1701内に電気導体1801a又は1801bが埋め込まれることにより対向コア233の重量バランスを均衡化させることができる。
ここで、上述の電気導体1801a又は1801bは、対向コア233の表面と同一面をなしていることが好ましい。このように電気導体1801a又は1801bが対向コア233の表面と同一面をなす構成の定着装置は、定着ベルト210から対向コア233への熱伝導と定着ベルト210から電気伝導体1801a又は1801bへの熱伝導が等しくなるので、定着ベルト210の温度ムラの発生を防止することができる。
(実施の形態11)
次に、実施の形態11に係る定着装置について説明する。この定着装置は、前述した3つの磁気遮蔽体301a,301b,301cが、定着ベルト210のA4サイズ幅、A5サイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域の各々に対応した長さを有している。
従って、この定着装置においては、例えば、図22、23に示すA3サイズの記録紙109の通紙モードと、図24、図25A,Bに示すB4サイズの記録紙の通紙モードと、図26、図27A,Bに示すA4サイズの記録紙の通紙モードと、図28、図29A,Bに示すA5サイズの記録紙の通紙モードとの4つの通紙モードを備えた構成とすることができる。
すなわち、A3サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図23に示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cが、全て前記磁路解放位置に待避している。これにより、磁路302は、各磁気遮蔽体301a,301b,301cの何れによっても遮断されることがなく、定着ベルト210の全幅(A3サイズ幅)の通紙領域が発熱される。ここで、図23は、図22に示す対向コアをE面で切断した断面図である。
また、B4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図25A、Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、最も長さが短い磁気遮蔽体301c
が前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301cによって遮断され、定着ベルト210のB4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301a、301bはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図25Aは、図24に示す対向コアをF面で切断した断面図である。また、図25Bは、図24に示す対向コアをG面で切断した断面図である。
また、A4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図27A,Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、中間の長さの磁気遮蔽体301aが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301aによって遮断され、定着ベルト210のA4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301b、301cはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図27Aは、図26に示す対向コアをH面で切断した断面図である。また、図27Bは、図26に示す対向コアをI面で切断した断面図である。
また、A5サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図29A,Bに示すように、各磁気遮蔽体301a,301b,301cのうち、最も長さが長い磁気遮蔽体301bが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、磁気遮蔽体301bによって遮断され、定着ベルト210のA5サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。磁気遮蔽体301a、301cはいずれも磁路解放位置に待避しているので、これらによる通紙領域内の温度ムラは防止される。ここで、図29Aは、図28に示す対向コアをJ面で切断した断面図である。また、図29Bは、図28に示す対向コアをK面で切断した断面図である。
図30に示すように、2つの磁気遮蔽体1801c、1801dがAサイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域の各々に対応した長さを有するようにしてもよい。このような実施の形態では、磁気遮蔽体1801c、1801dが対向コア233の表面と同一面をしているので、定着ベルト210から対向コア233への熱伝導と定着ベルト210から磁気遮蔽体1801c、1801dへの熱伝導とが等しくなり、定着ベルト210の温度ムラの発生を防止することができる。また、3つの磁気遮蔽体を用いる場合に比べて磁気遮蔽体の幅W1(周方向の長さ)を大きくすることができる。つまり、定着ベルト210の非通紙領域を透過する磁束をより効果的に遮蔽することができ、定着ベルト210の非通紙領域での熱の蓄積による過昇温をより確実に防止することができる。
なお、上述の各通紙モードは、前記磁気遮蔽体を切欠1501や凹部1701で構成した定着装置でも対応できる。図31A,B,Cは、前記磁気遮蔽体を2つの切欠1501a,1501bで構成した場合の3通りの通紙モードの態様を示す概略断面図である。
図31A,B,Cにおいて、切欠1501aが磁気遮蔽体301aに相当し、切欠1501bが磁気遮蔽体301cに相当するものとすると、A3サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Aに示すように、切欠1501a,1501bが、全て前記磁路解放位置に待避している。これにより、磁路302は、切欠1501a,1501bの何れによっても遮断されることがなく、定着ベルト210の全幅(A3サイズ幅)の通紙領域が発熱される。
また、B4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Bに示すように、各切欠1501a,1501bのうち、長さが短い切欠1501bが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、切欠1501bによって遮断され、定着ベルト210のB4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。
また、A4サイズの記録紙109の通紙モードの場合は、図31Cに示すように、各切欠1501a,1501bのうち、長さが長い切欠1501aが前記磁路遮断位置に位置する。これにより、磁路302は、切欠1501aによって遮断され、定着ベルト210のA4サイズ幅に対応した通紙領域のみが発熱される。
この定着装置によれば、ビジネス文書としてのA3サイズ画像やA4サイズ画像の連続加熱定着及び公文書や学校教材としてのB4サイズ画像の連続加熱定着が可能になり、多機能の画像形成装置の定着装置として用いることができるようになる。
図32に示すように、図31A,B,Cに示す対向コア233の内部に管状の磁気遮蔽体301を配置するようにしても良い。このような実施の形態において、対向コア233を所定の位置に回転させることにより、図32に示すように対向コア233に設けた切欠1501bを介して磁気遮蔽体301がセンターコア701と対面するので、磁束をより効率的に遮蔽することができる。なお、本変形例では、磁気遮蔽体301は移動する必要がないので固定でよい。また、本変形例では、対向コア233を回転することで磁路を遮断及び解放した例を説明したが、これに限らず、対向コア233の替わりに温度が高くなると磁性を失う整磁合金を用いても良い。定着ベルト210の非通紙領域の温度が上昇して、整磁合金の温度がキュリー点を超えると、整磁合金の非通紙領域の磁性が失われて、磁気遮蔽体301で非通紙領域の磁路が遮断される。この変形例では、自動的に磁路の遮断及び解放が行われるため、変位手段500が不要となる効果がある。
(実施の形態12)
次に、実施の形態12に係る定着装置について説明する。この定着装置は、図33及び図34に示すように、定着ベルト210の最大通紙領域の幅よりも小さい通紙領域幅に対応した長さの通紙領域磁気遮蔽体2401を定着ベルト210の通紙領域に対応した部位に配置した構成を有している。
この定着装置においては、通紙領域磁気遮蔽体2401で磁路302を遮断することにより、非通紙領域を昇温させることができる。前述した磁気遮蔽体301により発熱が阻止されていた定着ベルト210の非通紙領域の温度が低くなりすぎた場合、通紙領域磁気遮蔽体2401により所定の定着温度に短時間で昇温させることができる。
(実施の形態13)
次に、本発明の実施の形態13に係る定着装置について説明する。図35は、本発明の実施の形態13に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。本実施の形態13に係る定着装置300は、その支持ローラ220が励磁装置230により発生した磁束を遮蔽せずに透過する部材、例えば前述した固有抵抗が72μΩcmの非磁性のステンレス材(SUS304)で構成されている。また、この定着装置300は、図35に示すように、支持ローラ220を透過した磁束を吸収もしくは反発して定着ベルト210の通紙幅方向(長手方向)の発熱分布を制御する磁束制御部310を具備している。
この磁束制御部310は、図36及び図37に示すように、支持ローラ220の内部に配設されており、小サイズ紙(例えばA4)サイズの記録紙幅に対応する小サイズ幅制御部材311と、最大サイズ紙(例えばA3)サイズの記録紙幅に対応する最大幅制御部材312とを、切換軸313に配置した構成を有している。
小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312はフェライトコアからなり、図示の小サイズ幅制御部材311は、断面が真円をなす円柱体で構成されている。また、図示の最大幅制御部材312は、軸方向の一部に切欠312aを設けた断面が扇状をなすフェ
ライトコアから構成されている。
なお、この磁束制御部310は本実施例の構成に限らず、最大幅制御部材312の切欠き部にアルミや銅の導電体を埋め込み、この部分の磁束をより効果的に減少させるよう構成にしたものや、フェライトコア無しに切欠き部に対応する部分にのみにアルミまたは銅の板を付けた物など、磁束を吸収したり反発したりするものを適宜組み合わせて構成することが可能である。
また、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312は、記録紙109の通紙基準に応じて切換軸313への配設位置が決められる。例えば、記録紙109の通紙基準がセンター基準である場合には、図4及び図5に示すように、小サイズ幅制御部材311が切換軸313のセンターに配置され、最大幅制御部材312が小サイズ幅制御部材311の両サイドに配置される。
切換軸313は、通紙される記録紙109のサイズに応じて、図37に示す変位機構500により所定角度(図示の例では、約180度)だけ回転される。図示の変位機構500は、切換軸313に設けられた小歯車501、小歯車501に噛み合う大歯車502、大歯車502の支軸に一体化されたアーム503及びアーム503を揺動させるソレノイド504などで構成されている。
図37において、ソレノイド504がオン(通電)状態になると、ソレノイド504のアクチュエータが移動してアーム503が揺動する。このアーム503の揺動により、大歯車502が回転して小歯車501が従動回転する。この小歯車501の従動回転により、切換軸313が回転して、最大幅制御部材312の切欠312aの位置が約180度反転する。この状態でソレノイド504がオフ(非通電)状態になると、アーム503が初期位置に復帰し、大歯車502、小歯車501及び切換軸313がそれぞれ逆回転して、最大幅制御部材312の切欠312aの位置が元の位置に戻る。
このように、本実施の形態13に係る定着装置300における磁束制御部310は、変位機構500のソレノイド504をオン/オフにより最大幅制御部材312の切欠312aの位置を反転させて、定着ベルト210と励磁コイル231との通紙幅方向の磁気結合力を制御している。
すなわち、通紙される記録紙109のサイズが最大サイズの場合には、図37においてソレノイド504をオフ状態のままにし、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312の両方を励磁装置230の励磁コイル231に対向させる。これにより、図35及び図36に示すように、励磁装置230により発生して支持ローラ220を透過した磁束が、小サイズ幅制御部材311及び最大幅制御部材312により支持ローラ220の最大通紙幅Lmの全域で吸収されて、定着ベルト210の最大通紙幅全体に作用し、定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布が最大通紙幅全体で均一になるように保たれる。
一方、通紙される記録紙109のサイズが小サイズの場合には、図37においてソレノイド504をオン状態にし、最大幅制御部材312をその切欠312aの位置が励磁コイル231に対向するように反転させて、小サイズの記録紙幅に対応した小サイズ幅制御部材311のみを励磁装置230の励磁コイル231に対向させる。これにより、励磁装置230により発生して支持ローラ220を透過した磁束が、図36に示すように、小サイズ幅制御部材311のみにより支持ローラ220の小サイズ通紙幅Lsの領域でよく吸収されて、定着ベルト210の小サイズ通紙幅のみに作用する。この結果、定着ベルト210の非通紙領域における励磁コイル231との磁気結合が低下し、定着ベルト210の小サイズ通紙幅Lsの領域の発熱よりも非通紙領域の発熱が抑制されて、定着ベルト210
の非通紙領域の過昇温を防止できるようになる。
このように、本実施の形態13に係る定着装置300は、支持ローラ220が磁束を透過するので、最大幅制御部材312の切欠312aの位置を記録紙109のサイズに応じて選択的に反転させることにより、支持ローラ220を透過した磁束を部分的に増減させて定着ベルト210の通紙幅方向の発熱分布を容易に制御することができる。
(実施の形態14)
次に、本発明の実施の形態14に係る定着装置について説明する。図38及び図39は、本発明の実施の形態14に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図38に示すように、本実施の形態14に係る定着装置の支持ローラ620としては、金属製の薄肉の板材を円筒状に形成し、接合部621を溶接して構成したものを用いることができる。この定着装置は、その支持ローラ620として溶接管を用いることができるので、安価に構成することができる。
また、図39に示すように、本実施の形態3に係る定着装置の支持ローラ720としては、円筒体の母線方向に沿ってリブ状の補強溝721を形成したものを用いることができる。この定着装置は、支持ローラ720を、熱容量が小さい薄肉材料を用いた曲げ強度の高いものに構成することができる。例えば、100μm以下の薄肉材料であってもリブ状の補強溝721を形成することにより、熱容量が小さくかつ曲げ強度の高い支持ローラを形成できる。
しかしながら、図38に示すように、溶接管で構成した支持ローラ620は、その接合部621と非接合部とで熱容量が異なるため、その表面温度に温度ムラが発生する。また、図7に示すように、リブ状の補強溝721を形成した支持ローラ720は、定着ベルト210に対する接触部分と非接触部分とで定着ベルト210からの熱伝導量が異なるため、その表面温度に温度ムラが発生する。
そこで、本実施の形態14に係る定着装置においては、定着ベルト210の周長が、支持ローラ620及び支持ローラ720の外周長の整数倍にならないように構成している。この構成の定着装置は、定着ベルト210と支持ローラ620及び支持ローラ720との回転周期が異なるようになり、定着ベルト210の回転時における支持ローラ620及び支持ローラ720と定着ベルト210との接触点が逐次変化する。従って、この構成の定着装置によれば、支持ローラ620,720に温度ムラが発生しても、この支持ローラ620,720の熱が定着ベルト210の一定部位に伝導されて蓄積されることがないので、定着ベルト210の表面温度をムラなく平滑化させることができる。
(実施の形態15)
次に、本発明の実施の形態15に係る定着装置について説明する。図40は、本発明の実施の形態15に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図40に示すように、本実施の形態15に係る定着装置の支持ローラ820は、円筒体の外周面にローレット状の凹凸821を形成して構成されている。この定着装置は、支持ローラ820と定着ベルト210との接触面積を極力減らすことができる。
従って、本実施の形態15に係る定着装置は、定着ベルト210と支持ローラ820との断熱性を向上させることができ、ウォーミングアップ時における定着ベルト210の発熱エネルギーのロスが少なくなり、立ち上がり時間をより短縮することができる。
ところが、このように凹凸821を形成した支持ローラ820は、その凹凸821のピッチPと定着ベルト210との回転周期が一致していると、定着ベルト210の回転時における支持ローラ820の凹凸821と定着ベルト210との接触点が常に一定した点になるため、その表面温度に温度ムラが発生する。
そこで、本実施の形態15に係る定着装置においては、定着ベルトの210周長が、凹凸821のピッチPの整数倍にならないように構成している。
このように構成した定着装置は、定着ベルト210の周長が支持ローラ820の凹凸821のピッチPの整数倍でないので、定着ベルト210の回転時における支持ローラ820と定着ベルト210との接触点が逐次変化する。従って、この定着装置によれば、支持ローラ820の表面温度に温度ムラが発生しても、この支持ローラ820の熱が定着ベルト210の一定の点に蓄積されることがなく、定着ベルト210の表面温度をムラなく平滑化させることができる。
(実施の形態16)
次に、本発明の実施の形態16に係る定着装置について説明する。図41は、本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図である。
図41に示すように、本実施の形態16に係る定着装置の支持ローラ920は、例えば、図42に示すようなチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921を円筒状に組み合わせて構成されている。
このように構成した定着装置は、支持ローラ920がチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921で構成されているので、支持ローラ920を熱容量が小さく、かつ曲げ強度の高い構成とすることができる。また、この定着装置によれば、支持ローラ920を構成する板材921の数量を変えることにより、支持ローラ920の外径を容易に変えることができる。
(実施の形態17)
次に、本発明の実施の形態17に係る定着装置について説明する。図43は、本発明の実施の形態17に係る定着装置の構成を示す概略断面図である。
図43に示すように、本実施の形態17に係る定着装置1100は、その定着ベルト210を懸架するベルト支持部材が、例えば、金属薄板からなる板材を円弧状に形成したガイド部材1120で構成されている。
この定着装置1100は、そのベルト支持部材であるガイド部材1120の占有スペースが、前記ベルト支持部材を支持ローラで構成した場合と比較して、少なくて済むので、定着ベルト210の周長を極力短くすることができる。また、この定着装置1100は、そのベルト支持部材であるガイド部材1120を、前記支持ローラの場合よりも熱容量が小さくかつ安価に構成できる。なお、このガイド部材1120は、例えば、図42に示したチャンネル形状の金属薄板からなる複数の板材921で構成した支持ローラ920の一部を切り取って構成したものであってもよい。
なお、上述した実施の形態13から実施の形態17に示す支持ローラは、画像形成装置の定着装置以外の加熱装置に適用可能である。
本明細書は、2003年10月17日出願の特願2003−358024、2003年10月17日出願の特願2003−358330、2004年5月25日出願の特願20
04−155165に基づく。この内容はすべてここに含めておく。
本発明に係る定着装置は、装置を大型化することなく、発熱部材の通紙領域から非通紙領域への磁束の回り込みを無くして前記非通紙領域の過昇温を防止することができるので、電子写真方式あるいは静電記録方式の複写機、ファクシミリ及びプリンタ等の定着装置として有用である。
従来の定着装置の構成を示す概略斜視図
従来の他の定着装置の要部の構成を示す概略断面図
従来の他の定着装置の動作態様を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置を搭載するのに適した画像形成装置の全体構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の基本的な構成を示す断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の対向コアに磁気遮蔽体を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気遮蔽体を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態1に係る定着装置の磁気遮蔽体を磁路遮断位置に変位させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態2に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態3に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態4に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態5に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の対向コアに磁気遮蔽体を配設した構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の磁気遮蔽体を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態6に係る定着装置の磁気遮蔽体を磁路遮断位置に変位させた状態を示す概略断面図
本発明の実施の形態7に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態8に係る定着装置の対向コアの切欠を変位させる変位機構の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態9に係る定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態10に係る定着装置の対向コアの切欠に電気導体を埋め込んだ要部の構成図
定着装置の対向コアの凹部に電気導体を埋め込んだ要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA3サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図22に示す対向コアをE面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のB4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図24に示す対向コアをF面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図24に示す対向コアをG面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図26に示す対向コアをH面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図26に示す対向コアをI面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA5サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの磁気遮蔽体を示す概略斜視図
図28に示す対向コアをJ面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
図28に示す対向コアをK面で切断した定着装置の要部の構成を示す概略断面図
2つの磁気遮蔽体がA4サイズ幅及びB4サイズ幅の各非通紙領域に対応した長さを有する定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態11に係る定着装置のA3サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
定着装置のB4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
定着装置のA4サイズの記録紙の通紙モードに対応した対向コアの切欠の位置を示す概略断面図
図31A,B,Cに示す対向コアの内部に磁気遮蔽体を配置するようにした定着装置の要部の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態12に係る定着装置の構成を示す要部の概略断面図
本発明の実施の形態12に係る定着装置の対向コアの通紙領域磁気遮蔽体を示す概略斜視図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の磁束制御機構の構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態13に係る定着装置の磁束制御手段の構成を示す概略斜視図
本発明の実施の形態14に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態14に係る定着装置の他の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態15に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラの構成を示す概略断面図
本発明の実施の形態16に係る定着装置の支持ローラを構成する板材を示す概略斜視図
本発明の実施の形態17に係る定着装置の構成を示す概略断面図