JP5249653B2 - 炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法及びその製造装置 - Google Patents
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Description
しかし、前駆体繊維束の総繊度を大きくした場合、前述した帯電量も必然的に大きくなるため、工程トラブルが発生する可能性が高くなる。また、既存の設備を用いて総繊度の大きい前駆体繊維束を製造する場合、製造中の隣接するアクリル繊維束同士の間隔が狭くなるため、それらが接触することにより前述の工程トラブルが起こる可能性はさらに高まる。
アクリル系繊維の帯電を防止する手法としては、原料であるアクリロニトリル系ポリマーの共重合成分を帯電し難い成分にする方法が示されている(例えば、特許文献1)。また、繊維の導電性を向上させることを目的として、紡糸原液にカーボンナノチューブを添加することが示されている(特許文献2)。しかし、前駆体繊維束は、それを焼成することにより機械的特性に優れた炭素繊維束が得られることが重要であり、これらの手法では帯電防止効果は得られても、機械的特性に優れた炭素繊維束を得ることが難しかった。
また、半導体装置の製造においては、静電気が帯電している帯電体に揮発性の液体を霧状に噴き付け、その揮発性の液体を揮発させることによって、前記帯電体の表面から前記静電気を除電する方法が示されている(特許文献6)。しかし、前駆体繊維束の紡糸工程中にはアクリル繊維束を加熱する加熱部位が多数あるのが一般的であり、また揮発性物質の多くは可燃性あるいは引火性物質であるため、この方法の適用により安定して前駆体繊維束を製造することは困難であった。さらに、このような揮発性物質は有機溶剤が多く、該有機溶剤が、前駆体繊維束の焼成工程における融着防止のために紡糸工程中でアクリル繊維束に付与する油剤成分を溶出させてしまい、焼成工程で不具合を引き起こすこともあった。
すなわち、本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡出させる溶液紡糸により賦形された、1糸条あたりのアクリル繊維の本数が2,000〜60,000本のアクリル繊維束を、乾燥手段における加熱されたロールで搬送して走行させつつ乾燥する乾燥工程を含み、前記乾燥工程における前記アクリル繊維束の乾燥が完了している部分で、かつ前記ロール及び該アクリル繊維束の走行に用いるガイドが接触していない部分に対応するように除電装置を設置し、前記アクリル繊維束に帯電した静電気を、前記除電装置によるイオン発生周波数を1〜30Hzとするコロナ放電により除電することで、前記アクリル繊維束の電位を−1kV〜+1kVとする方法である。
また、前記乾燥工程により乾燥された前記アクリル繊維束を、1.1〜5倍に延伸する後延伸工程をさらに含むことが好ましい。
また、前記後延伸工程における前記アクリル繊維束の延伸を加圧水蒸気雰囲気下で行うことが好ましい。
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法では、前記アクリル繊維束を除電して得た炭素繊維前駆体アクリル繊維束をボビンに巻き取る工程を含み、前記アクリル繊維束が前記乾燥手段を出た場所と、ボビンに巻き取られる前の場所とにそれぞれ除電装置をさらに設置し、それら除電装置によりさらに前記アクリル繊維束の除電を行うことが好ましい。
また、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造装置は、前記アクリル繊維束を除電した炭素繊維前駆体アクリル繊維束をボビンに巻き取る巻取機を有し、前記アクリル繊維束が前記乾燥手段を出た場所と、ボビンに巻き取られる前の場所とにそれぞれ除電装置がさらに設置されていることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法は、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡出させる溶液紡糸により賦形されたアクリル繊維束を、走行させつつ乾燥する乾燥工程を含む方法であり、前記乾燥工程で、前記アクリル繊維束に帯電した静電気を除電することを特徴とする。以下、本発明の製造方法の実施形態の一例について説明する。尚、本発明における紡糸工程とは、溶液紡糸から製品として前駆体繊維束が得られるまでの全工程を意味する。
アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られる単独重合体であってもよく、主成分であるアクリロニトリルと他の単量体とを共重合させて得られるアクリロニトリル系共重合体であってもよい。
アクリロニトリル単位の含有量が96質量%以上であれば、炭素繊維束とする際の焼成工程において前駆体繊維束の熱融着を招き難く、優れた品質及び性能を有する炭素繊維束が得られやすい。また、共重合体自体の耐熱性が低くなりすぎることを抑制しやすい。更に、紡糸工程におけるアクリル繊維束の乾燥、加熱ロールや加圧水蒸気による延伸において、単繊維間の接着を抑制しやすい。一方、アクリロニトリル単位の含有量が98.5質量%以下であれば、溶剤への溶解性及び紡糸原液の安定性の低下並びに共重合体の析出凝固性が高くなりすぎることを抑制しやすく、前駆体繊維束の安定した製造が容易になる。
また、ビニル系単量体としてカルボキシ基含有ビニル系単量体を用いる場合は、該カルボキシ基含有ビニル系単量体単位の含有量は、0.5〜2質量%であることがより好ましい。カルボキシ基含有ビニル系単量体単位の含有量が0.5質量%以上であれば、耐炎化反応時間が長くなりすぎることを抑制しやすく、かつ断面二重構造が形成され難く高性能な炭素繊維束が得られやすくなる。また、カルボキシ基含有ビニル系単量体単位の含有量が2質量%以下であれば、焼成工程における前駆体繊維束の熱融着防止、共重合体の耐熱性、紡糸原液の安定性及び焼成により得られる炭素繊維束の品質の点で優れる。
アクリロニトリル系共重合体の溶液粘度をη、溶媒の粘度をη0とし、ηrel=η/η0を相対粘度、ηsp=ηrel−1を比粘度として、ηsp/C(Cは溶液の濃度)を濃度0に外挿した時の値を極限粘度[η]として算出する。
アクリロニトリル系共重合体の溶液粘度ηは、例えば、25℃の0.5g/100mlのジメチルホルムアミド溶液で、オストワルド型粘度計を用いることにより算出することができる。
溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物を含有する水溶液等、公知のものから適宜選択して使用することができる。なかでも、生産性向上の観点から、凝固速度が早いジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが好ましく、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法による紡糸賦形は、上記の紡糸原液を円形断面の孔を有するノズルから凝固浴中に紡出することで行うことができる。凝固浴としては、溶剤回収の容易さの点から、前記紡糸原液に用いられる溶剤を含む水溶液を用いることが好ましい。
浴中延伸は、通常50〜98℃の水浴中で、1回あるいは2回以上の多段に分割して行う。空中延伸と浴中延伸の合計倍率は、焼成により得られる炭素繊維束の性能の点から、2〜10倍とすることが好ましい。
前記水洗は、アクリル繊維束の走行方向の下流側から上流側に向けて洗浄液を流して該アクリル繊維束から溶媒を除去する、いわゆるカスケードを用いて洗浄を行う方法や、高圧液体を噴射して高速液流を貫通させる方法等の公知の方法を適宜採用することができる。高品質の前駆体繊維束を製造するには、無機・有機を問わずアクリル繊維束に含まれる溶剤を極力除去することが好ましい。洗浄は、残存溶剤が炭素繊維束に転換する際に欠陥点となることを防止する点から、得られる前駆体繊維束中の残存溶剤濃度が0.1質量%以下となるまで行うのが好ましく、0.05質量%以下まで行うのがより好ましい。
前駆体繊維束中の残存溶剤濃度は、次のようにして求めることができる。前駆体繊維束を7g精秤し、200gの沸水により30分間抽出した後の検液中の濃度を液体クロマトグラフィーにより算出する。
油剤組成物の成分の種類は特に限定されないが、アミノ変性シリコーンを含有したものが好適に使用される。
なかでも、油剤を均一に付着させる点から、ディップ付着法が好ましい。また、より均一に油剤を付着させるには、油剤付与工程を2以上の多段にし、繰り返し油剤を付与することも有効である。
乾燥緻密化の温度は、アクリル繊維束のガラス転移温度よりも高い温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態までの違いによって異なることもあり、100〜200℃程度であることが好ましい。乾燥は、加熱されたロール(加熱ロール)でアクリル繊維束を搬送することにより行うことが好ましい。加熱ロールを用いて乾燥を行うことにより、搬送しながら、短時間で乾燥することが可能となる。さらに、加熱ロールを用いる乾燥方法は他の乾燥方法に比べ設備・製造コストが安価である。乾燥工程に用いる加熱ロールの個数は、1個でもあってもよく、複数個であってもよい。
乾燥工程における除電は、除電装置により行うことができる。
除電装置は、アクリル繊維束の除電が行なえるものであれば特に制限はなく、例えば、コロナ放電式、光照射式(軟X線式)等の除電装置が挙げられる。なかでも、安定した除電能力を有する点から、コロナ放電式の除電装置が好ましい。
また、前記コロナ放電式の除電装置への電圧の印可方式には様々な種類があり、単極のイオンを発生する場合に使用されるDC(直流)方式、周波の中の1サイクルで+イオンと−イオンの発生が交互に行われるAC(交流)方式、+イオン発生用の電極針と−イオン発生用の電極針を有し、それぞれに直流の電圧を交互に印可するパルスDC方式、1本の電極針に+と−それぞれの直流電圧を交互に印可するパルスAC方式、+と−両方の電極針に対して常に直流電圧を印可するバリアブルDC方式等がある。本発明の製造方法では、これらのいずれの方式も適応可能である。なかでも、イオン発生量が多いため除電速度が速く、+と−両方のイオンを交互に印加しイオンバランスに優れている点から、パルスAC方式が好ましい。
この後延伸には、高温の加熱ロール、熱板等を利用する乾熱延伸、あるいは加圧水蒸気によるスチーム延伸等、繊維自体の状態を大きく変化させない限り、種々の方式を用いることができる。好ましい後延伸は、得られる前駆体繊維束の緻密性や配向度をさらに高めることができる点から、加圧水蒸気延伸である。
加圧水蒸気延伸においては、加圧水蒸気延伸装置直前の加熱ロールの温度を120〜190℃、加圧水蒸気延伸における水蒸気圧力の変動率を0.5%以下に制御することが重要である。このようにすることにより、アクリル繊維束になされる延伸倍率の変動及びそれによって発生する繊度の変動を抑制することができる。また、加熱ロールの温度を120℃以上にすることにより、アクリル繊維束の温度が十分に上がり、延伸性が向上する。
乾燥緻密化前の延伸倍率と後延伸倍率を合わせた合計延伸倍率は、6〜20倍であることが好ましく、8〜15倍であることがより好ましい。合計延伸倍率が6倍以上であれば、繊維の配向性に優れ、優れた性能を有する炭素繊維束が得られやすくなる。また、合計延伸倍率が20倍以下であれば、アクリル繊維束の糸切れを防止しやすく、生産性が向上する。
また、本発明により製造された前駆体繊維束を焼成して得られる炭素繊維束は、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料の強化繊維として好適である。
本発明の前駆体繊維束の製造装置は、アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡出させる溶液紡糸により賦形されたアクリル繊維束を、走行させつつ乾燥する乾燥手段と、前記乾燥手段での前記アクリル繊維束の静電気を除電する除電手段とを少なくとも有する装置である。以下、本発明の前駆体繊維束の製造装置の実施形態の一例について説明する。
水洗延伸手段10としては、前駆体繊維束の製造装置に通常用いられるものを用いることができ、例えば、各々のロール12の回転を異なる速度に設定することにより延伸しながら水洗槽14に導き、アクリル繊維束Xを浸漬させることにより同時に水洗を行うものを用いることができる。
水洗延伸手段10は、浴中延伸するものであってもよく、一部空中延伸した後に浴中延伸するものであってもよい。
油剤付与手段20は、アクリル繊維束Xに均一に油剤を付与できるものであればよく、例えば、ロールの下部を油剤付与液に浸漬させ、前記ロールの上部にアクリル繊維束Xを接触させるロール付着法を用いた手段、ポンプで一定量の油剤付与液をガイドから吐出し、前記ガイド表面にアクリル繊維束を接触させるガイド付着法を用いた手段、ノズルから一定量の油剤付与液をアクリル繊維束に噴射するスプレー付着法を用いた手段、油剤付与液の中にアクリル繊維束を浸漬した後にロール等で絞って余分な油剤付与液を除去するディップ付着法を用いた手段等が挙げられる。
乾燥手段30は、アクリル繊維束Xを十分に乾燥できるものであれば特に限定されないが、加熱されたロール32によりアクリル繊維束Xを搬送することにより、該アクリル繊維束Xを乾燥する手段であることが好ましい。ロール32の材質は導電体であることが好ましい。また、ロール32は、100〜200℃に加熱されることが好ましい。また、ロール32の個数は、特に限定されない。
除電手段40の具体例としては、コロナ放電式、光照射式(軟X線式)等の前述の製造方法で挙げた除電装置を用いることができる。
除電手段40は、乾燥工程の途中でアクリル繊維束Xを除電できるように設置すればよく、走行するアクリル繊維束Xのうちロール32と接触していない部分に設置することが好ましく、アクリル繊維束Xの乾燥が進んだ時点に設置することがより好ましい。また、除電手段40は、ロール32等による剥離帯電、摩擦帯電を十分に抑制しやすい点から、ロール32の前後に設置することが好ましい。
除電手段40の数には特に制限はない。
後延伸手段50は、アクリル繊維束Xを所望の倍率に延伸することができるものであればよく、高温の加熱ロール、熱板等を利用する乾熱延伸手段、あるいは加圧水蒸気によるスチーム延伸手段等が挙げられる。なかでも、加圧水蒸気によるスチーム延伸手段が好ましい。
巻取機60は、前駆体繊維束Yを巻き取ることができるものであればよく、前駆体繊維束の製造装置に通常用いられるものを使用することができる。
紡糸ノズルから凝固浴中に紡出された紡糸原液は、該凝固浴中で凝固され凝固糸(アクリル繊維束X)となり、水洗延伸手段10へと導かれる。次いで、水洗延伸手段10において、各ロール12の回転速度を異なる速度に設定することにより、アクリル繊維束Xが延伸されると同時に、水洗槽14に浸漬され水洗される。水洗延伸手段10により水洗、延伸されたアクリル繊維束Xは、油剤付与手段20により油剤が付与される。油剤が付与されたアクリル繊維束Xは、乾燥手段30において加熱されたロール32により搬送されることにより乾燥される。また、該乾燥手段30による乾燥工程において、ロール32による剥離帯電等により帯電した静電気が除電手段40により除電される。その後、乾燥されたアクリル繊維束Xは、後延伸手段50により所望の倍率に後延伸されて前駆体繊維束Yとされ、巻取機60に巻き取られる。
尚、本発明の製造装置は、図1に例示した装置には限定されない。例えば、アクリル繊維束の水洗を行なわない装置であってもよく、後延伸を行わない装置であってもよい。また、巻取機の代わりに前駆体繊維束をケンスに収納する装置であってもよい。
本実施例における前駆体繊維束の耐電圧測定、集束性評価、操業性評価、塵付着数の測定の方法を以下に示す。
[帯電圧測定]
帯電圧測定は、前駆体繊維束の紡糸工程の最終ロール、すなわち前駆体繊維束をボビンに巻き取る直前のロールにさしかかる空走中の前駆体繊維束に対して測定した。測定には静電気測定機(シシド静電気(株)製、STATIRON−M)を用いた。
集束性は、前駆体繊維束の紡糸工程の最終ロール上でノギスを用い、前駆体繊維束の幅を測定した。10点測定し、その平均値を用いて評価した。
前駆体繊維束を24時間連続して製造した時に、搬送ロールに単糸が巻き付き、除去した頻度により、操業性の評価をした。評価基準は次の通りとした。
○:除去回数(回/24時間)が1回以下である。
×:除去回数(回/24時間)が2回以上である。
前駆体繊維束を50mm切り取り、これを洗浄水として濾過水100mlを入れたビーカー中に浸漬し、超音波洗浄装置(IUCHI製、VS−200)中で、出力100W、周波数40KHzで120秒間処理し、処理後の洗浄水中の粒子数を液中微粒子測定器(HIAC/Royco製、Model8000A)で測定した。この測定結果より、粒径0.5〜4μmの粒子の数(個/10ml)を算出し、この値から同様の手法で濾過水のみを測定したブランク試験による粒子の数を差し引いた値を、前駆体繊維束に付着した塵の指標として評価した。
アクリロニトリル系共重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96/3/1(質量比))をジメチルアセトアミドに溶解し、紡糸原液を調製し、ジメチルアセトアミド水溶液を満たした凝固浴中に孔径(直径)75μm、孔数60,000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸とした。凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維束とした。
次いで、水膨潤状態にあるアクリル繊維束を油剤処理槽に導き、アクリル繊維束に油剤を付与した。油剤処理液には、シリコーンとポリオキシエチレンラウリルエーテルとを水中に分散したエマルションを1.0質量%の濃度で用いた。
油剤処理槽より出た湿潤状態にあるアクリル繊維束を、150℃に加熱したロール群にて搬送することにより乾燥した(乾燥工程)。アクリル繊維束の温度は水分が残っている状態では100℃以上には上がらない。各ロールを出たところのアクリル繊維束の温度を測定することにより、アクリル繊維束の乾燥が完了している点を見つけ、そこに除電装置を設置した。除電装置にはコロナ放電方式除電器シースセンシングイオナイザー((株)キーエンス製)を用いた。
乾燥されたアクリル繊維束は、その後、圧力0.2MPaの水蒸気中で3倍延伸(水蒸気延伸工程)を施し、得られた前駆体繊維束をボビンに巻き取った。
実施例1の紡糸工程に用いた除電装置に加え、さらに乾燥工程を出た場所、水蒸気延伸工程を出た場所、ボビンに巻かれる前の3ヶ所に除電装置を追加し、計4ヶ所に除電装置を設置した以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維束を得た。
除電装置を全く設けなかった以外は、実施例1と同様にして前駆体繊維束を得た。
実施例及び比較例における各測定及び評価結果を表1に示す。
また、実施例2では、帯電圧は検出されなかった。これは、実施例1に比べて除電装置を多く設置したことによる効果であると考えられる。また、集束性、操業性も良好であった。塵付着数については実施例1より更に少なく、埃等の前駆体繊維束への吸着が低減されていた。
本発明の製造方法により製造された前駆体繊維束を焼成することにより得られる炭素繊維束は、プリプレグ化した後に複合材料に成形することもでき、ゴルフシャフトや釣り竿等のスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途等に好適に用いることができるため有用である。
Claims (7)
- アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡出させる溶液紡糸により賦形された、1糸条あたりのアクリル繊維の本数が2,000〜60,000本のアクリル繊維束を、乾燥手段における加熱されたロールで搬送して走行させつつ乾燥する乾燥工程を含み、
前記乾燥工程における前記アクリル繊維束の乾燥が完了している部分で、かつ前記ロール及び該アクリル繊維束の走行に用いるガイドが接触していない部分に対応するように除電装置を設置し、前記アクリル繊維束に帯電した静電気を、前記除電装置によるイオン発生周波数を1〜30Hzとするコロナ放電により除電することで、前記アクリル繊維束の電位を−1kV〜+1kVとする炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。 - 前記乾燥工程が、100〜200℃に加熱されたロールにより前記アクリル繊維束を搬送して、該アクリル繊維束を乾燥させる工程である、請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
- 前記乾燥工程により乾燥された前記アクリル繊維束を、1.1〜5倍に延伸する後延伸工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
- 前記後延伸工程における前記アクリル繊維束の延伸を加圧水蒸気雰囲気下で行う、請求項3に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。
- 前記アクリル繊維束を除電して得た炭素繊維前駆体アクリル繊維束をボビンに巻き取る工程を含み、
前記アクリル繊維束が前記乾燥手段を出た場所と、ボビンに巻き取られる前の場所とにそれぞれ除電装置をさらに設置し、それら除電装置によりさらに前記アクリル繊維束の除電を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造方法。 - 炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造装置であって、
アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して紡出させる溶液紡糸により賦形された、1糸条あたりのアクリル繊維の本数が2,000〜60,000本のアクリル繊維束を、加熱されたロールにより搬送して走行させつつ乾燥する乾燥手段と、前記乾燥手段内における前記アクリル繊維束の乾燥が完了している部分で、かつ前記ロール及び該アクリル繊維束の走行に用いるガイドに接触していない部分に対応するように設置され、前記アクリル繊維束の静電気を、イオン発生周波数を1〜30Hzとするコロナ放電により除電して、前記アクリル繊維束の電位を−1kV〜+1kVとする除電装置とを少なくとも有する炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造装置。 - 前記アクリル繊維束を除電した炭素繊維前駆体アクリル繊維束をボビンに巻き取る巻取機を有し、
前記アクリル繊維束が前記乾燥手段を出た場所と、ボビンに巻き取られる前の場所とにそれぞれ除電装置がさらに設置された、請求項6に記載の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造装置。
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