JP6729665B2 - 炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)25℃における動粘度が50cst以上5000cst以下、
(2)アミノ当量が1700g/mol以上15000g/mol以下。
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束(以降、「前駆体繊維束」と称することがある。)は、シリコーン化合物を含む油剤が例えば表面全体に付着している。この炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束は、炭素繊維の前駆体となる繊維束であり、この繊維束を構成する各繊維は、後述するアクリロニトリル系重合体からなることができる。
前駆体繊維束の原料となるアクリロニトリル系重合体は、少なくともアクリロニトリル単位を含めば良く、アクリロニトリルの単独重合体であっても良いし、アクリロニトリルと他のモノマーとからなる共重合体であっても良い。なお、この他のモノマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明に用いる油剤は、シリコーン化合物を含み、必要に応じて後述する他の添加剤を含むことができる。この油剤を(油剤付着前の)前駆体繊維束に付着させることによって、繊維同士の融着を抑制することができ、さらに繊維の耐擦過性を向上させることができる。
シリコーン化合物は、シロキサン結合を例えば主鎖(主骨格)に有していれば良く、公知のシリコーン化合物を適宜用いることができる。しかしながら、繊維を構成するアクリロニトリル系重合体との相互作用の観点から、シリコーン化合物として、アミノ基で変性されたアミノ変性ポリジメチルシロキサン及びエポキシ基で変性されたエポキシ変性ポリジメチルシロキサンのいずれか一方または両方を用いることが好ましい。特に、油剤付着前の前駆体繊維表面の被覆のし易さ、及び、この表面からの脱離し難さの観点から、シリコーン化合物として、アミノ変性ポリジメチルシロキサンを用いることがより好ましい。
有することができ、耐炎化工程の全般において、前駆体繊維からのシリコーン化合物の飛散を容易に抑えることができる。その結果、油剤が本来の機能を容易に発現することができ、安定した炭素繊維の製造が容易に可能となる。また、上記動粘度が5.0×10-3m2/s以下であれば、以下の現象の発生を容易に抑制することができる。即ち、耐炎化工
程において前駆体繊維束からロール等に油剤の一部が転移し、この転移した油剤が比較的長時間の熱処理を受けることによりその粘度が上昇し粘着性が出て、前駆体繊維束の一部がロール等に巻きつく現象を容易に防ぐことができる。
上記油剤は、油剤を水系エマルジョンにするための界面活性剤や、優れた工程通過性を付与するための柔軟剤及び平滑剤等の添加剤を含有することができる。この界面活性剤としては、通常、ノニオン系の界面活性剤が用いられ、特に、プルロニック型や高級アルコールのエチレンオキサイド(EO)/プロピレンオキサイド(PO)付加物が用いられる。この界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックポリマーであるニューポールPE−78、PE−108、PE−128(いずれも商品名、三洋化成工業(株)製)、NIKKOL BL−9EX(商品名、日光ケミカルズ株式会社製、乳化剤)などが好適である。柔軟剤や平滑剤は、エステル化合物やウレタン化合物などを用いることができる。
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束中のシリコーン化合物の含有量(付着量)は、油剤を付着させ、乾燥及び延伸処理を行った前駆体繊維束100質量%に対して、0.7質量%以上2.0質量%以下である。また、シリコーン化合物の含有量は、好ましくは0.9質量%以上1.9質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上1.7質量%以下である。この含有量が0.7質量%以上であれば、油剤による繊維表面の被覆不足に起因する繊維同士の融着や耐擦過性の低下を防ぐことが出来る。2.0質量%以下であれば、油剤の繊維内部への過剰浸透を防ぎ、欠陥点の形成を抑制し、過剰付着に起因する繊維同士の膠着や酸素の拡散不足による耐炎化構造の不整を低減することができる。
前駆体繊維束の単繊維の両端を、走査型プローブ顕微鏡装置付属の金属製サンプルホルダー板上にカーボンペーストで固定し、走査型プローブ顕微鏡にて以下の条件で測定する。先ず走査型プローブ顕微鏡により単繊維の形状像を測定する。測定画像について、画像解析により繊維軸に垂直な方向の断面プロファイルを10点計測して中心線平均粗さRaを求める。単繊維10本について測定を行い、平均値を求める。
装置:エスアイアイナノテクノロジーズ社 SPI4000プローブステーション、SPA400(ユニット)、
走査モード:ダイナミックフォースモード(DFM)(形状像測定)、
探針:エスアイアイナノテクノロジーズ社製 SI−DF−20、
Rotation:90°(繊維軸方向に対して垂直方向にスキャン)、
走査領域:繊軸方向3.0μm×円周方向3.0μm、
走査速度:1.0Hz、
ピクセル数:512×512、
測定環境:室温、大気中。
得られた形状像に、フラット処理、メディアン8処理、及び、三次傾き補正を行い、曲面を平面にフィッティング補正した画像を得る。平面補正した画像の表面粗さ解析より、繊維軸に垂直な方向の断面プロファイルを計測し、中心線平均粗さRaを求める。
リフト、振動、スキャナのクリープ等によってイメージデータに現れたZ軸方向の歪み、うねりを除去する処理であり、SPM測定上の装置因によるデータのひずみを除去する処理である。
処理するデータ点Sを中心とする3×3の窓(マトリクス)においてSおよびD1〜D8の間で演算を行い、SのZデータを置き換えることで、スムージングやノイズ除去といったフィルタの効果を得るものである。メディアン8処理は、SおよびD1〜D8の9点のZデータの中央値を求めて、Sを置き換えるものである。
傾き補正は、処理対象イメージの全データから最小二乗近似によって曲面を求めてフィッティングし、傾きを補正するものである。(1次)(2次)(3次)はフィッティングする曲面の次数を示し、3次では3次曲面をフィッティングする。三次傾き補正処理によって、データの繊維の曲率をなくしフラットな像とする。
繊維束を構成する単繊維の繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)は、以下のように決定する。内径1mmの塩化ビニル樹脂製のチューブ内に測定用の繊維束を通した後、これをナイフで輪切りにして試料を準備する。ついで、この試料を繊維断面が上を向くようにしてSEM試料台に接着し、さらにAuを約10nmの厚さにスパッタリングしてから、電子顕微鏡(フィリップス社製、製品名:XL20走査型)により、加速電圧7.00kV、作動距離31mmの条件で繊維断面を観察し、単繊維の繊維断面の長径及び短径を測定する。
本発明の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束は、例えば、以下の工程を含む製造方法によって得ることができる。
(i)アクリロニトリル単位を含む重合体を有機溶剤に溶解させた紡糸原液を紡糸して、凝固繊維束を作製する工程(紡糸工程)。
(ii)得られた凝固繊維束を延伸および洗浄処理する工程(延伸及び洗浄工程)。
(iii)工程iiより得られる繊維束に、シリコーン化合物を含む油剤を付着させる工程(油剤付着工程)。
まず、前駆体繊維束の繊維を構成する重合体を有機溶剤に溶解させて得られた紡糸原液を、紡糸することによって、凝固繊維束を作製する。
次に、得られた凝固繊維束に、延伸及び洗浄処理を施す。その際、延伸及び洗浄処理の順序は特に制限はなく、延伸後洗浄しても良く、延伸と洗浄を同時に行っても良い。また洗浄方法は繊維束から有機溶剤を除去出来ればいかなる方法でも良い。
(2)この凝固繊維束を空気中で1.0倍以上1.2倍以下に延伸する工程(第1の延伸工程)。
(3)工程2より得られる繊維束を、有機溶剤を含む水溶液中で延伸し、その際、工程1より得られる凝固繊維束に対する、工程2および工程3の合計延伸倍率を2.0倍以上4.0倍以下とする工程(第2の延伸工程)。
(4)工程3より得られる繊維束から有機溶剤を除去する工程(洗浄工程)。
(5)工程4より得られる繊維束を、40℃以上の水浴中で0.95倍以上1.3倍以下に収縮または延伸する工程(収縮又は第3の延伸工程)。
まず、工程i(例えば工程1)より得られる凝固繊維束を空気中で1.0倍以上1.25倍以下に延伸する。なお、工程iより得られる凝固繊維束は、通常、使用した有機溶剤を多量に含み膨潤しており、さらに、フィブリル構造を有する。この凝固繊維束の空気中における延伸率が1.0倍以上であれば、不均一な収縮を容易に抑えることができる。さらに、この延伸率が、1.0倍以上1.2倍以下であれば、疎なフィブリル構造の形成を容易に避けることができる。また、空気中での延伸率は、多段階延伸処理における繊維の構造破壊を抑制する観点から、1.0倍以上1.15倍以下であることが好ましい。
次に、第1の延伸処理を行った繊維束を、有機溶剤を含む水溶液で延伸する。その際、第1の延伸工程(空気中)と、第2の延伸工程(水溶液中)との合計延伸倍率を2.0倍以上4.0倍以下とする。
引き続き、2段階の延伸処理より得られた繊維束(糸束)を洗浄し、この繊維束に含まれる有機溶剤(例えば、工程1の紡糸原液や凝固浴、工程3の有機溶剤を含む水溶液に使用した有機溶剤)を除去する。洗浄処理は、50℃以上97℃以下の水洗浄槽で行うのが好ましい。より好ましい水洗浄槽の温度は、55℃以上75℃以下である。50℃以上であれば、有機溶剤の十分な除去を容易に行うことができ、97℃以下であれば、急激な体積収縮によるフィブリル構造の破壊を容易に避けることができる。洗浄槽を通過したあとの繊維束中の有機溶剤濃度は0.2%以下であることが好ましい。
洗浄工程より得られる繊維束を、40℃以上の水浴中で0.95倍以上1.3倍以下に収縮または延伸する。即ち、洗浄工程後の有機溶剤分の無い膨潤状態にある繊維束を、特定の温度の水浴中で、特定の収縮率で収縮、または特定の延伸率で延伸することにより、繊維の配向を更に高めることができる。
A:工程3における有機溶剤を含む水溶液の温度(℃)、
B:工程3における有機溶剤を含む水溶液中の有機溶剤の濃度(質量比)、
C:工程3の水溶液中における工程2より得られる繊維束に付与する延伸倍率(比率)、D:工程5における水浴の温度(℃)。
有効範囲:90質量%<w2<100質量% 。
Tgs:有機溶剤を含むポリマーのTg(60℃とする。)
ここで「Tgp−Tgs」は、96.0質量%以上のアクリロニトリルを含有するポリアクリロニトリル系ポリマーであれば、有機溶剤によらずまた有機溶剤の含有量が10〜15質量%であれば大きくは変わらないと考えられることから、通常「Tgp−Tgs=40℃」とすることができる、したがって、実質的延伸倍率は、下記の数式(6)により表現することができる。
次に、工程ii(例えば、上記工程2〜5)より得られる膨潤糸束に、シリコーン化合物を含有する油剤を付着させる。なお、本発明では、工程6において、この油剤を付着させた繊維束中のシリコーン化合物の含有量は0.7質量%以上2.0質量%以下とする。この油剤としては、上述したシリコーン化合物を含む油剤を適宜用いることができる。この油剤の付着方法としては、例えば、ディップニップ方式を用いることができる。
本発明より得られる前駆体繊維束を、酸化雰囲気下(例えば空気中)で熱処理(耐炎化処理)することによって、耐炎化繊維束を得ることができる。その際、この前駆体繊維束を、例えば、220℃以上280℃以下の熱風循環型の耐炎化炉に、30分以上100分以下通過させ、伸長率0%以上10%以下として、密度1.335g/cm3以上1.360g/cm3以下の耐炎化繊維束を得ることができる。なお、前駆体繊維束は、複数の束を等間隔かつ同一平面を形成するように配置し、シート状の前駆体繊維束(前駆体シート)として、耐炎化工程や後述する炭素化工程に供することができる。
ことができ、その後の高温での熱処理により過剰の酸素が消失する反応が生じることを容易に抑制でき、欠陥点のない高強度の炭素繊維を容易に得ることができる。より好ましい耐炎化繊維束の密度は、1.340g/cm3以上1.350g/cm3以下である。
(1)前駆体繊維束を伸長率3.0%以上8.0%以下で伸長させ、繊維密度1.200g/cm3以上1.260g/cm3以下の繊維束を得る工程。
(2)得られた繊維束を、伸長率0.0%以上3.0%以下で伸長させ、繊維密度1.240g/cm3以上1.310g/cm3以下の繊維束を得る工程。
(3)得られた繊維束を、−1.0%以上2.0%以下で収縮または伸長させ、繊維密度1.300g/cm3以上1.360g/cm3以下の耐炎化繊維束を得る工程。
なお、各工程における繊維束の伸長率または収縮率は、各工程の前後に配置されて走行する糸を把持するロールの回転速度の差により特定することができる。
次に、得られた耐炎化繊維束を、窒素などの不活性雰囲気中、熱処理(炭素化処理)することによって、炭素繊維束を製造することができる。この炭素化処理は複数の段階に分けて行うことができ、耐炎化繊維束に対して、例えば、以下の第1及び第2(必要に応じて第3)の炭素化工程を行うことにより、炭素繊維束を得ることができる。
(1)耐炎化繊維束を、不活性雰囲気中、温度勾配を有する第一炭素化炉にて、300℃以上800℃以下で2%以上7%以下の伸長を加えながら1.0分以上3.0分以下、熱処理する第1の炭素化工程。
(2)第1の炭素化工程より得られる繊維束を、不活性雰囲気中、温度勾配を設定できる第二炭素化炉にて、1000℃以上1600℃以下、緊張下で熱処理をする第2の炭素化工程。
(3)第2の炭素化工程より得られる繊維束を、所望する温度勾配を有する第三炭素化炉にて不活性雰囲気中緊張下で熱処理をする第3の炭素化工程。
耐炎化処理温度を220〜260℃に設定した場合、反応を効率的に進行させる観点から、第1の炭素化工程における開始処理温度は300℃以上とすることが好ましい。第1の炭素化工程における処理温度(最高処理温度)が800℃以下であると、繊維が非常に脆くなることを容易に抑制でき、次の工程への移行が容易である。第1の炭素化工程における、より好ましい処理温度範囲は300℃以上750℃以下であり、更に好ましくは300℃以上700℃以下である。
次いで、窒素などの不活性雰囲気中、1000℃以上1600℃以下の範囲で温度勾配を設定出来る第二炭素化炉にて緊張下で熱処理を行う。
また、必要ならば、追加で所望する温度勾配を有する第三炭素化炉にて不活性雰囲気中、緊張下で熱処理を行う。第3の炭素化工程における処理温度の設定は、炭素繊維の所望弾性率に応じて適宜設定することができる。また、第三炭素化炉が有する温度勾配についても特に制限はないが、直線的な勾配を設定するのが好ましい。高機械性能を有する炭素繊維を得るためには、炭素化処理の最高処理温度は低ければ低いほど良い。また、処理時間を長くすることにより弾性率を高くすることができるため、処理時間を長くすることにより、炭素化処理の最高処理温度を下げることができる。更に、処理時間を長くすることにより、温度勾配を緩やかに設定することが可能となり、欠陥点形成を抑制するのに効果がある。
このようにして得られた炭素繊維束は、必要に応じて、表面処理に供される。表面処理方法としては、公知の方法、即ち、電解酸化、薬剤酸化及び空気酸化などによる酸化処理が挙げられ、いずれでも良い。工業的に広く実施されている電解酸化処理は、安定な表面酸化処理が可能であること、また、表面処理状態の制御が電気量を変えて行えるという観点から最も好適な方法である。ここで、同一電気量であっても、用いる電解質及びその濃度によって表面状態は大きく異なってくるが、pHが7より大きいアルカリ性水溶液中で炭素繊維を陽極として10クーロン/g以上200クーロン/g以下の電気量を流して酸化処理を行うことが好ましい。電解質としては、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いるのが好適である。
次に、得られた炭素繊維束は、必要に応じてサイジング処理に供される。サイジング剤は、有機溶剤に溶解させたサイジング液や、乳化剤などで水に分散させたエマルジョン液を、ローラ浸漬法、ローラ接触法等によって炭素繊維束に付与し、これを乾燥することによって行うことができる。なお、炭素繊維の表面へのサイジング剤の付着量の調節は、サイジング剤液の濃度調整や絞り量調整によって行うことができる。又、乾燥は、熱風、熱板、加熱ローラ、各種赤外線ヒーターなどを利用して行うことができる。引き続いて、サイシング剤を付着させ乾燥させた後、ボビンに巻きとることで、サイジング剤が付着した炭素繊維束を得ることができる。
本発明の前駆体繊維束より得られる炭素繊維束は、樹脂含浸ストランド強度が6500MPa以上であることが好ましく、ASTM法で測定されるストランド弾性率が260GPa以上380GPa以下であることが好ましい。
〔1.前駆体繊維束の調製〕
アクリロニトリル及びメタクリル酸を水系懸濁重合により重合し、アクリロニトリル単位/メタクリル酸単位=98/2(質量%)からなる、質量平均分子量415000のアクリロニトリル系共重合体を得た。得られた重合体をジメチルホルムアミドに溶解して、この重合体の濃度が23.5質量%の紡糸原液を調製した。
・アミノ変性シリコーン:KF−865(商品名、信越化学工業(株)製、1級側鎖タイプ、粘度110cSt(25℃)、アミノ当量5,000g/mol)。
・乳化剤:NIKKOL BL−9EX(商品名、日光ケミカルズ株式会社製、POE(9)ラウリルエーテル)。
次いで、得られた前駆体繊維束を複数、平行に揃えた状態(シート状)で耐炎化炉に導入し、220℃以上280℃以下に加熱された空気を前駆体繊維束に吹き付けることによって、前駆体繊維束を耐炎化して、密度1.342g/cm3の耐炎繊維束を得た。具体的には、この複数の前駆体繊維束を伸長率5.0%で伸長させた状態で、密度1.200g/cm3以上1.250g/cm3以下まで耐炎化処理し、更に伸長率1.5%で伸長させた状態で、密度1.250g/cm3以上1.300g/cm3以下まで耐炎化処理し、更に、収縮率−0.5%で緩和させた状態で、密度1.300g/cm3以上1.350g/cm3以下まで耐炎化処理し、耐炎化繊維束を得た。なお、この耐炎化処理における合計の伸長率は6%であり、合計の耐炎化処理時間は40分であった。
次に、得られた耐炎化繊維束を、窒素中、300℃以上700℃以下の第一炭素化炉にて4.5%の伸長を加えながら通過させた(第1の炭素化工程)。なお、この第一炭素化炉は、炭素化処理開始温度が300℃となり、終了温度が700℃となる、直線的な温度勾配を有していた。また、炭素化処理時間は1.9分とした。
引き続いて、重炭酸アンモニウムを10質量%含む水溶液中に、得られた炭素繊維束を走行させ、この炭素繊維束を陽極として、処理対象となるこの炭素繊維1g当り40クーロンの電気量となる様に対極との間で通電処理を行い、温水90℃で洗浄した後、乾燥した。次に、得られた繊維束に対して、ハイドランN320(商品名、DIC株式会社製)を0.5質量%付着させ、ボビンに巻きとり、表面処理した炭素繊維束を得た。
表1に示すように、紡糸条件及び前駆体繊維束に付着させるシリコーン化合物の量を変更した以外は、実施例1と同様にして、前駆体繊維束を得た。さらに、この前駆体繊維束から、実施例1と同様にして、表面処理した炭素繊維束を製造した。
Claims (4)
- シリコーン化合物が付着した炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束を製造する方法であって、
(1)アクリロニトリル単位の含有率が96.0質量%以上である重合体を有機溶剤に溶解させた紡糸原液から、乾湿式紡糸法によって凝固繊維束を作製する工程と、
(2)該凝固繊維束を空気中で1.0倍以上1.2倍以下に延伸する工程と、
(3)工程2より得られる繊維束を、有機溶剤を含む水溶液中で延伸し、その際、工程1より得られる凝固繊維束に対する、工程2および工程3の合計延伸倍率を3.08倍以上4.0倍以下とする工程と、
(4)工程3より得られる繊維束から有機溶剤を除去する工程と、
(5)工程4より得られる繊維束を、40℃以上の、温度70〜95℃の熱水中を除く水浴中で0.95倍以上1.3倍以下に収縮または延伸する工程と、
(6)工程5より得られる繊維束に、シリコーン化合物を含む油剤を付着させる工程と、(7)工程6より得られる繊維束を乾燥させる工程と、を含み、
工程3において、該有機溶剤を含む水溶液の温度(℃)をAで表し、該有機溶剤を含む水溶液中の有機溶剤の濃度(質量比)をBで表し、該有機溶剤を含む水溶液中における工程2より得られる繊維束に付与する延伸倍率(比率)をCで表し、工程5において、該水浴の温度(℃)をDで表した場合に、下記の数式(1)で表される関係を満たし、工程7後の乾燥させた繊維束に対する該シリコーン化合物の含有量が0.7質量%以上2.0質量%以下になる該油剤の量を繊維束に付与にする、炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束の製造方法:
- 前記シリコーン化合物として、以下の条件(1)及び(2)を満たすアミノ変性シリコーン化合物を用いる請求項1に記載の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束の製造方法:
(1)25℃における動粘度が50cst以上5000cst以下、
(2)アミノ当量が1700g/mol以上15000g/mol以下。 - 請求項1または2に記載の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束の製造方法により得られた炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束を、220℃以上280℃以下の熱風循環型の耐炎化炉に、30分以上100分以下通過させ、伸長率0%以上10%以下として、酸化雰囲気下で熱処理することによって耐炎化繊維束を得る、耐炎化繊維束の製造方法。
- 請求項1または2に記載の炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束の製造方法により得られた炭素繊維用アクリロニトリル前駆体繊維束を、酸化雰囲気下での熱処理により密度1.335g/cm 3 以上1360g/cm 3 以下の耐炎化繊維束とした後、不活性雰囲気中で300℃以上800℃以下の温度勾配を有する炭素化炉にて2%以上7%以下の伸長を加えながら1.0分以上3.0分以下加熱し、引き続き不活性雰囲気中1000℃以上1600℃以下の温度勾配を有する炭素化炉にて−6.0%以上2.0%以下の伸長を加えながら1.0分以上5.0分以下熱処理を行うことによって炭素繊維束を得る、炭素繊維束の製造方法。
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