JP5112973B2 - 炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物、並びに炭素繊維前駆体アクリル系繊維束及びその製造方法 - Google Patents
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Description
この方法で得られた炭素繊維束は、優れた機械的物性を有していることから、特に複合材料の強化繊維として工業的に広く用いられている。
更に、以上のようにして得られた前駆体繊維束の単繊維の損傷や毛羽を発端として、続く耐炎化処理時に、搬送用ロールに前駆体繊維束が巻きつくなどのトラブルが発生してしまう。
従って、現行の設備条件で、上記諸問題を解決することが望まれる。
しかしながら、総繊度が大きい前駆体繊維束の幅を溝付きのロールを用いて制御した場合、繊維束割れ、及び繊維束端部の単糸切れが発生し、気体を繊維束に流通させる交絡処理では斜行単糸が発生するなどして、前駆体繊維束の形態が悪化するという問題がある。また、溝付きロールは通常のロールと比して、接触時の圧着によるダメージを与えやすく、前駆体繊維束中の単繊維同士が接着しやすいなどの問題もある。
しかしながら、アミノ変性シリコーンを付与した場合、耐炎化処理時にアミノ変性シリコーンが飛散、分解してしまうため、集束効果が維持できない問題があり、耐炎化処理後の集束性が十分ではなかった。
しかしながら、帯電防止効果を有するウリルアルコールエチレンオキサイド付加物は界面活性作用を有しており、油剤処理槽が泡立ちやすい。特に、前駆体繊維束の総繊度を大きくした場合、油剤処理槽の泡立ちがより大きくなる傾向にあり、泡によって油剤の付与が阻害され、油剤処理を充分に行うことができないという問題がある
なお、前記炭素系微粒子がカーボンブラックであることが好ましい。
なお、前記シリコーンがアミノ変性シリコーンであることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物は、ノニオン系乳化剤を10〜50質量%含有することが好ましい。
また、前記ノニオン系乳化剤は、プロピレンオキサイド単位とエチレンオキサイド単位からなる共重合型ポリエーテルであることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体アクリル系繊維束は、総繊度を大きくすることができ、炭素繊維の生産性のよいものである。
更に、炭素繊維前駆体アクリル系繊維束の製造方法によれば、製造過程が阻害されにくいため、品質を保持しながら生産性を上げることが可能である。
(炭素系微粒子)
本発明の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物(以下、「油剤組成物」という。)は、導電性を有する炭素系微粒子を含有することを特徴とする。
導電性を有する炭素系微粒子は、炭素質物質よりなる微粒子であれば特に制限は無く、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック及びサーマルブラックなど)、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノコイル、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び土状黒鉛など)、人工黒鉛、活性炭粉末、無煙炭粉末などが挙げられる。
中でも導電性と分散性が良好なことからカーボンブラック、カーボンナノチューブ、活性炭粉末が好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。
炭素系微粒子は炭素繊維前駆体アクリル系繊維束(以下、「前駆体繊維束」という。)の単繊維内部に浸透しない方が好ましい。しかし、炭素系微粒子の平均一次粒子径が1nm未満である場合、単繊維内部に浸透し易いため好ましくない。
また、油剤組成物を分散させた水系分散液が安定であるためには平均粒子径が細かいことが好ましい。しかし、平均粒子径が1000nmを超えると、水系分散液が不安定となる傾向にある。
表面処理方法としては特に制限はなく、酸素存在雰囲気下で昇温する気相酸化、硝酸や重クロム酸カリウム水溶液による液相酸化など既知の処理方法から適宜選択することができる。
炭素系微粒子の表面を以上のような方法で表面改質して親水化すると、本発明の油剤組成物を分散させた水系分散液の分散性及び安定性が向上する傾向にある。
炭素系微粒子の含量が5質量%以上であれば、前駆体繊維束に油剤組成物を付与した際、隣接する粒子同士が接しやすく、導電性が得やすい傾向にある。従って、前駆体繊維束および耐炎化処理後の繊維束に集束性を付与でき、各工程における繊維束幅を小さくすることができる。
一方、炭素系微粒子の含量30質量%以下であれば、本発明の油剤組成物の安定性が得られ、該油剤組成物を分散させた水系分散液の分散性を維持できる傾向にある。
本発明の油剤組成物は、シリコーンを含有していることが好ましい。
このシリコーンは前駆体繊維束との馴染みやすさから、アミノ変性シリコーンであることがより好ましい。
油剤組成物に用いるアミノ変性シリコーンに特に制限はなく、例えば、1級側鎖アミノ変性タイプ、1,2級側鎖アミン変性タイプ、両末端アミノ変性タイプのいずれでもよい。より熱的に安定で好ましいアミノ変性シリコーンとしては、1級側鎖アミンの構造で、25℃における動粘度が100〜1000mm2/s、アミノ当量が4000〜6000g/molのものが挙げられる。
また、シリコーンのうちアミノ変性シリコーンを用いた場合、特にその含量が20〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。
シリコーンを用いると、各工程においてロールで搬送される前駆体繊維束を、保護できる傾向にある。つまり、各工程においてロールで搬送される前駆体繊維束の単繊維に損傷、糸切れ、毛羽及び接着などを生じ難くすることができる。
シリコーンの含量が20質量%未満(又は、アミノ変性シリコーンの含量が20質量%未満)の場合、前駆体繊維束を保護しにくい傾向にある。
一方、シリコーンの含量が60質量%を超えると(又は、アミノ変性シリコーンの含量が60質量%を超える)、前駆体繊維束の単繊維表面の被膜が厚くなり、カーボンブラックなどが被膜内に埋まりやすくなるため、導電性を得にくい傾向にある。
本発明の油剤組成物は、ノニオン系乳化剤を含有していることが好ましい。
ノニオン系乳化剤としては、例えば、高級アルコ−ルエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノ−ルエチレンオキサイド付加物、脂肪族エチレンオキサイド付加物、多価アルコ−ル脂肪族エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位からなる共重合型ポリエーテルなどエチレンオキサイド付加型ノニオン系界面活性剤や、グリセロ−ルの脂肪族エステル、ペンタエリスト−ルの脂肪族エステル、ソルビト−ルの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪族エステル、ショ糖の脂肪族エステル、多価アルコ−ルのアルキルエ−テル、アルカノ−ルアミン類の脂肪酸アミドなどの多価アルコ−ル系ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
中でも、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位からなる共重合型ポリエーテルが、耐炎化処理において、分解・低分子化して気体となり、炉内流通ガスと共に系外へ排出されて繊維束に残存しないことから好ましい。
ノニオン系乳化剤の含量が10質量%以上であれば、乳化しやすく、後に得られる水系分散液の安定性が得られやすい。一方、50質量%以下であれば、油剤組成物の水系分散液に前駆体繊維束を入れた際、油剤組成物由来の気泡が発生し難く、油剤処理をし易い傾向にある。
以下、本発明の前駆体繊維束の製造方法について説明する。
<炭素繊維前駆体製造工程>
(紡糸)
本発明の前駆体繊維束には、公知技術により紡糸されたアクリル系繊維束を用いることができる。
好ましいアクリル系繊維束の例として、アクリロニトリル系重合体を紡糸して得られるアクリル繊維束が挙げられる。
アクリロニトリル単量体単位が96.0質量%以上の場合、炭素繊維に転換するための、次の焼成工程で単繊維の熱融着を招きにくく、炭素繊維の優れた品質および性能を維持できるので好ましい。更にこの場合、共重合体自体の耐熱性が低くなりにくく、炭素繊維前駆体製造工程における、アクリル系繊維束の乾燥処理、あるいは加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸処理を行う際も、単繊維間の接着を回避できる傾向にある。
一方、アクリロニトリル単量体単位が98.5質量%以下の場合には、溶剤への溶解性が低下することが紡糸原液の安定性を維持できると共に、得られる共重合体の析出凝固性が高くなりすぎず、アクリル系繊維束の安定した製造が可能となるので好ましい。
特に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、または、これらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アクリルアミド等の単量体から選択すると、耐炎化処理を促進できるので好ましく、これらは1種又は2種以上用いることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体がより好ましい。
特に、アクリロニトリル系共重合体において、カルボキシル基含有ビニル系単量体単位が0.5〜2.0質量%含有されていることが好ましく、この範囲内であれば効率的に耐炎化処理を促進することが可能である。
このときの溶剤には、ジメチルアセトアミドあるいはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、または塩化亜鉛やチオシアン酸ナトリウム等の無機化合物水溶液等、公知のものから適宜選択して使用することができる。中でも、生産性向上の観点から凝固速度が早いジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドが好ましく、ジメチルアセトアミドがより好ましい。
具体的には、紡糸原液中のアクリロニトリル系重合体の濃度が、17質量%以上であることが好ましく、19質量%以上であることがより好ましい。一方、紡糸原液は適正な粘度や流動性を必要としており、このため、アクリロニトリル系重合体の濃度が25質量%以下であることが好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、水溶液中の溶剤濃度は、50〜85質量%が好ましく、凝固浴の温度は10〜60℃が好ましい。溶剤濃度が上記範囲内であり、且つ凝固浴の温度が上記範囲内であるとき、ボイドがなく緻密な構造で、高性能な炭素繊維束が得られ易く、更には、延伸性が確保でき生産性に優れる傾向にある。
アクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解し紡糸原液とし、これを凝固浴中に吐出して繊維化して得た凝固糸は、更に凝固浴中または延伸浴中での浴中延伸を行い、延伸処理をすることができる。あるいは、一部空中延伸した後に、浴中延伸をしてもよく、延伸処理の前後あるいは延伸処理と同時に水洗を行って水膨潤状態にある前駆体繊維束を得ると好ましい。
なお、浴中延伸は通常50〜98℃の水浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割するなどして行うと好ましい。
延伸処理においては、空中延伸及び浴中延伸による合計延伸倍率が2〜10倍になるよう延伸することが、後に得られる炭素繊維束の性能の点から好ましい。
油剤処理においては、本発明の油剤組成物を水中に分散させて平均粒子径0.05〜5μmのミセルを形成させた水系分散液を、紡糸と延伸処理を経て得た水膨潤状態の前駆体繊維束に付与させる。
各成分の水中分散は、プロペラ攪拌、ホモミキサー、ホモジナイザー等を使って行うことができる。更に、炭素系微粒子を高分散させるために200MPa以上に加圧可能な超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
ミセルの平均粒子径がこの範囲内であるとき、前駆体繊維束の表面に均一に油剤を付与することが可能となる。
なお、上記のW/O型水系乳化溶液に存在するミセルの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。
濃度が40質量%より高くなると、水系分散液が不安定となり乳化の破壊が起こりやすくなる。一方、2質量%より低い場合には、必要な量の油剤組成物を水膨潤状態にある前駆体繊維束に付与することが困難になる。
中でも、均一付着の観点から、前駆体繊維束に十分に油剤処理液を浸透させ、余分な処理液を除去するディップ付着法を用いると好ましい。また、より均一に付着するためには油剤処理を2つ以上の多段にし、繰り返し付与することも有効である。
本発明の油剤組成物が付着した前駆体繊維束は、乾燥により、乾燥・緻密化されると好ましい。乾燥・緻密化の温度は、前駆体繊維束のガラス転移温度を超えた温度で行う必要があるが、実質的には含水状態から乾燥状態によって異なることもある。例えば、温度が100〜200℃程度の加熱ローラーによる方法を用いることができる。このとき加熱ローラーの個数は、1個でも複数個でもよい。
前駆体繊維束は乾燥後、加圧水蒸気延伸を行うと、得られる繊維の緻密性や配向度をさらに高めることができるため好ましい。
加圧水蒸気延伸とは、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う方法であって、高倍率の延伸が可能であることから、より高速で安定な紡糸が行えると同時に、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与する。
本発明では、この加圧水蒸気延伸において、加圧水蒸気延伸装置直前の加熱ローラーの温度を120〜200℃、加圧水蒸気延伸における水蒸気圧力の変動率を0.5%以下に制御することが好ましい。このようにすることにより、前駆体繊維束になされる延伸倍率の変動及びそれによって発生する総繊度の変動を抑制することができる。なお、加熱ローラーの温度が120℃未満の場合は、前駆体繊維束の温度が十分に上がらず延伸性が低下する。一方、200℃を越えると軟化して単繊維間の融着が起こる上に、大気中の酸素と反応し繊維に損傷を与える可能性がある。
なお、得られた前駆体繊維束は、この後焼成工程(耐炎化処理や炭素化処理)に移され、炭素繊維束となる。
以上の各処理によって得られた本発明の前駆体繊維束において、本発明の油剤組成物が前駆体繊維束の乾燥質量に対して0.5〜2質量%であることが好ましく、1〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
油剤組成物の付着量が0.5質量%未満であると、油剤組成物の本来の機能を十分に発現させることが困難になる場合がある。一方、油剤組成物の付着量が2質量%を越えると、余分に付着した油剤組成物中のアミノ変性シリコーンが、焼成工程において高分子化して単繊維間の接着の誘因となる場合がある。
なお、乾燥質量とは乾燥・緻密化処理の後に得られる前駆体繊維束の質量を示す。
このようにして、本発明の油剤組成物が付与された本発明の前駆体繊維束は、油剤組成物が均一に付着しているため、集束性に優れ、生産性を向上することができるものである。
このように、本発明の油剤組成物を用いた本発明の前駆体繊維束の製造方法は、操業安定性、高生産性の両効果を兼ね備えている。
また、本発明の油剤組成物を前述の通り適正に付与して製造された前駆体繊維束より得られた炭素繊維束は、様々な構造材料に用いられる繊維強化樹脂複合材料に用いる強化繊維として好適である。
得られた前駆体繊維束を105℃で1時間乾燥させた後、90℃のメチルエチルケトンに8時間浸漬して付着した油剤組成物を溶媒抽出した。
油剤付着量はこの抽出前後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の質量を精秤することで、この差から求めた。
得られた前駆体繊維束を5mm長に切断し、アセトン中に分散させ、10分間攪拌した後の全単繊維数と融着数を計数し、単繊維100本当たりの融着数を算出して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:融着数(個/100本)≦1
×:融着数(個/100本)>1
帯電圧測定は前駆体繊維束の炭素繊維前駆体製造工程の最終ロール、すなわち前駆体繊維束をボビンに巻き取る直前のロールにさしかかる空走中の繊維に対して測定した。
測定には静電気測定機STATIRON−M(シシド静電気株式会社製)を用いた。
集束性は前駆体繊維束の炭素繊維前駆体製造工程の最終ロール上での状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:集束しており、繊維束幅が一定で、隣接する繊維束と接触しない。
△:集束しているが、繊維束幅が一定ではない、あるいは繊維束幅が広い。
×:繊維束中に空間があり、集束していない。
得られた前駆体繊維束に耐炎化処理を施した直後のロール上で、ノギスを用いて繊維束の幅を測定した。10点測定し、その平均値を用いて評価した。
油剤組成物を含有する水系分散液を次の方法で調製した。
イオン交換水にプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドからなるブロック共重合型ポリエーテル(株式会社ADEKA製、商品名:F−68)と、一般的なアミノ変性シリコーンの合成方法であるアルカリ平衡法によって得られた動粘度が500mm2/s(25℃)、アミノ当量が6000g/molである1級側鎖型のアミノ変性シリコ−ンと、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径23nm、商品名:三菱導電性カーボンブラック#3230B)とを表1に示すように40:50:10の割合で混合攪拌した。
このとき、油剤組成物の濃度が30質量%となるようにした。
また、この状態ではミセルの平均粒子径が5μm程度であるため、さらに高圧ホモジナイザーによって1.0μm以下の平均粒子径とし分散させた。
このエマルションを水系分散液として用いた。
得られた凝固糸は水洗槽中で脱溶媒するとともに5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維束とした。
その後、油剤組成物が付着したアクリル繊維束を表面温度180℃の乾燥ロールにて乾燥緻密化した後に、圧力0.2MPaの水蒸気中で3倍延伸を施し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た(炭素繊維前駆体製造工程)。
また、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、220〜260℃の温度勾配を有する耐炎化炉に通して、耐炎化処理を施した。
以上、炭素繊維前駆体製造工程を経て得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理した直後の繊維束について各評価を行った。結果を表1に示す。
油剤組成物を構成する成分のうち、表1に示す組成で、炭素系微粒子を以下に示すものに変えた他は、実施例1と同様にして、実施例2〜7を実施した。
また、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体製造工程を経て得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理した直後の繊維束について各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製、平均一次粒子径70nm、商品名:トーカブラック#3800)
実施例3:カーボンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製、平均一次粒子径34nm、商品名:カーボンECP600JD)
実施例4:カーボンブラック(東海カーボン株式会社、平均一次粒子径14nm、商品名:トーカブラック#8500/F)
実施例5:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径500nmに調製、商品名:三菱カーボンブラックMA100B)
実施例6:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、平均一次粒子径1000nmに調製、商品名:三菱カーボンブラックMA100B)
実施例7:カーボンナノチューブ(和光純薬工業株式会社製、外径:20〜30nm、長さ:0.5〜2μm)
実施例1のカーボンブラックを二酸化ケイ素パウダー(アルドリッチ社製、平均一次粒子径10〜20nm)に替えた油剤組成物を用い、表1に示す組成で、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体製造工程を経て得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理した直後の繊維束について各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1で用いたポリエーテルと、アミノ変性シリコーンとを表1に示すように50:50の割合で調製した油剤組成物を用い、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体製造工程を経て得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理した直後の繊維束について各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1で用いたポリエーテルとアミノ変性シリコ−ンに、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウレート(花王株式会社製、商品名:エキセパールBP−DL)を加え、表1に示すように25:25:50の割合で調製した油剤組成物を用いて、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体製造工程を経て得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束と、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理した直後の繊維束について各評価を行った。結果を表1に示す。
また、実施例6及び7は、その単繊維の融着は無く、帯電圧も0kVであり、炭素繊維前駆体製造工程後の集束性が良好であった。なお、実施例6及び7は、水系分散体を調製する際に炭素系微粒子を水中に分散させることが、他の実施例と比較すると困難であり、繊維束幅も他の実施例より広い傾向にあった。しかし、隣接する繊維束との接触は無く、製造工程は安定していた。
比較例3で得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、炭素系微粒子を含有していないために帯電圧も高く、炭素繊維前駆体製造工程後の集束性は著しく悪かった。かつ、シリコーン含有量が少ないために単繊維融着が多くみられた。さらには耐炎化処理の際、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウレートに起因すると思われるタール分が生成し、工程障害となった。また、耐炎化処理後の繊維束の幅も広く、隣接する繊維と接触して毛羽が発生しロールに単糸が取られるなどして、ロールに巻き付きが起こり、工程障害が起きた。
さらに、従来品より繊維束の総繊度を大きくしたような、いわゆるラージトウも従来と同様の設備で製造することが可能となる。
すなわち、本発明炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物によれば、炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造工程を安定させ、その生産性を向上することができる。従って、炭素繊維前駆体アクリル繊維の生産にあたり、コストダウンと生産能力の大幅増が可能となる。
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維用油剤組成物を適正に付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束から得られた炭素繊維束は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもでき、ゴルフシャフトや釣り竿などのスポーツ用途、さらには構造材料として自動車や航空宇宙用途、また各種ガス貯蔵タンク用途などに好適に用いることができ、有用である。
Claims (9)
- 導電性を有する炭素系微粒子を含有する炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- 前記炭素系微粒子がカーボンブラックである請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- シリコーンを含有する請求項1又は2に記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- 前記シリコーンがアミノ変性シリコーンである請求項3に記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- 炭素系微粒子を5〜30質量%、アミノ変性シリコーンを20〜60質量%含有する請求項4に記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- ノニオン系乳化剤を10〜50質量%含有する請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- 前記ノニオン系乳化剤が、プロピレンオキサイド単位とエチレンオキサイド単位からなる共重合型ポリエーテルである請求項6に記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物が、乾燥質量に対して0.5〜2質量%付着している炭素繊維前駆体アクリル系繊維束。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維前駆体アクリル系繊維用油剤組成物を水中に分散させて平均粒子径0.05〜5μmのミセルを形成させた水系分散液を、水膨潤状態の炭素繊維前駆体アクリル系繊維束に付与させる油剤処理と、
水系分散液を付与した炭素繊維前駆体アクリル系繊維束を乾燥緻密化する乾燥緻密化処理を有する炭素繊維前駆体アクリル系繊維束の製造方法。
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