iRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られている過程を通じて、mRNAの配列特異的分解を誘発する。本明細書では、iRNAと、細胞または哺乳類におけるALAS1遺伝子の発現を阻害するためにそれらを使用する方法とが記載され、その中でiRNAはALAS1遺伝子を標的とする。ポルフィリン症(例えばALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(ADPまたはDossポルフィリン症)、急性間欠性ポルフィリン症、先天性赤芽球増殖性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症(prophyria cutanea tarda)、遺伝性のコプロポルフィリン症(コプロポルフィリン症)、異型ポルフィリン症、赤芽球増殖性プロトポルフィリン症(EPP)、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)、および乳児期一過性赤血球ポルフィリン症)などのALAS1発現関連障害のための組成物および方法もまた提供される。
ポルフィリン症は遺伝し、または本明細書でポルフィリン経路とも称されるヘム生合成経路における、特定酵素の活性低下または亢進によって引き起こされる後天性疾患であり得る(図1を参照されたい)。ポルフィリンは、主要ヘム前駆体である。ポルフィリンおよびポルフィリン前駆体としては、δ-アミノレブリン酸(ALA)、ポルホビリノーゲン(porphopilinogen)(PBG)、ヒドロキシメチルビラン(HMB)、ウロポルフィリノーゲンIまたはIII、コプロポルフィリノーゲンIまたはIII、プロトポルフィリノーゲン(protoporphrinogen)IX、およびプロトポルフィリンIXが挙げられる。ヘムは、ヘモグロビン、ミオグロビン、カタラーゼ、ペルオキシダーゼの、および呼吸およびP450肝臓チトクロームをはじめとするチトクロームの、不可欠な部分である。ヘムは、ほとんどのまたは全てのヒト細胞で合成される。ヘムの約85%は、主にヘモグロビンのために、赤血球系細胞中で産生される。残りのヘムの大部分は、肝臓で産生され、その80%はチトクローム合成のために使用される。ポルフィリン経路中の特定酵素の欠乏は、不十分なヘム産生をもたらし、また高濃度では細胞または臓器機能に有毒であり得るポルフィリン、前駆体および/またはポルフィリンの蓄積ももたらす。
ポルフィリン症は、神経学的合併症(「急性」)、肌の問題(「皮膚」)またはその両者によって現れることもある。ポルフィリン症は、ポルフィリンまたはそれらの前駆体の過剰産生および蓄積の原発部位によって、分類されてもよい。肝性ポルフィリン症では、ポルフィリンおよびポルフィリン前駆体が肝臓で優勢に過剰産生されるのに対し、赤芽球増殖性ポルフィリン症では、ポルフィリンが骨内の赤血球系細胞で過剰産生される。急性または肝性ポルフィリン症は、神経系機能障害および神経性症状発現をもたらし、それは中枢および辺縁神経系の双方に影響を及ぼし得て、例えば疼痛(例えば腹痛および/または慢性神経障害性疼痛)、嘔吐、神経障害(例えば急性神経障害、進行性神経障害)、筋力低下、痙攣、精神障害(例えば幻覚、うつ病不安、妄想症)、心不整脈、頻脈、便秘、および下痢などの症状をもたらす。皮膚性または赤芽球増殖性ポルフィリン症は、主に皮膚に影響を及ぼして、有痛性であり得る光過敏症、火ぶくれ、壊死、掻痒感、腫脹、および前頭部などの領域における発毛増大などの症状を引き起こす。皮膚病変の引き続く感染は、骨および組織の損失、ならびに瘢痕、損なわれた美観、および指(例えば手指、足指)の欠損をもたらし得る。ほとんどのポルフィリン症は、ヘム生合成経路内の酵素をコードする変異によって引き起こされる。ヘム代謝における遺伝的誤りと関連付けられているポルフィリン症の概要が、図2に提供される。
全てのポルフィリン症が遺伝的とは限らない。例えば肝臓病患者は、肝機能不全の結果としてポルフィリン症を発症することもあり、乳児期における赤血球ポルフィリン症(erythroporphria)の一過性形態(乳児期一過性赤血球ポルフィリン症)が記述されている(クロフォード(Crawford),R.I.ら著,J Am Acad Dermatol.1995年8月;33(2 Pt 2):333-6を参照されたい)。PCTがある患者は、正常な酵素よりも活性が低いORO-D酵素形成のために、ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ(URO-D)活性欠乏を起こし得る(フィリプス(Phillips)ら著.ブラッド(Blood),98:3179-3185,2001年を参照されたい)。
急性間欠性ポルフィリン症(AIP)(ポルホビリノーゲン(PBG)デアミナーゼ欠乏、またはヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS)欠乏とも称される)は、最も一般的なタイプの急性肝性ポルフィリン症である。その他の各種急性肝性ポルフィリン症としては、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、異型ポルフィリン症(VP)、およびALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(ADP)が挙げられる。急性肝性ポルフィリン症は、例えばバルワニ(Balwani),Mおよびデスニック(Desnick),R.J.,ブラッド(Blood),120:4496-4504,2012年で説明される。
AIPは、典型的に、酵素ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(PBGデアミナーゼ)の欠乏によって特徴付けられる常染色体優性疾患であり;この酵素は、ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBシンターゼまたはHMBS)としてもまた知られている。PBGデアミナーゼは、ヘム生合成経路の3番目の酵素であり(図1を参照されたい)、直鎖テトラピロールであるヒドロキシメチルビラン(HMB)への、ポルホビリノーゲン分子の頭尾縮合を触媒する。PBGデアミナーゼの異なるイソ型をコードする、選択的スプライスによる転写物変種について記述されている。PBGデアミナーゼ遺伝子中の変異は、AIPと関連付けられている。このような変異は、PBGデアミナーゼ量の低下、および/またはPBGデアミナーゼ活性の低下をもたらすこともある(罹患した個人は、典型的にPBGデアミナーゼ活性に約50%の低下を有する)。
AIPおよびその他の急性肝性ポルフィリン症の病態生理の少なくとも2つの異なるモデルがある(例えばリン(Lin)CS-Yら著.,クリニカル ニューロフィジオロジ(Clinical Neurophysiology),2011年;122:2336-44を参照されたい)。1つのモデルによると、PBGデアミナーゼ欠乏に起因するヘム産生の低下は、エネルギー不全および軸索変性を引き起こす。別の、目下、より支持されているモデルによると、ポルフィリン前駆体(例えばALAおよびPBG)の沈積は、神経毒性をもたらす。
AIPは、特定の集団中で10,000人に1人程度に高い、有病率を有することが分かっている(例えばスウェーデン北部;フロデルス(Floderus) Yら著Clin Genet.2002年;62:288-97を参照されたい)。英国を除く、米国およびヨーロッパの一般集団の有病率は、10,000人に1人から、20,000人に1人程度と推定される。臨床疾患は、AIPに伴うことが知られている変異を保有する個人の約10~15%のみに現れる。しかし浸透度は、特定の変異(例えばW198X変異)がある個人の40%程度に高い。AIPは、典型的に、思春期前には潜在性である。症状は、男性よりも女性でより一般的である。疾患の有病率は、その不完全な浸透度と長い潜伏期のために、恐らくは過小評価されている。米国では、発作を少なくとも1回起こしたことがある患者が、約2000人いると推定される。フランス、スウェーデン、英国、およびポーランドでは、約150の活性再発性症例があると推定され;これらの患者の大部分は若年女性であり、年齢中央値は30才である。例えば2012年11月1日にオンライン公開された、エルダ(Elder)ら著,J Inherit Metab Dis.を参照されたい。
AIPは、例えば、内臓、辺縁、自律、および中枢神経系に影響を及ぼす。AIP症状は変動し、胃腸症状(例えば重症で局在のはっきりしない腹痛、悪心/嘔吐、便秘、下痢、腸閉塞)、尿症状(排尿障害、尿貯留/失禁、または例えば濃い赤色の尿などの色の濃い尿)、神経症状(例えば感覚性神経障害、運動神経障害(例えば脳神経に影響を及ぼし、および/または腕または脚の脱力感をもたらす)、痙攣、神経障害性疼痛(例えば慢性神経障害性疼痛などの進行性神経障害に伴う疼痛)、神経精神症状(例えば精神錯乱、不安、撹拌、幻覚、ヒステリー、譫妄、感情鈍麻、うつ病、恐怖症、精神病、不眠症、傾眠、昏睡)、自律神経系障害(例えば頻脈、高血圧、および/または不整脈などの心血管症状(sysmptoms)、ならびに例えば循環カテコールアミンレベル、発汗、情動不安、および/または振戦の増大などのその他の症状をもたらす)、脱水、および電解質異常が含まれる。最も一般的な症状は、腹痛および頻脈である。神経学的顕在化としては、運動および自律神経障害、および痙攣が挙げられる。患者は、頻繁に慢性神経障害性疼痛を有して、進行性神経障害を発症する。再発性発作がある患者は、前駆症状を有することが多い。重度の発作後に、恒久的な麻痺が起きることもある。即座に治療されない重度の発作からの回復は、数週間または数ヶ月かかることもある。急発作は、例えば電解質不均衡からの呼吸筋肉麻痺または心血管破損のために、致命的なこともある(例えばその内容全体を参照によって援用する、サンネル(Thunell)S.ヒドロキシメチルビランシンターゼ欠乏(Hydroxymethylbilane Synthase Deficiency)2005年9月27日[2011年9月1日に更新].In:パゴン(Pagon)RA,バード(Bird)TD,ドラン(Dolan)CR,ら著,編者 GeneReviews(登録商標)[インターネット].シアトル(ワシントン州):ワシントン大学(University of Washington),シアトル;1993-(以下、サンネル(Thunell)(1993))を参照されたい。)ヘミン治療法が利用できるようになる前には、AIP疾患がある患者の最高20%が、病気のために死亡した。
AIP遺伝子を保有する個人では、肝細胞がんのリスクが増大する。再発性発作がある個人では、肝細胞がんのリスクは特に重篤であり、50才以降では、リスクは一般集団のほぼ100倍を超える。
急性ポルフィリン症の発作は、内因性または外因性要因によって誘発されることもある。このような要因が発作を誘発する機構としては、例えば肝臓のP450酵素に対する要求の増大、および/または肝臓のALAS1活性の誘導が挙げられる。肝臓のP450酵素に対する要求の増大は、肝臓の遊離ヘムの低下をもたらし、その結果、肝臓のALAS1の合成を誘導する。
増悪因子としては、空腹時(またはクラッシュダイエットや長距離運動競技などに起因する、低下したまたは不十分なカロリー摂取量のその他の形態)、代謝ストレス(例えば感染症、外科手術、国際飛行機旅行、および心理学的ストレス)、内因性ホルモン(例えばプロゲステロン)、喫煙、脂質可溶性外来性化学物質(例えばタバコの煙、特定の処方薬、有機溶媒、殺生剤、アルコール飲料の成分中に存在する化学物質をはじめとする)、内分泌因子(例えば生殖ホルモン(女性は月経前期間中に増悪を経験することもある)、合成エストロゲン、プロゲステロン、排卵誘発剤、およびホルモン代替療法)が挙げられる。例えばサンネル(Thunell)(1993)を参照されたい。
急性肝性ポルフィリン症(例えばAIP、HCP、ADP、およびVP)では、例えば、アルコール、バルビツレート系薬物、カルバマゼピン、カリソプロドール、クロナゼパム(高用量)、ダナゾール、ジクロフェナクおよび場合によりその他のNSAIDS、麦角、エストロゲン、エトクロルビノール(Ethyclorvynol)、グルテチミド、グリセオフルビン、メフェニトイン、メプロバメート(またメブタメートおよびチブタメート(tybutamate))、メチプリロン、メトクロプラミド(Metodopramide)、フェニトイン、プリミドン、プロゲステロンおよび合成プロゲスチン、ピラジナミド、ピラゾロン(アミノピリンおよびアンチピリン)、リファンピン、スクシンイミド(エトサクシミドおよびメトサクシミド)、スルホンアミド抗生物質、およびバルプロ酸をはじめとする、1000種を超える薬剤が禁忌である。
AIPの他覚的微候としては、急性発作中の尿の変色(尿が赤色または赤褐色に見えることもある)、そして急性発作中のPBGおよびALAの尿中濃度の増大が挙げられる。分子遺伝学的検査は、罹患した個人の98%以上で、PBGデアミナーゼ(HMBSとしてもまた知られている)遺伝子に変異を同定する。サンネル(Thunell)(1993)。
ポルフィリン症(porphria)の診断は、家族歴の評価、尿、血液、または便中のポルフィリン前駆体レベルのアセスメント、および/または酵素活性およびDNA変異解析のアセスメントを伴い得る。ポルフィリン症の鑑別診断は、発作中に(例えばクロマトグラフィーおよび蛍光光度法によって)尿、糞便、および/または血漿中のポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALA、PBG)の個々のレベルを測定することで、ポルフィリン症のタイプを判定することを伴ってもよい。AIPの診断は、赤血球PBGデアミナーゼ活性が、正常レベルの50%以下であることを確立することによって確認され得る。変異のDNA検査は、患者およびリスクのある血縁者において実施されてもよい。AIPの診断は、典型的に、特定の原因(caustative)遺伝子変異(例えばHMBS変異)を同定するDNA検査によって確認される。
AIPの急性発作の現行の管理は、入院、症状のモニタリング、および安全でない薬剤の除去を伴う。急性発作の処置は、例えば腹痛、痙攣、脱水/低ナトリウム血症、悪心/嘔吐、頻脈/高血圧、尿貯留/腸閉塞をはじめとする急性症状(sysmptoms)を管理して治療するために、典型的に入院を要する。例えば腹痛は麻薬鎮痛剤で処置してもよく、痙攣は痙攣予防措置で、場合により(多数の抗痙攣薬剤は禁忌であるが)薬剤で処置してもよく、悪心/嘔吐剤は例えばフェノチアジンで処置してもよく、頻脈/高血圧は例えばβ遮断薬で処置してもよい。処置としては、安全でない薬剤の休薬、呼吸機能ならびに筋肉強度および神経学的状態のモニタリングが挙げられる。軽度の発作(例えば不全麻痺または低ナトリウム血症がないもの)は、少なくとも1日あたり300gの静脈内10%グルコースで処置してもよいが、次第にヘミンが即座に投与されるようになってきている。重症の発作は、典型的にはできる限り速やかに静脈内ヘミン(4~14日間にわたり毎日3~4mg/kg)で処置し、IVヘミンの効果が現れるのを待つ間、IVグルコースによって処置する。典型的に、発作はIVヘミンで4日間処置され、IVヘミン投与を待つ間、IVグルコースで処置される。ヘミン投与開始に続いて3~4日以内に、通常は、ALAおよびPBGレベルの低下による、付随する臨床的改善がある。
ヘミン(Panhematin(登録商標)または注射用ヘミン、以前はヘマチンとして知られていた)は、米国内で使用が認可された唯一のヘム製品であり、希少医薬品法下で認可された最初の薬剤である。Panhematin(登録商標)は、加工赤血球(PRBC)に由来するヘミンであり、塩化物リガンドのある第二鉄イオン(ヘムB)を含有するプロトポルフィリンIXである。ヘムは、ポルフィリンの肝臓および/または骨髄合成を制限するように作用する。肝性ポルフィリン症の急性発症がある患者において、ヘミンが症状改善を生じる正確な機序は、解明されていない;しかしその作用は、ポルフィリン/ヘム生合成経路の速度を制限する酵素である、δ-アミノレブリン酸(ALA)シンターゼの(フィードバック)阻害に起因すると思われる。2010年10月のPanhematin(登録商標)製品ラベル、Lundbeck,Inc.を参照されたい。ALAシンターゼの阻害は、ALAおよびPBG、ならびにポルフィリンおよびポルフィリン中間体の産生低下をもたらすはずである。
ヘム製品(例えば、ヘミン)の欠点としては、臨床症状に対する遅延性の効果と、発作再燃の防止ができないことが挙げられる。ヘム(例えば、ヘミン)投与に伴う有害反応としては、静脈炎(例えば、血栓静脈炎)、静脈アクセス障害、抗凝血(または、凝固障害)、血小板減少症、腎機能停止、または鉄過負荷が挙げられ、それは特に、再発性発作のために複数クールのヘミン処置を要する患者において起こり得る。静脈炎を予防するため、再発性発作がある患者では、アクセス用の留置静脈カテーテルが必要である。高用量では、腎障害が起こり得る。まれに報告される副作用としては、発熱、痛み、倦怠感、溶血、アナフィラキシー(anaphalaxis)、および循環虚脱が挙げられる。アンダーソン(Anderson),K.E.,ヒトポルフィリン症の治療と予防へのアプローチ(Approaches to Treatment and Prevention of Human Porphyrias),ポルフィリンハンドブック(The Porphyrin Handbook):ポルフィリンの医学的側面(Medical Aspects of Porphyrins),編者カール(Karl)M.カディッシュ(Kadish),ケビン(Kevin)M.スミス(Smith),ロジャー・ギラード(Roger Guilard)(2003)(以下、アンダーソン)を参照されたい。
ヘムは、静脈内投与のために安定した形態で調製するのが困難である。それは中性pHで不溶性であるが、pH8以上で、ヘム水酸化物として調製され得る。Anderson。Panhematinは、凍結乾燥ヘミン製剤である。凍結乾燥ヘミンが、静脈内投与のために可溶化されると、分解産物が迅速に生成し;これらの分解産物は、点滴部位における一過性抗凝固効果、および静脈炎の原因である。アンダーソン(Anderson)。ヘムアルブミンおよびアルギン酸ヘム(Normosang、ヘミンのヨーロッパバージョン)はより安定しており、血栓静脈炎を引き起こすことが潜在的により少ない。しかしアルギン酸ヘムは、米国では使用が認可されていない。Panheminは、滅菌水でなく30%ヒトアルブミン中で可溶化することで、点滴のために安定化させてもよいが;アルブミンには血管内容積増大効果があり、またヒト血液から単離されることから、治療コストならびに病原体リスクを増大させる。例えば、上記のアンダーソン(Anderson)を参照されたい。
急性発作の成功裏の治療は、再燃を予防せずまたは遅延させない。ヘミンそれ自体が、ヘムオキシゲナーゼ誘導に起因する再発性発作を引き起こし得るか否かという疑問がある。それでもなお、いくつかの地域(特にフランス)では、多重再発性発作がある若い女性が、予防を達成する目的で、ヘミンの毎週投与で治療されている。
肝臓移植に関する限定的経験は、それが成功すれば、AIPの効果的治療法であることを示唆する。ヨーロッパでは、ヒト患者においておよそ12件の移植が実施されており、効果は治癒的でありまたは様々である。肝臓移植は、ALAおよびPBGの正常な排出を復元して、急性発作を予防し得る。例えばダル(Dar),F.S.ら著 Hepatobiliary Pancreat.Dis.Int.,9(1):93-96(2010)を参照されたい。さらにAIP患者の肝臓を別の患者に移植した場合(「ドミノ移植」)、移植を受けた患者がAIPを発症することもある。
急性ポルフィリン症の長期臨床作用には、例えばポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)上昇などの神経毒性効果による、進行性神経障害に起因することもある慢性神経障害性疼痛がある。神経毒性効果は、例えば、改変GABAシグナル伝達および/または鉄媒介性酸化および反応性酸素化学種(ROS)の生成などの毒性ヘム中間体生成と関連付けられ得る。患者は、急性発作に先だってまたはその最中に、神経障害性疼痛に悩まされることもある。高齢患者は、加齢に伴って神経障害性疼痛の増大を経験することもあり、それに対して様々な麻酔薬が典型的に処方される。急性肝性ポルフィリン症患者において、筋電図異常および伝導時間低下が実証されている。注目すべきことに、AIP(PBGデアミナーゼ欠乏)がある未処置非誘導性マウスは進行性運動神経障害を発症し、それは恐らくはポルフィリン前駆体(ALA&PBG)レベルの恒常的上昇、ポルフィリンおよび/またはヘム欠乏に起因する、進行性四頭筋神経軸索変性および損失を引き起こすことが示されている(リンドバーグ(Lindberg)ら著,J.Clin.Invest.,103(8):1127-1134,1999)。急性ポルフィリン症(例えばADP、AIP、HCP、またはVP)患者では、無症候性患者において、および発作間の症候性患者においてポルフィリン前駆体(ALAおよびPBG)レベルが上昇することが多い。したがってALAS1の発現および/または活性レベルを低下させることによる、ポルフィリン前駆体の低下および正常なヘム生合成の回復は、慢性および進行性神経障害の発症を予防および/または最小化することが期待される。治療、例えば長期治療(例えば本明細書に記載されるiRNAによる周期的治療、例えば本明細書に記載される投与計画に従った治療、例えば毎週または隔週の治療)は、ポルフィリン前駆体、ポルフィリン、ポルフィリン産物またはそれらの代謝産物レベルの上昇を有する、急性ポルフィリン症患者におけるALAS1発現を継続的に低下させ得る。このような治療を必要に応じて提供し、個々の患者の症状(例えば疼痛および/または神経障害)を予防し、またはその発生頻度または重症度を低下させ、および/またはポルフィリン前駆体、ポルフィリン、ポルフィリン産物または代謝産物レベルを低下させてもよい。
ポルフィリン症治療のために使用し得る、新規治療薬を同定する必要性が存在する。上で考察したように、ヘム製品(例えば、ヘミン)などの既存の治療薬は、多数の欠点を有する。例えば臨床症状に対するヘミンの影響は、遅延性で、高価であり、副作用を有することもある(例えば血栓静脈炎、抗凝血、血小板減少症、鉄過負荷、腎機能停止)。本明細書で記載されるような新規治療薬は、より迅速に作用し、静脈炎を誘発せず、皮下投与の利便性を提供し、再発性発作を成功裏に予防し、疼痛(例えば慢性神経障害性疼痛)および/または進行性神経障害を予防または改善し、および/またはヘミンと関連付けられている特定の悪影響(例えば鉄過負荷、肝細胞がんのリスク増大)を引き起こさないことで、これらの欠点および満たされていない患者の要求に対処し得る。
AIAがある患者としては、再発性発作を患っている患者、および急性散発型発作を患っている患者が挙げられる。再発性発作を患っている患者(pateints)では、約5~10%が、再発性断続的発作(年間2~3回の発作)または再発性発作(年間>4回の発作)を有する。これらの患者では肝臓移植が検討され、または予防的なヘム(例えば、ヘミン)点滴が投与される見込みが高い。再発性発作患者は、長期の入院、アヘン剤常習癖、および/または静脈網毒性のために、生活の質が劣化する可能性が高い。長期のヘム投与は、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)を誘導し得る。したがって、患者にヘムをやめさせることは困難であり得て、患者によっては、より頻繁な治療が必要である。そのため、臨床医(clinicials)によっては、ヘムの使用を最も重篤な発作に限定する。したがって、耐容性がより良い、便利で効果的な予防法および治療法に対する、満たされていない必要性がある。
急性発作を患っている患者に対して、臨床ガイドラインは、できるだけ早期のヘムの投与を提言する。しかし、診断および即時可用薬物の不足の難題を考えると、投与は遅延することもある。ヘム(例えば、ヘミン)の効果の緩慢な開始と、その乏しい耐容性は、改善までの時間を遅延させる。ヘムの投与後でさえも、重篤な腹痛の持続は、数日間にわたる患者へのアヘン剤投与を要求し得る。
ヘムの投与遅延または増悪因子への継続的曝露は、運動神経障害および付随症状(例えば、脱力感、不全麻痺)をはじめとする、より重篤な合併症をもたらし得る。呼吸不全および麻痺は、重症例で起こり得る。神経学的症状からの回復は、解決するためにはるかにより長い時間がかかり得る。したがって、急性発作の文脈で、より迅速な作用開始とより良い耐容性を有する治療法が必要である。
mRNAサイレンシングのための標的としてのALAS1の薬理学的妥当性評価は、少なくとも以下の知見によって支持される:ALAS1 mRNAは、発作中に強力に上方制御される;パンヘマチンは、ALAS-1を下方制御する;および培養中の肝細胞へのヘムの添加は、ALAS-1 mRNAの低下をもたらす。いくつかの知見はまた、肝臓を標的とすることで、ALAS1 mRNAの抑制が達成され得ることを示唆する。例えば、肝臓移植は、治癒的であり;肝臓由来代謝産物は、発作を駆動することが示されている(例えば、Dar et al.Hepatobiliary Pancreat Dis Int.9:93-6(2010);Dowman et al.Ann Intern Med 154:571-2(2011);および Wu et al.Genes Dev 23:2201-2209(2009)を参照されたい。したがって、iRNA組成物を使用する、例えば、肝臓中のALAS1発現の低下が、ポルフィリン症を治療するために使用され得る。特定の実施形態では、iRNA組成物は、ポルフィリン症の予防法および急性期治療のために使用され得る。例えば、iRNA組成物が再発性発作状況で予防的に使用されて、ALAS1発現の長期または慢性的抑制が誘導され得て(ALA/PBGの長期または慢性的抑制がもたらされる)、ひいては発作を駆動する再発性ALAS1上方制御が鈍らされる。このような予防的治療は、発作の回数および重症度を低下させ得る。急性発作状況においては、iRNA組成物の投与は、例えば、ALA/PBGレベルを低下させることで、急性発作を治療し得る。
本開示は、ALAS1遺伝子の発現を調節するための方法およびiRNA組成物を提供する。特定の実施形態では、ALAS1特異的iRNAを使用して、ALAS1の発現が低下または阻害され、その結果ALAS1遺伝子の発現低下がもたらされる。ALAS1遺伝子の発現低下は、1つまたは複数のポルフィリン前駆体、ポルフィリン、またはポルフィリン産物または代謝産物レベルを低下させてもよい。ALAS1遺伝子の発現低下、ならびに関連した1つまたは複数のポルフィリン前駆体および/またはポルフィリンレベルの低下は、例えばポルフィリン症などのALAS1発現関連障害を治療するのに有用であり得る。
本明細書で取り上げる組成物のiRNAは、30ヌクレオチド長以下、すなわち15から30ヌクレオチド長、一般に19~24ヌクレオチド長の領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み、その領域は、ALAS1遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である(本明細書で「ALAS1特異的iRNA」とも称される)。このようなiRNAの使用は、例えばALAデヒドラターゼ欠乏ポルフィリン症(Dossポルフィリン症または鉛ポルフィリン症(plumboporphyria)としても知られる)または急性間欠性ポルフィリン症のようなポルフィリン症などの、哺乳類におけるALAS1発現に伴う病態と関係があるとされる遺伝子のmRNA標的化分解を可能にする。非常に低い投与量のALAS1特異的iRNAは、特異的かつ効率的にRNAiを媒介して、ALAS1遺伝子発現の顕著な阻害をもたらし得る。ALAS1を標的にするiRNAは、特異的かつ効率的にRNAiを媒介して、例えば細胞ベースのアッセイ中で、ALAS1遺伝子発現の顕著な阻害をもたらし得る。したがってこれらのiRNAをはじめとする方法および組成物は、ポルフィリン症(例えば、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)、ALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(Dossポルフィリン症)、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、先天性赤芽球増殖性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症(prophyria cutanea tarda)、遺伝性コプロポルフィリン症(コプロポルフィリン症)、異型ポルフィリン症、赤芽球増殖性プロトポルフィリン症(EPP)、および乳児期一過性赤血球ポルフィリン症)などのALAS1発現関連病理過程を治療するのに有用である。
以下の説明は、ALAS1遺伝子の発現を阻害するためのiRNA含有組成物をどのように製造し使用するか、ならびにこの遺伝子の発現によって引き起こされ、または調節される、疾患および障害を治療するための組成物および方法を開示する。本発明で取り上げる医薬組成物の実施形態は、薬学的に許容できる担体と共に、30ヌクレオチド長以下、一般に19~24ヌクレオチド長の領域を含んでなるアンチセンス鎖を有するiRNAを含み、その領域は、ALAS1遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である。本発明で取り上げる組成物実施形態はまた、30ヌクレオチド長以下、一般に19~24ヌクレオチド長であり、ALAS1遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である相補性領域を有する、アンチセンス鎖を有するiRNAも含む。
したがっていくつかの態様では、ALAS1 iRNAと薬学的に許容できる担体とを含有する医薬組成物、組成物を使用してALAS1遺伝子の発現を阻害する方法、および医薬組成物を使用してALAS1発現関連障害を治療する方法が、本発明で取り上げられる。
I.定義
便宜のため、明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で使用される、特定の用語と語句の意味を以下に提供する。本明細書の他の部分における用法と、本節で提供されるその定義との間に明白な矛盾がある場合、本節の定義が優先されるものとする。
「G」、「C」、「A」、「T」、および「U」は、通常、それぞれ塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、チミジン、およびウラシルを含有するヌクレオチドをそれぞれ表す。しかし「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語はまた、以下でさらに詳述されるような修飾ヌクレオチドにも、または代替置換部分にも言及し得るものと理解される。当業者は、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルが、このような置換部分を有するヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチの塩基対形成特性を実質的に変更することなしに、その他の部分によって置き換えられてもよいことを十分承知している。制限を意図しない例として、その塩基としてイノシンを含んでなるヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対形成してもよい。したがってウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明で取り上げるdsRNAのヌクレオチド配列中で、例えばイノシンを含有するヌクレオチドで置き換えてもよい。別の実施例では、アデニンおよびシトシンは、オリゴヌクレオチドのどこでも、それぞれグアニンおよびウラシルで置換され得て、標的mRNAとG-Uゆらぎ塩基対を形成する。このような置換部分を含有する配列は、本発明で取り上げられる組成物および方法に適する。
本明細書の用法では、「ALAS1」(ALAS-1;δ-アミノレブリン酸シンターゼ1;δ-ALAシンターゼ1;5’-アミノレブリン酸シンターゼ1;ALAS-H;ALASH;ALAS-N;ALAS3;EC2.3.1.37;非特異的ミトコンドリア性5-アミノレブリン酸シンターゼ;ALAS;MIG4;OTTHUMP00000212619;OTTHUMP00000212620;OTTHUMP00000212621;OTTHUMP00000212622;転移誘起タンパク質4;EC2.3.1としてもまた知られている)は、哺乳類ヘム生合成経路中の第1の酵素であり、典型的に律速酵素である、核がコードするミトコンドリア酵素を指す。ALAS1は、グリシンのスクシニルCoAとの縮合を触媒して、δ-アミノレブリン酸(ALA)を生成する。ヒトALAS1遺伝子は、広範に発現されて、染色体3p21.1上に見られ、典型的に640個のアミノ酸の配列をコードする。対照的に、イソ酵素をコードするALAS-2遺伝子は、赤血球中のみで発現されて、Xp11.21染色体(chromoxome)上に見られ、典型的に550個のアミノ酸の配列をコードする。本明細書の用法では、「ALAS1タンパク質」は、あらゆる種(例えばヒト、マウス、非ヒト霊長類)からのALAS1のあらゆるタンパク質変種、ならびにALAS1活性を保持するそのあらゆる変異体および断片を意味する。同様に、「ALAS1転写物」は、あらゆる種(例えばヒト、マウス、非ヒト霊長類)からのALAS1のあらゆる転写変異体を指す。ヒトALAS1mRNA転写物の配列は、NM_000688.4(図3Aおよび図3B;配列番号1)にある。別のヒトALAS1mRNA転写物の配列は、NM_000688.5(図4Aおよび図4B;配列番号382)にある。コードされた成熟ALAS1タンパク質レベルは、ヘムによって調節され、高レベルのヘムがミトコンドリア中の成熟酵素を下方制御する一方で、低レベルのヘムは上方制御する。同一タンパク質をコードする、選択的スプライスによる複数の変種が同定されている。
本明細書の用法では、「iRNA」、「RNAi」、「iRNA剤」、または「RNAi剤」という用語は、本明細書で定義されるRNAを含有し、例えばRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を通じて、RNA転写物の標的切断を媒介する作用物質を指す。一実施形態では、本明細書に記載されるiRNAは、ALAS1発現の阻害をもたらす。ALAS1発現の阻害は、ALAS1 mRNAレベルの低下、またはALAS1タンパク質レベルの低下に基づいて評価されてもよい。本明細書の用法では、「標的配列」は、一次転写産物のRNAプロセシング産物であるmRNAをはじめとする、ALAS1遺伝子の転写中に形成される、mRNA分子のヌクレオチド配列の連続部分を指す。配列の標的部分は、その部分またはその近辺における、iRNA指向切断のための基質としての役割を果たすのに、少なくとも十分長い。例えば標的配列は、例えば15~30ヌクレオチド長など、一般に9~36ヌクレオチド長であり、その間の部分的な範囲を全て含む。非限定的例として、標的配列は、15~30ヌクレオチド、15~26ヌクレオチド、15~23ヌクレオチド、15~22ヌクレオチド、15~21ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、15~19ヌクレオチド、15~18ヌクレオチド、15~17ヌクレオチド、18~30ヌクレオチド、18~26ヌクレオチド、18~23ヌクレオチド、18~22ヌクレオチド、18~21ヌクレオチド、18~20ヌクレオチド、19~30ヌクレオチド、19~26ヌクレオチド、19~23ヌクレオチド、19~22ヌクレオチド、19~21ヌクレオチド、19~20ヌクレオチド、20~30ヌクレオチド、20~26ヌクレオチド、20~25ヌクレオチド、20~24ヌクレオチド、20~23ヌクレオチド、20~22ヌクレオチド、20~21ヌクレオチド、21~30ヌクレオチド、21~26ヌクレオチド、21~25ヌクレオチド、21~24ヌクレオチド、21~23ヌクレオチド、または21~22ヌクレオチドであり得る。
本明細書の用法では、「配列を含んでなる鎖」という用語は、標準ヌクレオチド命名法を使用して言及される配列によって記載される、ヌクレオチド鎖を含んでなるオリゴヌクレオチドを指す。
本明細書の用法では、特に断りのない限り、「相補的」という用語は、当業者には理解されるであろうように、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を記述するのに使用される場合、第1のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、特定条件下で、第2のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズして、二本鎖構造を形成する能力を指す。このような条件は、例えば、400mMのNaCl、40mMのPIPES、pH6.4、1mMのEDTA、50℃または70℃で12~16時間と、それに続く洗浄を含んでもよい、ストリンジェントな条件であり得る。生物中で遭遇し得る生理学的に妥当な条件などのその他の条件が、適用されてもよい。当業者は、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終用途に従って、2つの配列の相補性試験に最適な条件のセットを判定することができる。
例えば本明細書に記載されるdsRNA内などのiRNA内の相補性配列としては、第1のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、第2のヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの、片方または双方のヌクレオチド配列全長にわたる、塩基対合が挙げられる。このような配列は、本明細書で互いに「完全に相補的」と称し得る。しかし本明細書で、第1の配列が第2の配列に対して「実質的に相補的」と称される場合、2つの配列は完全に相補的であり得て、またはそれらは例えばRISC経路を通じた遺伝子発現阻害など、それらの究極的用途に最も妥当な条件下でハイブリダイズする能力を保持しながら、最高30塩基対の二本鎖のハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の、しかし一般的には5、4、3または2つ以下のミスマッチ塩基対を形成してもよい。しかしハイブリダイゼーションに際して、1つまたは複数の一本鎖オーバーハングを形成するように、2つのオリゴヌクレオチドがデザインされる場合、このようなオーバーハングは、相補性の判定に関してミスマッチと見なされないものとする。例えば21ヌクレオチド長の1つのオリゴヌクレオチドと、23ヌクレオチド長の別のオリゴヌクレオチドとを含んでなるdsRNAがあって、より長いオリゴヌクレオチドが、より短いオリゴヌクレオチドと完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含んでなる場合、それは本明細書に記載される目的で、なおも「完全に相補的」と称されてもよい。
「相補的」配列は、本明細書の用法では、それらのハイブリダイズ能力に関する上の要件が満たされる限りは、非ワトソン・クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドから生成される塩基対もまた含み、またはそれから完全に形成され得る。このような非ワトソン・クリック塩基対としては、G:Uゆらぎ塩基対またはフーグスティーン型塩基対が挙げられるが、これに限定されるものではない。
「相補的」、「完全に相補的」、および「実質的に相補的」という用語は、本明細書において、それらの使用状況から理解されるであろうように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖間で、またはiRNA剤のアンチセンス鎖と標的配列間で、マッチする塩基について使用され得る。
本明細書の用法では、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部と実質的に相補的」なポリヌクレオチドは、対象mRNA(例えばALAS1タンパク質をコードするmRNA)の連続部分と実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えばポリヌクレオチドは、配列が、ALAS1をコードするmRNAの非中断部分と実質的に相補的であれば、ALAS1 mRNAの少なくとも一部と相補的である。例えばポリヌクレオチドは、配列が、ALAS1をコードするmRNAの非中断部分と実質的に相補的であれば、ALAS1 mRNAの少なくとも一部と相補的である。
「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、本明細書の用法では、標的RNAに関して「センス」および「アンチセンス」配向を有するとされる、2本の逆平行および実質的に相補的な核酸鎖を含んでなる、ハイブリダイズ二本鎖領域を有する、RNA分子または分子複合体を含むiRNAを指す。二本鎖領域は、例えばRISC経路を通じた、所望の標的RNAの特異的分解を可能にするあらゆる長さであり得るが、例えば15~30塩基対の長さなどの典型的に9~36塩基対の長さの範囲である。9~36塩基対の間の二本鎖を考察すると、二本鎖は、例えば9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または36などのこの範囲内のあらゆる長さ、および15~30塩基対、15~26塩基対、15~23塩基対、15~22塩基対、15~21塩基対、15~20塩基対、15~19塩基対、15~18塩基対、15~17塩基対、18~30塩基対、18~26塩基対、18~23塩基対、18~22塩基対、18~21塩基対、18~20塩基対、19~30塩基対、19~26塩基対、19~23塩基対、19~22塩基対、19~21塩基対、19~20塩基対、20~30塩基対、20~26塩基対、20~25塩基対、20~24塩基対、20~23塩基対、20~22塩基対、20~21塩基対、21~30塩基対、21~26塩基対、21~25塩基対、21~24塩基対、21~23塩基対、または21~22塩基対をはじめとするが、これに限定されるものではない、その間のあらゆる部分的範囲であり得る。ダイサーおよび類似酵素を用いたプロセッシングによって、細胞中で作成されるdsRNAは、一般に19~22塩基対の範囲の長さである。dsDNAの二本鎖領域の1本の鎖は、標的RNAの領域と実質的に相補的な配列を含んでなる。二本鎖構造を形成する2本の鎖は、少なくとも1つの自己相補的領域を有する単一RNA分子に由来し得て、または2つ以上の別個のRNA分子から生成され得る。二本鎖領域が、単一分子の2本の鎖から生成される場合、分子は、二本鎖構造を形成する1本の鎖の3’末端とそれぞれのその他の鎖の5’末端との間のヌクレオチドの一本鎖(本明細書で「ヘアピンループ」と称される)によって隔てられる、二本鎖領域を有し得る。ヘアピンループは、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを含んでなり得て;いくつかの実施形態では、ヘアピンループは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも23以上の不対ヌクレオチドを含んでなり得る。dsRNAの2本の実質的に相補的な鎖が別のRNA分子によって構成されている場合、これらの分子は、必ずしもそうである必要はないが、共有結合的に連結され得る。2本の鎖が、ヘアピンループ以外の手段によって共有結合的に連結される場合、結合構造は「リンカー」と称される。「siRNA」という用語はまた、上述したようなdsRNAに言及するために、本明細書で使用される。
別の実施形態では、iRNA剤は、標的mRNAを阻害するために、細胞または生物に導入された「一本鎖siRNA」であってもよい。一本鎖RNAi剤は、RISCエンドヌクレアーゼアルゴノート2を結合し、それは次に、標的mRNAを切断する。一本鎖siRNAは、一般に15~30個のヌクレオチドであり、化学的に修飾されている。一本鎖siRNAのデザインおよび試験は、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第8,101,348号明細書、およびリマ(Lima)ら著,(2012)セル(Cell)150:883-894に記載される。本明細書に記載されるアンチセンスヌクレオチド配列のいずれでも(例えば表2、3、6、7、8、9、14、15、18、および20または表21~40で提供される配列)、本明細書に記載される一本鎖siRNAとして使用してもよく、またはリマ(Lima)ら著,(2012)セル(Cell)150:883-894に記載される方法によって化学的に修飾して使用してもよい。
別の態様では、RNA剤は「一本鎖アンチセンスRNA分子」である。一本鎖アンチセンスRNA分子は、標的mRNA内の配列と相補的である。一本鎖アンチセンスRNA分子は、mRNAと塩基対を形成して翻訳機構を物理的に妨害することにより、化学量論的様式で翻訳を阻害し得る。ディアス(Dias),N.ら著,(2002)Mol Cancer Ther 1:347-355を参照されたい。代案としては、一本鎖アンチセンス分子は、標的とハイブリダイズ(hydridizing)して、RNaseH切断事象を通じて標的を切断することで、標的mRNAを阻害する。一本鎖アンチセンスRNA分子は、約10~約30ヌクレオチド長であってもよく、標的配列と相補的な配列を有する。例えば一本鎖アンチセンスRNA分子は、例えば表2、3、6、7、8、9、14、15、18、および20または表21~40のいずれか1つで提供される配列などの、本明細書に記載されるアンチセンスヌクレオチド配列のいずれか1つからの、少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上の連続ヌクレオチドである配列を含んでなってもよい。
当業者は、「RNA分子」または「リボ核酸分子」という用語が、天然に発現されまたは見られるRNA分子だけでなく、本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知の、1つまたは複数のリボヌクレオチド/リボヌクレオシド類似体または誘導体を含んでなる、RNAの類似体および誘導体もまた包含することを認識する。厳密に言えば「リボヌクレオシド」は、ヌクレオシド塩基とリボース糖を含み、「リボヌクレオチド」は、1、2または3個のリン酸塩部分があるリボヌクレオシドである。しかし「リボヌクレオシド」および「リボヌクレオチド」という用語は、本明細書の用法では同等物と見なし得る。RNAは、例えば本明細書で以下に記載されるように、核酸塩基構造中で、リボース構造中で、またはリボースリン酸主鎖構造中で修飾され得る。しかしリボヌクレオシド類似体または誘導体を含んでなる分子は、二本鎖を形成する能力を保たなくてはならない。非限定的実施例として、RNA分子はまた、2’-O-メチル修飾ヌクレオシド(nucleostide)、5’ホスホロチオエート基を含んでなるヌクレオシド、コレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結する末端ヌクレオシド、ロックドヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、非環式ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオシド、2’-アミノ修飾ヌクレオシド、2’-アルキル修飾ヌクレオシド、モルホリノヌクレオシド、ホスホロアミダートまたは非天然塩基包含ヌクレオシド、またはそのあらゆる組み合わせをはじめとするが、これに限定されるものではない、少なくとも1つの修飾リボヌクレオシドを含み得る。代案としては、RNA分子は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20以上の、最高でdsRNA分子の全長の修飾リボヌクレオシドを含んでなり得る。修飾は、RNA分子中のこのような複数の各修飾リボヌクレオシドで同じでなくてもよい。一実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物中での使用が検討される修飾RNAは、ペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)であり、それは必要な二本鎖構造を形成する能力を有し、例えばRISC経路を通じた標的RNAの特異的分解を可能にし、またはそれを媒介する。
一態様では、修飾リボヌクレオシドはデオキシリボヌクレオシドを含む。このような場合、iRNA剤は、例えばデオキシヌクレオシドオーバーハング、またはdsRNAの二本鎖部分内の1つまたは複数のデオキシヌクレオシドをはじめとする、1つまたは複数のデオキシヌクレオシドを含んでなり得る。特定の実施形態では、RNA分子は、例えば、片方または双方の鎖内で、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%以上(しかし100%ではない)のデオキシリボヌクレオシドのデオキシリボヌクレオシド(deoxyribonucleoses)百分率を構成する。その他の実施形態では、「iRNA」という用語は、二本鎖DNA分子(例えば、天然二本鎖DNA分子または100%デオキシヌクレオシド含有DNA分子)を包含しない。一態様では、RNA干渉剤は、標的RNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を誘導する、一本鎖RNAを含む。理論による拘束は望まないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られているIII型エンドヌクレアーゼによって、siRNAに分解される(シャープ(Sharp)ら著、ジーンズアンドデベロップメント(Genes Dev.)、2001年、第15巻、p.485)。リボヌクレアーゼ-III様酵素であるダイサーは、dsRNAをプロセスして、特徴的な2塩基3’オーバーハングがある19~23塩基対の短い干渉RNAにする(バーンシュタイン(Bernstein)ら著、2001年、ネイチャー(Nature)、第409巻、p.363)。次にsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)に組み込まれ、1つまたは複数のヘリカーゼがsiRNA二本鎖を巻き戻し、相補的アンチセンス鎖が、標的認識を誘導できるようにする(ニカネン(Nykanen)ら著、2001年、セル(Cell)、第107巻、p.309)。適切な標的mRNAとの結合に際して、RISC内の1つまたは複数のエンドヌクレアーゼが標的を切断し、サイレンシングを誘発する(エルバシャー(Elbashir)ら著、2001年、ジーンズアンドデベロップメント(Genes Dev.)、第15巻、p.188)。したがって一態様では、本発明は、RISC複合体形成を促進して、標的遺伝子のサイレンシングをもたらす、一本鎖RNAに関する。
本明細書の用法では、「ヌクレオチドオーバーハング」という用語は、例えばdsRNAなどのiRNAの二本鎖構造から突出する、少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。例えばdsRNAの1本の鎖の3’末端がその他の鎖の5’末端を越えて伸び、またはその逆の場合、ヌクレオチドオーバーハングがある。dsRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドのオーバーハングを含んでなり得て;代案としては、オーバーハングは、少なくとも2つのヌクレオチド、少なくとも3つのヌクレオチド、少なくとも4つのヌクレオチド、少なくとも5つ以上のヌクレオチドを含んでなり得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド/ヌクレオシドをはじめとする、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含んでなり得て、またはそれからなる。オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはそのあらゆる組み合わせの上にあってもよい。さらにオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンスまたはセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端、または双方の末端上に存在し得る。
一実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端および/または5’末端に、1~10ヌクレオチドのオーバーハングを有する。一実施形態では、dsRNAのセンス鎖は、3’末端および/または5’末端に、1~10ヌクレオチドのオーバーハングを有する。別の実施形態では、オーバーハング中の1つまたは複数のヌクレオチドは、チオリン酸ヌクレオシドで置換されている。
本明細書でdsRNAに関して用いられる「平滑化された」または「平滑末端化された」という用語は、dsRNAの所与の末端に不対ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体がない、すなわちヌクレオチドオーバーハングがないことを意味する。dsRNA末端の片方または双方が、平滑化され得る。dsRNAの双方の末端が平滑化されている場合、dsRNAは平滑末端化されたと言われる。明確化のために言うと、「平滑末端化された」dsRNAは、双方の末端が平滑化されたdsRNAであり、すなわち分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングがない。ほとんどの場合、このような分子は、その全長にわたって二本鎖である。
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」という用語は、例えば標的配列と実質的に相補的な領域を含む、dsRNAなどのiRNA鎖を指す。本明細書の用法では、「領域相補性」という用語は、例えば本明細書で定義される標的配列などの配列と、実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を指す。相補性領域が標的配列と完全に相補的でない場合、分子の内部または末端領域にミスマッチがあってもよい。一般に、最も耐容されるミスマッチは、例えば5’および/または3’末端の5、4、3、または2ヌクレオチド内などの末端領域にある。
「センス鎖」または「パッセンジャー鎖」という用語は、本明細書の用法では、本明細書で定義されるアンチセンス鎖の領域と、実質的に相補的な領域を含むiRNA鎖を指す。
本明細書の用法では、一実施形態では、「SNALP」という用語は、安定した核酸-脂質粒子を指す。SNALPは、iRNAなどの核酸またはそれからiRNAが転写されるプラスミドを含んでなる還元性水性内部を覆う、脂質の小胞を意味する。SNALPは、例えば米国特許出願公開第20060240093号明細書、米国特許出願公開第20070135372号明細書、および国際公開第2009082817号パンフレットに記載される。これらの出願は、その全体が参照により援用される。
「細胞に導入する」は、iRNAに関する場合は、当業者には理解されるように、細胞中への取り込みまたは吸収を容易にし、またはもたらすことを意味する。iRNAの吸収または取り込みは、助力を受けない拡散性または活性細胞過程を通じて、または助剤または装置によって生じ得る。この用語の意味は、生体外の細胞に限定されず;iRNAはまた、細胞が生きている生物の一部である場合にも、「細胞に導入され」得る。このような場合、細胞への導入は、生物への送達を含む。例えば生体内送達のために、iRNAを組織部位に注射し、または全身投与し得る。生体内送達はまた、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,032,401号明細書および米国特許第5,607,677号明細書、および米国特許公開第2005/0281781号明細書に記載されるものなどのβ-グルカン送達系によることもできる。細胞への生体外導入は、電気穿孔およびリポフェクションなどの当該技術分野で公知の方法を含む。さらなるアプローチは、本明細書で以下に記載され、または当該技術分野で公知である。
本明細書の用法では、「の発現を調節する」という用語は、対照細胞中のALAS1の発現と比較した、本明細書に記載されるiRNA組成物で処置された細胞中におけるALAS1遺伝子発現の少なくとも部分的「阻害」または部分的「活性化」を指す。対照細胞としては、未処置細胞、または非標的化対照iRNAで処置された細胞が挙げられる。
「活性化する」、「高める」、「の発現を上方制御する」、「の発現を増大させる」などの用語は、それらがALAS1遺伝子に言及する限りにおいて、本明細書で、その中でALAS1遺伝子が転写される、第1の細胞または細胞群から単離されまたはその中で検出されてもよい、ALAS1 mRNA量の増大によって顕在化する、ALAS1遺伝子発現の少なくとも部分的活性化に言及し、第1の細胞または細胞群は、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処置されていない第2の細胞または細胞群(対照細胞)と比較して、ALAS1遺伝子の発現が増大するように処置されている。
一実施形態では、ALAS1遺伝子の発現は、本明細書に記載されるiRNAの投与によって、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%活性化される。いくつかの実施形態では、ALAS1遺伝子は、本発明で取り上げるiRNA投与によって、少なくとも約60%、70%、または80%活性化される。いくつかの実施形態では、ALAS1遺伝子の発現は、本明細書に記載されるiRNAの投与によって、少なくとも約85%、90%、または95%以上活性化される。いくつかの実施形態では、ALAS1遺伝子発現は、未処置細胞中における発現と比較して、本明細書に記載されるiRNAで処置された細胞中で、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍以上増大される。小型dsRNAによる発現の活性化は、例えば、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、リ(Li)ら著,2006年、米国アカデミー科学紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A).103:17337-42、および米国特許第20070111963号明細書および米国特許第2005226848号明細書に記載される。
「発現停止する」、「の発現を阻害する」、「の発現を下方制御する」、「の発現を抑制する」などの用語は、それらがALAS1遺伝子に言及する限りにおいて、本明細書で、例えばALAS1 mRNA発現、ALAS1タンパク質発現、またはALAS1遺伝子発現と機能的に連結した別のパラメータ(例えば血漿または尿中のALAまたはPBG濃度)に基づく評価による、ALAS1遺伝子の発現の少なくとも部分的抑制に言及する。例えばALAS1発現の阻害は、その中でALAS1遺伝子が転写され、対照と比較してALAS1遺伝子発現が阻害されるように処置された、第1の細胞または細胞群から単離されまたはその中で検出されてもよい、ALAS1 mRNA量の低下によって顕在化してもよい。対照は、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、そのように処置されていない、第2の細胞または細胞群(対照細胞)であってもよい。阻害の程度は、通常は、例えば、
のように、対照レベルの百分率として表される。
代案としては、阻害の程度は、例えばALAS1遺伝子によってコードされるタンパク質の量、または1つまたは複数のポルフィリンレベルなどの、ALAS1遺伝子発現と機能的に連結したパラメータ低下の観点から示されてもよい。ALAS1遺伝子の発現と機能的に連結したパラメータの低下は、同様に、対照レベルの百分率として表されてもよい。原則的に、ALAS1遺伝子サイレンシングは、構成的にまたはゲノム工学によって、ALAS1を発現するあらゆる細胞中で、あらゆる適切なアッセイによって判定してもよい。しかし所与のiRNAが、ALAS1遺伝子発現を特定程度に阻害するかどうか、ひいては本発明に包含されるかどうかを判定するために、参照が必要な場合は、下の実施例で提供されるアッセイが、このような参照になるであろう。
例えば場合によっては、ALAS1遺伝子の発現は、本発明で取り上げるiRNAの投与によって、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%抑制される。いくつかの実施形態では、ALAS1遺伝子は、本発明で取り上げるiRNA投与によって、少なくとも約60%、65%、70%、75%、または80%抑制される。いくつかの実施形態では、ALAS1遺伝子の発現は、本明細書に記載されるiRNAの投与によって、少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%以上抑制される。
本明細書の用法では、ALAS1発現の文脈で、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、「処置」などの用語は、ALAS1発現に関連した病理過程(例えばポルフィリン症など、ポルフィリンにまたはポルフィリン経路欠陥に伴う病理過程)の軽減または緩和を指す。本発明の文脈では、それが(ALAS1発現に関連した病理過程以外の)以下に列挙される別の病状のいずれかに関する限りにおいて、「処置する」、「処置」などという用語は、このような病状に伴う少なくとも1つの症状を予防、軽減または緩和すること、またはこのような病状の進行または予期される進行を遅延または逆転させることを意味する。例えば本明細書で取り上げる方法は、ポルフィリン症を治療するのに用いた場合に、ポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状(例えば疼痛)を緩和または予防し、ポルフィリン症に伴う発作の重症度または発生頻度を低下させ、憎悪条件への曝露に際してポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状の発作が起きる可能性を低下させ、ポルフィリン症に伴う発作を短縮し、および/またはポルフィリン症に伴う病状(例えば肝細胞がんまたは神経障害(例えば進行性神経障害))を発症するリスクを低下させるのに役立ってもよい。したがって、文脈上明白に別段の記載がない限り、「治療する」、「治療」などという用語は、例えばALAS1発現関連障害および/または障害症状の予防などの予防法を包含することが意図される。
「低下させる」とは、疾病マーカまたは症状の文脈で、このようなレベルの統計的にまたは臨床的に有意な低下を意味する。低下は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%以上であり得て、典型的に、このような疾患がない個人の正常範囲内にあると、一般に認められたレベルに低下する。
本明細書の用法では「治療有効量」および「予防有効量」という語句は、ALAS1発現に関連した治療、予防、または病理過程管理において、治療効果を提供する量を指す。治療的に有効な特定量は、通常の開業医によって容易に判定され得て、例えば病理過程タイプ、患者の病歴および年齢、病理過程段階、およびその他の薬剤の投与などの、当該技術分野で公知の要因次第で変動してもよい。
本明細書の用法では、「医薬組成物」は、薬理学的有効量のiRNAと薬学的に許容できる担体とを含んでなる。本明細書の用法では、「薬理学的有効量」、「治療有効量」または単に「有効量」とは、意図される薬理学的、治療的または予防的結果を生じるのに効果的なiRNAの量を指す。例えばALAS1発現関連疾患を治療する方法において(例えばポルフィリン症を治療する方法において)、有効量としては、ポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状を低下させるのに有効な量、発作発生頻度を低下させるのに有効な量、増悪因子への曝露に際して起きるポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状の発作可能性を低下させるのに有効な量、またはポルフィリン症に伴う病状(例えば神経障害(例えば進行性神経障害)、肝細胞がん)を発症するリスクを低下させるのに有効な量が挙げられる。例えば疾患または障害に伴う測定可能パラメータに少なくとも10%の低下があれば所与の臨床治療が効果的と見なされる場合、その疾患または障害のための治療薬の治療有効量は、パラメータに少なくとも10%の低下をもたらすのに必要な量である。例えばALAS1を標的にするiRNAの治療有効量は、ALAS1タンパク質レベルを例えば少なくとも10%、20%、30%、40%または50%などのあらゆる測定可能量に低下させ得る。
「薬学的に許容できる担体」という用語は、治療薬投与のための担体を指す。このような担体としては、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。用語は、細胞培養培地を明確に除外する。経口的に投与される薬剤では、薬学的に許容可能な担体としては、薬学的に許容可能な賦形剤などの不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、平滑剤、甘味剤、着香剤、着色剤および保存料が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、および乳糖が挙げられる一方で、コーンスターチおよびアルギン酸が適切な崩壊剤である。結合剤としては、デンプンおよびゼラチンが挙げられる一方で、存在する場合、平滑剤は、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸または滑石である。必要に応じて、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングして、胃腸管内の吸収を遅延させてもよい。製剤に含まれる作用物質については、本明細書で以下にさらに詳しく説明する。
数値または数値範囲に言及する場合、「約」という用語は、言及される数値または数値範囲が、実験的変動内(または統計学的実験誤差内)の近似値であることを意味し、したがって数値または数値範囲は、例えば記述される数または数値範囲から、1%~15%変動してもよい。
II.iRNA剤
本明細書に記載されるのは、ALAS1遺伝子の発現を阻害するiRNA剤である。一実施形態では、iRNA剤は、細胞または対象中で(例えばポルフィリン症を有するヒトなどの哺乳類中で)、ALAS1遺伝子発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を含み、dsRNAは、ALAS1遺伝子の発現において形成されるmRNAの少なくとも一部と相補的な相補性領域を有するアンチセンス鎖を含み、相補性領域は30ヌクレオチド長以下、一般に19~24ヌクレオチド長であり、dsRNAは、ALAS1遺伝子を発現する細胞との接触に際して、例えばPCRまたは分枝DNA(bDNA)ベースの方法による、またはウエスタンブロットなどのタンパク質ベースの方法によるアッセイで、ALAS1遺伝子の発現を少なくとも10%阻害する。一実施形態ではiRNA剤は、細胞または哺乳類中で、ALAS1遺伝子の発現を活性化する。COS細胞、HeLa細胞、初代培養肝細胞、HepG2細胞、初代培養細胞などの細胞培養中の、または対象からの生物学的サンプル中のALAS1遺伝子の発現は、bDNAまたはTaqManアッセイなどによってALAS1 mRNAレベルを測定することで、または例えば、ウエスタンブロット法またはフローサイトメトリー技術を使用して、免疫蛍光分析などによってタンパク質レベルを測定することで、アッセイし得る。
dsRNAは2本のRNA鎖を含み、それは十分に相補的であり、その中でdsRNAが使用される条件下でハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。dsRNAの1本の鎖(アンチセンス鎖)は、標的配列と実質的に相補的であり、一般に完全に相補的である、相補性領域を含む。標的配列は、ALAS1遺伝子の発現中に形成されるmRNAの配列に由来し得る。他の鎖(センス鎖)は、適切な条件下で組み合わせると、2本の鎖がハイブリダイズして二本鎖構造を形成するように、アンチセンス鎖に相補的な領域を含む。一般に二本鎖構造は、15~30、より一般的には18~25、なおもより一般的には19~24、最も一般的には19~21塩基対の長さである。同様に、標的配列との相補性領域は、15~30、より一般的には18~25、なおもより一般的には19~24、最も一般的には19~21ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、dsRNAは、15~20ヌクレオチド長であり、別の実施形態では、dsRNAは25~30ヌクレオチド長である。当業者は認識するであろうように、切断標的とされるRNAの標的領域は、ほとんどの場合、より大型のRNA分子の一部であり、それはmRNA分子であることが多い。該当する場合、mRNA標的の「部分」は、RNAi指向切断(すなわちRISC経路を通じた切断)の基質として十分長い、mRNA標的の連続配列である。9塩基対程度に短い二本鎖を有するdsRNAは、状況によっては、RNAi指向RNA切断を媒介し得る。ほとんどの場合、標的は、少なくとも15ヌクレオチド長、例えば15~30ヌクレオチド長である。
当業者はまた、二本鎖領域が、例えば15~30塩基対など、例えば9~36塩基対の二本鎖領域などのdsRNAの主要機能部分であることを認識するであろう。したがって一実施形態では、それがプロセッシングされて、例えば所望のRNAを切断標的とする15~30塩基対などの機能的二本鎖になる限りでは、30塩基対を超える二本鎖領域を有するRNA分子またはRNA分子複合体は、dsRNAである。したがって当業者は、一実施形態では、今度は、miRNAがdsRNAであることを認識するであろう。別の実施形態では、dsRNAは天然miRNAでない。別の実施形態では、ALAS1発現を標的化するのに有用なiRNA剤は、より大型のdsRNAの切断によって標的細胞中で生じない。
本明細書に記載されるdsRNAは、1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチドオーバーハングをさらに含んでもよい。dsRNAは、例えばBiosearch,Applied Biosystems,Inc.から市販されるものなどの自動化DNA合成機の使用によって、以下でさらに考察されるように、当該技術分野で公知の標準法によって合成され得る。一実施形態では、ALAS1遺伝子はヒトALAS1遺伝子である。別の実施形態では、ALAS1遺伝子は、マウスまたはラットALAS1遺伝子である。
特定の実施形態では、第1の配列は、例えば、表21~40中などの本明細書で開示されるセンス配列を含む、dsRNAのセンス鎖であり、第2の配列は、例えば、表21~40中などの本明細書で開示されるアンチセンス配列を含む、dsRNAのアンチセンス鎖である。
特定の実施形態では、第1の配列は、表2または表3からのセンス配列をはじめとするdsRNAのセンス鎖であり、第2の配列は、表2または表3からのアンチセンス配列をはじめとするdsRNAのアンチセンス鎖である。実施形態では、第1の配列は、表2、3、6、7、8、9、14、または15からのセンス配列をはじめとするdsRNAのセンス鎖であり、第2の配列は、表2、3、6、7、8、9、14、または15からのアンチセンス配列をはじめとするdsRNAのアンチセンス鎖である。実施形態では、第1の配列は、表2、3、6、7、8、9、14、15、18または20からのセンス配列をはじめとするdsRNAのセンス鎖であり、第2の配列は、表2、3、6、7、8、9、14、15、18または20からのアンチセンス配列をはじめとするdsRNAのアンチセンス鎖である。
一態様では、dsRNAは、少なくともセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含み得て、それによってセンス鎖は、例えば、表21~40中などの本明細書で提供されるセンス配列から選択され、センス鎖に対応するアンチセンス鎖は、例えば、表21~40中などの本明細書で提供されるアンチセンス配列から選択される。
一態様では、dsRNAは、少なくともセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含み得て、センス鎖は、表2および3で提供される配列群から選択されて、表2および3から選択されるセンス鎖のアンチセンス鎖に対応する。さらなる態様では、dsRNAは、少なくともセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含み得て、センス鎖は、表2、3、6、7、8、9、14、および15で提供される配列群から選択されて、表2、3、6、7、8、9、14、および15から選択されるセンス鎖のアンチセンス鎖に対応する。さらなる態様では、dsRNAは、少なくともセンスおよびアンチセンスヌクレオチド配列を含み得て、センス鎖は、表2、3、6、7、8、9、14、15、18、および20で提供される配列群から選択されて、表2、3、6、7、8、9、14、15、18、および20から選択されるセンス鎖のアンチセンス鎖に相当する。
実施形態では、iRNAは、(例えば、前述のdsRNAのヌクレオチド配列および/または1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾を含む)AD-60501、AD-60519、AD-60901、AD-60495、AD-60900、AD-60935、AD-60879、AD-61190、AD-61191、AD-60865、AD-60861、AD-60876、AD-61193、AD-60519、AD-60519、AD-60901、AD-60405、AD-60887、AD-60923、AD-60434、AD-60892、AD-60419、AD-60924、AD-60445、AD-60925、AD-60926、AD-60820、AD-60843、AD-60819、AD-61140、AD-61141、AD-61142、AD-60835、AD-60839、AD-61143、AD-61144、AD-61145、AD-61146、AD-60892、またはAD-60419である。実施形態では、iRNAは、AD-60501、AD-60519、AD-60901、AD-60495、AD-60900、AD-60935、AD-60879、AD-61190、AD-61191、AD-60865、AD-60861、AD-60876、AD-61193、AD-60519、AD-60519、AD-60901、AD-60405、AD-60887、AD-60923、AD-60434、AD-60892、AD-60419、AD-60924、AD-60445、AD-60925、AD-60926、AD-60820、AD-60843、AD-60819、AD-61140、AD-61141、AD-61142、AD-60835、AD-60839、AD-61143、AD-61144、AD-61145、AD-61146、AD-60892、またはAD-60419のアンチセンス配列から選択される、(1つまたは複数の(例えば、全ての修飾)をはじめとする)アンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖を含んでなる。実施形態では、iRNAは、AD-60501、AD-60519、AD-60901、AD-60495、AD-60900、AD-60935、AD-60879、AD-61190、AD-61191、AD-60865、AD-60861、AD-60876、AD-61193、AD-60519、AD-60519、AD-60901、AD-60405、AD-60887、AD-60923、AD-60434、AD-60892、AD-60419、AD-60924、AD-60445、AD-60925、AD-60926、AD-60820、AD-60843、AD-60819、AD-61140、AD-61141、AD-61142、AD-60835、AD-60839、AD-61143、AD-61144、AD-61145、AD-61146、AD-60892、またはAD-60419から選択される、センス配列(および/または1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾))を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖を含んでなる。
実施形態では、iRNAは、(i)UAAGAUGAGACACUCUUUCUGGUまたはUAAGAUGAGACACUCTUUCUGGUの配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖、および/または(ii)CAGAAAGAGUGUCUCAUCUUAの配列を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖を含んでなる。実施形態では、アンチセンス鎖および/またはセンス鎖の1つまたは複数のヌクレオチドは、本明細書に記載されるように修飾される。
実施形態では、iRNAは、(i)AD-60489のアンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖、および/または(ii)AD-60489のセンス配列を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖(および/またはAD-60489のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾)を含んでなる。
実施形態では、iRNAは、(i)AD-60519のアンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖、および/または(ii)AD-60519のセンス配列を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖(および/またはAD-60489のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾)を含んでなる。
実施形態では、iRNAは、(i)AD-61193のアンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖、および/または(ii)AD-61193のセンス配列を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖(および/またはAD-60489のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾)を含んでなる。
実施形態では、iRNAは、(i)AD-60819のアンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖、および/または(ii)AD-60819のセンス配列を含んでなり、またはそれからなるセンス配列(および/またはAD-60489のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の1つまたは複数の(例えば、全ての)修飾)を含んでなる。
実施形態では、ALAS1の発現を阻害するためのiRNAが提供され、dsRNAは、(i)AD-60489、AD-60519、AD-61193、またはAD-60819のアンチセンス配列を含んでなり、またはそれからなるアンチセンス鎖(または対応する未修飾アンチセンス配列)および/または(ii)AD-60489、AD-60519、AD-61193、またはAD-60819のセンス配列を含んでなり、またはそれからなるセンス鎖(または対応する未修飾アンチセンス配列)を含んでなる。実施形態では、iRNAは、(i)AD-60489、AD-60519、AD-61193、またはAD-60819のアンチセンス配列からなるアンチセンス鎖および/または(ii)dsRNAのアンチセンス鎖および/またはセンス鎖が、AD-60489、AD-60519、AD-61193、またはAD-60819の対応するアンチセンスおよび/またはセンス配列と、1、2、または3つのヌクレオチドが異なること以外は、AD-60489、AD-60519、AD-61193、またはAD-60819のセンス配列からなるセンス鎖を含んでなる。
AD-60489、AD-60519、AD-61193、およびAD-60819の配列および修飾は、本明細書で開示される表44に示される。
一実施形態では、iRNAは、ALN-60519である。ALN-60519は、3つのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基を含有するリガンドに共有結合する、化学的に合成された二本鎖オリゴヌクレオチドである(図57に示される)。一実施形態では、ALN-60519の全てのヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-F修飾されて、3’-5’リン酸ジエステル結合を介して連結され、したがってオリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格を形成する。ALN-60519のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、それぞれ、21個および23個のヌクレオチドを含有する。ALN-60519のセンス鎖の3’末端は、リン酸ジエステル結合を介して三分岐GalNAc部分(L96と称される)にコンジュゲートされる。アンチセンス鎖は、3’末端に2つおよび5’末端に2つの4つのホスホロチオエート結合を含有する。ALN-60519のセンス鎖は、5’末端に2つのホスホロチオエート結合を含有する。ALN-60519のセンス鎖の21個のヌクレオチドは、アンチセンス鎖の相補的な21個のヌクレオチドとハイブリダイズし、したがって21個のヌクレオチド塩基対とアンチセンス鎖の3’末端の2つの塩基オーバーハングとを形成する。ALN-60519のセンス鎖およびアンチセンス鎖の2つの一本鎖は、5’-ヒドロキシル基がジメトキシトリフェニルメチル(DMT)エーテルとして保護される、標準ホスホラミダイト化学反応を用いて、従来の固相オリゴヌクレオチド合成によって合成され得る。各鎖は、保護されたヌクレオシドホスホラミダイトの逐次の付加によって、3’末端から5’末端に向けて構築され得る。
これらの態様では、2配列の一方は2配列の他方に相補的であり、配列の1つは、ALAS1遺伝子の発現によって生じるmRNA配列と実質的に相補的である。したがってdsRNAは、2つのオリゴヌクレオチドを含み、1つ目のオリゴヌクレオチドは、本明細書においてセンス鎖と説明され、2つ目のオリゴヌクレオチドは、センス鎖に対応するアンチセンス鎖と説明される。本明細書の他の箇所に記載されるように、そして当該技術分野で公知のように、dsRNAの相補配列はまた、別個のオリゴヌクレオチド上にあるものとは対照的に、単一核酸分子の自己相補領域として含有され得る。
当業者は、20~23塩基対、特に21塩基対の二本鎖構造を有するdsRNAが、RNA干渉を誘発するのに特に効果的であるとして支持されていることを十分承知している(エルバシル(Elbashir)ら著,EMBO 2001,20:6877-6888)。しかし他の当業者らは、より短いまたはより長いRNA二本鎖構造が、同様に効果的であり得ることを見出している。上述の実施形態では、本明細書中の表で提供されるオリゴヌクレオチド配列の性質のために、本明細書に記載されるdsRNAは、最低限21ヌクレオチド長の少なくとも1本の鎖を含み得る。片方または両方の末端の数個のヌクレオチドのみが抜けている、本明細書に記載される配列の1つを有するより短い二本鎖が、上で説明したdsRNAと比較して同様に効果的であってもよいことは、合理的に予想され得る。したがって本明細書に記載される配列の1つからの少なくとも15、16、17、18、19、20個以上の連続ヌクレオチドの部分的配列を有し、ALAS1遺伝子の発現を阻害する能力が、完全長配列を含んでなるdsRNAの5、10、15、20、25、または30%の阻害を超えない範囲で異なるdsRNAが、本発明によって意図される。
さらに本明細書の表で提供されるRNAは、RISC媒介切断に対する感受性が高いALAS1転写物の部位を同定する。したがって本発明は、このような配列の1つ内を標的とするiRNAをさらに特徴とする。本明細書の用法では、iRNAが、特定部位内のどこかで転写物の切断を促進する場合、iRNAはRNA転写物のその特定部位内を標的にすると言われる。このようなiRNAは、一般に、ALAS1遺伝子中の選択配列に隣接する領域からの追加的なヌクレオチド配列と連結する、表2、3、6、7、8、9、14、15、18、20および表21~40で本明細書に提供される配列の1つからの少なくとも15個の連続ヌクレオチドを含む。
標的配列は、一般に15~30ヌクレオチド長であるが、この範囲内の特定の配列が、あらゆる所与の標的RNAの切断を誘導する適合性には、幅広い多様性がある。本明細書で提示される様々なソフトウェアパッケージおよびガイドラインは、あらゆる所与の遺伝子標的の最適標的配列を同定するためのガイダンスを提供するが、標的RNA配列に、所与のサイズの「ウィンドウ」または「マスク」(非限定的例として21個のヌクレオチド)を実際にまたは比喩的に(例えばコンピュータシミュレーションによるものをはじめとする)配置させて、標的配列の役割を果たしてもよいサイズ範囲の配列を同定する、経験的アプローチもまた取り得る。配列「ウィンドウ」を最初の標的配列位置の1ヌクレオチド上流または下流に連続的に移動することで、選択されたあらゆる所与の標的サイズについて完全な可能な配列の組が同定されるまで、次の潜在的標的配列が同定され得る。このプロセスは、同定された配列の系統的合成、および(本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知のアッセイを使用した)至適に機能する配列を同定する試験と相まって、iRNA剤で標的化した場合に、標的遺伝子発現の最良の阻害を媒介するRNA配列を同定し得る。したがって例えば本明細書の表中で同定される配列が、効果的な標的配列を表す一方で、所与の配列の1ヌクレオチド上流または下流に、連続的に「ウィンドウを歩行させる」ことにより、同等またはより良い阻害特性がある配列を同定することで、阻害効率のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。
さらにヌクレオチドを体系的に付加または除去して、より長いまたはより短い配列を作成し、その位置から、標的RNAよりも長いまたはより短いサイズのウィンドウを歩行させることで、これらのおよび作成された配列を試験することにより、例えば本明細書の表中で同定される、あらゆる配列のさらなる最適化を達成し得ることが検討される。この場合もやはり、この新しい標的候補を作成するアプローチと、当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される阻害アッセイにおける、これらの標的配列に基づくiRNAの有効性の試験とを組み合わせることにより、阻害効率にさらなる改善をもたらし得る。なおもさらに、例えば本明細書に記載されまたは当該技術分野で公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングの付加またはその変更、または当該技術分野で公知のおよび/または本明細書で考察されるその他の修飾によって、発現阻害物質として分子をさらに最適化する(例えば血清安定性または循環半減期増大、熱安定増大、膜貫通送達促進、特定位置または細胞型の標的化、サイレンシング経路酵素との相互作用増大、エンドソームからの放出増大など)ことで、このような最適化配列を調節し得る。
本明細書に記載されるiRNAは、標的配列との1つまたは複数のミスマッチを含有し得る。一実施形態では、本明細書に記載されるiRNAは、3個以下のミスマッチを含有する。iRNAのアンチセンス鎖が、標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチの範囲は、相補性領域の中心に位置しないことが好ましい。iRNAのアンチセンス鎖が標的配列とのミスマッチを含有する場合、ミスマッチは、相補性領域の5’または3’末端のいずれかから、最後の5ヌクレオチド内に限定されることが好ましい。例えばALAS1遺伝子領域に相補的な23ヌクレオチドiRNA剤RNA鎖では、RNA鎖は、一般に、中心的な13ヌクレオチド内にいかなるミスマッチも含有しない。本明細書に記載される方法または当該技術分野で公知の方法を使用して、標的配列とのミスマッチを含有するiRNAが、ALAS1遺伝子の発現の阻害に効果的かどうかを判定し得る。ALAS1遺伝子の発現の阻害における、ミスマッチがあるiRNAの有効性の検討は、特にALAS1遺伝子の特定の相補性領域が、集団内で多型配列バリエーションを有することが知られている場合に、重要である。
一実施形態では、dsRNAの少なくとも一端は、1~4ヌクレオチドの、一般に1または2ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを有する。少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを有する、dsRNAは、それらの平滑末端対応物と比較して、意外にも優れた阻害特性を有する。さらに別の実施形態では、例えばdsRNAなどのiRNAのRNAを化学的に修飾して、安定性またはその他の有益な特性を高める。本発明で取り上げる核酸は、参照によって本明細書に援用する、「核酸化学の現行のプロトコル(Current protocols in nucleic acid chemistry)」、ボーケージ(Beaucage),S.L.ら編、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons,Inc.)、米国ニューヨーク州ニューヨークなどに記載されるものなどの当該技術分野で確立された方法によって合成および/または修飾されてもよい。修飾としては、例えば(a)例えば5’末端修飾(リン酸化、共役結合、逆転結合)および3’末端修飾(共役結合、DNAヌクレオチド、逆転結合など)などの末端修飾;(b)例えば安定化塩基での、不安定化塩基での、または拡大パートナーのレパートリーと塩基対形成する塩基での置換、塩基除去(脱塩基ヌクレオチド)、または共役結合塩基などの塩基修飾;(C)糖の修飾(例えば2’位または4’位における、または非環式糖)または糖の置換;ならびに(d)リン酸ジエステル結合の修飾または置換をはじめとする主鎖修飾が挙げられる。本発明において有用なRNA化合物の特定の例としては、修飾主鎖を含有するRNA、または天然ヌクレオシド間結合を含有しないRNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。修飾主鎖を有するRNAとしては、特に主鎖中にリン原子を有しないものが挙げられる。本明細書の目的では、そして当該技術分野で時に言及されるように、それらのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有しない修飾RNAもまた、オリゴヌクレオシドであると見なされる。特定の実施形態では、修飾RNAは、そのヌクレオシド間主鎖中にリン原子を有する。
修飾RNA主鎖としては、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートをはじめとするメチルおよびその他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートをはじめとするホスホロアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびノルマル3’-5’結合、それらの2’-5’連結アナログを有するボラノホスフェート、および隣接するヌクレオシド単位対が3’-5’から5’-3’、または2’-5’から5’-2’に連結する、逆転極性を有するボラノホスフェート)が挙げられる。様々な塩、混合塩、および遊離酸形態もまた挙げられる。
上記リン含有結合の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第3,687,808号明細書;米国特許第4,469,863号明細書;米国特許第4,476,301号明細書;米国特許第5,023,243号明細書;米国特許第5,177,195号明細書;米国特許第5,188,897号明細書;米国特許第5,264,423号明細書;米国特許第5,276,019号明細書;米国特許第5,278,302号明細書;米国特許第5,286,717号明細書;米国特許第5,321,131号明細書;米国特許第5,399,676号明細書;米国特許第5,405,939号明細書;米国特許第5,453,496号明細書;米国特許第5,455,233号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,476,925号明細書;米国特許第5,519,126号明細書;米国特許第5,536,821号明細書;米国特許第5,541,316号明細書;米国特許第5,550,111号明細書;米国特許第5,563,253号明細書;米国特許第5,571,799号明細書;米国特許第5,587,361号明細書;米国特許第5,625,050号明細書;米国特許第6,028,188号明細書;米国特許第6,124,445号明細書;米国特許第6,160,109号明細書;米国特許第6,169,170号明細書;米国特許第6,172,209号明細書;米国特許第6、239,265号明細書;米国特許第6,277,603号明細書;米国特許第6,326,199号明細書;米国特許第6,346,614号明細書;米国特許第6,444,423号明細書;米国特許第6,531,590号明細書;米国特許第6,534,639号明細書;米国特許第6,608,035号明細書;米国特許第6,683,167号明細書;米国特許第6,858,715号明細書;米国特許第6,867,294号明細書;米国特許第6,878,805号明細書;米国特許第7,015,315号明細書;米国特許第7,041,816号明細書;米国特許第7,273,933号明細書;米国特許第7,321,029号明細書;および米国特許第RE39464号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
その中にリン原子を含まない修飾RNA主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つまたは複数の短鎖ヘテロ原子または複素環式ヌクレオシド間結合によって形成された主鎖を有する。これらとしては、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するもの;および混合N、O、S、およびCH2構成成分を有するその他のものが挙げられる。
上記オリゴヌクレオシドの調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,034,506号明細書;米国特許第5,166,315;5,185,444号明細書;米国特許第5,214,134号明細書;米国特許第5,216,141号明細書;米国特許第5,235,033号明細書;米国特許第5,64,562号明細書;米国特許第5,264,564号明細書;米国特許第5,405,938号明細書;米国特許第5,434,257号明細書;米国特許第5,466,677号明細書;米国特許第5,470,967号明細書;米国特許第5,489,677号明細書;米国特許第5,541,307号明細書;米国特許第5,561,225号明細書;米国特許第5,596,086号明細書;米国特許第5,602,240号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第5,610,289号明細書;米国特許第5,618,704号明細書;米国特許第5,623,070号明細書;米国特許第5,663,312号明細書;米国特許第5,633,360号明細書;米国特許第5,677,437号明細書;および米国特許第5,677,439号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
iRNA中で使用することが適切でありまたは検討されるその他のRNA模倣体中では、ヌクレオチド単位の主鎖である、糖およびヌクレオシド間連結の双方が、新規の基で置換されている。塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。このような1つのオリゴマー化合物であり、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているRNA模倣体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物では、RNAの糖主鎖は、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換されている。核酸塩基は保持されて、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子と直接または間接的に結合する。PNA化合物の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,539,082号明細書;米国特許第5,714,331号明細書;および米国特許第5,719,262号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。PNA化合物のさらなる教示は、ニールセン(Nielsen)ら著、サイエンス(Science)、1991年、第254巻、p.1497~1500にある。
本発明で取り上げるいくつかの実施形態は、ホスホロチオエート主鎖があるRNA、および特に先述の米国特許第5,489,677号明細書の-CH2-NH-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られている]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-N(CH3)-CH2-CH2-[天然リン酸ジエステル主鎖は-O-P-O-CH2-として表される]であるヘテロ原子主鎖がある、および先述の米国特許第5,602,240号明細書のアミド主鎖がある、オリゴヌクレオシドとを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で取り上げるRNAは、先述の米国特許第5,034,506号明細書のモルホリノ主鎖構造を有する。
修飾RNAはまた、1つまたは複数の置換糖部分を含有し得る。例えば本明細書で取り上げるdsRNAなどのiRNAは、2’位に、OH;F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-、またはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルの1つを含み得て、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換C1~C10アルキル、またはC2~C10アルケニルおよびアルキニルであってもよい。例示的な適切な修飾としては、O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2).nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2(式中、nおよびmは1~約10である)が挙げられる。別の実施形態では、dsRNAは、2’位に以下の1つを含む:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物、iRNAの薬物動態特性を改善する基、またはiRNAの薬力学的特性を改善する基、および同様の特性を有するその他の置換基。いくつかの実施形態では、修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしてもまた知られている)(マーティン(Martin)ら著、ヘルベチカ キミカ アクタ(Helv.Chim.Acta)、1995年、第78巻、p.486~504)、すなわちアルコキシ-アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、以下に本明細書の実施例で記載されるように、2’-DMAOEとしてもまた知られている、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、およびこれもまた以下に本明細書の実施例で記載されるように、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとしても公知である)、すなわち2’-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2である。
その他の実施形態では、iRNA剤は、1つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)非環式ヌクレオチド(またはヌクレオシド)を含んでなる。特定の実施形態では、センス鎖またはアンチセンス鎖、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖の双方は、鎖あたり5つ未満の非環式ヌクレオチド(例えば、鎖あたり4、3、2、または1つの非環式ヌクレオチド)を含む。1つまたは複数の非環式ヌクレオチドは、例えば、iRNA剤のセンスまたはアンチセンス鎖の、またはその双方の鎖の二本鎖領域;センスまたはアンチセンス鎖の、またはその双方の鎖の、5’末端、3’末端、5’および3’末端の双方に見られる。一実施形態では、1つまたは複数の非環式ヌクレオチドは、センスまたはアンチセンス鎖、またはその双方の1~8位に存在する。一実施形態では、1つまたは複数の非環式ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のアンチセンス鎖の5’末端から4~10位(例えば、6~8位)に見られる。別の実施形態では、1つまたは複数の非環式ヌクレオチドは、iRNA剤の3’末端オーバーハングの片方または双方に見られる。
「非環式ヌクレオチド」または「非環式ヌクレオシド」という用語は、本明細書の用法では、例えば、非環式リボースなどの非環式糖を有する、任意のヌクレオチドまたはヌクレオシドを指す。代表的非環式ヌクレオチドまたはヌクレオシドとしては、例えば、天然または修飾核酸塩基(例えば、本明細書に記載されるような核酸塩基)などの核酸塩基が挙げられる。特定の実施形態では、リボース炭素(C1、C2、C3、C4、またはC5)のいずれかの間の結合は、独立してまたは組み合わせで、ヌクレオチドに不在である。一実施形態では、例えば、非環式2’-3’-セコ-ヌクレオチドモノマーなど、リボース環のC2-C3炭素間の結合が不在である。その他の実施形態では、C1-C2、C3-C4、またはC4-C5間の結合が不在である(例えば、1’-2’、3’-4’または4’-5’-セコヌクレオチドモノマー)。代表的非環式ヌクレオチドは、その全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,314,227号明細書で開示される。例えば、非環式ヌクレオチドとしては、米国特許第8,314,227号明細書の図面1~2のモノマーD~Jのいずれかが挙げられる。一実施形態では、非環式ヌクレオチドとしては、以下のモノマーが挙げられる:
(式中、塩基は、例えば、天然または修飾核酸塩基(例えば、本明細書に記載されるような核酸塩基)などの核酸塩基である)。
特定の実施形態では、非環式ヌクレオチドは、例えば、特に、リガンド(例えば、GalNAc、コレステロールリガンド)、アルキル、ポリアミン、糖、ポリペプチドなどの別の部分に、非環式ヌクレオチドを共役させることで、修飾または誘導体化され得る。
その他の実施形態では、iRNA剤としては、1つまたは複数の非環式ヌクレオチドおよび1つまたは複数のLNA(例えば、本明細書に記載されるようなLNA)が挙げられる。例えば、1つまたは複数の非環式ヌクレオチドおよび/または1つまたは複数のLNAは、センス鎖、アンチセンス鎖、またはその双方に存在し得る。1本の鎖の非環式ヌクレオチドの数は、対向する鎖のLNAの数と同一であるかまたは異なり得る。特定の実施形態では、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、二本鎖領域または3’オーバーハングに位置する5つ未満のLNA(例えば、4、3、2、または1つのLNA)を含んでなる。その他の実施形態では、1つまたは2つのLNAは、センス鎖の二本鎖領域または3’オーバーハングに位置する。代案としては、または組み合わせで、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、二本鎖領域または3’オーバーハング中に、5つ未満の非環式ヌクレオチド(例えば、4、3、2、または1つの非環式ヌクレオチド)を含んでなる。一実施形態では、iRNA剤のセンス鎖は、iRNA剤のセンス鎖の3’オーバーハング中の1つまたは2つのLNAと、(例えば、アンチセンス鎖の5’末端から4~10位(例えば、6~8位))のアンチセンス鎖の二本鎖(standed)領域中の1つまたは2つの非環式ヌクレオチドとを含んでなる。
その他の実施形態では、iRNA剤中の(単独で、または1つまたは複数のLNAに加えて)1つまたは複数の非環式ヌクレオチドの組み入れは、以下の1つまたは複数(または全て)をもたらす:(i)オフターゲット効果の低下;(ii)RNAi中のパッセンジャー鎖関与の低下;(iii)その標的mRNAに対するガイド鎖の特異性の増大;(iv)マイクロRNAオフターゲット効果の低下;(v)安定性の増大;または(vi)iRNA分子の耐分解性の増大。
その他の修飾としては、2’-メトキシ(2’-OCH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)、および2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。同様の修飾はまた、具体的には3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位、または2’-5’結合dsRNA中、および5’末端ヌクレオチドの5’位など、iRNAのRNA上のその他の位置でも行い得る。iRNAはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣体を有してもよい。上記修飾糖構造の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用し、特定のものは本出願と所有者が共通である、米国特許第4,981,957号明細書;米国特許第5,118,800号明細書;米国特許第5,319,080号明細書;米国特許第5,359,044号明細書;米国特許第5,393,878号明細書;米国特許第5,446,137号明細書;米国特許第5,466,786号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,519,134号明細書;米国特許第5,567,811号明細書;米国特許第5,576,427号明細書;米国特許第5,591,722号明細書;米国特許第5,597,909号明細書;米国特許第5,610,300号明細書;米国特許第5,627,053号明細書;米国特許第5,639,873号明細書;米国特許第5,646,265号明細書;米国特許第5,658,873号明細書;米国特許第5,670,633号明細書;および米国特許第5,700,920号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
iRNAはまた、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と称されることが多い)修飾または置換を含み得る。本明細書の用法では、「未修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、5-メチルシトシン(5-me-C);5-ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2-アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6-メチルおよびその他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよびその他のアルキル誘導体;2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン;5-ハロウラシルおよびシトシン;5-プロピニルウラシルおよびシトシン;6-アゾウラシル、シトシン、およびチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル);4-チオウラシル;8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよびその他の8置換アデニンおよびグアニン;5-ハロ、具体的には5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、およびその他の5置換ウラシルおよびシトシン;7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン;8-アザグアニンおよび8-アザアデニン;7-デアザグアニンおよび7-ダアザアデニン(daazaadenine);および3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどのその他の合成および天然核酸塩基が挙げられる。さらに核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号明細書で開示されるもの、「生化学、バイオテクノロジー、および医学における修飾ヌクレオシド(Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine)」、ヘルデヴィン(Herdewijn),P.編、ウィリーVCH(Wiley-VCH)、2008年で開示されるもの;「高分子科学と工学のコンサイス百科事典(The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering)」、p.858~859、クルシュヴィッツ(Kroschwitz),J.L編、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、1990年で開示されるもの、エングリッシュ(Englisch)ら著、アンゲヴァンテ ケミー(Angewandte Chemie),国際版(International Edition)、1991年、第30巻、p.613によって開示されるもの、およびサングヴィ(Sanghvi),Y S.著、第15章、「dsRNAの研究および応用(dsRNA Research and Aplications)」、p.289~302、クルック(Crooke),S.T.およびルブルー(Lebleu),B.編、CRCプレス(CRC Press)、1993年によって開示されるものが挙げられる。これらの核酸塩基のいくつかは、本発明で取り上げるオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるのに特に有用である。これらとしては、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンをはじめとする、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、およびN-2、N-6および0-6置換プリンが挙げられる。5-メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6~1.2℃増大させることが示されており(サングヴィ(Sanghvi),Y.S.著、クルック(Crooke),S.T.およびルブルー(Lebleu),B.編、「dsRNAの研究および応用(dsRNA Research and Aplications)」、CRCプレス(CRC Press)、ボカラトン(Boca Raton)、1993年、p.276~278)、模範的な塩基置換であり、なおもより特に、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合にそうである。
上記の特定の修飾核酸塩基ならびにその他の修飾核酸塩基の調製を教示する、代表的な米国特許としては、上記の米国特許第3,687,808号明細書、ならびにそのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第4,845,205号明細書;米国特許第5,130,30号明細書;米国特許第5,134,066号明細書;米国特許第5,175,273号明細書;米国特許第5,367,066号明細書;米国特許第5,432,272号明細書;米国特許第5,457,187号明細書;米国特許第5,459,255号明細書;米国特許第5,484,908号明細書;米国特許第5,502,177号明細書;米国特許第5,525,711号明細書;米国特許第5,552,540号明細書;米国特許第5,587,469号明細書;米国特許第5,594,121、5,596,091号明細書;米国特許第5,614,617号明細書;米国特許第5,681,941号明細書;米国特許第6,015,886号明細書;米国特許第6,147,200号明細書;米国特許第6,166,197号明細書;米国特許第6,222,025号明細書;米国特許第6,235,887号明細書;米国特許第6,380,368号明細書;米国特許第6,528,640号明細書;米国特許第6,639,062号明細書;米国特許第6,617,438号明細書;米国特許第7,045,610号明細書;米国特許第7,427,672号明細書;および米国特許第7,495,088号明細書、およびこれもまた参照によって本明細書に援用する、米国特許第5,750,692号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
iRNAのRNAはまた、1つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)ロックド核酸(LNA)(本明細書では「ロックドヌクレオチド」とも称される)が含まれるように、修飾され得る。一実施形態では、ロックド核酸は、その中でリボース部分が、例えば、2’および4’炭素などの追加の架橋結合を含んでなる、修飾リボース部分を有するヌクレオチドである。この構造は、3’エンド立体構造内で、リボースを事実上「ロックする」。siRNAへのロックド核酸の付加は、血清中でsiRNAの安定性を増大させて、熱安定性を増大させ、オフターゲット効果を低下させることが示されている(Elmen,J.et al.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook,OR.et al.,(2007)Mol Canc Ther 6(3):833-843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。
ロックド核酸ヌクレオチドの調製を教示する、代表的な米国特許としては、それぞれその内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,268,490号明細書;米国特許第6,670,461号明細書;米国特許第6,794,499号明細書;米国特許第6,998,484号明細書;米国特許第7,053,207号明細書;米国特許第7,084,125号明細書;米国特許第;7,399,845号明細書;および米国特許第8,314,227号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。代表的なLNAとしては、2’、4’-Cメチレンビシクロヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されるものではない(例えばWengelらに付与された、国際公開第00/66604号パンフレット、および国際公開第99/14226号パンフレットを参照されたい)。
その他の実施形態では、iRNA剤としては、1つまたは複数の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の)G形クランプヌクレオチドが挙げられる。G形クランプヌクレオチドは、修飾されたシトシンアナログであり、修飾は、二本鎖内の相補的グアニンのワトソン・クリック面およびフーグスティーン面の双方に、水素結合能力を与え、例えば、Lin and Matteucci,1998,J.Am.Chem.Soc.,120,8531-8532を参照されたい。オリゴヌクレオチド内の単一G形クランプアナログ置換は、相補的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする場合に、実質的に増大されたらせん熱安定性および不一致識別をもたらし得る。iRNA分子中へのこのようなヌクレオチドの組み入れは、核酸標的、相補配列、またはテンプレート鎖に対する、増大された親和力および特異性をもたらし得る。
RNA分子末端に対する潜在的安定化修飾としては、N-(アセチルアミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-NHAc)、N-(カプロイル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6)、N-(アセチル-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-NHAc)、チミジン-2’-O-デオキシチミジン(エーテル)、N-(アミノカプロイル)-4-ヒドロキシプロリノール(Hyp-C6-アミノ)、2-ドコサノイル-ウリジン-3”-リン酸、逆転塩基dT(idT)などが挙げられる。この修飾の開示は、国際公開第2011/005861号パンフレットにある。
iRNAモチーフ
一実施形態では、センス鎖配列は、
式(I)、
5’np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3’
(I)
(式中、
iおよびjは、それぞれ独立して0または1であり;
pおよびqは、それぞれ独立して0~6であり;
各Naは、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでなり;
各Nbは、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し;
各NpおよびNqは、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
NbおよびYは、同一修飾を有せず;
XXX、YYYおよびZZZは、それぞれ独立して、3個の連続ヌクレオチドの3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)によって表わされてもよい。好ましくはYYYは、全て2’-F修飾ヌクレオチドである。
一実施形態では、Naおよび/またはNbは、交互のパターンの修飾を含んでなる。
一実施形態では、YYYモチーフは、センス鎖の切断部位、またはその近くに生じる。例えばRNAi剤が、17~23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有する場合、センス鎖の切断部位またはその近傍にYYYモチーフが生じ得る(例えば5’末端の最初のヌクレオチドから数え始めて、または任意選択的に、二本鎖領域内の5’末端の最初の対合ヌクレオチドから数え始めて、6、7、8;7、8、9;8、9、10;9、10、11;10、11,12;または11、12、13位に生じ得る)。
一実施形態では、iが1でjは0であり、またはiが0でjは1であり、またはiおよびjのどちらも1である。したがってセンス鎖は、
式、
5’np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’(Ib);
5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3’(Ic);または
5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’(Id)
によって表わされ得る。
センス鎖が、式(Ib)によって表わされる場合、Nbは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
センス鎖が、式(Ic)によって表わされる場合、Nbは、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
センス鎖が、式(Id)によって表わされる場合、Nbは、独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5または6である。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
X、Y、およびZのそれぞれは、互いに同一であるか、または異なってもよい。
別の実施形態では、iが0でjは0であり、センス鎖は、
式、
5’Np-Na-YYY-Na-Nq3’
(Ia)
によって表わされてもよい。
センス鎖が、式(Ia)によって表わされる場合、各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し得る。
一実施形態では、RNAiのアンチセンス鎖の配列は、
式(II)、
5’nq’-Na’-(Z’Z’Z’)k-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-(X’X’X’)l-N’a-np’3’
(II)
(式中、
kおよびlは、それぞれ独立して0または1であり;
p’およびq’は、それぞれ独立して0~6であり;
各Na’は、独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでなり;
各Nb’は、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し;
各Np’およびNq’は、独立して、オーバーハングヌクレオチドを表し;
Nb’およびY’は、同じ修飾を有せず;
X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’は、それぞれ独立して、3個の連続ヌクレオチドの3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表わされてもよい。
一実施形態では、Na’および/またはNb’は、交互のパターンの修飾を含んでなる。
Y’Y’Y’モチーフは、アンチセンス鎖の切断部位で、またはその近くで生じる。例えばRNAi剤が、17~23ヌクレオチド長の二本鎖領域を有する場合、Y’Y’Y’モチーフは、5’末端の最初のヌクレオチドから数え始めて、または任意選択的に、二本鎖領域内の5’末端の最初の対合ヌクレオチドから数え始めて、9、10、11;10、11、12;11、12、13;12、13、14位に、またはアンチセンス鎖の13、14、15位に生じ得る。好ましくは、Y’Y’Y’モチーフは、11、12、13位に生じる。
一実施形態では、Y’Y’Y’モチーフは、全て2’-OMe修飾されたヌクレオチドである。
一実施形態では、kが1でlは0であり、またはkが0でlは1であり;またはkおよびlのどちらも1である。
したがってアンチセンス鎖は、
式、
5’nq’-Na’-Z’Z’Z’-Nb’-Y’Y’Y’-Na’-np’3’(IIb);
5’nq’-Na’-Y’Y’Y’-Nb’-X’X’X’-np’3’(IIc);または
5’nq’-Na’-Z’Z’Z’-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-X’X’X’-Na’-np’3’
(IId)
によって表わされ得る。
アンチセンス鎖が式(IIb)によって表わされる場合、Nb’は、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。
アンチセンス鎖が、式(IIc)によって表わされる場合、Nb’は、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。
アンチセンス鎖が、式(IId)によって表わされる場合、Nb’は、独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。各Na’は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなる、オリゴヌクレオチド配列を表す。好ましくは、Nbは、0、1、2、3、4、5または6である。
別の実施形態では、kが0でlは0であり、アンチセンス鎖は、
式、
5’np’-Na’-Y’Y’Y’-Na’-nq’3’
(Ia)
によって表わされてもよい。
アンチセンス鎖が、式(IIa)として表される場合、各Na’は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。
X’、Y’、およびZ’のそれぞれは、互いに同一であるか、または異なってもよい。
センス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-ヒドロキシル、または2’-フルオロで修飾されてもよい。例えばセンス鎖およびアンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、独立して、2’-O-メチルまたは2’-フルオロで修飾される。各X、Y、Z、X’、Y’、およびZ’は、特に、2’-O-メチル修飾または2’-フルオロ修飾を表してもよい。
一実施形態では、RNAi剤のセンス鎖は、二本鎖領域が21ntである場合、5’末端の最初のヌクレオチドから数え始めて、または任意選択的に、二本鎖領域内の5’末端の最初の対合ヌクレオチドから数え始めて、鎖の9、10、および11位に生じるYYYモチーフを含有してもよい;Yは、2’-F修飾を表す。センス鎖は、二本鎖領域の反対側の末端における翼状修飾として、XXXモチーフまたはZZZモチーフをさらに含有してもよい。XXXおよびZZZは、それぞれ独立して2’-OMe修飾または2’-F修飾を表す。
一実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端のヌクレオチド最初のヌクレオチドから数え始めて、または任意選択的に、二本鎖領域内の5’末端の最初の対合ヌクレオチドから数え始めて、鎖の11、12、13位に生じるY’Y’Y’モチーフを含有してもよく;Y’は、2’-O-メチル修飾を表す。アンチセンス鎖は、二本鎖領域の反対側の末端における翼状修飾として、X’X’X’モチーフまたはZ’Z’Z’モチーフをさらに含有してもよく;およびX’X’X’およびZ’Z’Z’は、それぞれ独立して、2’-OMe修飾または2’-F修飾を表す。
上の式(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(ID)のいずれか1つによって表わされるセンス鎖は、式(IIa)、(IIb)、(IIc)、および(IId)のいずれか1つによって表わされるアンチセンス鎖と、それぞれ二本鎖を形成する。
したがって本発明の方法で使用されるRNAi剤は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含んでなってもよく、各鎖は14~30個のヌクレオチドを有し、RNAi二本鎖は、
式(III)、
センス:5’np-Na-(XXX)i-Nb-YYY-Nb-(ZZZ)j-Na-nq3’
アンチセンス:3’np’-Na’-(X’X’X’)k-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-(Z’Z’Z’)l-Na’-nq’5’
(III)
(式中、
i、j、k、およびlは、それぞれ独立して0または1であり;
p、p’、q、およびq’は、それぞれ独立して0~6であり;
各NaおよびNa’は独立して、0~25個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し、各配列は、少なくとも2つの異なる修飾ヌクレオチドを含んでなり;
各NbおよびNb’は、独立して、0~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表し;
そのそれぞれが存在してもまたはしなくてもよい、各np’、np、nq’、およびnqは、独立してオーバーハングヌクレオチドを表し;
XXX、YYY、ZZZ、X’X’X’、Y’Y’Y’、およびZ’Z’Z’は、それぞれ独立して、3個の連続ヌクレオチドの3つの同一修飾の1つのモチーフを表す)
によって表わされる。
一実施形態では、iが0でjは0であり;またはiが1でjは0であり;またはiが1でjは0であり;またはiおよびjのどちらも0である。またはiおよびjのどちらも1である。別の実施形態では、kが0でありlは0であり;またはkが1でlは0であり;kが0でlは1であり;またはkおよびlのどちらも0である。またはkおよびlのどちらも1である。
RNAi二本鎖を形成するセンス鎖およびアンチセンス鎖の例示的な組み合わせとしては、以下の式が挙げられる。
5’np-Na-YYY-Na-nq3’
3’np’-Na’-Y’Y’Y’-Na’nq’5’
(IIIa)
5’np-Na-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’
3’np’-Na’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na’nq’5’
(IIIb)
5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Na-nq3’
3’np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Na’-nq’5’
(IIIc)
5’np-Na-XXX-Nb-YYY-Nb-ZZZ-Na-nq3’
3’np’-Na’-X’X’X’-Nb’-Y’Y’Y’-Nb’-Z’Z’Z’-Na-nq’5’
(IIId)
RNAi剤が、式(IIIa)として表される場合、各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が、式(IIIb)として表される場合、各Nbは、独立して、1~10、1~7、1~5または1~4個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が式(IIIc)として表される場合、各Nb、Nb’は独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。各Naは、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。
RNAi剤が式(IIId)として表される場合、各Nb、Nb’は独立して、0~10、0~7、0~5、0~4、0~2または0個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。各Na、Na’は、独立して、2~20、2~15、または2~10個の修飾ヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチド配列を表す。Na、Na’、NbandNb’のそれぞれは、独立して、交互のパターンの修飾を含んでなる。
式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)中のX、Y、およびZのそれぞれは、互いに同一であるかまたは異なってもよい。
RNAi剤が、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表わされる場合、Yヌクレオチドの少なくとも1つは、Y’ヌクレオチドの1つと塩基対形成してもよい。代案としては、Yヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するY’ヌクレオチドと塩基対を生成し;または全ての3つのYヌクレオチドは、対応するY’ヌクレオチドとの塩基対を生成する。
RNAi剤が、式(IIIb)または(IIId)によって表わされる場合、Zヌクレオチドの少なくとも1つは、Z’ヌクレオチドの1つと塩基対形成してもよい。代案としては、Zヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するZ’ヌクレオチドと塩基対を生成し;または全ての3つのZヌクレオチドは、対応するZ’ヌクレオチドとの塩基対を生成する。
RNAi剤が、式(IIIc)または(IIId)によって表わされる場合、Xヌクレオチドの少なくとも1つは、X’ヌクレオチドの1つと塩基対形成してもよい。代案としては、Xヌクレオチドの少なくとも2つは、対応するX’ヌクレオチドと塩基対を生成し;または全ての3つのXヌクレオチドは、対応するX’ヌクレオチドとの塩基対を生成する。
一実施形態では、Yヌクレオチド上の修飾はY’ヌクレオチド上の修飾と異なり、Zヌクレオチド上の修飾はZ’ヌクレオチド上の修飾と異なり、および/またはXヌクレオチド上の修飾はX’ヌクレオチド上の修飾と異なる。
一実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表わされる場合、Na修飾は、2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾である。別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表わされる場合、Na修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾で、Np’>0であり、少なくとも1つのnp’は、ホスホロチオエート結合によって、隣接するヌクレオチドと連結する。さらに別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表わされる場合、Na修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾で、np’>0であり、少なくとも1つのnp’は、ホスホロチオエート結合によって隣接するヌクレオチドと連結し、センス鎖は二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する、1つまたは複数のGalNAc誘導体と共役する。さらに別の実施形態では、RNAi剤が式(IIId)によって表わされる場合、Na修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾で、np’>0であり、少なくとも1つのnp’は、ホスホロチオエート結合によって隣接するヌクレオチドと連結し、センス鎖は少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでなり、センス鎖は二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する、1つまたは複数のGalNAc誘導体と共役する。
一実施形態では、RNAi剤が式(IIIa)によって表わされる場合、Na修飾は2’-O-メチルまたは2’-フルオロ修飾で、np’>0であり、少なくとも1つのnp’は、ホスホロチオエート結合によって隣接するヌクレオチドと連結し、センス鎖は少なくとも1つのホスホロチオエート結合を含んでなり、センス鎖は二価または三価の分枝リンカーを通じて付着する、1つまたは複数のGalNAc誘導体と共役する。
一実施形態では、RNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表わされる少なくとも2つの二本鎖を含有する多量体であり、二本鎖はリンカーによって結合する。リンカーは、切断可能または非切断不能であり得る。任意選択的に、多量体は、リガンドをさらに含んでなる。二本鎖のそれぞれは、同一遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的にし得る;または二本鎖のそれぞれは、2つの異なる標的部位で同一遺伝子を標的にし得る。
一実施形態では、RNAi剤は、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表わされる3、4、5、6本以上の二本鎖を含有する多量体であり、二本鎖はリンカーによって結合する。リンカーは、切断可能または非切断不能であり得る。任意選択的に、多量体は、リガンドをさらに含んでなる。二本鎖のそれぞれは、同一遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的にし得る;または二本鎖のそれぞれは、同一遺伝子を2つの異なる標的部位で標的にし得る。
一実施形態では、式(III)、(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)によって表わされる2つのRNAi剤は、5’末端、3’末端の片方または両方で互いに連結し、リガンドと任意選択的に共役する。薬剤のそれぞれは、同一遺伝子または2つの異なる遺伝子を標的にし得る;または薬剤のそれぞれは、同一遺伝子を2つの異なる標的部位で標的にし得る。
iRNA複合体
本明細書で開示されるiRNA剤は、複合体の形態であり得る。複合体は、例えばセンスまたはアンチセンス鎖の3’末端または5’末端などの、iRNA分子中のあらゆる適切な位置に付着してもよい。複合体は、任意選択的に、リンカーを介して付着する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるiRNA剤は、1つまたは複数のリガンド、部分または複合体と化学的に連結し、それは例えば活性、細胞分布または細胞内取り込みに影響を及ぼす(例えば促進する)ことで、機能性をもたらしてもよい。このような部分としては、コレステロール部分(レツィンガ(Letsinger)ら著,米国科学アカデミー紀要,1989,86:6553-6556)、コール酸(マノハラン(Manoharan)ら著,バイオオーガニック&メディシナルケミストリーレターズ(Biorg.Med.Chem.Let.),1994年,4:1053-1060)、例えばベリル-S-トリチルチオールなどのチオエーテル(マノハラン(Manoharanら著,ニューヨークアカデミーオブサイエンス紀要(Ann.N.Y.Acad.Sci.),1992年,660:306-309;マノハラン(Manoharan)ら著,バイオオーガニック&メディシナルケミストリーレターズ(Biorg.Med.Chem.Let.),1993年,3:2765-2770)、チオコレステロール(オベルハウザ(Oberhauser)ら著,ニュークレイックアシッドリサーチ(Nucl.Acids Res.),1992年,20:533-538)、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基などの脂肪族鎖(セゾン・ベモアラス(Saison-Behmoaras)ら著,欧州分子生物学機構ジャーナル(EMBO J),1991年,10:1111-1118;カバノフ(Kabanov)ら著,FEBSレターズ(FEBS Lett.),1990年,259:327-330;シュヴァルチュク(Svinarchuk)ら著,ビオシミ(Biochimie),1993年,75:49-54)、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-ホスホネートなどのリン脂質(マノハラン(Manoharan)ら著,テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Lett.),1995年,36:3651-3654;シア(Shea)ら著,ニュークレイックアシッドリサーチ(Nucl.Acids Res.),1990年,18:3777-3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(マノハラン(Manoharan)ら著,ヌクレオシド&ヌクレオチド(Nucleosides & Nucleotides),1995年,14:969-973)、またはアダマンタン酢酸(マノハラン(Manoharan)ら著,テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Lett.),1995年,36:3651-3654)、パルミチル部分(ミシュラ(Mishra)ら著,ビオキミカ ビオフィジカ アクタ(Biochim.Biophys.Acta),1995年,1264:229-237)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(クルック(Crooke)ら著,ジャーナル オブ ファーマコロジ エクスペリメンタル セラピューティクス(J.Pharmacol.Exp.Ther.),1996年,277:923-937)などの脂質部分が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一実施形態では、リガンドは、それが組み込まれたiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。いくつかの実施形態では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが不在である化学種と比較して、例えば分子、細胞または細胞型(例えば肝実質細胞などの肝細胞)、例えば細胞内または器官内区画などの区画、身体の組織または器官または領域などの選択された標的に対する、改善された親和性を提供する。典型的なリガンドは、二重鎖化核酸中の二本鎖対合形成に加わらない。
リガンドは、タンパク質(例えばヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)、低密度リポタンパク質(LDL:low-density lipoprotein)、またはグロブリン);炭水化物(例えばデキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸);または脂質などの天然物質を含み得る。リガンドはまた、例えば合成ポリアミノ酸などの合成ポリマーなど、組換えまたは合成分子であってもよい。ポリアミノ酸の例はポリアミノ酸を含み、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド(glycolied))共重合体、ジビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド-ポリアミン、ペプチド模倣ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミン四級塩、またはαらせんペプチドである。
リガンドはまた、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質など、例えば腎細胞などの特定細胞型に結合する抗体である、細胞または組織標的化剤などの標的化基を含み得る。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤プロテインA、ムチン炭水化物、多価乳糖、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、またはRGDペプチドまたはRGDペプチド模倣体であり得る。
いくつかの実施形態では、リガンドは、1つまたは複数のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体を含んでなる、GalNAcリガンドである。GalNAcリガンドの追加的複合体な説明は、炭水化物複合体と題された節に提供される。
リガンドのその他の例としては、染料、挿入剤(例えばアクリジン)、架橋剤(例えばソラレン(psoralene)、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えばフェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えばEDTA)、例えばコレステロールなどの親油性分子、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えばアンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えばPEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカ、酵素、ハプテン(例えばビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えばアスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えばイミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾール複合体、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
リガンドは、例えば糖タンパク質などのタンパク質;または例えば共リガンドに特異的親和性を有する分子などのペプチド;または例えばがん細胞、内皮細胞、または骨細胞などの指定された細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。それらはまた、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価乳糖、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、または多価フコースなどの非ペプチド化学種を含み得る。リガンドは、例えばリポ多糖、p38 MAPキナーゼ活性化因子、またはNF-κB活性化因子であり得る。
リガンドは、例えば細胞の微小管、微小繊維、および/または中間径フィラメントを破壊することで、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを増大させ得る薬剤などの物質であり得る。薬剤は、例えばタキソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるiRNAに付着するリガンドは、薬物動態調節因子(PK調節因子)の機能を果たす。PK調節因子としては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節因子としては、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかのホスホロチオエート結合を含んでなるオリゴヌクレオチドもまた、血清タンパク質に結合することが、知られており、したがって例えば、主鎖中に複数のホスホロチオエート結合を含んでなる、約5塩基、10塩基、15塩基、または20塩基オリゴヌクレオチドなどの短鎖オリゴヌクレオチドもまた、リガンドとして(例えばPK調節リガンドとして)本発明に適している。これに加えて、血清成分(例えば血清タンパク質)に結合するアプタマーもまた、本明細書に記載される実施形態中で、PK調節リガンドとして使用するのに適する。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチドは、結合分子のオリゴヌクレオチド上への付加から誘導されるものなどの、ペンダント反応性官能基を有するオリゴヌクレオチドを使用することで、合成されてもよい(下述)。この反応性オリゴヌクレオチドは、市販のリガンド、多様な保護基のいずれかを有する合成されたリガンド、またはそれに付着する結合部分を有するリガンドと、直接反応させてもよい。
本発明の複合体で使用されるオリゴヌクレオチドは、好都合に、そして慣例的に、周知の固相合成技術を通じて生成されてもよい。このような合成のための装置は、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)をはじめとする、いくつかの供給業者によって販売される。それに加えて、または代案として、このような当該技術分野で公知の合成のためのその他のあらゆる手段を用いてもよい。同様の技術を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体などのその他のオリゴヌクレオチドを調製することもまた知られている。
本発明のリガンド共役オリゴヌクレオチド、およびリガンド分子を有する配列特異的結合ヌクレオシド中では、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオシドは、適切なDNA合成機上で、標準ヌクレオチドまたはヌクレオシド前駆体、または既に結合部分を有するヌクレオチドまたはヌクレオシド複合体前駆体、既に結合部分を有するリガンド-ヌクレオチドまたはヌクレオシド複合体前駆体、または非ヌクレオシドリガンドを有する基本単位を使用して、組み立てられてもよい。
既に結合部分を有するヌクレオチド複合体前駆体を使用する場合、配列特異的結合ヌクレオシドの合成が典型的に完了し、次にリガンド分子が結合部分と反応されて、リガンド共役オリゴヌクレオチドが生成する。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドまたは結合ヌクレオシドは、市販されて、慣例的にオリゴヌクレオチド合成で使用される標準ホスホラミダイトおよび非標準ホスホラミダイトに加えて、リガンド-ヌクレオシド複合体から誘導されるホスホラミダイトを使用して、自動合成装置によって合成される。
脂質複合体
一実施形態では、リガンドは、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質と典型的に結合し得る。HSA結合リガンドは、例えば身体の非腎臓標的組織などの標的組織への複合体の分布を可能にする。例えば標的組織は、肝臓の実質細胞をはじめとする肝臓であり得る。HSAに結合し得るその他の分子もまた、リガンドとして使用し得る。例えば、ネプロキシンまたはアスピリンを使用し得る。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)複合体の分解耐性を増大させ得て、(b)標的細胞または細胞膜の標的化を増大させ、またはその中への輸送を増大させ得て、および/または(c)例えばHSAなどの血清タンパク質の結合を調節するのに使用され得る。
例えば複合体の標的組織への結合を制御する(例えば阻害する)などの調節のために、脂質ベースのリガンドを使用し得る。例えばより強力にHSAに結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的化される可能性がより低く、したがって身体から除去される可能性がより低い。HSAにより弱く結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、複合体を腎臓に標的化するために使用し得る。
一実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。例えばリガンドは、非腎臓組織への複合体の分布を向上させるように、十分な親和性でHSAに結合し得る。しかし親和性は、典型的に、HSAリガンド結合が逆転し得ないほどには強力でない。
別の実施形態では、脂質ベースのリガンドは、複合体の腎臓への分布を向上させるように、HSAに弱く結合し、または全く結合しない。腎細胞を標的とするその他の部分もまた、脂質ベースのリガンドに代えて、またはそれに加えて使用し得る。
別の態様では、リガンドは、例えば増殖細胞などの標的細胞に取り込まれる、ビタミンなどの部分である。これらは、例えばがん細胞などの悪性または非悪性型などの望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療するのに、特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E、およびKが挙げられる。その他の例示的なビタミンとしては、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのBビタミン、またはがん細胞に取り込まれるその他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。またHSAおよび低密度リポタンパク質(LDL)も挙げられる。
細胞透過剤
別の態様では、リガンドは、らせん細胞透過剤などの細胞透過剤である。一実施形態では、薬剤は両親媒性である。例示的な細胞透過剤は、tatまたはアンテナペディア(antennopedia)などのペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチドまたは偽ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用をはじめとする、修飾を受け得る。らせん剤は、典型的にα-らせん剤であり、親油性および疎油性相を有し得る。
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似した、定義された三次元構造に折り畳み可能な分子である。ペプチドおよびペプチド模倣薬のiRNA剤への付加は、細胞認識と吸収の促進などにより、iRNAの薬物動態分布に影響を及ぼし得る。ペプチドまたはペプチド模倣薬部分は、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長など、約5~50アミノ酸長であり得る。
ペプチドまたはペプチド模倣薬は、例えば細胞透過ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または疎水性ペプチド(例えば主にTyr、TrpまたはPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、束縛ペプチドまたは架橋ペプチドであり得る。別の代案では、ペプチド部分は疎水性膜移行配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAP(配列番号3367)を有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えばアミノ酸配列AALLPVLLAAP(配列番号3368))もまた、標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を越えて、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質をはじめとする、多数の極性分子を輸送し得る「送達」ペプチドであり得る。例えばHIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ(配列番号3369))およびショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号3370))からの配列は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチドまたはペプチド模倣薬は、ファージ-ディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されるペプチドなど、DNAのランダム配列によってコードされ得る(ラム(Lam)ら著,ネイチャー(Nature),354:82-84,1991年)。典型的に、組み込まれたモノマー単位を介してdsRNA剤に係留される、ペプチドまたはペプチド模倣剤は、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチド、またはRGD模倣体などの、細胞標的化ペプチドである。ペプチド部分は、約5アミノ酸~約40アミノ酸長に及び得る。ペプチド部分は、安定性を増大させ、または立体構造特性を誘導するような、構造修飾を有し得る。下述の構造修飾のいずれかを使用し得る。
本発明の組成物および方法で使用されるRGDペプチドは、直鎖または環状であってもよく、例えばグリコシル化またはメチル化により修飾して、特定組織への標的化を容易にしてもよい。RGD含有ペプチドおよびペプチド模倣剤(peptidiomimemtics)としては、D-アミノ酸、ならびに合成RGD模倣体が挙げられる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的にするその他の部分を使用し得る。このリガンドの好ましい複合体は、PECAM-1またはVEGFを標的にする。
RGDペプチド部分を使用して、例えば内皮腫瘍細胞または乳がん腫瘍細胞のような腫瘍細胞などの特定の細胞型を標的にし得る(ジッツマン(Zitzmann)ら著,Cancer Res.,62:5139-43,2002年)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓をはじめとする、多様なその他の組織の腫瘍へのdsRNA剤の標的化を容易にし得る(アオキ(Aoki)ら著.,Cancer Gene Therapy 8:783-787,2001年)。典型的に、RGDペプチドは、腎臓へのiRNA剤の標的化を容易にする。RGDペプチドは、直鎖または環状であり得て、例えばグリコシル化またはメチル化によって修飾して、特定組織の標的化を容易にし得る。例えばグリコシル化RGDペプチドは、αVs3を発現する腫瘍細胞に、iRNA剤を送達し得る(ハブネル(Haubner)ら著,Jour.Nucl.Med.,42:326-336,2001年)。
「細胞透過ペプチド」は、例えば細菌または真菌細胞などの微生物細胞、またはヒト細胞などの哺乳類細胞などの細胞に浸透できる。微生物細胞透過ペプチドは、例えばα-らせん直鎖ペプチド(例えばLL-37またはセロピン(Ceropin)P1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えばα-デフェンシン、β-デフェンシンまたはバクテネシン)、または1つまたは2つの主要アミノ酸のみを含有するペプチド(例えばPR-39またはインドリシジン)であり得る。細胞透過ペプチドはまた、核局在化シグナル(NLS:nuclear localization signal)を含み得る。例えば細胞透過ペプチドは、HIV-1 gp41の融合ペプチドドメインおよびSV40大型T抗原のNLSに由来する、MPGなどの二分両親媒性ペプチドであり得る(シメオニ(Simeoni)ら著、ニュークレイックアシッドリサーチ(Nucl.Acids Res.)、第31巻、p.2717~2724、2003年)。
炭水化物複合体
本発明の組成物および方法のいくつかの実施形態では、iRNAオリゴヌクレオチドは、炭水化物をさらに含んでなる。炭水化物共役iRNAは、本明細書に記載されるような、核酸ならびに生体内治療用途に適する組成物の生体内送達に、有利である。本明細書の用法では、「炭水化物」は、各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子を有する(直鎖、分枝または環状であり得る)1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物それ自体;またはその一部として各炭素原子に結合する酸素、窒素またはイオウ原子がある、少なくとも6個の炭素原子をそれぞれ有する(直鎖、分枝または環状であり得る)1つまたは複数の単糖単位で構成される炭水化物部分を有する化合物のいずれかである化合物を指す。代表的炭水化物としては、糖類(単糖類、二糖類、三糖類、および約4、5、6、7、8、または9個の単糖単位を含有するオリゴ糖類)、およびデンプン、グリコーゲン、セルロース、および多糖類ガムなどの多糖類が挙げられる。特定の単糖類としては、C5以上(例えばC5、C6、C7、またはC8)の糖類が挙げられ;二および三糖類としては、2または3個の単糖単位を有する糖類が挙げられる(例えばC5、C6、C7、またはC8)。
一実施形態では、炭水化物複合体は、単糖を含んでなる。一実施形態では、単糖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)である。GalNAc複合体は、例えば、その内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第8,106,022号明細書に記載される。いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は、iRNAを特定の細胞に標的化するリガンドの役割を果たす。いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は、例えば、肝細胞(例えば肝実質細胞)のアシアロ糖タンパク質受容体のためのリガンドの役割を果たすことで、iRNAを肝細胞に標的化する。
いくつかの実施形態では、炭水化物複合体は、1つまたは複数のGalNAc誘導体を含んでなる。GalNAc誘導体は、例えば二価または三価の分枝リンカーなどのリンカーを介して付着してもよい。いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は、センス鎖の3’末端と共役する。いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は、例えば本明細書に記載されるリンカーなどのリンカーによって、iRNA剤と(例えばセンス鎖の3’末端と)共役する。
いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は、
である。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、例えばXがOまたはSである、以下の概略図に示される通りなリンカーを介して、炭水化物複合体に付着する。
いくつかの実施形態では、RNAi剤は、表1で定義されて下に示されるL96に共役する。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法で使用される炭水化物複合体は、
からなる群から選択される。
本明細書に記載される実施形態で使用するために別の代表的炭水化物複合体としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)
が挙げられるが、これに限定されるものではない。
いくつかの実施形態では、炭水化物複合体は、PK調節因子および/または細胞透過ペプチドなどであるが、これに限定されるものではない、上述の1つまたは複数の追加的なリガンドをさらに含んでなる。
一実施形態では、本発明のiRNAは、リンカーを通じて炭水化物と共役する。本発明の組成物および方法のリンカーと共役するiRNA炭水化物の非限定的例としては、
(式中、
XまたはYの一方はオリゴヌクレオチドであり、他方は水素である)
が挙げられるが、これに限定されるものではない。
リンカー
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される複合体またはリガンドは、切断可能または切断不能であり得る、様々なリンカーによって、iRNAオリゴヌクレオチドに付着し得る。
「リンカー」または「連結基」という用語は、例えば化合物の2つの部分を共有結合するなど、化合物の2つの部分を結合する有機部分を意味する。リンカーは、典型的に、直接結合;または酸素またはイオウなどの原子;NR8、C(O)、C(O)NH、SO、SO2、SO2NHなどの単位;または、置換または非置換アルキル、置換または非置換アルケニル、置換または非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘレロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル,アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘレロアリールなどであるが、これに限定されるものではない原子鎖を含んでなり、その1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R8)、C(O)、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、置換または非置換複素環式で中断されまたは終結され得て、式中、R8は水素、アシル、脂肪族または置換脂肪族である。一実施形態では、リンカーは、約1~24個の原子、2~24、3~24、4~24、5~24、6~24、6~18、7~18、8~18個の原子、7~17、8~17、6~16、7~16、または8~16個の原子である。
一実施形態では、本発明のdsRNAは、式(XXXI)~(XXXIV)のいずれかで示される構造群から選択される、二価または三価の分枝リンカーと共役する。
式中、
q2A、q2B、q3A、q3B、q4A、q4B、q5A、q5B、およびq5Cは、独立して、0~20の各出現を表し、反復単位は、同一であるかまたは異なり得て;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
4A、T
5B、T
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NHまたはCH
2Oであり;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、アルキレン、置換アルキレンであり、1つまたは複数のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡CまたはC(O)の1つまたは複数によって、中断または終結され得て;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、各出現についてそれぞれ独立して、不在、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
またはヘテロシクリルであり;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5BおよびL
5Cは、リガンドを表し;すなわち各出現についてそれぞれ独立して、単糖(GalNAcなど)、二糖類、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖類であり;R
aは、Hまたはアミノ酸側鎖である。三価の共役GalNAc誘導体は、
式(XXXV)、
(式中、L
5A、L
5BおよびL
5Cは、GalNAc誘導体などの単糖を表す)などの標的遺伝子の発現を阻害するために、RNAi剤と共に使用するのに特に有用である。
GalNAc誘導体に共役する適切な二価および三価の分枝リンカー基の例としては、式II、VII、XI、X、およびXIIIとして、上で列挙された構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
切断可能連結基は、細胞外で十分に安定しているが、標的細胞への侵入時に切断されて、リンカーがつなぎ止めている2つの部分を放出するものである。好ましい実施形態では、切断可能連結基は、標的細胞中で、または(例えば細胞内条件を模倣し、またはそれを表すように選択し得る)第1の標準状態下で、対象の血液中よりも、または(例えば血液または血清中で見られる条件を模倣し、またはそれを表すように選択し得る)第2の標準状態下よりも、少なくとも約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上、または少なくとも約100倍迅速に切断する。
切断可能連結基は、例えばpH、酸化還元電位または分解性分子の存在などの切断作用物質の影響を受けやすい。一般に切断作用物質は、血清または血液中よりも細胞中でより一般的であり、またはより高いレベルまたは活性で見られる。このような分解性作用物質の例としては、例えば還元によって酸化還元切断可能連結基を分解し得る、細胞中に存在する、酸化または還元酵素またはメルカプタンなどの還元剤をはじめとする、特定の基質のために選択された、または基質特異性がない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソームまたは例えば5以下のpHをもたらすものなどの酸性環境をもたらし得る作用物質;一般酸、ペプチダーゼ(基質特異性であり得る)、およびホスファターゼとして作用することで、酸切断可能連結基を加水分解または分解し得る酵素が挙げられる。
ジスルフィド結合などの切断可能連結基は、pHに対する感受性が高くあり得る。ヒト血清のpHが7.4であるのに対し、細胞内平均pHはわずかにより低く、約7.1~7.3の範囲にわたる。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらにより酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能連結基を有し、それによって細胞中のリガンドから、または細胞の所望の区画へ、カチオン性脂質が放出される。
リンカーは、特定の酵素によって切断可能な切断可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能連結基のタイプは、標的とされる細胞に左右され得る。例えば肝臓を標的化するリガンドは、エステル基を含むリンカーを通じてカチオン性脂質に連結し得る。肝細胞はエステラーゼに富み、したがってリンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも、肝細胞中でより効率的に切断される。エステラーゼに富むその他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣の細胞が挙げられる。
ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞および滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的化する際に使用し得る。
一般に切断可能連結基の候補の適合性は、候補連結基を切断する分解性作用物質(条件)の能力を検査することで評価し得る。切断可能連結基の候補は、血中において、またはその他の非標的組織との接触時に、切断に抵抗する能力についてもまた検査することもまた望ましい。したがって第1の条件が標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件がその他の組織または例えば血液または血清などの生体液中での切断を示すように選択される、第1および第2の条件間の切断の相対的感受性を判定し得る。評価は、無細胞系中、細胞中、細胞培養中、臓器または組織培養中、または全身の動物中で実施し得る。無細胞または培養条件で最初の評価を行い、全身の動物中でのさらなる評価によって確認することが有用なこともある。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または約100倍より迅速に切断される。
酸化還元切断可能連結基
一実施形態において、切断可能連結基は、還元または酸化に際して切断される酸化還元切断可能連結基である。還元的切断可能連結基の一例は、ジスルフィド連結基(-S-S-)である。切断可能連結基候補が、適切な「還元的切断可能連結基」か、または例えば特定のiRNA部分および特定の標的作用物質と共に使用するのに適するかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に頼ることができる。例えば候補は、例えば標的細胞などの細胞中で観察される切断速度を模倣する、当該技術分野で公知の試薬を使用して、ジチオスレイトール(DTT)、またはその他の還元剤とのインキュベーションによって評価し得る。候補はまた、血液または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価し得る。一実施形態では、候補化合物は、血中で最大で約10%切断される。別の実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(または細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも約2、4、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または約100倍より迅速に分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で標準酵素動態アッセイを使用して、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較して判定し得る。
リン酸ベースの切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、リン酸ベースの切断可能連結基を含んでなる。リン酸ベースの切断可能連結基は、リン酸基を分解または加水分解する作用物質によって切断され得る。細胞中でリン酸基を切断する作用物質の一例は、細胞中のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの連結基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、-O-P(S)(H)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
酸切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、酸切断可能連結基を含んでなる。酸切断可能連結基は、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい実施形態では、酸切断可能連結基は、pH約6.5以下(例えば約6.0、5.75、5.5、5.25、5.0以下)の酸性環境内において、または一般酸として作用し得る酵素などの作用物質によって切断される。細胞中では、エンドソームおよびリソソームなどの特定の低pH細胞小器官が、酸切断可能連結基の切断環境を提供し得る。酸切断可能連結基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸エステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸切断可能基は、一般式-C=NN-、C(O)O、または-OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、炭素がエステルの酸素に付着する場合(アルコキシ基)は、アリール基;置換アルキル基;またはジメチルペンチルまたはt-ブチルなどの三級アルキル基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
エステルベースの切断可能連結基
別の実施形態では、切断可能なリンカーは、エステルベースの切断可能連結基を含んでなる。エステルベースの切断可能連結基は、細胞中でエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能連結基の例としては、アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。エステル切断可能連結基は、一般式-C(O)O-、または-OC(O)-を有する。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
ペプチドベースの切断可能連結基
さらに別の実施形態では、切断可能なリンカーは、ペプチドベースの切断可能連結基を含んでなる。ペプチドベースの切断可能連結基は、細胞中でペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能連結基は、アミノ酸の間に形成されて、オリゴペプチド(例えばジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じる、ペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(-C(O)NH-)は含まれない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレンまたはアルキネレン間に形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断基は、一般にアミノ酸の間に形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まれない。ペプチドベースの切断可能連結基は、一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-を有し、式中、RAおよびRBは、2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
RNA複合体の調製を教示する、代表的な米国特許としては、そのそれぞれの内容全体を参照によって本明細書に援用する、米国特許第4,828,979号明細書;米国特許第4,948,882号明細書;米国特許第5,218,105号明細書;米国特許第5,525,465号明細書;米国特許第5,541,313号明細書;米国特許第5,545,730号明細書;米国特許第5,552,538号明細書;米国特許第5,578,717、5,580,731号明細書;米国特許第5,591,584号明細書;米国特許第5,109,124号明細書;米国特許第5,118,802号明細書;米国特許第5,138,045号明細書;米国特許第5,414,077号明細書;米国特許第5,486,603号明細書;米国特許第5,512,439号明細書;米国特許第5,578,718号明細書;米国特許第5,608,046号明細書;米国特許第4,587,044号明細書;米国特許第4,605,735号明細書;米国特許第4,667,025号明細書;米国特許第4,762,779号明細書;米国特許第4,789,737号明細書;米国特許第4,824,941号明細書;米国特許第4,835,263号明細書;米国特許第4,876,335号明細書;米国特許第4,904,582号明細書;米国特許第4,958,013号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,082,830号明細書;米国特許第5,112,963号明細書;米国特許第5,214,136号明細書;米国特許第5,245,022号明細書;米国特許第5,254,469号明細書;米国特許第5,258,506号明細書;米国特許第5,262,536号明細書;米国特許第5,272,250号明細書;米国特許第5,292,873号明細書;米国特許第5,317,098号明細書;米国特許第5,371,241、5,391,723号明細書;米国特許第5,416,203、5,451,463号明細書;米国特許第5,510,475号明細書;米国特許第5,512,667号明細書;米国特許第5,514,785号明細書;米国特許第5,565,552号明細書;米国特許第5,567,810号明細書;米国特許第5,574,142号明細書;米国特許第5,585,481号明細書;米国特許第5,587,371号明細書;米国特許第5,595,726号明細書;米国特許第5,597,696号明細書;米国特許第5,599,923号明細書;米国特許第5,599,928and5,688,941号明細書;米国特許第6,294,664号明細書;米国特許第6,320,017号明細書;米国特許第6,576,752号明細書;米国特許第6,783,931号明細書;米国特許第6,900,297号明細書;米国特許第7,037,646号明細書:米国特許第8,106,022号明細書が挙げられるが、これに限定されるものではない。
所与の化合物中の全ての位置が一様に修飾される必要はなく、事実上、前述の修飾の2つ以上が、単一化合物中に、またはiRNA内の単一ヌクレオシド中にさえ、組み込まれ得る。本発明は、キメラ化合物であるiRNA化合物もまた含み得る。
「キメラ(chimeric)」iRNA化合物または「キメラ(chimeras)」は、本発明の文脈で、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位から、すなわちdsRNA化合物の場合はヌクレオチドから構成される、2つ以上の化学的に異なる領域を含有するiRNA化合物、例えばdsRNAである。これらのiRNAは、典型的に、iRNAに、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増大、細胞内取り込みの増大、および/または標的核酸に対する結合親和性の増大を与えるように、RNAが修飾される少なくとも1つの領域を含有する。iRNAの追加的な領域が、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断できる、酵素基質の役割を果たしてもよい。一例として、RNase Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。したがってRNase Hの活性化はRNA標的の切断をもたらし、それによって遺伝子発現のiRNA阻害効率を大幅に高める。その結果、同一標的領域とハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシdsRNAと比較して、キメラdsRNAが使用される場合、より短いiRNAによって、比較できる結果が得られることが多い。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動、そして必要ならば当該技術分野で公知の関連核酸ハイブリダイゼーション技術によって、慣例的に検出し得る。
場合によっては、iRNAのRNAは、非リガンド基によって修飾し得る。iRNAの活性、細胞分布または細胞内取り込みを高めるために、いくつかの非リガンド分子がiRNAに共役結合されており、このような共役結合を実施する手順は、学術文献で入手できる。このような非リガンド部分は、コレステロールなどの脂質部分(クボ(Kubo),T.ら著、バイオケミカル&バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Comm.)、2007年、第365巻、第1号、p.54~61;レッツンガー(Letsinger)ら著、米国科学アカデミー紀要1989年、第86巻、p.6553)、コール酸(マノハラン(Manoharan)ら著、バイオオーガニック メディカルケミストリー レターズ(Bioorg.Med.Chem.Let.)、1994年、第4巻、p.1053)、例えばヘキシル-S-トリチルチオールなどのチオエーテル(マノハラン(Manoharan)ら著、ニューヨークアカデミーオブサイエンス紀要(Ann.N.Y.Acad.Sci.)、1992年、第660巻、p.306;マノハラン(Manoharan)ら著、バイオオーガニック メディカルケミストリー レターズ(Bioorg.Med.Chem.Let.)、1993年、第3巻、p.2765)、チオコレステロール(オーバーハウザー(Oberhauser)ら著、ニュークレイックアシッドリサーチ(Nucl.Acids Res.)、1992年、第20巻、p.533)、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基などの脂肪族鎖(セゾン-ベーモアラス(Saison-Behmoaras)ら著、欧州分子生物学機構ジャーナル(EMBO J).、1991年、第10巻、p.111;カバノフ(Kabanov)ら著、FEBSレターズ(FEBS Lett.)、1990年、第259巻、p.327;スビナルチャク(Svinarchuk)ら著、ビオシミ(Biochimie)、1993年、第75巻、p.49)、例えばジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールまたはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネートなどのリン脂質(マノハラン(Manoharan)ら著、テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Lett.)、1995年、第36巻、p.3651;シア(Shea)ら著、ニュークレイックアシッドリサーチ(Nucl.Acids Res.)、1990年、第18巻、p.3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(マノハラン(Manoharan)ら著、ヌクレオシド&ヌクレオチド(Nucleosides & Nucleotides)、1995年、第14巻、p.969)、またはアダマンタン酢酸(マノハラン(Manoharan)ら著、テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Lett.)、1995年、第36巻、p.3651)、パルミチル部分(ミシュラ(Mishra)ら著、ビオキミカ ビオフィジカ アクタ(Biochim.Biophys.Acta)、1995年、第1264巻、p.229)、またはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(クルック(Crooke)ら著、ジャーナル オブ ファーマコロジ エクスペリメンタル セラピューティクス(J.Pharmacol.Exp.Ther.)、1996年、第277巻、p.923)を含む。このようなRNA複合体の調製を教示する代表的な米国特許は、上に列挙した。典型的な共役結合プロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するRNAの合成を伴う。次に適切なカップリングまたは活性化試薬を使用して、アミノ基を共役結合する分子と反応させる。共役結合反応は、溶液相中で、RNAが固体支持体になおも結合する間に、またはRNA切断に続いて実施してもよい。HPLCによるRNA複合体精製は、典型的に純粋な複合体を与える。
iRNA送達
それを必要とする対象へのiRNAの送達は、いくつかの異なる方法で達成し得る。生体内送達は、例えばdsRNAなどのiRNAを含んでなる組成物を対象に投与することで直接実施し得る。代案としては、送達は、iRNAをコードして発現を誘導する、1つまたは複数のベクターを投与することで、間接的に実施し得る。これらの代替形態について以下で論じる。
直接送達
一般に、核酸分子のあらゆる送達方法をiRNAで使用するために、適応させ得る(例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、アクタール(Akhtar)S.およびジュリアン(Julian)RL.著、1992年、トレンズ イン セルバイオロジー(Trends Cell.Biol.)、第2巻、第5号、p.139~144および国際公開第94/02595号パンフレットを参照されたい)。しかしiRNA分子を生体内に成功裏に送達するために検討することが重要な、3つの要素がある:(a)送達される分子の生物学的安定性、(2)非特異的効果の防止、および(3)送達される分子の標的組織内蓄積。iRNAの非特異的効果は、例えば組織(非限定的例として腫瘍)中への直接注射または移植などの局所投与によって、または調製品を局所的に投与にすることで、最小化し得る。治療部位への局所投与は、作用物質の局所濃度を最大化し、そうしなければ作用物質によって害を被ることもある、または作用物質を分解することもある、全身組織の作用物質への曝露を限定し、iRNA分子のより低い総用量での投与を可能にする。いくつかの研究は、iRNAが局所的に投与された場合に、成功裏の遺伝子産物ノックダウン示している。例えばカニクイザルにおける硝子体内注射による(トレンティーノ(Tolentino),MJ.ら著、2004年、レティーナ(Retina)、第24巻、p.132~138)、およびマウスにおける網膜下注射による(ライヒ(Reich),SJ.ら著、2003年、モレキュラービジョン(Mol.Vis.)、第9巻、p.210~216)、VEGF dsRNAの眼内送達は、どちらも加齢黄斑変性の実験モデルで新血管形成を防止することを示した。これに加えて、マウスにおけるdsRNAの直接腫瘍内注射は、腫瘍体積を低下させ(ピル(Pille),J.ら著、2005年、モレキュラー セラピー(Mol.Ther.)、第11巻、p.267~274)、腫瘍を有するマウスの生存期間を延長し得た(キム(Kim),WJ.ら著、2006年、モレキュラー セラピー(Mol.Ther.)、第14巻、p.343~350;リー(Li),S.ら著、2007年、モレキュラー セラピー(Mol.Ther.)第15巻、p.515~523)。RNA干渉は、直接注射によるCNSへの(ドーン(Dorn),G.ら著、2004、ニュークレイック アシッズ(Nucleic Acids) 32:e49;タン(Tan),PH.ら著、2005年、ジーン セラピー(Gene Ther.)、第12巻、p.59~66;マキムラ(Makimura),H.ら著、2002年、BMCニューロサイエンス(BMC Neurosci.)、第3巻、p.18;シシュキナ(Shishkina),GT.ら著、2004年、ニューロサイエンス(Neuroscience)、第129巻、p.521~528;タッカー(Thakker),ER.ら著、2004年、米国科学アカデミー紀要、第101巻、p.17270~17275;アカネヤ(Akaneya),Y.ら著、2005年、ジャーナル オブ ニューロフィジオロジ(J.Neurophysiol.)、第93巻、p.594~602)、および鼻腔内投与による肺への(ハワード(Howard),KA.ら著、2006年、モレキュラー セラピー(Mol.Ther.)、第14巻、p.476~484;チャン(Zhang),X.ら著、2004年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第279巻、p.10677~10684;ビトコ(Bitko),V.ら著、2005年、ネイチャー メディスン(Nat.Med.)、第11巻、p.50~55)局所性送達の成功が示されている。疾患を治療するために、iRNAを全身的に投与するために、RNAは修飾され、または代案としては薬物送達系を使用して送達され得て;どちらの方法も、生体内エンド-およびエキソ-ヌクレアーゼによるdsRNAの迅速な分解を防止するように作用する。
RNAまたは薬学的担体の修飾はまた、標的組織へのiRNA組成物の標的化も可能にし得て、望ましくない非特異的効果が回避される。iRNA分子は、例えば本明細書に記載される脂質または炭水化物基などのその他の基との化学的結合によって修飾され得る。このような複合体を使用して、例えば肝細胞、例えば肝実質細胞などの特定の細胞に、iRNAを標的化し得る。例えば、GalNAc複合体または脂質(例えばLNP)製剤を使用して、例えば肝実質細胞のような肝細胞などの特定の細胞に、iRNAを標的化し得る。
コレステロールなどの親油性基は、細胞内取り込みを向上させ、分解を防止する。例えば親油性コレステロール部分に共役結合されたApoBに対抗するiRNAがマウスに全身注射され、肝臓および空腸の双方でapoB mRNAノックダウンがもたらされた(サウチェック(Soutschek),J.ら著、2004年、ネイチャー(Nature)、第432巻、p.173~178)。iRNAのアプタマーへの共役結合は、前立腺がんのマウスモデルにおいて腫瘍増殖を抑制し、腫瘍退縮を媒介することが示されている。(マクナマラ(McNamara),JO.ら著、2006年、ネイチャー バイオテクノロジー(Nat.Biotechnol.)、第24巻、p.1005~1015)。代案の実施形態では、iRNAは、ナノ粒子、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの薬物送達システムを使用して送達され得る。正に帯電したカチオン性送達系は、iRNA分子(負に帯電)の結合を容易にして、負に帯電した細胞膜における相互作用もまた高めて、細胞によるiRNAの効率的な取り込みを可能にする。カチオン性脂質、デンドリマー、またはポリマーは、iRNAに結合され、またはiRNAを包む小胞またはミセルを形成するように誘導され得る(例えばキム(Kim)SH.ら著、2008年、ジャーナル オブ コントロールド リリース(Journal of Controlled Release)、第129巻、第2号、p.107~116を参照されたい)。小胞またはミセルの形成は、全身投与した際にiRNAの分解をさらに防止する。カチオン性iRNA複合体を作成して投与する方法は、十分に当業者の能力の範囲内である(例えばその内容全体を参照によって本明細書に援用する、ソレンセン(Sorensen),DR.ら著、2003年、ジャーナル オブ モレキュラー バイオトロジー(J.Mol.Biol)、第327巻、p.761~766;フェルマ(Verma),UN.ら著、2003年、クリニカル キャンサー リサーチ(Clin.Cancer Res.)、第9巻、p.1291~1300;ア-ノルド(Arnold),ASら著、2007年、ジャーナル オブ ハイパーテンション(J.Hypertens.)、第25巻、p.197~205を参照されたい)。iRNAの全身性送達に有用な薬物送達系のいくつかのものの非限定的例としては、DOTAP(ソレンセン(Sorensen),DR.ら著、2003年,前出;フェルマ(Verma),UN.ら著、2003年,前出),オリゴフェクトアミン(Oligofectamine),“安定な核酸ー脂質粒子(solid nucleicacid lipidparticles)”(ツィマーマン(Zimmermann),TS.ら著、2006年、ネイチャー(Nature)、第441巻、p.111~114)、カルジオリピン(チェン(Chien),PY.ら著、2005年、キャンサー ジーン セラピー(Cancer Gene Ther.)、第12巻、p.321~328;パル(Pal),A.ら著、2005年、インターナショナル ジャーナル オブ オンコロジー(Int J.Oncol.)、第26巻、p.1087~1091)、ポリエチレンイミン(ボネ(Bonnet)ME.ら著、2008年、ファーマスーティカル リサーチ(Pharm.Res.)、8月16日オンライン先行発表;アイグナー(Aigner),A.著、2006年、ジャーナル オブ バイオメディスン&バイオテクノロジー(J.Biomed.Biotechnol.)、p.71659)、Arg-Gly-Asp(RGD)ペプチド(リュ-(Liu),S.著、2006年、モレキュラー ファーマコロジ(Mol.Pharm.)、第3巻、p.472~487)、およびポリアミドアミン(トナリア(Tomalia),DA.ら著、2007年、バイオケミカル ソサエティ トランザクション(Biochem.Soc.Trans.)、第35巻、p.61~67;ヨー(Yoo),H.ら著、1999年、ファーマスーティカル リサーチ(Pharm.Res.)、第16巻、p.1799~1804)が挙げられる。いくつかの実施形態では、全身投与のために、iRNAはシクロデキストリンと複合体を形成する。iRNAおよびシクロデキストリンの投与方法および医薬組成物は、その内容全体を参照によって本明細書に援用する米国特許第7,427,605号明細書にある。
iRNAをコードするベクター
別の態様では、ALAS1遺伝子標的化iRNAは、DNAまたはRNAベクターに挿入された転写単位から発現され得る(例えばクチュール(Couture),Aら著、TIG.、1996年、第12巻、p.5~10;スキラーン(Skillern),A.,ら著に付与されたPCT国際公開第00/22113号パンフレット;コンラッド(Conrad)に付与されたPCT国際公開第00/22114号パンフレット;およびコンラッド(Conrad)に付与された米国特許第6,054,299号明細書を参照されたい)。発現は、使用される特定のコンストラクトおよび標的組織または細胞型次第で、一過性(数時間から数週間程度)または持続性(数週間から数ヶ月以上)であり得る。これらの導入遺伝子は、組み込み型または非組み込み型ベクターであり得る、直鎖コンストラクト、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入し得る。導入遺伝子はまた、それが染色体外プラスミドとして遺伝するのを可能にするよう構築し得る(ガスマン(Gassmann)ら著、米国科学アカデミー紀要1995年、第92巻、p.1292)。
個々のiRNA鎖または鎖群は、発現ベクター上のプロモータから転写され得る。2つの別個の鎖を発現させて、例えばdsRNAを生成させる場合、(例えば形質移入または感染によって)2つの別個の発現ベクターを標的細胞に同時導入し得る。代案としては、そのどちらも同一発現プラスミド上に位置するプロモータによって、dsRNAの個々の鎖を転写し得る。一実施形態では、dsRNAは、dsRNAがステムループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結する逆位反復として発現される。
iRNA発現ベクターは、典型的にDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。例えば脊椎動物細胞などの真核生物細胞に適合する発現ベクターを使用して、本明細書に記載されるiRNA発現のための組換えコンストラクトを生成し得る。真核細胞発現ベクターは当該技術分野で周知であり、いくつかの商業的供給元から入手できる。典型的にこのようなベクターは、所望の核酸断片を挿入するための都合良い制限酵素認識部位を含有する。iRNAを発現するベクターの送達は、静脈内または筋肉内投与などによる、患者から外植された対象細胞への投与とそれに続く患者への再導入による、または所望の標的細胞への導入を可能にするその他のあらゆる手段による、全身性送達であり得る。
iRNA発現プラスミドは、カチオン性脂質担体(例えばオリゴフェクトアミン)または非カチオン性脂質ベースの担体(例えばTransit-TKO(商標))との複合体として、標的細胞に形質移入し得る。1週間以上の期間にわたって標的RNAの異なる領域を標的化する、iRNA媒介ノックダウンのための複数脂質形質移入もまた、本発明により検討される。ベクターの宿主細胞への成功裏の導入は、様々な既知の方法を使用してモニターし得る。例えば一過性形質移入は、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光性マーカなど、レポーターによって示し得る。生体外における細胞への安定した形質移入は、形質移入細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特定環境要素(例えば抗生物質および薬剤)耐性を提供するマーカを使用して、確実にし得る。
本明細書に記載される方法および組成物と共に利用し得るウイルスベクターシステムとしては、(a)アデノウイルスベクター;(b)レンチウイルスベクター、モロニーマウス白血病ウイルスなどをはじめとするが、これに限定されるものではないレトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)乳頭腫ウイルスベクター;(h)ピコルナウィルスベクター;(i)例えばワクシニアウイルスベクターなどのオルソポックス、または例えばカナリア痘または鶏痘などのアビポックスなどのポックスウイルスベクター;および(j)ヘルパー依存性またはガットレスアデノウイルスが挙げられるが、これに限定されるものではない。複製欠陥ウイルスもまた、有利であり得る。異なるベクターは、細胞のゲノムに組み込まれ、または組み込まれない。コンストラクトは、必要に応じて、形質移入のためのウイルス配列を含み得る。代案としては、コンストラクトは、例えばEPVおよびEBVベクターなどのエピソーム複製ができるベクターに組み込まれてもよい。iRNAの組換え発現のためのコンストラクトは、一般に、標的細胞中のiRNA発現を確実にするための、例えばプロモータ、エンハンサーなどの調節因子を必要とする。ベクターおよびコンストラクトについて検討されるその他の態様は、以下にさらに詳しく記載する。
iRNAを送達するのに有用なベクターは、所望の標的細胞または組織中のiRNAの発現に十分な調節因子(プロモータ、エンハンサーなど)を含む。調節因子は、構成的または調節/誘導性発現のいずれかを提供するように選択し得る。
iRNAの発現は、例えば循環グルコースレベル、またはホルモンなどの特定の生理学的制御因子に感受性の誘導性制御配列を使用して、正確に調節し得る(ドチェルティ(Docherty)ら著、1994年、FASEBジャーナル、第8巻、p.20~24)。細胞または哺乳類におけるdsRNA発現の制御に適するこのような誘導性発現系としては、例えばエクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量体化の化学誘導物質、およびイソプロピル-β-D1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による調節が挙げられる。当業者は、iRNA導入遺伝子の意図される用途に基づいて、適切な調節/プロモータ配列を選択できる。
特定の実施形態では、iRNAをコードする核酸配列を含有するウイルスベクターを使用し得る。例えばレトロウイルスベクターを使用し得る(ミラー(Miller)ら著、メソッズ イン エンザイモロジー(Meth.Enzymol.)、第217巻、p.581~599、1993年を参照されたい)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正しいパッケージングと宿主細胞DNAへの組み込みに必要な成分を含有する。iRNAをコードする核酸配列は、患者への核酸の送達を容易にする、1つまたは複数のベクターにクローン化される。レトロウイルスベクターに関してより詳しくは、例えば化学療法により高い耐性を示す幹細胞を生成するために、mdr1遺伝子を造血幹細胞に送達するレトロウイルスベクターの使用を記載する、ボーゼン(Boesen)ら著、バイオセラピー(Biotherapy)、第6巻、p.291~302、1994年にある。遺伝子療法におけるレトロウイルスベクターの使用を例証するその他の参考文献は、クラウス(Clowes)ら著、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)、第93巻、p.644~651、1994年;キエム(Kiem)ら著、ブラッド(Blood)、第83巻、p.1467~1473、1994年;サルモンズ(Salmons)およびグンズバーグ(Gunzberg)著、ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第4巻、p.129~141、1993年;およびグロスマン(Grossman)およびウィルソン(Wilson)著、カレント オピニオン イン ジェネティクス&ディベロップメント(Curr.Opin.in Genetics and Devel.)、第3巻、p.110~114、1993年である。使用が検討されるレンチウイルスベクターとしては、例えば参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,143,520号明細書;米国特許第5,665,557号明細書;および米国特許第5,981,276号明細書に記載されるHIVベースのベクターが挙げられる。
アデノウイルもまた、iRNAの送達で使用するために検討される。アデノウイルは、例えば気道上皮に遺伝子を送達するために、特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルは気道上皮に天然で感染して、軽症の疾患を引き起こす。アデノウイルスベースの送達系その他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルは、非分裂細胞に感染できる利点を有する。コザルスキー(Kozarsky)およびウィルソン(Wilson)、カレント オピニオン イン ジェネティクス&ディベロップメント(Current Opinion in Genetics and Development)第3巻、p.499~503、1993年は、アデノウイルスベースの遺伝子療法のレビューを提示する。バウト(Bout)ら著、ヒューマン ジーン セラピー(Human Gene Therapy)、第5巻、p.3~10、1994年は、遺伝子をアカゲザルの気道上皮に移入するための、アデノウイルスベクターの使用を実証した。遺伝子療法におけるアデノウイルの使用のその他の事例は、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら著、サイエンス(Science)、第252巻、p.431~434、1991年;ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら著、セル(Cell)、第68巻、p.143~155、1992年;マストランジェリ(Mastrangeli)ら著、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)、第91巻、p.225~234、1993年;国際公開第94/12649号パンフレット;およびワン(Wang)ら著、ジーン セラピー(Gene Therapy)、第2巻、p.775~783、1995年にある。本発明で取り上げるiRNAを発現するための適切なAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、シァ(Xia)Hら著、2002年、ネイチャー バイオテクノロジー(Nat.Biotech.)、第20巻、p.1006~1010に記載される。
アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno-associated virus)ベクターの使用もまた、検討される(ワルシュ(Walsh)ら著、ソサエティ フォー エクスペリメンタル バイオロジー&メディスン論文集(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.)、第204巻、p.289~300、1993年;米国特許第5,436,146号明細書)。一実施形態では、iRNAは、例えば、U6またはH1 RNAプロモータ、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモータのいずれかを有する、組換えAAVベクターからの2つの別個の相補的一本鎖RNA分子として発現され得る。本発明で取り上げるdsRNAを発現するのに適切なAAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、その開示全体を参照によって本明細書に援用する、サムルスキー(Samulski)Rら著、1987年、ジャーナル オブ ヴァイロロジー(J.Virol.)、第61巻、p.3096~3101;フィッシャー(Fisher)K Jら著、1996年、ジャーナル オブ ヴァイロロジー(J.Virol)、第70巻、p.520~532;サムルスキー(Samulski)Rら著、1989年、ジャーナル オブ ヴァイロロジー(J.Virol.)、第63巻、p.3822~3826;米国特許第5,252,479号明細書;米国特許第5,139,941号明細書;国際公開第94/13788号パンフレット;および国際公開第93/24641号パンフレットに記載される。
別の典型的なウイルスベクターは、例えば、修飾ウイルスアンカラ(MVA)またはNYVACなどの弱毒化ワクシニアなどのワクシニアウイルス、鶏痘またはカナリア痘などのアビポックスなどのポックスウイルスである。
ウイルスベクターの親和性は、必要に応じて、その他のウイルスからの外被タンパク質またはその他の表面抗原でベクターをシュードタイピングすることで、または異なるウイルスからのカプシドタンパク質で置換することで、修飾し得る。例えば水疱性口内炎ウイルス(VSV:vesicular stomatitis virus)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質によって、レンチウイルスベクターをシュードタイピングし得る。AAVベクターは、ベクターを遺伝子操作して、異なるカプシドタンパク質血清型を発現させることで、異なる細胞を標的化するようにできる;例えばその開示全体を参照によって本明細書に援用する、ラビノビッツ(Rabinowitz)J Eら著、2002年、ジャーナル オブ ヴァイロロジー(J Virol)、第76巻、p.791~801を参照されたい。
ベクターの医薬品は、許容される希釈剤中のベクターを含み得て、またはその中に遺伝子送達ビヒクルが包埋される徐放マトリックスを含み得る。代案としては、例えばレトロウイルスベクターなどの完全な遺伝子送達ベクターが、組換え細胞から無傷で生成され得る場合、医薬品は遺伝子送達系を生成する1つまたは複数の細胞を含み得る。
III.iRNA含有医薬組成物
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるiRNAと、薬学的に許容できる担体とを含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物は、ALAS1遺伝子の発現または活性に関連した疾患または障害(例えばポルフィリン経路が関与する疾患)を治療するのに有用な、iRNAを含有する。このような医薬組成物は、送達様式に基づいて調合される。例えば組成物は、例えば静脈内(IV)送達などの、非経口送達による全身投与のために調合され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物(例えばLNP製剤)は、静脈内送達のために調合される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物(例えばGalNAc複合体を含んでなる組成物)は、皮下送達のために調合される。
本明細書で取り上げる医薬組成物は、ALAS1遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与される。一般にiRNAの適切な用量は、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.01~200.0ミリグラムの範囲、一般に1日あたり体重1キログラムあたり1~50mgの範囲である。例えばdsRNAは、単回用量あたり0.05mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、または50mg/kgで投与し得る。医薬組成物は、毎日1回投与してもよく、またはiRNAは、一日を通して適切な間隔で、2、3回以上の部分用量として投与してもよく、または持続注入または放出制御製剤を通じた送達さえも使用して、投与してもよい。その場合、各部分用量に含有されるiRNAは、1日あたり総用量を達成するために、対応してより少量でなくてはならない。投薬単位はまた、例えば数日間にわたってiRNAの徐放を提供する、従来型の徐放性製剤を使用して、数日間にわたる送達のために配合し得る。徐放性製剤は当該技術分野で周知であり、特に、本発明の作用物質で使用し得る、特定部位への作用物質送達のために有用である。この実施形態では、投薬単位は、相当する複数の1日量を含有する。
ALAS1レベルに対する単回投与の効果は、引き続く用量が、3、4、または5日間以下の間隔で、または1、2、3、または4週間以下の間隔で投与されるように、長期にわたり得る。
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康および/または年齢、および存在するその他の疾患をはじめとするが、これに限定されるものではない、特定の要因が、対象を効果的に治療するのに要求される用量およびタイミングに影響してもよいことを理解するであろう。さらに治療有効量の組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含み得る。本発明に包含される個々のiRNAの有効投与量および生体内半減期は、本明細書の他の箇所で記述されるように、従来の手順を使用して、または適切な動物モデルを使用した生体内試験に基づいて、推定し得る。
マウス遺伝学における進歩は、ALAS1発現に関連した病理過程などの、様々なヒト疾患(例えばポルフィリン症などのポルフィリンに、またはポルフィリン経路欠陥に伴う病理過程)を研究するためのいくつかのマウスモデルを作り出した。iRNAの生体内試験のために、ならびに治療有効用量および/または効果的投与計画を判定するために、このようなモデルを使用し得る。
適切なマウスモデルは、例えばヒトALAS1を発現する導入遺伝子を含有するマウスである。ノックイン変異(例えばヒトにおける急性肝性ポルフィリン症と関連付けられている変異)を有するマウスを使用して、治療有効用量および/または投与持続期間を判定し得る。本発明は、本発明で取り上げるiRNA化合物を含む、医薬組成物および製剤もまた含む。本発明の医薬組成物は、局所性または全身性の治療が所望されるかどうかに応じて、そして治療領域次第で、いくつかの方法で投与されてもよい。投与は、局所(例えば経皮パッチによる)、例えばネブライザーをはじめとする、粉末または煙霧剤の吸入または吹送による経肺;気管内、鼻腔内、経表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内注射または輸液;例えば埋め込みデバイスを通じた、真皮下投与;または例えば脳実質内、クモ膜下腔内または脳室内などの頭蓋内投与が挙げられる。
iRNAは、赤血球産生組織などの特定組織を標的にする様式で、送達し得る。例えばiRNAは、骨髄、肝臓(例えば肝臓の実質細胞)、リンパ腺、脾臓、肺(例えば肺胸膜)または脊椎に送達し得る。一実施形態では、iRNAは骨髄に送達される。
局所投与のための医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の薬学的担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが、必要でありまたは望ましいこともある。被覆コンドーム、手袋などもまた、有用なこともある。適切な局所製剤としては、その中で、本発明で取り上げるiRNAが、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化作用物質、および界面活性剤などの局所送達作用物質との混和材料中にあるものが挙げられる。適切な脂質およびリポソームとしては、中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロリホスファチジル(distearolyphosphatidyl)コリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)およびカチオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明で取り上げるiRNAは、リポソーム内にカプセル化されてもよく、またはそれと、特にカチオン性リポソームと、複合体形成してもよい。代案としては、iRNAは、脂質、特にカチオン性脂質と複合体形成してもよい。適切な脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1~20アルキルエステル(例えばイソプロピルミリスチン酸IPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。局所製剤は、参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,747,014号明細書に詳述される。
リポソーム製剤
薬物の調合のために研究され使用されているマイクロエマルション以外にも、多数の組織化界面活性剤の構造が存在する。これらとしては、単層、ミセル、二重層、および小胞が挙げられる。リポソームなどの小胞は、薬物送達の観点から、それらの特異性とそれらが提供する作用持続時間のために、高い注目を集めている。本発明での用法では、「リポソーム」という用語は、球状二重層または二重層群に配列された両親媒性脂質から構成される、小胞を意味する。
リポソームは、親油性材料と水性内部から形成される膜を有する、単層のまたは多重膜小胞である。水性部分は、送達される組成物を含有する。カチオン性リポソームは、細胞壁に融合できる利点を有する。非カチオン性リポソームは、細胞壁と効率的に融合できないが、生体内でマクロファージに取り込まれる。
無傷の哺乳類皮膚を越えるために、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、それぞれ直径が50nm未満の一連の細孔を通過しなくてはならない。したがって高度に変形可能でこのような細孔を通過できる、リポソームを使用することが望ましい。
リポソームのさらなる利点としては、以下が挙げられる;天然リン脂質から得られるリポソームは、生体適合性かつ生分解性であり;リポソームは、幅広い水および脂質可溶性薬剤を組み込み得て;リポソームは、それらの内部区画にカプセル化した薬剤を代謝および分解から保護し得る(ロゾフ(Rosoff)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.245)。リポソーム製剤の調製における重要な考察は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズ、および水性容量である。
リポソームは、作用部位への活性成分の移行および送達のために有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似しているので、リポソームが組織に適用されると、リポソームは細胞膜と一体化し始めて、リポソームと細胞の融合が進むにつれて、リポソーム内容物は、そこで活性薬剤が作用してもよい細胞中に出される。
リポソーム製剤は、多数の薬剤の送達様式として、大規模な研究の焦点である。局所投与において、リポソームがその他の製剤に優るいくつかの利点を提示する証拠が、上がってきている。このような利点としては、投与薬剤の高い全身性吸収と結びつく副作用の低下、所望の標的における投与薬剤の蓄積増大、および親水性および疎水性双方の多種多様な薬剤を皮膚内投与する能力が挙げられる。
いくつかの報告は、リポソームが、皮膚内に高分子量DNAをはじめとする作用物質を送達する能力を詳述している。鎮痛剤、抗体、ホルモン、および高分子量DNAをはじめとする化合物が、皮膚に投与されている。用途の大部分は、表皮上層の標的化をもたらした。
リポソームは、2つの広範なクラスに分類される。カチオン性リポソームは、負に帯電したDNA分子と相互作用して安定した複合体を形成する、正に帯電したリポソームである。正に帯電したDNA/リポソーム複合体は、負に帯電した細胞表面に結合してエンドソーム内部に取り入れられる。エンドソーム内の酸性pHのためにリポソームは破裂して、それらの内容物を細胞質内へ放出する(ワン(Wang)ら著、バイオケミカル&バイオフィジカル リサーチ コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、1987年、第147巻、p.980~985)。
pH感受性または負電荷のリポソームは、DNAと複合体を形成せず、むしろそれを封入する。DNAと脂質は、どちらも同様の荷電を持つため、複合体形成でなく反発が起きる。それでもなおいくらかのDNAは、これらのリポソームの水性内部に封入される。pH感受性リポソームは、培養中で細胞単層に、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを送達するのに使用されている。外来性遺伝子の発現は、標的細胞中で検出された(チョウ(Zhou)ら著、ジャーナル オブ コントロールド リリース(Journal of Controlled Release)、1992年、第19巻、p.269~274)。
1つの主要タイプのリポソーム組成物は、天然由来ホスファチジルコリン以外に、リン脂質を含む。例えば中性リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から生成され得る。アニオン性リポソーム組成物が、一般にジミリストイルホスファチジルグリセロールから生成されるのに対し、アニオン性融合性リポソームは、主にジオレオイルスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えばダイズPC、および卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から生成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から生成される。
いくつかの研究が、皮膚へのリポソーム製剤の局所送達を評価している。インターフェロン含有リポソームのモルモット皮膚への塗布が、皮膚ヘルペスによる傷の減少をもたらしたのに対し、別の手段によるインターフェロン送達(例えば溶液としてまたはエマルションとしての)は無効であった(ワイナー(Weiner)ら著、ジャーナル オブ ドラッグ ターゲンティング(Journal of Drug Targeting)、1992年、第2巻、p.405~410)。さらに追加的な研究が、水性系を使用したインターフェロン投与と比較して、リポソーム製剤の一部としてのインターフェロン投与の有効性を試験し、リポソーム製剤は水性投与よりも優れていると結論付けた(デュプレシ(du Plessis)ら著、アンチバイラル リサーチ(Antiviral Research)、1992年、第18巻、p.259~265)。
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤とコレステロールを含んでなる系が研究され、皮膚への薬剤送達におけるそれらの効用が判定されている。Novasome(商標)I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含んでなる非イオン性リポソーム製剤を使用して、マウス皮膚真皮内へシクロスポリンAが送達された。結果は、このような非イオン性リポソーム系が、皮膚の異なる層内へのシクロスポリンAの沈着を容易にする上で、効果的であることを示唆した(フー(Hu)ら著、S.T.P.ファーマ サイエンス(Pharma.Sci.)、1994年、第4巻、第6号、p.466)。
リポソームはまた、「立体的安定化」リポソームを含み、この用語は本明細書の用法では、1つまたは複数の特殊化された脂質を含んでなるリポソームを指し、それは、リポソーム中に組み込まれると、このような特殊化された脂質を欠くリポソームと比較して、改善された循環寿命をもたらす。立体的安定化リポソームの例は、その中で、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドGM1などの1つまたは複数の糖脂質を含んでなり、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。いかなる特定の理論による拘束も望まないが、当該技術分野では、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含有する立体的安定化リポソームでは、これらの立体的安定化リポソームの循環半減期の改善は、細網内皮系(RES:reticuloendothelial system)細胞への取り込み低下に由来するものと考えられる(アレン(Allen)ら著、FEBSレターズ(Letters),1987年、第223巻、p.42;ウー(Wu)ら著、キャンサー リサーチ(Cancer Research)、1993年、第53巻、p.3765)。
1つまたは複数の糖脂質を含んでなる様々なリポソームが、当該技術分野で公知である。パパハジョポロス(Papahadjopoulos)ら著、ニューヨークアカデミーオブサイエンス紀要(Ann.N.Y.Acad.Sci.)、1987年、第507巻、p.64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシドサルフェートおよびホスファチジルイノシトールが、リポソームの血液半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、ギャビゾン(Gabizon)ら著、米国科学アカデミー紀要、1988年、第85巻、p.6949によって詳しく説明された。どちらもアレン(Allen)らに付与された、米国特許第4,837,028号明細書および国際公開第88/04924号パンフレットは、(1)スフィンゴミエリンと、(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルとを含んでなる、リポソームを開示する。米国特許第5,543,152号明細書(ウェブ(Webb)ら)は、スフィンゴミエリンを含んでなるリポソームを開示する。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含んでなるリポソームは、国際公開第97/13499(リム(Lim)ら)号パンフレットで開示される。
1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含んでなる多数のリポソーム、およびそれらの調製法は、当該技術分野で公知である。スナモト(Sunamoto)ら(日本化学会欧文誌(Bull.Chem.Soc.Jpn.)、1980年、第53巻、p.2778)は、PEG部分を含有する非イオン系洗剤2C1215Gを含んでなる、リポソームについて記載した。イルム(Illum)ら著、FEBSレターズ(FEBS Lett.)、1984年、第167巻、p.79は、ポリマーグリコールによるポリスチレン粒子の親水性コーティングが、顕著に改善された血液半減期をもたらすことを記述した。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボン酸基の付加によって修飾された合成リン脂質は、シアーズ(Sears)(米国特許第4,426,330号明細書および米国特許第4,534,899号明細書)によって記載される。クリバノフ(Klibanov)ら(FEBSレターズ(FEBS Lett.)、1990年、第268巻、p.235)は、PEGまたはPEGステアリン酸塩によって誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含んでなるリポソームが、血液循環半減期に著しい増大を有することを実証する実験を記載した。ブルム(Blume)ら(バイオキミカ エ バイオフィジカ アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)、1990年、第1029巻、p.91)は、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGの組み合わせから生成される、例えばDSPE-PEGなどのその他のPEG-誘導体化リン脂質に、このような観察を広げた。共有結合したPEG部分を外面に有するリポソームは、フィッシャー(Fisher)に付与された欧州特許第0445131B1号明細書および国際公開第90/04384号パンフレットに記載される。1~20モルパーセントのPEG誘導体化PEを含有するリポソーム組成物、およびその使用方法は、ウードル(Woodle)ら(米国特許第5,013,556号明細書および米国特許第5,356,633号明細書)、およびマーティン(Martin)ら(米国特許第5,213,804号明細書および欧州特許第0496813B1号明細書)によって記載される。いくつかのその他の脂質-ポリマー複合体を含んでなるリポソームは、(どちらもマーティン(Martin)らに付与された)国際公開第91/05545号パンフレットおよび米国特許第5,225,212号明細書、および国際公開第94/20073号パンフレット(ザリプスキー(Zalipsky)ら)で開示される。PEG修飾セラミド脂質を含んでなるリポソームは、国際公開第96/10391号パンフレット(チョイ(Choi)ら)に記載される。米国特許第5,540,935号明細書(ミヤザキ(Miyazaki)ら)および米国特許第5,556,948号明細書(タガワ(Tagawa)ら)は、それらの表面を機能的部分でさらに誘導体化し得る、PEG含有リポソームを記載する。
核酸を含んでなるいくつかのリポソームは、当該技術分野で公知である。ティエリ(Thierry)らに付与された国際公開第96/40062号パンフレットは、高分子量核酸をリポソーム中にカプセル化する方法を開示する。タガワ(Tagawa)らに付与された米国特許第5,264,221号明細書は、タンパク質結合リポソームを開示し、このようなリポソームの内容物がdsRNAを含んでもよいと主張する。ラーマン(Rahman)らに付与された米国特許第5,665,710号明細書は、リポソーム中にオリゴデオキシヌクレオチドをカプセル化する特定の方法を記載する。ラブ(Love)らに付与された国際公開第97/04787号パンフレットは、raf遺伝子標的化dsRNAを含んでなるリポソームを開示する。
トランスファーソームはなおも別のタイプのリポソームであり、薬物送達ビヒクルのための魅力的な候補である、高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に高度に変形可能であるために、小滴よりも小さい孔を通じて容易に浸透できる脂肪滴と説明されてもよい。トランスファーソームは、それらが使用される環境に適応でき、例えばそれらは自己最適化し(皮膚孔形状に適応する)、自己修復し、しばしば断片化することなくそれらの標的に到達し、自己装填することが多い。トランスファーソームを作成するために、通常は界面活性剤である表面縁活性化剤を標準リポソーム組成物に添加することができる。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するのに使用されている。血清アルブミンのトランスファーソーム媒介送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同程度に、効果的であることが示されている。
界面活性剤には、(マイクロエマルションをはじめとする)エマルションおよびリポソームなどの製剤における、幅広い応用がある。天然および合成双方の多数の異なる界面活性剤型の特性の分類および格付けの最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB:hydrophile/lipophile balance)の使用による。親水性基(「ヘッド」としてもまた知られている)の性質は、製剤中で使用される異なる界面活性剤を分類する、最も有用な手段を提供する(リーガ(Rieger)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、1988年、p.285。
界面活性剤分子がイオン化されない場合、それは非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤には、医薬および美容製品における幅広い用途があり、広いpH価範囲にわたって使用できる。一般にそれらのHLB値は、それらの構造に応じて2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもまた、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も良く見られる構成員である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に負電荷を保有する場合、界面活性剤はアニオン性に分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボン酸塩、ラクチル酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなどの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホネート、イセチオン酸アシル、タウリン酸アシルおよびスルホコハク酸アシル、およびリン酸アシルが挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要な構成員は、硫酸アルキルおよび石鹸である。
界面活性剤分子が、水への溶解または分散時に正電荷を保有する場合、界面活性剤はカチオン性に分類される。カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。四級アンモニウム塩が、このクラスで最も良く使用される構成員である。
界面活性剤分子が、陽性または陰性電荷のいずれかを有する能力を有する場合、界面活性剤は両性に分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、およびリン脂質が挙げられる。
医薬品、製剤中およびエマルション中の界面活性剤の使用については、概説されている(リーガ(Rieger)、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、1988年、p.285)。
核酸脂質粒子
一実施形態では、本発明で取り上げるALAS1 dsRNAは、脂質製剤中に完全にカプセル化されて、例えばSPLP、pSPLP、SNALP、またはその他の核酸-脂質粒子を形成する。本明細書の用法では、「SNALP」という用語は、SPLPをはじめとする、安定核酸-脂質粒子を指す。本明細書の用法では、「SPLP」という用語は、脂質小胞内にカプセル化されたプラスミドDNAを含んでなる核酸-脂質粒子を指す。SNALPおよびSPLPは、典型的に、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を妨げる脂質(例えばPEG脂質複合体)を含有する。SNALPおよびSPLPは、静脈内(i.v.)注射に続いて長期循環寿命を示し、遠位部位(例えば部位投与から物理的に離れた部位)に蓄積するので、全身的用途のために極めて有用である。SPLPとしては、国際公開第00/03683号パンフレットに記載のカプセル化縮合剤-核酸複合体を含む「pSPLP」が挙げられる。本発明の粒子は、典型的に約50nm~約150nm、より典型的に約60nm~約130nm、より典型的に約70nm~約110nm、最も典型的に約70nm~約90nmの平均径を有して、実質的に無毒である。これに加えて、本発明の核酸-脂質粒子中に存在する場合、核酸は、水溶液中でヌクレアーゼ分解耐性である。核酸-脂質粒子、およびそれらを調製する方法は、例えば米国特許第5,976,567号明細書;米国特許第5,981,501号明細書;米国特許第6,534,484号明細書;米国特許第6,586,410号明細書;米国特許第6,815,432号明細書;および国際公開第96/40964号パンフレットで開示される。
一実施形態では脂質と薬剤の比率(質量/質量比)(例えば脂質対dsRNA比)は、約1:1~約50:1、約1:1~約25:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、または約6:1~約9:1の範囲である。
カチオン性脂質は、例えばN,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウム塩化物(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウム臭化物(DDAB)、N-(I-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩化物(DOTAP)、N-(I-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩化物(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ(Dilinoleyoxy)-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(propanedio)(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン(ALN100)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(Tech G1)、またはその混合物であり得る。カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約20モル%~約50モル%または約40モル%を構成してもよい。
別の実施形態では、化合物2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランを使用して、脂質-siRNAナノ粒子を作成し得る。2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソランの合成は、参照によって本明細書に援用する、2008年10月23日に出願された米国仮特許出願第61/107,998号明細書に記載される。
一実施形態では、脂質-siRNA粒子は、40%の2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン:10%のDSPC:40%のコレステロール:10%のPEG-C-DOMG(モル百分率)を含み、粒度63.0±20nmのおよびsiRNA/脂質比0.027である。
非カチオン性脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセリン(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセリン(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE),ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-transPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはその混合物をはじめとするが、これに限定されるものではない、アニオン性脂質または中性脂質であってもよい。コレステロールが含まれる場合、非カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約5モル%~約90モル%、約10モル%、または約58モル%であってもよい。
粒子凝集を阻害する共役結合脂質は、例えば制限なしに、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)をはじめとする、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質、またはその混合物であってもよい。PEG-DAA複合体は、例えばPEG-ジラウリルオキシプロピル(Ci2)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(Ci4)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(Ci6)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C]8)であってもよい。粒子凝集を妨げる共役結合脂質は、粒子中に存在する総脂質の0モル%~約20モル%または約2モル%であってもよい。
いくつかの実施形態では、核酸-脂質粒子は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約10モル%~約60モル%または約48モル%のコレステロールをさらに含む。
いくつかの実施形態では、iRNAは脂質ナノ粒子(LNP)に調合される。
LNP01
一実施形態では、リピドイドND98・4HCl(MW1487)(参照によって本明細書に援用する2008年3月26日に出願された米国特許出願第12/056,230号明細書を参照されたい)、コレステロール(Sigma-Aldrich)、およびPEG-セラミドC16(Avanti Polar Lipids)を使用して、脂質-dsRNAナノ粒子(例えばLNP01粒子)を調製し得る。エタノール中の各原液は、以下のように調製し得る。133mg/mlのND98;25mg/mlのコレステロール;100mg/mlのPEG-セラミドC16。次にND98、コレステロール、およびPEG-セラミドC16原液を例えば42:48:10モル比で合わせ得る。合わせた脂質溶液は、最終エタノール濃度が約35~45%で、最終酢酸ナトリウム濃度が約100~300mMになるように、(例えばpH5の酢酸ナトリウム中で)水性dsRNAと混合し得る。脂質-dsRNAナノ粒子は、典型的に、混合に際して自然発生的に形成する。所望の粒度分布次第で、結果として得られたナノ粒子混合物は、例えばLipex押出機(Northern Lipids、Inc)などのサーモバレル押出機を使用して、ポリカーボネート膜(例えば100nmカットオフ)を通して押出し得る。場合によっては、押出ステップは省き得る。エタノール除去および同時緩衝液交換は、例えば透析または接線流濾過によって達成し得る。緩衝液は、例えば約pH6.9、約pH7.0、約pH7.1、約pH7.2、約pH7.3、または約pH7.4など、約pH7のリン酸緩衝食塩水(PBS)で交換し得る。
LNP01製剤は、例えば参照によって本明細書に援用する、国際公開第2008/042973号パンフレットに記載される。
追加的な例示的脂質dsRNA製剤が、以下の表に提供される。
SNALP(1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA))を含んでなる製剤は、参照によって本明細書に援用する、2009年4月15日に出願された、国際公開第2009/127060号パンフレットに記載される。
XTC含有製剤は、例えば、参照によって本明細書に援用する、2009年1月29日に出願された米国仮特許出願第61/148,366号明細書;2009年3月2日に出願された米国仮特許出願第61/156,851号明細書;2009年6月10日に出願された米国仮特許出願第号明細書;2009年7月24日に出願された米国仮特許出願第61/228,373号明細書;2009年9月3日に出願された米国仮特許出願第61/239,686号明細書;および2010年1月29日に出願された国際出願PCT/US2010/022614に記載される。
MC3含有製剤は、例えば参照によって本明細書に援用する、2009年9月22日に出願された米国仮特許出願第61/244,834号明細書;2009年6月10日に出願された米国仮特許出願第61/185,800号明細書;および2010年6月10日に出願された国際出願PCT/US10/28224に記載される。
ALNY-100含有製剤は、例えば参照によって本明細書に援用する、2009年11月10日に出願された、国際出願PCT/US第09/63933号明細書に記載される。
C12-200含有製剤は、参照によって本明細書に援用する、2009年5月5日に出願された米国仮特許出願第61/175,770号明細書、および2010年5月5日に出願された国際出願PCT/US10/33777に記載される。
カチオン性脂質の合成
例えば本発明で取り上げる核酸-脂質粒子で使用されるカチオン性脂質などの化合物のいずれもが、実施例でより詳細に記載される方法をはじめとする、既知の有機合成技術によって調製され得る。特に断りのない限り、全ての置換基は、以下に定義するとおりである。
「アルキル」は、1~24個の炭素原子を含有する、直鎖または分枝、非環式または環式、飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられ;他方、飽和分枝アルキルとしては、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。代表的飽和環式アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられ;他方、不飽和環式アルキルとしては、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどが挙げられる。
アルケニルは、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含有する、上で定義されるようなアルキルを意味する。アルケニルには、cisおよびtransの双方の異性体が含まれる。代表的な直鎖および分枝アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルなどが挙げられる。
「アルキニル」は、隣接する炭素間に少なくとも1つの三重結合をさらに含有する、上で定義されるようなあらゆるアルキルまたはアルケニルを意味する。代表的な直鎖および分枝アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1ブチニルなどが挙げられる。
「アシル」は、以下に定義するとおり、炭素が結合点でオキソ基によって置換される、あらゆるアルキル、アルケニル、またはアルキニルを意味する。例えば-C(=O)アルキル、-C(=O)アルケニル、および-C(=O)アルキニルが、アシル基である。
「複素環」は、下の複素環のいずれかがベンゼン環に融合する二環をはじめとする、窒素、酸素、およびイオウから独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含有する、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかの5~7員環単環、または7~10員環二環、複素環を意味し、窒素およびイオウヘテロ原子は酸化されていてもいなくてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもいなくてもよい。複素環は、あらゆるヘテロ原子または炭素原子を介して付着し得る。複素環としては、以下に定義されるヘテロアリールが挙げられる。複素環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプルイミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
「置換されていてもいなくてもよいアルキル」、「置換されていてもいなくてもよいアルケニル」、「置換されていてもいなくてもよいアルキニル」、「置換されていてもいなくてもよいアシル」、および「置換されていてもいなくてもよい複素環」という用語は、置換される場合、少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されていることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2つの水素原子が置き換えられる。この点において、置換基としては、オキソ、ハロゲン、複素環、-CN、-ORx、-NRxRy、-NRxC(=O)Ry
,-NRxSO2Ry、-C(=O)Rx、-C(=O)ORx、-C(=O)NRxRy、-SOnRx、および-SOnNRxRyが挙げられ、nは0、1または2であり、RxおよびRyは同一であるかまたは異なり、独立して水素、アルキルまたは複素環であり、前記アルキルおよび複素環置換基のそれぞれは、1つまたは複数のオキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx、複素環、-NRxRy、-NRxC(=O)Ry
,-NRxSO2Ry、-C(=O)Rx、-C(=O)ORx、-C(=O)NRxRy、-SOnRx、および-SOnNRxRyによってさらに置換されていてもよい。
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
いくつかの実施形態では、本発明で取り上げる方法は、保護基の使用を要し得る。保護基の手順は、当業者に良く知られている(例えば「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、グリーン(Green),T.W.ら著、Wiley-Interscience、ニューヨーク州ニューヨーク、1999年を参照されたい)。簡単に述べると、本発明の文脈では、保護基は、官能基の望まれない反応性を低下させまたは排除する、あらゆる基である。保護基は官能基に付加されて、特定の反応中にその反応性をマスクし、次に除去されて元の官能基を曝露し得る。いくつかの実施形態では、「アルコール保護基」が使用される。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望まれない反応性を低下させまたは排除する、あらゆる基である。保護基は、当該技術分野で周知の技術を使用して、付加して除去し得る。
式Aの合成
一実施形態では、本発明で取り上げる核酸脂質粒子は、
式A、
(式中、
R1およびR2は、独立してそれぞれ任意選択的に置換される、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、R3およびR4は、独立して低級アルキルであり、またはR3およびR4は、一緒になって任意選択的に置換される複素環を形成し得る)
のカチオン性脂質を使用して調合される。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、XTC(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン)である。一般に、上の式Aの脂質は、特に断りのない限り全ての置換基が上で定義されるとおりである、以下の反応スキーム1または2によって作成されてもよい。
スキーム1
脂質Aは、スキーム1に従って調製され得て、式中、R
1およびR
2は、独立して、それぞれ任意選択的に置換され得る、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、R
3およびR
4は、独立して、低級アルキルであり、またはR
3およびR
4は、一緒になって任意選択的に置換される複素環を形成し得る。ケトン1および臭化物2は購入され、または当業者に知られている方法に従って調製され得る。1および2の反応は、ケタール3をもたらす。ケタール3をアミン4で処理して、式Aの脂質を得る。式Aの脂質は、式5(式中、Xは、ハロゲン、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩などから選択されるアニオン対イオンである)の有機塩によって、対応するアンモニウム塩に変換し得る。
スキーム2
代案としては、ケトン1出発原料は、スキーム2に従って調製され得る。グリニャール試薬6およびシアン化物7は購入され、または当業者に知られている方法に従って調製され得る。6と7の反応は、ケトン1をもたらす。ケトン1の対応する式Aの脂質への変換は、スキーム1に記載されるとおりである。
MC3の合成
DLin-M-C3-DMA(すなわち(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸)の調製は、次のとおりであった。ジクロロメタン(5mL)中の(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-オール(0.53g)、4-N,N-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.51g)、4-N,N-ジメチルアミノピリジン(0.61g)、および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.53g)溶液を室温で一晩撹拌した。溶液を希塩酸で、続いて希釈水性炭酸水素ナトリウムで洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で有機画分を乾燥させ、濾過して、回転蒸発器上で溶媒を除去した。1~5%のメタノール/ジクロロメタン溶出勾配を使用して、残留物をシリカゲルカラム(20g)に通過させた。精製産物を含有する画分を合わせて溶媒を除去し、無色の油(0.54g)を得た。
ALNY-100の合成
以下のスキーム3を使用して、ケタール519[ALNY-100]の合成を実施した。
515の合成
ニ頚RBF(1L)内の撹拌される200mlの無水THF中のLiAlH4(3.74g、0.09852モル)懸濁液に、70mLのTHF中の514(10g、0.04926モル)の溶液を0 0Cにおいて窒素雰囲気下で緩慢に添加した。添加完了後、反応混合物を室温に加温し、次に加熱して4時間還流した、反応の進捗は、TLCによってモニターした。反応完了(TLCによる)後、混合物を0 0Cに冷却し、飽和Na2SO4溶液の注意深い添加によってクエンチした。反応混合物を室温で4時間撹拌し、濾過した。残留物をTHFで良く洗浄した。濾液および洗浄液を混合し、400mLのジオキサンおよび26mLの濃HClで希釈して、室温で20分間撹拌した。揮発度(volatilities)を真空下で揮散して、515の塩酸塩を白色固体として得た。収量:7.12g 1H-NMR(DMSO,400MHz):δ=9.34(broad,2H),5.68(s,2H),3.74(m,1H),2.66-2.60(m,2H),2.50-2.45(m,5H).
516の合成
250mLニ頚RBF内の100mLの乾燥DCM中の化合物515の撹拌される溶液に、NEt3(37.2mL、0.2669モル)を添加して、窒素雰囲気下で0 0Cに冷却した。50mLの乾燥DCM中のN-(ベンジルオキシ-カルボニルオキシ)-スクシンイミド(20g、0.08007モル)の緩慢な添加後、反応混合物が室温に暖まるまで放置した。反応完了後(TLCによる2~3時間)、混合物を1NのHCl溶液(1×100mL)および飽和NaHCO3溶液(1×50mL)で連続的に洗浄した。次に無水Na2SO4上で有機層を乾燥し、溶媒を蒸発させて粗製物を得て、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、516を粘着性塊として得た。収量:11g(89%).1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ=7.36-7.27(m,5H),5.69(s,2H),5.12(s,2H),4.96(br.,1H)2.74(s,3H),2.60(m,2H),2.30-2.25(m,2H).LC-MS [M+H]-232.3(96.94%).
517Aおよび517Bの合成
室温において、500mL一頚RBF内で、シクロペンテン516(5g、0.02164モル)を220mLアセトンと水(10:1)の溶液中に溶解し、それにN-メチルモルホリン-N-オキシド(7.6g、0.06492モル)を添加し、tert-ブタノール中の4.2mLの7.6%OsO4(0.275g、0.00108モル)溶液がそれに続いた。反応完了後(約3時間)、固体Na2SO3の添加によって混合物をクエンチし、得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物をDCM(300mL)で希釈して、水(2×100mL)で洗浄し、飽和NaHCO3(1×50mL)溶液、水(1×30mL)、最後に鹹水(1×50mL)が続いた。有機相を無水Na2SO4上で乾燥させて、真空中で溶媒を除去した。粗製物のシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製からジアステレオマー混合物を得て、それを予備HPLCによって分離した。
収量:-6g粗製
517A-ピーク-1(白色固体)、5.13g(96%).1H-NMR(DMSO,400MHz):δ=7.39-7.31(m,5H),5.04(s,2H),4.78-4.73(m,1H),4.48-4.47(d,2H),3.94-3.93(m,2H),2.71(s,3H),1.72-1.67(m,4H).LC-MS-[M+H]-266.3,[M+NH4+]-283.5存在,HPLC-97.86%.立体化学はX線によって確認された。
518の合成
化合物505の合成について記載されるものと類似の手順を使用して、化合物518を無色の油として得た(1.2g、41%)。1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ=7.35-7.33(m,4H),7.30-7.27(m,1H),5.37-5.27(m,8H),5.12(s,2H),4.75(m,1H),4.58-4.57(m,2H),2.78-2.74(m,7H),2.06-2.00(m,8H),1.96-1.91(m,2H),1.62(m,4H),1.48(m,2H),1.37-1.25(br m,36H),0.87(m,6H).HPLC-98.65%.
化合物519の合成の基本手順:
ヘキサン(15mL)中の化合物518(1eq)溶液をTHF中のLAH(1M,2eq)氷冷溶液に、滴下して添加した。添加完了後、混合物を40℃で0.5時間加熱し、次に氷浴上で再度冷却した。混合物を飽和水性Na2SO4によって注意深く加水分解し、次にセライトを通して濾過して油に濃縮した。カラムクロマトグラフィーから、純粋な519を無色の油として得た(1.3g、68%)。13C NMR=130.2,130.1(x2),127.9(x3),112.3,79.3,64.4,44.7,38.3,35.4,31.5,29.9(x2),29.7,29.6(x2),29.5(x3),29.3(x2),27.2(x3),25.6,24.5,23.3,226,14.1;エレクトロスプレーMS(+ve):C44H80NO2(M+H)+の分子量+計算値654.6、測定値654.6。
標準法または押出のない方法のいずれかによって調製された製剤は、同様の様式で特性解析し得る。例えば製剤は、典型的に外観検査によって特徴付けられる。それらは凝集体または沈降物を含まない、白みがかった半透明溶液であるべきである。脂質-ナノ粒子の粒度および粒度分布は、例えばMalvern Zetasizer Nano ZS(マルバーン(Malvern),米国)を使用して、光散乱によって測定し得る。粒度は、40~100nmなど、約20~300nmであるべきである。粒度分布は、単峰型分布であるべきである。製剤ならびに封入画分中の総dsRNA濃度は、色素排除アッセイを使用して推定された。調合されたdsRNAのサンプルを例えば0.5%Triton-X100などの配合破壊性界面活性剤の存在または不在下で、Ribogreen(Molecular Probes)などのRNA結合色素と共にインキュベートし得る。製剤中の総dsRNAは、標準曲線と比較して、界面活性剤含有サンプルからのシグナルによって判定し得る。封入画分は、総dsRNA含量から、「遊離」dsRNA含量(界面活性剤不在下のシグナルにより測定される)を減じて求められる。封入dsRNA百分率は、典型的に>85%である。SNALP製剤では、粒度は、少なくとも30nm、少なくとも40nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、および少なくとも120nmである。適切な範囲は、典型的に、少なくとも約50nmから少なくとも約110nm、少なくとも約60nmから少なくとも約100nm、または少なくとも約80nmから少なくとも約90nmである。
経口投与のための組成物および製剤としては、粉末または顆粒、微小粒子、ナノ微粒子、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ剤、錠剤またはミニ錠剤が挙げられる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤またはバインダーが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、経口製剤は、その中で本発明で取り上げるDsRNAが、1つまたは複数の浸透促進界面活性剤およびキレート化剤と併せて投与されるものである。適切な界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはそれらの塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。適切な胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA:chenodeoxycholic acid)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA:ursodeoxychenodeoxycholic acid)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム、およびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。適切な脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはモノグリセリド、ジグリセリド、または薬学的に許容可能なその塩(例えばナトリウム)が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩などの浸透促進剤の組み合わせが使用される。1つの例示的組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸、およびUDCAのナトリウム塩である。浸透促進剤としては、さらにポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが挙げられる。本発明で取り上げるDsRNAは、噴霧乾燥粒子をはじめとする顆粒形態で、経口的に送達されてもよく、または複合体化してマイクロまたはナノ粒子を形成してもよい。DsRNA複合化剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;アクリル酸ポリアルキル、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリル酸;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリル酸;DEAE誘導体化ポリイミン、プルラン(pollulans)、セルロースおよびデンプンが挙げられる。適切な複合化剤としては、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えばp-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリル酸)、ポリ(エチルシアノアクリル酸)、ポリ(ブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソブチルシアノアクリル酸)、ポリ(イソヘキシルシナオアクリル酸(isohexylcynaoacrylate))、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリアクリル酸メチル、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸‐コ‐グリコール酸(PLGA)、アルギン酸塩、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤およびそれらの調製は、そのそれぞれを参照によって本明細書に援用する、米国特許第6,887,906号明細書、米国特許公開第20030027780号明細書、および米国特許第6,747,014号明細書詳細に記載される。
非経口、脳実質内(脳内)、クモ膜下腔内、脳室内または肝臓内投与のための組成物および製剤は無菌水溶液を含んでもよく、それはまた、緩衝液と、希釈剤と、浸透促進剤、担体化合物、およびその他の薬学的に許容可能な担体または賦形剤などをはじめとするが、これに限定されるものではないその他の適切な添加剤とを含有してもよい。
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルション、およびリポソーム含有製剤.が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの組成物は、既製液体、自己乳化固体および自己乳化半固体をはじめとするが、これに限定されるものではない、多様な成分から生成されてもよい。
好都合には単位剤形で提示されてもよい、本発明で取り上げられる医薬製剤は、製薬産業で周知の従来の技術に従って調製されてもよい。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤に組み合わせるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体または超微粒子固体担体またはその双方と一様に密接に組み合わせ、次に、必要ならば生成物を整形することで調製される。
本発明で取り上げられる組成物は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐薬、および浣腸などであるが、これに限定されるものではない、多数の可能な剤形のいずれかに調合されてもよい。本発明の組成物は、また、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として調合されてもよい。水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有してもよい。懸濁液は、安定剤もまた含有してもよい。
追加的な製剤
エマルション
本発明の組成物は、エマルションとして調製し調合し得る。エマルションは、典型的に、通常、直径が0.1μmを超える小滴形態で、別の液体中に分散する1つの液体の不均一系である(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199;ロソフ(Rosoff)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.245;ブロック(Block)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第2巻、p.335;ヒグチ(Higuchi)ら著、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、マック パブリッシング(Mack Publishing Co.)、ペンシルベニア州イートン(Easton,Pa.)、1985年、p.301を参照されたい)。エマルションは、密接に混合して互いに分散する、2つの不混和性液体相を含んでなる、二相性システムであることが多い。一般にエマルションは、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)のいずれかであってもよい。水性相がバルク油性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、油中水型(w/o)エマルションと称される。代案としては、油性相がバルク水性相中に微細分散して、微小滴として分散される場合、得られた組成物は、水中油型(o/w)エマルションと称される。エマルションは、分散相と、水性相および油性相いずれかの中の溶液として、またはそれ自体が別個の相として存在してもよい、活性薬剤とに加えて、追加的な成分を含有してもよい。乳化剤、安定剤、染料、および抗酸化物質などの医薬品賦形剤はまた、必要に応じてエマルション中に存在してもよい。医薬品エマルションはまた、例えば油中水中油(o/w/o)および水中油中水型(w/o/w)エマルションなどの場合、2つを超える相を含んでなる複数エマルションであってもよい。このような複合体製剤は、単純な二成分エマルションが提供しない、特定の利点を提供することが多い。その中でo/wエマルションの個々の油滴が小さな水滴を囲い込む複数エマルションは、w/o/wエマルションを構成する。同様に、水の小球中に封入されて、油性連続相内で安定化される油滴システムは、o/w/oエマルションを提供する。
エマルションは、熱力学的安定性がわずかまたは皆無であることによって、特徴付けられる。頻繁に、エマルションの分散または不連続相は、外部または連続相内に良く分散し、乳化剤または製剤粘度の手段を通じて、この形態に保たれる。エマルション様式の軟膏基剤およびクリームの場合のように、エマルション相のいずれかが、半固体または固体であってもよい。エマルションを安定化する別の手段は、エマルション相のいずれかに組み込まれてもよい、乳化剤の使用を伴う。乳化剤は、広義に4つのカテゴリー分類されてもよい:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker),Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199を参照されたい)。
表面活性剤としてもまた知られている合成界面活性剤は、エマルション製剤において幅広い用途があり、文献で概説されている(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;リーガ(Rieger)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デNッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.285;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199を参照されたい)。界面活性剤は典型的に両親媒性であり、親水性および疎水性部分を含んでなる。親水性と疎水性の比率は、界面活性剤の親水性/親油性バランス(HLB)と称され、製剤の調製において界面活性剤を分類し選択する上での有益な手段である。界面活性剤は、親水性基の性質に基づいて、異なるクラスに分類されてもよい:非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク,リーガ(Rieger)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.285を参照されたい)。
エマルション製剤で使用される天然乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、リン脂質、レシチン、およびアカシアが挙げられる。無水ラノリンおよび親水性ペトロラタムなどの、水を吸い上げてw/oエマルションを形成し得るような親水特性を有する吸収基剤は、なおもそれらの半固体粘稠度を維持する。微細分散固体はまた、優れた乳化剤として、特に界面活性剤と組み合わされて、粘稠な調製品中で使用されている。これらとしては、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイトなどの非膨張性粘土、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムのコロイドおよびケイ酸アルミニウムマグネシウムのコロイド、顔料、および炭素またはトリステアリン酸グリセリルなどの非極性固形分が挙げられる。
多岐にわたる非乳化材料もまたエマルション製剤に含まれて、エマルションの特性に寄与する。これらとしては、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存料、および抗酸化剤が挙げられる(ブロック(Block)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.335;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199)。
親水性コロイドまたは親水コロイドとしては、多糖類(例えばアカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、グアーガム、カラヤガム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えばカルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ガムおよび合成ポリマーが挙げられる。これらは水中に分散しまたは水中で膨張して、分散相小滴周囲に強力な界面膜を形成することで、および外部相の粘度を増大させることで、エマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
エマルションは、微生物の増殖を容易に支持してもよい、炭水化物、タンパク質、ステロール、およびリン脂質などのいくつかの成分を含有することが多いので、これらの製剤には保存料が組み込まれることが多い。エマルション製剤に含まれる一般に使用される保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が挙げられる。抗酸化剤もまた、一般にエマルション製剤に添加されて、製剤の劣化を防止する。使用される抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー;またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤;およびクエン酸、酒石酸、およびレシチンなどの抗酸化剤共力剤であってもよい。
皮膚、経口、および非経口経路を通じたエマルション製剤の適用と、それらを製造する方法については、文献で概説されている。(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199を参照されたい)。経口送達のためのエマルション製剤は、調合の容易さ、ならびに吸収および生物学的利用能の観点からの効率のために、非常に広く使用されている(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;ロソフ(Rosoff)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.245;イドソン(Idson)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.199を参照されたい)。鉱物油ベースの緩下剤、油溶性ビタミン、および高脂肪栄養剤は、一般にo/wエマルションとして経口投与されている材料の一つである。
本発明の一実施形態では、iRNAと核酸の組成物は、マイクロエマルションとして調合される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定している溶液である、水、油、および両親媒性物質のシステムと定義されてもよい(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.編、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;ロソフ(Rosoff)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.245を参照されたい)。典型的に、マイクロエマルションは、最初に油を水性界面活性剤溶液に分散して、次に一般に中間鎖長のアルコールである、十分な量の第4の成分を添加し、透明なシステムを形成することで、調製されるシステムである。したがって、マイクロエマルションは、界面活性分子の界面膜によって安定化された、2つの不混和性液体の熱力学的に安定した等方的に透明な分散体として記述されている(レング(Leung)および(シャー)著、「薬剤の制御放出:ポリマーおよび凝集体系(Controlled Release of Drugs:Polymers and Aggregate Systems)」、ロソフ(Rosoff),M.編、1989年、VCHパブリッシャーズ(Publishers)、ニューヨーク、p.185~215)。マイクロエマルションは、通常、油、水、界面活性剤、共界面活性剤、および電解質をはじめとする、3~5成分の組み合わせを通じて調製される。マイクロエマルションが、油中水型(w/o)または水中油型(o/w)であるかどうかは、使用される油および界面活性剤の特性と、界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填とに左右される(ショット(Schott)著、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、マック パブリッシング(Mack Publishing Co.)、ペンシルベニア州イートン(Easton,Pa.)、1985年、p.271)。
状態図を利用した現象学的アプローチは、広範に研究されており、マイクロエマルションの調合法に関する包括的知識が、当業者にもたらされている(例えば「アンセルの医薬剤形と薬剤送達系(Ansel’s Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」、アレン(Allen),LV.、ポポビッチ(Popovich)NG.、およびアンセル(Ansel)HC.、2004年、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)(第8版)、ニューヨーク州ニューヨーク;ロソフ(Rosoff)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.245;ブロック(Block)著、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」より、リーバーマン(Lieberman)、リーガ(Rieger)およびバンカー(Banker)編、1988年、マルセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク、第1巻、p.335を参照されたい)。従来のエマルションと比較して、マイクロエマルションは、水不溶性薬剤を自然発生的に形成される熱力学的に安定した小滴の配合物に可溶化する利点を提供する。
マイクロエマルションの調製で使用される界面活性剤としては、単独のまたは共界面活性剤と組み合わされた、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(sequioleate)(SO750)、デカグリセロールデカオレアート(DAO750)が挙げられるが、これに限定されるものではない。通常、エタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコールである共界面活性剤は、界面活性剤塗膜に浸透することにより界面流動性を増大させるのに役立ち、その結果、界面活性剤分子間に生じる隙間に起因する不規則塗膜を作り出す。しかしマイクロエマルションは、共界面活性剤の使用なしに調製されてもよく、アルコール非含有自己乳化マイクロエマルション系は、当該技術分野で公知である。水性相は、典型的に、水、薬剤水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコール誘導体であってもよいが、これに限定されるものではない。油相としては、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8~C12)モノ、ジ、およびトリ-グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化(polyglycolized)C8-C10グリセリド、植物油、およびシリコーン油などの材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
マイクロエマルションは、薬剤可溶化と薬剤吸収改善の観点から、特に興味深い。脂質ベースのマイクロエマルション(o/wおよびw/oの双方)が、ペプチドをはじめとする薬剤の経口バイオアベイラビリティを高めるために、提案されている(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第7,157,099号明細書;コンスタンティニディス(Constantinides)ら著、ファーマスーティカル リサーチ(Pharmaceutical Research)、1994年、第11巻、p.1385~1390;リチェル(Ritschel)著、メソッズ&ファインディングス イン エクスペリメンタル&クリニカル ファーマコロジ(Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.)、1993年、第13巻、p.205を参照されたい)。マイクロエマルションは、薬剤可溶化改善、酵素加水分解からの薬剤保護、界面活性剤が誘発する膜の流動性と透過度の変化に起因する予想される薬剤吸収増強、調製の容易さ、固体剤形に比べた経口投与の容易さ、臨床効力改善、および毒性低下の利点をもたらす(例えば米国特許第6,191,105号明細書;米国特許第7,063,860号明細書;米国特許第7,070,802号明細書;米国特許第 7,157,099号明細書;コンスタンティニディス(Constantinides)ら著、ファーマスーティカル リサーチ(Pharmaceutical Research)、1994年、第11巻、p.1385;ホー(Ho)ら著、ジャーナル オブ ファーマスーティカル サイエンス(J.Pharm.Sci.)、1996年、第85巻、p.138~143を参照されたい)。マイクロエマルションは、それらの成分を周囲温度で一緒に合わせた場合に、自然発生的に形成することが多い。これは、熱不安定性薬剤、ペプチドまたはiRNAを調合する場合に、特に有利なこともある。マイクロエマルションは、美容および医薬用途の双方で、活性成分の経皮送達に効果的であった。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は、iRNAおよび核酸の胃腸管からの全身性吸収の増大を容易にし、ならびにiRNAおよび核酸の局所性細胞内取り込みを改善することが期待される。
本発明のマイクロエマルションは、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透促進剤などの追加的な成分および添加剤もまた含有して、製剤の特性を改善し、本発明のiRNAおよび核酸の吸収を高めてもよい。本発明のマイクロエマルション中で使用される浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の5つの広義のカテゴリーの1つに属すると分類されてもよい。(リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92)。これらの各クラスについては、上で論じた。
浸透促進剤
一実施形態では、本発明は、様々な浸透促進剤を用いて、核酸、特にiRNAの動物皮膚への効率的な送達をもたらす。ほとんどの薬剤は、イオン化および非イオン化形態の双方で、溶液中に存在する。しかし通常、脂質可溶性または親油性薬剤のみが、細胞膜を容易に通過する。通過する膜が浸透促進剤で処理されれば、非親油性薬剤でさえも細胞膜を通過することがあることが発見されている。細胞膜横切る非親油性薬剤の拡散を助けるのに加えて、浸透促進剤はまた、親油性薬剤の透過性を高める。
浸透促進剤は、5つの広義のカテゴリー、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化作用物質、および非キレート化非界面活性剤の1つに属すると、分類されてもよい(例えばマルムステン(Malmsten),M.著、「薬物送達における界面活性剤およびポリマー(Surfactants and polymers in drug delivery)」、Informa Health Care、ニューヨーク州ニューヨーク、2002年;リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92を参照されたい)。前述の浸透促進剤の各クラスについては、以下でより詳しく説明される。
界面活性剤:本発明との関連で、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解すると、溶液の表面張力、または水溶液と別の液体との界面張力を低下させて、粘膜を通じたiRNA吸収の改善をもたらす、化学物質である。胆汁塩と脂肪酸に加えて、これらの浸透促進剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン-20-セチルエーテル)(例えばマルムステン(Malmsten),M.著、「薬物送達における界面活性剤およびポリマー(Surfactants and polymers in drug delivery)」、Informa Health Care、ニューヨーク州ニューヨーク、2002年;リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92を参照されたい);およびFC-43などのペルフルオロ化合物エマルションタカハシ(Takahashi)ら著、ジャーナル オブ ファーマシ&ファーマコロジ(J.Pharm.Pharmacol.)、1988年、第40巻、p.252)が挙げられる。
脂肪酸:浸透促進剤として作用する様々な脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えばオレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1~20アルキルエステル(例えばメチル、イソプロピル、およびt-ブチル)、およびそのモノ-およびジ-グリセリド(すなわちオレアート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレアートなど)が挙げられる。(例えばトィトゥ(Touitou),E.ら著、「薬送達の増強(Enhancement in Drug Delivery)」、CRCプレス(CRC Press)、マサチューセッツ州、ダンバース(Danvers,MA)、2006年;リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92;ムラニシ(Muranishi)著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1990年、第7巻、p.1~33;エルハリリ(El Hariri)ら著、ジャーナル オブ ファーマシ&ファーマコロジ(J.Pharm.Pharmacol.)、1992年、第44巻、p.651~654を参照されたい)。
胆汁酸塩:胆汁の生理学的役割としては、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が挙げられる(例えばマルムステン(Malmsten),M.著、「薬物送達における界面活性剤およびポリマー(Surfactants and polymers in drug delivery)」、Informa Health Care、ニューヨーク州ニューヨーク、2002年,ブラントン(Brunton)著、第38章、「グッドマン&ギルマンの治療学の薬理学的基礎(Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、第9版より、ハードマン(Hardman)ら編、マグロウヒル(McGraw-Hill)、ニューヨーク、1996年、p.934~935を参照されたい)。様々な天然胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体が、浸透促進剤として作用する。したがって「胆汁酸塩」という用語は、胆汁の天然成分のいずれかならびにそれらの合成誘導体のいずれかを含む。適切な胆汁酸塩としては、例えばコール酸(またはその薬学的に許容可能なナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム(STDHF:sodium tauro-24,25-dihydrofusidate)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、およびポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(POE)が挙げられる。(例えばマルムステン(Malmsten),M.著、「薬物送達における界面活性剤およびポリマー(Surfactants and polymers in drug delivery)」、インフォルマ ヘルスケア(Informa Health Care)、ニューヨーク州ニューヨーク、2002年;リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92;スウィンヤード(Swinyard)著、第39章、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第18版より、ジェンナロ(Gennaro)編、マック パブリッシング(Mack Publishing Co.)、ペンシルベニア州イートン(Easton,Pa.)、1990年、p.782~783;ムラニシ(Muranishi)著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1990年、第7巻、p.1~33;ヤマモト(Yamamoto)ら著、ジャーナル オブ エクスペリメンタル セラピューティックス(J.Pharm.Exp.Ther.)、1992年、第263巻、p.25;ヤマシタ(Yamashita)ら著、ジャーナル オブ ファーマスーティカル サイエンス(J.Pharm.Sci.)、1990年、第79巻、p.579~583を参照されたい)。
キレート化剤:本発明との関連で使用されるキレート化剤は、金属イオンと複合体を形成することによって、それを溶液から除去して、粘膜を通したiRNA吸収の改善をもたらす化合物と定義され得る。本発明における浸透促進剤としてのそれらの使用に関して、ほとんどのDNAヌクレアーゼは、触媒作用のために二価の金属イオンを要し、キレート化剤によって阻害されるので、キレート化作用物質は、デオキシリボヌクレアーゼ阻害物質の役割も果たすという追加的利点を有する(ジャレット(Jarrett),J.著、クロマトグラフィー(Chromatogr.)、1993年、第618巻、p.315~339)。 適切なキレート化作用物質としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA:ethylenediaminetetraacetate)、クエン酸、サリチル酸塩(例えばサリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチル酸、およびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN-アシル誘導体、ラウレス-9、およびβ-ジケトン(エナミン)のN-アミノアシル誘導体が挙げられるが、これに限定されるものではない。(例えばカダレ(Katdare),A.ら著、「製薬、バイオテクノロジー、および薬物送達のための賦形剤の開発(Excipient development for pharmaceutical,biotechnology,and drug delivery)」、CRCプレス(CRC Press)、マサチューセッツ州ダンバース(Danvers,MA)、2006年;リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92;ムラニシ(Muranishi)、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1990年、第7巻、p.1~33;ブール(Buur)ら著、ジャーナル オブ コントロールド リリース(J.Control Rel.)、1990年、第14巻、43~51を参照されたい)。
非キレート化非界面活性剤:本明細書の用法では、非キレート化非界面活性剤浸透促進化合物は、キレート化作用物質としてまたは界面活性剤として有意でない活性を実証するが、それでもなお消化器粘膜を通じてiRNAの吸収を高める化合物と定義し得る(例えばムラニシ(Muranishi)、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1990年、第7巻、p.1~33を参照されたい)。このクラスの浸透促進剤としては、例えば不飽和環式尿素、1-アルキル-および1-アルケニルアザシクロ-アルカノン誘導体(リー(Lee)ら著、治療薬剤送達システムの批判的な批評(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、1991年、p.92);およびジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症剤(ヤマシタ(Yamashita)ら著、ジャーナル オブ ファーマシ&ファーマコロジ(J.Pharm.Pharmacol.)、1987年、第39巻、p.621~626)が挙げられる。
細胞レベルのiRNA取り込みを高める作用物質もまた、本発明医薬およびその他の組成物に添加してもよい。例えばリポフェクチンなどのカチオン性脂質(ジュンイチ(Junichi)らに付与された米国特許第5,705,188号明細書)、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリリジンなどのポリカチオン性分子(ロロ(Lollo)らに付与された国際公開第97/30731号パンフレット)もまた、dsRNAの細胞内取り込みを高めることが知られている。市販される形質移入試薬の例としては、例えば特に、Lipofectamine(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Lipofectamine 2000(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、293fectin(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Cellfectin(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、DMRIE-C(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、FreeStyle(商標)MAX(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Lipofectamine(商標)2000 CD(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Lipofectamine(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、RNAiMAX(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Oligofectamine(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、Optifect(商標)(インビトロジェン(Invitrogen);カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad,CA))、X-tremeGENE Q2 Transfection Reagent(ロシュ(Roche);スイス、グレンツァヒャー通り(Grenzacherstrasse,Switzerland))、DOTAP Liposomal Transfection Reagent(スイス、グレンツァヒャー通り(Grenzacherstrasse,Switzerland))、DOSPER Liposomal Transfection Reagent(スイス、グレンツァヒャー通り(Grenzacherstrasse,Switzerland))、またはFugene(スイス、グレンツァヒャー通り(Grenzacherstrasse,Switzerland))、Transfectam(登録商標)Reagent(プロメガ(Promega);ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))、TransFast(商標)Transfection Reagent(プロメガ(Promega);ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))、Tfx(商標)-20 Reagent(プロメガ(Promega);ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))、Tfx(商標)-50 Reagent(プロメガ(Promega);ウィスコンシン州マディソン(Madison,WI))、DreamFect(商標)(オズバイオサイエンス(OZ Biosciences);フランス,マルセイユ(Marseille,France))、EcoTransfect(オズバイオサイエンス(OZ Biosciences);フランス,マルセイユ(Marseille,France))、TransPassa D1 Transfection Reagent(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs);米国マサチューセッツ州イプスウィッチ(Ipswich,MA,USA))、LyoVec(商標)/LipoGen(商標)(インビボゲン(Invivogen);米国カリフォルニア州サンディエゴ(米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA)))、PerFectin Transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、NeuroPORTER Transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、GenePORTER Transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、GenePORTER 2 Transfection reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、Cytofectin Transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、BaculoPORTER Transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、TroganPORTER(商標)transfection Reagent(ゲンランティス(Genlantis);米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA,USA))、RiboFect(ビオライン(Bioline);米国マサチューセッツ州タウントン(Taunton,MA,USA))、PlasFect(ビオライン(Bioline);米国マサチューセッツ州タウントン(Taunton,MA,USA))、UniFECTOR(Bブリッジインターナショナル(B-Bridge International);米国カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View,CA,USA))、SureFECTOR(Bブリッジインターナショナル(B-Bridge International);米国カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View,CA,USA))、またはHiFect(商標)(Bブリッジインターナショナル(B-Bridge International),米国カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View,CA,USA))が挙げられる。
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール;2-ピロールなどのピロール;アゾン;およびリモネンおよびメントンなどのテルペンをはじめとするその他の作用物質が、投与された核酸の浸透を高めるのに利用されてもよい。
担体
本発明の特定の組成物は、また配合中に担体化合物が組み込まれる。本明細書の用法では、「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわちそれ自体は生物学的活性を有しない)であるが、例えば生物学的に活性の核酸を分解し、またはその循環からの除去を促進することで、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を低下させる、生体内過程によって、核酸と認識される、核酸、またはその類似体を指し得る。核酸および担体化合物の、典型的に後者の物質の過剰量での同時投与は、恐らく通常の受容体に対する担体化合物と核酸間の競合のために、肝臓、腎臓またはその他の循環外貯蔵所で回収される核酸量の実質的低下をもたらし得る。例えば肝臓組織内の部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それが、ポリイノシン酸、硫酸デキストラン、ポリシチジック(polycytidic)または4-アセトアミド-4’-イソチオシアノ-スチルベン-2,2’-ジスルホン酸と同時投与された場合に、低下し得る(ミヤオ(Miyao)ら著、DsRNAリサーチ&ディベロップメント(Res.Dev.)、1995年、第5巻、p.115~121;タカムラ(Takakura)ら著、DsRNA&ニュークレイック アシッド ドラッグ ディベロップメント(DsRNA & Nucl.Acid Drug Dev.)、1996年、第6巻、p.177~183。
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容可能な溶媒、懸濁剤またはあらゆるその他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であってもよく、核酸および所与の医薬組成物のその他の成分と組み合わせた際に、所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画される投与様式を念頭に置いて選択される。典型的な薬学的担体としては、結合剤(例えばα化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば乳糖およびその他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、二酸化ケイ素のコロイド、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸と有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用して、本発明の組成物を調合し得る。適切な薬学的に許容可能な担体としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
核酸の局所投与のための製剤は、無菌および非無菌水性溶液、アルコールなどの共通溶剤中の非水性溶液、または液体または固体油基剤中の核酸溶液を含んでもよい。溶液はまた、緩衝液、希釈剤、およびその他の適切な添加剤も含有してもよい。核酸有害反応しない、経口投与に適する、薬学的に許容可能な有機または無機賦形剤を使用し得る。
適切な薬学的に許容可能な賦形剤としては、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘稠なパラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物中に従来法で見られるその他の補助剤成分を、技術分野で確立されたそれらの使用レベルで、さらに含有してもよい。したがって例えば組成物は、例えば、止痒剤、渋味剤、局所麻酔薬または抗炎症剤などの追加的な適合性薬理的活性材料を含有してもよく、または染料、着香剤、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤などの本発明の組成物の様々な剤形を物理的に調合する上で有用な追加的材料を含有してもよい。しかしこのような材料は、添加した場合に、本発明の組成物の成分の生物学的活性に過度に干渉すべきでない。製剤は滅菌され得て、必要に応じて、製剤の核酸と有害に相互作用しない、例えば、潤滑剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧圧力に影響を及ぼす塩、緩衝液、着色料、着香料および/または芳香族物質などなどの助剤と混合される。
水性懸濁液は、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有し得る。懸濁液は、安定剤もまた含有してもよい。
いくつかの実施形態では、本発明で取り上げる医薬組成物は、(a)1つまたは複数のiRNA化合物、および(b)非RNAi機序によって機能する1つまたは複数の生物剤を含む。このような生物剤の例としては、ALAS1と少なくとも1つのALAS1結合パートナーとの相互作用を妨げる、薬剤が挙げられる。
このような化合物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に致死性の用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を測定するための細胞培養物または実験的動物中において、標準薬学的手順によって判定され得る。毒性および治療効果間の用量比が治療指数であり、それはLD50/ED50比として表し得る。高い治療指数を示す化合物が、典型的である。
細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用するための投与範囲を策定するのに使用し得る。本発明で取り上げる組成物の投与量は、一般に、毒性がわずかまたは皆無であるED50をはじめとする、循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形および使用される投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。本発明で取り上げる方法で使用されるあらゆる化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養中で測定されるIC50(すなわち症状の最大半量阻害を達成する試験化合物濃度)をはじめとする、化合物の、または適切な場合には標的配列のポリペプチド産物の、循環血漿濃度範囲を達成する(例えばポリペプチド濃度の低下を達成する)ように、動物モデル中で策定されてもよい。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定し得る。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
上で考察したように、本発明で取り上げるiRNAは、それらの投与に加えて、ALAS1発現に関連した疾患または障害治療で効果的な、その他の既知の薬剤と組み合わせて投与し得る。いずれにしても処置を行う医師は、当該技術分野で公知のまたは本明細書に記載される、有効性の標準的手段を使用して観察された結果に基づいて、iRNA投与の量およびタイミングを調節し得る。
ALAS1遺伝子発現関連疾患を治療する方法
本発明は、特に、ALAS1発現を阻害するための、および/またはALAS1発現に関連した疾患、障害、または病理過程を治療するための、ALAS1を標的にするiRNAの使用に関する。
本明細書の用法では、「ALAS1発現関連障害」、「ALAS1発現関連疾患」、「ALAS1発現関連病理過程」などは、その中でALAS1発現が変化(例えば上昇)し、1つまたは複数のポルフィリンレベルが変化(例えば上昇)し、ヘム生合成経路(ポルフィリン経路)中の1つまたは複数の酵素レベルまたは活性が変化する、あらゆる病状、障害、または疾患、またはヘム生合成経路に病理学的変化をもたらすその他の機構(mechisms)を含む。例えば、その中でポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAまたはPBG)レベルが上昇する病状(例えば特定のポルフィリン症)、またはその中でヘム生合成経路酵素に欠陥がある病状(例えば特定のポルフィリン症)を治療するために、ALAS1遺伝子を標的にするiRNA、またはその組み合わせを使用してもよい。ALAS1発現関連障害としては、例えば、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)、ALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(Dossポルフィリン症)、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、先天性赤芽球増殖性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症(prophyria cutanea tarda)、遺伝性コプロポルフィリン症(コプロポルフィリン症)、異型ポルフィリン症、赤芽球増殖性プロトポルフィリン症(EPP)、および乳児期一過性赤血球ポルフィリン症が挙げられる。
本明細書の用法では、本明細書に記載される方法に従って治療される「対象」としては、例えば哺乳類などのヒトまたは非ヒト動物が挙げられる。哺乳類は、例えば齧歯類(例えばラットまたはマウス)または霊長類(例えばサル)であってもよい。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
いくつかの実施形態では、対象は、ALAS1発現関連障害に罹患しており(例えばポルフィリン症と診断され、またはポルフィリン症の1つまたは複数の症状を経験しており、ポルフィリン症に伴う変異の保因者である)、またはALAS1発現関連障害を発症するリスクがある(例えばポルフィリン症の家族歴がある対象、またはポルフィリン症と関連付けられている遺伝子変異の保因者である対象)。
急性肝性ポルフィリン症をはじめとするポルフィリン症の分類は、例えば、バルワニ(Balwani),M.&デスニック(Desnick),R.J.,ブラッド(Blood),120(23)、ブラッド(Blood) 初版論文,7月12日,102;DOI 10.1182/ブラッド(Blood)-2012-05-423186としてオンライン出版、に記載される。バルワイン(Balwain)&デスニック(Desnick)に記載されるように、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、異型ポルフィリン症(VP)は常染色体優性ポルフィリン症であり、ALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(ADP)は常染色体劣性である。稀に、AIP、HCP、およびVPは、ホモ接合優性形態として存在する。これに加えて、単一肝臓皮膚ポルフィリン症で、肝骨髄性ポルフィリン症としてもまた知られている、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)の稀なホモ接合劣性形態がある。これらのポルフィリン症の臨床および検査特性は、下の表11に記載される。
いくつかの実施形態では、対象は、例えば肝性ポルフィリン症、例えばAIP、HCP、VP、ADP、または肝骨髄性ポルフィリン症などのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがある。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症は、急性肝性ポルフィリン症であり、例えば急性肝性ポルフィリン症は、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、異型ポルフィリン症(VP)、およびALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(ADP)から選択される。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症は、例えば少なくとも2つのポルフィリン症などの二重ポルフィリン症である。いくつかの実施形態では、二重ポルフィリン症は、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)、異型ポルフィリン症(VP)、およびALAデヒドラターゼ(deyhdratase)欠乏ポルフィリン症(ADP)から選択される、2種以上のポルフィリン症を含んでなる。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症は、ホモ接合優性肝性ポルフィリン症(例えばホモ接合優性AIP、HCP、またはVP)または肝骨髄性ポルフィリン症である。いくつかの実施形態では、ポルフィリン症は、AIP、HCP、VP、または肝骨髄性ポルフィリン症、またはそれらの組み合わせ(例えば二重ポルフィリン症)である。実施形態では、AIP、HCP、またはVPは、ヘテロ接合優勢またはホモ接合優性のいずれかである。
実施形態では、対象は、例えばADPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ALAおよび/またはコプロポルフィリンIIIレベルの上昇(例えば尿レベルの上昇)を示す。実施形態では、対象は、例えばADPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、赤血球Zn-プロトポルフィリンレベルの上昇を示す。
実施形態では、対象は、例えばAIPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ALA、PBG、および/またはウロポルフィリンレベルの上昇(例えば尿レベルの上昇)を示す。
実施形態では、対象は、例えばHCPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ALA、PBG、および/またはコプロポルフィリンIIIレベルの上昇(例えば尿レベルの上昇)を示す。実施形態では、対象は、例えばHCPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、コプロポルフィリンIIIレベルの上昇(例えば便レベルの上昇)を示す。
実施形態では、対象は、例えばVPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ALA、PBG、および/またはコプロポルフィリンIIIレベルの上昇(例えば尿レベルの上昇)を示す。
実施形態では、対象は、例えばHCPなどのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがあり、コプロポルフィリンIIIおよび/またはプロトポルフィリンレベルの上昇(例えば便レベルの上昇)を示す。
実施形態では、対象は、例えばPCTなどのポルフィリン症(例えば肝骨髄性ポルフィリン症)を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ウロポルフィリンおよび/またはポルフィリン-7-カルボン酸レベルの上昇(例えば尿レベルの上昇)を示す。実施形態では、対象は、例えばPCTなどのポルフィリン症(例えば肝骨髄性ポルフィリン症)を有し、またはそれを発症するリスクがあり、ウロポルフィリンおよび/またはポルフィリン-7-カルボン酸レベルの上昇(例えば便レベルの上昇)を示す。
ポルフィリン症と関連付けられている変異としては、ヘム生合成経路(ポルフィリン経路)中の酵素をコードする遺伝子、またはヘム生合成経路中の遺伝子の発現を変化させる遺伝子におけるあらゆる変異が挙げられる。多数の実施形態において、対象は、ポルフィリン経路の酵素に、1つまたは複数の変異(例えばALAデヒドラターゼ(deydratase)またはPBGデアミナーゼの変異)を保有する。いくつかの実施形態では、対象は、急性ポルフィリン症(例えばAIP、ALAデヒドラターゼ(deydratase)欠乏ポルフィリン症)に罹患している(suffereing)。
場合によっては、急性肝性ポルフィリン症(例えばAIP)がある患者、または急性肝性ポルフィリン症(例えばAIP)と関連付けられている変異を保有するが、無症候性である患者は、健常人と比較してALAおよび/またはPBGレベルの上昇を有する。例えば、フロデルス(Floderus),Y.ら著,Clinical Chemistry,52(4):701-707,2006;サルド(Sardh)ら著,Clinical Pharmacokinetics,46(4):335-349,2007年を参照されたい。このような症例では、患者が発作を有せず、または発作を起こしたことがない場合であっても、ALAおよび/またはPBGレベルは上昇し得る。このようないくつかの症例では、患者はその他の点では完全に無症候性である。このようないくつかの症例では、患者は、例えば慢性疼痛であり得る(例えば慢性神経障害性疼痛)神経障害性疼痛などの疼痛に悩まされる。場合によっては、患者は神経障害を有する。場合によっては、患者は進行性神経障害を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの上昇を有する。ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルは、当該技術分野で公知の方法、または本明細書に記載される方法を使用して評価し得る。例えば尿(uring)および血漿のALAおよびPBGレベル、ならびに尿および血漿のポルフィリンレベルを評価する方法は、その内容全体を本明細書に援用する、フロデルス(Floderus),Y.et al,Clinical Chemistry,52(4):701-707,2006;およびサルド(Sardh)ら著,Clinical Pharmacokinetics,46(4):335-349,2007年で開示される。
いくつかの実施形態では、対象は、例えばポルフィリン症のマウスモデルなどのポルフィリン症の動物モデルである(例えばリンドバーグ(Lindberg)ら著 Nature Genetics,12:195-199,1996に記載されるような変異マウス)。いくつかの実施形態では、対象は、例えば本明細書に記載されるようなポルフィリン症がある、またはそれを発症するリスクがあるヒトなどのヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ポルフィリン症の急性発作を有しない。いくつかの実施形態では、対象は、発作を起こしたことがない。いくつかの実施形態では、患者は、慢性疼痛に悩まされている。いくつかの実施形態では、患者は、神経損傷を有する。実施形態では、対象は、EMG変化および/または神経伝導速度の変化を有する。いくつかの実施形態では、対象は無症候性である。いくつかの実施形態では、対象は、ポルフィリン症を発症するリスクがあり(例えばポルフィリン症と関連付けられている遺伝子変異を保有する)、無症候性である。いくつかの実施形態では、対象は以前に急性発作を起こしたことがあるが、治療時点では無症候性である。
いくつかの実施形態では、対象は、ポルフィリン症を発症するリスクがあり、ポルフィリン症の発症を予防するために、予防的に治療される。いくつかの実施形態では対象は、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの上昇を有する。いくつかの実施形態では、予防的治療は、思春期に開始される。いくつかの実施形態では、治療は、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベル(例えば血漿レベルまたは尿レベル)を低下させる。いくつかの実施形態では、治療は、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの上昇の発生を予防する。いくつかの実施形態では、治療は、例えば疼痛または神経損傷などのポルフィリン症に伴う症状の発症を予防し、または頻度または重症度を低下させる。
いくつかの実施形態では、例えば対象からの血漿または尿サンプル中で、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルが上昇している。いくつかの実施形態では、例えば対象からのサンプル中の例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の絶対レベルに基づいて、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルが、対象中で評価される。いくつかの実施形態では、例えば対象からのサンプル中の例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の相対レベルに基づいて、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルが、対象中で評価される。いくつかの実施形態では、相対レベルは、例えば対象からのサンプル中のクレアチニンレベルなどの、別のタンパク質または化合物レベルと比較される。いくつかの実施形態では、サンプルは尿サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは便サンプルである。
例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の上昇レベルは、例えば対象が、基準値を超える、またはそれ以上の、ALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベル(例えば血漿または尿のALAおよび/またはPBGレベル)を有することを示すことで、確立され得る。ポルフィリン症治療の専門知識がある医師は、例えばポルフィリン症を診断し、または対象にポルフィリン症を発症するリスクがあるかどうかを判定する目的で、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)レベルが上昇しているかどうかを判定でき、例えば対象には急性発作の素因、または例えば慢性疼痛(例えば神経障害性疼痛)および神経障害(例えば進行性神経障害)などのポルフィリン症に伴う病変の素因があってもよい。
本明細書の用法では、「基準値」は、疾病状態にない時点の対象からの値、または正常なまたは健康な対象からの値、または例えば一群の正常なまたは健康な対象(例えばポルフィリン症と関連付けられている変異を保有しない対象群、および/またはポルフィリン症に伴う症状に罹患していない対象群)などの標準試料または集団からの値を指す。
いくつかの実施形態では、基準値は、同一個人の疾患前レベルである。いくつかの実施形態では、基準値は、標準試料または集団のレベルである。いくつかの実施形態では、基準値は、標準試料または集団の平均値または中央値である。いくつかの実施形態では、基準値は、標準試料または集団の平均値を2標準偏差上回る値である。いくつかの実施形態では、基準値は、標準試料または集団の平均値を2.5、3、3.5、4、4.5、または5標準偏差上回る値である。
対象が、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの上昇を有するいくつかの実施形態では、対象は、基準値よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%高い、ALAおよび/またはPBGレベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、例えば基準値よりも少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍高い、ALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを有する。
いくつかの実施形態では、基準値は、基準上限である。本明細書の用法では,「基準上限」は、例えば正常な(例えば野性型)または健康な個人の集団などの、例えばポルフィリン症と関連付けられている遺伝子変異を保有しない個人、および/またはポルフィリン症に罹患していない個人などの、標準試料または集団の95%信頼区間の上限であるレベルを指す。したがって基準下限は、同一95%信頼区間の下限であるレベルを指す。
対象が、例えば、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の血漿レベルまたは尿レベルなどのレベルの上昇を有するいくつかの実施形態では、レベルは、例えば基準上限などの基準値の2倍、3倍、4倍、または5倍以上である。いくつかの実施形態では、対象は、基準上限の4倍を超える、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の尿レベルを有する。
いくつかの実施形態では、基準値は、フロデルス(Floderus),Y.ら著,Clinical Chemistry,52(4):701-707,2006年またはサルド(Sardh)ら著,Clinical Pharmacokinetics,46(4):335-349,2007年で提供される値である。いくつかの実施形態では、基準値は、サルド(Sardh)らの表1で提供される値である。
いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、4.8mmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿PBGレベルを有する。特定の実施形態では、対象hばヒトであり、約3、4、5、6、7、または8mmol/molクレアチニンを超える、またはそれ以上の尿PBGレベルを有する。
実施形態では、血漿PBGの基準値は、0.12μmol/Lである。実施形態では、対象はヒトであり、0.10μmol/L、0.12μmol/L、0.24μmol/L、0.36μmol/L、0.48μmol/L、または0.60μmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿PBGレベルを有する。実施形態では、対象はヒトであり、0.48μmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿PBGレベルを有する。
実施形態では、尿PBGの基準値は、1.2mmol/molクレアチニンである。実施形態では、対象はヒトであり、1.0mmol/molクレアチニン、1.2mmol/molクレアチニン、2.4mmol/molクレアチニン、3.6mmol/molクレアチニン、4.8mmol/molクレアチニン、または6.0mmol/molクレアチニンを超える、またはそれ以上の尿PBGレベルを有する。実施形態では、対象はヒトであり、4.8mmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿PBGレベルを有する。
実施形態では、血漿ALAの基準値は、0.12μmol/Lである。実施形態では、対象はヒトであり、0.10μmol/L、0.12μmol/L、0.24μmol/L、0.36μmol/L、0.48μmol/L、または0.60μmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿ALAレベルを有する。実施形態では、対象はヒトであり、0.48μmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿ALAレベルを有する。
実施形態では、尿ALAの基準値は、3.1mmol/molクレアチニンである。実施形態では、対象はヒトであり、2.5mmol/molクレアチニン、3.1mmol/molクレアチニン、6.2mmol/molクレアチニン、9.3mmol/molクレアチニン、12.4mmol/molクレアチニン、または15.5mmol/molクレアチニンを超える、またはそれ以上の尿ALAレベルを有する。
実施形態では、血漿ポルフィリンの基準値は、10nmol/Lである。実施形態では、対象はヒトであり、10nmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿ポルフィリンレベルを有する。実施形態では、対象はヒトであり、8、10、15、20、25、30、35、40、45、または50nmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿ポルフィリンレベルを有する。対象はヒトであり、40nmol/Lを超える、またはそれ以上の血漿ポルフィリンレベルを有する。実施形態では、尿ポルフィリンの基準値は、25μmol/molクレアチニンである。実施形態では、対象はヒトであり、25μmol/molを超える、またはそれ以上の血漿PBGレベルを有する。実施形態では、対象はヒトであり、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80μmol/molクレアチニン以上の尿ポルフィリンレベルを有する。
いくつかの実施形態では、対象は、健常人サンプル中の個人の99%よりも大きな、例えばALAまたはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体の血漿レベルまたは尿レベルなどのレベルを有する。
いくつかの実施形態では、対象は、例えば健常人サンプル中の平均レベルを2標準偏差上回る血漿レベルまたは尿レベルなどのALAまたはPBGレベルを有する。
いくつかの実施形態では、対象は、健常人(例えばポルフィリン症と関連付けられている変異を保有しない対象)の平均レベルの1.6倍以上の尿レベルALAを有する。いくつかの実施形態では、対象は、健常人の平均レベルの2または3倍である、ALAの血漿レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、健常人の平均レベルの4倍以上である、PBGの尿レベルを有する。いくつかの実施形態では、対象は、健常人の平均レベルの4倍以上である、PBGの血漿レベルを有する。
いくつかの実施形態では、方法は、例えばALAおよび/またはPBGなどのポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを低下させるのに効果的である。実施形態では、方法は、例えばALAまたはPBGなどの上昇したポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルに所定の低下を生じるのに効果的である。いくつかの実施形態では、所定の低下は、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%の低下である。いくつかの実施形態では、所定の低下は、例えば疼痛または再発性発作などの症状を予防または改善するのに効果的な低下である。
いくつかの実施形態では、所定の低下は、少なくとも1、2、3標準偏差以上の低下であり、標準偏差は、例えば本明細書に記載される標準試料などの標準試料からの値に基づいて判定される。
いくつかの実施形態では、所定の低下は、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを、基準値(例えば本明細書に記載される基準値)未満のレベルまたはそれ以下のレベルにする低下である。
いくつかの実施形態では、記載される方法に従って治療される対象は、例えば慢性疼痛などの疼痛に悩まされている。いくつかの実施形態では、対象は、例えばAIPのような急性肝性ポルフィリン症などのポルフィリン症を有し、またはそれを発症するリスクがある。実施形態では、方法は、例えば疼痛の重症度を低下させ、または疼痛を治癒することで、疼痛を治療するのに効果的である。実施形態では、方法は、神経損傷を低下させまたは予防するのに効果的である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される対象は、(a)ALAおよび/またはPBGレベルの上昇を有し、(b)例えば慢性疼痛などの疼痛に悩まされている。実施形態では、方法は、上昇したALAおよび/またはPBGレベルを低下させるのに、および/または例えば疼痛重症度を低下させ、または疼痛を治癒することで、疼痛を治療するのに効果的である。
いくつかの実施形態では、対象は、ALAS1発現関連障害モデルの役割を果たす動物である。
いくつかの実施形態では、対象は、ポルフィリン症モデルの役割を果たす動物(例えば1つまたは複数の変異で遺伝子修飾された動物である。いくつかの実施形態では、ポルフィリン症はAIPであり、対象はAIPの動物モデルである。このような一実施形態では、対象は、例えばリンドバーグ(Lindberg)ら著,Nature Genetics,12:195-199,1996に記載されるマウスなどの、ポルホビリノーゲンデアミナーゼを欠いている遺伝子修飾されたマウス、またはYasuda,M.,Yu,C.Zhang,J.,Clavero,S.,Edelmann,W.,Gan,L.,Phillips,J.D.,& Desnick,R.J.Acute intermittent porphyria:A severely affected knock-in mouse that mimics the human homozygous dominant phenotype.(2011年10月14日のAmerican Society of Human Genetics;Program No.1308Fにおける発表論文抄録;ichg2011.org/cgi-bin/showdetail.pl?absno=21167で2012年4月4日にオンラインアクセス)に記載されるホモ接合R167Qマウスであり;これらの参考文献はどちらもその内容全体を本明細書に援用する。ヒトにおいて、ホモ接合優勢AIPを引き起こす変異のために、いくつかのノックインモデルが作り出されている。用いられる変異としては、例えば、PBGデアミナーゼ中のR167Q、R173Q、およびR173Wが挙げられる。生存可能なホモ接合体は、R167Q/R176QおよびR167Q/R173Qを含み、そのどちらも、ヒトホモ接合優勢AIPにおける表現型に類似した、ALAおよびPBGレベルの恒常的上昇を示す;いくつかの実施形態では、このような生存可能なホモ接合AIPマウスモデルが対象である。
一実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される対象(例えばヒト対象または患者)には、例えばポルフィリン症などのALAS1発現関連障害を発症するリスクがあり、または障害があると診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、1つまたは複数のポルフィリン症状の1つまたは複数の急性発作に罹患している対象である。別の実施形態では、対象は、ポルフィリン症の1つまたは複数の症状(例えば神経障害性疼痛などの疼痛、および/または例えば進行性神経障害などの神経障害)に慢性的に罹患している対象である。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載される遺伝子変化(例えば変異)を保有するが、その他の点では無症候性である。いくつかの実施形態では、対象は、以前、本明細書に記載されるヘム製品(例えばヘミン、アルギン酸ヘム、またはヘムアルブミン)で治療されている。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される対象(例えばAIPなどのポルフィリン症がある対象)は、前駆症状を最近経験しており、または目下経験している。いくつかのこのような実施形態では、対象には、例えば本明細書に記載されるiRNAなどの併用療法、およびポルフィリン症またはその関連症状に対して効果的であることが知られている1つまたは複数の追加的な治療薬(例えばグルコースおよび/または本明細書に記載されるヘミンなどのヘム製品)が投与される。
一実施形態では、本明細書に記載されるiRNAは、グルコースまたはデキストロースと組み合わせて投与される。例えば生理食塩水中の10~20%デキストロースが、静脈内に投与されてもよい。典型的に、グルコースが投与される場合、少なくとも300gの10%グルコースが毎日静脈内投与される。iRNA(例えばLNP製剤中のiRNA)もまた、グルコースまたはデキストロースを投与するのに使用される同一輸液の一部として静脈内投与してもよく、またはグルコースまたはデキストロースの投与前、投与中、または投与後に投与される別の輸液として、静脈内投与してもよい。いくつかの実施形態では、iRNAは、別の投与経路(例えば皮下)によって投与される。さらに別の実施形態では、iRNAは、完全非経口栄養法と組み合わせて投与される。iRNAは、完全非経口栄養法の投与前、投与中、または投与後に投与してもよい。
一実施形態では、iRNAは、ヘム製品(例えばヘミン、アルギン酸ヘム、またはヘムアルブミン)と組み合わせて投与される。さらなる実施形態では、iRNAは、ヘム製品およびグルコース、ヘム製品およびデキストロース、またはヘム製品および完全非経口栄養法と組み合わせて投与される。
「前駆症状」は、本明細書の用法では、個々の対象が急性発作を発症する直前に経験する、あらゆる症状を含む。前駆症状の典型的な症状としては、例えば腹痛、悪心、頭痛、心理学的症状(例えば不安)、情動不安および/または不眠症が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象は、前駆症状中に疼痛(例えば腹痛および/または頭痛)を経験する。いくつかの実施形態では、対象は、前駆症状中に悪心を経験する。いくつかの実施形態では、対象は、前駆症状中に心理学的症状(例えば不安)を経験する。いくつかの実施形態では、対象は、前駆症状中に落ち着きがなくなりおよび/または不眠症に悩まされる。
ポルフィリン症の急性「発作」は、典型的に、ポルフィリン症と関連付けられている変異(例えばポルフィリン経路中の酵素をコードする遺伝子の変異)を保有する患者において、ポルフィリン症の1つまたは複数の症状の発症を伴う。
特定の実施形態では、ALAS1 iRNAの投与は、本明細書に記載される1つまたは複数のポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)レベルの低下をもたらす。低下は、あらゆる適切な対照または基準値と比較して判定されてもよい。例えば1つまたは複数のポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの低下は、例えば治療前の(例えば治療直前の)レベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上の低下として、個々の対象中で確立されてもよい。ポルフィリン前駆体、ポルフィリン、またはポルフィリン代謝産物レベルの低下は、当該技術分野で公知のいずれかの方法を使用して測定してもよい。例えば尿または血漿中のPBGおよび/またはALAレベルは、ワトソン-シュヴァルツ試験、イオン交換クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー質量分析法を使用して評価してもよい。例えばサンネル(Thunell)(1993)を参照されたい。
いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、対象中において、ALAおよび/またはPBGレベルを低下させるのに効果的である。対象中のALAまたはPBGレベルは、例えばALAまたはPBGの絶対レベルに基づいて、または対象からのサンプル中のALAまたはPBGの相対レベルに基づいて(例えばクレアチニンレベルなどの別のタンパク質または化合物レベルと比較して)評価し得る。いくつかの実施形態では、サンプルは尿サンプルである。いくつかの実施形態では、サンプルは血漿サンプルである。
特定の実施形態では、ALAS1を標的とするiRNAは、例えば、ポルフィリン症を、またはポルフィリン症の症状を治療するのに効果的であることが知られている別の治療薬などの、1つまたは複数の追加的な治療薬と組み合わせて投与される。例えば、別の治療薬は、グルコース(例えばIVグルコース)またはヘム製品(例えばヘミン、アルギン酸ヘム、またはヘムアルブミン)であってもよい。追加治療は、iRNAの投与前、投与後、または投与と同時に投与してもよい。
iRNAおよび追加的な治療薬は、例えば静脈内に、同一組成物中で組み合わせて投与し得て、または追加的な治療薬は、別個の組成物の一部として、または本明細書に記載される別の方法によって投与し得る。
いくつかの実施形態では、iRNAの投与、または1つまたは複数の追加的な治療薬(例えばグルコース、デキストロースなど)と組み合わされたiRNAの投与は、(例えば急性発作がもはや起きないように予防することで、または例えば1年あたりでより少ない発作が起きるなど、特定期間内に起きる発作回数を低下させることで)急性発作の発生頻度を低下させる。いくつかのこのような実施形態では、iRNAは、例えば毎日、毎週、隔週、または毎月などの定期的投与計画に従って投与される。
いくつかの実施形態では、iRNAは、ポルフィリン症の急性発作後に投与される。いくつかのこのような実施形態では、iRNAは、例えばLNP製剤などの脂質製剤を含んでなる組成物である、組成物中にある。
いくつかの実施形態では、iRNAは、ポルフィリン症の急性発作中に投与される。いくつかのこのような実施形態では、iRNAは、例えば脂質製剤(例えばLNP製剤)を含んでなる組成物である、またはGalNAc複合体を含んでなる組成物である、組成物中にある。
いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、(例えば発作に伴う1つまたは複数の徴候または症状を改善することで)発作の重症度を低下させるのに効果的である。いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作持続期間を短縮するのに効果的である。いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作を止めるのに効果的である。いくつかの実施形態では、iRNAは、ポルフィリン症を予防するために予防的に投与される。いくつかのこのような実施形態では、iRNAは、例えばGalNAc複合体を含んでなる組成物などのGalNAc複合体の形態である。いくつかの実施形態では、予防的な投与は、増悪因子暴露または増悪因子発生の前、その最中、またはその後である。いくつかの実施形態では、対象には、ポルフィリン症を発症するリスクがある。
いくつかの実施形態では、siRNAは前駆症状中に投与される。いくつかの実施形態では、前駆症状は、疼痛(例えば頭痛および/または腹痛)、悪心、心理学的症状(例えば不安)、情動不安および/または不眠症によって特徴付けられる。
いくつかの実施形態では、siRNAは、例えば黄体期などの月経周期の特定段階中に投与される。
いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作(例えば前駆症状に伴う、および/または例えば黄体期などの月経周期の特定段階のような増悪因子に伴う再発性発作)を予防するのに効果的である。いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作の発生頻度を低下させるのに効果的である。実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、(例えば発作に伴う1つまたは複数の徴候または症状を改善することで)発作の重症度を低下させるのに効果的である。いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作持続期間を短縮するのに効果的である。いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、発作を止めるのに効果的である。
いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、例えば神経障害性疼痛などの疼痛を予防し、または発生頻度または重症度を低下させるのに効果的である。
いくつかの実施形態では、ALAS1 siRNAの投与は、神経障害を予防し、またはその発生頻度または重症度を低下させるのに効果的である。
ALAS1 siRNAの投与効果は、例えば適切な対照との比較によって、確立され得る。例えば急性発作の発生頻度の低下、ならびに1つまたは複数のポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルの低下は、例えば適切な対照群と比較した発生頻度低下として、AIP患者群中で確立されてもよい。対照群(例えばクロスオーバーデザイン中の類似個体群または同一個体群)としては、例えば未治療集団、従来のポルフィリン症治療薬で治療された集団(例えばAIPの従来の治療薬としては、グルコース、ヘミン、またはその双方が挙げられる);任意選択的に1つまたは複数の従来のポルフィリン症治療薬(例えばグルコース、例えばIVグルコース)と組み合わされた、プラセボまたは非標的化iRNAで治療された集団が挙げられる。
本明細書の用法では、ポルフィリン症を発症する「リスクがある」対象としては、ポルフィリン症の家族歴、および/または1つまたは複数の再発性または慢性ポルフィリン症の症状の病歴がある対象、および/またはヘム生合成経路の酵素をコードする遺伝子中に遺伝子変化(例えば変異)を保有する対象、および例えばポルフィリン症に伴うことが知られている変異などの遺伝子変化を保有する対象が挙げられる。
実施形態では、変異などの変化は、(例えば薬物、ダイエットまたは例えば本明細書で開示される増悪因子のようなその他の増悪因子などの増悪因子に曝露した際に)個人が急性発作を起こしやすくする。実施形態では、変異などの変化は、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)レベルの上昇と関連付けられている。実施形態では、変異などの変化は、慢性疼痛(例えば慢性神経障害性疼痛)および/または神経障害(例えば進行性神経障害)と関連付けられている。実施形態では、例えば変異などの変化は、EMGおよび/または神経伝導速度変化と関連付けられている。
実施形態では、変化は、ALAS1遺伝子の変異である。実施形態では、変化は、ALAS1遺伝子プロモータの変異、またはALAS1遺伝子の上流または下流領域の変異である。実施形態では、変化は、ALAS1と相互作用する転写因子またはその他の遺伝子の変異である。実施形態では、変化は、例えばヘム生合成経路中の酵素をコードする遺伝子の変異などの変化である。
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載される遺伝子変化(例えばポルフィリン症に伴うことが知られている遺伝子変異)を有する。いくつかのこのような実施形態では、対象は、ALAおよび/またはPBGレベル(例えば尿または血漿レベル)の上昇を有する。いくつかのこのような実施形態では、対象は、ALAおよび/またはPBGレベルの上昇を有しない。実施形態では、対象は本明細書に記載される遺伝子変化を有し、および例えば慢性疼痛EMG変化、神経伝導速度変化、および/またはその他のポルフィリン症に伴う症状などのその他の症状を有する。実施形態では、対象は遺伝子変化を有するが、急性発作に悩まされていない。
実施形態では、対象は、AIP、HCP、VP、またはADPと関連付けられている変異を有する。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症はAIPである。いくつかのこのような実施形態では、対象は、PBGデアミナーゼ遺伝子に、例えば少なくとも1つの変異などの変化を有する。例えばヒドリンカ(Hrdinka),M.ら著Physiological Research,55(Suppl 2):S119-136(2006)で報告されるように、多数のPBGデアミナーゼ変異が当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、対象は、PBGデアミナーゼ変異についてヘテロ接合性である。別の実施形態では、対象は、PBGデアミナーゼ変異についてホモ接合性である。ホモ接合性の対象は、PBGデアミナーゼ遺伝子に、2つの同一変異または2つの異なる変異を保有してもよい。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症はHCPである。いくつかのこのような実施形態では、対象は、酵素コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼをコードする遺伝子に、例えば少なくとも1つの変異などの変化を有する。
いくつかの実施形態では、ポルフィリン症はVPである。いくつかのこのような実施形態では、対象は、プロトポルフィリノーゲン(protoporphrinogen)オキシダーゼをコードする遺伝子に、例えば少なくとも1つの変異などの変化を有する。
実施形態では、ポルフィリン症は、例えば常染色体劣性ADPなどのADPである。いくつかのこのような実施形態では、対象は、ALAデヒドラターゼ(deydratase)をコードする遺伝子に、例えば少なくとも1つの変異などの変化を有する。
本明細書で提供される治療法は、ポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状を改善し、ポルフィリン症に伴う発作の発生頻度を低下させ、増悪因子への曝露に際してポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状の発作が起きる可能性を低下させ、またはポルフィリン症に伴う病状(例えば神経障害(例えば進行性神経障害)、肝細胞がん)を発症するリスクを低下させるのに役立ってもよい。さらに、本明細書で提供される方法は、1つまたは複数のポルフィリン前駆体、ポルフィリンおよび/または関連ポルフィリン産物または代謝産物レベルを低下させるのに役立ってもよい。ポルフィリン前駆体またはポルフィリン(porhyrin)レベルは、例えば尿、血液、糞便、脳脊髄液、または組織サンプルなどのあらゆる生物学的サンプル中で測定されてもよい。サンプルは、対象内に存在してもよく、または対象から得られ、または対象から抽出されてもよい。いくつかの実施形態では、ポルフィリン症はAIPであり、PBGおよび/またはALAレベルが低下される。いくつかの実施形態では、ポルフィリン産物または代謝産物は、ポルホビリン、ポルホビリノーゲン、またはウロポルフィリンである。ポルフィリン産物または代謝産物レベルの低下は、当該技術分野で公知のあらゆる方法を使用して測定してもよい。例えば尿または血漿中のPBGおよび/またはALAレベルは、ワトソン-シュヴァルツ試験、イオン交換クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー質量分析法を使用して評価してもよい。例えばサンネル(Thunell)(1993)を参照されたい。
本明細書に記載される方法は、ポルフィリン症(例えばAIPのような急性肝性ポルフィリン症)に罹患している、またはポルフィリン症を発症するリスクがある対象中で、ポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)の上昇した慢性的レベルを低下させるのにもまた、役立ってもよい。ポルフィリン前駆体の血漿および尿レベル(例えば慢性的レベル上昇)を評価する方法としては、例えばHPLC質量分析法およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。ポルフィリン前駆体レベルは、例えばクレアチニンなどの別のタンパク質または化合物と比較したレベルとして表されてもよい。例えばフロデルス(Floderus),Yら,Clinical Chemistry,52(4):701-707,2006年;サルド(Sardh)ら著,Clinical Pharmacokinetics,46(4):335-349,2007年を参照されたい。
「増悪因子」は、本明細書の用法では、ポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状の急性発作を誘発することもある内因性または外因性要因を指す。増悪因子としては、空腹時(またはクラッシュダイエットや長距離運動競技などに起因する、低下したまたは不十分なカロリー摂取量のその他の形態)、代謝ストレス(例えば感染症、外科手術、国際飛行機旅行、および心理学的ストレス)、内因性ホルモン(例えばプロゲステロン)、喫煙、脂質可溶性外来性化学物質(例えばタバコの煙、特定の処方薬、有機溶媒、殺生剤、アルコール飲料の成分中に存在する化学物質をはじめとする)、内分泌因子(例えば生殖ホルモン(女性は月経前期間中に増悪を経験することもある)、合成エストロゲン、プロゲステロン、排卵誘発剤、およびホルモン代替療法)が挙げられる。例えばサンネル(Thunell)(1993)を参照されたい。一般的増悪因子としては、チトクロームP450誘導剤およびフェノバルビタールが挙げられる。
ポルフィリン症に伴う症状としては、腹痛または痙性腹痛、頭痛、神経系異常によって引き起こされる影響、そして発疹、水疱形成、および皮膚瘢痕(光線皮膚炎)を引き起こす光感受性が挙げられる。特定の実施形態では、ポルフィリン症はAIPである。AIPの症状としては、胃腸症状(例えば重症で局在のはっきりしない腹痛、悪心/嘔吐、便秘、下痢、腸閉塞)、尿症状(排尿障害、尿貯留/失禁、または色の濃い尿)、神経症状(例えば感覚性の神経障害、運動神経障害(例えば脳神経に影響を及ぼし、および/または腕または脚の脱力感をもたらす)、痙攣、神経障害性疼痛、進行性神経障害、頭痛、神経精神症状(例えば精神錯乱、不安、撹拌、幻覚、ヒステリー、譫妄、感情鈍麻、うつ病、恐怖症、精神病、不眠症、傾眠、昏睡)、自律神経系障害(例えば頻脈、高血圧、および/または不整脈などの心血管症状(sysmptoms)、ならびに例えば循環カテコールアミンレベル増大、発汗、情動不安、および/または振戦などのその他の症状をもたらす)、脱水、および電解質異常が挙げられる。
いくつかの実施形態では、ALAS1を標的にするiRNAが、上記症状の1つまたは複数を緩和するのに役立ってもよい別の治療薬と共に(例えば前、後、または同時に)投与される。腹痛は、例えば麻薬鎮痛剤で治療してもよく、痙攣は、例えば抗痙攣薬剤で治療してもよく、悪心/嘔吐は、例えばフェノチアジンで治療してもよく、頻脈/高血圧は、例えばβ遮断薬で治療してもよい。
「低下」(または「増大」)という用語は、例えば統計的に有意な変化などの測定可能変化を指すことが意図される。変化は、例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%以上の変化であってもよい(例えば、例えばiRNAが提供されない場合の基準値である基準値と比較した低下(または増大))。
本発明は、例えば疾患を治療するために目下用いられているものなどの、既知の医薬品および/または既知の治療法などの、その他の医薬品および/またはその他の治療法と組み合わされた、例えばALAS1発現関連障害を治療するための、iRNAまたはその医薬組成物の使用にさらに関する。一実施形態では、iRNAまたはその医薬組成物は、ヘム製品(例えば本明細書に記載されるヘミン、アルギン酸ヘム、またはヘムアルブミン)と併せて、および/または静脈内グルコース輸液と併せて投与し得る。いくつかの実施形態では、iRNAまたはその医薬組成物が、例えば急性ポルフィリン症の予期される発作の症状を予防または改善するために、予防的に使用される。予防的な使用は、増悪因子への対象の曝露または予期される曝露に従って、時期設定されてもよい。本明細書に記載されるように、増悪因子は、急性発作を誘発することが知られているあらゆる内因性または外因性要因であってもよい。例えば月経前期は、内因性増悪因子であり、チトクロームP450誘導剤は外因性増悪因子である。
ALAS1発現関連障害(例えばAIPなどのポルフィリン症)の治療有効量は、治療される疾患のタイプ、症状の重症度、治療される対象、対象の性別、年齢および全身状態、投与様式などに左右される。いかなる場合も、適切な「有効量」は、通例の実験法を使用して、当業者によって測定され得る。このようなパラメータのいずれか1つ、またはパラメータの任意の組み合わせを測定することで、治療または予防有効性をモニターすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。ALAS1を標的にするiRNAまたはその医薬組成物の投与との関連で、ALAS1発現関連障害「に対して効果的」とは、臨床的に適切な様式での投与が、例えば個々の患者に、または例えば患者の統計学的に顕著な部分などの患者の少なくとも一部に、有益な効果をもたらすことを意味する。有益な効果としては、例えば症状の予防または低下、またはその他の効果が挙げられる。有益な効果としては、例えば症状の改善(例えば重症度または発生頻度の低下)、発作の重症度または発生頻度の低下、関連疾患(例えば神経障害(例えば進行性神経障害)、肝細胞がん)発症リスクの低下、増悪因子耐性能力の改善、生活の質の改善、ALAS1発現の低下、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)レベル(例えば血漿または尿レベル)の低下、または特定タイプの疾患治療に精通している医者によって、プラスであると一般に認められているその他の効果が挙げられる。
病態の1つまたは複数のパラメータに統計的に有意な改善などの改善がある場合、またはさもなければ予期される症状悪化または発症の欠如によって、治療または予防効果は明らかである。一例として、疾患の測定可能なパラメータにおける、例えば少なくとも20%、30%、40%、50%以上などの少なくとも10%の好ましい変化は、効果的な治療を示唆し得る。所与のiRNA薬剤またはその薬剤の配合物の有効性はまた、当該技術分野で公知の所与の疾患のための実験動物モデルを使用して、判定し得る。実験的動物モデルを使用する場合、治療の効能は、マーカ(例えば血漿または尿ALAまたはPBG)または症状に、統計的に有意な低下が観察された場合に証明される。
患者には、治療量のiRNAを投与し得る。治療量は、例えば0.05~50mg/kgであり得る。例えば治療量は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、または2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mg/kgのdsRNAであり得る。
いくつかの実施形態では、iRNAは、例えば本明細書に記載されるLNP製剤などの脂質製剤として調合される。いくつかのこのような実施形態では、治療量は、例えば0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0mg/kgのdsRNAなど、0.05~5mg/kgである。いくつかの実施形態では、例えばLNP製剤である脂質製剤は、静脈内投与される。
いくつかの実施形態では、iRNAは、5分間、10分間、15分間、20分間、または25分間などを超える時間にわたる、静脈輸液によって投与し得る。
いくつかの実施形態では、iRNAは、本明細書に記載されるGalNAc複合体の形態である。いくつかのこのような実施形態では、治療量は、例えば0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mg/kgのdsRNAなど、0.5~50mgである。いくつかの実施形態では、GalNAc複合体は皮下投与される。
いくつかの実施形態では、投与は、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月以上などにわたり、日周、隔週(すなわち2週毎)で、定期的に繰り返される。最初の治療計画の後に、治療は、より低い頻度で行い得る。例えば3ヶ月にわたる隔週の投与後、6ヶ月または1年以上にわたり毎月1回の投与を反復し得る。
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、2回分以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、引き続く投与の回数または量は、例えばALAS遺伝子抑制、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAおよび/またはPBG)レベルの低下などの所望の効果の達成、または例えばポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状(例えば疼痛、例えば神経障害性疼痛)の低下または予防、および/またはポルフィリン症に伴う発作の予防または発作の発生頻度および/または重症度低下などの、治療的または予防的効果の達成に左右される。
いくつかの実施形態では、iRNA剤は、スケジュールに従って投与される。例えばiRNA剤は、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、または週に5回、投与してもよい。いくつかの実施形態では、スケジュールは、例えば1時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、毎週、隔週、または毎月などの、規則的間隔の投与を伴う。実施形態では、iRNA剤が毎週または隔週投与されて、例えばALAおよび/またはPBGレベルの低下、疼痛低下、および/または急性発作予防などの所望の効果が達成される。
実施形態では、スケジュールは、狭い間隔での投与と、それに続く薬剤が投与されないより長い期間を伴う。例えばスケジュールは、比較的短期間(例えば約6時間毎、約12時間毎、約24時間毎、約48時間毎、または約72時間毎)で投与される最初の投与セットと、その間iRNA剤が投与されない、それに続く(例えば約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、または約8週間)などのより長い期間を伴ってもよい。一実施形態では、iRNA剤を最初に1時間毎に投与して、後により長い間隔で(例えば毎日、毎週、隔週、または毎月)投与する。別の実施形態では、iRNA剤を最初に毎日投与して、後により長い間隔で(例えば毎週、隔週、または毎月)投与する。特定の実施形態では、より長い間隔は、経時的に増大され、または所望の効果の達成に基づいて決定される。特定の実施形態では、iRNA剤は、急性発作中に毎日1回投与され、投与の8日目に開始する毎週の投薬がそれに続く。別の特定の実施形態では、iRNA剤は、第1週目に隔日投与され、投与の8日目に開始する毎週の投薬がそれに続く。
一実施形態では、iRNA剤は、例えば増悪因子に伴う周期性発作などの再発性発作を予防し、または重症度または発生頻度を低下させるために投与される。いくつかの実施形態では、増悪因子は月経周期である。いくつかの実施形態では、iRNAは、例えば黄体期のような月経周期の特定段階など、例えば月経周期などの増悪因子に伴う周期性発作などの再発性発作を予防し、または重症度または発生頻度を低下させるために、例えば定期的に繰り返し投与される。いくつかの実施形態では、iRNAは、治療される患者の月経周期の特定段階中に、またはホルモンレベルに基づいて(例えば月経周期の特定段階に伴うホルモンレベルに基づいて)、投与される。いくつかの実施形態では、iRNAは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、または28日目(または月経周期がより長い対象では、それ以降の日)などの月経周期の特定の1日または複数日に投与される。いくつかの実施形態では、iRNAは、例えば月経周期の14~28日目(月経周期が28日間より長い対象では、その後)の1日または複数日などの、黄体期中に投与される。いくつかの実施形態では、対象の排卵が評価され(例えばLHなどの排卵に伴うホルモンを検出する血液または尿検査を使用して)、iRNAが排卵後に所定の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、iRNAは、排卵直後に投与される。いくつかの実施形態では、iRNAは、排卵の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18日後に投与される。これらのスケジュールのいずれでも、任意選択的に、1回または複数回、繰り返してもよい。反復回数は、例えばALAS1遺伝子抑制などの所望の効果の達成、および/または例えばポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状を低下させまたは予防して、ポルフィリン症に伴う発作の発生頻度を低下させるなどの治療的または予防的効果の達成に左右されてもよい。
いくつかの実施形態では、iRNA剤の最初の用量が投与され、ALAまたはPBGレベルが、最初の用量の投与に続いて、例えば2、4、8、12、または24時間後など、1~48時間にわたり検査される。いくつかの実施形態では、ALAおよび/またはPBGレベルが低下した(例えば正常化など所定の低下が達成された)場合、および/または(例えば患者が無症候性になるように)ポルフィリン症に伴う症状(例えば疼痛)が改善された場合、それ以上の用量は投与されない一方で、ALAおよび/またはPBGレベルが低下しなかった場合(例えば正常化など所定の低下が達成されなかった場合)、ALAまたはPBGのさらなる用量が投与される。いくつかの実施形態では、最初の用量の12、24、36、48、60、または72時間後にさらなる用量が投与される。いくつかの実施形態では、最初の用量が、ALAおよび/またはPBGレベルを低下させるのに効果的でない場合、さらなる用量は修正され、例えば増大されて、ALAまたはPBGレベルに所望の低下が達成される(例えば正常化などの所定の低下)。
いくつかの実施形態では、所定の低下は、少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%の低下である。いくつかの実施形態では、所定の低下は、例えば疼痛、前駆症状、または再発性発作などの症状を予防または改善するのに効果的な低下である。
いくつかの実施形態では、所定の低下は、少なくとも1、2、3標準偏差以上の低下であり、標準偏差は、例えば本明細書に記載される標準試料などの標準試料からの値に基づいて判定される。
いくつかの実施形態では、所定の低下は、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを、基準値(例えば本明細書に記載される基準値)未満のレベルまたはそれ以下のレベルにする低下である。
本明細書の用法では、ALAまたはPBGレベルの「正常化」(または「正常な」または「正常化された」レベル)は、健常人、無症候性の個人(例えば疼痛を経験していない、および/または神経障害に罹患していない個人)、またはポルフィリン症に伴う変異を有しない個人について予測範囲内にある、ALAまたはPBGのいずれか、または双方のレベル(例えば尿および/または血漿レベル)を指す。例えばいくつかの実施形態では、正常化されたレベルは、正常な平均値の2標準偏差内である。いくつかの実施形態では、正常化されたレベルは、例えばポルフィリン症に伴う遺伝子変異を保有しない健常人または個人のサンプルである、適切な対照サンプルの95%信頼区間内などの、正常基準範囲内である。いくつかの実施形態では、対象のALAおよび/またはPBGレベル(例えば尿および/または血漿ALAおよび/またはPBGレベル)は、周期的にモニターされ、基準値を超えてレベルが増大した場合は、iRNA剤のさらなる用量が投与される。
iRNAの投与は、例えば患者の細胞、組織、血液、尿またはその他の区画中などのALAS1 mRNAまたはタンパク質レベルを、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%以上低下させてもよい。iRNA投与は、例えば1つまたは複数のポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベル(例えばALAおよび/またはPBGレベル)などの、ALAS1遺伝子発現に伴う産物レベルを低下させてもよい。iRNA剤投与はまた、AIPの急性発作中に、ALAS1 mRNAまたはタンパク質レベルの上方制御を阻害しまたは妨げてもよい。
iRNAの全用量の投与前に、5%輸液用量などのより少ない用量を患者に投与して、アレルギー反応、または脂質レベルまたは血圧の増大などの悪影響についてモニターし得る。別の実施例では、患者は、望ましくない効果についてモニターし得る。
ALAS1遺伝子発現を調節する方法
さらに別の態様では、本発明は、例えば細胞中または対象中で、ALAS1遺伝子の発現を調節する(例えば阻害または活性化する)方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、生体外、試験管内、または生体内にある。いくつかの実施形態では、細胞は赤血球系細胞または肝実質細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象(例えばヒトなどの哺乳類)中にある。いくつかの実施形態では、対象(例えばヒト)には、上述したようなALAS1発現関連疾患のリスクがある、または疾患があると診断されている。
一実施形態では、方法は、細胞中のALAS1遺伝子の発現を低下させるのに有効な量で、細胞に、本明細書に記載されるiRNAを接触させるステップを含む。「接触させる」とは、本明細書の用法では、細胞に直接接触させ、ならびに細胞に間接的に接触させることを含む。例えば対象中の細胞(例えば赤血球系細胞、または肝実質細胞などの肝細胞)は、iRNAを含んでなる組成物を対象に投与 (例えば静脈内または皮下投与)した際に、接触されてもよい。
ALAS1遺伝子の発現は、ALAS1 mRNAの発現レベル、ALAS1タンパク質、またはALAS1遺伝子の発現レベルと機能的に連結したパラメータ(例えばポルフィリンレベルまたはポルフィリン症に関連した症状の発生率または重症度)のレベルに基づいて評価してもよい。いくつかの実施形態では、ALAS1の発現は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%阻害される。いくつかの実施形態では、iRNAは、0.001~0.01nM、0.001~0.10nM、0.001~1.0nM、0.001~10nM、0.01~0.05nM、0.01~0.50nM、0.02~0.60nM、0.01~1.0nM、0.01~1.5nM、0.01~10nMの範囲のIC50を有する。IC50値は、例えば非標的化iRNAのIC50などの適切な対照値に対して、正規化してもよい。
いくつかの実施形態では、方法は、細胞に、本明細書に記載されるiRNAを導入して、ALAS1遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間にわたり細胞を保ち、それによって細胞中のALAS1遺伝子発現を阻害するステップを含む。
一実施形態では、方法は、例えば標的ALAS1遺伝子の発現が、例えば1週間、2週間、3週間、または4週間以上など、少なくとも2、3、4日間以上の長期間にわたり低下するように、哺乳類に、ALAS1を標的とするiRNAを含んでなる組成物などの本明細書に記載される組成物を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、ALAS1発現の低下は、最初の投与の1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、または24時間以内に検出可能である。
別の実施形態では、方法は、標的ALAS1遺伝子の発現が、未治療動物と比較して、例えば少なくとも10%増大するように、本明細書に記載される組成物を哺乳類に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、ALAS1の活性化は、例えば1週間、2週間、3週間、4週間以上など、例えば少なくとも2、3、4日間以上の長期間にわたって起きる。理論による拘束は望まないが、iRNAは、ALAS1 mRNA転写物を安定化し、ゲノム中のプロモータと相互作用し、および/またはALAS1発現の阻害物質を阻害することで、ALAS1発現を活性化し得る。
本発明で取り上げる方法および組成物に有用なiRNAは、ALAS1遺伝子の(一次またはプロセシング)RNAを特異的に標的とする。iRNAを使用してこれらのALAS1遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法は、本明細書の他の箇所に記載されるようにして調製され実施され得る。
一実施形態では、方法は、iRNAを含有する組成物を投与するステップを含み、iRNAは、治療される哺乳類のALAS1遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的なヌクレオチド配列を含む。治療される生物が、ヒトなどの哺乳類である場合、組成物は、経口、腹腔内、または頭蓋内(例えば脳室内、脳実質内およびクモ膜下腔内)をはじめとする非経口経路、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(煙霧剤)、経鼻、直腸、および局所(バッカルおよび舌下をはじめとする)投与をはじめとするが、これに限定されるものではない、当該技術分野で公知の任意の手段によって投与してもよい。
特定の実施形態では、組成物は静脈輸液または注射によって投与される。いくつかのこのような実施形態では、組成物は、静脈輸液のための脂質調合siRNA(例えばLNP11製剤などのLNP製剤)を含んでなる。特定の実施形態では、ポルフィリン症の急性発作を治療および/または予防する(例えば発作の重症度または発生頻度を低下させる)ために、このような組成物を使用してもよい。
別の実施形態では、組成物は皮下投与される。いくつかのこのような実施形態では、組成物は、GalNAcリガンドに共役するiRNAを含んでなる。特定の実施形態では、ポルフィリン症の急性発作を治療または予防(例えば発作の重症度または発生頻度を低下させる)するために、このような組成物を使用してもよい。
ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを低下させる方法
別の態様では、本発明は、例えば細胞中でまたは対象中で、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルを低下させる方法を提供する。
いくつかの実施形態では、細胞は、生体外、試験管内、または生体内にある。いくつかの実施形態では、細胞は赤血球系細胞または肝実質細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は肝実質細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象(例えばヒトなどの哺乳類)中にある。
いくつかの実施形態では、対象(例えばヒト)には、本明細書に記載されるようなポルフィリン症のリスクがあり、またはポルフィリン症と診断されている。いくつかの実施形態では、方法は、(例えばポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状を改善し、ポルフィリン症に伴う発作の発生頻度を低下させ、増悪因子への曝露に際してポルフィリン症に伴う1つまたは複数の症状発作が起きる可能性を低下させ、またはポルフィリン症に伴う病状(例えば神経障害(例えば進行性神経障害)、肝細胞がん)を発症するリスクを低下させることで、本明細書に記載されるポルフィリン症を治療するのに効果的である。一実施形態では、方法は、細胞中、または別の関連細胞または細胞群中、または対象中で、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体(例えばALAまたはPBG)レベルを低下させるの十分な量で、細胞に、本明細書に記載されるRNAiを接触させるステップを含む。「接触させる」とは、本明細書の用法では、細胞に直接接触させ、ならびに細胞に間接的に接触させることを含む。例えば対象中の細胞(例えば赤血球系細胞、または肝実質細胞などの肝細胞)は、RNAiを含んでなる組成物を対象に投与(例えば静脈内または皮下投与)した際に、接触されてもよい。「別の関連細胞または細胞群」とは、本明細書の用法では、接触の結果として、その中でポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルが低下するあらゆる細胞または細胞群を含む。例えば細胞は、対象内に存在する組織の一部(例えば対象内に存在する肝細胞)であってもよく、RNAiを対象内の細胞に接触させる(例えば対象内に存在する1つまたは複数の肝細胞に接触させる)ことは、別の関連細胞または細胞群(例えば対象の神経細胞)中で、または対象の組織または体液流体(例えば対象の尿、血液、血漿、または脳脊髄液)中で、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルに低下をもたらしてもよい。
いくつかの実施形態では、ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体は、δ-アミノレブリン酸(ALA)、ポルホビリノーゲン(porphopilinogen)(PBG)、ヒドロキシメチルビラン(HMB)、ウロポルフィリノーゲンIII、コプロポルフィリノーゲンIII、プロトポルフィリノーゲン(protoporphrinogen)IX、およびプロトポルフィリンIXからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポルフィリン前駆体はALAである。いくつかの実施形態では、ポルフィリン前駆体はPBGである。いくつかの実施形態では、方法は、ALAおよびPBGレベルを低下させる。ポルフィリンまたはポルフィリン前駆体レベルは、本明細書に記載されるように、および当該技術分野で公知のように、測定されてもよい。
RNAi活性のアッセイおよびモニタリング方法
別の態様では、本発明は、ALAS1 mRNAレベルのアッセイおよびモニタリング方法を提供する。肝臓内のRNAi活性は、組織内のmRNAレベルまたは5’RACE生成物を検出することで、または循環分泌タンパク質のレベルを検出することで、モニターされ得る。
代案としては、または組み合わせで、ALAS1 mRNAの循環細胞外レベルは、例えば、cERD(Circulating Extracellular RNA Detection;循環細胞外RNA検出)アッセイによって検出され得る。いくつかの実施形態では、ALAS1 mRNAレベルは、例えば、血清または尿サンプルなどの体液サンプル中で検出され得る。いくつかの実施形態では、エキソソームは、起源組織に由来するmRNAおよびmiRNAを含有する異なる細胞型(cells types)から、体液中に脱落する。このようなエキソソームを使用して、循環内のRNAiレベルがモニターされ得る。一実施形態では、例えば、本明細書に記載されるiRNAで処置された対象からの血清または尿サンプルなどのサンプルは、低速スピンによって精製され得て、約160,000gで約2時間のスピンがそれに続き、ペレットが形成される。RNAは、抽出され分析されて、ALAS1 mRNAレベルが測定され得る。代表的な方法およびアッセイは、その内容が参照により援用される、国際公開第2012/177906号パンフレットとして公開された、PCT/US2012/043584号明細書で開示される。
したがって、対象中の循環細胞外ALAS1 mRNAレベルを検出するためのアッセイまたは方法が、提供される。アッセイまたは方法は、ALAS1 mRNAを含んでなる、対象からの生物学的液状サンプル(例えば、尿、血液または血漿サンプル)からのRNA(例えば、細胞外RNA)を提供するステップと;サンプル中の循環細胞外ALAS1 mRNAレベルを検出するステップとを含む。
一実施形態(embedment)では、アッセイまたは方法は、ALAS1 mRNAからALAS1 cDNAを得るステップと;ALAS1 cDNAをALAS1 cDNAまたはその一部に相補的な核酸(例えば、プローブおよび/またはプライマー)に接触させて、それによって反応混合物を生成するステップと;反応混合物中のALAS1 cDNAレベルを検出し(例えば、測定し)、それによって対象において循環細胞外ALAS1 mRNAレベルをアッセイするステップとを含み、ALAS1 cDNAレベルは、ALAS1 mRNAレベルの指標となる。
一実施形態では、アッセイまたは方法は、対象から生体液サンプルを得るステップを含み、生物学的サンプルは組織から分離され、生物学的サンプルはエキソソームを含有する。アッセイまたは方法は、生物学的サンプル中のRNAレベルの検出をさらに含み得て、RNAは対象の組織内遺伝子から発現されて、エキソソームは生物学的サンプル中のRNAレベルの検出に先だって、生物学的サンプルから精製されない。
実施形態では、前記生体液サンプルは、血液サンプルである。実施形態では、前記生体液サンプルは、血清サンプルである。別の実施形態では、生体液サンプルは、尿サンプルである。
実施形態では、(the the)方法は、PCR、qPCRまたは5’-RACEを含んでなる。
実施形態では、前記核酸は、プローブまたはプライマーである。
実施形態では、前記核酸は、検出可能部分を含んでなり、ALAS1 mRNAレベルは、検出可能部分の量の検出によって判定される。
実施形態では、前記方法は、対象から生体液サンプルを得るステップをさらに含んでなる。
これらの方法の実施形態では、ポルフィリン症治療の有効性は、基準値と比較した、対象中の循環細胞外ALAS1 mRNAレベルの比較に基づいて評価される。
実施形態では、ポルフィリン症治療に応答する、基準値と比較した、対象中の循環細胞外ALAS1 mRNAレベルの低下は、ポルフィリン症治療が効果的であることを示唆する。実施形態では、基準値は、ポルフィリン症治療に先だつ、対象中の循環細胞外ALAS1 mRNAレベルである。
特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似したまたは同等の方法および材料を、本発明で取り上げるiRNAおよび方法の実施または試験で使用し得るが、適切な方法および材料は下述のとおりである。本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その内容全体を参照によって援用する。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先される。これに加えて、材料、方法、および実施例は、例証のみを意図し、制限は意図されない。
実施例1.siRNA合成
試薬供給元
試薬の供給元が本明細書で具体的に示されない場合、このような試薬は、分子生物学用途の品質/純度規格の分子生物学用試薬のあらゆる供給業者から得られてもよい。
オリゴヌクレオチド合成。
オリゴヌクレオチドは、AKTA oligopilot合成機上で合成される。市販の制御孔ガラス固体担体(dT-CPG、500Å、Prime Synthesis)および標準保護基があるRNAホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチルN6-ベンゾイル-2’-T-ブチルジメチルシリル-アデノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-T-ブチルジメチルシリル-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N2-イソブチル(isobutryl)-2’-T-ブチルジメチルシリル-グアノシン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト、および5’-O-ジメトキシトリチル-2’-T-ブチルジメチルシリル-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチルホスホラミダイト(Pierce Nucleic Acids Technologies)をオリゴヌクレオチド合成のために使用した。2’-Fホスホラミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-アセチル-2’-フルロ-シチジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホラミダイトおよび5’-O-ジメトキシトリチル-2’-フルロ-ウリジン-3’-O-N,N’-ジイソプロピル-2-シアノエチル-ホスホラミダイトは、(Promega)から購入される。10%THF/ANC(v/v)中0.2Mの濃度で使用されたグアノシンを除く全てのホスホラミダイトは、アセトニトリル(CH3CN)中0.2Mの濃度で使用される。16分間のカップリング/リサイクル時間が、使用される。活性化剤は、5-エチルチオテトラゾール(0.75M、American International Chemicals)であり;PO-酸化ではヨウ素/水/ピリジンが使用され、PS-酸化ではPADS(2%)in2,6-ルチジン/ACN(1:1v/v)が使用される。
3’-リガンド共役結合鎖は、対応するリガンドを含有する固体支持体を使用して合成される。例えばヒドロキシプロリノール-コレステロールホスホラミダイトから、配列中へのコレステロール単位の導入が実施される。コレステロールは、6-アミノヘキサノエート結合を介してtrans-4-ヒドロキシプロリノールに係留されて、ヒドロキシプロリノール-コレステロール部分が得られる。5’-末端Cy-3およびCy-5.5(フルオロフォア)標識iRNAは、バイオサーチ テクノロジーズ(Biosearch Technologies)から購入された、対応するQuasar-570(Cy-3)ホスホラミダイトから合成される。5’末端および/または内部位置へのリガンドの共役結合は、適切に保護されたリガンド-ホスホラミダイト基本単位を使用することで得られる。5-(エチルチオ)-1H-テトラゾール活性化剤存在下で、無水CH3CN中の0.1Mホスホラミダイト溶液を、固体支持体結合オリゴヌクレオチドに、15分間の長時間にわたりカップリングさせる。ヌクレオチド間亜リン酸エステルのリン酸エステルへの酸化は、報告される(1)標準的なヨウ素-水を使用して、またはtert-ブチルヒドロペルオキシド/アセトニトリル/水(10:87:3)を用いて、10分間の酸化待機時間で、共役結合オリゴヌクレオチドを処理して、行われる。ホスホロチオエートは、DDTT(AMケミカルズ(AM Chemicals)から購入)、PADSおよびまたはビューケージ(Beaucage)試薬などのイオウ転移試薬を使用して、亜リン酸エステルをホスホロチオエートに酸化することでに導入される。コレステロールホスホラミダイトは施設内で合成され、ジクロロメタン中の0.1Mの濃度で使用される。コレステロールホスホラミダイトのカップリング時間は、16分間である。
脱保護I(核酸塩基脱保護)
合成完了後、支持体を100mLガラスボトル(VWR)に移す。80mLのエタノール性アンモニア[アンモニア:エタノール(3:1)]混合物を55℃で6.5時間用いて、塩基とリン酸基の同時脱保護により、オリゴヌクレオチドを支持体から切断する。氷上でボトルを短時間冷却し、次にエタノール性アンモニア混合物を新しい250mLボトル内に濾過する。CPGを2×40mL量のエタノール/水(1:1v/v)で洗浄する。次に混合物の体積をroto-vapで約30mLに減少させる。次に混合物をドライアイス上で凍結し、speed vac上で真空乾燥する。
脱保護II(2’-TBDMS基の除去)
乾燥残渣を26mLのトリエチルアミン、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩(TEA・3HF)またはピリジン-HFおよびDMSO(3:4:6)に再懸濁し、60℃で90分間加熱して、2’位置のブチルジメチルシリル(TBDMS)基を除去する。次に反応を50mLの20mM酢酸ナトリウムでクエンチし、pHを6.5に調節する。オリゴヌクレオチドは、精製まで冷凍庫で保存する。
分析
オリゴヌクレオチドは、精製に先だって高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high-performance liquid chromatography)によって分析され、緩衝液およびカラムの選択は、配列および/または結合リガンドの性質に左右される。
HPLC精製
リガンド結合オリゴヌクレオチドは、逆相分取HPLCによって精製される。非結合オリゴヌクレオチドは、施設内で充填されたTSKゲルカラム上のアニオン交換HPLCによって精製される。緩衝液は、10%CH3CN中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)(緩衝液A)、および10%CH3CN、1M NaBr中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)(緩衝液B)である。完全長オリゴヌクレオチド含有画分をプールして脱塩し、凍結乾燥する。ほぼ0.15 ODの脱塩したオリゴヌクレオチドを水で150μLに希釈し、次にCGEおよびLC/MS分析のための特殊バイアル内にピペットで移す。次に化合物をLC-ESMSおよびCGEによって分析する。
siRNA調製
siRNAの一般的調製のために、等モル量のセンスおよびアンチセンス鎖を1×PBS中で5分間95℃に加熱し、室温に緩慢に冷却する。二本鎖の完全性はHPLC分析によって確認される。
核酸配列は、標準命名法と、特に表1の略語を使用して、下に示される。
実施例2.ALAS1 siRNAデザインおよび合成
実験法
バイオインフォマティクス
転写物
siRNAデザインを実施して、NCBI遺伝子データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/)でアノテートされたヒト、アカゲザル(アカゲザル(Macacamulatta)、マウス、およびラットALAS1転写物を標的にするsiRNAを同定した。デザインは、NCBIRefSeqコレクションからの以下の転写物を使用した:Human-NM_000688.4(seeFIG.3)、NM_199166.1;Rhesus-XM_001090440.2、XM_001090675.2;Mouse-NM_020559.2;Rat-NM_024484.2。高度な霊長類/齧歯類配列多様性のために、siRNA二本鎖は、二本鎖整合ヒトおよびアカゲザル転写物のみ;ヒト、アカゲザル、マウス、およびラット転写物のみ;およびマウスおよびラット転写物のみを含有するバッチをはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの別個のバッチでデザインされた。大部分のsiRNA二本鎖は、各デザインバッチ(上記)で考察された、列挙されたヒト転写物およびその他の種の転写物と100%の同一性を共有するようにデザインされた。場合によっては(表8を参照されたい)、アンチセンス鎖:標的mRNA相補的塩基対がGCまたはCG対合であれば、二本鎖とmRNA標的間のミスマッチは、最初のアンチセンス(最後のセンス)位置で許容された。これらの場合、二本鎖は、最初のアンチセンス:最後のセンス対に、UAまたはAU対を使用してデザインされた。したがって二本鎖は相補性を保ったが、標的(U:C、U:G、A:C、またはA:G)に関してミスマッチであった。これらの18本の「UA交換」二本鎖が、ヒト/アカゲザル/マウス/ラットセットの一部としてデザインされた(表8の配置の欄で「C19U」、「G19U」、「C19A」、または「G19A」の標識がある二本鎖を参照されたい)。
siRNAデザイン、特異性、および効能予測
全ての可能な19量体の予測された特異性は、各配列から予測された。次に7ヌクレオチドよりも長い反復を欠いている、候補19量体を選択した。これらの1510の候補ヒト/アカゲザル、114ヒト/アカゲザル/マウス/ラット、および717マウス/ラットsiRNAは、pythonスクリプト「BruteForce.py」中で実装される網羅的な「総当たり攻撃」アルゴリズムを使用する、適切なトランスクリプトーム(ヒト、アカゲザル、イヌ、マウス、またはラットNCBI Refseqセット内のNM_およびXM_recordsセットと定義される)に対する包括的検索で、使用した。次にスクリプトは、転写物オリゴアラインメントを構文解析して、siRNAとあらゆる可能な「オフターゲット」転写物とのミスマッチの配置および数に基づいて、スコアを作成した。オフターゲットスコアを重み付けして、分子の5’末端から2~9位で、siRNAの「シード」領域内の差を強調した。総当たり攻撃検索からの各オリゴ転写物対には、個々のミスマッチスコアを加算することで、ミスマッチスコアが与えられ;2~9位のミスマッチは2.8と見なされ、10~11位の切断部位のミスマッチは1.2と見なされ、領域12~19のミスマッチは1.0と見なされた。さらに3つの異なる、各オリゴのシード由来六量体に由来する七量体および八量体の発生頻度を比較することで、オフターゲット予測を実施した。5’開始点に対する2~7位からの六量体を使用して、2つの七量体および1つの八量体を作成した。本発明者らは、六量体に3’Aを付加することで「七量体1」を作成し;本発明者らは、六量体に5’Aを付加することで「七量体2」を作成し;本発明者らは、六量体の5’および3’末端の双方にAを付加することで八量体を作成した。ヒト、アカゲザル、マウス、またはラット3’UTRome(NCBIのRefseqデータベースからのトランスクリプトームの部分配列と定義され、コード領域末端「CDS」は明確に画定されている)中の八量体および七量体の発生頻度は、事前に計算された。八量体発生頻度は、八量体頻度範囲からの中央値を使用して、七量体発生頻度について正規化した。次に((3×正規化八量体数)+(2×七量体2数)+(1×七量体1数))の合計を計算することで、「mirSeedScore」を計算した。
siRNA鎖の双方は、計算スコアに従って特異性カテゴリーに割り当てられた。3を超えるスコアは高度に特異的であり、3に等しいスコアは特異的であり、2.2~2.8のスコアは中程度に特異的であると認定された。本発明者らは、アンチセンス鎖の特異性によってソートした。次に本発明者らは、そのアンチセンスオリゴが、1位のGCを欠いており、13および14位の双方にGを欠いており、シード領域に3つ以上のUまたはAを有する(高い予測効能がある二本鎖の特徴)二本鎖を選択した。
アンチセンス19量体を3’方向に追加的な4ヌクレオチド延長することで、センスおよびアンチセンス鎖上でそれぞれ21および23ヌクレオチド長の候補GalNac共役二本鎖をデザインした(標的転写物との完全相補性は維持された)。センス鎖は、アンチセンス23量体の最初の21ヌクレオチドの逆相補体として規定された。全ての23ヌクレオチドにわたって、全ての選択種転写物との完全一致を維持する二本鎖が選択された。
siRNA配列選択
合計90のセンスおよび90アンチセンス由来ヒト/アカゲザル、40のセンスおよび40のアンチセンス由来ヒト/アカゲザル/マウス/マウス/ラット、および40のセンスおよび40のアンチセンス由来マウス/ラットsiRNA 19量体オリゴが合成され、二本鎖に形成された。合計45のセンスおよび45アンチセンス由来ヒト/アカゲザル21/23量体オリゴが合成されて、45本のGalNac共役二本鎖が生成された。
変性二本鎖のセンスおよびアンチセンス鎖の配列は表2に示され、未修飾二本鎖センスおよびアンチセンス鎖の配列は表3に示される。
ALAS1配列の合成
ALAS1配列は、1または0.2umol規模のいずれかで、MerMade 192合成機上で合成した。形質移入試薬を使用して、試験管内スクリーニングのための2’-O-メチル修飾がある一本鎖を作成した。細胞中の自由取り込みのための21~23量体デザイン中で、センス鎖上に2’Fおよび2’-O-メチル修飾を含有する配列がある3’GalNAc複合体を作成した。一覧中の全ての21量体配列について、以下に詳述されるように「エンドライト」化学反応を適用した。
・センス鎖中の全てのピリミジン(シトシンおよびウリジン)は、2’-O-メチル塩基(2’-O-メチルCおよび2’-O-メチルU)を含有した。
・アンチセンス鎖中では、(5’位置に向けて)リボAヌクレオシドに隣接するピリミジンは、それらの対応する2-O-メチルヌクレオシドで置換された。
・センスおよびアンチセンス配列の双方の3’末端に、2塩基dTsdT伸長が導入された
・配列ファイルをテキストファイルに変換し、それをMerMade 192合成ソフトウェアへのロードに適合させた
GalNAc共役センス鎖および相補的アンチセンス配列では、2’O-メチルヌクレオシドがあるリボ核酸と組み合わせて、2’Fおよびその他の修飾ヌクレオシドが導入された。合成は、センス鎖のためのGalNAc修飾CPG担体、およびアンチセンス鎖のため汎用修飾CPG担体上で実施された。
合成、切断および脱保護:
ALAS1配列の合成は、ホスホラミダイト化学を使用する、固体担持オリゴヌクレオチド合成を使用した。21量体エンドライト配列では、デオキシチミジンCPGを固体担体として使用した一方で、GalNAc複合体では、センス鎖のためのGalNAc固体担体およびアンチセンス(antisesense)鎖のための普遍的CPGを使用した。
上記配列の合成は、96ウェルプレート上で、1または0.2um規模のいずれかで実施された。アミダイト溶液は0.1M濃度で調製し、エチルチオテトラゾール(アセトニトリル中0.6M)を活性化剤として使用した。
合成配列は、最初のステップではメチルアミン、第2のステップではフッ化物試薬を使用して、96ウェルプレート内で切断して脱保護した。GalNAcおよび2’Fヌクレオシド含有配列では、脱保護条件が修正された。切断および脱保護後の配列は、アセトン:エタノール(80:20)混合物を使用して沈殿させ、ペレットを0.2Mナトリウム酢酸緩衝液に再懸濁した。各配列からのサンプルをLC-MSで分析して同一性を確認し、UVで分析して定量化し、選択されたサンプルセットをIEXクロマトグラフィーで分析して純度を判定した。
精製および脱塩:
ALAS1配列を沈殿させ、セファデックスカラムを使用して、AKTA Purifierシステム上で精製した。ALAS1essは、環境温度で稼働させた。サンプル注入および収集は、96ウェル(1.8mL深型ウェル)プレート内で実施した。完全長配列に対応する単一ピークを、溶出剤中に収集した。脱塩したALAS1配列は、濃度(A260でのUV測定による)および純度(イオン交換HPLCによる)について分析した。次に相補的一本鎖を1:1の化学量論比で合わせて、siRNA二本鎖を形成させた。
実施例3.ALAS1ノックダウン活性についてのALAS1 siRNA二本鎖の試験管内スクリーニング
試験管内でALAS1発現をノックダウンする能力について、ALAS1 siRNA二本鎖をスクリーニングした。
試験管内スクリーニング
細胞培養および形質移入
5%CO2雰囲気中37℃において、10%FBS添加MEM(ATCC)中でHep3B細胞(ATCC,Manassas,VA)をコンフルエンス近くまで培養した後、トリプシン処理によってプレートから遊離させた。96ウェルプレート内で、ウェルあたり5μlのsiRNA二本鎖に、ウェルあたり14.8μlのOpti-MEM+0.2μlのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA;カタログ番号13778-150)を添加して室温で15分間インキュベートし、形質移入を実施した。次に約2×104個のHep3B細胞を含有する、80μlの完全増殖培地をsiRNA混合物に添加した。RNA精製に先だって、細胞を24または120時間のいずれかにわたり培養した。単回投与実験を10nMおよび0.1nMの最終二本鎖濃度で実施し、用量応答実験を10、1.67、0.27、0.046、0.0077、0.0013、0.00021、0.00004nMの最終二本鎖濃度で実施した。
DYNABEADS mRNA単離キット(Invitrogen、パーツ番号:610-12)を使用した全RNA単離:
細胞を収集して150μlの溶解/結合緩衝液溶解し、次にEppendorf Thermomixerを使用して、850rpmで5分間混合した(混合速度は、処理全体にわたり同一であった)。10マイクロリットルの磁性ビーズと80μlの溶解/結合緩衝液混合物を丸底プレートに入れて、1分間混合した。磁性スタンドを使用して磁性ビーズを捕捉し、ビーズをかき乱すことなく上清を除去した。上清を除去した後、溶解細胞を残留ビーズに入れて、5分間混合した。上清を除去した後、磁性ビーズを150μlの洗浄緩衝液Aで2回洗浄して、1分間混合した。ビーズを再度捕捉して、上清を除去した。次にビーズを150μlの洗浄緩衝液Bで洗浄し、捕捉して上清を除去した。次にビーズを150μlの溶出緩衝液で洗浄し、捕捉して上清を除去した。ビーズを2分間乾燥させた。乾燥後、50μlの溶出緩衝液を添加して、5℃で70分間混合した。ビーズを磁石上に5分間捕捉した。40μlの上清を除去して、別の96ウェルプレートに入れた。
ABI高容量cDNA逆転写キット(Applied Biosystems,Foster City,CA、カタログ番号4368813)を使用したcDNA合成
反応あたり、10μlの全RNA中に、2μlの10×緩衝液、0.8μlの25×dNTPs、2μlのランダムプライマー、1μlの逆転写酵素、1μlのRNase阻害剤、および3.2μlのH2Oのマスター混合物を添加した。cDNAは、以下のステップを通じて、Bio-RadC-1000またはS-1000サーマルサイクラー(Hercules,CA)を使用して作成した:25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5秒間、4℃で保持。
リアルタイムPCR
384ウェルプレート(Rocheカタログ番号04887301001)中のウェルあたり、0.5μlのGAPDH TaqManプローブ(Applied Biosystemsカタログ番号4326317E)、0.5μlのALAS1 TaqManプローブ(Applied Biosystemsカタログ番号Hs00167441_m1)、および5μlのLightcycler 480プローブマスター混合物(Rocheカタログ番号04887301001)を含有するマスター混合物に、2μlのcDNAを添加した。ΔΔCt(RQ)アッセイを使用して、RocheLC480リアルタイムPCRシステム(Roche)内で、リアルタイムPCRを実施した。各二本鎖は、それぞれ2つの生物学的複製で、2つの独立した形質移入中で試験し、要約表で特に断りのない限り、各形質移入は複製でアッセイした。
相対的倍数変化を計算するために、ΔΔCt法を使用してリアルタイムデータを分析し、10nMのAD-1955で形質移入された細胞または模擬形質移入細胞で実施したアッセイに、正規化した。XLFitを使用した4パラメータ適合モデルを使用して、IC50を計算し、同一投与範囲にわたって、AD-1955または未感作細胞で形質移入された細胞に、またはそれ自身の最低用量に正規化した。
ALAS1 siRNA二本鎖による内因性ALAS1発現の試験管内ノックダウン
表4は、ALAS1修飾siRNA二本鎖による、Hep3B細胞中におけるALAS1のノックダウンを図示する(表2を参照されたい)。サイレンシングは、陰性(ルシフェラーゼ)対照siRNA AD-1955と比較して、残存する分割RNAメッセージとして発現される。データは、10nMまたは0.1nMの各siRNAの形質移入に続いて、上述したように作成された。ALAS1TaqManプローブHs00167441_m1を使用して、qPCRを実施した。
試験管内スクリーニングにおける選択ALAS1 siRNA二本鎖のIC50
表5は、ALAS1修飾siRNA二本鎖による、Hep3B細胞系中で内因的に発現されるALAS1のノックダウンから判定された、選択ALAS1 siRNA二本鎖のIC50を図示する(表2を参照されたい)。データは、上述したように、各siRNA二本鎖の形質移入に続いて、24または120時間後に作成された。この実施例において、ALAS1サイレンシングは、陰性対照として使用された非標的化siRNAであるsiRNA AD-1955と比較して、残存する分割mRNAメッセージとして発現される。複製形質移入実験からのデータを使用して、単一ラインを適合させて、IC50を判定した。二本鎖(例えばAD-53541.1、AD-53542.1、およびAD-53547.1)のいくつかは、24時間後に約0.03nM程度に低いIC50を有した。多数の二本鎖は、24時間後に0.1nM未満のIC50を有し(例えばAD-53534.1、AD-53536.1、AD-53540.1、AD-53541.1、AD-53542.1、AD-53547.1、AD-53548.1、AD-53550.1、AD-53552.1)、これらの一部はまた、120時間後に0.1nM未満のIC50を有した(例えばAD-53534.1、AD-53540.1、AD-53541.1、AD-53542.1、AD-53547.1、AD-53552.1)。
実施例4.LNPとして調合されたマウス/ラットALAS1 siRNAを使用した生体内サイレンシング
修飾二本鎖AD-53558の配列は、下の表6で示される。
この二本鎖は、LNP11製剤として調合された(上の表10を参照されたい)。LNP配合AD-53558 siRNAは、マウス(N=25匹;群あたり5匹)と、ラット(N=20匹;群あたり4匹)の生体内で試験し、生体内でALAS1 mRNAを発現停止することが確認された。結果は、図5および図6で示される。
図5は、siRNAが、マウス中で用量応答効果を実証したことを示す。siRNAを1mg/kgで投与すると、マウスALAS1(mALAS1)mRNAの発現は約78%低下し;siRNAを0.3mg/kgで投与すると、マウスALAS1 mRNAは約60%低下し;siRNAを0.1mg/kgで投与すると、マウスALAS1 mRNAは約49%低下した。これらの低下は、PBS対照と比較して表された。AD-1955LUC対照もまた、図5に示される通りに用いられた。
同様に、図6は、siRNAが、ラット中で用量応答効果を実証したことを示す。siRNAを1mg/kgで投与すると、ALAS1 RNAの発現は約70%低下し;siRNAを0.3mg/kgで投与すると、ALAS1 mRNAは約62%低下し;siRNAを0.1mg/kgで投与すると、ALAS1 mRNAは約34%低下した。
サイレンシングの永続性はまた、マウスでも試験した(N=15;1時点あたり3匹。結果は、図7で示され、AD-53558が少なくとも9日間にわたり、mALAS1 mRNAを約80%抑制したことを示す。少なくとも約50%の抑制が、少なくとも14日間持続した。
実施例5.AIPの動物モデルにおけるALAS1 siRNAの効能
AD-53558 LNP11製剤(先の実施例に記載されるマウス/ラットALAS1 siRNA)の効果をAIPのマウスモデルで調べた。PBGDノックアウトは、生存不能である(-/-、0%活性)。ヘテロ接合PBGDノックアウトマウス(+/-、約50%活性)は入手できるが、完全な生化学的表現型を有さず、したがってヒト疾患表現型を再現しない。したがって、T1(+/-)プロモータ中断およびT2(-/-)スプライス部位改変を含む、T1/T2アレルがある複合ヘテロ接合体であるAIPのマウスモデルが開発された。これらのマウスは、野生型レベルの約30%である肝臓の残留PBGD活性と、正常なまたはわずかに上昇したベースライン血漿ALAおよびPBGレベルとを有することが示されている。マウスは、若年期には正常に見え、加齢に伴ってわずかにより緩慢で失調性になることが分かった。6ヶ月齢までに、マウスは、病理学的検査で、運動協調性と筋力の障害、および軸索変性を発症することが実証された。マウスモデルの病理学調査は、高齢マウスにおける、軸索変性、および運動協調性と筋力の障害を示した。尿および血漿ALAおよびPBGは、フェノバルビタールの連続腹腔内投与によって、顕著に増大することが分かった(リンドバーグ(Lindberg)ら著,(1996),Nature Genetics,12:195-219およびリンドバーグ(Lindberg)ら著,(1999),Journal of Clinical Investigation,103:1127-34を参照されたい)。マウスは、肝臓におけるAAV媒介性PBGD発現によってレスキューされた(Yasudaら著(2010),Molecular Medicine,1:17-22およびUnzuら著(2011),Molecular Medicine,2:243-50)。
1日目に、マウスに、1mg/kgのALAS1 siRNA(N=5)またはLUC AD-1955対照(N=3)を静脈内注射によって投与した。3回のフェノバルビタール注射を投与して(2、3、および4日目に毎日1回の注射)、肝臓のALAS1と、ポルフィリン前駆体であるALAおよびPBGとを誘導した。5日目に血漿および一晩尿標本を採取して、代謝産物レベルをLC-MSによって測定した。代謝産物レベルをLC-MSによって血漿中で評価し、尿中でもまた評価した。1日目の最初の処置前に、代謝産物のベースラインレベルを評価した。結果は、図8~12および表12および13で示される。
図8および図9は、血漿ALAレベルをμM単位で示す。ベースラインALAレベルは低く(N=4)、フェノバルビタール処置は、対照LUC siRNA処置動物(N=3)において、血漿ALAレベルに顕著な増大を誘発した。ALAS1 siRNAによる処置は、図8に示される通りに血漿ALA(N=5)誘導を阻害した。ALAS1 siRNAhは、試験された個々の動物のそれぞれで、血漿ALAの誘導をブロックするのに一貫して効果的であった(図9を参照されたい)。これらの結果は、ALAS1 siRNA処置が、このAIP動物モデルにおけるフェノバルビタール誘発性急性発作に伴う、血漿ALAの増大を予防するのに効果的であったことを示す。
図10および図11は、血漿PBGレベルをμM単位で示す。ベースラインPBGレベルは低く(N=4)、フェノバルビタール処置は、対照LUC siRNA処置動物(N=3)において、血漿PBGレベルに顕著な増大を誘発した。ALAS1 siRNAによる処置は、図10に示される通りに血漿PBG(N=5)誘導を阻害した。ALAS1 siRNAhは、試験された個々の動物のそれぞれで、血漿PBGの誘導をブロックするのに一貫して効果的であった(図11を参照されたい)。これらの結果は、ALAS1 siRNA処置が、このAIP動物モデルにおけるフェノバルビタール誘発性急性発作に伴う、血漿PBGの増大を予防するのに効果的であったことを示す。
表12および13は、LUC siRNA(N=2)対照(CTRはPBS緩衝液処置動物を指す、N=1)およびALAS1 siRNA(N=5)処置動物における、ベースラインおよびフェノバルビタール処置後の尿ALAおよびPBGレベルを示す。
フェノバルビタール処置は、LUC siRNA処置マウス対照において、尿ALA(ベースラインレベルの約9倍)およびPBG(ベースラインレベルの約19倍)に、強力な増大(約25~30倍の増大)を誘発したのに対し、ALAS1 siRNA処置動物ではこのような増大は観察されなかった。したがって、ALAS1 siRNAは、尿ALAおよびPBGのフェノバルビタール誘発性増大をブロックした。これらの結果は血漿測定値と一致し、このAIP動物モデルにおける、フェノバルビタール誘発性急性発作に伴う尿代謝産物(ALAおよびPBG)の増大を予防するのに、ALAS1 siRNA処置が効果的であることを示す。
さらなる実験(図12)では、フェノバルビタール処置が、マウスモデルの肝臓中におけるALAS1 mRNA発現に、大きな増大(約25倍)を誘発することが分かった。ALAS1 siRNA投与は、このALAS1 mRNA誘導を完全にブロックした。これらの結果は、AIPの動物モデルにおいて、ALAS1 siRNAが効果的であることのさらなる証拠を提供する。
まとめると、本実施例で提供される結果は、ALAS1 siRNAが、急性肝性ポルフィリン症AIPの動物モデルにおける急性発作の治療に、効果的であることを示す。血漿ALAレベル、血漿PBGレベル、尿ALAレベル、尿PBGレベル、および肝臓ALAS1 mRNA発現レベルをはじめとする複数の成果の測定が、この結論を支持する。
実施例6.GalNAc共役マウスALAS1 siRNAを使用した生体内サイレンシング
本実施例に記載される実験では、3種のGalNAc共役siRNAの生体内効能を調べた(表7を参照されたい)。これらのsiRNAは、実施例2に記載されるものなどの方法によって、デザインされ生成された。
マウス(N=40;実験条件あたりN=4)は、PBS投与群、または3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgのsiRNA皮下投与群に分割した。PBS対照と比較した、mALAS1/mGAPDH mRNAレベルは、投与の72時間後に肝細胞中で判定した。結果は、図13に示される。siRNA AD-56211およびAD-56173について、明瞭な用量応答効果はなかった。対照的に、ALAS1 siRNA AD-57929は、mALAS1発現の阻害において用量応答効果を示した。これらの結果は、ALAS1GalNAc複合体が、生体内でALAS1 mRNAの発現を阻害するのに効果的であり、用量応答効果を示したことを実証する。
実施例7.ヒトsiRNA
実施例2に記載されるようにして、追加的なヒトsiRNAがデザインされ生成された。それらの予測効能に基づいて、上位45位のsiRNAが選択された。これらの45個のsiRNAの配列は、表8および添付の配列表に提供される(例えば、それぞれ、奇数配列の1つに対応するセンス配列は配列番号391~551として同定され、偶数配列の1つに対応するアンチセンス配列は配列番号392~552として同定される)。表8は、国際公開第号2013/155204A2パンフレットで開示される。国際公開第2013/155204号パンフレットの内容および表8をはじめとする配列表は、参照により明示的に援用される。
実施例8.ヒトsiRNA
追加的な19量体ヒトsiRNAが作成された。これらのsiRNAの配列は、表9および添付の配列表に提供される(例えば、それぞれ、奇数配列の1つに対応するセンス配列は配列番号553~3365として同定され、偶数配列の1つに対応するアンチセンス配列は配列番号554~3366として同定される)。表9は、国際公開第号2013/155204A2パンフレットで開示される。国際公開第2013/155204号パンフレットの内容および表9をはじめとする配列表は、参照により明示的に援用される。これらのsiRNAは、本明細書に記載される方法および/または当該技術分野で公知の方法を使用して、効能について試験し得る。
実施例9.急性期治療パラダイムにおけるALAS1 siRNAを使用したポルフィリン前駆体抑制
AIPマウスモデル(実施例5を参照されたい)を使用して、ALAS1 siRNAが、例えばヒトポルフィリン症患者が急性発作を起こした場合に存在するような、既に上昇したALAおよびPBGレベルを低下させる、急性期治療パラダイムとして(an an)機能するかどうかを調べた。最後のフェノバルビタール投与の12時間後の1mg/kg用量でのAD-53558 LNP11製剤 siRNAの投与が、マウス血漿中でALAおよびPBGの双方のレベルを迅速に低下させたのに対し、LUC対照処置動物では、レベルは上昇し続けた(図14)。これらの結果は、ALAS siRNAが、急性発作の治療に効果的であることを示す。ALAS1 siRNAは、ALAおよびPBGレベルを低下させ、さらなる増大を予防するのに効果的である。
図14で観察され得るように、ALAS siRNAは、ALAおよびPBGレベルの低下において、迅速な開始効果を有する。効果の開始は、siRNA投与後の数時間以内に起こった。血漿ALAに対する効果は、siRNA投与の4時間以内に観察され得た(図14を参照されたい;siRNAは、フェノバルビタールの最終投与の12時間後に投与され、対照と比較した血漿ALAの低下は、フェノバルビタールの最終投与の16時間後に観察され得る)。血漿PBGに対する効果は、siRNA投与の8時間以内に観察され得た(図14を参照されたい;siRNAは、フェノバルビタールの最終投与の12時間後に投与され、対照と比較した血漿ALAの低下は、フェノバルビタールの最終投与の20時間後に観察され得る)。
実施例10.ALAS1を標的とするsiRNA
実施例2に記載されるようにして、ALAS1 siRNAを標的とするさらなる未修飾および修飾siRNA配列をデザインし生成した。修飾二本鎖の試験管内活性は、下述するように試験した。
方法
脂質媒介形質移入
96ウェルプレートの個々のウェル内で、5μlの各siRNA二本鎖に、ウェルあたり14.8μlのOpti-MEMと0.2μlのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen,Carlsbad CA、カタログ番号13778-150)を添加することで、Hep3B、PMH、および初代培養カニクイザル肝実質細胞の形質移入を実施した。次に混合物を室温で20分間インキュベートした。次に適切な細胞数を含有する、抗生物質なしの80μlの完全成長培地をsiRNA混合物に添加した。細胞をRNA精製に先だって、24時間培養した。
修飾GalNAcについて、1uM、500nM、20nM、10nM、および0.2nMの最終二本鎖濃度で、単回投与実験を実施した。
自由取り込み形質移入
冷凍保存初代培養カニクイザル肝実質細胞(Celsis In Vitro Technologies、M003055-P)を使用直前に37℃の水浴内で解凍し、InVitroGRO CP(播種)培地(Celsis In Vitro Technologies、カタログ番号Z99029)中に0.26x106細胞/mlで再懸濁した。形質移入中に、ウェルあたり25,000個の細胞で、BD BioCoat 96ウェルコラーゲンプレート(BD、356407)上に細胞を播種し、5%CO2雰囲気内で37℃で培養した。自由取り込み実験は、96ウェル(96w)プレートに、ウェルあたり10μlのPBS中のsiRNA二本鎖を添加することで実施した。次に細胞型について適切な細胞数を含有する90μlの完全成長培地を、siRNAに添加した。細胞をRNA精製に先だって、24時間培養した。1μM、500nM、20nM、および10nMの最終二本鎖で、単回投与実験を実施した。
DYNABEADS mRNA単離キット(Invitrogen、パーツ番号:610-12)を使用した全RNA単離
細胞を収集して150μlの溶解/結合緩衝液溶解し、次にEppendorf Thermomixerを使用して、850rpmで5分間混合した(混合速度は、処理全体にわたり同一であった)。10マイクロリットルの磁性ビーズと80μlの溶解/結合緩衝液混合物を丸底プレートに入れて、1分間混合した。磁性スタンドを使用して磁性ビーズを捕捉し、ビーズをかき乱すことなく上清を除去した。上清を除去した後、溶解細胞を残留ビーズに入れて、5分間混合した。上清を除去した後、磁性ビーズを150μlの洗浄液緩衝液Aで2回洗浄し、1分間混合した。ビーズを再度捕捉して、上清を除去した。次にビーズを150μlの洗浄緩衝液Bで洗浄し、捕捉して上清を除去した。次にビーズを150μlの溶出緩衝液で洗浄し、捕捉して上清を除去した。最後に、ビーズを2分間乾燥させた。乾燥後、50μlの溶出緩衝液を添加して、5℃で70分間混合した。ビーズを磁石上に5分間捕捉した。45μlの上清を除去して、別の96ウェルプレートに入れた。
ABI高容量cDNA逆転写キットを使用したcDNA合成(Applied Biosystems,Foster City,CA、カタログ番号4368813)
反応あたり2μlの10×緩衝液、0.8μlの25×dNTPs、2μlのランダムプライマー、1μlの逆転写酵素、1μlのRNase阻害剤、および3.2μlのH2Oのマスター混合物を作成した。等容積マスター混合物およびRNAは、試験管内スクリーニングのために、12μlの最終容積に、生体内スクリーニングサンプルのために、20μlの最終容積に混合した。cDNAは、以下のステップを通じて、Bio-RadC-1000またはS-1000サーマルサイクラー(Hercules,CA)を使用して作成した:25℃で10分間、37℃で120分間、85℃で5秒間、および4℃での保持。
リアルタイムPCR
384ウェル(384w)プレート(Roche;カタログ番号04887301001)のウェルあたり、2μlのH2O、0.5μlのGAPDH TaqManプローブ(Life Technologies;Hep3B細胞用カタログ番号4326317E、マウス初代培養肝細胞用カタログ番号352339E、またはカニクイザル初代培養肝細胞用特注プローブ)、0.5μlのC5 TaqManプローブ(Life Technologies;Hep3B細胞用カタログ番号Hs00167441_m1、または初代マウス肝実質細胞(Hepatoctyes)用Mm00457879_m1、またはカニクイザル初代培養肝細胞用特注プローブ)、および5μlのLightcycler 480プローブマスター混合物(Roche;カタログ番号04887301001)を含有するマスター混合物に、2μlのcDNAを添加した。ΔΔCt(RQ)アッセイを使用して、RocheLC480リアルタイムPCRシステム(Roche)内でリアルタイムPCRを実施した。試験管内スクリーニングでは、特に断りのない限り、各二本鎖を2つの生物学的複製で試験して、各リアルタイムPCRは二重技術的複製で実施した。生体内スクリーニングでは、各二本鎖を1つまたは複数の実験で(群あたり3匹のマウス)試験し、および各リアルタイムPCRを二重技術的複製で試験した。
ALAS1 mRNAレベルの相対的倍数変化を計算するために、ΔΔCt法を使用してリアルタイムデータを分析し、10nMのAD-1955で形質移入された細胞または模擬形質移入細胞で実施したアッセイに、正規化した。XLFitを使用した4パラメータ適合モデルを使用して、IC50を計算し、同一投与範囲にわたって、AD-1955で形質移入された細胞に、またはそれ自身の最低用量に正規化した。
AD-1955のセンスおよびアンチセンス配列は、次の通り:
センス:cuuAcGcuGAGuAcuucGAdTsdT(配列番号3682)
アンチセンス:UCGAAGuACUcAGCGuAAGdTsdT(配列番号3683)。
修飾および未修飾siRNA一本鎖および二本鎖配列は、それぞれ表14および表15に提供される。
試験管内アッセイの結果は、表16に提供される。表16はまた、各siRNAの標的化学種を記述する。
表17は、選択ALAS1 siRNA二本鎖のIC50を図示する。IC50は、各ALAS1変性siRNA二本鎖の形質移入に続いて24時間後に、Hep3B細胞系中において、内因性発現したALAS1のノックダウンから判定した(表14を参照されたい)。AD-58882、AD-58878、AD-58886、AD-58877、AD-59115、AD-58856、およびAD-59129をはじめとする少なくとも7本の二本鎖が、0.1nm未満のIC50を一貫して実証し、これらの二本鎖が、ALAS1発現の抑制に、特に効果的であったことが示唆された。
実施例11.AIPフェノバルビタール誘導マウスモデル中のALAS1-GalNAc活性
AIPマウスモデルを使用して、ALAS1-GalNAc複合体であるsiRNAの効果を調べた。siRNAは、二本鎖AD-58632の配列を有した(表20を参照されたい)。
AIPマウスは、処置されず(ベースライン)、または1日目に、生理食塩水、または20mg/kgの用量のALAS1-GalNAc複合体を皮下注射された。2、3、および4日目に、マウスは、処置されないままであり(ベースライン)、またはフェノバルビタールのIP注射で処置された。5日目に血漿を採取し、LC-MSアッセイを使用して、ALAおよびPBGレベルを評価した。図15に示される通りに、ALAS1-GalNAc複合体は、血漿ALAおよびPBGの生産をそれぞれ約84および80%鈍らせた。これらの結果は、このAIP動物モデルにおけるフェノバルビタール誘発性急性発作に伴う血漿ALAおよびPBG双方の増大を予防するのに、ALAS1-GalNAc複合体での治療が効果的であったことを示す。
実施例12.ALAS1を標的としてALAS1発現を阻害するさらなるsiRNA
実施例2に記載されるようにして、ALAS1 siRNAを標的とするさらなる修飾siRNA配列をデザインし生成した。配列は、表18に提供される。修飾二本鎖の試験管内活性は、下述するように試験した。
ALAS1 mRNAの抑制におけるsiRNAの試験管内活性は、形質移入試薬としてリポフェクタミン2000を使用して形質移入されたHep3B細胞中で、単回投与スクリーニングにおいて試験した。単回投与実験を10nMの二本鎖濃度で実施して、分枝DNA(bDNA)アッセイによって分析した。結果は表19で示され、残留mRNA%として表される。
試験された232本の二本鎖が、この単回投与アッセイにおいて、ALAS1 mRNAを様々な程度に抑制した。このアッセイによると、少なくとも4本の二本鎖(AD-59453、AD-59395、AD-59477、およびAD-59492)はALAS1 mRNAを85%以上抑制し、39本の二本鎖はALAS1 mRNAを80%以上抑制し、101本の二本鎖はALAS1 mRNAを70%以上抑制し、152本の二本鎖はALAS1 mRNAを50%以上抑制した。対照的に、いくつかの二本鎖は、このアッセイにおいて顕著な抑制を示さなかった。
実施例13.ALAS1 siRNAを使用したポルフィリン前駆物質ALAおよびPBGの用量反応性阻害
AIPのマウスモデルにおいて、ALAS1 siRNAの用量応答効果が調べられた(実施例5を参照されたい)。このモデルは、3~4日間にわたる1日1回のフェノバルビタール注射による誘導に続いて、約30%の残留PBGD活性、基底ALAおよびPBGレベルの約2倍の増大、ALAおよびPBGレベルの約30~100倍の増大を示す。高齢動物は、軸索変性および運動機能障害を有する。
本実施例で使用されるALAS1 siRNAは、AF11製剤中のAD-53558二本鎖であった。1日目に、マウスには、1mg/kg、0.5mg/kg、0.1mg/kg、または0.05mg/kgのALAS1 siRNAまたはLucAD-1955対照が、静脈注射によって投与された。3回のフェノバルビタール注射が投与されて(2、3、および4日目に毎日1回の注射)、肝臓ALAS1と、ポルフィリン前駆体であるALAおよびPBGとが誘導された。5日目に血漿および一晩尿標本が採取され、代謝産物レベルがLC-MSによって測定された。ALAおよびPBGの基線レベルは、1日目の最初の処置に先だって測定された。結果は、図16に示される。ALAS1 siRNAは、ALAおよびPBGレベルを用量依存様式で阻害した。血漿ALAレベルに対する抑制効果は、0.05mg/kg程度に低いALAS1 siRNA用量で観察され、血漿PBGレベルに対する抑制効果は、0.1mg/kg程度に低いsiRNA用量で見られた。
実施例14.ALAS1 siRNAを使用したポルフィリン前駆物質ALAおよびPBGの持続性阻害
ALAS1 siRNAの効果の持続性が、AIPマウスモデルにおいて調べられた(実施例5を参照されたい)。本実施例で使用されるALAS1 siRNAは、AF11製剤中のAD-53558二本鎖であった。この実験の実験デザインおよび結果は、図17に示される。1日目に、マウスには、1mg/kgのALAS1 siRNAまたはLucAD-1955対照が静脈注射によって投与された。3回のフェノバルビタール注射が、0週目(2、3、および4日目に1日1回の注射)、2週目(15、16、および17日目に1日1回の注射)、4週目(29、30、および31日目に1日1回の注射)に投与されて、肝臓ALAS1およびポルフィリン前駆体ALAおよびPBGが誘導された。血漿および一晩尿標本が、5、18、および32日目に採取され、代謝産物レベルがLC-MSによって測定された。ALAおよびPBGの基線レベルは、1日目の最初の処置に先だって測定された。
図17に示されるように、ALAS1 siRNAは、血漿ALAおよびPBGレベルを低下させる持続的効果を有した。ALAS1 siRNA投与は、血漿ALAおよびPBGレベルを少なくとも2週間抑制した。これらの結果は、高いALAおよびPBGレベルを低下させるための治療において、ALAS1 siRNAが効果的であり、したがって例えば、予防法で使用されて、慢性的に上昇したALAおよびPBGレベルを低下させて、再発性ポルフィリン症性の発作を予防し得ることを示唆する。
実施例15.ALAS1 siRNAはヘミン処置と比較してより迅速な作用開始を提供する
AIPのマウスモデルにおいて、ALAS1 siRNAによる処置の効果が、ヘミン処置の効果と比較された(実施例5を参照されたい)。本実施例で使用されるALAS1 siRNAは、AF11製剤中のAD-53558二本鎖であった。この実験の実験デザインおよび結果は、図18に示される。フェノバルビタール(PB)およびジエチルジチオカルバメート(DDC)は、1、2、および3日目に投与された。DDCは、フェノバルビタールのように、ヘム要求量を増大させてALA/PBG代謝産物誘導の延長を助ける、別のp450誘導物質である。
4mg/kgの用量のヘミン、2mg/kgの用量のALAS1 siRNA、または対照処置が、PBおよびDDCの最終投与の8時間後に静脈内に投与された。
図18に示されるように、治療効果の開始は、ヘミン処置と比較してALAS1 siRNA処置でより迅速であった。ALAおよびPBGレベルの低下には、臨床症状の迅速な改善が伴うと予測されることから、siRNA処置によるALAおよびPBGの迅速な低下は、siRNAが急性発作の効果的処置であることを示唆する。
実施例16.ALAS1 siRNA GalNAcコンジュゲートAD-58632の効果
AD-58632は、実施例11で開示される21/23量体である。AD-58632は、ヒト転写物NM_000688.4を標的とし、マウス、ラット、およびカニクイザル(cynomolgous monkey)mRNA転写物と交差反応性である。AD-58632は、約45個の化合物のスクリーニングから同定された、唯一の交差反応性21/23量体であった。この二本鎖に関するさらなる実験が、本実施例に記載される。
ALAS1 mRNAの抑制におけるAD-58632の用量依存効果
GAPDH mRNAと比較したALAS1 mRNAの抑制におけるAD-58632の用量応答効果が、ラットで調べられた。30mg/kg、10mg/kg、および3mg/kgの用量が試験された。ALAS1 mRNAのレベルは、最終投与の72時間後に肝臓内で測定された。AD-58632は、PBS対照と比較して、ALAS1 mRNAを用量依存様式で抑制した(図19を参照されたい)。AD-58632は、約10mg/kgの単回用量ED50を有した。
ラットAIPモデルにおけるAD-58632の効果
AD-58632 ALAS1 GalNAcコンジュゲートsiRNAの用量応答効果が、ラットでさらに調べられた。このモデルでは、LNP中のsiRNAが使用されて、フェノバルビタール(phenobarbitol)でヘム要求(demaind)が誘導されるのに先立って、特に肝臓内でPBGDレベルがノックダウンされた。ラットAIPモデルは、3日間にわたる毎日のフェノバルビタール注射による誘導に際して、肝臓内の一過性PBGD siRNAノックダウンを示し、約15%の残留PBGD mRNAを有して、ALAおよびPBGレベルは約10~50倍の増大を示す。
実験デザインは、図20に示される。4つのラット群が、試験された。1つの群は、示される時点においてフェノバルビタール(PB)のみで処置された。第2の群は、フェノバルビタールおよびポルフォビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)siRNAで処置された。第3の群は、フェノバルビタール、PBGD siRNA、および30mg/kgの用量のALAS1 siRNAを投与された。第4の群は、フェノバルビタール、PBGD siRNA、および10mg/kgの用量のALAS1 siRNAを投与された。図20に示されるように、PBGD siRNAは、1日目に静脈内に投与された。ALAS1 GalNAc siRNAは、4日目に投与された。フェノバルビタール注射は、4、5、6、および7日目に投与された。尿は、7日目に開始して8日目に終了する24時間にわたり採取された。肝臓PBGD mRNA、GAPDH mRNA、およびALAS-1 mRNAレベルは、DNAアッセイを使用して8日目に評価された。尿中のPBGおよびALAレベルは、LC-MSを使用して判定された。
mRNA結果は、図21に示される。PBGD siRNAは、PBGD mRNAレベルを低下させたが、ALAS1 mRNAレベルは低下させなかった。ALAS1 siRNAは、ALAS1 mRNAレベルを用量依存様式で低下させた(図21を参照されたい)。ALAおよびPBG結果は、図22に示される。ALAS1 siRNAは、ALAおよびPBGレベルを用量依存様式で低下させた(図22を参照されたい)。
実施例17.AD-58632の分割投与
ALAS1 siRNA GalNAcコンジュゲートAD-58632の有効性が、2つの別々の分割投与パラダイムで調べられた。これらの各試験では、メスSprague Dawleyラットが使用された。ラットはSCLR(12時間点灯および12時間消灯の光サイクル部屋)内に収容されて、最終注射の72時間後に殺処分された。分岐DNA(bDNA)アッセイを使用して、肝臓内のALAS1およびGAPDH mRNAレベルが測定された。
1日用量5回対ボーラス投与1回のパラダイム
第1のパラダイムでは、ラット群には、5回のsiRNA投与(毎日1回)、または5回の個々の投与の合計と同じ総濃度を有する単回ボーラス投与のどちらかが与えられた。具体的には、ラットは、以下の処置条件の1つに割り当てられた:(1)1日1回6mg/kgのsiRNAの5日間にわたる皮下注射、(2)1日1回2mg/kgのsiRNAの5日間にわたる皮下注射、(3)1日1回1mg/kgのsiRNAの5日間にわたる皮下注射、(4)30mg/kgのsiRNAの単回ボーラス投与の皮下注射、(5)10mg/kgのsiRNAの単回ボーラス投与の皮下注射、(6)5mg/kgのsiRNAの単回ボーラス投与の皮下注射、または(7)PBS対照処置。
結果は、図23に示される。このパラダイムでは、siRNAの単回ボーラス投与が、5日間にわたる同一濃度のsiRNAの反復投与よりも大きなALAS1 mRNAの抑制を提供した。これは、試験された全ての用量にあてはまった。
4週間にわたる週1回投与
第2のパラダイムでは、ラットは、4週間にわたり週1回、3つの用量(10mg/kg、5mg/kg、または2.5mg/kg)の1つで、siRNAを皮下注射された。対照群は、PBSを注射された。
結果は、図24に示される。単回投与と比較して、4回の10mg/kgの週間用量を提供することは、達成された最大のノックダウンを改善した(ED50は単回投与で10mg/kgである)。対照的に、1週間に5および2.5mg/kgの多回投与は、このパラダイムでサイレンシングを改善しなかった。
実施例18.より短いセンスおよびアンチセンス鎖があるALAS1 siRNAの同定および試験
さらなる実験が実施されて、siRNA二本鎖を19-19量体に短縮させることの効果が探索された。ヒト(h)(NM_000688.4)、アカゲザル(rh)(XM_001090440.2)、マウス(m)(NM_020559.2)、およびラット(r)(NM_024484.2)ALAS1 mRNA転写物と結合する、5本の新しい交差反応性19-19量体二本鎖がさらに同定された。これらの二本鎖のいずれも、21/23量体AD-58632程には優れた結果を示さなかった(図25を参照されたい)。
最良の2つの19-19量体(AD-59115およびAD-59125)に対する、長さおよびオーバーハング変更の効果が調べられた(図26および27)。修飾配列は、表21に示される。
オーバーハングは、効力を改善した。それらはまた、さらなる構造活性相関(SAR)試験(atto齧歯類のpos23における1つの不一致)のために、さらなる誘導体配列(AD-60095をベースとするAD-60489)も提供した。
実施例19.ALAS1 siRNA GalNAc複合体AD-60489およびAD-58632の効果
さらなるGalNAcコンジュゲートALAS1 siRNA二本鎖AD-60489の効果が調べられ、AD-58632の効果と比較された。これらの二本鎖の配列は、表22Aに示される。AD-60489は、アンチセンス配列の3’末端に齧歯類ALAS1 mRNAとの単一不一致を有する。したがって、AD-58632は、ヒト、カニクイザル(cynomolgous monkey)、マウス、およびラット配列と完全に相補的であるのに対し、AD-60489は、ヒトおよびカニクイザル(cynomolgous monkey)配列のみと完全に相補的である。
ALAS1 mRNAの抑制は、図28に示される。AD-58632と比較して、AD-60489は、3mg/kgおよび10mg/kgでより効果的な抑制を提供し、ED50に約2倍の改善を示した。AD-60489の単回用量ED50は、約5mg/kgであった。
実施例20.非ヒト霊長類試験におけるALAS1 siRNA GalNAc複合体AD-60489およびAD-58632の効果
肝臓mRNAの抑制におけるAD-58632およびAD-60489の有効性が、非ヒト霊長類で調べられた。実験デザインは、図29に示される。2mL/kgの容量中のsiRNAの用量(5mg/kg、2.5mg/kg、または1.25mg/kg)またはPBS対照は、5日間にわたり毎日、次に3週間にわたり隔日、皮下投与された。ALAS1 mRNAサイレンシングは、15日目に採取された肝生検から得られた肝臓組織内で評価された。生検は、血清採取後、10回目の投与に先だって採取された(図29を参照されたい)。
循環細胞外RNA検出(cERD)法(実施例21を参照されたい)のための血清サンプルは、-10、-3、7、15、23、31、および43日目に採取された。血清は、臨床化学パネルのために-3、6、30、および43日目に採取された。臨床化学パネルは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)レベルのアセスメントを含んだ。
AD-58632およびAD-60489は、肝臓内のALAS1 mRNAを用量依存様式で抑制した(図30を参照されたい)。AD-60489は、AD-58632よりも高い有効性を示した。例えば、試験された最低用量(1.25mg/kg)では、AD-60489が、相対的ALAS1メッセージを対照レベルの約42%に抑制したのに対し、AD-58632は、この用量ではわずかな抑制しか示さなかった。2.5mg/kgでは、AD-60489が、相対的ALAS1メッセージを対照レベルの約26%に抑制したのに対し、AD-58632は、相対的ALAS1メッセージを対照レベルの約64%に抑制した。5mg/kgでは、AD-60489が、相対的ALAS1メッセージを対照レベルの約21%に抑制した(suppresed)のに対し、AD-58632は、相対的ALAS1メッセージを対照レベルの約55%に抑制した。
臨床化学結果は、ALAS1 siRNAを使用したALAS1の持続性のノックダウンが、安全であり良好に耐えられたことを示した。ALT、AST、またはALPの上昇は、観察されなかった。
実施例21.cERDアッセイを使用して評価された非ヒト霊長類試験におけるALAS1 siRNA GalNAc複合体AD-60489およびAD-58632の効果
ALAS1 siRNA GalNAc複合体AD-60489およびAD-58632の効果が、循環細胞外RNA検出(cERD)法を使用して、非ヒト(numan)霊長類において評価された。この方法は、例えば、Sehgal,A.et al.Quantitation of tissue-specific target gene modulation using circulating RNA(2012年2月9日にKeystone Gene Silencing by small RNAsシンポジウムにおいてポスター発表(バンクーバー、2012年2月7~12日)、およびSehgal,A.et al.Tissue-specific gene silencing monitored in circulating RNA,RNA,20:1-7、2013年12月19日にオンライン公開に記載される。図29に示されるように、循環細胞外RNA検出(cERD)法のための血清サンプルは、-10、-3、7、15、23、31、および43日目に採取された。
cERDアッセイのためには、血清サンプルが氷上で解凍された。375~400μLの8M LiClが、超遠心機(UC)管内の3~3.5mLの血清に添加されて、4℃の温度で少なくとも1時間インキュベートされた。スピン中に管壁が崩壊するのを防止するために、約1cmの乾燥空間を管上部に残して、PBSが各UC管の上部に添加された。管は乾燥されて、氷上のインキュベートからのあらゆる凝結が除去された。ドラフト内のMC55ローターにサンプルが装入されて、サンプルは150,000~200,000gで100~120分間にわたり遠心脱水された。上清はペレットから廃棄された。1mLのTrizolがUC管内のペレットに添加され、管はボルテックスされて、内容物は1.5mL微量遠心管に移された。各管に200μLのクロロホルムが添加され、管は数回反転されて混合された。一度に1つのサンプルが調製された。サンプルは、4℃、13,000RPMで、10~20分間遠心沈殿された。上部水相(約500μL容量)は、新鮮な1.5mL管に移された。等容積の100%イソプロパノール、1μLの直鎖アクリルアミド(acrylamind)(4°)、および1/10の容量の3M NaoAc pH5.5以下が、各サンプルに添加された(典型的に500μLのイソプロパノールおよび50μLのNaoAc)。サンプルは、4℃、13,000RPMで、10分間遠心沈殿された。上清は、保留された。ペレットは、氷冷70%EtOHで2回洗浄され(各500μLの洗浄液)、各洗浄後に、4℃、13,000RPMで約5分間遠心脱水された。ペレットは約5分間風乾されて、次に20μLのNF H2Oに再懸濁された。cDNA反応中で、10μLが使用された。再懸濁RNAは、-80℃で保存された。
結果
cERDアッセイを使用して評価された血清mRNAノックダウンは、肝生検から得られた結果と相関した。図31を参照されたい。ALAS1は血清タンパク質ではないので、これは驚くべき結果である。本明細書で提供されるcERDアッセイは、循環ALAS1 mRNAをモニタリングできるようにする。これは、例えば、技術的に困難であり費用がかかる連続肝生検をすることなく、ALAS1 mRNAのレベルが経時的に測定され得るという利点を有する。
mRNAノックダウンの動態は、cERDアッセイ結果を使用して判定された。図32を参照されたい。AD-60489は、わずか1.25mg/kgの用量であってさえも、50%を超えるノックダウンを達成した。
実施例22.ALAS1 siRNAの安全性試験
以下の安全性試験は、ALAS1の持続性ノックダウンが安全であり、良好に耐えられたことを示す。
非ヒト霊長類試験
上述されるように(実施例20を参照されたい)、非ヒト霊長類試験では、AD-60489およびAD-58632の投与後に、ALT、AST、またはALPの上昇は観察されなかった。
ラット試験
ラットでは、AD-58632について4週間の試験が実施された。siRNAは、試験の1週目には5日間にわたり毎日10mg/kgで、次に2~4週目には隔日10mg/kgで投与された。総曝露量は、140mgであった。有害な臨床徴候または体重変化は、観察されなかった。血液学または凝固パラメータにおける試験項目関連変化は、観察されなかった。さらに、有害な病理像は、観察されなかった。脾臓内に最小の極小の空胞形成があり、腎臓内に極小の嚢下線維症があった。
マウス試験
マウスでは、P450 mRNAが、ALAS1ノックダウン後に評価された。ALAS1 LNP製剤投与の48時間後に、Cyp2b10に軽微な用量依存的増大が観察された。これは168時間で解消した。
実施例23.構造活性相関試験を使用したさらなる有効性ALAS1 siRNAの同定
本明細書のその他の実施例に記載される試験をはじめとする構造活性相関(SAR)試験が実施されて、例えば、AD-58632およびAD-60489などの既に同定されたものに由来する、さらなる有効性ALAS1 siRNAが同定された。化学修飾の効果が調べられた。化学修飾としては、1)2’-O-メチル対2’-フルオロ修飾、2)2’Uf(2’フルオロ修飾)の低下、3)PS(ホスホロチオエート)の付加、4)内部dTの使用、および/または5)グリコール核酸(GNA)が挙げられる。理論による拘束は望まないが、修飾は、例えば、1)RISC負荷のより良い解放または増強、または2)より良い触媒標的結合を通じて、効力を高め得る。修飾はまた、複数用量が投与される場合に、化合物が蓄積してより良く機能できるように、安定性を増強し得る。
場合によってはその他の二本鎖(例えば、AD-58632および/またはAD-60489)と比較して改善された活性が観察された(表22Bを参照されたい)一方で、その他の事例では、同様の活性(表23を参照されたい)または活性低下(表24)が観察された。これらの事例は、150を超えるsiRNAのスクリーニングに基づく例としてのみ提示される。SAR試験のさらなる例証が、本明細書で提供される。
実施例24.AD-58632の生体外構造活性相関試験
AD-58632、およびAD-58632のsiRNA誘導体が生成されて、いくつかのsiRNAが生体外で活性についてスクリーニングされた。化学修飾の略称は、表1に提供される。
10nMおよび0.1nMのsiRNAの生体外活性
ALAS1 mRNAの抑制におけるsiRNAの生体外活性が、形質移入試薬としてリポフェクタミン2000を使用して形質移入されたHep3B細胞内で(in in)試験された。実験は、示されるsiRNA濃度(例えば、0.1nM、10nM)で実施され、形質移入の24時間後に、分岐DNA(bDNA)アッセイによって分析された。結果は、陰性対照として使用された非標的siRNAであるsiRNA AD-1955と比較した、残留mRNAパーセントとして表される。
siRNAの配列および生体外試験の結果は、表25、表26、および表27に提供される。
上の表で示されるように、この生体外スクリーニングにおいて、10nMの濃度で最大ALAS1 mRNA抑制(20%未満のmRNAが残留するような80%を超える抑制)を提供したsiRNAは、AD-58632、AD-60472、AD-60423、AD-60445、AD-60423、AD-60417、AD-60466、AD-60473、AD-60434、AD-60448、AD-60460、AD-60411、AD-60481、AD-60486、andAD-60453、AD-60480、AD-60405、AD-60477、AD-60461、AD-60470、AD-60467、AD-60482、AD-60446、AD-60555、AD-60454、AD-60469、およびAD-60463を含んだ。さらに、この生体外スクリーニングにおいて、0.1nM濃度で、最大ALAS1 mRNA抑制(30%未満のmRNAが残留するように70%を超える抑制)を提供したsiRNAは、AD-60423、AD-58632、AD-60434、AD-60423、AD-60466、AD-60419、AD-60438、AD-60448、AD-60460、AD-60473、AD-60411、AD-60405、AD-60472、AD-60477、AD-60417、AD-60480、AD-60482、AD-60421、AD-60560、AD-60433、AD-60481、AD-60475、AD-60555、AD-60437、AD-60550、AD-60415、AD-60463、およびAD-60443を含んだ。
下の表で示されるように、さらなるsiRNAの試験は、10nM濃度で、AD-58632、AD-60405、AD-60423、AD-60434、AD-60445、AD-60480、AD-60460、およびAD-60466の二本鎖が、80%を超える抑制を提供し、0.1nM濃度で、AD-58632、AD-60405、AD-60423、AD-60434、AD-60419、AD-60480、AD-60460、およびAD-60466の二本鎖が、30%を超える抑制を提供したことを明らかにした。
生体外活性に基づくIC50
上に記載される実験と同様に、さらなる用量応答実験が、10nM、1.66667nM、0.277778nM、0.046296nM、0.007716nM、0.001286nM、0.000214nM、および3.57E-05nMの最終二本鎖濃度で実施されて、IC50値が計算された。
表28に示されるように、AD-60845、AD-60843、AD-60849、AD-60820、AD-60848、AD-60822、AD-60826、AD-60819、およびAD-60460の二本鎖は、0.01nM未満のIC50を有した。
AD-60845、AD-60843、AD-60849、AD-60820、AD-60848、AD-60822、AD-60826、AD-60819、およびAD-60460、AD-60841、AD-60842、AD-60846、AD-60847、AD-60838、AD-60419、AD-60839、AD-60835、AD-586320、AD-60844、AD-60850、およびAD-60830の二本鎖は、0.02nM未満のIC50を有した。
AD-60845、AD-60843、AD-60849、AD-60820、AD-60848、AD-60822、AD-60826、AD-60819、およびAD-60460、AD-60841、AD-60842、AD-60846、AD-60847、AD-60838、AD-60419、AD-60839、AD-60835、AD-586320、AD-60844、AD-60850、AD-60830、AD-60423、AD-60834、AD-60419、AD-60434、AD-60825、AD-60837、AD-60823、AD-60824、AD-60840、AD-60829、AD-60893、AD-60832、およびAD-60827の二本鎖は、0.05nM未満のIC50を有した。
実施例25.AD-58632の生体内構造活性相関試験
AD-58632親siRNAの誘導体が生成されて、ラット生体内でスクリーニングされた。スクリーニングされたsiRNAの配列は、下の表に提供される。
5mg/kgのsiRNAの単回用量が投与された。siRNAの投与に続いて5日目に、bDNAアッセイを使用して、ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのmRNA測定が実施され、qPCRを使用して薬剤の組織レベルが判定された。結果は、図33および図34に提供される。図33に示されるように、スクリーニングされた少なくとも10本の二本鎖(AD-60405、AD-60887、AD-60923、AD-60434、AD-60892、AD-60419、AD-60924、AD-60445、AD-60925、およびAD-60926)が、AD-58632と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。さらに、図34に示されるように、これらの二本鎖(AD-60926を除く)は、AD-58632よりも高い肝臓濃度を達成した。
実施例26.ラットAIPモデルにおけるAD-60925およびAD-60926の有効性
AD-60925およびAD-60926(先の実施例に記載される)の治療効果が、ラットAIPモデルで調べられた。実験デザインは、図35の上部に示される。ラットは、図35に示される時点において、PBS、または3mg/kgのALAS1-GalNAc siRNA t.i.w.、フェノバルビタール(PB)、およびAF11 LNP製剤(AF11-PBGD)中のPBGD siRNAで処置された。対照ラットには、フェノバルビタール誘導なしで、PBGD siRNAのみが投与された。
結果は、図35、図36、および図37に示される。フェノバルビタール投与は、ALAS1 mRNA発現を誘導し、対照と比較して尿中のPBGおよびALAのレベルを増大させた。週3回の合計8用量の3mg/kgのAD-60925またはAD-60926による処置は、ALAS1 mRNA(図35)、尿PBG(図36および図37、上部)、および尿ALA(図36および図37、下部)、ALAS1 mRNA、尿PBG、およびALAのフェノバルビタール誘導性増大を抑制した。治療効果の経時変化は、図37に示される。矢印は、PBが投与された時点を示す。siRNA処置は、ALAS1 mRNA、尿PBG、およびALAの(in in)フェノバルビタール誘導性増大を妨げた。
AD-60925およびAD-60926の双方が、AIPの治療効果治療(therapeutic efficacy treatment)を示した。AD-60925は、ALAS1 mRNA、尿ALA、および尿PBGの抑制において、AD-60926よりもさらに効果的であった。
実施例27.AD-58632のさらなる生体内構造活性相関試験
AD-58632親siRNAの誘導体が生成されて、ラット生体内でスクリーニングされた。
生体内スクリーニング、パートI
スクリーニングされたsiRNAの配列は、下の表に提供される。
ラットは、2週間にわたり隔週(週2回)で、4用量の2.5mg/kgのsiRNAを投与された。siRNAの最終用量の投与に続いて72時間目に動物を殺処分し、bDNAアッセイを使用して、ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのレベルを測定した。
図38に示されるように、試験された少なくとも4つのsiRNA(AD-60820、AD-60843、AD-60819、およびAD-61140)は、AD-58632と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。
生体内スクリーニング、パートII
スクリーニングされたsiRNAの配列は、下の表に提供される。
ラットには、2.5mg/kgのsiRNAの単回用量が投与された。siRNAの投与に続いて72時間目に、bDNAアッセイを使用して、ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのmRNA測定が実施された。
図39に示されるように、siRNA AD-61141、AD-61142、AD-60835、AD-60839、AD-61143、AD-61144、AD-61145、およびAD-61146は、AD-58632と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。この実験で最大抑制を提供したsiRNAは、AD-60835であった。
実施例28.AD-60489の生体外構造活性相関試験
AD-60489、およびAD-60489のsiRNA誘導体が生成されて、いくつかのsiRNAが生体外で活性についてスクリーニングされた。ALAS1 mRNA抑制におけるsiRNAの生体外活性は、実施例24に記載されるようにして試験された。siRNAの配列および生体外試験結果は、下の表に提供される。
その結果が上の表に示される生体外スクリーニングにおいて、10nM濃度で、最大ALAS1 mRNA抑制(20%未満のmRNAが残留するような80%を超える抑制)を提供したsiRNAは、AD-60501、AD-60592、AD-60591、AD-60513、AD-60507、AD-60587、AD-60519、AD-60593、AD-60583、AD-60524、AD-60489、AD-60495、AD-60506、およびAD-60582を含んだ。
その結果が上の表に示される生体外スクリーニングにおいて、0.1nM濃度で、最大ALAS1 mRNA抑制(70%未満のmRNAが残留するような30%を超える抑制)を提供したsiRNAは、AD-60592、AD-60591、AD-60593、AD-60587、AD-60583、AD-60589、AD-60501、AD-60507、AD-60585、AD-60489、AD-60513、AD-60582、AD-60519、AD-60541、AD-60570、AD-60584、AD-60569、AD-60558、AD-60573、AD-60556、AD-60495、AD-60523、AD-60566、およびAD-60544を含んだ。
下の表で示されるように、さらなるsiRNAの試験は、AD-60489、AD-60495、AD-60501、AD-60507、AD-60513、AD-60519、AD-60583、AD-60591、AD-60592、およびAD-60593の二本鎖が、10nM濃度で80%を超える抑制を提供し、AD-60489、AD-60495、AD-60501、AD-60507、AD-60513、AD-60519、AD-60583、AD-60591、AD-60592、およびAD-60593の二本鎖が、0.1nM濃度で30%を超える抑制を提供したことを明らかにした。
上の表で示されるように、いくつかの二本鎖は、ALAS1 mRNAの抑制において有効性を示した。AD-60879、AD-60859、AD-60863、AD-60854、AD-60882、AD-60874、AD-60883、AD-60875、AD-60501、AD-60593、AD-60853、AD-60877、AD-60878、AD-60871、およびAD-60873の二本鎖は、0.01nM未満のIC50を有した。AD-60879、AD-60859、AD-60863、AD-60854、AD-60882、AD-60874、AD-60883、AD-60875、AD-60501、AD-60593、AD-60853、AD-60877、AD-60878、AD-60871、AD-60873、AD-60489、AD-60592、AD-60894、AD-60489、AD-60870、AD-60862、AD-60858、AD-60592、AD-60591、AD-60872、AD-60866、AD-60905、AD-60857、AD-60513、およびAD-60861の二本鎖は、0.02nM未満のIC50を有した。AD-60879、AD-60859、AD-60863、AD-60854、AD-60882、AD-60874、AD-60883、AD-60875、AD-60501、AD-60593、AD-60853、AD-60877、AD-60878、AD-60871、AD-60873、AD-60489、AD-60592、AD-60894、AD-60489、AD-60870、AD-60862、AD-60858、AD-60592、AD-60591、AD-60872、AD-60866、AD-60905、AD-60857、AD-60513、AD-60861、AD-60583.2、AD-60902.1、AD-60881.1、AD-60519.2、AD-60507.2、AD-60591.3、AD-60851.1、AD-60896.1、およびAD-60537.2の二本鎖は、0.05nM未満のIC50を有した。
実施例29.AD-60489の生体内構造活性相関試験
AD-60489親siRNAの誘導体が生成されて、ラット生体内でスクリーニングされた。
AD-60489誘導体の生体内スクリーニング1
スクリーニングされたsiRNAの配列は、下の表に提供される。
ラットには、3mg/kgのsiRNAの単回用量が投与された。siRNAの投与に続いて5日目に、bDNAアッセイを使用して、ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのmRNA測定が実施され、qPCRを使用して薬剤(siRNA)の組織レベルが判定された。
図40(上部)に示されるように、siRNA AD-60501、AD-60519、AD-60901、AD-60495、AD-60900、およびAD-60935は、AD-60489と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。siRNA AD-60519、AD-60901、AD-60495、およびAD-60935は、AD-60489よりも高い肝臓レベルを達成した(図40下部を参照されたい)。したがって、改善されたALAS1 mRNAの抑制を提供した二本鎖のほとんどが、より高い肝臓レベルもまた達成した。
少なくとも二本鎖AD-60489、AD-60519、およびAD-60901では、肝臓内のより高いsiRNAレベルがより大きなALAS1 mRNA抑制と関連したように、有効性がsiRNAの肝臓レベルと相関した(図41を参照されたい)。
AD-60489誘導体の生体内スクリーニング2
スクリーニングされたsiRNAの配列は、下の表に提供される。
ラットには、2.5mg/kgのsiRNAの単回用量が投与された。siRNAの投与に続いて5日間目に、bDNAアッセイを使用して、ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのmRNA測定が実施された。
図42に示されるように、siRNA AD-60879、AD-61190、AD-61191、AD-60865、AD-60861、AD-60876、AD-61193、およびAD-60519は、AD-60489と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。
実施例30.多回投与は効力を改善する
siRNAの複数用量を投与する効果を調べるために、2週間にわたり週2回、2.5mg/kgの用量で、PBSまたはsiRNA(AD-58632、AD-60925、AD-60419、AD-60445、AD-60892、AD-60489、AD-60519、またはAD-60901)がラット(n=グループあたり3匹)に投与された。ラットALAS1(rALAS1)mRNAおよびラットGAPDH(rGAPDH)mRNAのレベルは、bDNAアッセイを使用して評価された。
図43に示されるように、AD-58632誘導体siRNA AD-60892、AD-60419、AD-60445、およびAD-60925は、親AD-58632と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。さらに、AD-60489誘導体siRNA AD-60519およびAD-60901は、親AD-60489と比較して改善されたALAS1 mRNAの抑制を示した。
実施例31.AD-60519およびAD-60489の多回投与試験
ラットAIPモデルにおいてAD-60519の治療効果が調べられた。実験デザインは、図44(上部)に示される。ラットは、3週間にわたり週2回、PBS、または2.5mg/kgまたは5mg/kgのどちらかのALAS1-GalNAc siRNAで処置された。図44に示される時点で、フェノバルビタール(Phenobarb)およびAF11 LNP製剤中のPBGD siRNAが投与された。対照群には、フェノバルビタール誘導なしで、PBSおよびPBGD siRNAのみが投与された。尿は、試験の18~19日目に採取された。
結果は、図44(下部)に示される。フェノバルビタールおよびPBSの投与は、ALAS1 mRNA発現を誘導し、PBSのみと比較して、尿中のPBGおよびALAレベルを増大させた(図44を参照されたい)。週2回の合計6用量の2.5または5mg/kgのAD-60519による処置は、尿PBGおよび尿ALAのフェノバルビタール誘導性増大を抑制した(図44)。これらの結果は、2.5mg/kg程度に低い反復用量で投与された場合に、AD-60519が、ALAおよびPBGを抑制するのに効果的であることを示す。特に、AD-60519は、ラットAIPモデルにおける急性発作と関連付けられている、尿PBGおよびALAレベル増大を低下させるのに効果的であった。
同一実験デザインを使用しているが、マウスモデルであるさらなる試験では(図44上部の概略図を参照されたい)、血清PBGおよびALAのフェノバルビタール誘導性増大の抑制における、AD-60519およびAD-60489の治療効果が調べられた。PBS(「生理食塩水」)対照群では、フェノバルビタールの投与は、PBSのみと比較して、血清PBGおよびALAレベルを増大させた(図45を参照されたい)。週2回の合計6用量の2.5または5mg/kgのAD-60519またはAD-60489による処置は、血清PBGおよび血清ALAのフェノバルビタール誘導性増大を抑制した(図44)。これらの結果は、AD-60519およびAD-60489の双方が、2.5mg/kg程度に低い反復用量で投与された場合に、ALAおよびPBGを抑制するのに効果的であることを示す。特に、AD-60519およびAD-60489は、急性発作と関連付けられている、血清PBGおよびALA増大を低下させるのに効果的であった。
本実施例の処置は、フェノバルビタール誘導に先だって投与されたので、これらの結果は、AD-60519およびAD-60489が予防的な効果を有したことを示唆する。
実施例32.さらなるsiRNA配列
以下のAD-58632誘導体(表39)およびAD-60489誘導体(表40)siRNA配列もまた、生成された。
実施例33.AD-60519のさらなる多回投与試験
実施例31で使用されたラットAIPモデルにおいて、AD-60519の治療効果が調べられた。実験デザインは、図46(上部)に示される。ラットは、4週間にわたり週1回、PBSまたは3mg/kg、1mg/kg、または0.3mg/kgのALAS1-GalNAc siRNAで処置された(0日目、7日目、14日目、および21日目の処置)。図46に示される時点で、フェノバルビタール(Phenobarb)およびAF11 LNP製剤中のPBGD siRNAが投与された。対照群には、フェノバルビタール誘導なしで、PBSおよびPBGD siRNAのみが投与された。尿は、試験の25日目に採取された。
結果は、図46(下部)および図47に示される。フェノバルビタールおよびPBSの投与は、ALAS1 mRNA発現を誘導し、PBSのみと比較して、尿中のPBGおよびALAレベルを増大させた。合計4用量週1回の3mg/kg、1mg/kg、または0.3mg/kgのAD-60519による処置は、ラット肝臓内のALAS1 mRNAレベルのフェノバルビタール誘導性増大を用量依存様式で抑制した(図46を参照されたい)。(ラット肝臓ALAS1(rALAS1)mRNAのレベルは、ラットGAPDH mRNAのレベルと比較して表される。)尿PBGおよび尿ALAのレベルはまた、用量依存的治療効果を示した。
AD-60519の反復される毎週投与は、ALAS1 mRNA発現を抑制するのに、そしてラットAIPモデルの誘導性急性発作と関連付けられている高いALAおよびPBGレベルを低下させるのに、効果的であった。これらの治療効果は、用量依存的であった。これらの結果は、AD-60519が、発作に先だって投与された場合に、予防的に機能することを例証する。
実施例34.非ヒト霊長類におけるALAS1 siRNA GalNAc複合体の多回投与効果
肝臓ALAS1 mRNAおよび循環ALAS1 mRNAの抑制におけるALAS1 siRNA GalNAc複合体の効果が、非ヒト霊長類(NHP)で調べられた。GalNAc複合体AD-58632、AD-60519、AD-61193、およびAD-60819が用いられた。研究デザインは、表41および図48に示される。
各群は、2mg/mlの投与容量のALAS1 siRNA GalNAcコンジュゲートの複数回の皮下投与を受けた。グループ1(N=3)は、1、2、3、4、5、8、11、15、18、22、および25日目に、2.5mg/kgの1.25mg/ml AD-58632を投与された。グループ2(N=3)は、1、2、3、4、5、8、11、15、18、22、および25日目に、1.25mg/kgの0.625mg/ml AD-60519を投与された。グループ3(N=3)は、1、2、3、4、5、8、11、15、18、22、および25日目に、2.5mg/kgの1.25mg/ml AD-60519を投与された。グループ4(N=3)は、1、2、3、4、5、11、18、および25日目に、2.5mg/kgの1.25mg/ml AD-60519を投与された。グループ5(N=3)は、1、2、3、4、5、11、18、および25日目に、5mg/kgの2.5mg/ml AD-60519を投与された。グループ6(N=3)は、1、2、3、4、5、8、11、15、18、22、および25日目に、2.5mg/kgの1.25mg/ml AD-61193を投与された。グループ7(N=3)は、1、2、3、4、5、8、11、15、18、22、および25日目に、2.5mg/kgの1.25mg/ml AD-60819を投与された。
循環細胞外RNA検出(cERD)アッセイ(実施例21を参照されたい)のための血清サンプルは、-3、7、13、21、27、39、46、および60日目に採取された(図48で「PD採取」は、血清が採取された日を示す)。血清は、臨床化学パネルのために、-3および6日目に採取された。臨床化学パネルは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびアルカリホスファターゼ(ALP)レベルのアセスメントを含んだ。ALAS1 mRNAサイレンシングは、21日目に採取された肝生検から得られた肝臓組織内で評価された(図48を参照されたい)。生検は、血清採取後に採取された。
肝臓内ALAS1 mRNAレベルの抑制
試験21日目の肝臓ALAS1 mRNAレベルは、図49に示される。結果は、PBSで処置された対照群で観察された平均レベルの百分率として示される。結果は、各処置群の平均値として示される。
図49に報告されるこれらの結果は、PBS処置を投与された対照動物と比較して、肝臓ALAS1 mRNAレベルを抑制するのに、全ての処置条件が効果的であったことを示す。処置は、約20%~80%の範囲のmRNAサイレンシングを達成した(対照レベルの約80%~20%の範囲のALAS1 mRNAレベルに相当する)。AD-58632を投与された個々の動物は、約20~50%のサイレンシングを示し、サイレンシングの平均レベルは、約40%であった(ALAS1 mRNAレベルは、平均して対照レベルの約60%であった)。用いられた全ての投与スケジュールで、AD-60519は、ALAS1 mRNAレベルを抑制するのに非常に効果的であった。AD-60519を投与された個々の動物は、約60%~80%のサイレンシングを示した(ALAS1 mRNAレベルは、対照レベルの約20%~40%であった)。平均して、AD-60519治療計画は、約65%~75%のサイレンシングを達成した。本明細書で開示されるように、AD-60519はAD-60489の誘導体である。AD-60489に関する同様の結果が、実施例20に記載されて図30に示される。さらに、AD-61193(AD-60489の誘導体)およびAD-60819(AD-58632の誘導体)もまた、50%を超えるサイレンシングを達成した。本実施例および実施例20で報告されたサイレンシングレベル(例えば約20%~80%)が、「非誘導」状態であってさえも獲得されたことは、注目に値し;例えば、ALAS1レベルが急性的にまたは慢性的に上昇している場合などの誘導状態では(例えば、AIPなどの急性肝性ポルフィリン症などのポルフィリン症を有し、またはそのリスクがある患者では)、例えば、ALAS1 mRNAレベルの正常または発作前レベルへの低下などのより低レベルのサイレンシングが、治療効果を達成するのに十分であり得ることが期待される。
循環細胞外ALAS1 mRNAレベルの抑制
図50は、試験全体にわたり、血清サンプルが得られた各時点における、循環細胞外ALAS1 mRNAレベル(平均および標準偏差)を示す。循環細胞外ALAS1 mRNA結果は、試験されたsiRNAのそれぞれ(AD60519、AD-61193、AD-60819、およびAD-58632)による多回投与処置に続く、mRNAサイレンシングの有効性を示す。全ての群で、循環ALAS1 mRNAに対する最大抑制効果は、25日目のsiRNAの最終投与に続いて、27日目に観察された。全ての処置群で、処置休止後数週間にわたり、ALAS1 mRNAレベルは徐々に増大して、60日目の最終測定までにベースラインに戻った。
循環ALAS1 mRNAの最も顕著な抑制(ほぼ80%の最大のサイレンシング)は、グループ3(2.5mg/kgのAD-60519QD×5、BIW×3)およびグループ5(5mg/kgのAD-60519、QD×5QW×3)で観察された。グループ2(1.25mg/kgのAD-60519、QD×5、BIW×3)、グループ4(2.5mg/kgのAD-60519、QD×5、QW×3)、グループ7(2.5mg/kgのAD-60819、QD×5、BIW×3)、およびグループ6(2.5mg/kgのAD-61193、QD×5、BIW×3)もまた、優れた抑制を示し、最大のサイレンシング(27日目)は50%を超えた。グループ1でも、顕著なサイレンシング(27日目に30%を超える)が達成された。
これらの結果は、肝臓ALAS1 mRNA結果に一致して、AD-60519の強力な活性を立証する。1.25mg/kg程度に低い用量レベルでは、AD-60519は、65~75%のサイレンシングを提供した。
循環および肝臓ALAS1 mRNAレベル間の相関
図27は、肝臓内(左側バー)および血清中(右側バー)のALAS1 mRNAレベルを示す。肝臓および血清で測定された相対的ALAS1 mRNAレベルの間には良好な相関があり、これらの測定値が一貫性がある結果を提供することが示される。
実施例35.ALAS1 mRNA抑制の持続期間をモニターするための尿cERDアッセイを使用したAD-60519およびAD-60589のラット単回投与試験
ALAS1 siRNA GalNAc複合体AD-60489およびAD-60519を使用して、単回投与試験がラットで実施された。ALAS1 mRNAの発現阻害におけるこれらのGalNAc複合体の有効性は、循環細胞外RNA検出アッセイと共に、尿のアセスメントを使用してモニターされた。アッセイは、尿サンプルが使用されたこと以外は、実施例21および34で使用されたアッセイと同様であった。尿サンプルは、凍結乾燥され濃縮された。凍結乾燥尿は、4ml dH2Oに再懸濁されてボルテックスされた。次に、サンプルは4,000×gで10~20分間遠心分離されて、あらゆる壊死組織片がペレット化された。残りの工程は、実施例21に記載されるものと同様であった。
ラット群は、10mg/kgのAD-60489またはAD-60519の単回用量を投与された。試験全体に及ぶ様々な時点におけるALAS1 mRNAの正規化レベルは、図51に示される。「0時間」として示される時点は、ALAS1 mRNAの投与直前のベースライン投与前尿サンプル採取のためのものである。引き続く時点の結果は、投与前レベルの割合として表される。
図51に示される結果を見ても分かるように、AD-60519は、AD-60489と比較して改善された効力を提供した。その最大値で、AD-60519の単回用量が約80%までの抑制を提供したのに対し、AD-60489によって提供された抑制は、約60%であった。ALAS1 mRNA抑制における、これらのALAS1 siRNAの単回10mg/kg投与の効果は、約21日間持続した。これらの結果は、ALAS1 mRNAレベルをモニタリングするための尿cERDアッセイの有効性を示す。
実施例36.非ヒト霊長類におけるAD-60519の薬理学的効果
ALAS1 siRNA GalNAcコンジュゲートAD-60519の効果のさらなる試験が、非ヒト霊長類において実施された。試験は、毎週投与対隔週投与の効果、負荷量使用対負荷量不使用、および単回投与に続くALAS1 mRNAサイレンシングの動態を調べた。試験のデザインは、表42および図52に示される。
各群は、表42に記載されるAD-60519の1回または複数回の皮下投与を受けた。グループ1(n=3)は、8週間にわたり週1回、0.125ml/kgの投与容量で2.5mg/kgを投与された(用量は、投与日1、8、15、22、29、36、43、および50に投与された)。グループ2(n=3)は、8週間にわたり週1回、0.25mg/mlの投与容量で5mg/kgを投与された(用量は、投与日1、8、15、22、29、36、43、および50に投与された)。グループ3(n=3)は、3日間にわたり1日1回、0.25ml/kgの投与容量で5mg/kgの負荷量を投与され、7週間にわたり週1回、0.25ml/kgの投与容量で5mg/kgの維持量がそれに続いた(用量は、1、2、3、8、15、22、29、36、43、および50日目に投与された)。グループ4(n=3)は、3日間にわたり1日1回、0.25ml/kgの投与容量で5mg/kgの負荷量を投与され、7週間にわたり週1回、0.125ml/kgの投与容量で2.5mg/kgの維持量がそれに続いた(用量は、1、2、3、8、15、22、29、36、43、および50日目に投与された)。グループ5(n=3)は、8週間にわたり週2回、0.25ml/kgの投与容量で5mg/kgを投与された(用量は、投与日1、4、8、11、15、18、22、25、29、32、36、39、43、46、50、および53に投与された)。グループ6(n=3)は、1日目に0.05ml/kgの投与容量で、1mg/kgの単回用量を投与された。グループ7(n=3)は、1日目に0.5ml/kgの投与容量で、10mg/kgの単回用量を投与された。
血清サンプル(図52に「PD採取」と記載される)、血漿サンプル(図52に「PK採取」と記載される)、および尿サンプルは、図52および表43に示されるように採取された。尿および血清サンプルには、cERDアッセイが実施された。肝生検日に採取された全ての血液および尿サンプルは、肝生検に先だって採取された。
肝臓ALAS1 mRNA結果は、図53に示される。全ての試験条件で、有意なALAS1 mRNA抑制が得られた。AD-60519を使用した多回投与計画全体で、最高75~80%のALAS1サイレンシングが達成された。単回投与の3日後に、1mg/kgの単回投与では約15%のサイレンシングが達成され、10mg/kgの単回投与では約70%のサイレンシングが達成された(図53を参照されたい)。グループ7では投与の3日後に、グループ1では4回目の投与の2日後に評価されるように、グループ1および7からのデータの比較は、単回投与(グループ7)後に、同一累積量(30mgの投与)の複数投与(グループ1)との対比で、動態に軽微な差異があったことを明らかにする。特に、単回用量後に、より大きなサイレンシングが観察された(グループ7の平均約70%のサイレンシング対グループ1の平均約45%のサイレンシング)。図54を参照されたい。この種の結果はまた、ラット試験でも観察された。
22日目までの血清ALAS1 mRNA結果が、図54(上部)に示される。肝臓ALAS1 mRNA、血清ALAS1 mRNA、および血漿ALAS1 mRNAの間の相関は、図55に示される。これらの結果は、肝臓、血清、および尿ALAS1 mRNAレベルの間の良好な相関を示す。結果はまた、AD-60519の強力な活性を実証する、さらなる証拠も提供する。55~75%のサイレンシングは、全ての多回用量投与計画にわたり、全ての用量レベルで(at at)観察された。負荷量(グループ3および4のように3日間にわたる1日1回)の投与は、ALAS1 mRNAのわずかにより迅速な下方制御をもたらした。毎週(グループ1および2)または隔週用量(グループ5)用量(biweekly doses(group 5)doses)を投与されたグループは、究極的に、同等のALAS1 mRNA抑制レベルを示し、経時的蓄積が持続性のノックダウンを提供することを示した。
単回投与後のALAS1 mRNAサイレンシングの動態を示す結果は、図54(下部)に示される。1mg/kgグループでは、6日目までに約20%のALAS1 mRNAの抑制が観察された。10mg/kgグループでは、4日目までに迅速な約70%のALAS1 mRNA低下があり、22日目(投与の21日後)にはベースラインの20%内に回復した。血清ALAS1 mRNAレベルは、それぞれ1mg/kgまたは10mg/kgの単回投与に続いて、約2週間または4週間後にベースラインに戻った。
AD-60519投与の8週間後までの血清ALAS mRNAの完全経時変化は、図56に示される。全てのグループが、ALN-AS1投与に続いて5から8週間後に、80%のALAS1 mRNA抑制の最大値に達した。週に3回の1日用量があるグループ(QD×3)は、第1週目に1回のみ投与されたグループ(QW×8)よりも、ALAS1 mRNA抑制のより迅速な開始を有した。全ての動物は、最終投与のおよそ30~40日後に、ベースラインALAS1レベルに戻った。
実施例37.siRNA医薬品の製造
ALN-60519(図57)は、3つのN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基を含有するリガンドに共有結合する、化学的に合成された二本鎖のオリゴヌクレオチドである。全てのヌクレオチドは、2’-OMeまたは2’-F修飾され、3’-5’リン酸ジエステル結合を介して連結され、したがってオリゴヌクレオチドの糖-リン酸骨格を形成する。センス鎖およびアンチセンス鎖は、それぞれ、21個および23個のヌクレオチドを含有する。センス鎖の3’末端は、リン酸ジエステル結合を介して、三分岐GalNAc部分(L96と称される)にコンジュゲートされる。アンチセンス鎖は、3’末端に2つおよび5’末端に2つの4つのホスホロチオエート結合を含有する。センス鎖は、5’末端に2つのホスホロチオエート結合を含有する。センス鎖の21個のヌクレオチドは、アンチセンス鎖の相補的な21個のヌクレオチドとハイブリダイズし、したがって21個のヌクレオチド塩基対とアンチセンス鎖の3’末端の2つの塩基オーバーハングとを形成する。2つの一本鎖であるセンス鎖およびアンチセンス鎖は、5’-ヒドロキシル基がジメトキシトリフェニルメチル(DMT)エーテルとして保護される、標準ホスホラミダイト化学反応を用いて、従来の固相オリゴヌクレオチド合成によって合成された。各鎖は、保護されたヌクレオシドホスホラミダイトの逐次の付加によって、3’末端から5’末端に向けて構築された。
本明細書ではALN-60519とも称されるAD-60519は、本明細書でALN-AS1と称される、皮下使用のための注射用溶液として調合された。ALN-60519は、注射用水(WFI)に溶解されて、pHが補正された(目標7.0)。ALN-60519の濃度が判定され、WFIを添加することで補正された。次に、およそ200mg/mLの最終濃度の溶液が濾過滅菌されて、2mLのI型ガラスバイアル内に充填された。0.5mLの医薬品の取り出しを可能にするために、およそ0.55mLの充填容量が選択された。
実施例38.cERD法を使用したAIP患者または健常ボランティアにおける血清または尿ALAS1 mRNAレベルの測定
ALN-AS1による非ヒト霊長類薬理学試験は、血清または尿中のALAS1 mRNAを測定するための循環細胞外RNA検出(cERD)法が、堅固で再現可能であることを示した。cERDアッセイはまた、AIP患者および健常ボランティアからの血清および尿中のALAS1 mRNAレベルを測定するのにも使用された。AIP患者では、健常ボランティアと比較して、血清ALAS1 mRNAレベルが一般に増大し、疾患病態生理においてALAS1誘導が果たす役割と一致した(図58)。重要なことには、同一患者内の血清および尿中のALAS1のレベルは、互いに相関した。尿および血清が反復採取された2人の患者では、ALAS1 mRNAレベルが経時的に一貫していた。まとめると、これらのデータは、AIP患者をはじめとするヒト対象からの血清および尿サンプル中でALAS1 mRNA測定され得て、ALN-AS1の薬力学活性を追跡するのに、cERD法が有用であることを示唆する。
実施例39.代表的な臨床試験
ヒト試験を実施して、無症候性高度排出者(ASHE)(本明細書に記載されるような高レベルのALAおよび/またはPBGを有する患者)であるAIP患者、または再発性発作を有するAIP患者に、単回用量および複数用量として投与された場合の、ALN-AS1の安全性および耐容性が判定され得る。
二次的な目的としては、ALN-AS1に関する血漿および尿PKの特性決定、ならびに血漿および尿ALAおよびPBGレベルの双方に対するALN-AS1の影響の投与後アセスメントが挙げられる。エキソソーム中のmRNAを測定するcERDアッセイが使用されて、血清(または血漿)および尿5-アミノレブリン酸シンターゼ(ALAS-1 mRNA)が測定される。
無症候性高度排出者では、ALN-AS1が、例えば、0.1、0.35、1.0、または2.5mg/kgの単回用量で、または例えば、1および2.5mg/kgの反復される週間用量で、数週間にわたり(例えば、4週間にわたり)投与される。比較として、対照(例えば、プラセボ)処置が投与される。薬剤の安全性、薬物動態学、そしてALAおよびPBGレベルに対する効果が評価される。例えば、AIP患者における後続の試験のために、ALAおよびPBGを正常基準範囲内に低下させるALN-AS1の用量(例えば、ALAおよび/またはPBGを2×基準値上限未満のレベルに正常化する用量)が選択され得る。
AIP患者では、投与前の慣らし期間(例えば、12週間)内に、発作率およびベースライン症状が評価される。患者には、例えば、毎週1~2.5mg/kgの用量でALN-AS1が投与される。薬剤の安全性、薬物動態学、そしてALAおよびPBGレベルに対する効果が評価される。さらに、発作回数、ヘム使用、鎮痛剤使用、および入院の変化がモニターされる。
均等物
当業者は、単に通例の実験法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、または見極めることができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。