以下では、まず、本発明を想到するに至った経緯を説明し、次に、実施形態を詳細に説明する。
[本発明を想到するに至った経緯]
自動車車体の軽量化のために、自動車車体を構成する車体部材の薄肉化が進んでいる。車体部材として、自動車のフロントサイドメンバ、クラッシュボックス、Aピラー、または、サブフレームを例示できる。このような車体部材においては、ハット形断面に形成された薄板(鋼板)が多用される。ハット形断面を有する部材は、例えば、ハット形断面を有する別の薄板、または、平たい薄板に溶接されることで、閉断面を形成する。これらの薄板同士は、フランジ接合される場合がある。この場合、フランジは、各薄板の端縁に形成されており、薄板のうち閉断面を構成する壁部から例えば垂直に起立している。
閉断面を有する車体部材は、自動車が前面衝突するか、または後方から衝突されることで大きな衝撃を受けると、大きな曲げ力や圧縮力を受ける。そして、薄板で形成された車体部材は、板厚が薄いため、曲げ変形や圧縮変形を生じた場合、面外変形を生じやすい傾向にある。さらに,自動車車体の衝突性能向上の観点から,構造部材として高強度の素材が用いられるようになったが,高強度の素材ほど弾性域が長く,面外変形が生じやすい.一方で、前述した、壁部から起立するフランジは、当該フランジ周辺の剛性を高める機能を有しており、上述の面外変形の抑制を期待されている。
しかし、フランジの先端は自由端であるが故、フランジ自体で面外変形を生じ易い。特に、薄板の板厚が薄い場合は,面外変形を生じ易い。
面外変形は、例えば、図1に示すような態様で生じる。図1は、従来の車体部材100の一部を示す図である。車体部材100は、例えばフロントサイドメンバであり、自動車の車長方向に延びる部材である。車体部材100は、ハット形状の2枚の鋼板を平板状のフランジ101,102で互いに溶接することで形成されている。フランジ101,102は、車長方向に沿って真っ直ぐに延びている。そして、車体部材100に自動車の前方または後方から大きな衝撃が加わると、車体部材100には、曲げ力および圧縮力が作用する。この曲げ力が大きいと、車体部材100は、曲げ変形を生じ、その結果、瞬間的に湾曲部103が生じる。そして、湾曲部103の内周側部分が圧縮されるように曲げ変形し、これにより、面外変形部104が生じる。その結果、フランジ101,102は、真っ直ぐに延びている状態から、波打ったように変形する。すなわち、フランジ101,102が互いに接している面と交差する方向にフランジ101,102が変形するという、面外変形が生じる。
このような面外変形が生じると、車体部材100は、当該車体部材100の軸方向へスムーズに圧縮変形されず、衝撃吸収エネルギー等の耐衝突性能を最大限まで向上するのに好ましくない。
本願発明者は、鋭意研究の結果、上述の課題を発見するに至った。そして、更なる鋭意研究の結果、車長方向に延びる車体部材において、軽量化の要求に応えつつ、対衝突性能を高くできるフランジ形状を想到するに至った。
[実施形態の説明]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態の第1例に係る車体部材としてのサブフレーム1の模式的な側面図である。図3は、サブフレーム1の模式的な平面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図であり、断面の背後の図示を省略している。
図2~図4を参照して説明すると、本実施形態のサブフレーム1は、自動車のフロントサイドメンバ2等の車体本体にボルトを用いて取り付けられる部材であり、車体本体から取り外し可能に構成されている。サブフレーム1は、例えば、サスペンションアーム(図示せず)に連結される。サブフレーム1は、フロントサイドメンバ2等とともに車体構造6を形成している。
なお、本実施形態では、サブフレーム1が自動車に設置されているときの当該自動車の車長方向、車幅方向、および、車高方向に沿って、サブフレーム1の長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zをいう。
サブフレーム1は、ベース7と、ベース7から長さ方向Xの一方(前方)に延びる左右一対のペリメータ8,8と、を有している。
ベース7は、例えば平面視で幅方向Yに幅広に形成された枠部材であり、鋼板(薄板)を用いて形成されている。ベース7は、フロントサイドメンバ2との連結部9を有している。
ペリメータ8,8は、自動車の前方から衝撃荷重を受けたときに、長さ方向Xに沿って潰れる(ペリメータ8,8の軸方向に沿って塑性変形することで潰れる)ように構成されている。すなわち、ペリメータ8,8は、自動車の衝突時、特に前面衝突時における衝撃吸収部材として用いられる。
ペリメータ8,8は、それぞれ、複数の鋼板を溶接することで形成された、閉断面を有する中空部材であり、長さ方向Xに細長い梁状に形成されている。ペリメータ8,8は、それぞれ、ベース7から長さ方向Xの一方(前側)に延びた後、高さ方向Zの一方側(上側)に湾曲し、その後、長さ方向Xの一方側(前側)に湾曲し、その後、長さ方向Xに延びている。なお、ペリメータ8は、長さ方向Xに真っ直ぐに延びる直線形状であってもよい。
左右一対のペリメータ8,8は、幅方向Yに対称な形状に形成されている。よって、以下では、ペリメータ8,8のうちの一方を説明し、他方についての詳細な説明は省略する。
ペリメータ8は、幅方向Yにおける当該ペリメータ8の一方側部分を構成する第1半部11と、幅方向Yにおける当該ペリメータ8の他方側部分を構成する第2半部12と、を有している。
第1半部11および第2半部12は、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって薄板状に形成されている。この鋼板は、好ましくは高張力鋼板であり、この鋼板の引張強さは、好ましくは780MPa以上である。この鋼板は、より好ましくは超高張力鋼板であり、この場合の引張強さは、好ましくは980MPa以上であり、より好ましくは1180MPaである。また、好ましくは、第1半部11および第2半部12の少なくとも一方の板厚が、1.8mm以下に形成されている。各半部11,12の板厚は、好ましくは、下限が0.1mmであり、上限が2.0mmである。各半部11,12の板厚が薄いほど、後述する第1フランジユニット14を設けることによる面外変形抑制効果は高く現れる。なお、第1半部11の板厚と第2半部12の板厚とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、第1半部11と第2半部12とは、フランジ結合によって一体化されることでペリメータ8を形成している。
ペリメータ8は、本体13と、本体13に形成された第1フランジユニット14および第2フランジユニット15と、を有している。
本体13は、長さ方向(車長方向)X、幅方向(車幅方向)Y、および、高さ方向(車高方向)Zの長さのなかで長さ方向Xの長さが最も大きく構成されている。本体13は、閉断面(長さ方向Xと直交する断面が閉じた断面)を本体13の長手方向L1の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に有している。本体13は、板状の第1半部11と、板状の第2半部12を、用いて形成されている。このように、本体13において、第1半部11と第2半部12とが互いに協働することで、ペリメータ8の長手方向L1に見たときに、閉断面を長手方向L1の略全域に形成している。この閉断面は、上記断面において例えば矩形状に形成されている。
本体13は、第1半部11に形成された第1縦壁17および第1横壁形成部18と、第2半部12に形成された第2縦壁19および第2横壁形成部20と、を有している。
第1縦壁17は、幅方向Yにおける本体13の一方の縦壁を形成する部分であり、略垂直に延びている。第1横壁形成部18は、本体13の底壁および天壁を形成する部分である。この第1横壁形成部18は、幅方向Yに沿って延びる横壁部分であり、高さ方向Zにおける第1縦壁17の一方の端部(上端部)および他方の端部(下端部)から幅方向Yに延びている。
第2縦壁19は、幅方向Yにおける本体13の他方の縦壁を形成する部分であり、略垂直に延びている。第2横壁形成部20は、本体13の底壁および天壁を形成する部分である。この第2横壁形成部20は、幅方向Yに沿って延びる横壁部分であり、高さ方向Zにおける第2縦壁19の一方の端部(上端部)および他方の端部(下端部)から幅方向Yに延びている。
第1横壁形成部18の上側部分と第2横壁形成部20の上側部分は、幅方向Yに向かい合うように配置されていることで、協働して本体13の天壁を形成している。第1横壁形成部18の下側部分と第2横壁形成部20の下側部分は、幅方向Yに向かい合うように配置されていることで、協働して本体13の底壁を形成している。
上述の構成を有する本体13の第1横壁形成部18と第2横壁形成部20とは、2つのフランジユニット14,15によって結合されている。第1フランジユニット14は、本体13の底壁における横壁形成部18,20を互いに結合している。第2フランジユニット15は、本体13の天壁における横壁形成部18,20を互いに結合している。
第1フランジユニット14は、横壁形成部18,20の上方に設けられたフランジユニットであり、横壁形成部18,20から下方に突出している。
第1フランジユニット14は、第1半部11に設けられた第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と、第2半部12に設けられた第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と、を有している。
第1フランジ31は、本体13の第1横壁形成部18の下先端から第1R部21を介して下方に突出しているとともに、本体13の長手方向L1に沿って延びている。第2フランジ34は、本体13の第2横壁形成部20の下先端から第2R部22を介して下方に突出しているとともに、本体13の長手方向L1に沿って延びている。本実施形態では、各フランジ31,34は、互いに平行に延びる平板状に形成されている。第1フランジ31と第2フランジ34とは、幅方向Yに対称に配置されている。なお、各フランジ31,34は、対応する横壁形成部18,20から下方に向けて延びていればよく、具体的な形状は限定されない。
第1フランジ31の内側面と第2フランジ34の内側面は、互いに溶接等によって接合(固定)されることで形成された接合面37を有している。上記の溶接として、スポット溶接、レーザー溶接、および、アーク溶接を例示でき、また、溶接以外の固定方法として、リベット接合、および、構造接着剤を用いた固定方法を例示できる。なお、これらの固定方法の任意の二種類以上が併用されてもよい。第1フランジ31の外側面と第2フランジ34の外側面は、接合面37とは互いに反対方向を向いている。
なお、本実施形態では、第1半部11および第2半部12の双方が断面ハット形状に形成された形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、第1半部11および第2半部12の何れか一方を断面ハット形状に形成するとともに、他方を平板状に形成してもよい。
第1フランジ31の先端(下端)に第1稜線部32および第1延長部33が設けられ、第2フランジ34の先端(下端)に第2稜線部35および第2延長部36が設けられている。
なお、第1稜線部32および第1延長部33が設けられる一方で第2稜線部35および第2延長部36が省略されてもよいし、第2稜線部35および第2延長部36が設けられる一方で第1稜線部32および第1延長部33が省略されてもよい。
また、第1延長部33が設けられる場合において、第1稜線部32を省略することで第1延長部33が直接第1フランジ31の先端から延びていてもよい。同様に、第2延長部36が設けられる場合において、第2稜線部35を省略することで第2延長部36が直接第2フランジ34の先端から延びていてもよい。
次に、第1稜線部32および第1延長部33のより具体的な構成の一例を説明する。
図5(A)は、第1フランジユニット14を拡大して示す図である。図2、図4および図5(A)を参照して、第1稜線部32は、第1延長部33とこの第1延長部33が設けられている第1フランジ31とをつないでいる。第1稜線部32は、長手方向L1に見て湾曲した形状に形成されている。第1稜線部32は、本実施形態では、長手方向L1に見て、第1フランジ31と第2フランジ34との互いの接合面37から第1フランジ31の外側面側に進んだ箇所に形成されている。第1稜線部32は、本実施形態では、長手方向L1に見て円弧状に形成されており、所定の曲率半径REを有している。曲率半径REは、第1稜線部32の曲げ内側(外側面)において、長手方向L1に見た第1稜線部32の基端32aおよび先端32cと、第1稜線部32の曲げ中央点32b(第1稜線部32の外側面に沿った基端32aと先端32cとの距離の半分に位置する点)の3点を求め、当該3点32a,32b,32cから公知の数学的手法により曲率半径を求めることで得られる。
好ましくは、1mm≦RE≦20mmである。1mm≦REであることにより、ブランク等を曲げ変形させて第1稜線部32を形成することが容易となる。また、RE≦20mmとすることで、設計空間内でのハットにより形成される閉断面部の縮小を最小限とすることができる。(閉断面部を十分確保できることで、断面係数を大きくとり易くなり、高い剛性を確保できる)。本実施形態では、第1稜線部32の先端は、幅方向Yに沿って延びており、且つ、幅方向Yのうち第1縦壁17側を向いている。
また、第1稜線部32の角度θRが規定されている。長手方向L1に見て、角度θRは、第1稜線部32の基端と先端とを通る仮想の直線A1が、第1フランジ31(例えば第1フランジ31の外側面)に対してなす角度である。この角度θRは、好ましくは、30°≦θR≦150°である。角度θRをこのような範囲に設定することで、長手方向L1に見て、第1稜線部32の先端の向きを幅方向Yとより平行な状態にできる。その結果、第1延長部33を幅方向Yに幅広に配置することで得られる、面外変形に対する断面二次モーメント向上効果をより確実に発揮できる。第1稜線部32の先端に、第1延長部33が連続している。
第1延長部33は、「所定の延長部」の一例である。第1延長部33は、第1フランジユニット14における面外変形を抑制するために設けられている。第1延長部33は、長手方向L1に沿って延びており、第1稜線部32とともに、長手方向L1における本体13の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に設けられている。本実施形態では、第1延長部33は、各横壁形成部18,20と平行に延びるようにして幅方向Yに延びている。第1延長部33の基端は第1稜線部32に支持されている一方、第1延長部33の先端は自由端である。このように第1延長部33が設けられていることで、第1延長部33は、長手方向L1に見て各フランジ31,34(特に第1フランジ31)の延びる方向(垂直方向)とは異なる方向に延びている。各縦壁形成部18,20(本体13の底壁)と第1延長部33との距離は、第1延長部33による面外変形抑制効果を十分に発揮できる最小値以上に適宜設定されている。
第1延長部33における基端から先端までの長さW1と、第1延長部の板厚tの比は、好ましくは、1≦W1/t≦20である。1≦W1/tとすることにより、長さW1を十分に確保できる結果、第1延長部33を設けることによる面外変形抑制効果をより確実に発揮できる。また、W1/t≦20とすることにより、第1延長部33を設けることにより得られる面外変形抑制効果の程度を、第1延長部33を設けることによる重さの増加の程度よりも大きくできる
次に、第2稜線部35および第2延長部36のより具体的な構成の一例を説明する。
本実施形態では、第2稜線部35および第2延長部36は、対応する第1稜線部32および第1延長部33と幅方向Yに対称な形状に形成されている。
第2稜線部35は、第2延長部36とこの第2延長部36が設けられている第2フランジ34とをつないでいる。第2稜線部35は、長手方向L1に見て湾曲した形状に形成されている。第2稜線部35の先端に、第2延長部36が連続している。
第2延長部36は、「所定の延長部」の一例である。第2延長部36は、第1フランジユニット14における面外変形を抑制するために設けられており、本実施形態では、第1延長部33と協働して、面外変形抑制効果を発揮する。第2延長部36は、長手方向L1に見て各フランジ31,34(特に第2フランジ34)の延びる方向(水平方向)とは異なる方向に延びている。第2延長部36は、長手方向L1に沿って延びており、第2稜線部35とともに、長手方向L1における本体13の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に設けられている。
上記の構成により、本実施形態では、長手方向L1に見て、第1延長部33は、第1フランジ31の外側面側(図4、図5の左側)に延びており、第2延長部36は、第2フランジ34の外側面側(図4、図5の右側)に延びている。
本実施形態では、第1稜線部32および第1延長部33が第2稜線部35および第2延長部36と幅方向Yに対称である形態を例に説明しているけれども、この通りでなくてもよい。第1稜線部32および第1延長部33は、第2稜線部35および第2延長部36と幅方向Yに非対称に形成されていてもよい。例えば、第1延長部33の高さ位置と第2延長部36の高さ位置とが異なっていてもよい。また、第1延長部33の長さW1と第2延長部36の長さW2とが異なっていてもよい。
以上が、第1フランジユニット14の概略構成である。次に、第2フランジユニット15の構成の構成を説明する。
第2フランジユニット15は、本体13の天壁に設けられたフランジユニットであり、各縦壁17,19と略平行に延びている。
第2フランジユニット15は、第1半部11に設けられた第3フランジ41と、第2半部12に設けられた第4フランジ44と、を有している。
本実施形態では、第3フランジ41は、第1フランジ31と高さ方向Zに対称な形状に形成されている一方、稜線部および延長部が設けられていない。第4フランジ44は、第3フランジ41と高さ方向Zに対称な形状に形成されている一方、稜線部および延長部が設けられていない。以下、第3フランジ41および第4フランジ44についてより具体的に説明する。
第3フランジ41は、本体13の第1横壁形成部18の上先端から第3R部23を介して上方に突出しているとともに、本体13の長手方向L1に沿って延びている。第4フランジ34は、本体13の第2横壁形成部20の上先端から第4R部24を介して上方に突出しているとともに、本体13の長手方向L1に沿って延びている。本実施形態では、各フランジ31,34は、互いに平行に延びる平板状に形成されている。なお、各フランジ31,34は、対応する横壁形成部18,20から上方に向けて延びていればよく、具体的な形状は限定されない。
第3フランジ41の内側面と第4フランジ44の内側面は、互いに溶接等によって接合(固定)されることで形成された接合面40を有している。上記の固定方法として、第1フランジ31と第2フランジ34とを互いに固定する構成と同様の構成を例示できる。
上記の構成により、第2フランジユニット15においては、稜線部および延長部が設けられていない。換言すれば、第1フランジユニット14の稜線部32,35および延長部33,36は、本体13のうち第1フランジユニット14以外の箇所には設けられていない。
次に、図5(B)を参照しながら、長手方向L1から見たペリメータ8の向きについて説明する。図5(B)は、長手方向L1から見たペリメータ8の向きを説明するための図である。長手方向L1に見て、第1および第2フランジ31,34が延びる方向と車高方向とのなす角度θZ(ねじれ角度)は、-45°≦θZ≦45°であることが好ましい。図5(B)では、車高方向を示す線LN1と、第1および第2フランジ31,34の向きを示す線LNとが示されている。そして、長手方向L1から見たこれらの線LN1,LN2がなす角が、角度θzである。図5(B)では、角度θZがゼロである場合のペリメータ8が実線で示されている。また、角度θZが-45°である場合のペリメータ8が、想像線である二点鎖線で示されている。角度θZが正の値の場合、ペリメータ8は、長手方向L1(長さ方向Xの前側)から見て、θZがゼロのときの当該ペリメータ8から時計回り方向に回転した位置に配置される。また、角度θZが負の値の場合、ペリメータ8は、長手方向L1(長さ方向Xの前側)から見て、θZがゼロのときの当該ペリメータ8から反時計回り方向に回転した位置に配置される。
角度θZを上述の範囲に設定することで、第1および第2延長部33,36は、高さ方向Zに沿ってペリメータ8の中心軸線からより遠い箇所に配置されることとなる。例えば、図2に示すように、幅方向Yからペリメータ8を見たときにおいて、ペリメータ8が弓なりに変形するような曲げ荷重(衝撃荷重)がペリメータ8に作用した際、フランジ31,34に面外変形が生じることを第1および第2延長部33,36によってより確実に抑制できる。
以上が、ペリメータ8の概略構成である。前述したように、左右一対のペリメータ8,8が設けられている。そして、自動車の正面視において(長さ方向Xに見て)、右側のペリメータ8における第1および第2延長部33,36と、左側のペリメータ8における第1および第2延長部33,36と、が幅方向Yに対称に配置されている。
以上説明したように、本実施形態によると、ペリメータ8,8の本体13には、長手方向L1に沿って延びる第1フランジ31および第2フランジ34が設けられている。そして、これらのフランジ31,34の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に延長部33,36が設けられている。この構成によると、第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形、換言すれば、フランジ31,34の接合面37を含む平面P1(図4参照)に対して交差する方向への第1および第2フランジ31,34の変形、さらに換言すれば、第1および第2フランジ31,34が波打つような変形が生じることを、第1および第2延長部33,36によって抑制できる。このように、第1および第2延長部33,36が設けられていることにより、第1および第2フランジ31,34の面外変形に関するペリメータ8の断面二次モーメントを高くできる。よって、ペリメータ8における曲げ強度と軸圧縮強度の双方をより高くでき、その結果、ペリメータ8における衝撃吸収エネルギーをより大きくできる。
面外変形についてより具体的に説明すると、自動車の走行時において、当該自動車が例えば前面衝突することで大きな衝撃を受けると、ペリメータ8は、大きな曲げ力や圧縮力(衝撃荷重)を受ける。この場合の衝撃荷重のベクトルは、長さ方向X、幅方向Y、および、高さ方向Zのうちの長さ方向Xが最も大きい。そして、ペリメータ8にこのような大きな衝撃荷重が加わると、本体13、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34は、高い圧縮応力を生じ、面外変形するような変形力を受ける。しかしながら、前述したように、第1および第2延長部33,36が設けられていることにより、面外変形の発生を抑制できる。これにより、ペリメータ8の曲げ強度、および、圧縮強度を高くできる。さらに、圧縮荷重が作用したときにおける、曲げ変形の中立面P2は、長手方向L1と直交する閉断面における本体13での高さ方向Zの略中央に存在する。そして、第1フランジユニット14のうち、中立面P2から最も遠い箇所に第1および第2延長部33,36が配置されている。これにより、高い曲げ剛性を、より少ない材料で実現できるため、曲げ強度に対する材料の配置効率を高くできる。すなわち、ペリメータ8において、高い圧縮応力が作用するまで第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形が抑制されることで、これらのフランジ31,34と隣接する面(底壁)の面外変形が抑制される。その結果、ペリメータ8の曲げ強度や軸圧縮強度が向上する。よって、フランジ31,34の面外変形を起点とする、制御の難しい局所的な座屈がペリメータ8に生じにくくなり、ペリメータ8の座屈モードを安定化できる。さらに、ペリメータ8のひずみが広範囲に分散することで、衝撃吸収エネルギーを大きくできる。
また、本実施形態によると、第1および第2フランジ31,34と第1および第2延長部33,36とは、湾曲形状の第1および第2稜線部32,35を介して接続されている。この構成によると、第1および第2フランジ31,34と対応する第1および第2延長部33,36との間における応力集中を緩和できる。
また、本実施形態によると、第1フランジ31に加えて、第2フランジ34も本体13に設けられている。この構成によると、本体13に作用する曲げ荷重および圧縮荷重を、2つのフランジ31,34で協働して受けることができる。よって、ペリメータ8は、より大きな圧縮荷重を、面外変形を伴わずに受けることができる。
また、本実施形態によると、長手方向L1に見て、第1延長部33は、第1フランジ31の外側面側に延びており、第2延長部36は、第2フランジの外側面側に延びている。この構成によると、長手方向L1に見て、第1フランジユニット14は、T字状に形成される。衝突時以外の自動車走行時に種々の方向の荷重が入力されるペリメータ8において、第1フランジユニット14がこのような形状であることにより、第1フランジユニット14は、本体13が圧縮荷重を受けつつ圧縮荷重以外の荷重を受けたときでも、面外変形抑制効果を十分に発揮できる。
また、本実施形態によると、第1および第2延長部33,36は、サブフレーム1のうちペリメータ8以外の箇所には設けられていない。この構成によると、長さ方向Xの衝撃荷重によって圧縮されるペリメータ8に第1および第2延長部33,36を設けることで面外変形を抑制する一方、軸圧縮し難いサブフレーム1のベース7には延長部を設けていない。これにより、第1および第2延長部33,36を設ける効果の薄い箇所には必要以上の鋼材を配置しなくて済み、ペリメータ8をより軽量化できる。
また、本実施形態によると、第1フランジ31および第1延長部33と、第2フランジ34および第2延長部36とは、幅方向Yに対称に設けられている。この構成によると、ペリメータ8に長手方向L1に沿う衝撃荷重が作用したときに、ペリメータ8全体をより長さ方向Xに沿って真っ直ぐに潰れるように塑性変形でき、衝撃吸収エネルギーをより多く確保できる。なお、第1フランジ31および第1延長部33と、第2フランジ34および第2延長部36とは、高さ方向Zに対称な形状に形成されていても、同様の効果を発揮できる。
また、本実施形態によると、ペリメータ8の少なくとも一部(本実施形態では、全部)の板厚tが1.8mm以下に設定されている。この構成によると、ペリメータ8におけるフランジ31,34の面外変形を抑制しつつ、ペリメータ8の軽量化を実現できる。
また、本実施形態によると、ペリメータ8の少なくとも一部(本実施形態では、全部)が、引張強さ980MPa以上の鋼板により形成される部材である。このような、超高張力鋼板でペリメータ8が形成されていることにより、ペリメータ8について、軽量化を達成しつつ、ペリメータ8の衝撃に対する耐性(強度)を、より高くできる。仮に、ペリメータが低強度材料で形成されている場合、当該ペリメータは、弾性変形領域が少なく,上述した面外変形の有無による強度の差がそもそも生じ難い。よって、ペリメータ8の引張強さを例えば980MPaとすることで、ペリメータ8の弾性変形領域を十分に確保しつつ、ペリメータ8の強度をより高くできる。
また、本実施形態によると、一対のペリメータ8,8の一方における第1フランジユニット14と、一対のペリメータ8,8の他方における第1フランジユニット14とは、幅方向Yに対称に設けられている。この構成によると、ペリメータ8,8に長手方向L1に沿う衝撃荷重が作用したときに、ペリメータ8が安定して座屈し、ペリメータ8のひずみが広範囲に分散することで、衝撃吸収エネルギーを大きくできる。
なお、以下では、第1実施形態の第1例の構成と異なる点について主に説明し、この第1例と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
上述の第1例では、第1フランジユニット14の第1および第2延長部33,36が幅方向Yに延びている形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図6(A)に第1実施形態の第2例として示されているように、第1および第2延長部33,36が内向きに延びていてもよい。より具体的には、第1および第2延長部33,36の先端が第1および第2横壁形成部18,20に向かうように第1および第2延長部33,36を形成してもよい。この場合、第1および第2延長部33,36は、第1および第2フランジ31,34から遠ざかるに従い対応する横壁形成部18,20に近づいている。幅方向Yに対して第1および第2延長部33,36がなす角度θeは、例えば10°程度に設定されている。
また、図6(B)に第1実施形態の第3例として示されているように、第1および第2延長部33,36が外向きに延びていてもよい。より具体的には、第1および第2延長部33,36の先端が第1および第2横壁形成部18,20から遠ざかる向きを向くように第1および第2延長部33,36を形成してもよい。この場合、第1および第2延長部33,36は、第1および第2フランジ31,34から遠ざかるに従い第1および第2横壁形成部18,20との距離が増している。幅方向Yに対して第1および第2延長部33,36がなす角度θeは、例えば10°程度に設定されている。
また、上述の第1例では、第2フランジユニット15の第3および第4フランジには稜線部および延長部が設けられていない形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図7(A)に第1実施形態の第4例として示されているように、第3フランジ41に第3稜線部42および第3延長部43が設けられるとともに、第4フランジ44に第4稜線部45および第4延長部46が設けられてもよい。第3延長部43および第4延長部46は、本発明の「所定の延長部」の一例である。この第4例では、第3フランジ41に設けられた第3稜線部42および第3延長部43は、第1フランジ31に設けられた第1稜線部32および第1延長部33と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。また、第4フランジ44に設けられた第4稜線部45および第4延長部46は、第2フランジ34に設けられた第2稜線部35および第2延長部36と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。
なお、第4例の第3延長部43および第4延長部46は、幅方向Yに沿って延びているけれども、この通りでなくてもよい。第3延長部43および第4延長部46は、幅方向Yに対して傾斜していてもよい。
上述の第1例は、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34の双方に延長部が設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図7(B)に第5例として示されているように、第1フランジ31に第1稜線部32および第1延長部33が設けられる一方で、第2フランジ34には第2稜線部35および第2延長部36が設けられていなくてもよい。このとき、第1稜線部32および第1延長部33は、図7(B)に示すように、第1縦壁17側に延びていてもよいし、第5例の変形例を説明するための図8(A)に示すように、第2縦壁19側に延びていてもよい。また、図示していないけれども、第2フランジ34に第2稜線部35および第2延長部36が設けられる一方で、第1フランジ31には第1稜線部32および第1延長部33が設けられていなくてもよい。この場合、第2延長部36は、第1縦壁17側に向けて延びていてもよいし、第2縦壁19側に延びていてもよい。
上述の第1例では、第1フランジユニット14の第1および第2フランジ31,34が幅方向Yに互いに逆向きに延びている形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図8(B)に第6例として示されているように、第1延長部33および第2延長部36の双方が、第1フランジ31の外側面側(第1縦壁17側)に向けて延びていてもよい。この場合、第1延長部33は、第2延長部36と重ね合わされており、第1延長部33および第2延長部36の双方が、第1フランジ31の外側面側に延びている。なお、図示していないけれども、第1延長部33および第2延長部36が、第2フランジ34の外側面側(第2縦壁19側)に向けて延びていてもよい。
上述の第6例では、第3フランジ41および第4フランジ44には稜線部および延長部が設けられていない形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図9(A)の第7例に示すように、第3フランジ41に第3稜線部42および第3延長部43を設けるとともに、第4フランジ44に第4稜線部45および第4延長部46を設けてもよい。この場合、第3稜線部42および第3延長部43は、第6例の第1稜線部32および第1延長部33と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。また、第4稜線部45および第4延長部46は、第6例の第2稜線部35および第2延長部36と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。
上述の実施形態では、第1および第2延長部33,36が対応する第1および第2フランジ31,34と一体成形された形態を例に説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図9(B)に第8例として示されているように、ペリメータ8において、第1および第2フランジ31,34と一体成形される延長部33,36を省略し、代わりに、第1および第2フランジ31,34とは別部材で形成された補強板48が設けられていてもよい。この場合、補強板48は、第1フランジ31および第2フランジ34の少なくとも一方(第8例では、双方)に設けられている。補強板48は、長手方向L1(図9(B)において、紙面と垂直な方向)に見て、第1および第2フランジ31,34の延びる方向とは異なる方向に延びている。補強板48は、例えば、平板状に形成されて幅方向Yに延びている。
好ましくは、補強板48の板厚t1と、フランジ31,34における板厚の最大値としての最大板厚t2との関係は、t1≧t2である。この第5変形例では、補強板48は、湾曲壁部23における縦壁形成部18,20と平行に延びている。フランジ31,34の先端と補強板48とは、例えば、隅肉溶接等によって互いに固定されている。補強板48は、第1フランジ31および第2フランジ34の下方に配置されている。補強板48は、第1延長部33Aおよび第2延長部36Aを含んでいる。
この第8例では、補強板48のうち、第1フランジ31の外側面側に延びる部分が、第1延長部33Aを形成している。また、補強板48のうち、第2フランジ34の外側面側に延びる部分が、第2延長部36Aを形成している。本実施形態の第1延長部33とこの第1延長部33Aとの主な差異は、第1延長部33,33Aが第1フランジ31および補強板48の何れと一体成形であるか、という点と、第1延長部33Aには第1稜線部が設けられていないという点である。同様に、本実施形態の第2延長部36とこの第2延長部36Aとの主な差異は、第2延長部36,36Aが第2フランジ34および補強板48の何れと一体成形であるか、という点と、第2延長部36Aには第2稜線部が設けられていないという点である。よって、第1延長部33Aの詳細な説明は、第1延長部33の説明に代え、また、第2延長部36Aの詳細な説明は、第2延長部36の説明に代える。
この第8例によると、フランジ31,34とは別部材である補強板48を用いて第1および第2延長部33A,36Aが形成されている。これにより、第1および第2延長部33A,36Aを第1および第2フランジ31,34と一体成形するための金型が不要である。また、板厚t1≧t2としていることにより、第1および第2延長部33A,36Aの断面二次モーメントをより高くできる。さらに、第1および第2延長部33A,36A同士が一体成形されている。これにより、第1および第2延長部33A,36Aの断面二次モーメントをより高くできる。
なお、第8例において、幅方向Yにおける補強板48の半分(図9(B)における左半部または右半部)を省略することで、第1延長部33Aまたは第2延長部36Aを省略してもよい。
なお、第8例の第3フランジ41および第4フランジ44の構成に、図10(A)の第9例に示すように補強板49を設けてもよい。補強板49は、補強板48と高さ方向Zに対称な形状に形成されている。補強板49と第3および第4フランジ41,44との接合構造は、補強板48と第1および第2フランジ31,34との接合構造と同様である。この第9例では、補強板48Aのうち、第3フランジ41の外側面側に延びる部分が、第3延長部43Aを形成している。また、補強板48Aのうち、第4フランジ44の外側面側に延びる部分が、第4延長部46Aを形成している。
また、図10(B)に第10例として示されているように、ペリメータ8において、本体13に設けられた第1および第2フランジ31,34とは別の部材(フランジ34B)に第2稜線部35Bおよび第2延長部36Bが設けられていてもよい。第10例では、例えば、第2フランジ34とは別のフランジ34Bであって、第1フランジ31に接合されたフランジ34Bに第2稜線部35Bおよび第2延長部36Bが設けられる。このフランジ34Bは、本発明の「第2フランジ」の一例である。第2延長部36Bは、例えば、車体を構成する他の部材に連結される。なお、フランジ34Bと高さ方向Zに対称な形状のフランジを第4フランジ44に設けてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図11(A)は、本発明の第2実施形態に係る車体部材としてのフロントサイドメンバ2の模式的な斜視図である。図11(B)は、フロントサイドメンバ2の側面図である。図12は、図11(B)のXII-XII線に沿う断面図であり、車長方向Xに見たフロントサイドメンバ2の断面を示しており、XII-XII線に沿う断面の背後の図示を省略している。
図11(A)、図11(B)および図12を参照して説明すると、フロントサイドメンバ2は、自動車の前部に配置されている。フロントサイドメンバ2は、左右一対設けられており、車幅方向Yに対称に形成されている。図11(A)、図11(B)および図12では、一対のフロントサイドメンバのうちの一方のフロントサイドメンバ2を図示している。フロントサイドメンバ2の前部2aには、フロントクロスメンバまたはクラッシュボックス(図示せず)が固定されている。また、フロントサイドメンバ2の後部は、フロアサイドメンバ(図示せず)に固定されている。フロントサイドメンバ2は、上述したフロントクロスメンバ、および、フロアサイドメンバとともに車体構造の一部を構成している。フロントサイドメンバ2は、車長方向Xに細長く延びる部材である。フロントサイドメンバ2は、車長方向Xの長さ、車幅方向Yの長さ、および、車高方向Zの長さのなかで車長方向Xの長さが最も大きく構成されている。
なお、本第2実施形態では、フロントサイドメンバ2が自動車に設置されているときの当該自動車の車長方向、車幅方向、および、車高方向を、車長方向X、車幅方向Y、および、車高方向Zという。
フロントサイドメンバ2は、自動車の前方から衝撃荷重を受けたときに、長さ方向Xに沿って潰れるように構成されている。すなわち、フロントサイドメンバ2は、自動車の衝突時、特に前面衝突時における衝撃吸収部材として用いられる。
フロントサイドメンバ2は、複数の鋼板を溶接することで形成された、閉断面を有する中空部材であり、車長方向Xに細長い梁状に形成されている。フロントサイドメンバ2は、車長方向Xの前部2aから後方に真っ直ぐ延びた後、斜め後下方に向けて延びている。
フロントサイドメンバ2は、車幅方向Yにおける当該フロントサイドメンバ2の一方側部分を構成する第1半部11Cと、車幅方向Yにおける当該フロントサイドメンバ2の他方側部分を構成する第2半部12Cと、を有している。
第1半部11Cおよび第2半部12Cは、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって板状に形成されている。この鋼板は、第1実施形態で説明した鋼板と同様の引張強度および板厚を有している。第1半部11Cと第2半部12Cとは、フランジ結合によって一体化されることでフロントサイドメンバ2を形成している。
フロントサイドメンバ2は、本体13Cと、本体13Cに形成された第1フランジユニット14および第2フランジユニット15と、を有している。
本体13Cにおいて、第1半部11Cと第2半部12Cとが互いに協働することで、フロントサイドメンバ2の長手方向L1に見たときに、閉断面を長手方向L1の略全域に形成している。
第1半部11Cは、ハット形状に形成されており、本実施形態では、長手方向L1から見て、C字状に形成されている。第2半部12Cは、略鉛直に延びる平板状に形成されており、長手方向L1から見て、I字状に形成されている。
第1フランジユニット14は、本体13Cの底壁側において第1半部11Cと第2半部12Cとを互いに結合している。第2フランジユニット15は、本体13Cの天壁側において第1半部11Cと第2半部12Cとを互いに結合している。
第1フランジユニット14は、本体13Cの下方に設けられたフランジユニットであり、本体13Cから下方に突出している。
第1フランジユニット14は、第1半部11Cに設けられた第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と、第2半部12Cに設けられた第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と、を有している。
第1フランジ31Cは、本体13Cの第1半部11Cの下先端から第1R部21を介して下方に突出しているとともに、本体13Cの長手方向L1に沿って延びている。第2フランジ34は、本体13Cの第2半部12Cの下端から下方に突出しているとともに、本体13Cの長手方向L1に沿って延びている。なお、本第2実施形態における第1フランジ31、第1稜線部32、第1延長部33、第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36は、第1実施形態の第1例と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。なお、本第2実施形態における第1フランジ31、第1稜線部32、第1延長部33、第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36の変形例として、第1実施形態の第2例以降の変形例を例示できる。
以上が、第1フランジユニット14の概略構成である。次に、第2フランジユニット15の構成を説明する。
第2フランジユニット15は、本体13Cの天壁に設けられたフランジユニットであり、本体13Cの上方に延びている。
第2フランジユニット15は、第1半部11Cに設けられた第3フランジ41と、第2半部12Cに設けられた第4フランジ44と、を有している。
なお、本第2実施形態における第3フランジ41、および、第4フランジ44は、第1実施形態の第1例と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。本第2実施形態における第2フランジユニット15の変形例として、第1実施形態の第2例以降の変形例を例示できる。すなわち、本第2実施形態における第3フランジ41、および、第4フランジ44に、第3稜線部42、第3延長部43、第4稜線部45、および、第4延長部46等の前述した面外変形抑制構造が設けられていてもよい。
以上説明したように、本第2実施形態によると、フロントサイドメンバ2の本体13Cには、長手方向L1に沿って延びる第1フランジ31および第2フランジ34が設けられている。そして、これらのフランジ31,34の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に延長部33,36が設けられている。この構成によると、第1実施形態のペリメータ8と同様に、第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形をより確実に抑制できるとともに、これらのフランジ31,34に隣接する、第1半部11Cのハット部分の底壁の面外変形を抑制できる。その結果、フロントサイドメンバ2における衝撃吸収エネルギーをより大きくできる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図13は、本発明の第3実施形態に係る車体部材としてのクラッシュボックス3の模式的な斜視図である。
図13を参照して説明すると、クラッシュボックス3は、フロントサイドメンバ(図13では図示せず)の前方に配置されている。クラッシュボックス3は、自動車において左右一対設けられており、これら一対のクラッシュボックス3,3が車幅方向Yに対称に配置されている。図13では、一対のクラッシュボックス3,3のうちの一方のクラッシュボックス3を図示している。クラッシュボックス3の後部には、フロントサイドメンバ(図示せず)が固定されている。クラッシュボックス3の前部には、フロントクロスメンバ(図示せず)が固定されている。クラッシュボックス3は、上述したフロントクロスメンバ、および、フロアサイドメンバとともに車体構造の一部を構成している。クラッシュボックス3は、車長方向Xに細長く延びる部材である。クラッシュボックス3は、車長方向Xの長さ、車幅方向Yの長さ、および、車高方向Zの長さのなかで車長方向Xの長さが最も大きく構成されている。
クラッシュボックス3は、自動車の前方から衝撃荷重を受けたときに、長さ方向Xに沿って潰れる(クラッシュボックス3の長手方向L1に沿って塑性変形することで潰れる)ように構成されている。すなわち、クラッシュボックス3は、自動車の衝突時、特に前面衝突時における衝撃吸収部材として用いられる。また、クラッシュボックス3の耐力は、フロントサイドメンバ2の耐力未満であり、クラッシュボックス3は、特に衝撃吸収に特化した部材である。
クラッシュボックス3は、車幅方向Yにおける当該クラッシュボックス3の一方側部分を構成する第1半部11Dと、車幅方向Yにおける当該クラッシュボックス3の他方側部分を構成する第2半部12Dと、を有している。
第1半部11Dおよび第2半部12Dは、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって板状に形成されている。この鋼板は、第1実施形態で説明した鋼板と同様の引張強度および板厚を有している。第1半部11Dと第2半部12Dとは、フランジ結合によって一体化されることでクラッシュボックス3を形成している。
クラッシュボックス3は、本体13Dと、本体13Dに形成された第1フランジユニット14および第2フランジユニット15と、を有している。
本体13Dは、閉断面(車長方向Xと直交する断面が閉じた断面)を車長方向Xの少なくとも一部(本実施形態では、全部)に有している。上記の閉断面は、上記断面において例えば矩形状に形成されている。本体13Dは、板状の第1半部11Dと、板状の第2半部12Dと、を用いて形成されている。
第1半部11Dおよび第2半部12Dは、ハット形状に形成されており、本実施形態では、長手方向L1から見て、それぞれC字状に形成されている。
上述の構成を有する本体13Dの第1半部11Dと第2半部12Dとは、2つのフランジユニット14,15によって結合されている。第1フランジユニット14は、本体13Dの底壁側において第1半部11Dと第2半部12Dとを互いに結合している。第2フランジユニット15は、本体13Dの天壁側において第1半部11Dと第2半部12Dとを互いに結合している。
第1フランジユニット14は、第1半部11Dに設けられた第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と、第2半部12Dに設けられた第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と、を有している。
本第3実施形態における第1フランジユニット14は、第1実施形態の第1例と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。なお、本第3実施形態における第1フランジユニット14の変形例として、第1実施形態の第2例以降の変形例を例示できる。
第2フランジユニット15は、本体13Dの天壁に設けられたフランジユニットであり、各本体13Dの上方に延びている。
第2フランジユニット15は、第1半部11Dに設けられた第3フランジ41と、第2半部12Dに設けられた第4フランジ44と、を有している。
本第3実施形態における第2フランジユニット15は、第1実施形態の第4例と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。
以上説明したように、本第3実施形態によると、クラッシュボックス3の本体13Dには、長手方向L1に沿って延びる第1フランジ31および第2フランジ34が設けられている。そして、これらのフランジ31,34の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に延長部33,36が設けられている。この構成によると、第1実施形態のペリメータ8と同様に、第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形をより確実に抑制できるとともに、これらのフランジ31,34に隣接する、第1半部11Dおよび第2半部11Fのそれぞれのハット部分の天壁および底壁の面外変形を抑制できる。その結果、クラッシュボックス3における衝撃吸収エネルギーをより大きくできる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図14(A)は、本発明の第4実施形態に係る車体部材としてのAピラー4の模式的な側面図である。図14(B)は、図14(A)のXIVB-XIVB線に沿う断面図であり、断面の背後の図示は省略している。
図14(A)および図14(B)を参照して説明すると、Aピラー4は、自動車のキャビン前部の一部を構成している。Aピラー4は、自動車において左右一対設けられており、一対のAピラー4,4が車幅方向Yに対称に形成されている。図14(A)および図14(B)では、一対のAピラー4,4のうちの一方のAピラー4を図示している。Aピラー4は、図示しないセンターピラー等とともに車体構造の一部を構成している。Aピラー4は、車長方向Xに細長く延びる部材である。Aピラー4は、後方に進むに従い上方に延びるように傾斜した形状に形成されている。本実施形態では、Aピラー4は、車幅方向Yから見てアーチ状に形成されている。Aピラー4は、車長方向Xの長さ、車幅方向Yの長さ、および、車高方向Zの長さのなかで車長方向Xの長さが最も大きい。
Aピラー4は、自動車の衝突によって衝撃荷重を受けたときに、可及的に変形しないことでキャビン内の乗員を守るように構成されている。
Aピラー4は、車幅方向Yにおける当該Aピラー4の一方側部分を構成する第1半部11Eと、車幅方向Yにおける当該Aピラー4の他方側部分を構成する第2半部12Eと、これら第1半部11Eと第2半部12Eとの間に配置される中間体51と、を有している。
第1半部11E、第2半部12E、および、中間体51は、それぞれ、鋼板をプレス加工することによって板状に形成されている。この鋼板は、第1実施形態で説明した鋼板と同様の引張強度および板厚を有している。第1半部11Eと第2半部12Eと中間体51とは、フランジ結合によって一体化されることでAピラー4を形成している。
Aピラー4は、本体13Eと、本体13Eに形成された第1フランジユニット14Eおよび第2フランジユニット15Eと、を有している。
本体13Eは、閉断面(車長方向Xと直交する断面が閉じた断面)を本体13Eの長手方向L1の少なくとも一部(本実施形態では、全部)に有している。本体13Eは、板状の第1半部11Eと、板状の第2半部12Eと、中間体51と、を用いて形成されている。
第1半部11Eは、本実施形態では、長手方向L1から見て、上下逆向きのL字状に形成されている。第2半部12Eは、ハット形状に形成されており、本実施形態では、長手方向L1から見て、下向きのU字状に形成されている。中間体51は、第1半部11Eと第2半部12Eとで形成された空間内に配置されている。中間体51は、長手方向L1に見て上下逆向きのU字状に形成されている。
上述の構成を有する本体13Eの第1半部11Eと第2半部12Eと中間体51とは、2つのフランジユニット14E,15Eによって結合されている。第1フランジユニット14Eは、Aピラー4の下面側において第1半部11Eと第2半部12Eと中間体51とを互いに結合している。第2フランジユニット15Eは、車幅方向Yにおける本体13Eの内側において第1半部11Eと第2半部12Eと中間体51とを互いに結合している。
第1フランジユニット14Eは、第1半部11Eに設けられた第1フランジ31、第1稜線部32および第1延長部33と、第2半部12Eに設けられた第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36と、中間体51に設けられた平板状の第1中間フランジ52と、を有している。
第1フランジ31は、第1中間フランジ52に溶接等によって接合されており、第1中間フランジ52は、第2フランジ34に溶接等によって接合されている。この点以外について、本第4実施形態における第1フランジ31、第1稜線部32、第1延長部33、第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36は、第1実施形態の第1例と同様の構成であるので、詳細な説明を省略する。なお、本第4実施形態における第1フランジ31、第1稜線部32、第1延長部33、第2フランジ34、第2稜線部35および第2延長部36の変形例として、第1実施形態の第2例以降の変形例と同様の変形例を例示できる。
第2フランジユニット15Eは、本体13Eにおける車幅方向Yの内側部分に設けられたフランジユニットであり、長手方向L1に沿って延びている。
第2フランジユニット15Eは、第1半部11Eに設けられた第3フランジ41と、第2半部12Eに設けられた第4フランジ44と、中間体51に設けられた平板状の第2中間フランジ53と、を有している。
第3フランジ41は、第2中間フランジ53に溶接等によって接合されており、第2中間フランジ53は、第4フランジ44に溶接等によって接合されている。この点以外について、本第3実施形態における第3フランジ41、および、第4フランジ44は、第2実施形態と同様の構成である。本第4実施形態においても、第3フランジ41、および、第4フランジ44に、第3稜線部42、第3延長部43、第4稜線部45、および、第4延長部46等の前述した面外変形抑制構造が設けられていてもよい。
以上説明したように、本第4実施形態によると、Aピラー4の本体13Eには、長手方向L1に沿って延びる第1フランジ31および第2フランジ34が設けられている。そして、これらのフランジ31,34の少なくとも一方(本実施形態では、双方)に延長部33,36が設けられている。この構成によると、第1実施形態のペリメータ8と同様に、第1フランジ31および第2フランジ34の面外変形をより確実に抑制できるとともに、これらのフランジ31,34に隣接する、第1半部11Eおよび第2半部11Eの底壁部分の面外変形を抑制できる。
以上、本発明の実施形態および変形例について説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態および変形例に限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲において、種々の変更が可能である。
例えば、上述の各実施形態および変形例では、2枚の鋼板をフランジ接合する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、1枚の鋼板を折り曲げて一部を重ね合わせることで閉断面を形成するとともに、この鋼板の重ね合わせ部分を第1フランジおよび第2フランジとし、これらのフランジに第1延長部および第2延長部の少なくとも一方を設けてもよい。
また、本発明は、上述した車体部材以外の車体部材(例えば、リアサイドメンバ等)に適用されてもよい。
以下では、コンピュータ上で、車長方向に細長い車体部材のモデルを作成することで、発明例および比較例を作成した。そして、コンピュータシミュレーションによって、発明例および比較例を評価した。以下、具体的に説明する。
(各発明例および比較例に共通の構成)
図15(A)は、比較例1の斜視図である。図15(B)は、比較例1を当該比較例1の長手方向から見た断面図である。まず、比較例1を参照しつつ、各発明例および比較例の車体部材に共通の構成を説明する。車体部材は、いわゆるダブルハット閉断面部材によって構成されている。より具体的には、車体部材は、長手方向に見てそれぞれハット形状をなす2つの半部(第1半部と第2半部)が組み合わされることで形成された本体を有している。本体から下方へ、互いに接合された第1フランジおよび第2フランジが延びている。また、本体から上方へ、互いに接合された第3フランジおよび第4フランジが延びている。
車体部材の長さL=1000mmである。また、長手方向から見て、本体における閉断面を形成する矩形部分の内周面は、幅W=101mmであり、高さH=100mmである。また、本体の4つのコーナー部の曲率半径R=5mmである。また、長手方向から見た第1フランジおよび第2フランジの幅WF=20mmである。車体部材を構成する鋼板の引張強さは、1180MPaである。
上述した構成を、以下では「共通構成」という。
(比較例1)
比較例1の構成は、上記共通構成である。
(発明例1)
図16(A)は、発明例1を長手方向に見た断面図である。図16(A)に示すように、発明例1は、上記共通構成に加えて、図4の第1例に示すのと同様の形状の第1稜線部、第1延長部、第2稜線部、および、第2延長部が、長手方向における本体の全域に設けられた構成を有している。すなわち、発明例1の下部が、上下逆向きのT字形状に形成されている。第1延長部の先端と第2延長部の先端との距離(車幅方向に沿った距離、2つの延長部の合計の全幅)WT=25mmである。
[最大曲げモーメントについて]
発明例1と比較例1について、それぞれの板厚を1.0mmとし、長手方向の一端を固定した状態で他端に下向きの曲げ荷重を与えた場合の、曲げ角度θと曲げモーメントMとの関係を算出した。曲げ角度θは、車体部材の一端と他端における中心点を結んだ線が水平線に対してなす角度をいう。結果を図16(B)に示す。図16(B)は、車体部材の曲げ角度θと曲げモーメントMとの関係を示すグラフである。
図16(B)から得られる結果を以下に示す。
なお、車体部材は、面外変形開始→閉断面形状崩壊→折れ変形開始(曲げモーメントM最大)の順に変形する。よって、車体部材の面外変形開始後に、曲げモーメントMが最大値となる。
第1フランジおよび第2フランジが面外変形(図1に示すような座屈変形)を生じ始める曲げ角度θ。;
比較例1が約2.9°
発明例1が約3.9°(比較例1の約134%)。
すなわち、比較例1が面外変形を生じるときの曲げ角度θにおいて、発明例1は、面外変形を生じておらず、より大きな曲げ角度θに至るまで、面外変形が生じなかった。
第1フランジおよび第2フランジの曲げモーメントMの最大値;
比較例1:発明例1=1:1.34。
すなわち、発明例1は、比較例1よりも34%高い曲げモーメントを発生できる。よって、発明例1は、衝撃吸収エネルギー量をより高くできる。
第1フランジおよび第2フランジの曲げモーメントが最大値を過ぎた後の変形モードについて;
比較例1は、曲げ角度θの増加に伴って曲げモーメントが略線形的に低下していった。一方、発明例1は、面外変形を生じた直後、曲げ角度θの増加に伴い線形的に曲げモーメントが低下していくが、延長部および隣接する稜線部がつっぱるため比較例1と比較して高いモーメントを維持する。よって、発明例1は、面外変形を発生した後も、塑性変形しながら十分な衝撃吸収を行えることがわかる。
比較例1の重さと発明例1の重さ;
比較例1:発明例1=1:1.06。
すなわち、発明例1の重さは、比較例1の重さからわずか6%の増加で済んでいる。
[最大曲げモーメントと車体部材の重さとの関係]
次に、比較例1と発明例1について、それぞれの板厚を0.8mm~2.0mmまで順次変化させ、各板厚における最大曲げモーメントを算出した。結果を図17(A)に示す。
図17(A)は、車体部材の重さと最大曲げモーメントMmaxとの関係を示すグラフである。図17(A)のグラフにおいて、横軸は、長手方向における車体部材の単位長さあたりの重さを示しており、縦軸は、車体部材に生じる最大曲げモーメントMmaxを示している。このグラフでは、グラフの左上側に結果が示されているほど、軽量で且つ面外変形が抑制されていることを示している。以下では、グラフにおいて、点で示されている箇所が、算出を行った箇所を示しており、線は、複数の点から得られる傾向線を示している。
図17(A)のグラフから明らかなように、板厚tが1.0mm前後のとき(比較例1の重さ3.8kg、発明例1の重さ4.0kgのとき)発明例1は、比較例1と比較して、同じ重さのときに約10%高い最大曲げモーメントMmaxを発生している。換言すれば、最大曲げモーメント等価条件において、発明例1のように第1半部と第2半部の接合部として長手方向に見てT字型のフランジを設けることで、比較例1のように平板状フランジを設けた場合と比べて、約10%軽量化できる。さらに、図17(A)のグラフにおいて、重さが軽くなるほど、比較例1の最大曲げモーメントMmaxに対する発明例1の最大曲げモーメントの差Δが大きくなっている。このことは、車体部材を薄肉化し軽量化するほど、第1延長部および第2延長部を設けることによる面外変形抑制効果が高くなることを意味している。
[車体部材の重さとエネルギー吸収量との関係]
次に、比較例1と発明例1について、全体の板厚tを0.8mm~2.0mmまで順次変化させ、各板厚におけるエネルギー吸収量を算出した。結果を図17(B)に示す。
図17(B)は、車体部材の重さと車体部材が吸収した衝撃吸収エネルギーE(kJ)との関係を示すグラフである。図17(B)のグラフにおいて、横軸は、長手方向における車体部材の単位長さあたりの重さを示しており、縦軸は、衝撃吸収エネルギーE(kJ)を示している。このグラフでは、グラフの左上側に結果が示されているほど、軽量で且つエネルギー吸収量が大きいことを示している。このグラフから明らかなように、板厚が1.0mm前後のとき、発明例1は、比較例1と比較して、同じ重さのときに約15%高いエネルギーを吸収している。換言すれば、衝撃吸収エネルギー等価条件において、発明例1のように第1半部と第2半部の接合部として長手方向に見てT字型のフランジを設けることで、比較例1のように平板状フランジを設けた場合と比べて、約15%軽量化できる。さらに、図17(B)のグラフにおいて、重さが軽くなるほど、すなわち、板厚が薄くなるほど、同じ衝撃吸収エネルギーEを発生させるのに必要な重さ(板厚)の差Δが大きくなっている。より具体的には、3kJの衝撃吸収エネルギーEを発生させるのに必要な実施例1の重さ(板厚)と比較例1の重さ(板厚)の差Δは小さい。一方、1kJの衝撃吸収エネルギーEを発生させるのに必要な実施例1の重さ(板厚)と比較例1の重さ(板厚)の差Δは大きい。このことは、比較例1と実施例1とでは、板厚が薄くなるほど、同じ板厚の場合における衝撃吸収エネルギーEの差が拡がることを意味する。よって、車体部材を薄肉化し軽量化するほど、第1延長部および第2延長部を設けることによる面外変形抑制効果が高くなることがわかる。
[延長部の長さと最大曲げモーメントとの関係について]
実施例1について、板厚t=1.0mmとした。そして、第1延長部と第2延長部のそれぞれの長さW1,W2を変化させたときの、最大曲げモーメント効率Meff(Nm/g)を算出した。最大曲げモーメント効率Meffとは、最大曲げモーメント(面外変形を生じるときの曲げモーメント)を車体部材の重さで除した値である。結果を図18(A)に示す。
図18(A)は、第1延長部および第2延長部の長さW1,W2と最大曲げモーメント効率Meffとの関係を示すグラフである。図18(A)のグラフにおいて、横軸は各延長部の長さW1,W2(W1=W2)を示しており、縦軸は、最大曲げモーメント効率Meff(Nm/g)を示している。このグラフから明らかなように、各延長部の長さW1,W2がゼロから約10mmになるまでは、長さW1,W2の増加に伴って最大曲げモーメント効率Meffが増している。そして、長さW1,W2が約10mmを超えると、長さW1,W2の増加に伴って最大曲げモーメント効率Meffは低下する。しかしながら、各延長部の長さW1,W2が20mmまでは、延長部が設けられていない場合(W1=W2=0の場合)に比べて、より高い最大曲げモーメント効率を発揮できている。一方、長さW1,W2が20mmを超えると、最大曲げモーメント効率は、各延長部を設けていないときよりも低下することが分かる。この結果、第1延長部と第2延長部の開き角度が180°の場合(第1延長部と第2延長部が一直線に並んでいる場合)、各延長部の長さW1,W2は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。また、各延長部の長さW1,W2は、曲げ加工を考慮すると1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。
[延長部の形状と最大曲げモーメント効率との関係について]
次に、車体部材の第1~第4フランジの先端以降の形状によって、最大曲げモーメント効率Meff(Nm/g)にどのような違いが生じるかを検証した。この検証では、比較例1と、発明例1~7を検証対象とした。なお、比較例1および発明例1~7については、第1~第4フランジの先端以降の形状以外は同一の構成である。比較例1および発明例1のそれぞれの構成は上述したとおりであり、発明例2~発明例7の構成を以下に説明する。
(発明例2)
共通構成に加えて、図6(A)に示す第1実施形態の第2例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
(発明例3)
共通構成に加えて、図6(B)に示す第1実施形態の第3例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
(発明例4)
共通構成に加えて、図7(A)に示す第1実施形態の第4例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
(発明例5)
共通構成に加えて、図7(B)に示す第1実施形態の第5例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
(発明例6)
共通構成に加えて、図8(B)に示す第1実施形態の第6例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
(発明例7)
共通構成に加えて、図9(A)に示す第1実施形態の第7例の形状と同じ形状を長手方向の全域に亘って有している。
結果を図18(B)に示す。図18(B)は、比較例1および発明例1~発明例7のそれぞれの最大曲げモーメント効率Meffを示すグラフである。図18(B)に示すように、比較例1の最大曲げモーメント効率Meffは、2900(Nm/g)を下回っているのに対して、発明例1~発明例7の最大曲げモーメント効率Meffは、少なくとも3300(Nm/g)を超えている。すなわち、発明例1~発明例7の最大曲げモーメント効率Meffは、比較例1の最大曲げモーメント効率Meffと比べて13%以上向上している。よって、発明例1~発明例7は、軽量且つ衝撃エネルギー吸収性能に優れていることがわかる。
そして、発明例1~発明例7のうち、特に、第1フランジおよび第2フランジの双方に延長部が設けられた発明例1~4、6,7は、最大曲げモーメント効率Meffが少なくとも3600(Nm/g)を超えており、特に、衝撃エネルギー吸収性能に優れていることがわかる。そして、発明例4,7は、第1フランジおよび第2フランジに加えて第3フランジおよび第4フランジにも延長部が設けられている。これにより、最大曲げモーメントMeff効率は、3600(Nm/g)を超えており、突出して高いことがわかる。