JP6417882B2 - 加工装置および加工方法 - Google Patents

Description

本発明は、非円形状工作物の加工装置および加工方法に関し、特に、位相決めに関するものである。

非円形状工作物の加工においては、無駄な取代を少なくするために、加工前の工作物の非円形状に合わせて加工する必要がある。このため、非円形状の特定の位相を加工基準として工作物と工具を相対運動させて加工している。カムシャフトの位相基準の設定に関して、カムシャフトを工作物主軸に取付けて回転させ、カムの突起部を位相決め部材に接触させて回転を停止させ、接触時の工作物主軸の回転駆動力の上昇を検出して位相割り出しの終了を検出する技術がある（特許文献１参照）。

特開２０００−２４６５９１号公報

特許文献１に記載の技術では、カムの突起部を位相決め部材に接触させて回転を停止させるため、工作物主軸の回転駆動力は、接触時に位相決め部材を破損しない程度に制限され、加工時における工作物主軸の回転駆動力も制限される。このため、加工力が工作物主軸の回転駆動力を超えると、工作物主軸の回転が停止し、カムシャフトの加工ができなくなる恐れがある。

本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、位相決め部材の強度に関係なく、加工時の工作物主軸の回転駆動力を設定できる加工装置および加工方法を提供することを目的とする。

上記の課題を解決するため、請求項１に係る発明の特徴は、非円形状の周面を備える工作物を保持する工作物保持具と、前記工作物保持具を取り付ける取付け部を有する工作物主軸と、前記工作物と前記工作物保持具との間の保持力を調整する調整手段と、前記工作物の旋回範囲内に配置可能であり、前記工作物の旋回により前記周面が接触し前記工作物が前記工作物保持具に対して相対回転することで前記工作物の位相決めができる位相決め部材と、位相決めの完了を検知する位相決め検知手段と、位相決めが完了するまでは前記保持力を位相決め用保持力とする一方、位相決めの完了後は前記保持力を前記位相決め用保持力より大きな加工用保持力に切り替えるように前記調整手段を制御し、位相決めの完了時の前記工作物主軸の位相を加工基準位相とする制御手段と、前記工作物を、前記加工基準位相を基準として加工する加工手段を備えることである。

さらに、前記周面と前記位相決め部材との接触力を検出する接触力検出手段を備え、前記位相決め検知手段は、前記接触力検出手段が判定接触力を超える前記接触力を検出した後に前記工作物主軸を回転停止させた時を、位相決めの完了と検知し、前記判定接触力は、前記工作物保持具に保持されたすべての前記工作物と前記工作物保持具の相対回転による摩擦力より小さくかつ、前記工作物の総数から１を差し引いた個数の前記工作物と前記工作物保持具の相対回転による摩擦力より大きいことである。

請求項２に係る発明の特徴は、請求項１に係る発明において、前記接触力検出手段は、前記工作主軸の回転駆動用モータの電流値を検出することで接触力を検出することである。

請求項３に係る発明の特徴は、請求項１に係る発明において、前記位相決め検知手段は、前記位相決め部材を前記工作物の旋回範囲内に配置して、前記工作物主軸を旋回可能角度以上回転した後に回転停止した時を位相決めの完了とし、前記旋回可能角度は、前記工作物の旋回範囲内に配置された前記位相決め部材と前記工作物が干渉しない前記工作物の旋回角度であることである。

請求項４に係る発明の特徴は、請求項１ないし請求項３のいずれか１項に係る発明において、前記工作物保持具は、内径把持用のコレットチャックであることである。

請求項５に係る発明の特徴は、請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載の加工装置により、非円形状の周面を備える工作物を加工することである。

請求項1に係る発明によれば、工作物と工作物保持具との間の保持力を、位相決めが完了するまでは位相決め用保持力とする一方、位相決めの完了後は位相決め用保持力より大きな加工用保持力に切り替えるよう制御する。このため、位相決め時に工作物が工作物保持具に対して相対回転する場合の周面と位相決め部材の接触力は小さく設定でき、加工時に大きな加工用保持力により工作物が移動しない確実な把持ができ、位相決めの完了時の工作主軸の位相を加工基準位相として加工できる加工装置を実現できる。

さらに、複数の同一工作物を工作物保持具に取り付けた場合は、すべての工作物が工作物保持具に対して相対回転する場合、すなわち、すべての工作物の周面と位相決め部材が接触した場合に、接触力検出手段が判定接触力以上の接触力を検出し、位相決めの完了と検知する。このため、すべての工作物が同一の位相に位置決めされる加工装置を実現できる。

請求項２に係る発明によれば、工作主軸の回転駆動用モータの電流値を検出することで接触力を検出することができ、特別な検出装置が不要となり安価な加工装置を実現できる。

請求項３に係る発明によれば、位相決め部材を工作物の旋回範囲内に配置して、工作物主軸を旋回可能角度以上回転した後に回転停止した時を位相決めの完了とするので、特別な位相検出手段が不要となり安価な加工装置を実現できる。

請求項４に係る発明によれば、工作物保持具は、内径把持用のコレットチャックであり、工作物と工作物保持具の相対回転が工作物の内径を基準として行われるため、工作物の位置決め精度の高い加工装置を実現できる。

請求項５に係る発明によれば、工作物と工作物保持具との間の保持力を、位相決めが完了するまでは位相決め用保持力とする一方、位相決めの完了後は位相決め用保持力より大きな加工用保持力に切り替えるよう制御する。このため、位相決め時に工作物が前記工作物保持具に対して相対回転する場合の周面と位相決め部材の接触力は小さく設定でき、加工時に大きな加工用保持力により工作物が移動しない確実な把持ができ、位相決めの完了時の工作主軸の位相を加工基準位相として加工できる加工方法を実現できる。

本発明によれば、位相決め部材の強度に関係なく、加工時の工作物主軸の回転駆動力を設定できる加工装置および加工方法を提供できる。さらに、すべての工作物の周面と位相決め部材が接触した場合に、接触力検出手段が判定接触力以上の接触力を検出し、位相決めの完了と検知する。このため、すべての工作物が同一の位相に位置決めされる加工装置を実現できる。

本実施形態の研削盤の全体構成を示す概略図である。 図１のＡ矢視図である。 コレットチャックを示す図である。 第１実施形態の位相決めの工程を示すフローチャートである。 位相決めの順序を示す図である。 第２実施形態の位相決めの工程を示すフローチャートである。 位相決めの順序を示す図である。

［第１実施形態］
以下、本発明の第１実施形態を、非円形状の周面を備える工作物である板カムの周面を研削するカム研削盤の実施例に基づき説明する。
図１に示すように、カム研削盤１は、ベッド２を備え、ベッド２上に、Ｘ軸方向に往復可能な砥石台３と、工作物主軸４を備えている。砥石台３は砥石車７を回転自在に支持し、砥石車７は砥石軸回転モータ（図示省略する）により回転駆動される。工作物主軸４は、本体４ａに回転自在に支持された主軸４ｂの端部に工作物保持具であるコレットチャック５を保持し、コレットチャック５は板カムＷの内径を把持している。位相決め装置６は、進退可能な位相決め部材６ａを備え、位相決め部材６ａは把持された全ての板カムＷと対向するように配置されている。

このカム研削盤１は制御装置３０を備えており、制御装置３０の機能的構成として、砥石台３の送りを制御するＸ軸制御部３１、工作物主軸４の回転を制御する主軸制御部３２、位相決め装置１０の前後進を制御する位相決め制御部３３、制御プログラムや制御データを記録する記録部３４を備えている。主軸制御部３２には、位相決め部材６ａと板カムＷの接触力を測定する接触力測定部３２１と、コレットチャック５の保持力を制御する保持力制御部３２２を備えている。
制御装置３０は、あらかじめ設定され記録部に格納された制御データに基づき、砥石台３や工作物主軸４、位相決め装置６などの動作を制御することで、位相決めや研削を実施できる。

図２に工作物主軸４の回転軸線方向から見た図を示す。板カムＷは、外周面の一部に突起部を備え、円形の内周面を備えている。板カムＷは、内周面をコレットチャック５により把持されて、工作物主軸４の回転軸線回りに回転可能である。位相決め装置６は、本体６ｂと進退可能な位相決め部材６ａにより構成され、位相決め部材６ａの前進位置では、板カムＷの突起部の周面と位相決め部材６ａが接触し、位相決め部材６ａの後退位置では、板カムＷの周面と位相決め部材６ａが接触しない位置に配置されている。

板カムＷのカム形状の研削は、工作物主軸４に対する板カムＷの位相を所定加工基準位相に決めた後に、工作物主軸４の主軸４ｂの位相と砥石車７のＸ軸送り位置を、加工データに基づき同期させて動かすことで行う。

図３に基づき、コレットチャック５の詳細を説明する。主軸４ｂの端部にスラスト基準部材５ａが取り付けられ、その内側に内周テーパ面を備えたコレット５ｂが配置されている。中心部には、コレット５ｂの内周テーパ面に摺働するテーパ部を一端に備えた引棒５ｃが配置されている。引棒５ｃの他端は、主軸４ｂの内部に配置された油圧シリンダ（図示していない）に係合しており、引棒５ｃは軸方向に移動可能となっている。これにより、コレット５ｂは引棒５ｃの進退に応じて外径が拡縮し、板カムＷの内周面を把持または開放することができる。また、把持によるコレット５ｂと板カムＷの保持力を調整する調整手段は、油圧シリンダの作動圧力を変えることであり、保持力を所望の大きさに設定可能である。これらの、油圧シリンダの制御は保持力制御部３２２により行われる。

以下に、図４、図５を参照しながら、２枚の板カムＷ１、Ｗ２を位相決めする方法について詳細を説明する。
初めに、コレット５ｂの外径が収縮した状態で、２枚の板カムＷ１、Ｗ２をコレット５ｂに挿入し、板カムＷ１の側面がスラスト基準部材５ａに接するように押し付ける（Ｓ１）。油圧シリンダにより引棒５ｃを後退させ、コレット５ｂの外径を拡大させ板カムＷ１、Ｗ２の内周面を把持することで１段クランプを完了する。この時の油圧シリンダの圧力はＰ１であり、コレット５ｂが板カムを把持し保持する力は位相決め用保持力である（Ｓ２）。位相決め部材６ａを前進させる。この時の２枚の板カムＷ１、Ｗ２と位相決め部材６ａの位置関係は図５の（ａ）図のようである（Ｓ３）。

主軸４ｂを回転させると図５の（ｂ）図に示すように板カムＷ１と位相決め部材６ａが接触し、板カムＷ１とコレット５ｂは相対回転して滑り摩擦力が発生し、主軸４ｂを回転させるためのトルクが増大する（Ｓ４）。さらに回転が進み、図５の（ｃ）図に示すように、板カムＷ２と位相決め部材６ａが接触すると、２枚の板カムＷ１、Ｗ２とコレット５ｂは滑りながら相対回転し摩擦力が増大する。このため、主軸４ｂを回転させるためのトルクがさらに増大し判定接触力である判定トルクを超えることで、接触力検出手段により接触を検出される。具体的には、判定トルクは主軸４ｂを回転させるモータの電流値が所定の判定電流値を超えることにより接触力測定部３２１で検出される。ここで、判定トルクの値は、1枚の板カムＷ１が滑るときの摩擦トルクより大きく、２枚の板カムＷ１、Ｗ２が滑るときの摩擦トルクより小さく設定されている（Ｓ５）。

続いて主軸４ｂの回転を停止することで、位相決め検知手段は位相決めの完了を検知する。この時の２枚の板カムＷ１、Ｗ２と位相決め部材６ａの位置関係は図５の（ｄ）図のようであり、板カムＷ１、Ｗ２は同一の位相となる（Ｓ６）。主軸４ｂの現在の回転位相を基準位相Ｓｋとして記録部３４に記録する（Ｓ７）。油圧シリンダの圧力をＰ１より大きなＰ２に増大させ、２段クランプを実施する。コレットが板カムを把持し保持する力は加工用保持力である（Ｓ８）。位相決め部材６ａを後退させる（Ｓ９）。その後、基準位相Ｓｋを用いて演算された加工基準を原点とする主軸４ｂの回転と、砥石車７の前後進を同期運転させて、カムの外周形状を研削する加工サイクルを実施する（Ｓ１０）。油圧シリンダにより引棒５ｃを前進させ、コレット５ｂの外径が収縮した状態で工作物を取外す（Ｓ１１）。

以上のように、第１実施形態の方法を用いると、弱い保持力で２枚の板カムＷ１、Ｗ２をコレット５ｂと相対回転させて同一位相に揃え位相決めした後に、板カムの保持力を大きくする。この状態で主軸４ｂの回転と砥石車７の前後進を同期運転させて、２枚の板カムＷ１、Ｗ２を同時に研削することができる。主軸４ｂの回転駆動力に関係なく、板カムの位相決め時は弱い保持力であるため、位相決め部材６ａに作用する力を小さくすることができ、位相決め部材６ａの変形や破損を防止できる。一方、研削時には保持力を大きくすることで、研削抵抗による板カムの滑りを防止でき、主軸４ｂの最大回転駆動力までの高能率の研削が可能となる。
板カムの数についてはどのような枚数でもよく、位相決め部材６ａは把持された全ての板カムと接触可能なように対向配置されている。判定電流値の設定は、総枚数から１枚少ない板カムが滑るときの滑り摩擦抵抗より大きく、総枚数の板カムが滑るときの滑り摩擦抵抗より小さな、滑り抵抗に対応した値に設定すればよい。

［第２実施形態］
以下、本発明の第２実施形態を説明する。
カム研削盤の構造は、第１実施形態から接触力検出手段を除いた構造であり、位相決め方法が異なる。図６、図７を参照しながら、板カムＷの位相決め方法について詳細を説明する。

初めに、位相決め部材６ａを前進させる。このとき、コレット５ｂの外径が収縮した状態である（Ｓ１）。２枚の板カムＷ１、Ｗ２をコレット５ｂに挿入し、板カムＷ１の側面がスラスト基準部材５ａに接するように押し付ける。位相決め部材６ａが前進しているため、図７に示すカムの突起部と位相決め部材６ａが干渉しない角度Θｋの範囲に挿入可能となる（Ｓ２）。油圧シリンダにより引棒５ｃを後退させ、コレット５ｂの外径を拡大させ板カムＷ１、Ｗ２の内周面を把持することで１段クランプを完了する。この時の油圧シリンダの圧力はＰ１であり、コレット５ｂが板カムを把持し保持する力は位相決め用保持力である（Ｓ３）。

主軸４ｂを旋回可能角度以上である所定の位相決め角度だけ左回転させる。ここで、旋回可能角度とは、図７に示すように、位相決め部材６ａが前進した状態で板カムＷと位相決め部材６ａが干渉しない板カムＷの旋回可能角度であり、角度Θｋである。板カムＷ１、Ｗ２をコレット５ｂに挿入した時はこの角度Θｋの範囲内の位相で把持される。このため、位相決め角度だけ左回転させると、必ず、板カムＷ１、Ｗ２は位相決め部材６ａと接触しＷａの位相になる（Ｓ４）。主軸４ｂの回転を停止し、位相決め検知手段で位相決めの完了を検知する。この時の２枚の板カムＷ１、Ｗ２と位相決め部材６ａの位置関係は図５の（ｄ）図のようであり、板カムＷ１、Ｗ２は同一の位相の基準位相Ｓｋとなる（Ｓ５）。油圧シリンダの圧力をＰ１より大きなＰ２に増大させ、２段クランプを実施する。コレットが板カムを把持し保持する力は加工用保持力である（Ｓ６）。位相決め部材６ａを後退させる（Ｓ７）。その後、基準位相Ｓｋを用いて演算された加工基準を原点とする主軸４ｂの回転と砥石の前後進を同期運転させて、カムの外周形状を研削する加工サイクルを実施する（Ｓ８）。油圧シリンダにより引棒５ｃを前進させ、コレット５ｂの外径が収縮した状態で工作物を取外す（Ｓ９）。

以上のように、第２実施形態の研削方法を用いると、弱い保持力で２枚の板カムＷ１、Ｗ２をコレット５ｂと相対回転させて同一位相に揃え位相決めした後に、板カムの保持力を大きくする。この状態で主軸４ｂの回転と砥石車７の前後進を同期運転させて、２枚の板カムＷ１、Ｗ２を同時に研削することができる。主軸４ｂの回転駆動力に関係なく、板カムの位相決め時は弱い保持力であるため、位相決め部材６ａに作用する力を小さくすることができ、位相決め部材６ａの変形や破損を防止できる。一方、研削時には保持力を大きくすることで、研削抵抗による板カムの滑りを防止でき、主軸４ｂの最大回転駆動力までの高能率の研削が可能となる。
さらに、接触力検出手段を必要とせずに位相決めが可能であるため、簡易で、低コストの研削盤を実現できる。

板カムの研削加工の実施形態について説明したが、非円形周面を有する工作物を回転させながら加工するものであれば、いかなる工作物でもよく、切削加工に用いてもよい。

Ｗ１、Ｗ２：板カム ２：ベッド ３：砥石台 ４：工作物主軸 ５：コレットチャック ６：位相決め装置 ７：砥石車 ３０：制御装置 ３１：Ｘ軸制御部 ３２：主軸制御部 ３３：位相決め制御部 ３４：記録部

Claims (5)

1. 非円形状の周面を備える工作物を保持する工作物保持具と、
   前記工作物保持具を取り付ける取付け部を有する工作物主軸と、
   前記工作物と前記工作物保持具との間の保持力を調整する調整手段と、
   前記工作物の旋回範囲内に配置可能であり、前記工作物の旋回により前記周面が接触し前記工作物が前記工作物保持具に対して相対回転することで前記工作物の位相決めができる位相決め部材と、
   位相決めの完了を検知する位相決め検知手段と、
   位相決めが完了するまでは前記保持力を位相決め用保持力とする一方、位相決めの完了後は前記保持力を前記位相決め用保持力より大きな加工用保持力に切り替えるように前記調整手段を制御し、位相決めの完了時の前記工作物主軸の位相を加工基準位相とする制御手段と、
   前記工作物を、前記加工基準位相を基準として加工する加工手段と、
   前記周面と前記位相決め部材との接触力を検出する接触力検出手段を備え、
   前記位相決め検知手段は、前記接触力検出手段が判定接触力を超える前記接触力を検出した後に前記工作物主軸を回転停止させた時を、位相決めの完了と検知し、
   前記判定接触力は、前記工作物保持具に保持されたすべての前記工作物と前記工作物保持具の相対回転による摩擦力より小さくかつ、前記工作物の総数から１を差し引いた個数の前記工作物と前記工作物保持具の相対回転による摩擦力より大きい加工装置。
2. 前記接触力検出手段は、前記工作主軸の回転駆動用モータの電流値を検出することで接触力を検出する請求項１に記載の加工装置。
3. 前記位相決め検知手段は、前記位相決め部材を前記工作物の旋回範囲内に配置して、前記工作物主軸を旋回可能角度以上回転した後に回転停止した時を位相決めの完了とし、
   前記旋回可能角度は、前記工作物の旋回範囲内に配置された前記位相決め部材と前記工作物が干渉しない前記工作物の旋回角度である請求項１に記載の加工装置。
4. 前記工作物保持具は、内径把持用のコレットチャックである請求項１ないし請求項３のいずれか１項に記載の加工装置。
5. 請求項１ないし請求項４のいずれか１項に記載の加工装置により、非円形状の周面を備える工作物を加工する加工方法。

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