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JP5962612B2 - オルガノゾルの製造方法 - Google Patents

オルガノゾルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オルガノゾル及びその製造方法に関する。更に詳しくは、水分散コロイド溶液の分散媒を水から有機溶媒に置換する方法を経るオルガノゾルの製造方法であって、その際に分級・粉砕等の機械的単位操作を経ずとも良好な分散状態と透明性を兼ね備え、容易に実施できて有用性が高いオルガノゾルを製造する方法、及びこれによって得られるオルガノゾルに関する。
有機溶媒分散コロイド溶液は、無機酸化物微粒子が有機溶媒中で凝集せずに安定に分散していることを特徴としているもので、オルガノゾルとも呼ばれている。このようなオルガノゾルは各種の有機樹脂との相溶性に優れているため、水分散コロイド溶液では広範な適用が困難であった分野、例えば、有機−無機コンポジット、樹脂改質、ナノフィラー、塗料などに利用されており、多くの需要がある。
オルガノゾルには、様々な製造方法が知られているが、いずれの手法でも特殊な条件や特別なノウハウを要することが多い。このような製造の困難さは、当該分野の産業発展の妨げとなってきたものであり、簡便で一般性が高く、かつ有用なオルガノゾルを製造するための系統的な指針はこれまでに知られていなかった。
特許文献1(特開2012−77267号公報)には、酸化チタンインゴットを真空中アークプラズマで気化させるとともに、核形成後に気相で表面処理して、有機溶媒分散体とする手法が提案されている。本手法は、極限的な反応条件であり、一般的な反応器で実施するのは困難であった。
特許文献2(特開2010−143806号公報)には、疎水性シランカップリング剤を用いて湿式表面処理されたシリカ微粒子を有機溶媒中に再分散させる手法が例示されている。本手法は、簡便ではあるものの、無機微粒子の再分散性は系に依存するところが大きい。即ち、製造の成否が溶媒の種類や溶媒置換方法に鋭敏に左右されると考えられる。例えば、本提案の骨子は水中で特定の条件を用いて微粒子を疎水化し、次いで有機溶媒を添加することであると考えられるが、疎水化された微粒子は水中では不安定であるため、有機溶媒を添加するタイミングの見極めが難しいと考えられる。工業プロセスにおいては、製造設備の回転率等の問題から、常に次工程をすぐに実施できる状態であるとは限らない。よって、次工程用製造中間体は安定であることが望ましい。しかしながら、実施例では、疎水化された微粒子の水中での安定性については言及されておらず、また溶媒置換は、ロータリーエバポレーター中で、メタノールを蒸留しながらイソプロピルアルコールを少しずつ添加するという繁雑な操作を要求している。よって本手法並びにその技術思想は、オルガノゾル製造のための系統的指針を与えているとは言い難い。
特許文献3(特開2007−246351号公報)及び特許文献4(特開2009−227500号公報)には、先の特許文献2で述べたような安定性についての問題が顕著とならない例について開示されている。これらの提案では、表面処理剤として主にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを念頭においてオルガノゾルが製造されている。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、水に対する溶解性が比較的高く、両親媒性分子であるため、安定な製造が実現されていると考えられる。しかしながら、表面処理剤はγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランに限らず、種々の疎水化処理ができることが望ましい。よって、これらの提案は一般性の高いものであるとは言い難い。
特許文献5(特開2009−13033号公報)には、表面被覆シリカオルガノゾルの製造方法が開示されている。本提案では既に溶媒置換された市販のシリカオルガノゾルを更にシランカップリング剤で処理する手法が示されている。この製造方法は、オルガノシリカゾルの利用法の一例としての範疇にあるもので、水分散コロイド溶液からオルガノゾルを製造する工程を示したものではない。
特許文献6(特許第3906933号公報)には、一旦製造した水分散コロイド溶液の水を完全に除去し、有機溶媒に再分散させてオルガノゾルを得る手法が示されている。本手法は、有機溶媒に再分散させるために粉砕や分級などの機械的単位操作を要する。粉砕には多くのエネルギーを要するのみならず、分散剤を要する場合もあり、物質効率上好ましくなく、産業的には不利な点がある。
その一方で、水分散コロイド溶液には、多くの優れた製造方法が知られている。例えば、特許文献7(特許第2783417号公報)、特許文献8(特許第3225553号公報)、及び特許文献9(特許第4051726号公報)等を挙げることができる。また、水分散コロイド溶液として、市販されているものを入手することも容易である。
以上のように、同じコロイド溶液といえども、分散媒が水であるか有機溶媒であるかによって、その製造方法の容易さは大きく異なっており、特に分散媒が有機溶媒であるオルガノゾルの製造方法に関する分野は立ちおくれていた。
特開2012−77267号公報 特開2010−143806号公報 特開2007−246351号公報 特開2009−227500号公報 特開2009−13033号公報 特許第3906933号公報 特許第2783417号公報 特許第3225553号公報 特許第4051726号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、無機酸化物コロイド水分散液から出発してオルガノゾルを製造する方法において、容易に実施できて有用性が高く、分級・粉砕等の機械的単位操作を経ずとも良好な分散状態と透明性を兼ね備えたオルガノゾルの製造方法及び該方法により得られるオルガノゾルを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した背景技術について考察し、一つの課題を見出した。即ち、無機酸化物コロイド水分散液から出発してオルガノゾルを製造する場合、主に表面処理工程(a)と溶媒置換工程(b)があるわけであるが、これら二つの工程の兼ね合いが困難なことが課題であると考えられる。つまり、工程(a)で表面処理が効率的に進行し微粒子の疎水化度が向上した場合は工程(b)が実施し易くなるものの、水中での微粒子の安定性は低下する。従って、工程(a)が終了した段階での安定性が問題となる。その一方で、工程(a)の表面処理を水中での分散安定性を確保できる程度にすると、工程(b)の実施可能な範囲が制限されてしまう。
このような相反する問題を同時に解決する具体的方法であって、有用性が高く、当該産業分野の発展に資するような明確な技術思想はこれまでに提出されていない。
本発明者らは、オルガノゾル製造におけるこのような課題を解決するために鋭意検討した結果、次の工程(A)〜(G)、即ち、
(A)無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程、
(B)水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程、
(C)有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物を添加する工程、
(D)マイクロ波を照射する工程、
(E)有機溶媒を添加する工程、
(F)共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を留去する工程、及び
必要に応じて
(G)水を1,000ppm以下まで除去する工程
からなる水性コロイド溶液の溶媒置換を経るオルガノゾルの製造方法が有用である事実を知見し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記オルガノゾルの製造方法及びオルガノゾルを提供する。
〔1〕
(A)無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程、
(B)水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程、
(C)下記一般式(1)
1 p2 q3 rSi(OR44-p-q-r (1)
(式中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基である。pは1〜3の整数、qは0,1又は2、rは0,1又は2であり、p+q+rは1〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物もしくは加水分解縮合物を添加する工程、
(D)マイクロ波を照射する工程、
(E)有機溶媒を添加する工程、及び
(F)共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を留去する工程
からなる水性コロイド溶液の溶媒置換を経るオルガノゾルの製造方法。
〔2〕
さらに、(G)水を1,000ppm以下まで除去する工程を備える〔1〕に記載のオルガノゾルの製造方法。
〔3〕
工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、酸化チタン微粒子を核とし、該核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル微粒子であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のオルガノゾルの製造方法。
〔4〕
工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン固溶体微粒子を核とし、核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体水分散液であって、動的光散乱法で測定した該核微粒子の体積平均50%累計粒子径が30nm以下で、該コアシェル型微粒子の体積平均50%累計粒子径が50nm以下であり、前記スズ成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Sn)で10〜1,000、前記マンガン成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Mn)で10〜1,000である、コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体微粒子を用いることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のオルガノゾルの製造方法。
〔5〕
工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、アルミナ及び/又はシリカであって、動的光散乱法で測定した該分散質の体積平均50%累計粒子径が10nm以上100nm以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のオルガノゾルの製造方法。
〔6〕
工程(B)において添加するアルコールの水に対する20℃における溶解度が1(アルコール1g/水100g)以上、30(アルコール30g/水100g)以下であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
〔7〕
工程(B)において添加するアルコールが、炭素数4以上8以下の芳香族基を含んでいてもよい直鎖型、分岐鎖型又は環型の1価のアルコール、及び炭素数3以上8以下のフッ素原子で全置換又は部分置換された1価のアルコールからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
〔8〕
工程(D)において、マイクロ波の積算照射時間が60秒以上3,600秒以内であり、照射後の系の温度が10℃以上150℃以下であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
〔9〕
工程(E)において添加される溶媒が、炭素数5以上30以下の炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、及びアミド化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
〔10〕
工程(G)において、水を1,000ppm以下まで除去する方法が、3Å以上10Å以下の細孔直径を有するゼオライトを用いた物理吸着であることを特徴とする〔2〕〜〔9〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
〔11〕
工程(G)において、水を1,000ppm以下まで除去する方法が、オルト有機酸エステル、又は下記一般式(2)
(R5O)(R6O)CR78 (2)
(式中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよく、またR7及びR8はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよい。)
で示されるgem−ジアルコキシアルカンを用いた化学反応を伴う方法であることを特徴とする〔2〕〜〔9〕のいずれかに記載のオルガノゾルの製造方法。
本発明によれば、無機酸化物コロイド水分散液から、簡便かつ確実にオルガノゾルを製造することができる。本発明の製造方法によれば、オルガノシリカゾルやオルガノアルミナゾルのみならず、これまでにその製造が比較的困難となれてきたオルガノチタニアゾルについても製造が可能となる。本発明の手法によって製造されたオルガノチタニアゾルを含有することを特徴とする塗料組成物は、透明性に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の実施例1で得られたオルガノシリカゾルの粒子径分布の測定結果である。 本発明の実施例1で得られたオルガノシリカゾルの透過型電子顕微鏡画像である。 本発明の実施例4で得られたオルガノチタニアゾルの粒子径分布の測定結果である。 本発明の実施例4で得られたオルガノチタニアゾルの透過型電子顕微鏡画像である。
以下に、本発明のオルガノゾルの製造方法を詳細に説明する。
本発明のオルガノゾルの製造方法は、下記工程(A)〜(F)、及び必要に応じて下記工程(G)からなる水性コロイド溶液の溶媒置換を経るものである。
(A)無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程、
(B)水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程、
(C)下記一般式(1)
1 p2 q3 rSi(OR44-p-q-r (1)
(式中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基である。pは1〜3の整数、qは0,1又は2、rは0,1又は2であり、p+q+rは1〜3の整数である。)
で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物を添加する工程、
(D)マイクロ波を照射する工程、
(E)有機溶媒を添加する工程、
(F)共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を留去する工程、
(G)水を1,000ppm以下まで除去する工程。
工程(A)
本発明のオルガノゾルの製造方法における工程(A)は、無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程である。工程(A)において準備する無機酸化物コロイド水分散液は、好ましくは1〜200nmの体積平均50%累計粒子径を有する無機酸化物粒子等の無機酸化物コロイド水分散液の分散質が水を含む液体分散媒中に凝集せずに分散しているものである。
無機酸化物コロイド水分散液の分散質
本発明で用いる無機酸化物コロイド水分散液の分散質は、金属酸化物等の無機酸化物である。金属酸化物を構成する元素としては、13族元素、14族元素(炭素を除く)、第1系列遷移元素、第2系列遷移元素、第3系列遷移元素、ランタノイド等が挙げられる。13族元素では、特にアルミニウム、ホウ素、インジウム等から誘導される酸化物が好適であり、アルミナゾルが一般的に知られている。14族元素(炭素を除く)では、ケイ素、スズ等から誘導される酸化物が好適であり、シリカゾルが一般的である。第1系列遷移元素では、チタン、マンガン、亜鉛等から誘導される酸化物が好適である。これらの酸化物は、特定波長の光吸収材料として用いられることが多い。第2系列遷移元素では、イットリウム、ジルコニウム等から誘導される酸化物が好適である。これらの酸化物は、特定波長の光吸収及び蛍光材料として用いられることが多い。第3系列遷移元素では、ハフニウム、タンタル等から誘導される酸化物が好適である。ランタノイドでは、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、テルビウム、ジスプロジウム、イッテルビウム等から誘導される酸化物が好適である。これらの酸化物は、特定波長の光吸収及び蛍光材料として用いられることが多い。
本発明で用いる無機酸化物コロイド水分散液の分散質は、前記の金属酸化物の群から選ばれるものであれば、一種単独で又は二種以上を複合したものを用いることができる。ここで述べる複合とは、広義の意味であり、単純混合及び化学結合を介して複合化されたものであればよい。化学結合を介した複合とは、例えば、下記一般式(3)で表されるような形態をいう。
(M1xm(M2yn (3)
ここで、M1は、Al、B、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Zn、Y、Zr、Hf、Ta、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ybの元素記号で表されるいずれか一種である。M2は、Al、B、In、Si、Ge、Sn、Ti、Mn、Zn、Y、Zr、Hf、Ta、La、Ce、Pr、Nd、Tb、Dy、Ybの元素記号で表されるいずれか一種であり、M1で選択されたものと同一ではない元素である。x、yは、M1の価数をaとすればx=a/2、M2の価数をbとすればy=b/2で表すことができる。m、nは、m+n=1を満たす実数であって、かつ0<m<1及び0<n<1を満たす。即ち、構造中において、M1とM2が酸素を介して結合した単位を有している。M1とM2は、構造中において散在していてもよく、また偏在していてもよい。M1とM2が構造中において散在しているものは、複数種の金属アルコキシドの共加水分解物において見られる構造である。M1とM2が構造中において偏在しているものは、コアシェル粒子(金属酸化物微粒子を核とし、この核の外側に他の金属酸化物の殻を有する粒子)において見られる構造であり、例えば、複数種の金属アルコキシドを種類に応じて段階的に加水分解することで形成される。
本発明で用いられる金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズ、酸化ホウ素、酸化インジウム等が挙げられる。これらの無機酸化物コロイド水分散液を、例えばコーティング塗料に添加する場合には、目的に応じて一種又は二種以上の金属酸化物が用いられることが普通であるので、本発明における無機酸化物コロイド水分散液が複数種の金属酸化物を含有していることを妨げない。コーティング塗料に無機酸化物コロイド水分散液を添加する目的には、機械的特性の付与、紫外線遮蔽特性の付与、電気伝導性の付与等が挙げられる。機械的特性の付与のためには、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ホウ素及びこれらを構成する金属元素を一種又は二種以上含有する複合酸化物が用いられることが多い。紫外線遮蔽特性の付与のためには、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等を用いることが多く、更に機械的特性付与のための酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ等と複合及び混合して用いることもできる。電気伝導性の付与のためには、酸化インジウム−酸化スズ複合体が用いられることが多い。いずれにせよ、これらの金属酸化物は多様な機能を付与することができるものであるが、無機酸化物コロイド水分散液としての化学工学上の様態は類似したものであり、従って、無機酸化物コロイド水分散液の溶媒置換を考える場合には、ここに挙げた金属酸化物を一種単独又は二種以上を複合したものについて、一群として取り扱うことが可能である。
無機酸化物コロイド水分散液の種類
無機酸化物コロイド水分散液は、分散質の種類によって多様な機能性を有する。多様な機能性とは、例えば、コーティング組成物に添加した際に耐擦傷性や可撓性の付与を行える機械的特性、光の屈折率制御性、紫外線遮蔽性、放射線遮蔽性、蛍光性等の付与を行える光学特性、電気伝導性や誘電率の付与を行える電気的特性等である。このように、無機酸化物コロイド水分散液は、それを構成する元素の種類も多様であれば、発現する機能も多様である。しかしながら、無機酸化物コロイド水分散液としての化学工学上の様態は類似したものであり、従って、無機酸化物コロイド水分散液の溶媒置換を考える場合には、ここに挙げた金属酸化物等の無機酸化物を一種単独又は二種以上を複合したものについて、一群として取り扱うことが可能である。化学工学上の様態とは、粉体工学や移動現象論の範疇において議論される物理的性質のことであり、例えば、分散質の粒子径や、ゼータ電位等である。これらの物理量を用いて議論している限りにおいて、無機酸化物コロイド水分散液は分散質を構成する元素の種類が異なっていても、互いに比較考量可能で並列な集合として認識できる。従って、本明細書や実施例において全ての種類及び/又は組み合わせの無機酸化物(金属酸化物)コロイド水分散液について詳細に言及されていないからといって、記述されていない無機酸化物コロイド水分散液についても本発明の範囲に含まれることを妨げない。
無機酸化物コロイド水分散液の分散質の粒子径(平均累計粒子径)は、種々の方法で測定できる。本発明での粒子径の範囲は、レーザー光を用いた動的光散乱法で測定したものの体積基準の50%累計粒子径(D50)としてとして議論するが、傍証として電子顕微鏡法を用いて観測することも可能である。これらの測定法によって求められる値は、測定装置に依存したものではないが、例えば、動的光散乱法としては、ナノトラックUPA−EX150(日機装(株)製)等の装置を用いることができる。また、電子顕微鏡法としては透過型電子顕微鏡H−9500(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を装置として例示することができる。例えば、無機酸化物コロイド水分散液をコーティング塗料に添加する場合は、可視領域における透明性が重要であるため、分散質の平均累計粒子径は、1〜200nmが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、1〜80nmであることが更に好ましく、1〜50nmであることが特に好ましい。分散質の平均累計粒子径が200nmを超えると、可視領域の光波長より大きくなり、散乱が顕著となる場合がある。また、1nm未満になると、分散質の系中での総表面積が極めて大きくなることにより、無機酸化物コロイド水分散液としての取り扱いが困難になる場合がある。
無機酸化物コロイド水分散液のゼータ電位(ζ)は、電気二重層を有する固−液界面に電場を印加した際に、分散質粒子の泳動現象が見られるが、この泳動現象の電気泳動移動度に比例する値として認識される。ゼータ電位は種々の方法で測定できるが、このような値を測定する装置として、例えば、ELS−3000(大塚電子(株)製)を挙げることができる。本発明のようなオルガノゾルについては、有機溶媒の誘電率に多様な範囲がある。ゼータ電位は、誘電率にも依存する関数であるため、このような場合は誘電率の測定を行えばよい。誘電率の測定装置としては、Model−871(日本ルフト(株)製)を例示することができる。ゼータ電位は、mVの単位で、−200<ζ<200の範囲に収まることが多い。ゼータ電位は、その絶対値が大きいほど無機酸化物コロイド水分散液の分散系が安定していることを示している。従って、ゼータ電位の絶対値(|ζ|)は、3mV以上であることが好ましく、10mV以上であることがより好ましく、20mV以上であることが更に好ましい。ゼータ電位の絶対値(|ζ|)が3mV未満であると、無機酸化物コロイド水分散液の分散質の分散安定性が十分ではない場合がある。ゼータ電位の絶対値(|ζ|)の上限は特に定めないが、通常は物理限界を有している(200mV程度)。
無機酸化物コロイド水分散液の分散媒
本発明の工程(A)で準備する無機酸化物コロイド水分散液は、水を分散媒とすることを特徴とする。水としては、水道水、工業用水、井戸水、天然水、雨水、蒸留水、イオン交換水等の淡水を用いることができるが、特にイオン交換水であることが好ましい。イオン交換水は、純水製造器(例えば、オルガノ(株)製、製品名「FW−10」、メルクミリポア(株)製、製品名「Direct−QUV3」等)を用いて製造することができる。また、分散媒には、以下に述べるように無機酸化物コロイド水分散液を製造する工程で水と任意に混和可能な1価のアルコールを含んでいてもよい。水と任意に混和可能な1価のアルコールは、コアシェル微粒子を製造する際の共溶媒及びゾル−ゲル反応における金属アルコキシドの加水分解副生成物としての由来で含有してもよい。水と任意に混和可能な1価のアルコールは、水に対して0質量%以上30質量%以下で含んでいることが好ましく、0質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。水と任意に混和可能な1価のアルコールの含有量が30質量%より多くなると、工程(B)において添加する水と完全には相溶しないアルコールの相溶化剤として作用することがあるため好ましくないことがある。
無機酸化物コロイド水分散液の濃度
本発明の工程(A)で準備する無機酸化物コロイド水分散液の濃度は、好ましくは1質量%以上35質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下、更に好ましくは10質量%以上25質量%以下である。無機酸化物コロイド水分散液の濃度が1質量%より低いと、製造効率が良くないことがあり、好ましくない。無機酸化物コロイド水分散液の濃度が35質量%より高いと、pHや温度等の条件によっては、ゲル化し易くなることがあるため好ましくない。ここでいう濃度とは、無機酸化物コロイド水分散液全体(分散質及び分散媒の質量の総和)中に含まれる分散質の質量の割合を100分率で表わしたものと理解すべきである。濃度は、無機酸化物コロイド水分散液の一定量を秤量して、分散媒を強制乾固した際の質量変化から求めることができる。
コアシェル微粒子を含む無機酸化物コロイド水分散液
本発明で用いる無機酸化物コロイド水分散液としては、とりわけ、上述した金属元素の酸化物の一種単独又は二種以上を複合したものを核とし、この核の外側に上述した金属元素の酸化物の一種単独又は二種以上を複合したものの殻を有するコアシェル微粒子を含有するコロイド水分散液を用いるのが好ましい。このようなコアシェル微粒子含有コロイド水分散液としては、酸化チタンを核とし、この核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル微粒子を含むコロイド水分散液、特に酸化チタン−酸化スズ及び/又は酸化マンガン複合酸化物(スズ及び/又はマンガンを固溶した酸化チタン微粒子)を核とし、この核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル微粒子を含むコロイド水分散液等が挙げられる。以下に、本発明に用いられるコアシェル微粒子(コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体)コロイド水分散液について詳細に説明する。
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体(微粒子)コロイド水分散液
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液は、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子を核とし、該核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体を水等の水性分散媒中に分散したものであることが好ましい。
ここで、酸化チタンには、通常、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3つがあるが、本発明では、光触媒活性が低く、紫外線吸収能力に優れた正方晶系ルチル型の酸化チタンをスズ及び/又はマンガンの固溶媒として用いることが好ましい。
固溶質としてのスズ成分は、スズ塩から誘導されるものであればよく、酸化スズ、硫化スズ等のスズカルコゲナイドが挙げられ、酸化スズであることが好ましい。スズ塩としては、フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ等のスズハロゲン化物、シアン化スズ、イソチオシアン化スズ等のスズ擬ハロゲン化物、又は硝酸スズ、硫酸スズ、燐酸スズ等のスズ鉱酸塩等を用いることができるが、安定性と入手の容易さから塩化スズを用いることが好ましい。また、スズ塩におけるスズは二価から四価の原子価のものから選択できるが、四価のスズを用いることが特に好ましい。
固溶質としてのマンガン成分は、マンガン塩から誘導されるものであればよく、酸化マンガン、硫化マンガン等のマンガンカルコゲナイドが挙げられ、酸化マンガンであることが好ましい。マンガン塩としては、フッ化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン等のマンガンハロゲン化物、シアン化マンガン、イソチオシアン化マンガン等のマンガン擬ハロゲン化物、硝酸マンガン、硫酸マンガン、燐酸マンガン等のマンガン鉱酸塩等を用いることができるが、安定性と入手の容易さから塩化マンガンを用いることが好ましい。また、マンガン塩におけるマンガンは2価から7価の原子価のものから選択できるが、2価のマンガンを用いることが特に好ましい。
スズ及びマンガンを正方晶系酸化チタンに固溶させる場合、スズ成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Sn)で好ましくは10〜1,000、より好ましくは20〜200であり、マンガン成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Mn)で好ましくは10〜1,000、より好ましくは20〜200である。スズ成分、マンガン成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Sn)、(Ti/Mn)で10よりも少ないとき、スズ及びマンガンに由来する可視領域の光吸収が顕著となり、一方、1,000を超えると、光触媒活性が十分に失活せず、結晶系も可視吸収能の小さいアナターゼ型となるため好ましくない。なお、スズ及びマンガンのいずれか一方を正方晶系酸化チタンに固溶させる場合のスズ成分の固溶量、マンガン成分の固溶量も上記値と同様である。
スズ成分及びマンガン成分の固溶様式は、置換型であっても侵入型であってもよい。ここでいう、置換型とは、酸化チタンのチタン(IV)イオンのサイトにスズ及びマンガンが置換されて形成される固溶様式のことであり、侵入型とは、酸化チタンの結晶格子間にスズ及びマンガンが存在することにより形成される固溶様式のことである。侵入型では、着色の原因となるF中心が形成され易く、また金属イオン周囲の対称性が悪いため金属イオンにおける振電遷移のフランク−コンドン因子も増大し、可視光を吸収し易くなる。そのため、置換型であることが好ましい。
スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子の核の外側に形成される酸化ケイ素の殻は、酸化ケイ素を主成分とし、スズやアルミニウムなどその他の成分を含有していてもよく、どのような手法で形成させたものであってもよい。例えば、該酸化ケイ素の殻は、テトラアルコキシシランの加水分解縮合によって形成することができる。テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン等の通常入手可能なものを用いればよいが、反応性と安全性の観点からテトラエトキシシランを用いることが好ましい。このようなものとして、例えば、市販の「KBE−04」(信越化学工業(株)製)を用いることができる。また、テトラアルコキシシランの加水分解縮合は、水中で行えばよく、アンモニア、アルミニウム塩、有機アルミニウム、スズ塩、有機スズ等の縮合触媒を適宜用いればよいが、アンモニアは該核微粒子の分散剤としての作用も兼ね備えているため、特に好ましい。
このようなスズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子を核とし、該核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体全体に対する殻の酸化ケイ素の割合は、20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%である。20質量%よりも少ないとき、殻の形成が不十分であり、一方、50質量%を超えると、該粒子の凝集を促進し分散液が不透明となるため好ましくない。
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体において、レーザー光を用いた動的光散乱法で測定した核となるスズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子の体積基準の50%累計粒子径(D50)は30nm以下、より好ましくは20nm以下であり、コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体の体積基準の50%累計粒子径(D50)は50nm以下であり、より好ましくは30nm以下である。上記核微粒子及びコアシェル型固溶体のD50値が上記上限値を超えるとき、分散液が不透明となるため好ましくない。また、上記核微粒子のD50の下限値は特に限定されないが、通常、5nm以上、コアシェル型固溶体のD50下限値は、6nm以上である。なお、このような体積基準の50%累計粒子径(D50)を測定する装置としては、例えば、ナノトラックUPA−EX150(日機装(株)製)等を挙げることができる(以下、同じ)。
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体を分散する水性分散媒としては、水、及び水と任意の割合で混合される親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、蒸留水、純水等が好ましい。親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが好ましい。この場合、親水性有機溶媒の混合割合は、水性分散媒中0〜30質量%であることが好ましい。30質量%を超えると、工程(B)において、水と完全には相溶しないアルコールの相溶化剤として作用することがあるため好ましくないことがある。中でも、生産性、コスト等の点から脱イオン水、純水が最も好ましい。
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体と水性分散媒とから形成されるコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液において、上記コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体の濃度は、0.1質量%以上10質量%未満が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。なお、この水性分散媒中には、後述するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体の製造過程において使用される塩基性物質(分散剤)等を含んでいることを許容する。特に、塩基性物質は、pH調整剤、分散剤としての性質を兼ね備えているので、上記水性分散媒と共に適当な濃度の水溶液にして用いてもよい。但し、コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液には、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、リン酸化合物、リン酸水素化合物、炭酸化合物及び炭酸水素化合物以外の分散剤(塩基性物質)を含有していないことが好ましい。これは、上記塩基性物質を含有させておくことによって、従来、酸化チタン微粒子の分散剤として使用せざるを得なかった高分子分散剤を敢えて使用する必要がなくなり、従って、該高分子分散剤を含む酸化チタン微粒子分散剤をコーティング剤に適用した際に生じていた塗膜(硬化膜)の耐擦傷性及び基材との密着性に係る阻害を回避できるためである。
このようなコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体水分散液における塩基性物質(分散剤)としては、例えば、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸二水素一リチウム、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸二水素一セシウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二セシウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等を挙げることができ、特に、アンモニア及び水酸化ナトリウムが好ましい。
このような構成のコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液は高い透明性を有し、例えば、1質量%濃度のコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液が満たされた光路長1mmの石英セルを通過する550nmの波長の光の透過率が通常80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。なお、このような透過率は、紫外可視透過スペクトルを測定することによって、容易に求めることができる。
特に、以下に述べるスズ及び/又はマンガンを固溶したコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液の製造方法によるものは、該固溶体を得るに際し、製造工程中で粉砕や分級等の機械的単位操作を経ていないにもかかわらず、上記の特定の累計粒子径にすることができるので、生産効率が非常に高いだけでなく、上記の高い透明性を確保できる。
コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液の製造方法
上述した構成を有するスズ及び/又はマンガンを固溶したコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体水分散液の製造方法は、次の工程(イ)、(ロ)からなる。
・工程(イ)
この工程では、先ず、スズ成分及び/又はマンガン成分が正方晶系酸化チタンに固溶している正方晶系酸化チタン固溶体微粒子の水分散体を用意する。この水分散体を得る方法は、特に限定されないが、原料となるチタン化合物、スズ化合物、マンガン化合物、塩基性物質及び過酸化水素を水性分散媒中で反応させて、一旦、スズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液を得た後、これを水熱処理してスズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液を得る方法が好ましい。
前段のスズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液を得るまでの反応は、水性分散媒中の原料チタン化合物に塩基性物質を添加して水酸化チタンとし、含有する不純物イオンを除去し、過酸化水素を添加してペルオキソチタン酸とした後にスズ化合物及び/又はマンガン化合物を添加して、スズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液とする方法でも、水性分散媒中の原料チタン化合物にスズ化合物及び/又はマンガン化合物を添加した後に塩基性物質を添加してスズ及び/又はマンガンを含有した水酸化チタンとし、含有する不純物イオンを除去し、過酸化水素を添加してスズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液とする方法でもよい。
ここで、原料のチタン化合物としては、例えば、チタンの塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、蟻酸、クエン酸、蓚酸、乳酸、グリコール酸等の有機酸塩、これらの水溶液にアルカリを添加して加水分解することにより析出させた水酸化チタン等が挙げられ、これらの一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
スズ化合物及び/又はマンガン化合物としては、前述のスズ塩及び/又はマンガン塩が、それぞれ前述の固溶量となるように使用される。また、水性分散媒、塩基性物質も、それぞれ前述のものが、前述の配合となるように使用される。
過酸化水素は、上記原料チタン化合物又は水酸化チタンをペルオキソチタン、つまりTi−O−O−Ti結合を含む酸化チタン系化合物に変換させるためのものであり、通常、過酸化水素水の形態で使用される。過酸化水素の添加量は、チタン、スズ及びマンガンの合計モル数の1.5〜5倍モルとすることが好ましい。また、この過酸化水素を添加して原料チタン化合物又は水酸化チタンをペルオキソチタン酸にする反応における反応温度は、5〜60℃とすることが好ましく、反応時間は、30分〜24時間とすることが好ましい。
こうして得られるスズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液は、pH調整等のため、塩基性物質又は酸性物質を含んでいてもよい。ここでいう、塩基性物質としては、例えば、アンモニア等が挙げられ、酸性物質としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、リン酸、過酸化水素等の無機酸及び蟻酸、クエン酸、蓚酸、乳酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられる。この場合、得られたスズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液のpHは1〜7、特に4〜7であることが取り扱いの安全性の点で好ましい。
次いで、後述のスズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液を得るまでの反応は、上記スズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸溶液を、圧力0.01〜4.5MPa、好ましくは0.15〜4.5MPa、温度80〜250℃、好ましくは120〜250℃、反応時間1分〜24時間の条件下での水熱反応に供される。その結果、スズ及び/又はマンガンを含有したペルオキソチタン酸は、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子に変換されていく。
本発明においては、こうして得られるスズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液に、1価アルコール、アンモニア、及びテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを配合する。
1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、及びこれらの任意の混合物が使用され、特に好ましくはエタノールが使用される。このような1価アルコールの配合量は、上記酸化チタン微粒子分散液100質量部に対して、100質量部以下、好ましくは30質量部以下で使用される。特に、1価アルコールの配合量を変えることによって、次工程において、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子からなる核の外側に形成する酸化ケイ素の殻の厚さを制御することが可能になる。一般に、1価アルコールの配合量を増やせば、テトラアルコキシシラン等のケイ素反応剤の反応系への溶解度が増大する一方で酸化チタンの分散状態には悪影響を与えないので、該殻の厚さは厚くなる。即ち、次工程において得られるスズ及び/又はマンガンを固溶したコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体水分散液は、製造工程中で粉砕や分級等の機械的単位操作を経ていないにもかかわらず、上記特定の累計粒子径の範囲にすることができ、可視部における透明性を付与し得る。1価アルコールの配合量は、30質量部以下であることが好ましいが、これ以上のアルコールを含有する場合であっても、濃縮の工程でアルコールを選択的に取り除くことも可能であるため、適宜必要な操作を追加することができる。
アンモニアは、アンモニア水であり、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液中にアンモニアガスを吹き込むことによってアンモニア水の添加に代えてもよく、更に該分散液中でアンモニアを発生し得る反応剤を加えることによってアンモニア水の添加に代えてもよい。アンモニア水の濃度は、特に限定されるものではなく、市販のどのようなアンモニア水を用いてもよい。本発明の工程においては、例えば、28質量%の濃アンモニア水を用いて、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液のpHを9〜12、より好ましくは9.5〜11.5となる量までアンモニア水を添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランとしては、上述したものを用いることができるが、テトラエトキシシランが好ましい。テトラエトキシシランには、それ自体の他、テトラエトキシシランの(部分)加水分解物も用いることができる。このようなテトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランの(部分)加水分解物としては、市販のどのようなものでもよく、例えば、商品名「KBE−04」(テトラエトキシシラン:信越化学工業(株)製)、商品名「シリケート35」,「シリケート45」(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物:多摩化学工業(株)製)、商品名「ESI40」,「ESI48」(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物:コルコート(株)製)等を使用してもよい。これらのテトラエトキシシラン等は、一種を単独で用いても、複数種を用いてもよい。
テトラアルコキシシランの配合量は、加水分解後の酸化ケイ素を含有する酸化チタンに対して20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、より好ましくは30〜40質量%となるように用いる。20質量%よりも少ないとき、殻の形成が不十分となり、50質量%よりも多いとき、該粒子の凝集を促進し、分散液が不透明となることがあるため好ましくない。
スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子分散液に、1価アルコール、アンモニア、及びテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを加えて混合する方法は、どのような方法で実施してもよく、例えば、磁気攪拌、機械攪拌、震盪攪拌等を用いることができる。
・工程(ロ)
ここでは、上記(イ)の工程で得られた混合物を急速加熱することにより、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン微粒子を核とし、該核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体の微粒子を形成させる。
工程(イ)で得られた混合物を急速加熱する方法は、既存のどのようなものであってもよく、マイクロ波による加熱、高い熱交換効率を達成できるマイクロリアクター、及び大きな熱容量を持った外部熱源との熱交換等を用いることができる。特に、マイクロ波を用いた加熱方法は、均一かつ急速に加熱することができるため好ましい。なお、マイクロ波を照射して加熱する工程は、回分工程であっても連続工程であってもよい。
急速加熱法は、室温から分散媒の沸点直下(通常、10〜80℃程度)に達するまでの時間が10分以内であることが好ましい。これは、10分を超える加熱方法のとき、該粒子が凝集することとなり、好ましくないからである。
このような急速加熱法にマイクロ波加熱を用いるときは、例えば、その周波数が300MHz〜3THzの電磁波の中から適宜選択することができる。日本国内においては、電波法によって、通常使用可能なマイクロ波周波数帯域が、2.45GHz、5.8GHz、24GHz等に決められているが、中でも2.45GHzは、民生用にも多く使用されており、この周波数の発振用マグネトロンは設備価格上有利である。しかしながら、この基準は特定の国や地域の法律や経済状況に依存したものであり、技術的には周波数を限定するものではない。マイクロ波の出力は100W〜24kW、好ましくは100W〜20kWの定格を有する限り、市販のどのような装置を用いてもよい。例えば、μReactorEx(四国計測工業(株)製)、Advancer(バイオタージ(株)製)等を用いることができる。
マイクロ波加熱のとき、加熱に要する時間を10分以内とするためには、マイクロ波の出力を調節するか、回分反応の場合は反応液量を、連続反応の場合は反応流量を適宜調節して行うことができる。
このようにして得られたスズ及び/又はマンガンを固溶したコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体コロイド水分散液は、本発明のオルガノゾルの製造に好適に用いることができる。
ここまでに述べたように、無機酸化物コロイド水分散液は自家製造することもできるが、市販のものを使用することもできる。例えば、水性シリカゾルとして日産化学工業(株)製のスノーテックス(登録商標)シリーズや水性アルミナゾルが利用可能である。
この場合、レーザー光を用いた動的光散乱法で測定した体積基準の50%累計粒子径(D50)は、10nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは12nm以上80nm以下である。上記無機酸化物コロイド水分散液の分散質のD50値が上記上限値を超えると、白濁し易い場合があり、上記下限値未満では凝集し易い場合がある。
無機酸化物コロイド水分散液の固形分濃度は、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。1質量%未満であると、オルガノゾル製造における産業上の効率から好ましくないことがあり、30質量%を超えると、無機酸化物コロイド水分散液が流動性を失いゲル化することがあるため好ましくない場合がある。
無機酸化物コロイド水分散液の液性は、好ましくはpHが2以上12以下であり、より好ましくはpHが3以上11以下であり、更に好ましくは4以上10以下である。pHが2未満又は12を超えると無機酸化物コロイド水分散液が流動性を失いゲル化することがあるため好ましくない場合がある。
工程(B)
工程(B)は、水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程である。通常の条件では、ここで添加するアルコールは、無機酸化物コロイド水分散液とは混合せず、また分散液中の無機酸化物分散質が該アルコール中に移行することはない。
工程(B)で添加するアルコールは、炭素数4以上8以下の芳香族基を含んでいてもよい直鎖型、分岐鎖型又は環型の1価のアルコール、及び炭素数3以上8以下のフッ素原子で(部分)置換された1価のアルコールからなる群からから選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。炭素数が2以下のアルコールは通常の条件では、水と任意に混和するために本工程で用いることはできない。また炭素数が8より大きくなると、パラフィンとしての性質が強くなり、本工程での適用が困難なことがあるため好ましくない。炭素数4以上8以下の芳香族基を含んでいてもよい直鎖型、分岐鎖型又は環型の1価のアルコールであることがより好ましい。フッ素原子での置換は、全置換(パーフルオロアルキル)型及び部分置換型のいずれであってもよい。長鎖アルキル基において、全置換型のアルコールは高価となるため、置換数は原価に応じて調整可能である。アルコールの価数が2より大きくなると、水溶性が強くなる傾向があり、また増粘して取り扱いが困難になることもあり好ましくない。
工程(B)で添加するアルコールの具体例としては、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、tert−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール等の直鎖、分岐鎖、環状のアルコール類、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ベンジルアルコール等の含芳香環アルコール類、ヘプタフルオロプロパン−1−オール、ヘプタフルオロプロパン−2−オール、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブタン−1−オール、ノナフルオロブタン−1−オール、ノナフルオロブタン−2−オール等のフッ素原子で(部分)置換された直鎖、環状のアルコール類を挙げることができる。
工程(B)において、添加するアルコールの20℃における水に対する溶解度は、1(アルコール1g/水100g)以上、30(アルコール30g/水100g)以下であることが好ましく、5以上28以下であることがより好ましく、10以上26以下であることが更に好ましい。1未満であると本発明の効果を発現できないことがあり、30を超えると、工程(A)で用いた水と任意に混和するアルコールの作用によって、完全相溶することがある。
工程(B)において、添加するアルコールの水に対する溶解度は、常法に従って測定することが可能である。例えば、20℃において該アルコールをビュレットに入れ、純水100gが入ったコニカルビーカー中によく攪拌しながら滴下する。該アルコールが溶解できずに二相系を形成した時点で滴下を終了する。その際の重量増加量が、水100gに対する該アルコールの溶解度である。
工程(B)において、添加するアルコールの添加量は、工程(A)で用いた無機酸化物コロイド水分散液の水成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上1,000質量部以下、より好ましくは15質量部以上500質量部以下、更に好ましくは20質量部以上300質量部以下である。添加量が10質量部よりも少ないと、抽出効率が高くない場合がある。添加量が1,000質量部よりも多くなると、有機溶媒を大量に使用することによる産業上及び環境上の問題がある。
工程(C)
工程(C)は、下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及び/又はその(部分)加水分解縮合物を添加する工程である。
1 p2 q3 rSi(OR44-p-q-r (1)
(式中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基である。pは1〜3の整数、qは0,1又は2、rは0,1又は2であり、p+q+rは1〜3の整数である。)
上記式(1)中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下、特に1以上10以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数1以上50以下、特に5以上40以下、とりわけ10以上30以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロオクチルエチル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基、γ−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、γ−イソシアネートプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシ、エポキシ、メルカプト、アミノ、イソシアネート基置換炭化水素基;ポリジメチルシロキサン基;イソシアヌレート基などを例示することができる。また、複数のイソシアネート基置換炭化水素基のイソシアネート基同士が結合したイソシアヌレート基も例示することができる。これらの中でも、特にn−プロピル基、ビニル基、γ−アクリロイルオキシプロピル基、γ−メタクリロイルオキシプロピル基、トリイソシアヌレートが好ましい。
2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示できる。これらの中でも、R2、R3としてはメチル基、R4としてはメチル基、エチル基が好ましい。
pは1〜3の整数、好ましくは1、qは0,1又は2、好ましくは0、rは0,1又は2、好ましくは0であり、p+q+rは1〜3の整数、好ましくは1である。
一般式(1)で示される有機ケイ素化合物及びその(部分)加水分解縮合物の具体例としては、p=1、q、r=0の場合では、ハイドロジェントリメトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート基同士が結合したトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「KC−89S」,「X−40−9220」信越化学工業(株)製)、メチルトリメトキシシランとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分共加水分解縮合物(商品名「X−41−1056」信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
また、一般式(1)で示される有機ケイ素化合物として、p=1、q、r=0で、R1がポリジメチルシロキサン基である場合の具体例として、例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物を挙げることができる。一般式(4)中において、sは好ましくは1以上50以下の整数であり、より好ましくは5以上40以下の整数であり、更に好ましくは10以上30以下の整数である。sが50より大きくなると、シリコーンオイルとしての性質が強くなり、表面処理されたオルガノゾルの各種樹脂への溶解性が限定されることがある。一般式(4)において、平均構造がs=30の化合物は、商品名「X−24−9822」(信越化学工業(株)製)として入手することができる。
一般式(1)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、p=1、q=1、r=0の場合では、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
一般式(1)で示される有機ケイ素化合物の具体例としては、p=1、q=1、r=1の場合では、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−プロピルジメチルエトキシシラン、イソプロピルジメチルメトキシシラン、イソプロピルジエチルメトキシシラン、イソプロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−ペンチルジメチルメトキシシラン、n−ペンチルジメチルエトキシシラン、n−ヘキシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキシルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシランなどを挙げることができる。
工程(C)において添加するシランの添加量は、工程(A)における無機酸化物コロイド水分散液の固形分に対して、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上40質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以上30質量%以下である。添加量が50質量%よりも多いと、オルガノゾル中における有効成分である無機酸化物の割合が相対的に低下するため、産業効率上好ましくない。添加量が1質量%よりも少ないと、有機溶媒中での無機酸化物微粒子の分散安定性が確保しにくくなることがある。
工程(C)におけるシランの添加方法は、液中滴下、液外滴下、ポーション添加などを実施することができ、液中滴下であることが好ましい。
工程(C)におけるシラン添加時の液温は、好ましくは0℃以上45℃以下であり、より好ましくは5℃以上40℃以下であり、更に好ましくは10℃以上35℃以下である。液温が0℃より低くなると、無機酸化物コロイド水分散液が凍結による状態変化を経て変質する可能性がある。液温が45℃より高くなると、添加した有機ケイ素化合物が予期せぬ加水分解縮合反応を起こすことがある。
工程(D)
工程(D)は、マイクロ波を照射する工程である。マイクロ波照射は、その周波数が300MHz〜3THzの電磁波の中から適宜選択することができる。日本国内においては、電波法によって、通常使用可能なマイクロ波周波数帯域が、2.45GHz、5.8GHz、24GHz等に決められているが、中でも2.45GHzは、民生用にも多く使用されており、この周波数の発振用マグネトロンは設備価格上有利である。しかしながら、この基準は特定の国や地域の法律や経済状況に依存したものであり、技術的には周波数を限定するものではない。マイクロ波の出力は100W〜24kW、好ましくは100W〜20kWの定格を有する限り、市販のどのような装置を用いてもよい。例えば、μReactorEx(四国計測工業(株)製)、Advancer(バイオタージ(株)製)等を用いることができる。
マイクロ波を照射する時間は、好ましくは60秒以上3,600秒以内、より好ましくは120秒以上1,800秒以内、更に好ましくは180秒以上900秒以内である。時間が60秒より短いと工程(C)で添加した有機ケイ素化合物と無機酸化物微粒子の表面水酸基の反応が不十分となることがあり、3,600秒より長いと産業効率上好ましくない。反応時間はこれらの範囲に入るようにその他の反応条件(pH・濃度)を調整することにより実施することが可能である。
工程(D)では、更に攪拌しながらマイクロ波を照射することが好ましい。攪拌は、機械攪拌、磁気攪拌、震盪攪拌等を用いることができる。攪拌することによって、工程(B)で添加した疎水性アルコールと無機酸化物水性分散液が懸濁し、マイクロ波によって、工程(C)で添加した有機ケイ素化合物で表面処理された微粒子が効率的に疎水性アルコールへと移行することができる。攪拌は乱流攪拌であることが好ましい。
攪拌の程度は系のレイノルズ数を計算することによって見積もることができる。攪拌レイノルズ数は、好ましくは3,000以上1,000,000以下、より好ましくは5,000以上500,000以下、更に好ましくは10,000以上200,000以下である。3,000より小さいと、層流攪拌となり効率的な懸濁が困難な場合がある、1,000,000より大きいと、攪拌に要するエネルギーが不必要に大きくなることによる産業効率上の観点から好ましくない。
なお、上記レイノルズ数(Re)は、下記数式(1)から求めることができる。数式(1)においてρは密度(kg/m3)、nは回転数(rps)、dは攪拌子長(m)、μは粘度(Pa・s)をそれぞれ表す。
Re=ρ・n・d2/μ 数式(1)
本発明で扱うオルガノゾルは、ρが900〜2,000(kg/m3)、好ましくは1,000〜1,500(kg/m3)であり、μが0.001〜0.05(Pa・s)、好ましくは0.002〜0.01(Pa・s)である。例えば、攪拌子長dが5(cm)の磁気回転子を回転数nが700(rpm)で、ρが1,000(kg/m3)、μが0.002(Pa・s)のオルガノゾルを回転した場合のReは約15,000である。nとdを適宜選択することによって上記所望のReの範囲となるように調節することができる。
また、攪拌には、邪魔板を設置した反応器を用いることによる攪拌効率の向上方法を実施してもよい。
マイクロ波照射は、結果として反応液の温度上昇をもたらす。マイクロ波照射後の温度範囲は、好ましくは10℃以上150℃以下、より好ましくは60℃以上100℃以下、更に好ましくは80℃以上90℃以下である。マイクロ波照射後の温度が10℃より低いと反応に時間を要する場合がある。またマイクロ波照射後の温度が150℃より高いと、無機酸化物コロイド水分散液の溶媒が沸騰して反応系が扱いにくくなることがある。
工程(E)
工程(E)は、有機溶媒を添加する工程である。工程(E)で添加される有機溶媒は、炭素数5以上30以下の炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、及びアミド化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上である。
このような有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、エイコサン、ドコサン、トリイコサン、テトライコサン、ペンタイコサン、ヘキサイコサン、ヘプタイコサン、オクタイコサン、ノナイコサン、トリアコンタン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、及びこれらを含む混合物である石油エーテル、ケロシン、リグロイン、ヌジョール等の炭素数5以上30以下の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、シクロペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、β−チアジグリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の単価及び多価アルコール化合物;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル、ブチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル化合物;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、蓚酸ジメチル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジプロピル、蓚酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジブチル、エチレングリコールジフォルメート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールジブチレート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールジブチレート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル化合物;アセトン、ダイアセトンアルコール、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルノルマルブチルケトン、ジブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラアセチルエチレンジアミド、テトラアセチルヘキサメチレンテトラミド、N,N−ジメチルヘキサメチレンジアミンジアセテート等のアミド化合物を挙げることができる。
工程(E)で添加する有機溶媒の量は、工程(A)で用いた無機酸化物コロイド水分散液の水成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上1,000質量部以下、より好ましくは100質量部以上500質量部以下、更に好ましくは120質量部以上300質量部以下である。添加量が50質量部よりも少ないと、次工程(F)において水を十分に除去できない場合がある。添加量が1,000質量部よりも多くなると、有機溶媒を大量に使用することによる産業上及び環境上の問題があるため好ましくない。
この工程は、好ましくは0℃以上45℃以下、より好ましくは5℃以上40℃以下、更に好ましくは10℃以上30℃以下の温度で行う。温度が0℃より低いと、無機酸化物コロイド水分散液由来の水成分が凍結して変質する可能性がある。また、温度が45℃より高いと、VOC(揮発性有機化合物)が大気環境及び作業環境に放出され易くなり、安全上及び労働環境衛生上好ましくない。
工程(E)では、有機溶媒の添加によって表面処理された無機酸化物微粒子を均一に有機溶媒相に分散させることができる。工程(E)で溶媒を加えたことによって、系が均一相及び二相のいずれを形成してもよい。二相を形成した場合には有機層を分液によって分取することもできる。
工程(F)
工程(F)は、共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を除去する工程である。水の除去は、共沸蒸留で実施することがより好ましい。
工程(F)における共沸蒸留は、工程(A)で用いた無機酸化物コロイド水分散液に由来する水を除去することを目的としている。この水と共沸する有機溶媒は、工程(B)及び工程(E)のいずれで加えたもの由来であってもよい。共沸蒸留では、水と有機溶媒の蒸気圧の総和が系の圧力とつりあった際に、気液平衡曲線から予測される割合で水と有機溶媒の混合物が留去される現象である。
工程(F)は、200mmHg以上760mmHg以下の圧力で実施することが好ましく、300mmHg以上760mmHg以下の圧力で実施することがより好ましく、400mmHg以上760mmHg以下の圧力で実施することが更に好ましい。200mmHgより低い圧力では、混合物が突沸して制御しにくいことがあり、760mmHgより高い圧力では、水が蒸発しにくくなることがある。
工程(F)は、50℃以上250℃以下の温度で実施することが好ましく、60℃以上200℃以下の温度で実施することがより好ましく、80℃以上150℃以下の温度で実施することが更に好ましい。50℃より低い温度では、留去に時間を要することがあり、250℃より高い温度では、オルガノゾルが変質することがある。このような範囲で実施できるように、圧力を適宜調節することができる。
工程(F)で要する加熱は、熱媒との接触による加熱、誘導加熱、及びマイクロ波による加熱の各種方法を用いることができる。
工程(F)では、共沸蒸留に代えて、又は組み合わせて限外ろ過を実施することができる。限外ろ過では、無機及び/又は有機基材の表面に設けられた細孔を通過させることによって実施することができる。無機及び/又は有機基材は、このような細孔を有するものであれば材料は特定されないが、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは5nm以上30nm以下の平均細孔径を有しているものを使用する。細孔径が5nm未満であると、ろ過速度が遅くなる場合があり、30nmを超えると、オルガノゾルの分散質がろ液側に流出するおそれがある。
限外ろ過を実施する場合には、溶媒の種類によるろ過膜の透過係数の違いを考慮して、有機溶媒を添加しながら実施することが可能である。
水の除去は、工程後の水分濃度を測定することによって確認することができる。このような確認方法としては、カール・フィッシャー反応を利用した電量滴定が利用可能である。このような目的に利用できる好適な滴定装置として、例えば、平沼産業(株)製「AQV−2100」、三菱化学アナリテック(株)製「KF−200」等を挙げることができる。
工程(F)後の水分濃度は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。水分濃度が1質量%より大きいとオルガノゾルとして各種樹脂などと混合した際に白濁の原因となることがある。なお、本工程(F)実施後における水分濃度の下限値は特に定めないが0.1質量%程度である。工程(E)で用いた有機溶媒自体にも水が一定の割合で含まれていることがあり、工程(F)のみによって、水分濃度を0.1質量%を超えて低減させることは、エネルギー効率上好ましくない。工程(F)の実施のみによって水分濃度が所望の水準に達しない場合は、次工程(G)を実施することができる。
工程(G)
工程(G)は、前工程(F)で除去しきれなかったオルガノゾル中に存在する痕跡量の水を除去する工程である。本工程では、水分濃度が好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは10ppm以下まで低減する。本工程における水分濃度の下限値は特に定めないが、10ppm程度である。10ppmを超えての脱水は、特殊な用途を除き、通常は必要でない。
工程(G)の実施には、好ましくは3Å以上10Å以下の細孔直径を有するゼオライトを用いた物理吸着や、オルト有機酸エステル又は下記一般式(2)で示されるgem−ジアルコキシアルカンを用いた化学反応を伴う方法で実施することができる。
(R5O)(R6O)CR78 (2)
(式中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよく、またR7及びR8はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよい。)
ゼオライトとして用いることができる物質の例としては、K4Na4[Al8Si832]、Na[AlSi26]、Na2[Al2Si718]、(K,Ba,Sr)2Sr2Ca2(Ca,Na)4[Al18Si1872]、Li[AlSi26]O、Ca8Na3[Al19Si77192]、(Sr,Ba)2[Al4Si1232]、(Sr,Ba)2[Al4Si1232]、(Ca0.5,Na,K)4[Al4Si824]、CaMn[Be2Si513(OH)2]、(Na,K,Ca0.5,Sr0.5,Ba0.5,Mg0.56[Al6Si3072]、Ca[Al2Si310]、(Ca0.5,Na,K)4-5[Al4-5Si20-1948]、Ba[Al2Si310]、(Ca,Na2)[Al2Si412]、K2(Na,Ca0.58[Al10Si2672]、(Na,Ca0.5,Mg0.5,K)z[AlzSi12-z24]、(K,Na,Mg0.5,Ca0.56[Al6Si3072]、NaCa2.5[Al6Si1032]、Na4[Zn2Si718]、Ca[Al2Si28]、(Na2,Ca,K24[Al8Si1648]、Na5[Al5Si1132]、(Na,Ca)6-8[(Al,Si)2040]、Ca[Al2Si616]、Na3Mg3Ca5[Al19Si117272]、(Ba0.5,Ca0.5,K,Na)5[Al5Si1132]、(Ca0.5,Sr0.5,Ba0.5,Mg0.5,Na,K)9[Al9Si2772]、Li2Ca3[Be3Si312]F2、K6[Al4Si620]B(OH)4Cl、Ca4[Al8Si1648]、K4Na12[Be8Si2872]、(Pb7Ca2)[Al12Si36(O,OH)100]、(Mg2.52Ca1.5)[Al10Si2672]、K5Ca2[Al9Si2364]、Na16Ca16[Al48Si72240]、K9[Al9Si2364]、(Na2,Ca,K24[Al8Si4096]、Na3Ca4[Al11Si85192]、Na2[Al2Si310]、CaKMg[Al5Si1336]、(Ca5.5Li3.61.2Na0.2)Li8[Be242496]、Ca2[Al4Si415(OH)2]、(K,Ca0.5,Na,Ba0.510[Al10Si3284]、K9Na(Ca,Sr)[Al12Si2472]、(K,Na,Ca0.5,Ba0.5z[AlzSi16-z32]・、(Cs,Na)[AlSi26]、Ca2[Be(OH)2Al2Si413]、Ca[Al2Si310]、Ca[Al2Si718]、(Ca0.5,Na,K)9[Al9Si2772]、NaCa[Al3Si1740]、Ca2Na[Al5Si520]、Ca[Al2Si616]、Ca4(K2,Ca,Sr,Ba)3Cu3(OH)8[Al12Si1248]、Ca[Al2Si412]、Ca[Be3(PO42(OH)2]、KzCa(1.5-0.5z)[Al3Si312]、Ca[Al2Si616]等の化学組成を有するものを挙げることができる。
本工程に用いるゼオライトは、好ましくは3Å以上10Å以下、より好ましくは4Å以上8Å以下、更に好ましくは4Å以上6Å以下の細孔直径を有するものを使用することができる。細孔直径が3Åより小さいと水を十分に吸着できないことがある。細孔直径が10Åより大きいと水の吸着に時間を要することがある。
このような脱水用ゼオライトとしては、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ6A、モレキュラーシーブ7A、モレキュラーシーブ8A、モレキュラーシーブ9A、モレキュラーシーブ10A、モレキュラーシーブ3X、モレキュラーシーブ4X、モレキュラーシーブ5X、モレキュラーシーブ6X、モレキュラーシーブ7X、モレキュラーシーブ8X、モレキュラーシーブ9X、モレキュラーシーブ10X等という名称で市販されているものの中から適宜組み合わせて用いることができ、例えば、細孔直径が約4ÅであるLTA型ゼオライトとして、関東化学(株)製「カタログ番号25958−08」を用いることができる。
ゼオライトは、工程(F)で得られたオルガノゾルに対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上15質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下用いる。使用量が1質量%より少ないと、脱水効果が十分に得られないことがある。使用量が20質量%より多くても、脱水の程度が向上するわけではないことが多いため、これ以上使用することは実際上好ましくない。
工程(G)では、前述したように、オルト有機酸エステル、又は下記一般式(2)で示されるgem−ジアルコキシアルカンを用いた化学反応を伴う方法でも実施することができる。
(R5O)(R6O)CR78 (2)
(式中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよく、またR7及びR8はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよい。)
上記式(2)中、R5〜R8はそれぞれ炭素数1以上10以下、特に1以上6以下の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基などを例示することができる。また、R5とR6、R7とR8とは、互いに結合して環を形成してもよく、その場合には炭素数4〜8の2価炭化水素基を示す。
オルト有機酸エステル及びgem−ジアルコキシアルカンは、いずれもアセタール骨格を分子中に有している。オルト有機酸エステルは有機酸エステルのアセタールであり、gem−ジアルコキシアルカンはケトンのアセタールである。アセタールは、水と反応してアルコールとカルボニル化合物に分解する性質があるため、脱水の目的で用いることができる。反応によって、水が消費されて有機溶媒を添加したことと同じ効果が得られる。
オルト有機酸エステルの具体例としては、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト蟻酸プロピル、オルト蟻酸ブチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸プロピル、オルト酢酸ブチル、オルトプロピオン酸メチル、オルトプロピオン酸エチル、オルトプロピオン酸プロピル、オルトプロピオン酸ブチル、オルト酪酸メチル、オルト酪酸エチル、オルト酪酸プロピル、オルト酪酸ブチル等を挙げることができる。
gem−ジアルコキシアルカンの具体例としては、アセトンジメチルアセタール、アセトンジエチルアセタール、アセトンジプロピルアセタール、アセトンジブチルアセタール、アセトンエチレングリコールアセタール、アセトンプロピレングリコールアセタール、メチルエチルケトンジメチルアセタール、メチルエチルケトンジエチルアセタール、メチルエチルケトンジプロピルアセタール、メチルエチルケトンジブチルアセタール、メチルエチルケトンエチレングリコールアセタール、メチルエチルケトンプロピレングリコールアセタール、メチルイソブチルケトンジメチルアセタール、メチルイソブチルケトンジエチルアセタール、メチルイソブチルケトンジプロピルアセタール、メチルイソブチルケトンジブチルアセタール、メチルイソブチルケトンエチレングリコールアセタール、メチルイソブチルケトンプロピレングリコールアセタール、シクロペンタノンジメチルアセタール、シクロペンタノンジエチルアセタール、シクロペンタノンジプロピルアセタール、シクロペンタノンジブチルアセタール、シクロペンタノンエチレングリコールアセタール、シクロペンタノンプロピレングリコールアセタール、シクロヘキサノンジメチルアセタール、シクロヘキサノンジエチルアセタール、シクロヘキサノンジプロピルアセタール、シクロヘキサノンジブチルアセタール、シクロヘキサノンエチレングリコールアセタール、シクロヘキサノンプロピレングリコールアセタール等を挙げることができる。
これらのアセタール骨格を有する化合物(オルト有機酸エステル又は一般式(2)で示されるgem−ジアルコキシアルカン)の選択は、水と反応した際に生成する分子の種類で好ましいものがある場合には、それを見越して使用することができる。例えば、オルガノゾル中から水を除いて、シクロヘキサノンとブタノールで置換する場合には、シクロヘキサノンジブチルアセタールを用いることによって目的を達成することができる。
アセタール骨格を有する化合物(オルト有機酸エステル又は一般式(2)で示されるgem−ジアルコキシアルカン)は、工程(F)で得られたオルガノゾルに対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上15質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下用いる。使用量が0.5質量%より少ないと、脱水効果が十分に得られないことがある。使用量が20質量%より多くても、脱水の程度が向上するわけではないことが多く、オルガノゾルとして樹脂等と混合した際に、エッチング等の予期せぬ効果をもたらすことがあるため、これ以上使用することは実際上好ましくない。
オルガノゾル
本発明によって製造されたオルガノゾルは、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下の分散質を含有する。分散質の含有量が1質量%未満である場合は、有効濃度として樹脂に混合した際に不十分であることがある。分散質の含有量が30質量%を超える場合は、オルガノゾルの保存安定性が不十分であることがある。
本発明によって製造されたオルガノゾルは、溶媒置換後に粉砕や分級等の機械的単位操作を経ていないにもかかわらず、良好な分散状態を維持していることを特徴としている。このような分散状態の観察は、レーザー光を用いた動的光散乱法による粒子径測定を実施することによって調べることができる。無機酸化物微粒子が有機溶媒中において、動的光散乱法による体積平均での50%累計平均径の値として、好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜150nm、更に好ましくは1〜100nmで分散している。動的光散乱法による体積平均での50%累計平均径が200nmより大きい場合は、オルガノゾルが白濁し易くなることがある。動的光散乱法による体積平均での50%累計平均径が1nmより小さい場合は、オルガノゾルとしての扱いが困難となることがある。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
オルガノシリカゾル(OS−1)の合成
工程(A)
磁気攪拌子を備えた1,000mLフラスコに、市販のコロイダルシリカ水分散液(日産化学工業(株)製、商品名「スノーテックスO」)200gを入れた。なお、このコロイダルシリカ水分散液「スノーテックスO」の動的光散乱法による体積平均50%累計粒子径は20nm、濃度は20質量%であることを確認した。
工程(B)
先の工程(A)でコロイダルシリカ水分散液を入れたフラスコに、イソブチルアルコール(デルタ化成(株)製)200gを入れた。コロイダルシリカとイソブチルアルコールは完全に相溶せず、2相を成した。なお、イソブチルアルコールの20℃における水に対する溶解度は、10(g/100g水)であった。
工程(C)
先の工程(A),(B)を経たフラスコに、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名「KBM−5103」)20gを入れた。該シランは主として有機層(イソブチルアルコール層)に溶解する様子が観察された。
工程(D)
先の工程(A)〜(C)を経たフラスコをマイクロ波照射装置(四国計測工業(株)製、製品名「μReactorEx」)のキャビティー内に入れた。磁気攪拌子を700rpmで回転させながら、マイクロ波を5分間照射した。マイクロ波の照射は液温が最高で82℃に達するように、該装置に内蔵のプログラムで制御した。マイクロ波照射後、液温が40℃になるまで室温で静置した。この際に、コロイダルシリカ水分散液の分散質成分が有機層(イソブチルアルコール層)に移行する様子が観測された。
工程(E)
先の工程(A)〜(D)を経たフラスコに、磁気攪拌子で攪拌(700rpm)しながら、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM、日本乳化剤(株)製)300gを添加した。有機溶媒添加後、反応液は均一で透明な状態を呈した。
工程(F)
先の工程(A)〜(E)を経たフラスコの内容物を蒸留用フラスコに移し、溶媒を760mmHgの圧力下において加熱留去した。フラスコ内温が約85℃の時点で留去が起こった。留出量が500gに達するまで留去を続けた。留去終了時の内温は約120℃であった。フラスコ内容物を室温まで冷却し、水分濃度の分析(カールフィッシャー法)を行ったところ0.15質量%であった。合成されたオルガノシリカゾル(OS−1)の動的光散乱法による体積平均50%累計粒子径を測定した。測定結果は図1の通りであった。また、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製、装置名「H−9500」)を用いてOS−1の粒子の観察(50k)を行った。結果を図2に示した。
工程(G)
工程(A)〜(F)で製造したオルガノシリカゾル(OS−1)の一部(50g)をモレキュラーシーブ4A(関東化学(株)製、「25958−08」)5gで処理したところ、水分濃度が119質量ppmまで低下した。この際に凝集は見られなかったことから、工程(F)で除去しきれなかった水分の低減にモレキュラーシーブ処理が有用であることが明らかとなった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例2]
実施例1の工程(G)に代えて、下記工程(G’)を実施した。
工程(G’)
オルガノシリカゾル(OS−1)50gをオルト蟻酸エチル(日宝化学(株)製)2.5gで処理したところ、水分濃度が88.3ppmまで低下した。この際に凝集は見られなかったことから、工程(F)で除去しきれなかった水分の低減にオルト蟻酸エチル処理が有用であることが明らかとなった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例3]
実施例1の工程(G)に代えて、下記工程(G”)を実施した。また、工程(F)においてPGMを400gまで共沸留去した後に、無機セラミック限外ろ過膜を用いてPGMを100gろ過した。
工程(G”)
オルガノシリカゾル(OS−1)50gをアセトンジメチルアセタール(関東化学(株)製)2.5gで処理したところ、水分濃度が31.3ppmまで低下した。この際に凝集は見られなかったことから、工程(F)で除去しきれなかった水分の低減にアセトンジメチルアセタール処理が有用であることが明らかとなった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例4]
オルガノチタニアゾル(OT−1)の合成
工程(A)
無機酸化物コロイド水分散液として、酸化チタン−酸化スズ複合酸化物を核とし、酸化ケイ素を殻とするコアシェル微粒子を分散質とし、水を分散媒とするものを調製した。先ず、核となる酸化チタン−酸化スズ複合酸化物微粒子を含有する分散液を製造し、次いで、テトラエトキシシランを加水分解縮合することで、コアシェル微粒子を含有するコロイド水分散液とした。
36質量%の塩化チタン(IV)水溶液(石原産業(株)製、製品名:TC−36)66.0gに塩化スズ(IV)五水和物(和光純薬工業(株)製)1.8gを添加し、よく混合した後、これをイオン交換水1,000gで希釈した。スズ成分の固溶量は2mol%であった。この金属塩水溶液混合物に5質量%のアンモニア水(和光純薬工業(株)製)300gを徐々に添加して中和、加水分解することによりスズを含有する水酸化チタンの沈殿物を得た。このときの水酸化チタンスラリーのpHは8であった。得られた水酸化チタンの沈殿物を、イオン交換水の添加とデカンテーションを繰り返して脱イオン処理した。この脱イオン処理後のスズを含有する水酸化チタン沈殿物に30質量%過酸化水素水(和光純薬工業(株)製)100gを徐々に添加し、その後60℃で3時間攪拌して十分に反応させた。その後、純水を添加して濃度調整を行うことにより、半透明のスズ含有ペルオキソチタン酸溶液(固形分濃度1質量%)を得た。容積500mLのオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、製品名:TEM−D500)に、上記のように合成したペルオキソチタン酸溶液350mLを仕込み、これを200℃、1.5MPaの条件下、240分間水熱処理した。その後、オートクレーブ内の反応混合物を、サンプリング管を経由して、25℃の水浴中に保持した容器に排出し、急速に冷却することで反応を停止させ、酸化チタン分散液(i)を得た。なお、この酸化チタン分散液(i)中の酸化チタン−酸化スズ複合酸化物微粒子の動的光散乱法による体積平均50%累計粒子径は9nmであることを確認した。
磁気回転子と温度計を備えたセパラブルフラスコに、酸化チタン分散液(i)1,000質量部、エタノール100質量部、アンモニア2.0質量部を室温(25℃)で加えて磁気攪拌した。このセパラブルフラスコを氷浴に浸漬し、内容物温度が5℃になるまで冷却した。ここに、テトラエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名「KBE−04」)18質量部を加えた後に、セパラブルフラスコをμReactorEx(四国計測工業(株)製)内に設置して、周波数2.45GHz、出力1,000Wのマイクロ波を1分間にわたって照射しながら磁気攪拌した。その間、温度計を観測して内容物温度が85℃に達するのを確認した。得られた混合物を定性ろ紙(Advantec 2B)でろ過して希薄コロイド溶液を得た。この希薄コロイド溶液を限外ろ過によって10質量%まで濃縮し、無機酸化物コロイド水分散液(WT−1)を得た。なお、この無機酸化物コロイド水分散液(WT−1)中のコアシェル微粒子の動的光散乱法による体積平均50%累計粒子径は12nmであることを確認した。WT−1(200g)を磁気攪拌子を備えた1,000mLのセパラブルフラスコに入れた。
工程(B)
先の工程(A)でWT−1を入れたフラスコに、イソブチルアルコール(デルタ化成(株)製)200gを入れた。コロイダルシリカとイソブチルアルコールは完全に相溶せず、2相を成した。なお、イソブチルアルコールの20℃における水に対する溶解度は、10(g/100g水)であった。
工程(C)
先の工程(A),(B)を経たフラスコに、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名「KBM−5103」)20gを入れた。該シランは主として有機層(イソブチルアルコール層)に溶解する様子が観察された。
工程(D)
先の工程(A)〜(C)を経たフラスコをマイクロ波照射装置(四国計測工業(株)製、製品名「μReactorEx」)のキャビティー内に入れた。磁気攪拌子を700rpmで回転させながら、マイクロ波を5分間照射した。マイクロ波の照射は液温が最高で82℃に達するように、該装置に内蔵のプログラムで制御した。マイクロ波照射後、液温が40℃になるまで室温で静置した。この際に、無機酸化物コロイド水分散液は懸濁状態であった。
工程(E)
先の工程(A)〜(D)を経たフラスコに、磁気攪拌子で攪拌(700rpm)しながら、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤(株)製)300gを添加した。有機溶媒添加後、反応液は均一で透明な状態を呈した。
工程(F)
先の工程(A)〜(E)を経たフラスコの内容物を蒸留用フラスコに移し、溶媒を760mmHgの圧力下において加熱留去した。フラスコ内温が約85℃の時点で留去が起こった。留出量が500gに達するまで留去を続けた。留去終了時の内温は約120℃であった。フラスコ内容物を室温まで冷却し、水分濃度の分析(カールフィッシャー法)を行ったところ0.20質量%であった。合成されたオルガノチタニアゾル(OT−1)の動的光散乱法による体積平均50%累計粒子径を測定した。測定結果は図3の通りであった。また、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製、装置名「H−9500」)を用いてOT−1の粒子の観察(50k)を行った。結果を図4に示した。
工程(G)
工程(A)〜(F)で製造したオルガノチタニアゾル(OT−1)の一部(50g)をモレキュラーシーブ4A(関東化学(株)製、「25958−08」)5gで処理したところ、水分濃度が250質量ppmまで低下した。この際に凝集は見られなかったことから、工程(F)で除去しきれなかった水分の低減にモレキュラーシーブ処理が有用であることが明らかとなった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例5]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えて1−ブタノール200gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。1−ブタノールの20℃における水に対する溶解度は7.7(g/100g水)であった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例6]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えて2−ブタノール200gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。2−ブタノールの20℃における水に対する溶解度は26(g/100g水)であった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例7]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えてシクロペンタノール200gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。シクロペンタノールの20℃における水に対する溶解度は1.2(g/100g水)であった。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例8]
実施例4で行った工程(C)において、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20gに代えてn−プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM−3033」)20gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例9]
実施例4で行った工程(C)において、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20gに代えてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、製品名「KBM−1003」)20gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。
表1に結果と工程をまとめて示した。
[実施例10]
実施例4で行った工程(E)において、プロピレングリコールモノメチルエーテル300gに代えて、ダイアセトンアルコール300gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[実施例11]
実施例4で行った工程(E)において、プロピレングリコールモノメチルエーテル300gに代えて、混合溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル:リグロイン=9:1)300gを用いて実施した他は実施例4と同様の操作を行った。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例1]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えてメタノール200gを使用して実施したところ、分散質の凝集が見られた。メタノールの20℃における水に対する溶解度は∞(任意混合)であった。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例2]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えてエタノール200gを使用して実施したところ、分散質の凝集が見られた。エタノールの20℃における水に対する溶解度は∞(任意混合)であった。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例3]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えて2−プロパノール200gを使用して実施したところ、分散質の凝集が見られた。2−プロパノールの20℃における水に対する溶解度は∞(任意混合)であった。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例4]
実施例4で行った工程(B)において、イソブチルアルコール200gに代えて1−デカノール200gを使用して実施したところ、分散質の凝集が見られた。1−デカノールの20℃における水に対する溶解度は0.1(g/100g水)であった。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例5]
実施例4で行った工程(D)において、マイクロ波加熱に代えてオイルバスで内温が82℃になるように加熱した。加熱に要した時間は1時間であった。この際に分散質の凝集が見られた。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例6]
実施例4で行った工程(G)において、乾燥剤としてモレキュラーシーブ4A5gに代えて硫酸ナトリウムを同量用いた。この際に分散質の凝集が見られた。
表2に結果と工程をまとめて示した。
[比較例7]
実施例4で行った工程(G)において、乾燥剤としてモレキュラーシーブ4A5gに代えて硫酸マグネシウムを同量用いた。この際に分散質の凝集が見られた。
表2に結果と工程をまとめて示した。
表1,2における略号の意味は次の通りである。
工程(A)
STO:コロイダルシリカ水分散液、日産化学工業(株)製、製品名「スノーテックスO」
TiO2@SiO2:実施例4−工程(A)で製造方法を示したシリカ被覆酸化チタン水分散液
工程(B)
IBA:イソブチルアルコール
1−BuOH:1−ブタノール
2−BuOH:2−ブタノール
CypOH:シクロペンタノール
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
IPA:イソプロピルアルコール
1−DecOH:1−デカノール
工程(C)
KBM−5103:3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−3033:n−プロピルトリメトキシシラン
KBM−1003:ビニルトリメトキシシラン
工程(D)
MW:マイクロ波加熱
OB:オイルバス加熱
工程(E)
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
DAA:ダイアセトンアルコール
LG:リグロイン
工程(F)
AD:共沸留去(zeotropic istillation)
UF:限外ろ過(ltra iltration)
工程(G)
MS4A:モレキュラーシーブ4A
OFE:オルト蟻酸エチル
DMP:アセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)
Na2SO4:硫酸ナトリウム
MgSO4:硫酸マグネシウム
結果
「○」:凝集が発生せずにオルガノゾルが得られたものであって動的光散乱法によって測定した体積平均の50%累計粒子径が200nm以下であったもの
「×」:凝集が発生したものであって動的光散乱法によって測定した体積平均の50%累計粒子径が200nmより大きかったもの
実施例及び比較例の説明
無機酸化物コロイド水分散液として、実施例1〜3はコロイダルシリカゾルを、実施例4〜11では水分散チタニアゾルを用いて実施している。このように、本発明は種々の無機酸化物コロイド水分散液に適用可能であることが示唆された。
工程(B)では、水に対する溶解度が約1〜30のアルコールを用いて実施した場合には良好な結果を示すが、水と任意に混合するアルコール(比較例1〜3)や溶解度の小さいもの(比較例4)を用いた場合には、良好な結果を与えなかった。このような特定の溶解度のアルコールを表面処理工程に用いることの有用性はこれまでに知られていなかった。
工程(C)では、多様な炭素官能基を有するシランが利用できることが明らかとなった。
工程(D)では、マイクロ波の加熱が重要であることが実施例1〜11から明らかとなった。なお、オイルバスの加熱は好適に用いることができなかった(比較例5)。このようなオルガノゾル製造の表面処理工程におけるマイクロ波の有用性はこれまでに知られていなかった。
工程(F)では共沸留去及び限外ろ過を利用できることが分かった。
工程(G)では、モレキュラーシーブ及びアセタール系化合物を好適に用いることができるのに対し(実施例1〜11)、無水塩(比較例6,7)では凝集が発生した。このようにオルガノゾルに適用可能な脱水剤の選択はこれまでに知られていなかった。
図1はオルガノシリカゾル(OS−1)の粒子径分布の測定結果である。図1から、本発明の手法では分散媒が有機溶媒に完全に置換されても凝集が発生していないことが明らかとなった。
図2はOS−1の透過型電子顕微鏡画像である。図2から、分散質のシリカ成分はモルフォロジーを変化させていないことが明らかとなり、本発明の手法は無機酸化物粒子の核自体を化学変化させることのない温和な手法であることが明らかとなった。
図3はオルガノチタニアゾル(OT−1)の粒子径分布の測定結果である。図3から、本発明の手法では分散媒が有機溶媒に完全に置換されても凝集が発生していないことが明らかとなった。
図4はOT−1の透過型電子顕微鏡画像である。図4から、分散質のチタニア成分はモルフォロジーを変化させていないことが明らかとなり、本発明の手法は無機酸化物粒子の核自体を化学変化させることのない温和な手法であることが明らかとなった。
図1〜4の結果は、「完全な溶媒置換」と「温和で凝集が発生していない」という二つの課題を両立して解決したことを示している。これら実施例及び比較例は、本発明の有用性を示すための典型的な例であり、本発明の範囲を制限するものではない。
本発明によって製造されたオルガノゾルは、無機酸化物微粒子を用いる分野に応用が可能である。例えば、塗料組成物、発光素子封止材、熱伝導性組成物などへの応用が考えられる。これらの分野では、無機酸化物微粒子を高度に分散させるために様々な機械的手法が用いられていたが、バインダーとの相溶性に優れたオルガノゾルを使用すれば組成物化の手法簡便化に貢献することができる。特に、高透明性、高耐候性、高熱伝導性などが要求される分野にも好適に用いることができる。また本発明では、入手容易又は合成容易な水分散ゾルからオルガノゾルを製造することができるため、組成物化の際の材料選択の幅を大きく広げることができ、当該分野の産業発展に資すると考えられる。

Claims (11)

  1. (A)無機酸化物コロイド水分散液を準備する工程、
    (B)水と完全には相溶せず2相系を形成することを特徴とするアルコールを添加する工程、
    (C)下記一般式(1)
    1 p2 q3 rSi(OR44-p-q-r (1)
    (式中、R1は水素原子、非置換もしくは置換の炭素数1以上20以下の1価炭化水素基、ケイ素原子数50以下のポリジメチルシロキサン基、又はイソシアヌレート基であり、R2、R3及びR4はそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基である。pは1〜3の整数、qは0,1又は2、rは0,1又は2であり、p+q+rは1〜3の整数である。)
    で示される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物もしくは加水分解縮合物を添加する工程、
    (D)マイクロ波を照射する工程、
    (E)有機溶媒を添加する工程、及び
    (F)共沸蒸留及び/又は限外ろ過によって水を留去する工程
    からなる水性コロイド溶液の溶媒置換を経るオルガノゾルの製造方法。
  2. さらに、(G)水を1,000ppm以下まで除去する工程を備える請求項1に記載のオルガノゾルの製造方法。
  3. 工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、酸化チタン微粒子を核とし、該核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオルガノゾルの製造方法。
  4. 工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、スズ及び/又はマンガンを固溶した正方晶系酸化チタン固溶体微粒子を核とし、核の外側に酸化ケイ素の殻を有するコアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体水分散液であって、動的光散乱法で測定した該核微粒子の体積平均50%累計粒子径が30nm以下で、該コアシェル型微粒子の体積平均50%累計粒子径が50nm以下であり、前記スズ成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Sn)で10〜1,000、前記マンガン成分の固溶量が、チタンとのモル比(Ti/Mn)で10〜1,000である、コアシェル型正方晶系酸化チタン固溶体微粒子を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のオルガノゾルの製造方法。
  5. 工程(A)において準備される無機酸化物コロイド水分散液の分散質が、アルミナ及び/又はシリカであって、動的光散乱法で測定した該分散質の体積平均50%累計粒子径が10nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオルガノゾルの製造方法。
  6. 工程(B)において添加するアルコールの水に対する20℃における溶解度が1(アルコール1g/水100g)以上、30(アルコール30g/水100g)以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
  7. 工程(B)において添加するアルコールが、炭素数4以上8以下の芳香族基を含んでいてもよい直鎖型、分岐鎖型又は環型の1価のアルコール、及び炭素数3以上8以下のフッ素原子で全置換又は部分置換された1価のアルコールからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
  8. 工程(D)において、マイクロ波の積算照射時間が60秒以上3,600秒以内であり、照射後の系の温度が10℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
  9. 工程(E)において添加される溶媒が、炭素数5以上30以下の炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、及びアミド化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
  10. 工程(G)において、水を1,000ppm以下まで除去する方法が、3Å以上10Å以下の細孔直径を有するゼオライトを用いた物理吸着であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
  11. 工程(G)において、水を1,000ppm以下まで除去する方法が、オルト有機酸エステル、又は下記一般式(2)
    (R5O)(R6O)CR78 (2)
    (式中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよく、またR7及びR8はそれぞれ炭素数1以上10以下の1価炭化水素基であって、互いに結合して環を形成してもよい。)
    で示されるgem−ジアルコキシアルカンを用いた化学反応を伴う方法であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のオルガノゾルの製造方法。
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