なお、本発明においては、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、特記しない限り、「生理食塩水」とは0.9重量%塩化ナトリウム水溶液を意味し、「含水率」とは後述する実施例に記載の180℃/3時間の減量で規定される吸水性樹脂の含水率を意味する。
以下、本発明に係る吸水性樹脂の表面処理方法について説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施しうる。
本発明は、吸水性樹脂を、ラジカル重合開始剤および水の存在下で表面架橋する表面架橋工程を含む吸水性樹脂の表面処理方法であって、当該表面架橋工程においては表面架橋の反応系に紫外線の波長以下の波長を有する活性エネルギー線を照射せず、かつ、前記表面架橋工程を、当該工程の前後で前記吸水性樹脂の含水率が増加するように行うものである。
(1)吸水性樹脂(ベースポリマー)
吸水性樹脂(ベースポリマー)とは、含水ゲル状重合体に架橋構造が導入されてなる水膨潤性水不溶性の重合体である。本発明において、「水膨潤性」とは、生理食塩水での遠心分離機保持容量(Centrifuge Retention Capacity:CRC)が2g/g以上であることを意味し、好ましくは5〜100g/g、より好ましくは10〜60g/gである。なお、CRCの数値としては、後述する実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。また、「水不溶性」とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(以下、「溶出可溶分」とも称する)の含有量が0〜50重量%であることを意味し、好ましくは0〜25重量%であり、より好ましくは0〜15重量%であり、さらに好ましくは0〜10重量%である。なお、溶出可溶分の数値としては、以下の方法により測定された値を採用するものとする。
[溶出可溶分の測定方法]
250mL容量の蓋付きプラスチック容器(直径6cm×高さ9cm)に、生理食塩水184.3gを量り取り、その中に吸水性樹脂1.00gを加え、16時間、直径8mm、長さ25mmの磁気撹拌子を用いて500rpmの回転数で撹拌することにより、樹脂中の溶出可溶分を抽出する。この抽出液を濾紙(アドバンテック東洋株式会社製、品名:JIS P 3801、No.2、厚さ:0.26mm、保留粒子径:5μm)1枚を用いて濾過し、得られた濾液の50.0gを量り取り、測定溶液とする。
はじめに生理食塩水のみを、まず、0.1N水酸化ナトリウム水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、1N塩酸でpH2.7まで滴定して空滴定量(それぞれ、[bNaOH]、[bHCl]と称する)を得る。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより、滴定量(それぞれ、[NaOH]、[HCl]と称する)を得る。
例えば、既知量のアクリル酸およびそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、当該単量体の平均分子量および上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の溶出可溶分を下記数式に従って算出する。未知量の場合は滴定により下記数式に従って得られる中和率を用いて単量体の平均分子量を算出する。
(2)吸水性樹脂(ベースポリマー)の製造方法
(2−1)単量体成分を重合する重合工程
本発明において、吸水性樹脂は、例えば、単量体成分を重合する重合工程により得られる。重合の方法としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、バルク重合、沈澱重合などが採用されうる。性能面や重合の制御の容易さなどを考慮すると、単量体成分を水溶液として、水溶液重合または逆相懸濁重合を行うことが好ましく、特に水溶液重合を行うことが好ましい。
単量体成分の水溶液の濃度は、単量体として好ましくは20重量%以上飽和濃度以下であり、より好ましくは30〜70重量%であり、さらに好ましくは35〜60重量%である。20重量%を下回ると、得られた重合体(ヒドロゲル)中の水分量が多いため、乾燥のための熱量や時間を必要とし、不利である。
かかる重合方法は、例えば、米国特許第4625001号明細書、米国特許第4769427号明細書、米国特許第4873299号明細書、米国特許第4093776号明細書、米国特許第4367323号明細書、米国特許第4446261号明細書、米国特許第4683274号明細書、米国特許第4690996号明細書、米国特許第4721647号明細書、米国特許第4738867号明細書、米国特許第4748076号明細書、米国特許第6906159号明細書などに記載されている。
吸水性樹脂を構成する単量体の種類について特に制限はなく、例えばエチレン性不飽和単量体などの不飽和単量体が用いられうる。エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されず、好ましくは末端に不飽和二重結合を有する単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。好ましくは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、(メタ)アクリルアミドが用いられ、特に好ましくはアクリル酸および/またはその塩が用いられる。また、アクリル酸(塩)の割合は全単量体の50〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。
単量体としてアクリル酸塩を用いる場合には、吸水性樹脂の吸水性能の観点からアクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれるアクリル酸の1価塩が好ましい。より好ましくはアクリル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましくは、アクリル酸のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれるアクリル酸塩である。
吸水性樹脂を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体以外の他の単量体成分を用いることができる。例えば、炭素数8〜30の芳香族エチレン性不飽和単量体、炭素数2〜20の脂肪族エチレン性不飽和単量体、炭素数5〜15の脂環式エチレン性不飽和単量体、アルキル基の炭素数4〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性単量体を例示することができる。これら疎水性単量体の割合は、一般に、上記エチレン性不飽和単量体100重量部に対し、0〜20重量部の範囲である。疎水性単量体が20重量部を超えると、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下する場合がある。
以上、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を用いる場合を例に挙げて本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲はかような形態のみには制限されない。例えば、本発明の吸水性樹脂は、ポリアミノ酸の架橋体、多糖類の架橋体、ポリエステルの架橋体、ポリアセタールの架橋体、およびこれらの複合体などであってもよい。
重合工程では、まず、単量体成分を、架橋剤の存在下で重合させることによって、含水ゲル状架橋重合体を得る。含水ゲル状架橋重合体は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、1分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する架橋剤を共重合または反応させたものであることが好ましい。このように内部架橋を施すことによって、吸水性樹脂は水不溶性となる。
重合工程において用いられる架橋剤(内部架橋剤)の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)グリセリンアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸、ビス(N−ビニルカルボン酸アミド)、(エチレンオキサイド変性)テトラアリロキシエタン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの内部架橋剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。特に、得られる吸水性樹脂の吸水特性などを考慮すると、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を内部架橋剤として用いることが好ましい。具体的には、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)グリセリンアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エチレンオキサイド変性)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートがより好ましい。工程における内部架橋剤の使用量は、単量体成分の全量に対して好ましくは0.0001〜1モル%であり、より好ましくは0.001〜0.5モル%であり、さらに好ましくは0.005〜0.2モル%である。内部架橋剤の使用量が0.0001モル%以上であれば内部架橋が導入され、内部架橋剤の使用量が1モル%以下であれば、得られる吸水性樹脂のゲル強度の過度の上昇とそれに伴う吸水特性の低下が防止されうる。
重合に際しては、澱粉−セルロース、澱粉−セルロースの誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子や、次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤を反応系に添加してもよい。重合工程における親水性高分子の使用量は、単量体成分の全量に対して好ましくは0〜50重量%であり、より好ましくは0〜30重量%であり、さらに好ましくは0〜10重量%である。また、重合工程における連鎖移動剤の使用量は、単量体成分の全量に対して好ましくは0.001〜1モル%であり、より好ましくは0.005〜0.5モル%であり、さらに好ましくは0.01〜0.3モル%である。
上記重合反応における重合開始時には、例えば、重合開始剤、あるいは放射線や電子線、紫外線、電磁線などの活性エネルギー線などが用いられうる。重合開始剤としては、特に限定されないが、熱重合開始剤や光重合開始剤が使用されうる。
熱重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、重合開始剤として過硫酸塩などの過酸化物を用いる場合には、たとえば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、L−アスコルビン酸などの還元剤を併用して酸化還元(レドックス)重合を行ってもよい。
重合工程における重合開始剤の使用量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは0.001〜2モル%であり、より好ましくは0.01〜0.5モル%である。
重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、好ましくは15〜130℃であり、より好ましくは20〜120℃である。重合開始時の温度が上記の範囲を外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体が増加したり、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下したりする虞がある。また、重合時間は通常0.1〜60分間である。
なお、不飽和単量体成分としては、アクリル酸等の部分中和物を重合してもよいし、アクリル酸等の酸基含有単量体を重合した後に水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物により重合物を中和してもよい。ここで、本発明で使用される吸水性樹脂は、酸基を含有しかつ所定の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有するものであることが好ましい。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などが挙げられる。この際、得られる吸水性樹脂の中和率は、好ましくは25〜100モル%であり、より好ましくは50〜90モル%であり、さらに好ましくは50〜75モル%であり、特に好ましくは60〜70モル%である。
以上のような重合工程によって、含水ゲル状架橋重合体が得られる。かかる含水ゲル状架橋重合体の固形分(含水率)は、単量体水溶液の濃度や重合時の水分蒸発などに基づき適宜決定される。
(2−2)乾燥・粉砕・分級工程
本発明において、吸水性樹脂は、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥工程によって乾燥して得られる。また、乾燥工程後に粉砕工程や分級工程等をさらに行って粒子状にしたものも、吸水性樹脂の概念に包含される。
乾燥工程は、重合工程によって得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程である。なお、本発明において「乾燥」とは、固形分を10%以上上昇させるか、含水率を25%以下とすることを意味する。
乾燥手段について特に制限はなく、例えば、バンド乾燥機、攪拌乾燥機、流動層乾燥機などの1種または2種以上を用いるような従来公知の乾燥手段が好適に用いられうる。乾燥後の吸水性樹脂の含水率(180℃、3時間の減量で規定)は、好ましくは0〜25重量%であり、より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは2〜10重量%である。
乾燥工程における乾燥温度や乾燥時間は特に限定されず、通常は70〜250℃、好ましくは150〜230℃、より好ましくは160〜180℃で乾燥すればよい。なお、「乾燥温度」とは、乾燥手段における熱媒の温度であり、マイクロ波を用いて乾燥する場合などのように熱媒温度が規定できない場合には、乾燥対象である吸水性樹脂の温度で規定する。乾燥温度が70℃以上であれば、乾燥時間が必要以上に長くなることが防止される。また、乾燥温度が250℃以下であれば、乾燥時の吸水性樹脂の劣化が防止される。乾燥時間は適宜設定され、通常は1分以上5時間以下であり、好ましくは10分以上2時間以下である。
重合工程によって得られた塊状の含水ゲル状架橋重合体を粒子状にする目的で、上述した乾燥工程の前に、当該重合体を粉砕するゲル細粒化工程を行ってもよい。粒子状の含水ゲルとすることにより、ゲルの表面積が大きくなるため、上述した乾燥工程が円滑に進行しうる。粉砕は、例えばローラー型カッターや、ギロチンカッター、スライサー、ロールカッター、シュレッダー、ハサミなどの各種の切断手段を単独でまたは適宜組み合わせて行うことができ、特に限定されることはない。
また、好ましい形態においては、乾燥工程後にさらに粉砕工程、分級工程を行う。粉砕工程は、乾燥工程で得られた乾燥物を粉砕機で粉砕し粒子状にする工程である。この粉砕工程で用いられる粉砕機としては、例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10で分類されている粉砕機種名のうちでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類され、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構の1つ以上の機構を有するものが好ましく使用でき、それら機種に該当する粉砕機の中でも切断、剪断機構が主機構である粉砕機が特に好ましく使用できる。例えば、ロールミル、ナイフミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミルなどが挙げられ、粉砕機自体の内壁面を加熱する手段を備えていることが好ましい。
分級工程は、粉砕工程で得られた乾燥物粉末を連続的に分級する工程である。分級工程は、特に制限されないが、篩分級(金属篩、ステンレス鋼製)によることが好ましい。また、好ましくは、目的とする物性および粒度を達成するため、分級工程は複数枚の篩を同時に使用し、また、分級工程は後述する表面架橋工程の前、さらには前後の2ヶ所以上で行われることが好ましい。連続篩分級工程は、篩を加熱または保温しながら行うことが好ましい。
本発明で用いられる吸水性樹脂は、粉末状であることが好ましい。より好ましくは150〜850μm(ふるい分級で規定)の範囲の粒径の粒子を90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%含む粉末状吸水性樹脂である。850μmよりも大きい吸水性樹脂は、例えば得られた表面架橋された吸水性樹脂をおむつ等に用いると、肌触りが悪く、おむつのトップシートを破ったりする場合もある。一方、150μmよりも小さい粒子の量が10重量%を超えると、微粉が飛散したり、使用時に目詰まりを生じ、表面架橋された吸水性樹脂の吸水性能を低下させる場合もある。重量平均粒径は、好ましくは150〜850μmであり、より好ましくは200〜600μmであり、さらに好ましくは300〜500μmである。重量平均粒径が150μm以上であれば、安全衛生上の観点から好ましい。一方、重量平均粒径が850μm以下であれば、オムツなどに好適に用いることが可能となる。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.23〜0.45であり、より好ましくは0.25〜0.40である。なお、重量平均粒径や粒度分布の対数標準偏差(σζ)の数値としては、後述する実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
なお、本発明の吸水性樹脂の表面処理方法で用いられる吸水性樹脂は、上述した方法で製造されたものに限定されず、他の方法で調製されたものであってもよい。また、上述した方法で得られた吸水性樹脂は、通常は表面架橋されていない吸水性樹脂であるが、本発明で用いられる吸水性樹脂は、多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート、オキサゾリドン化合物等を用いてあらかじめ表面架橋された吸水性樹脂であってもよい。
(3)表面架橋工程
表面架橋工程は、吸水性樹脂を表面架橋する工程である。「表面架橋」とは、吸水性樹脂表面の架橋密度を増大させることを意味する。表面架橋は、表面架橋工程前の吸水性樹脂(ベースポリマー)からのCRC(含水率補正後の値)の低下により確認されうる。
この表面架橋工程においては、ラジカル重合開始剤および水の存在下で、吸水性樹脂を表面架橋する。そして本発明は、表面架橋工程を、当該工程の前後で吸水性樹脂の含水率が増加するように行う点に特徴を有する。このように吸水性樹脂の表面架橋を行うことで、低コストで、かつ安全な手法により、得られる表面架橋された吸水性樹脂の吸水特性(特に、加圧下吸収倍率・通液性)を向上させることが可能となる。
(3−1)ラジカル重合開始剤および水の存在下
吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入するには、例えば、ラジカル重合開始剤および水の存在下で、吸水性樹脂を加熱すればよい。なお、本発明の表面処理方法の表面架橋工程は、表面架橋の反応系に紫外線の波長以下の波長を有する活性エネルギー線を照射せずに行われる。これは、かような活性エネルギー線の照射によって樹脂の劣化が起こる可能性があるためである。ここで、「紫外線の波長以下の波長を有する活性エネルギー線を照射する」とは、例えばメタルハライドランプなどの照射装置を用いて積極的に照射することを意味し、自然光や製造設備における照明からの光に含まれる活性エネルギー線が不可避的に照射されてしまう場合はこれに含まれない。
本発明においては、通常、重合工程で得られた吸水性樹脂を、ラジカル重合開始剤および水を含む水溶液(以下、「処理液」とも称する)と混合して、吸水性樹脂組成物を得る。そして、当該吸水性樹脂組成物に加熱処理を施す。これにより、吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入されるのである。ただし、かような形態のみに本発明の技術的範囲が制限されることはなく、反応系に存在する各成分の添加順序や、各成分の添加と加熱処理とのタイミングに特に制限はない。例えば、ラジカル重合開始剤や水が別々に吸水性樹脂に添加されてもよいし、加熱処理を施しながらこれらを吸水性樹脂に添加してもよい。
吸水性樹脂と処理液とを混合した後に加熱処理を行う場合には、「表面架橋工程前の吸水性樹脂の含水率」とは、処理液の混合後であって加熱処理前の含水率を意味し、「表面架橋工程後の含水率」とは、加熱処理後の含水率を意味する。また、吸水性樹脂と処理液との混合を加熱処理を施しながら行う場合には、「表面架橋工程前の吸水性樹脂の含水率」とは、加熱処理前の含水率を意味し、「表面架橋工程後の含水率」とは、加熱処理後の含水率を意味する。従って、工業的な製造設備においては、表面架橋反応を行う反応装置に入る際の吸水性樹脂の含水率が「表面架橋工程前の含水率」に相当し、表面架橋反応を行う反応装置から出る吸水性樹脂の含水率が「表面架橋工程後の含水率」に相当することになる。
従来、吸水性樹脂の表面架橋には、表面架橋剤を配合して行われることが一般的であった。表面架橋剤を配合すれば、吸水性樹脂の表面に存在する官能基と表面架橋剤とが化学的に強固に結合し、これによって安定な表面架橋構造が樹脂の表面に導入されうる。また、表面架橋剤の鎖長を適宜選択することで表面架橋距離の調整が容易となり、配合量を調整すれば架橋密度が制御されうる。しかしながら、本発明では、このような表面架橋剤を配合しなくとも、ラジカル重合開始剤および水の存在下で吸水性樹脂を処理することで、吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入することができる。
本発明において、吸水性樹脂の表面架橋工程は、ラジカル重合開始剤の存在下で行われる。本発明の表面架橋工程において用いられうるラジカル重合開始剤について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。ラジカル重合開始剤の一例として、例えば、水溶性ラジカル重合開始剤および熱分解性ラジカル重合開始剤が挙げられるが、これらに制限されることはない。なお、以下では、「水溶性ラジカル重合開始剤および熱分解性ラジカル重合開始剤」を総称して単に「ラジカル重合開始剤」と称することもある。また、水溶性ラジカル重合開始剤と熱分解性ラジカル重合開始剤とは一部重複する。
表面架橋工程において、吸水性樹脂とともに「水溶性ラジカル重合開始剤」が存在すると、親水性および吸水性に優れる吸水性樹脂の表面に重合開始剤が均一に分散できる。これによって、吸水特性に優れる吸水性樹脂が製造されうる。
水溶性ラジカル重合開始剤とは、水(25℃)に1重量%以上溶解するものを意味し、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上溶解するものである。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。なかでも、特に過硫酸塩や水溶性アゾ化合物を使用すると、表面処理された吸水性樹脂の生理食塩水に対する加圧下吸収倍率(本明細書では、単に「加圧下吸収倍率」とも称する)、通液性などの吸水特性がいずれも向上しうるため、好ましい。
一方、熱分解性ラジカル重合開始剤とは、加熱によりラジカルを発生する化合物であり、なかでも10時間半減期温度が0〜120℃のものが好ましく、20〜100℃のものがより好ましく、40〜80℃のものが特に好ましい。10時間半減期温度が0℃以上であれば、安定に貯蔵することができ、120℃以下であれば、十分な反応性が確保されうる。
表面架橋工程において、吸水性樹脂とともに「熱分解性ラジカル重合開始剤」が存在する状態で吸水性樹脂の表面架橋を行うと、低温かつ短時間で表面架橋を導入することができ、高いゲル強度および優れた吸水特性が達成されうる。なお、熱分解性ラジカル重合開始剤は、油溶性であってもよいし、水溶性であってもよい。油溶性熱分解性ラジカル重合開始剤は、水溶性熱分解性ラジカル重合開始剤と比較して分解速度がpHやイオン強度の影響を受けにくいという特徴がある。しかしながら、吸水性樹脂は親水性であるため、吸水性樹脂への浸透性を考慮すると、水溶性熱分解性ラジカル重合開始剤を使用することがより好ましい。
熱分解性ラジカル重合開始剤は、光分解性ラジカル重合開始剤として市販されている化合物と比べて比較的安価で、厳密な遮光が必ずしも必要でないため製造プロセス、製造装置を簡略化できる。代表的な熱分解性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過炭酸ナトリウムなどの過炭酸塩;過酢酸、過酢酸ナトリウムなどの過酢酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。なかでも、10時間半減期温度が40〜80℃である、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、および2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が好ましい。これらの中でも、特に過硫酸塩を使用すると、得られる表面処理された吸水性樹脂の加圧下吸収倍率および通液性がいずれも向上しうるため、好ましい。なお、本発明において「ラジカル重合開始剤」は、上述した形態のみに制限されない。
表面架橋工程において吸水性樹脂に含まれる、または表面架橋工程前において吸水性樹脂と混合されるラジカル重合開始剤の量は、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、好ましくは0.01〜20重量%であり、より好ましくは0.05〜10重量%であり、更に好ましくは0.1〜10重量%であり、特に好ましくは0.2〜5重量%である。ラジカル重合開始剤の存在量が0.01重量%以上であれば、吸水性樹脂の表面に架橋構造が効果的に導入されうる。一方、ラジカル重合開始剤の存在量が20重量%以下であれば、得られる表面処理された吸水性樹脂の吸水特性の低下が抑制されうる。
表面架橋工程においてラジカル重合開始剤を吸水性樹脂とともに存在させる形態は、ラジカル重合開始剤を直接そのまま吸水性樹脂と混合する形態でもよいが、これを水に溶解させた水溶液の状態で吸水性樹脂と混合する形態が好ましく採用される。吸水性樹脂は吸水特性を有するため、ラジカル重合開始剤を水溶液の形態で混合することで、ラジカル重合開始剤を吸水性樹脂の表面に均一に分散させ、吸水性樹脂と均一に混合することができる。なお、ラジカル重合開始剤を添加するための水溶液は、水のほか、ラジカル重合開始剤の溶解性を損なわない範囲で他の溶媒や他の成分(例えば、後述するラジカル重合性化合物や混合助剤など)を含んでいてもよい。ここで、本発明の表面架橋工程における反応系には、吸水性樹脂とともに水が存在することが必須であるが、ラジカル重合開始剤を水溶液の形態で吸水性樹脂と混合する上記形態によれば、ラジカル重合開始剤だけでなく水をも同時に反応系に添加することができる。その結果、表面架橋に要する操作が簡略化されうる。
表面架橋工程において表面架橋処理前の吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂と処理液とを混合した後に加熱処理を行う場合には、処理液の混合後であって加熱処理前の含水率)は、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、好ましくは1〜60重量%であり、より好ましくは5〜50重量%であり、さらに好ましくは7〜45重量%であり、特に好ましくは10〜40重量%である。吸水性樹脂の含水率が1重量%以上であれば、吸水性樹脂の表面に架橋構造が効率的に導入され、加圧下吸収倍率や通液性を所望の程度まで向上させるのに必要な加熱処理の時間を短縮させうる。一方、吸水性樹脂の含水率が60重量%以下であれば、表面架橋工程後の乾燥工程において必要とされるエネルギーが過度に増大することが防止される。上述したようにラジカル重合開始剤を水溶液の形態で吸水性樹脂に添加する場合には、添加後の吸水性樹脂の含水率が上述した範囲内の値となるように、水溶液の濃度を調節すればよい。この際に添加される水の量は、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、1〜50重量%程度であり、好ましくは2〜30重量%であり、より好ましくは3〜20重量%であり、さらに好ましくは5〜15重量%である。なお、吸水性樹脂への水の混合形態は、必ずしもラジカル重合開始剤を含む水溶液の形態で混合される場合に限られない。ラジカル重合開始剤と吸水性樹脂とを混合した後に、別途水を混合してもよい。また、重合工程において得られた含水ゲル状架橋重合体を適宜乾燥させて当該重合体における含水率を10〜60重量%程度に調節することで、水の添加に代えることも可能である。
上述したように、本発明の表面架橋工程においては、従来使用が必須とされていた表面架橋剤の使用は必須ではない。しかしながら、場合によっては、表面架橋剤を用いて吸水性樹脂の表面架橋を行ってもよい。換言すれば、表面架橋剤の存在下で、吸水性樹脂の表面架橋処理(加熱処理)を行ってもよい。かような形態によれば、吸水性樹脂の表面に、より短時間で効率的に架橋構造が導入されうるという利点がある。
用いられうる表面架橋剤について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。表面架橋剤の一例を挙げると、例えば、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ−、ジ−、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等が挙げられる。具体的には、米国特許第6228930号明細書、同6071976号明細書、同6254990号明細書などに例示されている。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物;オキセタン化合物;環状尿素化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物等が挙げられる。なかでも、オキセタン化合物、環状尿素化合物、または多価アルコールから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、より好ましくは炭素数2〜10のオキセタン化合物あるいは多価アルコールから選択される少なくとも1種が用いられ、さらに好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられる。
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、好ましくは0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。
(3−2)ラジカル重合性化合物
上記(3−1)の表面架橋工程において、吸水性樹脂の表面架橋は、好ましくはラジカル重合性化合物の存在下で行われる。かような形態によれば、表面架橋剤を必須には用いることなく、吸水性樹脂の表面により一層効果的に架橋構造が導入されうる。
「ラジカル重合性化合物」とは、ラジカル重合による重合が可能な化合物を意味し、具体的には、例えば、上記の「吸水性樹脂」の欄において吸水性樹脂の製造に用いられるエチレン性不飽和単量体(単官能ラジカル重合性化合物)や内部架橋剤(多官能ラジカル重合性化合物)の例として挙げた化合物が好ましく用いられうる。したがって、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ラジカル重合性化合物としては、例えば単官能ラジカル重合性化合物および多官能ラジカル重合性化合物のいずれか一方のみが用いられてもよいし、これらの双方が併用されてもよい。また、ラジカル重合性化合物としては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。好ましい形態においては、製造の簡便さの観点から、吸水性樹脂の製造時にエチレン性不飽和単量体および内部架橋剤として用いられた化合物が、本工程におけるラジカル重合性化合物として用いられる。なお、かような形態において用いられる単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物との使用量のモル比は、吸水性樹脂の製造時におけるエチレン性不飽和単量体と内部架橋剤とのモル比と同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、吸水性樹脂製造時の組成と比較して、多官能ラジカル重合性化合物を多めに用いるとよい。多官能ラジカル重合性化合物の使用量は単官能ラジカル重合性化合物の全量に対して好ましくは0.001〜100モル%であり、より好ましくは0.01〜50モル%であり、更に好ましくは0.05〜30モル%であり、特に好ましくは0.1〜20モル%であり、最も好ましくは0.5〜10モル%である。かような形態によれば、吸水性樹脂表面の架橋密度を効率的に向上させるという点で有利である。また、本工程において好ましくは、ラジカル重合性化合物は、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する化合物(例えば、上記の内部架橋剤のうち、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物)を含む。かような形態によれば、加圧下吸収倍率や通液性をより一層向上させることが可能となる。
単官能ラジカル重合性化合物は、酸基を含有しかつ所定の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有するものであることが好ましい。単官能ラジカル重合性化合物の中でも酸基を含有する化合物は、吸水特性の点で非常に優れる。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などが挙げられる。
本発明で吸水性樹脂と混合する酸基含有単官能ラジカル重合性化合物としては、好ましくは前述したエチレン性不飽和単量体のうち、酸基を含有する単量体である。具体的には、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸および/またはその塩が挙げられる。中でも、吸水特性の点で、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸がより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。アクリル酸(塩)の割合は全単官能ラジカル重合性化合物の好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。酸基含有ラジカル重合性化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物で使用されてもよい。
酸基含有単官能ラジカル重合性化合物が中和されている場合(塩の形態の場合)、当該化合物はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれる1価塩であることが好ましい。中でも、より好ましくはアルカリ金属塩であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれる塩である。
さらに、ラジカル重合性化合物としてエチレン性不飽和単量体が用いられる場合、当該単量体の中和率は、ベースポリマーとしての吸水性樹脂の中和率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、ラジカル重合性化合物としてのエチレン性不飽和単量体の中和率は比較的小さいことが好ましい。かような形態によれば、表面処理が短時間で進行しうる。具体的には、ラジカル重合性化合物としてのエチレン性不飽和単量体の中和率は、好ましくは0〜90モル%であり、より好ましくは0〜70モル%であり、さらに好ましくは0〜60モル%であり、特に好ましくは0〜50モル%であり、より一層好ましくは0〜20モル%、最も好ましくは0〜10モル%、最も特に好ましくは0モル%である。中和率がかような範囲にあると、表面処理の速度が向上するという点で好ましい。なお、「酸基含有ラジカル重合性化合物の全酸基」および「中和された酸基」は、酸基含有ラジカル重合性化合物が2種以上である場合、それぞれ全ての酸基ラジカル重合性化合物中の酸基および中和された酸基の合計を指す。例えば、酸基含有ラジカル重合性化合物として、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとを1:1のモル比で用いた場合には、酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率は50モル%である。
吸水性樹脂の表面架橋をラジカル重合性化合物の存在下で行う場合において、表面架橋の反応系中に存在するラジカル重合性化合物の量は、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対し、好ましくは0.5〜50重量%であり、より好ましくは1〜30重量%であり、さらに好ましくは1.5〜20重量%であり、さらにより好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましくは2.5〜10重量%であり、最も好ましくは3〜7重量%である。ラジカル重合性化合物の量が0.5重量%以上であれば、吸水性樹脂の加圧下吸収性能が十分な値に維持されうる。一方、ラジカル重合性化合物の量が50重量%以下であれば、表面処理された吸水性樹脂の吸収倍率の低下が防止されうる。
(3−3)混合助剤
上述したように、本発明の表面架橋工程においては、吸水性樹脂とともにラジカル重合開始剤および水(並びに、必要に応じて表面架橋剤やラジカル重合性化合物)が表面架橋の反応系に存在するが、反応系に存在するこれらの混合性を向上させる目的で、反応系に混合助剤がさらに存在することが好ましい。「混合助剤」とは、ラジカル重合開始剤およびラジカル重合性化合物以外の水溶性または水分散性の化合物であり、吸水性樹脂の水による凝集を抑制し、水溶液と吸水性樹脂との混合性を向上できるものであれば特に制限されない。混合助剤を添加することによって、吸水性樹脂の水による凝集が抑制され、水溶液と吸水性樹脂とが均一に混合される。その結果、後述する加熱処理などの表面架橋処理が吸水性樹脂に対して均等になされ、吸水性樹脂全体を均一に表面架橋することが可能となる。
混合助剤の具体例としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、親水性有機溶媒、水溶性無機化合物、無機酸(塩)、および有機酸(塩)が挙げられる。
界面活性剤としては、HLBが7以上の非イオン性界面活性剤またはアニオン系界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤が挙げられる。例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルポリオキシエチレンサルフェート塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等が例示される。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく用いられうる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの数平均分子量は、好ましくは200〜100,000であり、より好ましくは500〜10,000である。混合助剤として用いられるポリオキシエチレンアルキルエーテルの数平均分子量が200以上であれば、混合助剤としての効果を効果的に得ることができる。一方、当該数平均分子量が100,000以下であれば、水への溶解度が十分に確保され、かつ、反応系としての溶液の粘度の上昇も抑制され、吸水性樹脂を含めた反応系の混合性が十分に確保されうる。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、デンプン等を挙げることができる。中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。これらの水溶性高分子の数平均分子量は、好ましくは200〜100,000であり、より好ましくは500〜10,000である。
親水性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、アルコキシ(ポリ)エチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類;などが挙げられる。
水溶性無機化合物としては、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩、塩化アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、塩化カルシウム、アルコキシチタン、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウムなどの多価金属塩、および炭酸水素塩、リン酸二水素塩、リン酸水素塩などの非還元性アルカリ金属塩pH緩衝剤などが挙げられる。
無機酸(塩)としては、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、およびこれらの塩(例えば、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)が挙げられる。また、有機酸(塩)としては、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの塩(例えば、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)が例示される。
上記例示のうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、水溶性多価金属塩、塩化ナトリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸および塩酸が、混合助剤として好ましく用いられる。
これらの混合助剤は、1種のみが単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、表面架橋の反応系における混合助剤の存在量は、吸水性樹脂の水による凝集を抑制し、水溶液と吸水性樹脂との混合性を向上できる形態であれば特に制限されないが、例えば、吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、好ましくは0.0001〜40重量%であり、より好ましくは0.001〜10重量%であり、特に好ましくは0.005〜5重量%であり、最も好ましくは0.01〜1重量%である。
混合助剤を使用する場合の、混合助剤の添加順序もまた特に制限されず、吸水性樹脂に予め混合助剤を加えた後、これに水やラジカル重合開始剤(場合によってはこれらを含む水溶液)を添加して混合する方法、および混合助剤を水溶液に溶解して吸水性樹脂と同時に混合する方法なども使用できる。
(3−4)混合
上述した各成分(吸水性樹脂、ラジカル重合開始剤、水、必要に応じて表面架橋剤、ラジカル重合性化合物、混合助剤)を予め混合する場合の混合条件は、特に制限されない。例えば、混合温度は、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは10〜120℃であり、さらに好ましくは20〜100℃であり、特に好ましくは30〜90℃であり、最も好ましくは40〜70℃である。混合時間も特に制限されないが、通常0.1〜60分間である。また、混合手段についても特に制限はなく、通常の混合機、例えばV型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、回転円板型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、鋤型混合機等が混合手段として用いられうる。
(3−5)加熱処理
続いて、吸水性樹脂を表面架橋する。この表面架橋工程は、当該工程の前後で吸水性樹脂の含水率が増加するように行われる。このように吸水性樹脂の表面架橋を行うことで、低コストで、かつ安全な手法により、低温かつ短時間で吸水特性(特に、加圧下吸収倍率・通液性)に優れる表面処理された吸水性樹脂を製造することが可能となる。
吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入するには、例えば、上述した各成分を含む表面架橋の反応系を加熱すればよい。以下、これらの表面架橋処理について詳述するが、これらの具体的な形態のみには制限されない。
加熱処理により吸水性樹脂を表面架橋するには、上述した各成分を含む反応系を加熱すればよく、好ましくは比較的高湿度の雰囲気下において加熱すればよい。かような雰囲気の具体的な条件や加熱処理の具体的な条件について特に制限はなく、表面架橋工程の前後において吸水性樹脂の含水率が増加するように、換言すれば、吸水性樹脂の含水率が表面架橋処理の前よりも増加するように、適宜決定すればよい。
加熱処理を行う際の雰囲気条件の一例として、雰囲気の温度は、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは70〜130℃であり、さらに好ましくは90〜110℃であり、特に好ましくは95〜100℃である。また、雰囲気の圧力は、減圧・常圧・加圧のいずれでもよく、特に制限されないが、好ましくは1013〜4906hPaであり、より好ましくは1013〜2758hPaであり、さらに好ましくは1013〜1450hPaである。さらに、雰囲気の相対湿度は、好ましくは50〜100%RHであり、より好ましくは70〜100%RHであり、さらに好ましくは90〜100%RHであり、特に好ましくは95〜100%RHであり、最も好ましくは100%RH(飽和水蒸気)である。加熱処理時の雰囲気を飽和水蒸気とすることで、表面架橋工程により得られる吸水性樹脂の含水率を表面架橋前よりも確実に増加させることが可能となる。また、雰囲気中の酸素濃度は、好ましくは0〜25体積%であり、より好ましくは0〜15体積%であり、さらに好ましくは0〜10体積%であり、さらにより好ましくは0〜5体積%であり、特に好ましくは0〜1体積%であり、最も好ましくは0〜0.5体積%である。このように雰囲気中の酸素濃度が比較的低濃度に調節されると、加熱時の吸水性樹脂の酸化劣化が防止されうるため、好ましい。
加熱処理を行う際の加熱時間も特に制限されないが、好ましくは1〜90分間であり、より好ましくは2〜60分間であり、さらに好ましくは3〜30分間であり、特に好ましくは5〜15分間である。加熱時間が1分間以上であれば、吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入され、一方、加熱時間が90分間以下であれば、加熱による吸水性樹脂の劣化が防止されうる。
加熱処理により吸水性樹脂を表面架橋する場合の加熱処理に用いられる装置に特に制限はなく、公知の乾燥機が用いられうるが、水蒸気を含む気体を供給するための気体供給装置を具備するものが好ましく用いられうる。例えば、気体供給装置を具備する、伝導伝熱型、輻射伝熱型、熱風伝熱型、誘電加熱型の乾燥機が好ましく用いられ、具体的には、水蒸気供給装置を具備する、ベルト式、溝型撹拌式、流動層式、気流式、回転型、捏和型、赤外線型、電子線型の乾燥機が好ましく用いられうる。
(3−6)通液性向上剤
また、上述した表面架橋処理の後に、表面架橋された吸水性樹脂に通液性向上剤を添加してもよい。このような通液性向上剤の例としては、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライトなどの鉱産物;硫酸アルミニウム14〜18水塩(または無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物類、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム化合物類、およびそれらの水溶液;その他の多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat22S,Sipernat2200)類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel#50)、酸化ケイ素・酸化アルミニウム複合体、酸化ケイ素・酸化マグネシウム複合体などの酸化物複合体類などがある。このような通液性向上剤の添加量は、表面架橋された吸水性樹脂の量(固形分換算で100重量%)に対して、好ましくは0〜20重量%であり、より好ましくは0.01〜10重量%であり、特に好ましくは0.1〜5重量%である。通液性向上剤は、水に溶けるものは水溶液で、溶けないものは粉末やスラリーで添加することができる。その他、添加剤として、抗菌剤、消臭剤、キレート剤などを適宜前記範囲で添加してもよい。
(4)表面処理された吸水性樹脂
本発明では、上述した処理を吸水性樹脂に対して施すことで、表面処理された吸水性樹脂が製造される。そして、このようにして得られた吸水性樹脂は、加圧下吸収倍率や通液性といった吸水特性に優れる。
本発明においては、表面架橋工程の前後で吸水性樹脂の含水率が増加するが、表面架橋工程後に得られた表面処理された吸水性樹脂の含水率は、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは2〜45重量%であり、さらに好ましくは3〜40重量%であり、特に好ましくは5〜30重量%である。また、表面架橋工程前後での含水率の増加量は特に制限されないが、含水率の値の絶対値(=「表面架橋工程後の含水率」−「表面架橋工程前の含水率」)として、好ましくは0.1〜40重量%増加し、より好ましくは0.5〜30重量%増加し、さらに好ましくは1〜20重量%増加し、特に好ましくは2〜15重量%増加する。表面処理された吸水性樹脂の含水率や含水率の増加量が上記範囲の下限値以上であれば、本発明の作用効果が十分に発揮され、加圧下吸収倍率や通液性等の吸水性能に優れた表面処理された吸水性樹脂が得られる。一方、これらの値が上記範囲の上限値以下であれば、含水率の増加に伴う吸水特性の低下が防止されうる。
従来、吸水性樹脂の表面架橋を形成すると、遠心分離機保持容量(CRC)は若干低下するが、圧力をかけた状態でも吸液を維持できる能力、すなわち加圧下吸収倍率が向上することが知られている。本発明の方法によれば、表面架橋剤を必須に使用しなくても、吸水性樹脂の4.83kPaでの加圧下吸収倍率(以下、単に「AAP」とも称する)が1g/g以上増加する。このことは、本発明の方法によって吸水性樹脂の表面に架橋構造が導入されたことを示す。好ましい形態において、吸水性樹脂の加圧下吸収倍率は、上述した表面架橋工程の前後で、好ましくは8g/g以上増加し、より好ましくは10g/g以上増加し、さらに好ましくは12g/g以上増加する。また、得られた表面処理された吸水性樹脂のAAPの値は、好ましくは15〜30g/gであり、より好ましくは18〜25g/gであり、さらに好ましくは20〜24g/gである。なお、AAPの値としては、後述する実施例に記載の方法により測定される値(含水率補正後の値)を採用するものとする。
また、表面処理された吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)は、好ましくは8g/g以上であり、より好ましくは15g/g以上であり、さらに好ましくは20g/g以上であり、特に好ましくは25g/g以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは40g/g以下であり、さらに好ましくは35g/g以下である。CRCが8g/g以上であれば、オムツなどの衛生材料の使用に十分適する吸水性樹脂が得られる。一方、CRCが50g/g以下であれば、十分なゲル強度が確保され、通液性に優れる吸水性樹脂が得られる。なお、CRCの値としては、後述する実施例に記載の方法により測定される値(含水率補正後の値)を採用するものとする。
さらに、得られる表面処理された吸水性樹脂において、通液性の指標となる食塩水流れ誘導性(SFC)の値は、好ましくは10(単位:10−7×cm3×s×g−1)以上であり、より好ましくは15(単位:10−7×cm3×s×g−1)以上であり、さらに好ましくは20(単位:10−7×cm3×s×g−1)以上であり、特に好ましくは50(単位:10−7×cm3×s×g−1)以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは300(単位:10−7×cm3×s×g−1)以下である。食塩水流れ誘導性(SFC)の値が10(単位:10−7×cm3×s×g−1)以上であれば、十分な通液性が確保され、吸収体に液を十分に行き渡らせることができ、使用時における尿等の排泄液を確実に吸収することができる。なお、SFCの値としては、後述する実施例に記載の方法により測定される値を採用するものとする。
本発明によって得られる表面処理された吸水性樹脂の形状は、処理前の吸水性樹脂の形状などの処理条件や、処理後の造粒・成形などによって適宜調整されうるが、一般には粉末状である。かかる粉末は、重量平均粒径(ふるい分級で規定)が150〜850μm、好ましくは200〜600μm、より好ましくは300〜500μmの粉末状であり、また、150〜850μmの粒径を有するものの含有量が、吸水性樹脂の全量に対して、好ましくは90〜100重量%であり、より好ましくは95〜100重量%である。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.23〜0.45であり、より好ましくは0.25〜0.35である。
本発明の方法で得られる表面処理された吸水性樹脂は、内部より表面近傍の架橋密度が高い、好ましくは吸水性樹脂表面全体にわたって均一かつ架橋密度の高い表面架橋が形成され、吸水性樹脂に望まれる特性、例えば、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力、通液性などの物性を極めて高いレベルとすることができる。
本発明の方法により得られる表面処理された吸水性樹脂は、上述したように優れた特性を有するため、生理用品や紙おむつ、失禁パッド等の衛生材料分野をはじめとして、医療用品等の医療分野、土壌保水剤等の農園芸用分野、鮮度保持等の食品分野、結露防止材や保冷材等の産業分野等の、様々な分野に好適に用いられ、目的や機能に応じてシリカ、ゼオライト、酸化防止剤、界面活性剤、シリコーンオイル、キレート化剤、消臭剤、香料、薬剤、植物生育助剤、殺菌剤、防かび剤、発泡剤、顔料、染料、繊維状物(親水性短繊維、パルプ、合成繊維など)、肥料等の他の添加剤が添加されうる。他の添加剤の添加量は、種々の用途での製品全重量に対して、好ましくは0.001〜10重量%程度である。
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。以下では、便宜上、「重量%」を単に「%」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、特に条件を記載しない限り、室温(23±1℃)、湿度30%RHの条件下で作業を行った。実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
(1)粒度分布:質量平均粒径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水性樹脂10.0gを、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行ない、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒子径を重量平均粒径(D50)として読み取った。
また、X1をR=84.1重量%、X2をR=15.9重量%のときのそれぞれの粒径とすると、対数標準偏差(σζ)は下記式で表される。すなわち、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
(2)含水率
底面の直径が4cm、高さ2cmのアルミ製カップに、吸水性樹脂1.00gをアルミニウム製カップの底面に均一に広げ、この吸水性樹脂入りアルミニウム製カップの重量W1(g)を測定した。これを180℃に調温した乾燥機(EYELA、東京理化器械株式会社製定温恒温乾燥器(ナチュラルオーブン)NDO−450)中に3時間放置し、熱風乾燥機から取り出した直後(少なくとも1分以内)の吸水性樹脂入りアルミニウム製カップの重量W2(g)を測定した。そして、これらW1、W2から、次式に従って含水率(重量%)を算出した。
(3)遠心分離機保持容量(CRC)
吸水性樹脂0.200gを不織布(南国パルプ工業株式会社製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)製の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温にて大過剰(約500mL)の生理食塩水中に浸漬させた。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式:H−122)を用いてedena ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W3(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いずに行い、その際の重量をW4(g)とした。そして、これらW3およびW4の値から、下記数式に従ってCRC(g/g)を算出した。
(4)加圧下吸収倍率(AAP)
内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目開きの大きさ38μm)を融着させ、室温(25±2℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布し、その上に、外径が60mmよりわずかに小さく、吸水性樹脂に対して4.83kPaの荷重を均一に加えることができ、支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないよう調整された、ピストンと荷重とをこの順に載置して、この測定装置一式の重量W5(g)を測定した。
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙1枚(アドバンテック東洋株式会社製、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量W6(g)を測定した。この質量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、W5、W6から、次式によって加圧下吸収倍率(AAP)(g/g)を算出した。
(5)食塩水流れ誘導性(SFC)
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂の膨潤時の液透過性(通液性)を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。なお、SFC値の単位は(10−7×cm3×s×g−1)である。
SFCの測定は、米国特許第5849405号明細書記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
具体的には、まず、図1に示す装置を準備した。図1を参照して当該装置を説明すると、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33は、L字管34を通じてセル41へ供給された。L字管34にはコック35が設置されていた。セル41の下には、通過した液を捕集する捕集容器48が配置されており、捕集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製金網43の上に設置した。
この装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂(0.900g)を人工尿中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録した。なお、この人工尿は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、リン酸2水素アンモニウム0.85g、リン酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものである。次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFCの測定は室温(20〜25℃)で行った。コンピュータおよび天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることにより[g/s]の単位で決定した。一定の静水圧および安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
(製造例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中に、70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5433g(単量体濃度:39重量%)(24.2モル)を仕込み、当該水溶液に内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)12.83g(0.0246モル)を溶解させて反応液とした。次いで、この反応液を窒素ガス雰囲気下において脱気した。続いて、重合開始剤である過硫酸ナトリウムの10重量%水溶液29.43gおよびL−アスコルビン酸の0.1重量%水溶液24.53gを撹拌しながら反応液に添加した。その結果、約1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃にて重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体の粒径は5mm以下であった。この粉砕された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃にて50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕されうる粉末状凝集体を得た。
得られた粉末状凝集体をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmのJIS標準ふるいを用いて分級した。次いで、前記の操作で目開き710μmのふるいを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準ふるいを用いて分級し、目開き150μmのふるいを通過した粒子を除去した。このようにして、吸水性樹脂(A)を得た。
(製造例2)
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)の使用量を11.55g(0.0221モル)に、また分級する篩の目開き710及び150μmを850μm及び212μmとした以外は製造例1と同様にして、吸水性樹脂(B)を得た。
得られた吸水性樹脂(A)、(B)の粒度分布を下記の表1に示し、各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例1−1)
ベースポリマーとしての吸水性樹脂(A)500gを5Lレーディゲミキサー(Loedige社製、型式M5R)に加え、300rpmで撹拌下、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)1.0g(0.00192モル)、アクリル酸27.4g(0.381モル)、水45.0g、過硫酸アンモニウム5.0gを予め混合した処理液を噴霧した。室温で3分間撹拌混合を続け、添加した水を粒子内部に浸透拡散させた後、一度撹拌を停止し、レーディゲミキサーの試料投入口を取り外した。
レーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂10g(含水率13.0重量%)を直径9cm、深さ1.5cmの円形ステンレス製シャーレ上に均一に撒いた。
次いで、吸水性樹脂をこのシャーレごとウォーターオーブン(シャープ株式会社製、商品名:ヘルシオ、型名:AX−HC3)に投入し、蒸し物(強)モードで1分間加熱した。当該モードによる処理では、被処理物が飽和水蒸気により加熱され、従って加熱温度は100℃となる。また、加熱時のウォーターオーブン内の圧力は常圧(1013hPa)であり、ウォーターオーブン内の酸素濃度は0.5体積%以下であった。なお、ウォーターオーブンは、上記操作直前に予め蒸し物(強)モードで15分間運転し、予熱しておいた。
上記の処理により得られた吸水性樹脂を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕して、表面処理された吸水性樹脂(1−1)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(1−1)の各種評価結果を下記の表2に示す。なお、表2の「処理液」の欄における各成分の量は、ベースポリマーとしての吸水性樹脂(A)の量(500g)に対する重量%(wt%)である。また、下記表2に示す「含水率補正後のCRC」および「含水率補正後のAAP」は、以下に示す計算式によって算出した。ここで、下記式において、「含水率補正前のCRC」とは、上記(2)の含水率を測定する前の吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(CRC)であり、また、「含水率補正前のAAP」とは、上記(2)の含水率を測定する前の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率(AAP)である。
(実施例1−2)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を3分間としたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(1−2)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(1−2)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例1−3)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を5分間としたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(1−3)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(1−3)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例1−4)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を10分間としたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(1−4)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(1−4)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例1−5)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を15分間としたこと以外は、上述した実施例1−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(1−5)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(1−5)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例2−1)
処理液として、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)1.0g(0.00192モル)、アクリル酸4.0g(0.056モル)、アクリル酸ナトリウム10.0g(0.106モル)、水45.0g、過硫酸アンモニウム5.0gを予め混合した液を使用したこと以外は、上述した実施例1−2と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(2−1)を得た。なお、ベースポリマーと処理液とを攪拌混合した後にレーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂の含水率は13.3重量%であった。得られた表面処理された吸水性樹脂(2−1)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例2−2)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を5分間としたこと以外は、上述した実施例2−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(2−2)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(2−2)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例2−3)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を10分間としたこと以外は、上述した実施例2−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(2−3)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(2−3)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例2−4)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を15分間としたこと以外は、上述した実施例2−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(2−4)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(2−4)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例3−1)
処理液として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:約2000)2.5g、水40.0g、過硫酸アンモニウム5.0gを予め混合した液を使用したこと以外は、上述した実施例1−3と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(3−1)を得た。なお、ベースポリマーと処理液とを攪拌混合した後にレーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂の含水率は12.8重量%であった。得られた表面処理された吸水性樹脂(3−1)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例3−2)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を10分間としたこと以外は、上述した実施例3−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(3−2)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(3−2)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例3−3)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を30分間としたこと以外は、上述した実施例3−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(3−3)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(3−3)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例4−1)
ベースポリマーとして、吸水性樹脂(B)500gを使用したこと、および処理液として、NKエステル701A(新中村化学株式会社製、グリセリンアクリレートメタクリレート)0.5g(0.00234モル)、アクリル酸20.0g(0.278モル)、水35.0g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量 約2,000)0.05g、VA−044(和光純薬工業株式会社製、2,2’―アゾビス(2―(2―イミダゾリン―2―イル)プロパン)ジハイドロクロライド)0.5gを予め混合した液を使用したこと以外は、上述した実施例1−2と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(4−1)を得た。なお、ベースポリマーと処理液とを攪拌混合した後にレーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂の含水率は10.5重量%であった。得られた表面処理された吸水性樹脂(4−1)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例4−2)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を5分間としたこと以外は、上述した実施例4−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(4−2)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(4−2)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(実施例4−3)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を10分間としたこと以外は、上述した実施例4−1と同様の手法により、表面処理された吸水性樹脂(4−3)を得た。得られた表面処理された吸水性樹脂(4−3)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例1)
処理液として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量:約2000)2.5g、水40.0gを予め混合した液を使用したこと以外は、上述した実施例3−3と同様の手法により、比較吸水性樹脂(1)を得た。なお、ベースポリマーと処理液とを攪拌混合した後にレーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂の含水率は12.9重量%であった。得られた比較吸水性樹脂(1)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例2−1)
ウォーターオーブンのモードをウォーターオーブン・ケーキ(設定温度:120℃)とし、加熱時間を3分間としたこと以外は、上述した実施例3−3と同様の手法により、比較吸水性樹脂(2−1)を得た。当該モードによる処理では、気化後さらに加熱されてなる過熱水蒸気により加熱される。また、加熱時のウォーターオーブン内の圧力は常圧(1013hPa)であり、ウォーターオーブン内の酸素濃度は0.5体積%以下であった。なお、ウォーターオーブンは、上記操作直前に予めウォーターオーブン・ケーキ(設定温度:120℃)モードで15分間運転し、予熱しておいた。得られた比較吸水性樹脂(2−1)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例2−2)
吸水性樹脂のウォーターオーブン中での加熱時間を5分間としたこと以外は、上述した比較例2−1と同様の手法により、比較吸水性樹脂(2−2)を得た。得られた比較吸水性樹脂(2−2)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例3)
処理液で処理した吸水性樹脂を加熱するための手段として、ウォーターオーブンに代えて熱風乾燥機(楠本化成株式会社エタック事業部製、HISPEC HT320)を用い、120℃にて30分間加熱処理を施したこと以外は、上述した比較例2−1と同様の手法により、比較吸水性樹脂(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂(3)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例4)
加熱温度を160℃としたこと以外は、上述した比較例3と同様の手法により、比較吸水性樹脂(4)を得た。得られた比較吸水性樹脂(4)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例5)
処理液として、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)1.0g(0.00192モル)、アクリル酸4.0g(0.056モル)、アクリル酸ナトリウム10.0g(0.106モル)、水45.0g、過硫酸アンモニウム0.05gを予め混合した液を使用したこと以外は、上述した比較例4と同様の手法により、比較吸水性樹脂(5)を得た。なお、ベースポリマーと処理液とを攪拌混合した後にレーディゲミキサーから排出した吸水性樹脂の含水率は12.5重量%であった。得られた比較吸水性樹脂(5)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例6)
加熱温度を210℃としたこと以外は、上述した比較例5と同様の手法により、比較吸水性樹脂(6)を得た。得られた比較吸水性樹脂(6)の各種評価結果を下記の表2に示す。
(比較例7)
加熱温度を80℃とし、処理液中の過硫酸アンモニウムの量を25.0gとしたこと以外は、上述した比較例5と同様の手法により、比較吸水性樹脂(7)を得た。得られた比較吸水性樹脂(7)の各種評価結果を下記の表2に示す。
表2に示す結果から、吸水性樹脂を、ラジカル重合開始剤および水の存在下において、当該吸水性樹脂の含水率が増加するように表面架橋する(例えば、飽和水蒸気中で加熱する)ことで、得られる表面架橋された吸水性樹脂の吸水特性(特に加圧下吸収倍率(AAP)・通液性(SFC))が向上することがわかる。また、表面架橋剤とアクリル酸(塩)などのラジカル重合性化合物とがさらに存在する条件下で上記表面架橋を行うと、表面架橋された吸水性樹脂の吸水特性がより一層向上しうることがわかる。