以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
<画像形成装置>
図1は、本発明に係る一実施形態の画像形成装置の基本構成を概略的に示す模式断面図である。図1に示す画像形成装置100は、矢印A方向に回転する電子写真感光体1と、電子写真感光体1を帯電させる帯電装置11と、帯電装置11に接続された電源12と、帯電装置11により帯電される電子写真感光体1を露光して静電潜像を形成する露光装置13と、露光装置13により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置14と、現像装置14により形成されたトナー像を被転写体(画像出力媒体、記録媒体)Pに転写する転写装置15と、転写後の電子写真感光体1を帯電させる補助帯電装置16と、補助帯電装置16により帯電した電子写真感光体1上に残存するトナーを除去するクリーニング装置17と、クリーニング後の電子写真感光体1の残存電荷を消去する除電装置18と、定着装置19とを備える。これらの装置は目的に応じて適宜選択することができる。例えば、クリーニング装置17、除電装置18は、必要に応じて備えられるものであり、省かれてもよい。更に、図1に示した画像形成装置100は、補助帯電装置で帯電させた電子写真感光体上の電位が所定の条件を満たすように補助帯電装置を制御する制御部20を有している。
帯電装置11としては、特に制限はなく、例えば、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器などを用いることができる。
露光装置13としては、特に制限はなく、例えば、電子写真感光体1の表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光源を所望の像様に露光できる光学系機器などが挙げられる。
現像装置14としては、特に制限はなく、例えば、一成分系、二成分系の正規又は反転現像剤を用いる公知の現像器などが挙げられる。
転写装置15としては、特に制限はなく、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などが挙げられる。
本発明でいう被転写体Pとは、電子写真感光体1上に形成されたトナー像を転写する媒体であれば特に制限はない。例えば、電子写真感光体1から直接、紙等に転写する場合は紙等が被転写体であり、また、中間転写体を用いる場合には中間転写体が被転写体になる。中間転写体としては、その構造、形状、材料等について特に制限はなく、公知のものを使用できる。中間転写体の構造としては、例えば、導電性支持体上に、少なくともゴム、エラストマー、樹脂等から形成される弾性層と、少なくとも1層の被覆層とを設けてなる構造などが挙げられる。また、中間転写体の形状としては、例えば、ローラ形状、ベルト形状などが挙げられる。また、中間転写体の材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素系樹脂等に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたものなどが挙げられる。
補助帯電装置16としては、特に制限はなく、例えば、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型帯電器などを用いることができる。
補助帯電装置16は、転写後の電子写真感光体1を帯電させて、転写後の残留トナーをクリーニング装置或いは現像装置で回収しやすくしたり、転写装置により電子写真感光体1に与えた正帯電の影響を少なくしたりする。
制御部20は、例えば、CPU、ROM、RAM、及び記憶装置等を有し、ROM等に記憶されている制御プログラムに従って、補助帯電装置16を制御するものである。画像形成装置100においては、補助帯電装置16に対して制御部20が画像形成装置のプロセススピードに応じた所定の電流制御を行うことで、電子写真感光体1の帯電電位が調整される。具体的には、制御部20が、画像形成装置のプロセススピードに基づいて下記式(A)に示される条件を満たす所定の電位Vpcc(V)を求め、この値に基づいて補助帯電装置16への流入電流Icを制御する。
−1500[V]≦Vpcc≦(1.25×PS−800)[V] …(A)
[式(A)中、PSは、画像形成装置のプロセススピード(mm/秒)を示す。ただし、PSは、40[mm/秒]以上360[mm/秒]以下の範囲内である。]
補助帯電装置16への流入電流Iの制御としては、例えば、500μA以下の定電流制御が用いられる。
画像形成装置のプロセススピードについての情報は、電子写真感光体の1秒当たりの回転数と直径により得ることができる。
本実施形態においては、制御部20が、補助帯電手段16で帯電させた電子写真感光体1上の電位Vpcc(V)が下記式(B)の条件を満たすように補助帯電装置16を制御することが好ましい。
−1300[V]≦Vpcc≦(1.25×PS−1300)[V] …(B)
[式(B)中、PSは、画像形成装置のプロセススピード(mm/秒)を示す。ただし、PSは、40[mm/秒]以上360[mm/秒]以下の範囲内である。]
画像形成装置100が、上記式(B)の条件が満たすように補助帯電装置16を制御する制御部20を備えることにより、ゴースト、クリーニング不良及び黒点の発生を十分抑制でき、良好な画像を長期に亘って形成することができる画像形成装置がより有効に実現可能となる。
クリーニング装置17としては、特に制限はなく、例えば、クリーニングブレード、ブラシクリーニング、ロールクリーニング等を用いることができる。
除電装置18としては、特に制限はなく、例えば、除電ランプを用いることができる。
定着装置19としては、特に制限はなく、例えば、熱ロール定着器、オーブン定着器などが挙げられる。
次に、画像形成装置100に備えられる電子写真感光体1について説明する。図2〜5はそれぞれ電子写真感光体1の好適な実施形態を示す模式断面図であり、導電性支持体2と感光層との積層方向に沿って電子写真感光体1を切断したときの部分断面図である。
図2及び3に示す電子写真感光体は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層4)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層5)とに機能が分離された感光層6を備えるものである。図2に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層3、電荷発生層4、電荷輸送層5が順次積層された構造を有するものである。図3に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層3、電荷発生層4、電荷輸送層5、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
一方、図4及び5に示す電子写真感光体は、電荷発生材料と電荷輸送材料とを同一の層(単層型感光層8)に含有するものである。図4に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層3、単層型感光層8が順次積層された構造を有するものである。図5に示す電子写真感光体1は、導電性支持体2上に下引層3、単層型感光層8、保護層7が順次積層された構造を有するものである。
以下、代表例として図2に示す電子写真感光体1に基づいて、各要素について説明する。
導電性支持体2としては、例えば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケルなどの金属ドラム、及びガラス、プラスチック製の筒状基体上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、胴−インジウム等の金属を蒸着するか、酸化インジウム、酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、金属箔をラミネートすることによって導電処理されたドラム状の公知の材料を用いることができる。
下引層3は、導電性支持体2上に形成され、平均粒径が500nm以下である導電性金属酸化物と、アクセプター性化合物とを含んでなる。なお、導電性金属酸化物の平均粒径は、導電性金属酸化物を含有する下引層の断面を、透過型電子顕微鏡を用いて4万倍の倍率で写真撮影し、場所を変えて撮影された5箇所の写真についてランダムに選択した100個の粒子の最大長さをそれぞれ測定し、これらを平均して求められる。
本発明に用いられる導電性金属酸化物としては、102〜1011Ω・cm程度の抵抗を有するものが好ましい。導電性金属酸化物の抵抗としてより好ましくは、104〜1010Ω・cmであり、更により好ましくは107〜1010Ω・cmである。このような導電性金属酸化物を用いることにより、リーク耐性獲得のために適切な抵抗を容易に得ることができる。すなわち、導電性金属酸化物の抵抗値が上記範囲の下限値よりも小さいと、十分なリーク耐性が得られにくくなり、上記範囲の上限値よりも大きいと、残留電位の上昇を招きやすくなる。
導電性金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらのうち、導電性の観点から、酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく、酸化亜鉛がより好ましい。
導電性金属酸化物は表面処理を施すことができる。表面処理剤としてはシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤など所望の特性が得られるものであれば公知の材料から選択することができる。特にシランカップリング剤は良好な電子写真特性を与えるため好ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤は下引層に良好なブロッキング性を与えるため好ましく用いられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、所望の電子写真特性を得られるものであればいかなる物でも用いることができるが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、シランカップリング剤は2種以上混合して使用することもできる。上記アミノ基を有するシランカップリング剤と併用して用いることができるシランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルピロホフェート)、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
表面処理剤としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム
系カップリング剤を用いる場合、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて
用いることができる。
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用可能であるが、乾式法あるいは湿式法を用いることができる。
乾式法にて表面処理を施す場合には導電性金属酸化物微粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接あるいは有機溶媒に溶解させたシランカップリング剤を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって均一に処理される。添加あるいは噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが好ましい。溶剤の沸点以上の温度で噴霧すると、均一に攪拌される前に溶剤が蒸発し、シランカップリング剤が局部的にかたまってしまい均一な処理ができにくい欠点があり、好ましくない。添加あるいは噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。
湿式法としては、導電性金属酸化物微粒子を溶剤中で攪拌、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミルなどを用いて分散し、シランカップリング剤溶液を添加し攪拌あるいは分散したのち、溶剤除去することで均一に処理される。溶剤除去方法はろ過あるいは蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行うことができる。焼き付けは所望の電子写真特性が得られる温度、時間であれば任意の範囲で実施できる。湿式法においては表面処理剤を添加する前に導電性金属酸化物微粒子含有水分を除去することもでき、その例として表面処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いることもできる。
以上、シランカップリング剤における表面処理方法を記載したが、チタネート系カップリング剤やアルミニウム系カップリング剤等の表面処理剤についても同様の方法で表面処理を施すことができる。
下引層3中の導電性金属酸化物に対するシランカップリング剤の量は所望の電子写真特性が得られる量であれば任意に設定できる。
本明細書において、アクセプター性化合物とは、電子吸引性の構造を有し、光照射により電荷発生顔料で発生した正孔と電子のうち電子を引き抜く性質を有する化合物を指す。
アクセプター性化合物としては所望の特性が得られるものならばいかなるものでも使用可能であるが、導電性金属酸化物と反応可能な基を有する化合物であることが好ましい。導電性金属酸化物と反応可能な基を有する化合物としては、水酸基又はキノン基を有する化合物が好ましく、キノン基としてアントラキノン構造を有する化合物であることがより好ましい。更に、水酸基を有するアントラキノン構造を有するアクセプター性化合物が好ましく用いられる。水酸基を有するアントラキノン構造を有する化合物としては、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物などが挙げられる。下引層3は、アントラキノン系化合物、ヒドロキシアントラキノン系化合物及びアミノヒドロキシアントラキノン系化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含むことが好ましい。
特に好ましく用いられるアクセプター性化合物としては、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリンなどが具体的に挙げられる。
下引層3におけるアクセプター性化合物の含有量は、所望の特性が得られる範囲であれば任意に設定できるが、好ましくは導電性金属酸化物に対して0.01〜20質量%の範囲であり、さらに好ましくは導電性金属酸化物に対して0.05〜10質量%の範囲である。アクセプター性化合物の含有量が導電性金属酸化物に対して0.01質量%未満であると、下引層3内の電荷蓄積改善に寄与するだけの十分なアクセプター性を付与できないため、繰り返し使用時に残留電位の上昇などを十分抑制する効果が得られにくくなる。また20質量%を超えると金属酸化物同士の凝集を引き起こしやすく、下引層3の形成時に下引層3内で金属酸化物が良好な導電路を形成することが困難となり、繰り返し使用時に残留電位の上昇など維持性の悪化を招きやすくなるだけでなく、黒点などの画質欠陥も引き起こしやすくなる。
下引層3は、上述の導電性金属酸化物、アクセプター性化合物、及びバインダー樹脂を溶媒に分散させて得られる下引層形成用塗布液を導電性支持体2上に塗布し乾燥することにより形成できる。
バインダー樹脂としては、良好な膜を形成できるもので、かつ所望の特性が得られるものであれば公知のいかなるものでも使用可能であるが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等を用いることができる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
なお、下引層形成用塗布液中の金属酸化物粒子とアクセプター性化合物とバインダー樹脂との配合比率は所望する電子写真感光体の特性を得られる範囲で任意に設定できる。
下引層形成用塗布液には電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加物を用いることができる。添加物としては、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。シランカップリング剤は酸化亜鉛の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いることもできる。
ここで用いられるシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン等である。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。
下引層形成用塗布液を調整するための溶媒としては、例えば、アルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等の公知の有機溶剤から任意で選択することができる。より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合、混合溶媒としてバインダー樹脂を溶かすことができる溶媒であれば、いかなる組み合わせでも使用することが可能である。
下引層形成用塗布液は、上記溶媒にバインダー樹脂を溶解させ、さらに導電性金属酸化物とアクセプター化合物を添加・分散して調製することができる。
導電性金属酸化物を分散させる方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法を用いることができる。
下引層形成用塗布液を塗布する方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
下引層は、塗布したものを乾燥させて形成されるが、乾燥は溶媒を蒸発させ製膜可能な温度であればよい。
下引層3の厚さは、所望の特性が得られる範囲で任意に設定できるが、13μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは18μm以上50μm以下とされていることが好ましい。下引層3の厚さが13μm未満であると、充分な耐リーク性能が得られにくくなり、また50μmを超えると、長期使用時に残留電位が残りやすくなるため画像濃度異常を招きやすい傾向にある。
また、下引層3の表面粗さはモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)〜1/2λに調整されることが好ましい。このような表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加することができる。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型PMMA樹脂粒子等を用いることができる。
また、表面粗さ調整のために下引層3を研磨することもできる。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
下引層3の体積抵抗は、温度10℃湿度15%RHで106V/mの電場を印加したとき、1010Ω・cm以上1013Ω・cm以下であることが好ましい。このような体積抵抗とするためには、導電性金属酸化物の種類及びその添加量、アクセプター性化合物の種類及びその添加量、下引層の膜厚、有機金属酸化物等の添加、あるいは下引層形成用塗布液の分散状態によって決定され、更にこれらの組み合わせ等によって調整することができるが、以上の方法に限定されない。なお、下引層3の体積抵抗は、対抗電極としてφ1mmの金電極を形成した下引層表面に接触させ、温度10℃湿度15%RHで106V/mの電場を印加して測定される。
下引層3における導電性金属酸化物の平均粒径は、500nm以下であることが必要である。また、下引層を形成する際の塗布液の流動性や取り扱い易さの観点から、導電性金属酸化物の平均粒径は、30nm以上であることが好ましい。下引層3における導電性金属酸化物の平均粒径を上記の範囲内にする方法として、例えば、下引層塗布用液を調製する際の導電性金属酸化物の分散時間、分散時の分散圧力を調整する方法が挙げられる。
次に、電荷発生層4について説明する。電荷発生層5は既知の電荷発生材料及び結着樹脂から構成される。
電荷発生材料は、金属フタロシアニン顔料、特にその中でも以下に説明している特定の結晶を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。本発明に用いるヒドロキシガリウムフタロシアニンは、特開平5−263007号公報及び特開平5−279591号公報に開示されるように、公知の方法で製造されるクロロガリウムフタロシアニン結晶を、酸又はアルカリ性溶液中での加水分解又はアシッドペースティングを行って、ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を合成し、直接溶剤処理を行うか、或いは、合成によって得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を溶剤と共にボールミル、乳鉢、サンドミル、ニーダー等を用いて湿式粉砕処理を行うか、溶剤を用いずに乾式粉砕処理を行った後に溶剤処理することによって製造することができる。
上記の処理において使用される溶剤は、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等)、エステル類(酢酸エステル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルスルホキサイド、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、さらには数種の混合系、水とこれら有機溶剤の混合系などである。使用される溶剤は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンに対して、1質量部以上200質量部以下、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲で用いる。処理温度は、0℃以上150℃以下、好ましくは室温以上100℃以下の範囲で行う。また、粉砕の際に食塩、ぼう硝等の磨砕助剤を用いることもできる。磨砕助剤は顔料に対し0.5倍以上20倍以下、好ましくは1倍以上10倍以下の範囲で用いる。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比(質量比)は10:1乃至1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができる。この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件が必要とされるが、上記の分散法であればいずれについても分散前と結晶型が変化していないことが確認されている。さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生層5の厚みは、0.1μm以上5μm以下の範囲が好ましく、0.2μm以上2.0μm以下の範囲がより好ましい。電荷発生層5を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに、顔料の分散安定性や、光感度を増す目的、あるいは、電気特性を安定化させる目的で、顔料を処理したものを用いても良い。
次いで、電荷輸送層5について説明する。電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル樹脂、ビスフェノールAタイプ或いはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。
本実施形態においては、電荷輸送層5がフッ素系樹脂粒子を含有することができる。この場合、電荷輸送層におけるフッ素系樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層全量に対し、0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましい。含量が1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による改質効果が十分でなく、すなわち、潤滑性の向上が小さいためトナーのクリーニング性の向上効果が十分に得られにくく、一方、40質量%を越えると光通過性が低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。
本実施形態で用いるフッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
また、フッ素系樹脂粒子の一次粒径は0.05μm以上1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると、後述する電荷輸送層形成用塗布液を調製する場合、かかる塗布液の分散時に凝集が進みやすくなる。また、一次粒径が1μmを上回ると画質欠陥が発生し易くなる。
電荷輸送層5は、上記した電荷輸送材料及び結着樹脂と、必要に応じて上記フッ素系樹脂粒子とを適当な溶媒に溶解させた電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層4上に塗布し乾燥することによって形成することができる。
電荷輸送層の形成に使用される溶媒としては、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状或いは直鎖状エーテル系溶剤、或いはこれらの混合溶剤などを用いることができる。
電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1乃至1:5の範囲が好ましい。
電荷輸送層形成用塗布液は、溶媒、結着樹脂及び電荷輸送材料を含む溶液の温度を0℃以上50℃以下に維持しながら混合して調製することが好ましい。液温をかかる温度範囲内に制御する方法としては、例えば、水で冷やす、風で冷やす、冷媒で冷やす、塗布液を製造する室温を調節する、温水で暖める、熱風で温める、ヒーターで暖める、発熱しにくい材料で塗布液製造設備を作る、放熱しやすい材料で塗布液製造設備を作る、蓄熱しやすい材料で塗布液製造設備を作るなどの方法が利用できる。
塗布液を混合する方法としては、スターラー、攪拌羽による攪拌、ロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、等の方法が利用できる。分散方法として、サンドミル、アトライター、ボールミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、ロールミル等の方法が利用できる。
また、電荷輸送層形成用塗布液にフッ素系樹脂粒子を含有させる場合、溶媒に溶解した結着樹脂、電荷輸送材料などの溶液中にフッ素系樹脂粒子を、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コロイドミル、衝突式メディアレス分散機、貫通式メディアレス分散機等の方法を用いて分散させることが好ましい。
また、電荷輸送層形成用塗布液には、塗布液の分散安定性を向上させるため、及び塗膜形成時の凝集を防止するために分散助剤を少量添加することも有効である。分散助剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、シリコーンオイル等が挙げられる。
電荷輸送層5を形成する際には、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
また、電荷輸送層5を形成する際には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷輸送層5の膜厚は、5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。
本発明に係る電子写真感光体の感光層には、複写機中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体が挙げられる。
また、感光層には、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。
電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等を挙げることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl,CN,NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
保護層7は、感光層の機械的強度をさらに改善するために設けられている。特に、積層構造からなる電子写真感光体1では帯電時の電荷輸送層5の化学的変化を防止するのに有効である。
この保護層7は、硬化性樹脂、電荷輸送性化合物を有する樹脂硬化膜、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成された膜などから形成できる。硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シロキサン樹脂等が挙げられる。電荷輸送性化合物を有する樹脂硬化膜としては、公知の電荷輸送性化合物から誘導される有機機を有する樹脂硬化膜が挙げられる。導電性材料としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンなどの導電性金属酸化物が挙げられる。
また、電子写真感光体の電子写真特性、機械的強度、耐電特性等をより高める観点から、保護層7は、グアナミン構造若しくはメラミン構造を有する化合物の少なくとも1種と、−OH、−OCH3、−NH、−SH、及び−COOHからなる群より選択される置換基を1つ以上有する電荷輸送性材料の少なくとも1種とを含む架橋性樹脂組成物の架橋膜からなるものが好ましい。
グアナミン構造若しくはメラミン構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(A)又は(B)で示される化合物が挙げられる。
[式(A)中、R11は、炭素数1〜10の分岐してもよいアルキル基、炭素数6〜10の置換若しくは未置換のフェニル基を示し、R12〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、−CH2−OH、−CH2−O−R16(R16は炭素数1〜5の分岐してもよいアルキル基を示す。)を示す。]
[式(B)中、R21〜R26はそれぞれ独立に、水素原子、−CH2−OH、−CH2−O−R27(R27は炭素数1〜5の分岐してもよいアルキル基を示す。)を示す。]
−OH、−OCH3、−NH、−SH、及び−COOHからなる群より選択される置換基を1つ以上有する電荷輸送性材料としては、例えば、下記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
F[(−R31−X)n1−R32−Y]n2 …(I)
[式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基、R31、R32はそれぞれ独立に炭素数1〜5の分岐してもよいアルキレン基、n1は0または1を示し、n2は1〜4の整数を示す。Xは酸素、NH又は硫黄を示し、Yは−OH、−OCH3、−NH、−SH、又は−COOHを示す。]
上記一般式(I)で示される化合物の具体例としては、以下に示す(I−1)〜(I−25)の化合物が挙げられる。
保護層7における一般式(I)で示される化合物の含有量は、電気特性、強度の観点から、保護層の固形分全量を基準として90質量%以上であることが好ましい。
また、保護層7におけるグアナミン構造若しくはメラミン構造を有する化合物の含有量は、電気特性、強度の観点から、保護層の固形分全量を基準として0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
保護層7にはさらに、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、他のカップリング剤やフッ素化合物を加えてもよい。このような化合物としては、各種シランカップリング剤、および市販のシリコーン系ハードコート剤を用いることができる。
また、保護層7の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、粒子分散性、粘度コントロール、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などの目的で、アルコール系溶剤に溶解する樹脂を加えることもできる。
また、保護層7には、帯電手段で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来よりも強い酸化耐性が要求される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系あるいはヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては、保護層7における固形分全量を基準として20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
更に、保護層7には、残留電位を下げるため、あるいは強度を上げるために導電性粒子や、有機、無機微粒子を添加してもよい。粒子の一例として、ケイ素含有粒子を挙げることができる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1〜100nm、好ましくは10〜30nmのシリカを、酸性もしくはアルカリ性の水分散液、あるいはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層7中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、保護層7の全固形分全量を基準として、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmである。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状を改善することができる。すなわち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層7中のシリコーン粒子の含有量は、保護層7の全固形分全量を基準として、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO2−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。
また、保護層7には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加しても良い。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズおよびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が好ましい。
また、上記の架橋性樹脂組成物には、硬化を促進するために触媒を使用することができる。硬化触媒として酸系の触媒を好ましく用いることができる。酸系の触媒としては、酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族カルボン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、などの脂肪族、および芳香族スルホン酸類などが用いられるが、含硫黄系材料を用いることが好ましい。
上記の架橋性樹脂組成物が上記一般式(A)又は(B)で示される化合物を含有する場合、硬化触媒として含硫黄系材料を用いることにより、この含硫黄系材料が上記一般式(A)又は(B)で示される化合物、及び上記の−OH、−OCH3、−NH、−SH、及び−COOHからなる群より選択される置換基を1つ以上有する電荷輸送性材料の硬化触媒として優れた機能を発揮し、硬化反応を十分に促進して得られる保護層の機械的強度をより向上させることができる。更に、含硫黄系材料は、上記の電荷輸送性材料に対するドーパントとしても優れた機能を発揮し、得られる機能層の電気特性をより向上させることができる。その結果、本発明に係る電子写真感光体を形成した場合に、機械強度、成膜性及び電気特性の全てを高水準で達成することができる。この触媒としては、常温、あるいは、加熱後に酸性を示すものが好ましく、接着性、ゴースト、電気特性の観点で有機スルホン酸及び/又はその誘導体が最も好ましい。保護層中にこれら触媒の存在は、XPS等により容易に確認できる。
有機スルホン酸及び/又はその誘導体としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸(DNNSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、触媒能、成膜性の観点から、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。また、架橋性樹脂組成物中で、ある程度解離可能であれば、有機スルホン酸塩を用いることもできる。
また、一定以上の温度をかけたときに触媒能力が高くなる、所謂、熱潜在性触媒を用いることで、液保管温度では触媒能が低く、硬化時に触媒能が高くなるため、硬化温度の低下と、保存安定性を両立することができる。
熱潜在性触媒としては、例えば、有機スルホン化合物等をポリマーで粒子状に包んだマイクロカプセル、ゼオライトのような空孔化合物に酸等を吸着させたもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックした熱潜在性プロトン酸触媒や、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を一級もしくは二級のアルコールでエステル化したもの、プロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体をビニルエーテル類及び/又はビニルチオエーテル類でブロックしたもの、三フッ化ホウ素のモノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素のピリジン錯体などが挙げられる。中でも、触媒能、保管安定性、入手性、コストの面でプロトン酸及び/又はプロトン酸誘導体を塩基でブロックしたものが好ましい。
熱潜在性プロトン酸触媒のプロトン酸としては、例えば、硫酸、塩酸、酢酸、硫酸、ギ酸、硝酸、リン酸、スルホン酸、モノカルボン酸、ポリカルボン酸類、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フタル酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、o、m、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、プロトン酸誘導体としては、例えば、スルホン酸、リン酸等のプロトン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属円などの中和物、プロトン酸骨格が高分子鎖中に導入された高分子化合物(ポリビニルスルホン酸等)等が挙げられる。プロトン酸をブロックする塩基としては、アミン類が挙げられる。アミン類は、1級、2級又は3級アミンに分類されるが、本発明ではいずれも使用できる。
上記の熱潜在性触媒は単独又は二種類以上組み合わせても使用することができる。
熱潜在性触媒の配合量は、保護層における固形分全量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.02〜1質量%であることがより好ましい。熱潜在性触媒の配合量が0.01%未満では触媒活性が十分に得られにくく、5質量%を超えると残留触媒により保護層の抵抗が低下し、高温高湿下での画像流れが発生しやすくなる。
保護層7は、上述した架橋性樹脂組成物のような、保護層を構成する材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層6上に塗布して硬化させることで形成される。
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、電子写真感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層7の形成に使用される電荷輸送性材料としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部とすることが好ましい。
保護層形成用塗布液を用いて保護層7を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
保護層7の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがさらに好ましく、1〜8μmがより好ましい。
また、本発明に係る電子写真感光体において単層型感光層を構成する場合、単層型感光層は、電荷発生材料と結着樹脂を含有して形成される。電荷発生材料としては機能分離型感光層における電荷発生層に使用されるものと同様のものを、結着樹脂としては機能分離型感光層における電荷発生層及び電荷輸送層に用いられる結着樹脂と同様のものを用いることができる。単層型感光層中の電荷発生材料の含有量は、単層型感光層における固形分全量を基準として好ましくは10〜85質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
単層型感光層には、光電特性を改善する等の目的で電荷輸送材料や高分子電荷輸送材料を添加してもよい。その添加量は単層型感光層における固形分全量を基準として5〜50質量%とすることが好ましい。また、塗布に用いる溶剤や塗布方法は、上記各層と同様のものを用いることができる。
単層型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μmとすることがさらに好ましい。
以上、本発明に係る一実施形態の画像形成装置100について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、画像形成装置100は、1つの電子写真感光体で複数の色のトナー画像を形成させる、所謂4サイクル方式の画像形成装置であってもよい。
また、電子写真感光体1、帯電装置11、露光装置13、現像装置14、補助帯電装置16、クリーニング装置17及び除電装置18を含むユニットが4つ、中間転写体上に並列に配置され、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成を有するタンデム方式のフルカラー画像形成装置としてもよい。このような装置においては、一つの制御部20が各補助帯電装置16に対して画像形成装置のプロセススピードに応じた所定の電流制御を行うことで、各電子写真感光体1の帯電電位を調整してもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<下引層における導電性金属酸化物の平均粒径の測定>
導電性金属酸化物の平均粒径は、導電性金属酸化物を含有する下引層の断面を、透過型電子顕微鏡を用いて4万倍の倍率で写真撮影し、場所を変えて撮影された5箇所の写真についてランダムに選択した100個の粒子の最大長さをそれぞれ測定し、これらを平均して求めた。
<電子写真感光体及び画像形成装置の作製>
(実施例1)
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製試作品:比表面積値15m2/g)100質量部をトルエン480質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学工業社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
上記表面処理を施した酸化亜鉛60質量部、アリザリン0.7質量部、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部及びブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液40質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、混合物Aを得た。この混合物Aについて、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4.5時間分散を行った。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ25μmの下引層を得た。その断面を上記の方法に従い、透過型電子顕微鏡を用いて酸化亜鉛の平均粒径を測定したところ、平均粒径は70nmであった。また、下引層について、温度10℃、湿度15%RHの環境下、対抗電極としてφ1mmの金電極を用い、106V/mの電場を印加したときの体積抵抗を測定した。
次に、電荷発生物質としてのCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、ユニオンカーバイト社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。
得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この電荷発生層形成用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温で乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1、1’]ビフェニル−4,4’−ジアミン4質量部及びビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量4万)6質量部をテトラフドロフラン80質量部に溶解し、電荷輸送層形成用の塗布液を得た。この電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布し、115℃、40分の乾燥を行うことにより膜厚33μmの電荷輸送層を形成した。こうして、電子写真感光体を得た。
上記で得られた電子写真感光体を、プロセススピード可変及び補助帯電を印加後の感光体表面電位の測定が可能になるよう改造が施された、中間転写システム及び補助帯電装置を有するDocuCentre 750 I(富士ゼロックス社製)に装填し、画像形成装置を得た。この画像形成装置を用い、スコロトロン帯電器による感光体の帯電電位:−750V、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:450μA(補助帯電後の感光体の電位:−950V)の設定条件にて下記の画質評価試験を行った。
[画質評価試験]
20℃、40%RHの環境下において、以下の評価を連続して行なった。まず、20℃、40%RHの環境下にて10枚の連続画像形成テストを行ない、10枚目の画像のゴーストを評価した。その後、同一環境下にて画像形成テストを実施し、感光体回転数で20万回転目の画質品質を評価した。また、現像機中にも電位計を付け、初期の電子写真感光体の露光後の電位と、20万回転後の露光後の電位とを測定し、これらの電位差(V)を求めた。
(ゴースト評価)
ゴーストは、図6に示すGの文字と黒領域を有するパターンのチャートをプリントし、黒べた部分にGの文字の現れ具合を目視にて評価した。
A:図6(A)のように良好〜軽微である、
B:図6(B)のように若干目立つ程度である、
C:図6(C)のようにはっきり確認できる。
(20万回転目の画質品質評価)
ゴースト、クリーニング不良、微小黒点、白抜けの有無を目視により評価した。これらの画質欠陥がない場合を「良好」とし、画質欠陥が見られた場合はその欠陥を表中に示した。
(実施例2)
実施例1における混合物Aの分散時間を6.0時間とし、酸化亜鉛の平均粒径が70nmである下引層を作製したこと、及び電荷輸送層の膜厚を35μmとしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
上記の電子写真感光体を用い、プロセススピード:50mm/sec、補助帯電装置への流入電流:470μA(補助帯電後の感光体の電位:−1350V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例3)
混合物Aに含有させる表面処理を施した酸化亜鉛を50質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。なお、下引層における酸化亜鉛の平均粒径は100nmであった。
上記の電子写真感光体を用い、プロセススピード:125mm/sec、補助帯電装置への流入電流:500μA(補助帯電後の感光体の電位:−1180V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例4)
混合物Aに含有させる表面処理を施した酸化亜鉛を70質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。なお、下引層における酸化亜鉛の平均粒径は150nmであった。
上記の電子写真感光体を用い、プロセススピード:200mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−1080V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例5)
アリザリン0.7質量部に代えてキニザリン0.7質量部を混合物Aに配合したこと以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。なお、下引層における酸化亜鉛の平均粒径は150nmであった。
上記の電子写真感光体を用い、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−950V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例6)
酸化チタン(平均粒子径15nm:テイカ社製試作品)100質量部をトルエン480質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM603:信越化学工業社製)1.25質量部を添加し、2時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化チタンを得た。
上記表面処理酸化チタン60質量部、アリザリン0.7質量部、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)13.5質量部及びブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液40質量部と、メチルエチルケトン25質量部とを混合し、混合物Bを得た。この混合物Bについて、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4.5時間分散を行った。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)4.0質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径84mm、長さ340mm、肉厚1mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ3μmの下引層を得た。その断面を上記の方法に従い、透過型電子顕微鏡を用いて酸化チタンの平均粒径を測定したところ、平均粒径は250nmであった。
次に、下引層上に、電荷発生層及び電荷輸送層を実施例1と同様にして形成し、電子写真感光体を得た。
上記の電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−950V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例7)
実施例1と同様にして電荷輸送層まで形成し、この電荷輸送層上に以下の手順により保護層を形成した。すなわち、まず、下記式(I−16)で示される電荷輸送材料95質量部、下記式(M−1)で示されるメラミン構造を有する化合物5質量部、及び硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.5質量部をシクロペンタノール350質量部に十分に溶解混合し、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を、電荷輸送層まで形成したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚7μmの保護層を形成した。こうして、電子写真感光体を得た。
式(M−1)中、n−Buはノルマルブチル基を示す。
上記の電子写真感光体を用い、補助帯電装置への流入電流:450μA(補助帯電後の感光体の電位:−350V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例8)
実施例7と同様にして作製した電子写真感光体を用い、プロセススピード:50mm/sec、補助帯電装置への流入電流:470μA(補助帯電後の感光体の電位:−1350V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例9)
実施例1と同様にして電荷輸送層まで形成し、この電荷輸送層上に以下の手順により保護層を形成した。すなわち、まず、上記式(I−16)で示される電荷輸送材料98質量部、上記式(M−1)で示されるメラミン構造を有する化合物0.5質量部、及び硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.1質量部をシクロペンタノール350質量部に十分に溶解混合し、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を、電荷輸送層まで形成したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚7μmの保護層を形成した。こうして、電子写真感光体を得た。
この電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−350V)の条件下で実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例10)
実施例1と同様にして電荷輸送層まで形成し、この電荷輸送層上に以下の手順により保護層を形成した。すなわち、まず、上記式(I−16)で示される電荷輸送材料96質量部、上記式(M−1)で示されるメラミン構造を有する化合物2質量部、及び硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.1質量部をシクロペンタノール350質量部に十分に溶解混合し、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を、電荷輸送層まで形成したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚7μmの保護層を形成した。こうして、電子写真感光体を得た。
この電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−350V)の条件下で実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(実施例11)
実施例1と同様にして電荷輸送層まで形成し、この電荷輸送層上に以下の手順により保護層を形成した。すなわち、まず、上記式(I−16)で示される電荷輸送材料96質量部、下記式(M−2)で示されるメラミン構造を有する化合物2質量部、及び硬化触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸(キングインダストリーズ社製:Nacure5225)0.1質量部をシクロペンタノール350質量部に十分に溶解混合し、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を、電荷輸送層まで形成したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、150℃、40分で乾燥することにより、膜厚7μmの保護層を形成した。こうして、電子写真感光体を得た。
式(M−2)中、iso−Buはイソブチル基を示す。
この電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−350V)の条件下で実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:460μA(補助帯電後の感光体の電位:−350V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例2)
実施例1における混合物Aの分散時間を1.8時間とし、酸化亜鉛の平均粒径が600nmである下引層を作製したこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
上記の電子写真感光体を用い、実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例3)
アリザリンを混合物Aに配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。なお、下引層における酸化亜鉛の平均粒径は150nmであった。
上記の電子写真感光体を用い、実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例4)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)4質量部をn−ブチルアルコール170質量部に溶解し、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部及び有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を更に添加し、混合撹拌して下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された30mmφのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い、厚さ1μmの下引層を形成した。
次に、下引層上に、電荷発生層及び電荷輸送層を実施例1と同様にして形成し、電子写真感光体を得た。
上記の電子写真感光体を用い、実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例5)
実施例1と同様にして作製した電子写真感光体を用い、プロセススピード:350mm/sec、補助帯電装置への流入電流:720μA(補助帯電後の感光体の電位:−1520V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
(比較例6)
実施例2と同様にして作製した電子写真感光体を用い、プロセススピード:50mm/sec、補助帯電装置への流入電流:510μA(補助帯電後の感光体の電位:−1550V)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、画質評価試験を行った。
1…電子写真感光体、2…導電性支持体、3…下引層、4…電荷発生層、5…電荷輸送層、6…感光層、7…保護層、8…単層型感光層、11…帯電装置、12…電源、13…露光装置、14…現像装置、15…転写装置、16…補助帯電装置、17…クリーニング装置、18…除電装置、19…定着装置、20…制御部、100…画像形成装置。