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JP5183144B2 - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

二輪車用空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、二輪車用空気入りタイヤに関するもので、特に、旋回時における横グリップの向上とショルダー部のトレッド摩耗の防止に関する。
自動二輪車用のタイヤは、車体を傾けて旋回するという特徴がある。そのため、車体の傾きによって、路面に接地するタイヤの部分が移動する。つまり、直進時にはタイヤセンター部を使用し、旋回時にはタイヤのショルダー部を使用するという特徴がある。
また、直立時は速度が高く、制動力や駆動力といった前後方向(タイヤの赤道方向)の力が加わるが、車体を傾けた旋回時には大きな横力が加わるため、タイヤのショルダー部には上記横力に対応する高い横グリップが求められる。すなわち、二輪車を速く旋回させるには、旋回速度の大きさに伴って大きくなる遠心力と釣り合わせるために、車体を大きく倒す必要があり、更に、その遠心力に対向できるようにタイヤが路面にグリップできなければならない。
つまり、車体を大きく傾けたとき、タイヤのグリップが不足する場合には、速く旋回できないことになるため、ショルダー部のグリップが旋回性能に及ぼす影響は非常に大きい。そこで、タイヤのショルダー部に対しては、グリップの高いゴムを用いている。
また、タイヤのセンター部に対しては、市販のタイヤでは直進走行の頻度が高いため、耐摩耗性の高いゴムを用いることが多い。一方、レースや競技用のタイヤにおいては、直進時の速度が非常に高いため、発熱しにくいゴムをトレッドセンター部に配置したり、トレッドセンター部を二重構造として、内部に発熱しにくいゴムを、外部にグリップの高いゴムを配置したりするなどの工夫がなされている。
トレッドの発熱は、タイヤのショルダー部でも問題になる。この発熱はゴムに繰り返し加わる歪みが大きいほど大きく、タイヤの回転速度が速いほど大きい。特に、バイクレースはもとより、一般消費者でも激しいライディングを行ったときには、タイヤのショルダー部に大きな入力が加わるだけでなく、車体が比較的速い速度で旋回することから、ショルダー部のトレッドゴムの発熱が大きい。
ゴムは発熱すると軟化する性質があるため、ゴムが軟化してトレッド剛性が低下することで旋回性能が低下したり、ショルダー部の摩耗が進んだり、ショルダー部のゴムが劣化したりする。
一方、ゴムの特性として、損失正接(tanδ)は、ゴムが路面をグリップするときの力 (もしくは、ゴムと路面との間の摩擦係数) の大きさに非常に大きな意味を持つ。tanδが大きなゴムは、ゴムの変形に伴うエネルギーロスが大きくグリップが高い。しかし、エネルギーロスが大きいために、繰返し変形をした場合にゴム自体が発熱しやすいといった特性がある。また、発熱したゴムは柔らかくなる特性があり、タイヤのトレッドゴムの発熱があまりに大きくなると、トレッドの剛性が低下して操縦安定性能が悪化することがある。つまり、tanδの大きいゴムはグリップが優れている反面、発熱しやすく、繰り返し使用した場合に柔らかくなりやすい。
特に、バイクレースや、一般消費者でも激しいライディングを行ったときには、走行中にショルダー部のトレッドゴムが発熱して旋回性能が低下するだけでなく、発熱によってゴムが柔らかくなってトレッド剛性が低下し、タイヤが滑りやすくなる。その結果、ショルダー部の摩耗が進んだり、ショルダー部のゴムが劣化したりする。
従来の二輪車用タイヤでは、タイヤショルダー部のゴムについては、グリップを向上させることを中心に、グリップの高い、すなわち、摩擦係数が大きくなるゴムである、損失正接(tanδ)の大きいゴムが主に使用されていた。例えば、特許文献1には、タイヤショルダー部については、グリップ性を確保するため、tanδが0.4〜0.8であるゴムを使用し、タイヤのセンター部については、低燃費製を確保するため、tanδが0.05〜0.3であるゴムを使用した二輪自動車用タイヤが示されている。また、特許文献2には、タイヤショルダー部には幅広の平板状ゴムを一周巻にした一周巻き体を用い、タイヤショルダー部には幅狭長尺のゴムストリップを周方向にかつ螺旋状に巻いたものを用いるとともに、タイヤショルダー部についてはtanδが0.2〜0.4の範囲のゴムを配置し、タイヤのセンター部については、tanδがタイヤショルダー部のゴムのtanδの80%以下であるゴムを配置した二輪車用タイヤが示されている。
特開昭60−94804号公報 特開2006−256385号公報
しかしながら、上記従来の二輪車用タイヤのように、タイヤショルダー部にtanδの大きなゴム配置した場合には、初期状態においては十分なグリップを確保できるものの、ゴムが発熱しやすいため、操縦安定性能やショルダー部の耐摩耗性能に問題がある。更に、繰り返しの使用によりショルダー部の摩耗が進んだり、ショルダー部のゴムが劣化したりすると、グリップが低下してしまうといった問題点があった。
以下に、タイヤショルダー部にtanδの大きなゴム配置した場合の問題点について詳細に説明する。
自動二輪車用のタイヤでは、車体を大きく倒した場合の旋回性能は、タイヤトレッドの片側の端部が接地したときに発生するグリップに依存する。図10は、タイヤ50がキャンバー角(以下、キャンバーアングルとしてCAと記す)50度で接地して回転しているときの断面を示す図で、CAはタイヤ50の縦断面において、車輪中心線CLと路面60に垂直な方向であるZ軸との成す角である。
二輪車が車体を大きく倒して旋回する場合、すなわち、タイヤ50のCAが45度〜50度である場合、タイヤ50のトレッド51の全幅(トレッド幅)のほぼ1/4が接地する。この接地している1/4の領域を3等分し、トレッド端部側に近い方から領域A、領域B、領域Cとし、各領域におけるタイヤ50の幅方向断面でのトレッド51の変形を考える。これは、トレッド変形によってタイヤ50に横力が発生するからで、トレッド51の横方向の変形によりキャンバースラスト(横力)が発生する。
なお、CA50度で接地して回転しているときには、トレッドの接地形状は楕円の一部が欠けた形状であったり、半月形であったりする。
ここで、接地面の中心の領域である領域Bのトレッド幅方向の変形について述べる。
領域Bのトレッド表面、すなわち、路面に接する点をQ点とし、このQ点の内側でトレッド最深部に位置する点をP点とすると、タイヤ50の接地転動時には、上記路面60に接するQ点はトレッド51の表面が路面60に接触したとき路面60に固定され、同図の紙面に垂直な方向である路面60の延長方向、すなわち、タイヤ50の進行方向に沿って直線的に動く。一方、トレッド最深部の点であるP点は、タイヤ50がCAを付けて傾いて転動するため、弓なりの曲線を描く(同図のP→P’→Pで示した直線は、上記曲線の正射影で、同図の右側が車体側で、左側が車体外側である)。このようなP点とQ点の動きの差によって、トレッド51は車体外側方向に横剪断力を受ける。また、この横剪断力が最大になるのは、上記Q点が荷重直下、すなわち、接地面のタイヤ周方向中心に位置したときである。このような横剪断力によりトレッド51が横変形を受けることにより、タイヤ50には上記横剪断力とは反対の方向の力、すなわち、車体側にキャンバースラスト(横力)が発生し、これが旋回時の横グリップとなる。
このようなキャンバースラストの発生の仕組みから、接地長(接地形状の周方向=赤道方向の長さ)が長い方が上記P点と上記Q点との軌跡の差が広がるので、トレッド51が大きく剪断される。逆に、接地長が短いと、トレッド51の剪断量(横方向=タイヤ幅方向の剪断)は少ない。
接地形状が楕円の一部が欠けた形状である場合には、上記3つの領域では、接地長は領域Bが最も長く、次いで領域Aが長く、C領域が最も短い。したがって、領域Bが最も大きな剪断を受け、次いで領域Aで剪断が大きく、領域Cの剪断は少ない。一方、接地形状が半月形である場合には、領域Aと領域Bとがほぼ同じ接地長で長く、領域Cでは接地長が短いので、領域Aと領域Bとで大きな剪断を受け、領域Cの剪断は少ない。
つまり、CAが45度〜50度の大CA時の剪断では、領域Aや領域Bが横力を大きく稼ぐ部位である。
自動二輪車の傾き角(バンク角、もしくは、CA)を観察すると、自動二輪車はCAが45度〜50度以上には倒れない。つまり、領域Aは自動二輪車が最大角度で傾いたときのみ接地する領域である。また、領域Bについても、自動二輪車が大きく傾いたときを中心に使われる。一方、領域Cは、自動二輪車が大きく傾いてからやや傾きが戻った時、すなわち、CAが40度近辺で主に使われる領域である。つまり、領域Cは、自動二輪車を傾けていく過程で使い、更に大きく倒したときにも使うだけでなく、更に、自動二輪車を加速させて直立させる過程でも使う。特に、摩耗の大きいリアタイヤについて考えると、この領域Cは、自動二輪車を大きく倒して、そこから加速するときに使う領域である。
自動二輪車はCAが40度近辺で大きな駆動力を伝えることが多いため、上記領域Cは、加速時の前後方向の駆動入力と横方向の横入力の両方を頻度高く受ける領域であるといえる。その結果、この領域Cがトレッド摩耗の最も進む部位となる。
一方、上記のように、トレッドゴムのtanδが大きいとエネルギー損失が大きく、グリップは大きくなるが、発熱も大きい。発熱してしまうとゴムが柔らかくなるため、トレッドゴムの厚い二輪車用タイヤにおいては、トレッドゴムの横剪断剛性が低下してしまう。その結果、操縦安定性能が損なわれるだけでなく、滑りが増加するので、摩耗が促進するといった問題点が発生する。
二輪車用タイヤでは、旋回時にグリップが必要なため、タイヤのショルダー部にtanδが大きいゴムを配置することが普通であるが、CAが45度〜50度の高速回転の頻度が多いと、タイヤのショルダー部が発熱して上記の弊害が起こる。特に、高速で旋回するバイクレースのような厳しい使用状態では、歪の繰返し変形が高周波で与えられるため、発熱が極めて大きく、トレッド表面の温度が120℃を超える場合もある。このような条件下では、tanδが大きいゴムほど発熱が大きくなり、繰返しの使用でトレッドゴムが異常に加熱されてゴムが軟化する。これにより、トレッドの剪断剛性が低下して操縦安定性能が悪化するばかりか、摩耗が促進されることになる。更に、トレッドが高温になると、トレッド部のゴムが劣化しやすくなる。厳しい入力の高速走行を含むバイクレースでは、トレッドの温度が高くなりすぎると、ゴム中に気泡ができ、この気泡から亀裂が進展してトレッドゴムの一部が脱落する場合もある。
トレッドゴムの軟化は、二輪車用のタイヤの場合致命的である。二輪車用タイヤではキャンバースラストで横力を発生させる。キャンバースラストは、図10のP点とQ点との軌跡で示したように、横剪断変位が決まっている。つまり、タイヤ寸法とタイヤのCAとが決まると、ベルトの軌跡が幾何学的に決まってしまい、P点とQ点の軌跡が最大に離れる距離がトレッドを横に剪断できる量となる。以上の特徴的なベルト挙動から、トレッドゴムの弾性率が低下すると、同じ変位が与えられたときの反力が低下することになる。すなわち、トレッドゴムが発熱して柔らかくなると、同じ変位を与えたときのゴムの反力が低下するので、タイヤが発生する横力が低下することになる。
このようなことから、トレッドゴムは発熱を抑制しながら、最大のグリップを出せることが必要である。すなわち、高いグリップを発生させるためにはtanδの大きなゴムが適しているが、発熱を抑制してトレッドゴムの軟化を防ぐためにはtanδの小さなゴムがよいことになる。
また、トレッドの周方向の変形も車体側の領域である領域Aと車体外側の領域である領域Cとでは異なっている。これは、領域Cがトレッドのセンター寄りにあり、領域Aがトレッド端部側にあるため、上記領域Cと領域Aとではベルトの速度が異なるからである。
二輪車用タイヤの特徴は、乗用車用タイヤに比べて、幅方向断面に大きな丸みを持っていることで、そのため、回転軸からベルトまでの距離であるベルト半径が領域Aでは小さく、領域Cでは大きい。すなわち、図10に示す領域Cでのベルト半径RCは、領域Aのベルト半径RAよりも大きい。したがって、ベルト速度、つまりトレッドが路面に接触してから、タイヤの回転が進み、トレッドが地面を離れるまでのベルトの速度は領域Cの方が速い。これは、ベルト半径にタイヤの回転速度をかけたものがベルトの速度になるからであり、タイヤの回転速度は領域Aも領域Cも同じだからである。このベルトの周方向の速度差により、タイヤのセンター寄りの領域Cではトレッドがドライビング状態であり、タイヤのトレッド端寄りの領域Aではブレーキング状態である。ドライビングとは、タイヤを赤道方向に沿って輪切りにした場合に、そのトレッド変形が、トレッド内面(タイヤ内部の骨格部材に接している面)がタイヤ進行方向後方に剪断され、路面に接地しているトレッド表面がタイヤ進行方向前方に変形している剪断変形であり、ちょうど、タイヤに駆動力をかけたときに起こる変形である。一方、ブレーキングはドライビングの逆であり、トレッド変形はタイヤ内部側が進行方向前方に剪断され、路面に接地しているトレッド表面がタイヤ進行方向後方に変形している剪断変形であり、制動したときのタイヤの動きとなる。
このような周方向の変形は、タイヤが駆動力も制動力も受けずに、遊輪状態で転がるだけで発生する。そして、この周方向剪断変形によって、領域Aと領域Cとでタイヤが路面から滑りやすくなり、摩耗が進む。また、上記トレッドの周方向の変形は、トレッド表面が路面に接してから、タイヤの回転に伴って徐々に増加して行く。そして、蹴り出し(トレッドが路面から離れること)直前にトレッドの周方向の変形は最大となる。蹴り出し時に接地圧が弱くなると、トレッドが路面から滑るため、摩耗が発生する。このような旋回中の余計な変形は、タイヤショルダー部に偏摩耗を起こしやすいので、ないほうがよい。また、このような余計な周方向の動きはタイヤが1回転するたびに繰り返される。このため、ゴムに周期的な変形が加わることになり、ゴムが発熱しやすくなる。この周方向の動きは、横方向のグリップには全く寄与しない無駄な動きであり、この変形によってゴムの発熱を促進し、また、ゴムの摩耗も促進させる。
特に、横グリップを高めるために、タイヤのショルダー部にtanδの大きなゴムを用いた場合には、横方向の変形だけでなく、上記周方向の無駄な変形によっても発熱が促進されてしまうといった問題がある。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、二輪車の旋回時における横グリップを向上させるとともに、ショルダー部のトレッド摩耗を低減することのできる二輪車用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本願の請求項1に記載の発明は、ベルト層とこのベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴムとを備えた二輪車用空気入りタイヤであって、ショルダー部のトレッドゴムは、トレッド表面側に位置するショルダー部表面層と、上記ショルダー部表面層のタイヤ径方向内側に配置された第1の異種ゴム層とを備え、センター部のトレッドゴムは、トレッド表面側に位置するセンター部表面層と、上記センター部表面層のタイヤ径方向内側に配置された第2の異種ゴム層とを備え、上記ショルダー部のトレッドゴムと上記センター部のトレッドゴムとの間に配置されるトレッドゴムは、トレッド表面側に位置する中間部表面層と、上記中間部表面層のタイヤ径方向内側で上記第1の異種ゴム層と上記第2の異種ゴム層との間に配置された内部中間層とを備え、上記第1の異種ゴム層は、一端がトレッド端部に位置し、幅がトレッド展開幅の5%〜30%の範囲にあり、上記第1の異種ゴム層のゴムの損失正接(以下、tanδという)は、上記ショルダー部表面層のゴムのtanδよりも小さく、上記第2の異種ゴム層のゴムのtanδは、上記センター部表面層のゴムのtanδよりも小さく、上記内部中間層のゴムのtanδと上記中間部表面層のゴムのtanδとは、上記ショルダー表面層のゴムのtanδと等しいことを特徴とするものである。これにより、横グリップを確保することができるとともに、ショルダー部の発熱を抑制することができるので、旋回性能に優れるとともに、操縦安定性能及び耐摩耗性能にも優れた二輪車用タイヤを得ることができる。また、トレッドのセンター部においてもゴムの発熱を抑制できるので、直進時の駆動、制動特性についても向上させることができる。なお、トレッドのセンター部とはトレッドの中央部に位置し、その幅がトレッド全幅(トレッド展開幅)の25%程度の領域であり、トレッドの自動二輪車が直立しているときに路面に接している部分に相当する。
上記異種ゴム層の幅をトレッド展開幅の5%〜30%の範囲としたのは、少なくとも最大CA時に接地する領域A(図10参照)での発熱を抑制するとともに、温度が下がりすぎてグリップが低下することを防ぐことができるようにしたためである。
なお、トレッドゴム、ベルト層、ゴム層等の「幅」とは、タイヤの縦断面(トレッド幅方向断面)において、トレッド表面の曲面に沿った長さを指し、「厚さ」はタイヤ径方向に沿った長さを指す。また、「トレッド展開幅」は、幅方向に丸みを持つトレッドを展開して平面にしたときの、一方の端部から他方の端部までの長さであって、上記トレッド表面の曲線に沿って測定したトレッドの一方の端部から他方の端部までの長さに等しい。
また、上記tanδはゴム材料が変形する際にどのぐらいエネルギーを吸収するか(熱に変えるか)を示す値で、一般には、動的粘弾性測定装置を用いて測定される。例えば、周波数15kHz、歪5%の正弦波の変位をゴムサンプルに加え、そのときの反力を測定して求める。本発明においては、動的粘弾性測定装置を用いて、温度50℃、周波数15kHz、歪5%でtanδを測定した。また、自動二輪車用タイヤでも競技用のタイヤの場合は、ショルダー部のトレッド温度は100℃を超える場合もあるので、目的に応じて100℃でのtanδを測定し、これを本発明のtanδとしている。一般の消費者向けのタイヤでは50℃でのtanδを用いることが好ましく、競技用のタイヤでは、100℃でのtanδを用いることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記第1の異種ゴム層の幅をトレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に狭くしたものである。これにより、トレッドの摩耗が進展したときにはtanδの小さいゴムの割合も小さくなるので、摩耗に伴うトレッド温度の低下を防ぐことができる。したがって、トレッドの摩耗によるグリップの低下を防ぐことができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記第1の異種ゴム層の幅をトレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に広くしたものである。これにより、ショルダー端部側に近いほどtanδの小さいゴムの占める割合が大きくなるので、横力を稼ぐ領域である領域Aや領域Bにおける発熱を効果的に抑制することができ、最大CAでの横グリップを確保することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記第1の異種ゴム層の厚さの最大値を、トレッドゴムの厚さの20%〜70%の範囲としたもので、これにより、十分な発熱抑制効果を得ることができるとともに、過剰な発熱抑制によるグリップの低下を防ぐことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記トレッドゴムのトレッド端とトレッド端から測ってトレッド展開幅の10%の位置までの間の平均的なトレッドゴムの厚さを、トレッド端から測ってトレッド展開幅の10%の位置から25%の位置までの間の平均的なトレッドゴムの厚さよりも薄くしたものである。これにより、tanδの小さいゴムの効果に加えて、トレッド端部側の剛性を維持する効果を更に高めることができるので、旋回性能や操縦安定性能を更に向上させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記センター部表面層のゴムと、上記中間部表面層のゴムと、上記ショルダー部表面層のゴムとが連続的に繋がっていることを特徴とするものである。これにより、トレッドを形成するゴム種を少なくできるので、タイヤの製造を効率よく行うことができる
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、トレッド端部の壁面の少なくとも一部に幅(タイヤ幅方向に沿った長さ)が6mm以下の硬質ゴムを配置したもので、これにより、発熱によるトレッドの軟化を抑制できるので、トレッドが横変形したときのトレッドの倒れ込みを防止することができる。なお、上記硬質ゴムは、トレッドを形成するゴムよりも硬いゴムであり、より具体的には、室温でのショアA硬度が60以上90以下のゴムを指す。なお、上記ショアA硬度は材料の表面に鋼球またはダイヤモンド球を投下したした時に、上記球の跳ね上がる高さにより決定された硬度(反発硬度)で、値が大きいほど硬い材料である。
請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記トレッドゴムの少なくとも一部が、幅狭長尺のゴムストリップをタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻付けて成型されたものであることを特徴とする。これにより、丸みが大きい二輪車用タイヤでも成型精度を確保することができるので、形状精度の高いタイヤを得ることができる。
また、請求項に記載の発明は、請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、周方向に伸びにくい、補強部材のタイヤ赤道方向に対する配列角度(コード角)が0度〜5度であるスパイラルベルト層を更に備えたものである。これにより、遠心力によるタイヤの膨張を防ぐことができるので、高速走行時の操縦安定性能にも優れた高性能の二輪車用タイヤを得ることができる。
請求項10に記載の発明は、請求項に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記スパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、コード角が80度〜90度のベルト層を配置したもので、これにより、スパイラルベルト層を保護することができるので、タイヤの耐久性を向上させることができる。また、トレッドの土台が横方向(タイヤ幅方向)に強くなるので、高い横力を維持することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記スパイラルベルト層と上記ベルト層との間に、厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層が配置されていることを特徴とするものである。これにより、ショルダー部のベルト速度の違いによるトレッドのドライビング変形、ブレーキング変形のうちの周方向の変形のみを上記緩衝ゴム層の剪断変形により吸収することができるので、高い横力を維持しつつトレッドの周方向の変形に伴う発熱を防止することができる。
請求項12に記載の発明は、請求項〜請求項11のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記スパイラルベルト層の幅がトレッド展開幅の60%〜90%であることを特徴とするもので、これにより、トレッド端部側において、ベルト層がタイヤ周方向へ伸びることができるので、トレッドのブレーキング変形を抑制することができる。したがって、くり返し変形による発熱が低減されるとともに、滑りも低減できるので、滑りによる発熱も低減できる。したがって、ゴムの軟化を防止することができる。また、滑りが低減されるので、耐摩耗性も向上する。
請求項13に記載の発明は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、上記第1の異種ゴム層のゴムの動的弾性率が上記ショルダー表面層のゴムの動的弾性率よりも小さいことを特徴とするもので、これにより、走行開始直後のように、発熱がまだ十分でないときのグリップを向上させることができる。
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
最良の形態1.
図1は、本最良の形態1に係る二輪車用タイヤ10の構成を示す断面図で、同図の一点鎖線で示すCLが車輪中心線である。この二輪車用タイヤ10は、ビード部11に配置された1対のビードコア11Cにトロイド状をなして跨る1枚のボディプライ12と、このボディプライ12のタイヤ径方向外側に配置されたスパイラルベルト層13と、このスパイラルベルト層13のタイヤ径方向外側に配置された2枚の交錯ベルト層14A,14Bとを備えており、上記交錯ベルト層14A,14Bのタイヤ径方向外側にはゴム部材(トレッドゴム)からなるトレッド層15が配置されている。
ボディプライ12はスチールコードもしくはナイロンなどの繊維から成る補強部材(以下、コードという)を複数本撚ったものを所定の打込み間隔で平行に並べ、未加硫ゴムでシート状にしたもので、タイヤに配置した場合の上記コードの赤道方向に対する傾斜角であるコード角は90度(ラジアル)である。
スパイラルベルト層13は、赤道方向に対するコード角が0度〜5度のベルト層で、1本または複数本のコードをゴムで被覆し、これをトレッド部分に螺旋巻するように巻き付けて形成したものである。
交錯ベルト層14A,14Bは、スチールコードもしくは芳香族ポリアミド等の繊維を撚ったコードを所定の打込み間隔で配置したもので、赤道方向に対するコード角は50度である。上記2枚の交錯ベルト層14A,14Bは互いに交錯して配置されている。
上記トレッド層15の幅(以下、トレッド展開幅という)は240mmであり、その表面にはトレッドパターンが形成されている。図2はその一例を示す図で、本例では幅a=8mm、深さ5mmの斜め溝15Pが、左右交互にハの字状に配置されているトレッドパターンを採用した。上記斜め溝15Pのトレッド全体に占める割合は10%である。
一方、スパイラルベルト層13の幅は220mm、1枚目の交錯ベルト層 (内側の交錯ベルト層) 14Aの幅は250mm、2枚目の交錯ベルト層(外側の交錯ベルト層) 14Bの幅は230mmである。なお、上記トレッド展開幅、及び、スパイラルベルト層13、交錯ベルト層14A,14Bの幅は、タイヤの縦断面において、トレッド表面の曲面に沿って測定した長さを指す。
トレッド層15はタイヤ表面側に配置されている表面層15aと、ショルダー部16の表面層15aのタイヤ径方向内側に配置された第1の異種ゴム層15cと、センター部17の表面層15aのタイヤ径方向内側に配置された第2の異種ゴム層15dと、上記表面層15aのタイヤ径方向内側で、上記第1及び第2の異種ゴム層15c,15dとの間に配置される内部中間層15bとを備えており、上記表面層15aと上記内部中間層15bとは、損失正接(tanδ)が比較的大きい(例えば、tanδ=0.3)高損失ゴムで構成されている。
上記tanδの値は、例えば、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置などの動的粘弾性測定装置を用いて測定した値で、温度50℃、周波数15Hz、歪5%の測定条件にて測定したものである。以下、上記tanδの大きさを、上記高損失ゴムのtanδの値を100とした指数で表わす。
ショルダー部16のトレッドゴムは上記のように2層になっており、表面が表面層15aで、この表面層15aのタイヤ径方向内側、すなわち、トレッドの内層にはtanδの指数が70である異種ゴムから成る第1の異種ゴム層15cが設けられている。この第1の異種ゴム層15cの一端はトレッド端部15zに位置しており、他端は上記トレッド端部からトレッド展開幅の5%〜30%の範囲に位置している。すなわち、上記第1の異種ゴム層15cの幅Wはトレッド展開幅の5%〜30%の範囲にある。また、その厚さはトレッド層15全体の厚さの20%〜70%の範囲にある。
また、センター部17のトレッドゴムも2層になっており、表面が表面層15aで、その内層にはtanδが小さい異種ゴムから成る第2の異種ゴム層15dが設けられている。本例では、上記第2の異種ゴム層15dのゴムとして、上記第1の異種ゴム層15cのゴムと同じ、tanδの指数が70のゴムを用いている。
センター部17は、自動二輪車が直立しているときにトレッドが路面に接している部分であって、トレッドの中央部に位置し、その幅がトレッド展開幅の25%程度の領域である。本例では、上記第2の異種ゴム層15dの幅をトレッド展開幅の15%〜25%としている。
本発明の二輪車用タイヤ10では、ショルダー部16のトレッドの表面側でもある表面層15aにはtanδが比較的大きな高損失ゴムが配置されているが、その内層にはtanδの指数が70である第1の異種ゴム層15cを配置している。これにより、ショルダー部16全体を高損失ゴムで構成した場合に比べて変形による発熱が小さなくなるので、ショルダー部16の発熱を抑制することができる。したがって、ゴムの軟化によるショルダー部16の剪断剛性の低下を抑制することができるので、操縦安定性能を確保することができるとともに、摩耗の促進を抑制することができる。また、ショルダー部16の表層には高損失ゴムが配置されているので、従来と同等の横グリップを確保することができる。
ここで、上記第1の異種ゴム層15cを配置する範囲を、トレッドの端部からトレッド展開幅の5%〜30%までの範囲とすることが肝要である。すなわち、tanδの小さい異種ゴムを配置する範囲を5%未満とすると、異種ゴムの体積が小さすぎて十分な効果が得られないからである。また、tanδの小さい異種ゴムを配置する範囲の上限を30%としたのは、発熱が大きくない領域にまで異種ゴムを配置する範囲を広げると、トレッド温度が低下しすぎてグリップが十分に得られない場合があるからである。これは、大CA時に接地する領域はトレッド展開幅の1/4、つまりトレッド端部15zとトレッド端部15zから測ってトレッド展開幅の25%の位置との間の領域であるが、上記最大CAから車体を少し起こしたCA40度の領域でも大きな駆動力が加わるため、トレッドの発熱量は大きい。そこで、このCA40度で発熱が大きい領域を含めると、発熱が大きい領域はトレッド端部15zとトレッド端部15zから測ってトレッド展開幅の30%程度の位置との間の領域になる。したがって、グリップを低下させずにショルダー部16の発熱を確実に抑制するためには、tanδの小さい異種ゴムを配置する範囲を、トレッドの端部から、トレッドの端部から測ってトレッド展開幅の5%〜30%までの範囲とする必要がある。
また、本例では、上記第1の異種ゴム層15cの厚さをトレッドゴムの厚さの20%〜70%としているが、これは、上記厚さが20%未満だと、tanδの小さいゴムの層が薄すぎて十分な発熱抑制効果を得ることができないからである。また、上記厚さが70%を超えると、特に、上記領域A(図10参照)のような使用頻度が低い領域では、トレッド温度が本来上昇すべき温度まで発熱できなくなって、横力(キャンバースラスト)が低下するからである。また、タイヤが摩耗することを想定した場合、上記異種ゴムの厚さが70%を超えると、上記異種ゴムが摩耗の進展がそれほどでもない場合にも表面に出てしまいグリップが低下する。これは、上記tanδの小さい異種ゴムは、高損失ゴムに比べてアスファルトなどに含まれる骨材の細かい凹凸への食い込みが小さく、そのため、摩擦係数が低下してグリップが低下するからである。したがって、上記第1の異種ゴム層15cの厚さとしては、トレッド全体の厚さの20%〜70%の範囲とすることが好ましく、20%〜50%の範囲とすれば更に好ましい。特に、市販のタイヤは、競技用のタイヤとは異なり、摩耗が進展しても使用する場合が多いので、上記異種ゴムが摩耗により表面に出てしまうことがないように、上記第1の異種ゴム層15cの厚さをトレッドゴムの厚さの20%〜40%の範囲とすることが好ましい。
なお、上記第1の異種ゴム層15cの厚さがタイヤ幅方向で異なる場合には、最も厚いところでの厚さを上記厚さの範囲とすることが好ましい。
また、センター部17のトレッド内層部にもtanδが小さい異種ゴムから成る第2の異種ゴム層15dを設けることにより、直進時の転がり抵抗が改善されるだけでなく、横グリップも向上させることができる。これは、CAの大きな旋回時には、センター部17が直進時におけるサイド部の役目をすることによるもので、上記第2の異種ゴム層15dがセンター部17の温度上昇を抑制して表面層15aのゴムの軟化を防ぐようにすれば、センター部17の剛性が高まるので、強い横力を受け止めることができる。つまり、上記第1の異種ゴム層15cを設けて横力を増した場合にはタイヤの変形も大きくなるが、上記第2の異種ゴム層15dを設けることによりセンター部17が補強されるので、操縦安定性能が向上する。
上記第2の異種ゴム層15dは、センター部17全体に配置してもよいが、トレッド全幅の15%以上あれば、センター部17の温度上昇を十分に抑制することができるので、上記第2の異種ゴム層15dの幅としては、トレッド全幅の15%〜25%とすることが好ましい。
また、本例では、上記第2の異種ゴム層15dのタイヤ表面側のゴムと、上記第1の異種ゴム層15cのタイヤ表面側に隣接するゴムとはともにtanδの比較的大きな高損失ゴムであり、かつ、連続的に繋がって表面層15aを形成しているので、タイヤの成型時には、上記表面層15aを形成しているゴムを第1及び第2の異種ゴム層15c,15d及び内部中間層15bとを巻き付けた上に巻付けるようにすればよい。すなわち、上記第2の異種ゴム層15dのタイヤ表面側のゴムと、上記第1の異種ゴム層15cのタイヤ表面側に隣接するゴムとは一緒に巻付けられることになるので、タイヤの製造を効率よく行うことができる。
また、上記トレッド層15の各層15a〜15dのゴムを成型する際には、幅狭長尺のゴムストリップをタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻付けて成型することが好ましい。これにより、丸みが大きな二輪車用タイヤであっても、成型の精度を確保することができるので、形状精度の高いタイヤを得ることができる。
このように、本最良の形態1によれば、トレッド表面に配置される表面層15aのゴムを、tanδの大きさが比較的大きい高損失ゴムとするとともに、ショルダー部16の表面層15aの内層に、tanδの指数が70の異種ゴムから成る、一端がトレッド端部15zに位置し、他端がトレッド端部15zから測ってトレッド展開幅の5%〜30%の範囲にあり、トレッド全体の厚さの20%〜70%である第1の異種ゴム層15cを配置して、トレッドゴムの変形による発熱を小さくするようにしたので、ショルダー部16の発熱を抑制することができる。したがって、十分な横グリップを確保しつつ、ショルダー部16の剪断剛性の低下を抑制することができるので、操縦安定性能を確保することができるとともに、摩耗の促進を抑制することができる。
また、センター部17の表面層15aの内層にも、上記第1の異種ゴム層15cのゴムのtanδと同じtanδを有するゴムから成る第2の異種ゴム層15dを設けてセンター部17の温度上昇を抑制するようにしたので、直進時の駆動・制動性が向上するだけでなく、センター部17の剛性が高まり強い横力を受け止めることができるので、操縦安定性能を更に向上させることができる。
また、上記第2の異種ゴム層15dのタイヤ表面側のゴムはとともにtanδの比較的大きな高損失ゴムであり、かつ、連続的に繋がって表面層15aを形成しているので、第2の異種ゴム層15dのタイヤ表面側のゴムと、上記第1の異種ゴム層15cのタイヤ表面側に隣接するゴムとを一緒に巻付けることができる。したがって、タイヤの製造を効率よく行うことができる。このとき、上記トレッド層15の各層15a〜15dのゴムを、幅狭長尺のゴムストリップをタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻付けて成型するようにすれば、成型の精度を確保することができるので、形状精度の高いタイヤを得ることができる。
また、本例では、ボディプライ12と交錯ベルト層14A ,14Bとの間に、周方向に伸びにくい、コード角が赤道方向に対して0度〜5度であるスパイラルベルト層13を設けて、遠心力によるタイヤの膨張を防ぐようにしたので、高速走行時の操縦安定性能にも優れた二輪車用タイヤを得ることができる。
なお、上記最良の形態1では、表面層15a及び内部中間層15bを構成する高損失ゴムのtanδを0.3とし、第1及び第2の異種ゴム層15c,15dを構成する異種ゴムのtanδを指数70(tanδ=0.21)のゴムとしたが、上記高損失ゴムのtanδの値はこれに限るものではなく、グリップの大きい、すなわち、摩擦係数が大きくなるような値(例えば、tanδ=0.25〜0.55程度)であればよい。このとき、トレッドの内層に配置される、上記第1及び第2の異種ゴム層15c,15dのゴムのtanδを上記高損失ゴムのtanδよりも小さくすることが肝要であり、その範囲としては、tanδの指数が50〜80の範囲とすることが好ましい。
上記第1及び第2の異種ゴム層15c,15dのゴムのtanδの指数を50未満とすると、トレッド温度は更に低下するが、ゴムが硬く振る舞うので、トレッド表面の滑りが大きくなり、グリップが低下する。一方、上記ゴムのtanδの指数が80を超えると、表面層15aのゴムと差が少ないため発熱抑制効果が十分でないので、tanδの指数の範囲としては、50〜80が適当である。
また、上記例では、トレッドゴムの厚みをタイヤ幅方向で一定としたが、tanδの小さいゴムが配置されているトレッド端部15z側のトレッドゴムの厚みを他の部分のトレッドゴムの厚みよりも薄くすれば、tanδの小さいゴムを配置した効果を更に高めることができる。トレッドゴムの厚み(トレッドゲージ)を薄くすると、その部分のトレッド剛性が向上する。ショルダー部のトレッドゴムのタイヤ径方向内側にtanδの小さいゴムを配置した目的は、発熱を抑制してゴムの弾性率を低下させないことにある。このように、トレッド層15のtanδの小さいゴムが配置されている部位を薄くすることで、トレッド剛性を維持する効果を更に得ることができるので、旋回性能や操縦安定性能を更に向上させることができる。
なお、トレッド剛性はトレッド層15の厚みの三乗に比例するので、例えば、トレッド層15の厚みが8mmである場合には、0.5mm〜1.5mm程度薄くすれば、十分な効果を得ることができる。また、トレッド層15の厚みを薄くする範囲は、トレッド展開幅の10%の位置までとすることが好ましい。すなわち、トレッド展開幅の10%の位置までの範囲では、トレッドゴムの厚さを、トレッド端部15zから測ってトレッド展開幅の10%の位置から25%の位置までの間の平均的なトレッドゴムの厚さよりも薄くすればよい。なお、ショルダー部16全体を薄くすると、ショルダー部16のトレッド剛性は向上するが、タイヤ表面の滑りが全体的に増えてしまい、摩耗ライフが低下する。したがって、接地頻度が高い領域Bや領域C(図10参照)では、tanδの小さいゴムが配置されている場合でも、トレッドゴムの厚さを薄くしない方がよい。
また、上記例では、センター部17のトレッド内層部にもtanδが小さい異種ゴムから成る第2の異種ゴム層15dを設けてセンター部17の剛性を高めるようにしたが、上記第2の異種ゴム層15dに加えて、センター部17の内層に、室温でのショア硬度が60〜90である硬質ゴム層を配置すれば、センター部17の剛性を更に高めることができるので、直進時の駆動、制動特性と操縦安定性能とを更に向上させることができる。
また、上記例では、上記第2の異種ゴム層15dのタイヤ表面側のゴムと、上記第1の異種ゴム層15cのタイヤ表面側に隣接するゴムとを一体化したが、図3に示すように、上記第1の異種ゴム層15cのゴムをセンター部17側の端部からセンター部17の方向に延長して上記第2の異種ゴム層15dと連結する連結層15mを設け、上記第1の異種ゴム層15cと上記第2の異種ゴム層15dとが連続的に繋がっているようにすれば、tanδの小さいゴム層についてもゴム種を少なくできるので、タイヤの製造を更に効率よく行うことができる。また、同時に、第1の異種ゴム層15cのセンター部17側の温度上昇も同時に抑制することができるので、グリップも向上する。但し、この場合には、上記連結部15mの厚さについては、上記第1の異種ゴム層15cの厚さよりも薄くすることが好ましく、上記第1の異種ゴム層15cの厚さの半分以下とすると更に好ましい。これにより、過剰な発熱抑制によるグリップの低下を防ぐことができる。
[第一の実施例]
図1に示した、ショルダー部のトレッド端部側の内層にtanδの小さな異種ゴム層を備えた本発明によるタイヤ(実施例1〜11)と、異種ゴム層を有しない従来のタイヤ(従来例1,2)と、異種ゴム層は有しているがその幅または厚さが適正な範囲にないタイヤ(比較例1〜4)とを準備し、上記各タイヤについて、CA50度における横力測定、ドラムでのショルダー部の温度測定、直進時の転がり抵抗試験、ドライバーによる操縦安定性能の評価試験、及び、走行後のショルダー部の温度測定を行った結果を図4の表に示す。
タイヤは二輪車用のタイヤで、タイヤサイズは190/50ZR17である。
これらのタイヤは、いずれも、1対のビードコアにトロイド状をなして跨る1枚のボディプライを有している。この実施例では、ボディプライはナイロンコードを撚って直径0.6mmとし、これを打込み間隔を65本/50mmで平行に並べ、未加硫ゴムでシート状にしたものをカーカス部材として使用している。ボディプライはラジアル(赤道方向に対する角度が90度)である。また、このボディプライは、ビード部において、ビードコアの周りを巻き回して固定されている。
また、スパイラルベルト層は、芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)の繊維を撚って直径0.7mmにしたコードを、打込み間隔が50本/50mmになるように配置したものを用いているが、スチール製のコードで構成してもよい。この場合には、例えば、直径0.21mmのスチール単線を1×3タイプで撚ったスチールコードを打込み間隔30本/50mmでスパイラル状に巻付けて形成するなどすればよい。
2枚の交錯ベルト層は、芳香族ポリアミドの繊維を撚って直径0.7mmにしたコードを、打込み間隔30本/50mmで配置したもので、コード角は50度である。
また、トレッドゴムの厚さは7mmで、センター部からショルダー部までの厚さは、実施例11を除いて、全て同じ厚さである。
また、トレッドの展開幅は240mmで、スパイラルベルト層の幅は220mm、1枚目の交錯ベルト層(内側の交錯ベルト層) 幅は250mm、2枚目の交錯ベルト層(外側の交錯ベルト層) 幅は230mmである。
上記の基本構造は各タイヤについて共通である。
また、トレッドゴムの違いは以下の通りである。
従来例1のタイヤ
トレッドを構成するゴムの種類は1種であり、このゴムのtanδの大きさは0.3である。上記tanδは温度50℃、周波数15Hz、歪5%の測定条件にて測定したものである。以下、上記tanδの大きさについては、tanδ=0.3を100とした指数で表わす。
従来例2のタイヤはセンター部のゴム層が2層になっている。表層のゴムはtanδの指数が100のゴムであり、内層のゴムはtanδの指数が70のゴムである。なお、この内層のゴムの幅は120mmである。
実施例1のタイヤ
トレッド端の内部には異種ゴムが配置されている。この異種ゴムの幅は60mm(トレッドの展開幅の25%)で、厚さは4mm(トレッド層の厚さの57%)、tanδの指数は70である。この異種ゴムとセンター寄りのゴムとの深さ方向の境界は、深さ方向にほぼ垂直であり、傾いていない。また、センター部は2層になっており、表層のゴムはtanδの指数が100のゴムであり、内層のゴムはtanδの指数が70のゴムである。なお、この内層のゴムの幅は120mmである。
実施例2,3,4のタイヤは、実施例1の異種ゴムの幅をそれぞれ15mm(6%),20mm(8%),72mm(30%)に変更したもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
比較例1,2のタイヤは、実施例1の異種ゴムの幅をそれぞれ10mm(4%),84mm(35%)に変更したもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
実施例5,6のタイヤは、実施例1の異種ゴムの厚さをそれぞれ2mm(29%),5mm(71%)に変更したもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
比較例3,4のタイヤは、実施例1の異種ゴムの厚さをそれぞれ1mm(14%),7mm(100%)に変更したもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
実施例7,8,9のタイヤは、実施例1の異種ゴムのtanδの指数をそれぞれ90,60,40に変更したもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
また、実施例10のタイヤは実施例1のセンター部を1層としたもので、他は実施例1のタイヤと同じである。なお、センター部のゴムのtanδの指数は100である。
また、実施例11のタイヤは実施例1のトレッド端部から10%の範囲のゴムの平均厚みを0.7mmだけ薄くしたもので、他は実施例1のタイヤと同じである。
上記各タイヤについて、以下の測定及び評価を行った。
(1)CA50度における横力測定とドラムでのショルダー部の温度測定
タイヤをリム幅6インチ、リム径17インチのホイールに組込んだタイヤを、表面に#40番の紙ヤスリを貼り付けた直径3mのスチール製のドラムにキャンバー角(CA)50度、荷重1500N、スリップ角(SA)0度で押付けて、速度40km/hで回転させ、このときの横力をタイヤの回転軸に取付けた3分力計で測定する。この横力がキャンバースラストである。なお、上記タイヤの内圧は240kPaである。
横力はタイヤが回転し始めてから5分後のものを測定した。この時、タイヤは十分に暖まっている。そこで、5分の走行を行ってドラムを停止させた直後のショルダー部の温度を測定し、これをドラムでのショルダー部の温度とした。
横力は、従来例1のタイヤで1350Nであった。他のタイヤの横力については、上記従来例1の横力を100とした指数で表わしている。
(2)直進時の転がり抵抗試験
転がり抵抗試験の試験は転がり抵抗試験機を用いて行った。測定条件は、内圧240kPa、荷重1500N、キャンバー角(CA)0度、スリップ角(SA)0度、速度80km/hである。転がり抵抗の値は、従来例1のタイヤの転がり抵抗を100とした指数で示しており、この指数が小さいほど抵抗が少なく、燃費が節約できる。
(3)ドライバーによる操縦安定性能の評価試験と走行後のショルダー部の温度測定
テストコースで熟練ドライバーによる総合的な操縦安定性能の試験を実施した。準備したタイヤはリア用のタイヤで、リアのみをタイヤ交換して実車試験を行った。なお、フロントのタイヤは従来のもので固定した。
タイヤを1000ccのスポーツタイプの二輪車に装着してテストコースで実車走行させ、車輌を大きく倒した旋回時操縦性(コーナリング性能)を中心に評価した。評価点は、テストライダーのフィーリングによる10点法で総合評価した。
テストコースのレイアウトは、速度50km/h前後でCA50度まで倒すコーナーを6箇所設け、特に車輌を大きく倒したときの横グリップ性能を確認できるようにした。1周のラップタイムは約60秒であり、これを15周し、15周での総合的な官能評点をライダーに付けてもらった。
また、15周走行直後のショルダー部の温度を測定し、これを実車走行後のショルダー部の温度とした。
以上の試験結果から本発明の効果が分かる。
内部ゴムのない従来例2の結果とトレッド端の内部に幅が15mm〜72mmであるtanδの小さな異種ゴムが配置されている実施例1〜4の結果とを比較すると、実施例1〜4ではいずれも従来例2よりもショルダー部の温度が低くかつドラムでの横力=キャンバースラストが大きくなっていることが分かる。このショルダー部の温度の低下及び横力の増加は、異種ゴムの幅が大きい程大きくなることがわかる。また、実施例1〜4ではいずれも従来例2よりも操縦安定性能の評価が高く、更に、走行後のショルダー部の温度についても従来例2よりは低くなっている。これにより、トレッド端の内部にtanδの小さな異種ゴムを配置すれば、ショルダー部の温度上昇を抑制して横グリップ性能を向上させることができることが確認された。
また、異種ゴムの幅が10mmである比較例1では、従来例2とほぼ同じ結果であることから、異種ゴムの幅がトレッド展開幅の5%に満たない場合には、幅が小さすぎて、トレッド端の内部に異種ゴムを配置した効果が得られないことがわかる。逆に、異種ゴムの幅が84mmである比較例2では、横力やショルダー部の温度については幅が72mmである実施例4とほぼ同じ結果であるが、操縦安定性能の評価が実施例4よりも低い。したがって、異種ゴムの幅を30%より大きくしても、横力の増加やショルダー部の温度低下がみられないだけでなく、かえって操縦安定性能が低下するので、異種ゴムの適正な幅の範囲としては、トレッド展開幅の5%〜30%であり、更に好ましくは、8%〜25%であることが確認された。
なお、実施例1と実施例4とを比較しても分かるように、幅がある程度以上広くなると操縦安定性能は低下する。これは、異種ゴムの幅が広くなるとゴムが硬く振る舞うので、駆動時のすべりが増加して操縦安定性能に悪影響を及ぼすためで、実施例1〜4では、ゴムの幅が60mm(25%)である実施例1が最も高い評価を示している。
内部ゴムのない従来例2の結果とトレッド端の内部に厚みが2mm,4mm,5mmであるtanδの小さな異種ゴムが配置されている実施例1,5,6の結果とを比較すると、実施例1,5,6ではいずれも従来例2よりもショルダー部の温度が低くかつドラムでの横力が大きくなっており、更に、操縦安定性能及び走行後のショルダー部の温度低下についても向上していることがわかる。異種ゴムの厚さが厚くなるほど横力やショルダー部の温度については改善される。しかしながら、操縦安定性能に関しては、実施例1と実施例6とを比較しても分かるように、厚さがある程度以上厚くなると低下する。これは、異種ゴムの厚さが厚くなるとゴムが硬く振る舞うので、駆動時の滑りが増加して操縦安定性能に悪影響を及ぼすためである。
一方、異種ゴムの厚さがトレッド全体の20%(1mm)に満たない比較例3では、従来例2より若干改良されているものの、薄すぎてその効果は小さい。逆に、異種ゴムの厚さが7mmである比較例4では、横力が従来例2よりも低下してしまった。これは、横グリップの小さなtanδの小さな異種ゴムが接地面に露出していることによるもので、ドラムでのショルダー部の温度は低下しているものの、実車でのショルダー部の温度は逆に増加している。したがって、tanδの小さな異種ゴムについては、内部に配置する必要があり、かつ、その厚みについても、トレッド全体の20%〜70%、更に好ましくは、30%〜70%の範囲が適当であることが確認された。
従来例1と従来例2、及び、実施例1と実施例10の結果とを比較して分かるように、センター部のゴムを2層とした場合には、トレッド端内部に異種ゴムを配置した効果が更に高まることが確認された。すなわち、トレッド端内部に異種ゴムが配置されていない従来例1に対して、センター部のゴムを2層とした従来例2では、単に、直進時の転がり抵抗が改善されているに過ぎないが、トレッド端内部に異種ゴムが配置されている実施例10と、更にセンター部のゴムを2層とした実施例1とでは、直進時の転がり抵抗のみならず、操縦安定性能が高まっていることから、横グリップも向上していることが分かる。なお、ドラム試験での横力が改善されていないのは、ドラム試験においてはCAが50度であることから、センター部が接地せず、したがって、センター部を2層にした効果が得られなかったからで、実際の走行試験ではタイヤセンター部の温度も上昇するので、センター部を2層にした効果が顕著に現れている。
実施例1の結果と実施例7,8,9の結果とを比較すると、異種ゴムのtanδの指数は90であっても異種ゴムを配置した効果は得られるが、その効果は小さいので、異種ゴムのtanδの指数はもっと小さい方がよい。しかしながら、異種ゴムのtanδの指数を実施例9のように40まで下げてしまうと、ショルダー部の温度は低下するものの、横力及び操縦安定性能は低下する。したがって、異種ゴムのtanδの指数としては、50〜80の範囲が適正であることがわかる。tanδの指数をこれ以上小さくした場合には、ゴムが硬く振る舞ことによりトレッド表面のすべりが増加してグリップが低下する。
また、実施例11の結果と実施例1の結果を比較すると、実施例11の方が、横力、ショルダー部温度、操縦安定性能の全てにわたって向上していることがわかる。これにより、異種ゴムの厚さはそのままで、トレッド端部の表層ゴムの厚さを薄くした方が、その部分の剛性が高くなるだけでなく、異種ゴムの割合が高くなるので、ショルダー部の温度上昇を抑制して、横力及び操縦安定性能を向上させることができることが確認された。
最良の形態2.
図5は、本最良の形態2に係る二輪車用タイヤ20の構成を示す図である。この二輪車用タイヤ20は競技用を想定したもので、2枚のボディプライ22A,22Bと、このボディプライ22A,22Bのタイヤ径方向外側に配置されたスパイラルベルト層23と、このスパイラルベルト層23のタイヤ径方向外側に配置された1枚のラジアルベルト層24と、上記ラジアルベルト層24のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材から成るトレッド層25と、上記スパイラルベルト層23とラジアルベルト層24との間に配置された緩衝ゴム層28とを備えている。
上記2本のボディプライ22A,22Bは、例えば、芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)等の繊維から成るコードを複数本撚ったものを所定の打込み間隔で平行に並べ、未加硫ゴムでシート状にしたもので、タイヤに配置した場合、上記コードの赤道方向に対するコード角度はそれぞれ40度である。これら2枚のボディプライ22は互いに交錯しており、ビード部21において2枚まとめて、両側からビードワイヤ22Wで挟み込まれて固定されている。
スパイラルベルト層23は、赤道方向に対するコード角が0度〜5度のベルト層で、1本または複数本のコードをゴムで被覆し、これをトレッド部分に螺旋巻するように巻き付けて形成したものである。
ラジアルベルト層24は、芳香族ポリアミドの繊維から成るコードを撚ったものを、所定の打込み間隔で配置したもので、赤道方向に対するコード角は80度〜90度である。
なお、トレッド層25の展開幅は240mmで、スパイラルベルト層23の幅とラジアルベルト層24の幅も240mmである。
トレッド層25はショルダー部26とセンター部27とで2層になっており、ショルダー部26には、タイヤ表面側に位置するショルダー表面層25aと内層に位置する第1の異種ゴム層25bとがある。一方、センター部27には、タイヤ表面側に位置するセンター表面層25cと内層に位置する第2の異種ゴム層25dとがある。また、ショルダー部26とセンター部27との間には、高損失ゴムから成る中間層25mが配置されている。
上記高損失ゴムは100℃でのtanδが0.4のゴムで、ショルダー表面層25aを構成するゴムも高損失ゴムである。一方、上記第1及び第2の異種ゴム層25b,25dを構成するゴムの100℃でのtanδは0.25で、センター表面層25cのゴムの100℃でのtanδは0.35である。
競技で使用するタイヤの場合には、高速でかつ大CA時で使用することが多いため、上記のように、ボディプライを2枚としたりするなどして、図1に示した一般用の二輪車タイヤ10よりタイヤの剛性を高めるようにするとともに、センター表面層25cを構成するゴムのtanδを、その両側のゴムである中間層15mを構成するゴムのtanδよりも小さくしている。
このように、センター部27の表面部にもtanδの小さなゴムから成るセンター表面層25cを配置することにより、内層に第2の異種ゴム層25dを設けただけの場合に比べてセンター部27の発熱を抑制することができる。これにより、センター部27の剛性を高めることができるので、直進時の転がり抵抗を改善できるとともに、操縦安定性能を向上させることができる。
また、本例では、スパイラルベルト層23の半径方向外側に配置されるベルト層をラジアルベルト層24としているので、高い横力を維持できる。すなわち、ベルト層の最外層に赤道方向に対するコード角が80度〜90度のほぼタイヤ幅方向に延長するベルト層があり、これがショルダー部27に広く配置されているので、トレッド層25の土台が横方向(タイヤ幅方向)に強くなる。したがって、トレッドの横剪断に対してラジアルベルト層24が剛性をもつため、高い横力を保持できる。すなわち、ゴムが発熱して多少軟化したとしても、内部にラジアルベルト層24があることにより、横方向に強さを発揮できる。
また、スパイラルベルト層23は、上述したように、遠心力によるタイヤの膨張を防ぎ、高速走行時の操縦安定性能を向上させるのに有効である。また、スパイラルベルト層23だけでもベルト剛性を比較的高く保てることから、ベルト層をスパイラルベルト層23のみで構成したタイヤもある。また、スパイラルベルト層23を設けた場合には、ベルト剛性が高まるため、それに合わせるベルトは、最良の形態1で示した二輪車タイヤ10の交錯ベルト層14A,14Bのように、赤道方向に対するコード角が40度〜80度である場合が殆どであり、タイヤの内圧は上記スパイラルベルト層23が殆ど受け止めている。そのため、万一、スパイラルベルト層23が損傷すると、タイヤバーストにつながりかねない。例えば、トレッドが摩耗して薄くなったときに高速で突起物を踏みつけた場合や、摩耗しているのにタイヤを使い続けてしまい、スパイラルベルト層23が露出しまった場合には、スパイラルベルト層23が破断してしまう可能性がある。そこで、スパイラルベルト層23の径方向外側に、上記ラジアルベルト層24のような、幅方向に沿ったベルト層を設ければ、上記スパイラルベルト層23を確実に保護することができる。
更に、本例では上記スパイラルベルト層23とラジアルベルト層24との間に、厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層28を設けて、偏摩耗と発熱とを防止するようにしている。これは、上記緩衝ゴム層28が周方向に剪断変形することにより、トレッド層25のドライビング変形、ブレーキング変形のうちの周方向の変形を吸収するためである。上記緩衝ゴム層28は幅方向の変形は吸収しないので、トレッドの横変形は大きいまま維持される。したがって、高い横力を維持しつつトレッドの周方向の変形に伴う発熱を防止することができる。特に、本例のように、ショルダー部26の内層に第1の異種ゴム層25bを設けて、tanδの小さい異種ゴムを配置した場合には、緩衝ゴム層28の変形により上記第1の異種ゴム層25bの表面側に配置された高損失ゴムから成るショルダー表面層25aの歪が減少するので、発熱を更に防止することができる。なお、上記緩衝ゴム層28とラジアルベルト層24とは、トレッドの端部で、かつ、上記第1の異種ゴム層25bの配置されている位置に重なるように幅広く配置することが好ましい。
なお、上記最良の形態2では、上記スパイラルベルト層23の幅Wsをトレッド展開幅とほぼ同じとしたが、スパイラルベルト層23の幅Wsをトレッド展開幅よりも狭くすれば、発熱を更に防止することができるとともに、耐摩耗性も向上させることができる。これは、少なくとも領域A(ショルダー部26の領域A,B,Cについては図10を参照のこと)にはスパイラルベルト層23を配置しないようにすれば、トレッド端部25z側において、ラジアルベルト層24がタイヤ周方向へ伸びることができるので、トレッドのブレーキング変形を抑制することができるからである。すなわち、ラジアルベルト層24が接地している領域において周方向に伸びるということは、ベルト速度が増すことであり、領域Aと領域Cとのベルトの速度差が縮まることを意味している。これにより、トレッド周方向の余計な変形(ブレーキング変形)が抑制されるので、くり返し変形によるゴムの発熱が低減される。その結果、滑りも低減できるので、滑りによる発熱も低減でき、ゴムの軟化を防止できる。また、滑りが低減されるので、耐摩耗性も向上する。したがって、更に摩擦係数(グリップ)が高いゴム、すなわち、従来よりも更にtanδの大きいゴムをトレッド端部の表面に配置することができる。
上記スパイラルベルト層23の幅はトレッド展開幅の60%〜90%とするのが好ましい。上記スパイラルベルト層23の幅がトレッド展開幅の90%を超えると、ベルト層のタイヤ周方向への伸びが小さくなってしまい、トレッドのブレーキング変形を抑制することが困難となる。逆に、上記スパイラルベルト層23の幅がトレッド展開幅の60%未満であると、領域Cにもスパイラルベルト層23の存在しない領域ができるので、領域Cでもベルト層がタイヤ周方向へ伸びてしまい、その結果、領域Aと領域Cとのベルトの速度差があまり縮まらない。したがって、上記ブレーキング変形の抑制効果が小さくなり、くり返し変形によるゴムの発熱を低減することができなくなる。また、接地領域の殆どにスパイラルベルト層23が存在しないため、タガ効果が薄れて高速時の操縦安定性能が低下する。したがって、上記スパイラルベルト層23の幅はトレッド展開幅60%〜90%とするのが好ましい。
また、図6に示すように、トレッド端部25zの壁面に、硬質ゴム29を配置して発熱によるトレッドゴムの軟化を抑制するようにすれば、トレッドが横変形したときのトレッドの倒れ込みを防止することができる。なお、上記硬質ゴム29は、トレッド層25を形成するゴムのいずれのゴムよりも硬いゴムである。これにより、トレッド端部25zが路面から浮き上がるのを防止することができる。
この硬質ゴム29は壁面の表面には露出させない方がよい。これは、硬質ゴム29は硬いため摩擦係数が低いからである。硬質ゴム29がトレッド表面に達すると、路面との接触による摩擦力の向上は期待できないだけでなく、逆に、柔らかいゴム(高損失ゴム)の接触面積を減らすことになる。そこで、本例では、上記硬質ゴム29のタイヤ径方向外側の位置を、トレッド表面からd=1mm程度の深さになるように上記硬質ゴム29を配置するようにしている。
また、上記硬質ゴム29の厚み(タイヤ幅方向に沿った長さ)Dが厚くなると、領域Aの内層に配置される第1の異種ゴム層25bのゴムの量が減るので、上記厚みDとしては最大の厚さとなる箇所でも6mm以下とすることが好ましい。なお、硬質ゴム29の厚みDは、その硬さにもよるが、1mm以上あればその効果を発揮することができる。2mm〜5mmとすれは、更に好ましい。
また、上記例では、ゴムの動的弾性率E’については規定しなかったが、第1の異種ゴム層25bを構成するtanδの小さいゴムの動的弾性率E’(L)を、ショルダー表面層25aを構成する高損失ゴムの動的弾性率E’(H)よりも小さくするようにすれば、走行開始直後のように、発熱がまだ十分でないときのグリップを向上させることができる。
すなわち、低温時にはゴムは硬く振る舞うのでトレッド表面が滑ってしまい、十分なグリップが得られない。そこで、走行初期のグリップを得るためには、第1の異種ゴム層を構成するtanδの小さいゴムの動的弾性率E’(L)を小さくすることで、ショルダー表面層25aのゴムを動きやすくして、ショルダー部26の温まりを良くするようにすれば、走行初期とそれ以降のグリップのバランスを取ることができる。
また、上記最良の形態1,2では、第1の異種ゴム層15c(または、第1の異種ゴム層25b)の幅を厚さ方向に一定としたが、使用目的によって変えるようにしてもよい。例えば、摩耗してもトレッド温度をある程度以上に下げないことが重要である場合には、図7に示すように、上記異種ゴム層15cの幅をトレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に狭くすればよい。これは、トレッドが摩耗するとトレッド厚みが薄くなり剪断変形が小さくなるので発熱量も小さくなるが、異種ゴムの幅が厚さ方向に一定である場合には、トレッドが摩耗するに従ってtanδの小さいゴムの割合が大きくなるので、トレッドの温度が低すぎてグリップが低下する恐れがある。そこで、上記異種ゴム層15c(または、第1の異種ゴム層25b)の幅をトレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に狭くすれば、摩耗が進展した状態、すなわち、発熱量が小さくなった状態では、tanδの小さいゴムの割合も小さくなるので、トレッドの摩耗に伴うトレッド温度の低下を防ぐことができ、摩耗によるグリップの低下を防ぐことができる。
また、最大CAでの横グリップを発熱により失いたくない場合には、上記第1の異種ゴム層15c(または、第1の異種ゴム層25b)の幅を、トレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に広くすればよい。具体的には、図8(a)に示すように、上記第1の異種ゴム層15cの断面形状を略台形状するか、図8(b)に示すように、略三角形状とすればよい。これにより、ショルダー部16の端部側に近いほどtanδの小さいゴムの占める割合が大きくなるので、最大CA時の横グリップの発生に大きく寄与する領域Aや領域Bにおける発熱を効果的に抑制することができる。したがって、最大CA時の横グリップを十分に確保することができる。
[第二の実施例]
図5に示した競技用を想定した二輪車用タイヤについて、ショルダー部のトレッド端部25z側の内層にtanδの小さな異種ゴム層を備えた本発明によるタイヤ(実施例12〜20)と、異種ゴム層を有しない従来のタイヤ(従来例3)と、異種ゴム層はないが硬質ゴムを有するタイヤ(比較例5)と、緩衝ゴム層を有するタイヤ(比較例6)と、スパイラルベルト層の幅が狭いタイヤ (比較例7)とを準備し、上記各タイヤについて、CA50度における横力試験とドライバーによる操縦安定性能の評価試験を行った結果を図9の表に示す。
タイヤは二輪車用のタイヤで、タイヤサイズは190/50ZR17である。
これらのタイヤは、いずれも、2枚のボディプライを有している。このボディプライは芳香族ポリアミド(商品名:ケブラー)の繊維を撚って直径0.6mmとし、これをタイヤセンター部での打込みが40本/50mmになるように配置している。これら2枚のボディプライは互いに交錯しており、タイヤセンター部での角度は赤道方向に対して40度になっている。このボディプライは、ビード部に達しており、ビード部で2枚まとめて、両側からビードワイヤで挟み込まれて固定されている。
スパイラルベルト層は、直径0.12mmのスチール単線を7本で撚り合わせて1本のスチールコードとし、これを打込み間隔50本/50mmとなるようにして、スパイラル状に巻付けて形成した。
ラジアルベルト層は、芳香族ポリアミドの繊維を撚って直径0.6mmにしたものを、打込み間隔50本/50mmで配置した。
トレッド層の厚さは、センター部からショルダー部まで一律で、8mmで、トレッドの展開幅は240mmである。また、スパイラルベルト層の幅は従来例3、実施例12、及び、比較例5,6で240mm、実施例13〜実施例20、及び、比較例7で180mm、90度ベルト層の幅は240mmである。
上記の基本構造は各タイヤについて共通である。
また、トレッドゴムの違いは以下の通りである。
従来例3のタイヤ
トレッド層のセンター部の内部には、幅が120mmで100℃でのtanδが0.25のゴムが、厚み4mmで配置されている。また、その上部には、幅が90mmで100℃でのtanδが0.35のゴムが配置されている。そして、トレッドセンター部両側表層部には、100℃でのtanδが0.4のゴムが配置されている。
実施例12のタイヤ
トレッド端の内部に異種ゴムが配置されている他は従来例3のタイヤと同じである。
上記異種ゴムの幅は60mm(トレッドの展開幅の25%)で、厚さは4mm(トレッド層の厚さの57%)、100℃でのtanδは0.25である。この異種ゴムとセンター寄りのゴムとの深さ方向の境界は、深さ方向にほぼ垂直であり、傾いていない。
実施例13のタイヤは、実施例12のスパイラルベルト層の幅を180mmに変更したもので、他は実施例12のタイヤと同じである。
実施例14のタイヤは、実施例13の異種ゴムの形状を、図7に示すような、径方向内側の幅が狭いタイプに変更したもので、他は実施例13のタイヤと同じである。
実施例15のタイヤは、実施例13の異種ゴムの形状を、図8(a)に示すような、径方向内側の幅が広いタイプに変更したもので、他は実施例13のタイヤと同じである。
実施例16のタイヤは、実施例13の異種ゴムの形状を、図8(b)に示すような、三角形タイプに変更したもので、他は実施例13のタイヤと同じである。
実施例17のタイヤは、実施例13の異種ゴムの形状を、図3に示すような、径方向内側のゴムがセンター方向へ伸びてセンター部内層の異種ゴムと繋がっているタイプに変更したもので、他は実施例13のタイヤと同じである。
実施例18のタイヤは、実施例12の異種ゴムの動的弾性率E’を実施例12の動的弾性率E’の70%にしたもので、他は実施例12のタイヤと同じである。
実施例19のタイヤは、図6に示すように、実施例12のトレッド端部の壁面に硬質ゴムを配置したもので、他は実施例12のタイヤと同じである。
実施例20のタイヤは、実施例12のスパイラルベルト層と交錯ベルト層との間に緩衝ゴムを配置したもので、他は実施例12のタイヤと同じである。
比較例5のタイヤは、従来例3のタイヤのトレッド端部の壁面に硬質ゴムを配置したもので、他は従来例3のタイヤと同じである。
比較例6のタイヤは、従来例3のタイヤのスパイラルベルト層と交錯ベルト層との間に緩衝ゴムを配置したもので、他は従来例3のタイヤと同じである。
比較例7のタイヤは、従来例3のタイヤのスパイラルベルト層の幅を180mmに変更したもので、他は従来例3のタイヤと同じである。
上記各タイヤをそれぞれ3本ずつ準備し、1本は新品時の横力評価に、もう1本はトレッド表面を削って摩耗進展を想定した横力評価に、残りの1本は実車テストに使用した。
(1)CA50度における横力評価(新品時)
タイヤをリム幅6インチ、リム径17インチのホイールに組込んだタイヤを、表面に#40番の紙ヤスリを貼り付けた直径3mのスチール製のドラムにキャンバー角(CA)50度、荷重1500N,スリップ角(SA)0度で押付けて、速度1000km/hで回転させ、このときの横力をタイヤの回転軸に取付けた3分力計で測定する。この横力がキャンバースラストである。なお、上記タイヤの内圧は200kPaである。
横力はタイヤが回転し始めてから5分後のものを測定した。この時、タイヤは十分に暖まっている。そこで、5分の走行を行ってドラムを停止させた直後のショルダー部の温度を測定し、これをドラムでのショルダー部の温度とした。
横力は、従来例3のタイヤで1900Nであった。他のタイヤの横力については、上記従来例3の横力を100とした指数で表わしている。
(2)摩耗を想定した横力評価
センター部からショルダー部までタイヤ表面を一律に3mm削り取ったタイヤ(以下、3mm削り品という)について、上記(1)の3mドラムと同様の試験を行い、回転してから5分後の横力とショルダー部の温度を測定した。横力は、従来例3の横力を100とした指数で表わした。
(3)ドライバーによる操縦安定性能の評価
テストコースで熟練ドライバーによる総合的な操縦安定性能の試験を実施した。準備したタイヤはリア用のタイヤで、リアのみをタイヤ交換して実車試験を行った。なお、フロントのタイヤは従来のもので固定した。
タイヤを1000ccのスポーツタイプの二輪車を改造して競技用としたバイクを用い、競技を想定して、サーキットでの走行を実施した。この時の最高速度は320km/hであった。評価点は、テストライダーのフィーリングによる10点法で総合評価した。なお、テストは20周で行い、最初の10周の平均ラップタイムと最後の10周の平均ラップタイムを求めた。また、操縦安定性能のフィーリング評価も前半10周と後半10周とに分けて評価した。テストコースのレイアウトは、速度80km/h〜120km/hで車体を大きく倒し込むコーナーが4箇所あった。
また、20周走行直後のショルダー部の温度を測定した。
(4)摩耗量の評価
実車テストを行う前にタイヤの重量を測定しておき、テストコースを20周走行した後にタイヤに付着したゴムのかすや小石などの付着物をきれいに取り除き、再度タイヤの重量を測定する。特設したテストコースはコーナーが多かったため、摩耗はショルダー部に集中的に発生していた。そこで、新品時のタイヤに対する走行後タイヤの重量差を当該タイヤのショルダー部の摩耗量として評価した。各タイヤの摩耗量は、従来例3の摩耗量を100とした指数で表わした。なお、従来例3のショルダー部の摩耗量は4mmであった。
以上の試験結果から本発明の効果が分かる。
従来例3の結果とトレッド端の内部にtanδの小さな異種ゴムが配置されており、かつ、スパイラルベルト層の幅の狭い実施例13の結果とを比較すると、実施例13では新品も3mm削り品もともに、横力指数が8〜8.5向上している。また、サーキットを走行したときのラップタイムも1.0秒以上速く、効果が明確である。更に、摩耗量も、従来例3よりも20%も少ない。すなわち、実施例13ではタイヤのグリップが向上してタイヤのすべりが抑制され、その結果、摩耗量が大幅に減少していることがわかる。
これは、比較例7のように、単にスパイラルベルト層の幅を狭くしたものや、実施例12のように、トレッド端の内部にtanδの小さな異種ゴムが配置しただけの単独の効果よりも、両者を組合わせることで効果が増すことを示している。例えば、摩耗量についてみると、比較例7は従来例3よりも7%少なく、実施例12は従来例3よりも6%少ない。したがって、単純に両者を組合わせると計算上は13%の改善になる。しかしながら、実際は、両者を組合せた実施例13の摩耗量は、従来例3に比べて20%少なくなっている。これは、両者を組合わせることで、相乗効果が発揮され、グリップレベルが一段と高くなり、タイヤが滑りにくくなって、耐摩耗性が飛躍的に向上したからと考えられる。
また、走行後のショルダー部の温度についても、実施例13は、従来例3、比較例7、及び、実施例12よりも大幅に低くなっていることから、ショルダー部の温度についても相乗効果が発揮されていることが分かる。
実施例13の結果と実施例14の結果とを比較すると、実施例14では摩耗してトレッドの厚みが薄くなった場合のグリップが高い。これは、異種ゴムの形状が実施例13のようにトレッドの厚み方向で変らない場合には、摩耗が進展してトレッドの厚みが薄くなることで発熱量が小さくなるだけでなく、ショルダー部におけるtanδの小さいゴムの割合が多くなる効果が加わってトレッド温度が大きく下がる。このため、ゴムが硬く振る舞うので、すべりが増加してグリップが低下する傾向にある。これに対して、実施例14のように、異種ゴムの割合がタイヤ径方向内部に向かって薄くなっている場合には、摩耗が進むにつれてショルダー部におけるtanδの小さいゴムの割合が小さくなるので、トレッド温度の低下を抑制することができる。摩耗後のトレッド温度が低すぎる場合には、この実施例14のような形状でバランスをコントロールすることも可能である。実施例14では摩耗量が3mm〜4mmのときでも効果があるので、これより更に摩耗が進んだ場合には更に効果を発揮できると考えられる。
また、実施例13の結果と実施例15,16の結果とを比較すると、実施例15,16では初期のグリップはやや低下するものの、従来例3よりグリップが十分に高いだけでなく、摩耗してトレッドの厚みが薄くなった場合のグリップは高い。このように、実施例15,16のように、ショルダー部端部側ほどtanδの小さいゴムの割合が大きい形状とすれば、ショルダー部の温度をある程度高い温度に保つことができるので、最大CAでの横グリップが発熱により失われることを防止することができることが確認された。
また、実施例13の結果と実施例17の結果とを比較すると、実施例17ではショルダー部の温度はほとんど変らないが初期グリップが向上しており、かつ、実車での評点も高い。これにより、実施例17のように、tanδの小さいゴムをセンター側に延長してセンター側内部のtanδを下げることで、センター部の剛性を高めることができることが確認された。
また、実施例13の結果と実施例18の結果とを比較すると、tanδの小さいゴムでかつ動的弾性率E’が小さな実施例18では、実車での最初の10周の評点とラップタイムが向上している。これは、評価したライダーのコメントによると、走行始めショルダー部の温たまりがよく、走行初期のグリップが高いことによるとのことである。実施例13のように、tanδの小さいゴムをショルダー部に配置した場合には、走行開始直後のようにまだ発熱が十分でないときには、低温時にゴムが硬く振る舞うことによりトレッド表面がすべってしまい、グリップが十分に得られない場合がある。
このように、tanδの小さいゴムであってかつ動的弾性率E’の小さなゴムを使用すれば、走行開始初期のグリップを確保できることが確認された。
実施例13の結果と実施例19の結果とを比較すると、トレッド端に硬質ゴムを配置した実施例19では、グリップも大幅に向上しているだけでなく、サーキットの評点も向上した。一方、内部ゴムのない従来例3の結果ととこの従来例3のトレッド端に硬質ゴムを配置した比較例5の結果とを比較すると、比較例5では摩耗量が若干改善されてはいるものの、他の特性は従来例3と殆ど変っていなかった。このように、tanδの小さいゴムをショルダー部に配置すると、トレッド端に硬質ゴムを配置した効果を十分に発揮できることが確認された。
また、緩衝ゴム層を有する実施例20では、新品でも3mm削り品でもショルダー部の温度が10℃も低く、グリップも大幅に向上しているだけでなく、テスト走行においては、今回のテスト中で最高の得点と最速のラップタイムを記録した。また、摩耗量も極めて少なかった。一方、内部ゴムのない従来例3に緩衝ゴム層を配置した比較例6では、ショルダー部の温度が10℃も低くなっているにもかかわらず、グリップはさほど向上しなかった。
実施例20がこのように優れた特性を示すのは、ショルダー部にtanδの小さいゴムを配置したことでグリップが上がった効果と、スパイラルベルト層の幅を狭くしたことで滑りが低減された効果と、緩衝ゴムを配置することで更にグリップが向上した効果とが重なり合って飛躍的に耐摩耗性能とグリップとが向上したからであると考えられる。
ところで、摩耗量で見ると、スパイラルベルト層の幅を狭くするだけで7%(従来例3と比較例7)、緩衝ゴム層を配置するだけで8%(従来例3と比較例6)、tanδの小さいゴムを配置するだけで6%(従来例3と実施例12)の効果があるが、これらを単純に足し合わせると21%の効果になる。しかしながら、実施例20では、従来例3に比較して、摩耗量が36%も小さくなっていることから、単純に緩衝ゴム層を配置するのではなく、本発明と組合わせることで、相乗的にその効果を高めることができる。
このように、本発明によれば、二輪車の旋回時における横グリップを向上させるとともに、ショルダー部のトレッドの摩耗を低減することができるので、操縦安定性能に優れるとともに、耐摩耗性能にも優れた二輪車用空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の最良の形態1に係る二輪車用タイヤの構成を示す図である。 二輪車用タイヤのトレッドパターンの一例を示す図である。 本発明による二輪車用タイヤの他の構成を示す図である。 試作タイヤ(一般用)の仕様とその評価結果を示す図である。 本発明の最良の形態2に係る二輪車用タイヤの構成を示す図である。 本発明による異種ゴム層の断面形状の一例を示す図である。 本発明による異種ゴム層の断面形状の他の例を示す図である。 本発明による異種ゴム層の断面形状の他の例を示す図である。 試作タイヤ(競技用)の仕様とその評価結果を示す図である。 二輪車用タイヤがCA50度で接地したときの要部断面図である。
符号の説明
10 二輪車用タイヤ、11 ビード部、11C ビードコア、12 ボディプライ、13 スパイラルベルト層、14A,14B 交錯ベルト層、15 トレッド層、
15a 表面層、15b 内部中間層、15c 第1の異種ゴム層、
15d 第2の異種ゴム層、15z トレッド端部、16 ショルダー部、
17 センター部、
20 二輪車用タイヤ(競技用)、21 ビード部、22W ビードワイヤ、
22A,22B ボディプライ、23 スパイラルベルト層、24 ラジアルベルト層、25 トレッド層、25a ショルダー表面層、25b 第1の異種ゴム層、
25c センター表面層、25d 第2の異種ゴム層、25m 中間層、
25z トレッド端部、26 ショルダー部、27 センター部、28 緩衝ゴム層、
29 硬質ゴム。

Claims (13)

  1. ベルト層とこのベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴムとを備えた二輪車用空気入りタイヤであって、
    ショルダー部のトレッドゴムは、トレッド表面側に位置するショルダー部表面層と、上記ショルダー部表面層のタイヤ径方向内側に配置された第1の異種ゴム層とを備え、
    センター部のトレッドゴムは、トレッド表面側に位置するセンター部表面層と、上記センター部表面層のタイヤ径方向内側に配置された第2の異種ゴム層とを備え、
    上記ショルダー部のトレッドゴムと上記センター部のトレッドゴムとの間に配置されるトレッドゴムは、トレッド表面側に位置する中間部表面層と、上記中間部表面層のタイヤ径方向内側で上記第1の異種ゴム層と上記第2の異種ゴム層との間に配置された内部中間層とを備え、
    上記第1の異種ゴム層は、一端がトレッド端部に位置し、幅がトレッド展開幅の5%〜30%の範囲にあり、
    上記第1の異種ゴム層のゴムの損失正接は、上記ショルダー部表面層のゴムの損失正接よりも小さく、
    上記第2の異種ゴム層のゴムの損失正接は、上記センター部表面層のゴムの損失正接よりも小さく、
    上記内部中間層のゴムの損失正接と上記中間部表面層のゴムの損失正接とは、上記ショルダー表面層のゴムの損失正接と等しいことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 上記第1の異種ゴム層の幅は、トレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  3. 上記第1の異種ゴム層の幅は、トレッド表面側からタイヤ径方向内側に向かって徐々に広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  4. 上記第1の異種ゴム層の厚さの最大値は、トレッドゴムの厚さの20%〜70%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  5. 上記トレッドゴムのトレッド端部とトレッド端部から測ってトレッド展開幅の10%の位置までの間の平均的なトレッドゴムの厚さは、トレッド端部から測ってトレッド展開幅の10%の位置から25%の位置までの間の平均的なトレッドゴムの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ
  6. 上記センター部表面層のゴムと上記中間部表面層のゴムと上記ショルダー部表面層のゴムとが連続的に繋がっていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  7. トレッド端部の壁面の少なくとも一部に幅が6mm以下の硬質ゴムが配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  8. 上記トレッドゴムの少なくとも一部は、幅狭長尺のゴムストリップをタイヤ周方向に沿って螺旋状に重ねて巻付けて成型されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  9. 補強部材のタイヤ赤道方向に対する配列角度が0度〜5度であるスパイラルベルト層を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  10. 上記スパイラルベルト層のタイヤ径方向外側に、補強部材のタイヤ赤道方向に対する配列角度が80度〜90度であるベルト層が配置されていることを特徴とする請求項に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  11. 上記スパイラルベルト層と上記ベルト層との間に、厚みが0.3mm〜3.0mmの緩衝ゴム層が配置されていることを特徴とする請求項10に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  12. 上記スパイラルベルト層の幅がトレッド展開幅の60%〜90%であることを特徴とする請求項〜請求項11のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  13. 上記第1の異種ゴム層のゴムの動的弾性率は上記ショルダー部表面層のゴムの動的弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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