JP3655325B2 - マンノシル−シクロデキストリンの新規製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、シクロデキストリンのグルコシル基にα結合でマンノシル基が結合したマンノシル−シクロデキストリンの新規製造方法に関する。詳しくはα−マンノシル基転移酵素およびシクロデキストリン合成酵素の反応を利用するα−マンノシル糖化合物とマルトオリゴ糖からの効率的なマンノシル−シクロデキストリンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
シクロデキストリン(以下、CDと略記することもある。)は、グルコースがα−1,4結合で連なった環状デキストリンで、グルコース6,7,8個より成るそれぞれα−,β−およびγ−CDが良く知られている。最近ではCDの溶解度を改善するため、これらCDにα−1,6結合でグルコシル基やマルトシル基を結合させた分岐CDが合成されている。
【0003】
これらCDおよび分岐CDには分子内部に空洞があり、しかもこの空洞内部が疎水性になっているため、包接作用があり、各種油性物質を取り込む性質を有している。CDおよび分岐CDは、このような性質をもっているため、食品工業,化粧品工業,医薬品工業などの分野で広く使用されている。
【0004】
最近、医薬品工業の分野では、薬剤の副作用を少なくするため、糖質の細胞認識性に着目して、これをドラッグ・デリバリー・システムの薬剤運搬体の標識細胞へのセンサーとして利用する研究が活発に行われている。特に、ガラクトースは肝臓組織に、マンノースは肝臓実質細胞,肝臓非実質細胞およびマクロファージに強い親和性を示すことが良く知られている。
【0005】
以前、我々は上述した現状に鑑み、CDとα−マンノシル糖化合物を含有する溶液に、α−マンノシル基転移酵素を作用させることによって、CDのグルコシル基の6位の水酸基にマンノシル基が結合しているマンノシル−CDの開発に成功している。
【0006】
しかし、マンノシル基転移酵素の転移反応を利用して、直接マンノシル−CDを合成するこれまでの方法は収率の面に問題があり、より効率的なマンノシル−CDの製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、α−マンノシル糖化合物とマルトペンタオースなどのマルトオリゴ糖に市販のα−マンノシル基転移酵素を作用させ、α結合でマンノシル基を転移結合させたマンノシル−マルトオリゴ糖を合成し、これにシクロデキストリン合成酵素を作用させることによって、CDのグルコース残基に直接マンノシル基が結合したマンノシル−CDを効率良く合成することができることを見出した。我々はこの知見に基づいて本発明を完成したのである。
【0008】
すなわち、本発明はマルトオリゴ糖とマンノースおよび/またはα−マンノシル糖化合物を含有する溶液にα−マンノシル基転移酵素を作用させる工程および該工程で生成したマンノシル−マルトオリゴ糖にシクロデキストリン合成酵素を作用させる工程よりなることを特徴とするシクロデキストリンのグルコシル基の水酸基にα結合でマンノシル基が結合しているマンノシル−シクロデキストリンの新規製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明により得られる上記分岐CDは、図1に示す構造式I〜III で表すことができる。
【0010】
本発明に係わる分岐CDは、マルトオリゴ糖とマンノースおよび/またはα−マンノシル糖化合物を含有する溶液にα−マンノシル基転移酵素を作用させる工程およびこの工程で得られたマンノシル−マルトオリゴ糖にシクロデキストリン合成酵素を作用させる工程によって製造することができる。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるマルトオリゴ糖は、グルコースがα−1,4結合した一連のオリゴ糖であり、その鎖長は限定されるものではないが、通常は炭素数10個程度までのオリゴ糖が用いられる。これらの中でマルトテトラオース,マルトペンタオース,マルトヘキサオースなどが好ましく、特にマルトペンタオースが好適に用いられる。これらは粗製物,精製物のいずれであってもよく、また混合物であってもよい。
【0012】
次に、本発明に用いる糖供与体であるα−マンノシル糖化合物としては、通常はメチル−α−マンノシド,エチル−α−マンノシド,フェニル−α−マンノシド,パラニトロフェニル−α−マンノシド、α−マンノオリゴ糖などのα−マンノシル基を含む配糖体やオリゴ糖、あるいは多糖やその部分分解物およびそれらの混合物(マンノースとの混合物も含む)などがある。
【0013】
本発明に用いるα−マンノシル基転移酵素としては、マルトオリゴ糖と糖供与体、すなわちマンノースまたはα−マンノシル糖化合物を含有する溶液に作用させたとき、α−マンノシル糖化合物を分解し、そのα−マンノシル基をマルトオリゴ糖にα結合で転移させ、マンノシル−マルトオリゴ糖を合成するもの、またはマンノースとマルトオリゴ糖の縮合反応を触媒し、マンノシル−マルトオリゴ糖を合成するものであればよく、種々の酵素が使用可能である。
【0014】
このα−マンノシル基転移酵素は、自然界に広く分布しているものである。通常は、タチナタマメあるいはアーモンドなどの植物由来の酵素、サザエや肝臓(ウシ,ラット,ヒト)などの動物由来の酵素、さらにはアルスロバクター・オーレセンス,アスペルギルス・ニガーなどの微生物由来の酵素がよく用いられているが、好ましくはタチナタマメ由来の酵素を用いる。
【0015】
該転移酵素の作用により生成するマンノシル−マルトオリゴ糖はマンノシル−CDの合成に利用されるが、このものは粗製物,精製物あるいは混合物のいずれであっても使用可能である
【0016】
次に、本発明に用いるシクロデキストリン合成酵素としては、微生物に由来するものが用いられ、通常はバシルス・ステアロサーモフィラスあるいはバシルス・サーキュランスなどに由来するものが使用される。
【0017】
本発明の方法において、マンノシル−マルトオリゴ糖を合成する反応は、次の条件で行われる。マルトオリゴ糖と糖供与体を含む溶液(水溶液または懸濁液)は、通常マルトオリゴ糖の濃度が約1〜90%(W/W)、好ましくは2.5〜50%(W/W)、糖供与体の濃度が約1〜90%(W/W)、好ましくは2.5〜50%(W/W)である。なお、マルトオリゴ糖に対する糖供与体の比率(重量)は、使用する糖供与体の種類によって異なるが、通常0.1〜50倍の範囲、好ましくは0.3〜2倍の範囲とするのが適当である。
さらに、マンノシル−CDを合成する反応については、マンノシル−マルトオリゴ糖の濃度が通常約1〜90%(W/W)、好ましくは2.5〜25%(W/W)となるように設定して行う。
【0018】
また、マンノシル−マルトオリゴ糖を合成する反応およびマンノシル−CDを合成する反応は、いずれもpH3〜10、好ましくは4〜9、温度20〜90℃、好ましくは40〜70℃の条件にて実施することが適当である。使用酵素量は反応時間と密接な関係があるので、通常は反応が0.1時間〜2週間、好ましくは1時間〜1週間で終了するような酵素量とすればよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
次に、以上のような方法で得られた反応生成物を高速液体クロマトグラフィーにかけて、反応生成物を分画・分取した後、酵素分解法,FAB−MSによる分子量測定および高速液体クロマトグラフィーの溶出時間,13C−NMRにより構造解析を行った結果、図1に示す構造式I〜III で表される分岐CDであることを確認した。
【0020】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例
メチル−α−マンノシド20g,マルトペンタオース10gを10mM酢酸緩衝液(pH4.5)42.5mlに溶解させた後、タチナタマメ由来のα−マンノシダーゼ(シグマ社製)を11単位加え、55℃で1週間反応させた。反応終了後、反応液の一部をアミノ系カラム(東ソー製、TSK-GEL Amide-80、4.6×250mm、溶媒65%アセトニトリル、流速1ml/min、カラム温度30℃)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果を図2に示す。転移生成物の生成率は、使用したマルトペンタオースの15%であった。
【0021】
次いで、酵素を熱失活させた溶液を高速液体クロマトグラフィー(昭和電工製、ガードカラム;Asahipak NH2P-130G: 本カラム;Asahipak NH2P-50 、溶媒68%アセトニトリル、流速2.5ml/min、カラム温度30℃)にかけて転移生成物を1.5g(収率5%:原料基準)分取した。この転移生成物はグルコアミラーゼ消化後、タチナタマメ由来のα−マンノシダーゼにより、マルトペンタオース,マルトテトラオース,マルトトリオースおよびマンノースに分解された。また、13C−NMR解析による結果は、図3に示したように、グルコースの6位炭素に低磁場シフトが見られることから、グルコースの6位にマンノースが結合した6−マンノシル−マルトペンタオース(65 −O−,64 −O−,63 −O−マンノシル−マルトペンタオースの混合物)であることが確認された。
【0022】
このマンノシル−マルトペンタオース60mgを10mM酢酸緩衝液(pH5.2)2.1mlに溶解させた後、バシルス・ステアロサーモフィラス由来のシクロデキストリン合成酵素(林原生物化学研究所製)を33単位加え、40℃で10分間反応させた。反応前後の反応液の一部をODS系のカラム(YMC製、YMC-Pack ODS-AP302、4.6×250mm、溶媒3%メタノール、流速1ml/min、室温)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果を図4,図5に示す。生成物A,B,C全てを合わせると生成率は16%であった。
反応終了後、酵素を熱失活させた溶液をODS系のカラム(YMC製、YMC-Pack ODS-AP302、4.6×250mm、溶媒3%メタノール、流速1ml/min、室温)を用いた高速液体クロマトグラフィーにかけて精製した生成物A,B,Cをそれぞれ4mg,4mg,1mg(収率はそれぞれ7%,7%,2%)分取した。
【0023】
上記方法で単離された生成物Aは、FAB−MS分析により分子量は1134であることが判った。また、タチナタマメ由来のα−マンノシダーゼにより完全に等モルのマンノースとα−CDに分解された。さらに、13C−NMR解析結果を図6に示すように、α−CDのグルコシル基の6位の水酸基にα結合でマンノシル基が結合した化合物(図1の構造式I)であることが確認された。
【0024】
上記方法で単離された生成物Bは、FAB−MS分析により分子量は1296であることが判った。また、タチナタマメ由来のα−マンノシダーゼにより完全に等モルのマンノースとβ−CDに分解された。このことから、上記の結果も踏まえて、生成物Bはβ−CDのグルコシル基の6位の水酸基にα結合でマンノシル基が結合した化合物(図1の構造式II)であることが確認された。
【0025】
さらに、上記方法で単離された生成物Cは、FAB−MS分析により分子量は1458であることが判った。また、タチナタマメ由来のα−マンノシダーゼにより完全に等モルのマンノースとγ−CDに分解された。このことから、上記の結果も踏まえて、生成物Cはγ−CDのグルコシル基の6位の水酸基にα結合でマンノシル基が結合した化合物(図1の構造式III )であることが確認された。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、マンノシル基転移酵素とシクロデキストリン合成酵素を用いて、CD分子中のグルコシル基の水酸基にα−1,6結合でマンノシル基が結合しているマンノシル−CDを効率よく得ることができる。このマンノシル−CDは、医薬品分野のほか食品分野,化粧品分野等における幅広い利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明により得られるマンノシル−CDの構造を示す。
【図2】 実施例の転移反応液(α−マンノシダーゼ添加後)の高速液体クロマトグラフである。
【図3】 実施例の転移生成物の13C−NMRのスペクトルである。
【図4】 実施例の合成反応液(シクロデキストリン合成酵素添加前)の高速液体クロマトグラフである。
【図5】 実施例の合成反応液(シクロデキストリン合成酵素添加後)の高速液体クロマトグラフである。
【図6】 実施例の生成物Aの13C−NMRのスペクトルである。
Claims (3)
- マルトオリゴ糖とマンノースおよび/またはα−マンノシル糖化合物を含有する溶液にα−マンノシル基転移酵素を作用させる工程および該工程で生成したマンノシル−マルトオリゴ糖にシクロデキストリン合成酵素を作用させる工程よりなることを特徴とするシクロデキストリンのグルコシル基の水酸基にα結合でマンノシル基が結合しているマンノシル−シクロデキストリンの新規製造方法。
- α−マンノシル基転移酵素をpH3〜10および温度20〜90℃の条件で作用させる請求項1に記載の製造方法。
- シクロデキストリン合成酵素をpH3〜10および温度20〜90℃の条件で作用させる請求項1に記載の製造方法。
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