JP3607010B2 - セメント硬化遅延性組成物及びセメント硬化遅延用シート - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントを含む硬化性組成物の表面の硬化を遅延させる上で有用なセメント硬化遅延性組成物に関する。より詳細には、コンクリートの非硬化部位を洗い出し、コンクリート表面に骨材を露出させたり、凹凸模様を形成する上で有用なセメント硬化遅延性組成物に関する。また、本発明は、コンクリートの表面へのタイルなどの装飾材の施工に有用なセメント硬化遅延用シート、このセメント硬化遅延用シートを利用した装飾材キットシート及びプレキャストコンクリート板などの表面装飾コンクリート製品の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート表面へのタイルの施工について、粘着テープの粘着剤層の表面に複数枚のタイルを貼着して配列したユニットタイルを用いる方法が提案されている。このユニットタイルを用いる方法では、コンクリートが打設される型枠にユニットタイルを配置し、コンクリートを型枠に流し込んで養生した後、脱型し、粘着シートを除去することにより表面にタイルを露出させた後、タイルの表面に回り込んで硬化したセメントを除去し、表面仕上げすることによりタイルを施工している。この表面仕上げは、タイルに付着した硬化セメントを手作業で削り取る場合が多く、表面の綺麗さを特徴とするタイルの施工に欠くことができない工程である。
しかし、タイルに付着した硬化セメントを除去する作業は、時間と手間がかかり煩雑であり、タイル施工経費が高騰するだけでなく、硬化セメントの除去作業によりタイル表面が損傷する原因ともなる。
【0003】
コンクリート製品の表面を加工したり、表面に模様を形成するため、セメント硬化遅延剤が利用されている。例えば、コンクリート洗い出し平板は、セメント硬化遅延剤が塗布された型枠、又は前記硬化遅延剤を含浸した紙が敷設されている型枠内に、モルタル組成物を流し込んだ後、裏打ち用のモルタル組成物を打設して養生し、モルタル組成物が硬化した後、脱型し、硬化遅延剤が付着したコンクリート面を洗浄することにより製造される。
【0004】
特開平5−38711号公報及び特開平5−50411号公報には、超遅延剤、粘着付与剤、増量剤及び白色系顔料を含む混合物を型枠内面に付着させ、モルタル又はコンクリートを打設し、養生及び脱型し、セメント製品のうち型枠との当接面のセメントペーストを洗い出し、セメント製品の表面を仕上げる方法が開示されている。
また、コンクリート製品の表面に凹凸状の模様を形成する方法においても、セメント硬化遅延剤を用いる方法、セメント硬化遅延剤を含浸または塗布した型紙を用いる方法が知られている。例えば、特開昭63−216703号公報では、硬化遅延剤を紙に含浸させた型紙をカッティングして所定の文字や図形などの模様に対応する裁断型紙を作製する工程、型枠内面の所定部位に裁断型紙を接着する工程、前記型枠内にモルタル組成物を打設し養生を施す工程、前記型枠を解体してコンクリート製品を取り出す工程、コンクリート製品の型紙部位を洗浄する工程を経て、コンクリート製品の表面に所定の凹凸模様を形成している。特開昭61−202803号公報には、セメント硬化遅延剤を塗布した紙にタイルなどを貼り付けて型枠内にセットし、上記と同様にして洗い出す方法が開示されている。
【0005】
また、型紙に代えてセメント硬化遅延剤を用いる方法では、硬化遅延剤を用いて型枠に所定の模様を描く工程、前記と同様にモルタルを打設して型枠から取り出す工程、模様を形成した部位に対応する未硬化面を洗浄する工程を経ることにより、模様を形成されている。
【0006】
しかし、セメント硬化遅延剤を含浸または塗布した型紙は、モルタル組成物の打設に対する強度が弱い、そのため、型紙が破れたり、型枠との位置ずれが生じ、コンクリート製品の所定の部位に洗い出し面や模様を形成することが困難である。
また、図形模様を形成するためには、型紙を所定の形及び大きさに切断し、接着剤により型枠に固定する必要がある。そのため、複雑な洗い出し面や模様を形成することが困難であると共に、多量のコンクリート製品に模様を形成する場合には、作業が煩雑であり、コンクリート製品の生産性を低下させる。
【0007】
特開平3−224953号公報には、型枠の底板に、注入した埋込剤(コンクリート非硬化剤)を介してタイルや石などの装飾材を配列し、コンクリートを打設して硬化させた後、脱型し、コンクリート製品の表面の埋込剤を水洗により除去することにより、装飾材と一体化したコンクリートブロックの製造方法が開示されている。特開平3−175003号公報には、非硬化被覆材層を介して型枠の内面に装飾材を仮着し、コンクリートを打設して硬化させた後、脱型し、コンクリート製品の表面の非硬化被覆材およびコンクリートの未硬化部分を水洗により除去し、表面が装飾されたコンクリート製品を製造する方法が開示されている。この先行文献には、非硬化被覆材層を、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどのアルカリ膨潤化剤と高吸水性ポリマーとの混合物で形成することが記載されている。
【0008】
しかし、これらの方法では、コンクリートを打設する際に、装飾材が位置ずれを起こしやすく、コンクリート製品の所定の部位に装飾を施すことが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、表面装飾コンクリート製品を得るに際し、コンクリートなどの無機硬化性組成物を打設しても、装飾材等の位置ずれを抑制できるとともに、装飾材等の表面仕上げを簡便かつ効率よく行うことができるセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
本発明の他の目的は、無機硬化性組成物の表面の硬化を均一にかつ確実に抑制でき、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を精度よく形成できるセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、装飾材を損傷させることなく、装飾性に優れたコンクリート製品を得る上で有用なセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、表面に美麗な装飾、模様が精度よく施されたコンクリート製品を簡便且つ効率よく製造できる表面装飾コンクリート製品の製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のアクリル系粘着剤とセメント硬化遅延剤とを含むセメント硬化遅延性組成物を用いると、装飾材などの位置ずれを確実に防止できると共に、コンクリート製品の表面仕上げ作業などを簡便化でき、美麗な装飾が精度よく施されたコンクリート製品を容易に得られることを見出だし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、(A)不飽和カルボン酸又はその塩と、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルとを構成単量体単位として含む水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体と、(B)セメント硬化遅延剤とを含むセメント硬化遅延性組成物を提供する。アクリル系共重合体は、構成単量体単位として不飽和カルボン酸又はその塩を5〜40重量%程度、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルを40〜90重量%程度含んでいてもよい。前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は−80〜10℃程度である。
【0013】
前記セメント硬化遅延剤には、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ホスホン酸類、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノール類、リグニンスルホン酸類、糖類、不飽和ポリエステルなどが含まれる。前記不飽和ポリエステルは、例えば、主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール又はその縮合物を含むポリオール成分との反応により得ることができる。また、不飽和ポリエステルは、不飽和ポリエステルが架橋による硬化物であってもよい。
【0014】
本発明は、また、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延用シート(1)を提供する。
本発明は、さらに、シート状基材の表面に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シート(2)を提供する。
本発明は、さらにまた、前記セメント硬化遅延用シート(1)の表面、又は前記セメント硬化遅延用シート(2)のうちセメント硬化遅延層が形成された面に、複数の装飾材が連続して又は散在して貼着されている装飾材キットシートを提供する。
本発明は、また、型枠の底部に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、このセメント硬化遅延層の上に装飾材を貼着により配置し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法を提供する。
本発明はさらに、表面に装飾材が貼着により配置された前記セメント硬化遅延用シート(1)又は(2)を、型枠内に、装飾材が上方に位置するように配設し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、セメント硬化遅延用シートを除去し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法を提供する。
【0015】
本発明は、さらにまた、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品の製造法であって、型枠の底部に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を設け、その上に無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を除去するコンクリート製品の製造法を提供する。
【0016】
なお、本明細書において、「シート」とは厚さの如何を問わず、二次元的構造物を意味し、フィルムを含む意味に用いる。また、「粘着剤又は接着剤」を総称して「粘着剤」と称することがある。「多価カルボン酸の誘導体」とは、多価カルボン酸の酸無水物、多価カルボン酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの脱離可能なC1−4 アルキルエステル)を含む意味に用いる。また、特に断りのない限り、「セメント」とは、水との混和により硬化性を示す無機物質を意味し、気硬性セメント、水硬性セメントなどを含む意味に用いる。さらに、セメントを含む硬化性組成物にはセメントペースト、モルタル組成物及びコンクリート組成物が含まれ、これらを単に「無機硬化性組成物」と総称する場合がある。「コンクリート製品」とは、無機硬化性組成物の硬化によって得られる製品を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
[セメント硬化遅延性組成物]
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、(A)(a)不飽和カルボン酸又はその塩と、(b)ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルとを構成単量体単位として含む水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体を含んでいる。
【0018】
前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和多価カルボン酸またはそのモノアルキルエステルなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などの1価の金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などの2価の金属塩;アンモニウム塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミンとの塩などが挙げられる。
【0019】
好ましい不飽和カルボン酸には、不飽和モノカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸などが含まれる。また、好ましい不飽和カルボン酸の塩には、ナトリウム塩、カリウム塩などの1価の金属塩などが含まれる。不飽和カルボン酸又はその塩は、1種で、または2種以上組合せて使用できる。
【0020】
前記(b)ホモポリマーのTgが−100〜0℃のアクリル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸C2−12アルキル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸C6−14アルキル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有アクリル酸エステルなどが例示される。これらの中でも、アクリル酸C2−10アルキル、特に、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C4−10アルキルが好ましい。上記の単量体は1種で、又は2種以上組合せて使用できる。
【0021】
前記アクリル系共重合体は、構成単量体単位として、前記(a)及び(b)以外の他の単量体(c)を含んでいてもよい。このような単量体(c)としては、前記(a)及び(b)の単量体と共重合可能な単量体、例えば、アクリル酸メチル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのメタクリル酸C1−5 アルキルエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有メタクリル酸エステル;グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体等のビニル単量体が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、ヒドロキシル基含有メタクリル酸エステルなどが好ましい。これらの単量体は1種又は2種以上使用できる。
【0022】
前記アクリル系共重合体に占める前記(a)不飽和カルボン酸又はその塩の割合は、例えば5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%程度である。前記(a)成分の割合が小さすぎると水溶性が低下しやすく、逆に大きすぎると粘着性が低下しやすい。また、(a)不飽和カルボン酸又はその塩全体に対する不飽和カルボン酸の塩の割合は、例えば、20モル%以上(例えば20〜100モル%程度)、好ましくは40モル%以上(例えば50〜95モル%程度)、さらに好ましくは55モル%以上(例えば60〜95モル%程度)程度である。不飽和カルボン酸の塩の割合が小さすぎると水溶性が低下しやすい。
【0023】
また、アクリル系共重合体に占める前記(b)ホモポリマーのTgが−100〜0℃のアクリル酸エステルの割合は、例えば40〜90重量%、好ましくは45〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%程度である。前記アクリル酸エステルの割合が小さすぎると粘着性が低下しやすく、大きすぎると水溶性が低下しやすくなる。
【0024】
アクリル系共重合体に占める前記単量体(c)の割合は、例えば0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%(例えば5〜25重量%)、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0025】
前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば−80〜10℃、好ましくは−70〜0℃、さらに好ましくは−60〜−5℃程度である。なお、前記アクリル系共重合体のTg(℃)は次式により推算できる。
【0026】
1/(Tg+273 )=w1/(Tg1 +273 )+w2/(Tg2 +273 )+…+wn/(Tgn +273 )
[wnは第n単量体成分の重量分率、Tgn は第n単量体成分のホモポリマーのTg(℃)、nは自然数を示す]
アクリル系共重合体の分子量は特に制限されず、例えば重量平均分子量は20000〜2000000程度、好ましくは30000〜1000000、さらに好ましくは40000〜200000程度である。なお、水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体には、ブリード水のようなアルカリ性水に溶解又は分散可能な共重合体も含まれる。
前記(A)アクリル系共重合体は粘着剤として機能する。
【0027】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、また、(B)セメント硬化遅延剤を含んでいる。
前記(B)セメント硬化遅延剤としては、セメントの硬化速度を低下させる硬化遅延剤又は凝結遅延剤であればよく、無機又は有機硬化遅延剤が使用できる。無機硬化遅延剤には、リン酸、ホウ酸又はそれらの塩、ヘキサフルオロケイ酸塩などが含まれる。有機硬化遅延剤には、ホスホン酸類、オキシカルボン酸類、多価カルボン酸類、ケト酸類、芳香族多価アルコール類、糖類、フミン酸、リグニンスルホン酸類、カルボキシル基を有するモノマーの単独又は共重合体若しくはその塩、及び加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマーなどが含まれる。セメント硬化遅延剤は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0028】
ホスホン酸類としては、アミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はこれらの塩(例えば、アンモニウム塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属塩など)などが挙げられる。
【0029】
オキシカルボン酸類としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、没食子酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸などのオキシカルボン酸又はその塩、及びアスコルビン酸、イソアスコルビン酸などのオキシカルボン酸に対応するラクトン類などが挙げられる。多価カルボン酸類としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの飽和多価カルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸などが例示できる。ケト酸類としては、ピルビン酸、α−ケトグルタール酸などのケト酸又はその塩などが挙げられる。多価フェノール類としては、ピロガロールなどが挙げられる。糖類には、スクロースなどの多糖類、コーンシロップなどが含まれる。リグニンスルホン酸類としては、リグニンスルホン酸又はリグノスルホネート(例えば、リグノスルホン酸カルシウムなど)などが挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーの単独又は共重合体若しくはその塩としては、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、エチレンスルホン酸−アクリル酸コポリマーなどのポリマー又はその塩(好ましくは、低分子量ポリマー又はその塩)などが例示される。
【0030】
前記加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマーには、ポリエステルなどが含まれる。ポリエステルは、多価カルボン酸又はその誘導体を含むカルボン酸成分と、多価アルコール又はその縮合物を含むポリオール成分との縮合反応により得ることができる。
【0031】
多価カルボン酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの主鎖の炭素数が2〜6の飽和多価カルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸などが含まれる。前記飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸は組合せて使用してもよい。これらの多価カルボン酸は単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0032】
多価カルボン酸成分は、前記多価カルボン酸以外に、脂肪族多価カルボン酸(例えば、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族多価カルボン酸(例えば、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)を含んでいてもよい。特に、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はこれらの誘導体から選択された芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分を用いると、ポリエステルの強度、伸度、可撓性、柔軟性、耐水性などの特性を調整するのに有用である。
【0033】
ポリエステル全体に対する芳香族多価カルボン酸の含有量は、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%(例えば1〜15重量%)、さらに好ましくは0.1〜10重量%(例えば2〜10重量%)程度である。
【0034】
好ましい多価カルボン酸成分には、(1)主鎖の炭素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分(特に、少なくともマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はそれら誘導体を含む多価カルボン酸成分)、又は(2)主鎖の炭素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体と、フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸から選択された少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸又はそのその誘導体とを含む多価カルボン酸成分が含まれる。
【0035】
ポリオール成分には、炭素数2〜4の多価アルコール、例えば、ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコールなどのC2−4 アルキレングリコール)、C2−4 アルキレングリコールの縮合物であるポリオキシアルキレングリコール、例えば、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリール、ポリオキシエチレングリコール(以下、特に言及しない限り、これらを単にポリエチレングリコールと総称する場合がある)、ジオキシプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール(以下、特に言及しない限り、これらを単にポリプロピレングリコールと総称する場合がある)、ポリオキシテトラメチレングリコールなど;ポリオール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなど)が含まれる。これらのポリオール成分は単独で又は組合せて使用してもよい。
【0036】
好ましい多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリール、ポリオキシエチレングリコール、ジオキシプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール及びグリセリンが含まれる。多価アルコールは、炭素数2〜4の脂肪族多価アルコール(特にジオール)又はその縮合物で構成された多価アルコール成分を含む場合が多い。
【0037】
ポリオキシアルキレングリコールの分子量は、例えば、重量平均分子量100〜7500、好ましくは200〜5000(例えば、200〜2500)程度であり、ポリエチレングリコールを用いる場合、重量平均分子量が300以下である場合が多い。
【0038】
多価アルコールは、必要に応じて他のポリオール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどと併用してもよい。これらのポリエステルのうち不飽和ポリエステル、特にマレイン酸又は無水マレイン酸を多価カルボン酸成分とする不飽和ポリエステルが好ましい。
【0039】
ポリエステルの分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量300〜100000(例えば、300〜25000)、好ましくは300〜50000(例えば、500〜15000)、さらに好ましくは500〜20000程度の範囲から選択できる。不飽和ポリエステルの分子量は、重量平均分子量300〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜10000程度であり、重量平均分子量300〜5000(例えば、500〜5000)、特に500〜2500程度である場合が多い。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0040】
不飽和ポリエステルなどのポリエステルは、慣用の方法、例えば、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを、触媒の存在下に縮合させることにより得ることができる。マレイン酸や無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸を用いる場合には、ハイドロキノンなどのラジカル重合禁止剤の存在下で縮合反応させる場合が多い。ポリエステルは、多価カルボン酸1当量に対して多価アルコール0.5〜3当量、好ましくは0.7〜2当量程度の範囲から選択できる。分子量の小さなポリエステルは多価カルボン酸およびポリオールのうちいずれか一方の成分を過剰に使用することにより得る場合が多い。
【0041】
前記セメント硬化遅延能を有する樹脂は、前記不飽和ポリエステルの硬化物であってもよい。
不飽和ポリエステルの硬化物は、不飽和ポリエステルと重合開始剤とを含む重合性組成物(i)を硬化させることにより得られる。重合開始剤としては、種々の有機過酸化物、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキシドなどが使用できる。重合開始剤の使用量は、重合性を損なわない範囲、例えば、不飽和ポリエステル100重量部に対して、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部程度であり、2〜3重量部程度である場合が多い。
不飽和ポリエステルの硬化物は、不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマー(反応性希釈剤)と前記重合開始剤とを含む重合性組成物(ii)の硬化物であってもよい。前記重合性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜20(特に炭素数1〜10)程度のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基など)を有するモノマー、(メタ)アクリル酸と前記多価アルコール(ポリエチレングリコールなど)とのエステル[例えば、エチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。また、ビニルモノマーとしては、酢酸ビニルなどのビニルエステル、塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニルモノマー、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系モノマーも使用できる。これらの重合性モノマーは一種又は二種以上組合せて使用できる。
好ましい重合性ビニルモノマーには、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマー、特に(メタ)アクリル酸グリコールエステル類が含まれる。
【0042】
重合性ビニルモノマーの使用量は、不飽和ポリエステルの分子量などに応じて、硬化遅延能や不飽和ポリエステルの取扱い性を損なわない範囲、例えば、不飽和ポリエステル100重量部に対して、1〜500重量部(例えば、1〜100重量部)、好ましくは5〜200重量部(例えば、5〜100重量部)程度の範囲から選択でき、5〜30重量部程度の範囲であってもよい。
不飽和ポリエステルの硬化物は、前記重合性組成物を構成する成分(すなわち、重合性組成物(i)を構成する不飽和ポリエステルと重合開始剤と、重合性組成物(ii)を構成する不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマーと重合開始剤)に加えて、重合促進剤を含む重合性組成物(iii )の硬化物であってもよい。重合促進剤には、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどの有機酸コバルト塩、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどのβ−ジケトン又はβ−ケトエステル類、芳香族第3級アミン類、メルカプト類などが含まれる。これらの重合促進剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
重合性組成物における重合促進剤の濃度は、例えば、10〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm(例えば、10〜100ppm)程度の範囲から選択でき、30〜50ppm程度であってもよい。
【0044】
不飽和ポリエステルの硬化(架橋)は、常温でも可能であるが、短時間(例えば、0.5〜50分程度)で硬化させるためには、温度60〜200℃程度で行なうのが有利である。
【0045】
上記のセメント硬化遅延剤のなかでも、無機硬化遅延剤、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノール類、糖類、リグニンスルホン酸類及び不飽和ポリエステルなどが好ましい。
特に、前記不飽和ポリエステルは、他の硬化遅延剤と異なり、水に対してほとんど溶解することがなく、コンクリートからのブリード水とともにほとんど流動しない。しかし、コンクリートの強いアルカリ性によりポリエステルのエステル結合が加水分解され、硬化遅延に有用なカルボキシル基やヒドロキシル基が遊離する。この加水分解速度は、コンクリート中の水分がセメントの硬化に利用されるにつれて上昇し、養生中のコンクリートの発熱により最大となり、遊離したカルボキシル基とヒドロキシル基とが相乗的に大きな硬化遅延能を発現させる。一方、硬化遅延能が発現する段階のコンクリートは既に流動性がなく、ポリエステルの加水分解により硬化遅延成分が遊離しても、ブリード水に溶解して移動することもない。そのため、装飾材の表面側に無機硬化性組成物が回りこんで来ても、その硬化を確実に抑制できる。従って、セメントの硬化処理後に、水などにより、非硬化の無機硬化性組成物を前記水溶性又は水分散性粘着剤(アクリル系共重合体)と共に容易に除去できるので、装飾材表面を損傷させることがない。また、所望の部位でのみ硬化遅延能を発現させることができるので、セメントの硬化後に洗い出すことにより美麗な洗い出し面を精度よく形成できる。
【0046】
前記(A)アクリル系共重合体と(B)セメント硬化遅延剤との割合は、粘着性及びセメント硬化遅延能を損なわない範囲で適当に選択できるが、例えば、(A)と(B)の重量比[(A)/(B)]は、2/98〜95/5、好ましくは5/95〜80/20、さらに好ましくは7/93〜60/40(特に、7/93〜40/60)程度である。
【0047】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、前記(A)アクリル系共重合体以外の粘着剤を含んでいてもよい。このような粘着剤としては、水溶性または水分散性の粘着剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの合成水溶性高分子、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントガム、ペクチン、アルギン酸ソーダ、カラゲニンなどの天然水溶性高分子などが挙げられる。
【0048】
また、本発明のセメント硬化遅延性組成物は、溶媒や、種々の添加剤、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、耐湿性付与剤、帯電防止剤、増量剤(充填剤)、顔料、シート(フィルム)形成能を有する樹脂、結合剤(バインダー樹脂など)などを含んでいてもよい。
【0049】
溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エーテル類、酢酸エチルなどのエステル類等の有機溶剤;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0050】
粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂などの炭化水素系樹脂、ロジン誘導体(水溶性又は水分散性のロジン誘導体など)などが挙げられる。
【0051】
可塑剤としては広範囲のものが使用できるが、グリセリン、ソルビット、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオールなどの多価アルコール;トリアセチンなどの多価アルコールのエステル;ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の親水性可塑剤などが好ましい。親水性可塑剤の使用量は、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、例えば0〜100重量部(例えば5〜100重量部)、好ましくは0〜50重量部(例えば10〜50重量部)程度である。親水性可塑剤を添加することにより初期接着性を向上できる。
【0052】
耐湿性付与剤としては、親水性エポキシ化合物、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。耐湿性付与剤の使用量は、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、例えば0〜5重量部(例えば0.01〜5重量部)、好ましくは0〜2重量部(例えば0.05〜2重量部)程度である。耐湿性付与剤を添加すると、セメント硬化遅延性組成物を紙製のシート状基材に塗布する際、紙への浸みこみを抑制できる。
【0053】
増量剤としては、カオリン、タルク、シリカ、アルミナなどの種々の粉粒体が使用できるが、微粉体、例えば、微粉スラグ、フライアッシュ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカヒューム(シリカの極微細粉末)などを用いる場合が多い。増量剤の使用量は、例えば、前記(A)アクリル系共重合体100重量部に対して、2〜500重量部、好ましくは3〜200重量部、さらに好ましくは5〜100重量部程度である。
【0054】
顔料としては、有彩色又は無彩色を問わず種々の着色剤、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化チタン(TiO2 )、リトポン(ZnS+BaSO2 )などの白色顔料、カーボンブラックなどの黒色顔料、黄色、橙色、赤色、紫色、青色などの種々の着色顔料が例示される。これらの顔料のうち酸化亜鉛を用いると、隠蔽力が比較的大きいだけでなく、硬化遅延剤との相乗効果により、凝結遅延作用を高めることができる。なお、凝結遅延作用を高める上では、前記酸化亜鉛以外に、酸化鉛、酸化銅も有用である。顔料の使用量は、(A)アクリル系共重合体100重量部に対して、1〜300重量部、好ましくは2〜200重量部、さらに好ましくは5〜100重量部程度である。
【0055】
シート(フィルム)形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン46、ナイロン6、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルエステル系樹脂のケン化物;エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ポリクロロプレンなどのハロゲン含有ポリマー;アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系ポリマー;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;天然高分子などの熱可塑性樹脂、および熱硬化性アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上使用できる。また、シート系性能を有する樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いる場合が多い。特に好ましい熱可塑性樹脂は、親水性樹脂(例えば、水溶性または水分散性樹脂)やラテックス、エマルジョンなどのように親水化された樹脂である場合が多い。シート形成能を有する樹脂は、セメント硬化遅延性組成物を用いてシートを形成する際、セメント硬化遅延剤がシート形成能を有しない場合に特に有用である。シート形成能を有する樹脂の使用量は、例えば、セメント硬化遅延剤(B)100重量部に対して、10〜2000重量部、好ましくは15〜1000重量部、さらに好ましくは20〜400重量部程度である。
【0056】
バインダー樹脂は上記シート形成能を有する樹脂であってもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、塩素化ポリプロピレンなどの塩素かポリオレフィン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー、エラストマー(例えば、天然ゴム、塩化ゴム、塩酸ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなど)などが例示される。バインダー樹脂は、シート状基材の表面にセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を形成する際、セメント硬化遅延材として樹脂以外の遅延剤を用いる場合に特に有用である。バインダー樹脂の使用量は、例えば、セメント硬化遅延剤(B)100重量部に対して、10〜2000重量部、好ましくは15〜1000重量部、さらに好ましくは20〜400重量部程度である。
【0057】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、前記特定の(A)アクリル系共重合体と(B)セメント硬化遅延剤とを含んでいるので、セメントの硬化を遅延又は抑制する作用を有すると共に、高い粘着性を有し、しかも水に対する溶解性又は分散性に優れるという特徴を有する。本発明のセメント硬化遅延性組成物は、タイルなどの装飾材と一体に固着した表面装飾コンクリート製品、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品を製造する上で有用であるほか、コンクリート表面へのタイルなどの装飾材の施工に有用なセメント硬化遅延用シートや、ユニットタイルなどの装飾材キットシートを得る上でも有用である。
【0058】
[セメント硬化遅延用シート(1)]
本発明のセメント硬化遅延用シート(1)は、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されている。
セメント硬化遅延用シート(1)は、シート(フィルム)形成能を有するセメント硬化遅延剤(セメント硬化遅延能を有する樹脂)を含むセメント硬化遅延性組成物、又はセメント硬化遅延剤と前記シート(フィルム)形成能を有する樹脂とを含むセメント硬化遅延性組成物を、樹脂の種類に応じて、慣用の成膜法(押出成形法、流延法、カレンダー法など)に付すことより得ることができる。シート(フィルム)形成能を有するセメント硬化遅延剤には、例えば前記ポリエステルなどが含まれる。成膜の際には、前記有機溶媒を用いることができる。
【0059】
流延法を採用する場合、前記セメント硬化遅延性組成物を支持体の平滑面に塗工し、乾燥又は硬化した後、被膜を支持体から剥離することによりシートを得ることができる。表面が平滑な支持体としては、種々のベルト(例えば、ステンレス製ベルト、ウレタン樹脂製ベルト、表面加工された鉄製ベルトなど)、フィルム(例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)、ドラムなどが使用できる。被膜の剥離性を高めるため、支持体の表面を、シリコーンオイルやシリコーン樹脂などのシリコーン系化合物、液状フッ素含有化合物やフッ素樹脂などのフッ素系化合物などで表面処理し、支持体の表面張力を低減させてもよい。
【0060】
セメント硬化遅延用シート(1)の厚みは、作業性、機械的強度などを損なわない範囲で選択でき、例えば、15〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度であり、50〜200μm程度である場合が多い。シートの厚みが小さい場合には、強度が低下すると共に、高い硬化遅延性を保持できない場合があり、厚すぎると取扱性を損ないやすい。
【0061】
[セメント硬化遅延用シート(2)]
本発明のセメント硬化遅延用シート(2)は、シート状基材の表面に前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層が形成されている。
【0062】
シート状基材を構成するポリマーは特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル(特にポリアルキレンテレフタレート);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルエステル系樹脂のケン化物などが例示される。これらのポリマーは1種又は2種以上使用できる。なお、シート状基材として、前記セメント硬化遅延用シート(1)を用いてもよい。また、シート状基材としては、例えば、ポリエチレン製繊維などの繊維を織ったクロス(例えば、プラスチック延伸ヤーン編組品など)、又は前記クロスの片面又は両面に前記ポリエチレンなどのポリマーで構成されるフィルムを積層した積層シート、紙、不織布などを用いてもよい。さらに、シート状基材は手切れ性や寸法安定性が改善されたシートであってもよい。
【0063】
好ましいシート状基材には、水溶性または水分散性のシート基材が含まれる。水溶性又は水分散性のシート状基材としては、前記ビニルエステル系樹脂のケン化物などの水溶性又は水分散性のポリマー又は繊維で構成された基材などが挙げられる。水溶性または水分散性のシート状基材を用いると、表面装飾コンクリート製品を製造する際、コンクリート硬化後、シート状基材を剥離する作業を行うことなく、セメント硬化遅延用シート全体を水、加圧水、ジェット流などにより容易に除去できる。そのため、シートの除去作業と装飾材表面の洗浄とを同時に行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0064】
シート状基材は、単一のシートであってもよく複数の層が積層された複合シートであってもよい。また、シート状基材は、未延伸フィルムで構成されていてもよく、一軸又は二軸延伸フィルムで構成されていてもよい。さらに、セメント硬化遅延層との密着性を高めるため、シート状基材の表面は、火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などにより表面処理されていてもよい。表面処理されたシート状基材の表面張力は、約40dyn/cm以上である場合が多い。
【0065】
セメント硬化遅延層はシート状基材から剥離可能であってもよい。シート状基材から硬化遅延層が剥離可能である場合には、必要に応じて硬化遅延層のうち所望する模様などに対応させて所定の部位又は領域をカッティングし、硬化遅延層側を型枠の底部などに貼付し、シート状基材を剥離した後、無機硬化性組成物を打設し、養生硬化したコンクリート製品のうち前記セメント硬化遅延層との接触面を洗い出すことにより、コンクリート製品の表面に、模様や骨材などが露出した洗い出し面を形成できる。硬化遅延層を剥離可能とするため、シート状基材の表面は、例えば、ワックス、高級脂肪酸アミド、シリコーンオイルなどの離型剤で処理してもよい。シート状基材の表面張力は、例えば、38dyn/cm以下、好ましくは20〜38dyn/cm、さらに好ましくは25〜36dyn/cm程度である場合が多い。
【0066】
セメント硬化遅延層は、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されている。セメント硬化遅延性組成物には前記バインダー樹脂を含有させてもよい。なお、シート成形可能な硬化遅延剤を用いる場合、バインダー樹脂は必ずしも必要ではない。
【0067】
本発明のセメント硬化遅延用シート(2)は慣用の方法、例えば、前記セメント硬化遅延性組成物を含む塗布液をシート状基材の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製造できる。塗布液は前記溶媒を含んでいてもよい。塗布に際しては、刷毛ローラー、ゴムヘラなどを用いてもよいが、工業的には、通常のコーティングに利用される塗布手段、例えば、ディップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、バーコーター、カーテンコーター、スプレーなどを利用する場合が多い。
【0068】
このようなセメント硬化遅延用シート(2)において、シート状基材の厚みは、例えば、10〜200μm、好ましくは15〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。セメント硬化遅延層の厚みは、セメントの硬化にに対して遅延効果が発現する厚みであればよく、例えば、1〜300μm(例えば、5〜200μm)、好ましくは2〜150μm(例えば、5〜120μm)、さらに好ましくは5〜100μm(例えば、10〜100μm)程度であり、5〜70μm程度である場合が多い。
【0069】
このようなシート(2)は、打設した無機硬化性組成物(モルタル組成物など)に対して均一な厚みの硬化遅延層により硬化遅延作用を均等に作用させることができると共に、硬化遅延層が薄くても高い硬化遅延性を付与できる。また、工業的に安価に生産できると共に、シート状基材により補強できるという利点がある。また、剥離可能な硬化遅延層を形成すると、硬化遅延層の剥離部位に対応させて、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を高い精度で簡便且つ効率よく形成できる。
【0070】
本発明のセメント硬化遅延用シート(1)及び(2)は、前記セメント硬化遅延性組成物と同様、タイルなどの装飾材と一体に固着した表面装飾コンクリート製品、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品の製造に有用である。
【0071】
[装飾材キットシート]
本発明の装飾材キットシートは、前記セメント硬化遅延用シート(1)の表面、又はセメント硬化遅延用シート(2)のうちセメント硬化遅延層が形成された面に、複数の装飾材が連続して又は散在して貼着されている。この装飾材キットシートはユニットタイルなどとして使用できる。
【0072】
複数の装飾材は、面方向(例えば、縦方向、横方向や縦横方向)に互いに隣接(連続)して又は間隔をおいて配列する場合が多い。このような装飾材キットシートを用いると、個別に型枠内で装飾材を配置する必要がなく、別の工程で作製された装飾材キットシートを型枠内に配設するだけでよく、作業効率を高めることができる。
【0073】
装飾材としては、種々の材料、例えば、玉石、黒石、鉄平石などの天然石、人造石などの石材、タイルなどのセラミックス材、金属材、ガラス材、木材、織布などが使用できる。装飾材は平板状であってもよく、タイルは通常のタイルのほか、モザイクタイルや割りタイルであってもよい。また、コンクリート製品の製造に際して、必要に応じて、型枠内に鉄筋などの補強材を配設して無機硬化性組成物を打設してもよい。
前記ユニットタイルなどの装飾材キットシートもまた、プレキャストコンクリート板などの表面装飾コンクリート製品の製造に有用である。
【0074】
[コンクリート製品の製造]
表面装飾コンクリート製品は、前記セメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート又は装飾材キットシートを利用して、例えば以下のようにして製造できる。
【0075】
すなわち、型枠内の底面に、セメント硬化遅延性組成物を塗布して、粘着性を有するセメント硬化遅延層を形成し、その上に、タイルなどの複数の装飾材(化粧材)を、表(おもて)面が上記硬化遅延層に接するように貼着により配置し、装飾材を位置決め固定する。次いで、無機硬化性組成物を型枠内に打設し、養生などの慣用の硬化方法により硬化させた後、脱型し、露出した装飾材の表面を洗浄することにより表面装飾コンクリート製品を製造できる。
【0076】
また、表面装飾コンクリート製品は、(i)型枠の底部に、(a)前記セメント硬化遅延用シート(1)を配設し、その上に装飾材を貼着により配置するか、(b)前記セメント硬化遅延用シート(2)をセメント硬化遅延層が上方に位置するように配設し、その上に装飾材を貼着により配置するか、又は(c)前記装飾材キットシートを、装飾材が上方に位置するように配設し、(ii)無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、セメント硬化遅延用シートを除去して、露出した装飾材の表面を洗浄することにより製造できる。
【0077】
セメント硬化遅延性組成物の塗布は前記セメント硬化遅延用シートにおけるセメント硬化遅延層の形成の場合と同様の方法により行うことができる。また、装飾材の配置は前記装飾材キットシートの場合と同様にして行うことができる。装飾材の表面の洗浄は、水、加圧水、ジェット流などにより行うことができる。
【0078】
この方法によれば、セメント硬化遅延層に含まれるセメント硬化遅延剤により、無機硬化性組成物のうち該硬化遅延層との接触面での硬化を均一に抑制できると共に、無機硬化性組成物が装飾材の表面側に回り込んだとしても、その硬化を抑制でき、非硬化状態(半硬化又は未硬化)が維持される。また、本発明のセメント硬化遅延性組成物に含まれるアクリル系共重合体は、粘着性に優れ且つ水に容易に溶解または分散するという特性を有している。そのため、無機硬化性組成物の打設により装飾材の位置ずれが生じるのを確実に抑制でき、コンクリート表面に精度よく装飾を施すことができるとともに、表面仕上げ作業において、装飾材の表面から非硬化の無機硬化性組成物及び粘着剤(アクリル系共重合体)を水洗という簡単な操作で効率よく完璧に除去することができる。従って、装飾材の表面を損傷させることなく、美麗な表面装飾コンクリート製品を得ることができる。また、無機硬化性組成物のうち前記硬化遅延層との接触部位では、洗い出しにより骨材が露出し、自然な風合いを有する洗い出し面が形成される。
【0079】
なお、配置した装飾材間の間隙部(目地部)、型枠と装飾材との間隙部(目地部)には、モルタル組成物などの付着を防止するための目地材(例えば、ポリウレタンなどの可撓性プラスチックで形成された目地棒等)を配設してもよい。
【0080】
表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品は、例えば、(i)(a)型枠の底面に、セメント硬化遅延性組成物を塗布して、粘着性を有するセメント硬化遅延層を形成するか、(b)型枠の底面に、前記セメント硬化遅延用シート(1)を貼付するか、又は(c)セメント硬化遅延層がシート状基材から剥離可能に形成されたセメント硬化遅延用シート(2)を、硬化遅延層側を型枠の底面に貼付し、シート状基材を剥離し、次いで、(ii)無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を洗浄、除去することにより製造できる。
【0081】
この方法によれば、セメント硬化遅延性組成物に含まれるアクリル系共重合体が粘着性に優れるため、無機硬化性組成物を打設しても、硬化遅延層がずれることがなく、コンクリート製品の表面の所望の位置に、骨材が露出した自然な風合いを有する洗い出し面を形成できる。また、前記アクリル系共重合体は、水に容易に溶解または分散するため、脱型した際、型枠の底面に付着した硬化遅延層の残留物は、水により容易に除去できる。
【0082】
セメントには、例えば、気硬性セメント(セッコウ、消石灰やドロマイトプラスターなどの石灰);水硬性セメント(例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、急硬高強度セメント、焼きセッコウなどの自硬性セメント;石灰スラグセメント、高炉セメントなど;混合セメント)などが含まれる。好ましいセメントには、例えば、セッコウ、ドロマイトプラスターおよび水硬性セメントなどが含まれる。
【0083】
前記セメントは、水とのペースト組成物(セメントペースト)として使用してもよく、砂、ケイ砂、パーライトなどの細骨材、粗骨材を含むモルタル組成物やコンクリート組成物として使用してもよい。前記ペースト組成物及びモルタル組成物は、必要に応じて、着色剤、硬化剤、塩化カルシウムなどの硬化促進剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの減水剤、凝固剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの増粘剤、発泡剤、合成樹脂エマルジョンなどの防水剤、可塑剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0084】
【発明の効果】
本発明のセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートによれば、特定のアクリル系共重合体とセメント硬化遅延剤とを含んでいるため、表面装飾コンクリート製品を得るに際し、コンクリートなどの無機硬化性組成物を打設しても装飾材等の位置ずれを抑制できるとともに、無機硬化性組成物の硬化後、装飾材等の表面仕上げ作業を簡便且つ効率よく行うことができる。また、無機硬化性組成物の表面の硬化を均一にかつ確実に抑制でき、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を精度よく形成できる。さらに、装飾材を損傷させることなく、装飾性に優れたコンクリート製品を得る上で有用である。
【0085】
本発明の表面装飾コンクリート製品の製造法によれば、表面に美麗な装飾、模様が精度よく施されたコンクリート製品を簡便且つ効率よく製造できる。
【0086】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0087】
実施例1
撹拌翼を備えた反応器に、無水マレイン酸160g、プロピレングリコール170gを入れるとともに、重合触媒としてチタン酸テトラ−n−ブチル160mgを添加した。内容物を撹拌し、反応により生成する水分を除去するため窒素ガスを流通させながら、常圧下、常温から150℃まで3時間かけて昇温した後、150℃から210℃まで24時間かけて昇温し、反応を停止した。得られた不飽和ポリエステル(重量平均分子量約500)に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート210g、スチレン30g及びナフテン酸コバルト1.2gを加え、重合性組成物(A)を得た。
【0088】
一方、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、メタノール40.8重量部を仕込み、アクリル酸ブチル15.5重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル15重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部、アクリル酸5重量部からなる混合物と、触媒としてAIBNの1重量%メタノール溶液(AIBNとして0.1重量部)を、65℃の温度で3時間かけて添加した後、5時間熟成して、固形分40重量%のアクリル系共重合体組成物を得た。次いで、上記アクリル系共重合体84重量部に対して、水酸化ナトリウム2重量部を水溶液として添加混合し、共重合体中のカルボキシル基の85%を中和し、さらに、ポリエチレングリコール7重量部及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル0.5重量部を添加して、固形分43重量%の水溶性粘着剤(B)を得た。
【0089】
前記重合性組成物(A)24g、前記水溶性粘着剤(B)6g及び酢酸エチル10gを混合し、さらに有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)240mgを加えて撹拌混合した。得られた混合液を、バーコーダーを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)に、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させ、セメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シートを得た。
【0090】
このシートを、型枠の底面に、セメント硬化遅延層が上面となるように貼付し、硬化遅延層の上に、5cm×10cmのタイルを等間隔に4枚貼り付けた後、コンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型し、前記シートを剥がした。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したところ、タイル表面の付着物は水洗のみで円滑に除去でき、ワイヤーブラシ、ヘラなどによる除去作業は不要であった。また、タイルは所望の位置に正確に固着しており、美麗な表面装飾コンクリート板が得られた。
【0091】
実施例2
実施例1と同様にして得られたセメント硬化遅延シートの硬化遅延層上に、5cm×10cmのタイルを等間隔に4枚貼り付けてユニットタイルを作製した。このユニットタイルを、型枠の底面に、セメント硬化遅延層が上面となるように貼付し、コンクリートを打設し、常温で1日放置して効果させた後、脱型し、前記シートを剥離した。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したところ、タイル表面の付着物は水洗のみで円滑に除去できた。また、タイルは所望の位置に正確に固着しており、装飾性に優れたコンクリート板が得られた。
【0092】
比較例1
水溶性粘着剤(B)に代えて、非水溶性粘着剤(ニッセツKP−491;日本カーバイド工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したが、タイル表面は粘着剤が付着して粘性を帯びていた。
【0093】
比較例2
水溶性粘着剤(B)を使用しなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、コンクリート製品の表面において、タイルは所望の位置からずれた位置に固着していた。
【0094】
実施例3
実施例1と同様にして調製した、重合性組成物(A)、水溶性粘着剤(B)、酢酸エチル及び有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)からなる混合液を、離型処理された紙製のシート(離型紙)に、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させ、離型層上にセメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シートを得た。
【0095】
このシートを、鉄製型枠の底面に、硬化遅延層が底板に接触するように貼付した後、離型紙を剥離した。型枠内に、コンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型したところ、前記硬化遅延層の残留物を型枠の底板に残して、コンクリート板を容易に離型させることができた。
【0096】
コンクリート板の表面を水洗したところ、硬化遅延層と接触した部位のみ均一に2〜3mmの深さで洗い出され、自然な風合いを有する洗い出し面が形成されたコンクリート製品が得られた。一方、型枠に水を張り放置した結果、前記硬化遅延層の残留物は、2〜3時間後には型枠の底板から自然剥離した。
【0097】
比較例3
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)の一方の面に、実施例1と同様にして得られた重合性組成物(A)と、この重合性組成物(A)中の不飽和ポリエステル100重量部に対して3重量部の有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)とからなる混合液を、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させた後、他方の面に、比較例1で用いた非水溶性粘着剤を厚み10μmで塗布し、セメント硬化遅延用シートを得た。
【0098】
このシートを、実施例3と同様の鉄製型枠の底面に、粘着剤層が底板に接触するように貼付した後、型枠内にコンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型して、コンクリート製品を得た。
型枠の底板に付着したシートを除去するため、型枠内に水を張り放置したところ、1日経過しても、シートは剥離しなかった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントを含む硬化性組成物の表面の硬化を遅延させる上で有用なセメント硬化遅延性組成物に関する。より詳細には、コンクリートの非硬化部位を洗い出し、コンクリート表面に骨材を露出させたり、凹凸模様を形成する上で有用なセメント硬化遅延性組成物に関する。また、本発明は、コンクリートの表面へのタイルなどの装飾材の施工に有用なセメント硬化遅延用シート、このセメント硬化遅延用シートを利用した装飾材キットシート及びプレキャストコンクリート板などの表面装飾コンクリート製品の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート表面へのタイルの施工について、粘着テープの粘着剤層の表面に複数枚のタイルを貼着して配列したユニットタイルを用いる方法が提案されている。このユニットタイルを用いる方法では、コンクリートが打設される型枠にユニットタイルを配置し、コンクリートを型枠に流し込んで養生した後、脱型し、粘着シートを除去することにより表面にタイルを露出させた後、タイルの表面に回り込んで硬化したセメントを除去し、表面仕上げすることによりタイルを施工している。この表面仕上げは、タイルに付着した硬化セメントを手作業で削り取る場合が多く、表面の綺麗さを特徴とするタイルの施工に欠くことができない工程である。
しかし、タイルに付着した硬化セメントを除去する作業は、時間と手間がかかり煩雑であり、タイル施工経費が高騰するだけでなく、硬化セメントの除去作業によりタイル表面が損傷する原因ともなる。
【0003】
コンクリート製品の表面を加工したり、表面に模様を形成するため、セメント硬化遅延剤が利用されている。例えば、コンクリート洗い出し平板は、セメント硬化遅延剤が塗布された型枠、又は前記硬化遅延剤を含浸した紙が敷設されている型枠内に、モルタル組成物を流し込んだ後、裏打ち用のモルタル組成物を打設して養生し、モルタル組成物が硬化した後、脱型し、硬化遅延剤が付着したコンクリート面を洗浄することにより製造される。
【0004】
特開平5−38711号公報及び特開平5−50411号公報には、超遅延剤、粘着付与剤、増量剤及び白色系顔料を含む混合物を型枠内面に付着させ、モルタル又はコンクリートを打設し、養生及び脱型し、セメント製品のうち型枠との当接面のセメントペーストを洗い出し、セメント製品の表面を仕上げる方法が開示されている。
また、コンクリート製品の表面に凹凸状の模様を形成する方法においても、セメント硬化遅延剤を用いる方法、セメント硬化遅延剤を含浸または塗布した型紙を用いる方法が知られている。例えば、特開昭63−216703号公報では、硬化遅延剤を紙に含浸させた型紙をカッティングして所定の文字や図形などの模様に対応する裁断型紙を作製する工程、型枠内面の所定部位に裁断型紙を接着する工程、前記型枠内にモルタル組成物を打設し養生を施す工程、前記型枠を解体してコンクリート製品を取り出す工程、コンクリート製品の型紙部位を洗浄する工程を経て、コンクリート製品の表面に所定の凹凸模様を形成している。特開昭61−202803号公報には、セメント硬化遅延剤を塗布した紙にタイルなどを貼り付けて型枠内にセットし、上記と同様にして洗い出す方法が開示されている。
【0005】
また、型紙に代えてセメント硬化遅延剤を用いる方法では、硬化遅延剤を用いて型枠に所定の模様を描く工程、前記と同様にモルタルを打設して型枠から取り出す工程、模様を形成した部位に対応する未硬化面を洗浄する工程を経ることにより、模様を形成されている。
【0006】
しかし、セメント硬化遅延剤を含浸または塗布した型紙は、モルタル組成物の打設に対する強度が弱い、そのため、型紙が破れたり、型枠との位置ずれが生じ、コンクリート製品の所定の部位に洗い出し面や模様を形成することが困難である。
また、図形模様を形成するためには、型紙を所定の形及び大きさに切断し、接着剤により型枠に固定する必要がある。そのため、複雑な洗い出し面や模様を形成することが困難であると共に、多量のコンクリート製品に模様を形成する場合には、作業が煩雑であり、コンクリート製品の生産性を低下させる。
【0007】
特開平3−224953号公報には、型枠の底板に、注入した埋込剤(コンクリート非硬化剤)を介してタイルや石などの装飾材を配列し、コンクリートを打設して硬化させた後、脱型し、コンクリート製品の表面の埋込剤を水洗により除去することにより、装飾材と一体化したコンクリートブロックの製造方法が開示されている。特開平3−175003号公報には、非硬化被覆材層を介して型枠の内面に装飾材を仮着し、コンクリートを打設して硬化させた後、脱型し、コンクリート製品の表面の非硬化被覆材およびコンクリートの未硬化部分を水洗により除去し、表面が装飾されたコンクリート製品を製造する方法が開示されている。この先行文献には、非硬化被覆材層を、ポリエステル、ポリビニルアルコールなどのアルカリ膨潤化剤と高吸水性ポリマーとの混合物で形成することが記載されている。
【0008】
しかし、これらの方法では、コンクリートを打設する際に、装飾材が位置ずれを起こしやすく、コンクリート製品の所定の部位に装飾を施すことが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、表面装飾コンクリート製品を得るに際し、コンクリートなどの無機硬化性組成物を打設しても、装飾材等の位置ずれを抑制できるとともに、装飾材等の表面仕上げを簡便かつ効率よく行うことができるセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
本発明の他の目的は、無機硬化性組成物の表面の硬化を均一にかつ確実に抑制でき、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を精度よく形成できるセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、装飾材を損傷させることなく、装飾性に優れたコンクリート製品を得る上で有用なセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートを提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、表面に美麗な装飾、模様が精度よく施されたコンクリート製品を簡便且つ効率よく製造できる表面装飾コンクリート製品の製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のアクリル系粘着剤とセメント硬化遅延剤とを含むセメント硬化遅延性組成物を用いると、装飾材などの位置ずれを確実に防止できると共に、コンクリート製品の表面仕上げ作業などを簡便化でき、美麗な装飾が精度よく施されたコンクリート製品を容易に得られることを見出だし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、(A)不飽和カルボン酸又はその塩と、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルとを構成単量体単位として含む水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体と、(B)セメント硬化遅延剤とを含むセメント硬化遅延性組成物を提供する。アクリル系共重合体は、構成単量体単位として不飽和カルボン酸又はその塩を5〜40重量%程度、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルを40〜90重量%程度含んでいてもよい。前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は−80〜10℃程度である。
【0013】
前記セメント硬化遅延剤には、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ホスホン酸類、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノール類、リグニンスルホン酸類、糖類、不飽和ポリエステルなどが含まれる。前記不飽和ポリエステルは、例えば、主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール又はその縮合物を含むポリオール成分との反応により得ることができる。また、不飽和ポリエステルは、不飽和ポリエステルが架橋による硬化物であってもよい。
【0014】
本発明は、また、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延用シート(1)を提供する。
本発明は、さらに、シート状基材の表面に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シート(2)を提供する。
本発明は、さらにまた、前記セメント硬化遅延用シート(1)の表面、又は前記セメント硬化遅延用シート(2)のうちセメント硬化遅延層が形成された面に、複数の装飾材が連続して又は散在して貼着されている装飾材キットシートを提供する。
本発明は、また、型枠の底部に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、このセメント硬化遅延層の上に装飾材を貼着により配置し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法を提供する。
本発明はさらに、表面に装飾材が貼着により配置された前記セメント硬化遅延用シート(1)又は(2)を、型枠内に、装飾材が上方に位置するように配設し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、セメント硬化遅延用シートを除去し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法を提供する。
【0015】
本発明は、さらにまた、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品の製造法であって、型枠の底部に、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を設け、その上に無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を除去するコンクリート製品の製造法を提供する。
【0016】
なお、本明細書において、「シート」とは厚さの如何を問わず、二次元的構造物を意味し、フィルムを含む意味に用いる。また、「粘着剤又は接着剤」を総称して「粘着剤」と称することがある。「多価カルボン酸の誘導体」とは、多価カルボン酸の酸無水物、多価カルボン酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの脱離可能なC1−4 アルキルエステル)を含む意味に用いる。また、特に断りのない限り、「セメント」とは、水との混和により硬化性を示す無機物質を意味し、気硬性セメント、水硬性セメントなどを含む意味に用いる。さらに、セメントを含む硬化性組成物にはセメントペースト、モルタル組成物及びコンクリート組成物が含まれ、これらを単に「無機硬化性組成物」と総称する場合がある。「コンクリート製品」とは、無機硬化性組成物の硬化によって得られる製品を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
[セメント硬化遅延性組成物]
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、(A)(a)不飽和カルボン酸又はその塩と、(b)ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルとを構成単量体単位として含む水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体を含んでいる。
【0018】
前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和多価カルボン酸またはそのモノアルキルエステルなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などの1価の金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などの2価の金属塩;アンモニウム塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミンとの塩などが挙げられる。
【0019】
好ましい不飽和カルボン酸には、不飽和モノカルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸などが含まれる。また、好ましい不飽和カルボン酸の塩には、ナトリウム塩、カリウム塩などの1価の金属塩などが含まれる。不飽和カルボン酸又はその塩は、1種で、または2種以上組合せて使用できる。
【0020】
前記(b)ホモポリマーのTgが−100〜0℃のアクリル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸C2−12アルキル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸C6−14アルキル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有アクリル酸エステルなどが例示される。これらの中でも、アクリル酸C2−10アルキル、特に、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸C4−10アルキルが好ましい。上記の単量体は1種で、又は2種以上組合せて使用できる。
【0021】
前記アクリル系共重合体は、構成単量体単位として、前記(a)及び(b)以外の他の単量体(c)を含んでいてもよい。このような単量体(c)としては、前記(a)及び(b)の単量体と共重合可能な単量体、例えば、アクリル酸メチル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチルなどのメタクリル酸C1−5 アルキルエステル;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有メタクリル酸エステル;グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル;アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体等のビニル単量体が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、ヒドロキシル基含有メタクリル酸エステルなどが好ましい。これらの単量体は1種又は2種以上使用できる。
【0022】
前記アクリル系共重合体に占める前記(a)不飽和カルボン酸又はその塩の割合は、例えば5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%程度である。前記(a)成分の割合が小さすぎると水溶性が低下しやすく、逆に大きすぎると粘着性が低下しやすい。また、(a)不飽和カルボン酸又はその塩全体に対する不飽和カルボン酸の塩の割合は、例えば、20モル%以上(例えば20〜100モル%程度)、好ましくは40モル%以上(例えば50〜95モル%程度)、さらに好ましくは55モル%以上(例えば60〜95モル%程度)程度である。不飽和カルボン酸の塩の割合が小さすぎると水溶性が低下しやすい。
【0023】
また、アクリル系共重合体に占める前記(b)ホモポリマーのTgが−100〜0℃のアクリル酸エステルの割合は、例えば40〜90重量%、好ましくは45〜85重量%、さらに好ましくは50〜80重量%程度である。前記アクリル酸エステルの割合が小さすぎると粘着性が低下しやすく、大きすぎると水溶性が低下しやすくなる。
【0024】
アクリル系共重合体に占める前記単量体(c)の割合は、例えば0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%(例えば5〜25重量%)、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0025】
前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば−80〜10℃、好ましくは−70〜0℃、さらに好ましくは−60〜−5℃程度である。なお、前記アクリル系共重合体のTg(℃)は次式により推算できる。
【0026】
1/(Tg+273 )=w1/(Tg1 +273 )+w2/(Tg2 +273 )+…+wn/(Tgn +273 )
[wnは第n単量体成分の重量分率、Tgn は第n単量体成分のホモポリマーのTg(℃)、nは自然数を示す]
アクリル系共重合体の分子量は特に制限されず、例えば重量平均分子量は20000〜2000000程度、好ましくは30000〜1000000、さらに好ましくは40000〜200000程度である。なお、水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体には、ブリード水のようなアルカリ性水に溶解又は分散可能な共重合体も含まれる。
前記(A)アクリル系共重合体は粘着剤として機能する。
【0027】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、また、(B)セメント硬化遅延剤を含んでいる。
前記(B)セメント硬化遅延剤としては、セメントの硬化速度を低下させる硬化遅延剤又は凝結遅延剤であればよく、無機又は有機硬化遅延剤が使用できる。無機硬化遅延剤には、リン酸、ホウ酸又はそれらの塩、ヘキサフルオロケイ酸塩などが含まれる。有機硬化遅延剤には、ホスホン酸類、オキシカルボン酸類、多価カルボン酸類、ケト酸類、芳香族多価アルコール類、糖類、フミン酸、リグニンスルホン酸類、カルボキシル基を有するモノマーの単独又は共重合体若しくはその塩、及び加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマーなどが含まれる。セメント硬化遅延剤は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0028】
ホスホン酸類としては、アミノジ(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)又はこれらの塩(例えば、アンモニウム塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属塩など)などが挙げられる。
【0029】
オキシカルボン酸類としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、没食子酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸などのオキシカルボン酸又はその塩、及びアスコルビン酸、イソアスコルビン酸などのオキシカルボン酸に対応するラクトン類などが挙げられる。多価カルボン酸類としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの飽和多価カルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸などが例示できる。ケト酸類としては、ピルビン酸、α−ケトグルタール酸などのケト酸又はその塩などが挙げられる。多価フェノール類としては、ピロガロールなどが挙げられる。糖類には、スクロースなどの多糖類、コーンシロップなどが含まれる。リグニンスルホン酸類としては、リグニンスルホン酸又はリグノスルホネート(例えば、リグノスルホン酸カルシウムなど)などが挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーの単独又は共重合体若しくはその塩としては、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、エチレンスルホン酸−アクリル酸コポリマーなどのポリマー又はその塩(好ましくは、低分子量ポリマー又はその塩)などが例示される。
【0030】
前記加水分解によりセメント硬化遅延能を発現可能なポリマーには、ポリエステルなどが含まれる。ポリエステルは、多価カルボン酸又はその誘導体を含むカルボン酸成分と、多価アルコール又はその縮合物を含むポリオール成分との縮合反応により得ることができる。
【0031】
多価カルボン酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの主鎖の炭素数が2〜6の飽和多価カルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸などの主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸などが含まれる。前記飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸は組合せて使用してもよい。これらの多価カルボン酸は単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0032】
多価カルボン酸成分は、前記多価カルボン酸以外に、脂肪族多価カルボン酸(例えば、アゼライン酸、セバシン酸など)、芳香族多価カルボン酸(例えば、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など)を含んでいてもよい。特に、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はこれらの誘導体から選択された芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分を用いると、ポリエステルの強度、伸度、可撓性、柔軟性、耐水性などの特性を調整するのに有用である。
【0033】
ポリエステル全体に対する芳香族多価カルボン酸の含有量は、例えば、0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%(例えば1〜15重量%)、さらに好ましくは0.1〜10重量%(例えば2〜10重量%)程度である。
【0034】
好ましい多価カルボン酸成分には、(1)主鎖の炭素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分(特に、少なくともマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸又はそれら誘導体を含む多価カルボン酸成分)、又は(2)主鎖の炭素数が4〜6の不飽和脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体と、フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸から選択された少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸又はそのその誘導体とを含む多価カルボン酸成分が含まれる。
【0035】
ポリオール成分には、炭素数2〜4の多価アルコール、例えば、ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコールなどのC2−4 アルキレングリコール)、C2−4 アルキレングリコールの縮合物であるポリオキシアルキレングリコール、例えば、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリール、ポリオキシエチレングリコール(以下、特に言及しない限り、これらを単にポリエチレングリコールと総称する場合がある)、ジオキシプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール(以下、特に言及しない限り、これらを単にポリプロピレングリコールと総称する場合がある)、ポリオキシテトラメチレングリコールなど;ポリオール(例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなど)が含まれる。これらのポリオール成分は単独で又は組合せて使用してもよい。
【0036】
好ましい多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジオキシエチレングリコール、トリオキシエチレングリール、ポリオキシエチレングリコール、ジオキシプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール及びグリセリンが含まれる。多価アルコールは、炭素数2〜4の脂肪族多価アルコール(特にジオール)又はその縮合物で構成された多価アルコール成分を含む場合が多い。
【0037】
ポリオキシアルキレングリコールの分子量は、例えば、重量平均分子量100〜7500、好ましくは200〜5000(例えば、200〜2500)程度であり、ポリエチレングリコールを用いる場合、重量平均分子量が300以下である場合が多い。
【0038】
多価アルコールは、必要に応じて他のポリオール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどと併用してもよい。これらのポリエステルのうち不飽和ポリエステル、特にマレイン酸又は無水マレイン酸を多価カルボン酸成分とする不飽和ポリエステルが好ましい。
【0039】
ポリエステルの分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量300〜100000(例えば、300〜25000)、好ましくは300〜50000(例えば、500〜15000)、さらに好ましくは500〜20000程度の範囲から選択できる。不飽和ポリエステルの分子量は、重量平均分子量300〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは500〜10000程度であり、重量平均分子量300〜5000(例えば、500〜5000)、特に500〜2500程度である場合が多い。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0040】
不飽和ポリエステルなどのポリエステルは、慣用の方法、例えば、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを、触媒の存在下に縮合させることにより得ることができる。マレイン酸や無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸を用いる場合には、ハイドロキノンなどのラジカル重合禁止剤の存在下で縮合反応させる場合が多い。ポリエステルは、多価カルボン酸1当量に対して多価アルコール0.5〜3当量、好ましくは0.7〜2当量程度の範囲から選択できる。分子量の小さなポリエステルは多価カルボン酸およびポリオールのうちいずれか一方の成分を過剰に使用することにより得る場合が多い。
【0041】
前記セメント硬化遅延能を有する樹脂は、前記不飽和ポリエステルの硬化物であってもよい。
不飽和ポリエステルの硬化物は、不飽和ポリエステルと重合開始剤とを含む重合性組成物(i)を硬化させることにより得られる。重合開始剤としては、種々の有機過酸化物、例えば、メチルエチルケトンパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキシドなどが使用できる。重合開始剤の使用量は、重合性を損なわない範囲、例えば、不飽和ポリエステル100重量部に対して、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部程度であり、2〜3重量部程度である場合が多い。
不飽和ポリエステルの硬化物は、不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマー(反応性希釈剤)と前記重合開始剤とを含む重合性組成物(ii)の硬化物であってもよい。前記重合性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数1〜20(特に炭素数1〜10)程度のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基、グリシジル基など)を有するモノマー、(メタ)アクリル酸と前記多価アルコール(ポリエチレングリコールなど)とのエステル[例えば、エチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(又はジ)(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。また、ビニルモノマーとしては、酢酸ビニルなどのビニルエステル、塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニルモノマー、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系モノマーも使用できる。これらの重合性モノマーは一種又は二種以上組合せて使用できる。
好ましい重合性ビニルモノマーには、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマー、特に(メタ)アクリル酸グリコールエステル類が含まれる。
【0042】
重合性ビニルモノマーの使用量は、不飽和ポリエステルの分子量などに応じて、硬化遅延能や不飽和ポリエステルの取扱い性を損なわない範囲、例えば、不飽和ポリエステル100重量部に対して、1〜500重量部(例えば、1〜100重量部)、好ましくは5〜200重量部(例えば、5〜100重量部)程度の範囲から選択でき、5〜30重量部程度の範囲であってもよい。
不飽和ポリエステルの硬化物は、前記重合性組成物を構成する成分(すなわち、重合性組成物(i)を構成する不飽和ポリエステルと重合開始剤と、重合性組成物(ii)を構成する不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマーと重合開始剤)に加えて、重合促進剤を含む重合性組成物(iii )の硬化物であってもよい。重合促進剤には、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどの有機酸コバルト塩、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどのβ−ジケトン又はβ−ケトエステル類、芳香族第3級アミン類、メルカプト類などが含まれる。これらの重合促進剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0043】
重合性組成物における重合促進剤の濃度は、例えば、10〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm(例えば、10〜100ppm)程度の範囲から選択でき、30〜50ppm程度であってもよい。
【0044】
不飽和ポリエステルの硬化(架橋)は、常温でも可能であるが、短時間(例えば、0.5〜50分程度)で硬化させるためには、温度60〜200℃程度で行なうのが有利である。
【0045】
上記のセメント硬化遅延剤のなかでも、無機硬化遅延剤、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノール類、糖類、リグニンスルホン酸類及び不飽和ポリエステルなどが好ましい。
特に、前記不飽和ポリエステルは、他の硬化遅延剤と異なり、水に対してほとんど溶解することがなく、コンクリートからのブリード水とともにほとんど流動しない。しかし、コンクリートの強いアルカリ性によりポリエステルのエステル結合が加水分解され、硬化遅延に有用なカルボキシル基やヒドロキシル基が遊離する。この加水分解速度は、コンクリート中の水分がセメントの硬化に利用されるにつれて上昇し、養生中のコンクリートの発熱により最大となり、遊離したカルボキシル基とヒドロキシル基とが相乗的に大きな硬化遅延能を発現させる。一方、硬化遅延能が発現する段階のコンクリートは既に流動性がなく、ポリエステルの加水分解により硬化遅延成分が遊離しても、ブリード水に溶解して移動することもない。そのため、装飾材の表面側に無機硬化性組成物が回りこんで来ても、その硬化を確実に抑制できる。従って、セメントの硬化処理後に、水などにより、非硬化の無機硬化性組成物を前記水溶性又は水分散性粘着剤(アクリル系共重合体)と共に容易に除去できるので、装飾材表面を損傷させることがない。また、所望の部位でのみ硬化遅延能を発現させることができるので、セメントの硬化後に洗い出すことにより美麗な洗い出し面を精度よく形成できる。
【0046】
前記(A)アクリル系共重合体と(B)セメント硬化遅延剤との割合は、粘着性及びセメント硬化遅延能を損なわない範囲で適当に選択できるが、例えば、(A)と(B)の重量比[(A)/(B)]は、2/98〜95/5、好ましくは5/95〜80/20、さらに好ましくは7/93〜60/40(特に、7/93〜40/60)程度である。
【0047】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、前記(A)アクリル系共重合体以外の粘着剤を含んでいてもよい。このような粘着剤としては、水溶性または水分散性の粘着剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの合成水溶性高分子、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントガム、ペクチン、アルギン酸ソーダ、カラゲニンなどの天然水溶性高分子などが挙げられる。
【0048】
また、本発明のセメント硬化遅延性組成物は、溶媒や、種々の添加剤、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、耐湿性付与剤、帯電防止剤、増量剤(充填剤)、顔料、シート(フィルム)形成能を有する樹脂、結合剤(バインダー樹脂など)などを含んでいてもよい。
【0049】
溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エーテル類、酢酸エチルなどのエステル類等の有機溶剤;水;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0050】
粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂などの炭化水素系樹脂、ロジン誘導体(水溶性又は水分散性のロジン誘導体など)などが挙げられる。
【0051】
可塑剤としては広範囲のものが使用できるが、グリセリン、ソルビット、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオールなどの多価アルコール;トリアセチンなどの多価アルコールのエステル;ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の親水性可塑剤などが好ましい。親水性可塑剤の使用量は、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、例えば0〜100重量部(例えば5〜100重量部)、好ましくは0〜50重量部(例えば10〜50重量部)程度である。親水性可塑剤を添加することにより初期接着性を向上できる。
【0052】
耐湿性付与剤としては、親水性エポキシ化合物、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテルなどが挙げられる。耐湿性付与剤の使用量は、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、例えば0〜5重量部(例えば0.01〜5重量部)、好ましくは0〜2重量部(例えば0.05〜2重量部)程度である。耐湿性付与剤を添加すると、セメント硬化遅延性組成物を紙製のシート状基材に塗布する際、紙への浸みこみを抑制できる。
【0053】
増量剤としては、カオリン、タルク、シリカ、アルミナなどの種々の粉粒体が使用できるが、微粉体、例えば、微粉スラグ、フライアッシュ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカヒューム(シリカの極微細粉末)などを用いる場合が多い。増量剤の使用量は、例えば、前記(A)アクリル系共重合体100重量部に対して、2〜500重量部、好ましくは3〜200重量部、さらに好ましくは5〜100重量部程度である。
【0054】
顔料としては、有彩色又は無彩色を問わず種々の着色剤、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化チタン(TiO2 )、リトポン(ZnS+BaSO2 )などの白色顔料、カーボンブラックなどの黒色顔料、黄色、橙色、赤色、紫色、青色などの種々の着色顔料が例示される。これらの顔料のうち酸化亜鉛を用いると、隠蔽力が比較的大きいだけでなく、硬化遅延剤との相乗効果により、凝結遅延作用を高めることができる。なお、凝結遅延作用を高める上では、前記酸化亜鉛以外に、酸化鉛、酸化銅も有用である。顔料の使用量は、(A)アクリル系共重合体100重量部に対して、1〜300重量部、好ましくは2〜200重量部、さらに好ましくは5〜100重量部程度である。
【0055】
シート(フィルム)形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン46、ナイロン6、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルエステル系樹脂のケン化物;エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ポリクロロプレンなどのハロゲン含有ポリマー;アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系ポリマー;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;天然高分子などの熱可塑性樹脂、および熱硬化性アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上使用できる。また、シート系性能を有する樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いる場合が多い。特に好ましい熱可塑性樹脂は、親水性樹脂(例えば、水溶性または水分散性樹脂)やラテックス、エマルジョンなどのように親水化された樹脂である場合が多い。シート形成能を有する樹脂は、セメント硬化遅延性組成物を用いてシートを形成する際、セメント硬化遅延剤がシート形成能を有しない場合に特に有用である。シート形成能を有する樹脂の使用量は、例えば、セメント硬化遅延剤(B)100重量部に対して、10〜2000重量部、好ましくは15〜1000重量部、さらに好ましくは20〜400重量部程度である。
【0056】
バインダー樹脂は上記シート形成能を有する樹脂であってもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、塩素化ポリプロピレンなどの塩素かポリオレフィン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系ポリマー、エラストマー(例えば、天然ゴム、塩化ゴム、塩酸ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムなど)などが例示される。バインダー樹脂は、シート状基材の表面にセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を形成する際、セメント硬化遅延材として樹脂以外の遅延剤を用いる場合に特に有用である。バインダー樹脂の使用量は、例えば、セメント硬化遅延剤(B)100重量部に対して、10〜2000重量部、好ましくは15〜1000重量部、さらに好ましくは20〜400重量部程度である。
【0057】
本発明のセメント硬化遅延性組成物は、前記特定の(A)アクリル系共重合体と(B)セメント硬化遅延剤とを含んでいるので、セメントの硬化を遅延又は抑制する作用を有すると共に、高い粘着性を有し、しかも水に対する溶解性又は分散性に優れるという特徴を有する。本発明のセメント硬化遅延性組成物は、タイルなどの装飾材と一体に固着した表面装飾コンクリート製品、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品を製造する上で有用であるほか、コンクリート表面へのタイルなどの装飾材の施工に有用なセメント硬化遅延用シートや、ユニットタイルなどの装飾材キットシートを得る上でも有用である。
【0058】
[セメント硬化遅延用シート(1)]
本発明のセメント硬化遅延用シート(1)は、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されている。
セメント硬化遅延用シート(1)は、シート(フィルム)形成能を有するセメント硬化遅延剤(セメント硬化遅延能を有する樹脂)を含むセメント硬化遅延性組成物、又はセメント硬化遅延剤と前記シート(フィルム)形成能を有する樹脂とを含むセメント硬化遅延性組成物を、樹脂の種類に応じて、慣用の成膜法(押出成形法、流延法、カレンダー法など)に付すことより得ることができる。シート(フィルム)形成能を有するセメント硬化遅延剤には、例えば前記ポリエステルなどが含まれる。成膜の際には、前記有機溶媒を用いることができる。
【0059】
流延法を採用する場合、前記セメント硬化遅延性組成物を支持体の平滑面に塗工し、乾燥又は硬化した後、被膜を支持体から剥離することによりシートを得ることができる。表面が平滑な支持体としては、種々のベルト(例えば、ステンレス製ベルト、ウレタン樹脂製ベルト、表面加工された鉄製ベルトなど)、フィルム(例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)、ドラムなどが使用できる。被膜の剥離性を高めるため、支持体の表面を、シリコーンオイルやシリコーン樹脂などのシリコーン系化合物、液状フッ素含有化合物やフッ素樹脂などのフッ素系化合物などで表面処理し、支持体の表面張力を低減させてもよい。
【0060】
セメント硬化遅延用シート(1)の厚みは、作業性、機械的強度などを損なわない範囲で選択でき、例えば、15〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度であり、50〜200μm程度である場合が多い。シートの厚みが小さい場合には、強度が低下すると共に、高い硬化遅延性を保持できない場合があり、厚すぎると取扱性を損ないやすい。
【0061】
[セメント硬化遅延用シート(2)]
本発明のセメント硬化遅延用シート(2)は、シート状基材の表面に前記セメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層が形成されている。
【0062】
シート状基材を構成するポリマーは特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル(特にポリアルキレンテレフタレート);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルエステル系樹脂のケン化物などが例示される。これらのポリマーは1種又は2種以上使用できる。なお、シート状基材として、前記セメント硬化遅延用シート(1)を用いてもよい。また、シート状基材としては、例えば、ポリエチレン製繊維などの繊維を織ったクロス(例えば、プラスチック延伸ヤーン編組品など)、又は前記クロスの片面又は両面に前記ポリエチレンなどのポリマーで構成されるフィルムを積層した積層シート、紙、不織布などを用いてもよい。さらに、シート状基材は手切れ性や寸法安定性が改善されたシートであってもよい。
【0063】
好ましいシート状基材には、水溶性または水分散性のシート基材が含まれる。水溶性又は水分散性のシート状基材としては、前記ビニルエステル系樹脂のケン化物などの水溶性又は水分散性のポリマー又は繊維で構成された基材などが挙げられる。水溶性または水分散性のシート状基材を用いると、表面装飾コンクリート製品を製造する際、コンクリート硬化後、シート状基材を剥離する作業を行うことなく、セメント硬化遅延用シート全体を水、加圧水、ジェット流などにより容易に除去できる。そのため、シートの除去作業と装飾材表面の洗浄とを同時に行うことができ、作業効率を高めることができる。
【0064】
シート状基材は、単一のシートであってもよく複数の層が積層された複合シートであってもよい。また、シート状基材は、未延伸フィルムで構成されていてもよく、一軸又は二軸延伸フィルムで構成されていてもよい。さらに、セメント硬化遅延層との密着性を高めるため、シート状基材の表面は、火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などにより表面処理されていてもよい。表面処理されたシート状基材の表面張力は、約40dyn/cm以上である場合が多い。
【0065】
セメント硬化遅延層はシート状基材から剥離可能であってもよい。シート状基材から硬化遅延層が剥離可能である場合には、必要に応じて硬化遅延層のうち所望する模様などに対応させて所定の部位又は領域をカッティングし、硬化遅延層側を型枠の底部などに貼付し、シート状基材を剥離した後、無機硬化性組成物を打設し、養生硬化したコンクリート製品のうち前記セメント硬化遅延層との接触面を洗い出すことにより、コンクリート製品の表面に、模様や骨材などが露出した洗い出し面を形成できる。硬化遅延層を剥離可能とするため、シート状基材の表面は、例えば、ワックス、高級脂肪酸アミド、シリコーンオイルなどの離型剤で処理してもよい。シート状基材の表面張力は、例えば、38dyn/cm以下、好ましくは20〜38dyn/cm、さらに好ましくは25〜36dyn/cm程度である場合が多い。
【0066】
セメント硬化遅延層は、前記セメント硬化遅延性組成物で構成されている。セメント硬化遅延性組成物には前記バインダー樹脂を含有させてもよい。なお、シート成形可能な硬化遅延剤を用いる場合、バインダー樹脂は必ずしも必要ではない。
【0067】
本発明のセメント硬化遅延用シート(2)は慣用の方法、例えば、前記セメント硬化遅延性組成物を含む塗布液をシート状基材の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥又は硬化させることにより製造できる。塗布液は前記溶媒を含んでいてもよい。塗布に際しては、刷毛ローラー、ゴムヘラなどを用いてもよいが、工業的には、通常のコーティングに利用される塗布手段、例えば、ディップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、リバースロールコーター、コンマコーター、バーコーター、カーテンコーター、スプレーなどを利用する場合が多い。
【0068】
このようなセメント硬化遅延用シート(2)において、シート状基材の厚みは、例えば、10〜200μm、好ましくは15〜150μm、さらに好ましくは20〜100μm程度である。セメント硬化遅延層の厚みは、セメントの硬化にに対して遅延効果が発現する厚みであればよく、例えば、1〜300μm(例えば、5〜200μm)、好ましくは2〜150μm(例えば、5〜120μm)、さらに好ましくは5〜100μm(例えば、10〜100μm)程度であり、5〜70μm程度である場合が多い。
【0069】
このようなシート(2)は、打設した無機硬化性組成物(モルタル組成物など)に対して均一な厚みの硬化遅延層により硬化遅延作用を均等に作用させることができると共に、硬化遅延層が薄くても高い硬化遅延性を付与できる。また、工業的に安価に生産できると共に、シート状基材により補強できるという利点がある。また、剥離可能な硬化遅延層を形成すると、硬化遅延層の剥離部位に対応させて、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を高い精度で簡便且つ効率よく形成できる。
【0070】
本発明のセメント硬化遅延用シート(1)及び(2)は、前記セメント硬化遅延性組成物と同様、タイルなどの装飾材と一体に固着した表面装飾コンクリート製品、表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品の製造に有用である。
【0071】
[装飾材キットシート]
本発明の装飾材キットシートは、前記セメント硬化遅延用シート(1)の表面、又はセメント硬化遅延用シート(2)のうちセメント硬化遅延層が形成された面に、複数の装飾材が連続して又は散在して貼着されている。この装飾材キットシートはユニットタイルなどとして使用できる。
【0072】
複数の装飾材は、面方向(例えば、縦方向、横方向や縦横方向)に互いに隣接(連続)して又は間隔をおいて配列する場合が多い。このような装飾材キットシートを用いると、個別に型枠内で装飾材を配置する必要がなく、別の工程で作製された装飾材キットシートを型枠内に配設するだけでよく、作業効率を高めることができる。
【0073】
装飾材としては、種々の材料、例えば、玉石、黒石、鉄平石などの天然石、人造石などの石材、タイルなどのセラミックス材、金属材、ガラス材、木材、織布などが使用できる。装飾材は平板状であってもよく、タイルは通常のタイルのほか、モザイクタイルや割りタイルであってもよい。また、コンクリート製品の製造に際して、必要に応じて、型枠内に鉄筋などの補強材を配設して無機硬化性組成物を打設してもよい。
前記ユニットタイルなどの装飾材キットシートもまた、プレキャストコンクリート板などの表面装飾コンクリート製品の製造に有用である。
【0074】
[コンクリート製品の製造]
表面装飾コンクリート製品は、前記セメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート又は装飾材キットシートを利用して、例えば以下のようにして製造できる。
【0075】
すなわち、型枠内の底面に、セメント硬化遅延性組成物を塗布して、粘着性を有するセメント硬化遅延層を形成し、その上に、タイルなどの複数の装飾材(化粧材)を、表(おもて)面が上記硬化遅延層に接するように貼着により配置し、装飾材を位置決め固定する。次いで、無機硬化性組成物を型枠内に打設し、養生などの慣用の硬化方法により硬化させた後、脱型し、露出した装飾材の表面を洗浄することにより表面装飾コンクリート製品を製造できる。
【0076】
また、表面装飾コンクリート製品は、(i)型枠の底部に、(a)前記セメント硬化遅延用シート(1)を配設し、その上に装飾材を貼着により配置するか、(b)前記セメント硬化遅延用シート(2)をセメント硬化遅延層が上方に位置するように配設し、その上に装飾材を貼着により配置するか、又は(c)前記装飾材キットシートを、装飾材が上方に位置するように配設し、(ii)無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、セメント硬化遅延用シートを除去して、露出した装飾材の表面を洗浄することにより製造できる。
【0077】
セメント硬化遅延性組成物の塗布は前記セメント硬化遅延用シートにおけるセメント硬化遅延層の形成の場合と同様の方法により行うことができる。また、装飾材の配置は前記装飾材キットシートの場合と同様にして行うことができる。装飾材の表面の洗浄は、水、加圧水、ジェット流などにより行うことができる。
【0078】
この方法によれば、セメント硬化遅延層に含まれるセメント硬化遅延剤により、無機硬化性組成物のうち該硬化遅延層との接触面での硬化を均一に抑制できると共に、無機硬化性組成物が装飾材の表面側に回り込んだとしても、その硬化を抑制でき、非硬化状態(半硬化又は未硬化)が維持される。また、本発明のセメント硬化遅延性組成物に含まれるアクリル系共重合体は、粘着性に優れ且つ水に容易に溶解または分散するという特性を有している。そのため、無機硬化性組成物の打設により装飾材の位置ずれが生じるのを確実に抑制でき、コンクリート表面に精度よく装飾を施すことができるとともに、表面仕上げ作業において、装飾材の表面から非硬化の無機硬化性組成物及び粘着剤(アクリル系共重合体)を水洗という簡単な操作で効率よく完璧に除去することができる。従って、装飾材の表面を損傷させることなく、美麗な表面装飾コンクリート製品を得ることができる。また、無機硬化性組成物のうち前記硬化遅延層との接触部位では、洗い出しにより骨材が露出し、自然な風合いを有する洗い出し面が形成される。
【0079】
なお、配置した装飾材間の間隙部(目地部)、型枠と装飾材との間隙部(目地部)には、モルタル組成物などの付着を防止するための目地材(例えば、ポリウレタンなどの可撓性プラスチックで形成された目地棒等)を配設してもよい。
【0080】
表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品は、例えば、(i)(a)型枠の底面に、セメント硬化遅延性組成物を塗布して、粘着性を有するセメント硬化遅延層を形成するか、(b)型枠の底面に、前記セメント硬化遅延用シート(1)を貼付するか、又は(c)セメント硬化遅延層がシート状基材から剥離可能に形成されたセメント硬化遅延用シート(2)を、硬化遅延層側を型枠の底面に貼付し、シート状基材を剥離し、次いで、(ii)無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を洗浄、除去することにより製造できる。
【0081】
この方法によれば、セメント硬化遅延性組成物に含まれるアクリル系共重合体が粘着性に優れるため、無機硬化性組成物を打設しても、硬化遅延層がずれることがなく、コンクリート製品の表面の所望の位置に、骨材が露出した自然な風合いを有する洗い出し面を形成できる。また、前記アクリル系共重合体は、水に容易に溶解または分散するため、脱型した際、型枠の底面に付着した硬化遅延層の残留物は、水により容易に除去できる。
【0082】
セメントには、例えば、気硬性セメント(セッコウ、消石灰やドロマイトプラスターなどの石灰);水硬性セメント(例えば、ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、急硬高強度セメント、焼きセッコウなどの自硬性セメント;石灰スラグセメント、高炉セメントなど;混合セメント)などが含まれる。好ましいセメントには、例えば、セッコウ、ドロマイトプラスターおよび水硬性セメントなどが含まれる。
【0083】
前記セメントは、水とのペースト組成物(セメントペースト)として使用してもよく、砂、ケイ砂、パーライトなどの細骨材、粗骨材を含むモルタル組成物やコンクリート組成物として使用してもよい。前記ペースト組成物及びモルタル組成物は、必要に応じて、着色剤、硬化剤、塩化カルシウムなどの硬化促進剤、ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの減水剤、凝固剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの増粘剤、発泡剤、合成樹脂エマルジョンなどの防水剤、可塑剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0084】
【発明の効果】
本発明のセメント硬化遅延性組成物、セメント硬化遅延用シート及び装飾材キットシートによれば、特定のアクリル系共重合体とセメント硬化遅延剤とを含んでいるため、表面装飾コンクリート製品を得るに際し、コンクリートなどの無機硬化性組成物を打設しても装飾材等の位置ずれを抑制できるとともに、無機硬化性組成物の硬化後、装飾材等の表面仕上げ作業を簡便且つ効率よく行うことができる。また、無機硬化性組成物の表面の硬化を均一にかつ確実に抑制でき、コンクリート製品の表面に模様や洗い出し面を精度よく形成できる。さらに、装飾材を損傷させることなく、装飾性に優れたコンクリート製品を得る上で有用である。
【0085】
本発明の表面装飾コンクリート製品の製造法によれば、表面に美麗な装飾、模様が精度よく施されたコンクリート製品を簡便且つ効率よく製造できる。
【0086】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0087】
実施例1
撹拌翼を備えた反応器に、無水マレイン酸160g、プロピレングリコール170gを入れるとともに、重合触媒としてチタン酸テトラ−n−ブチル160mgを添加した。内容物を撹拌し、反応により生成する水分を除去するため窒素ガスを流通させながら、常圧下、常温から150℃まで3時間かけて昇温した後、150℃から210℃まで24時間かけて昇温し、反応を停止した。得られた不飽和ポリエステル(重量平均分子量約500)に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート210g、スチレン30g及びナフテン酸コバルト1.2gを加え、重合性組成物(A)を得た。
【0088】
一方、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、メタノール40.8重量部を仕込み、アクリル酸ブチル15.5重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル15重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部、アクリル酸5重量部からなる混合物と、触媒としてAIBNの1重量%メタノール溶液(AIBNとして0.1重量部)を、65℃の温度で3時間かけて添加した後、5時間熟成して、固形分40重量%のアクリル系共重合体組成物を得た。次いで、上記アクリル系共重合体84重量部に対して、水酸化ナトリウム2重量部を水溶液として添加混合し、共重合体中のカルボキシル基の85%を中和し、さらに、ポリエチレングリコール7重量部及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル0.5重量部を添加して、固形分43重量%の水溶性粘着剤(B)を得た。
【0089】
前記重合性組成物(A)24g、前記水溶性粘着剤(B)6g及び酢酸エチル10gを混合し、さらに有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)240mgを加えて撹拌混合した。得られた混合液を、バーコーダーを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)に、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させ、セメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シートを得た。
【0090】
このシートを、型枠の底面に、セメント硬化遅延層が上面となるように貼付し、硬化遅延層の上に、5cm×10cmのタイルを等間隔に4枚貼り付けた後、コンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型し、前記シートを剥がした。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したところ、タイル表面の付着物は水洗のみで円滑に除去でき、ワイヤーブラシ、ヘラなどによる除去作業は不要であった。また、タイルは所望の位置に正確に固着しており、美麗な表面装飾コンクリート板が得られた。
【0091】
実施例2
実施例1と同様にして得られたセメント硬化遅延シートの硬化遅延層上に、5cm×10cmのタイルを等間隔に4枚貼り付けてユニットタイルを作製した。このユニットタイルを、型枠の底面に、セメント硬化遅延層が上面となるように貼付し、コンクリートを打設し、常温で1日放置して効果させた後、脱型し、前記シートを剥離した。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したところ、タイル表面の付着物は水洗のみで円滑に除去できた。また、タイルは所望の位置に正確に固着しており、装飾性に優れたコンクリート板が得られた。
【0092】
比較例1
水溶性粘着剤(B)に代えて、非水溶性粘着剤(ニッセツKP−491;日本カーバイド工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたコンクリート成形品の表面に固着したタイルの表面を水洗したが、タイル表面は粘着剤が付着して粘性を帯びていた。
【0093】
比較例2
水溶性粘着剤(B)を使用しなかった点以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、コンクリート製品の表面において、タイルは所望の位置からずれた位置に固着していた。
【0094】
実施例3
実施例1と同様にして調製した、重合性組成物(A)、水溶性粘着剤(B)、酢酸エチル及び有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)からなる混合液を、離型処理された紙製のシート(離型紙)に、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させ、離型層上にセメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シートを得た。
【0095】
このシートを、鉄製型枠の底面に、硬化遅延層が底板に接触するように貼付した後、離型紙を剥離した。型枠内に、コンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型したところ、前記硬化遅延層の残留物を型枠の底板に残して、コンクリート板を容易に離型させることができた。
【0096】
コンクリート板の表面を水洗したところ、硬化遅延層と接触した部位のみ均一に2〜3mmの深さで洗い出され、自然な風合いを有する洗い出し面が形成されたコンクリート製品が得られた。一方、型枠に水を張り放置した結果、前記硬化遅延層の残留物は、2〜3時間後には型枠の底板から自然剥離した。
【0097】
比較例3
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み50μm)の一方の面に、実施例1と同様にして得られた重合性組成物(A)と、この重合性組成物(A)中の不飽和ポリエステル100重量部に対して3重量部の有機過酸化物(日本油脂(株)製;パーブチルオー)とからなる混合液を、硬化後の厚みが60μmとなるように塗布し、80℃で30分間硬化させた後、他方の面に、比較例1で用いた非水溶性粘着剤を厚み10μmで塗布し、セメント硬化遅延用シートを得た。
【0098】
このシートを、実施例3と同様の鉄製型枠の底面に、粘着剤層が底板に接触するように貼付した後、型枠内にコンクリートを打設し、常温で1日放置して硬化させた後、脱型して、コンクリート製品を得た。
型枠の底板に付着したシートを除去するため、型枠内に水を張り放置したところ、1日経過しても、シートは剥離しなかった。
Claims (14)
- (A)不飽和カルボン酸又はその塩と、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルとを構成単量体単位として含む水溶性又は水分散性のアクリル系共重合体と、(B)セメント硬化遅延剤とを含むセメント硬化遅延性組成物。
- アクリル系共重合体が、構成単量体単位として不飽和カルボン酸又はその塩を5〜40重量%、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が−100〜0℃のアクリル酸エステルを40〜90重量%含む請求項1記載のセメント硬化遅延性組成物。
- アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が−80〜10℃である請求項1記載のセメント硬化遅延性組成物。
- セメント硬化遅延剤が、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、ホスホン酸類、オキシカルボン酸類、ケト酸類、多価フェノール類、リグニンスルホン酸類、糖類及び不飽和ポリエステルから選択された少なくとも1種である請求項1記載のセメント硬化遅延性組成物。
- 不飽和ポリエステルが、主鎖の炭素数が4〜6の不飽和多価カルボン酸又はその誘導体を含む多価カルボン酸成分と、多価アルコール又はその縮合物を含むポリオール成分との反応により得られる不飽和ポリエステルである請求項4記載のセメント硬化遅延性組成物。
- 多価カルボン酸成分が、さらに、芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を含む請求項5記載のセメント硬化遅延性組成物。
- 不飽和ポリエステルが架橋による硬化物である請求項4記載のセメント硬化遅延性組成物。
- 硬化物が、不飽和ポリエステルと重合性ビニルモノマーと重合開始剤とを含む重合性組成物の硬化物である請求項7記載のセメント硬化遅延性組成物。
- 請求項1〜8の何れかの項に記載のセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延用シート。
- シート状基材の表面に、請求項1〜8の何れかの項に記載のセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層が形成されたセメント硬化遅延用シート。
- 請求項9記載のセメント硬化遅延用シートの表面、又は請求項10記載のセメント硬化遅延用シートのうちセメント硬化遅延層が形成された面に、複数の装飾材が連続して又は散在して貼着されている装飾材キットシート。
- 型枠の底部に、請求項1〜8の何れかの項に記載のセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を形成し、このセメント硬化遅延層の上に装飾材を貼着により配置し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法。
- 表面に装飾材が貼着により配置された請求項9又は10記載のセメント硬化遅延用シートを、型枠内に、装飾材が上方に位置するように配設し、無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、セメント硬化遅延用シートを除去し、露出した装飾材の表面を洗浄する表面装飾コンクリート製品の製造法。
- 表面に洗い出し面が形成されたコンクリート製品の製造法であって、型枠の底部に、請求項1〜8の何れかの項に記載のセメント硬化遅延性組成物で構成されたセメント硬化遅延層を設け、その上に無機硬化性組成物を打設して硬化させた後、脱型し、非硬化の無機硬化性組成物を除去するコンクリート製品の製造法。
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