JP2012188750A - 高靭性大入熱溶接用鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】船舶、海洋構造物等に用いて好適な、高靭性大入熱溶接用鋼およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%でC:0.001〜0.015%、Si:0.01〜0.80%
Mn:1.0〜2.0%、P、S、Al:0.005〜0.10%、Mo:0.30〜1.5%、B:0.0003〜0.0050%、Ti:0.005〜0.050%、N:0.0010〜0.0060%、Nb:0.01%以下(0を含む)、必要に応じてCu、Ni、Cr、V、W、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を含有する鋼。上記組成になる鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却する。
【選択図】なし
【解決手段】質量%でC:0.001〜0.015%、Si:0.01〜0.80%
Mn:1.0〜2.0%、P、S、Al:0.005〜0.10%、Mo:0.30〜1.5%、B:0.0003〜0.0050%、Ti:0.005〜0.050%、N:0.0010〜0.0060%、Nb:0.01%以下(0を含む)、必要に応じてCu、Ni、Cr、V、W、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を含有する鋼。上記組成になる鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却する。
【選択図】なし
Description
本発明は、船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、ラインパイプおよび土木・建築の分野などの溶接構造物に用いて好適な、入熱量が300kJ/cm以上の大入熱溶接を施した際の溶接熱影響部の低温靭性および強度特性に優れ、かつ母材の引張強さが590MPa以上で脆性破面遷移温度(vTrs)が−45℃以下である高靭性大入熱溶接用鋼およびその製造方法に関する。
造船、建築、土木等の分野で使用される鋼材は、これらの構造物の大型化に伴い、製造容易性や良好な使用性能(加工性や溶接性)を備えることを前提に高強度厚肉化され、最近では、造船用鋼として板厚50mmのYP460N/mm2級鋼が開発実機化されている。このような鋼材には、エレクトロガス溶接など溶接入熱300kJ/cm以上での大入熱溶接施工が施されることが多く、溶接熱影響部(HAZとも言う)の靭性確保が課題とされている。
大入熱溶接によるHAZ靭性の低下に対し、従来から、多くの対策が提案され、例えば、鋼中のTiNの微細分散により熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化を抑制してHAZ靭性を向上させる技術はすでに実用化されている。
特許文献1には、鋼中のTiN系介在物中にNbを含有させて、大入熱溶接時には同介在物中からNbを固溶させて溶接熱影響部におけるオーステナイト粒の粗大化を抑制し、小入熱溶接時には同介在物中にNbをとどめてベイナイト化を抑制することでHAZ靭性を向上させる技術が記載されている。
また、特許文献2には、溶接熱影響部においてTi酸化物がフェライト核として優れることを知見して、鋼中にTi酸化物を均一分散させた大入熱溶接用鋼が記載されている。
一方で、溶接用高張力鋼材では、溶接によりAc1変態点を超える温度に加熱されることにより、溶接熱影響部のミクロ組織が母材組織から大きく変化し、加熱される温度と溶接後の冷却速度によってはHAZの軟化が生じてしまう。
溶接入熱の増大は、このような強度が低下する領域を拡大し、また、溶接後のフェライト変態を生じやすくするため、 HAZ組織をフェライト主体の組織とすることで、HAZ靭性を確保することを特徴とする特許文献1、2記載の大入熱溶接用鋼では溶接継手の強度低下が懸念される。
特許文献3にはHAZ靭性とHAZ軟化の問題を同時に達成する手法として、HAZ組織を強度の高いベイナイトに制御することが記載されているが、溶接熱影響部の強度と靭性を向上することに主眼がおかれて、TS490MPa以上で板厚40mm以上の母材でvTrsが−20〜−40℃程度と靭性が不十分であった。
そこで本発明は、入熱量300kJ/cm以上の大入熱溶接を施した際のHAZ強度およびHAZ靭性に優れ、かつ引張強さが590N/mm2以上でvTrsが−45℃以下である高靭性大入熱溶接用鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、入熱量300kJ/cm以上の大入熱溶接を施したときの溶接熱影響部の強度特性と低温靭性に優れ、かつ引張強さが590N/mm2以上の高強度鋼の母材靭性を改善すべく鋭意検討を行い、以下の知見を得た。以下の説明で%は質量%とする。
1.大入熱HAZ靭性を改善するには、特許文献3に記載されているように、HAZ組織をベイナイトとすることが有効である。さらに、Cを0.015%以下まで低減することによって、靭性を阻害する島状マルテンサイト(MA)の生成がほとんど認められなくなり、HAZ靭性が向上する。
2.大入熱溶接を施した際のHAZ軟化は、ベイナイトの回復・再結晶現象に起因するもので、Moを0.3%以上含有すると回復・再結晶が抑制されてHAZ強度が向上する。
3.大入熱溶接熱影響部特性に優れ、かつ引張強さが590N/mm2以上の鋼の母材靭性を改善するには、鋼組成においてP:0.020%以下およびS:0.0050以下とすることが有効である。
4.また、上記特徴を有する鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却することによっても母材靭性を向上させることができる。
本発明は、上記知見をもとに、さらに検討を加えてなされたものであり、すなわち、本発明は、
1.質量%で
C:0.001〜0.015%、
Si:0.01〜0.80%、
Mn:1.0〜2.0%、
P:0.020%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005〜0.10%、
Mo:0.30〜1.5%、
B:0.0003〜0.0050%、
Ti:0.005〜0.050%、
N:0.0010〜0.0060%、
Nb:0.01%以下(0を含む)、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼。
2.脆性破面遷移温度(vTrs)が−45℃以下であることを特徴とする、1に記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
3.質量%でさらに、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、V:0.02〜0.10%、W:0.05〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする1または2記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
4.質量%でさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.001〜0.02%、REM:0.001〜0.02%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする1〜3のいずれか一つに記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
5.1、3、4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却することを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼の製造方法。
1.質量%で
C:0.001〜0.015%、
Si:0.01〜0.80%、
Mn:1.0〜2.0%、
P:0.020%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005〜0.10%、
Mo:0.30〜1.5%、
B:0.0003〜0.0050%、
Ti:0.005〜0.050%、
N:0.0010〜0.0060%、
Nb:0.01%以下(0を含む)、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼。
2.脆性破面遷移温度(vTrs)が−45℃以下であることを特徴とする、1に記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
3.質量%でさらに、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、V:0.02〜0.10%、W:0.05〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする1または2記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
4.質量%でさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.001〜0.02%、REM:0.001〜0.02%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする1〜3のいずれか一つに記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
5.1、3、4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却することを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼の製造方法。
本発明によれば、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接、エレクトロスラグ溶接などの入熱量が300kJ/cm以上の大入熱溶接で優れた溶接熱影響部の強度・靭性バランスを有する、引張強さが590N/mm2以上でvTrsが−45℃以下である鋼が得られ、産業上極めて有用である。
以下の説明において%は質量%とする。
C:0.001〜0.015%
母材およびHAZ組織をMAのほとんど認められないベイナイト組織として優れた靱性を確保するためには、C含有量を0.015%以下に抑制する必要がある。また、Cを0.001%未満まで低減することは製鋼の生産性の著しい低下を招くので、0.001〜0.015%とする。好ましくは、0.001〜0.012%である。
C:0.001〜0.015%
母材およびHAZ組織をMAのほとんど認められないベイナイト組織として優れた靱性を確保するためには、C含有量を0.015%以下に抑制する必要がある。また、Cを0.001%未満まで低減することは製鋼の生産性の著しい低下を招くので、0.001〜0.015%とする。好ましくは、0.001〜0.012%である。
Si:0.01〜0.80%
Siは、固溶強化によって鋼の強度を上昇させる元素であり、590MPa以上の引張強さを確保するために、0.01%以上を含有する。しかしながら、0.80%を超えて含有させると、溶接性を損ない、また母材およびHAZ靭性が低下するなどの悪影響が生じるため、0.01〜0.80%とする。好ましくは、0.03〜0.60%である。
Siは、固溶強化によって鋼の強度を上昇させる元素であり、590MPa以上の引張強さを確保するために、0.01%以上を含有する。しかしながら、0.80%を超えて含有させると、溶接性を損ない、また母材およびHAZ靭性が低下するなどの悪影響が生じるため、0.01〜0.80%とする。好ましくは、0.03〜0.60%である。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは極低炭素域での鋼のフェライト変態を抑制し、鋼の組織をベイナイト化することで強度を増大させる効果を有している。溶接入熱が300kJ/cmを超える大入熱溶接時においても、HAZのフェライト変態を抑制し、ベイナイト単相組織とするため、1.0%以上のMn含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、母材およびHAZ靭性が低下するため、1.0〜2.0%とする。好ましくは、1.0〜1.8%である。
Mnは極低炭素域での鋼のフェライト変態を抑制し、鋼の組織をベイナイト化することで強度を増大させる効果を有している。溶接入熱が300kJ/cmを超える大入熱溶接時においても、HAZのフェライト変態を抑制し、ベイナイト単相組織とするため、1.0%以上のMn含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、母材およびHAZ靭性が低下するため、1.0〜2.0%とする。好ましくは、1.0〜1.8%である。
P:0.020%以下、S:0.0050%以下
PとSは、不可避的に混入する不純物元素で、0.020%を超えてのP含有および0.0050%を超えてのS含有は母材の靭性を著しく低下させる。すなわち、Pは、Feの結晶粒界に偏析してFe原子間の結合力を弱め、Feの低温域での脆性破壊を助長する。Sは、Pと同様の粒界偏析、ならびに硫化物の生成が母材の靭性を低下させる。以上のことから、P:0.020%以下、S:0.0050%以下とする。好ましくは、P:0.015%以下、S:0.0040%以下である。
PとSは、不可避的に混入する不純物元素で、0.020%を超えてのP含有および0.0050%を超えてのS含有は母材の靭性を著しく低下させる。すなわち、Pは、Feの結晶粒界に偏析してFe原子間の結合力を弱め、Feの低温域での脆性破壊を助長する。Sは、Pと同様の粒界偏析、ならびに硫化物の生成が母材の靭性を低下させる。以上のことから、P:0.020%以下、S:0.0050%以下とする。好ましくは、P:0.015%以下、S:0.0040%以下である。
Mo:0.30〜1.5%
Moは、極低炭素化とともに本発明で重要な元素である。Moは、鋼組織のベイナイト化を促進する元素であり、Nbを低減させながら母材およびHAZ組織をベイナイト化する本発明鋼では必須である。
Moは、極低炭素化とともに本発明で重要な元素である。Moは、鋼組織のベイナイト化を促進する元素であり、Nbを低減させながら母材およびHAZ組織をベイナイト化する本発明鋼では必須である。
このような効果を発現させるためには、少なくとも0.30%のMoを含有する必要があるが、1.5%を超えると効果が飽和するようになる。
また、Moは、大入熱溶接の際のベイナイトの回復・再結晶を抑制する効果を有し、HAZ軟化を抑制してHAZ強度を向上するのに有効に作用する。このような効果は含有量が0.30%未満では十分得られない。以上の理由により、Moの含有量は0.30〜1.5%とする。好ましくは、0.50〜1.5%である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、溶鋼の脱酸剤として作用する元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。しかしながら、0.10%を超えると鋼の清浄度が低下し、母材およびHAZ靭性が低下するようになるため、0.005〜0.10%とする。
Alは、溶鋼の脱酸剤として作用する元素であり、十分な脱酸効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。しかしながら、0.10%を超えると鋼の清浄度が低下し、母材およびHAZ靭性が低下するようになるため、0.005〜0.10%とする。
B:0.0003〜0.0050%
Bは、フェライト変態を抑制し、組織をベイナイト化する作用を有する。この効果は、0.0003%以上の含有で発現するが、0.0050%を超えると効果が飽和し、冷却中のBNの析出によって逆にフェライト変態を促進してHAZ強度を低下する場合があるので、Bの含有量は0.0003〜0.0050%とする。好ましくは、0.0003〜0.0040%である。
Bは、フェライト変態を抑制し、組織をベイナイト化する作用を有する。この効果は、0.0003%以上の含有で発現するが、0.0050%を超えると効果が飽和し、冷却中のBNの析出によって逆にフェライト変態を促進してHAZ強度を低下する場合があるので、Bの含有量は0.0003〜0.0050%とする。好ましくは、0.0003〜0.0040%である。
Ti:0.005〜0.050%
Tiは、鋼中に微細なTiNとして分散し、大入熱溶接時のHAZのオーステナイト粒成長をピンニング効果によって抑制し、靭性を向上させる作用を有する。また、鋼中のNをTiNとして固定することにより、BNの析出を抑制し、前述のBの作用を促進する効果がある。
Tiは、鋼中に微細なTiNとして分散し、大入熱溶接時のHAZのオーステナイト粒成長をピンニング効果によって抑制し、靭性を向上させる作用を有する。また、鋼中のNをTiNとして固定することにより、BNの析出を抑制し、前述のBの作用を促進する効果がある。
このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とするが、0.050%を超えるとTiNの粗大化により靭性が低下するようになるため、Tiの含有量を0.005〜0.050%とする。好ましくは、0.005〜0.040%である。
N:0.0010〜0.0060%
Nは、製鋼過程において鋼中に不可避的に混入する元素であるが、鋼中に固溶元素として多量に存在すると、靭性を著しく低下させる。一方、Tiと結合してTiNを形成すると、オーステナイト粒のピンニング効果によってHAZ組織を微細化することができる。十分な量のTiNを形成するためには、0.0010%以上の含有が必要であるが、0.0060%を超えると靭性の低下を招くようになるため、0.0010〜0.0060%とする。
Nは、製鋼過程において鋼中に不可避的に混入する元素であるが、鋼中に固溶元素として多量に存在すると、靭性を著しく低下させる。一方、Tiと結合してTiNを形成すると、オーステナイト粒のピンニング効果によってHAZ組織を微細化することができる。十分な量のTiNを形成するためには、0.0010%以上の含有が必要であるが、0.0060%を超えると靭性の低下を招くようになるため、0.0010〜0.0060%とする。
Nb:0.01%以下(0を含む)
Nbは、Mnと同様に、極低炭素域での鋼材の組織をベイナイト単相組織とする作用を有するものの、過剰に含有すると、大入熱溶接時の冷却過程でNb(C,N)が析出し、靭性低下を生じるようになるおそれがあるため、本発明ではNbの含有量を0.01%以下(0を含む)に制限する。好ましくは、0.007%以下(0を含む)である。
Nbは、Mnと同様に、極低炭素域での鋼材の組織をベイナイト単相組織とする作用を有するものの、過剰に含有すると、大入熱溶接時の冷却過程でNb(C,N)が析出し、靭性低下を生じるようになるおそれがあるため、本発明ではNbの含有量を0.01%以下(0を含む)に制限する。好ましくは、0.007%以下(0を含む)である。
以上が本発明の基本成分組成であるが、更に特性を向上させるため、Cu、Ni、Cr、V、W、Ca、Mg、Zr、REMのうちから選んだ1種または2種以上を添加させることが可能である。
Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、V:0.02〜0.10%、W:0.05〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、V、Wはいずれも、主に固溶強化によって鋼の強度を上昇させる元素である。しかしながら、含有量がそれぞれ下限に満たないとその効果が十分でなく、一方、上限を超えると溶接性が低下し、また合金添加コストが増加するようになるので、添加する場合は、それぞれ上記の範囲とすることが好ましい。
Cu、Ni、Cr、V、Wはいずれも、主に固溶強化によって鋼の強度を上昇させる元素である。しかしながら、含有量がそれぞれ下限に満たないとその効果が十分でなく、一方、上限を超えると溶接性が低下し、また合金添加コストが増加するようになるので、添加する場合は、それぞれ上記の範囲とすることが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.001〜0.02%、REM:0.001〜0.02%のうちから選んだ1種または2種以上
Ca、Mg、Zr、REMはいずれも、酸化物、硫化物を形成して鋼中に分散し、ピンニング効果によって大入熱溶接HAZのオーステナイト粒径を微細化し、靭性向上に寄与する。しかしながら、含有量がそれぞれ下限に満たないとその効果が乏しく、一方上限を超えると粗大な酸化物、硫化物が増加し、靭性を低下させるようになるので、含有する場合は、それぞれ上記の範囲とすることが好ましい。
Ca、Mg、Zr、REMはいずれも、酸化物、硫化物を形成して鋼中に分散し、ピンニング効果によって大入熱溶接HAZのオーステナイト粒径を微細化し、靭性向上に寄与する。しかしながら、含有量がそれぞれ下限に満たないとその効果が乏しく、一方上限を超えると粗大な酸化物、硫化物が増加し、靭性を低下させるようになるので、含有する場合は、それぞれ上記の範囲とすることが好ましい。
次に本発明の製造条件について説明する。上記成分組成に調整した鋼素材を製造し、加熱後、熱間圧延し、その後、冷却する。鋼素材の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、転炉で溶製された溶鋼を連続鋳造してスラブを製造することができる。なお、以下の温度は特に記載しない限り鋼板の板厚方向の平均温度を表す。板厚方向の平均温度は、板厚、表面温度および冷却条件などから、シミュレーション計算により求められる。
加熱温度:950〜1250℃
圧延前の組織を均一な整粒オーステナイト組織にするためには、950℃以上の温度に加熱する必要があるが、加熱温度が1250℃を超えると組織が著しく粗大化し、最終的に得られる鋼組織も粗大化して靭性が低下するため、加熱温度は950〜1250℃とする。
圧延前の組織を均一な整粒オーステナイト組織にするためには、950℃以上の温度に加熱する必要があるが、加熱温度が1250℃を超えると組織が著しく粗大化し、最終的に得られる鋼組織も粗大化して靭性が低下するため、加熱温度は950〜1250℃とする。
オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下率:50%以上
オーステナイト未再結晶温度域における圧下量を増加させると、オーステナイト粒から変態するベイナイトのパケットサイズが微細化され、ベイナイト組織の靭性が向上する。
オーステナイト未再結晶温度域における圧下量を増加させると、オーステナイト粒から変態するベイナイトのパケットサイズが微細化され、ベイナイト組織の靭性が向上する。
また、オーステナイト未再結晶温度域における圧下量の増加は、オーステナイト粒内に蓄積される転位の密度を増加させる。これにより、転位の一部が変態後のベイナイト組織に受け継がれ、さらに強度を増加させる。このような効果は、950℃以下のオーステナイト未再結晶温度域における累積圧下量が大きいほど顕著となるため、50%以上とする。
圧延終了温度:680〜830℃
圧延終了温度を低下させると、再結晶微細オーステナイト粒からの変態によるベイナイト組織の微細化およびベイナイト組織の高転位密度化の効果によって鋼材の強度・靭性が向上する。しかし、圧延終了温度を680℃未満にまで低下させると、圧延中にオーステナイト→フェライト変態が開始し、生成したフェライトが加工される結果、靭性の低下や異方性の増大といった問題が生じる。一方、圧延終了温度は830℃を超えると、上記効果が得がたくなる。よって、圧延終了温度は680〜830℃とする。
圧延終了温度を低下させると、再結晶微細オーステナイト粒からの変態によるベイナイト組織の微細化およびベイナイト組織の高転位密度化の効果によって鋼材の強度・靭性が向上する。しかし、圧延終了温度を680℃未満にまで低下させると、圧延中にオーステナイト→フェライト変態が開始し、生成したフェライトが加工される結果、靭性の低下や異方性の増大といった問題が生じる。一方、圧延終了温度は830℃を超えると、上記効果が得がたくなる。よって、圧延終了温度は680〜830℃とする。
圧延後の冷却速度:1.0℃/s以上
引張強さが590N/mm2以上の母材の強度を確保するため、圧延後に加速冷却プロセスを適用し、1.0℃/s以上の冷却速度で冷却する。1.0℃/s未満であると、母材の強度が低下する。
引張強さが590N/mm2以上の母材の強度を確保するため、圧延後に加速冷却プロセスを適用し、1.0℃/s以上の冷却速度で冷却する。1.0℃/s未満であると、母材の強度が低下する。
冷却停止温度:580℃以下
冷却停止温度が580℃を超えると、未変態オーステナイトに合金元素の濃化が生じて、硬化相が生成しやすくなり、靭性が低下するようになるため、冷却停止温度は580℃以下とする。
冷却停止温度が580℃を超えると、未変態オーステナイトに合金元素の濃化が生じて、硬化相が生成しやすくなり、靭性が低下するようになるため、冷却停止温度は580℃以下とする。
本発明では、冷却後、さらに焼戻し処理を施してもよい。焼戻し処理は、冷却時に生成したベイナイトの強度・靭性を調整するため、および、ベイナイトラス間に生成したMAを分解して靭性を向上させるために施すものであるが、最高加熱温度が500℃に満たないと上記の効果が十分でなく、一方650℃を超えると強度が著しく低下するようになるので、焼戻し処理を実施する場合には、焼戻し温度を500〜650℃とすることが好ましい。
表1に示す種々の成分組成になる溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブ(板厚300mm)とした後、表2に示す条件で、加熱処理、圧延処理および冷却処理を施して、板厚:50〜60mmの厚鋼板とした。得られた厚鋼板の引張特性、母材靭性および溶接熱影響部の強度および靭性を以下に述べる方法で評価した。
(1)引張特性
各厚鋼板の板厚中心部から、平行部14φ×85mm、標点間距離70mmの丸棒引張試験片を試験片長手方向が板幅方向と一致するように採取して引張試験を実施し、降伏強度(0.2%耐力)と引張強さを測定した。
各厚鋼板の板厚中心部から、平行部14φ×85mm、標点間距離70mmの丸棒引張試験片を試験片長手方向が板幅方向と一致するように採取して引張試験を実施し、降伏強度(0.2%耐力)と引張強さを測定した。
(2)母材靭性
各厚鋼板の板厚中心部から、2mmVノッチシャルピー試験片を試験片長手方向が圧延方向と一致するように採取し、母材の脆性破面遷移温度(vTrs)を求めた。
各厚鋼板の板厚中心部から、2mmVノッチシャルピー試験片を試験片長手方向が圧延方向と一致するように採取し、母材の脆性破面遷移温度(vTrs)を求めた。
(3)溶接熱影響部の強度および靭性
エレクトロガス溶接(EGW)(入熱量:350〜400kJ/cm)によって継手を作製し、硬さ試験片、継手シャルピー試験片を採取した。HAZ強度の評価には、板厚中心部を溶接金属中心から母材に向かってHAZを含むように1mmピッチでビッカース硬度測定(荷重:98N)を行って得られる、HAZ硬さの最小値を用いた。
エレクトロガス溶接(EGW)(入熱量:350〜400kJ/cm)によって継手を作製し、硬さ試験片、継手シャルピー試験片を採取した。HAZ強度の評価には、板厚中心部を溶接金属中心から母材に向かってHAZを含むように1mmピッチでビッカース硬度測定(荷重:98N)を行って得られる、HAZ硬さの最小値を用いた。
HAZ靭性は、シャルピー衝撃試験をボンド部から1mmの箇所にノッチを入れたシャルピー試験片を用いて、試験温度−20℃において行い、3本の吸収エネルギー(vE−20)の平均値により評価した。
表3にこれらの試験結果を示す。本発明例であるNo.1〜9ではいずれも引張強さが590N/mm2以上で脆性破面遷移温度も−45℃以下と優れた母材特性を有していることが確認された。また、溶接熱影響部のシャルピー衝撃吸収エネルギー値(試験温度‐20℃、3回の平均値)が100J以上で、HAZ硬さの最小値が175HV以上であり、溶接熱影響部の強度・靭性にも優れていることが確認された。
一方、No.10〜25は化学成分または製造条件が本発明範囲を外れる比較例で、母材強度:引張強さが590N/mm2以上、母材靭性:vTrs≦−45℃、HAZ靭性:vE−20≧100J(3本平均値)、HAZ硬さ:最小値が175HV以上、のうち少なくとも1つが達成されなかった。
Claims (5)
- 質量%で
C:0.001〜0.015%、
Si:0.01〜0.80%、
Mn:1.0〜2.0%、
P:0.020%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005〜0.10%、
Mo:0.30〜1.5%、
B:0.0003〜0.0050%、
Ti:0.005〜0.050%、
N:0.0010〜0.0060%、
Nb:0.01%以下(0を含む)、
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼。 - 脆性破面遷移温度(vTrs)が−45℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
- 質量%でさらに、Cu:0.10〜0.60%、Ni:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜0.80%、V:0.02〜0.10%、W:0.05〜0.50%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
- 質量%でさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、Mg:0.0005〜0.0050%、Zr:0.001〜0.02%、REM:0.001〜0.02%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の高靭性大入熱溶接用鋼。
- 請求項1、3、4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼素材を、950℃〜1250℃に加熱後、オーステナイト未再結晶域での累積圧下率:50%以上、圧延終了温度:680〜830℃の条件で熱間圧延を施し、その後1.0℃/s以上の冷却速度で580℃以下まで冷却することを特徴とする高靭性大入熱溶接用鋼の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2012030424A JP2012188750A (ja) | 2011-02-25 | 2012-02-15 | 高靭性大入熱溶接用鋼およびその製造方法 |
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CN104805367A (zh) * | 2015-04-07 | 2015-07-29 | 首钢总公司 | 耐冲蚀磨损性能优良的x65管线钢板及制备方法 |
JP2016180163A (ja) * | 2015-03-25 | 2016-10-13 | Jfeスチール株式会社 | 溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力鋼板 |
-
2012
- 2012-02-15 JP JP2012030424A patent/JP2012188750A/ja active Pending
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