JP2009235548A - 超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定量のC,Si,Mn,P,S,Al,Cr,Nb,Mo,V,B,Ti,Ca,N,Oを含有し、さらにCuおよびNiのうちの1種以上を含有し、かつCeqが0.44〜0.50を満足し、Pcmが0.21以下を満足し、ACRが0.2〜0.8を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼素材を熱間圧延によって厚鋼板とし、次いで900〜1000℃の温度に再加熱して20分以上保持した後、再加熱焼入れ処理を施し、さらに(Ac1+20℃)〜(Ac1+80℃)の2相域温度に加熱して30分以上保持した後、2相域焼入れ処理を施し、さらに400〜600℃の温度で焼戻し処理を施す。
【選択図】なし
Description
特に引張強さが590MPaを超える高強度鋼では、合金元素を多量に添加するので、鋼板の降伏比が上昇し、HAZ(たとえば超大入熱溶接のボンド部,小入熱多パス溶接のICCGHAZ等)の靭性が低下する傾向が認められる。そのため、HAZの靭性に優れ、かつ降伏比の低い高強度厚鋼板を製造する技術が種々検討されている。
(1)TiNを微細に分散させる、
(2)Ca,S,Oの添加量を調整してACR値を0.2〜0.8の範囲内に維持する
ことが有効である。
(A)小入熱多パス溶接におけるICCGHAZの靭性を向上するためには、厚鋼板のC含有量の過剰な増加を抑制する必要がある。C含有量を0.070%以下(好ましくは0.064%以下)とすることによって、島状マルテンサイトの生成量が減少し、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーVE0が70J以上である優れた靭性を確保できる。
すなわち本発明は、質量%で、C:0.040〜0.070%,Si:0.05〜0.45%,Mn:1.0〜1.6%,P:0.020%以下,S:0.0007〜0.0040%,Al:0.005〜0.05%,Cr:0.03〜1.0%,Nb:0.003%以下,Mo:0.04%以下,V:0.030%以下,B:0.0005〜0.0030%,Ti:0.005〜0.030%,Ca:0.0005〜0.0035%,N:0.0030〜0.0070%,O:0.0010〜0.0040%を含有し、さらにCu:0.05〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%のうちの1種以上をCu含有量とNi含有量の合計が1.0〜2.0%となるように含有し、かつ各元素の含有量を用いて(1)式で定義されるCeqが0.44〜0.50を満足し、(2)式で定義されるPcmが0.21以下を満足し、(3)式で定義されるACRが0.2〜0.8を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が、Mn,Cu,Niの含有量が鋼材平均よりも高い濃化領域と低い淡化領域を含み、(Mn/6+Cu/15+Ni/15)の値が鋼材平均の90%以下である淡化領域の分率が10%以上である超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板である。
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
ACR={[%Ca]−(0.18+130×[%Ca])×[%O]}/(1.25×[%S])
・・・(3)
ここで[%C]はCの含有量,[%Mn]はMnの含有量,[%Ni]はNiの含有量,[%Cu]はCuの含有量,[%Cr]はCrの含有量,[%Mo]はMoの含有量,[%V]はVの含有量,[%Si]はSiの含有量,[%B]はBの含有量,[%Ca]はCaの含有量,[%O]はOの含有量,[%S]はSの含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
また、鋼素材を熱間圧延して得られる厚鋼板の板厚が100mm以下であることが好ましい。厚鋼板の板厚は80〜100mmの範囲内が一層好ましい。
C:0.040〜0.070%
Cは、厚鋼板の強度を増加させる作用を有し、構造用鋼材として必要な強度を確保する上で重要な元素である。C含有量が0.040%未満では、590MPa以上の引張強さが得られない。一方、0.070%を超えると、超大入熱溶接のHAZのうち、Ac3以上に加熱された領域(いわゆる細粒域HAZ)に島状マルテンサイトが生成して、HAZの靭性が低下する。したがって、Cは0.040〜0.070%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.050〜0.064%である。
Siは、超大入熱溶接の溶融メタル中で脱酸剤として作用する。Si含有量が0.05%未満では、脱酸剤としての効果が得られない。一方、0.45%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化するとともに、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Siは0.05〜0.45%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.05〜0.35%である。
Mnは、厚鋼板の強度を増加させる作用を有し、構造用鋼材として必要な強度を確保する上で重要な元素である。Mn含有量が1.0%未満では、590MPa以上の引張強さが得られない。一方、1.6%を超えると、後述するCeq値(すなわち0.44〜0.50)の範囲内では、厚鋼板のみならずHAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Mnは1.0〜1.6%の範囲内を満足する必要がある。
Pは、厚鋼板の強度を増加させる一方で靭性を劣化させる元素である。そのため、超大入熱溶接によるHAZの靭性の劣化を防止する観点から、Pを可能な限り低減する必要がある。P含有量が0.020%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Pは0.020%以下とする。なお、P含有量の下限値は特に限定しないが、Pを過剰に低減すれば、溶鋼を溶製する段階で精錬コストの上昇を招く。したがって、Pは0.005〜0.020%が好ましい。より好ましくは0.005〜0.015%である。
Sは、溶鋼の凝固段階でCaと結合してCaS粒子を晶出する。CaS粒子は熱間圧延後の冷却時にフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらに、その厚鋼板の超大入熱溶接を行なう際には、CaS粒子上にMnSが析出してフェライト生成核として作用し、溶接金属の靭性を向上させる。S含有量が0.0007%未満では、この効果が得られない。一方、0.0040%を超えると、溶鋼の連続鋳造にて鋳片の中央部に多量のMnSが偏析して、鋳片内部に欠陥が生じるばかりでなく、その鋳片から製造した厚鋼板の靭性が劣化する。したがって、Sは0.0007〜0.0040%の範囲内を満足する必要がある。
Alは、溶鋼を溶製する段階で脱酸剤として使用される。また、溶鋼中のNをAlNとして固定し、後述するBによる焼入れ性向上の効果を維持する効果も有する。Al含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.05%を超えると、厚鋼板の靭性が劣化するとともに、厚鋼板の超大入熱溶接を行なう際に溶接金属に混入して、溶接金属の靭性を劣化させる。したがって、Alは0.005〜0.05%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.010〜0.045%である。
Crは、厚鋼板の焼入れ性を向上することによって、厚鋼板の強度を増加させる作用を有する。しかも、HAZに及ぼす悪影響が少ないので有用な元素である。Cr含有量が0.03%未満では、厚鋼板の強度増加の効果が得られない。一方、1.0%を超えると、厚鋼板のみならずHAZの靭性を劣化させる。したがって、Crは0.03〜1.0%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.1〜0.5%である。
Nbは、HAZに上部ベイナイトやマルテンサイトの生成を助長して、HAZの靭性を劣化させる元素である。そのため、Nbを可能な限り低減する必要がある。Nb含有量が0.003%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Nbは0.003%以下とする。
Mo:0.04%以下
Moは、HAZに上部ベイナイトやマルテンサイトの生成を助長して、HAZの靭性を劣化させる元素である。そのため、Moを可能な限り低減する必要がある。Mo含有量が0.04%を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Moは0.04%以下とする。
Vは、Nb,Moと同様に、HAZの靭性を劣化させる元素であるが、NbやMoと比べてその脆化の程度が低いので、母材およびHAZの強度を高めたいときに添加することができる。しかしながら0.030%を超えると、析出硬化が著しくなり、母材およびHAZの靭性を著しく低下させるので、0.030%以下とする。好ましくはVは0.020%以下である。
Bは、微量の添加で厚鋼板の焼入れ性を向上することによって、厚鋼板の強度を増加させる元素である。また、Bは溶鋼を溶製する段階でNと結合してBNを生成し、熱間圧延後の冷却時にそのBNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにBは、TiNが固溶するような超大入熱溶接によるHAZにBNを生成させる。このBNはフェライト生成核として作用するばかりでなく、固溶Nを低減する効果も有するので、HAZの靭性向上に寄与する。B含有量が0.0005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.0030%を超えると、厚鋼板のみならずHAZの靭性が劣化するばかりでなく、厚鋼板の降伏強度が著しく上昇するので降伏比の制御が困難になる。したがって、Bは0.0005〜0.0030%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.0007〜0.0020%である。
Tiは、Nとの親和力が強く、溶鋼の連続鋳造にてTiNとして析出し、熱間圧延後の冷却時にそのTiNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにTiNは、超大入熱溶接のHAZにおけるオーステナイトの成長を抑制し、かつフェライト生成核として作用するので、HAZの靭性向上に寄与する。Ti含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.030%を超えると、TiN粒子が粗大化するので、これらの効果が得られない。したがって、Tiは0.005〜0.030%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.010〜0.020%である。
Caは、Sと結合してCaSを生成することによって厚鋼板の靭性を向上させる作用を有する。Caは溶鋼の溶製段階で添加されるが、溶存酸素量を0.0050%以下に調整した後でCaを添加する。このようにしてCaOの生成を抑制して、CaSの生成を促進する。CaSは、溶鋼中で酸化物に比べて低温で晶出し、均一かつ微細に分散する。この微細なCaS粒子が、厚鋼板の溶接時にMnSと複合してフェライト生成核として作用して、HAZの靭性向上に寄与する。Ca含有量が0.0005%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.0035%を超えると、過剰のCaが酸化物を形成して、厚鋼板の靭性を劣化させる。したがって、Caは0.0005〜0.0035%の範囲内を満足する必要がある。
Nは、溶鋼の連続鋳造にてTiNとして析出し、熱間圧延後の冷却時にそのTiNがフェライト生成核として作用し、厚鋼板の降伏比低下に寄与する。さらにTiNは、超大入熱溶接のHAZにおけるオーステナイトの成長を抑制し、かつフェライト生成核として作用するので、HAZの靭性向上に寄与する。N含有量が0.0030%未満では、これらの効果が得られない。一方、0.0070%を超えると、超大入熱溶接によってHAZのTiNが溶解し、その結果、固溶N量が増加してHAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Nは0.0030〜0.0070%の範囲内を満足する必要がある。
Oは、溶鋼を溶製する段階で不可避的に混入する不純物であり、他の元素と結合して酸化物を形成する。そのためO含有量を低減することが好ましいが、0.0010%未満とするためには溶鋼を溶製する段階で精錬コストの上昇を招く。一方、0.0040%を超えると、酸化物が粗大化して厚鋼板の靭性を劣化させる。したがって、Oは0.0010〜0.0040%の範囲内を満足する必要がある。
Cuは、厚鋼板の靭性を低下させず強度を増加する作用を有する。しかも、HAZに及ぼす悪影響が少ないので有用な元素である。Cu含有量が0.05%未満では、厚鋼板の強度増加の効果が得られない。一方、1.0%を超えると、熱間脆性が生じて厚鋼板の表面性状が劣化する。したがって、Cuは0.05〜1.0%の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.1〜0.5%である。好ましくは0.1〜0.5%である。
既に説明した通り、本発明では、2相域焼入れ処理に先立って2相域温度に保持する間に、Mn,Cu,Ni等がフェライトとオーステナイトの界面に偏在することによって、厚鋼板のMn,Cu,Ni等の含有量に濃淡を生じさせてフェライト生成核として活用する。このような効果を得るためには、Mn,Cu,Ni等の含有量を高く設定する必要がある。しかしMnを過剰に添加すると、厚鋼板およびHAZの靭性が劣化する。そこで、CuとNiの含有量を大きく設定し、その合計含有量を規定する。Cu含有量とNi含有量の合計が1.0%未満では、フェライト生成核が十分に得られない。一方、2.0%超えると、フェライト生成核が飽和し、含有量の増加に見合う効果が得られず、厚鋼板の製造コストが上昇する。したがって、Cu含有量とNi含有量の合計は1.0〜2.0%の範囲内とする。
Ceqは下記の(1)式で定義される値である。Ceqが0.44未満では、再加熱焼入れ処理や2相域焼入れ処理における焼入れ性が不足するので、フェライトが生成する。その結果、板厚80mm以上の厚鋼板では所望の引張強さ(すなわち590MPa以上)が得られない。また再加熱焼入れ処理を行なっても厚鋼板にマルテンサイトまたはベイナイトの微細な組織が得られないので、2相域焼入れ処理で合金元素の濃淡を生じさせることが困難になる。一方、0.50を超えると、HAZの靭性が著しく劣化する。したがって、Ceqは0.44〜0.50の範囲内を満足する必要がある。好ましくは0.45〜0.48である。
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
上記の(1)式の[%C]はC含有量,[%Mn]はMn含有量,[%Ni]はNi含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Cr]はCr含有量,[%Mo]はMo含有量,[%V]はV含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
Pcmは下記の(2)式で定義される値である。Pcmが0.21を超えると、低温割れ感受性が高くなり、溶接金属に割れが発生し易くなる。したがって、Pcmは0.21以下とする。
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
ここで[%C]はC含有量,[%Si]はSi含有量,[%Mn]Mnの含有量,[%Cu]はCu含有量,[%Ni]はNi含有量,[%Cr]はCr含有量,[%Mo]はMo含有量,[%V]はV含有量,[%B]はB含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
ACRは下記の(3)式で定義される値である。ACRが0.2未満では、CaSが生成せず、MnSが析出する。このMnSは、厚鋼板に均一かつ微細に分散せず、熱間圧延によって伸長される。その結果、厚鋼板のみならずHAZの靭性が劣化する。一方、0.8を超えると、CaSが多量に生成し、MnSが不足する。その結果、厚鋼板を溶接する際に、CaS粒子上にMnSが析出せず、十分な量のフェライト生成核が得られない。したがって、ACRは0.2〜0.8の範囲内を満足する必要がある。この範囲内にACRを維持することによって、CaS粒子上にMnSが析出した複合硫化物となる。その複合硫化物がフェライト生成核として作用して、HAZの組織が微細化され、HAZの靭性が向上する。
・・・(3)
ここで[%Ca]はCa含有量,[%O]はO含有量,[%S]はS含有量を指す。含有量の単位は、いずれも質量%である。
本発明では、上記の成分に加えて、希土類元素(すなわちREM):0.0010〜0.020%およびMg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上を含有しても良い。
REMは、厚鋼板およびHAZの靭性を向上する作用を有する。REM含有量が0.0010%未満では、この効果が得られない。一方、0.020%を超えると、靭性向上の効果が飽和し、含有量の増加に見合う効果が得られず、厚鋼板の製造コストが上昇する。したがって、REMは0.0010〜0.020%の範囲内が好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
溶鋼を溶製し、さらに鋳造して、上記した成分を有する鋼素材を製造する工程で採用する技術は特に限定せず、従来から知られている技術を使用する。ただし厚鋼板を大量に製造することを考慮すると、溶鋼を転炉,電気炉,真空溶解炉等で溶製し、脱ガス処理を施してガス成分を調整した後、CaSiワイヤを用いて介在物制御を行ない、さらに連続鋳造を行なって鋼素材(すなわちスラブ)を製造することが好ましい。
この鋼素材を加熱し、さらに熱間圧延を施して厚鋼板とする。熱間圧延は、従来から知られている技術を使用する。なお厚鋼板の板厚が100mmを超えると、本発明を適用しても、超大入熱溶接によるHAZの靭性を板厚方向全域にわたって向上することは困難である。厚鋼板の板厚が100mm以下であればHAZの靭性を板厚方向全域にわたって改善できるので、板厚の下限値は特に限定しない。ただし、超大入熱溶接によるHAZの靭性改善が困難であると一般に言われていた板厚80mm以上の厚鋼板に本発明を適用すると、多大な効果が得られる。したがって、厚鋼板の板厚は100mm以下が好ましく、80〜100mmの範囲内が一層好ましい。
再加熱が終了した後、厚鋼板に再加熱焼入れ処理を施す。再加熱焼入れ処理では、800〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却する。平均冷却速度が1℃/秒未満では、好適な組織(すなわちマルテンサイトまたはベイナイトの微細な組織)が得られない。
2相域加熱が終了した後、厚鋼板に2相域焼入れ処理を施す。2相域焼入れ処理では、(Ac1−20℃)〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却する。平均冷却速度が1℃/秒未満では、硬質相の硬さが不足し、好適な組織が得られない。
また、焼戻し処理にて上記の温度範囲に保持する時間は、特に限定せず、厚鋼板の用途や要求される特性に応じて適宜設定する。ただし、60分を超えると厚鋼板の強度が著しく低下するので、焼戻し処理の保持時間は60分以下が好ましい。
また、厚鋼板の板厚方向1/4の深さの位置からJIS規格Z2202の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JIS規格Z2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない、0℃における吸収エネルギー(VE0)を調査した。その結果を表3に示す。
この開先にエレクトロスラグ溶接(以下、ESWという)を行なって、溶接継手を作製した。ESWの溶接入熱は1000kJ/cmとし、溶接ワイヤはJIS規格3353YES62相当品,溶接フラックスはJIS規格3353FS-FG3相当品を使用した。
さらに、誘導加熱によって1400℃および800℃をピーク温度として、平均冷却速度を50℃/秒とする2重熱サイクルを与えた小入熱多パス溶接のICCGHAZに相当する試験片からVノッチ試験片を採取し、JIS規格Z2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を行ない、0℃における吸収エネルギー(VE0)を調査した。その結果を表3に示す。
発明例の厚鋼板とその溶接継手の靭性の調査結果は、厚鋼板の吸収エネルギー(VE0)が112〜264J,ESW継手のボンド部の吸収エネルギー(VE0)が79〜156J,ICCGHAZ相当の再現HAZの吸収エネルギー(VE0)が94〜188Jであり、いずれもVE0が70J以上の優れた靭性を有していた。
2 当て金
3 隙間
4 溶接金属
5 Vノッチ試験片
Claims (3)
- 質量%で、C:0.040〜0.070%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.0〜1.6%、P:0.020%以下、S:0.0007〜0.0040%、Al:0.005〜0.05%、Cr:0.03〜1.0%、Nb:0.003%以下、Mo:0.04%以下、V:0.030%以下、B:0.0005〜0.0030%、Ti:0.005〜0.030%、Ca:0.0005〜0.0035%、N:0.0030〜0.0070%、O:0.0010〜0.0040%を含有し、さらにCu:0.05〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%のうちの1種以上をCu含有量とNi含有量の合計が1.0〜2.0%となるように含有し、かつ各元素の含有量を用いて(1)式で定義されるCeqが0.44〜0.50を満足し、(2)式で定義されるPcmが0.21以下を満足し、(3)式で定義されるACRが0.2〜0.8を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、ミクロ組織が、Mn、Cu、Niの含有量が鋼材平均よりも高い濃化領域と低い淡化領域を含み、(Mn/6+Cu/15+Ni/15)の値が鋼材平均の90%以下である淡化領域の分率が10%以上であることを特徴とする超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板。
Ceq=[%C]+([%Mn]/6)+{([%Ni]+[%Cu])/15}
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
ACR={[%Ca]−(0.18+130×[%Ca])×[%O]}/(1.25×[%S])
・・・(3) - 質量%で、C:0.040〜0.070%、Si:0.05〜0.45%、Mn:1.0〜1.6%、P:0.020%以下、S:0.0007〜0.0040%、Al:0.005〜0.05%、Cr:0.03〜1.0%、Nb:0.003%以下、Mo:0.04%以下、V:0.030%以下、B:0.0005〜0.0030%、Ti:0.005〜0.030%、Ca:0.0005〜0.0035%、N:0.0030〜0.0070%、O:0.0010〜0.0040%を含有し、さらにCu:0.05〜1.0%およびNi:0.05〜2.0%のうちの1種以上をCu含有量とNi含有量の合計が1.0〜2.0%となるように含有し、かつ各元素の含有量を用いて(1)式で定義されるCeqが0.44〜0.50を満足し、(2)式で定義されるPcmが0.21以下を満足し、(3)式で定義されるACRが0.2〜0.8を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を熱間圧延によって厚鋼板とし、次いで前記厚鋼板を900〜1000℃の温度に再加熱して20分以上保持した後、800〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう再加熱焼入れ処理を施し、さらに(Ac1+20℃)〜(Ac1+80℃)の2相域温度に加熱して30分以上保持した後、(Ac1−20℃)〜500℃の温度範囲を平均冷却速度1℃/秒以上で冷却して焼入れを行なう2相域焼入れ処理を施し、さらに400〜600℃の温度に加熱して保持する焼戻し処理を施すことを特徴とする超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
Ceq=[%C]+([%Mn]/6)+{([%Ni]+[%Cu])/15}
+{([%Cr]+[%Mo]+[%V])/5} ・・・(1)
Pcm=[%C]+([%Si]/30)+([%Mn]/20)+([%Cu]/20)
+([%Ni]/60)+([%Cr]/20)+([%Mo]/15)
+([%V]/10)+(5×[%B]) ・・・(2)
ACR={[%Ca]−(0.18+130×[%Ca])×[%O]}/(1.25×[%S])
・・・(3) - 前記鋼素材が、前記組成に加えて、質量%でREM:0.0010〜0.020%およびMg:0.0010〜0.0050%のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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