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JP2006071104A - 転がり軸受 - Google Patents

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JP2006071104A
JP2006071104A JP2005278951A JP2005278951A JP2006071104A JP 2006071104 A JP2006071104 A JP 2006071104A JP 2005278951 A JP2005278951 A JP 2005278951A JP 2005278951 A JP2005278951 A JP 2005278951A JP 2006071104 A JP2006071104 A JP 2006071104A
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lubricant
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rolling
grease
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Atsushi Yokouchi
敦 横内
Yoichi Matsumoto
洋一 松本
Kenichi Iso
賢一 磯
Koichi Yatani
耕一 八谷
Hideki Koizumi
秀樹 小泉
Michiharu Naka
道治 中
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NSK Ltd
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Abstract

【課題】 外部から又は結露により潤滑剤に水分が混入したり、或いは振動の影響を受ける使用状況下であっても、十分なる軸受寿命を容易且つ安価に得ることができ、特にオルタネータ等の自動車エンジンの電装・補機類に好適した転がり軸受を得ることができるようにした。
【解決手段】 軸受内部に封入されるグリースの水素イオン指数pHを7〜13の範囲に設定した。有機金属塩又はADTCをグリースに所定量添加した場合、平均粒径2μm以下の無機系化合物をグリースに所定量添加した場合、或いは芳香族アミンを含有したジウレア化合物又は該ジウレア化合物の混合物を増稠剤としてグリースに添加した場合は、グリースの水素イオン指数pHを5〜13の範囲に設定した。
【選択図】 なし

Description

本発明は転がり軸受に関し、特に、潤滑剤に水分が混入したり、高温・高速回転下や振動の影響を受ける使用環境下で使用されるオルタネータ等の自動車エンジンの電装・補機類に好適した転がり軸受に関する。
転がり軸受においては、従来より、転動体と軌道輪とで画成される環状空間に潤滑剤を封入し、これにより転がり軸受の焼付け損傷や軸受寿命Lが低下するのを防止している。
ところで、潤滑剤中に水分が混入するとその耐久性が大きく低下することが一般に知られており、例えば、潤滑剤中に6%の水分が混入した場合は、水分混入がない場合に比べ、軸受の転がり疲れ寿命が数分の1から20分の1程度に低下することが報告されている(非特許文献1;以下「文献1」という)。
すなわち、水分の潤滑剤への混入は転がり軸受の寿命特性(耐久性)に多大な影響を及ぼすことが上記文献1からも明らかであり、従来より水分の潤滑剤への混入を防止する技術が、前記転がり軸受の用途に応じて種々検討され、開発されている。
潤滑剤に水分が浸入することを想定して使用される転がり軸受としては、例えば、鉄鋼材料の圧延機のワークロール用軸受がある。
該ワークロール用軸受は、従前においては軸受を内有したチョック(軸受箱)に接触ゴムシールを装着し、多量の圧延水がチョック内に浸入するのを防止することにより軸受内部に封入されている潤滑剤に水分が混入するのを防いでいたが、前記接触ゴムシールの劣化や損傷が生じた場合はチョック内に水が浸入し、その結果軸受内部の潤滑剤にも水分が混入し得る。このため最近では軸受内部にも接触ゴムシールを装着することにより、潤滑剤に水分が混入するのを回避しようとした技術が提案されている(非特許文献2;以下「第1の従来技術」という)。
該第1の従来技術によれば、軸受外部のチョックに装着された接触ゴムシールと軸受内部に装着された接触ゴムシールとを併用することにより、前記チョックに装着されたゴム接触シールのみで水分浸入を防いでいた場合に比べ、潤滑剤中の水分濃度を40%から10%未満に減少することができ、また潤滑剤の消費量も1/200に低減することができ、さらには毎年数回あった軸受の破損事故も皆無になったことが報告されている。
また、上述したワークロール用軸受において、潤滑剤への水分混入を防止する他の従来技術として、圧搾空気をキャリアガスとして潤滑剤をチョックに供給する技術も提案されている(非特許文献3;以下「第2の従来技術」という)。
該第2の従来技術においては、圧搾空気を利用してチョック内の空気圧力を高く設定することにより、潤滑剤への水分混入を抑制することが可能となる。
また、潤滑剤中に水分が浸入し得る他の転がり軸受の重要な例としては、自動車エンジンの電装・補機類用軸受がある。自動車エンジンの電装・補機類用軸受とは、オルタネータ用軸受、カーエアコン電磁クラッチ用軸受、アイドラプーリ用軸受、水ポンプ用軸受等、自動車エンジンの外部にあるベルトにより駆動する補助機械用の軸受を意味するが、これら電装・補機類用軸受は、路面より跳ね上げられる泥水や雨水が軸受内部に浸入しやすく、また水ポンプ用軸受についてはエンジン冷却用の循環水が軸受内部に浸入し易い。
そこで、かかる観点から自動車エンジンの電装・補機類用軸受においては、軸受内部における潤滑剤への水分混入を防止する手段として、内蔵シールのシール性を高性能化する技術が提案されている(非特許文献4,5;以下「第3の従来技術」という)。
また、転がり軸受においては、一般に、振動が負荷されたり、或いは軸受周りの剛性が弱い場合は軸受の耐久寿命が大幅に低下することが報告されている(非特許文献6;以下「文献2」という)。
すなわち、運転中に振動が負荷された場合は軌道面と転動面との間の油膜形成が不十分となって接触面に引張応力が負荷され、また回転軸と内輪とが強いしばりばめで嵌合されて軸受ハウジングの剛性が低下している場合は軌道面に常時引張応力が作用し、その結果、外部からの潤滑剤への水分混入がなくとも、潤滑剤に元々含有されている水分の影響を受けて軸受の早期剥離を招来し、軸受寿命Lの低下を来す虞がある。
しかるに、前記自動車エンジンの電装・補機類用軸受は、駆動ベルトの振動が直接伝わり、且つ軸受のハウジングの剛性が低いことから、振動等の影響を受けやすい。このため、該振動等に起因して軸受が早期に剥離(フレーキング)するのを回避すべく、振動減衰効果に優れた緩衝剤のような作用を奏するグリースを潤滑剤として使用することが提案されている(非特許文献7;以下「第4の従来技術」という)。
また、潤滑剤中に水分が浸入し得るその他の転がり軸受の例としては、自動車ホイール用軸受、鉄鋼材料の連続鋳造設備のガイドロール用軸受や圧延機のバックアップロール用軸受、更には製紙機ドライヤロール用軸受等がある。
自動車ホイール用軸受においては、路面の泥水や雨水の影響を受けて潤滑剤中に水分が浸入し易い。また、鉄鋼材料の連続鋳造設備のガイドロール用軸受や圧延機のバックアップロール用軸受についても、冷却水や圧延水が潤滑剤中に浸入し易い。さらに、製紙機ドライヤロール用軸受は、水分を含んだ湿った紙を乾燥する乾燥工程で使用されるため、軸受内に水蒸気が浸入し易く、したがって、潤滑剤中の水分濃度が増加して軸受の早期破損を生じやすい(非特許文献8;以下「文献3」という)。
そこで、自動車ホイール用軸受においては、上記第1の従来技術と同様、軸受外部の接触ゴムシールと軸受に内蔵された接触ゴムシールを併用したり、或いは高性能シールを単独使用する技術が提案されており(非特許文献9)、また、ガイドロール用軸受や圧延機のバックアップロール用軸受についても、接触ゴムシールを使用して潤滑剤中への水分浸入を防止することが行われている。また、製紙機ドライヤロール用軸受についても、上記文献3から明らかなように水蒸気が軸受中に浸入し易いため水分浸入防止のための対策を講じる必要があるが、該製紙機ドライヤロール用軸受は一般に高温条件下で使用されるため、ワークロール用軸受や自動車用ホイール用軸受に使用される接触ゴムシールを適用することは耐熱性を考慮すると難しく、このため十分な耐熱性を有する特殊な高温用ゴムを使用して水分の浸入を防止することが考えられている。
すなわち、これら自動車ホイール用軸受等その他の転がり軸受についても、第1の従来技術や第3の従来技術と略同様、原理的には接触ゴムシールを使用して軸受内部の潤滑剤への水分混入を極力回避している(以下、これらその他の転がり軸受についての従来技術を「第5の従来技術」という)。
一方、転がり軸受が搭載された機械類や自動車等が運転を停止している場合に軸受のハウジング内部の温度が低下して露点に到達したときは、軸受周辺の水分が凝縮し、その結果水滴となって軸受に付着したり或いは潤滑剤中に混入し、これにより軸受寿命Lの低下を招来することが報告されており(非特許文献10;以下「文献4」という)、また潤滑剤が酸化劣化すると水分が発生し、該発生した水分が軸受に付着して軸受寿命Lの低下を招来することが報告されている(非特許文献11;以下「文献5」という)。
これら文献4及び文献5によれば、外部から直接的に潤滑剤に水分が混入しなくとも、環境変化等により潤滑剤中の水分が含まれる状況になる場合があり、したがって軸受寿命Lの低下を回避するためには潤滑剤への水分浸入対策として上述した接触ゴムシール以外の手段も検討する必要がある。
そこで、かかる観点からは、軸受に使用される軸受材料としてマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS440C)を使用することにより、軸受への水分付着による錆の発生を防止し、耐久性が低下するのを防止せんとしている(非特許文献12;以下「第6の従来技術」という)。
古村恭三郎、城田伸一、平川清:「表面起点及び内部起点の転がり疲れについて」、NSK Bearing Journal,No. 636,pp. 1-10,1977 K. YAMAMOTO,M. YAMAZAKI,M.AKIYAMA,K. FURUMURA:「Introducing of Sealed Bearings for Work Roll Necks in Rolling Mills」、Proceedings of the JSLE international Tribology Conference,pp. 609-614,July 8-10,1985,Tokyo,Japan NSK Technical Journal,No. 654,pp. 54-56,1992 NSK Technical Journal,No. 660,pp. 15-22,1995 NSK Technical Journal,No. 652,pp. 66-67,1992 村上保夫、武村浩道:「電装用軸受のフレーキング現象の研究」、日本トライポロジ学会主催トライポロジ会議予稿集(名古屋 1993年11月、pp. 295-298 NSK Technical Journal,No. 657,pp. 49-51,1994 M. J. Culter:「Paper machine bearing failure」、Tappi Journal,Vol. 79,No. 2,pp. 157-167,1966 NSK Technical Journal,No. 647,pp. 55-57,1987 内田権一:NSK Technical Journal,No. 632,pp. 40-45,1973 関雅夫:転がり疲れシンンポジウム予稿集、pp. 125-130,1993 転がり軸受工学編集委員会編:転がり軸受工学,pp. 71-72、養賢堂(1976年) P. Schatzberg,I. M. Felsen:「Effects of water and oxygen during rolling contact lubrication」,wear,12,pp. 331-342,1968 日本鉄鋼協会編:鋼の熱処理 改訂5版 pp. 563-568(1989) E. Ioannides,B. Jacobson:「Dirty lubricants-reduced bearing life」,Ball Bearing Journal Special’89,pp. 22-27,1989 NSK Technical Journal,No. 656,pp. 1,1993
ところで、上記第1の従来技術は、上述の如く潤滑剤中の水分濃度を40%から10%未満に減少させることが可能であり、また、潤滑剤の消費量を低減させることができ、その後のワークロール用軸受の使用実績を調査した結果、焼き付き事故は激減していることが判明したが、剥離発生までの使用時間、すなわち軸受寿命Lは余り向上していないことが判った。これは、前記焼き付き事故の減少は軸受に内蔵された接触ゴムシールにより潤滑剤の外部への流出が減少したためであり、前記軸受寿命Lが向上していないのは潤滑剤への水分の混入により、軸受の転がり疲れ強さが大幅に低下するためと考えられる。
すなわち、100ppm程度の微量の水分が潤滑剤中に混入した場合であっても軸受材料の転がり疲れ強さは32〜48%も低下することが報告されており(非特許文献13;以下「文献6」という)、軸受外のチョックに装着された接触ゴムシールと軸受に内蔵された接触ゴムシールとを併用した場合、潤滑剤中の水分濃度が10%未満程度になるまでは抑制できるものの、潤滑剤への水分混入を完全には防止することができず、上記文献6も指摘しているように軸受材料の転がり疲れ強さが低下するのを避けることができない。つまり、第1の従来技術では、潤滑剤への水分混入を完全には防止できないため、軸受材料の転がり疲れ強さが低下し、所望の耐久性を有する軸受寿命Lを得ることができないという問題点がある。
また、第2の従来技術は、チョック内の空気圧を高くすることにより水分の浸入を防止しているため、第1の従来技術のように接触ゴムシールの防水能力には依存しないものの、潤滑剤中の水分濃度を100ppm以下にするような略完璧に近い水分浸入防止を図るのは困難であるという問題点がある。
また、第3の従来技術は、原理的には第1の従来技術と同様、接触ゴムシールにより水分の浸入を防止するものであり、上述したように潤滑剤中の水分濃度を100ppm以下に抑制することは困難であり、所望の耐久性を得ることができないという問題点がある。
また、第4の従来技術においても、近年の自動車の高性能化により、電装・補機類用軸受の使用温度が高くなり、結果としてグリースが軟化して該グリースの振動減衰能が低下するため、軸受の早期剥離を防止することができず、上述した潤滑剤中への水分浸入と相俟って軸受寿命低下の要因となり、所望の耐久性を得ることができないという問題点がある。
すなわち、近年においては、小型軽量化を目的とした所謂FF方式の自動車の普及や移住空間拡大の要請等から、自動車のエンジンルームのスペースを狭くする必要性に迫られており、このため自動車に搭載されるオルタネータ等のエンジン補機類等についても小型軽量化を促進する必要がある。しかも、その一方ではこれらエンジン補機類のより一層の高性能化、高出力化も要求されている。
しかしながら、これらエンジン補機類を小型化した場合は出力の低下を避けることができず、例えばオルタネータやカーエアコン用電磁クラッチでは高速化することによって出力の低下を補填しており、このためアイドラプーリも高速化している。また、エンジンから発する騒音を低減する観点からは、エンジンルームの密閉化が要請されており、斯かるエンジンルームの密閉化が進行すればするほどエンジンルーム内は高温化し、その結果電装・補機類用軸受の使用温度も高温化する。さらには、駆動ベルトの高張力化により軸受に負荷される荷重も大きくなってきており、したがって前記エンジン補機類に使用される転がり軸受の使用条件も益々厳しくなってきている。
そして、このような高温・高速条件下で電装・補機類用軸受を使用した場合は、グリースの軟化を促進して該グリースの耐焼付き性の低下を招来し、また、グリースの振動減衰能も低下するため、軸受の早期剥離を招来して所望の耐久性を得ることができなくなるという問題点がある。
また、第5の従来技術においても、原理的には上記第1の従来技術と同様、接触ゴムシールを使用したものであり、完璧な水分の浸入防止を図ることは困難であるという問題点がある。
さらに、第6の従来技術においては、ステンレス鋼の熱伝導度は低合金鋼の熱伝導度に比べて低いため焼付き破損が生じやすく、潤滑剤中に水分が混入する上述のような潤滑条件の悪い転がり軸受への適用は困難であるという問題点がある。また、前記ステンレス鋼の耐食性は表面に生成される不動態皮膜により維持されるものであるが、転がり軸受においては軌道輪の軌道面と転動体の転動面とが接触すると前記不動態皮膜が破られ、その結果選択的に腐食が進行して孔(ピット)が生成されるため、該孔を起点とした剥離破損が生じやすいという問題点もある。さらに、軸受を製造する場合においても、ステンレス鋼の場合は焼入温度が1010〜1070℃と高いため、加熱炉としては塩浴炉を使用する必要があり、したがって生産設備の高騰化を招く虞があるという問題点もある(非特許文献14)。
さらに加えて、前記ステンレス鋼は上述したように熱伝導度が低いため、研削速度が低下して研削コストが高価なものとなり、さらには前記ステンレス鋼は高合金鋼であるため素材コストの高騰化をも招来するという問題点もある。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、外部から又は結露により潤滑剤に水分が混入したり、或いは振動の影響を受ける使用状況下であっても、十分なる軸受寿命を容易且つ安価に得ることができる転がり軸受を提供することを目的とする。
本願出願人は、潤滑剤中に水分を含んだ潤滑条件下で使用されても、軸受部位の腐食進行を防止することができる転がり軸受を得るべく、鋭意研究をした結果、軌道輪の軌道面におけるカソード反応を抑制して軌道輪に水素が吸収されるのを抑制することが重要であり、そのためには潤滑剤中の水素イオン濃度を下げることが効果的であり、換言すれば、潤滑剤の水素イオン指数pHを上げることが効果的であるという知見を得た。
そして、本願出願人の実験により、潤滑剤にアルカリ性物質を添加していったところ潤滑剤の水素イオン指数pHが7〜13の範囲内にあるときにカソード反応を抑制して転がり疲れ強さを改善することができることが判った。
本発明は斯かる知見に基づきなされたものであって、本発明に係る転がり軸受は、外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外輪と前記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを備え、前記転動体と前記軌道輪とで画成される環状空間に潤滑剤が封入された転がり軸受において、前記潤滑剤の水素イオン指数pHが、7〜13に設定されていることを第1の特徴としている。
また、有機金属塩を潤滑剤中に含有すると軸受材料の鋼表面に化学的な反応膜が形成されて金属間接触が防止されると共に摩擦係数も低下し、耐荷重性、耐焼付き性、耐摩耗性が向上することが知られている。
本願出願人は、斯かる有機金属塩の機能に着目して更に鋭意研究をした結果、潤滑剤に有機金属塩を含有した場合は水素イオン指数pHを5以上に設定することにより、軸受の早期剥離を防止することができるという知見を得た。さらに、有機金属塩に代えて、無灰系ジアルキルジチオカルバミン酸(ADTC)を潤滑剤中に含有させた場合も、有機金属塩の場合と同様の作用効果を得ることができることも判明した。
そこで、本発明に係る転がり軸受は、有機金属塩又はADTCが潤滑剤に含有され、かつ該潤滑剤の水素イオン指数pHが、5〜13に設定されていることを第2の特徴としている。
また、軸受部位の腐食進行を防止する方法としては、上述したカソード反応を抑制する方法の他、軸受材料上の非金属介在物と金属素地との間に形成され得る微少隙間自体の生成を抑制するのが効果的であると考えられる。
一方、転動面と軌道面との界面の油膜形成を良好にすることにより、該転動面と軌道面との間における接線力を低減して微少隙間の生成を抑制することができると考えられる。
本願出願人は、斯かる点に着目して更に鋭意研究を重ねた結果、平均粒径が2μm以下の無機系化合物からなる微粒子を潤滑剤に含有させると共に潤滑剤の水素イオン指数pHを5以上とすることにより、転動面と軌道面との間に十分強固な油膜を形成することができ、これにより金属間接触が防止され、高温・高速条件下での軸受寿命Lが向上することが判明した。
そこで、本発明に係る転がり軸受は、平均粒径が2μm以下の無機系化合物が潤滑剤に含有され、かつ潤滑剤の水素イオン指数pHを5〜13に設定されていることを第3の特徴としている。
さらに、本願出願人の研究結果から、上記無機系化合物に代えて、芳香族アミンを含有したジウレア化合物又は該ジウレア化合物の2種以上の混合物を増稠剤として潤滑剤に添加した場合も上述と同様、転動面と軌道面との間に十分強固な油膜が形成されることが判明した。
そこで、本発明に係る転がり軸受は、潤滑剤の増稠剤が芳香族アミンを含有したジウレア化合物又は該ジウレア化合物の2種以上の混合物からなり、かつ潤滑剤の水素イオン指数pHを5〜13に設定されていることを第4の特徴としている。
さらに、本発明の転がり軸受は、上記第1〜第4の特徴単独のみならず、上記第1〜第4の特徴を適宜組み合わせることによっても、所期の目的を達成することができる。
以上詳述したように本発明に係る転がり軸受は、外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外輪と前記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを備え、前記転動体と前記軌道輪とで画成される環状空間に潤滑剤が封入された転がり軸受において、該潤滑剤の水素イオン指数pHが、7〜13に設定されているので、潤滑剤中に水分が混入したり、或いは振動により潤滑剤中の水分の影響を受けやすい自動車エンジンの電装・補機類用軸受の場合であっても、軸受部位に剥離が発生のを防止することができ、耐久性向上を図ることができる。
また、潤滑剤中に所定量の有機金属塩やADTCを添加したり、平均粒径2μm以下の無機系化合物を添加した場合は、水素イオン指数pHが5〜13の範囲で上述と同様の効果を得ることができ、さらに芳香族アミンを含有したジウレア化合物を増稠剤として潤滑剤に添加した場合も水素イオン指数pHが5〜13の範囲で上述と同様の効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
転がり軸受は、一般に、転動体と軌道輪とで画成される環状空間に潤滑剤を封入して使用される。そして、上述の如く、潤滑剤中に水分を含んだ潤滑条件下では軸受材料の転がり疲れ強さの低下を招くことが知られているが、その機構については定説がなく、水分の潤滑剤への混入が転がり疲れ強さを低下させる理由については不明とされている(非特許文献15)。
そこで、本願出願人はまず上記機構を理論的に解明することに着手した。
水分が潤滑剤中に混入した場合は該水分量が微量の場合であっても油膜の形成が困難となり、転動体と軌道輪とはその転動面及び軌道面との間で金属接触するが、転動体や軌道輪の表面状態は、不均一であり一様でなく、不可避的な酸化物や硫化物等の非金属介在物が転動面や軌道面に形成される。そして、潤滑剤中に水分が混入している場合は、これら非金属介在物とFeを主成分とする金属素地(マトリックス)との界面に水が浸入すると局部電池を形成して局部腐食が発生する。すなわち、前記界面近傍には転動体と軌道輪との接触部が必ず存在するため、軌道面や転動面に存在する非金属介在物と金属素地との界面には必ず引張応力が負荷され、斯かる引張応力下、非金属介在物と金属素地との界面に微小隙間が形成される。そして、潤滑剤に水分が混入した場合は、該水分が微量の場合であっても水分の粘度は潤滑剤の粘度よりも低いため毛細管現象により該水分が前記微小隙間に優先的に浸入し、その結果微小隙間で腐食反応が起こる。しかも、内輪と回転軸とがしばりばめで嵌合されているときは、軌道面には常時引張応力が作用するので、非金属介在物と金属素地との界面には更に大きな引張応力が負荷され、該大きな引張応力下で隙間が形成されることとなる。
また、オルタネータ等の自動車エンジンの電装・補機類用に使用される転がり軸受においては、駆動ベルトの振動が軸受に直接伝わり、且つ軸受のハウジングの剛性が低いことから、高速回転にもかかわらず軌道輪の軌道面と転動体の転動面とが高い頻度で金属接触する。このため、これら軌道面及び転動面に存在する非金属介在物と金属素地との間の密着性が低下してその界面に微小隙間を形成し、潤滑剤に含有されている水分が前記微小隙間に浸入して腐食反応を起こす虞があり、特に外輪軌道面においてこの種の腐食が発生しやすい。しかも、潤滑剤は大気中より吸湿されるため通常は或る程度の水分を含んでおり、外部から潤滑剤への水分混入がなくとも元々潤滑剤に含有している水分が原因で腐食反応を起こす虞がある。
この腐食反応は、腐食生成物が微小隙間の入口を閉塞するため、表面から微小隙間への酸素供給が困難となり、隙間内部の最深部の金属素地がアノードとなり、炭化物及び前記最深部以外の金属素地がカソードとなって、化学反応式1〜4に示すような水素発生型の腐食反応となる。
ここで、H(ads)は軸受材料の表面に吸着する水素原子を示し、H(abs)は軸受材料の内部に吸収される水素原子を示している。
すなわち、アノード(陽極)側では、化学反応式1に示すように、Feが水分と反応して電子を放出する酸化反応を呈する一方、カソード(陰極)側では、微小隙間内部への酸素供給が困難となって化学反応式2に示すように、軸受材料の表面に水素が吸着し、次いで化学反応式3に示すように、該吸着した水素の一部は軸受材料の内部に拡散して吸収され、前記吸着した水素のその他は、化学反応式4に示すように、軸受材料の表面に吸着された水素原子同士が結合して水素分子(ガス)を形成し該水素分子が外部に放出される。そして、カソードの炭化物上では、化学反応式3の進行は略無視できるため化学反応式4の化学反応が主として起こるが、カソードの金属素地上では化学反応式3及び4の反応が進行する。
このため、転がり軸受の運転中において極微量の水分が隙間内部に浸入した場合であっても軸受材料は水素を吸収し、その結果軸受材料の水素脆化が起こり、転がり疲れ強さが低下して剥離発生の要因となり、軸受寿命Lの低下を招来する。
したがって、かかる観点から軸受材料内部への水素吸収を抑制して水素脆化が生じるのを避ける必要があり、そのためには上述した腐食反応の機構に鑑みると上記化学反応式2のカソード反応を抑制することが重要である。そして、化学反応式2のカソード反応を抑制するためには、潤滑剤中の水素イオン濃度を下げることが必要である。換言すれば、潤滑剤中の水素イオン指数pHを上げることにより、化学反応式2の反応速度を低下させることができることができ、そのためには水素イオン指数pHを7〜13の範囲に限定する必要がある。
以下、本実施の形態における潤滑剤の水素イオン指数pH及び潤滑剤の組成(基油、増稠剤、pH調製剤)について説明する。
〔潤滑剤の水素イオン指数pH及び潤滑剤の組成〕
(1)水素イオン指数pH
水分は大気中に微量に含有される二酸化炭素を溶解し、その結果水素イオン指数が7以下の酸性になることが多く、pH調製剤としてのアルカリ性物質を潤滑剤に添加してゆくことにより水素イオン指数pHを上げて行くことができるが、化学反応式2の反応速度を低下させて軌道輪材料への水素吸収の十分なる抑制を達成し、これにより軸受寿命Lを改善するためには、水素イオン指数pHを少なくとも7以上に設定することが必要である。一方、水素イオン指数pHが13を超えるとアルカリ腐食により軌道面や転動面が摩耗し、転がり軸受の駆動中における振動が次第に顕著となる。したがって、本実施の形態では潤滑剤の水素イオン指数pHを7〜13に限定した。
(2)基油
潤滑作用を司る基油については特に限定されるものでなく、通常潤滑油の基油として使用されている油は全て使用可能であるが、低温流動性が不足した場合に生じ得る低温起動時の異常発生や、より強固な油膜を形成して耐焼付き性を確保するためには40℃における動粘度が40〜400mm2/sec、好ましくは60〜250mm2/secの基油を使用するのが望ましい。
具体的には、鉱油系潤滑油、合成油系潤滑油、天然油系潤滑油を基油に使用することができる。
鉱油系潤滑油としては、鉱油を減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等したものを適宜組み合わせて精製したものを使用することができる。
合成油系潤滑油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等を使用することができる。
炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマ、1−デセン、エチレンコオリゴマ等のポリαオレフィン(PAO)、又はこれらの水素化物などを使用することができる。
芳香族系油としては、モノアルキルベンゼンやジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼンや、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレンなどを使用することができる。
エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルシノレート等のジエステル油や、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、或いはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル油、更には多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油などを使用することができる。
エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコールや、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル(DAPE)、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油などを使用することができる。
さらに、その他の合成油系潤滑油としては、トリクレジルフォスフェート、シリコン油、パーフルオロアルキルエーテル等も使用することができる。
また、上記列挙した潤滑油単独で基油に使用することができる他、2種類以上の上記潤滑油を混合して所望動粘度となるように調製した混合物も基油として使用することができる。
(3)増稠剤
増稠剤は、潤滑剤を半固体状に保持すると共に、油の性質(粘性、弾性、塑性等)を改善するために潤滑剤中に含有されるものであり、該増稠剤は、その分子又は結晶が鎖状に連なって繊維状をなし、基油中に分散してゲル構造を形成する。
したがって、増稠剤としては、ゲル構造中に基油を保持する保持能力があれば、特に限定されるものではなく、例えば、Li、Na等からなる金属石鹸や、Li、Na、Ba、Ca等から選択される複合金属石鹸等の金属石鹸類、或いはジウレア化合物やポリウレア化合物等のウレア化合物を適宜選択して使用することが可能である。
しかしながら、潤滑剤の耐熱性向上を図る観点からは、ゲル構造の強固なジウレア化合物を使用するのが好ましい。ジウレア化合物は、ジイソシアネート類とモノアミン類とを所定条件下、反応させて得られる化合物であって、一般式(1)で示される。
ここで、R1、R3で示したアミン残基は、例えば、シクロヘキシル基、炭素数Cnがn=7〜12のアルキルシクロヘキシル基又は炭素数Cnがn=8〜20の直鎖アルキル基で構成され、R2で示したイソシアネート残基は、炭素数Cnがn=6〜15の2価の芳香族環含有炭化水素基で構成される。
(4)pH調製剤
pH調製剤は、潤滑剤の水素イオン指数pHを7〜13の範囲とするために添加される。そして、上述したように、水分は大気中に微量に含有される二酸化炭素を溶解するため、潤滑剤の水素イオン指数は7以下の酸性になることが多く、したがって、水素イオン指数pHを7〜13とするためにはアルカリ性物質をpH調製剤として添加する必要があり、該アルカリ性物質としては、アミン化合物、有機金属塩、有機酸金属塩、アルカリ性無機化合物の中から少なくとも1種を選択して使用することができる。
アミン化合物としては、一般式(2)〜(4)で夫々示される第一級〜第三級アミンのいずれをも使用することができる。
ここで、R4〜R6は、炭素数Cnがn=1〜24の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの誘導体の中から適宜選択され、また、R4〜R6は同一の基でもよく、異なる基でもよい。
脂肪族炭化水素基には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、テトラドデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等がある。
脂環式炭化水素基の代表例としては、シクロヘキシル基がある。
芳香族炭化水素基には、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等がある。
これらの誘導体としては、ポリオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレン基等がある。
また、有機金属塩又は有機酸金属塩としては、アルキル基を構成する炭化水素鎖の炭素数Cnがn=6〜24で、金属塩を構成する金属元素がNa、K、Li等のアルカリ金属や、Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属、或いはAlやZn等から選択された少なくとも1種以上を使用することができる。
また、アルカリ性無機化合物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)等の金属炭酸塩、ほう酸ナトリウム(Na3BO3)、ほう酸リチウム(Li3BO3)等の金属ほう酸塩、珪酸ナトリウム(Na4SiO4)、珪酸カリウム(K4SiO4)等の金属珪酸塩等を使用することができる。
(5)その他の添加剤
潤滑剤としての性能をより一層高めるために、必要に応じ、ゲル化剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等種々の添加剤を潤滑剤に含有させるのも好ましい実施の形態である。
ここで、ゲル化剤としては、金属石鹸、ベントン、シリカゲル等があり、酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イオウ系やチオリン酸亜鉛等がある。また、極圧剤としては、塩素系、イオウ系、リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等があり、油性剤としては、脂肪酸、動植物油等がある。さらに、防錆剤としては、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステル等があり、金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダ等がある。また、粘度指数向上剤としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等がある。
そして、これら添加剤は、それ単独により又は2種以上の組み合わせにより使用することができる。尚、添加剤の含有率は、特に限定されるものではないが、通常は潤滑剤中の含有率が20wt%以下となるように調製される。
次に、本願出願人は、潤滑剤に水分が混入した場合の各軸受部位の剥離特性についても検討した。
〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、潤滑剤中に水分が混入すると転がり軸受が剥離するまでに要する時間、すなわち軸受寿命Lが低下するが、剥離が発生する軸受の構成部位としては一般的には固定輪が最も多く、次いで回転輪、転動体の順に剥離の発生頻度は少なくなる。このように転動体における剥離発生頻度が軌道輪における剥離発生頻度よりも少ないのは転動体の水素吸収量が軌道輪の水素吸収量よりも少ないためであるが、その理由としては以下のことが考えられる。
(1)一般に転がり軸受の自転速度は、転動体の方が軌道輪よりも遙に速いため、たとえ転動体の転動面に微小隙間が形成されても微小隙間に侵入した水分は遠心力により弾き飛ばされ、その結果腐食反応の進行が抑制され、材料内部に浸入する水素の吸収量が少ない。
(2)転動体の鋳造素材(インゴット、ブルーム、ビレット等)からの加工比は軌道輪の鋳造素材からの加工比よりも大きいため、転動体の転動面に存在する非金属介在物は軌道輪の軌道面に存在する非金属介在物に比べて小さい。したがって、転動体においては非金属介在物と金属素地との間の界面も小さく、しかも浅いため、水素発生型の腐食反応の進行が抑制され、材料内部への水素吸収量も少ない。
等の理由が考えられる。
また、軌道輪に関し、回転輪の方が固定輪に比べて剥離発生頻度が少ないのは以下の理由によると考えられる。すなわち、一般に、回転輪においては、軌道面に形成された微小隙間に水分が浸入しても弾き飛ばされ易いため固定輪に比べて水素吸収量が少なく、したがって剥離発生頻度も少なくなると考えられる。但し、内輪と回転軸とがしばりばめにより嵌合されているときは、回転輪の軌道面には常時引張応力が作用するため、内輪が回転輪の場合であっても応力腐食が促進され、上記化学反応式2の化学反応が活発に進行して回転輪の水素吸収量も増加し、このため剥離の発生頻度も多くなる。特に、締代が回転軸の軸径の7/10000を超える場合やテーパ穴軸受をしばりばめで使用する場合は、回転輪の剥離発生頻度は固定輪の剥離発生頻度と同等か、又は同等以上に多いものとなる。尚、内輪が固定輪であって且つ該内輪と回転軸とがしばりばめにより嵌合されている場合はすきまばめにより嵌合されている場合に比べ、水素吸収量が多くなるのはいうまでもない。
また、転がり軸受においては、転動体の転動面と軌道輪の軌道面とが金属接触することに着目し、金属素地と非金属化合物との界面に形成される隙間内部の金属素地側をアノードとし、転動体の転動面における金属素地をカソードとして腐食形態を局部腐食から接触腐食に変更することが有効である。
転動体の転動面に存在する金属素地(以下「転動面金属素地」という)を軌道輪の軌道面に存在する金属素地(以下「軌道輪金属素地」という)よりも電気化学的に貴とすることにより、隙間内部の金属素地側をアノードとし、転動面の金属素地をカソードとすることができる。そして、これによりアノード反応は界面の金属素地側で起こる一方、カソード反応は転動面金属素地で起こり、しかも転動面上には周囲から酸素を容易に供給することができるので、化学反応式5、6に示すように、腐食反応は酸素消費型の腐食反応となり、軌道輪内部への水素吸収を抑制して水素脆化に伴う軸受寿命の低下を防止することができる。尚、この場合、隙間内部の炭化物はカソードであることに変わりはないが、炭化物上では、上述した如く水素脆化の原因となる化学反応式3が殆ど進行せず、主として化学反応式4の反応が進行するため、軌道輪内部への水素の吸収が生じることはない。
また、完全焼入・焼戻を施した軸受材料の残留オーステナイトの濃度を増加させることにより、安価にして電気化学的に貴となる金属素地を得ることができる。
残留オーステナイトの濃度を増加させる方法としては、以下のような方法がある。
〔残留オーステナイトの濃度を増加させる方法〕
(1)オーステナイトがマルテンサイトに変態する開始温度(Ms点)を調整する。
Ms点は素材鋼の化学成分や、浸炭又は浸炭窒化により付加される表面炭素濃度や表面窒素濃度、焼入処理前の金属組織、焼入温度、焼入処理時間、等により決定される。例えば、素材鋼のMn含有率が高くなればなるほど残留オーステナイトの濃度は高くなり、また焼入処理前に浸炭処理を施して既に残留オーステナイトの濃度が高くなっていればいるほど残留オーステナイトの濃度は高くなる。また、炭化物の粒径が小さければ小さい程、また焼入温度が高ければ高い程、更には焼入温度保持時間が長ければ長い程残留オーステナイトの濃度は高くなる。
(2)焼入時の冷却速度を調整する。
焼入時の冷却速度が遅いほど残留オーステナイトの濃度は高くなる。
(3)焼戻条件を調整する。
焼戻温度が低い程、また焼戻時の加熱温度が短い程、残留オーステナイトの濃度は高くなる。
(4)所謂サブゼロ処理の実施条件を検討する。
室温以下に深冷するサブゼロ処理の処理温度が高い程、またセブゼロ処理の処理時間が短い程、残留オーステナイトの濃度は高くなる。さらには、サブゼロ処理を実施しない方が残留オーステナイトの濃度は高くなる。
(5)ショットピーニング等の加工硬化処理を実施しない。
該ショットピーニングを実施しない場合は、実施した場合に比べ、残留オーステナイト濃度は高くなる。
また、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、軸受材料としてステンレス鋼(SUS440C)のような高合金鋼を使用して腐食反応を抑制することは、技術的に困難であり、また経済的にも不利であるため、軸受の素材鋼としては低合金鋼を使用するのが好ましい。例えば、各軸受部位の素材鋼としては、その化学成分が、例えば、C:0.10〜1.10wt%、Si:0.75wt%以下、Mn:1.70wt%以下、Cr:1.80wt%以下、Mo:1.50wt%以下、Ni:4.50wt%以下、Cu:0.30wt%以下、Al:0.050wt%以下、残部:Fe及び不可避不純物(O、S、Ti等)等からなる低合金鋼を使用し、素材鋼に所望の熱処理を施すことにより所望の表面硬さを有する軸受部位を得るのが効果的である。
また、軌道輪における腐食反応は、非金属介在物と金属素地との間に形成される微小隙間を起因として発生することから、該腐食を防止するためには非金属介在物の生成を抑制するのも好ましく、そのためには非金属介在物の構成成分である酸化物、硫化物やチタン化合物の生成原因となる酸素含有率を9ppm以下、イオウ含有率を50ppm以下、及びチタン含有率を40ppm以下にするのが望ましい。さらに、非金属介在物と金属素地との間の良好な密着性を得て、前記界面における微小隙間を生成を回避するためには、軸受材料の最終精錬法をESR法又はVAR法により行うのが望ましい。
〔第2の実施の形態〕
上記第1の実施の形態では、水素イオン指数pHを7〜13の範囲に設定することにより、軸受材料内部への水素吸収を抑制して水素脆化が生じるのを避け、これにより軸受寿命Lが低下するのを回避しているが、本第2の実施の形態では、潤滑剤中に有機金属塩又は無灰系ジアルキルジチオカルバミン酸(ADTC)を含有させて非金属介在物と金属素地との間に形成される微少隙間に強固な反応膜を形成し、これにより水素イオン指数pHが7以下であっても5以上であれば所望の軸受寿命Lを有する転がり軸受を得ることができるようにした。
潤滑剤の基油、増稠剤、pH調製剤については、上記第1の実施の形態と同様であり、以下、本第2の実施の形態の特徴である反応膜形成剤(有機金属塩又はADTC))及び水素イオン指数pHについて説明する。
(1)反応膜形成剤
反応膜形成剤に有機金属塩を使用した場合の作用効果について述べる。
有機金属塩は、従来より極圧剤や一部の酸化防止剤等として潤滑剤の添加剤に使用されているが、有機金属塩を含有した潤滑剤は軸受材料の鋼表面に化学的な反応膜を形成する。つまり、潤滑剤中に有機金属塩を含有することにより軸受材料の表面に存する非金属介在物と金属素地との間に形成された微少隙間に有機金属塩からなる強固な反応膜が形成される。そして、これにより金属間接触が防止されると共に摩擦係数が低下し、耐荷重性、耐焼付き性、耐摩耗性の向上を図ることができる。
また、特定の有機金属塩を潤滑剤中に含有させ、水素発生型の腐食反応が生じる前に上述した強固な反応膜を微少隙間に形成することにより、上記化学反応式2で示されるカソード反応の進行が抑制され、或いは軸受材料の表面に吸着した水素原子の軸受材料内部への拡散が防止され、これにより軸受材料の早期剥離を招来するのが回避されて軸受寿命Lの向上を図ることができる。
斯かる作用効果を奏する有機金属塩としては、一般式(5)で示されるジアルキルジチオカルバミン酸(DTC)系化合物や、一般式(6)で示されるジアルキルジチオリン酸(DTP)系化合物を使用することができる。
n=2、3、4、
x、y、z=0、1、2、3、4
ここで、Mは金属種を示し、具体的には、Sb、Bi、Sn、Ni、Te、Se、Fe、Cu、Mo又はZnが使用される。
7、R8は、同一基であっても異なる基であってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基を示す。そして、特に好ましい基としては、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルウンデカン基、1−メチルヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−ヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソプロピル基、イソヘプチル基、イソペンチル基、ウンデシル基、エイコシル基、エチル基、オクタデシル基、オクチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロペンチル基、ジメチルシクロヘキシル基、デシル基、テトラデシル基、ドコシル基、ドデシル基、トリデシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ノニル基、プロピル基、ヘキサデシル基、ヘキシル基、ヘニコシル基、ヘプタデシル基、ヘプチル基、ペンタデシル基、ペンチル基、メチル基、第三ブチルシクロヘキシル基、第三ブチル基、2−ヘキセニル基、2−メタリル基、アリル基、ウンデセニル基、オレイル基、デセニル基、ビニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタデセニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、第二ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、第三オクチルフェニル基、イソノニルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、フェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1,1−ジメチルベンジル基、2−フェニルイソプロピル基、3−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、ビフェニル基等があり、またこれらの基はエーテル結合を有してしてもよい。
また、その他の有機金属塩としては、一般式(7)〜(9)で示される有機亜鉛化合物も使用することができる。
ここで、R9、R10は、炭素数Cnがn=1〜18の炭化水素基又は水素原子を示し、R9、R10は同一の基であっても異なる基であってもよい。
特に、R9、R10が、共に水素原子であるメルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式(7))、ベンズアミドチオフェノール亜鉛(一般式(8))、及びメルカプトベンズイミダゾール亜鉛(一般式(3))を好適に使用することができる。
さらに、その他の有機金属塩としては、一般式(10)で示されるアルキルキサントゲン酸亜鉛も使用することができる。
ここで、R11は、炭素数Cnがn=1〜18の炭化水素基を示す。
尚、これら一般式(5)〜(10)で表される有機金属塩は、各々単独で又は2種以上混合して使用することができるが、組合わせ種については特に限定されるものではない。
また、上述した有機金属塩と同様の作用効果は、一般式(11)で示されるメチレンビスジアルキルジチオカルバミン酸等のADTCを使用しても得ることができる。
ここで、R12、R13は、炭素数Cnがn=1〜18の炭化水素基を示し、R12、R13は同一の基であっても異なる基であってもよい。
(2)反応膜形成剤の添加量
上述の如く有機金属塩又はADTCは微少隙間に反応膜を形成して腐食反応の進行を抑制する作用効果を有するが、含有率が0.1wt%未満では十分な効果を発揮することができない。一方、含有率の上限は特に限定する必要はないとも考えられるが、前記反応膜形成剤として使用される化合物は比較的高価であり、また反応膜形成剤の過剰な添加は軸受材料との反応を異常に促進して腐食や異常摩耗を招来する虞がある。したがって、このような点を考慮すると反応膜形成剤の含有率を10wt%以下に制限するのが好ましく、本実施の形態では反応膜形成剤の添加量を0.1〜10wt%に設定した。尚、該添加量のより好ましい範囲は、0.1〜5wt%である。
(3)水素イオン指数pH
有機金属塩又はADTCからなる反応膜形成剤を潤滑剤中に含有させることにより、水素イオン指数pHが7以下の酸性領域であっても軸受材料の早期剥離を防止することができるが、反応膜形成剤を添加したのみでは不十分である。すなわち、潤滑剤中に水分が混入している場合に引張応力による新たな微少隙間が発生したときは、微少隙間の発生直後から該微少隙間の入口付近で上述した水素発生型の腐食反応(化学反応式1〜4)が発生すると考えられるが、斯かる腐食反応は腐食生成物の発生と競争しながら進行する。このため、潤滑剤の水素イオン濃度が高い場合、換言すると水素イオン指数pHが低い場合は腐食生成物の生成速度が大きく、その結果反応膜が微少隙間に十分に形成されず、軸受材料内部への水素吸収を十分に抑制することができない。したがって、アルカリ性のpH調製剤を添加して水素イオン濃度を抑制する必要があり、本実施の形態では、十分な軸受の信頼性を満たすべく水素イオン指数pHの下限を5とした。
一方、合成油系基油の中でも最も潤滑特性に優れたポリオールエステル油を基油に使用した場合であっても、潤滑剤中に水分が混入し水素イオン指数pHが13を超えて高くなると基油が加水分解を起こして劣化する可能性がある。そこで、本実施の形態では斯かる不具合が生じるのを回避すべく、水素イオイ指数pHの上限を13に設定した。これらの理由から本第2の実施の形態では水素イオン指数pHの範囲を5〜13とした。
〔第3の実施の形態〕
本第3の実施の形態では、平均粒径が2μm以下の無機系化合物からなる微粒子を潤滑剤中に0.001〜3wt%含有させることにより、軌道面と転動面との間の油膜形成を良好にして軌道面と転動面との間の接線力を低減させた。そして、これにより微少隙間自体の発生が抑制され、転がり軸受の耐久性向上を図ることができる。
軸受部位の腐食進行を防止する方法としては、第1の実施の形態のように化学反応式2の進行を抑制する方法があるが、軌道面上の非金属介在物と金属素地との間で形成される微少隙間自体の生成を抑制することによっても軸受部位の腐食進行を効果的に防止することができる。
しかるに、転動面と軌道面との間の油膜形成を良好にすることにより、該転動面と軌道面との間における接線力を低減して微少隙間の生成を抑制することができる。
すなわち、転動面と軌道面との間に十分保持された油膜が形成されている場合は、該油膜が緩衝剤のような作用を呈して所謂ダンピング効果を示すことから共振等の振動レベルや転動体に負荷される最大荷重が軽減されることが知られており(非特許文献16)、このような潤滑剤のダンピング効果を増大させることにより、転動面と軌道面との間における接線力が低減し、前記微少隙間の生成を抑制することができる。
潤滑剤の基油、増稠剤、pH調製剤については、上記第1及び第2の実施の形態と同様であり、本第3の実施の形態の特徴である無機系化合物からなる微粒子及び水素イオン指数pHについて以下説明する。
(1)無機系化合物からなる微粒子の組成
無機系化合物からなる微粒子は、潤滑剤中に均一に分散しており、高速回転による大きな剪断応力を受けたり、或いは高温回転時に油膜が薄くなった場合であっても前記油膜中に介在する微粒子によって転動面と軌道面との接触面において油膜が強固に保持され、金属接触が回避されて軸受の焼付き寿命が向上する。
また、斯かる無機系化合物からなる微粒子は、繊維状の増稠剤内部に侵入することでゲル構造がより一層強固なものとなる。
無機系化合物としては、SiO2、Al23、MgO、TiO2、PZT(米国クレバイト社)、ZnO等の金属酸化物、Mg(OH)2、Al(OH)3、Ca(OH)2等の金属水酸化物、MgCO3、CaCO3等の金属炭酸化物又はこれらの水和物、Si34、ZrN、CrN、TiAlN等の金属窒化物、SiC、TiC、WC等の金属炭化物、ベントナイト、スメクタイト、雲母等の(合成)粘度鉱物、ダイヤモンド等を使用することができ、更には、MoS2、グラファイト、BN、WS2等の固体潤滑剤を使用することができる。
また、基油や増稠剤との親和性を改善するため、表面を親油性に改質した無機系化合物を使用するのも好ましく、上記無機系化合物の中では、該無機系化合物自身で増稠剤の作用を備える金属酸化物や粘度鉱物が、より一層好ましい。
(2)無機系化合物からなる微粒子の粒子径
無機系化合物からなる微粒子は、増稠剤が形成するゲル構造よりも微細であるため、上述したように繊維状の増稠剤内部に侵入することにより増稠剤のゲル構造をより一層強固なものとし、油膜の形成能力を大きくしたり、或いは潤滑剤のダンピング効果を増大させて軸受寿命Lの向上に寄与する。したがって、生産コストが高価なものとならない限り粒子径は小径であればあるほど好ましく、平均粒径が1μm以下の場合は良好な耐焼付き性を発揮することができる。さらに、焼付き寿命を考慮すると粒子径が基油の油膜よりも小さいことが望ましい。すなわち、転がり軸受に使用される基油の油膜は実際上は0.2μm以下であり、したがって、粒子径は0.2μm以下が好ましい範囲である。
一方、平均粒径が2μmを超える場合は、異物として作用する微粒子が増加し、軌道面や転動面の摩耗を促進して軸受の早期損傷を招来する原因となり、また軸受の音響特性を悪化させる虞がある。そこで、本実施の形態では、無機系化合物の粒子系を平均粒径で2μm以下、好ましくは0.2μm以下に限定した。
尚、微粒子の形状は、球形に近い程好ましいが、平均粒径が2μm以下であれば、立方体や直方体等の多面体や針状であっても一向に差し支えない。
(3)無機系化合物からなる微粒子の添加量
上述の如く、無機系化合物からなる微粒子の潤滑剤への添加は、軸受の耐久性向上に寄与するが、添加量が0.001wt%未満の場合は所期の効果を十分に得ることができず、一方、添加量が3wt%を超える場合は無機系化合物の粒子数が増大して摩耗が促進され、耐焼付き性に悪影響を及ぼす。そこで、本実施の形態では、無機系化合物からなる微粒子の添加量を0.001〜3wt%、好ましくは、0.005〜3wt%に限定した。
(4)水素イオン指数pH
平均粒径が2μm以下の無機系化合物からなる微粒子を潤滑剤中に含有させることにより油膜形成を良好なものとすることができ、これにより、水素イオン指数pHが7以下の酸性領域であっても軸受材料の早期剥離を防止することができるが、第2の実施の形態と同様、前記微粒子を添加したのみでは不十分である。すなわち、潤滑剤中に水分が混入している場合に引張応力による新たな微少隙間が発生したときは、微少隙間の発生直後から該微少隙間の入口付近で上述した水素発生型の腐食反応(化学反応式1〜4)が発生すると考えられるが、斯かる腐食反応は腐食生成物の発生と競争しながら進行する。このため、潤滑剤の水素イオン濃度が高い場合、換言すると水素イオン指数pHが低い場合は腐食生成物の生成速度が大きく、その結果強固な油膜が微少隙間に十分に形成されないため、軸受材料内部への水素吸収を十分に抑制することができない。したがって、第2の実施の形態と同様、水素イオン濃度を抑制する必要があり、本実施の形態では、十分な軸受の信頼性を満たすために水素イオン指数pHの下限を5とした。
一方、第2の実施の形態でも述べたように、潤滑剤中に水分が混入し、水素イオン指数pHが13を超えて高くなると基油が加水分解を起こして劣化する可能性がある。そこで、本実施の形態では斯かる不具合が生じるのを回避すべく、水素イオイ指数pHの上限を13とした。これらの理由から本第3の実施の形態では、水素イオン指数pHの範囲を5〜13に設定した。
〔第4の実施の形態〕
上記第3の実施の形態では、増稠剤について特に限定しなかったが、本第4の実施の形態では潤滑剤に無機系化合物を添加する代わりに、芳香族アミンを含有したジウレア化合物(以下、「芳香族系ジウレア化合物」という)又は芳香族系ジウレア化合物と芳香族アミンを含有しないジウレア化合物(以下、「非芳香族系ジウレア化合物」という)との混合物を増稠剤として使用することによっても、油膜の形成を良好なものとして所望の軸受寿命Lを有する転がり軸受を得ることができる。
すなわち、第3の実施の形態で記した文献7からも明らかなように、転動面と軌道面との間に十分保持された油膜が形成されている場合は、該油膜が所謂ダンピング効果を示すことから共振等の振動レベルや転動体に負荷される最大荷重が軽減されることが知られており、また、増稠剤の組成により形成するゲル構造の強さが異なる。そして、斯かるゲル構造をより強固なものとすると転動面と軌道面との間の油膜の形成能力が大きくなり、その結果油膜が軌道面と転動面との間の接線力を低減し、非金属介在物と金属素地との間の界面における微少隙間の形成がなされにくくなり、転がり軸受の転がり疲れを改善することができる。
そして、芳香族系ジウレア化合物又は該芳香族系ジウレア化合物と非芳香族系ジウレア化合物との混合物からなる増稠剤は、ゲル構造を一層強固なものとし、転がり疲れ寿命を改善することができる。
すなわち、ジウレア化合物は、ジイソシアネート類とモノアミン類とを所定条件下、反応させて得られるが、芳香族系ジウレア化合物は一般式(12)又は(13)で示され、非芳香族系ジウレア化合物は一般式(14)で示される。
ここで、R14は芳香族アミン残基であって、炭素数Cnがn=7〜12の芳香族環含有炭化水素基で構成され、具体的には、トルオイル基、キシリル基、β−フェンシル基、t−ブチルフェニル基、ドデシルフェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基等がある。
16は非芳香族アミン残基であって、シクロヘキシル基、炭素数Cnがn=7〜12のアルキルシクロヘキシル基、又は炭素数Cnがn=8〜20の直鎖アルキル基を示し、具体的には、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1−メチル−3−プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ペンチルメチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基、エチル基、ブチル基、オクチル基等があり、特にメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基を使用するのが好ましい。
15はジイソシアネート残基であって、炭素数Cnがn=6〜15の2価の芳香族環含有炭化水素基で構成され、具体的には一般式(15)〜(17)に示す基が使用される。
また、芳香族アミン残基R14と非芳香族アミン残基R16との関係については、本発明の実施の形態では、芳香族環状モル比率Zを数式(I)の如く定義し、該芳香族環モル比率Zが0.5〜0.95に設定されている。
Z=R14のモル数/(R14のモル数+R16のモル数) …(I)
すなわち、芳香族環モル比率Zが0.5未満の場合は潤滑剤が外部に漏洩し易くなって潤滑剤の耐漏洩性を確保することができず、芳香族環モル比率Zが0.95を超えると流動性が低下して耐焼付き性の低下を招く。したがって、本実施の形態では、芳香族環モル比率Zを0.5〜0.95の範囲に設定し、そのためには、一般式(12)〜(14)で示される化合物を適宜混合して作製することができる。
尚、非芳香族アミン残基R16が上記アルキルシクロヘキシル基の場合は、芳香族環モル比率Zは0.65〜0.85が好ましく、非芳香族アミン残基R16が上記直鎖アルキル基の場合は、芳香族環モル比率Zは0.70〜0.95が好ましい。
また、増稠剤の潤滑剤中の含有率が8wt%未満の場合は、ゲル化能力が不足して十分な硬さを得ることができず、潤滑剤の漏れも多くなる。一方、前記含有率が35wt%を超える場合は高温・高速での耐久性が著しく悪化する。このため、本実施の形態では、増稠剤の潤滑剤中の含有率を8〜35wt%に限定した。尚、好ましい範囲は17〜33wt%である。
尚、前述の一般式(12)〜(14)において、一般式(12)で示されるジウレア化合物としては、例えば、構造式(18)、(19)で示される化合物があり、一般式(13)で示されるジウレア化合物としては、例えば、構造式(21)〜(23)で示される化合物があり、一般式(14)で示されるジウレア化合物としては、例えば、構造式(24)〜(27)で示される化合物がある。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔第1の実施例〕
本願出願人は、軸受材料として高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)を使用し、焼入・焼戻処理(浸漬焼入)を施して軸受部材を作製した。そして、該軸受材料を使用して接触ゴムシール付きの深溝玉軸受を組み立て、転動体と軌道輪とで画成される環状空間に水素イオン指数pHの異なるグリースを封入し、自動車エンジンのオルタネータのプーリ側軸受として試験機に組み込み、耐久寿命試験を行った。尚、保持器は、プラスチック製の成形品を使用し、内輪を回転輪とし、外輪を固定輪とした。
軸受仕様は以下の通りである。
〔軸受仕様〕
呼び番号 : 6303強化形
外輪の外径D : φ47mm
内輪の内径d : φ17mm
組立幅t : 14mm
基本動定格荷重C : 13500N
ロックウェルC硬さHRC
軌道輪 : 62
転動体 : 63
残留オーステナイト濃度γR
軌道輪の軌道面 : 10vol%
転動体の転動面 : 9vol%
残留オーステナイト偏差ΔγR : +1vol%
尚、残留オーステナイト偏差ΔγRは、軌道輪の軌道面における残留オーステナイト濃度から転動体の転動面における残留オーステナイト濃度を減算したものである。尚、内輪と外輪とで残留オーステナイト濃度に差があるときは、高い方の値を用いて上記偏差ΔγRを算出する。
表1は本耐久寿命試験に供されたグリースの仕様と耐久寿命試験の試験結果を示している。
表1の実施例1、2、5、及び比較例51において、増稠剤として使用されているジウレア化合物Aは、ジイソシアネート残基R2がジフェニルメチル基からなる4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、アミン残基R1、R3がシクロヘキシル基からなるシクロヘキシルアミン(CHA)とがモル比で1:2となるように配合して作製されている。
また、実施例3、4、6〜8、及び比較例52〜54において、増稠剤として使用されているジウレア化合物Bは、MDIとシクロヘキシルアミン(CHA)及びステアリルアミン(StA)とが夫々モル比で1:1:1となるように配合して作製したものである。尚、ジウレア化合物Bにおいては、ジイソシアネート残基R2はジフェニルメチル基、アミン残基R1はシクロヘキシル基、アミン残基R3はオクタドデシル基(ステアリル基)である。
また、基油としては、実施例1〜3、6〜8及び比較例51は、40℃における動粘度が48mm2/secのポリαオレフィン(PAO)を使用し、実施例4、5及び比較例52〜54は、40℃における動粘度が100mm2/secのジアルキルジフェニルエーテル(DAPE)を使用した。
グリースの作製方法は特に限定されるものではないが、本実施例では以下のようにして作製した。
まず、基油に所定量のMDIを添加して反応に必要な所定温度(70〜80℃)に保持し、これに所定量のステアリルアミン(StA)又は/及びシクロヘキシルアミン(CHA)を添加して反応させ、さらに該反応物を攪拌しながら温度160℃まで加熱すると共に、酸化防止剤としての0.5wt%の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール誘導体を添加し、その後、室温付近(約20℃)まで攪拌しながら放冷する。そして、斯かる放冷過程において、予め分散又は溶解させた防錆剤としての3wt%のジノリルナフタレンスルホン酸バリウムを添加し、所定のpH調製剤を添加した。最後に、室温付近にまで冷却された生成物をロールミルで粉砕しグリースを得た。
pH調製剤としては、実施例1、比較例53、54はオクチルアミン(OcA)を使用し、実施例2はステアリルアミン(StA)を使用した。また、実施例3はNa2CO3を使用し、実施例4は炭酸カリウム(K2CO3)を使用した。さらに、実施例5、6はステアリン酸リチウム(StLi)を使用し、実施例7、8はNaOHを使用した。また、比較例51、52についてはpH調製剤を添加しなかった。
尚、水素イオン指数pHは以下の方法で測定した。すなわち、トルエンと2−プロパノールと水が体積比でトルエン:2−プロパノール:水=500:495:5に調整された溶剤を作製し、次いで25℃において前記作製されたグリース0.1gを前記溶剤50mlに溶かした後、該溶剤の水素イオン指数pHをpHメータで測定し、該測定値をグリースの水素イオン指数pHとした。
表1中の混和稠度はグリースの軟らかさを表示する値であり、本実施例では密封軸受用に好適したものとなるように、NLGIグレードで混和稠度がNo.2(265〜295)、No.3(220〜250)となるように基油と増稠剤の混合割合を調製した。
耐久寿命試験の試験条件は以下の通りである。
〔耐久寿命試験〕
試験荷重F :1890N
回転軸の平均回転数n :8000rpm(2000〜14000rpm)
潤滑剤 :特性グリース
グリース量 :2.3g
耐久寿命試験装置については、図示は省略するが、試験荷重はプーリに懸架された駆動ベルトの張力とされており、該駆動ベルトの張力がプーリに負荷される。また、該負荷された荷重がプーリ側軸受と反プーリ側軸受とで受けるように構成されており、プーリ側軸受の受ける荷重が試験荷重である1890Nとなるように前記駆動ベルトの張力が調節されている。
回転軸の回転速度は、2000rpmから14000rpmまでに加速する加速時間、及び14000rpmから2000rpmまでに減速する減速時間を共に30秒とし、2000rpm〜14000rpmの間で繰り返し運転を行った。
尚、本実施例では、潤滑剤への水分添加は行わなかったが、潤滑剤は大気中より吸湿するため、外部から潤滑剤に水分が混入しなくとも或る程度の水分を含有する。このため、耐久試験前に潤滑剤に含有する水分量をカールフィッシャー法で計測したところ、表1に示すように、0.08〜0.15wt%であった。
寿命試験は、実施例1〜8及び比較例51〜54の各軸受を各5個宛作製して行い、最初に剥離した軸受の運転時間を軸受寿命Lとし、軸受の定格寿命L10と比較して軸受の耐久寿命を評価した。
軸受の定格寿命L10とは、同一サイズの同一ロットの軸受を同一条件で回転させたとき、その全数のうちの90%の個数の軸受が転がり疲れによる剥離を起こさないで回転させることができる総回転数に相当する計算時間をいい、深溝玉軸受の場合、基本動定格荷重C(N)、試験荷重F(N)、回転軸の回転数n(rpm)から数式(II)で示される。
10=(C/F)3×106/(60n)…(II)
素材鋼や加工に関する現代技術を利用して作製した軸受は、転動体の転動面及び軌道輪の軌道面間に十分な油膜が形成されているときは定格寿命L10以下の運転時間で剥離することは皆無であると考えられている。
したがって、潤滑剤中に水分を含有している場合であっても、転がり軸受の耐久性評価としては少なくとも定格寿命L10を満足する必要がある。すなわち、外部から潤滑剤に水分が混入した場合のみならず、外部から軸受内部に水分が混入しなくとも振動の影響等により潤滑剤中の水分の影響を大きく受ける状況で使用される場合は、定格寿命L10以下の運転時間で剥離の発生することが多い。したがって、耐久性評価としては剥離の発生する時間が少なくとも定格寿命L10以上である必要がある。本実施例の場合、基本動定格荷重C=135000N、試験荷重F=1890N、回転軸の平均回転数n=8000rpmであるから、数式(II)より軸受の定格寿命L10は759時間であり、剥離発生までの寿命時間が定格寿命L10を超えるか否かが基準となる。
表1の比較例51〜54から明らかなように、グリースの水素イオン指数pHが小さく酸性の場合はいずれも定格寿命L10に到達するまでに軸受部材に剥離が発生する。そして、水素イオン指数pHが大きくなるに伴い、剥離特性は改善されるものの、比較例51〜54においてはグリースの水素イオン指数pHが6.9以下であるため、全ての試験片については定格寿命L10以上の軸受寿命Lを得ることができず、耐久性を確実には満足させることはできない。
これに対して、実施例1〜8は、水素イオン指数pHがいずれも7〜13の範囲にあり、全ての試験片について定格寿命L10以上の軸受寿命Lを得ることができ、所望の耐久性を満足させ得ることが判る。
また、本願出願人は、実施例7及び比較例53、54に関し、残留オーステナイト偏差ΔγRがΔγR<0となるように、残留オーステナイトの濃度が11vol%の転動体と交換し、その他の条件を同一にして上述と同様の耐久寿命試験を行ったところ、実施例7及び比較例54に対応する実施例7’及び比較例54’の試験軸受は夫々5個全てが定格寿命L10を経過しても剥離が発生しなかった。
これに対して、比較例53に対応する比較例53’は試験軸受中、3個については定格寿命L10を経過しても剥離が発生しなかったものの、残り2個は1個が688時間で剥離し、他の1個は640時間で剥離した。
このように残留オーステナイト偏差ΔγRをΔγR<0に設定した場合は、ΔγR≧0の場合に比べ、水素イオン指数pHが多少小さくても定格寿命L10を超える軸受寿命Lを得ることができることが判る。
〔第2の実施例〕
本願出願人は、第2の実施例として、有機金属塩又はADTCを添加すると共にpH調製剤により水素イオン指数pHを調製した複数種のグリースを作製し、第1の実施例と同様、斯く作製されたグリースを深溝玉軸受の内部に封入して耐久寿命試験を行なった。
本第2の実施例では、以下のようにしてグリースを作製した。
まず、基油として40℃における動粘度が48mm2/secのポリαオレフィン(PAO)を使用し、増稠剤としてのジウレア化合物の添加量が15wt%となるように調製した。すなわち、基油としてのPAOにMDIを添加した溶液を反応に必要な所定温度(70〜80℃)に保持し、次いでMD11モルに対してシクロヘキシルアミン(CHA)1モル、オクタデシルアミン1モルとなるようにこれらシクロヘキシルアミン(CHA)及びオクタデシルアミンを溶液に添加して反応させた。
そしてその後、該反応物を攪拌しながら温度160℃まで加熱すると共に、酸化防止剤としての0.5wt%の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール誘導体を添加し、その後、室温付近(約20℃)まで攪拌しながら放冷する。そして、斯かる放冷過程において、予め分散又は溶解させた防錆剤としての3wt%のジノリルナフタレンスルホン酸バリウムを添加し、所定のpH調製剤及び所定の有機金属塩又はADTCを添加した。最後に、室温付近にまで冷却された生成物をロールミルで粉砕しグリースを得た。
上記グリースは、密封軸受用に好適したものとなるように、混和稠度がNLGIグレードでNo.2(265〜295)となるように調製した。
尚、軸受仕様及び耐久寿命試験の試験条件は第1の実施例と同様であり、また、水素イオン指数pHの測定方法も第1の実施例と同様であるため、説明を省略する。
表2は本耐久寿命試験に供されたグリースの仕様と耐久寿命試験の試験結果を示す。
pH調製剤としては、実施例11はオクチルアミン(OcA)、実施例12〜14はステアリルアミン(StA)、実施例15、16はオクタン酸ナトリウム(OcNa)、実施例17は炭酸カリウム(K2CO3)を使用し、比較例61、62はpH調製剤を添加しなかった。
反応膜形成剤としては、実施例11〜16及び比較例62は有機金属塩を使用した。すなわち、実施例11はジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を使用し、実施例12はジアルキルジチオカルバミン酸ニッケル(NiDTC)を使用した。また、実施例13はMoDTCとジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)を使用し、実施例14はMoDTCとジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を使用した。さらに、実施例15はジアルキルジチオカルバミン酸アンチモン(SbDTC)を使用し、実施例16はジアルキルジチオカルバミン酸ビスマス(BiDTC)を使用し、比較例62はジアルキルジチオカルバミン酸テルル(TeDTC)を使用した。また、実施例17はADTCを使用した。
表2から明らかなように、比較例61では反応膜形成剤が添加されておらず、しかも水素イオン指数pHが3.2と低いため、水素発生型腐食反応におけるカソード反応の進行を抑制することができず、定格寿命L10(=759時間)を満たす試験片は皆無である。しかも、極端に短時間で剥離が発生する試験片も存在する。また、比較例62では有機金属塩を添加しているため或る程度の耐久性改善は認められるが、一部の試験片では定格寿命L10以下で剥離が発生している。尚、比較例62中、△の試験片は寿命試験では大きな損傷はなかったが試験後調査したところ軽微な剥離が認められた。
これに対して実施例11〜17は、水素イオン指数pHが5.2〜5.7といずれも5以上に調製されており、また1.0〜3.0wt%の反応膜形成剤(有機金属塩又はADTC)が添加されている場合であり、全ての試験片について定格寿命L10以上の軸受寿命Lを得ることができ、所望の耐久性を満足させ得ることが判る。
次に、本願出願人は、pH調製剤として0.01wt%のStAをグリースに添加して水素イオン指数pHを5.1〜5.3に調製する一方、反応膜形成剤としてのTeDTCの添加量が異なるグリースを作製し、反応膜形成剤の添加量と軸受剥離(軸受寿命L)との関係を調べた。
すなわち、水素イオン指数pHを5.1〜5.3に調製すると共に、TeDTCの添加量が異なるグリースを作製し、上述した深溝玉軸受に該グリースを封入して耐久寿命試験を行い、反応膜形成剤の添加量と軸受剥離(軸受寿命L)との関係を調べた。
図1は反応膜形成剤としてのTeDTCと軸受剥離との関係を示す特性図であって、耐久試験に供された試験片は各々4個宛である。
この図1から明らかなように、添加量が0.07wt%を超えた時点から試験片の定格寿命L10が向上し始め、0.1wt%以上の添加量で軸受寿命Lに対する効果が十分なものとなることが判る。
また、有機金属塩として1wt%のZnDTCをグリースに添加する一方、pH調製剤としてのOcAを添加量を変えて、水素イオン指数pHの異なるグリースを作製し、水素イオン指数pHと軸受剥離(軸受寿命L)との関係を調べた。
すなわち、同一種類及び同一添加量の反応膜形成剤を含有すると共に、水素イオン指数pHが異なるグリースを作製し、上述した深溝玉軸受に該グリースを封入して耐久寿命試験を行い、水素イオン指数pHと軸受剥離(軸受寿命L)との関係を調べた。
図2はグリースの水素イオン指数pHと軸受剥離との関係を示す特性図であって、耐久試験に供された試験片は各々4個宛である。
この図2から明らかなように、水素イオン指数pHが4以下では試験片の半数が定格寿命L10以下で剥離し、水素イオン指数pHが4.4程度で軸受寿命Lは向上の兆しを見せ、水素イオン指数pHが5.1以上で定格寿命L10を超える軸受寿命Lを有する転がり軸受を得ることができる。
〔第3の実施例〕
本願出願人は、第3の実施例として、平均粒径2μm以下の無機系化合物からなる微粒子を添加すると共にpH調製剤により水素イオン指数pHを調製した複数種のグリースを作製し、第1及び第2の実施例と同様、斯く作製されたグリースを深溝玉軸受の内部に封入して耐久寿命試験を行なった。
表3は本耐久寿命試験に供されたグリースの仕様と耐久寿命試験の試験結果を示す。
本第3の実施例では、増稠剤は第1の実施例と同様、ジウレア化合物A又はジウレア化合物Bを使用し、基油も第1の実施例と同様、PAO又はDAPEを使用した。
そして、基油と増稠剤を添加して反応させ、反応物を攪拌しながら160℃まで加熱し、さらに酸化防止剤を添加して十分に攪拌し、放冷過程が防錆剤や所定のpH調製剤及び平均粒径が2μm以下の無機系化合物としての金属酸化物を所定量添加し、室温付近まで冷却した後、生成物をロールミルで粉砕しグリースを得た。
pH調製剤としては、実施例21及び比較例72ではK2CO3を使用し、実施例22及び実施例26ではOcAを使用し、実施例25ではStAを使用した。また、実施例23及び比較例73ではステアリン酸ナトリウム(StNa)を使用し、実施例24ではオクタン酸ナトリウム(OcNa)を使用した。
無機系化合物としての金属酸化物は、実施例26はAl23を使用し、その他はMgOを使用した。
上記グリースは、密封軸受用に好適したものとして、混和稠度がNLGIグレードでNo.2(265〜295)又はNo.3(220〜250)となるように調製した。
尚、軸受仕様及び耐久寿命試験の試験条件は第1の実施例と同様であり、また水素イオン指数pHの測定方法も第1の実施例と同様であるため、説明を省略する。また、各実施例及び比較例の試験片は4個である。
この表3から明らかなように、比較例71では無機系化合物を添加しておらず、しかも水素イオン指数pHが3.9と低いため、水素発生型腐食反応におけるカソード反応(化学反応式2)の進行を抑制することができず、定格寿命L10(=759時間)を満たす試験片は皆無であり、しかも極端に短時間で剥離が発生する試験片も存在する。また、比較例72、73は、MgOの微粒子が添加されているため或る程度の耐久性の改善は認められるが、全ての試験片で定格寿命L10を超える軸受寿命Lを得ることはできない。
これに対して実施例21〜26は、水素イオン指数pHが5.2〜6.0といずれも5以上に調製されており、また0.001〜1.0wt%の金属酸化物が添加されており、全ての試験片について定格寿命L10以上の軸受寿命Lを得ることができ、所望の耐久性を満足させ得ることが判る。
〔第4の実施例〕
本願出願人は、第4の実施例として、芳香族アミンを含有したジウレア化合物を増稠剤として添加すると共にpH調製剤により水素イオン指数pHを調製した複数種のグリースを作製し、斯く作製されたグリースを深溝玉軸受の内部に封入して耐久寿命試験及びグリース漏洩試験を行なった。
表4は本第4の実施例で作製されたグリースの仕様を示している。
本第4の実施例では、増稠剤として、ジイソシアネート残基R15がトリル基からなるトリレンジイソシアネート(TDI)又はジフェニルメチル基からなるMDIを使用した。また、芳香族アミン残基R14はトリル基からなるp−トルイジン又はフェニル基からなるアニリンを使用し(R14成分)、非芳香族残基R16はシクロヘキシル基からなるシクロヘキシルアミン(CHA)或いは直鎖アルキル基からなるステアリルアミン(StA)又はオクチルアミン(OcA)を使用した(R16成分)。
また、基油としては、DAPE、PAO、ジエステル、ポリオールエステル、鉱油を使用した。
そして、TDI又はMDIを基油に添加して所定温度(70〜80℃)に保持した後、芳香族環モル比率Zが所定比率となるように芳香族アミン残基R14と非芳香族アミン残基R16とを配合した化合物を所定量添加して反応させ、さらに該反応物を攪拌しながら温度160℃まで加熱すると共に酸化防止剤を添加し、その後、室温付近(約20℃)まで攪拌しながら放冷する。そして、斯かる放冷過程において、防錆剤及び所定のpH調製剤を添加した。最後に、室温付近にまで冷却された生成物をロールミルで粉砕しグリースを得た。
pH調製剤としては、K2CO3、OcNa、OcA、StNa、NaOH、StAを使用した。
また、上記グリースは、混和稠度が200〜300程度となるように基油と増稠剤の割合を調合して作製した。
次に、上記グリースの水素イオン指数pHを測定し、その後、該グリースを深溝玉軸受の内部に封入して耐久寿命試験及びグリース漏洩試験を行なった。
表5は上記グリースの水素イオン指数pHと耐久寿命試験及びグリース漏洩試験の試験結果を示している。
尚、水素イオン指数pHの測定方法、軸受仕様及び耐久寿命試験の試験条件は第1〜第3の実施例と同様であり、また、各実施例及び比較例の試験片は4個である。
この表5から明らかなように、比較例81及び比較例82では芳香族アミンを含有したジウレア化合物が増稠剤として潤滑剤に添加されているため、一部の試験片では定格寿命L10を満足するものも存在し得る。しかしながら、水素イオン指数pHが4.2又は4.8と低く、全ての試験片で定格寿命L10を超える軸受寿命Lを得ることはできない。
これに対して実施例31〜41は、芳香族アミンを含有したジウレア化合物が増稠剤として潤滑剤に添加され、しかも水素イオン指数pHが5.1〜8.0といずれも5以上に調製されているため、全ての試験片について定格寿命L10以上の軸受寿命Lを得ることができ、所望の耐久性を満足させ得ることが判る。
次に、グリースの漏洩試験について述べる。
グリース漏洩試験は、接触ゴムシール付きの深溝玉軸受にグリースを封入して下記の条件で行い、試験終了時までに漏洩したグリース量を測定し、グリースの初期封入量に対する漏洩量が10wt%未満を合格品と判定した。尚、試験片は各々4個宛である。
〔グリース漏洩試験〕
軸受仕様 :呼び番号 6301(深溝玉軸受)
外輪の外径D :φ37mm
内輪の内径d :φ12mm
組立幅t :12mm
グリースの初期封入量 :1.6g
外輪回転速度 :14000rpm
内輪温度 :160℃
ラジアル荷重 :141kgf
運転時間 :20hr
表5から明らかなように、実施例40及び41はグリースの水素イオン指数pHについては5以上であるため軸受寿命Lについては満足すべき結果を得たが、芳香族環モル比率Zが0.30又は0.40と低いため、グリースが高温で軟化してその漏洩量が10wt%を超えている。
これに対して、実施例31〜39及び比較例81、82は芳香族環モル比率Zが0.5以上であるためグリースの漏洩は認められなかった。これにより、実施例31〜39は、軸受寿命L及びグリースの耐漏洩性の双方を満たす優れた転がり軸受を得ることができることが判る。
図3はジウレア化合物の添加量(wt%)と芳香族環モル比率Zとの関係を示した特性図である。
添加量が8wt%未満の場合はゲル化能力が不足するため、十分な硬さが得られず高温でグリース漏れが生じる虞がある一方で、添加量が35wt%を超えると高温・高速時の耐久性が悪化する虞がある。また、上述したように芳香族環モル比率Zが0.5未満の場合はグリースが軸受外部に漏れ易くなって十分な耐漏洩性を得ることができない虞がある一方で、芳香族環モル比率Zが0.95を超える場合は、グリースの流動性が低下するため、早期に焼付損傷を生じる虞がある。
したがって、ジウレア化合物については、領域Aで示す添加量が8〜35wt%であって且つ芳香族環モル比率Zが0.5〜0.95であることが好ましい。また、表4の測定結果よりR16成分としてシクロヘキシルアミン(CHA)を使用した場合は芳香族環モル比率Zが領域Bで示す0.65〜0.85が好ましく、R16成分としてステアリルアミン(StA)やオクチルアミン(OcA)等の直鎖アルキル基を使用した場合は芳香族環モル比率Zが領域Bで示す0.70〜0.95が好ましく、また、ジウレア化合物の添加量のより好ましい範囲は、17〜33wt%である。
第2の実施例におけるTeDTCの添加量と剥離寿命との関係を示す特性図である。 第2の実施例における水素イオン指数pHと剥離寿命との関係を示す特性図である。 第4の実施例におけるジウレア化合物の添加量と芳香族環モル比率Zとの関係を示す特性図である。

Claims (1)

  1. 外輪と内輪とからなる軌道輪と、前記外輪と前記内輪との間に転動自在に配設された転動体とを備え、前記転動体と前記軌道輪とで画成される環状空間に潤滑剤が封入された転がり軸受において、
    前記潤滑剤の水素イオン指数pHが、7〜13に設定されていることを特徴とする転がり軸受。
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