[go: up one dir, main page]

JP7445127B2 - Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7445127B2
JP7445127B2 JP2020075366A JP2020075366A JP7445127B2 JP 7445127 B2 JP7445127 B2 JP 7445127B2 JP 2020075366 A JP2020075366 A JP 2020075366A JP 2020075366 A JP2020075366 A JP 2020075366A JP 7445127 B2 JP7445127 B2 JP 7445127B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel plate
bainite
temperature
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020075366A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021172833A (ja
Inventor
遼太郎 白石
弘宜 若松
康浩 篠原
勝己 榑林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2020075366A priority Critical patent/JP7445127B2/ja
Publication of JP2021172833A publication Critical patent/JP2021172833A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7445127B2 publication Critical patent/JP7445127B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、LPG貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法に関する。
液化石油ガス(以下、「LPG」と記載する。)は、硫化水素(HS)等の腐食性ガスを含む。このため、LPG貯蔵タンクは、通常、湿潤硫化水素環境下で使用され、HSに起因した硫化物応力腐食割れ(「Sulfide Stress Cracking」ともいう。以下、「SSC」と記載する。)が発生することがある。
通常、LPGタンクは、製造の際、溶接を行う。溶接を行った場合、溶接金属および溶接熱の影響を受ける溶接熱影響部(「Heat Affected Zone」ともいう。以下、「HAZ」と記載する。)は、SSCが発生しやすくなる。特に、HAZにおいて、溶接熱の入熱により硬さが増加することに起因して、顕著にSSCが発生しやすくなる。このため、SSCを抑制するために、硬さを低減することが有効である。
その一方、硬さを低減することで、LPGタンクに要求される強度および靭性を確保できなくなるという問題がある。このように、耐SSC性と、鋼の強度および靭性とは相反する特性であることから、これら特性を両立させるため、種々の鋼が開発されている。
例えば、特許文献1には、優れた低温靭性と、優れた耐SSC性とを有するHT720級の強度の鋼板が開示されている。特許文献1では、上記鋼板を得るべく、HAZの金属組織を最適なマルテンサイトと下部ベイナイトとの混合組織とするため、化学組成を制御している。具体的には、化学組成について、{4.10×Mn(%)+2.33×Cr(%)+3.14×Mo(%)}で計算される値が9.0以上13以下を満足するよう制御している。
特許文献2には、溶接部の耐SSC性および低温靱性を向上させたHT730級の高張力鋼板が開示されている。上記鋼板を得るために、特許文献2では、鋼板断面における表面から板厚の1/4の部分および裏面から板厚の1/4の部分における旧γ粒界の密度を制御している。
特許文献3には、HT780級の強度を有し、耐SSC性と低温靭性とを両立させた鋼板が開示されている。上記鋼板を得るために、特許文献3では、鋼板の1/4t位置および1/2t位置における旧γ粒径のアスペクト比および厚さ方向の大傾角粒径を制御している。
特開2002-339037号公報 特開2002-371336号公報 特開2017-8343号公報
LPG貯蔵用タンクに用いられる鋼には、より効率的にLPGを貯蔵するため、さらなる高強度化、および厚さを厚くする厚肉化が要求されている。しかしながら、耐SSC性および靭性を確保した上で、鋼の高強度化および肉厚化を実現することは難しい。例えば、鋼を高強度化しようとすると、耐SSC性が低下するからである。
特許文献1および2で開示された鋼板は、引張強さが720~730MPa級であるため、さらなる高強度化という点から言えば検討の余地がある。同様に、厚肉化という点についても、検討の余地がある。
また、特許文献3に開示された鋼板は、引張強さが780MPa級の高強度であるものの、板厚が40mm未満を想定していることから、厚肉化という点で検討の余地がある。このように、耐SSC性と靭性とを両立させながらも、鋼の高強度化および厚肉化することは難しいという課題がある。
本発明は、上記の課題を解決し、良好な耐SSC性および低温靭性を有し、かつ高強度で厚肉の鋼板を得ることを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のLPG貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.06~0.15%、
Si:0.01~0.10%、
Mn:0.50~1.40%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Ni:0.10%以下、
Ti:0.005~0.040%、
Al:0.005~0.050%、
N:0.0005~0.0100%、
Nb:0.005~0.050%、
Cr:0.50~1.50%、
Mo:0.10~0.50%、
V:0.01~0.10%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で表されるVc90が、1.0~5.0であり、
板厚中心部における金属組織が、
面積率で、97%以上のベイナイトを含み、かつ島状マルテンサイトが、面積率で、0.1%以下であり、セメンタイトの平均粒径が0.5μm以下であり、
観察された全てのベイナイト粒の中で、粒径の大きさが大きい順に上位10個のベイナイト粒を選択したときに、当該10個のベイナイト粒の平均粒径が30μm以下であり、
引張強さが、770~940MPaであり、
板厚が、55~80mmである、LPG貯蔵タンク用鋼板。
log(Vc90)=2.94-0.75×(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.8Cr+5Mo) ・・・(i)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.50%以下、および
B:0.0050%以下、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)に記載のLPG貯蔵タンク用鋼板。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
Ca:0.0050%以下、および
Mg:0.0050%以下、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)または(2)に記載のLPG貯蔵タンク用鋼板。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の鋼板を製造する方法であって、
(a)厚さが200mm以上であるスラブを、1000~1200℃で加熱し、熱間圧延を行った後、室温まで冷却し、鋼板とする工程と、
(b)前記鋼板をAc点以上1000℃以下の温度に加熱し、均熱保持した後、前記鋼板の板厚中心部における冷却速度を5℃/s以上として、200℃以下まで冷却する工程と、
(c)前記鋼板を500℃以上700℃以下の温度に加熱し、15分以上均熱保持した後、冷却する工程と、
を有し、
前記(a)において、圧延中の最終3パスを、スラブ表面温度が750~900℃の温度域で、累積圧下率が30%以上で圧延する、LPG貯蔵タンク用鋼板の製造方法。
本発明によれば、良好な耐SSC性および低温靭性を有し、かつ高強度で厚肉の鋼板を得ることができる。
本発明者らは、良好な耐SSC性および低温靭性を有し、引張強さが780MPa以上で、板厚55mm以上の鋼板について、以下の検討を行った。
(a)鋼板の強度を向上させるためには、C含有量を高めることが有効である。しかしながら、C含有量を過剰であると、溶接の際、鋼板表面付近が硬化し、耐SSC性が低下する。このため、C含有量を高めるのではなく、合金成分を調整し、焼入性を高めることで強度を向上させるのが望ましい。溶接に起因した表面付近の硬化を抑止し、耐SSC性の低下を抑制できるからである。
(b)一方で、LPG貯蔵タンク用鋼板には、低温靭性も要求される。一般にNiを添加すると、低温靭性が向上することが知られている。Niを添加することで、転位が動きやすくなり、降伏応力が低下する。この結果、破壊応力に到達する前に塑性変形が生じるため、低温靭性が向上する。
しかしながら、Ni添加は、硫化水素環境下において表層に微細な割れを発生させ、耐SSC性を著しく低下させる。したがって、Niを添加することなく、低温靭性を確保する必要がある。そこで、鋼板の板厚中心部の金属組織が、微細なベイナイトの組織となるように組織制御を行うのが望ましい。
(c)金属組織をベイナイトの組織とする場合、ベイナイトの組織中にセメンタイトが発生することは避けられない。そして、セメンタイトの粒径が大きくなると、セメンタイトを起点として割れが生じやすくなり、靭性が低下する。そこで、本発明者らは、焼入性指標であるVc90を1.0~5.0とすることで、セメンタイトを微細に分散させ、望ましいベイナイト組織を得られることを知見した。具体的には、細粒な下部ベイナイト組織を得られる。この結果、耐SSC性を低下させることなく、高強度で、良好な低温靭性を有する鋼板を得ることができる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明のLPG貯蔵タンク用鋼板および製造方法の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.06~0.15%
Cは、鋼材の強度上昇に極めて有効な元素である。C含有量が0.06%未満では、所望する強度が確保できない。また、金属組織が十分微細化せず、低温靭性が劣化する。このため、C含有量は、0.06%以上とする。C含有量は、0.08%以上とするのが好ましい。しかしながら、Cを、0.15%を超えて含有させると、溶接に起因し、熱影響部の表層が硬化し、耐SSC性が劣化する。このため、C含有量は0.15%以下とする。C含有量は、0.14%以下とするのが好ましい。
Si:0.01~0.10%
Siは、脱酸効果を有する元素である。このため、Si含有量は、0.01%以上とする。Si含有量は、0.02%以上とするのが好ましい。しかしながら、Siを、0.10%を超えて含有させると、HAZに、島状マルテンサイト(以下、「MA」とも記載する。)が生成して、破壊の起点となる。この結果、溶接後に靱性が低下する。このため、Si含有量は、0.10%以下とする。Si含有量は、0.09%以下とするのが好ましい。
Mn:0.50~1.40%
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度および靭性を高める元素である。このため、Mn含有量は、0.50%以上とする。Mn含有量は、0.65%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mn含有量が1.40%を超えると、溶接に際し、HAZの靭性が低下する。このため、Mn含有量は、1.40%以下とする。Mn含有量は、1.30%以下とするのが好ましい。
P:0.020%以下
Pは、不純物として鋼中に含有される元素である。Pを、0.020%を超えて含有させると、粒界に偏析して粒界強度を低下させ、低温靭性が低下する。このため、P含有量は、0.020%以下とする。Pは、可能なかぎり低減することが望ましい。
S:0.010%以下
Sは、一般に不純物として鋼中に含有される元素である。Sは、鋼中のMnと結合してMnSを形成し、鋼材の低温靭性および延性を低下させる。このため、S含有量は、0.010%以下とする。Sは、可能なかぎり低減することが望ましい。
Ni:0.10%以下
Niは、鋼材の靭性向上に寄与する一方、耐SSC特性を低下させる元素である。LPG貯蔵タンクに用いられる極厚の鋼材では、より厳しい耐SSC特性が求められることから、原則として添加しない。不純物として含有される場合でも、Ni含有量が、0.10%を超えると、腐食を受けた表面に微細なクラックが発生し、低応力下でも耐SSC性が劣化する。このため、Ni含有量は、0.10%以下とする。Ni含有量は、0.05%未満とするのが好ましい。なお、鋼材の靭性を確保するために、Nb、Cr、Mo、V等を含有させる。
Ti:0.005~0.040%
Tiは、鋼中のNと結合してTiNを形成し、スラブ表面および鋼材表面の清浄性を高める元素である。さらに、オーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する。このため、Ti含有量は、0.005%以上とする。Ti含有量は、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Tiを、0.040%を超えて含有させると、析出物が粗大化し、母材靱性を劣化させることがある。このため、Ti含有量は、0.040%以下とする。Ti含有量は、0.035%以下とするのが好ましい。
Al:0.005~0.050%
Alは、脱酸剤として作用し、鋼板の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、鋼中の固溶Nを固定して、AlNを形成することにより、結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する。このため、Al含有量は、0.005%以上とする。Al含有量は、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Al含有量が0.050%を超えると、溶接時に溶接金属部に混入して、溶接金属の靭性を低下させる。このため、Al含有量は、0.050%以下とする。Al含有量は、0.040%以下とするのが好ましい。
N:0.0005~0.0100%
Nは、TiおよびAlと結合して、TiN、AlNを形成し、結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する。このため、N含有量は、0.0005%以上とする。N含有量は、0.0010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nを、0.0100%を超えて含有させると、窒化物が粗大化し、靭性が低下する。このため、N含有量は、0.0100%以下とする。N含有量は、0.0090%以下とするのが好ましい。
Nb:0.005~0.050%
Nbは、オーステナイト未再結晶領域を拡大させるために有効な元素であり、さらに結晶粒の微細化に寄与し、強度および靭性を改善する。このため、Nb含有量は、0.005%以上とする。Nb含有量は、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nb含有量が0.050%を超えると、粗大な炭化物を生成し、靭性が低下する。このため、Nb含有量は、0.050%以下とする。Nb含有量は、0.045%以下とするのが好ましい。
Cr:0.50~1.50%
Crは、フェライト変態を抑制して焼入性を上げるため、強度向上に有効な元素である。このため、Cr含有量は、0.50%以上とする。Cr含有量は、0.70%以上とするのが好ましい。しかしながら、Crを、1.50%を超えて含有させると、鋼材の強度が高くなりすぎる。このため、Cr含有量は、1.50%以下とする。Cr含有量は、1.40%以下とするのが好ましい。
Mo:0.10~0.50%
Moは、鋼材の焼入れ性を高め、母材強度を向上する元素である。このため、Mo含有量は、0.10%以上とする。Mo含有量は、0.15%以上とするのが好ましい。しかしながら、Mo含有量が0.50%を超えると、強度が過剰に高くなる。また溶接性の著しい低下をもたらす。このため、Mo含有量は、0.50%以下とする。Mo含有量は、0.30%未満とするのが好ましい。
V:0.01~0.10%
Vは、炭窒化物を形成し、鋼材を析出強化する作用を有する。このため、V含有量は、0.01%以上とする。V含有量は、0.02%以上とするのが好ましい。しかしながら、V含有量が0.10%を超えると、その効果が飽和して製造コストが増加する。このため、V含有量は、0.10%以下とする。V含有量は、0.08%以下とするのが好ましい。
本発明の鋼の化学組成において、上記の元素に加えて、さらに、Cu、B、CaおよびMgから選択される1種以上を、以下に示す範囲において含有させてもよい。各元素の限定理由について説明する。
Cu:0.50%以下
Cuは、焼入性向上および焼戻し処理の析出硬化により強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cuを、過剰に含有させると、Cuチェッキングによる高温割れが生じる場合がある。このため、Cu含有量は、0.50%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は、0.10%以上とするのが好ましく、0.20%以上とするのがより好ましい。
B:0.0050%以下
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、フェライトの生成を抑制することで、焼入れ性を著しく向上させ、強度を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを過剰に含有させると、靱性が低下する。このため、B含有量は、0.0050%以下とする。B含有量は、0.0030%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は、0.0003%以上とするのが好ましく、0.0005%以上とするのがより好ましい。
Ca:0.0050%以下
Caは、非金属介在物が球状化し、低温靱性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caを過剰に含有させると、CaO、CaS等の介在物が多量に生成して鋼の靱性を損なう。加えて、湿潤硫化水素環境下で、鋼中の水素が介在物周辺に集積し易くなり、耐SSC性が低下する。このため、Ca含有量は、0.0050%以下とする。Ca含有量は、0.0040%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.0005%以上とするのがより好ましい。
Mg:0.0050%以下
Mgは、非金属介在物が球状化し、低温靱性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が0.0050%を超えると、MgO、MgS等の介在物が多量に生成して鋼の靱性を損なう。また、湿潤硫化水素環境下で鋼中の水素が介在物周辺に集積し易くなり、耐SSC性が低下する。このため、Mg含有量は、0.0050%以下とする。Mg含有量は、0.0040%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.0005%以上とするのがより好ましい。
本発明の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Vc90
本発明に係る鋼板では、以下(i)式で表されるVc90を1.0~5.0℃/sとする。Vc90は、マルテンサイトを面積率で90%以上得るために必要な冷却速度を示すものであり、各元素の含有量に基づき算出される。
log(Vc90)=2.94-0.75×(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.8Cr+5Mo) ・・・(i)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
Vc90が1.0℃/s未満であると、過剰に焼入れが進むため、溶接熱時に影響部が硬化し耐SSC性が低下する。このため、Vc90は、1.0℃/s以上とする。Vc90は、1.5℃/s以上とするのが好ましい。一方、Vc90を、5.0℃/s超とすると、板厚中心部において安定的にベイナイト組織を得にくくなる。このため、Vc90は、5.0℃/s以下とする。Vc90は、4.5℃/s以下とするのが好ましい。
2.金属組織
本発明に係る鋼板では、板厚中心部における金属組織を規定する。板厚が55mmの極厚鋼板では、その中央値である板厚中心部の組織の制御が重要だからである。具体的には、板厚中心部における金属組織が、面積率で、97%以上のベイナイトを含み、かつ島状マルテンサイトが、面積率で、0.1%以下とする。
2-1.ベイナイトの面積率および島状マルテンサイトの面積率
板厚中心部における金属組織において、ベイナイトの面積率が97%未満であると、強度および靭性を十分に確保することができない。このため、板厚中心部における金属組織において、ベイナイトの面積率を97%以上とする。板厚中心部の金属組織は、基本的にベイナイトからなる組織とするのが望ましく、ベイナイトの面積率を100%とするのが最も好ましい。
また、島状マルテンサイトが形成する場合がある。島状マルテンサイトは、上述したベイナイト中、すなわち板厚中心部中のベイナイト中に形成し、低温靭性に悪影響を及ぼす。また、溶接により形成するHAZの靭性も低下させる。このため、ベイナイト中の島状マルテンサイトは、面積率で、0.1%以下とする。上記島状マルテンサイトは、極力形成させないのが望ましい。
2-2.セメンタイトの平均粒径
鋼板中にはセメンタイトが形成する場合もあり、特に上述した板厚中心部におけるベイナイト中のセメンタイトは比較的大きくなりやすい。粗大なセメンタイトが形成すると、セメンタイトを起点として、脆性破壊が発生するため低温靭性が低下する。このため、粗大なセメンタイトの形成を抑制する必要がある。そこで、セメンタイトの平均粒径は、0.5μm以下とする。より詳細には、板厚中心部のベイナイト中のセメンタイトの平均粒径は、0.5μm以下とする。ベイナイト中のセメンタイトの平均粒径は、0.4μm以下とするのが好ましい。なお、セメンタイトの平均粒径の測定については後述する。
2-3.その他の組織
板厚中心部における金属組織は、上述したように、基本的にベイナイトを主体とした組織とするが、ベイナイト以外に、他の組織が形成する場合がある。このようなベイナイト以外の組織(以下、「その他の組織」と記載する。)は、面積率で、3.0%以下とする。その他の組織が、面積率で、3.0%を超えると、顕著に低温靭性が低下する。その他の組織は、極力形成させないのが好ましい。なお、その他の組織の一例として、例えば、マルテンサイト、島状マルテンサイト(MA)が挙げられる。
2-4.規定粗大ベイナイト粒の平均粒径
本発明に係る鋼板では、鋼板の強度および靭性を向上させるため、微細なベイナイトを形成させる必要がある。しかしながら、微細なベイナイトが形成したとしても、局所的に極端に粒径の大きいベイナイトが形成していた場合には、破壊の起点となる。この結果、鋼の靭性が低下する。
このため、粒径の大きな粗大なベイナイト粒の平均粒径について制御する。具体的には、観察された全てのベイナイト粒の中で、粒径の大きさが大きい順に上位10個のベイナイト粒を選択したときに、当該10個のベイナイト粒(以下、単に「規定粗大ベイナイト粒」と記載する。)の平均粒径を30μm以下とする。
ここで、規定粗大ベイナイト粒の平均粒径とは、観察された全てのベイナイト粒の中で、粒径の大きい上位10個の粒の平均粒径とする。また、一つの粒を円相当に近似した場合に、その直径を粒径とする。なお、観察に際し、鋼板の板厚1/2部から試験片を取り出し、L断面を観察面とし、L方向800μm×板厚方向600μmの領域を撮影倍率は90倍、撮影視野を5視野として、観察した場合に定められる規定粗大ベイナイト粒を対象とするのが好ましい。
3.引張強さ
本発明に係る鋼板では、鋼板の引張強さを770~940MPaとする。引張強さを上記範囲とすることで、LPGの輸送効率を向上させ、タンクを大型化することができるからである。
4.板厚
本発明に係る鋼板では、板厚を55~80mmとする。板厚を上記範囲とすることで、タンクの肉厚化することができるからである。板厚が55mm未満であると、十分タンクを厚肉にできない。このため、板厚は55mm以上とし、60mm以上とするのが好ましい。一方、板厚が80mmを超えると、製造性が低下する。このため、板厚は80mm以下とし、75mm以下とするのが好ましい。
5.製造方法
本発明に係る鋼板の好ましい製造方法について説明する。本発明に係る鋼板は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、安定して製造することができる。
具体的には、
(a)厚さが200mm以上であるスラブを、1000~1200℃で加熱し、熱間圧延を行った後、室温まで冷却し、鋼板とする工程と、
(b)鋼板をAc点以上1000℃以下の温度に加熱し、均熱保持した後、鋼板の板厚中心部における冷却速度を5℃/s以上として、200℃以下まで冷却する工程と、
(c)鋼板を500℃以上700℃以下の温度に加熱し、15分以上均熱保持した後、冷却する工程と、
を有し、
(a)において、圧延中の最終3パスをスラブ表面温度が750~900℃の温度域で、累積圧下率が30%以上で圧延する、のが好ましい。
5-1.熱間圧延工程
最初に、上述の化学組成を有する厚さ200mm以上のスラブを連続鋳造法等により製造することが好ましい。スラブ厚を200mm以上とすることにより、熱間圧延工程において、十分な圧下率を確保することが可能となり、ベイナイトの微細化をより確実に行うことができる。スラブ厚は300mm以下とすることが好ましい。
そして、上記厚さが200mm以上のスラブを、1000~1200℃の加熱温度で加熱することが好ましい。上記加熱温度を1000℃以上とすることにより、鋳造時に析出した粗大なTi-Nb系の炭窒化物が固溶するので、圧延後の鋼板の低温靭性が低下することもない。このため、上記加熱温度は、1000℃以上とすることが好ましい。
一方、上記加熱温度を1200℃以下とすることにより、オーステナイト結晶粒が粗大化することもないので、この場合も圧延後の鋼板の低温靭性が低下することもない。このため、加熱温度は1200℃以下とするのが好ましい。
加熱炉で、1000~1200℃の温度で加熱した上記スラブを、熱間圧延し、熱間圧延後、室温まで冷却を行い、鋼板とすることが好ましい。この熱間圧延の工程では、通常、粗圧延および仕上圧延を行うが、本発明に係る鋼板では、仕上圧延に相当する最終3パスについて、金属組織の粒径を調整するため、製造条件を制御することが好ましい。具体的には、仕上圧延に相当する圧延中の最終3パスを、スラブ表面温度が750~900℃の温度域で、累積圧下率が30%以上となるよう圧延するのが好ましい。
最終3パスにおいて、スラブの表面温度が750℃以上であると、変形抵抗が減少することで、1パス当たりの圧下量が増加させることができる。この結果、トータルの総パス数が減少する。このため、最終3パスにおいて、スラブの表面温度は750℃以上とするのが好ましい。一方、最終3パスにおいて、スラブの表面温度が900℃以下であると、圧延によりオーステナイトが再結晶化することを回避でき、金属組織を微細化することができる。このため、最終3パスにおいて、スラブの表面温度は900℃以下とするのが好ましい。
また、最終3パスにおいて、上記温度域での累積圧下率が30%以上であると、結晶粒の粗大化を防止でき、低温靭性が低下することを防止できる。このため、最終3パスにおいて、上記温度域での累積圧下率は、30%以上とするのが好ましい。
ここで、累積圧下率とは以下の(a)式により算出することができる。
=(T-T)/T×100 ・・・(a)
但し、上記式中の各記号は、以下により定義される。
(%):累積圧下率
(mm):圧延後の厚み
(mm):圧延前の厚み
なお、最終3パスを上記条件で制御するのは、最終1パスまたは最終2パスで高圧下とすると、鋼板に反りが発生する、または鋼板平坦度が低下するからである。熱間圧延後、冷却を行う。後の工程で鋼組織を作りこむため、室温まで放冷により冷却を行うのが好ましい。
5-2.焼入工程
熱間圧延工程の後、焼入工程を行うのが好ましい。焼入工程では、鋼板をAc点(℃)以上1000℃以下の温度に加熱した後、当該温度で均熱保持するのが好ましい。その後、鋼板の板厚中心部における冷却速度を5℃/s以上とし、200℃以下まで冷却するのが好ましい。
焼入工程において、鋼板の加熱温度がAc点(℃)以上であると、再加熱時においてフェライトが残存せず、焼入後に微細なベイナイト組織を得られる。このため、焼入工程における鋼板の加熱温度は、Ac点以上とするのが好ましい。一方、焼入工程において、鋼板の加熱温度が1000℃以下であると、加熱の際、オーステナイトの粗大を抑制でき、靭性の低下を防止できる。このため、焼入工程における鋼板の加熱温度は、1000℃以下とするのが好ましい。その後、当該温度で、金属組織がオーステナイト単相となるよう、十分均熱保持するのが好ましい。保持時間は、例えば、15分以上であるのが好ましい。また、保持時間は30分以下であるのが好ましい。
その後、冷却を行う。冷却の際、鋼板の板厚中心部における冷却速度が5℃/s以上であると、板厚中心部の変態温度が下がり、微細なベイナイト組織が得ることができる。このため、鋼板の靭性を確保できる。したがって、冷却の際、鋼板の板厚中心部における冷却速度が5℃/s以上とするのが好ましい。なお、板厚中心部における冷却速度の上限は、特に限定しないが、通常、30℃/s以下となる。
また、冷却は、200℃以下まで行うのが好ましい。これは、マルテンサイト変態終了温度(Mf点)が一般的に200℃超であるためである。また、通常、鋼板の温度は、放射温度計により表面の温度を測定することが一般的であることから、表面温度と熱伝導性との関係に基づき、板厚中心部における冷却速度を算出すればよい。例えば、最も簡便な方法としては、非定常一次元熱伝導方程式を差分法で解くといった手法がある。
5-3.焼戻し工程
続いて、焼戻し工程を行うのが好ましい。焼戻し工程においては、500℃以上700℃以下の温度に加熱し、均熱保持した後、放冷するのが好ましい。焼入後、鋼板の強度が過剰となる一方、靭性の低下が生じるが、焼戻し工程を行うことにより、焼入時に導入された転位が回復し、所望の強度まで、強度を低下させることができる。この結果、鋼板の低温靭性が向上する。このような焼戻しの効果を得るためには、加熱温度を500℃以上とするのが好ましい。
一方、焼戻し工程における加熱温度が700℃以下であると、焼入時に微細化したラス組織は分解せず微細組織を保持でき、低温靭性を確保できる。このため、焼戻し工程における加熱温度が700℃以下とするのが好ましい。続いて、当該加熱温度に均熱保持するが、この際の保持時間は、15分以上とするのが好ましい。また、保持時間は30分以下であるのが好ましい。当該均熱保持の後、冷却するのが好ましい。冷却は、通常、放冷を行うことが多いが、例えば、水冷または空冷でもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に記載の化学組成を有し、厚さが300mmであるスラブを製造した。このスラブを表2に記載する条件で、加熱、熱間圧延した後、室温まで放冷し、その後、焼入れ、焼戻しを行った後、放冷した。焼入れの際、表2に記載の温度で、加熱し、当該温度で、15分均熱保持を行い、その後、表2に記載の冷却速度で、室温まで冷却を行った。また、焼戻しの際に、同様に表2に記載の温度で、加熱し、表2に記載の時間で均熱保持を行った。その後、室温まで冷却した。なお、得られた鋼板の板厚は表3に示すとおりである。
Figure 0007445127000001
Figure 0007445127000002
得られた鋼板について、規定粗大ベイナイト粒の平均粒径、セメンタイトの平均粒径ならびに、ベイナイトおよび他の組織の面積率について測定した。さらに、特性値を評価するため、得られた鋼板について、引張試験、耐SSC試験、およびシャルピー試験を行った。この試験に基づき、強度、耐SSC性、靭性を評価した。組織観察の条件ならびに各特性の評価方法および試験条件は、以下に示すとおりである。
(金属組織の観察)
ベイナイトおよびフェライトの面積率は、各測定値について、以下の方法で測定した。ベイナイトおよびフェライトは、板厚中心部の位置から、L断面が観察面となるよう、試験片を採取し鏡面研磨してからコロイダルシリカで30分の仕上研磨をした後、EBSD(電子線後方散乱回折)法を用いて測定した。
得られたデータはTSLソリューションズ社製のOIM-Analysisソフトウェア(以下、「OIMソフト」という。)により結晶粒内の結晶方位差の平均値を表すGAM値を用いて解析し、GAM値が0.5以上である場合をベイナイトとして、0.5未満である場合をフェライトとして、ベイナイトおよびフェライトの面積率を算出した。なお、撮影倍率は90倍、撮影視野を5視野とし、得られた面積率を平均してベイナイトおよびフェライトの面積率とした。
島状マルテンサイト(MA)の面積率は、以下の方法で測定した。最初に、鋼板の板厚中心部から試験片として一部を切り出し、L断面を鏡面研磨してからレペラ腐食した。その後、腐食した面を観察面とし、光学顕微鏡により500倍の倍率でミクロ組織を撮影し、画像処理により二値化してから面積率を求めた。なお、撮影視野を5視野とし、得られた面積率を平均してMA面積率とする。なお、MAが観察された場合には、上記のようにベイナイトの面積率を算出するのではなく、上記のように求めたベイナイトの面積率からMAの面積率を差し引いて、ベイナイトの面積率とした。
(規定粗大ベイナイト粒の平均粒径)
最初に、鋼板の板厚中心から試験片として一部を切り出し、L断面を鏡面研磨してからコロイダルシリカで30分以上研磨をした。その後、研磨面を観察面とし、EBSD(電子線後方散乱回折)法を用いて、ベイナイト結晶粒の面積率、粒径を算出した。なお、ベイナイト以外に、例えば、その他の組織が形成している場合は、同様にEBSDを用いて面積率を測定した。得られたデータはOIMソフトにより解析した。なお、撮影倍率は90倍、撮影視野を5視野とし、方位差が15度以上の粒界に囲まれた円相当径の上位10個平均を規定粗大ベイナイト粒の平均粒径とした。
(セメンタイトの平均粒径)
セメンタイトの平均粒径は、以下の方法で測定した。最初に、鋼板の板厚中心から試験片として一部を切り出し、L断面を鏡面研磨してから3%ナイタール溶液で腐食した。その後、腐食した面を観察面とし、日本電子製の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いてミクロ組織を撮影した。撮影に際し、作動距離を10mm、加速電圧を15kV、倍率を3000倍とし、5視野撮影した。倍率画像処理により二値化してから平均円相当粒径を算出し、平均粒径とした。
(強度)
強度は、引張試験を行うことで評価した。試験片は、鋼板の板厚1/4位置から、圧延方向とは垂直の断面(C断面)より、引張試験片(JIS Z 2241:2011、1A号試験片)を採取し、引張試験を行った。
(耐SSC性)
耐SSC性は、SSC試験を行うことで評価した。SSC試験では、入熱量を3.0kJ/mmで鋼板の幅方向にサブマージアーク溶接し、溶接継手を作製した。溶接継手の溶接ビードをそのまま残した状態で、表面から、1.5×30mm×115mmの寸法で、試験片を採取した。この試験片を4点曲げにより、溶接線直上に貼付したひずみゲージでひずみ量を測定しながら、降伏応力の100%応力となるようなひずみを付与し、720時間溶液中に浸漬した。
浸漬に使用した溶液は、5%NaCl+0.5%CHCOOH水溶液に、分圧を調整したHSガスを通気し、HS濃度が100ppmの飽和水溶液を用いた。試験終了後、光学顕微鏡500倍にて表面割れを調べ、評価は、割れ無しを○、割れが少しでも認められた場合を×とした。
(靭性)
靭性は、シャルピー試験を行うことで評価した。シャルピー試験では、鋼板および鋼板から作製した溶接継手を用いた試験片により試験を行った。鋼板の試験片は、鋼板のC断面を切り出し、ノッチが鋼板の板厚1/2位置となるような、2mmのVノッチの試験片である。溶接継手は、鋼板のC断面から二つの母材を切り出し、それを入熱量が3.0kJ/mmでサブマージアーク溶接することで作製した。作製した溶接継手の試験片は板厚1/4位置から採取し、溶接金属と母材がちょうど50%ずつ含む位置となるようにノッチを入れた2mmのVノッチ試験片である。そして、試験により得られた破面遷移温度(母材および溶接熱影響部)が、-40℃以下の場合を良好な特性であると評価した。
以下、結果を纏めて表3に示す。
Figure 0007445127000003
本発明の規定を満足する試験No.1~15は、良好な強度、耐SSC性および低温靭性を示した。一方、本発明の規定を満足しない試験No.16~30は、強度、耐SSC性、および低温靭性のうち、少なくとも一つが本発明例であるNo.1~15と比較して、劣る結果となった。
No.16は、C含有量が過剰であったため、耐SSC性が低下した。No.17および20は、Mo含有量が低かったため、焼入れ性が低下し、粗大なベイナイト粒が形成した。この結果、靭性が低下した。No.18および19は、Cr含有量が低かったため、焼入れ性が低下し、粗大なベイナイト粒が形成した。この結果、靭性が低下した。
No.21は、Mn含有量が高かったため、MnSが形成し、形成したMnSが起点となり、溶接継手の靭性が低下した。No.22は、Vc90が高かったため、焼入れ性が低下し、粗大なベイナイト粒が形成した。この結果、靭性が低下した。
No.23は、熱間圧延の際の加熱温度が高かったため、旧オーステナイト粒径が粗大化し、ベイナイト粒径も粗大化し、靭性が低下した。No.24は、最終3パスの圧下率が低下し、ベイナイト粒が粗大になり、靭性が低下した。No.25は、最終3パスの温度が高くなったため、ベイナイト粒が粗大になり、靭性が低下した。
No.26は、板厚中心部の冷却速度が遅かったため、微細なベイナイト粒が得られず、靭性が低下した。No.27は、焼戻し温度が低かったため、ラスベイナイトが分解し、組織が粗大化した。No.28は、焼戻し時間が短かったため、強度が高く、靭性が低下した。No.29は、焼入れ温度が高く、粗大なベイナイトが形成商品、靭性が低下した。No.30は、焼戻しをしなかったため、SSCが低下した。また、MAが分解されず、靭性が低下した。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.06~0.15%、
    Si:0.01~0.10%、
    Mn:0.50~1.40%、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、
    Ni:0.10%以下、
    Ti:0.005~0.040%、
    Al:0.005~0.050%、
    N:0.0005~0.0100%、
    Nb:0.005~0.050%、
    Cr:0.50~1.50%、
    Mo:0.10~0.50%、
    V:0.01~0.10%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で表されるVc90が、1.0~5.0であり、
    板厚中心部における金属組織が、
    面積率で、97%以上のベイナイトを含み、かつ島状マルテンサイトが、面積率で、0.1%以下であり、セメンタイトの平均粒径が0.5μm以下であり、
    観察された全てのベイナイト粒の中で、粒径の大きさが大きい順に上位10個のベイナイト粒を選択したときに、当該10個のベイナイト粒の平均粒径が30μm以下であり、
    引張強さが、770~940MPaであり、
    板厚が、55~80mmである、LPG貯蔵タンク用鋼板。
    log(Vc90)=2.94-0.75×(2.7C+0.4Si+Mn+0.45Ni+0.8Cr+5Mo) ・・・(i)
    但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Cu:0.50%以下、および
    B:0.0050%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載のLPG貯蔵タンク用鋼板。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、
    Ca:0.0050%以下、および
    Mg:0.0050%以下、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載のLPG貯蔵タンク用鋼板。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の鋼板を製造する方法であって、
    (a)厚さが200mm以上であるスラブを、1000~1200℃で加熱し、熱間圧延を行った後、室温まで冷却し、鋼板とする工程と、
    (b)前記鋼板をAc点以上1000℃以下の温度に加熱し、均熱保持した後、前記鋼板の板厚中心部における冷却速度を5℃/s以上として、200℃以下まで冷却する工程と、
    (c)前記鋼板を500℃以上700℃以下の温度に加熱し、15分以上均熱保持した後、冷却する工程と、
    を有し、
    前記(a)において、圧延中の最終3パスを、スラブ表面温度が750~900℃の温度域で、累積圧下率が30%以上で圧延する、LPG貯蔵タンク用鋼板の製造方法。
JP2020075366A 2020-04-21 2020-04-21 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法 Active JP7445127B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020075366A JP7445127B2 (ja) 2020-04-21 2020-04-21 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020075366A JP7445127B2 (ja) 2020-04-21 2020-04-21 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021172833A JP2021172833A (ja) 2021-11-01
JP7445127B2 true JP7445127B2 (ja) 2024-03-07

Family

ID=78279319

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020075366A Active JP7445127B2 (ja) 2020-04-21 2020-04-21 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7445127B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012092377A (ja) 2010-10-26 2012-05-17 Sumitomo Metal Ind Ltd 高張力鋼材およびその製造方法
JP2012172242A (ja) 2011-02-24 2012-09-10 Jfe Steel Corp 靭性に優れる高張力鋼板とその製造方法
JP2012172243A (ja) 2011-02-24 2012-09-10 Jfe Steel Corp 靭性に優れる高張力鋼板とその製造方法
WO2013099179A1 (ja) 2011-12-27 2013-07-04 Jfeスチール株式会社 脆性き裂伝播停止特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2014037589A (ja) 2012-08-20 2014-02-27 Nippon Steel & Sumitomo Metal 表層のアレスト性に優れた高張力鋼板およびその製造方法
JP2016089187A (ja) 2014-10-30 2016-05-23 Jfeスチール株式会社 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
JP2017008343A (ja) 2015-06-17 2017-01-12 新日鐵住金株式会社 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012092377A (ja) 2010-10-26 2012-05-17 Sumitomo Metal Ind Ltd 高張力鋼材およびその製造方法
JP2012172242A (ja) 2011-02-24 2012-09-10 Jfe Steel Corp 靭性に優れる高張力鋼板とその製造方法
JP2012172243A (ja) 2011-02-24 2012-09-10 Jfe Steel Corp 靭性に優れる高張力鋼板とその製造方法
WO2013099179A1 (ja) 2011-12-27 2013-07-04 Jfeスチール株式会社 脆性き裂伝播停止特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2014037589A (ja) 2012-08-20 2014-02-27 Nippon Steel & Sumitomo Metal 表層のアレスト性に優れた高張力鋼板およびその製造方法
JP2016089187A (ja) 2014-10-30 2016-05-23 Jfeスチール株式会社 耐hic性能に優れた極厚鋼板およびその製造方法
JP2017008343A (ja) 2015-06-17 2017-01-12 新日鐵住金株式会社 Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021172833A (ja) 2021-11-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5423324B2 (ja) 耐水素誘起割れ性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板及び高強度ラインパイプ用鋼管
JP4484123B2 (ja) 高強度かつ溶接熱影響部靭性に優れたクラッド鋼板用母材およびその製造方法
JP5928405B2 (ja) 耐水素誘起割れ性に優れた調質鋼板及びその製造方法
JP7272442B2 (ja) 耐サワーラインパイプ用高強度鋼板およびその製造方法並びに耐サワーラインパイプ用高強度鋼板を用いた高強度鋼管
JP7440740B2 (ja) タンク用鋼板
JP4547944B2 (ja) 高強度高靭性厚鋼板の製造方法
JP2011202214A (ja) 多層溶接部の低温靭性に優れた厚肉高張力鋼板およびその製造方法
JP3941211B2 (ja) 耐hic性に優れた高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法
JP2005264217A (ja) 耐hic性に優れた厚手熱延鋼板とその製造方法
JP7155703B2 (ja) ラインパイプ用厚鋼板およびその製造方法
JP2022510933A (ja) 水素誘起割れ抵抗性に優れた鋼材及びその製造方法
CN115210400B (zh) 钢材及其制造方法、以及罐
JP6521196B1 (ja) 耐サワーラインパイプ用高強度鋼板およびその製造方法並びに耐サワーラインパイプ用高強度鋼板を用いた高強度鋼管
JP6729522B2 (ja) 厚肉耐摩耗鋼板およびその製造方法並びに耐摩耗部材の製造方法
JP5157030B2 (ja) 耐hic性に優れた高強度ラインパイプ用鋼の製造方法
JP6582590B2 (ja) Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法
JP7445127B2 (ja) Lpg貯蔵タンク用鋼板およびその製造方法
JP4964480B2 (ja) 溶接部の靱性に優れた高強度鋼管及びその製造方法
JP2019173054A (ja) 高強度高延性鋼板
JP7119888B2 (ja) Uoe鋼管用鋼板およびその製造方法
JP4250113B2 (ja) 耐震性と溶接性に優れた鋼板の製造方法
JP5935678B2 (ja) 高靭性高張力鋼およびその製造方法
JP7396551B1 (ja) 耐サワーラインパイプ用高強度鋼板及びその製造方法並びに耐サワーラインパイプ用高強度鋼板を用いた高強度鋼管
JP7323090B1 (ja) 鋼板および鋼板の製造方法
RU2788419C1 (ru) Высокопрочный стальной лист для сероводородостойкой магистральной трубы, способ его изготовления и высокопрочная стальная труба, полученная с использованием высокопрочного стального листа для сероводородостойкой магистральной трубы

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221205

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240123

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240205

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7445127

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151