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JP6729522B2 - 厚肉耐摩耗鋼板およびその製造方法並びに耐摩耗部材の製造方法 - Google Patents

厚肉耐摩耗鋼板およびその製造方法並びに耐摩耗部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、産業機械や運搬機器等向け耐摩耗鋼板およびその製造方法に係り、とくに、溶接により製造される部材向け厚肉耐摩耗鋼板の耐溶接割れ性の向上に関する。なお、ここでいう「厚肉」とは、肉厚:50mm以上をいうものとする。
建設、土木、鉱山等の分野で使用される産業機械、運搬機器等では、一般に、部材の摩耗量によりその寿命が決定される場合が多いことから、部材用として耐摩耗性に優れた鋼板(耐摩耗性鋼板)が用いられている。
鋼板の耐摩耗性を向上させるためには、鋼板を高硬度化する必要がある。そのため、通常は、耐摩耗性が要求される部材向けの鋼板では、C量を高くし、焼入れ処理を施し、少なくとも表層部分を高硬度化することが行われている。しかし、焼入れ処理を施して得られた耐摩耗鋼板は、200℃以上に一度でも加熱されると焼戻され、硬さが低下して、耐摩耗性が低下する。
さらに、産業機械、運搬機器等の部材では、通常、素材である鋼板を用い、溶接施工により所望形状の部材に組み立てている。耐摩耗性を要求される部材用として使用する鋼板は、合金成分量が多い高成分組成の耐摩耗鋼板であり、溶接部から割れ(低温割れ)を発生しやすい。そのため、溶接部からの割れ(低温割れ)発生がない、耐溶接割れ性に優れた耐摩耗鋼板が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、溶接後の耐遅れ割れ性に優れた高硬度耐摩耗鋼の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、C:0.3〜0.5%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.02〜0.4%、sol.Al:0.01〜0.1%、Ca:0.006%以下を含み、かつPH値(=C+Mn/10+Mo/6+Cr/15+3V+40P+100B)が1.0%以下となる組成の鋼を、焼入れたままとするか、または焼入れた後、低温焼戻して、500HB以上の高硬さを得るとしている。これにより、溶接後の耐遅れ割れ性が向上するとしている。なお、特許文献1に記載された技術では、上記した組成に加えてさらに、B:0.0005〜0.005%、Ti:0.005〜0.05%、およびCu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、を含有してもよいとしている。
また、特許文献2には、溶接性に優れた耐摩耗鋼板が記載されている。特許文献2に記載された耐摩耗鋼板は、質量%で、C:0.38〜0.50%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜0.5%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、更に、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.005〜0.10%、W:0.05〜1.0%の1種または2種以上を含有し、Ceq*(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10)が0.60%以下であり、かつ、DI*(=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1))が45以上であり、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板である。特許文献2に記載された技術によれば、予熱温度が150℃であっても、低温割れは発生しないとしている。
また、特許文献3には、板厚32mmを超える厚肉の、耐低温焼戻脆化割れ性に優れた耐摩耗鋼板が記載されている。特許文献3に記載された耐摩耗鋼板は、質量%で、C:0.25〜0.35%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.80%以下、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.024%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下と、さらに、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、V:0.005〜0.10%、W:0.05〜1.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を、Ceq*(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10)が0.55%超0.60%以下で、かつ、DI*(=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1))が45以上を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、基地相がマルテンサイト相を主体とする相である組織を有する耐摩耗鋼板である。特許文献3に記載された技術によれば、優れた耐摩耗性を有し、かつ溶断、溶接時の熱影響で低温焼戻脆化領域に加熱されても、遅れ割れの発生が防止できるとしている。
また、特許文献4には、低温靭性に優れた耐摩耗鋼板およびその製造方法が記載されている。特許文献4に記載された技術は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.005%以下、W:0.10〜1.40%、B:0.0003〜0.0020%を含み、さらにTi:0.005〜0.1%および/またはAl:0.035〜0.1%を含有する組成を有する耐摩耗鋼板である。特許文献4に記載された耐摩耗鋼板では、Wに代えて、MoおよびWを、2Mo+W:0.10〜1.40を満足するように含有することが好ましいとしている。また、Nb:0.005〜0.05%を含有してもよいとしている。また、特許文献4に記載された耐摩耗鋼板は、焼入れまま状態で、90体積%以上のマルテンサイト相、あるいはさらに旧オーステナイト粒の平均粒径が30μm以下である組織を有することが好ましく、また、熱間圧延終了後直ちに焼入れる直接焼入れて製造することが好ましいとしている。特許文献4に記載された技術によれば、優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼板を安価でかつ容易に製造できるとしている。
また、特許文献5には、耐衝撃摩耗特性に優れた耐摩耗鋼板が記載されている。特許文献5に記載された技術は、mass%で、C:0.25〜0.33%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.40〜1.3%、P:0.010%以下、S:0.004%以下、Al:0.06%以下、N:0.007%以下、更にCu:1.5%以下、Ni:2.0%以下、Cr:3.0%以下、Mo:1.5%以下、W:1.5%以下、B:0.0030%以下の1種または2種以上を含み、DI*(=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1))が100〜250で、表層部が面積率で90%以上のマルテンサイト組織、板厚中央部が平均粒径25μm以下の下部ベイナイトが面積率で70%以上である組織を有する、表層部および断面部の耐衝撃摩耗特性に優れた耐摩耗鋼板である。
特公平06−86643号公報 特開2008−214651号公報 特開2011−214120号公報 特開2007−92155号公報 特開2014−25130号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、板厚:50mmまでの耐摩耗鋼板については、溶接後の遅れ割れを防止することができるとしているが、特許文献1には、板厚:50mmを超える厚肉の耐摩耗鋼板についての言及はない。また、特許文献2に記載された技術では、予熱温度が150℃以下であっても、溶接割れが発生せず、耐摩耗性鋼板の溶接性が向上するとしている。このような溶接性の向上は、Mn含有量を0.5%以下に低下したことが大きく寄与しているとしている。しかし、特許文献2には、板厚32mmまでの耐摩耗鋼板についての記載があるだけで、板厚:50mmを超える厚肉耐摩耗鋼板の溶接性についての言及はない。
また、特許文献3に記載された技術では、低温焼戻脆化割れの発生は、Mn:0.80%以下、P:0.010%以下に調整することにより防止できるとしている。しかし、特許文献3には、板厚:50mmを超える厚肉耐摩耗鋼板についての言及はない。また、特許文献4に記載された技術では、微量Bを必須含有させて、さらにTiおよび/またはAlを含有することにより、高い表面硬さと、優れた耐摩耗性と、優れた低温靭性とを兼備した耐摩耗鋼板を製造できるとしている。しかし、特許文献4には、高々板厚50mmまでの鋼板に関する記載があるだけで、板厚50mmを超える厚肉の耐摩耗性鋼板の耐摩耗性と耐溶接割れ性に関しての言及はない。
また、特許文献5に記載された技術では、焼入れ性指数を厳格に管理し、鋼板表層部をマルテンサイト組織とし、さらに板厚中央部の組織を下部ベイナイトを主体とする組織とすることにより、優れた耐衝撃摩耗特性を有する耐摩耗鋼板とすることができるとしている。しかし、特許文献5には、厚肉耐摩耗鋼板の耐溶接割れ性についての言及はなく、また、優れた耐摩耗性と優れた耐溶接割れ性とを兼備することについてまでの言及もない。
本発明は、かかる従来技術に鑑み、産業機械や運搬機器等の部材向けとして好適な、板厚50mm以上の厚肉で、表層及び板厚中央部において耐摩耗性に優れるとともに、耐溶接割れ性にも優れる厚肉耐摩耗鋼板を提供することを目的とする。なお、ここでいう「耐摩耗性に優れる」とは、鋼板の表層及び板厚中央部の硬さが、ブリネル硬さで、450HBW10/3000以上を保持している場合をいう。また、ここでいう「耐溶接割れ性に優れる」とは、ガスメタルアーク溶接で試験溶接を行うJIS Z 3158に規定されるy形溶接割れ試験で、予熱温度:200℃において割れ発生が認められない場合をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、まず、厚肉耐摩耗鋼板における耐溶接割れ性と耐摩耗性の関係に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、耐溶接割れ性と耐摩耗性とを兼備した板厚:50mm以上の厚肉耐摩耗鋼板とするためには、組成を、0.35質量%以下のC、0.50質量%以上のMnと、Nb、Ti、Bとを複合含有する組成としたうえで、かつ炭素当量Ceq*(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10)および焼入れ性指数DI*(=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1)が、それぞれ適正範囲内となるように、バランスよく調整することが必要となることを新規に見出した。
最近では、鉱山等の分野で使用する機器の大型化等から、部材用として、板厚:50mm以上の厚肉の耐摩耗鋼板が要望されている。さらに、最近では、耐摩耗鋼板の用途として、例えば粉砕機のライナーのように、表層だけでなく、板厚方向断面(例えば、板厚中央部)においても、耐摩耗性に優れることが要求されるようになっている。そのため、表層に加えて、板厚中央部においても、所望の高い硬さを有することが要求されている。本発明者らの検討によれば、板厚:50mm以上の厚肉の板厚中央部で、組織をマルテンサイト相を主たる組織とし、所望の高硬さを確保するためには、焼入れ性指数DI*が170以上300以下となるように組成を調整する必要があることを知見した。
さらに、耐摩耗鋼板のような、合金成分量が多い高成分組成の鋼板を溶接する場合、溶接時に、溶接部から割れ(低温割れ)を発生しやすい。そのため、溶接部の低温割れを防止するために、溶接前に予熱を実施することが通例となっている。溶接前に予熱を行うことにより、溶接後の冷却速度が遅くなり、溶接時に溶接材料等から侵入した水素を放出でき、低温割れ(遅れ破壊)が抑制されることになる。溶接部の低温割れ(遅れ破壊)を抑制するためには、高成分組成の鋼板ほど予熱温度を高める必要がある。しかし、耐摩耗鋼板では、200℃を超える温度に予熱(加熱)すると、鋼板硬さが低下して、耐摩耗性の低下を招くことが懸念される。
そこで、溶接材料として、オーステナイト系ステンレス鋼を用いることが考えられる。溶接材料として、オーステナイト系ステンレス鋼を用いると、溶接時に侵入した水素が溶接材料(溶融金属)に固定され、耐摩耗鋼板の溶接部(溶接熱影響部)への水素の侵入を抑制することができる。これにより、予熱を行うことなく溶接を行っても、溶接部の低温割れ(遅れ破壊割れ)を抑制することが可能となる。しかし、オーステナイトステンレス鋼系溶接材料は高価であり、通常では、耐摩耗鋼板の溶接材料としてオーステナイトステンレス鋼系溶接材料(ワイヤ)を使用することはない。
通常、溶接により各種部材を組み立てるに際には、被溶接材(素材)の強度・特性に応じて、例えば、JIS Z 3312に規定される「軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ」の中から選択された溶接材料が使用されている。例えば、溶接材料として、引張強さ490〜670MPa級の高張力鋼板用である、安価な、シールドガスとして炭酸ガスを使用するマグ溶接用「YGW11」が例示できる。
そこで、溶接材料として、従来から用いられている安価な、ガスメタルアーク溶接用のソリッドワイヤを適用するという条件で、まず、耐摩耗鋼板の硬さが低下しない温度である、予熱温度:200℃で溶接割れ(低温割れ)が発生しない耐摩耗鋼板とする必要がある。耐溶接割れ性と炭素当量Ceq*(=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10)とが相関を示し、炭素当量Ceq*の増加に伴い、溶接割れ(低温割れ)を発生しやすくなるという本発明者らの知見に基づき、鋭意検討した結果、耐摩耗鋼板の組成を、Nb、Ti、Bを含有しかつ、炭素当量Ceq*で0.78%以下となるように調整することにより、ソリッドワイヤを用いたマグ溶接のような、ガスメタルアーク溶接法を適用しても予熱温度:200℃で溶接割れ(低温割れ)が発生しない、ことを見出した。さらに、耐摩耗鋼板の組成を、上記したCeq*で0.78%以下とし、かつ焼入れ性指数DI*が170以上となるように調整することにより、50mmを超える厚肉鋼板の板厚中央部までマルテンサイト相を主相とする組織とすることができ、板厚中央部においても耐摩耗性に優れ、かつ耐溶接割れ性に優れた厚肉耐摩耗鋼板とすることができることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.50〜1.60%、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Nb:0.005〜0.024%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下を含み、さらに、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、かつ次(1)式
Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10 ……(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で定義されるCeq*が0.68〜0.78%を、次(2)式
DI*=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1) ……(2)
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で示されるDI*が170以上300以下を、それぞれ満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、表層が体積率で90%以上のマルテンサイト相を含み、かつ板厚中央部が体積率で70%以上のマルテンサイト相を含む組織とを有し、表面下0.5mm位置および板厚中央位置における硬さがいずれも、450HB10/3000以上であり、耐摩耗性と耐溶接割れ性に優れることを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板。
(3)鋼素材を、加熱し、熱間圧延を施して、厚肉耐摩耗鋼板とするにあたり、
前記鋼素材を、質量%で、C:0.13〜0.35%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.50〜1.60%、P:0.010%以下、S:0.005%以下、Nb:0.005〜0.024%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.1%以下を含み、さらに、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、かつ次(1)式
Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10 ……(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で定義されるCeq*が0.68以上0.78%以下を、次(2)式
DI*=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1) ……(2)
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で示されるDI*が170以上300以下を、それぞれ満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、前記加熱を、加熱温度:950〜1250℃とする加熱とし、前記熱間圧延の圧延終了温度を、800〜900℃の範囲の温度とし、前記熱間圧延終了後に、直ちに200℃以下まで水冷する直接焼入れ処理を施し、耐摩耗性および耐溶接割れ性に優れる鋼板とすることを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。
(4)(3)において、前記熱間圧延終了後に、200℃以下まで空冷し、さらに再加熱温度:800〜950℃に再加熱したのち、200℃以下まで水冷する再加熱焼入れ処理を施すことを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。
(5)(3)または(4)において、前記組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。
(6)(1)または(2)に記載の厚肉耐摩耗鋼板を素材とし、該素材を、溶接材料としてソリッドワイヤを用いたガスメタルアーク溶接法を用いて、予熱温度:200℃以下、溶接入熱:15〜40kJ/cmで、溶接し、所定形状の部材とすることを特徴とする耐摩耗部材の製造方法。
本発明によれば、表層さらには板厚中央位置の耐摩耗性に優れ、かつガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤのような安価な溶接材料を用いて、ガスメタルアーク溶接しても、溶接割れ(低温割れ)を発生させることなく、また耐摩耗性を低下させることなく、溶接することが可能な、厚肉耐摩耗鋼板を容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明厚肉耐摩耗鋼板の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.13〜0.35%
Cは、固溶してマトリクスを高硬度化して、耐摩耗性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.13%以上の含有を必要とする。一方、0.35%を超える多量の含有は、耐溶接割れ性を低下させる。このため、Cは0.13〜0.35%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.18〜0.30%、より好ましくは0.23〜0.27%である。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸剤として有効に作用するとともに、鋼中に固溶して鋼の固溶強化により、高硬度化にも寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。しかし、0.50%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量を増加させる。このため、Siは0.05〜0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.40%であり、さらに好ましくは0.15〜0.40%である。
Mn:0.50〜1.60%
Mnは、安価に焼入れ性を向上させる元素であり、合金コストの低減という観点から本発明では有用な元素である。厚肉鋼板の硬さを所望の高硬度とするためには、0.50%以上の含有を必要とする。また、MnはPの粒界偏析を助長し、粒界破壊の発生、および、遅れ破壊の発生、さらには溶接時の遅れ割れの発生を助長する。このため、Mnの含有は必要最小限とすることが好ましいが、1.60%以下の含有であれば、粒界破壊の発生が抑制される。このため、Mnは1.60%以下に限定した。このようなことから、Mnは0.50〜1.60%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.80〜1.60%であり、さらに好ましくは、0.80〜1.20%である。
P:0.010%以下
Pは、不可避的不純物として存在し、粒界に偏析し、粒界破壊、遅れ破壊や、溶接割れの発生を助長する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.010%以下であれば、とくに悪影響を及ぼさない。このようなことから、Pは0.010%以下に限定した。
S:0.005%以下
Sは、主としてMnS等の非金属介在物として存在し、破壊の発生起点となり、延性、靭性等を低下させる。このため、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.005% 以下であれば、とくに悪影響は認められない。このようなことから、Sは0.005%以下に限定した。
Nb:0.005〜0.024%
Nbは、炭窒化物あるいは炭化物として析出し、組織を微細化し、遅れ破壊発生を抑制する効果を有する元素である。このような効果を得るためには、0.005% 以上の含有を必要である。一方、0.024%を超える多量の含有は、粗大な炭窒化物が析出し、破壊の起点となることがあり、延性、靭性等が低下する。このため、Nbは0.005〜0.024%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.020%である。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは、窒化物形成元素であり、窒化物としてNを固定することにより、BNの析出を抑制しBの焼入れ性向上効果を助長する効果を有する元素であり、本発明ではBとともに含有させる。このような効果を得るためには、Tiは0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.05%を超える多量の含有は、TiCを析出させ、母材靭性を低下させる。このため、Tiは0.005〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.020%である。
B:0.0003〜0.0030%
Bは、微量含有で、焼入れ性を著しく向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.0030%を超える多量の含有は、溶接性を低下させる。このため、Bは0.0003〜0.0030%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.0005〜0.0020%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合しAlNとして再加熱時の結晶粒の粗大化を抑制する作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.0020%以上含有することが好ましいが、0.1%を超える多量の含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定した。なお、好ましくは0.015〜0.060%である。
Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、W、Cu、Ni、Cr、Vは、いずれも焼入れ性を向上させる元素であり、本発明では、1種または2種以上を選択して含有させる。
Moは、鋼中に固溶して焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とするが、1.0%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、含有する場合には、Moは0.05〜1.0%の範囲に限定した。なお、より好ましくは、0.05〜0.80%である。
また、Wは、Moと同様に、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とするが、1.0%を超えて含有すると、溶接性が低下する。このため、含有する場合には、Wは0.05〜1.0%の範囲に限定した。なお、より好ましくは、0.05〜0.80%である。
Cuは、鋼中に固溶して、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、含有する場合には、Cuは0.1〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.5%である。
Niは、鋼中に固溶して、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、材料コストを著しく上昇させる。このため、含有する場合には、Niは0.1〜2.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜1.0%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、鋼中に固溶して、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.1〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.1〜0.80%である。
V:0.005〜0.10%
Vは、鋼中に固溶して、焼入れ性を向上される元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.10% を超える含有は溶接性を低下させる。このため、含有する場合には、Vは0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.030〜0.080%である。
上記した成分が基本の成分であるが、基本組成に加えて、さらに選択元素として、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有してもよい。
Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種
Ca、REMはいずれも、硫化物形態制御に寄与し、延性、靭性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
このような効果を得るためには、Ca、REMはいずれも、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.0050%を超えて含有すると、鋼の清浄度が低下する。このため、含有する場合は、Ca、REMはいずれも0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、N:0.0060%以下が許容できる。
本発明では、上記した組成範囲で、かつ、次(1)式
Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10 ……(1)
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で定義されるCeq*が0.68〜0.78%を、次(2)式
DI*=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1) ……(2)
ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
で定義されるDI*が170以上300以下を、それぞれ満足するように、調整する。
Ceq*とDI*とを、上記したCeq*:0.68〜0.78%、DI*:170以上300以下の範囲を同時に満足するように、バランスよく組成を調整することが、厚肉耐摩耗鋼板の耐摩耗性と耐溶接割れ性とを同時に向上させるために、重要となる。
Ceq*が0.68%を下回ると、板厚中心位置の硬さが低下する。一方、Ceq*が0.78%を超えると、溶接割れを発生させないために必要な予熱温度が200℃を超え、鋼板の硬さが低下する。このため、Ceq*は0.68〜0.78の範囲に限定した。
また、DI*が170未満となると、焼入れ深さが減少し、板厚:50mmを超える厚肉鋼板の板厚中央位置の硬さが低下し、厚肉部材としての耐摩耗性が低下し、部材寿命が短くなる。一方、DI*が300を超えて大きくなると、溶接性が低下する。このため、DI*は170以上300以下に限定した。
本発明耐摩耗鋼板は、上記した組成を有し、かつ表層が体積率で90%以上のマルテンサイト相を含み、かつ板厚中央部が体積率で70%以上のマルテンサイト相を含む組織とを有する。
なお、ここでいう「表層」とは、鋼板表面から板厚方向に深さ:2mmまでの領域をいうものとする。また、ここでいう「板厚中央部」とは、板厚中央位置を中心として板厚方向に±5mmの範囲をいうものとする。
表層の組織が、体積率で90%未満のマルテンサイト相を含む組織である場合には、所望の高硬さ(450HB10/3000以上、好ましくは480HB10/3000以上)を確保できにくくなり、表層の耐摩耗性が低下する。このため、表層の組織は、体積率で90%以上のマルテンサイト相を含む組織に限定した。
また、板厚中央部の組織が体積率で70%未満のマルテンサイト相を含む組織である場合には、所望の高硬さ(450HB10/3000以上)を確保できにくくなり、板厚中央部の耐摩耗性が低下する。このため、板厚中央部の組織を、体積率で70%以上のマルテンサイト相を含む組織に限定した。なお、マルテンサイト相以外は、ベイナイト相等が例示できる。
上記した組成、組織を有する本発明厚肉耐摩耗鋼板は、表面下0.5mm位置および板厚中央位置における硬さがいずれも、450HB10/3000以上である高硬さを有し、耐摩耗性に優れ、さらには、耐溶接割れ性に優れた耐摩耗鋼板である。
つぎに、本発明厚肉耐摩耗鋼板の好ましい製造方法について説明する。
上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。得られた鋼素材は、ついで、加熱され、熱間圧延を施されて、所望の板厚の厚肉耐摩耗鋼板とされる。
熱間圧延のための加熱は、950〜1250℃とすることが好ましい。加熱温度が950℃未満では、圧延荷重が過大となり、熱間圧延が困難となる。一方、加熱温度が1250℃を超えると、結晶粒が粗大化し、延性、靭性が低下する。このため、熱間圧延のための加熱温度は950〜1250℃の範囲の温度に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1000〜1200℃である。なお、得られた鋼素材が、熱間圧延を実施できる程度以上の熱量(温度)を有している場合には、加熱することなく直接、あるいは保熱程度の加熱炉保持を行ったのち、熱間圧延を施してもよい。
鋼素材を、上記した加熱温度に加熱し、あるいは加熱することなく、熱間圧延を施し、所定板厚の厚肉鋼板とすることが好ましい。なお、本発明では、熱間圧延の圧延終了温度を、800〜900℃の範囲の温度とし、熱間圧延終了後に、直ちに200℃以下まで水冷する直接焼入れ処理を施し、所定の高硬さを有する厚肉耐摩耗鋼板とすることが好ましい。
なお、熱間圧延の圧延終了温度が、800℃未満では、その後の水冷(直接焼入れ処理)により表層の組織を体積率で90%以上のマルテンサイト相を含む組織とすることができない。一方、圧延終了温度が、900℃を超える高温では、組織が粗大化する。このため、熱間圧延の圧延終了温度は800〜900℃の範囲に限定することが好ましい。
また、熱間圧延を施し、所定板厚の厚肉鋼板としたのち、空冷で、200℃以下の温度まで冷却し、冷却後、さらに再加熱温度:800〜950℃に再加熱したのち、100℃以下まで水冷する再加熱焼入れ処理を施し、所定の高硬さを有する厚肉耐摩耗鋼板としてもよい。
なお、再加熱温度が800℃未満では、表層の組織を所望のマルテンサイト相を含む組織とすることができない。一方、950℃を超える高温では、組織が粗大化する。このため、再加熱温度は800〜950℃の範囲の温度に限定することが好ましい。
また、直接焼入れ処理、再加熱焼入れ処理における水冷の冷却停止温度は、所望の体積率のマルテンサイト相を含む組織を得るために、200℃以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは100℃以下である。
上記した組成、組織を有する本発明厚肉耐摩耗鋼板は、表層さらには板厚中央位置の硬さが450HB10/3000以上の高硬さを有し、耐摩耗性に優れた鋼板である。さらに、本発明厚肉耐摩耗鋼板は、予熱温度:200℃で予熱すれば、ガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤのような安価な溶接材料を用いたガスメタルアーク溶接法を用いて溶接しても、溶接割れの発生もなく、また耐摩耗性を低下させることなく、溶接することが可能な、耐溶接割れ性に優れた厚肉耐摩耗鋼板である。したがって、本発明厚肉耐摩耗鋼板を素材として用いれば、耐摩耗部材を、ソリッドワイヤを溶接材料とするガスメタルアーク溶接法を用いた溶接により製造することができる。
すなわち、本発明厚肉耐摩耗鋼板を素材とする、耐摩耗部材の製造方法はつぎのとおりである。
本発明厚肉耐摩耗鋼板を素材とし、該素材を、溶接材料としてソリッドワイヤを用いたガスメタルアーク溶接法を用いて、予熱温度:200℃以下、溶接入熱:15〜40kJ/cmで、溶接し、所定形状の部材とする。
上記した組成、組織を有する厚肉耐摩耗鋼板から、所定の形状を有する素材を採取する。得られた素材を所定形状の部材となるように、溶接により組み立てる。溶接は、ソリッドワイヤを用いたガスメタルアーク溶接法とする。使用する溶接材料としては、JIS Z 3312に規定される「軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ」の中から、被溶接材の強度に応じて、適宜選択することができる。溶接の予熱温度は、200℃以下とする。予熱温度が200℃を超えると、鋼板硬さが低下し、耐摩耗性が低下する。なお、予熱温度は、200℃以下の、溶接割れの発生が懸念されない範囲とする。また、溶接の入熱量は、15〜40kJ/cmとする。溶接の入熱量が上記した範囲を外れると、溶接割れの発生、溶接部の硬さ低下を招く。
以下、さらに、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(150kgf)(鋼素材)とした。これら鋼素材を、表2に示す加熱温度に加熱し、表2に示す条件で熱間圧延を施したのち、室温まで冷却(空冷)して、表2に示す板厚の厚鋼板とした。室温まで空冷された厚鋼板には、さらに表2に示す再加熱温度まで加熱したのち、200℃以下まで水冷する再加熱焼入れ処理(RQ)を施した。なお、一部では、熱間圧延終了後、直ちに200℃以下まで水冷する直接焼入れ処理(DQ)を施した。
Figure 0006729522
Figure 0006729522
得られた厚鋼板について、組織観察、硬さ測定、y型溶接割れ試験、を実施した。試験方法は、次のとおりである。
(1)組織観察
得られた厚鋼板から組織観察用試験片を採取し、研磨、腐食し、走査型電子顕微鏡を用いて組織を観察し撮像した。観察位置は、表面から深さ方向に0.5mmの位置と板厚中央位置(1/2t)とした。なお、腐食液はナイタールとした。得られた組織写真から画像解析装置により、組織分率を算出した。
(2)硬さ測定
得られた厚鋼板から試験片を採取し、JIS Z 2243の規定に準拠して、ブリネル硬さ計(球圧子直径:10mm、試験力:29.42kN)を用いて、硬さHBW10/3000を測定した。なお、球圧子はタングステン硬球を使用した。測定位置は、厚鋼板の表面下0.5mm位置と板厚中央位置(1/2t)とし、該各測定位置でランダムに選んだ5点とした。得られた硬さの平均値を当該測定位置における硬さHB10/3000とし、耐摩耗性を評価した。なお、表面下0.5mm位置と板厚中央位置(1/2t)のいずれにおいても、450 HB10/3000以上の硬さを有する場合を「耐摩耗性に優れる」として「○」と評価した。それ以外の場合は「耐摩耗性が低下している」として「×」と評価した。
(3)y形溶接割れ試験
得られた厚鋼板からy形溶接割れ試験片を採取し、JIS Z 3158の規定に準拠し、予熱温度を150℃、200℃とするy形溶接割れ試験を実施した。試験ビードの溶接後、48時間以上経過したのち、試験溶接部における割れの有無を調査し、厚鋼板の耐溶接割れ性を評価した。なお、試験ビードの溶接は、溶接材料として、(株)神戸製鋼所製「MG50(商品名)」を使用し、溶接入熱量:17kJ/cmのガスメタルアーク溶接とした。(株)神戸製鋼所製「MG50(商品名)」は、JIS Z 3312に規定される「軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ」のマグ溶接用「YGW11」に相当する。
得られた結果を、表3に示す。
Figure 0006729522
本発明例は、板厚:50mm以上の厚肉であるにもかかわらず、表層および板厚中央位置での硬さが450HB10/3000以上の高硬さを示し、耐摩耗性に優れた厚肉耐摩耗鋼板となっている。また、本発明例は、y形溶接割れ試験において、予熱温度:200℃であれば、溶接割れの発生は認められず、耐溶接割れ性に優れた厚肉鋼板となっている。一方、本発明範囲を外れる比較例は、表層あるいは板厚中央位置での硬さが450HB10/3000未満であり、耐摩耗性が低下しているか、あるいはy形溶接割れ試験において予熱温度:200℃であっても、溶接割れが発生し、耐溶接割れ性が低下しているか、あるいは耐摩耗性および耐溶接割れ性が低下している。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.13〜0.35%、 Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.50〜1.60%、 P :0.010%以下、
    S :0.005%以下、 Nb:0.005〜0.024%、
    Ti:0.005〜0.020%、 B :0.0003〜0.0030%、
    Al:0.1%以下
    を含み、さらに、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上
    を含有し、かつ下記(1)式で定義されるCeq*が0.68〜0.78%を、下記(2)式で示されるDI*が170以上300以下を、それぞれ満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、表層が体積率で90%以上のマルテンサイト相を含み、かつ板厚中央部が体積率で70%以上のマルテンサイト相を含む組織とを有し、
    表面下0.5mm位置および板厚中央位置における硬さがいずれも、450HB10/3000以上であり、
    耐摩耗性と耐溶接割れ性に優れることを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板。

    Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10 ……(1)
    DI*=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1) ……(2)
    ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の厚肉耐摩耗鋼板。
  3. 鋼素材を、加熱し、熱間圧延を施して、厚肉耐摩耗鋼板とするにあたり、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.13〜0.35%、 Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.50〜1.60%、 P :0.010%以下、
    S :0.005%以下、 Nb:0.005〜0.024%、
    Ti:0.005〜0.020%、 B :0.0003〜0.0030%、
    Al:0.1%以下
    を含み、さらに、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、V:0.005〜0.10%のうちから選ばれた1種または2種以上
    を含有し、かつ下記(1)式で定義されるCeq*が0.68以上0.78%以下を、下記(2)式で示されるDI*が170以上300以下を、それぞれ満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成の鋼素材とし、
    前記加熱を、加熱温度:950〜1250℃とする加熱とし、
    前記熱間圧延の圧延終了温度を、800〜900℃の範囲の温度とし、
    前記熱間圧延終了後に、直ちに200℃以下まで水冷する直接焼入れ処理を施し、表層が体積率で90%以上のマルテンサイト相を含み、かつ板厚中央部が体積率で70%以上のマルテンサイト相を含む組織とを有し、表面下0.5mm位置および板厚中央位置における硬さがいずれも、450HB10/3000以上であり、耐摩耗性および耐溶接割れ性に優れる鋼板とすることを特徴とする厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。

    Ceq*=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5+W/10 ……(1)
    DI*=33.85×(0.1×C)0.5×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(1.5×W+1) ……(2)
    ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、W:各元素の含有量(質量%)
  4. 前記熱間圧延終了後に、200℃以下まで空冷し、さらに再加熱温度:800〜950℃に再加熱したのち、200℃以下まで水冷する再加熱焼入れ処理を施すことを特徴とする請求項3に記載の厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、Ca:0.0005〜0.0050%、REM:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項3または4に記載の厚肉耐摩耗鋼板の製造方法。
  6. 請求項1または2に記載の厚肉耐摩耗鋼板を素材とし、該素材を、溶接材料としてソリッドワイヤを用いたガスメタルアーク溶接法を用いて、予熱温度:200℃以下、溶接入熱:15〜40kJ/cmで、溶接し、所定形状の部材とすることを特徴とする耐摩耗部材の製造方法。
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