以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数6以上10以下のアリール基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基、炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基、炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基及び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数以上5以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基及びヘキシル基が挙げられる。炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上5以下である基である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上4以下である基である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、ヘキシルオキシ基及び1−エチル−1−メチルプロポキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、炭素原子数が1以上3以下である基である。
炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数6以上10以下のアリール基は、各々、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、インダセニル基、ビフェニレニル基、アセナフチレニル基、アントリル基及びフェナントリル基が挙げられる。炭素原子数6以上10以下のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基が挙げられる。
炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基及び炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基は、各々、非置換である。炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基、シクロトリデシリデン基及びシクロテトラデシリデン基が挙げられる。炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基は、下記一般式で表される。一般式中、tは1以上10以下の整数を表し、*は結合手を表す。tは、1以上8以下の整数を表すことが好ましく、1、2又は8を表すことがより好ましく、2又は8を表すことが更に好ましい。
炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基及び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、各々、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基である。び炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基は、炭素原子数1以上5以下のアルキル基を有するカルボニル基である。
<電子写真感光体>
本実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1を参照して、本実施形態に係る感光体1について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の一例を示す部分断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、単層である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図1(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。
感光層3の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1を参照して、感光体1について説明した。以下、感光体について、更に詳細に説明する。
<感光層>
感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂と電子輸送剤とを含有する。感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載することがある)を含む。正孔輸送剤として、化合物(1)を感光層が含有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。
感光層に化合物(1)が含有されることにより、感光体の電気特性(例えば、感度特性及び帯電特性の一方又は両方)を向上させることができ、感光層の結晶化を抑制することができる。その理由は以下のように推測される。
第一に、一般式(1)中、R1〜R10が結合していないフェニル基(以下、フェニル基Aと記載することがある)のパラ位には、メトキシ基が結合している。これにより、感光体の感度特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制することができる。逆に、フェニル基Aのパラ位にメトキシ基以外の置換基(例えば、アルキル基又は水素原子)が結合すると、感光体の感度特性が低下する。また、フェニル基Aのパラ位にメトキシ基以外の置換基(例えば、アルキル基又は水素原子)が結合すると、感光層の結晶化を抑制することができない。更に、メトキシ基がフェニル基Aのパラ位以外の位置(例えば、オルト位又はメタ位)に結合すると、感光体の感度特性が低下する。
第二に、一般式(1)中、フェニル基Aのオルト位及びメタ位には、水素原子が結合している。これにより、感光体の感度特性を向上させることができる。逆に、フェニル基Aのオルト位及びメタ位の1つ以上に、水素原子以外の置換基(例えば、アルキル基)が結合すると、感光体の感度特性が低下する。
第三に、一般式(1)中、R1〜R10は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。これにより、感光体の感度特性を向上させることができる。逆に、R1〜R10が炭素原子数2以上のアルキル基であると、感光体の感度特性が低下する。
次に、化合物(1)の好適な例としては、化学式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(1−1)、(1−2)及び(1−3)と記載することがある)が挙げられる。感光層の結晶化を抑制しつつ感光体の感度特性を更に向上させるためには、化合物(1)のより好適な例としては、化合物(1−2)及び(1−3)が挙げられる。
バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinは、0.50以上である。比率mHTM/mResinが0.50未満であると、感光体の感度特性が低下する。感光体の感度特性を向上させるためには、比率mHTM/mResinは、0.55以上であることがより好ましい。比率mHTM/mResinの上限値は、例えば、0.70とすることができる。
感光層に正孔輸送剤として化合物(1)のみが含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは化合物(1)の質量である。感光層に2種以上の正孔輸送剤が含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の質量の和である。
感光層に1種のバインダー樹脂が含有される場合には、バインダー樹脂の質量mResinは1種のバインダー樹脂の質量である。感光層に2種以上のバインダー樹脂が含有される場合には、バインダー樹脂の質量mResinは2種以上のバインダー樹脂の質量の和である。
感光層は、化合物(1)の1種のみを含有してもよいし、化合物(1)の2種以上を含有してもよい。また、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(1)のみを含有してもよい。また、感光層は、化合物(1)に加えて、その他の正孔輸送剤を更に含有してもよい。
その他の正孔輸送剤としては、例えば、化合物(1)以外の含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。化合物(1)以外の含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン化合物(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物及びトリアゾール系化合物が挙げられる。
(バインダー樹脂)
感光層に含有されるバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物及びウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。感光層は、これらのバインダー樹脂の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性が高まり、感光層が摩耗し難い。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、バインダー樹脂が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、感光層の形成が容易になる。
感光体の感度特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するために、バインダー樹脂としては、ポリアリレート樹脂又はポリカーボネート樹脂が好ましい。
(ポリアリレート樹脂)
感光体の感度特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するために、ポリアリレート樹脂としては、一般式(10)で表される繰り返し単位の少なくとも1種と、一般式(11)で表される繰り返し単位の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂が好ましい。以下、一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(10)及び(11)と記載することがある。
一般式(10)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R13は水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し且つR14は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。或いは、R13及びR14は互いに結合して炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基を表す。
ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。
ポリアリレート樹脂に少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうちの1種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうちの他の種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。
(繰り返し単位(10))
繰り返し単位(10)について説明する。一般式(10)中、R13及びR14が表わす炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(10)中、R13及びR14が互いに結合して表す炭素原子数5以上14以下のシクロアルキリデン基としては、炭素原子数5以上12以下のシクロアルキリデン基が好ましく、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基又はシクロドデシリデン基がより好ましく、シクロヘキシリデン基又はシクロドデシリデン基が更に好ましい。
繰り返し単位(10)の好適な例としては、化学式(10−1)、(10−2)、(10−3)及び(10−4)で表される繰り返し単位が挙げられる。以下、化学式(10−1)、(10−2)、(10−3)及び(10−4)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(10−1)、(10−2)、(10−3)及び(10−4)と記載することがある。感光体の感度特性を向上させつつ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、繰り返し単位(10)のより好適な例としては、繰り返し単位(10−1)、(10−2)及び(10−3)が挙げられる。
ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)として、繰り返し単位(10)の1種のみを含んでいてもよく、繰り返し単位(10)の少なくとも2種(例えば、2種又は3種)を含んでいてもよい。
次に、ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、及び少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合に分けて、繰り返し単位(11)について説明する。
(1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合)
ポリアリレート樹脂に1種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と、化学式(11−X1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(11−X1)と記載することがある)とを含む。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の1種と、繰り返し単位(11−X1)とを含むことが好ましい。
(少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合)
ポリアリレート樹脂に少なくとも2種の繰り返し単位(11)が含まれる場合、一般式(11)中、Xは、化学式(X1)、化学式(X2)、化学式(X3)、化学式(X4)、化学式(X5)又は化学式(X6)で表される二価の基を表す。少なくとも2種の繰り返し単位(11)のうちの1種の繰り返し単位(11)において、一般式(11)中のXは、化学式(X1)で表される二価の基を表す。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と、繰り返し単位(11−X1)と、一般式(11’)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(11’)と記載することがある)の少なくとも1種を含む。この場合、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)の1種と、繰り返し単位(11−X1)と、繰り返し単位(11’)の1種とを含むことが好ましい。
一般式(11’)中のX’は、化学式(X2)、(X3)、(X4)、(X5)又は(X6)で表される二価の基を表す。X’は、化学式(X2)又は(X3)で表される二価の基を表すことが好ましい。
繰り返し単位(11’)の例としては、化学式(11−X2)、(11−X3)、(11−X4)、(11−X5)及び(11−X6)で表される繰り返し単位(以下、それぞれを繰り返し単位(11−X2)、(11−X3)、(11−X4)、(11−X5)及び(11−X6)と記載することがある)が挙げられる。繰り返し単位(11’)としては、繰り返し単位(11−X2)又は(11−X3)が好ましい。
感光体の感度特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(11)の少なくとも2種を含むことが好ましく、繰り返し単位(11)の2種以上8種以下を含むことがより好ましく、繰り返し単位(11)の2種又は3種を含むことが更に好ましく、繰り返し単位(11)の2種を含むことが特に好ましい。
感光体の感度特性を向上させ、感光層の結晶化を抑制するためには、繰り返し単位(11−X1)の数と繰り返し単位(11’)の数との和に対する、繰り返し単位(11−X1)の数の比率(以下、比率pと記載することがある)が、0.10以上0.90以下であることが好ましく、0.20以上0.80以下であることがより好ましく、0.30以上0.70以下であることが更に好ましく、0.40以上0.60以下であることが一層好ましく、0.50であることが特に好ましい。比率pは、各々、1本の分子鎖から得られる値ではなく、感光層に含有されるポリアリレート樹脂の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。比率pは、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂の1H−NMRスペクトルを測定し、得られた1H−NMRスペクトルから算出することができる。
感光体の感度特性を向上させつつ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂の好適な例としては、繰り返し単位(10−1)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂;繰り返し単位(10−2)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂;繰り返し単位(10−2)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X2)を含むポリアリレート樹脂;及び繰り返し単位(10−3)、繰り返し単位(11−X1)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂が挙げられる。
繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂としては、例えば、繰り返し単位(10−4)及び繰り返し単位(11−X3)を含むポリアリレート樹脂を使用してもよい。
ポリアリレート樹脂において、芳香族ジオール由来の繰り返し単位と、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位とは、隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂が共重合体である場合、ポリアリレート樹脂は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
芳香族ジオール由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(10)である。ポリアリレート樹脂が繰り返し単位(10)の2種以上を含む場合、1種の繰り返し単位(10)と他種の繰り返し単位(10)との配列は特に限定されない。1種の繰り返し単位(10)と他種の繰り返し単位と(10)は、繰り返し単位(11)を介して、ランダムに、交互に、周期的に又はブロック毎に配列することができる。また、芳香族ジカルボン酸由来の繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(11)である。ポリアリレート樹脂が繰り返し単位(11)の2種以上を含む場合、1種の繰り返し単位(11)と他種の繰り返し単位(11)との配列は特に限定されない。1種の繰り返し単位(11)と他種の繰り返し単位(11)とは、繰り返し単位(10)を介して、ランダムに、交互に、周期的に又はブロック毎に配列することができる。
ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10)及び(11)のみを含んでいてもよい。また、ポリアリレート樹脂は、繰り返し単位(10)及び(11)に加えて、繰り返し単位(10)及び(11)以外の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
感光層には、バインダー樹脂として、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂の1種のみが含有されてもよく、このようなポリアリレート樹脂の2種以上が含有されてもよい。また、感光層には、バインダー樹脂として、繰り返し単位(10)の少なくとも1種と繰り返し単位(11)の少なくとも1種とを含むポリアリレート樹脂に加えて、それ以外のバインダー樹脂が更に含有されてもよい。
ポリアリレート樹脂の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂の製造方法として、例えば、繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと、繰り返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法としては、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合又は界面重合等)を採用することができる。
繰返し単位を構成するための芳香族ジオールは、例えば、一般式(BP−10)で表される化合物の少なくとも1種である。繰返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸は、例えば、一般式(DC−11)で表される化合物の少なくとも1種である。一般式(BP−10)及び(DC−11)中のR11、R12、R13、R14及びXは、各々、一般式(10)及び(11)中のR11、R12、R13、R14及びXと同義である。以下、一般式(BP−10)及び(DC−11)で表される化合物を、各々、化合物(BP−10)及び(DC−11)と記載することがある。
化合物(BP−10)の好適な例としては、化学式(BP−10−1)〜(BP−10−4)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP−10−1)〜(BP−10−4)と記載することがある)が挙げられる。
化合物(DC−11)の好適な例としては、化学式(DC−11−X1)〜(DC−11−X6)(以下、それぞれを化合物(DC−11−X1)〜(DC−11−X6)と記載することがある)が挙げられる。
繰返し単位を構成するための芳香族ジオール(例えば、化合物(BP−10))を、芳香族ジアセテートに変形して使用してもよい。繰返し単位を構成するための芳香族ジカルボン酸(例えば、化合物(DC−11))を、誘導体化して使用してもよい。芳香族ジカルボン酸の誘導体の例としては、芳香族ジカルボン酸ジクロライド、芳香族ジカルボン酸ジメチルエステル、芳香族ジカルボン酸ジエチルエステル及び芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、芳香族ジカルボン酸の2個の「−C(=O)−OH」基が各々「−C(=O)−Cl」基で置換された化合物である。
芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基及び触媒は、公知の塩基及び触媒から適宜選択することができる。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。以上、ポリアリレート樹脂について説明した。
(ポリカーボネート樹脂)
感光体の感度特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、ポリカーボネート樹脂として、化学式(R−5)、(R−6)又は(R−7)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート樹脂が好ましい。以下、化学式(R−5)、(R−6)及び(R−7)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(R−5)、(R−6)及び(R−7)と記載することがある。
感光体の感度特性を向上させつつ感光層の結晶化を抑制するために、ポリカーボネート樹脂の好適な例としては、繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂、及び繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂が挙げられる。
バインダー樹脂として、繰り返し単位(R−5)、(R−6)又は(R−7)を含むポリカーボネート樹脂の1種のみが含有されてもよく、このようなポリカーボネート樹脂の2種以上が含有されてもよい。また、バインダー樹脂として、繰り返し単位(R−5)、(R−6)又は(R−7)を含むポリカーボネート樹脂に加えて、それ以外のバインダー樹脂が更に含有されてもよい。以上、ポリカーボネート樹脂について説明した。
(電子輸送剤)
感光層は電子輸送剤を含有する。感光層が電子輸送剤を含有することで、感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を向上させることができる。また、電子輸送剤が化合物(1)と錯体を形成することで、感光層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な感光層が形成され易くなり、感光体の感度特性が更に向上し、感光層の結晶化が更に抑制される。
正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子輸送剤の質量mETMの比率mETM/mHTMは、0.01以上1.50以下であることが好ましい。比率mETM/mHTMが0.01以上であると、感光体の感度特性を更に向上させることができる。比率mETM/mHTMが1.50以下であると、感光体の感度特性を更に向上させることができ、感光層の結晶化を更に抑制することができる。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させるためには、比率mETM/mHTMは、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることが更に好ましく、0.60以上であることが一層好ましい。感光層の結晶化を抑制しつつ、感光体の感度特性を更に向上させるためには、比率mETM/mHTMは、1.00以下であることがより好ましく、0.70以下であることが更に好ましい。なお、感光層に2種以上の電子輸送剤が含有される場合には、電子輸送剤の質量mETMは2種以上の電子輸送剤の質量の和である。感光層に2種以上の正孔輸送剤が含有される場合には、正孔輸送剤の質量mHTMは2種以上の正孔輸送剤の質量の和である。
感光体の感度特性を向上させるためには、バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMと電子輸送剤の質量mETMとの和の比率(mHTM+mETM)/mResinは、0.55以上であることが好ましく、0.65以上であることがより好ましく、0.75以上であることが更に好ましく、0.80以上であることが一層好ましく、0.85以上であることが更に一層好ましく、1.00以上であることが特に好ましい。比率(mHTM+mETM)/mResinの上限値は、例えば、1.70とすることができる。
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。1種の電子輸送剤が含有されてもよいし、2種以上の電子輸送剤が含有されてもよい。
電子輸送剤の好適な例としては、一般式(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)と記載することがある)が挙げられる。電子輸送剤が化合物(20)、(21)、(22)、(23)又は(24)である場合、電子輸送剤が化合物(1)と好適に錯体を形成する傾向がある。そのため、感光層形成用の溶剤に対して、形成された錯体が好適に溶解すると考えられる。これにより、均一な感光層が形成され易くなり、感光体の感度特性が更に向上し、感光層の結晶化が更に抑制される。
一般式(20)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(21)中、Q11及びQ12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(22)中、Q21及びQ22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(23)中、Q31は、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基を表す。一般式(24)中、Q41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、Q43はハロゲン原子を表す。
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、一般式(21)中のQ11及びQ12、並びに一般式(24)中のQ41及びQ42が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基又はヘキシル基が好ましく、メチル基、tert−ブチル基又は1−エチル−1−メチルプロピル基がより好ましい。
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、並びに一般式(21)中のQ11及びQ12が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、並びに一般式(21)中のQ11及びQ12が表わす炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
一般式(20)中のQ1、Q2、Q3及びQ4、一般式(21)中のQ11及びQ12、一般式(22)中のQ21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
一般式(22)中のQ21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基として、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい。このような置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。Q21及びQ22が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基(具体的には炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基)の数は、1以上3以下であることが好ましく、2であることがより好ましい。
一般式(23)中のQ31が表わす炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基としては、ブトキシカルボニル基が好ましく、n−ブトキシカルボニル基がより好ましい。
一般式(24)中のQ43が表わすハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
一般式(20)中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(21)中、Q11及びQ12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(22)中、Q21及びQ22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。一般式(23)中、Q31は、炭素原子数2以上6以下のアルコキシカルボニル基を表すことが好ましい。一般式(24)中、Q41及びQ42は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、Q43は塩素原子を表すことが好ましい。
電子輸送剤として好ましくは、化学式(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)と記載することがある)が挙げられる。化合物(20)の好適な例としては、化合物(20−E1)及び(20−E2)が挙げられる。化合物(21)の好適な例としては、化合物(21−E3)が挙げられる。化合物(22)の好適な例としては、化合物(22−E4)が挙げられる。化合物(23)の好適な例としては、化合物(23−E5)が挙げられる。化合物(24)の好適な例としては、化合物(24−E6)が挙げられる。
電子輸送剤として、化合物(20)、(21)、(22)、(23)及び(24)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。化合物(20)〜(24)に加えて、化合物(20)〜(24)以外の電子輸送剤を感光層が含有してもよい。
また、電子輸送剤として、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)の1種のみを感光層が含有してもよく、2種以上を感光層が含有してもよい。また、化合物(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)及び(24−E6)に加えて、それ以外の電子輸送剤を感光層が含有してもよい。
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、電荷発生剤の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM−1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM−2)で表される。
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
(添加剤)
添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びこれらの誘導体が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、有機硫黄化合物及び有機燐化合物も挙げられる。レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。増感剤としては、例えば、メタターフェニルが挙げられる。
(材料の組み合わせ)
感光体の感度特性を更に向上させ、感光層の結晶化を更に抑制するためには、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が、次に示す組み合わせであることが好ましい。また、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤が次に示す組み合わせであり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−1)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−2)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X2)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−3)と繰り返し単位(11−X1)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−4)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−4)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(10−4)と繰り返し単位(11−X3)とを含むポリアリレート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−5)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−6)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−1)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;
正孔輸送剤が化合物(1−2)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)であるか;又は
正孔輸送剤が化合物(1−3)であり、バインダー樹脂が繰り返し単位(R−7)を含むポリカーボネート樹脂であり、電子輸送剤が(20−E1)、(20−E2)、(21−E3)、(22−E4)、(23−E5)又は(24−E6)である。
<導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂の例は、上述したその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
<感光体の製造方法>
感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、例えば、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、塗布液と記載することがある)を調製する。塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して感光層を形成する。塗布液は、例えば、電荷発生剤と、化合物(1)と、バインダー樹脂と、電子輸送剤と、溶剤とを含有する。塗布液は、電荷発生剤と、化合物(1)と、バインダー樹脂と、電子輸送剤とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。塗布液には、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。
塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散器を用いることができる。
各成分の分散性又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、塗布液は、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の少なくとも1つを更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程は、各々、公知の方法を適宜選択することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べた化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニンを準備した。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(20−E1)、化合物(20−E2)、化合物(21−E3)、化合物(22−E4)、化合物(23−E5)及び化合物(24−E6)を準備した。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(1−1)〜(1−3)を準備した。
また、比較例で使用する正孔輸送剤として、化学式(HTM−4)〜(HTM−10)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(HTM−4)〜(HTM−10)と記載することがある)も準備した。なお、化合物(HTM−9)は、特許文献1に記載の化学式(II)で表されるテルフェニルジアミンに相当する。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べた樹脂(R−1)〜(R−8)の各々を準備した。
(樹脂(R−1))
樹脂(R−1)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−1)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−1)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−1)の粘度平均分子量は、50,500であった。
樹脂(R−1)を、以下の方法で合成した。具体的には、反応容器として、温度計、三方コック、及び容量200mLの滴下ロートを備えた容量1Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP−10−1)10g(41.28ミリモル)と、tert−ブチルフェノール0.062g(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム3.92g(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.120g(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水300mLを加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(化合物(DC−11−X1)のジクロライド)4.10g(16.2ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(化合物(DC−11−X3)のジクロライド)4.78g(16.2ミリモル)とを、クロロホルム150mLに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
滴下ロートからクロロホルム溶液Bを、アルカリ性水溶液Aに110分間かけてゆっくりと滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量1Lの三角フラスコに、イオン交換水400mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム400mL及び酢酸2mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水1Lで洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量1Lのビーカーに1Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、樹脂(R−1)が得られた。
(樹脂(R−2))
樹脂(R−2)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−2)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−2)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−2)の粘度平均分子量は、47,500であった。
樹脂(R−2)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を41.28ミリモルの化合物(BP−10−2)に変更した以外は、樹脂(R−1)の合成方法ど同じ方法で、樹脂(R−2)を得た。
(樹脂(R−3))
樹脂(R−3)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−2)、(11−X1)及び(11−X2)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−3)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X2)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−3)の粘度平均分子量は、50,500であった。
樹脂(R−3)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を41.28ミリモルの化合物(BP−10−2)に変更したこと、及び16.2ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドを16.2ミリモルの化合物(DC−11−X2)のジクロライドに変更したこと以外は、樹脂(R−1)の合成方法ど同じ方法で、樹脂(R−3)を得た。
(樹脂(R−8))
樹脂(R−8)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−4)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−8)の粘度平均分子量は、50,900であった。
樹脂(R−8)は、以下の方法で合成した。具体的には、41.28ミリモルの化合物(BP−10−1)を41.28ミリモルの化合物(BP−10−4)に変更したこと、及び16.2ミリモルの化合物(DC−11−X1)のジクロライドと16.2ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドとを32.4ミリモルの化合物(DC−11−X3)のジクロライドに変更したこと以外は、樹脂(R−1)の合成方法ど同じ方法で、樹脂(R−8)を得た。
(樹脂(R−4))
樹脂(R−4)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(10−3)、(11−X1)及び(11−X3)のみを有するポリアリレート樹脂であった。樹脂(R−4)は、繰り返し単位(11)として繰り返し単位(11−X1)及び(11−X3)の2種を有しており、比率pは0.50であった。樹脂(R−4)の粘度平均分子量は、55,000であった。
樹脂(R−4)は、以下の方法で合成した。具体的には、反応容器として、温度計、三方コック、及び容量400mLの滴下ロートを備えた容量2Lの三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP−10−3)29.10g(82.56ミリモル)と、tert−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)と、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.240g(0.768ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水600mLを加えた。反応容器の内容物を20℃で1時間攪拌した。次いで、反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Cを得た。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(化合物(DC−11−X1)のジクロライド)9.84g(38.9ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロライド(化合物(DC−11−X3)のジクロライド)11.47g(38.9ミリモル)とを、クロロホルム300mLに溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Dを得た。
滴下ロートからクロロホルム溶液Dを、アルカリ性水溶液Cに110分間かけてゆっくりと滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を13±3℃に調節しながら、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。次いで、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量2Lの三角フラスコに、イオン交換水500mLを入れた。フラスコ内容物に、得られた有機層を加えた。フラスコ内容物に、クロロホルム300mL及び酢酸6mLを更に加えた。次いで、フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。その後、デカントを用いてフラスコ内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、得られた有機層をイオン交換水500mLで洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーに1.5Lのメタノールを入れた。ビーカー内のメタノールに得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。その結果、樹脂(R−4)が得られた。
(樹脂(R−5))
樹脂(R−5)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−5)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−5)の粘度平均分子量は、50,600であった。
(樹脂(R−6))
樹脂(R−6)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−6)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−6)の粘度平均分子量は、49,400であった。
(樹脂(R−7))
樹脂(R−7)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(R−7)のみを有するポリカーボネート樹脂であった。樹脂(R−7)の粘度平均分子量は、50,900であった。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、合成した樹脂(R−1)〜(R−4)及び(R−8)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。樹脂(R−1)〜(R−4)及び(R−8)のうちの代表例として、樹脂(R−1)及び(R−4)の化学シフト値を以下に示す。化学シフト値から、樹脂(R−1)及び(R−4)が各々得られていることを確認した。樹脂(R−2)、(R−3)及び(R−8)についても同じ方法で、樹脂(R−2)、(R−3)及び(R−8)が各々得られていることを確認した。
樹脂(R−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.85(s,2H),8.29(d,2H),8.23(dd,4H),8.12(d,2H),7.04−7.24(m,16H),2.16(q,4H),1.65(s,6H),0.78(t,6H).
樹脂(R−4):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.84(s, 2H), 8.28(d, 2H), 8.22(d, 4H), 8.11(d, 2H), 7.10−7.31(m, 20H), 2.12(brs, 8H), 1.38(brs, 28H), 1.00(brs, 8H).
<感光体の製造>
上述した電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び電子輸送剤を用いて、感光体(A−1)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)を製造した。
(感光体(A−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤としてのY型チタニルフタロシアニン2.0質量部、正孔輸送剤としての化合物(1−1)60.0質量部、バインダー樹脂としての樹脂(R−1)100.0質量部、電子輸送剤としての化合物(20−E1)25.0質量部、及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800.0質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、塗布液を得た。塗布液を、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体、直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚28μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。感光体(A−1)において、導電性基体上に単層の感光層が備えられていた。
(感光体(A−2)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々を製造した。感光体(A−1)の製造においては正孔輸送剤として化合物(1−1)60.0質量部を使用したが、感光体(A−2)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類及び量の正孔輸送剤を使用した。感光体(A−1)の製造においてはバインダー樹脂として樹脂(R−1)を使用したが、感光体(A−2)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類のバインダー樹脂を使用した。感光体(A−1)の製造においては電子輸送剤として化合物(20−E1)25.0質量部を使用したが、感光体(A−2)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々の製造においては表1〜表3に示す種類及び量の電子輸送剤を使用した。
<感光体の帯電特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、帯電特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の回転数31rpm及び感光体への流れ込み電流+8μAの条件下で、感光体を帯電させた。帯電させた感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の帯電電位(V0、単位:+V)とした。感光体の帯電電位(V0)を、表1〜表3に示す。
<感光体の感度特性の評価>
感光体(A−1)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々に対して、温度10℃及び相対湿度20%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+620Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:1.3μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から80ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位(VL、単位:+V)とした。感光体の露光後電位(VL)を、表1〜表3に示す。なお、露光後電位(VL)の絶対値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。露光後電位(VL)の絶対値が110V以上である感光体を、感光体の感度特性が不良(表3中×で示す)であると評価した。
<感光体の結晶化抑制の評価>
感光体(A−1)〜(A−20)及び(B−1)〜(B−8)の各々の表面(感光層)全域を、肉眼で観察した。そして、感光層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づき、下記評価基準で結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を表1〜表3に示す。なお、評価がCである感光体を、感光層の結晶化が抑制されていない(表3中×で示す)と評価した。
(結晶化抑制の評価基準)
評価A:結晶化した部分が確認されなかった。
評価B:結晶化した部分が若干確認された。
評価C:結晶化した部分が明確に確認された。
表1〜表3中、HTM、Resin、ETM、部、V0及びVLは、各々、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子輸送剤、質量部、帯電電位及び露光後電位を示す。
表1〜表3中、「HTM/Resin」は、バインダー樹脂の質量mResinに対する正孔輸送剤の質量mHTMの比率mHTM/mResinを示す。比率mHTM/mResinは、計算式「比率mHTM/mResin=正孔輸送剤の量(単位:質量部)/バインダー樹脂の量(単位:質量部)」から求めた。
表1〜表3中、「ETM/HTM」は、正孔輸送剤の質量mHTMに対する電子輸送剤の質量mETMの比率mETM/mHTMを示す。比率mETM/mHTMは、計算式「比率mETM/mHTM=電子輸送剤の量(単位:質量部)/正孔輸送剤の量(単位:質量部)」から求めた。
感光体(A−1)〜(A−20)の各々は、導電性基体と、感光層とを備えていた。感光層は、単層であった。感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂と電子輸送剤とを含有していた。バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率は、0.50以上であった。正孔輸送剤は、化合物(1)を含んでいた。具体的には、感光体(A−1)〜(A−20)の各々では、正孔輸送剤として、一般式(1)に包含される化合物(1−1)、(1−2)又は(1−3)が感光層に含有されていた。そのため、表1及び表2から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−20)では、露光後電位(VL)の絶対値が110V未満であり、電気特性(特に感度特性)が優れていた。また、感光体(A−1)〜(A−20)の結晶化抑制の評価はA又はBであり、感光層の結晶化が抑制されていた。
一方、感光体(B−1)〜(B−7)の各々では、正孔輸送剤として化合物(HTM−4)〜(HTM−10)の何れかを感光層が含有していた。しかし、化合物(HTM−4)〜(HTM−10)は何れも、一般式(1)に包含される化合物ではなかった。そのため、表3から明らかなように、感光体(B−1)〜(B−7)では、露光後電位(VL)の絶対値が110V以上であり、電気特性(特に感度特性)が劣っていた。また、感光体(B−1)〜(B−4)の結晶化抑制の評価はCであり、感光層の結晶化が抑制されていなかった。
感光体(B−8)は、バインダー樹脂の質量に対する正孔輸送剤の質量の比率は、0.50未満であった。そのため、表3から明らかなように、感光体(B−8)では、露光後電位(VL)の絶対値が110V以上であり、電気特性(特に感度特性)が劣っていた。
以上のことから、本発明に係る感光体は、電気特性の向上及び感光層の結晶化の抑制が可能であることが示された。