以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。図面において、同等の構成要素には同等の符号を付す。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。各図に示すX,Y及びZは、互いに直交する3つの座標軸を意味する。各座標軸が示す方向は、全図に共通する。
本実施形態において、希土類磁石とは焼結磁石を意味する。希土類磁石の製造方法では、まず合金を鋳造する。鋳造方法は、例えば、ストリップキャスト法であってよい。合金はフレーク状であってよく、インゴット状であってもよい。合金は、希土類元素Rを含む。希土類元素Rは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。原料合金は、希土類元素Rに加えて、B,N,Fe,Co,Cu,Ni,Mn,Al,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si及びBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含んでよい。合金の化学組成は、最終的に得たい希土類磁石の主相及び粒界相の化学組成に応じて調整すればよい。つまり、目的とする希土類磁石の組成に応じて上記元素を含む各出発原料を秤量・配合して、合金の原料を調製すればよい。希土類磁石は、例えば、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、サマリウム‐鉄‐窒素磁石、又はプラセオジム磁石であってよい。希土類磁石の主相は、例えば、Nd2Fe14B,SmCo5,Sm2Co17,Sm2Fe17N3,Sm1Fe7Nx,又はPrCo5であってよい。粒界相は、例えば、主相に比べて希土類元素Rの含有量が大きい相(Rリッチ相)であってよい。粒界相は、Bリッチ相、酸化物相又は炭化物相を含んでもよい。
上記の合金の粗粉砕により、合金の粗大粉末を得る。粗粉砕では、例えば、水素を合金の粒界(Rリッチ相)に吸蔵させることより、合金を粉砕してよい。合金の粗粉砕では、ディスクミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル又はスタンプミル等の機械的な粉砕方法を用いてもよい。粗粉砕によって得られた粗大粉末の粒径は、例えば、10μm以上100μm以下であってよい。
上記の粗大粉末の微粉砕により、合金の微粉末を得る。微粉砕では、ジェットミル、ボールミル、振動ミル、又は湿式アトライター等により、合金粉末を粉砕してよい。微粉砕によって得られた微粉末の粒径は、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。以下では、粗大粉末又は微粉末を、合金粉末又は金属粉末と記載する場合がある。
粗粉砕で得た合金粉末へ有機物を添加してよい。微粉砕で得た微粉末へ有機物を添加してもよい。つまり、微粉砕の前後いずれかにおいて、有機物を金属粉末と混ぜてよい。有機物は、例えば、潤滑剤として機能する。潤滑剤を金属粉末へ添加することにより、金属粉末の凝集が抑制される。また、潤滑剤を金属粉末へ添加することにより、後工程において型と金属粉末との摩擦が抑制され易い。その結果、磁場印加工程において金属粉末が配向し易く、金属粉末から得られる成形体の表面又は型の表面における傷を抑制し易い。有機物は、例えば、脂肪酸又は脂肪酸の誘導体であってよい。有機物は、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ペンタデシル酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリン酸アミド、ペラルゴン酸アミド、カプリル酸アミド、エナント酸アミド、カプロン酸アミド、バレリアン酸アミド及びブチル酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。潤滑剤は、粉末状の有機物であってよい。潤滑剤は、液状の有機物であってもよい。粉末状の潤滑剤が溶解した有機溶媒を合金粉末へ添加してもよい。
成形工程では、上記の手順で得られた合金粉末を、型内へ供給して、成形体を形成する。例えば、図1に示されるように、型2は、下型8と、下型8の上に配置される筒状の側型6と、側型6の上に配置される上型4(パンチ)と、を備える。希土類磁石の形状及び寸法に対応する空間が、側型6を鉛直方向に貫通している。側型6は、型の側壁と言い換えてよい。下型8は板状であってよい。側型6の下部が、下型8の表面に形成された爪部(stops)に嵌合することにより、水平方向における側型6の位置が固定されてよい。成形工程では、側型6を下型8の上に載置して、側型6の下面側の開口部(穴)を下型8で塞ぐ。このような配置により、側型6及び下型8がキャビティ(雌型)を構成する。続いて、合金粉末を、側型6の上面側の開口部(穴)からキャビティ内へ導入する。その結果、合金粉末がキャビティ内において希土類磁石の形状及び寸法に対応するように成形される。合金粉末を、キャビティへ充填してよい。つまり、キャビティを合金粉末で満たしてよい。上型4は、コア(雄型)と言い換えてよい。上型4は、キャビティに嵌合する形状を有してよい。上型4をキャビティへ挿入してよい。キャビティ内の成形体10(合金粉末)を、上型4の先端面で圧縮してよい。ただし、焼結工程における合金粉末同士の焼結だけにより、成形体10の密度が十分に高まり、所望の密度を有する希土類磁石が得られるので、キャビティ内の合金粉末を圧縮しなくてもよい。
成形工程において、型が合金粉末に及ぼす圧力を、0.049MPa以上20MPa以下(0.5kgf/cm2以上200kgf/cm2以下)に調整してよい。圧力とは、例えば、上型4の先端面が合金粉末に及ぼす圧力であってよい。このように、従来の高圧磁場プレス法よりも低圧で、合金粉末から成形体10を形成することにより、型2と成形体10との摩擦が抑制され易く、型2又は成形体10の破損(例えば成形体10の亀裂)が抑制され易い。圧力が高過ぎる場合、型2が撓んでしまい、目的のキャビティの容量を確保し難く、目的の成形体10の密度が得られ難い。従来の高圧磁場プレス法では、高圧下で合金粉末の成形及び配向を同時に行う必要があった。一方、本実施形態では、成形及び配向を同時に行う必要がないので、成形工程後に、配向工程を行うことができる。成形工程と配向工程とを分けることにより、従来よりも小型で安価な装置(例えば、プレス成形装置、及び磁場印加装置)を各工程に用いることができる。成形工程及び磁場印加工程を略同時に行ってもよい。
磁場印加工程では、磁場を、型2内に保持された成形体10に印加することにより、成形体10に含まれる金属粉末を配向させ、且つ脱磁する。磁場印加工程では、静磁場、又は減衰する交番磁場(alternating magnetic field)を用いてよい。
磁場印加工程において静磁場を用いる場合、成形体10に含まれる金属粉末の配向と脱磁とを別々に実施してよい。例えば、配向ステップでは、第一の静磁場を、型2内に保持された成形体10に印加する。その結果、成形体10に含まれる金属粉末が、第一の静磁場に沿って配向する。配向ステップに続く脱磁ステップでは、第二の静磁場を、型2内に保持された成形体10に印加する。第二の静磁場の強度は第一の静磁場の強度よりも低く、第二の静磁場の方向は第一の静磁場の方向と逆である。このような第二の静磁場の印加により、成形体10が脱磁される。配向ステップと脱磁ステップとの間に他のステップを実施してよい。例えば、配向ステップと脱磁ステップとの間に、成形体10を加圧してよい。配向ステップと脱磁ステップとの間に、成形体10からバリ(burr)を除去してもよい。
以下では、減衰する交番磁場を用いた磁場印加工程を詳しく説明する。
磁場印加工程では、型2内に保持された成形体10に対して、減衰する交番磁場を印加する。減衰する交番磁場Hの印加により、成形体10に含まれる合金粉末を配向させ、且つ脱磁する。交番磁場とは、時間の経過に伴って強度及び方向の変化を繰り返す磁場である。減衰する交番磁場とは、時間の経過に伴って反転を繰り返しながら減衰する磁場である。磁場が反転しなければ、合金粉末は脱磁されない。
磁場印加工程では、例えば、図2に示されるように、型2内に保持された成形体10を、型2と共に、空芯コイル12(ソレノイドコイル)の内側(例えば、空芯コイル12の中心)に配置する。そして、空芯コイル12に電流(例えば交流)を流すことにより、減衰する交番磁場Hを成形体10に印加してよい。交番磁場Hを成形体10に印加する回数は、1回でもよく、複数回でもよい。ただし、希土類磁石の生産効率を高めるためには、交番磁場Hを成形体10に印加する回数は1回であった方がよい。成形体10を、型2と共に、ダブルコイル又はヘルムホルツコイルの内側に配置して、ダブルコイル又はヘルムホルツコイルに電流を流すことにより、型2内の成形体10に交番磁場Hを印加してもよい。ダブルコイルとは、二つのコイルが同一の中心軸を持つように配置された磁場発生装置である。ダブルコイル又はヘルムホルツコイルを用いることにより、空芯コイルを用いる場合に比べて、より均質な交番磁場Hを成形体10に印加することができる。その結果、成形体10における合金粉末の配向性が向上し易く、最終的に得られる希土類磁石の磁気特性が向上し易い。着磁ヨークを用いて、型内の成形体10に交番磁場Hを印加してもよい。
交番磁場Hの最初の半周期の波(第一磁場)の印加により、成形体10を構成する合金粉末(個々の合金粒子)が着磁して、磁場に沿って配向する。換言すれば、第一磁場の印加により、着磁された個々の合金粒子の結晶軸が磁場に沿って揃う。続いて、反転して減衰した第二半周期の波(第二磁場)の印加により、成形体10を構成する個々の合金粒子が脱磁されたり、合金粒子(比較的保磁力が小さい合金粒子)の磁化反転が起こったりする。その結果、成形体10の表面の磁束密度が低下する。ただし、第一磁場の印加により、着磁された個々の合金粒子の結晶軸が第一磁場に沿って揃うので、反転した第二磁場を合金粒子に印加しても、合金粒子にモーメントは作用し難い。したがって、第二の磁場を印加されても、個々の合金粒子は回転し難く、合金粒子の向き(配向性)は乱れ難い。以上のようなメカニズムにより、合金粉末が配向し、且つ脱磁される、と本発明者らは考える。ただし、減衰する交番磁場Hの印加による配向及び脱磁のメカニズムは、上記に限定されるわけではない。
減衰する交番磁場Hは、例えば、パルス磁場であってよい。パルス磁場の一例は、図3に示される。図3の縦軸は、パルス磁場の磁束密度(単位:T)であり、図3の横軸は、時間(単位:秒)である。図3に示されるように、成形体10に最初に印加されるパルス波(第一パルス波PW1)の最大強度(振幅)は、第一パルス波PW1に続いて成形体10に印加されるパルス波(第二パルス波PW2)の最大強度よりも大きい。第二パルス波PW2の方向は、第一パルス波PW1の方向と逆である。第一パルス波PW1の印加により、成形体10を構成する合金粉末(個々の合金粒子)を型2内で第一パルス波PW1の方向に沿って配向させる。第一パルス波PW1に続くパルス波の印加により、成形体10中で配向した合金粉末(個々の合金粒子)を脱磁する。例えば、第一パルス波PW1に続く第二パルス波PW2の印加により、成形体10中で配向した合金粉末(個々の合金粒子)を脱磁してよい。第二パルス波PW2に続く第三パルス波又は第四パルス波の印加によって、合金粉末(個々の合金粒子)を脱磁してもよい。
磁場印加工程では、減衰する交番磁場Hの印加により、成形体10の表面磁束密度を0T以上0.0750T以下(0G以上750G以下)に調整する。成形体10の表面磁束密度とは、例えば、成形体10の表面のうち交番磁場Hの方向に垂直である表面の磁束密度であってよい。
十分に脱磁されていない成形体10の表面磁束密度は高い。そして、成形体10の表面磁束密度が0.075Tを超える場合、成形体10を構成する合金粒子同士がそれぞれの磁気によって反発し易い。合金粒子同士の反発によって、成形体10の密度が低下し易く、成形体10の保形性が損なわれる。その結果、成形体10に亀裂が生じ易く、焼結工程後に得られる焼結体(希土類磁石)においても亀裂が生じ易い。また、成形体10の表面磁束密度が0.075Tを超える場合、成形体10を後工程(例えば焼結工程)の設備へ搬送する際に、成形体10が破損し易い。型2の少なくとも一部が金属から形成されている場合、成形体10の表面磁束密度が高い程、成形体10を構成する合金粉末がその磁気によって型2を構成する金属に付着し易く、成形体10が破損し易い。これらの問題は、磁場印加工程において成形体10の表面磁束密度を0T以上0.075T以下に調整することによって抑制される。磁場印加工程では、成形体10の表面磁束密度を0.0002T以上0.0750T以下に調整してもよい。磁場印加工程では、成形体10の表面磁束密度を0T以上0.0650T以下又は0.0002T以上0.0650T以下に調整してもよい。磁場印加工程では、成形体10の表面磁束密度を0T以上0.0250T以下又は0.0002T以上0.0250T以下に調整してもよい。
型2内の成形体10に印加する交番磁場Hの最大強度は、例えば、796kA/m以上5173kA/m以下(10kOe以上65kOe以下)であってよい。交番磁場Hの最大強度とは、成形体10に最初に印加される交番磁場Hの第一パルス波PW1の最大強度(振幅)と言い換えてよい。交番磁場Hの強度が796kA/m以上(10kOe以上)である場合、合金粉末の配向性が十分に向上し易い。合金粉末の配向性が高いほど、得られる希土類磁石の残留磁束密度が高まり易い。交番磁場Hの強度が5173kA/m(65kOe)を超える場合、交番磁場Hの強度が増加しても合金粉末の配向性が向上し難くなる。また、交番磁場Hの強度が5173kA/m(65kOe)を超える場合、大型の磁場発生装置が必要になり、磁場印加工程に係る費用が高くなる。型2内の成形体10に印加する交番磁場Hの強度は、必ずしも上記の範囲に限定されない。
交番磁場Hの持続時間は、例えば、10μ秒以上0.5秒以下であってよい。交番磁場Hの持続時間とは、成形体10への交番磁場Hの印加を開始した時点から印加を終了するまでの時間である。交番磁場Hの持続時間が10μ秒以上である場合、合金粉末の配向性が十分に高まり易い。交番磁場Hの持続時間が長い程、交番磁場Hを発生させる空芯コイル12における発熱量が大きくなり、電力が浪費される傾向がある。
成形体10に印加される交番磁場Hの第一パルス波PW1の周期は、例えば、0.01ミリ秒以上100ミリ秒以下、好ましくは1ミリ秒以上30ミリ秒以下であってよい。第一パルス波PW1の周期が上記の範囲内である場合、個々の合金粉末の回転が交番磁場Hの印加に追随し易く、合金粉末が配向し易い。その結果、最終的に得られる希土類磁石の磁気特性(例えば残留磁束密度)が向上し易い。流動性の高い合金粉末及び流動性の低い合金粉末のいずれを用いた場合であっても、第一パルス波PW1の周期が短いほど、合金粉末の配向性が向上して、希土類磁石の残留磁束密度が高まる傾向がある。
成形体10に印加される交番磁場Hの第二パルス波PW2の最大強度(振幅)は、例えば、716kA/m以上4775kA/m以下(9kOe以上60kOe以下)であってよい。交番磁場Hの第二パルス波PW2の最大強度とは、第一パルス波PW1に続く第二パルス波PW2の最大強度(振幅)と言い換えてよい。交番磁場Hの第二パルス波PW2の最大強度が上記の範囲内である場合、成形体10中の合金粉末が脱磁され易く、磁場印加工程後の成形体10の表面磁束密度が0.075T以下に調整され易い。交番磁場Hの第二パルス波PW2の最大強度が小さ過ぎる場合、成形体10中の合金粉末が十分に脱磁され難く、磁場印加工程後の成形体10の表面磁束密度が0.075Tを超え易い。
成形体10に印加される交番磁場Hの第二パルス波PW2の周期は、例えば、0.5ミリ秒以上27ミリ秒以下であってよい。第二パルス波PW2の周期が上記の範囲内である場合、成形体10中の合金粉末が脱磁され易く、磁場印加工程後の成形体10の表面磁束密度が0.075T以下に調整され易い。交番磁場Hの第二パルス波PW2の周期が長過ぎたり短過ぎたりする場合、成形体10中の合金粉末が十分に脱磁され難く、磁場印加工程後の成形体10の表面磁束密度が0.075Tを超え易い。
磁場印加工程では、交番磁場Hの波形(例えば第一及び第二のパルス波其々の振幅及び周期)に依らず、合金粉末の配向及び脱磁が常に起きるわけではない。磁場印加工程では、交番磁場Hの波形に依らず、成形体10の表面磁束密度が常に0T以上0.075T以下に調整されるわけではない。合金粉末の配向及び脱磁、並びに成形体10の表面磁束密度の調整に要する交番磁場Hの波形は、合金粉末の性状(例えば、組成、粒径又は形状)に応じて変わる。したがって、合金粉末の性状に応じて交番磁場Hの波形を適宜調整すればよい。交番磁場Hの波形は、例えば、磁場発生装置の電圧E、磁場発生装置に備わる空芯コイル12のインダクタンスL、磁場発生装置に備わるコンデンサの静電容量C、及び磁場発生装置に備わる抵抗の抵抗値Rの調整により、自在に調整可能である。交番磁場Hの発生方法は、交流方式又は直流反転方式であってよい。
交番磁場Hの印加に伴う衝撃によって、型2が空芯コイル12内で動くことがある。型2が動くことにより、型2に隙間が生じて、合金粉末が隙間から漏れることがある。したがって、型2の動きを抑制するために、空芯コイル12内に配置される型2を冶具等で固定してよい。
型2の一部又は全部は、樹脂から形成されていてよい。パルス磁場は、従来の高圧磁場プレス法で多用された静磁場に比べ、高い磁場強度を有しており、短時間で成形体10へ印加される。したがって、パルス磁場を用いた磁場印加工程により、静磁場を用いる場合に比べて、短時間で配向度の高い成形体10が得られる。その結果、残留磁束密度の高い希土類磁石を製造される。しかし、仮に電気伝導体(例えば金属)から構成される型内に保持された成形体10にパルス磁場が印加されると、静磁場が印加される場合に比べて、型に作用する磁場の強度が短時間で急激に変化するため、電磁誘導によって渦電流が型に流れ易く、逆磁場が生じ易い。しかし、型2の一部又は全部が樹脂から形成されている場合、型2内に配置された金属粉末にパルス磁場を印加する際に、型2において渦電流が流れ難く、逆磁場も発生し難い。したがって、成形体10を構成する金属粉末が逆磁場によって型2の表面に引き寄せられる現象が抑制される。その結果、成形体10の密度が均一になり易く、焼結工程において焼結体(希土類磁石)に亀裂が発生し難くなる。また磁場印加工程において渦電流及び逆磁場を抑制することにより、金属粉末の配向性が向上し、結果的に希土類磁石の磁気特性も向上する。さらに型2の一部又は全部が樹脂から形成されている場合、磁場印加工程おいて、渦電流損に起因する型2の温度上昇が抑制され、型2自体に瞬間的に衝撃(磁力)が作用し難い。その結果、型2が消耗し難くなる。
仮に金型内に保持された成形体10にパルス磁場を印加する場合、金型を構成する金属(例えば鉄)の飽和磁束密度が限られているため、金型内の成形体10に実効的に作用する磁場の強度は、金型外のパルス磁場の強度よりも低い。一方、型2が樹脂から形成されている場合、強いパルス磁場を型2内の成形体10へ印加することができる。
樹脂は絶縁性樹脂であってよい。絶縁性樹脂から構成される型2を用いることにより、磁場印加工程において、渦電流及び逆磁場が抑制され易く、型2自体に瞬間的に衝撃が作用し難い。樹脂の抵抗率は、例えば、1Ω・m以上1×1020Ω・m以下、より好ましくは1×109Ω・m以上1×1016Ω・m以下であってよい。このように抵抗率が高い樹脂から型2を形成することにより、磁場印加工程において、渦電流及び逆磁場が抑制され易く、型2自体に瞬間的に衝撃が作用し難い。型2の形成に用いられる樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエチレン・テレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンの共重合体)、エチルセルロース、パラフィンワックス、スチレン・ブタジエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、アタクチック・ポリプロピレン、メタクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリブテン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂及びポリエステル樹脂ならなる群より選ばれる一種又は複数種であってよい。金属及び黒鉛よりも抵抗率が高い導電性プラスチックから構成される型2を用いてもよい。その結果、型2の帯電が抑制され、型2の帯電に起因する合金粉末の型2への付着が抑制される。
型2において渦電流が流れる部分と成形体10との接触面積が広い程、渦電流に起因する焼結体の亀裂、及び磁気特性の劣化が起き易い。本実施形態では、下型8、側型6、及び上型4のうち、側型6と成形体10との接触面積が、下型8及び上型4其々と成形体10との接触面積よりも広い。したがって、下型8、側型6、及び上型4のうち、少なくとも側型6が樹脂から形成されていてよい。成形体10と接触する面積が広い側型6を樹脂から形成することにより、側型6における渦電流及び逆磁場の発生が効果的に抑制され、渦電流及び逆磁場に起因する希土類磁石の亀裂及び磁気特性の劣化が抑制され易くなる。
型の構造は上記の構造に限定されない。型2のうち、樹脂から形成される部分の位置も限定されない。型2の寸法及び形状、又は交番磁場Hの方向に応じて、型2のうち渦電流を抑制する必要がある部分を樹脂から形成すればよい。例えば、型2のうち、合金粉末を配向させる交番磁場Hの方向に対して周回する回路を形成する部分において、渦電流及び逆磁場が生じ易い。すなわち、側型6の貫通部(側型6の内壁6a)が交番磁場Hの方向と平行となる場合において、渦電流及び逆磁場が生じ易い。したがって、型2のうち、合金粉末を配向させる交番磁場Hの方向に対して、周回する回路を形成する部分である側型6が樹脂から形成される場合、渦電流及び逆磁場が抑制され易い。
下型8、側型6、及び上型4の全てが樹脂から形成されていてよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、側型6のみが樹脂から形成されていてよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、下型8のみが樹脂から形成されていてもよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、上型4のみが樹脂から形成されていてもよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、側型6及び上型4が樹脂から形成されていてもよく、下型8は樹脂以外の組成物から形成されてよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、下型8及び側型6が樹脂から形成されていてもよく、上型4は樹脂以外の組成物から形成されてよい。下型8、側型6、及び上型4のうち、下型8及び上型4が樹脂から形成されていてもよく、側型6は樹脂以外の組成物から形成されてよい。型2の一部が樹脂から形成されている場合、型2のうち樹脂以外の部分は、例えば、鉄、ケイ素鋼、ステンレス、パーマロイ、アルミニウム、モリブデン、タングステン、炭素質材料、セラミックス、及びシリコン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種から形成されていてよい。型2のうち樹脂以外の部分は、合金(例えば、アルミニウム合金)から形成されていてもよい。型2の全体が、樹脂以外の組成物から形成されていてもよい。
仮に、下型8、側型6、及び上型4の全てが金属から形成されている場合、成形工程において側型6と上型4との摩擦により、金属屑が側型6又は上型4の表面から脱離して、成形体10に混入する場合がある。成形体10に混入した金属屑(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)は、最終的に得られる希土類磁石の磁気特性を損なう場合がある。対照的に、型2の一部又は全部が樹脂から形成されている場合、型2が金属のみから構成されている場合に比べて、型2の摩耗屑(樹脂)が希土類磁石の磁気特性に及ぼす影響が抑制される。例えば、成形工程において摩擦し合う側型6及び上型4のうち、一方(例えば、側型6)が樹脂であり、他方(例えば、上型4)が金属である場合、側型6と上型4との摩擦により、金属屑の代わりに、金属よりも硬度が低い樹脂屑が生じ易い。樹脂屑は、金属屑に比べて、希土類磁石の磁気特性を損ない難い。例えば、側型6のみが樹脂から形成され、下型8及び上型4が、金属(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)から形成されていてよい。
焼結過程におけるネオジム磁石の収縮率には異方性があるため、収縮後のネオジム磁石(焼結体)の形状(特に複雑な形状)を精密に予測することは困難である。したがって、ネットシェイプのためには、型2の寸法及び形状を調整するための試行錯誤が必要であり、型2の材料としては、切削し易い樹脂が適している。つまり、多様な用途に応じた多品種の希土類磁石を効率的に製造するためには、樹脂から形成された型2が適している。従来の金型は、加工し難く、高価であるため、多様な用途に応じた多品種の希土類磁石の製造に適していない。
同一の型2を用いた成形工程及び磁場印加工程を繰り返す場合、成形及び配向の度に型2内を清掃してよい。例えば、型2内に残った余分な合金粉末を磁場で吸引することによって、型2内を清掃してよい。成形及び配向の度に型2内を清掃することにより、型2内で成形される合金粉末の秤量の精度が向上し、得られる成形体10の密度及び寸法のばらつきが抑制される。その結果、最終的に得られる希土類磁石の密度、寸法及び磁気特性のばらつきが抑制される。仮に、型2が強磁性を有する金属(例えば鉄)から形成されている場合、型2内を清掃する際に、型2自体が磁場によって吸引されるので、型2を清掃し難い。しかし、型2が、強磁性を有しない樹脂から形成されている場合、型2自体が磁場によって吸引されないので、型2内を清掃し易い。仮に、型2が強磁性を有する金属(例えば鉄)から形成されている場合、磁場印加工程において型2自体が着磁して、合金粉末が型2に付着してしまうため、合金粉末の配向性が乱れたり、成形体10の保形性が損なわれたりする。しかし、樹脂から構成される型2を用いる場合、型2自体の着磁が抑制される。
合金粉末を型2内へ供給しながら、型2内で成形される合金粉末の質量を、型2の質量と合わせて、測定してもよい。型2内で成形される合金粉末の質量と、型2の質量と、を同時に測定する場合、型2の質量が重い程、秤の精度が低下して、合金粉末自体の質量の測定の精度も低下する。しかし、従来の金属よりも軽い樹脂から構成される型2を用いる場合、合金粉末の質量を型2自体の質量と共に高い精度で測定することができる。
型2内の合金粉末を加圧しながら、合金粉末を交番磁場Hで配向させてもよい。つまり、磁場印加工程においても、型2内の成形体10を圧縮してよい。型2が成形体10に及ぼす圧力は、上記の理由により、0.049MPa以上20MPa以下に調整してよい。
分離工程では、型2の少なくとも一部を、成形体10から分離する。例えば、分離工程では、上型4及び側型6を成形体10から分離・除去することにより、成形体10を下型8の上に載置してよい。成形体10を保持した側型6及び上型4を下型8から分離して、成形体10を保持した側型6及び上型4を加熱工程用トレイの上に載置してもよい。そして、側型6及び上型4を成形体10から分離して、成形体10を加熱工程用トレイに載置してもよい。上型4及び側型6のうち一方又は両方は、分解及び組立てが可能であってよい。分離工程において、上型4及び側型6のうち一方又は両方を分解することにより、上型4及び側型6のうち一方又は両方を成形体10から外してよい。
成形工程及び磁場印加工程を経た成形体10(加熱工程前の成形体10)の密度は、3.0g/cm3以上4.4g/cm3以下、好ましくは3.2g/cm3以上4.2g/cm3以下、より好ましくは3.4g/cm3以上4.0g/cm3以下に調整されていてよい。
分離工程に続いて、加熱工程を行ってよい。加熱工程では、成形体10を加熱して、成形体10の温度を200℃以上450℃以下に調整してよい。加熱工程では、成形体10の温度を200℃以上400℃以下、又は200℃以上350℃以下に調整してもよい。成形工程では、合金粉末にかかる圧力が、従来の高圧磁場プレス法よりも低いため、合金粉末が押し固まり難く、得られる成形体10が崩れ易い。しかし、加熱工程によって、成形体10の保形性が向上する。
加熱工程では、成形体10の温度が200℃以上になると、成形体10が固まり始めて、成形体10の保形性が向上する。換言すると、成形体10の温度が200℃以上になると、成形体10の機械的強度が向上する。成形体10の保形性が向上するため、成形体10の搬送、又は後工程における成形体10のハンドリングの際に、成形体10が破損し難い。例えば、成形体10を搬送用チャック(chuck)等により掴んで焼結用トレイ上に並べる際に、成形体10が崩れ難い。その結果、最終的に得られる希土類磁石の欠陥が抑制される。
仮に加熱工程において成形体10の温度が450℃を超えた場合、加熱工程後に実施される焼結工程において、成形体10に亀裂が形成され易い。亀裂が形成される原因は定かでない。例えば、加熱工程における成形体10の急激な温度上昇により、成形体10中に残存する水素が、ガスとして成形体10外へ吹き出すことで、成形体10に亀裂が形成される可能性がある。しかし、加熱工程において成形体10の温度を450℃以下に調整することにより、焼結工程における成形体10の亀裂が抑制される。その結果、最終的に得られる希土類磁石における亀裂も抑制され易い。また、加熱工程において成形体10の温度を450℃以下に調整するため、成形体10の昇温又は冷却に要する時間が抑制され、希土類磁石の生産性が向上する。また、加熱工程における成形体10の温度が450℃以下であり、一般的な焼結温度よりも低いため、型2の一部(例えば下型8)とともに成形体10を加熱したとしても、型2の劣化又は成形体10と型2との化学反応が起き難い。したがって、必ずしも耐熱性が高くない組成物(樹脂)から構成される型2であっても利用することができる。
成形体10の温度を200℃以上450℃以下に調整することにより、成形体10の保形性が向上するメカニズムは明らかではない。例えば、合金粉末に添加されている有機物(例えば、潤滑剤)が、加熱工程において炭素になり、合金粉末(合金粒子)同士が炭素を介して結着される可能性がある。その結果、成形体10の保形性が向上するのかもしれない。仮に加熱工程において成形体10の温度が450℃を超えた場合、合金粉末を構成する金属の炭化物が生成したり、合金粉末(合金粒子)同士が直接焼結したりする可能性がある。一方、成形体10の温度が200℃以上450℃以下に調整される場合、金属の炭化物は必ずしも生成せず、合金粒子同士は必ずしも直接焼結しない。
加熱工程において成形体10の温度を200℃以上450℃以下に維持する時間は、特に限定されず、成形体10の寸法及び形状に応じて適宜調整すればよい。
加熱工程では、赤外線を成形体10へ照射することにより、成形体10を加熱してよい。赤外線の照射(つまり輻射熱)によって成形体10を直接加熱することにより、伝導又は対流による加熱の場合に比べて、成形体10の昇温に要する時間が短縮され、生産効率及びエネルギー効率が高まる。ただし、加熱工程では、加熱炉内の熱伝導又は対流により、成形体10を加熱してもよい。赤外線の波長は、例えば、0.75μm以上1000μm以下、好ましくは0.75μm以上30μm以下であってよい。赤外線は、近赤外線、短波長赤外線、中波長赤外線、長波長赤外線(熱赤外線)、及び遠赤外線からなる群より選ばれる少なくとも一つであってよい。上記の赤外線のうち近赤外線は比較的金属に吸収され易い。したがって、近赤外線を成形体へ照射する場合、短時間で金属(合金粉末)を昇温し易い。一方、上記の赤外線のうち遠赤外線は比較的有機物に吸収され易く、金属(合金粉末)によって反射され易い。したがって、遠赤外線を成形体10へ照射する場合、上述した有機物(例えば、潤滑剤)が選択的に加熱され易く、有機物に起因する上記のメカニズムによって成形体10が硬化し易い。赤外線を成形体10へ照射する場合、例えば、赤外線ヒーター(セラミックヒーター等)又は赤外線ランプを用いてよい。
型2の一部又は全部と分離された成形体10を加熱工程において加熱する場合、加熱による型2の劣化(例えば、型2の変形、硬化又は摩耗)が抑制され易く、成形体10と型2との焼き付きも抑制され易い。また型2の一部又は全部と分離された成形体10を加熱する場合、型2が熱を断熱し難く、成形体10が加熱され易い。その結果、成形体10の保形性が向上する。型2の一部又は全部と分離された成形体10を加熱する場合、型2が成形体10と化学的に反応する可能性が低い。そのため、必ずしも型2に耐熱性が要求されるわけではなく、型2の材質が制限され難い。したがって、型2の原料として、所望の寸法及び形状に加工し易く、且つ安価な材料を選定し易い。仮に、加熱工程において成形体10と型2の全部とを一括して加熱した場合、成形体10と型2との間の熱膨張率の差に起因して、成形体10に応力が作用し易く、成形体10が変形したり、破損したりする。また、加熱工程において成形体10と型2の全部とを一括して加熱した場合、加熱対象全体の体積・熱容量が大きい。その結果、一括して加熱される成形体10の数量が制限され、加熱工程に要する時間が長くなり、エネルギーが浪費され、希土類磁石の生産性が低下する。
加熱工程では、例えば、下型8の上に載置された成形体10を加熱してよい。加熱工程では、加熱工程用トレイに載置された成形体10を加熱してもよい。加熱工程では、成形体10の酸化を抑制するために、不活性ガス又は真空中で成形体10を加熱してよい。不活性ガスは、アルゴン等の希ガスであってよい。
加熱工程において、成形体10の温度を200℃以上450℃以下に調整した後、成形体10を100℃以下に冷却してよい。加熱工程後の成形体10の搬送に用いるチャックの表面が樹脂から構成されている場合、成形体10の冷却により、チャックの表面と成形体10との化学反応が抑制され、チャックの劣化、及び成形体10表面の汚染が抑制される。冷却方法は、例えば、自然冷却であってよい。
磁場印加工程後、焼結工程を行う。磁場印加工程後、上記の加熱工程を経ることなく、焼結工程を行ってよい。磁場印加工程後、上記の加熱工程を経て、焼結工程を行ってよい。焼結工程では、型2の全部から分離された成形体10を焼結させる。焼結工程では、成形体10中の合金粒子同士が焼結して、焼結体(希土類磁石)が得られる。
焼結工程において焼結させる成形体10の密度(焼結工程直前の成形体10の密度)は、3.0g/cm3以上4.4g/cm3以下に調整されている。焼結工程において焼結させる成形体10の密度(焼結工程直前の成形体10の密度)は、好ましくは3.2g/cm3以上4.2g/cm3以下、より好ましくは3.4g/cm3以上4.0g/cm3以下に調整されていてよい。成形工程及び磁場印加工程において型が成形体10(合金粉末)に及ぼす圧力が低いほど、焼結工程直前の成形体10の密度が低い傾向がある。また、成形工程及び磁場印加工程において型が成形体10(合金粉末)に及ぼす圧力が低いほど、成形体10を構成する合金粉末が自由に回転し易く、磁場に沿って配向し易い。その結果、最終的に得られる希土類磁石の残留磁束密度Brが高まり易い。したがって、焼結工程直前の成形体10の密度が低いほど、希土類磁石の残留磁束密度Brが高まり易い、といえる。ただし、成形工程及び磁場印加工程において型が成形体10(合金粉末)に及ぼす圧力が低過ぎる場合、成形体10の保形性(機械的強度)が不十分であり、分離工程に伴う成形体10と型との摩擦により、成形体10の表面に位置する合金粉末の配向性が乱れる。その結果、最終的に得られる希土類磁石の残留磁束密度Brが低下する。したがって、焼結工程直前の成形体10の密度が低過ぎる場合、希土類磁石の残留磁束密度Brが低い、といえる。一方、成形工程から焼結工程に至るまでの間に成形体10(合金粉末)に及ぶ圧力が高いほど、焼結工程直前の成形体10の密度が高く、成形体10の保形性(機械的強度)が高い。その結果、最終的に得られる希土類磁石における亀裂が抑制され易い。したがって、焼結工程直前の成形体10の密度が高いほど、希土類磁石における亀裂が抑制され易い、といえる。ただし、成形工程及び磁場印加工程において型が成形体10(合金粉末)に及ぼす圧力が高過ぎる場合、スプリングバックに因り、成形体10に亀裂が形成され易く、成形体10から得られる希土類磁石に亀裂が残ってしまう。なお、スプリングバックとは、合金粉末を加圧して成形した後、圧力を解除した時に、成形体10が膨張する現象である。以上の通り、焼結工程直前の成形体10の密度は、希土類磁石の残留磁束密度及び亀裂に相関している。焼結工程直前の成形体10の密度が上記の範囲内に調整されることにより、希土類磁石の残留磁束密度Brが高まり易く、且つ希土類磁石における亀裂が抑制され易い。
焼結工程直前の成形体10の密度は、成形工程において型2内へ導入する合金粉末の質量、及び成形工程において型2が成形体10(合金粉末)に及ぼす圧力によって調整されてよい。成形工程から焼結工程に至るまでの間に成形体10(合金粉末)を複数回圧縮することにより、焼結工程直前の成形体10の密度を上記の数値範囲内に調整してもよい。つまり、成形工程とは別の工程において、成形体10を更に加圧してよい。希土類磁石における亀裂を抑制するためには、成形工程から焼結工程に至るまでの間に金属粉末に及ぼす圧力を、0.049MPa以上20MPa以下に調整したほうがよい。
仮に、焼結工程において、成形体10を型2から分離せず、成形体10及び型2を共に加熱した場合、型2を構成する成分が成形体10に混入して、得られる希土類磁石の磁気特性を損なう場合がある。例えば、型2を構成する樹脂が分解して、樹脂に由来する炭素成分が成形体10に混入してしまう。仮に焼結工程の過程で樹脂から構成される型が焼失したとしても、焼失に伴って生成した炭素成分が成形体10中に混入することを十分に抑制することは困難である。その結果、焼結体(希土類磁石)中に炭素成分が残存し、炭素成分が希土類磁石の磁気特性(例えば、保磁力)を損なう。一方、焼結工程において、型2から分離された成形体10を加熱する場合、型2に由来する成分が成形体10に混入し難い。したがって、得られる希土類磁石の磁気特性(例えば、保磁力)が型2に由来する成分によって損なわれ難い。
仮に、焼結工程において、成形体10と型2の一部又は全部とを一括して加熱した場合、成形体10と型2との間の熱膨張率の差に起因して、成形体10に応力が作用し易く、成形体10が変形したり、破損したりすることがある。さらに、焼結工程において、成形体10と型2の全部とを一括して加熱した場合、加熱対象全体の体積・熱容量が大きい。その結果、一括して加熱される成形体10の数量が制限され、焼結工程に要する時間が長くなり、エネルギーが浪費され、希土類磁石の生産性が低下する。一方、焼結工程において、型2から分離された成形体10を加熱する場合、成形体10と型2の全部とを一括して加熱する場合に比べて、加熱対象全体の体積・熱容量が小さい。その結果、多数の成形体10を一括して昇温させ易く、焼結工程に要する時間及びエネルギーが抑制され易く、希土類磁石の生産性が向上する。
焼結工程では、下型8に載置された成形体10を、焼結用トレイの上に移してよい。焼結工程では、加熱工程用に載置された成形体10を、焼結用トレイの上に移してもよい。加熱工程において成形体10の保形性が向上しているため、成形体10を搬送用チャックで掴んで焼結用トレイ上に並べる際に、成形体10の破損が抑制される。
焼結工程では、複数の成形体10を焼結用トレイ上に載置してよく、焼結用トレイ上に載置された複数の成形体10を一括して加熱してよい。多数の成形体10を狭い間隔で焼結用トレイ上に並べて、多数の成形体10を一括して加熱することにより、希土類磁石の生産性が向上する。
焼結用トレイの組成は、焼結時に成形体10と反応し難く、且つ成形体10を汚染する物質を生成し難い組成物であればよい。例えば、焼結用トレイは、モリブデン又はモリブデン合金から構成されていてよい。
焼結温度は、例えば900℃以上1200℃以下であればよい。焼結時間は、例えば0.1時間以上100時間以下であればよい。焼結工程を繰り返してもよい。焼結工程では、不活性ガス又は真空中で成形体10を加熱してよい。不活性ガスは、アルゴン等の希ガスであってよい。
焼結体に対して時効処理を施してよい。時効処理では、焼結体を例えば450℃以上950℃以下で熱処理してよい。時効処理では、焼結体を、例えば0.1時間以上100時間以下、熱処理してよい。時効処理は不活性ガス又は真空中で行えばよい。時効処理は、温度の異なる多段階の熱処理から構成されてもよい。
焼結体を切削又は研磨してもよい。焼結体の表面に保護層を形成してもよい。保護層は、例えば、樹脂層、又は無機物層(例えば、金属層若しくは酸化物層)であってよい。保護層の形成方法は、例えば、めっき法、塗布法、蒸着重合法、気相法、又は化成処理法であってよい。
希土類磁石の寸法及び形状は、希土類磁石の用途に応じて様々であり、特に限定されない。希土類磁石の形状は、例えば、直方体状、立方体状、多角柱状、セグメント状、扇状、矩形状、板状、球状、円板状、円柱状、リング状、又はカプセル状であってよい。希土類磁石の断面の形状は、例えば、多角形状、円弦状、弓状、又は円状であってよい。型2又はキャビティの寸法及び形状は、希土類磁石の寸法及び形状に対応するものであり、限定されない。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ストリップキャスト法により、組成が重量分率でNd30Febal.B1であるフレーク状の合金を作製した。合金を水素吸蔵法により粗粉砕して、粗粉末を得た。続いて粗粉末を不活性ガス中でジェットミルにより粉砕して、微粉末(希土類元素を含む金属粉末)を得た。
成形工程では、上記の微粉末を、型内へ供給して、成形体を形成した。
以上の手順で、50個の成形体を作製した。得られた成形体の体積及び質量を測定して、成形体の密度を算出した。成形工程直後の実施例1の成形体の密度は、3.6g/cm3に調整されていた。
成形工程に続く磁場印加工程では、交流電源を備えた磁場発生装置を用いた。磁場発生装置は、空芯コイル及びコンデンサを備えていた。空芯コイルのインダクタンスL及びコンデンサの静電容量Cのいずれも自在に可変であり、磁場発生装置によれば、所望の交流減衰波形を有するパルス磁場を発生することができた。
磁場印加工程では、型内に保持された成形体を、空芯コイル内に配置し、型を治具で固定した。そして、時間の経過に伴って反転しながら減衰するパルス磁場を、型内の成形体へ印加した。このパルス磁場(減衰する交番磁場)の印加により、成形体を構成する個々の微粉末を配向させ、且つ脱磁した。磁場印加工程では、成形体の表面磁束密度の目標値である0.0002Tを達成するために、インダクタンスL及び静電容量Cを調整して、パルス磁場の波形を制御した。
以上の手順で、50個の成形体を作製した。成形体の表面の磁束密度を、以下の手順で測定した。成形体の表面とは、パルス磁場の方向に垂直な表面である。
図4に示されるように、ガウスメータ42の検知部42aを、成形体10の表面の中心部から2mm離れた位置に配置して、その位置の磁束密度を測定した。ガウスメータとしては、株式会社マグナ(MAGNA)製のMG−701を用いた。測定された50個の成形体の表面磁束密度の平均値は、下記表1に示される。
50個の成形体を型から分離して、焼結用トレイ上に載置した。焼結工程直前の実施例1の成形体の密度は、成形工程直後の成形体の密度とほぼ同じであった。つまり、焼結工程直前の成形体の密度は、3.0g/cm3以上4.4g/cm3以下の範囲内に調整されていた。焼結工程では、焼結用トレイに載置された50個の成形体を、1070℃で4時間加熱した。焼結工程で得られた50個の希土類磁石(焼結体)を目視で観察することより、各希土類磁石に亀裂(クラック)が生じているか否かを調べた。実施例1のクラックの発生率は、下記表1に示される。クラックの発生率とは、実施例1の希土類磁石50個のうち、クラックが生じていた希土類磁石の個数nの百分率(つまり、(n/50)×100=2n)である。
(実施例2〜4、並びに比較例1及び2)
実施例2〜4、並びに比較例1及び2其々の磁場印加工程では、インダクタンスL及び静電容量Cを調整してパルス磁場の交流減衰波形を変えることにより、成形体の表面磁束密度を、下記表1に示される値に調整した。成形体の表面磁束密度を異なる値に調整したこと以外は実施例1と同様の方法で、実施例2〜4、並びに比較例1及び2其々の成形体及び希土類磁石(焼結体)を作製した。実施例1と同様の方法で、実施例2〜4、並びに比較例1及び2其々のクラックの発生率を求めた。実施例2〜4、並びに比較例1及び2其々でのクラックの発生率は、下記表1に示される。
(比較例3)
比較例3の磁場印加工程では、交流減衰波形を有するパルス磁場の代わりに、直流パルス(直流によって発生させたパルス磁場)を型内の成形体に印加して、表面磁束密度を、下記表1に示される値に調整した。比較例3のパルス磁場の強度は6Tであった。比較例3の磁場印加工程では、直流パルスを用いたため、成形体が脱磁されなかった。磁場印加工程以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の成形体及び希土類磁石(焼結体)を作製した。実施例1と同様の方法で、比較例3のクラックの発生率を求めた。比較例3でのクラックの発生率は、下記表1に示される。比較例3でのクラックの発生率(90%)のうち80%は、型から分離する際にクラックが生じた成形体の割合に相当する。このクラックは、成形体における残磁に起因する。比較例3でのクラックの発生率のうち10%は、焼結工程後にクラックが生じていた焼結体の割合に相当する。
(実施例5)
ストリップキャスト法により、組成が重量分率でNd29Dy1Febal.B1であるフレーク状の合金を作製した。合金を水素吸蔵法により粗粉砕して、粗粉末を得た。粗粉末にオレイン酸アミド(潤滑剤)を添加した。続いて粗粉末を不活性ガス中でジェットミルにより粉砕して、微粉末(希土類元素を含む金属粉末)を得た。微粉末の粒子径D50は、4μmに調整した。微粉末中の酸素の含有量は、5000質量ppm以下であった。微粉末中の窒素の含有量は、500質量ppm以下であった。微粉末中の炭素の含有量は、1000質量ppm以下であった。
成形工程では、オレイン酸アミドが添加された微粉末を、型内へ供給して、成形体を形成した。成形工程の詳細は以下の通りであった。
型は、矩形状の下型と、下型の上に配置される直方体状の側型と、側型の上に配置される上型と、を備えていた。上型及び下型は、アルミニウムから形成されていた。側型は、アクリル樹脂から形成されていた。側型の中央部には、直方体状の空間が鉛直方向に貫通していた。つまり、側型は筒状であった。上型は、側型内に嵌合する形状を有していた。成形工程では、側型を下型の上に載置して、側型の下面側の開口部を下型で塞いだ。側型及び下型で囲まれた空間(キャビティ)の寸法は、20mm×26mm×6mmであった。続いて、所定の質量の微粉末を、側型の上面側の開口部から側型内へ充填した。微粉末が保持された側型及び下型の全体を振動させることにより、キャビティ内の微粉末のレベリングを行った。続いて、タッピングにより、キャビティ内の微粉末をより緻密にした。タッピング後、上型を側型内へ挿入して、側型内の微粉末を上型の先端面で圧縮した。上型のうち側型内へ挿入された部分の長さは14mmであった。成形工程では、上型が型内の微粉末(成形体)に及ぼす圧力を下記表2に示される値に調整した。以下では、成形工程において上型が型内の微粉末(成形体)に及ぼす圧力を、「成形圧力」と表記する場合がある。
以上の手順で、50個の成形体を作製した。得られた成形体の寸法は、20mm×12mm×6mmであった。成形体の体積及び質量から、成形工程直後の成形体の密度を算出した。成形工程直後の実施例5の成形体の密度は、下記表2に示される値に調整されていた。下記表2では、成形工程直後の成形体の密度を、「密度1」と表記する。
成形工程に続く磁場印加工程では、交流電源を備えた磁場発生装置を用いた。磁場発生装置は、空芯コイル及びコンデンサを備えていた。空芯コイルのインダクタンスL及びコンデンサの静電容量Cのいずれも自在に可変であり、磁場発生装置によれば、所望の交流減衰波形を有するパルス磁場を発生することができた。
磁場印加工程では、型内に保持された成形体を、空芯コイル内に配置し、型を治具で固定した。そして、時間の経過に伴って反転しながら減衰するパルス磁場を、型内の成形体へ印加した。このパルス磁場(減衰する交番磁場)の印加により、成形体を構成する個々の微粉末を配向させ、且つ脱磁した。磁場印加工程では、成形体の表面磁束密度の目標値である0.0002Tを達成するために、インダクタンスL及び静電容量Cを調整して、パルス磁場の波形を制御した。
磁場印加工程後、成形体の表面磁束密度を、以下の手順で測定した。成形体の表面とは、パルス磁場の方向に垂直な表面である。
図4に示されるように、ガウスメータ42の検知部42aを、成形体10の表面の中心部から2mm離れた位置に配置して、その位置の磁束密度を測定した。ガウスメータとしては、株式会社マグナ(MAGNA)製のMG−701を用いた。測定された50個の成形体の表面磁束密度の平均値は、0.0002Tであった。
磁場印加工程後、上型及び側型を成形体から分離した。下型上に載置された成形体を、下型と共に加熱炉内で加熱した。加熱中の成形体の温度(最高温度)は、300℃に維持した。
加熱後の成形体を下型から分離して、50個の成形体を焼結用トレイ上に載置した。焼結用トレイはモリブデンから構成されていた。焼結工程直前の実施例5の成形体の密度は、成形工程直後の成形体の密度(密度1)とほぼ同じであった。つまり、焼結工程で焼結させる成形体の密度は、3.0g/cm3以上4.4g/cm3以下の範囲内に調整されていた。
焼結工程では、焼結用トレイ上の成形体を、真空雰囲気中において焼結させた。焼結温度(最高温度)は1100℃に調整した。焼結時間は4時間に調整した。焼結工程に続いて、時効処理を行った。時効処理では、焼結体を900℃(最高温度)で1時間加熱した。続いて、焼結体を500℃(最高温度)で1時間加熱した。
時効処理後の焼結体を加工して、焼結体の寸法を15.5mm×10.0mm×3.9mmに調整した。
以上の工程により、50個の希土類磁石を作製した。50個の希土類磁石の相対密度はいずれも、99.5%以上であった。
直流BHトレーサを用いて、50個の希土類磁石其々の磁気特性を測定した。実施例5の希土類磁石の残留磁束密度Brは、下記表2に示される値であった。表2に示される残留磁束密度Brは、50個の希土類磁石の残留磁束密度の平均値である。実施例5の希土類磁石の保磁力HcJは、下記表2に示される値であった。表2に示される保磁力HcJは、50個の希土類磁石の保磁力の平均値である。
50個の希土類磁石(焼結体)を目視で観察することより、各希土類磁石に亀裂(クラック)が生じているか否かを調べた。実施例5のクラックの発生率は、下記表2に示される。クラックの発生率とは、実施例5の希土類磁石50個のうち、クラックが生じていた希土類磁石の個数nの百分率(つまり、(n/50)×100=2n)である。
(実施例6〜12、並びに比較例4及び5)
実施例6〜12、並びに比較例4及び5では、成形圧力を下記表2に示される値に調整した。実施例6〜12、並びに比較例4及び5では、型内へ供給する微粉末の質量及び成形圧力を変更することにより、成形工程直後の成形体の密度を、下記表2に示される値に調整した。実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の焼結工程直前の成形体の密度は、成形工程直後の成形体の密度(密度1)とほぼ同じであった。これらの事項以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の成形体及び希土類磁石を作製した。
実施例5と同様の方法で、実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の希土類磁石の残留磁束密度Brを測定した。実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の希土類磁石の残留磁束密度Brは、下記表2に示される。
実施例5と同様の方法で、実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の希土類磁石の保磁力HcJを測定した。実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々の希土類磁石の保磁力HcJは、下記表2に示される。
実施例5と同様の方法で、実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々のクラックの発生率を求めた。実施例6〜12、並びに比較例4及び5其々でのクラックの発生率は、下記表2に示される。
(比較例6〜8)
比較例6〜8では、磁場印加工程と焼結工程との間において、成形体を300℃で加熱しなかった。比較例6〜8では、磁場印加工程後、成形体を上記の型から別のゴム型内へ移した。成形体を内包するゴム型を水中に設置して、ゴム型内の成形体を水圧によって等方的に圧縮した。以上のように、比較例6〜8では、300℃での加熱の代わりに、冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing)を実施した。下記表2では、冷間静水圧プレスを「CIP」と表記する。冷間静水圧プレスにおける水圧は、下記表2に示す値に調整した。冷間静水圧プレス後、成形体をゴム型から分離して、焼結用トレイ上に載置した。
以上の事項を除いて実施例5と同様の方法で、比較例6〜8其々の成形体及び希土類磁石を作製した。比較例6〜8其々の冷間静水圧プレス直後の成形体の密度は、下記表2に示される値に調整した。下記表2では、冷間静水圧プレス直後の成形体の密度を、「密度2」と表記する。比較例6〜8其々の冷間静水圧プレス後の成形体の密度は、比較例6〜8其々の焼結工程直前の成形体の密度に相当する。
実施例5と同様の方法で、比較例6〜8其々の希土類磁石の残留磁束密度Brを測定した。比較例6〜8其々の希土類磁石の残留磁束密度Brは、下記表2に示される。
実施例5と同様の方法で、比較例6〜8其々の希土類磁石の保磁力HcJを測定した。比較例6〜8其々の希土類磁石の保磁力HcJは、下記表2に示される。
実施例5と同様の方法で、比較例6〜8其々のクラックの発生率を求めた。比較例6〜8其々でのクラックの発生率は、下記表2に示される。
表2に示されるように、実施例5〜12においては、焼結工程で焼結させる成形体の密度が、3.0g/cm3以上4.4g/cm3以下に調整されていた。その結果、実施例5〜12の残留磁束密度Brはいずれも、13kG以上であり、実施例5〜12のクラック発生率はいずれも、20%以下であった。
比較例4のクラック発生率は、全実施例のクラック発生率よりも高かった。比較例4のクラックは、比較例4の成形圧力が低過ぎて、比較例4の成形体の機械的強度(保形性)が全実施例に劣っていたことに起因する、と推察される。
比較例5の残留磁束密度Brは、全実施例の残留磁束密度Brよりも低かった。比較例5の低い残留磁束密度Brは、比較例5の成形圧力が高過ぎて、型内の微粉末(合金粉末)が自由に回転し難く、磁場に沿って配向し難かったことに起因する、と推察される。比較例5のクラックは、比較例5の成形圧力が高過ぎて、成形体のスプリングバックが起こったことに起因する、と推察される。
比較例6〜8のクラック発生率は、全実施例のクラック発生率よりも著しく高かった。比較例6〜8の高いクラック発生率は、CIPの水圧が高過ぎて、成形体のスプリングバックが起こったことに起因する、と推察される。比較例6〜8の高い残留磁束密度Brは、成形体がCIPによって等方的に収縮する際に、収縮前の微粉末(合金粉末)の配向性が維持されたことに起因する、と推察される。