以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型の画像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、トナー像形成手段として、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Bkと記す。)用の4つのプロセスユニット1Y,M,C,Bkを備えている。プロセスユニット1Y,M,C,Bkは、画像を形成するための画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Bkトナーを用いるが、それ以外は互いに同様の構成になっている。
Yトナー像を生成するためのプロセスユニット1Yを例にすると、これは、感光体2Y、現像装置3Y、帯電装置、感光体クリーニング装置5Yなどを1つのユニットとして共通の保持体に保持しており、プリンタ本体に対して一体的に着脱される。
帯電装置は、感光体2Yに対して接触あるいは近接するように配設された帯電ローラ4Yを有しており、帯電ローラ4Yは図示しない駆動手段によって回転駆動される。この帯電ローラ4Yに対しては、図示しない帯電電源によって所定の帯電バイアスが印加される。そして、帯電ローラ4Yと感光体2Yとの間で放電を発生させることで、感光体2Yの表面をトナーの正規帯電極性と同極性に一様に帯電させる。このような方式の帯電装置に代えて、スコロトロン帯電器などを採用してもよい。
感光体2Yは、表面に有機感光層を被覆した直径30[mm]のドラムからなり、静電容量が9.5E−7[F/m2]に調整されている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動せしめられる。帯電装置によって一様に帯電せしめられた感光体2Yの表面は、後述する光書込ユニット90から発せられるレーザー光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。
現像装置3Yは、Yトナーと磁性キャリアとを含有する図示しない現像剤を収容している。現像装置3Yのケーシングには開口が形成されており、この開口からは筒状の現像スリーブにおける周面の一部が露出して感光体2Yの表面に対向している。現像スリーブは、自らと連れ回らないように内部に固定された図示しないマグネットローラの発する磁力により、ケーシング内の現像剤を担持する。そして、自らの回転駆動に伴って、現像剤を自らと感光体2Yとが対向する現像領域に搬送する。現像領域では、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体2Yの静電潜像との間に、マイナス極性のYトナーをスリーブ側から感光体側に移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Yの地肌部との間に、マイナス極性のYトナーを感光体側からスリーブ側に移動させる非画像ポテンシャルが作用する。現像剤中のYトナーは、現像領域において、前述した現像ポテンシャルの作用によって感光体2Yの静電潜像に転移する。これにより、感光体2Y上の静電潜像が現像されてYトナー像になる。
現像装置3Yは、内部の現像剤のトナー濃度を測定する図示しないトナー濃度センサを有している。このトナー濃度センサによる検知結果は、電圧信号として図示しない制御部に送られる。制御部はRAMを備えており、この中にトナー濃度センサからの出力電圧の目標値を記憶している。そして、トナー濃度センサからの出力電圧の値と前記目標値とを比較し、図示しないY用のトナー供給装置を比較結果に応じた時間だけ駆動させる。この駆動により、現像に伴うYトナー消費によってYトナー濃度を低下させた現像剤に対し、適量のYトナーが供給される。このため、現像装置3Y内の現像剤のトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他色用の現像装置(3M,C,Bk)における現像剤に対しても、同様のトナー供給制御が実施される。
Y用のプロセスユニット1Yについて詳しく説明したが、他色用のプロセスユニット1M,C,Bkも同様の構成になっており、感光体2M,C,Bk上にM,C,Bkトナー像が形成される。現像ユニット3Y,M,C,Bkによって現像されてY,M,C,Bkトナー像になる。なお、感光体上に全面ベタ画像を形成したときの単位面積あたりのトナー付着量は0.45[mg/cm2]程度である。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの下方には、光書込ユニット90が配設されている。潜像形成手段としての光書込ユニット90は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、感光体2Y,M,C,Bkの一様帯電した表面に照射する。感光体2Y,M,C,Bkにおけるレーザー露光部の電位は減衰して、周囲の地肌部よりも電位が低い状態になる。このような状態になった箇所がY,M,C,Bkの静電潜像となる。なお、光書込ユニット90は、光源から発したレーザー光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラーによって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体2Y,M,C,Bkに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの上方には、無端状の中間転写ベルト21を図中反時計回りに無端移動せしめながら、その下部張架面を感光体2Y,M,C,Bkに当接させてY,M,C,Bk用の1次転写ニップを形成する転写ユニット20が配設されている。感光体2Y,M,C,Bk上に形成されたY,M,C,Bkトナー像は、各色の1次転写ニップにおいて中間転写ベルト21上に重ね合わせて1次転写される。
Y,M,C,Bk用の1次転写ニップを通過した後の感光体2Y,M,C,Bkの表面に付着している転写残トナーは、感光体クリーニング装置5Y,M,C,Bkによって感光体表面から除去される。
光書込ユニット90の下方には、給紙カセット95が配設されている。給紙カセット95内には、記録部材としての記録紙Pが複数枚重ねられた記録紙束の状態で収容されており、一番上の記録紙Pには、給紙ローラ95aが当接している。給紙ローラ95aが図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動すると、給紙カセット95内の一番上の記録紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路に向けて排出される。給紙路に送り込まれた記録紙Pは、図中下側から上側に向けて搬送される。なお、感光体2Y,M,C,Bkや中間転写ベルト21の線速であるプロセス線速は120[mm/sec]に設定されている。
給紙路の末端には、レジストローラ対32が配設されている。レジストローラ対32は、記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット1Y,M,C,Bkの上方に配設された転写ユニット20は、中間転写ベルト21の他、ベルトループ内に配設された1次転写ローラ25Y,M,C,Bk、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24などを有している。また、ベルトループ内に配設された2次転写ローラ26、ベルトクリーニング装置28なども有している。
ニップ形成部材としての中間転写ベルト21は、カーボンを分散した導電性ポリアミドイミド樹脂からなるベルト基体を有する厚さ80[μm]の無端状のベルトであり、その体積抵抗率は1E9[Ω・cm]に調整されている(三菱化学製ハイレスターUP MCP HT450にて100Vの電圧印加条件で測定した値)。そして、ベルトループ内に配設された各ローラに掛け回されて張架された状態で、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、無端移動する中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Bkに押し付けるようにして配置される。これにより、中間転写ベルト21と感光体2Y,M,C,Bkとが当接するY,M,C,Bk用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、金属製の回転軸部材の周面に、イオン導電剤を分散せしめた樹脂からなる導電性スポンジローラ部を設けたものである。導電性スポンジローラ部の体積抵抗率は5E8[Ω・cm]程度である。金属製の回転軸部材を、感光体の回転軸に対してベルト移動方向の下流側に3[mm]ずらした位置に配設している。
1次転写ローラ23Y,M,C,Bkには、1次転写電源81Y,M,C,Bkにより、トナーの帯電極性とは逆極性の1次転写バイアスが印加される。これにより、1次転写ニップ内には、感光体上のトナー像を感光体側からベルト側に引き寄せる転写電界が形成される。中間転写ベルト21は、その無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、その表面(おもて面)に感光体2Y,M,C,Bk上のY,M,C,Bkトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
ベルトループ内側に配設された2次転写対向ローラ24は、ベルトループ外側に配設された2次転写ローラ26との間に中間転写ベルト21を挟み込むように配設されている。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、2次転写ローラ26とが当接する2次転写ニップがベルトの図中右側方に形成されている。先に説明したレジストローラ対32は、ローラ間に挟み込んだ記録紙Pを、中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで、2次転写ニップに向けて送り出す。
2次転写ローラ26には、トナーとは逆極性の2次転写バイアスが印加される。中間転写ベルト21上の4色トナー像は、2次転写バイアスやニップ圧の作用により、2次転写ニップ内で記録紙Pに一括して2次転写される。そして、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニング装置28によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニング装置28は、クリーニングローラを中間転写ベルト21のおもて面に当接させており、ベルト上の転写残トナーをクリーニングローラに静電転移させて除去するものである。
2次転写ニップの上方には、定着ユニット40が配設されている。この定着ユニット40は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接によって定着ニップを形成している。2次転写ニップを通過した記録紙Pは、中間転写ベルト21から分離した後、定着ユニット40内に送られる。そして、定着ユニット40内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ローラ41によって加熱されたり、押圧されたりして、フルカラートナー像が定着される。
このようにして定着処理が施された記録紙Pは、定着装置40を出た後、図示しない排紙ローラ対を経て機外へと排出される。
図2は、本プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部200は,演算手段たるCPU200a(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM200c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM200b(Read Only Memory)等を有している。制御部200は,装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、それら機器の一部だけを示している。制御部200は、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。また、外部のパーソナルコンピューター等から送られてくる画像データ(露光時の書き込み信号)に基づいて、Y,M,C,Bkの一次転写電流値を決定し、決定した一次転写電流値となるように、Y,M,C,Bk用の一次転写電源81Y,M,C,Bkを制御する。かかる制御部200は、一次転写電源81Y,M,C,Bkとともに転写電流出力手段
として機能している。なお、一次転写電源81Y,M,C,Bkからの1次転写電流の出力の目標値は、制御部200からPWM信号として出力されて、一次転写電源81Y,M,C,Bkに入力される。
また、制御部200は、図示しないメイン電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、位置ズレ量補正処理を実施するようになっている。そして、この位置ズレ量補正処理において、中間転写ベルト21に、図3に示すようなシェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる位置ズレ検知用画像を形成する。図2に示した光学センサユニット86は、その発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト21の表面で反射させ、その反射光を自らの受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が光学センサユニット86の直下を通過する際には、光学センサユニット86の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、制御部200は,中間転写ベルト21に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。このように、光学センサユニット86は、制御部200との組合せによって像検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては,多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
制御部200は、中間転写ベルト21に形成したシェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における副走査方向(ベルト移動方向)の位置を検出する。シェブロンパッチPVは、図3に示すように、Y,M,C,Bkの各色のトナー像を主走査方向(レーザ光が感光体表面上で走査する方向)から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について,Bkトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、図紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Bkトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているBk,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるBkとの検出時間差tky,tkc,tkmについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ち位置ズレ量を求める。そして、その位置ズレ量に基づいて、不図示の光書込ユニットの感光体に対する光書込開始タイミングを補正して、感光体や中間転写ベルト21の速度変動に起因する各色トナー像の位置ズレを低減する。
先に示した図1において、Y,M,C,Bk用の4つの1次転写ニップのうち、ベルト移動方向の最上流側に位置するY用の1次転写ニップでは、トナー像を転写していない状態の中間転写ベルト21に対して感光体2Y上のYトナー像が転写される。つまり、Y用の1次転写ニップでは、重ね合わせ転写のない第1転写工程が実施される。これに対し、M,C,Bk用の1次転写ニップでは、既に中間転写ベルト21上に転写されているトナー像に対して、感光体上のトナー像を重ね合わせて転写する第2転写工程が実施される。
ニップ形成部材としての中間転写ベルト21に対して、Y,M,C,Bk用の1次転写ローラ25Y,M,C,Bkを介して転写バイアスを印加する1次転写電源81Y,M,C,Bkは、それぞれ所定の目標値と同じ値の転写電流を出力する。1次転写電源81Y,M,C,Bkからの出力される転写電流の目標値は、それぞれ、転写ニップ出口及びその近傍における感光体上のトナー像の主走査方向(感光体軸線方向)における画像面積率に基づいて決定される。具体的には、感光体の表面は、副走査方向(感光体表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、図4に示すように、10画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、区分けによる各区画(以下、「10ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが10ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する潜像部の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、10個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「10ライン区画」における平均画像面積率として求められる。1次転写電流の目標値は、複数の「10ライン区画」のうち、転写ニップ出口を通過中の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものが決定される。そして、その「10ライン区画」が1次転写ニップ出口を通過している最中には、その目標値と同じ出力値になるように1次転写電源(81Y,M,C,Bk)からの出力電圧値が調整される。その「10ライン区画」における最下流側の画素ラインが転写ニップ出口を通過すると、1次転写電源からの転写電流の目標値が、次の「10ライン区画」の平均画像面積率に応じたものに変更される。
1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に基づいて1次転写電流の目標値を決定するのは、次に説明する理由からである。即ち、感光体と中間転写ベルト21との間で流れる電流の殆どは、感光体と中間転写ベルト21とが離間する1次転写ニップ出口における両者間での剥離放電によるものである。1次転写ニップ出口において、1次転写電源(81Y,M,C,Bk)からの電流供給量が比較的少ないにもかかわらず、感光体の画像面積率が比較的低いと、1次転写電源から供給される電流の殆どが感光体の地肌部とベルトとの間の剥離放電に使われてしまう。そして、感光体の潜像部には殆ど電流が流れないことによって転写不良が発生してしまう。1次転写ニップ出口の付近における平均画像面積率に応じた転写電流を流すことで、感光体の潜像部に適度な電流を流すとともに、感光体の潜像部とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも小さくすることが可能になる。
図5は、記録紙とこれに形成された画像との一例を示す模式図である。図示の記録紙は、A4サイズの普通紙であり、プリンタ内において図中矢印A方向に搬送される。1次転写ニップ内では、この矢印A方向が副走査方向と同じ方向になる。記録紙には、副走査方向に延在する帯状の画像が形成されており、この画像の主走査方向(図中左右方向)における長さは29.7[mm]である。A4サイズの記録紙の幅は297[mm]である。画像は記録紙における副走査方向の全域に渡って延在しているので、副走査方向の位置にかかわらず、画像面積率は10[%]のまま一定である。つまり、図示の画像を出力する際には、1次転写ニップ出口に進入している「10ライン区画」における平均画像面積率が何れも10[%]となる。よって、この画像を出力する際には、図4の電流波形とは異なり、一定の1次転写電流が画像先端から後端まで出力され続ける。
図6は、図5とは異なる画像を示す部分拡大模式図である。この画像は、主走査方向の長さが一定ではなく、その長さは副走査方向の位置によって様々である。図示している画像領域では、10個の画素ラインのうち、副走査方向の先頭から5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれ100[%]になっている。これに対し、後端側の5個分の画素ラインでは画像面積率がそれぞれ50[%]になっている。このような「10ライン区画」においては、平均画像面積率が75[%]になるので、75[%]に応じた値に1次転写電流の目標値が決定される。実施形態では、平均画像面積率の算出は、光書込ユニットにおけるレーザー書き込み信号に基づいてなされている。
次に、本発明者が行った実験について説明する。
本発明者は、図1に示した実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。そして、このプリンタ試験機において、3種類のテスト画像をそれぞれ出力して1次転写電流と1次転写電圧と1次転写率と逆転写率との関係を調べる実験を行った。具体的には、3種類のテスト画像の1つとして、主走査方向の長さが14.85[mm]であってA4サイズ紙の長さ方向に沿った副走査方向の全域に渡って延在する短冊状のBk5%テスト画像(画像面積率5%)をプリントした。Bk用の1次転写電源81Bkからの出力電圧については、一定電圧を出力する定電圧制御を行った。電圧の制御目標値としては、1000[V]から2300[V]まで、100[V]毎に徐々に上げていき、それぞれの制御目標値でBk5%テスト画像をプリントした。そして、それぞれのプリントにおいて、Bk用の1次転写電源81Bkからの出力電流値を測定した。また、Bk用の1次転写ニップを進入する前のBk用の感光体2BkにおけるBk5%テスト画像に対する単位面積あたりのトナー付着量と、1次転写ニップ通過後の感光体2Bkにおける単位面積あたりのトナー付着量とを測定した。そして、前者のトナー付着量から後者のトナー付着量を差し引いた値の前者に対する割合を1次転写率として求めた。
また、3種類のテスト画像における他の1つとして、A4サイズ紙に対して全面ベタ状に付着するBk100%テスト画像(画像面積率100%)をプリントした。また、もう1つとして、A4サイズ紙に対して全面ベタ状に付着するM100%テスト画像の上に、Bk5%テスト画像を重ねたM100%+Bk5%テスト画像をプリンタした。これらのテスト画像についても、Bk5%テスト画像と同様に、1000[V]から2300[V]まで、100[V]毎に徐々に上げていき、それぞれの条件で1次転写電流値と1次転写率とを測定した。また、M100%+Bk5%テスト画像については、Bk用の1次転写ニップを通過した後における感光体2Bkの地肌部に逆転移したMトナーの付着量を測定して、測定結果のニップ進入時の量に対する割合をMトナー逆転写率として求めた。なおトナー付着量については、反射分光濃度計X−Rite938による分光測定結果に基づいて測定した。
図7は、この実験における1次転写電圧と1次転写電流とテスト画像との関係を示すグラフである。また、図8は、この実験における1次転写率と1次転写電圧とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフである。また、図9は、この実験における1次転写率と1次転写電流とMトナー逆転写率とテスト画像との関係を示すグラフである。
図8に示すように、テスト画像としてBkだけからなる単色のトナー像を形成した場合には(Bk5%、Bk100%)、画像面積率にかかわらず、1次転写電圧がある所定の値を超えると、1次転写率が急激に低下し始める。より詳しくは、1次転写電圧が2000[V]を超えると、1次転写率が急激に低下し始める。この2000[V]という条件においては、図7に示すように、1次転写ニップに流れる電流が画像面積率に応じて異なってくる。具体的には、Bk5%テスト画像の場合には1次転写電圧=2000[V]の条件で30[μA]の1次転写電流が1次転写電源81Bkから出力されるのに対し、Bk100%テスト画像の場合には1次転写電圧=2000[V]の条件で21[μA]の1次転写電流が1次転写電源81Bkから出力される。このように、1次転写バイアスを定電圧制御する場合においては、感光体上の画像面積率が低くなるほど、多くの1次転写電流が流れる。その理由は、1次転写電圧を一定に制御する定電圧制御の条件下では、画像面積率が低くなるほど、感光体の電荷量が多くなってより多くの電流がベルトと感光体との間に流れるからである。例えば、プリンタ試験機においては、帯電装置によってBk用の感光体2Bkを約−500[V]に一様に帯電させている。また、潜像部(静電潜像)については、レーザー光Lの照射により、−500[V]であった電位を約−30[V]まで減衰させている。感光体2Bkとして、静電容量が9.5E−7[F/m2]であるものを用いているので、感光体2Bkの地肌部の面積電荷密度は、約−475[μC/m2]程度である。一方、感光体2Bkの潜像部の面積電荷密度は、トナーの電荷量0.45E−3[g/cm2]×−20[μC/g]=−0.009[μC/cm2]=−90[μC/m2]と、感光体の残留電位(約−30[V])の電荷量(−29μC/m2)との和であるから、約−119[μC/m2]である。感光体2Bkにおいては、地肌部の電荷量が潜像部よりも約4倍多いのである。このため、1次転写ニップにおいては、感光体2Bkの潜像部と中間転写ベルト21との間に形成される電界よりも、感光体2Bkの地肌部と中間転写ベルト21との間に形成される電界の方が強くなる。すると、感光体2Bkの画像面積率が小さくなるほど、ベルトと感光体との間に電流が流れ易くなるため、1次転写電源81Bkからの電圧出力値を所定の値にするために出力電流量が多くなるのである。
このように、定電圧制御においては、画像面積率が小さくなるほど、電源からの出力電流値が多くなるが、同じ画像面積率であっても、環境によってその出力電流値が大きく異なってくる。これは、環境が変動すると、それに伴って中間転写ベルト21や1次転写ローラ25Bkの抵抗値が変動するからである。このため、定電圧制御の条件では、たとえ画像面積率に応じて出力電圧の目標値を変化させたとしても、環境によっては1次転写電流が過剰になったり、不足したりして、転写不良を引き起こすことがある。このため、1次転写バイアスについては、定電圧制御ではなく、定電流制御した方が有利である。しかも、単純な定電流制御ではなく、出力電流の目標値を画像面積率に応じて変化させるようにすることが望ましい。
Y用の1次転写ニップにおいては、次に説明する理由により、1次転写電流の目標値として、できる限り高い転写効率が得られる値を採用することが望ましい。即ち、Yトナー像は、M,C,Bk用の全ての1次転写ニップを順次通過することになり、その度に、僅かながらではあるが、トナーを感光体に付着させて失っていくため、他色のトナー像に比べて薄くなりがちだからである。そこで、Y用の1次転写電源81Yからの出力電流の目標値については、出力電圧を最大の転写効率が得られる値まで大きくすることが望ましい。この実験においては、25[℃]の環境下で行っており、1次転写電圧を2000[V]にした条件で最大の転写効率が得られている。この条件では、Bk5%テスト画像では図7に示したように30[μA]の1次転写電流が流れるのに対し、Bk100%テスト画像では21[μA]の1次転写電流が流れる。単純な定電圧制御では、室温が25[℃]から変化して、ベルトやローラの抵抗が変化すると、1次転写電圧を2000[V]に維持していたとしても、1次転写電流が過剰になったり、不足したりする。2000[V]という値は、25[℃]の環境下で最大の転写効率が得られる電圧条件であり、室温が25[℃]から変化すると、最大の転写効率を実現する電圧条件も変化してしまうからである。これに対し、最大の転写効率が得られる電流条件は、環境にかかわらず一定となる。具体的には、画像面積率が5%であるときには、環境にかかわらず、1次転写電流の値を30[μA]に一定に維持することで、最大の転写効率を実現することができる。また、画像面積率が100%であるときには、環境にかかわらず、1次転写電流の値を100=21[μA]に一定に維持することで、最大の転写効率を実現することができる。
このように、Y用の1次転写電源81Yについては、画像面積率に応じて出力電流の目標値を変化させることで、最大の転写効率を維持することができる。ところが、M,C,Bk用の1次転写電源81M,C,Bkでも同様の定電流制御を実施すると、M,C,Bk用の1次転写ニップにおいて、ベルト上のYトナーを感光体2M,C,Bkの地肌部に逆転写させ易くなることがわかった。
例えば、先に示した図8に示したように、Bk用の1次転写ニップにおいては、1次転写電圧の値によっては、ベルト上のM100%トナー像の感光体2Bk地肌部への逆転写率(Mトナー逆転写率)が非常に高くなってしまう。具体的には、1次転写電圧を1000〜1500[V]に設定した条件ではMトナー逆転写率は0.01[%]未満に留まっているが、1次転写電圧を1600[V]よりも大きくすると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めることがわかる。
一方、1次転写電圧が2000[V]を超えると、転写効率が急激に低下し始める原因は、次のように考えられる。即ち、1次転写電圧が2000[V]を超えると、感光体における−30[V]の潜像部と、中間転写ベルト21との電位差が放電開始電圧を超える。すると、1次転写ニップ内において感光体の潜像部(−30V)と中間転写ベルト21との間で放電が盛んに発生するようになり、潜像部上のトナーがその放電によって逆帯電してしまう。この逆帯電により、潜像部上のトナーが中間転写ベルト21上に静電移動せずに潜像部上に留まってしまうことが、転写効率を低下させている原因であると考えられる。
このような転写効率の低下が起こっているときには、1次転写ニップ内において、感光体の−30[V]の潜像部とベルトとの間のみならず、感光体の−500[V]の地肌部とベルトとの間でも、放電が発生している。ところが、単色画像をプリントする際には、1次転写ニップ内において、トナー像が全く存在していない中間転写ベルト21に対して感光体上のトナー像を転写するので、感光体の地肌部とベルトとの間にはトナーを介在させていない。このため、地肌部とベルトとの間の放電が表立った現象として現れることはない。転写効率の低下という表立った現象が現れる感光体の潜像部(−30V)に着目すると、1次転写電源からの出力電圧を2000[V]よりも大きくすると、感光体の潜像部とベルトとの間の電位差を放電開始電圧よりも大きくすることになる。ベルトの表面電位を把握することが困難であるため、便宜上、1次転写電源からの出力電圧で考えると、この実験では、出力電圧と感光体との電位差を2030[V]よりも大きくすると、感光体とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくしていることになる。
先に述べたように、この実験において、Bk用の1次転写電源81Bkからの出力電圧を1600[V]よりも大きくすると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めている。このような急激な上昇が認められる原因は次のように考えられる。即ち、単色画像ではなく、2色以上の重ね合わせによる多色画像をプリントする場合には、2色目以降の1次転写ニップにおいて、既にベルト上に転写しているトナー像を、後段の感光体の地肌部とベルトとの間に介在させる。このとき、感光体の地肌部(−500V)と、1次転写電源からの出力電圧との電位差が2030[V]よりも大きいと、地肌部と中間転写ベルト21との間で放電が発生する。そして、既に中間転写ベルト21上に転写されていたトナー像中のトナーがその放電によって逆帯電して、感光体の地肌部に逆転写してしまう。感光体の地肌部の電位は約−500[V]であるため、1次転写電源からの出力電圧を1530[V]よりも大きくすると、かかる逆転写を引き起こすことになる。この実験では、出力電圧を100[V]単位で上昇させているので、1530[V]は1600[V]の条件に相当している。このため、先に図6に示したグラフにおいて、1次転写電圧が1600[V]を超えると、Mトナー逆転写率が急激に上昇し始めていると考えられる。
室温25[℃]の条件では、既に述べたように、5%画像では1次転写電流=30μA、100%画像では1次転写電流=21μAの条件の場合に、それぞれ1次転写電圧が最大の転写効率を実現し得る約2000[V]になる。このような1次転写電流の制御をY用の1次転写電源81Yだけでなく、M,C,Bk用の1次転写電源81M,C,Bkでも採用したとする。すると、M,C,Bk用の1次転写ニップ内にてそれぞれ、感光体の地肌部と中間転写ベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくしてしまうため、ベルト上のトナーを感光体の地肌部に逆転写してしまうことになる。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
上述したように、第2転写工程が実施されるM,C,Bk用の1次転写ニップ内では、トナー像の逆転写が発生し易い。一方、第1転写工程だけしか実施されないY用の1次転写ニップにおいては、トナー像の逆転写は発生しない。そこで、Y用の1次転写電源81Yについては、1次転写効率の低下が起こらない電圧範囲内で、ニップ出口付近における「10ライン区画」の平均画像面積率が高くなるほど、一次転写電流の目標値を小さくするようにしている。具体的には、感光体2Yのニップ出口付近における「10ライン区画」の平均画像面積率x1(0≦x1≦100)に基づいて、Y用の1次転写電源81Yの1次転写電流の目標値IY(x1)を、次式でに基づいて求めるように、制御部200を構成している。
IY(x1)=−8.00×x1/100+28.0[μA]
(0≦x1≦100)・・・(1)
(1)式は、図7及び図8を参考にして、感光体のニップ出口付近における平均画像面積率に関わらず、一次転写電圧を1900[V]付近にし、且つYトナーの高転写効率を実現する目標値を求め得る一次関数として、決定したものである。このように平均画像面積率x1に応じて1次転写電流を変化させることで、Y用の1次転写ニップ内において、感光体2Yの潜像部と中間転写ベルト21との間に十分量の1次転写電流を流して良好な1次転写効率を実現することができる。
第2転写工程が実施されるM,C,Bk用の1次転写ニップでは、転写ニップ出口において、感光体の地肌部と中間転写ベルト21との間で放電が発生すると、ベルト上のトナーが正規とは逆のプラス極性に逆帯電して、感光体の地肌部に逆転写してしまう。感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が所定のa[%]を下回るとき、即ち、感光体の大面積地肌領域が転写ニップ出口に進入するときに、(1)式に基づいて目標値を決定すると、1次転写電源81M,C,Bkからの1次転写バイアスの出力値を非常に大きくすることになる。すると、転写ニップ出口における感光体の地肌部とベルトとの電位差を放電開始電圧よりも大きくして、両者間で放電を発生させ易くなる(図8参照)。
そこで、本プリンタにおいては、M,C,Bk用の1次転写ニップについては、Y用の1次転写ニップとは異なる式により、1次転写電流の目標値を求めるようになっている。具体的には、本プリンタでは、大面積地肌領域とそれ以外の領域との区分けとなるa[%]という平均画像面積率として、5[%]を採用している(a=5%)。つまり、平均画像面積率が5[%]未満となる感光体領域(10ライン区画)を、特に逆転写の発生し易い大面積地肌領域として取り扱っている。また、極大画像領域とそれ以外の領域との区分けとなるb[%]という平均画像面積率として、95[%]を採用している(b=95%)。つまり、平均画像面積率が95[%]を超える感光体領域を、全面ベタ部に近い極大画像領域として取り扱っている。そして、M用の1次転写電源81Mについては、感光体2M上のニップ出口付近における「10ライン区画」の平均画像面積率x2から、次式に基づいて1次転写電流の目標値IM(x2)を求めるように、制御部200を構成している。
IM(x2)=220×x2/100+15.0[μA]
(0≦x2<5)・・・(2)
IM(x2)=−7.89×x2/100+26.4[μA]
(5≦x2≦95)・・・(3)
IM(x2)=22.1×x2/100+20.0[μA]
(95<x2≦100)・・・(4)
C用の1次転写電源81Cについては、感光体2C上のニップ出口付近における「10ライン区画」の平均画像面積率x3から、次式に基づいて1次転写電流の目標値IC(x3)を求めるように、制御部200を構成している。
IC(x3)=180×x3/100+15.0[μA]
(0≦x3≦5)・・・(5)
IC(x3)=−7.37×x3/100+24.4[μA]
(5<x3≦95)・・・(6)
IC(x3)=52.6×x3/100−32.6[μA]
(95<x3≦100)・・・(7)
また、Bk用の1次転写電源81Kについては、感光体2K上のニップ出口付近における「10ライン区画」の平均画像面積率x4から、次式に基づいて1次転写電流の目標値IBk(x4)を求めるように、制御部200を構成している。
IC(x4)=180×x4/100+15.0[μA]
(0≦x4≦5)・・・(8)
IC(x4)=−7.37×x4/100+24.4[μA]
(5<x4≦95)・・・(9)
IC(x4)=52.6×x4/100−32.6[μA]
(95<x4≦100)・・・(10)
(5)式〜(7)式と、(8)式〜(10)式との比較からわかるように、CとBkとでは、目標値と平均画像面積率との関係を示す一次関数として、互いに同じ傾き及び切片のものを用いている。
M用に用いられる(2)式、C用に用いられる(5)式、Bk用に用いられる(8)式は、何れも、平均画像面積率(x2、x3、x4)が5[%]未満であるとき、即ち、1次転写ニップの出口に感光体の大面積地肌領域が位置したとき、に採用される低面積率用アルゴリムである。
また、M用に用いられる(3)式、C用に用いられる(6)式、Bk用に用いられる(9)式は、何れも平均画像面積率が5[%]〜95[%]の範囲内にあるときに採用される第1アルゴリズムである。
また、M用に用いられる(4)式、C用に用いられる(7)式、Bk用に用いられる(10)式は、何れも平均画像面積率が95[%]を超えるとき、即ち、1次転写ニップの出口に感光体の極大画像領域が位置したとき、に採用される第3アルゴリズムである。
(1)式から(10)式に基づいて求められる各色の1次転写電流の目標値とニップ出口付近における平均画像面積率との関係を図10に示す。同図において、Y用の1次転写電流の目標値と、M用の1次転写電流の目標値とに着目すると、95[%]以下の面積率範囲では、平均画像面積率が同じであれば後者の目標値は前者の目標値よりも小さくなる。これは次に説明する理由による。即ち、Y用の1次転写ニップは、常に第1転写工程になり、それ以前にベルト上に転写されたトナー像が存在しないため、転写ニップ出口でベルトから感光体2Yの地肌部へのトナーの逆転写を発生させることがない。このため、優れた転写効率を得ることだけに着目して、(1)式の傾き(−8.00)や切片(28.0)を設定している。これに対し、M用の1次転写ニップでは、第1転写工程、第2転写工程の何れも発生する可能性がある。Y用の1次転写工程でY用のトナー像の1次転写が全く行われず、トナー像を全く担持していない状態の中間転写ベルト21に対してMトナー像を1次転写する場合には、M用の1次転写ニップで行われる転写工程が第1転写工程となる。これに対し、Y用の1次転写ニップで転写されたYトナー像を担持する中間転写ベルト21に対して、Mトナー像を転写する場合には、M用の1次転写ニップで行われる転写工程が第2転写工程となる。そして、第2転写工程となる場合には、M用の1次転写ニップの出口において、ベルト上のYトナーを感光体2Mの地肌部に逆転写させる可能性がある。そこで、M用の1次転写電源81Mの目標値IM(x2)については、優れた転写効率を得ることだけに着目するのではなく、トナーの逆転写を抑えることにも着目して、(3)式の傾きや切片を設定している。このため、5〜95%の範囲において、平均画像面積率が同じであれば、M用の目標値IM(x2)の方が、Y用の目標値IY(x1)よりも小さくなるのである。また、M用の目標値IM(x2)と、C用の目標値IC(x3)やBk用の目標値IBk(x4)とを比較すると、5〜95%の範囲において、平均画像面積率が同じであれば、前者の方が後者よりも小さくなっている。これは次に説明する理由による。即ち、C用の1次転写ニップやBk用の1次転写ニップでは、中間転写ベルト21上にYトナーに加えてMトナーが存在するため、Yトナーしか存在しないM用の1次転写ニップに比べて、ベルト上のトナー量が多くなる。このため、M用の1次転写ニップに比べて、トナーの逆転写が発生し易くなるからである。
第2転写工程が行われるM、C,Bkに着目すると、平均画像面積率が5〜95[%]の範囲内であるときには、一次関数のグラフが負の傾きになっている。これに対し、平均画像面積率が5[%]未満であるときには、一次関数のグラフが正の傾きになっている。これは以下に説明する理由による。
即ち、感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が5[%]未満と極めて低い場合には、転写ニップ出口において感光体上にトナーが殆どない状態になっている。特に平均画像面積率0[%]であるときには、転写ニップ出口において感光体上にはトナーが全くない状態になっている。このような状態では、感光体からベルトへのトナーの転写処理を行う必要は全くない。よって、基本的には、1次転写バイアスの印加を中断しても画質に影響を及ぼさない。また、0[%]以上であっても、5[%]未満という非常に低い平均画像面積率の条件では、転写ニップ出口に極小面積の画像が位置することになる。この極小面積の画像の色調がハーフトーンでない場合には、それは文字画像や線画像である場合が殆どでる。文字画像や線画像であれば、多少のトナー逆転写が発生しても、それによる画像濃度ムラは殆ど視認されない。また、極小面積の画像の色調がハーフトーンである場合、感光体表面では周囲を地肌部で囲まれる孤立ドット状のドット潜像が所定の間隔をあけて並んでいる状態となっている。この状態では、極小のドット潜像が地肌部に囲まれており、ドット潜像のプラスの電荷や、周囲の地肌部の電位の影響で、地肌部の1次転写電流が潜像部に流れ込み易くなる。しかも、ドット潜像に付着しているトナー量がごく僅かであるため、それほど1次転写電圧を高くしなくても、ドット潜像上のトナーを中間転写ベルト21に転写することができる。更に、Y、M、C、Bkの全色の廃トナー量に着目すれば、1次転写電流を多くすることによる転写効率の増加よりも、1次転写電流を小さくすることによる逆転写トナー量の減少を優先した方が有利である。例えば、M用の1次転写ニップ出口付近において、ベルト上のYトナー像の平均画像面積率、感光体2M上のMトナー像の平均画像面積率が、ともに2[%]であるとする。この条件において、(3)式に基づいてMの1次転写電流の目標値を求めると、IM(x2=2)は約26.2[μA]となる。2[%]と5[%}とで電圧−電流特性が殆ど変らないとすれば、図7から、M用の1次転写電源81Mからの1次転写電圧の出力は1800[V]程度になる。そして、図8から、Yトナーの逆転写率は2.5[%]程度になる。また、Mトナーの転写効率は96.2[%]程度になる。このため、M用の1次転写ニップで感光体2Mに付着して失われるトナーの割合は、6.3[%]程度になる(2.5+3.8)。これに対し、(2)式に基づいてIM(x2=2)を求めると19.4[μA]となり、この電流を流すと1次転写電圧は1600[V]程度になる(図7)。そして、Yトナーの逆転写率は1.0[%]程度になる(図8)。また、Mトナーの転写効率は95.5[%]程度になる。このため、M用の1次転写ニップで感光体2Mに付着して失われるトナーの割合は、5.5[%]程度になる(1+4.5)。よって、(2)式に基づいてIM(x2=2)を求める、即ち、1次転写電流を小さくすることによる逆転写トナー量の減少を優先する方が、廃トナーを減少させて、トナーの有効利用率を高めることができる。当然のことながら、Yトナーの画像面積率がより大きくなれば、M用の1次転写電源81Mからの1次転写電圧の出力値が上昇し、Yトナーの逆転写率が増加することになる。このため、本プリンタのように、感光体上の転写ニップ出口における平均画像面積率が著しく低い場合は、電流を下げた方が廃トナー量を低減する上で有利であることがわかる。
そこで、M,C,Bk用の1次転写ニップにおいて、感光体のニップ出口付近における平均画像面積率が5[%]未満であるときには、1次転写電流の目標値を十分に小さくして、逆転写の発生を効果的に抑制する。逆転写の発生を回避するという観点からすれば、目標値を10[μA]付近まで下げることが望ましい。しかし、そのようにすると、転写ニップ出口に10[%]程度の平均画像面積率の感光体領域が進入したときに、1次転写電流を急激に高めなければならないにもかかわらず、電源の出力応答性の限界から十分に高めることができず、転写不良を引き起こすおそれがでてくる。そこで、10[μA]までは下げずに、15[μA]以上を維持するようになっている。電源の応答性によっては、10[μA]程度まで下げてもよい。また、平均画像面積率が5[%]未満である範囲で、グラフを正の傾きとしているのは、平均画像面積率が0[%]から5[%]に近づくに従って、次の瞬間の平均画像面積率が5[%]よりやや大きくなって、1次転写電流を26[μm]程度まで急激に高めなければならなくなる可能性が高くなるからである。
感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率x2が5〜95[%]の範囲である場合には、1次転写電流の目標値IM(x2)、IC(x3)、IBk(x4)は、第1アルゴリズムで求められるものと同様に、平均画像面積率の減少につれて増加する。
M,C,Bk用の1次転写ニップにおいて、感光体上の平均画像面積率が100[%]である場合には、感光体の画像形成可能領域の全てにトナーが付着しており、転写ニップ出口に感光体地肌部が全く存在しない状態になる。転写ニップ出口において、ベルト上のトナーは感光体地肌部に逆転写するため、感光体地肌部のない状態では逆転写が起こらない。このため、1次転写電流を非常に大きくしても、逆転写を発生させることがない。しかも、転写ニップ出口に全面ベタ画像を位置させる状態であり、全面ベタ画像はハーフトーン画像とは異なり、転写電流不足に起因する転写画像のムラや濃度不足が目立ち易い。特に、1次転写ニップでの圧力ムラが装置のリアとフロント(出力画像上の左右)とで大きい場合には左右濃度偏差として視認され易くなる。よって、平均画像面積率が100[%]である場合には、1次転写電流の目標値を通常よりも高めに設定して良好な転写効率を優先することが望ましい。
平均画像面積率が100[%]ではないものの、95[%]を超えている場合には、1次転写電流の目標値を通常よりも高めに設定して良好な転写効率を優先することが望ましい。そこで、第1アルゴリズムである(3)式、(6)式、(10)式の代わりに、第3アルゴリズムである(4)式、(7)式、(10)式を用いるようになっている。これらの第3アルゴリズムを用いると、図10に示したように、5〜95[%]の範囲では負の傾きになっていたグラフが、95[%]を超えた範囲では正の傾きに転じる。そして、平均画像面積率が高くなるにつれて、1次転写電流の目標値も増加する。これにより、1次転写電流を通常よりも高めにして、画像濃度不足の顕在化を抑えることができる。
本発明者らは、以上の構成を備えるプリンタ試験機を用意して、図11に示すテスト画像をプリントする実験を行った。このテスト画像は、黒ベタ画像部Pkと、赤ベタ画像部Prとを具備している。黒ベタ画像部Pkは、主走査方向における画像面積率が90[%]になっており、主走査方向の真ん中あたりが欠けている。また、副走査方向においては、所定のピッチ及び長さで、この黒ベタ画像部Pkの存在しない領域が設けられている。黒ベタ画像部Pkは、Bkトナーによって形成されたものである。
赤ベタ画像部Prは、YトナーとMトナーとの重ね合わせによって形成されるものであり、主走査方向における画像面積率が10[%]になっている。記録紙の副走査方向の全域に渡って延在する帯状のベタ画像であり、主走査方向では、黒ベタ画像部Pkの存在しない領域に位置している。
このようなテスト画像を出力して、赤ベタ画像部Prにおける図中α、β示した箇所の測色を行った。測色には、反射分光濃度計X−Rite938を用いた。箇所αは、副走査方向において、記録紙全域のうち、黒ベタ画像部Pkが存在せず、赤ベタ画像部Prだけが存在する領域における赤ベタ箇所である。また、箇所βは、副走査方向において、記録紙全域のうち、黒ベタ画像部Pkと赤ベタ画像部Prとの両方が存在する領域における赤ベタ箇所である。測色の結果、箇所αのL*値が46.3であるのに対し、箇所βのL*値が46.9であった。その差を僅か0.6に留めることができた。なお、黒ベタ画像部Pkの画像濃度IDは、副走査方向の位置にかかわらず、165であった。
比較実験として、(1)式から(10)式を用いずに、単純に次のように定電流制御を実施して同様のテスト画像を出力してみた。即ち、感光体上の平均画像面積率にかかわらず、Yの1次転写電流を29[μA]に定電流制御し、Mの1次転写電流を25[μA]に定電流制御し、Cの1次転写電流を22[μA]に定電流制御し、且つBkの1次転写電流を23[μA]に定電流制御した。先の実験と同様にして測色を行ったところ、箇所αのL*値が46.9であったのに対し、箇所βのL*値が48.0であった。その差は1.1であり、先の実験の倍近くにも及んだ。このように色ムラが発生したのは、次に説明する理由による。即ち、比較実験では、箇所αは、Y用の1次転写ニップでYトナーベタ部をベルトに転写した後、そのYトナーベタ部の上に、M用の1次転写ニップでMトナーベタ部を転写することによって得られたものである。このようにしてベルト上に得られた箇所αは、C用の1次転写ニップとBk用の1次転写ニップとを順次通過していく。そして、それらの1次転写ニップにおいてそれぞれ、ベルト上のMトナーベタ部を構成しているMトナーの一部が感光体に逆転写したため、箇所αのL*値を当初よりも高くしているのである。
次に、本発明者らは、(1)式〜(10)式を用いる条件と、単純に定電流制御を行う条件(各色の電流目標値は先の実験と同様)とでそれぞれ、記録紙の全面に渡る全面ベタ画像を出力する実験を行った。全面ベタ画像としては、Y全面ベタ部の上にC全面ベタ部を転写して得られる緑全面ベタ画像と、Y全面ベタ部の上にM全面ベタ部を転写して得られる赤全面ベタ画像との両方を採用した。
緑全面ベタ画像では、測色結果が、(1)式〜(10)式を用いる条件でL*値=42.8、a*値=58.9、b値23.0であったのに対し、単純な定電流制御の条件では、L*値=44.5、a*値=58.3、b値23.1であった。本発明の特徴部に対応する前者の条件では、後者の条件よりも低い明度の画像が得られたのである。これは、前者の条件では、M用の1次転写ニップでYトナーの逆転写を抑えたとともに、Bk用の1次転写ニップでCトナー像の逆転写を抑えた結果、前者の条件の方が後者の条件よりも多くのトナーを記録紙に付着させたからである。
また、赤全面ベタ画像では、測色結果が、(1)式〜(10)式を用いる条件でL*値=47.7、a*値=62.5、b値45.1であったのに対し、単純な定電流制御の条件では、L*値=48.1、a*値=62.0、b値47.3であった。本発明の特徴部に対応する前者の条件では、後者の条件よりも低い明度の画像が得られたのである。この理由も緑全面ベタ画像と同様である。
次に、本発明者らは、Bkの1次転写電流を様々な値に定電流制御しながら、それぞれの値においてBk全面ベタ画像を出力して、その面内での平均画像濃度IDを測定する実験を行った。図12は、Bk全面ベタ画像の面内の平均画像濃度と、一次転写電流の関係を示すグラフである。特に左右偏差や感光体上のトナー付着量のばらつきが大きな装置では、一次転写電流を20[μA]より少し高めにすることにより平均濃度が高くなり、目視上の画像濃度ムラも低減されることが確認された。(6)式に基づき、単純に画像面積率に応じて電流を下げると、一次転写電流IK(x4=100%)は、17[μA]になり、悪い条件(感光体上のトナー付着量がやや少なめになるなど)が重なると濃度ムラが目に付く場合あるが、(7)式のように、IK(x4=100%)として20[μA]印加することで、しっかりとした濃度の全ベタ画像を安定して出力することが可能となることが確かめられた。
以下、便宜上、本発明のように、転写ニップ出口付近における感光体の平均画像面積率に応じて定電流制御の目標値を変更する方式をDTCC(Dynamic Transfer Current Control)方式という。
DTCCでは、感光体上の転写ニップ出口における平均画像面積率に応じて一次転写電流の目標値を決定する際に、転写ニップ出口における中間転写ベルト21上のトナー像の画像面積率は考慮していない。これは次に説明する理由による。即ち、中間転写ベルト21上のトナー像の画像面積率を考慮しなくても、中間転写ベルト21上にトナー像が存在する場合には、トナーの逆転写があまり発生しない適度な範囲で、一次転写電圧が自動的に上昇し、良好な最終画像が得られるからである。
従来、特開2003−186284号公報に記載の画像形成装置が知られている。この画像形成装置においては、中間転写ベルト上の転写済みトナー像と、転写前トナー像との重なりの割合と画像の比率(転写済みトナー像と転写前トナー像との和から重なり部分を差し引いた値)に基づいて、一次転写電流の目標値を決定している。かかる構成では、トナーが重なっていないところで高い転写電流が付与され、その結果、逆転写率が大きくなり、著しい画像濃度低下が発生する。また、重ね転写時に一次転写電流を高くするようになっているが、図8のグラフや、後述する第1変形例で示す図18から明らかなように、転写効率の転写電流依存性のカーブの傾向は単色と重ねで同等であり、重ね転写時に電流を高くする必要はない。さらに、重なりを判定するために、メモリなどの記憶媒体に色毎の印字位置情報を記憶し、画像毎に重なり率を演算する必要があるために、高性能なCPUや容量の大きなメモリが必要となる。これに対し、本プリンタでは、単純に転写されるトナー像の画像面積率に応じて転写電流を制御するだけであるため、安価なシステムで高画質な画像が実現できる。
従来、1次転写バイアスの制御方式としては、一般的な定電流方式、一般的な定電圧方式などの他に、ATVC(Active Transfer Voltage Control)方式や、PTVC(Programable Transfer Voltage Control)方式が知られている。ATVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平2−123385号公報に記載のものが知られている。また、PTVC方式を採用した画像形成装置としては、特開平5−181373号公報に記載のものが知られている。
従来のATVC方式やPTVC方式は何れも、基本的には、出力電圧を所定の目標値にするように出力電流を制御する定電圧制御である。1次転写ローラの抵抗(電気抵抗値)が環境変動によって変化すると、それに伴って出力電圧の望ましい値が変化することから、1次転写ローラの抵抗値を所定のタイミング毎に測定した結果に応じて、出力電圧の目標値を変化させる点が、一般的な定電圧制御と異なっている。1次転写ローラの抵抗を測定するときに、ATVC方式では電流を定電流制御するのに対し、PTVCでは定電圧制御する。何れの方式においても、従来では、1色目と2色目以降とで出力電圧の目標値として同じ値を採用しているので、2色目以降の1次転写ニップでベルト上のトナーを感光体の地肌部に逆転写してしまう。また、1次転写ローラの抵抗値の測定値に基づく出力電圧の目標値の補正については、所定のタイミング毎に実施するが、急激な環境変動によって抵抗値が急激に変化してしまう場合には、補正した値が実情にそぐわなくなってしまう。そして、このような不具合の発生を抑えるために、抵抗検知タイミングの時間間隔を短くすると、装置のダウンタイムを増加させてしまう。これに対し、本発明においては、電流値を一定にする制御であるため、1次転写ローラの抵抗変化にかかわらず、所定の電流を流して転写性を安定させることができる。
先に図10に示したように、M,C,Bkのそれぞれにおいて、平均画像面積率が0[%]であるときに決定される1次転写電流の目標値は、平均画像面積率が100[%]であるときに決定される目標値よりも小さく設定されている。これにより、0[%]であるときには逆転写の抑制を優先する一方で、100[%]であるときには転写効率の向上を優先することができる。
なお、実施形態においては、平均画像面積率と1次転写電流の目標値との関係として、図10のグラフを例に示したが、これに限られるものではない。例えば、図13〜図16のグラフに示される関係を採用することも可能である。図13は、一次関数で示される直線グラフでなく、多次関数で示される曲線グラフになっている。
図14は、一次関数で示される直線グラフであり、a=1[%]、b=99[%]になっている。この直線グラフは、平均画像面積率が1〜99[%]であるときに用いられる第1アルゴリズムである。平均画像面積率が1[%]未満である0[%]のときには、目標値として15[μA]が採用される。つまり、第2アルゴリズムが15[μA]という定数になっている。また、平均画像面積率が99[%]を超える100[%]のときには、目標値として21[μA]が採用される。つまり、第3アルゴリズムが、21[μA]という定数になっている。
図15は、複雑な折れ線グラフのような形状で平均画像面積率と目標値との関係が示される。また、図16は、平均画像面積率=a〜b[%]の範囲において、平均画像面積率の連続的な変化に対して目標値を連続的に変化させるのではなく、段階的に変化させている。このようなアルゴリズムとしては、関数式の他、データテーブルを採用することも可能である。
本実施形態においては、「10ライン区画」の平均画像面積率に応じて1次転写電流の目標値を変化させる例について説明したが、画像面積率の平均値を算出方法はこれに限られるものではない。例えば、1画素単位や100画素単位といったように,さまざまの画素数で画像面積率を計算してもよい。区画の変わり目で目標値を急激に変化させずに、徐々に変化させていく方法を採用してもよい。
また、同じ平均画像面積率では1次転写電流の目標値をY>M>C=Kという順で小さくする例について説明したが、徐々に小さくしていくという最低限の条件さえ具備させれば、大小関係はこれに限られるものではない。例えば、Y>M=C=K、Y=M>C=K、Y>M>C>Kという関係であってもよい。
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図17は、第1変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、装置内で記録紙Pを水平方向に搬送しながら、その記録紙Pに画像を形成する点が、記録紙Pを鉛直方向に搬送する実施形態に係るプリンタと異なっている。
タンデムトナー像形成部10は、Y、M、C、Bkの各色トナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Bkを有している。転写手段である転写ユニット20は、ニップ形成部材たる無端状の中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、二次転写対向ローラ24、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Bk、二次転写ローラ26などを有している。
無端状の中間転写ベルト21は、側方からの眺めが逆三角形状の形状になる姿勢で、駆動ローラ22、従動ローラ23及び二次転写対向ローラ24に掛け回されている。中間転写ベルト21は、カーボン分散ポリイミドベルトであり、厚さ60[μm]、体積抵抗率は、約1E9[Ω・cm](三菱化学製ハイレスターUP(MCP−HT450を用い印加電圧100[V]での測定値)、引張り弾性率は、2.6[GPa]である。そして、図示しない駆動装置によって駆動ローラ22を回転駆動せしめ、中間転写ベルト21が、図中時計回り方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト21のループ内側には、駆動ローラ22、従動ローラ23、及び二次転写対向ローラ24の他に、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Bkも配設されている。
タンデムトナー像形成部10は、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Bkを中間転写ベルト21の上張架面に沿って水平方向に並べる姿勢で、転写ユニット20の上方に配設されている。画像形成部たる画像形成ユニット1Y,M,C,Bkは、図中反時計回り方向に回転駆動されるドラム状の感光体2Y,M,C,Bkと、現像ユニット3Y,M,C,Bkと、帯電手段4Y,M,C,Bkとを有している。潜像担持体たる感光体2Y,M,C,Bkは、それぞれ中間転写ベルト21の上張架面に当接してY,M,C,Bk用の1次転写ニップを形成しながら、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。
感光体2Y,M,C,Bk(φ60)は、有機感光体であり、感光層静電容量が、約9.5E−7[F/m2]程度になっている。帯電手段4Y,M,C,Bkは、帯電電源80Y,M,C,Bkにより帯電バイアスが印加され、感光体2Y,M,C,Bkの表面をトナーの帯電極性と同じ極性に一様帯電せしめるものである。
現像手段たる現像装置3Y,M,C,Bkは、磁性キャリアとポリエステル系の材料からなる粉砕トナーとを収容しており、それぞれ現像剤担持体たる現像ローラ3aY,M,C,Bkを有している。現像ローラ3aY,M,C,Bkは不図示の駆動モータにより図中時計回りの方向に回転させて、必要量の現像剤を表面に保持して感光体との対向位置へ搬送する。現像ローラ内部には、複数の磁石が設けられており、現像ローラ表面に保持されている現像剤は、現像領域で現像領域と対向する磁石による磁力で穂立ちし、現像ローラ表面上の磁気穂が感光体と接触する。現像ローラ3aY,M,C,Bkには、不図示の電源から現像バイアスが印加されている。この現像バイアスと感光体上の静電潜像とによって形成される潜像電界により、現像ローラ3aY,M,C,Bk上で穂立ちした現像剤からトナーが感光体表面に移動して静電潜像を現像する。
Y,M,C,Bk用の1次転写ニップの下方では、中間転写ベルト21のループ内で、1次転写ローラ25Y,M,C,Bkが中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Bkに向けて押圧している。4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Bkは、金属製の芯金にスポンジ等の弾性体が被覆されたローラであり、芯金を除く体積抵抗値は、1E9[Ω・cm]である。これら1次転写ローラ25Y,M,C,Bkには、1次転写電源81Y,M,C,Bkによって定電流制御されるトナー帯電極性と逆極性の1次転写電流が印加される。
タンデムトナー像形成部10の上方には、図示しない潜像形成手段たる光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、帯電手段4Y,M,C,Bkによって−650[V]に一様帯電せしめられた感光体2Y,M,C,Bkの表面に対し、走査光Lによる光書込処理を施して静電潜像を形成するものである。なお、ベタ画像時における静電潜像の電位Vlは、約−100[V]である。感光体2Y,M,C,Bkに形成された静電潜像は、現像ユニット3Y,M,C,Bkによって負極性(帯電量約−20[μc/g]トナーで反転現像されてY,M,C,Bkトナー像(ベタ画像時におけるトM/Aで約0.6[mg/cm2])になる。これらY,M,C,Bkトナー像は、上述したY,M,C,Bk用の1次転写ニップにて、中間転写ベルト21のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト21のおもて面には、4色重ね合わせトナー像が形成される。
従来、画像面積率に応じて転写電流の定電流制御の目標値を変化させる画像形成装置として、特開2003−186284号公報に記載のものが知られている。この画像形成装置は、2色目以降の1次転写ニップにおいて、感光体上の画像面積率のみならず、中間転写ベルト上の画像面積率にも基づいて、電流目標値を変化させている。具体的には、感光体上の画像面積率とベルト上の画像面積率との和から、感光体上のトナーとベルト上のトナーとが重なる領域の面積率を差し引いた値に応じて、電流目標値を変化させている。同公報では、このように、感光体上の画像面積率だけでなく、ベルト上の画像面積率を考慮する理由として、1次転写電流が感光体上のトナーのみならず、ベルト上のトナーにも影響を受けるからだとしている。
しかしながら、画像面積率に応じて1次転写電流が変化するのは、ニップにトナーが介在していることよりも、既に述べたように、感光体の地肌部の電荷量が潜像部よりも大きいことによる影響の方が遙かに大きい。現に、本発明者は、図18に示した第1変形例に係るプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用いた実験で、そのことを立証している。図18は、同プリンタ試験機によるテストプリントで測定された1次転写電流と、1次転写率と、1次転写ニップにおけるトナーの介在状態との関係を示すグラフである。図示のように、1次転写電流や1次転写率は、ベルト上のトナー付着量には殆ど影響を受けず、感光体の画像面積率に大きな影響を受けていることがわかる。
よって、同公報に記載の画像形成装置では、感光体上のトナー像と、ベルト上のトナー像とが重なる領域が、それぞれの単独の画像面積と比べて比較的小さい場合には、1次転写電流を過剰なまでに引き下げて転写不良を引き起こしてしまう。また、重なる領域が比較的大きい場合には、重なる領域用の転写電流を上乗せする計算を行っている関係で、1次転写電流を過剰なまでに引き上げて逆転写を引き起こしてしまう。さらに、重なりを判定するために、メモリなどの記憶媒体に色毎の印字位置情報を記憶し、画像毎に重なり率を演算することから、高性能なCPUや容量の大きなメモリが必要となってしまう。
[第2変形例]
図19は、第2変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、ニップ形成部材として、中間転写ベルトの代わりに、無端状の紙搬送ベルト121を各色の感光体2Y,M,C,Bkに当接させている点が、実施形態に係るプリンタと異なっている。紙搬送ベルト121は、その表面に保持した記録紙を、自らの無端移動に伴ってY,M,C,Bk用の1次転写ニップに順次通していく。この過程で、感光体2Y,M,C,Bk上のY,M,C,Bkトナー像が、記録紙の表面に重ね合わせて転写されていく。
[第3変形例]
図20は、第3変形例に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、1つの感光体2の周囲に、Y,M,C,Bk用の現像装置3Y,M,C,Bkを有している。画像形成を行う場合、まず、感光体2の表面を帯電手段4によって一様に帯電させた後、感光体2の表面に対してY用の画像データに基づいて変調されたレーザ光ーLを照射して,感光体2の表面にY用の静電潜像を形成する。そして、このY用の静電潜像を現像装置3Yによって現像してYトナー像を得た後、これを中間転写ベルト21上に1次転写する。その後、感光体2の表面上の転写残トナーをドラムクリーニング装置5によって除去した後、感光体2の表面を帯電手段4によって再び一様に帯電させる。次に、感光体2の表面に対して、M用の画像データに基づいて変調されたレーザー光Lを照射して、感光体2の表面にM用の静電潜像を形成した後、これを現像装置3Mによって現像してMトナー像を得る。そして、このMトナー像を中間転写べルト21上のYトナー像に重ね合わせて1次転写する。以降、同様にして、感光体2上でCトナー像、Bkトナー像を順次現像して、ベルト上のYMトナー像上に順次重ね合わせて1次転写していく。これにより、中間転写ベルト21上に4色トナー像を形成する。
その後、中間転写ベルト21上の4色トナー像を、2次転写ニップで記録紙の表面に一括2次転写して、記録紙上にフルカラー画像を形成する。そして、定着装置40によって記録紙にフルカラー画像を定着せしめた後、記録紙を機外に排出する。
このような、周回方式による重ね合わせ転写を行う構成において、1色目(1周目)の転写工程では、実施形態におけるY用と同様のアルゴリズムを用いる。これに対し、2色目以降(2〜4周目)の転写工程では、実施形態におけるM用と同様のアルゴリズムを用いる。
以上、実施形態に係るプリンタにおいては、第2転写工程を実施するM,C,Bk用の1次転写ニップにおいて、平均画像面積率がb=95[%]を超えるときには(但し、b<100)、アルゴリズムとして、95[%]の平均画像面積率に対応する1次転写電流の目標値として、第1アルゴリズムである(3)式、(6)式、(9)式
によって求められる値よりも大きな値を、95[%]を超える平均画像面積率に対応する目標値として求めるための第3アルゴリズムである(4)式、(7)式、(10)式を用いるようになっている。かかる構成では、全面ベタ画像、あるいはこれに近いほど高画像面積率の画像を転写する際には、1次転写電流を非常に大きくしても、ベルトから感光体へのトナーの逆転写が殆ど起こらないことから、1次転写電流を非常に大きくして画像濃度不足を効果的に抑えることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第2アルゴリズムたる(2)式、(5)式、(8)式として、平均画像面積率の増加に伴って1次転写電流の目標値を増加させるものを用いている。かかる構成では、感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が5[%]未満であるときに、平均画像面積率が0[%]から5[%]に近づくに従って、1次転写電流の目標値を大きくしていくことで、平均画像面積率が5[%]を上回った瞬間に、1次転写電流値がその平均画像面積率にふさわしい値よりも大きく下回っているという事態が発生するのを回避して、5〜10[%]あたりでの1次転写電流不足による画像濃度不足の発生を抑えることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第3アルゴリズムたる(4)式、(7)式、(10)式として、平均画像面積率の増加に伴って1次転写電流の目標値を増加させるものを用いている。かかる構成では、感光体の転写ニップ出口付近における平均画像面積率が95[%]を超えているときに、平均画像面積率が100[%]から95[%]に近づくに従って、1次転写電流の目標値を小さくしていくことで、平均画像面積率が95[%]以下になった瞬間に、1次転写電流値がその平均画像面積率にふさわしい値よりも大きく上回っている事態が発生するのを回避して、90〜95[%]あたりでの1次転写電流過多よる逆転写の発生を抑えることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第2アルゴリズム及び第3アルゴリズムの組合せとして、0[%]の平均画像面積率に対応する目標値を、100[%]の平均画像面積率に対応する目標値よりも小さな値にするものを、用いている。かかる構成では、0[%]のときに、転写効率の向上よりも逆転写の抑制を優先する一方で、100[%]のときに逆転写の抑制よりも転写効率の向上を優先することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第1アルゴリズム、第2アルゴリズム及び第3アルゴリズムの組合せとして、0[%]の平均画像面積率に対応する目標値を、目標値の中の最小値とするものを用いている。かかる構成では、平均画像面積率が0[%]であるとき、即ち、感光体のトナーをベルト上に転写する必要のないときには、1次転写電流を最小にして、トナーの逆転写の発生を確実に回避することが可能になる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、第1転写工程だけを実施するY用の1次転写ニップでは、1次転写電流の目標値を求めるアルゴリズムとして、0[%]から100[%]に至るまでの平均画像面積率の全範囲に渡って、平均画像面積率の増加に伴って目標値を減少させるものを用いている。かかる構成では、ベルト上のトナーの感光体地肌部への逆転写を発生させることのないY用の1次転写ニップでは、逆転写の抑制を考慮せずに、転写効率の向上を最優先にした1次転写電流を流すことができる。
また、実施形態に係るプリンタでは、第2転写工程を実施するM,C,Bk用の1次転写ニップについては、第1アルゴリズムたる(3)式、(6)式、(9)式として、Y用の1次転写ニップで用いるアルゴリズムたる(1)式に比べて、同じ画像面積率に対してより小さな値の目標値を求めるものを用いている。かかる構成では、逆転写を発生させるおそれのあるM,C,Bk用の1次転写ニップでは、Y用の1次転写ニップに比べて1次転写電流を小さくすることで、逆転写の発生を抑えることができる。