(基本原理)
先ず、炭素構造体(カーボンナノチューブ及び複数のグラフェンが積層して構成されたグラファイト)の成長態様について説明する。
図1は、グラファイトの成長態様の例を示す図である。この例では、図1(a)に示すように、絶縁基板1上に触媒層2(第1の触媒層)を形成し、その上にサポート層3(第2の触媒層)を形成しておく。触媒層2としては、厚さが3.6nm程度のコバルト(Co)層を形成し、サポート層としては、厚さが5nm程度のチタンナイトライド(TiN)層を形成する。これらは、例えばスパッタリング法により形成する。
次いで、低真空の真空槽中において、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン(C2H2)/アルゴン(Ar)の混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いて、熱化学気相成長(熱CVD)処理を行う。このときの加熱温度は、例えば450℃とする。この結果、触媒層2が絶縁基板1及びサポート層3に挟み込まれているが、カーボン原料はサポート層3を透過して触媒層2まで到達するので、図1(b)に示すように、グラファイト11が絶縁基板1と触媒層2との間に成長する。従来のグラファイトの作製方法では、図2(a)に示すように、絶縁基板201上に触媒層202を形成し、その後、図2(b)に示すように、触媒層の上部にグラファイト層203を析出させている。このため、図1に示すような構造は得られない。
このような処理の結果、絶縁基板1と接するグラファイト11が得られる。更に、塩酸等の酸処理を行うことにより、図1(c)に示すように、触媒層2及びサポート層3を除去して、絶縁基板1及びグラファイト11のみを残存させることも可能である。
このようなグラファイト11の成長は、絶縁基板1に代えて、層間絶縁膜等の絶縁膜を用いた場合も可能である。そして、このような構造を配線に用いれば、金属配線で生じるマイグレーションは生じず、高い信頼性を得ることができる。また、このような構造をトランジスタのチャネルに用いることも可能である。
図3は、グラファイト及びカーボンナノチューブの成長態様の他の例を示す図である。この例では、図3(a)に示すように、絶縁基板1上に触媒層2を形成し、その上にサポート層3を形成し、更に触媒層4(第3の触媒層)を形成しておく。触媒層2及び4としては、厚さが3.6nm程度のコバルト層を形成し、サポート層としては、厚さが5nm程度のチタンナイトライド層を形成する。つまり、図1に示す例に、触媒層2と同等の厚さの触媒層4を付加している。触媒層4も、例えばスパッタリング法により形成する。
次いで、低真空の真空槽中において、図1に示す例と同様の熱CVD処理を行う。この結果、先ず、図3(b)に示すように、触媒層4上にグラファイト12が成長すると共に、触媒層4に微粒子化が生じる。同時に、図3(c)に示すように、微粒子化した触媒層4から下方に向けてカーボンナノチューブ13が成長し始める。カーボンナノチューブ13が成長すると、微粒子化した触媒層4はグラファイト12とカーボンナノチューブ13の間に取り込まれる。触媒層4はグラファイトに完全に覆われる。そして、カーボンナノチューブ13が成長すると、その隙間からカーボン原料がサポート層3を透過して触媒層2まで到達するようになるので、図3(d)に示すように、グラファイト11が絶縁基板1と触媒層2との間に成長する。この透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図4に示す。
このような処理の結果、絶縁基板1と接するグラファイト11の他に、サポート層3から上方に延びるカーボンナノチューブ13、及びカーボンナノチューブ13の先端に位置するグラファイト12が得られる。
このようなグラファイト12、カーボンナノチューブ13及びグラファイト11の成長は、絶縁基板1に代えて、層間絶縁膜等の絶縁膜を用いた場合も可能である。そして、このような構造を縦方向配線に用いれば、その上下に位置する横方向配線との接続が良好な配線構造を得ることができる。
また、グラファイト11の成長後に塩酸等の酸処理を行えば、触媒層2及びサポート層3と共にカーボンナノチューブ13及びグラファイト12が除去される。カーボンナノチューブ13及びグラファイト12は、大気中又は酸素雰囲気中での450から600℃程度の加熱や酸素プラズマ処理により、別途除去することも可能である。このため、図1(c)に示すように、絶縁基板1及びグラファイト11のみを残存させることも可能である。
図5は、グラファイトの成長態様の他の例を示す図である。この例では、図5(a)に示すように、絶縁基板1上に触媒層2を形成し、その上にサポート層3を形成し、更に触媒層4を形成しておく。触媒層2及び4としては、厚さが4.3nm程度のコバルト層を形成し、サポート層としては、厚さが2.5nm程度のチタンナイトライド層を形成する。つまり、図3に示す例と比較すると、触媒層2及び4が厚く、サポート層3が薄い。
次いで、低真空の真空槽中において、図1に示す例と同様の熱CVD処理を行う。この例では、図3に示す例よりも触媒層4が厚いため、触媒層4の微粒子化が生じにくく、カーボンナノチューブ13が成長することなくグラファイト12が触媒層4上に成長する。また、サポート層3が薄いため、僅かに生じる触媒層4の微粒子化に伴ってカーボン原料が触媒層2まで到達する。このため、図3に示す例と同様に、グラファイト11が絶縁基板1と触媒層2との間に成長する。この透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図6に示す。
このような処理の結果、2つのグラファイト11及び12とこれらの間に挟み込まれた金属層(触媒層2、サポート層3及び触媒層4)とを備えた構造が得られる。
このようなグラファイト11及び12の成長は、絶縁基板1に代えて、層間絶縁膜等の絶縁膜を用いた場合も可能である。このような構造を配線に用いれば、金属層がグラファイト11及び12に覆われているので、金属層におけるマイグレーションは生じにくく、高い信頼性を得ることができる。
以下に、これらの炭素構造体の成長の性質を利用した半導体装置等の集積回路装置に関する実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図7A乃至図7Pは、第1の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
第1の実施形態では、図7Aに示すように、基板の上方に、層間絶縁膜21に導電性のプラグ22が埋め込まれた構造を形成し、その後、これらを覆う絶縁膜23を形成する。プラグ22は、タングステンプラグ等の金属プラグであってもよく、後述のカーボンナノチューブを用いたプラグであってもよい。絶縁膜23は、例えばスピンコーティング法又はCVD法により形成し、その厚さは例えば20nm〜50nm程度とする。また、層間絶縁膜21及び絶縁膜23の材料としては、ナノクラスタリングシリカ(NCS)等の低誘電率材料又はSiOC等が挙げられる。次いで、絶縁膜23上に、横方向配線を形成する予定の領域を露出するレジストパターン101を形成する。なお、層間絶縁膜21の形成の前には、基板上に半導体素子等の集積回路を構成する素子等を形成しておく。
その後、レジストパターン101をマスクとして用いて絶縁膜23のエッチングを行うことにより、図7Bに示すように、横方向配線を形成する予定の領域に開口部23aを形成する。このエッチングでは、フッ化水素酸を用いたウェットエッチング、又は四フッ化メタン(CF4)ガス等を用いたドライエッチング等を行う。続いて、基板の表面側の全面に積層触媒層24を形成する。積層触媒層24としては、例えば図5(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが4.3nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが2.5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが4.3nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。これらの層は、例えばDCプラズマスパッタリング法又はRFプラズマスパッタリング法により堆積させることができる。
次いで、図7Cに示すように、レジストパターン101を除去する。この結果、レジストパターン101上の積層触媒層24も除去される。つまり、リフトオフ法により、開口部23a内にのみ積層触媒層24が残存する。
その後、低真空の真空槽中において、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いて、熱CVD処理を行う。このときの加熱温度は、例えば450℃とする。この結果、図5に示す例に倣ってグラファイトが成長し、図7Dに示すように、グラファイト層52が積層触媒層24の上方に形成され、グラファイト層51が積層触媒層24の下方に形成される。そして、グラファイト層51の上面が絶縁膜23の上面と揃ったところで熱CVD処理を停止する。グラファイト層51及び52の厚さは、例えば15nm程度となる。このようにして横方向配線が形成される。
続いて、図7Eに示すように、基板の表面側の全面に層間絶縁膜25を形成する。層間絶縁膜25の材料としては、NCS等の低誘電率材料又はSiOC等が挙げられる。層間絶縁膜25の厚さは例えば200nm〜500nm程度とする。次いで、層間絶縁膜25上に、縦方向配線を形成する予定の領域を露出するレジストパターン102を形成する。
その後、開口部23aの形成時と同様の方法により、レジストパターン102をマスクとして用いて層間絶縁膜25のエッチングを行うことにより、図7Fに示すように、縦方向配線を形成する予定の領域に開口部25aを形成する。続いて、基板の表面側の全面に積層触媒層26を形成する。積層触媒層26としては、例えば図3(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。
次いで、図7Gに示すように、レジストパターン102を除去する。この結果、レジストパターン102上の積層触媒層26も除去される。つまり、リフトオフ法により、開口部25a内にのみ積層触媒層26が残存する。
その後、低真空の真空槽中において、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いて、熱CVD処理を行う。このときの加熱温度は、例えば450℃とする。この結果、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図7Hに示すように、グラファイト層54が積層触媒層26の上方に形成され、グラファイト層54と積層触媒層26との間にカーボンナノチューブ部55が形成され、グラファイト層53が積層触媒層26の下方に形成される。そして、グラファイト層54の上面が層間絶縁膜25の上面と揃ったところで熱CVD処理を停止する。例えば、グラファイト層53の厚さは10nm程度、カーボンナノチューブ部55の高さは300nm程度、グラファイト層54の厚さは15nm程度となる。なお、積層触媒層26のうちの上側の触媒層4はグラファイト層54に取り込まれる。このようにして縦方向配線が形成される。このような縦方向配線をプラグ22に用いてもよい。
続いて、図7Iに示すように、基板の表面側の全面に、例えばスピンコーティング法又はCVD法により、厚さが20nm〜50nm程度の絶縁膜33を形成する。絶縁膜23の材料としては、NCS等の低誘電率材料又はSiOC等が挙げられる。
次いで、図7Jに示すように、絶縁膜33上に、横方向配線を形成する予定の領域を露出するレジストパターン103を形成する。
その後、開口部23aの形成時と同様の方法により、レジストパターン103をマスクとして用いて絶縁膜33のエッチングを行うことにより、図7Kに示すように、横方向配線を形成する予定の領域に開口部33aを形成する。続いて、基板の表面側の全面に積層触媒層34を形成する。積層触媒層34としては、例えば図5(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが4.3nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが2.5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが4.3nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。
次いで、図7Lに示すように、レジストパターン103を除去する。この結果、レジストパターン103上の積層触媒層34も除去される。つまり、リフトオフ法により、開口部33a内にのみ積層触媒層34が残存する。
その後、低真空の真空槽中において、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いて、熱CVD処理を行う。このときの加熱温度は、例えば450℃とする。この結果、図5に示す例に倣ってグラファイトが成長し、図7Mに示すように、グラファイト層57が積層触媒層34の上方に形成され、グラファイト層56が積層触媒層34の下方に形成される。そして、グラファイト層57の上面が絶縁膜33の上面と揃ったところで熱CVD処理を停止する。グラファイト層56及び57の厚さは、例えば15nm程度となる。このようにして横方向配線が形成される。
続いて、図7Nに示すように、基板の表面側の全面に層間絶縁膜35を形成する。層間絶縁膜35の材料としては、NCS等の低誘電率材料又はSiOC等が挙げられる。層間絶縁膜35の厚さは200nm〜500nm程度とする。
次いで、図7Oに示すように、開口部25a内への縦方向配線の形成時と同様にして、層間絶縁膜35に開口部35aを形成し、更に、積層触媒層36、グラファイト層59、カーボンナノチューブ部60及びグラファイト層58を形成する。
その後、図7Pに示すように、絶縁膜23と同様にして絶縁膜43を形成し、積層触媒層24と同様にして積層触媒層44を形成し、グラファイト層51及び52と同様にグラファイト層61及び62を形成する。更に、層間絶縁膜25と同様に層間絶縁膜45を形成する。その後、同様の処理を繰り返して多層配線を形成し、集積回路装置を完成させる。
このような第1の実施形態によれば、横方向配線内の積層触媒層(積層触媒層24、34、44等)とその上下に位置する層間絶縁膜との間にはグラファイト層が介在している。このため、通電時においても積層触媒層に含まれる金属原子のマイグレーション(拡散)が極めて生じにくい。また、積層触媒層も横方向配線の一部として機能する。
また、縦方向配線の最下部に位置するグラファイト層(グラファイト層53及び58等)は、その直下に位置する横方向配線の最上部に位置するグラファイト層(グラファイト層52、57等)と直接接触する。このため、これらの間の接触抵抗が極めて低いものとなる。
なお、積層触媒層(触媒層及びサポート層)を形成する方法は特に限定されない。例えば、上記のDCプラズマスパッタリング法又はRFプラズマスパッタリング法の他に、電子ビーム蒸着法、CVD法、分子線エピタキシー法(MBE法)、有機金属CVD法(MOCVD)法、超臨界流体による薄膜形成法又は原子層堆積法(ALD法)等により形成してもよい。
また、グラファイト層及びカーボンナノチューブ部を形成する方法も特に限定されない。例えば、上記の熱CVD法の他に、ホットフィラメントCVD法、プラズマCVD法又はリモートプラズマCVD法等により形成してもよい。
また、触媒層及びサポート層の材料も特に限定されない。触媒層の材料としては、ニッケル、鉄、白金、銀及び金が挙げられる。また、これらの少なくとも1種類を含む合金を用いてもよい。サポート層の材料としては、それ単独ではカーボンナノチューブの触媒として機能しないものを用いることができ、チタン、チタンシリサイド、酸化チタン、タンタル、酸化タンタル、タンタルナイトライド、ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ハフニウム、酸化ハフニウム、バナジウム、酸化バナジウム、ニオブ、酸化ニオブ、アルミニウム、酸化アルミニウム、シリコンナイトライド及びモリブデンが挙げられる。また、これらの少なくとも1種類を含む合金、窒化物、シリサイド又は酸化物を用いてもよい。
また、縦方向配線の形成用の積層触媒層(積層触媒層26、36等)に関し、サポート層の厚さは0.5nm〜20nmであることが好ましく、触媒層の厚さは1nm〜50nmであることが好ましい。また、横方向配線の形成用の積層触媒層(積層触媒層24、34、44等)に関しては、サポート層の厚さは0.5nm〜20nmであることが好ましく、触媒層の厚さは2nm〜50nmであることが好ましい。
なお、横方向配線をより厚くするためには、横方向配線の形成用の積層触媒層(積層触媒層24、34、44等)を厚くすればよい。グラファイト厚さは触媒厚さに比例するからである。例えば、基板直上の触媒層にコバルトを用いた場合、触媒厚み3.6nm及び4.3nmに対して、それぞれ10nm及び15nmのグラファイト膜厚を得ることが可能となる。また、横方向配線自体を繰り返し形成して積層化してもよい。この場合、横方向配線を形成する開口部を有する絶縁膜を予め厚く形成しておいてもよく、また、横方向配線の形成の度に、絶縁膜の形成及びパターニングを繰り返してもよい。
また、全ての配線を形成した後に、絶縁膜(層間絶縁膜を含む)を除去して、エアギャップ配線構造としてもよい。
また、第1の実施形態では、絶縁膜に開口部を形成した後にリフトオフにより積層触媒層を形成しているが、絶縁膜を形成せずに積層触媒層を全面に形成し、これを縦方向配線又は横方向配線を形成する予定の領域に残すようにパターニングしてもよい。この場合、縦方向配線又は横方向配線を形成した後に、層間絶縁膜等を形成すればよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図8A乃至図8Hは、第2の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第1の実施形態は配線の形成に関するものであるが、第2の実施形態は電界効果トランジスタの形成に関するものである。
第2の実施形態では、図8Aに示すように、絶縁基板71上に、チャネルを形成する予定の領域を露出するレジストパターン104を形成し、その後、図8Bに示すように、絶縁基板71の表面側の全面に積層触媒層72を形成する。なお、チャネルを形成する予定の領域の幅は、例えば数nm〜数十nm程度とする。より具体的には、チャネルの形成予定領域は、例えば、幅が10nm程度、長さが1μm程度の領域である。なお、フォトリソグラフィでのパターニングが困難な場合には、電子露光又は放射光露光等を行ってもよい。また、積層触媒層72としては、例えば図3(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。
次いで、図8Cに示すように、レジストパターン104を除去する。この結果、レジストパターン104上の積層触媒層72も除去される。つまり、リフトオフ法により、チャネルの形成予定領域にのみ積層触媒層72が残存する。なお、リフトオフ法を採用せずに、チャネルの形成予定領域をレジストパターンで覆い、アルゴンイオンミリング等により露出している部分を除去して、積層触媒層72をチャネルの形成予定領域のみに残存させてもよい。
その後、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図8Dに示すように、グラファイト層64が積層触媒層72の上方に形成され、グラファイト層64と積層触媒層72との間にカーボンナノチューブ部65が形成され、グラファイト層63が積層触媒層72の下方に形成される。なお、積層触媒層72のうちの上側の触媒層4はグラファイト層64に取り込まれる。
続いて、図8Eに示すように、酸素プラズマ処理によりグラファイト層64及びカーボンナノチューブ部65を除去する。なお、酸素雰囲気中又は大気中での450℃〜600℃程度での加熱等を行っても、グラファイト層64及びカーボンナノチューブ部65を除去することが可能である。
次いで、塩酸又は硫酸等の酸を用いた化学処理することにより、図8Fに示すように、積層触媒層72を除去する。この結果、チャネルを形成する予定の領域にグラファイト層63が残存することとなる。
その後、フォトリソグラフィ技術を用いて、図8Gに示すように、グラファイト層63を間に挟むソース電極73s及びドレイン電極73dを形成する。ソース電極73s及びドレイン電極73dの形成では、例えば、チタン(Ti)膜、白金(Pt)膜及び金(Au)膜の積層体をリフトオフ法により形成する。この際のフォトレジストのパターニングでは、例えば、フォトグラフィ技術を用いるか、電子ビーム露光を行う。
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、図8Hに示すように、グラファイト層63上にゲート絶縁膜74を形成し、ゲート絶縁膜74上にゲート電極75を形成する。ゲート絶縁膜74としては、例えば、アルミニウム酸化膜又はハフニウム酸化膜を形成する。また、ゲート電極75としては、ソース電極73s及びドレイン電極73dと同様に、Ti膜、Pt膜及びAu膜の積層体を形成する。このようにして電界効果トランジスタを作製することができる。図8Hに示す電界効果トランジスタはトップゲート型であるが、埋め込みゲート型又はバックゲート型等としてもよい。
このような電界効果トランジスタでは、グラファイト層63と接する導体はソース電極73s及びドレイン電極73dのみであるため、グラファイト層63がチャネルとして機能する。つまり、第2の実施形態によれば、シリコンを主材料とするCMOSプロセスと並行して、炭素材料をチャネルに用いた電界効果トランジスタを形成することができる。
なお、形成されたグラファイト層63が厚すぎる場合には、ソース電極73s及びドレイン電極73dを形成する前に、グラファイト層63が露出した状態で弱い酸素プラズマ処理を行うことが好ましい。このような酸素プラズマ処理を行うことにより、グラファイト層63を構成するグラフェンの層数が減少し、グラファイト層63が薄くなるからである。同様の効果は大気中又は酸素雰囲気中での450から600℃程度の加熱でも得ることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図9A乃至図9Eは、第3の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第3の実施形態も電界効果トランジスタの形成に関するものである。
第3の実施形態では、図9Aに示すように、絶縁基板71上に積層触媒層72aを形成する。積層触媒層72aとしては、例えば、厚さが5nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)をこの順で形成する。
次いで、図9Bに示すように、Arイオンミリング等による積層触媒層72aのパターニングを行うことにより、チャネルを形成する予定の領域に積層触媒層72aを残存させる。チャネルを形成する予定の領域は、例えば、幅が10nm程度、長さが1μm程度の領域である。なお、第2の実施形態の積層触媒層72の形成と同様に、リフトオフ法により積層触媒層72aをチャネルの形成予定領域のみに位置させてもよい。
その後、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図1に示す例に倣ってグラファイトが成長し、図9Cに示すように、グラファイト層63が積層触媒層72aの下方に形成される。
続いて、塩酸又は硫酸等の酸を用いた化学処理することにより、図9Dに示すように、積層触媒層72aを除去する。この結果、チャネルを形成する予定の領域にグラファイト層63が残存することとなる。
次いで、第2の実施形態と同様にして、ソース電極73s、ドレイン電極73d、ゲート絶縁膜74及びゲート電極75を形成する。このようにして電界効果トランジスタを作製することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図10A乃至図10Hは、第4の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第2及び第3の実施形態はチャネルにグラファイトを用いた電界効果トランジスタの形成に関するものであるが、第4の実施形態はソース電極及びドレイン電極にもグラファイトを用いた電界効果トランジスタの形成に関するものである。
第4の実施形態では、図10Aに示すように、絶縁基板81上に積層触媒層82を形成する。積層触媒層82としては、例えば図3(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。
次いで、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図10Bに示すように、グラファイト層67が積層触媒層82の上方に形成され、グラファイト層67と積層触媒層82との間にカーボンナノチューブ部68が形成され、グラファイト層66が積層触媒層82の下方に形成される。なお、積層触媒層82のうちの上側の触媒層4はグラファイト層67に取り込まれる。
続いて、図10Cに示すように、酸素プラズマ処理等によりグラファイト層67及びカーボンナノチューブ部68を除去する。更に、塩酸又は硫酸等の酸を用いた化学処理することにより、積層触媒層82も除去する。この結果、絶縁基板81上にグラファイト層66が残存することとなる。
次いで、図10Dに示すように、グラファイト層66上に、チャネルを形成する予定の領域を露出するレジストパターン105を形成する。そして、グラファイト層63がチャネルとして厚すぎる場合には、弱い酸素プラズマ処理を行う。
その後、図10Eに示すように、絶縁基板71の表面側の全面に絶縁膜83を形成する。絶縁膜83としては、例えば、TEOS(tetraethylorthosilicate)を用いたCVD法によりシリコン酸化膜を形成してもよく、原子層堆積(ALD)法によりアルミニウム酸化膜、ハフニウム酸化膜又はチタン酸化膜を形成してもよい。
続いて、図10Fに示すように、絶縁膜83上に積層触媒層84を形成する。積層触媒層84としては、例えば図3(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。
次いで、図10Gに示すように、レジストパターン105を除去する。この結果、レジストパターン105上の絶縁膜83及び積層触媒層84も除去される。つまり、リフトオフ法により、チャネルの形成予定領域にのみ絶縁膜83及び積層触媒層84が残存する。
その後、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図10Hに示すように、グラファイト層86が積層触媒層84の上方に形成され、グラファイト層86と積層触媒層84との間にカーボンナノチューブ部87が形成され、グラファイト層85が積層触媒層84の下方に形成される。なお、積層触媒層84のうちの上側の触媒層4はグラファイト層86に取り込まれる。
続いて、グラファイト層86及びカーボンナノチューブ部87等の周囲に層間絶縁膜88を形成する。このようにして電界効果トランジスタを作製することができる。
このような電界効果トランジスタでは、グラファイト層66の絶縁膜83の下の部分がチャネルとして機能し、その両側の部分がソース電極、ドレイン電極及び横方向配線として機能する。また、絶縁膜83がゲート絶縁膜として機能し、その上のグラファイト層85、積層触媒層84、カーボンナノチューブ部87及びグラファイト層86がゲート電極及び縦方向配線として機能する。この結果、金属材料の使用量を低減することが可能となる。そして、微細化に伴って電流密度が高くなった場合でも、炭素材料からなる配線は断線が生じにくいため、金属配線を用いたものと比較して高い信頼性を得ることができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図11A乃至図11Eは、第5の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第2〜第4の実施形態では、チャネルの形成後にゲート絶縁膜を形成しているが、第5の実施形態では、サポート層をゲート絶縁膜として利用する。
第5の実施形態では、図11Aに示すように、絶縁基板71のチャネルの形成予定領域上に触媒層92、絶縁体からなるサポート層93及び触媒層94からなる積層触媒層を形成する。この積層触媒層は、例えば第2の実施形態における積層触媒層72と同様の方法により形成することができる。例えば、触媒層92としては厚さが3.6nmのコバルト層を形成し、サポート層93としては厚さが0.5nm乃至20nmのチタン酸化膜を形成し、触媒層94としては厚さが3.6nmのコバルト層を形成する。このように、第5の実施形態では、サポート層93として絶縁層を形成する。
その後、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図11Bに示すように、グラファイト層96がサポート層93の上方に形成され、グラファイト層96とサポート層93との間にカーボンナノチューブ部97が形成され、グラファイト層95が触媒層92の下方に形成される。なお、触媒層94はカーボンナノチューブ部97が形成される過程で微粒子化しグラファイト層96とカーボンナノチューブ部97の間の領域に取り込まれる。
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、図11Cに示すように、グラファイト層95を間に挟むソース電極98s及びドレイン電極98dを形成する。ソース電極98s及びドレイン電極98dの形成では、例えば、Ti膜、Pt膜及びAu膜をこの順で形成し、これらのパターニングを行う。このパターニングでは、例えば、フォトグラフィ技術を用いるか、電子ビーム露光を行う。
次いで、集束イオンビーム(FIB)を用いた加工を行うことにより、図11Dに示すように、グラファイト層96、カーボンナノチューブ部97、サポート層93及び触媒層94を細らせる。なお、この加工の方法は特に限定されない。ソース電極98s及びドレイン電極98dの表面にはAu膜が位置しているため、強酸を用いたエッチングも可能である。
その後、図11Eに示すように、グラファイト層96、カーボンナノチューブ部97、サポート層93及び触媒層94の周囲に、グラファイト層96を露出する層間絶縁膜99を形成する。そして、層間絶縁膜99上にグラファイト層96と接続されるゲート電極100を、ソース電極98s及びドレイン電極98dと同様にして形成する。ゲート電極100の幅は50nm程度とし、長さは1μm程度とする。このようにして、サポート層93をゲート絶縁膜とする電界効果トランジスタを作製することができる。
なお、第2〜第5の実施形態で用いられる絶縁基板は、基板全体が絶縁体である必要はなく、半導体基板の表面に絶縁層が設けられたもの等であってもよい。
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図12A乃至図12Hは、第6の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第1の実施形態では、横方向配線と縦方向配線とを互いに独立して形成する方向に関するものであるが、第6の実施形態では、これらを同時に形成する方法に関するものである。
第6の実施形態では、図12Aに示すように、第1の実施形態と同様に、基板の上方に、層間絶縁膜21に導電性のプラグ22が埋め込まれた構造を形成する。次いで、層間絶縁膜21及びプラグ22上に、横方向配線を形成する予定の領域及び縦方向配線を形成する予定の領域を露出するレジストパターン106を形成する。なお、横方向配線の形成予定領域及び縦方向配線の形成予定領域には、互いに重複する領域が存在するが、本実施形態の説明では、この重複領域を縦方向配線の形成予定領域として説明する。その後、基板の表面側の全面に触媒層24a及びサポート層24bを形成する。例えば、触媒層24aとしては厚さが4.3nmのコバルト層を形成し、サポート層24bとしては厚さが2.5nmのチタンナイトライド層を形成する。
その後、図12Bに示すように、レジストパターン106を除去する。この結果、レジストパターン106上の触媒層24a及びサポート層24bも除去される。つまり、リフトオフ法により、縦方向配線の形成予定領域及び横方向配線の形成予定領域にのみ触媒層24a及びサポート層24bが残存する。
続いて、図12Cに示すように、基板の表面側に、縦方向配線の形成予定領域を露出するレジストパターン107を形成する。次いで、基板の表面側の全面にサポート層24c及び触媒層24dを形成する。例えば、サポート層24cとしては厚さが2.5nmのチタンナイトライド層を形成し、触媒層24dとしては厚さが3.6nmのコバルト層を形成する。従って、縦方向配線の形成予定領域では、サポート層24b及び24cの総厚が5nmとなる。
その後、図12Dに示すように、レジストパターン107を除去する。この結果、レジストパターン107上のサポート層24c及び触媒層24dも除去される。つまり、リフトオフ法により、縦方向配線の形成予定領域にのみサポート層24c及び触媒層24dが残存する。
続いて、図12Eに示すように、基板の表面側に、横方向配線の形成予定領域を露出するレジストパターン108を形成する。このとき、触媒層24d上にもレジストパターン108を位置させる。次いで、基板の表面側の全面に触媒層24eを形成する。例えば、触媒層24eとしては厚さが4.3nmのコバルト層を形成する。
その後、図12Fに示すように、レジストパターン108を除去する。この結果、レジストパターン1087上の触媒層24eも除去される。つまり、リフトオフ法により、横方向配線の形成予定領域に触媒層24eが残存する。
その後、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、縦方向配線の形成予定領域では、図3に示す例に倣ってグラファイト及びカーボンナノチューブが成長し、図12Gに示すように、グラファイト層54がサポート層(サポート層24b及び24c)の上方に形成され、グラファイト層54とサポート層(サポート層24b及び24c)との間にカーボンナノチューブ部55が形成される。なお、触媒層24dはグラファイト層54に取り込まれる。また、横方向配線の形成予定領域では、図5に示す例に倣ってグラファイトが成長し、図12Gに示すように、グラファイト層52がサポート層24bの上方に形成される。また、横方向配線の形成予定領域及び縦方向配線の形成予定において、グラファイト層51が触媒層24aの下方に形成される。このようにして縦方向配線及び横方向配線が同時に形成される。第1の実施形態と同様に、このような縦方向配線をプラグ22に用いてもよい。
続いて、図12Hに示すように、基板の表面側の全面に層間絶縁膜25を形成する。その後、同様の処理を繰り返して多層配線を形成し、集積回路装置を完成させる。
このような第6の実施形態によれば、第1の実施形態よりも少ない工程で同様の構造を得ることができる。また、横方向配線と縦方向配線との間の導通の信頼性をより向上させることができる。
なお、縦方向配線の形成予定領域及び横方向配線の形成予定領域の間で、積層触媒層を個別に形成してもよい。積層触媒層を個別に形成することにより、レジストパターンの数を減らすことが可能となる。この場合、縦方向配線の形成予定領域及び横方向配線の形成予定領域の間で、触媒層24aの構造上の連続性が、触媒層24aを一括して形成する場合よりも劣る可能性もあるが、炭素原料の供給の際の加熱により、触媒層24aを構成する金属原子の熱的な拡散及び緩和等により所望の連続性を確保することは可能である。
また、第1、第6の実施形態において、配線又はビアの材料として銅(Cu)を用いる場合には、その周囲にバリアメタル膜を設けることが好ましい。例えば、図13に示すように、配線としてCu膜113が絶縁膜111に埋め込まれた構造を採用する場合には、Cu膜113の形成前に、その下方及び側方にバリアメタル膜112を形成しておき、Cu膜113の形成後に、その上方にバリアメタル膜114を形成することが好ましい。これは、Cuの拡散を防止し、接触抵抗を低減するためである。バリアメタル膜112及び114の材料としては、例えば、タンタル、タンタルナイトライド、チタン及びチタンナイトライドが挙げられ、これらの材料からなる膜の積層体を用いることが好ましい。この場合、積層体の厚さは0.5nm〜50nm程度とし、特に1nm〜30nm程度とすることが好ましい。また、触媒層としてバリアメタル膜として機能し得るものを用いる場合には、バリアメタル膜114の形成を省略してもよい。
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図14A乃至図14Cは、第7の実施形態に係る集積回路装置の製造方法を工程順に示す断面図である。第1及び第6の実施形態では、縦方向配線にカーボンナノチューブを用いているが、第7の実施形態では、縦方向配線にグラファイトを用いる。
第7の実施形態では、図14Aに示すように、基板の上方に絶縁膜121を形成し、この絶縁膜121上にグラファイト層122を横方向配線として形成する。絶縁膜121の形成では、塗布及び平坦化等を行う。グラファイト層122の形成は、例えば図1に示す例に倣って行う。次いで、グラファイト層122上に絶縁膜123を形成し、絶縁膜123に側面が傾斜した開口部123aを形成する。
その後、図14Bに示すように、基板の表面側の全面に積層触媒層124を形成する。積層触媒層124としては、触媒層及びその上のサポート層からなるものを形成する。続いて、第1の実施形態と同様に、原料ガスとして、アセチレンの濃度が10体積%のアセチレン/アルゴンの混合ガス(総圧:1kPa)を、更にアルゴンで5体積%程度に希釈したものを用いた熱CVD処理を行う。この結果、図1に示す例に倣ってグラファイトが成長し、図14Bに示すように、グラファイト層125が積層触媒層124の下方に形成される。
次いで、図14Cに示すように、絶縁膜121及び125を除去し、更に、積層触媒層124も除去する。その後、同様の処理を繰り返して多層配線を形成し、集積回路装置を完成させる。
このような方法によれば、金属が存在しない多層配線を容易に形成することができる。つまり、第1の実施形態等のようにカーボンナノチューブ部を用いる場合には、積層触媒層が残存するが、本実施形態によれば、積層触媒層を除去することができるため、炭素材料を用いた場合の効果(信頼性の向上等)をより確実に得ることができる。また、1つの積層触媒層を用いて横方向配線及び縦方向配線を同時に形成するため、処理の内容もより簡素なものとすることができる。従って、高コストな平坦化(CMP)処理の回数を低減して、コストを低減することも可能となる。なお、銅を用いた場合の電流密度耐性は1×106A/cm2であり、本実施形態により得られる構造の電流密度耐性は1×107A/cm2よりも高くなる。従って、電流密度耐性を10倍以上向上させることができるといえる。
なお、熱CVD法によりグラファイト層を形成する場合には触媒が必要とされるが、光電子制御プラズマCVD法を採用する場合には触媒は不要である。従って、光電子制御プラズマCVD法がより好ましい。光電子制御プラズマCVD法では、紫外線励起による光電子放出を用いて直流放電プラズマを制御し、基板表面の極近傍にのみ高密度ラジカルを生成し、グラファイトを堆積する。特に、縦方向配線の開口部123aに露出した下部配線からの光電子放出により、開口部を起点としたグラファイト成長が可能となる。これにより、下部配線と上部配線との良好な電気的接続が可能となる。
そして、このような方法によれば、図15に示すような構造の集積回路装置を得ることも可能である。この集積回路装置では、基板131上にSi系材料を用いて構成されたトランジスタ132が形成され、そのソース及びドレインにカーボンナノチューブ部133が接続されている。そして、その上方に、グラファイト層134、135及び136を含む多層配線が形成されている。
このような構造の集積回路装置では、配線の信頼性がより高く、また、容易に製造することが可能である。
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。図16A乃至16Cは、第16の実施形態に係るシート状放熱材の製造方法を工程順に示す断面図である。第8の実施形態では、グラファイト層及びナノチューブ部を含む放熱材を作製する。
第8の実施形態では、先ず、図16Aに示すように、第4の実施形態と同様にして、グラファイト層67、カーボンナノチューブ部68及びグラファイト層66を絶縁基板81上に形成する。なお、第4の実施形態と同様に、積層触媒層82として、例えば図3(a)に示す触媒層2、サポート層3及び触媒層4の積層体を形成する。つまり、例えば、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層2)、厚さが5nmのチタンナイトライド層(サポート層3)、厚さが3.6nmのコバルト層(触媒層4)をこの順で形成する。これらの層は、例えばスパッタリング法により堆積させることができる。
次いで、カーボンナノチューブ部68の隙間、カーボンナノチューブ部68と積層触媒層82との間の隙間及びグラファイト層67とカーボンナノチューブ68との間の隙間等に樹脂を含浸させる。この結果、図16Bに示すように、樹脂含有グラファイト層167、樹脂含有カーボンナノチューブ部168及び樹脂含有グラファイト層166が形成される。なお、樹脂としては、例えばシリコーン、アクリル、エポキシ等を用いることができるが、これらに限定されない。
その後、樹脂含有グラファイト層166から上の積層体を絶縁基板81から剥離する。この結果、図16Cに示すように、シート状の放熱材が得られる。樹脂の含浸によって、積層体が一体化されているため、絶縁基板81から容易に剥離することが可能である。なお、フッ化水素酸等による化学処理による剥離を行ってもよい。
このようにして得られたシート状の放熱材では、その両面にグラファイト層66及び67が含まれているため、平面方向への放熱性が確保される。また、カーボンナノチューブ部68が含まれているため、縦方向の放熱性も高い。
なお、より高い放熱性を確保するためには、研磨又は加熱等により、先端のグラファイト部がシート部から析出していることが好ましい。
また、3層構造の積層触媒層82を繰り返し積層しておくことにより、図16Bに示す3層構造の樹脂含有積層体を更に積層し長尺化させることも可能である。また、図16Aに示す3層構造の積層体を形成した後に、再度、積層触媒層82の形成及びCVD成長を繰り返すことによっても、同様の積層構造を得ることも可能である。また、図5に示す構造の積層触媒層を用いてカーボンナノチューブ部を含まないシート状の放熱材を形成してもよい。
また、図17(a)に示すように、絶縁基板151上にグラファイト層152、カーボンナノチューブ部153、積層触媒層154及びグラファイト層155がこの順で形成された構造を集積回路装置に適用することも可能である。更に、図17(b)に示すように、積層触媒層154とグラファイト層155との間にカーボンナノチューブ部156が設けられた構造を集積回路装置に適用することも可能である。
これらの実施形態に記載した集積回路装置及びシート状の放熱材は、例えば、無線・携帯電話基地局用ハイパワーアンプ、サーバ・パーソナルコンピュータ用半導体素子、車載IC、及び電気自動車モータ駆動用トランジスタ等に用いることができる。