JP5079195B2 - 燃料電池用ガス拡散電極およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料として水素、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどを用い、酸化剤として空気や酸素を用いる高分子電解質型燃料電池のガス拡散電極およびその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質型燃料電池のガス拡散電極は、一般に高分子電解質膜を挟持する触媒層と、触媒層と接する多孔質基材とから構成されており、多孔質基材は、主に次の三つの機能を持つ。
第一は、ガス拡散電極の外面に位置するガス流路から、触媒層内の触媒へ均一に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを供給するために、これらのガスを拡散する機能である。第二は、触媒層内で電極反応により生成した水を、速やかにガス流路に排出する機能である。第三は、電極反応に伴って授受される電子を伝導させる機能である。従って、多孔質基材は、高いガス透過性と、水蒸気透過性と、電子導電性とを有する必要がある。
【0003】
水蒸気透過性を高める観点からは、フッ素樹脂に代表される撥水性高分子を多孔質基材に分散させて、水の滞留(フラッディング)を抑制する検討がなされている。
例えば、特開平6−203851号公報、特開平7−130373号公報、特開平8−106915号公報または特開平9−259893号公報は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略す。)またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(以下、FEPと略す。)の分散液にカーボンペーパーやカーボンクロスを含浸・乾燥する方法を開示している。
また、特開平7−220734号公報、特開平4−67571号公報、特開平3−208260号公報、特開平3−208261号公報、特開平3−208262号公報または特開平6−44984号公報は、PTFEを添加した炭素微粉末からなる層を形成した多孔質基材を開示している。
【0004】
しかし、カーボンペーパーやカーボンクロスを無作意に撥水性高分子の分散液に含浸・乾燥する方法では、撥水性高分子が、三次元構造を持つ多孔質基材の繊維配列に従って分布してしまうため、撥水材の分布を制御することは困難である。また、多孔質基材の空隙の分布に反比例して、空隙の大きい部位には撥水材が集まらず、空隙の小さい部位には撥水材が集まり易い傾向がある。さらに、上記含浸方式では、多孔質基材の表面に撥水材が多く付き過ぎて、基材内部に水が閉じ込められ、フラッディングを引き起こす。その結果、燃料電池の放電特性や信頼性も低下してしまう。
【0005】
また、水蒸気透過性を高めるために撥水性高分子を多孔質基材に添加し、基材内における撥水性高分子の分布を制御しない場合、ガス透過性や電子導電性が低下するという問題がある。そこで、多孔質基材を単一の基材から構成するのではなく、カーボン繊維からなる層と、炭素粉末および撥水性高分子からなる層とを組み合わせて、相反する機能を両立させる取り組みなどがなされているが、充分な結果は得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ガス拡散電極の水蒸気透過性を向上させるとともに、ガス透過性を確保するには、ガス拡散電極内の撥水材の分布を適切に制御することが不可欠であると考えられる。本発明は、この課題を解決し、フラッディングを抑制し、水蒸気透過性とガス透過性とを確保し、放電性能および信頼性の高い燃料電池を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなる触媒層と、炭素材料からなり前記触媒層と接する多孔質基材と、前記多孔質基材に付与された撥水材とからなるガス拡散電極であって、前記多孔質基材内における前記撥水材の量が、前記触媒層と接する側から他方の側に向かって連続的に減少していることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極に関する。
【0008】
すなわち、燃料電池を組み立てた際に、高分子電解質膜側からセパレータ側に向かって多孔質基材の撥水性が減少する。
前記触媒層は、撥水材を含んでいる。前記触媒層が、厚さWmmであって1cm2あたりXgの撥水材を含み、前記多孔質基材が、厚さZmmであって1cm2あたりYgの撥水材を含むとき、(X/W)>(Y/Z)を満たす。
【0009】
本発明は、また、(1)撥水性高分子の分散液または撥水性高分子の溶液を、炭素材料からなる厚さZmmの多孔質基材の一方の面に、1cm2あたりYgの前記撥水性高分子を前記多孔質基材が含むように塗工する工程1、および(2)その面に、触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなり、かつ1cm2あたりXgの撥水材を含む厚さWmmの触媒層を、(X/W)>(Y/Z)を満たすように形成する工程2、を有する燃料電池用ガス拡散電極の製造法に関する。
工程1に先立って、前記多孔質基材を40〜180℃に加熱する工程を行うことが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池用ガス拡散電極は、触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなる触媒層と、炭素材料からなり触媒層と接する多孔質基材と、多孔質基材に付与された撥水材とから構成される。燃料電池においては、ガス拡散電極の触媒層側が高分子電解質膜と接触し、多孔質基材側がセパレータと接触する。多孔質基材は、燃料ガスと酸化剤ガスを拡散させる役割を有するガス拡散電極基材を構成する。
【0011】
図1に、上記ガス拡散電極を含む燃料電池の基本構造を示す。高分子電解質膜11は、触媒層12およびガス拡散電極基材13からなるガス拡散電極14で挟持されている。高分子電解質膜11とガス拡散電極14との接合体はMEA(膜−電極接合体)15と呼ばれる。MEA15は、燃料ガスまたは酸化剤ガスの流路16を有するセパレータ17で挟持されている。
【0012】
上記基本構造では、燃料ガスは、アノード側のセパレータが有する燃料ガス流路からガス拡散電極基材に供給され、電極基材を拡散しながら通過して、触媒層へ至る。また、酸化剤ガスは、カソード側のセパレータが有する酸化剤ガス流路から電極基材へ供給され、電極基材を拡散しながら通過して、触媒層へ至る。
【0013】
電極反応は、触媒層12に含まれる触媒の表面で起こる。アノード側の触媒層では、H2→2H++2e-の反応が起こる。カソード側の触媒層では、1/2O2+2H++2e-→H2Oの反応が起こる。反応全体としては、H2+1/2O2→H2O+Qとなる。この反応で起電力が得られ、発電が可能となるが、同時にカソード側の触媒層では、水が生成する。また、反応の際にアノード側の触媒層で生じたH+は、高分子電解質膜内を移動して、カソード側の触媒層へ至る。この際、1個のH+イオンが5〜20個のH2O分子を同伴して移動する。
【0014】
高分子電解質膜は、充分量の水で膨潤した状態において、初めて高い水素イオン導電性を発揮する。しかし、高分子電解質膜中を移動するH+イオンに同伴して多量の水がカソードへ移動するため、水を常に高分子電解質膜に供給する必要がある。この水は、ガス流路からガス拡散電極基材に水蒸気として供給され、カソードおよびアノードを通って高分子電解質膜に供給される。また、カソード側の触媒層内で生成した水のうち、高分子電解質膜が必要としない余剰水分は、ガス拡散電極基材を通って、ガス流路から外部へ排出される。
【0015】
上述のように、ガス拡散電極では水の出入りが多いことから、ガス拡散電極内の撥水性を制御することが重要となる。特に、信頼性確保の観点からは、余剰水分を速やかに外部へ排出できるように撥水性を設計する必要がある。
【0016】
多孔質基材内における撥水材の量は、触媒層と接する側から他方の側に向かって連続的に減少している。このように撥水材の分布に傾斜を持たせることにより、高分子電解質膜側からセパレータ側に向かうガスの拡散経路および水の移動経路が形成される。その結果、水詰まりがなく、放電性能に優れ、信頼性の高い燃料電池を提供することが可能になる。
【0017】
多孔質基材内における撥水材の量が、触媒層と接する側から他方の側に向かって減少する場合、水の排出方向に沿って撥水性が減少することになるため、水の移動方向がより確実に制御され、多孔質基材内の水詰まりを抑制する大きな効果が得られる。
【0018】
多孔質基材と接する触媒層には、多孔質基材に対する撥水材の添加割合よりも高い割合で、撥水材を付与する。すなわち、前記触媒層が、厚さWmmであって1cm2あたりXmgの撥水材を含み、前記多孔質基材が、厚さZmmであって1cm2あたりYmgの撥水材を含むとき、(X/W)>(Y/Z)を満たす。また、0.008≦X(mg)≦1.3であり、0.24≦Y(mg)≦10であることが好ましい。
【0019】
このように水を生成する触媒層に高い撥水性を付与することにより、余剰水分は、より撥水性の低いガス拡散電極基材または高分子電解質膜へ速やかに移動する。そして、電極基材内では、ガス流路に向かって撥水性が低下するように撥水材が分布しているため、ガス流路まで速やかに水が移動する。このように、余剰水分は撥水性の制御により速やかに外部へ排出され、ガス拡散電極内で水詰まりによるフラッディングが起こるのを抑制することができる。また、ガス透過性が低下することもなくなるため、放電特性および信頼性の高い燃料電池を得ることできる。
【0020】
本発明のガス拡散電極は、(1)撥水性高分子の分散液または撥水性高分子の溶液を、炭素材料からなる厚さZmmの多孔質基材の一方の面に、1cm2あたりYgの前記撥水性高分子を前記多孔質基材が含むように塗工する工程1、および(2)その面に、触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなり、かつ1cm2あたりXgの撥水材を含む厚さWmmの触媒層を、(X/W)>(Y/Z)を満たすように形成する工程2を行うことにより、製造することができる。
分散液または溶液(以下、撥水液という。)を、ほぼ水平に配された多孔質基材の一方の面のみに塗工することにより、容易に多孔質基材面に垂直な方向において撥水材の分布を連続的に変化させることができる。
【0021】
撥水性高分子には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることが好ましい。フッ素樹脂には、PTFE、FEP、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどを用いることができる。また、シリコーン樹脂には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、ポリフェニルヒドロシロキサンなどを用いることができる。
多孔質基材には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布などを用いることができる。
【0022】
工程1に先立って、多孔質基材を加熱する工程を行うことにより、撥水材の多孔質基材内への浸透状態を制御することが可能となる。多孔質基材の温度が高いほど、多孔質基材上に撥水液が接触した際の溶媒または分散媒の乾燥・蒸発速度が速くなるため、多孔質基材内に染み込む撥水性高分子量を少なくすることができる。また、撥水液の高分子濃度が高くなると、溶媒または分散媒の量が少なくなるため、多孔質基材上に撥水液が接触した際の溶媒または分散媒の乾燥・蒸発時間が短くなり、多孔質基材内に染み込む撥水性高分子量を少なくできる。撥水材の多孔質基材内への浸透状態を最も好適な状態に制御するには、多孔質基材を40〜180℃、好ましくは60〜80℃に加熱することが有効である。
【0023】
撥水液の塗工には、例えばスプレー法を採用することが好ましい。その際、塗工に用いる撥水液の撥水性高分子濃度、およびスプレーノズルからの液の吐出量、霧化圧力等により、撥水材の多孔質基材への浸透状態を制御することにより、多孔質基材内における撥水材の分布を制御することができる。また、撥水材の多孔質基材への浸透状態は、多孔質基材とスプレーノズルとの距離、塗工時の雰囲気温度と湿度、撥水液の温度などにも、依存する。
【0024】
スプレーノズルから噴霧する撥水液の吐出量を少なくし、霧化圧力を高くした場合、分散媒や溶媒がほとんど蒸発した状態で撥水性高分子が多孔質基材へ接触するため、多孔質基材のより内部まで浸透する撥水性高分子の量は少なくなる。逆に、スプレーノズルから噴霧する撥水液の吐出量を多く、霧化圧力を小さくした場合、湿潤状態の撥水性高分子が多孔質基材へ接触するため、多孔質基材のより内部まで浸透する撥水性高分子の量は多くなる。
【0025】
撥水液の塗工には、撥水液や多孔質基材の濃度等の制御が容易であり、操作が簡便なスプレー法が有効と思われるが、その他のどのような工法でも同様の制御は可能であり、本発明に適用することができる。例えば、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、コータ塗工法においては、撥水液の濃度を60〜80重量%に制御することにより、撥水材の多孔質基材内への浸透状態を最も好適な状態に制御することができる。
なお、一度の塗工で要望量の撥水材を多孔質基材に添加する必要はなく、複数回の塗工を行ってもよい。
【0026】
【実施例】
《参考例1》
ダイキン工業製FEP分散液(商品名:ND−1)を、ND−1と水との重量比が1:10となるように水で希釈した。多孔質基材としては、東レ株式会社製カーボンペーパー(商品名:TGP−H−120、厚さ0.36mm)を用いた。
このカーボンペーパーをホットプレート上に載置し、片面から60℃に加熱した。次いで、カーボンペーパーの他方の面に、スプレーノズルから希釈されたFEPの分散液を塗工した。この際、スプレーノズルからの分散液の吐出量は30cc/分とし、霧化圧力は1.5kg/cm2とした。また、スプレーノズルからカーボンペーパーまでの距離を200mmとし、雰囲気温度は20℃、湿度は30%に調節した。
【0027】
希釈されたFEPの分散液を塗工した直後に、FEP塗工面が下向きになるようにカーボンペーパーを裏返し、そのまま60℃雰囲気で2時間乾燥させた。その後、約380℃で15分間カーボンペーパーを焼成した。焼成後のカーボンペーパー内のFEP量はFEP塗工面近傍で最も多く、反対面に向かって徐々に減少していた。ここでカーボンペーパーに付与されたFEP量は、カーボンペーパーの1cm2あたり、1.3mgであった。
【0028】
次に、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成した。高分子電解質膜には、米国デュポン社製Nafion112膜を用いた。また、触媒は、ライオン株式会社製の炭素微粉末であるケッチェンブラックEC上に、白金を担持させて調製した。ここでは、ケッチェンブラックECの50重量部に対して白金50重量部を担持させた。得られた触媒100重量部に対して、米国デュポン社製の高分子電解質の分散液(Nafion溶液)500重量部を混合し、触媒組成物を調製した。この触媒組成物を用いて、Nafion112膜の両面に厚さ0.02mmの触媒層を形成した。そして、160℃で熱溶着して触媒層とNafion112膜とを接合し、MEAを作製した。なお、Nafionとは、パーフルオロカーボンスルホン酸の商品名である。
【0029】
このMEAに、上記の通りFEPを付与したカーボンペーパーを、そのFEP塗工面が触媒層と接するように接合し、水素―空気型燃料電池の単電池Aを作製した。
【0030】
《実施例1》
触媒100重量部に対してNafion溶液を500重量部加えた他、さらにPTFEを20重量部混合したこと以外、参考例1と同様にして、水素―空気型燃料電池の単電池Bを作製した。ここで触媒層に付与されたPTFE量は、触媒層の1cm2あたり、0.1mgであった。
【0031】
《比較例1》
実施例1と同様のMEAを作製した。このMEAに、参考例1と同様にしてFEPを付与したカーボンペーパーを、そのFEP塗工面と反対の面が触媒層と接するように接合し、水素―空気型燃料電池の単電池Cを作製した。
【0032】
《比較例2》
ダイキン工業製FEP分散液(商品名:ND−1)を、ND−1と水との重量比が1:10となるように水で希釈した。この希釈されたFEPの分散液に東レ株式会社製のカーボンペーパー(商品名TGP−H−120、厚さ0.36mm)を1分間浸漬した後引き上げ、カーボンペーパーを水平にして約60℃で2時間乾燥させ、その後約380℃で15分間カーボンペーパーを焼成した。焼成後のカーボンペーパー内の撥水材は、カーボンペーパー内で均一に分布していた。また、ここでカーボンペーパーに付与されたFEP量は、カーボンペーパーの1cm2あたり、1.3mgであった。
【0033】
一方、参考例1と同様のMEAを作製した。このMEAに、浸漬によりFEPを付与したカーボンペーパーを接合し、水素―空気型燃料電池の単電池Dを作製した。
【0034】
以上のとおり作製した参考例1、実施例1および比較例1、2の単電池A、BおよびC、Dの燃料極に純水素ガスを、空気極に空気をそれぞれ供給して、単電池の放電試験を行った。その際、電池温度を75℃、燃料ガス利用率を70%、空気利用率Uoを40%とした。ガス加湿は、70℃のバブラーにそれぞれ燃料ガスと空気を通すことにより行った。
【0035】
図2に、単電池の電池電圧と電流密度との関係を示した。電流密度800mA/cm2における単電池A、B、CおよびDの電池電圧は、それぞれ635mV、645mV、480mVおよび530mVであった。図2からわかるとおり、電流密度が高くなればなるほど、放電特性に差が生じた。この結果は、電流密度が高くなると、電池からの生成水はそれに比例して多くなるため、電極内の撥水材の分布の影響が大きくなるためと考えられた。すなわち、高分子電解質膜近傍の撥水材量が最も多く、余剰水分排出経路に沿って撥水材量が漸減している単電池Bでは、水の部分的滞留やフラッディングを引き起こすことなく、また、ガス拡散性を低下させることなく、良好な放電性能を発揮したものと考えられる。
【0036】
逆に、ガス拡散電極内部における撥水性が、水分の排出方向に沿って減少していない単電池C、Dでは、ガス拡散電極内でフラッディングが起こり、ガス透過性が阻害されたため、電池性能が劣っていると考えられた。単電池Cでは、触媒層とガス拡散電極基材との間、および電極基材内の触媒層側でフラッディングが起こり、単電池Dでは、電極基材内全体でフラッディングが起こったものと考えられる。
【0037】
次に、参考例1、実施例1の単電池A、Bおよび比較例1、2の単電池C、Dの燃料極に純水素ガスを、空気極に空気をそれぞれ供給して、単電池の耐久試験を行った。その際、電池温度を75℃、燃料ガス利用率を70%、空気利用率Uoを40%とした。また、電流密度を0.3A/cm2とし、ガス加湿は、70℃のバブラーにそれぞれ燃料ガスと空気を通すことにより行った。
【0038】
図3に、単電池の電池電圧と運転時間との関係を関係を示した。図3の結果からわかる通り、高分子電解質膜近傍の撥水材量が多く、余剰水分排出経路に沿って撥水材量が漸減している単電池A、Bでは、水の部分的滞留やフラッディングを引き起こすことがないため、高い耐久性が得られた。
【0039】
逆に、ガス拡散電極内部における撥水性が、水分の排出方向に沿って減少していない単電池C、Dでは、ガス拡散電極内でフラッディングが起こり、ガス透過性が阻害されたため、耐久性は低くなった。
【0040】
燃料電池は、通常、複数の単電池を直列または並列に接続して用いられる。したがって、単電池のフラッディングは、燃料電池スタックの性能に大きく影響する。特に、単電池が直列に接続された場合には、最も特性の低い単電池の限界電流値が、燃料電池スタック全体の限界電流値となってしまうため、最も低い単電池の性能が燃料電池スタック全体の性能に大きく影響する。従って、本発明の燃料電池用ガス拡散電極は、燃料電池スタック全体の放電性能を向上させるものと言える。
【0041】
なお、上記実施例においては、燃料として純水素を用い、酸化剤ガスとして空気を用いたが、純水素の代わりに炭酸ガス、窒素、一酸化炭素などの不純物を含む改質水素などを用いても、同様の結果が得られると考えられる。また、水素の代わりにメタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの液体燃料を用いても、同様の結果が得られると考えられる。液体燃料は、予め蒸発させて蒸気にしてから燃料極に供給してもよい。
【0042】
また、上記実施例では、撥水材としてFEPまたはPTFEを用いたが、他のフッ素樹脂やシリコーン樹脂を用いても、同様の結果が得られると考えられる。さらに、上記実施例では、多孔質基材としてカーボンペーパーを用いたが、カーボンクロス、カーボン不織布などを用いても、同様の結果が得られると考えられる。
【0043】
さらに、上記実施例では、上記構成の触媒層や高分子電解質膜を用いたが、これらに限定されるものではなく、種々の触媒層を用いた場合にも、同様の結果が得られると考えられる。また、本発明のガス拡散電極と固体高分子型電解質との接合体は、酸素、オゾン、水素などのガス発生機やガス精製機、ならびに酸素センサ、アルコールセンサなどの各種ガスセンサにも応用することができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、ガス拡散電極内における撥水材の分布を制御し、最適化することにより、余剰水分を速やかにガス拡散電極内から外部に排出するとともに、触媒層内の触媒に均一に燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給することが可能となる。従って、ガス拡散電極内におけるフラッディングを抑制し、ガス拡散性および水蒸気透過性を良好に保つことが可能となる。さらに、触媒層の撥水性よりもガス拡散電極の撥水性を小さくすることにより、ガス拡散電極内でのフラッディングを抑制する効果を、さらに向上させることができる。また、本発明のガス拡散電極を用いれば、放電性能および耐久性に優れた燃料電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の燃料電池用ガス拡散電極の断面概略図である。
【図2】 参考例1、実施例1および比較例1、2の単電池A、BおよびC、Dの電池電圧と電流密度との関係を示す図である。
【図3】 参考例1、実施例1および比較例1、2の単電池A、BおよびC、Dの電池電圧と運転時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
11 高分子電解質膜
12 触媒層
13 ガス拡散電極基材
14 ガス拡散電極
15 MEA
16 ガス流路
17 セパレータ
Claims (3)
- 触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなる触媒層と、炭素材料からなり前記触媒層と接する多孔質基材と、前記多孔質基材に付与された撥水材とからなるガス拡散電極であって、
前記多孔質基材内における前記撥水材の量が、前記触媒層と接する側から他方の側に向かって連続的に減少しており、
前記触媒層が、厚さWmmであって1cm2あたりXgの撥水材を含み、
前記多孔質基材が、厚さZmmであって1cm2あたりYgの撥水材を含むとき、
(X/W)>(Y/Z)を満たす、ことを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極。 - (1)撥水性高分子の分散液または撥水性高分子の溶液を、炭素材料からなる厚さZmmの多孔質基材の一方の面に、1cm2あたりYgの前記撥水性高分子を前記多孔質基材が含むように塗工する工程1、および(2)その面に、触媒を担持した炭素粉末および高分子電解質からなり、かつ1cm2あたりXgの撥水材を含む厚さWmmの触媒層を、(X/W)>(Y/Z)を満たすように形成する工程2、を有する燃料電池用ガス拡散電極の製造法。
- 工程1に先立って、前記多孔質基材を40〜180℃に加熱する工程を有する請求項2記載の燃料電池用ガス拡散電極の製造法。
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