以下、本発明に係る現像装置、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置の好適な実施形態について図面に則して更に詳しく説明する。
尚、以下の説明において、装置の各要素に関して上、下を示す用語は、装置が通常の使用状態に置かれた場合の鉛直方向を基準として表したものである。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について説明する。
1.電子写真画像形成装置
先ず、本発明の第1の実施形態に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の全体構成について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の概略断面を示す。画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。
画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体に接続された画像読み取り装置、或いは画像形成装置本体に通信可能に接続されたパーンナルコンピュータなどのホスト機器から、画像形成装置本体に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施形態では、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
尚、本実施形態では、第1〜第4の画像形成部の構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
本実施形態では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の表面を均―に帯電する帯電手段としての帯電ローラ2、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電潜像を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。又、感光体ドラム1の周囲には、静電潜像をトナー像として現像する現像手段としての現像ユニット(現像装置)4、転写後の感光体ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段としてのクリーニング部材6が配置されている。更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。
感光体ドラム1の回転方向において、帯電ローラ2による帯電位置、スキャナユニット3による露光位置、現像ユニット4による現像位置、中間転写ベルト5へのトナー像の転写位置、クリーニング部材6によるクリーニング位置は、この順番で設けられている。
尚、本実施形態では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーを用いる。又、本実施形態では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラ17(図2)を感光体ドラム1に対して接触させて現像を行う。又、本実施形態では、現像ユニット4は、反転現像方式を採用している。即ち、本実施形態では、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施形態では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に転移、付着させることで静電潜像を現像する。
本実施形態では、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6とは、一体的にカートリンジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置100の本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100の本体に着脱可能となっている。本実施形態では、各色用のプロセスカートリッジ7は全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブランク(K)の各色のトナーが収容されている。
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接して、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)することができる。中間転写ベルト5は、複数の支持部材として、駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53に掛け渡されている。
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての一次転写部材である一次転写ローラ8が4個並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが当接する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
又、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写部材である二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが当接する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。一次転写ローラ8と二次転写ローラ9とは同様の構成を有する。
画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電潜像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電潜像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。
その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送され、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、中間転写ベルト5上の4色トナー像は、一括して記録材12上に二次転写される。
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
又、一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって感光体ドラム1上から除去されて、回収される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
尚、画像形成装置100は、所望の単独又はいくつか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
2.プロセスカートリッジ
次に、本実施形態の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。
図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見たプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)を示す。本実施形態では、各色用のプロセスカートリッジ7は、収容している現像剤の種類(色)を除いて、その構成及び動作は実質的に同一である。
プロセスカートリッジ7は、感光体ドラム1などを備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17などを備えた現像ユニット4と、を有する。
感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、感光体ドラム1が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。
画像形成プロセスの中心となる感光体ドラム1としては、アルミニウム製シリンダの外周面に機能性膜である下引き層、キャリア発生層、キャリア移送層を順にコーティングした有機感光体ドラム1が用いられる。本実施形態では、感光体ドラム1の回転速度(周速度,表面移動速度)は200mm/secに設定されている。
又、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14の内部に形成された回収トナー室14a内に落下して、収容される。
帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部が感光体ドラム1に加圧接触して従動回転する。帯電ローラ2の芯金には、帯電工程時に、図示しない帯電バイアス印加手段としての帯電バイアス電源から、―1100Vの直流電圧が印加され、これにより感光体ドラム1の表面電位は、約―550Vの一様な暗部電位(Vd)とされる。スキャナユニット3から画像データに対応して発光されるレーザー光のスポットパターンは、感光体ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は明部電位Vl=−100V、未露光部位は暗部電位Vd=−550Vの静電潜像が、感光体ドラム1上に形成される。
一方、現像ユニット4は、感光体ドラム1へトナーを供給して現像を行う目的で設けられた現像室15と、現像に寄与するトナーを格納するトナー収容室18と、を有する。本実施形態では、現像室15を形成する現像枠体61と、トナー収容室18を形成する現像剤枠体62と、が一体的に接合された現像ユニット枠体60に、現像工程に係る各種要素が設けられて、現像ユニット4が構成されている。現像枠体61と現像剤枠体62との間には、詳しくは後述する現像室15内の現像剤貯留部であるトナー貯留槽19を形成する隔壁23が形成されている。即ち、現像室15は、隔壁23によってトナー収容室18と区画されている。
現像ユニット4内に形成された現像剤収容室としてのトナー収容室18には、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーが収容されている。又、トナー収容室18内には、攪拌部材22が設けられている。攪拌部材22は、トナー収容室18内に収納されたトナーを攪拌すると共に、トナー貯留槽19が設けられた現像室15へとトナーを搬送するためのものでもある。
現像室15は、現像剤担持体としての現像ローラ17、現像ローラ17にトナーを供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ20を有する。又、現像室15は、トナー供給ローラ20にトナーを搬送する現像剤搬送部材としてのトナー搬送部材16、トナー供給ローラ20の下方にあってトナー供給ローラ20に搬送するトナーを貯めるトナー貯留槽19を有する。
現像ローラ17は、図示矢印D方向(反時計方向)に回転駆動される。即ち、本実施形態では、現像ローラ17と感光体ドラム1とは、対向部(接触部)において互いの表面が同方向(本実施形態では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。又、本実施形態では、現像ローラ17は、感光体ドラム1に接触して配置されている。しかし、現像ローラ17が感光体ドラム1に対して所定間隔を開けて近接配置された構成とすることもできる。
現像ローラ17には、現像工程時に、図示しない現像バイアス印加手段としての現像バイアス電源から、―350Vの直流バイアスが印加される。これにより、摩擦帯電により負極性に帯電したトナーは、現像ローラ17が感光体ドラム1に接触する現像部において、現像ローラ17に印加された直流バイアスとの間の電位差によって明部電位部にのみ転移して静電潜像を顕像化する。
現像ローラ17は、芯金上に弾性層を有する弾性ローラである。更に説明すると、本実施形態では、現像ローラ17は次のような構成を有する。即ち、外径6mmのステンレス鋼製の芯金上に、シリコーンゴムにカーボンが分散されたソリッドゴムからなる第1層(基層)を約3mm形成する。更に、第2層(表層)として、導電剤により抵抗調整されたウレタン層を約10μm形成する。又、本実施形態では、現像ローラ17の回転速度は、感光体ドラム1の回転速度より約1.3倍早くするように設定されている。
現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ20は、現像ローラ17の周面上に接触するように配置されており、図示矢印E方向(反時計方向)に回転する。即ち、本実施形態では、トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、対向部(接触部)において互いの表面が逆方向に移動するようにそれぞれ回転する(カウンター回転)。トナー供給ローラ20は、現像ローラ17上にトナーを供給すると共に、現像に供されずに(即ち、現像工程時に消費されずに)現像ローラ17上に残留したトナーを現像ローラ17上から剥ぎ取る作用をなす。
トナー供給ローラ20は、導電性芯金の外周に連泡性発泡体(以下「発泡層」という。)が形成されている。トナー供給ローラ20の発泡層は、現像ローラ17へトナーを供給すると共に、現像に寄与しなかったトナーを現像ローラ17から剥ぎ取るという、2つの役目を担う。現像ローラ17上のトナーは、発泡セルの縁の部分が摺擦することで機械的に剥ぎ取られる。
更に説明すると、本実施形態では、トナー供給ローラ20としては、外径5mmの芯金上に発泡骨格構造で比較的低硬度のポリウレタンフォームを5.5mm(セル径300μm〜450μm)形成した、外径16mmの弾性スポンジローラを用いた。トナー供給ローラ20は、連泡性の発泡体で構成することにより、過大な圧力を加えることなく現像ローラ17と当接し、発泡体の表面の適度な凸凹で現像ローラ17に対するトナー供給及びトナーの剥ぎ取りを行うことができる。発泡体のセル構造の掻き取り性は、ウレタンフォームに限らず得ることができる。発泡層の材料としては、例えば、ウレタンフォームの他、NBRゴム(NBR:ニトリルゴム)、シリコーンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びこれらの複合混合物など、一般的に用いられるゴムが使用可能である。発泡層の電気抵抗の調整のために、適宜、公知のイオン導電剤、無機微粒子又はカーボンブラックなどを分散することが可能である。
供給ローラ20には、現像ローラ17へのトナー供給を補助するために、トナー供給ローラ20側から現像ローラ17側へトナーを付勢するバイアスを印加してもよい。現像ローラ17側に負極性に帯電したトナーを付勢するバイアスを印加することで、後述する現像ブレード21により層厚が規制される前に、現像ローラ17に担持されるトナーの量を増加させることが可能となる。又、このバイアスにより、現像ローラ17上でのトナー密度が上がり易く、現像ローラ17の表面粗さが低い場合においても、均一なトナー濃度を得易くなる。
本実施形態では、トナー供給ローラ20の回転速度は、現像ローラ17の回転速度の0.85倍とした。
感光体ドラム1、現像ローラ17及びトナー供給ローラ20は、それぞれの回転軸線方向が実質的に平行となるように配置されている。
又、現像ユニット4には、現像ローラ17の周面上に接触するように、現像剤規制部材としての現像ブレード21が配置されている。現像ブレード21は、トナー供給ローラ20によって現像ローラ17上に供給されたトナーの層厚を規制する。現像ブレード21は、現像ローラ17の回転方向においてトナー供給ローラ20と現像ローラ17との接触部よりも下流側で現像ローラ17に当接し、現像ローラ17によって現像部へと供給するトナーの量を規制すると共に、トナーに電荷付与する。
現像ブレード21は、金属薄板からなり、薄板のバネ弾性を利用して当接圧力を発生し、金属薄板の表面がトナー及び現像ローラ17に接触する。金属薄板の材料としては、ステンレス鋼、リン青銅などの薄板が使用可能である。本実施形態では、現像ブレード21を構成する金属薄板としては、厚さ0.1mmのリン青銅薄板を用いた。現像ブレード21及び現像ローラ17との摺擦により、トナーは、摩擦帯電電荷を付与されると同時に、その層厚が規制される。現像ブレード21には、現像工程時に、図示しない規制バイアス印加手段としてのブレードバイアス電源から所定の電圧(本実施形態では−550V)が供給される。
3.現像室におけるトナーの搬送
次に、現像室15におけるトナーの搬送について説明する。
本実施形態の目的の1つは、トナーに過大なストレスをかけることなく、トナー供給ローラ20の下方からトナー供給ローラ20の表面にトナーを供給することで、トナーの劣化を防止し、ベタ濃度変化の少ない高品質な画像形成を行うことを可能とすることである。
トナー貯留槽19は、現像室15とトナー収容室18とを隔てる隔壁23によって形成されている。本実施形態では、トナー貯留室19は、トナー供給ローラ20の下方においてトナー収容室18側に窪んでいる、感光体ドラム1の長手方向に沿って見た断面が矩形の空間である。又、隔壁23の一部には、トナー収容室18から現像室15へのトナーの通過を許す開口部であるトナー通路24が設けられている。トナー通路24は、トナー供給ローラ20の回転中心を通る鉛直線よりも、トナー供給ローラ20の表面の移動方向において上流側において、好ましくは、トナー供給ローラ20の鉛直方向最下点よりも上方に設けられている。
先ず、現像室内に設けられたトナー貯留槽19及びトナー搬送部材16について説明する。
図3は、トナー貯留槽19と、そこに設けられたトナー搬送部材16とを模式的に示す。
現像室15内に設けられたトナー貯留槽19内には、トナー搬送部材16が配設されている。トナー搬送部材16は板状部材からなり、対向部としての平面部16aと、空孔、即ち、貫通した穴部16bと、を有する。又、トナー搬送部材16は、現像剤搬送部材駆動手段としてのモータ40に接続された駆動軸41に連結されている。駆動軸41は、モータ40の回転運動を上下の直線運動に変換している。そのため、モータ40が回転することにより、トナー搬送部材は上下に移動可能である。本実施形態では、トナー搬送部材16の上下移動は、1秒間に1往復の早さで行われる。
更に説明すると、本実施形態では、トナー搬送部材16は、樹脂材料で形成された板状部材であり、トナー貯留槽19の長手方向(感光体ドラム1などの長手方向と略平行)にわたって配置される。トナー搬送部材16は、樹脂材料に限定されず、例えば、金属材料で形成することもできる。トナー搬送部材16の長手方向(感光体ドラム1などの長手方向と略平行)に沿って見た断面の寸法は、厚さ1mm×短手方向(長手方向と略直交する方向)長さ5mmである。又、穴部16bの寸法は、短手方向長さ2mm×長手方向長さ20mmであり、上記板状部材からなるトナー搬送部材16を貫通して設けられている。更に、トナー搬送部材16の長手方向における穴部16bと穴部16bとの境目の寸法は約4mmである。
トナー搬送部材16の穴部16bを含む平面において、平面部16aの面積が穴部16bの面積よりも大きいことが望ましい。穴部16bの面積が平面部16aより大きくなると、後述するように穴部16bにトナーを通過させる勢いが小さくなるため、トナーを流動させ難くなるためである。
本実施形態では、穴部16bを角穴としているが、穴部16bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、平面部16aに比較的小径の円形の穴部16bを多数形成しても、同様の効果が得られる。但し、穴部16bを小径の穴にした場合、トナーが通過し易い大きさでなければならない。トナーを通過し易くするためには、直径が0.5mm以上あれば充分である。
次に、トナー供給ローラ20へのトナー供給方法について説明する。
図5〜図7は、現像室15におけるトナー供給ローラ20へのトナーの供給過程を説明するために、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たトナー貯留槽19の近傍の部分断面を示す。
トナー収容室18内のトナーは、攪拌部材22によって現像室15内に設けられたトナー貯留槽19に運ばれる。
図5は、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20に最接近した状態を示す。T1はトナー搬送部材16の下方のトナー貯留槽19にあるトナーを、T2はトナー搬送部材16の平面部16a上に載っているトナーを、T3は穴部16bにあるトナーを示す。
図5において、トナー搬送部材16上のトナーT2は、円筒状のトナー供給ローラ20の表面形状に沿って、トナー供給ローラ20の表面との間に少し空間が空いた状態で堆積されている。これは、次のような理由によって、トナー搬送部材16上のトナーT2の上面とトナー供給ローラ20の表面との距離が生じることによる。即ち、トナー供給ローラ20の回転の影響の及ぶ範囲のトナーは既にトナー供給ローラ20によって搬送されたこと、そしてトナー搬送部材16の動作が停止するとトナー搬送部材16上のトナーT2が沈降することである。
次に、トナー搬送部材16は、トナー供給ローラ20に最接近した状態から離れていく、即ち、下方向に移動する。図6に、トナー搬送部材16が下方に移動する状態を示す。このとき、トナー搬送部材16の下方にあるトナーT1は、トナー搬送部材16により圧縮を受け、トナー搬送部材16の穴部16bに圧力をかける。又、トナー貯留槽19に堆積していたトナーT1は、圧力をかけられたことで流動化するため、空気を含むことになり、その嵩密度は低下(体積は増加)する。
トナー搬送部材16を下方に移動させることは、トナー搬送部材16がトナー搬送部材16の下方にあるトナーT1を押すことで穴部16bに移動させる。それと同時に、トナー搬送部材16を下方に移動させることは、トナー搬送部材16の下方にあるトナーT1の嵩密度を低下させるため、穴部16bに存在していたトナーT3を上方向へ押し上げる。
図7に、トナー供給ローラ20の近傍に押し上げられたトナーの状態を示す。トナー供給ローラ20の近傍に押し上げられたトナーT3は、押し上げられる過程又はトナー供給ローラ20の回転の影響(気流、トナーの流れなど)により堆積した状態から崩され、拡散される。この拡散されたトナーT3は、トナー供給ローラ20とトナーT3との間にあるトナーをトナー供給ローラ20側へ付勢することで、該トナーをトナー供給ローラ20へ付着させたり、拡散されたトナーT3自体がトナー供給ローラ20の表面へ付着したりする。
このトナー供給ローラ20に付着したトナーとは、トナー供給ローラ20の表面に直接付着しているトナーのみだけでなく、トナー供給ローラ20に直接付着しているトナーに凝集力などによって付着しているトナーも含む。即ち、トナー供給ローラ20の回転に伴って運ばれる状態になったトナーをいう。
トナー供給ローラ20の表面に付着したトナーは、図示矢印E方向に回転するトナー供給ローラ20の回転に伴って搬送される。
次に、トナー搬送部材16が上方向に移動するときには、トナー搬送部材16上に載っているトナーT2によって、拡散したトナーT3はトナー供給ローラ20側に付勢される。それと同時に、トナーT3の幾らかは、トナー搬送部材16の穴部16bを通してトナー貯留槽19側に移動し、このトナー貯留槽19側に移動したトナーは、次回の工程に使用される。
トナー搬送部材16上のトナーT2は、拡散したトナーT3を付勢すると同時に、それ自体も崩落したり、再度固められたりして、最初のトナーT2の形状(図5中のT2)を形成する。
4.トナー搬送部材の移動範囲
次に、トナー搬送部材16の移動範囲について説明する。
先ず、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20に近接した状態について説明する。トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20と接触してしまうと、トナー供給ローラ20の表面に付着していたトナーをトナー搬送部材16で掻き落としてしまう。そのため、最近接時においても、トナー搬送部材16はトナー供給ローラ20と非接触でなければならない。
最近接時のトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との距離について、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たトナー貯留槽19の近傍の断面を模式的に示す図8〜図10を用いて説明する。
図8において、T4はトナー搬送部材16の上下動により影響を受けるトナーの領域を示したものであり、T5は領域T4のトナーが沈降した状態から流動化したときに膨らむ領域を示したものである。
前述のように、トナー搬送部材16が下方へ動くことによりトナーT4は流動化していき、その体積が膨張していく(嵩密度は低下)。それと同時に、周囲のトナーからの圧力が増して、領域T4のトナーを上方向へ押し上げることになる。このとき、領域T4のトナーが流動化して、領域T4の体積が膨張した大きさが領域T5となる。即ち、領域T4のトナーが流動化して空気を含むことで、領域T4の体積が増したときの大きさが領域T5である。従って、最近接時のトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との距離は、この領域T5の最上部がトナー供給ローラ20に到達するような距離でなければならない。
ここで、領域T5のトナーの体積の膨張程度を示す現像剤膨張率は、トナーが充分沈降して静止状態の嵩密度を静的嵩密度とし、トナーが動いている状態での嵩密度を動的嵩密度とすると、下記式、
現像剤膨張率=静的嵩密度/動的嵩密度
で表される。
そして、トナー供給ローラ20の表面にトナーを供給するために必要なトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lは、
0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
となる。
ここで、Lが0より大きいのは、前述したように、トナー搬送部材16はトナー供給ローラ20に接触してはならないためである。そして、最近接距離Lが、下記式、
(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
で表される値(以下、この値を「最近接距離上限値」ともいう。)より大きくなると、トナー搬送部材16が下方に移動して穴部16bからトナーが湧き出しても、その影響がトナー供給ローラ20の表面の近傍まで到達できない。そのため、トナーをトナー供給ローラ20に付着させることが困難となる。
次に、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態について説明する。トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態では、トナー搬送部材16とトナー貯留槽19の底部との距離は自由に定めることができる。
トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態におけるトナー搬送部材16とトナー貯留槽19の底部との距離が非常に小さい場合には、トナー貯留槽19内のトナーのほとんどが穴部16bを通過して上方に移動する。トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態においても、トナー搬送部材16とトナー貯留槽19との距離が大きく存在する場合は、トナー貯留槽19の底部のトナーは使用されないトナーとなる。そのため、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態におけるトナー搬送部材16とトナー貯留槽19の底部との距離は、より小さい方が好ましい。しかし、トナー貯留槽19の底部の使用されないトナーがあっても、トナー搬送部材16が下方向に移動した場合には、その底部の使用されないトナーが固化状態となって底面の役割をして、圧力を穴部16bにかけるように働くので問題はない。
トナー貯留槽19の底部の形状については、本実施形態では角部を有する構成になっているが、これに限定されるものではない。例えば、トナー貯留槽19の底部を角部がない円筒内面形状にすることで、多くのトナーは流動化し易くなる。
ここで、図9を参照して、空孔の移動距離について更に説明する。図6において、T6は、前述の領域T4(図8)領域をトナー供給ローラ20の方向(重力方向とは反対方向)に拡大したものである。そして、その拡大していく過程で最初にトナー供給ローラ20と交差する点を第1基準点42とする。即ち、トナーの嵩が増加していく過程で最初にトナー供給ローラ20の表面に当たる部分が第1基準点42であることを意味する。
第1基準点42から重力方向に降ろした線(一点鎖線)とトナー搬送部材16の穴部16bの上端面が形成する面(トナー供給ローラ20側の開口が形成する面)との交点から、第1基準点42までの距離をNとする。Nが最小になる該交点を第2基準点43とする。又、トナー搬送部材16が移動してNが最大になる該交点を第3基準点44とする。このとき、第2基準点43と第3基準点44との直線距離が、前述の空孔の移動距離となる。
従って、図10に示すように、トナー供給ローラ20とトナー搬送部材16の配置が変わった場合には、第1基準点42、第2基準点43は移動する。
5.嵩密度の測定
本明細書で用いる嵩密度とは、一定容積の容器にトナーを充填し、その内容積を体積としたときの密度のことである。従って、(1)トナー自身の体積、(2)トナー表面の凹凸部の空間の体積、(3)トナー相互間の間隙の体積、(4)トナーと容器の間隙の体積、が含まれる。
本明細書では、動いている状態のトナーの嵩密度(空気を多量に含んで膨張した状態の密度)を動的嵩密度として測定し、放置してトナーが沈降した状態のトナーの嵩密度(放置してトナーが沈降し、圧縮された状態)を静的嵩密度として測定した。
図11を参照して、嵩密度の測定について説明する。嵩密度の測定には、直径約60mm、高さ120mmの測定用の円筒容器101を用いた。この容器101の中に、トナーTを約50g充填し、上下方向に振幅75mm(移動距離150mm)、1秒間に2往復の早さで1分間振動させる。振動終了直後、容器101内のトナーの底面からトナーの上面までの高さh1を測定する。このとき、下記式、
容器内底面積×高さh1
で表される値が動的嵩密度となる。
そして、そのままの状態で1日(24時間)放置した後に、再度、容器101内のトナーの底面からトナーの上面までの高さh2を測定する。このとき、下記式、
容器内底面積×高さh2
で表される値が静的嵩密度となる。
トナーの高さh1、h2は、下記式、
h1>h2
の関係になる。これは、振動終了直後は、容器101内でトナーが流動するため、トナー相互間に空気が含まれることにより体積が膨張するからである。しかし、放置してトナーとトナーとの間から空気が抜け、容器101内のトナーの上面の高さが沈降することで体積は減少する。
図12に、容器101内のトナーの上面が沈降する状態を示す。図12に示すように、振動流量直後から、容器101内のトナーの上面は時間とともに低下していく。
前述のように、本明細書では、現像剤膨張率は、下記式、
現像剤膨張率=静的嵩密度/動的嵩密度
で表される。そのため、計算上、h2/h1が現像剤膨張率となる。
6.トナー
次に、本実施形態において用いられるトナーについて説明する。
本実施形態では、トナーは、低軟化物質を4〜30(重量%)含み、その形状係数SF−1が100〜150、形状係数SF−2が100〜140、粒径が5〜8μmのほぼ球形である一成分非磁性現像剤である。
ここで、上記形状係数SF−1、SF−2について説明する。形状係数SF−1、SF−2は、次のようにして求めることができる。即ち、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い、倍率500倍に拡大したトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、インターフェースを介してニレコ社製画像解析装置(Luzex3)に導入して解析を行う。そして、形状係数SF−1、SF−2は、下記式より算出して得られた値によって定義されるパラメータである。
SF−1={(MXLNG)2/AREA}×(π/4)×100
SF−2={(PERI)2/AREA}×(1/4π)×100
[AREA:トナー投影面積、MXLNG:絶対最大長、PERI:周長]
形状係数SF−1は、トナー粒子の丸さの度合を示し、150を越えると、球形から徐々に不定形となる。形状係数SF−1は球状物質を二次元平面上に投影してできる楕円状図形の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで割って、100π/4を乗じた値で表される。
形状係数SF−2は、トナー粒子の凹凸度合を示し、140を越えると、トナー表面の凹凸が顕著となる。物質を二次元平面上に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで割って、100π/4を乗じた値で表される。
本実施形態に用いているトナーは重合法によって製造されるが、その製造法上、略球形となり、その比重は約1.05である。製造方法としては、重合法にこだわるものではない。
形状係数SF−1が100〜150、形状係数SF−2が100〜140であれば、好適にトナーを流動化させることが可能となる。
形状係数SF−1が150を越える場合、若しくは形状係数SF−2が140を越える場合には、転がり抵抗が高くなるため、トナー搬送部材16が下がるときに流動化し難くなる。又、流動化し難いため、空気も含み難く、トナーの嵩が膨張し難いトナーとなる。
トナーの重量平均粒径は、種々の方法によって測定できるが、ここでは、コールターカウンターのマルチサイザーを用いて行った。即ち、測定装置としてはコールターカウンターのマルチサイザーII型(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピュータ(キヤノン製)を接続する。そして、電解液は特級又は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に、この中に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーとして、トナー粒径を測定するときは、100μmアパーチャーを用いて測定する。トナーの体積及び個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出した。それから、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径を求める。本実施形態では、重量平均粒径として7μmのトナーで、重量平均粒径が4μm以下のトナーの割合は5%未満のものを使用した。
又、トナー粒子として、トナー粒子の表面が外添剤で被覆され、所望の帯電量が付与され易くされたものを用いることが好ましい。
その意味で、トナーの表面の外添剤被覆率が5%〜99%であることが好ましく、より好ましくは10%〜99%である。
トナーの表面の外添剤被覆率は、日立製作所製FE−SEM(S−800)を用い、トナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、インターフェースを介してニレコ社製画像解析装置(Luzex3)に導入して計測する。得られる画像情報は、トナー粒子の表面部分と外添剤部分との明度が異なるため、2値化して、外添剤部分の面積SGと、トナー粒子部分の面積(外添剤部分の面積も含む)STとに分ける。そして、下記式により、外添剤被覆率を算出する。
外添剤被覆率(%)=(SG/ST)×100
外添剤は、トナーに添加したときの耐久性の点から、トナー粒子の重量平均径の1/10以下の粒径であることが好ましい。この添加剤の粒径とは、電子顕微鏡におけるトナー粒子の表面観察により求めたその平均粒径を意味する。
外添剤としては、例えば、次のようなものが用いられる。即ち、金属酸化物(酸化アルミニウム,酸化チタン,チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化マグネシウム,酸化クロム,酸化錫,酸化亜鉛など)・窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)・金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウムなど)・脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)・カーボンブラック・シリカなどである。
本実施形態では、トナー粒子中に(即ち、トナー粒子100重量部に対して)、負極性外添剤としてシリカを1重量部、正極性外添剤として酸化チタン0.1重量部を加えた。特に、正極性外添剤を加えた場合には、トナーの流動性の調節、安定したトナーへの帯電性付与が可能である。
尚、外添剤は、トナー粒子100重量部に対し、0.01重量部〜10重量部が用いられ、好ましくは0.05重量部〜5重量部が用いられる。外添剤は、単独(単一種類)で用いても、又、複数(複数種類)併用しても良い。又、外添剤は、疎水化処理を行ったものが、より好ましい。
外添剤の添加量が、トナー粒子100重量部に対して0.01重量部未満の場合には、一成分系現像剤の流動性が悪化し、転写及び現像の効率が低下し、画像の濃度ムラや、画像部周辺にトナーが飛び散る(所謂、飛び散り)が発生することがある。一方、外添剤の量が、トナー粒子100重量部に対して10重量部を越える場合には、過多な外添剤が感光体ドラム1や現像ローラ17に付着して、トナーの帯電性低下などを発生させたり、画像を乱したりする。
7.まとめ
以上説明したように、トナー供給ローラ20と、その下方に配される隔壁23との間に、空孔、即ち、貫通した穴部16bを有するトナー搬送部材16を設ける。そして、トナー搬送部材16の穴部16bとトナー供給ローラ20の表面との最近接距離Lを、下記式、
0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
[但し、現像剤膨張率=静的嵩密度/動的嵩密度]
の関係が成り立つように設定する。又、トナー搬送部材16を隔壁23に近づけることでトナー搬送部材16の穴部16bからトナーを噴出させ、トナー供給ローラ20の近傍のトナーをトナー供給ローラ20に付勢する。これにより、トナー供給ローラ20にトナーを充分付着させることが可能となる。その結果、トナーに過大なストレスをかけることなく、ベタ濃度の追従性を確保することが可能となる。
8.実施例
以下、本実施形態に係る実施例、並びに、比較例の構成を示す。
・実施例1
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離(即ち、空孔の移動距離)を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを5mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は7mmである。
・実施例2
実施例1から現像剤膨張率を下げたトナーを用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを3mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は4.0mmである。
・実施例3
実施例2から更に現像剤膨張率を下げたトナーを用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.361(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを1mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.4、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.8mmである。
・実施例4
実施例1からトナー搬送部材16の移動距離及び最近接距離Lを変更した。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を5mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを4mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は5mmである。
・実施例5
実施例4から現像剤膨張率を下げたトナー(実施例2と同様のトナー)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を5mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを2mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.9mmである。
・比較例1
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)のトナーを用いた。トナー搬送部材16は、実施例1と同様に配置するが、停止したままとした。
・比較例2
実施例1から、トナー搬送部材16の最近接距離Lを離したもの(トナー供給ローラ20からトナー搬送部材16を遠ざけた)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを10mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は7mmである。
・比較例3
実施例2から、トナー搬送部材16の最近接距離Lを離したもの(トナー供給ローラ20からトナー搬送部材16を遠ざけた)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを6mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は4.0mmである。
・比較例4
実施例3から、トナー搬送部材16の最近接距離Lを離したもの(トナー供給ローラ20からトナー搬送部材16を遠ざけた)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.361(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を7mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを5mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.4、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.8mmである。
・比較例5
実施例4から、トナー搬送部材16の最近接距離Lを離したもの(トナー供給ローラ20からトナー搬送部材16を遠ざけた)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を5mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを7mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は5mmである。
・比較例6
実施例5から、トナー搬送部材16の最近接距離Lを離したもの(トナー供給ローラ20からトナー搬送部材16を遠ざけた)を用いた。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を5mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを5mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.9mmである。
実施例1〜5、比較例1〜6に関する各種設定値を下記表1にまとめる。
各実施例、比較例の評価結果は後述する(表4)。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実質的に第1の実施形態と同じである。従って、以下、第1の実施形態のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略し、主に、本実施形態にて特徴的な点について説明する。
本実施形態の目的の1つは、現像ローラ17などの周囲のトナーを良好に混合させて、トナー凝集や帯電量の偏在によるかぶりなどの画像不具合を抑制することである。
更に、本実施形態の他の目的の1つは、トナーのパッキングを防止し、トナー供給を安定化することで画像ムラの不具合を防止することである。
即ち、第1の実施形態では、現像室15内において、空孔、即ち、貫通した穴部16bを有するトナー搬送部材16を上下に移動させることで、トナー供給ローラ20にトナーを搬送した。
これに対して、本実施形態では、トナー搬送部材16の移動支持方法を変えることで、空孔、即ち、貫通した穴部16bの移動軌跡を変え、トナー貯留槽19内のトナーの混合性を向上させる。以下、更に詳しく説明する。
1.現像室の構成
図13は、感光体ドラム1の長手方向に沿って見た本実施形態におけるプロセスカートリッジ7の概略断面を示す。現像室15には、トナー貯留槽19と、トナー搬送部材16とが配設されている。
本実施形態では、トナー貯留槽19は、トナー供給ローラ20の下方において、トナー供給ローラ20の回転中心を通る鉛直線よりもトナー供給ローラ20によるトナーの搬送方向下流側により多くのトナーを貯留できるように形成されている。即ち、感光体ドラム1の長手方向に沿って見た断面において、トナー供給ローラ20の下方におけるトナー供給ローラ20の回転中心から隔壁23までの距離は、トナー供給ローラ20の表面移動方向下流側に向けて大きくなる。又、隔壁23の一部には、トナー収容室18から現像室15へのトナーの通過を許す開口部であるトナー通路24が設けられている。トナー通路24は、トナー供給ローラ20の回転中心を通る鉛直線よりも、トナー供給ローラ20の表面の移動方向において上流側において、好ましくは、トナー供給ローラ20の鉛直方向最下点よりも上方に設けられている。
ここで、現像室15内でのトナーの混合に関して、現像ローラ17やトナー供給ローラ20の近傍に攪拌部材を配置することができる。これにより、トナー収容室18から運ばれた新しいトナーと、トナー貯留槽19内のトナーとを好適に混合することが可能となる。その結果、トナー供給ローラ20に供給されるトナーの部分的な凝集や、トナーへの電荷付与時における帯電量の偏在が起こらないため、かぶり(トナーの付着すべきでない非画像部にトナーが付着すること)の少ない画像を出力することが可能となる。又、トナー貯留槽19内のトナーの循環が一方向に流れ易くなるため、トナーのパッキング、即ち、必要以上に密にトナーが詰まることを抑制し、現像ローラ17へのトナー供給、現像ローラ17上のトナー規制の安定化を図ることができる。現像ローラ17へのトナー供給が不安定化すると、画像ムラなどの画像不具合が発生することがある。
本実施形態では、現像室15内に、回転可能に支持された支持軸26と、この支持軸26に回動可能に結合され支持軸26の回転に運動して揺動するトナー搬送部材16と、を有するトナー搬送手段が配置される。支持軸26は、トナー供給ローラ20の下方において、トナー供給ローラ20の回転中心を通る鉛直線よりもトナー供給ローラ20によるトナーの搬送方向下流側の、より多くのトナーを貯留できる空間内に配置されている。又、支持軸26の回転軸線方向は、感光体ドラム1、現像ローラ17及びトナー供給ローラ20の回転軸線方向と実質的に平行である。
トナー搬送部材16は、支持軸26の回転に連動して揺動する際に、トナー供給ローラ20と隔壁23との間において往復運動(往復移動)する。本実施形態では、トナー搬送部材16は、一端が支持軸26を回転中心とする円軌道26a上を移動し、他端は隔壁23上を移動する。即ち、トナー搬送部材16の一端は円運動を行い、他端は直線往復運動を行う。本実施形態では、支持軸26は、1秒当たり2.5回転の速さで回転している。
更に説明すると、図14は、本実施形態におけるトナー搬送部材16を正面から見た様子を示す。トナー搬送部材16は、平面部16aと、穴部16bとを有する。
本実施形態では、トナー搬送部材16は樹脂材料で形成されている。しかし、トナー搬送部材16は、樹脂材料に限定されず、例えば、金属材料で形成されていても良い。
トナー搬送部材16は、支持軸26としてのクランク軸に回転可能に接続されている。支持軸26は、現像ローラ17及びトナー供給ローラ20の長手方向と略平行に、トナー貯留槽19の長手方向の全域にわたって配置されている。支持軸26は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部において、現像室15を形成する現像枠体61に回転可能に支持されている。
即ち、トナー搬送部材16の短手方向の一方の端部である係合端16cは、支持軸26の回転中心に対する偏心位置において、支持軸26に回転(回動)可能に係合(結合)されている。支持軸26は、図示しない駆動手段(駆動源)によって回転駆動される。そして、支持軸26の回転運動に伴って、トナー搬送部材16の係合端16cは支持軸26と摺動しつつ回転運動を行う。又、支持軸26が回転駆動されることで、トナー搬送部材16の支持軸26と係合していない方の一方の端部である自由端16dが、隔壁23の壁面に沿って移動(往復運動)する。
トナー搬送部材16の厚さは1mmである。平面部16aの短手方向(長手方向と略直交する方向)長さは14mmである。
穴部16bは短手方向長さ3.8mm×長手方向長さ35mmで形成され、穴部16bは貫通している。
長手方向における隣接する穴部16bの境界であるリブは3mmであり、穴部16bから自由端16dまでの距離は1.5mmである。
次に、トナー供給ローラ20へのトナー供給方法について説明する。
図15〜図17は、現像室15におけるトナー供給ローラ20へのトナーの供給過程を説明するために、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たトナー貯留槽19の近傍の部分断面を示す。
トナー収容室18内のトナーは、攪拌部材22によって現像室15内に設けられたトナー貯留槽19に運ばれる(図15中のTn)。
図15は、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20に最近接した状態を示す。T7はトナー搬送部材16の平面部16a上に載っているトナーを、T8は穴部16bにあるトナーを、T9はトナー搬送部材16の下方にあるトナー貯留槽19内のトナーを示す。
支持軸26の図示矢印F方向(時計方向)への回転によって、トナー搬送部材16の係合端16cが移動する。図中符号26aは、支持軸26の回転軌跡(係合端16cの中心の軌跡)を示す。その動きに連動して、トナー搬送部材16の自由端16dは、図示矢印G方向に(トナー供給ローラ20の表面移動方向下流に向けて)、隔壁23に沿って移動する。係合端16c及び自由端16dが移動することで、トナー搬送部材16は下方へ移動する。
又、トナー供給ローラ20は回転しているため、トナー収容室18から運ばれたトナーTnの一部は、トナー供給ローラ20の回転とともに搬送される。
図16は、トナー搬送部材16が下方に移動した状態を示す。第1の実施形態と同様に、トナー搬送部材16が下方に移動すると、トナー搬送部材16の下方にあるトナーT9は、トナー搬送部材16により圧縮を受け、トナー搬送部材16の穴部16bに圧力をかける。又、トナー貯留槽19に堆積していたトナーT9は、圧力をかけられたことで流動化するため、空気を含むことになり、その嵩密度は低下(体積は増加)する。
トナー搬送部材16を下方に移動させることは、トナー搬送部材16がトナー搬送部材16の下方にあるトナーT9を押すことで穴部16bに移動させる。それと同時に、トナー搬送部材16を下方に移動させることは、トナー搬送部材16の下方にあるトナーT9の嵩密度を低下させるため、穴部16bに存在していたトナーT8を上方向へ押し上げる(図16中の矢印Q)。
トナー供給ローラ20の近傍に押し上げられたトナーT8は、押し上げられる過程又はトナー供給ローラ20の回転の影響(気流、トナーの流れなど)により堆積した状態から崩され、拡散される。この拡散されたトナーT8は、トナー供給ローラ20とトナーT8との間にあるトナーをトナー供給ローラ側へ付勢することで、該トナーをトナー供給ローラ20へ付着させたり、拡散されたトナーT8自体がトナー供給ローラ20の表面へ付着したりする。
トナー供給ローラ20の表面に付着したトナーは、図示矢印E方向に回転するトナー供給ローラ20の回転に伴って搬送される。
次に、図17に示すように、トナー搬送部材16が支持軸26の回転に伴って上昇する。トナー搬送部材16の自由端16dは図示矢印H方向に(トナー供給ローラ20の表面移動方向上流に向けて)移動する。トナー搬送部材16が上方向に移動するときには、トナー搬送部材16上に載っているトナーT7によって、拡散したトナーT8は、新しいトナーTnと混合しつつ、トナー供給ローラ20側に付勢される。それと同時に、トナーT8及び新しいトナーTnの幾らかは、トナー搬送部材16の穴部16bを通してトナー貯留槽19側に移動し、他のトナーはトナー搬送部材16の上を通過してトナー搬送部材16の下方へ移動する(図17中の矢印I)。このトナー貯留槽19側に移動したトナーは、次回の工程に使用される。トナー搬送部材16上のトナーT7は、拡散したトナーT8を付勢すると同時に、それ自体も崩落したり、再度固められたりして、最初のトナーT7の形状(図15のT7)を形成する。
トナー搬送部材16が数回転することでトナー中に充分に空気が含まれるようになり、トナーも流動化しやすくなる。その結果、トナー搬送部材16の穴部16bからトナーが噴き出し、一部はトナー供給ローラ20にトナーが供給され、余ったトナーは矢印Iのように流れるようなトナーの流れが形成されることとなる。トナーの流れができることで、安定したトナーの供給が可能となり、画像ムラが防止されることとなる。
次に、本実施形態におけるトナー搬送部材16の移動軌跡とトナーの動きとの関係について説明する。
図18〜図22に、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たときのトナー搬送部材16によるトナーの動きを示す。図中符号28は、トナー搬送部材16の穴部16bの、トナー搬送部材16の自由端16d側の端部(以下「自由端側穴端」ともいう。)16eが、トナー搬送部材16の移動に伴って移動する軌跡を示す。又、図中符号29は、トナー搬送部材16の穴部16bの、支持軸26側の端部(以下「支持軸穴端」ともいう。)16fが、トナー搬送部材16の移動に伴って移動する軌跡を示す。
図18において、自由端側穴端16eの軌跡28と支持軸側穴端16fの軌跡29とを結んだ線が、穴部16bの上端面が形成する面の軌跡となる。そして、自由端側穴端16eの軌跡28及び支持軸側穴端16fの軌跡29が楕円形を描くことから、両穴端16e、16fの往復工程は別々の軌跡となる。その結果、トナー搬送部材16のトナーを循環させる能力が向上する。
図19は、トナー搬送部材16が最上部(トナー供給ローラ20との最近接部)から最下部(トナー供給ローラ20との最遠部)に移動する過程において、トナーが穴部16bから湧き出して上方向に移動する状態を示している。穴部16bから湧き出して上方向に移動するトナーの領域は、図中点を施した第1領域30で表される。
図20は、図19の場合とは逆に、トナー搬送部材16が最下部から最上部に移動する過程において、トナーが穴部16bから沈み込み下方向に移動する状態を示している。穴部16bから沈み込み下方向に移動するトナーの領域は、図中点を施した第2領域31となる。
そして、図21に示すように、第1領域30のトナーから第2領域31に含まれるトナーを引いた差分である、図中点を施した第3領域32のトナーが、トナー搬送部材16の下方から穴部16bを通して湧き出し、トナー搬送部材16の上方を通過していく。逆に、図22に示すように、第1領域30のトナーから第3領域32のトナーを引いた差分である、図中点を施した第4領域33のトナーは、穴部16bから湧き出したにも拘わらず、再度穴部16bを通過して下方へ戻る。
このように、本実施形態のトナー搬送部材16は、自由端側穴端16eの軌跡28及び支持軸側穴端16fの軌跡29が楕円形を描く。そのため、穴部16bを通じて湧き出したトナーを、トナー搬送部材16の上部を通してトナー搬送部材16の下方に送ることができる。その結果、連続したトナーの流れを作り易く、トナーのパッキング(固化)が生じ難い。又、トナーの攪拌性が向上するため、新旧トナーが混ざることで生じるかぶりの発生を抑えることが可能となる。
次に、本実施形態における最近接時の距離について、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たトナー貯留槽19内の断面を模式的に示す図23、図24を用いて説明する。
図23は、空孔、即ち、貫通した穴部16bの移動距離を示す。前述のように、トナー搬送部材16の穴部16bの自由端側穴端16eの軌跡28及び支持軸側穴端13fの軌跡29から、トナーが湧き出す部分の第1領域30が得られる(図23中の点を施した部分)。そして、図9を参照して説明した第1の実施形態の場合と同様に考えて、この第1領域30をトナー供給ローラ20の方向(重力方向とは反対方向)に拡大する。そして、その拡大していく過程で最初にトナー供給ローラ20と交差する点を第1基準点42とする。
ここでトナーは基本的に鉛直上方向に拡大していく。下方向には、静止状態ならばトナーがある状態であるし、トナーが流れている状態であれば先述のように矢印I方向のトナーの流れがあるため、トナーが下方向には常にある状態である。トナー搬送部材16が下方向に移動するときであるため、下方向はトナーが拡散していかない。またトナー搬送部材16の平面部16a上には図16(T7)で示したようにすでにトナーの壁ができているため、穴部16bから噴き出したトナーは鉛直上方向に拡散していくこととなる。
第1基準点42から重力方向に降ろした線(一点鎖線)と、第1領域30との最初の交点を第2基準点43とする。更に重力方向にその線(一点鎖線)を延伸し、第1領域30からはずれる部分における当該第1領域30との交点を第3基準点44とする。このとき、第2基準点43と第3基準点44との直線距離(鉛直方向)が、前述の空孔の移動距離となる。
ここで、図24において、第2基準点43と第3基準点44との直線距離(即ち、空孔の移動距離)を高さh3とする。又、図24において、第1基準点42と第2基準点44との直線距離を高さh5とする。そして、図24において、h4は、下記式、
h4=現像剤膨張率×空孔の移動距離
によって表されるものとする。このとき、h4−h3は、トナーがトナー供給ローラ20の表面に到達する領域となる。
従って、これを空孔全域で考えると、図中斜線部にて示す第5領域34が、トナーが到達する領域に相当する。即ち、トナー搬送部材16が下方へ動くことによりトナーが流動化し、その体積が膨張(嵩密度は低下)した領域が第5領域34である。従って、最近接時のトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との距離は、この第5領域の最上部がトナー供給ローラ20に到達するような距離でなければならない。つまり、この第5領域34がトナー供給ローラ20と重なるか否かを判断する。そして、第5領域34とトナー供給ローラ20とが重なる領域が一部でもあれば、トナー供給ローラ20の表面は移動しているため、トナー供給ローラ20へのトナーの供給が可能である。
このように、トナー供給ローラ20の表面にトナーを供給するために必要なトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lは、下記式、
L<h4−h3(=現像剤膨張率×空孔の移動距離−空孔の移動距離)
の関係、即ち、
L<(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
の関係を満たす必要がある。又、第1の実施形態と同様に、最近接位置においてもトナー搬送部材16は、トナー供給ローラ20と非接触である必要がある。
従って、第1の実施形態と同様に、トナー供給ローラ20の表面にトナーを供給するために必要なトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lは、下記式、
0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
で表される。
空孔の移動距離については、図24の領域30のいずれの場所でもとることができるが、少なくとも一部において、
0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔移動距離
を満たせばよい。少なくとも一部で上式を満足することができれば、トナーをトナー供給ローラ20に付着させることが可能となるためである。
尚、本実施形態では、穴部16bの短手方向(トナー供給ローラ20の回転方向と同方向)の長さは、支持軸26の回転直径以下とすることが望ましい。穴部16bの短手方向長さを支持軸26の回転直径より大きくとすると、トナーを穴部16bから上方に湧き出させても、再度下方に落下するトナーが多く発生するため、攪拌性が向上し難い。又、トナーを噴出させる圧力が低下するため、トナーを供給する勢いが低下し易い。本実施形態では、支持軸26の回転直径を4mmとし、穴部16bの短手方向長さを3.8mmとした。
以上説明したように、現像室15内において、トナー供給ローラ20と、トナー供給ローラ20の下方に配される隔壁23との間に、回転可能な支持軸26に回動可能に結合され、支持軸26の回転に連動して揺動するトナー搬送部材16を設ける。又、このトナー搬送部材16には、空孔、即ち、貫通した穴部16bが設けられている。そして、トナー搬送部材16の穴部16bとトナー供給ローラ20の表面との最近接距離Lを、下記式、
0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔の移動距離
[但し、現像剤膨張率=静的嵩密度/動的嵩密度]
の関係が成り立つように設定する。又、トナー搬送部材16を隔壁23に近づけることでトナー搬送部材16の穴部16bからトナーを噴出させ、トナー供給ローラ20の近傍のトナーをトナー供給ローラ20に付勢する。これにより、トナー供給ローラ20にトナーを充分付着させることが可能となる。その結果、トナーに過大なストレスをかけることなく、ベタ濃度の追従性を確保することが可能となる。特に、本実施形態では、トナー搬送部材16の穴部16bは、トナー供給ローラ20と隔壁23との間を、往路と復路が異なるように往復する。これにより、トナーを混合する能力、トナーを循環させる能力が向上する。
又、本実施形態では、トナー収容室18から運ばれた新しいトナーとトナー貯留槽内のトナーを好適に混合することが可能となる。その結果、トナー供給ローラ20に供給されるトナーの部分的な凝集や、トナー帯電付与時に帯電量の偏在がないため、かぶりの少ない画像出力が可能となる。
又、本実施形態では、トナー貯留槽19内のトナーの循環が一方向に流れ易くなるため、トナーのパッキング、即ち、必要以上に密にトナーが詰まることを抑制し、現像ローラ17へのトナー供給、現像ローラ17上のトナー規制の安定化を図ることができる。
2.実施例
以下、本実施形態に係る実施例の構成を示す。
・実施例6
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離(即ち、空孔の移動距離)を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを2.5mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は4mmである。
・実施例7
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを1.5mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.3mmである。
・実施例8
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.361(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを1mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.4、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は1.6mmである。
実施例6〜8に関する各種設定値を下記表2にまとめる。
各実施例の評価結果は後述する(表4)。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態において、現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実質的に第1、第2の実施形態と同じである。従って、以下、第1、第2の実施形態のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略し、主に、本実施形態にて特徴的な点について説明する。
第2の実施形態では、板状のトナー搬送部材16を揺動運動させた。これに対して、本実施形態では、板状のトナー搬送部材を複数組み合わせて、トナー供給ローラ20の表面に沿うように揺動させる。更に、トナー搬送部材16の先端部分を延伸することで、トナー貯留槽19内のトナーの一部をトナー収納室に戻すようにして、カートリッジ内全体のトナーの循環性を高める。
1.現像室の構成
図25は、感光体ドラム1の長手方向に沿って見た本実施形態におけるプロセスカートリッジ7の概略断面を示す。現像室15には、トナー貯留槽19と、トナー搬送部材16とが配設されている。
本実施形態では、現像室16に形成されたトナー貯留槽19の構成、並びに、現像室15内に設けられたトナー搬送部材16の構成は、第2の実施形態と概略同様である。
即ち、本実施形態では、トナー搬送部材16は、第2の実施形態と同様に、一端が支持軸26を回転中心とする円軌道26a上を移動し、他端は隔壁39に沿って直線往復運動を行う。本実施形態では、支持軸26は、1秒当たり2.5回転の速さで回転している。
しかし、第2の実施形態とは異なり、本実施形態では、トナー搬送部材16を現像ローラ17及びトナー供給ローラ20の長手方向に見た時に略「く」の字状の断面を有する板状部材で構成されている。即ち、トナー搬送部材16は、トナー供給ローラ20の接線に沿う方向に延在する第1の平面と、屈曲部を介して第1の平面に対して所定の角度を持って第1の平面から連続している第2の平面と、を有する。上記屈曲部は、トナー供給ローラ20の長手方向に沿って延びている。本実施形態では、トナー搬送部材16は、トナー供給ローラ20の回転半径方向外側に向けて凸となる方向に屈曲している。
更に説明すると、図26は、本実施形態におけるトナー搬送部材16を正面から見た様子を示す。トナー搬送部材16は、第1の平面部16a1と、第1の平面部16a1に形成された第1の穴部16b1と、第2の平面部16a2と、第2の平面部16a2に設けられた第2の穴部16b2とを有する。第1の平面部16a1は、屈曲部16hを介して第2の平面部16a2と連続している。
本実施形態では、トナー搬送部材16は樹脂材料で形成されている。しかし、トナー搬送部材16は、樹脂材料に限定されず、例えば、金属材料で形成されていても良い。
トナー搬送部材16は、支持軸26としてのクランク軸に回転可能に接続されている。支持軸26は、現像ローラ17及びトナー供給ローラ20の長手方向と略平行に、トナー貯留槽19の長手方向の全域にわたって配置されている。支持軸26は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部において、現像室15を形成する現像枠体61に回転可能に支持されている。支持軸26の回転直径は4mmである。
即ち、トナー搬送部材16の短手方向の一方の端部である係合端16cは、支持軸26の回転中心に対する偏心位置において、支持軸26に回転(回動)可能に係合(結合)されている。支持軸26は、図示しない駆動手段(駆動源)によって回転駆動される。そして、支持軸26の回転運動に伴って、トナー搬送部材16の係合端16cは支持軸26と摺動しつつ回転運動を行う。
尚、本実施形態では、第1の平面部16a1において第1の穴部16b1を区切る第1のリブ16g1と、第2の平面部16a2において第2の穴部16b2を区切る第2のリブ16g2とは、トナー搬送部材16の長手方向において互いに異なる場所に配置される。これは、トナー搬送部材16の長手方向において、第1、第2の穴部16b1、16b2からのトナーの湧き出しを均一にするためである。
又、支持軸26が回転駆動されることで、トナー搬送部材16の支持軸26と係合していない方の一方の端部である自由端16dが、隔壁23の壁面に沿って移動(往復運動)する。
トナー搬送部材16の厚さは1mmである。第1の平面部16a1と第2の平面部16a2のなす角は約150度である。屈曲部内側における第1の平面部16a1の短手方向(長手方向と略直交する方向)長さは7mm、第2の平面部16a2の短手方向長さは9mmである。
穴部16b1及び16b2は短手方向長さ2mm×長手方向長さ30mmで形成され、穴部は貫通している。
長手方向における隣接する穴部の境界であるリブ16g1及び16g2は3mmであり、穴部16b1と穴部16b2の間の距離は2mmである。
次に、トナー供給ローラ20へのトナー供給方法について説明する。
図27〜図29は、現像室15におけるトナーの搬送過程を説明するために、トナー搬送部材16の長手方向に沿って見たトナー貯留槽19の近傍の部分断面を示す。
トナー収容室18内のトナーは、攪拌部材22によって、現像室15内に設けられたトナー貯留槽19に、その入口部分(トナー通路)24を介して運ばれる(図27中のトナーT10)。
図27は、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20に最近接した状態を示す。
第2の実施形態と同様に、支持軸26が図示矢印J方向(時計方向)に回転する。それに伴って、トナー搬送部材16の自由端16dは、隔壁23に沿って矢印O方向に(トナー供給ローラ20の表面移動方向下流に向けて)移動する。
図28は、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態を示す。この状態では、トナー貯留槽19の入口部(トナー通路)24にあったトナーT10は、一部がトナー供給ローラ20の回転に伴って支持軸26の近傍に到達し、他の一部はトナー搬送部材16の移動により自由端16dの近傍に存在する。
このように、トナー収容室18から運ばれた新しいトナーは、トナー貯留槽19の全体に拡散する。又、それと同時に、トナー搬送部材16の位置が下がったことにより、第1の穴部16b1及び第2の穴部16b2からトナーが湧き出す(図28中の矢印R)。この湧き出したトナーは、第2の実施形態と同様に、トナー供給ローラ20にトナーを付着させると同時に、新しいトナーT10と混ざり合う。又、第1の穴部16b1から湧き出したトナーは、自由端16dの近傍にあるトナーと混ざり合う。又、トナー搬送部材16の位置が下がったことにより、トナー貯留槽19内のトナーの上面は、トナー貯留槽19の内側へ引き込まれる。
図29は、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から最も離れた状態から最も近接した状態に至る途中を示す。自由端16dは、隔壁23に沿って図示矢印P方向に(トナー供給ローラ20の表面移動方向上流に向けて)移動する。この移動に伴って、自由端16dよりトナー貯留槽19の入口部(トナー通路)24側にあるトナーは、トナー搬送部材16によって押される。そして、この押されたトナーのうち余剰分は、トナー貯留槽19から押し出され、トナー収容室18へ落下する。トナー収容室18へ落下したトナーは、攪拌部材22により攪拌される。このようにして、トナー貯留槽19内の古いトナーとトナー収容室18の新しいトナーとを積極的に混合することが可能となる。
一度使用したトナー(現像ローラ17やトナー供給ローラ20に担持されたトナー)を連続して使用しないようにすることで、トナーの帯電性低下を防止し、連続プリントによる濃度低下を防止することが可能となる。
更に、本実施形態では、トナー搬送部材16の短手方向(トナー供給ローラ20の表面移動方向)に複数の穴部(第1、第2の穴部)16b1、16b2を設けている。これにより、トナー搬送部材16の穴部からトナー供給ローラ20へトナーを付着させる領域が増加し、より均一にトナー供給ローラ20へトナーを付着させることが可能となる。その結果、現像ローラ17上にコーティングされるトナー層が均一となるため、出力された記録材の面内における画像の均一性が向上する。
尚、第1の実施形態にて説明したトナー搬送部材16にも、トナー搬送部材16の短手方向(トナー供給ローラ20の表面移動方向)に複数の穴部を設けてもよく、上記同様の効果を得ることができる。
2.実施例
以下、本実施形態に係る実施例、並びに、比較例の構成を示す。
・実施例9
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離(即ち、空孔の移動距離)を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを2.5mmとした。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は4mmである。
・実施例10
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.321(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを1.5mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.6、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は2.3mmである。
・実施例11
静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.361(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20の最近接距離Lを1mmとした。このとき、現像剤膨張率は1.4、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は1.6mmである。
・比較例7
本実施形態のトナー搬送部材16と同様の形態を有しているが第1の穴部16b1及び第2の穴部16b2を設けないトナー搬送部材16を使用した。静的嵩密度を0.506(g/cm3)、動的嵩密度を0.253(g/cm3)、トナー搬送部材16の上下の移動距離を4mm、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを2.5mmとした。この距離は実施例9と同様である。このとき、現像剤膨張率は2.0、最近接距離上限値(=(現像剤膨張率−1)×トナー搬送部材の移動距離)は4mmである。
実施例9〜11、比較例7に関する各種設定値を下記表3にまとめる。
各実施例、比較例の評価結果は後述する(表4)。
[評価実験]
前述の各実施例、各比較例について、以下の評価を行った。
1.評価方法
(1)濃度追従性評価
濃度追従性評価は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、100枚印字後に行った。100枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に形成して行った。画像評価は、ベタ黒画像を連続3枚出力し、3枚目のベタ黒画像の出力先端と後端の濃度差をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて測定することで行った。印字テスト及び評価画像は単色で出力した。評価基準は次の通りである。
○:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.2未満
△:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.2以上、0.3未満
×:ベタ黒画像において、紙先端と紙後端での濃度差が0.3以上
(2)かぶりの評価
かぶりの評価は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、100枚印字毎に1000枚まで行った。1000枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に形成して行った。画像評価は、ベタ白画像(意図するトナー付着の無い画像,非画像部)を1枚毎間欠的に出力し、画像表面を東京電色かぶり測定器TC−6DSにて測定することで行った。そして、未使用の同一紙を同様に東京電色かぶり測定器TC−6DSにて測定して、未使用紙の測定値と、5枚目にベタ白画像を出力した紙の測定値に関して上記差分を求めた。評価基準は次の通りである。
○:差分が1.5より小さい
△:差分が1.5以上、3.0未満
×:差分が3.0より大きい
(3)トナーパッキングの有無
トナーパッキングの評価は、(2)のかぶり評価において終了した画像形成装置を分解し、現像室15内にトナーのパッキングがあるか否かを調査し、評価した。評価基準は次の通りである。
○:トナーパッキングなし
×:トナーパッキングが発生
(4)濃度むらの評価
濃度むらの評価は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、100枚印字後に行った。100枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に形成して行った。画像評価は、ベタ黒画像を出力し、ベタ黒画像の最大値と最小値の濃度差をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて測定することで行った。印字テスト及び評価画像は単色で出力した。評価基準は次の通りである。
○:濃度の最大値と最小値の差が0.2より小さい
△:濃度の最大値と最小値の差が0.2以上、0.3未満
×:濃度の最大値と最小値の差が0.3より大きい
(5)連続プリントによる濃度評価
連続プリントによる濃度評価は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、5000枚印字後に行った。500枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に形成して行った。画像評価は、ベタ黒画像を出力し、ベタ黒画像の平均濃度をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて測定することで行った。印字テスト及び評価画像は単色で出力した。評価基準は次の通りである。
○:ベタ黒画像において、耐久を通じて濃度差が0.2未満
△:ベタ黒画像において、耐久を通じて濃度差が0.2以上、0.3未満
×:ベタ黒画像において、耐久を通じて濃度差が0.3以上
(6)画像均一性の評価
画像均一性の評価は、画像形成装置を評価環境25.0℃、50%Rhにて1日放置して当該環境になじませた後、100枚印字後に行った。100枚の印字テストは、画像比率5%の横線の記録画像を連続的に形成して行った。画像評価は、中間調画像(濃度狙い値:0.8)を出力し、濃度の最大値と最小値の差をX−Rite製spectordensitometer 500を用いて測定することで行った。評価基準は次の通りである。
○:濃度の最大値と最小値の差が0.2より小さい
△:濃度の最大値と最小値の差が0.2以上、0.3未満
×:濃度の最大値と最小値の差が0.3より大きい
以上の評価に従い評価した。
2.評価結果
各実施例、各比較例についての評価結果を下記表4に示す。
先ず、比較例1と比較することで、本発明の優位性について説明する。
比較例1は、トナー搬送部材16を配置してはいるが、トナー搬送部材16を静止させた状態である。即ち、トナー供給ローラ20が回転しても、トナー供給ローラ20の下部にあるトナーは何ら流動しないため、トナー供給ローラ20の下部にあるトナー層とトナー供給ローラ20との間には、すぐに空間が発生する。そのため、トナー供給ローラ20にトナーは供給されず、ベタ画像を出力した場合には紙の後端に向けて濃度が薄くなる、所謂、濃度薄が発生した。加えて、比較例1では、新たなトナーの供給が行われないことから、同じトナーが現像ローラ17上に残るため、トナー劣化が激しく、かぶりや濃度むらが発生する。
一方、実施例1では、トナー搬送部材16の穴部16bからトナーが供給されるため、ベタ画像を出力した場合でも、紙の先端から後端にわたり、所望の濃度を得ることが可能となる。
次に、実施例1〜5と比較例2〜6とを比較することによって、本発明の優位性について説明する。
比較例2は、実施例1からトナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lを大きくしたものである。即ち、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から遠いため、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から遠ざかる時にトナーが穴部16bから湧き出しても、その付勢力がトナー供給ローラ20に届かない。そのため、トナー供給ローラ20とトナー層との間に空間が発生した。その結果、トナー供給ローラ20にトナーは供給されず、ベタ画像を出力した場合には紙の後端に向けて濃度が薄くなる、所謂、濃度薄が発生した。
一方、実施例1では、トナー搬送部材16とトナー供給ローラ20との最近接距離Lが適切である。そのため、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から遠ざかる時にトナーが穴部16bから湧き出したトナーが有効に働き、トナー搬送部材16の上方のトナーを押し上げる。そして、拡散したトナーがトナー供給ローラ20に付着し、トナー供給ローラ20に充分にトナーを供給することが可能となる。
又、実施例2及び3は、実施例1からトナーを変更して現像剤膨張率を変更したものである。現像剤膨張率が変わってもトナー搬送部材16の最近接距離Lを適切にすれば、実施例1と同様の効果が得られることが分かる。
更に、実施例4及び5は、実施例1からトナー搬送部材16の移動距離を減らしたものである。トナー搬送部材16の移動距離を減らしても、トナー搬送部材16の距離Lを適切にすれば、実施例1と同様の効果が得られることが分かる。
これに対し、比較例3〜6は比較例2と同様にトナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から遠い。そのため、トナー搬送部材16がトナー供給ローラ20から遠ざかる時にトナーが穴部16bから湧き出してもその付勢力がトナー供給ローラ20に届かず、トナー供給ローラ20とトナー層との間に空間が発生した。その結果、トナー供給ローラ20にトナーは供給されず、ベタ画像を出力した場合には紙の後端に向けて濃度が薄くなる、所謂、濃度薄が発生した。
次に、実施例6〜8について説明する。
実施例6〜8は、第2の実施形態に従い、実施例1〜3に対して、トナーの混合性、対パッキング性を向上させたものである。即ち、第1の実施形態では、トナー貯留槽19の下方へと一方向にトナー搬送部材16を動かす。そのため、トナー貯留槽19の底の角部のトナーの流れが少なくなり、トナーのパッキングが生じ易かった。そして、一度パッキングしたトナーなどが、崩れたときにトナーに混ざり、現像ローラ17上にコートされると、凝集したトナーは電荷が付与され難くなり、微少なかぶりが発生する一因になることがある。又、トナーが凝集したまま現像に供されると、その部分の濃度はわずかに濃くなり、濃度むらをわずかに発生させ一因になることがある。
実施例6〜8では、トナーが十分に混合されると同時に、トナーの攪拌性も向上するため、トナーパッキングも生じない。その結果、かぶりや濃度むらが発生し難い。
次に、実施例9〜11について説明する。
実施例9〜11は、第3の実施形態に従い、実施例6〜8に対して、トナーを供給する面積を増やし、トナー供給量を増加させると共に、カートリッジ内全体でトナーを混合するようにしたものである。
実施例9〜11では、複数の穴部16bを設けることで、穴部16bからトナー供給ローラ20へトナーを付着させる領域が増加し、均一にトナー供給ローラ20へトナーを付着させることが可能となった。その結果、現像ローラ17上にコーティングされるトナー層が均一となるため、出力された紙の面内における画像の均一性が向上した。
又、トナー貯留槽19内の古いトナーとトナー収容室18内の新しいトナーとを積極的に混合することが可能である。そのため、一度使用したトナーを連続して使用しないようにすることで、トナーの帯電性低下を防止し、連続プリントによる濃度低下を防止することが可能となった。
比較例7は、実施例9からトナー搬送部材16の穴部16bを塞いだものである。比較例7では、穴部16bがないため、トナー供給ローラ20へトナーを供給することができず、トナー搬送部材16上のトナー層とトナー供給ローラ20との間に空間が発生した。その結果、トナー供給ローラ20にトナーが供給されず、ベタ画像を出力した場合には紙の後端に向けて濃度が薄くなる、所謂、濃度薄が発生した。
又、穴部16bがないことでトナーの混合性・攪拌性は低下し、かぶりや濃度むらが発生した。特に、トナー搬送部材16とトナー貯留槽19の底部との間のトナーは圧力がかけられるために、パッキングが発生し易い状態であった。
以上説明したように、現像剤供給部材上の点から重力方向に降ろした線上における空孔16bの移動幅を空孔移動距離とする。又、振動後のトナーの嵩密度を動的嵩密度とし、振動させた後にその変化が無視できるようになるまで(典型的には1日)静置した後のトナーの嵩密度を静的嵩密度とする。この時、本発明によれば、現像剤膨張率を、次式、現像剤膨張率=静的嵩密度/動的嵩密度で表す場合にトナー供給ローラ20の表面と、空孔16bが形成する平面との最近接距離Lは、次式、0<L<(現像剤膨張率−1)×空孔移動距離の関係を満たす。
これにより、トナーに過大なストレスをかけることなく、トナー供給ローラ20の下方からトナー供給ローラ20の表面にトナーを供給することでトナーの劣化を防止し、ベタ濃度変化の少ない高品質な画像形成を行うことが可能となる。又、本発明によれば、トナー供給ローラ20の下方からトナーを供給する構成において、画像濃度追従性を向上させることにより、高品質な画像形成を行うことが可能となる。