本発明は、像担持体上に形成した静電像を現像して可視化する画像形成装置に関するものであり、特に、像担持体と現像剤担持体との間に振動電圧を印加して現像を行う電子写真方式や静電記録方式などの画像形成装置に関するものである。
従来、電子写真方式の画像形成装置は、像担持体を帯電手段により一様に帯電させた後、像担持体表面を画像情報信号に応じて露光することにより、像担持体の表面に静電像を形成する。この静電像は、次いで現像手段が現像剤を用いて現像剤像として可視化する。そして、この現像剤像を記録材上に、或いは一端中間転写体に転写した後に記録材上に転写し、更に定着装置にて定着させることによって記録画像を得る。
図9を参照して更に説明すると、同図は非磁性一成分現像方式を用いた従来の画像形成装置の概略構成を示している。
画像形成装置200は、像担持体としての通常ドラム状とされる電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)201を回転可能に有している。帯電手段としての一次帯電器(帯電ローラ)202は、回転する感光ドラム201の表面を一様に帯電させる。次に、外部装置より入力された画像情報に対応して露光装置203より感光ドラム201上に光照射を行い、静電像を感光ドラム201上に形成する。次いで、感光ドラム201上の静電像は、現像装置210が、帯電ローラ202の印加電圧(即ち、感光ドラム201の帯電極性)と同極性の摩擦帯電極性を有する現像剤のトナーTにより可視像、即ち、トナー像として現像する。感光ドラム201上に形成されたトナー像は、転写部Mにおいて、転写手段としての転写帯電器(転写ローラ)204にて記録材Qに転写される。その後、記録材Qは感光ドラム201より分離され、続いて定着装置206に搬送される。ここで、記録材Q上の未定着のトナー像は、熱、圧力によって永久像として記録材Qに定着される。次いで、記録材Qは、装置本体外に排出される。又、転写ローラ204で転写されずに残った感光ドラム201上のトナーTは、クリーニング手段としてのクリーニング装置205にて除去され、感光ドラム201は次の画像形成プロセスに供される。
現像装置210は、現像剤として、例えば、負帯電性で、且つ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色いずれかの顔料を含有した、負帯電性非磁性一成分現像剤(トナー)Tを備える。現像装置210は、容器216内に、現像剤攪拌部材(攪拌部材)214を有する。図示の例では、容器216内には、板状の第1撹拌部材214A、第2撹拌部材214Bが2つ設けられている。これら第1、第2攪拌部材214A、214Bが図中矢印の方向に回転することにより、容器216内のトナーTを、現像剤担持体としての現像ローラ211へと搬送する。
非磁性一成分現像法においては、磁力による現像ローラ211へのトナー供給が不可能であるため、現像ローラ211には、現像剤供給部材として、弾性体、例えば弾性発泡体(ウレタンスポンジなど)製の現像剤供給及び剥ぎ取りローラ(以下「現像剤供給ローラ」という。)212が当接されている。
現像ローラ211には、現像剤量規制部材として規制ブレード213が当接されており、現像ローラ211上のトナーTを規制してトナー薄層を形成し、現像領域(感光ドラム201と現像ローラ211との対向位置)Nに搬送されるトナー量を規定すると同時に、トナーTを帯電させる。
現像ローラ211は、現像領域Nで感光ドラム201の表面と所定の間隔(以下「SDギャップ」という。)をおいて対向配置されている。そして、少なくとも現像工程時には、現像ローラ211に所定の現像バイアスを印加することで、感光ドラム201と現像ローラ211との間には振動電界が形成される。
斯かる構成の現像装置210において、所望の帯電量と所望の層厚で現像ローラ211の表面に付着して現像領域Nに搬送されてきたトナーTは、上記振動電界によって現像ローラ211と感光ドラム201との間で往復運動を行う。これにより、感光ドラム201の表面に形成された静電像に応じて、トナーTが現像ローラ211から感光ドラム201上へと転移し、該静電像をトナー像として可視化する。ここでは、現像装置210は、感光ドラム201の帯電極性と同極性のトナーTを、感光ドラム201上の露光により電位が減衰した部分に転移させる反転現像によりトナー像を形成する。
しかしながら、上述のような従来の技術においては、次に説明する「スジ状濃度ムラ」と呼ばれる画像不良が発生してしまう場合がある。 図10及び11を参照して、このスジ状濃度ムラについて説明する。図10は感光ドラム201と現像ローラ211とを長手方向から観測したモデル図であり、図11は感光ドラム201と現像ローラ211とを回転方向から観測したモデル図である。図中、感光ドラム201、現像ローラ211上の斜線部がトナーTを表す。図に示すように、感光ドラムと現像ローラ間に現像バイアスを印加した場合、現像領域の近傍において、飛散トナーが発生する。その際、飛散トナーは周辺のトナーと引き合って、図に示すように現像領域から現像ローラの回転方向上流側の現像ローラ上にスジ状に降り積もっていく。そのため、飛散トナーが降り積もった個所では、現像ローラ上トナーのり量が増えてしまう。その結果、トナーのり量が増えた部分の画像濃度が高くなってしまう。スジ状濃度ムラとは、上記した理由によって、画像濃度にムラが生じる現象である。
上記したスジ状濃度ムラは、感光ドラムと現像ローラの位置関係によって、発生しやすさが変わる。図12、図13は感光ドラム201と現像ローラ211の位置関係を示した図である。図12のように感光ドラム201の回転中心201Aが現像ローラ211の回転中心211Aよりも重力方向に対して上方向に位置した場合、上記した飛散トナーが現像ローラ上に積もりやすく、スジ状濃度ムラが発生し易い。それに対して、図13のように、感光ドラム201の回転中心201Aが現像ローラ211の回転中心211Aよりも重力方向に対して下方向に位置した場合、上記した飛散トナーが現像ローラ上に積もり難く、スジ状濃度ムラが発生し難い。
ところで、飛散トナーを低減させるため現像バイアスを変化させるという提案がされている。例えば特許文献1では、現像バイアスの振幅成分(Vpp)について、非画像形成時を画像形成時より低く設定するというものであり、具体的に、実施例1では画像形成時のVpp1500Vに対し、非画像形成時のVppを0Vとしている。さらに、実施例2では、高圧の立ち上がりを考慮して非画像形成時のVppを300Vとしている。
また、特許文献1においては、磁性一成分現像剤を用いた画像形成装置であり、且つ感光ドラムの回転中心位置は現像ローラの回転中心位置よりも重力方向に対して下方向である。
特開平2003−295566号公報
このように特許文献1において、トナー飛散の問題は開示されているが、感光ドラムの回転中心位置は現像ローラの回転中心位置よりも重力方向に対して下方向であるので、上述したスジ状濃度ムラの問題の認識はなかった。即ち、感光ドラムの回転中心が現像ローラの回転中心よりも重力方向に対して上方向に位置した場合に特有の問題である、飛散トナーが現像ローラ上に積もりやすいことによるスジ状濃度ムラの発生の問題の認識がなかった。
また、特に簡易な高圧電源を用いた時、非画像形成時から画像形成時における現像バイアスの切り換え時に現像バイアス波形のオーバーシュートが発生し、リーク現象が起こる場合がある。しかしながら、特許文献1においては、このようなリーク現象をも防止するという技術思想を全く有していなかった。
本発明の目的は、飛散現像剤が現像領域よりも現像剤担持体回動方向上流側に積もることによる不具合を解決する画像形成装置を提供することである。
本発明の他の目的は、スジ状の濃度ムラの発生を抑制する画像形成装置を提供することである。
本発明の他の目的は、高品位な画像を安定して形成することのできる画像形成装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、像担持体と現像剤担持体との間に振動電圧を印加する電源として簡易なものを用いたとしても、リーク現象が発生しない画像形成装置を提供することである。
本発明の他の目的は、複数の画像形成ステーションが設けられた画像形成装置において、像担持体と現像剤担持体との間に振動電圧を印加する電源の低コスト化を実現し、且つスジ状濃度ムラ等を防止し、安定した画像を形成することのできる画像形成装置を提供することである。
本発明によれば、像担持体と、現像剤を担持搬送する現像剤担持体と、を有し、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に振動電圧を印加して前記現像剤担持体から前記像担持体へと現像剤を供給する画像形成装置において、前記像担持体の回動中心位置が前記現像剤担持体の回動中心位置よりも重力方向において上方向に配置されており、非画像形成時に前記像担持体と前記現像剤担持体との間に振動電圧を印加する期間を備え、この期間の前記振動電圧のピーク間電圧Vpbは、画像形成時の前記振動電圧のピーク間電圧Vpaよりも小さくされ、前記期間において、前記現像剤担持体が第1の速度で回転している場合よりも、第1の速度より大きな第2の速度で回転している場合の方が、前記Vpaに対する前記Vpbの割合であるVpb/Vpaを大きくすることを特徴とする画像形成装置である。
本発明によれば、飛散現像剤を低減し、スジ状濃度ムラ等の不良画像を抑制することができる。また、像担持体と現像剤担持体との間に振動電圧を印加する安価な電源を用いた画像形成装置を提供することが可能である。さらに、像担持体と現像剤担持体との間に印加する振動電圧を切り替えるときにリーク現象が発生しない画像形成装置を提供することができる。
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、図1を参照して、本発明に係る画像形成装置の一実施例の全体構成及び動作について説明する。本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置本体(以下「装置本体」という。)100Aに接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト、或いは装置本体に接続され例えば光学的に原稿情報を読み取り電気信号に変換する原稿読み取り装置などの外部装置からの画像情報信号に応じて、電子写真方式を利用して記録材、例えば、記録用紙、OHPシート、布などの4色フルカラーの画像を形成することのできるレーザビームプリンタである。
画像形成装置100は、像担持体としての感光ドラム1を回転可能に有している。帯電手段としての一次帯電器(帯電ローラ)2は、回転する感光ドラム1の表面を一様に帯電させる。帯電ローラ2には、電圧印加手段としての帯電バイアス印加電源21より、感光ドラム1が所望の基準電位(暗電位Vd)となるように所定の帯電バイアスが印加される。次に、外部装置より入力された画像情報に対応して、露光装置(本実施例ではレーザスキャナ)3より感光ドラム1上に光照射を行い、感光ドラム1上に静電像を形成する。
次いで、感光ドラム1上の静電潜像は、現像装置10によって、帯電ローラ2の印加電圧と同極性の摩擦帯電極性を有する現像剤のトナーTにより可視像、即ち、トナー像として反転現像される。現像装置10の動作については後述して更に詳しく説明する。
一方、感光ドラム1上のトナー像の形成と同期して、記録材供給部30から、感光ドラム1と転写手段としての転写帯電器(転写ローラ)4との対向部(転写部)Mとに搬送されてくる。つまり、記録材収容部としてのカセット31から記録材供給手段としての供給ローラ32によって送り出された記録材Qは、レジストローラ33によってトナー像と記録材Q上の画像転写領域との同期をとって転写部Mへと記録材Qを搬送する。
こうして、感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写手段としての転写帯電器(転写ローラ)4にて記録材Qに転写される。転写ローラ4には、電圧印加手段としての転写バイアス電源41より、トナーTの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の転写バイアスが印加される。
その後、記録材Qは感光ドラム1より分離され、続いて記録材搬送手段8によって定着装置6に搬送される。ここで、記録材Q上の未定着のトナー像は、熱、圧力によって永久像として記録材Qに定着される。次いで、記録材Qは、装置本体100A外に排出される。
又、転写帯電器4で転写されずに残った感光ドラム1上のトナーTは、クリーニング手段として、クリーニングブレードなどを備えるクリーニング装置5にて除去され、感光ドラム1は次の画像形成プロセスに供される。
[現像装置]
次に、図1の現像装置10について更に詳しく説明する。
本実施例における現像装置10の基本構成は、図9を参照して前述したものと同様である。つまり、本実施例では、現像装置10は、非磁性一成分非接触現像方式を採用しており、容器(現像装置本体)16に、現像剤を担持する現像剤担持体としての現像ローラ11と、現像ローラ11へ現像剤を供給するとともに現像ローラ11から現像剤を剥ぎ取る現像剤供給及び剥ぎ取り部材としての現像剤供給ローラ12と、現像ローラ11上に担持される現像剤の量を規制する現像剤量規制部材としての規制ブレード13と、現像剤としての絶縁性の非磁性一成分現像剤(トナー)Tと、板状の現像剤攪拌部材(攪拌部材)14と、を備えている。
感光ドラム1と現像装置10との対向部において、現像剤を収容する容器16は一部開口しており、この開口部の長手方向略全域にわたり、容器16外に一部露出するようにして、現像ローラ11が回転可能に設けられている。本実施例では、現像ローラ11は、図中矢印方向、即ち、感光ドラム1と現像ローラ11との対向部(現像領域)Nにおいて各表面移動方向が同方向となるように回転する。
本実施例では、トナーTは負帯電性であり、且つ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色いずれかの顔料を含有した、負帯電性非磁性一成分現像剤(トナー)である。撹拌部材14が図中矢印の方向に回転することにより、容器16内のトナーTを、現像ローラ11へと搬送する。
現像剤供給ローラ(現像剤供給及び剥ぎ取りローラ)12は現像ローラ11に当接されており、現像ローラ11との当接部(ニップ部)でカウンタ方向、即ち、現像ローラ11と現像剤供給ローラ12の表面移動方向が当接部にて反対方向となるように回転することで、トナーTを現像ローラ11上に供給する。又、これと同時に、現像剤供給ローラ12は、感光ドラム1の対向位置を通過しても現像されなかった現像ローラ11上のトナーを剥ぎ取る。
容器16内には、仕切り板15が設けられており、攪拌部材14によって常に一定量のトナーを現像ローラ11近傍の現像剤供給ローラ12上に供給すべく、該仕切り板の高さは適正化されている。攪拌部材14は、図9に示したように2個若しくはそれ以上であってもよく、現像装置10の構成にあわせて容器16の端部から現像ローラ11(若しくは現像剤供給ローラ12)の近傍までトナーTを搬送することができれば、その個数は何ら限定されるものではない。又、攪拌部材14は、各種形状に加工された板状もしくはスクリューであってよい。
現像ローラ11には、現像剤量規制部材として規制ブレード13が当接されており、現像ローラ11上のトナーTを規制してトナー薄層を形成し、現像領域Nに搬送されるトナー量を規定すると同時に、トナーTを摩擦帯電させる。現像領域Nに搬送されるトナー量は、現像ローラ11上に接触する規制ブレード13の当接圧や当接長さなどにより決定することができる。規制ブレード13としては、厚さ数百μmのリン青銅、ステンレスなどの金属薄板上に、樹脂製の規制部が接着若しくは溶着されており、金属薄板の弾性によって規制ブレード213は均一に現像ローラ211に当接されているチップブレードなどを用いることができる。この金属薄板の材質、厚さ、侵入量、設定角によって規制ブレード213の当接条件を決定することができる。
現像ローラ11は、現像領域Nで感光ドラム1の表面と所定の間隔(SDギャップ)をおいて対向し、感光ドラム1の回動中心位置が現像ローラ11の回動中心位置よりも重力方向に対して、上方向に配置されている。そして、少なくとも現像工程時には、詳しくは後述するように現像ローラ11に所定の現像バイアスを印加することで、感光ドラム201と現像ローラ11との間には振動電界が形成される。
斯かる構成の現像装置10において、所望の帯電量と所望の層厚で現像ローラ11の表面に付着して現像領域Nに搬送されてきてトナーTは、電圧印加手段としての現像バイアス電源18から印加される現像バイアスによって現像ローラ11と感光ドラム1との間で往復運動を行う。これにより、感光ドラム表面に形成された静電像に応じて、トナーTが現像ローラ11から感光ドラム1上へと転移し、該静電像をトナー像として可視化する。
図2を参照して更に説明すると、本実施例では、現像装置10は、非磁性一成分非接触現像方式(ジャンピング現像方式)を採用しており、現像に先立ち、感光ドラム1は、帯電ローラ2によって所定極性(本実施例では負極性)の所定電位(暗電位VD)に一様に帯電される。そして、露光装置3での露光により電位が減衰して静電像の画像部の電位(明電位VL)部分が形成される。感光ドラム1と現像ローラ11との間には一定の間隔(SDギャップ)が設けられ、現像ローラに現像バイアスとして交流電圧に直流成分を重畳した振動電圧を印加して現像を行う。現像ローラ11には、明電位VLよりもトナーTの正規の帯電極性(本実施例では負極性)側であり、暗電位VDよりもトナーTの正規の帯電極性と逆側である直流成分Vdcが重畳される。この直流成分値Vdcと静電像の画像部の電位VLとにより現像コントラストVcontが形成される。こうして形成される感光ドラム1と現像ローラ11との間の振動電界のうち、感光ドラム1へトナーを付勢するトナー飛ばし側電圧のピーク電圧(Vmax)により、トナーTが現像ローラ11から感光ドラム1の方向に向かう力を受け、一方、現像ローラ11へトナーを付勢するトナー戻し側電圧のピーク電圧(Vmin)により、トナーTは現像ローラ11の方向に引き戻す力を受ける。この過程の繰り返しにより、静電像の画像(明電位VL)部分にトナーTが付着する。即ち、感光ドラム1の暗電位に対しても、明電位に対しても、感光ドラム1と現像ローラ11との間に交番電界が形成される。
本実施例では、感光ドラム1として、φ30mmのアルミニウム素管表面に、感光材料、(本実施例ではOPC)を塗工して構成されている部材を用いた。又、現像ローラ11として、φ16mmのアルミニウム素管表面に、カーボン、グラファイトを分散したフェノール樹脂溶液をスプレー塗工した部材を用いた。現像ローラ11の長手(軸線)方向の両端部には、離間部材としてコロ(図示せず)を設置し、これを感光ドラム1の表面に突き当てることで感光ドラム1表面と現像ローラ11表面とのSDギャップを保つ。本実施例では、SDギャップは300μmとした。又、現像剤供給ローラ12として、φ5の金属芯金に厚さ4.5mmのウレタンフォームを外周に形成した部材を用いた。そして、規制ブレード13の金属薄板として厚さ0.1mmのリン青銅板を用いた。
図3は、本実施例の画像形成装置100の概略制御ブロックを示す。画像形成装置100は、制御の中心的素子たる制御手段(CPU)51を備え、記憶手段たるROM52、RAM53に記憶されたプログラム、データを用いて画像形成装置100をシーケンス動作させる制御部50を有する。制御部50は、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置10、転写ローラ4、定着装置6、記録材供給部30、電源など、画像形成装置100の各部の動作を統括制御する。
制御部50には、画像処理部60が接続されており、画像処理部60は、装置本体100Aに対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器或いは原稿読み取り装置からの画像信号を受信すると共に、制御部50に画像形成に係る信号を送信する。制御部50は、斯かる画像形成信号に従って、画像形成装置100の各部の動作を制御する。又、画像形成装置本体100Aには、表示部、キーなどの入力手段などを備える操作部70が設けられており、制御部50のCPU51に接続されている。
[現像バイアス]
次に、本実施例で用いる感光ドラム1と現像ローラ11との間に印加する、現像バイアスについて図4を用いて説明する。図4−1に画像形成時(現像時)の現像バイアス波形、図4−2に非画像形成時(非現像時)の現像バイアス波形のモデル図を示す。ここで、画像形成時とは、静電潜像形成領域が現像位置にあるときであって、言い換えれば、任意の画像情報に対して感光ドラム1に静電潜像が形成され得る領域が現像位置にあるときである。一方、非画像形成時とは、感光ドラム1に静電潜像が形成され得る領域以外の領域が現像位置にあるときである。本実施例では非画像形成時において、感光ドラム1と現像ローラ11との間に振動電圧を印加する期間を備えている。感光ドラム1Vmaxにおいて、画像形成時では−1200V、非画像形成時では−840Vとしている。Vminに関しては、画像形成時、非画像形成時ともに+600Vである。即ち、現像バイアスの振動電圧のピーク間電圧は、非画像形成時には画像形成時よりも小さく設定される。また、Vmaxの絶対値は、非画像形成時には画像形成時よりも小さく設定される。
[非画像形成時におけるVmaxの最適値]
次に、非画像形成時におけるVmax値について説明する。〔背景技術〕にて説明したが、スジ状濃度ムラは現像領域で発生した飛散トナーが、現像ローラの回転方向上流部に降り積もることで発生する。それを低減させるためには、トナー飛ばし側電界である現像バイアスのVmaxの絶対値をできるだけ小さくし、現像ローラ上のトナーが感光ドラムへ飛翔することを防ぐのが効果的である。しかしながら、Vmax値を0Vにするなど、画像形成時のVmax値と非画像形成時のVmax値の電位差が大きくなるほど、バイアス切り換え時に発生する高圧電源のオーバーシュート量が大きくなってしまう。図5にオーバーシュートのモデル図を示す。図中の実線がオーバーシュート発生したときのバイアス波形であり、破線が設定波形である。このオーバーシュートによって、実際の最大ピーク間電圧値(Vpp)が予め設定された設定ピーク間電圧Vpp値よりも大きくなり、リーク現象等の不具合が生じてしまう。
本発明者らの実験によれば、画像形成時におけるピーク間電圧Vpp値をVpaとし、非画像形成時におけるピーク間電圧Vpp値をVpbとした場合、Vpb<Vpaとすれば、スジ状濃度ムラに対して効果が得られることがわかった。さらにはVpbをVpa×0.9以下(90%以下)にすることで、上記したスジ状濃度ムラを低減し、画像上においても問題にならない程度にすることが可能となった。一方、非画像形成時の交流成分をオフしてVpbを0Vとするとオーバーシュートが発生するので、非画像形成時の交流成分はオンさせるのが良く、更には、VpbをVpa×0.7以上(70%以上)に保つことで、簡易な高圧回路を用いた低コストの高圧電源においてもオーバーシュートによるリーク現象を防止することがわかった。
本実施例においては、前記したように画像形成時のピーク間電圧Vppを1800V、非画像形成時のピーク間電圧Vppを1440V=Vpa×0.8としている。
なお、非画像形成時に感光ドラムと現像ローラとの間に振動電圧を印加するのは、必ずしも非画像形成時全てにおいて行なうことが必要なわけではなく、非画像形成時の一部の期間としても良い。例えば、画像形成時の直前の非画像形成時だけ前記振動電圧を印加しても良い。また、非画像形成時から画像形成時となるまでの間に振動電圧のピーク間電圧を複数段階徐々に上げていっても良い。このように、非画像形成時に感光ドラム1と現像ローラ11との間に振動電圧を印加する期間を備え、この期間の振動電圧のピーク間電圧は、画像形成時の振動電圧のピーク間電圧よりも小さくなるように設定されれば良い。
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
本実施例2では、画像形成時のVmaxを−1200V、Vminを+600Vに対して、非画像形成時のVmaxを−1020V、Vminを+420Vとしている。
本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
本実施例3では、画像形成時のVmaxを−1200V、Vminを+600Vに対して、非画像形成時のVminを+240としV、Vmaxは画像形成時を同等のを−1200Vとしている。
即ち、実施例2、3ともに、感光ドラムと現像ローラとの間に印加される振動電圧のピーク間電圧は、非画像形成時において画像形成時よりも小さく、実施例2においては、Vmaxの絶対値は、非画像形成時において、画像形成時よりも小さい。
以下に、上記した実施例1〜3の効果を比較例を用いて説明する。
(比較例1)
比較例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
比較例1では、現像バイアスの振動電圧のピーク間電圧値は、画像形成時、非画像形成時ともに同値の現像バイアスを印加した。
(比較例2)
比較例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
比較例2では、現像バイアスの振動電圧ピーク間電圧値は、画像形成時、非画像形成時ともに同等の1800Vppであるが、非画像形成時の直流成分Vdcを画像形成時のものよりも下げた構成である。画像形成時のVdc=−300Vに対して、非画像形成時のVdc=−120Vとした。
(比較例3)
比較例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
比較例3では、現像バイアスの振動電圧のピーク間電圧値は、画像形成時、非画像形成時ともに同等の1800Vppであるが、非画像形成時の直流成分Vdcを画像形成時のものよりも上げた構成である。画像形成時のVdc=−300Vに対して、非画像形成時のVdc=−480Vとした。
実施例1〜3及び比較例1〜3におけるスジ状濃度ムラの発生状況を以下表1に示す。
なお、スジ状濃度ムラは、ハーフトーン画像とベタ黒画像において、目視評価により発生レベルを評価した。
表の○は発生無し、○△は若干目視できるが画像問題にならないと判断できるレベルであり、△は目視可能で、画像問題となるレベルであり、×は非常にレベルが悪い。
表1から解るように、実施例1〜3においては、○及び○△であり、スジ状濃度ムラを改善できている。特に、現像バイアスの交流成分のうち、トナーを現像ローラから感光ドラムに向かう方向に付勢するピーク電圧Vmaxを小さくする実施例1の構成が最も効果が大きく、◎と表記している。それに対して、比較例1〜3では、スジ状濃度ムラを低減はするが、画像問題になるレベルである。
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
本実施例2では、画像形成装置に装置の使用雰囲気環境を検知する温湿度センサーを具備し、使用環境によって、非画像形成時のVmax値を変化させる構成である。Vmaxの絶対値が小さくなるほど、非画像形成時のピーク間電圧も小さくなるように設定する。本発明者らの検討によれば、高温高湿の使用環境において、飛散トナーが多く、低温低湿になるにつれて飛散トナーが少なくなる現象を見つけた。使用環境に応じて、非画像形成時のピーク間電圧Vpp(Vpb)と画像形成時のピーク間電圧Vpp(Vpa)の関係を以下の表2に示した。
このように使用環境に応じて、Vpb値を変化させることにより、使用環境によって変化するスジ状濃度ムラを確実に防止することが可能となる。
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例1のものと実質的に同じである。従って、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
本実施例5では感光ドラムの表面回転速度(周速度)を切り替え可能な画像形成装置において、非画像形成時のVmax値を変化させる構成である。Vmaxの絶対値が小さくなるほど、非画像形成時のピーク間電圧も小さくなるように設定する。本発明者らの検討によれば、感光ドラムの表面回転速度(一般的にはプロセススピードと呼ぶ)によって、スジ状濃度ムラのレベルが変化した。本実施例におけるプロセススピードと非画像形成時のVpp(Vpb)と画像形成時のVpp(Vpa)との関係を以下表3に示した。
本実施例における画像形成装置においいては、現像ローラの表面回転速度は感光ドラムの表面回転速度の150%としている。つまり、プロセススピードが上がるにつれて、現像ローラも速く回転することになる。プロセススピードが上がるほど飛散トナーは増していくが、現像ローラの回転も速くなるために、飛散トナーが上流側に積もる前に回転してしまうため、プロセススピードが上がるほど、スジ状濃度ムラのレベルが良い結果となった。そのため、本実施例の構成によって、プロセススピードによって変化するスジ状濃度ムラを確実に防止することが可能となる。
[画像形成装置の全体構成及び動作]
図6を参照して、本発明に係る画像形成装置の他の実施例の全体構成及び動作について説明する。本実施例の画像形成装置110は、実施例1の画像形成装置100の現像装置を、4つ縦に配列させたタンデム式のカラー画像形成装置であり、実施例1のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
実施例6の画像形成装置においては、第一の画像形成ステーション(1stと呼ぶ)にマゼンタM、第二の画像形成ステーション(2st)にシアンC、第三の画像形成ステーション(3st)にイエローY、第四の画像形成ステーション(4st)にブラックKのトナーTを備える。そして、それぞれの画像形成ステーションの像担持体に転写材を順に搬送し、それぞれの画像形成ステーションで形成されたトナー像を転写材上に順次重ね合わせて転写することによりカラー画像を得る構成である。なお、各画像形成ステーションは収容されるトナーの色以外は同じ構成であり、図6において第四のブラック用画像形成ステーション以外では符号を省略した。
[現像バイアスのタイミング]
本装置においては、感光ドラム1と現像ローラ11との間に振動電圧を印加する現像バイアス高圧電源111を簡易的なものにするために、各画像形成ステーションにおける各色用の現像バイアスのVminを共有させ、同一の値を印加するVmin印加手段113を有し、Vmaxに関しては各色ごと任意の値を取れるVmax印加手段112を有する。この現像バイアス高圧電源111を用いることで、画像形成装置110の電源の低コスト化をはかることが可能となっている。
各色の現像バイアスは、現像バイアス電源111によって同時に印加される構成であるが、各現像装置の画像形成時の振動電圧のVmax(Va)値を−1200V、非画像形成時の振動電圧のVmax(Vb)値を−840Vとしている。図7に本実施例の現像バイアスのタイミングチャートを示す。図7に示すように、各画像形成ステーションにおいて、現像バイアスとしての振動電圧のVmax、VminのON、OFFの切り替えタイミングは同一であり、1stの画像形成時の開始から4stの画像形成時の終了まで継続してVmax、VminはONされる。しかしながら、VmaxがONされている間のVa値とVb値の印加タイミングについては、画像形成ステーション毎に異なっている。例えば、Vmaxは、1stにおいては、1stの画像形成時の開始から1stの画像形成時の終了までは、Va値であり、1stの画像形成時の終了から4stの画像形成時の終了まではVb値である。このように、Vmaxは、いずれの画像形成ステーションにおいても、その画像形成ステーション自身で画像を形成している場合はVa値であり、その画像形成ステーション自身で画像を形成をしておらずかつ他の画像形成ステーションでは画像を形成している場合にはVb値としている。即ち、ある画像形成ステーションで見ると、非画像形成時のVmax(=Vb)の絶対値は、画像形成時のVmax(=Va)の絶対値よりも小さく設定されている。このように、非画像形成時の振動電圧のピーク間電圧は画像形成時のそれよりも小さく設定されている。
これにより、低コスト化した高圧電源を用いたカラー画像形成装置において、各色のスジ状濃度ムラを防止し、且つリーク現象を発生させず、安定した画像を提供することが出来る。
なお、図7においては、1stの画像形成時の開始と、Vmax、VminのOFFからONへの切り替えと、を同時としたが、Vmax、VminのOFFからONへの切り替えを1stの画像形成時の開始よりも少し前にすることも可能である。この場合、1stにおいて、VmaxのOFFからONへの切り替えを行なってから、画像形成時の開始まで、の間はVmaxは小さい値であるVbとすることが好ましい。また、同様に、図7において、4stの画像形成時の終了から少し後で、Vmax、VminのONからOFFへの切り替えを行なうようにしても良い。
本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は、実施例6(図6)のものと実質的に同じである。従って、実施例6のものと実質的に同一若しくは相当する構成、機能を有する要素には同一符号を付して、ここでは詳しい説明は省略する。
本実施例7では、4stのブラックトナーを備える画像形成ステーションのみの非画像形成時のVmax(Vb)値として−840Vに設定している。図8に本実施例の現像バイアスのタイミングチャートを示す。
図8に示すように、各画像形成ステーションにおいて、振動電圧のVmax、VminのON、OFFの切り替えタイミングは同一であり、1stの画像形成時の開始から4stの画像形成時の終了まで継続してVmax、VminはONされる。しかしながら、4stのブラック用画像形成ステーションにおいてのみ、VmaxがONされている間にVa値とVb値の2つの値を切り替えるようにした。即ち、4stのブラック用画像形成ステーションにおいて、Vmaxは、1stの画像形成時の開始から4stの画像形成時の開始までは、Vbの値とし、4stの画像形成時の開始から4stの画像形成時の終了までは、Vaの値とした。
本実施例の構成においては、全画像形成ステーションの現像装置の現像バイアスの印加開始が同時である(図8では1stの画像形成時の開始と同時である)為、4stにおいて、実際の現像が開始される前に現像バイアスが印加されている非画像形成時間が最も長くなる。即ち、この非画像形成時間は、1stの画像形成時の開始から4stの画像形成時の開始までの時間である。現像バイアスが印加されている非画像形成期間が長くなるほど、即ち画像形成ステーションの下流のものほど、画像のスジ状濃度ムラが出易くなるので、上述したように下流の画像形成ステーション(例えば4st)だけ、非画像形成時のVmax(Vb)の絶対値を小さく設定する(−840V)ことは有効である。また、本発明者らの検討によれば、ブラックトナーが他の色のトナーに比べて、単位重量あたりの電荷量が小さく、飛散トナーが発生し易い。そのため、4stであるブラック画像のスジ状濃度ムラが最も目立つ。そこで、本実施例においては、4stの現像装置のみ非画像形成時のVmax(=Vb)の絶対値を画像形成時のVmax(=Va)の絶対値よりも小さくした。これにより、フルカラー時及びモノカラー時ともにスジ状濃度ムラを低減できた。
もちろん、実施例7でも述べたように、Vmax、VminのOFFからONへの切り替えを1stの画像形成時の開始よりも少し前にすることも可能であり、4stの画像形成時の終了から少し後で、Vmax、VminのONからOFFへの切り替えを行なうようにしても良い。
このように複数の画像形成ステーションのうちの少なくとも一つ画像形成ステーションにおいて、非画像形成時に感光ドラム1と現像ローラ11との間に振動電圧を印加する期間を備え、前記期間における振動電圧のピーク間電圧は、画像形成時の振動電圧のピーク間電圧よりも小さくなるように設定すれば良い。
また、実施例6、7において、4つの画像形成ステーションをもち、フルカラー画像を形成する例を示したが、画像形成ステーションの数はこれに限らず、例えば2つの画像形成ステーションとして、2色の画像を形成するようにしても良い。
本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成図である。
感光ドラムと現像ローラとの間に形成される振動電界を説明するための説明図である。
本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略制御ブロック図である。
本発明のバイアス波形のモデル図である。
オーバーシュート波形のモデル図である。
本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成図である。
本発明のタイミングチャートを示す図である。
本発明のタイミングチャートを示す図である。
従来の画像形成装置を説明するための画像形成装置の一例の要部概略構成図である。
スジ状濃度ムラを説明する図である。
スジ状濃度ムラを説明する図である。
スジ状濃度ムラを説明する図である。
スジ状濃度ムラを説明する図である。
符号の説明
1 感光ドラム(像担持体、電子写真感光体)
2 帯電ローラ(一次帯電器、帯電手段)
3 レーザスキャナ(露光装置、露光手段)
4 転写ローラ(転写帯電器、転写手段)
5 クリーニング装置(クリーニング手段)
8 感光ドラム速度変更手段
10 現像装置(現像手段)
11 現像ローラ
18 現像バイアス電源(電圧印加手段)
19 現像バイアス変更手段
51 CPU(制御手段)
T トナー(現像剤)
100 画像形成装置
110 画像形成装置
111 現像バイアス電源(電圧印加手段)
112 Vmax値印加手段
113 Vmin値印加手段