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JP4748480B2 - 水または含水物の凍結を促進するための材料 - Google Patents

水または含水物の凍結を促進するための材料 Download PDF

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Description

本発明は、水または含水物の凍結を促進するための材料、不凍タンパク質を固定化した担体、水または含水物の凍結を促進する方法、水または含水物に含まれる気体を除去しながら凍結する方法、ならびに含水物の水以外の成分を濃縮しながら水成分を凍結する方法に関する。
一般的に、水は0℃で凍結すると考えられているが、凍結開始のきっかけとなる物質すなわち「氷核」が存在しなければ0℃以下でも凍らない(過冷却状態)。過冷却状態にある水または含水物の内部に自然に氷核を発生させて凍結に至らしめるためには、これらを例えば-20℃(汎用の冷凍庫内温度)から-196℃(液体窒素温度)までの低い温度に冷却しなくてはならない。一方、氷核を存在させると該水または含水物を0℃以下の高い温度で凍結させることができる。既知の氷核物質、すなわち凍結促進物質としては、例えばヨウ化銀、氷核活性細菌等があり、それぞれ-8℃および-4〜-2℃で水を凍結させることができる。特に、製造業、加工業、冷凍業、製氷業、蓄熱業、食品・細胞・臓器保存、人工降雨・降雪などの技術分野においては莫大な冷却エネルギーの消費が問題となっており、該技術分野での氷核物質の利用、すなわち氷核物質を用いて低エネルギー(0℃以下の高い温度)で水を凍結させることが期待されてきた。しかし、上記のような氷核物質を用いると重金属や細菌を含水物中に混在させる結果になり、環境、人体、生態系等に対する悪影響が懸念されることやコスト面(氷核活性細菌は比較的高価である)等から、適用できる応用分野・範囲は極めて限られており、氷核として機能し水の凍結促進活性を発揮する新しい材料の開発が強く望まれていた。
また、水は一般に通常の方法で凍結させると水に溶存する空気等の影響により白濁した氷が生成する。一方で、水割、オンザロック、清涼飲料水等の飲料や、食品保存、装飾用氷柱等に用いる氷は、不純物が少なく透明度の高いものが、その溶け難さや高い美観・涼感のため好適とされている。近年の清潔指向の高まりにより、業務用の製氷機だけでなく家庭用冷蔵庫においても透明氷を作製できる製氷装置等が組み込まれるようになってきている。これまでの透明氷作製法としては、製氷皿上面から温風を所定の角度で吹き付けながら凍らせる方法、ペルチェ素子を用いて製氷皿下面から順次凍結させる方法、製氷皿に給水後に製氷皿を振動させる方法、製氷する前に水中の空気などの溶存ガスを脱気する方法、製氷皿の開口部を下に向けて噴水状に給水し製氷容器の側面から徐々に凍結させる方法、冷気を製氷皿の裏側から送風・製氷皿の蓋にヒーターを埋めこんで温めながら凍結させる方法等が採られていた。すなわち、凍結する水または製氷容器の温度制御や水の脱気・噴出等の煩雑な作業、およびそれらのための装置・コストを必要とした。さらに凍結には、-20℃前後の大きな冷却エネルギーが必要とされていた。このため簡便で、低コストかつ低エネルギーで透明氷を作製する新しい方法の開発が強く望まれていた。
また、水の凍結を利用した技術に凍結濃縮技術がある。これは、含水物を部分的に凍結させて水分を氷として分離し溶質を濃縮する方法であり、他の濃縮方法に比べ溶質成分の均一な濃縮が可能であるとともに溶質の保存性が高いことなど、大きな利点を有している。液状食品、医薬品および液体燃料等の濃縮、ならびに汚水や廃液等の浄化処理または排水処理等への応用が期待され、様々な装置が開発されている。しかし、いずれの装置も処理液を過冷却して凍結させるものであり、このため溶質が氷中に取り込まれやすく濃縮率が低い、エネルギー効率が悪いという課題を有していた。1段の濃縮ユニットでは濃縮率が低いため複数段の濃縮ユニットを設けなければならず装置の価格が高くなるとともに装置が複雑化・大型化するという問題もあった。また濃縮ユニット毎に冷凍機が必要となり凍結物を得るために莫大なエネルギーを要していた。このため過冷却を必要とせず簡便で、低コストかつ低エネルギーで凍結濃縮できる新しい手法の開発が強く望まれていた。
不凍タンパク質は30〜150残基程度のポリペプチドからなる比較的小さなタンパク質であり、0℃以下の温度領域において、氷核の特定の結晶面に結合してその成長を抑えることによって、水または含水物の凍結を阻害する能力を有することが知られている。近年、NMR法やX線結晶構造解析法により種々の不凍タンパク質の構造が解かれ、その氷結晶結合部位が明らかになっている(非特許文献1)。
一方、氷核タンパク質は氷の結晶成長を促進するタンパク質である。例えば氷核菌の一種であるPseudomonas syringae由来の氷核タンパク質はおよそ1200個のアミノ酸からなる膜タンパク質であり、N末端領域(〜19kDa)、中心領域(〜94kDa)、C末端領域(〜7kDa)の3つの領域から構成される。これら3つの領域のうち、中心領域は特徴的な繰返しアミノ酸配列から構成されており、この配列が氷核活性を発揮する部位と考えられている(非特許文献2)。
不凍タンパク質と氷核タンパク質のあいだにはアミノ酸配列上の相同性がない。また、氷核タンパク質の分子量は不凍タンパク質のそれよりも10倍〜20倍以上も大きい。
一般に、不凍タンパク質は安定であり、これを含有する生物から抽出したり(特許文献1)、遺伝子工学的な手法を用いて取得することは容易である。一方、氷核タンパク質を安定に単離し大量に精製する技術は開発されておらず、純粋な氷核タンパク質を水の凍結促進材料として応用することは極めて困難である。
特開2004-344033号公報 Davies P.L. and Sykes B.D. 1997. Curr. Opin. Struct. Biol. 7: 828-834 Hew C.L. and Yang D.S.C., 1992. Eur. J. Biochem. 203: 33-42
本発明の課題は、氷核活性または凍結促進活性を有する新規材料を提供することである。本発明はまた、簡便で、低コストかつ低エネルギーで透明氷を作製する方法ならびに凍結濃縮を実施する方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドを担体上に集積化して固定化することにより、または不凍タンパク質を担体上に集積して固定化することにより、これらを氷核物質として作用させうること、ならびに水または含水物に含まれる気体や溶質などの水以外の成分を除去しながら凍結させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)水または含水物の凍結を促進するためのポリペプチド固定化担体であって、分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドが担体上に集積して固定化されている、前記ポリペプチド固定化担体。
(2)ポリペプチドが、その水分子結合側鎖が露出するように配向されて担体上に固定化されている、(1)記載のポリペプチド固定化担体。
(3)ポリペプチドが、1×10-13〜1×10-9mol/cm2の量で固定化されている、(1)または(2)記載のポリペプチド固定化担体。
(4)不凍タンパク質が担体上に集積して固定化されている、不凍タンパク質固定化担体。
(5)不凍タンパク質が、その氷結晶結合部位が露出するように配向されて担体上に固定化されている、(4)記載の不凍タンパク質固定化担体。
(6)不凍タンパク質が、その氷結晶結合部位が平面構造を形成しているものである、(4)または(5)記載の不凍タンパク質固定化担体。
(7)不凍タンパク質がIII型不凍タンパク質である、(4)〜(6)のいずれかに記載
の不凍タンパク質固定化担体。
(8)不凍タンパク質がシステインを導入した不凍タンパク質であり、該システイン導入不凍タンパク質が該システインのチオール基を介して担体に固定化されている、(4)〜(7)のいずれかに記載の不凍タンパク質固定化担体。
(9)不凍タンパク質が、1×10-13〜1×10-9mol/cm2の量で固定化されている、(4)〜(8)のいずれかに記載の不凍タンパク質固定化担体。
(10)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチド固定化担体または(4)〜(9)のいずれかに記載の不凍タンパク質固定化担体と水または含水物とを接触させることにより、該水または含水物の凍結を促進する方法。
(11)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチド固定化担体または(4)〜(9)のいずれかに記載の不凍タンパク質固定化担体と水または含水物とを接触させることにより、該水または含水物に含まれる気体を除去しながら該水または含水物を凍結する方法。
(12)(1)〜(3)のいずれかに記載のポリペプチド固定化担体または(4)〜(9)のいずれかに記載の不凍タンパク質固定化担体と含水物とを接触させることにより、該含水物の水以外の成分を濃縮しながら水成分を凍結する方法。
本発明により、高い氷核活性および凍結促進活性を有する安全な材料が提供され、水または含水物を0℃以下の高い温度で凍結させることができる。また、本発明により、水中および含水物中の溶存気体を除去しながら、または含水物中の水以外の成分を濃縮しながら水(水成分)を凍結させることができる。
本発明者らは、分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドを担体上に集積して固定化し、これを水または含水物と接触させると、該水または含水物の凍結が促進されること、水または含水物に含まれる気体が除去されながら凍結が進むこと、および含水物の水以外の成分が濃縮されながら凍結が進むことを見出した。
従って、一実施形態において本発明は、水または含水物の凍結を促進するためのポリペプチド固定化担体であって、分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドが担体上に集積して固定化されている、ポリペプチド固定化担体に関する。当該ポリペプチド固定化担体は、溶存気体を除去しながら水または含水物を凍結するため、および/または含水物の水以外の成分を濃縮しながら水(水成分)を凍結するためにも利用できる。
分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドは、分子の三次元構造において、水分子結合側鎖を有するアミノ酸残基が、分子の表面に露出しているポリペプチドをさす。本発明においてポリペプチドには、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質が包含される。
水分子結合側鎖を有するアミノ酸残基としては、極性基を側鎖に有するアミノ酸残基、例えば、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
担体に固定化される上記ポリペプチドとしては、例えば、グルコースなどの酸化還元酵素、アミノトランスフェラーゼなどの転移酵素、リパーゼなどの加水分解酵素、カタラーゼなどの脱離酵素、グルコースリン酸イソメラーゼなどの異性化酵素、ミオグロビンなどの球状タンパク質、ケラチンなどの構造タンパク質、アミノ酸合成酵素、膜タンパク質、金属タンパク質、抗菌タンパク質、免疫タンパク質、光受容タンパク質、糖タンパク質、分子モーター、DNA結合タンパク質、および不凍タンパク質が挙げられる。
ポリペプチドが担体上に集積して固定化されているとは、複数のポリペプチド分子が担体上に密に固定化されていることをいう。ポリペプチドは、好ましくは1×10-13〜1×10-9mol/cm2、より好ましくは1×10-12〜1×10-10mol/cm2の量で担体に固定化される。
ポリペプチドは、その水分子結合側鎖が露出するように配向して担体上に固定化することが好ましい。そうすることで、水分子結合側鎖を担体表面に露出した状態で集積化させることができ、高い氷核活性および凍結促進活性を有するポリペプチド固定化担体を得ることができる。露出するように配向されるとは、水分子結合側鎖が水または含水物と接触しやすいように、すなわち担体の外側に向かって配向されていることをさす。ポリペプチドを配向して担体上に固定化する方法については、後述する。
本発明において氷核活性とは、多数の水分子の集結を促すことで氷核を形成させ、その結晶成長を開始させる活性をさし、凍結促進活性とは、水または含水物の凍結温度(凝固点)を上昇させる活性をさす。凍結温度は、水または含水物の温度を徐々に降下させ、水または含水物が凍結する温度を観察することにより測定できる。水または含水物の凍結が昇華を伴う場合には、凍結温度は凍結と昇華の両方を観察することにより測定できる。
水分子結合側鎖を有するポリペプチドとして、不凍タンパク質を担体に固定化するのが好ましい。不凍タンパク質は氷結晶結合部位を有し、該氷結晶結合部位は水分子結合側鎖を有するアミノ酸残基を含む。
従って、一実施形態において本発明は、不凍タンパク質が担体上に集積して固定化されている、不凍タンパク質固定化担体に関する。不凍タンパク質固定化担体において、集積して固定化された不凍タンパク質は、氷核活性および凍結促進活性を有する。従って、本発明の不凍タンパク質固定化担体を水または含水物と接触させると、該水または含水物の凍結を促進することができる。
不凍タンパク質は、魚類等の生体内において、凍結温度域で細胞内に生成する氷結晶の表面に特異的に結合してその成長を抑制し、組織の凍結から身を守る生体防御物質として知られている。本発明において不凍タンパク質には、不凍活性、すなわち氷結晶の成長を阻害する活性を有するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質のいずれも包含される。さらに、本発明における不凍タンパク質には、ポリペプチド鎖に糖鎖が修飾されている種類、すなわち不凍糖タンパク質(AFGP)も包含される。不凍タンパク質としては、魚類、菌類、昆虫または植物に由来するものが挙げられる。不凍タンパク質を有する魚類としては、例えば、ナガガジ属(Zoarces)、ギスカジカ属(Myoxocephalus)、ツマグロカジカ属(Gymnocanthus)、ヨコスジカジカ属(Hemilepidotus)、サラサカジカ属(Furcina)、ワカサギ属(Hypomesus)、シシャモ属(Spirinchus)、カラフトシシャモ属(Mallotus)、ホッケ属(Pleurogrammus)、メバル属(Sebastes)、ニシン属(Clupea)、マコガレイ属(Limanda)、クロガレイ属(Liopsetta)、サメガレイ属(Clidoderma)、ソウハチ属(Cleisthenes)、ババガレイ属(Microstomus)、シュムシュガレイ属(Lepidopsetta)、ヌマガレイ属(Platichthys)、イシガレイ属(Kareius)、ムシガレイ属(Eopsetta)、マダラ属(Gadus)、スケトウダラ属(Theragra)、イカナゴ属(Ammodytes)、シワイカナゴ属(Hypoptychus)、マアジ属(Trachurus)、シチロウウオ属(Brachyopsis)、ニシキギンポ属(Pholis)、オキカズナギ属(Opisthocentrus)、ドロギンポ属(Ascoldia)、またはムロランギンポ属(Pholidapus)に属する魚種が挙げられる。
不凍タンパク質を有する菌類としては、例えば、バチルス(Bacillus)属のバチルス・グロビスポラス(Bacillus globisporus)、カンジダ(Candida)属のカンジダ・エスピー(Candida sp.)とカンジダ・スコッチイ(Candida scottii)、クラドスポリウム(Cladosporium)属のクラドスポリウム・ヘルバレム(Cladosporium herbarum)、ヒダナシタケ目、ハラタケ目、アンズタケ目、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、マイクロコッカス(Micrococcus)属に属する菌類が挙げられる。
不凍タンパク質を有する昆虫としては、例えば、ハマキガ科、ゴミムシダマシ科、オオクワガタ属に属する昆虫が挙げられる。
不凍タンパク質を有する植物としては、例えば、アブラナ科、イネ科、オオバコ科、カエデ科、カタバミ科、カヤツリグサ科、キク科、キョウチクトウ科、キンポウゲ科、スイカズラ科、スミレ科、セリ科、タデ科、ツツジ科、ナス科、ナデシコ科、ハゼリソウ科、ハナシノブ科、バラ科、フウオソウ科、フジウツギ科、ブナ科、マツ科、マメ科、モクセイ科、ヤナギ科、ユリ科に属する植物種が挙げられる。
これらの不凍タンパク質は、単独で用いてもよいし、複数種のものを組み合わせて用いてもよい。
不凍タンパク質の不凍活性は、該不凍タンパク質が添加された水または含水物に対し、熱ヒステリシス、氷結晶の成長阻害および氷の再結晶阻害のいずれかをもたらす活性として評価される。あるいは、不凍タンパク質が存在する含水物中には、特徴的な形状の氷結晶(例えば、魚類由来の不凍タンパク質では、ピラミッドを二つ底面で重ねたバイピラミダル型氷結晶)が生成することから、氷結晶の形状を顕微鏡で観察することにより対象とするタンパク質の不凍活性を評価することもできる。
通常、水の凝固点と氷の融点は同一であるが、不凍タンパク質が存在するとそれが氷結晶表面と結合して成長を抑制しさらに氷結晶同士の結びつきを強く抑制するため、水の凝固点と氷の融点の間に差が生じる。この現象を熱ヒステリシスという。不凍タンパク質における不凍活性の大きさは、通常、不凍タンパク質が存在するときに生じる氷の融点と水の凝固点の差によって評価され、この融点と凝固点の差を熱ヒステリシス活性として評価することができる。熱ヒステリシス活性は、浸透圧計(オスモメーター)や凍結ステージ付きの顕微鏡を用いることによって測定することができる。また、形成した氷結晶は、-10℃以上の比較的高い温度での昇華または一部融解によって、生じた水分を吸収し成長する。氷の再結晶阻害とは、この現象を阻害する効果をいう。
不凍タンパク質が担体上に集積して固定化されているとは、上記と同様に、複数の不凍タンパク質が担体上に密に固定化されていることをいう。不凍タンパク質は、好ましくは1×10-13〜1×10-9mol/cm2、より好ましくは1×10-12〜1×10-10mol/cm2の密度で担体に固定化される。
担体に固定化する不凍タンパク質としては、その氷結晶結合部位が平面構造を形成しているものが好ましい。氷結晶結合部位が平面構造を形成している不凍タンパク質においては、これを担体上に集積化して固定化した場合には巨大な氷結晶結合面が形成されることになる。その面が多数の水分子の集結を促すことで氷核を形成させ、その結晶成長を促進することによって高い氷核活性および凍結促進活性をもたらすものと考えられる。
また、不凍タンパク質としては、活性の高さ、入手しやすさ、およびコスト等の点から、好ましくは魚類由来の不凍タンパク質、特にナガガジ属魚類由来のものを用いる。
魚類由来の不凍タンパク質はその構造によりI〜IV型の4つの型および糖鎖を有する型(不凍糖タンパク質:略称AFGP)に分類されている。I型は高いAla含有量を特徴としThrとAsp残基が等間隔で配置されたα−ヘリックス構造を形成している。II型は高いCys含量(8%)を特徴としC型レクチンの糖鎖認識領域と類似の構造を形成している。III型は二重らせん様の構造モチーフを特徴とする球状構造を形成している。IV型は高いGln残基の含有量を特徴としα−ヘリックスの束構造を有すると予想されている。不凍糖タンパク質は-Ala-Thr-Ala-の3残基の繰り返し単位からなりThr残基に糖鎖が修飾されていることを特徴とする。I型不凍タンパク質の分子量は約3,000〜4,500であり、II型不凍タンパク質の分子量は約20,000であり、III型不凍タンパク質の分子量は約7,000であり、IV型不凍タンパク質の分子量は約11,000であり、不凍糖タンパク質の分子量は約2,600〜33,000である。不凍タンパク質は、いずれも両親媒性を有しており、I型、II型、AFGPなどのタイプによらず、水に対して高濃度で溶解する性質を有している。
本発明において用いられる不凍タンパク質は、I〜IV型およびAFGPのいずれのタイプであってもよいが、II型およびIII型のものが好ましく用いられる。II型およびIII型の魚類由来不凍タンパク質は、その氷結晶結合部位が平面構造を形成していることから、これを集積化した場合に高い氷核活性および凍結促進活性を有する。
あるいは、昆虫由来の不凍タンパク質もその氷結晶結合部位が平面構造を形成していることが知られており、本発明において好ましく用いられる。
好ましい不凍タンパク質の具体例としては、配列番号2のアミノ酸配列からなる不凍タンパク質が挙げられる。配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質もまた、好ましい不凍タンパク質として使用できる。機能的に同等とは、対象となるタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の生物学的機能、生化学的機能、すなわち不凍活性を有することを指す。
配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質には、配列番号2のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ不凍活性を有するタンパク質が包含される。ここで数個とは、通常、2〜10個、好ましくは2〜5個、より好ましくは2〜3個を意味する。
また、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質には、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは90%以上の同一性、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、不凍活性を有するタンパク質も包含される。
アミノ酸配列の同一性は、当技術分野において通常用いられる方法によって決定することができ、例えば、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990)。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
不凍タンパク質は、魚類、菌類、昆虫または植物等から当技術分野で公知の方法により精製することができる。
例えば、魚類の血液から不凍タンパク質を得る際には、不凍タンパク質産生魚体の尾部静脈等から注射器を用いて採取した血液を、4℃付近にて12時間以上静置する。この操作によって沈殿する血球成分(不凍タンパク質を含まない)を赤血球の膜を破らないように静かに取り除く(デカンテーション)。残る血清成分(不凍タンパク質を含む)に対して透析、イオン交換クロマトグラフィーまたはHPLCクロマトグラフィーといった汎用の生化学的分離操作を適用することによって、該不凍タンパク質を得ることができる(Schrag, J. D.,ら、Biochim. Biophys. Acta, 915, 357-370(1987))。
魚類の筋肉から不凍タンパク質を得る際には、不凍タンパク質産生魚体をそのまま、または該魚体から頭部と内臓を取り除いたものを、ミキサーにかけてすり身にする。これに水または緩衝液を加えて良く懸濁する。このとき、必要に応じてすり身懸濁液に対して50〜90℃の加熱を行う(特に、IおよびII型不凍タンパク質を精製する場合)。このすり身懸濁液を静置するか、または3,000〜12,000rpmで30分程度の間、遠心分離操作を行うことによって、上澄み液を得る。これに対して透析、イオン交換クロマトグラフィーまたはHPLCクロマトグラフィーといった汎用の生化学的分離操作を適用することによって、不凍タンパク質を得ることができる(特開2004-083546公報)。
例えば、菌類から不凍タンパク質を得る場合は、菌類を培地にて培養し、該培養液から菌体を分離し、不凍タンパク質を回収することにより製造することができる。菌体の分離には、例えば、遠心分離、濾過、限外濾過等を用いることができる。菌体の分離後に得られる培養上清液に含まれる不凍タンパク質は、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウム等による塩析法、アセトンやエタノールによる有機溶媒沈殿法、陽イオン交換体又は陰イオン交換体等を用いたカラムクロマトグラフィー法、アガロース誘導体等を用いたゲル濾過法等により単離・精製することができる。
また、上記アミノ酸配列または公開されているアミノ酸配列情報を利用して、当技術分野で公知の手法、例えば担体ペプチド合成法などにより合成することができる。また、公知の遺伝子組換え手法を利用して、不凍タンパク質をコードするDNAの情報を用いて不凍タンパク質を生産することも可能である。なお、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAの塩基配列を配列番号1に示す。以下、組換え手法を用いた不凍タンパク質の生産に関して説明する。
不凍タンパク質生産用組換えベクターは、上記DNAの塩基配列または公開されているcDNAの塩基配列を適当なベクターに連結することにより得ることができ、形質転換体は、不凍タンパク質生産用組換えベクターを、不凍タンパク質が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。
ベクターには、宿主微生物で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドが使用される。プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpET21a、pGEX4T、pUC118、pUC119、pUC18、pUC19等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13、YEp24、YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ(例えば、λgt11、λZAP等)が挙げられる。さらに、ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに不凍タンパク質cDNAを挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
その他、哺乳動物細胞において用いられる不凍タンパク質生産用組換えベクターには、プロモーター、不凍タンパク質cDNAのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などが連結されていてもよい。
DNA断片とベクター断片とを連結させるには、公知のDNAリガーゼを用いる。そして、DNA断片とベクター断片とをアニーリングさせた後連結させ、不凍タンパク質生産用組換えベクターを作製する。
形質転換に使用する宿主としては、不凍タンパク質を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌等)、酵母、動物細胞(COS細胞、CHO細胞等)、昆虫細胞が挙げられる。
一例として、細菌を宿主とする場合は、不凍タンパク質生産用組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、不凍タンパク質DNA、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BL21などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などが挙げられる。プロモーターは、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母、動物細胞、昆虫細胞などを宿主とする場合には、同様に、当技術分野で公知の手法に従って、不凍タンパク質を生産することができる。
不凍タンパク質は、上記作製した形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、または細胞もしくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。上記形質転換体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
培養は、通常、振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で6〜24時間行う。培養期間中、pHは中性付近に保持する。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養後、不凍タンパク質が菌体内または細胞内に生産される場合には、菌体または細胞を破砕することによりタンパク質を抽出する。また、不凍タンパク質が菌体外または細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体または細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から不凍タンパク質を単離精製することができる。
不凍タンパク質が得られたか否かは、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動等により確認することができる。
分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドまたは不凍タンパク質の担体への固定化は、タンパク質を担体に固定化するための公知の方法に従って実施できる。
例えば、金属イオンに対して親和性を有するアミノ酸残基、例えばヒスチジン、システインまたはトリプトファン残基と金属イオンとの結合を利用する方法、システイン残基とマレイミド基との結合を利用する方法、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質とビオチンとの結合を利用する方法、チオレドキシンタグとフェニルアルシンオキシドとの結合を利用する方法、グルタチオン−S−トランスフェラーゼとグルタチオンとの結合を利用する方法、抗原-抗体結合を利用する方法、疎水性表面を持つ担体とタンパク質との疎水性相互作用を利用する方法、ならびに担体上のアミノ基またはカルボキシル基とタンパク質上のアミノ基またはカルボキシル基との結合を利用する方法などが挙げられる。
金属イオンに対して親和性を有するアミノ酸残基と金属イオンとの結合を利用する方法の具体例として、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質に導入したヒスチジンタグと金属イオンの配位結合を利用する方法が挙げられる。ヒスチジンタグとは、数個、好ましくは3〜10個、より好ましくは6個のヒスチジン残基の連続した配列をさす。ヒスチジンタグの導入は、公知の方法により実施できるが、ヒスチジンタグ部分をコードする塩基配列を有するベクターを用いる方法が好適である。担体上に、金属錯体、好ましくはニッケル錯体またはコバルト錯体を導入することにより、上記ヒスチジンタグを有するポリペプチドまたは不凍タンパク質を高い親和性で固定化することができる。
金属錯体は、キレート配位子を担体に導入し、これに金属イオンを添加することにより形成することができる。キレート配位子の構造としては、例えば、イミノジカルボン酸、ニトリロトリ酢酸、テルピリジン、ビピリジン、トリエチレンテトラアミン、ビエチレントリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、大環状ポリアミンジオキソ誘導体、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ジメチルグリオキシム、2,4-ペンタンジオン、アラニン、ジアミノシクロペンタン、ジエチレントリアミン、ジメチルグリオキシム、アエチレントリアミン五酢酸、グリシン、ヘキサエチレンヘキサミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、イソキノリン、マロン酸、O-フェニレンジアミン、シュウ酸、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)エチレンジアミン、1,10-フェナントロリン、γ−ピコリン-1,2-プロパンジアミン、ピリジン、キノリン、及び尿素等の構造を有するものが挙げられる。
また、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質に含まれるシステイン残基または新たに導入したシステイン残基のチオール基を、その金属イオンとの親和性に基づき、金属担体上に固定化することもできる(Love J. C. et al., Chem. Rev., 105, 1103-1169 (2005))。金属担体としては、金属製の担体および高分子基板等の金属以外の材料からなる基板の表面に金属膜を有する担体のいずれも使用できる。システイン残基のチオール基と親和性の金属としては、金、銀、銅、白金、イリジウム、ニッケル、ルテニウム等が挙げられる。好ましくはシリコン基板上に金を蒸着した担体を用いる。基板表面に金属膜を形成する場合、金属膜の厚さは、通常100〜2000Å、好ましくは500〜1000Åである。また、In2O3、CdS、GaAsなどの半導体やこれらの薄膜を有する基板もチオール基と結合する担体となりうる。
システイン残基の導入は、公知の組換え法により不凍タンパク質を産生する際に実施してもよいし、化学的にシステイン残基を結合させることにより実施してもよい。システインは、好ましくはN末端またはC末端に導入する。例えば、N末端のアミノ基とシステインのカルボキシル基を反応させることによって行うことができる。またN末端のアミノ基と例えばN2H(CH2)2O(CH2)2OCH2COOHのようにアミノ基及びカルボキシル基を有している様な適当なリンカーのカルボキシル基とを反応させ、次いで該リンカーのアミノ基とシステインのカルボキシル基とを反応させることでリンカーを介してN末端にシステインを結合させることもできる。
あるいは、チオール基とアミノ基またはカルボキシル基とを有する化合物を、上記のような金属製の担体または高分子基板等の材料からなる基板の表面に金属膜を有する担体、好ましくはシリコン基板上に金を蒸着した担体と反応させて、該化合物のチオール基と金属との親和性によってアミノ基またはカルボキシル基を担体表面に導入することもできる。そして、該アミノ基またはカルボキシル基と固定化するポリペプチドまたは不凍タンパク質のカルボキシル基またはアミノ基との間でペプチド結合を形成することにより、固定化を実施することができる。魚類由来III型不凍タンパク質を固定化する場合は、チオール基とカルボキシル基とを有する化合物(カルボキシル基を有するチオール化合物)を用い、不凍タンパク質の末端アミノ基と該カルボキシル基でペプチド結合を生成させるのが好ましい。カルボキシル基を有するチオール化合物を用いることによりカルボキシル基を担体に導入する場合は、さらにシアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物でカルボキシル基を活性エステル化することが好ましい。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる。活性エステル基は、ポリペプチドのアミノ基との反応性が高いため有利である。活性エステル基としては、例えばp-ニトロフェニル基、N-ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド基等が挙げられる。特に、N-ヒドロキシスクシンイミド基が好ましい。
上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質に含まれるシステイン残基または新たに導入したシステイン残基のチオール基と、担体上のマレイミド基または担体上に導入したマレイミド基との間で共有結合を形成させることにより、固定化を実施することもできる。担体へのマレイミド基の導入は、公知の試薬(例えば、スルホ−EMCS、株式会社 同仁化学研究所)を用いて実施できる。
また、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質を、該ポリペプチドまたは該不凍タンパク質の抗体を結合した担体を用いて抗原-抗体結合を介して担体上に固定化することもできる。さらに、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質を、疎水性表面を持つ担体を用いて、該ポリペプチドまたは該不凍タンパク質の疎水性部位との相互作用を介して担体上に固定化することもできる。疎水性表面を持つ担体の例として、アルキルチオール分子(例えば、HS(CH2)11CH3)を担体上に固定化した単分子膜が挙げられる。このとき、該ポリペプチドまたは該不凍タンパク質に複数個の疎水性アミノ酸を導入したものを利用することもできる。
アビジンまたはストレプトアビジンなどのビオチン結合タンパク質とビオチンの結合を利用する方法においては、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質にビオチンを導入し、これを担体上に結合させたビオチン結合タンパク質と結合することにより、固定化を実施する。
本発明においては、上記のようにビオチン等の修飾部位を導入したものもまた、分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドまたは不凍タンパク質に包含されるものとする。
あるいは、担体が有するカルボキシル基をN-ヒドロキシコハク酸イミドと反応させることによって、スクシンイミドオキシカルボニル基に変換し、これに上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質をアミノ基の部分で反応させる方法(活性エステル法)、担体が有するアミノ基またはカルボキシル基に、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合試薬の存在下で、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質のカルボキシル基またはアミノ基を縮合反応させる方法(縮合法)なども利用できる。ここで、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質のアミノ基またはカルボキシル基としては、分子表面に存在するものを担体上の官能基と反応させることが好ましい。
また、担体と上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質とをグルタルアルデヒドなどの2個以上の官能基を有する化合物を用いて架橋する方法(担体架橋法)、エポキシ基を有するシランカップリング剤を介して担体表面に固定化する方法なども利用できる。
上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質を固定化する担体は、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質の機能を損なわずに担持できるものであれば制限されず、用いる固定化方法に合わせて、当業者であれば適宜選択できる。
例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステン及びそれらの化合物などの金属、及びグラファイト、カーボンファイバーに代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、セルロース、デキストラン、キチン、コラーゲンおよびアミノ酸ポリマーなどの有機材料等が挙げられる。担体の形状は、特に制限されないが、例えば、容器、基板、多孔質およびビーズ(ナノ粒子〜マクロ粒子)等の形状を有しうる。
不凍タンパク質は、その氷結晶結合部位が露出するように配向して担体上に固定化することが好ましい。そうすることで、結晶結合部位を担体表面に露出した状態で集積化させることができ、高い氷核活性および凍結促進活性を有する不凍タンパク質固定化担体を得ることができる。露出するように配向されるとは、氷結晶結合部位が水または含水物と接触しやすいように、すなわち担体の外側に向かって配向されていることをさす。
分子表面に水分子結合側鎖を有するポリペプチドまたは不凍タンパク質を配向して担体上に固定化する場合は、その三次元構造を考慮し、用いた固定化方法に基づき、上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質において、好適な担体結合部位を選択または導入する。上記ポリペプチドまたは不凍タンパク質の三次元構造において、その水分子結合側鎖または氷結晶結合部位に対して反対側に担体結合部位が存在するように、これを選択または導入する。
例えば、配列番号2のアミノ酸配列からなる不凍タンパク質またはこれと機能的に同等のタンパク質を担体上に固定化する場合は、そのアミノ末端にシステインを導入し、これを金属担体、好ましくは金担体または表面に金を有する担体に固定化することにより、氷結晶結合部位が露出するように不凍タンパク質を配向して固定化することができる。アミノ末端にシステインを導入した配列番号2のアミノ酸配列からなる不凍タンパク質およびこれをコードするDNAの塩基配列を、それぞれ配列番号4および3に示す。
本発明のポリペプチド固定化担体および不凍タンパク質固定化担体と、水または含水物とを接触させることにより、該水または含水物の凍結を促進することができる。また、水または含水物中の溶存気体を除去しながら水または含水物を凍結することができ、結果として、透明な氷を製造することができる。また、含水物における水以外の成分を除去しながら水(水成分)を凍結することができ、結果として、含水物における水以外の成分を濃縮することができる。
本発明において含水物とは、水分子と水分子以外の分子とを含む物質を意味し、例えば、溶質と溶媒からなる水溶液、水に溶解しない物質と水との混合液、穀類、麺類、卵、野菜、果実、肉類、魚介類、パン生地、氷菓子および加工食品などの食品、医療品、診断薬、試薬、化粧品、化粧水、血液、血清、血小板、精子、卵子、単細胞、多細胞、生体組織、心臓、膵臓、肝臓および腎臓などの臓器ならびにこれらの保存液、融雪剤、霜害防止剤等が挙げられる。
水または含水物の凍結を促進するとは、該水または含水物の凍結温度(凝固点)を上昇させることをさす。本発明のポリペプチド固定化担体および不凍タンパク質固定化担体において集積化されたポリペプチドまたは不凍タンパク質は、多数の水分子の集積を促すことで氷核を形成させ、水または含水物の凍結を促進すると考えられる。通常、水は約-20℃で凍結するが、本発明のポリペプチド固定化担体および不凍タンパク質固定化担体と接触させることにより、水の凍結温度を約-2℃まで上昇させることができる。
本発明により、水および含水物を従来よりも少ない冷却エネルギーを用いて凍結させることが可能になる。本発明のポリペプチド固定化担体および不凍タンパク質固定化担体は、製氷漕、製氷皿、ラッピング用フィルム等としての利用が期待され、これらを用いれば、たとえば冷凍庫の温度を従来のように-20℃〜-196℃まで冷却する必要がなくなり、大幅なエネルギーコストの削減が期待できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
(1)天然不凍タンパク質の調製
魚類由来III型不凍タンパク質(AFP)を特開2004-083546公報に記載の方法により、ナガガジ属魚類(ナガガジ:Zoarces elongatus Kner)の魚体すり身から調製した。用いた魚類由来III型不凍タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)および該不凍タンパク質をコードするDNAの塩基配列(配列番号1)を配列表に示す。
(2)システインを導入した不凍タンパク質(Cys-AFP)の調製
(a)発現ベクターの構築
魚類由来III型不凍タンパク質(AFP)のアミノ末端6アミノ酸をコードし、さらに開始コドン(ATG)の直後にCysのコドン(TGC)を挿入したDNAプライマーと不凍タンパク質のカルボキシ末端及び終止コドンをコードするDNAプライマーを化学合成した。次に、合成したこれらのプライマーを用いて不凍タンパク質をコードするDNAを鋳型としてPCRを行った。増幅されたDNA断片をNde IとXho Iで制限酵素消化し、同酵素で消化したpET20bベクターに組込んだ(pETCys-AFP)。魚類由来のIII型不凍タンパク質のアミノ末端へシステインを導入するためのDNAの塩基配列(配列番号3)とそれによって発現されるアミノ酸
配列(配列番号4)を配列表に示す。
(b)大腸菌によるCys-AFPの発現
プラスミドpETCys-AFPで大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。プラスミドpETCys-AFPにはアンピシリン耐性遺伝子が導入されているため、アンピシリン100μg/ml含有LB寒天培地に大腸菌を広げ、一晩28℃でインキュベートすることで形質転換体を選択した。形成されたコロニーの一つを100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地2 mlに植え28℃で一晩培養した。この培養液を100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地100 mlに植え継ぎし、さらに28℃で一晩培養した。100 mlの培養液のうち20 mlを100μg/mlのアンピシリンを含んだLB培地2000 mlに植え継ぎし、波長600 nmの吸光度で大腸菌の増殖度をモニターしながら28℃で培養した。波長600 nmの吸光度が0.5になったところでイソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシドを終濃度0.5 mM になるように加えることによりCys-AFPの発現を誘導し、さらに8時間培養を行った。
(c)Cys-AFPの精製
培養液を3600 × g、4℃で15分遠心分離し、菌体を回収した。菌体を10 mM トリス-塩酸緩衝液 / 1mM エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム (pH 8.0) (TE緩衝液)に縣濁し、氷中で超音波破砕した。これを11900 × g、4℃で30分遠心分離し、可溶性画分と不溶性画分に分離した。可溶性画分を50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 2.9)に対して透析し、溶液の置換を行った。透析によって生じた沈殿は11900 × g、4℃で30分遠心分離することで除去し、上澄み液を回収した。上澄み液からのCys-AFPの精製には50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 2.9)で平衡化したHigh−Sカラム(BIO-RAD)を接続したDUO Flowシステム(BIO-RAD)を用いた。まず、上澄み液をカラムに通した後、カラム体積の3倍量の緩衝液A、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 2.9)でカラムを洗浄した。次に一定の割合で緩衝液B、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液1M塩化ナトリウム(pH 2.9)の混合比率を増加させながら緩衝液Aをカラムに通しCys-AFPの溶出を行った。Cys-AFPの溶出は波長280nmおよび214 nmの吸光度で検出し、溶出Cys-AFPをフラクションコレクターで回収した。精製操作は常に4℃のチャンバー内で行い、流速は1ml/min、1フラクションあたりの回収量は1 mlとした。
(d)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
一般的な手順に従い、電気泳動装置 (ATTO) 用いて精製したCys-AFPを15% ポリアクリ
ルアミドゲルで泳動した。分子量測定のため、broad range SDS-PAGE standard (BIO-RAD) を同時に泳動した。サンプル緩衝液は、0.065 M トリス-塩酸緩衝液 (pH6.8) / 2 % ドデシル硫酸ナトリウム / 10 % ショ糖 / 5 % β-メルカプトエタノール / 0.001 % ブロモフェノールブルーを用いた。濃縮ゲルは0.5 M トリス-塩酸緩衝液 (pH 6.8) 0.75 ml、30 % アクリルアミド / ビス (37.5 : 1) 混合液 0.45 ml、10 % ドデシル硫酸ナトリウム 0.12 ml、蒸留水1.78 mlを混合して作製し、分離ゲルは1.5 M トリス-塩酸緩衝液 (pH8.8) 2.25 ml、30% アクリルアミド / ビス (37.5 : 1) 混合液 4.5 ml、10 % ドデシル硫酸ナトリウム 0.36 ml、蒸留水1.89 mlを混合して作製した。泳動用緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン 3.03g、グリシン 14.4g及びドデシル硫酸ナトリウム 1gを合計1 lの蒸留水中に溶解させたものを用いた。ゲルの染色はメタノール 20 ml、硫酸アンモニウム 12.5g、 リン酸 2.5ml、0.04 % クマシーブリリアントブルー G-250を100mlの蒸留水の溶液に溶かした染色液を用いて一晩行い、蒸留水で脱染色した。分子量 7 KDa のCys-AFPとその二量体のそれぞれ単一のバンドが観測され純度高く精製されているのが確認できた。
(3)不凍活性の測定
(1)で調製した天然AFPおよび(2)で調製したCys-AFPを50mM リン酸緩衝液 / 0.05M NaCl水溶液(pH6.0)に対して透析し、緩衝液置換を行った後に1mg/mlになるまで限外濾過により濃縮を行った。なお、注目する検体液が不凍活性を有するか否かの評価は、低温顕微鏡下でのバイピラミッド型氷結晶観察実験をすることで1μlの液に対してでも実施できる。
上記のように調製した試料溶液1μlをライカ社製DMLB100型顕微鏡(Leica DMLB 100 photomicroscope)の直径16mmのカバーガラス上に滴下した。これをそのままもう1枚の直径12.5mmのカバーガラスによりはさみ、これをDMLB100型顕微鏡のステージ部に設置した冷却箱内にセットした。冷却箱の上下には直径1mmの光取り入れ穴をあけ、顕微鏡光源からの光は下側の穴から箱内を通り上側の穴を抜けてレンズに入光させるようにした。この上下の穴により規定される光軸上に検体液をセットすることで、光軸上にある検体液中の物質を顕微鏡観察することができる。検体液がセットされた冷却箱の中の温度は、リンカム社製LK600温度制御装置(Linkam LK600 temperature controller)により+/-0.1℃の誤差で制御される。室温下で検体液をセットした後、温度制御装置により冷却箱内の温度を毎秒0.2℃で-22℃まで下降させた。およそ-14℃から-22℃の間の温度のどこかで検体液の全体が凍結する。凍結の後に毎秒0.2℃で冷却箱内温度を上昇させ零度℃で上昇を停止し、そのまま1〜10秒程度の間、-3℃を維持していると凍結が溶け、無数のきれつの入った氷結晶状態を経たのちに、氷結晶が水中に浮かんだものが観測された。その瞬間に、冷却箱内の温度を-2℃〜3℃程度に下降させて止め、氷結晶の形状を観察した。試験に使用した天然AFPおよびCys-AFPにおいてバイピラミッド型の氷晶が観察され、これらのタンパク質は不凍活性を有することを確認した。
(4)金基板上への配向固定化
(a)天然AFPの固定化
シリコンウェーハ(111)上に金を500Åの厚さで蒸着した金薄膜基板を、0.1 mMのメルカプトプロピオン酸のエタノール溶液に一晩浸漬し、メルカプトプロピオン酸のチオール基と金との結合を利用してプロピオン酸基を露出させた界面を作製した。この界面上のプロピオン酸のカルボキシル基を2mMのカルボジイミドおよび5mMのスクシンイミド混合溶液(100 mMリン酸緩衝液(pH7.0))に25℃で1時間浸漬することで活性化した後、天然AFP溶液(10 mMリン酸緩衝液(pH 8.0))に4℃で一晩浸漬し、天然AFPのアミノ基、すなわち最も溶媒中に露出され反応性が高いと考えられるN末端のアミノ基、と活性化カルボキシル基のペプチド縮合を利用して不凍タンパク質を金薄膜に固定化した。
(b)Cys-AFPの固定化
シリコンウェーハ(111)上に金を500Åの厚さで蒸着した金薄膜基板を、0.1 mMのCys-AFPの溶液(50mM リン酸緩衝液 / 0.05M NaCl水溶液(pH6.0))に25℃で一晩浸漬し、システイン残基のチオール基と金との結合を利用して不凍タンパク質を金薄膜上に固定した。
(5)不凍タンパク質固定化表面の評価
本方法により作製された不凍タンパク質固定化担体の分析を、X線電子分光法、反射赤外分光法、表面増強赤外分光法、電気化学分析法、水晶振動子マイクロバランス(QCM)法により行った。
XPS分析において、固定化前後で窒素原子および炭素原子の量が大幅に増大していることが観測された。また、金−硫黄の結合に由来するシグナルの生成が観測された。電気化学分析およびQCM分析において、不凍タンパク質の固定化量が5×10-11mol/cm2程度(単分子膜レベル)と見積もられた。赤外分光測定において、amide I および amide II のシグナルから不凍タンパク質が配向固定されていることが示唆された。
以上から、不凍タンパク質の固定化量が確認されるとともに、不凍タンパク質がチオレート結合により、あるいはカルボキシル基を有するチオール化合物をスペーサーとしてペプチド結合により基板表面へ固定化され、不凍タンパク質の氷結晶結合部位が担体上で配向して集積固定化されていることが確認された(図1)。
(6)不凍タンパク質固定化担体の凍結促進活性評価実験
不凍タンパク質を固定化した基板の凍結促進活性を評価するために以下の実験を行った。
始めに、不凍タンパク質を固定化した基板(+AFP)と不凍タンパク質を固定化していない基板(-AFP)(図2参照)の上に2μlずつの蒸留水の水滴を静置した。次にそれらの基板を EYELA社製 低温域インキュベーター LTI-601SD の庫内に置いた温度計の上に静置し、その温度計の温度と2枚の基板が同時に視野に入るように、ファイバー型のビデオカメラを設置した。ビデオカメラには、OLYMPUS社製 iPLEX MX 型ビデオスコープシステムを用いた。このインキュベーターの温度を-10℃に設定して温度降下開始のスイッチを入れ、庫内の温度を室温から-10℃まで約0.7℃/分で降下させた。こうして2枚の基板上に静置した水滴が庫内の温度降下に伴って凍結して昇華する様子をVICTOR社製 DR-MX1 型録画システムを用いて録画し、その映像をスロースピードで再生し検討することによって、各々の水滴の凍結温度(凝固点)を決定した。図3に、この実験の再生画像の一部を示す。
Aは約4℃での画像、Bは約-3℃の画像、Cは約-9℃の画像である。この実験によって、+AFPの基板上にある水滴は-2.5℃で凍結し、-AFPの基板上にある水滴は-10℃で凍結することが判明した。以上の結果は、不凍タンパク質を固定化した基板は不凍タンパク質を固定化していない基板に比べて高い凍結促進活性をもつことを示している。
同様な実験を水滴が昇華しない条件下で行うと、不凍タンパク質を固定化した基板(+AFP)上にある水滴は-0.5℃から-2.5℃にかけて基板界面に接触した部分から徐々に凍結し、透明な氷となった。一方、不凍タンパク質を固定化していない基板(-AFP)上にある水滴は-11℃近傍で一瞬にして凍結し、白く濁った氷となった。
本発明者らは、不凍タンパク質の氷結晶結合部位と反対側に位置する特定のアミノ酸を担体と結合させた不凍タンパク質の配向固定化、すなわち氷結晶結合部位の集積化に成功した。そして、この集積化した氷結晶結合部位が非常に高い氷核活性および凍結促進活性を発揮することを見出した。
製造業、加工業、冷凍業、製氷業、蓄熱業、食品・細胞・臓器保存技術、人工降雪・降雨技術などに対する本発明の利用が期待される。
本発明の不凍タンパク質固定化担体の構造を示す概略図である。 シリコンウェーハ(111)上に金を500Åの厚さで蒸着した金薄膜基板(左:AFP未処理)とその上にCys-AFPを固定化した基板(右:AFP固定化基板)を示した図である。 図2のAFP未処理およびAFP固定化基板に2μlの水滴を静置し、温度を室温から-10℃まで約0.7℃/分の速度で変化させたときに、水が凍結・昇華する様子を示した連続画像の一部である。Aは約4℃での画像、Bは約-3℃の画像、Cは約-9℃の画像である。

Claims (8)

  1. 不凍タンパク質が担体上に集積して固定化されている、不凍タンパク質固定化担体であって、該不凍タンパク質が、その氷結晶結合部位が露出するように配向されて担体上に固定化されている、上記不凍タンパク質固定化担体
  2. 不凍タンパク質が、その氷結晶結合部位が平面構造を形成しているものである、請求項記載の不凍タンパク質固定化担体。
  3. 不凍タンパク質がIII型不凍タンパク質である、請求項1または2記載の不凍タンパク質固定化担体。
  4. 不凍タンパク質がシステインを導入した不凍タンパク質であり、該システイン導入不凍タンパク質が該システインのチオール基を介して担体に固定化されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の不凍タンパク質固定化担体。
  5. 不凍タンパク質が、1×10-13〜1×10-9mol/cm2の量で固定化されている、請求項1〜4のいずれか1項記載の不凍タンパク質固定化担体。
  6. 求項1〜5のいずれか1項記載の不凍タンパク質固定化担体と水または含水物とを接触させることにより、該水または含水物の凍結を促進する方法。
  7. 求項1〜5のいずれか1項記載の不凍タンパク質固定化担体と水または含水物とを接触させることにより、該水または含水物に含まれる気体を除去しながら該水または含水物を凍結する方法。
  8. 求項1〜5のいずれか1項記載の不凍タンパク質固定化担体と含水物とを接触させることにより、該含水物の水以外の成分を濃縮しながら水成分を凍結する方法。
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