以下添付図面を用いて本発明の実施形態を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、その前に、従来のディスク装置におけるヘッドスライダの問題点を図面を用いて説明する。
図1は従来の磁気ディスク装置10の一般的な構成を示すものである。磁気ディスク装置10は、その筐体11の中に、スピンドルモータ12が設けられており、このスピンドルモータ12には少なくとも1枚のディスク媒体13が取り付けられている。磁気ディスク媒体13はデータを記録するものであり、ディスク媒体13上に記録されたデータの読み取り、或いは、ディスク媒体13上へのデータの書き込みはヘッドスライダ1に取り付けられたヘッドよって行われる。ヘッドスライダ1の数はディスク媒体13の枚数に対応している。
ヘッドスライダ1はヘッドサスペンション14に支持されており、ディスク媒体13の上を矢印で示すディスクの半径方向に移動できるようになっている。ヘッドスライダ1にあるヘッドがディスク媒体13からデータを読み出す、或いは、データをディスク媒体13に書き込む動作を行う時には、ヘッドスライダ1はディスク媒体13から浮上した状態でこの動作を行う。ヘッドサスペンション14は回転軸15を中心にして揺動可能なキャリッジ16に取り付けられている。キャリッジ16のヘッドサスペンション14の取付側と反対側にはコイルが設けられており、このコイルはボイスコイルモータ17によって駆動されるようになっている。
図2A,2Bは図1で説明したような磁気ディスク装置10に使用される従来のヘッドスライダ1の底面側の構成を示すものである。ヘッドスライダ1はスライダベース2にヘッドユニット3が取り付けられて構成されている。スライダベース2はフェライト等から構成されている。また、ヘッドユニット3に設けられるヘッド4は、この実施例では、GMRヘッドとインダクティブヘッドとからなる複合ヘッドである。
スライダベース2のディスク媒体に対向する面には、ディスク媒体が回転した時の空気の流入側に略門型の第1のランド部21が設けられており、空気の流出側に第2と第3のランド部22,23が設けられている。第1から第3のランド部21〜23のディスク媒体に対向する面(以後端面と記す)のスライダベース2からの高さは同じである。また、第1のランド部21の端面には第1のエアベアリング部31が設けられており、第2のランド部22の端面には第2のエアベアリング部32が設けられており、第3のランド部23の端面には第3のエアベアリング部33が設けられている。第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面は平坦であり、スライダベース2からの高さは全て同じである。更に、第1のランド部21の四隅にはそれぞれパッド5が突設されている。これら4本のパッド5は、回転を停止したディスク媒体の上にヘッドスライダ1が静止した時の、ヘッドスライダ1とディスク媒体との間の静止摩擦力を小さくするためのものである。従って、4本のパッド5の高さは全て等しい。
ヘッドユニット3は、スライダベース2に重ね合わされるベース部3Bと、このベース部3Bの上に設けられて、第2のランド部22と第2のエアベアリング部32に大部分が重ね合わされるヘッド部6と、第3のランド部23と第3のエアベアリング部33に大部分が重ね合わされるダミーヘッド部7とから構成される。ヘッド部6とダミーヘッド部7の端面は平坦ではあるが、それぞれ第2のエアベアリング部32の端面と第3のエアベアリング部33の端面よりも一段低くなっている。
従来のヘッドスライダ1では、第1のエアベアリング部31、第2のエアベアリング部32、及び、第3のエアベアリング部33の端面のみに、撥水処理が施されていた。
しかしながら、従来はヘッドスライダ1のディスク媒体からの浮上量を小さくするために、ヘッドスライダ1の浮上時に、第1から第3のランド部21〜23に囲まれた領域のスライダベース2の表面は空気の流れにより負圧発生領域となっており、この負圧発生領域には撥水処理が施されていなかったので塵埃が付着し易いという問題点があった。即ち、磁気ディスク装置内でのヘッドスライダのCSS(コンタクト・スタート・ストップ)やシークに伴い、ヘッドスライダの負圧発生領域に液体潤滑剤などによる汚れが付着、堆積して付着物が許容量を超えると、付着物がディスク媒体面に落下し、ヘッドクラッシュのひき金となる場合があるという問題点があった。
図3A,3Bは本発明の第1の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ111を示すものである。この実施例のヘッドスライダ111には、そのスライダベース50のディスク媒体に対向する面(端面)58の両側近傍に2本の浮上レール51,52が設けられており、空気の流入側の浮上レール51,52の間にランド部53が設けられている。浮上レール51,52およびランド部53のスライダベース50からの高さは同じであり、端面は平坦である。そして、浮上レール51,52およびランド部53の端面には従来のヘッドスライダと同様に撥水処理が施されている。また、浮上レール51,52の上には長円柱状のパッド54と円柱状のパッド55がそれぞれ設けられている。更に、浮上レール51の空気の流出側にはヘッド部56が設けられており、浮上レール52の空気の流出側にはダミーヘッド部57が設けられている。
以上のように構成された本発明の第1の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ111では、スライダベース50の端面58の網点で示す領域(浮上レール51,52およびランド部53を除く領域)に撥水処理が施されている。そして、この撥水処理により、スライダベース50の端面58の撥水性は、浮上レール51,52およびランド部53の端面が備える撥水性よりも高められている。即ち、スライダベース50の端面58は浮上レール51,52およびランド部53の端面における撥水性よりも高い撥水性を備えている。
このように、スライダベース50の端面58に浮上レール51,52およびランド部53の端面における撥水性よりも高い撥水性を与えておくと、ヘッドスライダ111の浮上時にスライダベース50の端面58が負圧になり、浮遊する液体状の潤滑剤が空気の流れの乗ってスライダベース50の端面58に導かれた場合でも、この撥水性により潤滑剤のスライダベース50の端面58への付着が防止される。
図4A,4Bは本発明の第1の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ112を示すものである。この実施例のヘッドスライダ112の構成は、見た目は図2で説明した従来のヘッドスライダ1と全く同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。この実施例のヘッドスライダ112の第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面には、従来と同様に撥水処理が施されている。
以上のように構成された本発明の第1の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ112では、第1から第3のランド部21〜23の端面18と、スライダベース2の端面28(第1から第3のエアベアリング部31〜33を除く領域)に網点で示すように撥水処理が施されている。そして、この撥水処理により、第1から第3のランド部21〜23の端面18とスライダベース2の端面28の撥水性は、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面が備える撥水性よりも高められている。即ち、第1から第3のランド部21〜23の端面18とスライダベース2の端面28は、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面における撥水性よりも高い撥水性を備えている。
このように、第1から第3のランド部21〜23の端面18とスライダベース2の端面28に、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面における撥水性よりも高い撥水性を与えておくと、ヘッドスライダ112の浮上時にスライダベース2の端面28が負圧になり、浮遊する液体状の潤滑剤が空気の流れに乗ってスライダベース2の端面28に導かれた場合でも、この撥水性により潤滑剤の第1から第3のランド部21〜23の端面18とスライダベース2の端面28への付着が防止される。
図5A,5Bは本発明の第2の実施形態の一実施例のヘッドスライダ120の構成を示すものである。この実施例のヘッドスライダ120の構成は、見た目は図2A,2Bで説明した従来のヘッドスライダ1と全く同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。この実施例のヘッドスライダ120の第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面には、従来と同様に撥水処理が施されている。
以上のように構成された本発明の第2の実施形態のヘッドスライダ120では、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と同様に、第1から第3のランド部21〜23の端面18と、スライダベース2の端面28に撥水処理が施されている。
第2の実施形態のヘッドスライダ120が、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と異なる点は、撥水処理により、第1から第3のランド部21〜23の端面18の撥水性が、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面が備える撥水性よりも高められており、更に、スライダベース2の端面28の撥水性が、第1から第3のランド部21〜23の端面18の撥水性よりも高められている点である。即ち、第2の実施形態のヘッドスライダ120における撥水性は、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面、第1から第3のランド部21〜23の端面18、及び、スライダベース2の端面28の順に高められている。即ち、第2の実施形態のヘッドスライダ120では、スライダベース2の端面28の撥水性が最も高くなっている。
このように、スライダベース2の端面28に最も高い撥水性を与えておくと、ヘッドスライダ120の浮上時にスライダベース2の端面28が負圧になり、浮遊する液体状の潤滑剤が空気の流れに乗ってスライダベース2の端面28に導かれた場合でも、この高い撥水性により潤滑剤のスライダベース2の端面28への付着が一層防止される。
図6Aは本発明の第3の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ131の構成を示すものであり、図6Bは本発明の第3の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ132の構成を示すものである。第3の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ131は、第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111と撥水処理の施し方が異なるだけで、その他の構成は同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。また、第3の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ132は、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と撥水処理の施し方が異なるだけで、その他の構成は同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
第3の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ131が、第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111と異なる点は、撥水処理の強度に変化を付けた点である。第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111ではスライダベース50の端面58に均一に撥水処理が施されている。一方、第3の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ131では、スライダベース50の端面58が3つの領域に分けられ、空気の流入側から領域58A,領域58B,及び領域58Cになっている。3つの領域58A,58B,及び58Cの境界線は空気の流れに対して直角方向である。そして、撥水性の強さの順序が、
浮上レール51,52<領域58C<領域58B<領域58A
のようになっている。
この撥水処理により、スライダベース50の端面58の撥水性は空気の流入側が最も高くなっている。即ち、スライダベース50の端面58の最も潤滑油が付着し易い領域の撥水性が最も高くなっている。この結果、スライダベース50の端面58への潤滑油の付着の防止効果が大きくなる。
第3の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ132が、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と異なる点は、撥水処理の強度に変化を付けた点である。第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111ではスライダベース2の端面28に均一に撥水処理が施されている。一方、第3の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ132では、スライダベース2の端面28が3つの領域に分けられ、空気の流入側から領域28A,領域28B,及び領域28Cになっている。3つの領域28A,28B,及び28Cの境界線は空気の流れに対して直角方向である。そして、撥水性の強さの順序が、
エアベアリング部31〜33<領域28C<領域28B<領域28A
のようになっている。
第1から第3のランド部21〜23の端面18の撥水性は、領域28Cの撥水性と同等とするか、或いは、エアベアリング部31〜33の撥水性と領域28Cの撥水性の中間値とすれば良い。
この撥水処理により、スライダベース2の端面28の撥水性は空気の流入側が最も高くなっている。即ち、スライダベース2の端面28の最も潤滑油が付着し易い領域の撥水性が最も高くなっている。この結果、スライダベース2の端面28への潤滑油の付着の防止効果が大きくなる。
図7Aは本発明の第4の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ141の構成を示すものである。第4の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ141は、第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111と撥水処理の施し方が異なるだけで、その他の構成は同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
第4の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ141が、第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111と異なる点は、撥水処理の強度に変化を付けた点である。第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111ではスライダベース50の端面58に均一に撥水処理が施されている。一方、第4の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ141では、スライダベース50の端面58の浮上レール51,52に挟まれた領域58Mにおける撥水性が、ヘッドスライダ141の浮上時にこの領域に発生する負圧分布に応じて変更されている点である。
図7Bはヘッドスライダ141がCSSゾーンにおいて、ディスク媒体が定常回転している状態で浮上している時に、スライダベース50の端面58の浮上レール51,52に挟まれた領域58Mに発生する負圧分布を示すものである。領域58Mに発生する負圧はランド部53の下流側が最も大きく、ここから上流に向かうほど、或いは、下流に向かうほど小さくなっている。
よって、第4の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ141では、スライダベース50の端面58の浮上レール51,52に挟まれた領域58Mに発生する負圧が大きい部位ほど、撥水性が高くなっている。この場合、領域58Mに発生する負圧が最も小さい部位の撥水性、及び、浮上レール51,52の外側に位置するスライダベース50の端面58の撥水性は、浮上レール51,52の端面の撥水性と同等以上とすれば良い。
この撥水処理により、スライダベース50の端面58の撥水性は、ここに発生する負圧の大きさに応じて、負圧が大きい部位ほど撥水性が高くなっている。即ち、スライダベース50の端面58の最も潤滑油が付着し易い領域の撥水性が最も高くなっている。この結果、スライダベース50の端面58への潤滑油の付着の防止効果が大きくなる。
図8Aは本発明の第4の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ142の構成を示すものである。第4の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ142は、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と撥水処理の施し方が異なるだけで、その他の構成は同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
第4の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ142が、第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112と異なる点は、撥水処理の強度に変化を付けた点である。第1の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ112ではスライダベース2の端面28に均一に撥水処理が施されている。一方、第4の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ142では、スライダベース2の端面28の第1のランド部21の下流側の負圧発生領域28Mにおける撥水性が、ヘッドスライダ142の浮上時にこの領域に発生する負圧分布に応じて変更されている点である。
図8Bはヘッドスライダ142がCSSゾーンにおいて、ディスク媒体が定常回転している状態で浮上している時に、スライダベース2の端面28の第1のランド部21の下流側の負圧発生領域28Mに発生する負圧分布を示すものである。領域28Mに発生する負圧は第1のランド部21の近傍の下流側が最も大きく、ここから下流に向かうほど小さくなっている。
よって、第4の実施形態の第2の実施例のヘッドスライダ142では、スライダベース2の端面28の第1のランド部21の下流側の負圧発生領域28Mに発生する負圧が大きい部位ほど、撥水性が高くなっている。この場合、領域28Mに発生する負圧が最も小さい部位の撥水性、第1から第3のランド部21から23の外側に位置するスライダベース2の端面28の撥水性、及び、第1から第3のランド部21〜23の端面18の撥水性は、第1から第3のエアベアリング部31〜33の端面の撥水性と同等以上とすれば良い。
この撥水処理により、スライダベース2の端面28の撥水性は、ここに発生する負圧の大きさに応じて、負圧が大きい部位ほど撥水性が高くなっている。即ち、スライダベース2の端面28の最も潤滑油が付着し易い領域の撥水性が最も高くなっている。この結果、スライダベース2の端面28への潤滑油の付着の防止効果が大きくなる。
図9Aは本発明の第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151の構成を示すものである。第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151は、第1の実施形態の第1の実施例のヘッドスライダ111の空気の流出側に多孔質の高分子部材59を設けた点が異なるだけで、その他の構成は同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151では、多孔質の高分子部材59は、スライダベース50の空気の流出側の端面に取り付けられている。ヘッドスライダ151では、浮上レール51,52に挟まれた端面58には撥水処理が施されており、端面58は撥水性を有する。このため、端面を空気と共に流れるゴミ(液体潤滑剤)は、端面58に付着することなく端面58上を流れ、スライダベース50の空気の流出端から流れ出る。このゴミはそのままディスク媒体上に拡散させても良いが、これを強制的にトラップすれば、ゴミがディスク媒体上に付着しない。多孔質の高分子部材59はこのゴミを吸着してディスク媒体上に拡散させないためのものである。
図9Bは本発明の第5の実施形態における第2の実施例のヘッドスライダ152の構成を示すものである。この実施例は、多孔質の高分子部材59が、スライダベース50の空気の流出側の端面をスライダベース50の厚さ方向に除去した凹部内に収容されている点のみが、第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151と異なる。その他の構成は第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
図9Cは本発明の第5の実施形態における第3の実施例のヘッドスライダ153の構成を示すものである。この実施例では多孔質の高分子部材59が、スライダベース50の空気の流出側の表面を、スライダベース50の空気の流出側から流入側に向かって除去した凹部内に収容されている点のみが、第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151と異なる。その他の構成は第5の実施形態における第1の実施例のヘッドスライダ151と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
このように、スライダベース50の空気の流出端側に多孔質の高分子部材59を設けることにより、撥水性を有するスライダベース50の端面58に付着することなくスライダベース50の空気の流出端から流れ出るゴミが、多孔質の高分子部材59に強制的にトラップされるので、ゴミがディスク媒体上に付着しなくなり、ゴミとヘッドスライダとの接触が防止されてヘッドクラッシュが生じにくくなる。
なお、この多孔質の高分子部材59は前述の第1から第4の実施形態のヘッドスライダの全てに取り付けが可能であり、取り付けることにより、ゴミとヘッドスライダとの接触が防止されてヘッドクラッシュが生じにくくなる。
以上説明した第1から第6の実施形態は、ヘッドスライダの端面に撥水性を与えてヘッドスライダに潤滑剤等のゴミが付着しないようにするものであった。次に説明する第7から第15の実施形態は、第1から第6の実施形態におけるヘッドスライダ2に設けられている第1のエアベアリング部31を改良することにより、スライダベース2の端面28への空気の流れを改良し、端面28へのゴミの付着を更に低減しようとするものである。
なお、第7から第15の実施形態におけるヘッドスライダの基本的な構成は、第1のエアベアリング部31の形状を除いて図2A,2Bで説明した従来のヘッドスライダ1と全く同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。また、第7から第15の実施形態においても、前述の実施形態と同様に、第1から第3のランド部21〜23の端面18やスライダベース2の端面28等に撥水処理を施すことが可能であるが、撥水処理の実施形態については既に説明してあるので、ここでは撥水性に関しては説明を省略する。
図10A,10Bは本発明の第6の実施形態のヘッドスライダ160の構成を示すものである。この実施形態のヘッドスライダ160では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ160の長手方向に斜めにカットされて通風溝60が形成されている。この実施形態の通風溝60は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝60の対向する側面は平行になっている。この通風溝60の側壁の傾斜角度はヘッドスライダ160がディスク媒体の特定位置、例えば、CSSゾーン、にある時の空気の流入方向に合わせると良い。
図11は本発明の第7の実施形態のヘッドスライダ170の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ170の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ170では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ170の長手方向に沿ってカットされて通風溝61が形成されている。この実施形態の通風溝61は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝61の対向する側面は平行になっている。
図12は本発明の第8の実施形態のヘッドスライダ180の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ180の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ180では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ180の長手方向に沿ってカットされて通風溝62が形成されている。この実施形態の通風溝62は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達しない深さまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝62の対向する側面は平行になっている。第8の実施形態のヘッドスライダ180は第7の実施形態のヘッドスライダ170の通風溝61の溝の深さを浅くしたものである。
図13は本発明の第9の実施形態のヘッドスライダ190の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ190の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ190では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ190の長手方向に沿ってカットされて通風溝63が形成されている。この実施形態の通風溝63は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達しない深さまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝63の対向する側面は平行になっている。第9の実施形態のヘッドスライダ190は第8の実施形態のヘッドスライダ180の通風溝62の溝の深さを、空気の流れる方向に沿って次第に深くしたものである。
図14は本発明の第10の実施形態のヘッドスライダ200の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ200の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ200では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ200の長手方向に末広がりになるようにカットされて通風溝64が形成されている。この実施形態の通風溝64は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝64の側面と側面の幅は空気の流れる方向に次第に直線的に広がるようになっている。
図15は本発明の第11の実施形態のヘッドスライダ210の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ210の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ210では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ200の長手方向に末広がりになるように湾曲状にカットされて通風溝65が形成されている。この実施形態の通風溝65は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝65の側面と側面の幅は空気の流れる方向に次第に滑らかに広がるようになっている。
図16は本発明の第12の実施形態のヘッドスライダ220の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ220の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ220では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ220の長手方向に先細りになるようにカットされて通風溝66が形成されている。この実施形態の通風溝66は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝66の側面と側面の幅は空気の流れる方向に次第に直線的に狭まるようになっている。
図17は本発明の第13の実施形態のヘッドスライダ230の構成と、この構成の根拠を示すものである。この実施形態のヘッドスライダ230では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ220の長手方向に末広がりになるようにカットされて通風溝67が形成されている。この実施形態の通風溝67は第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達するまで切り欠かれて形成されたものである。この実施形態の通風溝67の、ディスク媒体8の外周側の側面の形状は、ボイスコイルモータ17に駆動されるキャリッジ16がディスク媒体8の外周側に位置した時の空気の流れの方向Sに沿ったものである。また、この実施形態の通風溝67の、ディスク媒体8の内周側の側面の形状は、キャリッジ16がディスク媒体8の内周側に位置した時の空気の流れの方向Nに沿ったものである。
図18は本発明の第14の実施形態のヘッドスライダ240の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ240の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ240では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ240の長手方向に沿ってカットされて2つの通風溝68A,68Bが形成されている。この実施形態の通風溝68A,68Bは第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達する深さまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝68A,68Bの対向する側面はそれぞれ平行になっている。
図19は本発明の第15の実施形態のヘッドスライダ250の構成を部分的に示すものであり、ヘッドスライダ250の空気の流入側の要部のみが示されている。この実施形態のヘッドスライダ250では、第1のエアベアリング部31の中央部が、ヘッドスライダ250の長手方向に沿ってカットされて3つの通風溝69A,69B、及び69Cが形成されている。この実施形態の通風溝69A〜69Cは第1のエアベアリング部31が第1のランド部21の端面18に達する深さまで切り欠かれて形成されたものである。また、通風溝69A〜69Cの対向する側面はそれぞれ平行になっている。
以上第6から第15の実施形態のヘッドスライダの構成について説明したが、何れの実施形態のヘッドスライダにおいても、スライダベース2の端面28への空気の流入の流れを円滑にすることができ、この結果、端面28における空気の流れによる負圧効果を残しつつ、端面28へのゴミの付着を抑制でき、ヘッドスライダの吸着障害を有効に防止することができる。なお、本発明のヘッドスライダ2の第1のエアベアリング部31に形成する通風溝の形状はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図20は本発明のディスク装置におけるヘッドスライダ1の汚れを除去する清掃機構の構成を示すものである。清掃機構70は、ガイドバー71、ガイドスロープ73の設けられた保持部材72、モータ74の回転軸75に取り付けられた汚れ拭き取りローラ76から構成される。ガイドバー71は、キャリッジに保持されたヘッドサスペンション14に取り付けられたヘッドスライダ1の自由端部に突設されている。保持部材72はディスク媒体8の外周部の外側に位置しており、ディスク媒体側にスロープ73が設けられている。汚れ拭き取りローラ76は保持部材72の近傍に位置しており、ヘッドスライダ1が保持部材72によって固定された時にモータ74により回転駆動され、ヘッドスライダ1のスライダベース2の端面の汚れを落とす。モータ74と汚れ拭き取りローラ76は固定されたヘッドスライダ1に対して移動可能となっている。
以上のように構成されたヘッドスライダ1の清掃機構70の動作を図21のA〜Dを用いて説明する。図21のAはヘッドスライダ1がディスク媒体8上にあって、ディスク媒体8に対して読み書きを行っている状態を示すものである。この状態では汚れ拭き取りローラ76は回転していない。
この状態からヘッドスライダ1がディスク媒体8の外周方向に移動させられると、図21のBに示すように、ヘッドスライダ1に突設されたガイドバー71が保持部材72のガイドスロープ71に乗り上げる。この状態からヘッドスライダ1が更にディスク媒体8の外側方向に移動させられると、ヘッドスライダ1に突設されたガイドバー71が保持部材72の平坦部に乗り上がり、図21のCに示す状態となる。この状態をディスク媒体8の外側から見た状態が図21のDである。図21のC,Dに示される位置がヘッドスライダ1の端面の清掃位置である。
このようにしてヘッドスライダ1が保持部材72によって保持されると、モータ74と汚れ拭き取りローラ76が移動し、汚れ拭き取りローラ76がヘッドスライダ1の端面に接触すると、モータ74により汚れ拭き取りローラ76が回転する。そして、汚れ拭き取りローラ76を図21のDに矢印Tで示される方向に移動させれば、ヘッドスライダ1の端面が清掃位置において汚れ拭き取りローラ76により清掃される。
次に、本発明の第1から第5の実施形態において説明したヘッドスライダの端面への撥水処理方法について説明する。
ところで、前述の実施例からも分かるように、ヘッドスライダとディスク媒体との間の静止摩擦力を低減するために設けられるパッドは、ヘッドスライダの空気の流入側に多く設けられているが、空気の流出側に関しては設けられていないことが多い。このような場合、ヘッドスライダの端面がディスク媒体と接触することがある。そうした時に、ヘッドスライダの端面とディスク媒体との間に潤滑剤が入り込んで架橋を引き起こし、ヘッドスライダがディスク媒体に吸着するおそれがある。この障害をなくすために、ヘッドスライダの端面に設けられた保護膜(DLC(ダイアモンドライクカーボン))の一部を削り取って溝部を形成することがある。この溝部により、ディスク媒体が逆回転してヘッドスライダがディスク媒体に吸着した場合でも、潤滑剤のヘッドスライダの端面への付着が抑制され、ヘッドスライダのディスク媒体への吸着が防止される。
本発明の撥水処理方法は、このように保護膜(以後DLCと記す)の表面に溝を形成したヘッドスライダ1に対しても有効であり、DLCの表面に溝を形成しないヘッドスライダ1に対しても有効である。
そこでまず、DLCの表面に溝を形成するヘッドスライダ1の端面に対して撥水処理を施す従来方法と、本発明の方法を説明し、次いで、DLCの表面に溝を形成しないヘッドスライダ1の端面に対して撥水処理を施す従来方法と、本発明の方法を説明する。
図22は、DLC24の表面に溝を形成する場合の、ヘッドスライダの端面に撥水処理を施す従来の方法を段階的に説明する工程図である。なお、ここでは、図2A,2Bで説明したスライダベース2上にランド部21〜23(以後代表してランド20と記す)とエアベアリング部31〜33(以後代表してエアベアリング30と記す)とを備えたヘッドスライダ1の端面に撥水処理を施す方法について説明する。また、パッド5の形成プロセスについてはその図示と説明を省略してある。
ステップ1では、シリコン(Si)とDLCのパターニングが施されたアルチック(AlTiC)製のスライダベース2の表面に、レジストRをまず全面に塗り、上からメタルマスクをかけて露光し、必要な部分にレジストRを残す処理を行う。
ステップ2では、この状態でエッチングを行い、スライダベース2のレジストRが形成された部分以外の部分を一段凹ませる。このときのエッチングは酸素プラズマとCF4によるエッチングであり、DLC24のパターンを形成するものである。
ステップ3ではレジストRを剥離する。現れた領域は後述するエアベアリング30の表面と同じ高さの領域である。
ステップ4では、エアベアリング30を形成するために、エアベアリング30に対応する部分をレジストRで覆う、いわゆるレジストパターニングを行う。
ステップ5では、この状態でエッチングを行う。このエッチングはエアベアリング30を形成するためのものである。
ステップ6ではレジストを剥離し、エアベアリング30を露出させる。
ステップ7ではランド20を形成するために、ランド20に対応する部分をレジストRで覆うレジストパターニングを行う。
ステップ8ではこの状態でエッチングを行い、スライダベース2を更に一段窪ませる。
ステップ9ではレジストRを剥離する。残った部分がランド30となり、窪んだ部分がスライダベースの端面28となる。
ステップ10ではスライダベースの端面28に対して全面フッ化処理を行い、スライダベースの端面28に均一に低い撥水性を持たせる。この時のエッチングは、フッ素を含んだガスの雰囲気中でのアルゴンエッチングである。
以上のような処理によってスライダベースの端面28の全面にフッ素分子が僅かに残るので、従来のスライダベースの端面28は、全面に軽い撥水性を備えることになる。
次に、本発明の第1の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法を図23を用いて説明する。ここで説明する第1の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法は、図4で説明した本発明の第1の形態の第2の実施例のヘッドスライダ112の浮上面に、エアベアリング30とその他の部位で撥水性を異ならせた2段階の撥水処理を施す方法である。
なお、本発明の第1の実施形態のヘッドスライダ112の浮上面への撥水処理方法のうち、ステップ1からステップ4までの処理は図22で説明した従来の撥水処理方法と同じであるので、ステップ1からステップ4までの撥水処理の図示及び説明は省略する。
本発明の第1の実施形態のヘッドスライダ112の浮上面への撥水処理方法では、従来のステップ5におけるエッチングにおいて、同時にフッ化処理を行うステップ5′を実行する。この結果、ランド20になる部分の端面に撥水性を持つフッ化処理が施されることになる。
続いて、従来と同様にステップ6からステップ8を実行し、ステップ8におけるエッチングでスライダベース2を更に一段窪ませた後にステップXを行う。このステップXではフッ化処理を行う。この処理により、スライダベース2のレジストRで覆われていない部分に撥水性を持つフッ化処理が施される。この後、本発明の第1の実施形態のスライダベースの端面への撥水処理方法では、従来の撥水処理方法におけるステップ9とステップ10を行う。
このように、本発明の第1の実施形態のヘッドスライダ112の浮上面への撥水処理方法では、従来のステップ5に代わるステップ5′でフッ化処理が行われると共に、ステップ8とステップ9の間にフッ化処理を行うステップXが追加されている。この結果、ランド20はステップ5とステップ10においてフッ化処理を2度受け、スライダベースの端面28はステップXとステップ10においてフッ化処理を2度受けるので、両者の撥水性はエアベアリング30に比べて高くなる。
なお、従来のステップ5においてフッ化処理を行わなければ、スライダベースの端面28のみがランド20とエアベアリング30に比べて撥水性が高くなり、ステップ5′におけるフッ化処理よりもステップXにおけるフッ化処理を強くすれば、ヘッドスライダの浮上面における撥水性を、エアベアリング30、ランド20、スライダベースの端面28の順に高くすることができる。
今まではフッ化処理を行ってヘッドスライダの浮上面側全体に撥水性を施していたが、浮上面にはヘッド素子があり、フッ化処理を余り強くするとヘッド素子が壊れてしまう虞があった。よって、浮上面へのフッ化処理を余り強くできなかった。一方、本発明では、エアベアリング部とランド部の端面以外の浮上面の撥水性を上げたいので、ヘッド素子部分を含むエアベアリング部の端面や、エアベアリング部とランド部の端面をレジストで覆った状態で、その他の部分のフッ化処理を行う。この結果、ヘッド素子部分のフッ化処理は従来通り方法で1回で済むので、ヘッド素子が壊れる虞がない。
なお、図6Bや図8Aで説明した実施例のヘッドスライダ132や142のように、スライダベースの端面28に領域別に差を持たせて撥水処理を行う場合は、撥水性に差を持たせる段階に応じてレジストを施す回数を増せば良い。
次に、本発明の第2の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法を図24を用いて説明する。図24はヘッドスライダの端面に撥水処理を施す本発明の第2の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法を段階的に説明する工程図である。なお、ここでは、図4A,4Bで説明したヘッドスライダ112の浮上面にエアベアリング30とそれ以外の部位で撥水性に差をつけた2段の撥水処理を施す方法について説明する。また、パッド5の形成プロセスについてはその図示と説明を省略してある。
ステップAでは、Si(シリコン)とDLC(ダイアモンドライクカーボン)のパターニング24が施されたAlTiC(アルチック)製のスライダベース2の表面のエアベアリングを形成する部位にレジストをまず塗る。
ステップBではフッ素が入った反応性のエッチングガス、例えばCF4 、を使用してエッチングを行う。このエッチングは一般的にRIE(Reactive Ion-Etching)と呼ばれる。これによってエアベアリング30が形成されると共に、エアベアリング30以外の部位が撥水性を得ることになる。
ステップCではエアベアリング30のレジストを剥離する。
ステップDではエアベアリング30とランドとをカバーするようにレジストRをかける。このときDLCパターン24もレジストでカバーされる。
ステップEではエッチングによりランド20とスライダベースの端面28とを形成する。
ステップFではランド20とエアベアリング30のレジストRを剥離する。
ステップGではエアベアリング30の一部を除いて、エアベアリング30とランド20とをカバーするようにレジストRをかける、いわゆる、レジストパターニングを行う。
ステップHでは酸素プラズマとCF4エッチングを行う。このエッチングはフッ化処理を含む。このため、この時に同時にDLC24の一部分が削除されると共に、スライダベースの端面28にフッ化処理が施される。即ち、このエッチングがフッ化処理を同じ効果を有する。
ステップIではレジストを剥離する。
ステップJではヘッドスライダの浮上面全面に全面にフッ化処理を施す。
この結果、エアベアリング30の端面は、ステップJにおいてフッ化処理が1回施されるだけであるが、ランド20にはステップBとステップJにおいてフッ化処理が2回施され、スライダベースの端面28にはステップHとステップJにおいてフッ化処理が2回施される。よって、本発明の第2の実施形態の撥水処理方法により、ヘッドスライダの浮上面の撥水性が図4のヘッドスライダ112と同様になる。
このとき、ステップBにおいてフッ化処理を行わなければ、スライダベースの端面28のみがランド20とエアベアリング30に比べて撥水性が高くなり、ステップBにおけるフッ化処理よりもステップHにおけるフッ化処理を強くすれば、ヘッドスライダの浮上面における撥水性を、エアベアリング30、ランド20、スライダベースの端面28の順に高くすることができる。
なお、図6Bや図8Aで説明した実施例のヘッドスライダ132や142のように、スライダベースの端面28に領域別に差を持たせて撥水処理を行う場合は、撥水性に差を持たせる段階に応じてレジストを施す回数を増せば良い。
このような本発明の第2の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法によれば、ステップ1からステップ10まである10ステップの従来のスライダベースの端面への撥水処理方法と同じ、ステップAからステップJまでの10ステップでヘッドスライダの浮上面の撥水性に差を持たせることができる。また、スライダベースの端面における撥水性を領域別に変えるためには、スライダベースの端面に施すレジスト処理の回数を変化させ、一番強く撥水性を持たせたいところはレジストを掛けないでフッ化処理を行うようにすれば良い。
図25は、DLC24の表面に溝を形成しない場合の、ヘッドスライダの端面に撥水処理を施す従来の方法を段階的に説明する工程図である。DLC24の表面に溝を形成しない場合は、図22で説明した工程のステップ1とステップ2が不要であり、撥水処理はステップ3から開始される。
ステップ3ではスライダベース2の端面にDLC24を積層する。
ステップ4ではエアベアリング30に対応する部分をレジストRで覆うレジストパターニングを行う。
ステップ5ではエッチングを行ってエアベアリング30を形成する。
ステップ6ではレジストを剥離してエアベアリング30を露出させる。
ステップ7ではランド20に対応する部分をレジストRで覆うレジストパターニングを行う。
ステップ8ではエッチングを行い、スライダベース2を更に一段窪ませる。
ステップ9ではレジストRを剥離し、ランド30とスライダベースの端面28を形成する。
ステップ10ではスライダベースの端面28に対して全面フッ化処理を行い、スライダベースの端面28に均一に低い撥水性を持たせる。この時のエッチングは、フッ素を含んだガスの雰囲気中でのアルゴンエッチングである。
以上のような処理によって端面28の全面に軽い撥水性を備えた従来のスライダベース2が出来上がる。
ここで、DLC24の表面に溝を形成しない場合の、ヘッドスライダの端面に撥水処理を施す本発明の方法を図26を用いて説明する。ここで説明する本発明の撥水処理方法は、図23で説明した第1の実施形態におけるスライダベースの端面への撥水処理方法の変形実施例であり、本発明の第1の形態の第2の実施例のヘッドスライダ112の浮上面に、エアベアリング30とその他の部位で撥水性を異ならせた2段階の撥水処理を施す方法である。ここでも従来の撥水処理方法と同じステップには同じステップ番号を付して説明する。
ステップ3とステップ4の処理は図25で説明した従来の撥水処理方法と同じである。
ステップ5′では、従来のステップ5におけるエッチングにおいて、同時にフッ化処理を行うステップ5′を実行し、ランド20になる部分の端面に撥水性を持つフッ化処理を施す。
ステップ6〜ステップ8の処理は従来と同様である。
ステップ8に続くステップXではフッ化処理を行う。この処理により、スライダベース2のレジストRで覆われていない部分に撥水性を持つフッ化処理が施される。
ステップ9とステップ10の処理は従来の撥水処理方法と同じである。
このように、図26の撥水処理方法においても、図23で説明した本発明の第1の実施形態のヘッドスライダ112の浮上面への撥水処理方法と同様に、従来のステップ5に代わるステップ5′でフッ化処理を行うと共に、ステップ8とステップ9の間のステップXでフッ化処理を行う。この結果、ランド20はステップ5とステップ10においてフッ化処理を2度受け、スライダベースの端面28はステップXとステップ10においてフッ化処理を2度受けるので、両者の撥水性はエアベアリング30に比べて高くなる。よって、DLC24の表面に溝を形成しない場合にも本発明の方法は有効に適用できる。
なお、以上の実施形態では、スライダベースの上に2条の浮上レールとランド部が設けられたヘッドスライダの形態、及び、3つのエアベアリングと3つランドが設けられたものを説明したが、エアベアリングやランドの個数、及び形状は特に限定されるものではない。
以上述べた実施態様は、以下の付記の通りである。
(付記1)
ディスク媒体にアクセスするヘッドスライダのディスク媒体に対向する浮上面の空気の流入側に、スライダベースから段階的に段差を付けて形成された平坦な複数段のステップを備え、このステップの空気の流れの下流側の前記ディスク対向面に負圧領域が形成されるヘッドスライダであって、
前記スライダベースからの距離が最も大きい段のステップに、空気を前記負圧領域に導く少なくとも1つの溝が形成され、
この溝の深さは最大で次に距離が大きい段のステップの表面までとなっており、
前記ステップが第1のステップと、これより前記ディスク媒体に1段だけ近づく側に形成された第2のステップとからなり、
前記第1のステップの両端部が空気の流れの下流側に向かって延長されてレール部が形成され、
これらレール部の下流側に、更にスライダベースよりも段階的に離れるように形成された平坦な複数段のステップを備えたランド部がそれぞれ形成され、
これらランド部の最も前記ディスク媒体に近い位置にある第3のステップの前記スライダベースからの距離が前記第2のステップと同じであり、
前記第2と第3のステップに施された撥水性よりも、他の浮上面における撥水性が高められていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記2)
ディスク媒体にアクセスするヘッドスライダの浮上面に、この浮上面上に負圧領域を形成するためのランド部が少なくとも1個設けられており、このランド部はスライダベースよりも段階的にディスク媒体に近づくように形成された少なくとも1段の平坦なステップから構成されているヘッドスライダであって、
前記スライダベースからの距離が最も大きい位置にある前記ステップに施された撥水性よりも、他の浮上面における撥水性が高められていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記3)
付記1または2に記載のヘッドスライダにおいて、
前記他の浮上面における撥水性が、前記スライダベースに近づくにつれて高くなっていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記4)
付記1から3の何れか1項に記載のヘッドスライダにおいて、
前記スライダベースの表面の撥水性が、空気の流入側から流出側にかけて、流入側ほど撥水性が高く、流出側ほど撥水性が低くなっていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記5)
付記1から3の何れか1項に記載のヘッドスライダにおいて、
前記負圧発生領域における撥水性が、負圧力の高い領域ほど撥水性を高くなっていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記6)
付記5に記載のヘッドスライダにおいて、
前記負圧力の高い領域が、前記ディスク媒体が定常回転をしており、前記ヘッドスライダがCSSゾーンにおいて浮上している時の負圧発生領域となっていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記7)
付記1から6の何れか1項に記載のヘッドスライダにおいて、
前記ヘッドスライダの空気の流出側の端部に、多孔質の高分子層が設けられていることを特徴とするヘッドスライダ。
(付記8)
付記1から7の何れか1項に記載のヘッドスライダを使用したことを特徴とする磁気ディスク装置。
(付記9)
付記8に記載のディスク装置において、
前記ヘッドスライダが静止するCSSゾーンあるいはロード・アンロード領域の近傍に、前記ヘッドスライダを前記CSSゾーンあるいはロード・アンロード領域において固定し、前記ヘッドスライダの空気の流出側の端部に付着した汚れを拭き取るヘッド清掃機構が設けられていることを特徴とする磁気ディスク装置。
(付記10)
付記9に記載のディスク装置において、
前記ヘッド清掃機構が、前記ヘッドスライダの自由端側に設けたガイド突起と、前記ヘッドスライダが前記CSSゾーンあるいはロード・アンロード領域にきた時に前記ガイド突起を固定する固定部材と、前記ヘッドスライダが前記固定部材によって固定された位置において前記ヘッドスライダを清掃する汚れ除去部材、及び、前記汚れ除去部材を駆動するアクチュエータとから構成されていることを特徴とする磁気ディスク装置。
(付記11)
付記1又は2に記載のヘッドスライダの撥水処理方法であって、
フォトリソグラフィー技術を使用して前記ステップを形成する際に、イオンミルで前記負圧発生領域を形成した直後に、遮蔽用のレジストを残した状態で、フッソ系の反応ガスを用いたRIEで表面を撥水処理する方法。
(付記12)
付記1又は2に記載のヘッドスライダの撥水処理方法であって、前記ステップ上に保護膜を有し、フォトリソグラフィー技術を使用して前記保護膜の一部を除去するヘッドスライダにおいて、
フッ素系の反応ガスを用いたRIEで前記保護膜の一部を除去すると同時に、前記スライダベースからの距離が最も大きい段のステップ以外の部分を撥水性処理する方法。
(付記13)
付記12に記載のヘッドスライダの撥水処理方法であって、
保護膜が形成されたスライダベースの表面のエアベアリングを形成する部位にレジストを塗布するステップと、
フッ素が入ったエッチングガスを使用してエッチングを行い、エアベアリングを形成すると共に、エアベアリング以外の部位に撥水性を与えるステップと、
エアベアリングのレジストを剥離するステップと、
前記エアベアリングと前記スライダベース上のランドを形成する部位とをカバーするようにレジストを塗布するステップと、
エッチングによりランドとスライダベースの端面とを形成するステップと、
前記ランドと前記エアベアリングのレジストを剥離するステップと、
前記エアベアリングの一部を除いて、前記エアベアリングとランドとをカバーするレジストを塗布するステップと、
酸素プラズマとCF4エッチングによるフッ化処理を含むエッチングを行い、前記保護膜の一部分を削除すると共に、前記スライダベースの端面にフッ化処理を施すステップと、
レジストを剥離するステップ、及び、
ヘッドスライダの浮上面全面に全面にフッ化処理を施すステップと、を備えることを特徴とするヘッドスライダの撥水処理方法。