JP4270810B2 - チョップド炭素繊維束の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、補強材として用いられるチョップド炭素繊維束及びその製造方法に関するものである。また、チョップド炭素繊維束を製造する際に用いて好適なチョップド炭素繊維束用水系サイズ剤、並びに、チョップド炭素繊維束を用いた熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維束は補強材として知られ、これを配合した複合材は繊維強化複合材と称される。一般に、炭素繊維束には、その取り扱い性や複合材の物性を向上させることを目的に、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂等を主成分とするサイズ剤を付着させるサイズ処理が施されている。
一方、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化複合材用では、炭素繊維束は、通常5〜15mm長に切断されたチョップド炭素繊維束の形態で供されるが、チョップド炭素繊維束の形態とする際にも、集束性を付与するために、マトリクス樹脂に対して適合性のあるサイズ剤を2〜5質量%付着させる処理が行われている。例えば、特公昭55―23778号公報には、チョップドガラス繊維用サイズ剤として、特定のポリウレタンイオノマーが開示されており、チョップド炭素繊維束を製造する際のサイズ剤としても利用可能である。
以下、本明細書では、炭素繊維束を製造する際に用いるサイズ剤を「一次サイズ剤」、チョップド炭素繊維束を製造する際に用いるサイズ剤を「二次サイズ剤」と称す。
炭素繊維束には毛羽やフライが発生し易く、特にオフライン方式にて得られる炭素繊維束はバラケ易くその取り扱いが難しいことから、炭素繊維束にこれらサイズ剤を付着させることは不可欠である。
【0003】
ここで、チョップド炭素繊維束と熱可塑性樹脂とを混練しペレットを製造するに当たっては、チョップド炭素繊維束が定量的に押出機内に供されることが必要であるが、そのためにはチョップド炭素繊維束の形態安定性が重要である。形態が適切でないと、吐出斑が生じ、炭素繊維含有量斑の原因となり得る。また、一定の押出速度が得られなくなるため、ストランド切れが発生し、ペレットの生産性が大幅に低下する恐れもある。
【0004】
チョップド炭素繊維束の製造方法としては、連続方式も提案されているが(特開2001−214334号公報、特開2000−248432号公報等)、炭素繊維束を一旦ボビン等に巻取った後、巻出し切断するオフライン方式が一般的である。オフライン方式では、巻出した炭素繊維束に、熱可塑性樹脂に適合した二次サイズ剤を多量に付着させ、所定長さに切断した後、乾燥させることにより、製造が行われている(特開平5−261729号公報等)。また、製造するチョップド炭素繊維束の形状としては、ペレット製造時の定量吐出性に優れることから、製造方法によらず、偏平形状が好適であるとされている(特開2001−271230号公報等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
炭素繊維束の補強材としての性能と特性が広く認知されるにつれて、量産対応可能で安価な経済性に優れた炭素繊維束が求められるようになっている。炭素繊維束の量産を実現するには、設備当たり、あるいは時間当たりの製造能力向上が必要であるが、その一手段として炭素繊維束の太目付化が提案されている(特開2000−248432号公報等)。
【0006】
しかしながら、チョップド炭素繊維束に太目付化を適用しようとすると、以下のような不都合があった。
チョップド炭素繊維束では形態安定性が重要であることを述べたが、太目付になるにつれて、単位束の嵩が大きくなり、サイズ剤の付着の不均一化や束幅拡大による繊維配向に沿った割れ(以下、「繊維割れ」と称す。)が発生しやすくなり、束幅の均一なチョップド炭素繊維束を得ることが難しくなるという問題があった。また、切断工程での処理速度(搬送速度)を上げると、太目付になるにつれて、ガイドやバー等での毛羽発生、巻き付きが多発し、生産性が低下するという問題もあった。また、毛羽発生に起因して、複合化時の工程通過性が悪化する恐れもあった。
【0007】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、形態安定性に優れ、繊維強化複合材製造時の取り扱い性に優れ、経済性に優れたチョップド炭素繊維束を得ることが可能な手段を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく検討を行った結果、以下のチョップド炭素繊維束及びその製造方法、チョップド炭素繊維束用水系サイズ剤、並びに熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を発明するに到った。
【0009】
本発明の炭素繊維束は、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を付着乾燥させた炭素繊維束に対して、皮膜伸度が500%以上の水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有するサイズ剤を付着させてなり、前記炭素繊維束に対する成分(A)の付着量が0.1〜2.0質量%であると共に、前記サイズ剤中の成分(B)の配合量が70〜99質量%、成分(C)の配合量が1.0〜10質量%であり、成分(A)付着後の前記炭素繊維束に対する前記サイズ剤の付着量が1〜5質量%であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の炭素繊維束において、成分(B)の100%弾性率が120kgf/cm2以下であることが好ましい。
また、前記炭素繊維束の目付が0.8〜5g/mであると共に、切断時の繊維束幅/厚みが3〜10であることが好ましい。
【0011】
本発明のチョップド炭素繊維束の製造方法は、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を付着乾燥させた炭素繊維束に対して、皮膜伸度が500%以上の水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有する水系サイズ剤を付着させ、所定長さに切断した後、乾燥させるチョップド炭素繊維束の製造方法であって、前記炭素繊維束に対する成分(A)の付着量を0.1〜2.0質量%とすると共に、前記サイズ剤において、水以外の総成分量100質量%に対して、成分(B)の配合量を70〜99質量%、成分(C)の配合量を1.0〜10質量%とし、成分(A)付着後の前記炭素繊維束に対する前記サイズ剤の付着量を水以外の成分量で1〜5質量%とし、切断時の前記炭素繊維束の含水率を20〜50質量%とし、切断時の前記炭素繊維束の束幅/厚みを3〜10とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のチョップド炭素繊維束用水系サイズ剤は、皮膜伸度が500%以上の水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有すると共に、水以外の総成分量100質量%に対して、成分(B)の配合量が70〜99質量%、成分(C)の配合量が1.0〜10質量%であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、上記本発明のチョップド炭素繊維束とを配合してなり、チョップド炭素繊維束の配合量が5〜40質量%であることを特徴とする。また、本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
(チョップド炭素繊維束)
本発明のチョップド炭素繊維束は、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を付着乾燥させた炭素繊維束に対して、特定のポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有する水系サイズ剤を付着させ、所定長さに切断した後、乾燥させてなるものである。
【0015】
この本発明のチョップド炭素繊維束においては、「成分(A)」が一次サイズ剤の主成分、「水系サイズ剤」が二次サイズ剤に各々相当し、本発明では、2段階のサイズ処理を行ってチョップド炭素繊維束を得ることを特徴としている。また、本発明で用いる二次サイズ剤自体も新規なものである。
かつては炭素繊維束の製造時に付着させるサイズ剤としてチョップド炭素繊維束製造用のサイズ剤を用い、サイズ剤を1段階で付着させていたこともあったが、サイズ剤の必要性能が異なっていること、チョップド炭素繊維束製造用に合わせて、サイズ剤を変更しなければならないことなどから、サイズ剤を1段階で付着させるのではなく、予め一次サイズ剤を付着、乾燥させた後、チョップド炭素繊維束製造用の別の二次サイズ剤を付着させる2段階サイズ処理が好適である。ここで、一次サイズ剤は炭素繊維基質に影響を与えるものであり、二次サイズ剤は炭素繊維束集合体の凝集特性に影響を与えるものであり、本発明ではこれらサイズ剤として特定のものを用いることが特徴的なものとなっている。
【0016】
<一次サイズ処理工程>
炭素繊維束に一次サイズ剤を付着させる際には、付着量や付着方法、乾燥温度等を適宜選定し、均一に付着させることが重要である。なお、サイズ剤が均一に付着した状態というのは、光学式顕微鏡観察にて、炭素繊維束にサイズ剤が部分的に付着しているのではなく油膜状に均一に付着している状態を言う。
また、この工程においては、炭素繊維束ができるだけ開繊された状態でサイズ処理を行うことが均一付着の観点から好ましい。但し、後記するように切断時の束幅/厚みを3以上とすることが好ましいが、この段階における束幅/厚みは3以上である必要はない。また、サイズ処理時の炭素繊維束には実質的に撚りのないことが好ましい。
【0017】
本発明では、一次サイズ剤として、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を主成分とするサイズ剤を用いる。また、水分散性エポキシ樹脂を主成分とするサイズ剤を用いる場合には、乳化剤が添加されたものが好適である。
かかる一次サイズ剤は、炭素繊維基質との親和性や取り扱い性に優れ、少量で炭素繊維束を集束させることができることから、好適である。また、かかる一次サイズ剤で処理された炭素繊維束は、後の二次サイズ処理工程において、ボビンやケンス等からの取り出し性が良好である、ローラへの繊維束の巻き付きが発生しないなど、優れた工程通過性を有するものとなる。また、本発明で用いる二次サイズ剤との濡れ性も良好で、二次サイズ剤の構成成分(ポリウレタン樹脂(B)及びシランカップリング剤(C))との親和性にも優れるため、後の二次サイズ処理工程において、二次サイズ剤を均一に付着させることが可能になる。
【0018】
一次サイズ剤の主成分である水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。また、水系で使用できるものであれば変性エポキシ樹脂を用いることもできる。また、1種のエポキシ樹脂を単独で用いる他、2種以上を混合して用いることもできる。また、後の二次サイズ処理工程及び切断工程の作業性、工程通過性等の観点から、エポキシ樹脂は、室温で液状のものと固状のものとを併用することがより好ましい。
【0019】
水溶性エポキシ樹脂としては、エチレングリコール鎖の両端にグリシジル基を有するものや、A型、F型、S型等のビスフェノールの両端にエチレンオキサイドが付加されその両端にグリシジル基を有するものなどが挙げられる。また、グリシジル基の代わりに、脂環式エポキシ基を有するものを用いることもできる。水分散性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC製HP7200等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、DPPノボラック型エポキシ樹脂(JER製エピコート157S65等)等が挙げられる。また、グリシジル基の代わりに、脂環式エポキシ基を有するものを用いることもできる。
また、乳化剤としては、特に限定されるものではないが、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などを用いることができる。中でも、二次サイズ剤の主成分(B)がアニオン系又はノニオン系のポリウレタン樹脂であることから、アニオン系又はノニオン系乳化剤が好ましい。また、二次サイズ剤の安定性を阻害しないことから、ノニオン系乳化剤が特に好ましい。
【0020】
炭素繊維束100質量%に対する成分(A)の付着量は0.1〜2.0質量%が好ましく、0.2〜1.2質量%がより好ましい。かかる範囲であれば炭素繊維基質表面を覆う成分(A)の分子層が1〜3層程度となり、好適である。
成分(A)の付着量が2質量%を超えると、炭素繊維間に成分(A)粒子が介在してブリッジングが発生し、繊維同士の擬似接着により、繊維間の動きが拘束され、繊維束の広がり性が悪くなり、ひいては繊維束の均一性が損なわれてしまう恐れがある。また、後の工程で付着させる二次サイズ剤の浸透性が阻害され、均一なチョップド炭素繊維束を得ることが難しくなるなど、繊維束としての特性が悪化する恐れもある。一方、付着量が0.1質量%未満では、一次サイズ剤を付着させる効果が発現せず、工程通過性、取り扱い性、二次サイズ剤との親和性に優れた炭素繊維束が得られなくなる恐れがある。
【0021】
オフライン方式でチョップド炭素繊維束を製造する場合には、一次サイズ処理後の炭素繊維束を、ボビン巻き取りや、ケンス振り込みにより一旦収納する。その方式は炭素繊維束の総目付や作業性等に応じて適宜選定される。また、オフライン方式の代わりに連続方式を採用しても良い。
本発明者は、いずれの方式を採用する場合においても、一次サイズ剤としてエポキシ樹脂系サイズ剤を用いることにより、目付の大小に拘わらず、後の工程において、クリール、ガイドでの巻き付きや、毛羽やフライの発生を抑制でき、太目付チョップド炭素繊維束を安定してかつ高速に処理することができることを見出した。また、後の工程で用いる二次サイズ剤の含浸が極めて容易となり、均一な製品を高収率で製造できることを見出した。
【0022】
<二次サイズ処理工程>
次に、以上のように一次サイズ処理した炭素繊維束に対して、二次サイズ剤を付着させる二次サイズ処理を行う。本発明では、この工程において、皮膜伸度が500%以上の二次サイズ剤を用いることを特徴としている。
短く切断されたチョップド炭素繊維束にあっては、束幅が広くなると繊維配向に沿って縦割れし易くなり、製造中や製造後の使用時にその形態を維持することが困難な傾向にある。このことは特に太目付炭素繊維束において顕著であるが、本発明者は二次サイズ剤の皮膜形成能に着目した結果、形成される皮膜の強度、特に皮膜伸度が大きい二次サイズ剤を用いることにより、太目付炭素繊維束の形態安定性が効果的に保たれることを見出した。
【0023】
二次サイズ剤は繊維間にあって皮膜を形成し、繊維同士を接着させる様に働いていると推察される。そして、二次サイズ処理後、切断工程を経て得られるチョップド炭素繊維束においては、フィラメントの絡み合いと二次サイズ剤の凝集力で集束された状態となっていると思われる。また、本発明者は、繊維長の短いチョップド炭素繊維束にあっては、その集束力は、フィラメントの絡み合いよりも、サイズ剤の凝集力による繊維間の擬似接着によるところが大きいと考えた。そして、このような点に着目して検討を行った結果、二次サイズ剤の皮膜伸度が小さいと、炭素繊維束の切断工程及び乾燥工程において衝撃性のせん断力が掛かり、縦割れや毛羽が発生しやすくなり、二次サイズ剤の皮膜伸度が大きい程これらの問題が生じ難くなることを見出した。
【0024】
また、二次サイズ剤の主成分としては、具体的には、水系で使用でき、皮膜伸度(破断伸度)が500%以上と高く、皮膜弾性率が比較的小さい水性ポリウレタン樹脂(B)が最適であることを見出した。皮膜伸度が500%以上であると、高い繊維割れ防止性能が得られる。また、皮膜伸度は600%以上であることがより好ましい。また、皮膜の100%弾性率が120kgf/cm2以下であることが好ましく、70kgf/cm2以下であることがより好ましい。皮膜の100%弾性率が120kgf/cm2以下であれば、炭素繊維束の切断工程及び乾燥工程における炭素繊維の縦割れをより効果的に抑制することができる。
【0025】
ここで、水性ポリウレタン樹脂(B)としては、エーテル系、エステル系、カーボネート系、アジペート系等を特に制限なく用いることができる。また、水溶性あるいは水分散性(水エマルジョン系)のいずれを用いても良い。
また、水分散性としては、自己乳化タイプ、乳化剤を含む強制乳化タイプのいずれを用いても良い。
自己乳化タイプのポリウレタン樹脂(B)としては、ポリウレタン樹脂中に水との親和性を有するエチレンオキサイドブロックを導入したノニオン系タイプや、アニオン性官能基を導入したアニオン系タイプ、これらの両方を合わせ持つノニオン/アニオン共存系タイプ等が挙げられる。本発明では、二次サイズ剤にシランカップリング剤(C)を添加することから、シランカップリング剤(C)の凝集を抑制し、エマルジョン安定性に優れるノニオン系あるいはノニオン/アニオン共存系タイプが特に好適である。
強制乳化タイプに用いる乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれを用いても良いが、一般的なウレタン系乳化剤であるノニオン系あるいはアニオン系が好適である。また、本発明では、二次サイズ剤に、シランカップリング剤(C)を添加することから、ノニオン系あるいはノニオン/アニオン共存系が、シランカップリング剤の凝集を抑制し、エマルジョン安定性が良好な点から特に好適である。
また、ポリウレタン樹脂の中でも無黄変性タイプを用いることが、成形品の耐候性向上の点から好ましい。
【0026】
また、二次サイズ剤を調製する際には、ポリウレタン樹脂水溶液あるいは水分散溶液(以下、単にポリウレタン溶液と称す。)を原料に用いることが好ましいが、ポリウレタン溶液中には、エポキシ樹脂と反応性を有する官能基を持つ成分を極力減じておくことが好ましい。これは、一次サイズ処理により、炭素繊維束表面に付着させたエポキシ樹脂との反応性を制御するためである。アミノシランカップリング剤等を用いることにより、炭素繊維束の表面に存在するエポキシ樹脂等を一部架橋させ、集束性を向上できることは公知であり、本発明においても採用可能である。しかしながら、サイズ剤中に、不定量の反応性官能基を有する成分が存在することは、架橋反応の制御を阻害する恐れがあるため、好ましくない。
かかるポリウレタン溶液としては、大日本インキ化学製の水性ウレタン樹脂ハイドランシリーズ(HW−301、311、312B、337、111、112、920、930、935、940、AP−70、ボンディック1940NS、2210)、吉村油化学製ユカレジンU−004、007、009、バイエル製インプラニールDLS等が挙げられる。
【0027】
また、二次サイズ剤において、成分(B)の配合量(ポリウレタン溶液を原料として用いる場合には、該溶液中のポリウレタン樹脂成分量)は、二次サイズ剤の水以外の総成分量100質量%に対して、70〜99質量%であることが好ましい。
これは、水性ポリウレタン樹脂成分が、炭素繊維束の集束性の中的役割を果たしていることによるもので、その配合量が70質量%未満では、十分な集束性を付与することができず、99質量%を超えると、樹脂との接着性を向上させる添加剤量が不十分となる恐れがある。
【0028】
また、本明細書において、ポリウレタン溶液の皮膜性能は、以下のようにして測定するものとする。
まず、ガラス板上にポリウレタン溶液を薄く伸ばしながら塗布し、室温にて20時間放置して予備乾燥させ、引き続き140℃で5分間乾燥させて、膜厚100〜500μmの皮膜をガラス板上に形成する。この皮膜から100mm長×20mm幅の試験片を切出し、室温にて、引張り速度を300mm/minとして、伸度及び100%弾性率を測定する。
【0029】
また、本発明では、二次サイズ剤に、上記成分(B)の他、所定量のシランカップリング剤(C)を配合することを特徴としている。また、1種のシランカップリング剤を単独で用いる他、2種以上を混合して用いることもできる。
成分(C)としては、シランカップリング剤の中でも、特にエポキシシラン系、アミノシラン系、ビニルシラン系が好適である。エポキシシラン系において、シラン化合物のエポキシ基としては、グリシジル基、脂環式エポキシ基等が好適であり、かかるシランカップリング剤としては、日本ユニカー(株)製のA−186、A−187、AZ−6137、AZ−6165等が具体的に挙げられる。また、アミノシラン系としては、1級アミン、2級アミンあるいはその双方を有するものが挙げられ、日本ユニカー(株)製のA−1100、A−1110、A−1120、Y−9669、A―1160等が具体的に挙げられる。また、ビニルシラン系としては、ビニル基、メタクリル基を有するものが挙げられ、日本ユニカー(株)製のA−151、A―171、A―172、A−2171、A−174、Y−9936、AZ−6134等が具体的に挙げられる。
【0030】
シランカップリング剤はガラス繊維強化複合材の処理に利用されているが、本発明者は、熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とする炭素繊維強化複合材においても、界面接着力を向上させ、機械物性に優れた複合材を得るのに非常に有効であることを見出した。なお、ガラス繊維強化複合材においては、ガラス繊維基質との親和性に有効に働くと考えられているが、炭素繊維強化複合材では、用いるマトリクス樹脂によってその効果の程度が異なることから、炭素繊維基質よりもむしろマトリクス樹脂との相互作用に効いているものと推察される。
【0031】
シランカップリング剤(C)の添加量は、二次サイズ剤の水以外の総成分量(総固形分量)100質量%に対して、1.0〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。添加量が1.0質量%以上であれば、シランカップリング剤(C)の添加による複合材の機械物性向上効果が発現する。一方、10質量%を超えると、シラン化合物のシラン架橋が進行し、繊維束の集束状態が硬く脆弱となり、縦割れが発生しやすくなる恐れがある。
【0032】
二次サイズ剤の付着方式は特に限定されるものではなく、二次サイズ剤中にロールの一部を浸漬させ表面転写した後、該ロールに炭素繊維束を接触させて付着させるタッチロール方式、炭素繊維束を直接二次サイズ剤中に浸漬させ、その後必要に応じてニップロールを通過させて付着量を制御する浸漬方式等が挙げられる。中でもタッチロール方式が好適であり、さらに炭素繊維束を複数のタッチロールに接触させ複数段階で付着させる方式が、付着量や束幅制御の観点から特に好適である。
【0033】
また、一次サイズ処理後の炭素繊維束100質量%に対する二次サイズ剤の付着量が水以外の成分量で1〜5質量%になるように制御することが好ましい。二次サイズ剤の付着量が1質量%未満では、後の切断工程及び乾燥工程において十分な集束性が得られず、繊維割れや毛羽が発生し、押出機投入時にトラブルが発生する恐れがある。一方、付着量が5質量%を超えると、集束力が強くなるため後の工程の通過性は良好となるものの、押出機内での樹脂への均一な分散が難しくなり、成形品の外観不良や、分散斑による機械物性の低下を招く恐れがある。
【0034】
<切断工程>
以上のようにして、炭素繊維束に二次サイズ剤を付着させた後、引き続き湿潤状態にある炭素繊維束を切断し、チョップド炭素繊維束の形態とする。
本発明における切断工程は、水を含む二次サイズ剤の表面張力による炭素繊維の集束効果と、切断時の衝撃性のせん断力を湿潤状態の柔軟な状態で吸収して繊維割れを防ぐことを利用したものである。
【0035】
切断時の炭素繊維束の湿潤状態は、含水率で20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。含水率が20質量%未満では、切断時に繊維割れや毛羽が発生しやすくなる恐れがある。また、含水率が50質量%を超えると、繊維表面に水が過剰に付着した状態となるため、水の表面張力により炭素繊維が丸く集束し、切断時にミスカットや刃の目詰まりの発生頻度が高くなる恐れがある。したがって、先の二次サイズ処理工程において、水以外の成分濃度と付着量を調整して処理することにより、続く切断工程において炭素繊維束中の水分量が20〜50質量%に保持されることが重要である。また、同時に、二次サイズ剤の付着量が前述の如く1〜5質量%になるように二次サイズ剤の濃度を調整する必要がある。また、必要に応じて、含水率を調整するために、切断前に水や二次サイズ剤による追加処理を行っても良い。
【0036】
切断方式としては特に制限はないが、ロータリーカッター方式等が好適である。また、切断後の繊維長(チョップド炭素繊維長)としては2〜15mmが好ましく、6〜12mmがより好ましい。ロータリーカッター方式では、用いる装置の歯先間隔を調節することにより切断長を調整することができる。
【0037】
ロータリーカッター方式では繊維束厚みが厚くなり過ぎると切り損じを生じたり、ロータに炭素繊維が巻き付いて操作不能になったり、切断後の形状不良が生じたりするので、繊維束厚みは薄い方が有利である。また、炭素繊維束の目付が1.5g/m超の太目付炭素繊維束の場合、炭素繊維束をできるだけ開繊させ、繊維束内部まで二次サイズ剤を均一に付着させることが重要である。したがって、ガイドロール、コームガイド、スプレッダーバー等を用いて、二次サイズ処理工程前後の炭素繊維束の束幅/厚みが大きくなるように制御しながら、かつサイズ処理後の炭素繊維束には実質的に撚りの無いように走行させることが好ましい。
【0038】
すなわち、束幅を極端に狭くして断面円形状又は断面楕円形状にしないこと(全体視棒状にしないこと)、具体的には束幅/厚みが3以上になるように束幅を制御することが好ましい。束幅/厚みが3以上であると、ロータリーカッターでの切断工程でのミスカットが顕著に発生する繊維束厚みに達する恐れがない。また、束幅/厚みが10を超えると、切断時のミスカットは生じ難くなるものの、厚みが薄くなりすぎて切断後に炭素繊維束の縦割れが生じ易くなり、後の工程通過性が悪化する恐れがある。また、太目付炭素繊維束を汎用タイプ並みに薄く広げて切断するには、同時に処理可能な炭素繊維本数が減少し、その減少分を補うためにカッターの幅広化あるいは処理速度の高速化など必要となり、設備面の負荷や生産効率の低下を招く恐れがある。したがって、束幅/厚みが3〜10となるようにロータリーカッターに付随するガイドの幅を調節し、チョップド炭素繊維束の束幅を制御することが好ましい。なお、当然のことながら太目付炭素繊維束にあっては、炭素繊維幅が広がっており、ロータリーカッターのガイドにおいては、繊維束は折りたたまれた状態となるため、束幅を狭くする方向に調整することになる。
【0039】
<乾燥工程>
次に、切断後のチョップド炭素繊維束を乾燥する。乾燥方法としては熱風乾燥法等が挙げられる。また、熱風乾燥法を採用する場合、水分の蒸発効率を向上させると共に、チョップド炭素繊維束同士の接着を防止するために、振動させた状態で移送しながら乾燥を行うことが好ましい。なお、乾燥時の振動が強すぎると、繊維割れが発生し易くなり、束幅/厚みが3未満のチョップド炭素繊維束の割合が多くなる。又、振動が弱すぎると、繊維同士の擬似接着が起こり、団子状になってしまう。したがって、適切な振動条件に設定する必要がある。また、細分化されたチョップド炭素繊維を振るい落とすだけでなく、熱風の通りを良くするために、メッシュ振動板上を移送させながら、振動乾燥することがより好ましい。また、乾燥効率を向上させるために、赤外線放射などの補助手段を併用しても良い。
以上のようにして本発明のチョップド炭素繊維束が完成する。
【0040】
本発明チョップド炭素繊維束及びその製造方法によれば、形態安定性に優れ、繊維強化複合材製造時の取り扱い性に優れたチョップド炭素繊維束を提供することができる。本発明は特に、目付が1.5g/m超の太目付チョップド炭素繊維束に対して有効であり、その製造工程の安定化、高品質化を実現することができ、量産対応可能で安価な経済性に優れたチョップド炭素繊維束を提供することができる。
【0041】
<熱可塑性樹脂組成物、成形品>
本発明のチョップド炭素繊維束を熱可塑性樹脂と混練することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。ここで、本発明のチョップド炭素繊維束を押出機に供給し熱可塑性樹脂と混練してペレット化し、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを得ることが好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形法等の公知の成形法により成形することにより、本発明の成形品(繊維強化複合材)を提供することができる。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を調製するに当たっては、組成物の総量100質量%に対して、本発明のチョップド炭素繊維束の配合量を5〜40質量%とすることが好ましい。本発明のチョップド炭素繊維束の配合量を5質量%以上とすることにより、チョップド炭素繊維束の添加による成形品の機械物性向上効果が顕著に発現する。また、40質量%を超えると、それ以上の効果が得られないと共に、ペレット製造時の工程安定性が低下し、ペレットの繊維含有量斑などが生じ、成形品の品質安定性が悪化する恐れがある。
【0043】
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、二次サイズ剤の主成分であるポリウレタン樹脂(B)との親和性の観点から、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、POM樹脂、ポリプロピレン樹脂、PPS樹脂、PES樹脂、PEI樹脂、ナイロン樹脂、及びこれらのアロイ系樹脂のうちいずれかが好ましい。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物及び成形品は、本発明のチョップド炭素繊維束を用いて得られたものであるので、機械物性に優れると共に、生産性、経済性に優れたものとなる。
【0045】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
【0046】
(実施例1〜5、比較例1〜7)
<チョップド炭素繊維束の製造>
ポリアクリル繊維を原料とする12000本又は50000本のフィラメントよりなる市販の炭素繊維束を用い、以下のようにしてチョップド炭素繊維束を製造した。
はじめに、原料の炭素繊維束に一次サイズ剤を付着させる一次サイズ処理を行い、乾燥後、ボビンに巻取り連続炭素繊維束を得た。一次サイズ剤としては以下の組成のエポキシ系サイズ剤を調製し用いた。なお、比較例4では、この処理を行わず、次の工程に進めた。
主剤
・ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828」 50質量部
・ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1001」 30質量部
乳化剤
・旭電化(株)製「プルロニックF88」 20質量部
次に、開繊バーと炭素繊維幅規制バーとを複数回交互に通過させ、所定の炭素繊維幅とした後、二次サイズ剤を付着させる二次サイズ処理を行った。二次サイズ剤としては6種類のサイズ剤a〜fを調製して用いた。各二次サイズ剤の組成及び物性を表1に示す。なお、使用に当たっては水分量を調整し、二次サイズ剤濃度を調整した。また、二次付着剤を付着させる方式としては、下記のいずれかを採用した。
タッチロール方式:二次サイズ剤槽にロールの一部を浸漬し、ロール表面に転写した後、該ロール表面に炭素繊維束を接触させることにより二次サイズ処理を行った。なお、2個のタッチロールを用い、炭素繊維束の表裏2面に対して塗布を実施した。
浸漬方式:二次サイズ剤槽中に、2個のロールを介して炭素繊維束を直接浸漬させることにより、二次サイズ処理を行った。なお、浸漬後にニップロールによる処理は行わなかった。
【表1】
表1において、各略号は以下のポリウレタン樹脂溶液又はシランカップリング剤を示す。
HW−930:大日本インキ化学製「水性ウレタン樹脂ハイドランシリーズHW−930」
HW−920:大日本インキ化学製「水性ウレタン樹脂ハイドランシリーズHW−920」
HW−980:大日本インキ化学製「水性ウレタン樹脂ハイドランシリーズHW−980」
A−187:日本ユニカー(株)製「エポキシシラン系シランカップリング剤A−187」
A−1100:日本ユニカー(株)製「アミノシラン系シランカップリング剤A−1100」
また、表1において、「水性ポリウレタン成分量」は、水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂純成分の、二次サイズ剤の水以外の総成分量100質量%に対する配合量(質量%)、「シランカップリング剤の添加量」は、シランカップリング剤純成分の、二次サイズ剤の水以外の総成分量に対する添加量(質量%)を意味する。
次に、ロータリーカッターを用いて炭素繊維束を所定長さに切断し、最後に、床振動式熱風乾燥炉に連続的に投入し、200℃にて乾燥させることにより、チョップド炭素繊維束を得た。なお、比較例7では、乾燥後に切断を行った。
【0047】
<ペレット及び成形品の製造>
得られたチョップド炭素繊維束と熱可塑性樹脂とをサイドフィード式30mmベント二軸押出機にて溶融混合してストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断しペレットを得た。該ペレットを充分乾燥させた後射出成形機にて成形し成形品(繊維強化複合材)を得た。また、この成形品の力学的特性として、引張り物性と曲げ物性を、各々JIS K7113、JIS K7203に準拠し測定した。
【0048】
各実施例、比較例において用いた原料の炭素繊維束及びその物性、二次サイズ剤の種類及びその濃度と乳化安定性、二次サイズ剤の付着方式、切断後の繊維長さ(チョップド炭素繊維束の繊維長)を表2、表3に示す。
また、原料の炭素繊維束のストランド物性、一次サイズ剤の付着量、二次サイズ剤の付着量、二次サイズ処理後の炭素繊維束の物性、二次サイズ処理工程の工程通過性、切断時の含水率、切断工程の工程通過性、得られたチョップド炭素繊維束の外観を評価した結果を表2、表3に合わせて示す。なお、炭素繊維束のストランド物性は、JIS R7601に準拠し測定した。また、サイズ剤の付着量は、JIS R7601の抽出法に準拠し測定した。
また、ペレット製造時に用いた熱可塑性樹脂の種類及びチョップド炭素繊維束の配合量、押出機投入状況、成形品の評価結果を表2、表3に合わせて示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
なお、表2、表3において、各略号は以下のものを示す。
TR30S:三菱レイヨン社製炭素繊維束「パイロフィルTR30S」
TR30L:三菱レイヨン社製炭素繊維束「パイロフィルTR30L」
TC−7F:三菱レイヨン社製ポリカーボネートとABSのアロイ樹脂「ダイヤアロイ TC−7F」
PC:三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート「ノバレックス7025A」
また、表2、表3において、「二次サイズ剤濃度」は、二次サイズ剤総量に対する水以外の総成分量(質量%)、ペレット製造時の「炭素繊維束の配合量」は、ペレット中のチョップド炭素繊維束の配合量(質量%)を意味する。
【0051】
表2、表3に示すように、水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を主成分とする一次サイズ剤を用い、サイズ剤付着量が0.6〜1.0質量%となるように一次サイズ処理を行い、次いで、皮膜伸度が600〜800%、100%弾性率が10〜20kgf/cm2の水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有すると共に、水以外の総成分量100質量%に対する成分(B)の配合量が95〜97質量%であり、成分(C)の添加量が3〜5質量%の二次サイズ剤を用い、サイズ剤付着量が2.3〜2.5質量%となるように二次サイズ処理を行った後、切断し、乾燥させてチョップド炭素繊維束を製造した実施例1〜5においては、二次サイズ処理工程や切断工程に何ら問題はなく、工程通過性が極めて良好であった。また、得られたチョップド炭素繊維束は、繊維割れ等の外観不良がなく、形態安定性に優れ、繊維強化複合材製造時の取り扱い性に優れたものであった。
さらに、熱可塑性樹脂と得られたチョップド炭素繊維束を混合すると共に、チョップド炭素繊維束の配合量を20〜30質量%とすることにより、引張り破断強度が140〜170MPaと高く、曲げ強さが240〜250MPaと高く、曲げ弾性率が11300〜18600MPaと高く、力学的特性に優れた繊維強化複合材を得ることができた。また、熱可塑性樹脂とチョップド炭素繊維束とを混練する際の、押出機への投入も何ら問題がなく良好であった。
特に、実施例2、4、5では、目付が1.5g/m超の太目付炭素繊維束を用いて製造を行ったにもかかわらず、このような良好な結果が得られ、本発明は太目付炭素繊維束に対しても好適であることが判明した。
【0052】
これに対して、皮膜伸度が500%未満、100%弾性率が120kgf/cm2超のポリウレタン樹脂を主成分とする二次サイズ剤を調製し、二次サイズ処理を行った比較例1では、得られたチョップド炭素繊維束には繊維割れや毛羽が観察され、形態安定性が不良であった。また、熱可塑性樹脂とチョップド炭素繊維束とを混練する際の押出機への投入時に滞留が見られた。
また、シランカップリング剤(C)を添加せずに二次サイズ剤を調製し、二次サイズ処理を行った比較例2では、得られた繊維強化複合材は、引張り破断強度及び曲げ強さが低く、力学的特性が不良であった。
また、切断時の含水率を50質量%超とした比較例3では、切断時の繊維束形状が断面略円形状(束幅/厚みが略1)となり、切断工程において、ミスカットが多発した。また、得られた繊維強化複合材は、引張り破断強度及び曲げ強さが低く、力学的特性が不良であった。
【0053】
また、一次サイズ処理を行わなかった比較例4、及び一次サイズ剤の付着量を2.0質量%超とした比較例5では、二次サイズ処理工程において、ロール上への毛羽付着、巻き付きが見られ、切断工程ではミスカットが多発した。また、得られたチョップド炭素繊維束には繊維割れや毛羽が観察され、形態安定性も不良であった。また、熱可塑性樹脂とチョップド炭素繊維束とを混練する際の押出機への投入時には滞留が見られた。また、得られた繊維強化複合材は、引張り破断強度及び曲げ強さが低く、力学的特性が不良であった。
また、一次サイズ剤の付着量を2.0質量%超とし、水以外の総成分量に対する成分(C)の配合量が10質量%超の二次サイズ剤を調製し、二次サイズ処理を行った比較例6では、得られたチョップド炭素繊維束には著しく硬い集束が見られ、得られた繊維強化複合材は曲げ弾性率が著しく低く、また、引張り破断強度及び曲げ強さも低く、力学的特性が不良であった。
また、一次サイズ剤の付着量を2.0質量%超とし、二次サイズ処理を行った後、乾燥させてから切断を行った比較例7では、乾燥後に繊維束が断面略円形状となり、炭素繊維束の切断ができなかった。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、形態安定性に優れ、繊維強化複合材製造時の取り扱い性に優れ、経済性に優れたチョップド炭素繊維束を得ることが可能な手段を提供することができる。本発明は特に、目付が1.5g/m超の太目付炭素繊維束に対して好適であり、その製造工程の安定化、高品質化を実現することができる。
Claims (1)
- 水溶性又は水分散性エポキシ樹脂(A)を付着乾燥させた炭素繊維束に対して、皮膜伸度が500%以上の水溶性又は水分散性ポリウレタン樹脂(B)とシランカップリング剤(C)とを含有する水系サイズ剤を付着させ、所定長さに切断した後、乾燥させるチョップド炭素繊維束の製造方法であって、
前記炭素繊維束に対する成分(A)の付着量を0.1〜2.0質量%とすると共に、
前記サイズ剤において、水以外の総成分量100質量%に対して、成分(B)の配合量を70〜99質量%、成分(C)の配合量を1.0〜10質量%とし、
成分(A)付着後の前記炭素繊維束に対する前記サイズ剤の付着量を水以外の成分量で1〜5質量%とし、
切断時の前記炭素繊維束の含水率を20〜50質量%とし、
切断時の前記炭素繊維束の束幅/厚みを3〜10とすることを特徴とするチョップド炭素繊維束の製造方法。
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