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JP4077997B2 - 缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法 - Google Patents

缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はアルミニウム缶蓋材の製造方法に関するものであり、特に果汁やコーヒー、紅茶の如く炭酸を含まない負圧缶用のステイオンタブ方式の缶蓋に適したアルミニウム缶蓋材として、強度の異方性が小さくかつ耳率が低く、またリサイクル性にも優れたアルミニウム缶蓋材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にステイオンタブ方式のアルミニウム缶蓋材には、高強度と良好な成形性を有し、かつ開缶性(スコア部の引き裂き性)も良好でまたリベット加工性も優れ、さらに表面品質も優れていることなどが要求される。従来この種のアルミニウム缶蓋材としては、5052合金や5182合金などの5000系合金(Al−Mg系合金、Al−Mg−Mn系合金)が多用されている。特に果汁やコーヒー、紅茶の如く炭酸を含まない飲料缶、すなわち負圧缶用の缶蓋材としては、Al−Mg系である5052合金が使用されることが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで缶蓋を缶胴に取付けるにあたっては、缶胴の縁部に缶蓋を巻き締め加工する必要があるが、缶蓋材の深絞り耳率が高い場合、この巻き締め加工において巻き締め不良が生じるおそれがある。また缶蓋は、一般に開缶のためにスコア加工が施されており、特にステイオンタブ方式の缶蓋ではスコアの加工率が大きいため、圧延方向に対する各方向の最大耐力差が大きい場合、すなわち強度の異方性が大きい場合には、缶を落下させた際の衝撃によってスコア部分の強度の低い箇所から割れが生じて、内容物が漏れ出してしまう危険がある。
【0004】
しかしながら従来のアルミニウム缶蓋材においては、このような耳率および強度の異方性について充分な検討がなされておらず、そのため巻き締め不良の発生を確実に防止し、また缶の落下衝撃時の割れ発生を確実かつ安定して防止することが未だ困難であった。
【0005】
特に最近では、消費量の多い5182合金缶蓋材や3004合金缶胴材のスクラップを利用して負圧缶用の缶蓋を製造することが望まれており、これらの5182合金や3004合金はMnを含有するところから、これらのスクラップ材を負圧缶用の缶蓋として利用するためには、負圧缶用の缶蓋材としてもMnを含有する合金を使用することが望まれており、その開発のための実験も種々行なわれているが、前述のような耳率および強度の異方性に関しては充分な配慮がなされていなかったのが実情である。
【0006】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、特にステイオンタブ方式の負圧缶用の缶蓋に適したアルミニウム缶蓋材として、耳率が安定して低く、かつ強度の異方性も少なく、さらにリサイクル性にも優れた缶蓋材を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述のような課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験検討を重ねた結果、缶蓋材のアルミニウム合金の成分系を、基本的にはAl−Mg−Mn系とし、かつMg量、Mn量およびFe量、Si量を適切に設定するとともに、Fe量、Si量、Mn量の相互の関係を適切に規制し、しかも製造プロセス条件、特に熱間圧延条件を厳密に規制し、併せて熱間圧延後の中間焼鈍条件および最終冷間圧延条件を適切に規制することをによって、耳率が安定して低く、かつその他の缶蓋材に要求される性能をも満たし得る缶蓋材が得られることを見出し、さらには缶蓋材製造プロセスにおける最終焼鈍条件を適切に規制することによって、強度の異方性を安定して少なくし得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0008】
具体的には、請求項1の発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、Mg0.8〜3.0%、Mn0.01〜1.2%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、かつ{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)が20以下であり、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊を熱間圧延するにあたり、熱間圧延開始温度を400〜580℃の範囲内とし、かつ最終パスから2パス前のパスにおける圧延速度を50m/分以上、最終パスから1パス前のパスにおける圧延速度を100m/分以上、最終パスにおける圧延速度を150m/分以上とし、さらに最終パスにおける圧下率を20〜70%の範囲内として、220〜370℃の範囲内の温度で熱間圧延を終了させ、得られた熱間圧延板に対し、320〜550℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以下の保持を行なう連続焼鈍による中間焼鈍を施し、さらに40%以上の圧延率で最終冷間圧延を行なうことを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、Mg0.8〜3.0%、Mn0.01〜1.2%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、かつ{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)が20以下であり、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊を熱間圧延するにあたり、熱間圧延開始温度を400〜580℃の範囲内とし、かつ最終パスから2パス前のパスにおける圧延速度を50m/分以上、最終パスから1パス前のパスにおける圧延速度を100m/分以上、最終パスにおける圧延速度を150m/分以上とし、さらに最終パスにおける圧下率を20〜70%の範囲内として、220〜370℃の範囲内の温度で熱間圧延を終了させ、得られた熱間圧延板に対し、平均昇温速度10〜50℃/時間で220〜500℃の範囲内の温度に加熱して0.5〜24時間保持し、10〜50℃/時間の平均冷却速度で冷却するバッチ焼鈍による中間焼鈍を施し、さらに40%以上の圧延率で最終冷間圧延を行なうことを特徴とするものである。
【0010】
さらに請求項3の発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、前記熱間圧延と中間焼鈍との間に、圧延率5〜40%の1次冷間圧延を施すことを特徴とするものである。
【0011】
そしてまた請求項4の発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、前記最終冷間圧延の後、さらに100〜240℃の範囲内の温度で10時間以下加熱保持する最終焼鈍を施すことを特徴とするものである。
【0012】
さらに請求項5の発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、素材の合金として、前記各成分元素のほか、さらにCu0.01〜0.50%、Cr0.05〜0.50%のうちから選ばれた1種以上を含有する合金を用いることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明で使用するアルミニウム合金の成分限定理由を説明する。
【0014】
Mg:
Mgの添加は、それ自体の固溶による強度向上に効果があり、また転位との相互作用が大きいため、加工硬化による強度向上が期待でき、したがって缶蓋材として必要な強度を得るためにMgは不可欠な元素である。但し、Mg量が0.8%未満では缶蓋材として充分な強度を得ることができず、一方3.0%を越えれば生産コストが高くなる。そこでMg量は0.8〜3.0%の範囲内とした。
【0015】
Mn:
Mnの添加は、スコア部分の引き裂き性を向上させて開缶性を向上させるAl−Mn−(Si)、Al−Fe−Mn−(Si)系晶出物の生成および強度向上に大きな効果をもたらす。Mn量が0.01%未満では、これらの効果が小さく、一方1.2%を越えれば、Al−Mn−(Si)やAl−Fe−Mn−(Si)系晶出物が粗大化して加工性の低下を招く。そこでMn量は、0.01〜1.2%の範囲内とした。またこのようにMnを添加した合金系とすることにより、5182合金缶蓋材や3004合金缶胴材などのMnを含有する系の合金のスクラップ材を使用可能とし、リサイクル性を向上させることができる。
【0016】
Fe:
Feの添加は、スコア部分の引き裂き性を向上させて開缶性を向上させるAl−Fe−Mn−(Si)系晶出物の生成に効果を及ぼす。またFeは、缶蓋材として必要な成形性を向上させる結晶粒微細化に大きな効果を示し、Feの添加量が多いほど結晶粒は微細化される。但し、Fe量が0.10%未満ではその効果は現れず、一方0.50%を越えれば晶出物が粗大化してしまい、成形性を低下させる。そこでFe量は0.10〜0.50%の範囲内とした。
【0017】
Si:
Siによって形成されるMg2 Si晶出物も、スコア部分の引き裂き性を向上させて開缶性を向上させる効果がある。但しSi量が0.05%未満ではその効果が現れず、一方0.40%を越えれば巨大晶出物が生成されるとともに晶出物生成数が多くなり過ぎ、成形性の低下を引き起こす。そこでSi量は0.05〜0.40%の範囲内とした。なおSiは通常のアルミニウム合金において不可避的不純物として含有される元素であり、この発明の方法で用いる合金においても0.05%未満のSiを不純物として含有することは許容される。
【0018】
{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)≦20:
Fe量およびSi量がこの条件を満たすことによって、Al−Fe−Mn−Si晶出物の生成を促進し、晶出物サイズを小径化することができる。晶出物サイズが小さくなれば、晶出物の周辺から成長するランダム方位粒の密度が低下し、そのため0°−90°耳の生成に寄与する立方体方位粒を優先的に成長させ、その結果として製品板の耳率を低く抑えることができる。そこで{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)の値を20以下と規定した。
【0019】
さらにこの発明で用いる合金では、強度のより一層の向上のためにCuおよびCrの一方または双方を添加しても良い。これらの限定理由を次に示す。
【0020】
Cu:
Cuの添加は強度向上に有効であり、そこで缶蓋材のより一層の強度向上を図る場合にはCuを添加しても良い。但し、Cuを過剰に添加すれば、缶蓋材として重要な特性である耐食性の低下を招くおそれがあり、またCuを添加した場合、加工硬化特性が大きくなるため、成形性の低下を招くことがある。したがってCu添加量は、0.01〜0.50%の範囲内とした。
【0021】
Cr:
Crの添加も強度向上に有効であり、より一層の強度向上を図る場合にはCrを添加しても良い。但しCr量が0.05%未満ではその効果が現れず、一方0.50%を越えれば巨大晶出物が生成されるとともに晶出物の生成数が多くなり過ぎ、成形性の低下を招く。そこでCr添加量は0.05〜0.50%の範囲内とした。
【0022】
以上の各元素のほかはAlおよび不可避的不純物とすれば良いが、通常のアルミニウム合金では鋳塊組織の微細化のために微量のTiを添加することがあり、この発明の方法で用いる合金についても、微量のTiを添加することは許容される。但し、Tiの添加量が多ければ鋳塊組織が羽毛状晶になりにくく、粒状晶が生成されやすくなる。そして粒状晶の場合には、羽毛状晶の場合よりも粒界に晶出する晶出物を粗大にさせてしまうおそれがあり、またTi量が多くなれば巨大晶出物を生成して成形性を低下させるおそれがある。そこでTi量は0.03%以下とすることが望ましい。
【0023】
次にこの発明の方法における製造工程について説明する。
【0024】
先ず、前述の成分組成のアルミニウム合金を常法に従って溶製し、DC鋳造法などの常法に従って鋳造する。鋳塊に対しては、均質化処理を行なってから熱間圧延のための加熱を行なうか、または均質化処理を兼ねて熱間圧延のための加熱を行なう。これらの加熱の条件は特に限定されるものではなく、常法に従えば良いが、熱間圧延直前の加熱は、熱間圧延開始温度以上でかつ溶融が生じない温度で行なうことはもちろんである。
【0025】
熱間圧延の条件は最終板の性能、特に耳率に大きな影響を及ぼし、したがって次の(1)〜(4)の条件に従って厳密に規制する必要がある。
(1)熱間圧延開始温度:400〜580℃
(2)各パス前の圧延速度:
最終パスから数えて2パス前のパスにおける圧延速度;50m/分以上
最終パスから数えて1パス前のパスにおける圧延速度;100m/分以上
最終パスの圧延速度;150m/分以上
(3)最終パスの圧下率:20〜70%
(4)熱間圧延終了温度:220〜370℃
【0026】
これらの(1)〜(4)の熱間圧延条件を定めた理由は次の通りである。
【0027】
熱間圧延の開始温度が400℃未満では、熱間圧延中の回復、再結晶が抑制されるため、板のエッジ割れを生じてしまうおそれがあり、一方580℃を越える高温で熱間圧延を開始すれば、板の表面品質が低下してしまう。したがって熱間圧延開始温度は400〜580℃の範囲内の温度とする必要がある。
【0028】
熱間圧延の各パスにおける最終パスやその前の数パスの圧延速度は、熱間圧延による蓄積歪みに影響を及ぼし、その後の中間焼鈍において、0°−90°耳の発達を通じて最終板の低耳率化に寄与する立方体方位粒(キューブ方位粒)の生成に大きな影響を与える。そして最終パスやその前の数パスの圧延速度が大きいほど、熱間圧延による蓄積歪みが大きくなり、その後の中間焼鈍において生成される立方体方位粒の密度が大きくなり、その結果最終板の低耳率化に有効となる。最終パスから数えて2パス前の圧延速度が50m/分以上、最終パスから数えて1パス前の圧延速度が100m/分以上、最終パスの圧延速度が150m/分以上の各パス圧延速度条件を満たさない場合には、熱間圧延中の蓄積歪みが小さいため、その後の中間焼鈍において、0°−90°耳の生成に寄与する立方体方位粒が充分に生成されず、その結果中間焼鈍後の冷間圧延で発達する45°耳とのバランスが保たれなくなって、最終板の低耳率化を達成できなくなってしまう。そのため熱間圧延の最終パスから数えて2パス前、1パス前、および最終パスの圧延速度を前述のように定めた。
【0029】
また熱間圧延の最終パスの圧下率が20%未満では、充分な歪みを蓄積することが困難となり、その後の中間焼鈍において、最終板の低耳率化に寄与する立方体方位粒の成長を促進することが困難となる。一方最終パスの圧下率が70%を越える場合は、板の表面品質が低下してしまうおそれがある。そこで最終パスの圧下率は20〜70%の範囲内とした。
【0030】
さらに、熱間圧延の終了温度が220℃未満の低温の場合には、材料の変形帯や晶出物周辺などからのランダムな方位の核生成、成長が刺激されるため、中間焼鈍において立方体方位粒の密度を高めることが困難となり、また熱間圧延における回復、再結晶が抑制されて板のエッジ割れを引き起こしやすくなる。一方熱間圧延終了温度が370℃を越えれば、熱間圧延中における回復、再結晶により充分な歪みを蓄積できなくなり、その結果、後の中間焼鈍において、最終板の低耳率化に寄与する0°−90°耳の発達を促す立方体方位粒の密度を高めることができなくなる。そこで熱間圧延終了温度は220〜370℃の範囲内とする必要がある。
【0031】
以上のように(1)〜(4)の条件に従って熱間圧延を行なって得られた熱延板に対しては、そのまま中間焼鈍を施すか、または請求項3において規定しているように1次冷間圧延を施してから中間焼鈍を施す。
【0032】
この中間焼鈍は、材料を再結晶させて、立方体方位粒組織を生成させるために不可欠な工程であり、請求項1で規定するように連続焼鈍を適用しても、また請求項2で規定するようにバッチ焼鈍を適用しても良い。
【0033】
連続焼鈍を適用する場合、320〜550℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以下の保持とする。ここで、連続焼鈍の加熱温度が320℃未満では再結晶が進行せず、そのため立方体方位粒組織を生成することができず、結果的に低耳率を達成することができない。一方連続焼鈍の加熱温度が550℃を越えれば再結晶粒が粗大化して、最終板の成形性を低下させてしまう。また連続焼鈍の加熱保持時間が10分を越えれば生産性の低下を招く。
【0034】
一方バッチ焼鈍を適用する場合、10〜50℃/時間の平均昇温速度で220〜500℃の範囲内の温度に加熱し、0.5時間〜24時間保持し、10〜50℃/時間の平均冷却速度で冷却する。このようなバッチ焼鈍による中間焼鈍において、加熱温度が220℃未満では、再結晶が進行せず、そのため立方体方位粒組織を生成することができず、結果的に最終板の低耳率を達成することができない。一方バッチ焼鈍の加熱温度が550℃を越えれば再結晶粒が粗大化して、最終板の成形性を低下させてしまう。またバッチ焼鈍の加熱保持時間が0.5時間未満では均一に再結晶させることが困難となり、一方24時間を越えれば再結晶粒の粗大化を招くおそれがあり、また生産性も低下してしまう。さらにバッチ焼鈍では、生産性の観点から、平均昇温速度、平均冷却速度は10〜50℃/時間とする。
【0035】
上述のような中間焼鈍の前には、既に述べたように1次冷間圧延を行なっても良い。この1次冷間圧延は、その後の中間焼鈍において生成される立方体方位粒の成長を促進させる効果があり、圧延率5〜40%の範囲内で圧延する必要がある。1次冷間圧延の圧延率が5%未満では上述の効果が得られず、一方40%を越える高い圧延率では、0°−90°耳を低下させる核生成サイトを増加させてしまい、その結果その後の中間焼鈍において立方体方位粒の密度を高めることができず、最終板の耳率が低下してしまう。
【0036】
前述のように熱間圧延後、直ちに中間焼鈍を施すか、または1次冷間圧延を行なってから中間焼鈍を施した後には、40%以上の圧延率で最終冷間圧延を施す。最終冷間圧延の圧延率が40%未満では、缶蓋材として望まれる高強度を得ることが困難となる。またこのように40%以上の最終冷間圧延においては、各パスの圧下率、圧延速度を適切に制御することによって、加工発熱により板温度を100℃以上に到達させることができ、この場合、冷間圧延終了直後にコイルに巻取った状態で自己焼鈍の効果を得ることができる。そしてこの自己焼鈍により、最終冷間圧延中に導入された転位を消滅させて、強度を各方向に均一化させ、強度の異方性を少なくすることができる。なお最終冷間圧延における圧延率の上限は特に規定しないが、鋳塊厚みや製品厚みとの関係などから、通常は95%以下とする。
【0037】
最終冷間圧延後の板は、これをそのまま缶蓋材として用いても良いが、強度の異方性をより一層少なくするため、100〜240℃の範囲内の温度で10時間以下加熱する最終焼鈍を施すことが望ましい。この最終焼鈍は、最終冷間圧延によって導入された転位を消滅させて、各方向の強度を均一化し、強度異方性をより少なくするために効果的である。したがって最終冷間圧延までのプロセスをこの発明で規定する範囲内の条件で行なっても未だ強度の異方性がある程度大きい場合には、最終焼鈍を行なうことが望ましい。ここで、最終焼鈍の温度が100℃未満の低温では上述の効果が得られず、一方240℃を越える高温では回復の進行が大き過ぎ、強度不足を招いてしまう。また最終焼鈍の加熱時間が10時間を越えれば生産性の低下を招く。したがって最終焼鈍は100〜240℃の範囲内の温度で10時間以下の加熱を行なう必要がある。
【0038】
以上のようにして、低耳率でかつ強度の異方性も少なく、しかも缶蓋材として必要な強度や成形性、引き裂き性(開缶性)等の性能をも兼ね備えた缶蓋材を確実かつ安定して得ることができる。
【0039】
【実施例】
表1の合金No.1〜6に示す種々のアルミニウム合金を常法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊について、表2中の製造符号A〜Hに示すような工程、条件によって缶蓋材とした。すなわち鋳塊加熱処理を行なってから熱間圧延を表2中に示す条件で行ない、得られた熱延板に対しそのまま中間焼鈍を施す(製造符号A,B,D〜H)か、または1次冷間圧延を行なってから中間焼鈍を施し(製造符号C)、さらに最終冷間圧延を行なって板厚0.26mmとし、さらに一部のもの(製造符号A〜D,F,G)については最終焼鈍を行なった。
【0040】
以上のようにして得られた各缶蓋材について、塗装焼付け処理に相当する250℃×24秒の加熱処理を行なってから、耳率と強度異方性を調べたので、その結果を表3に示す。なお耳率は、ブランク径62mm、絞り比1.9の条件でカップ絞り試験を行なって調べた。ここで、耳率が6%を越えれば不合格と判定した。一方強度異方性については、圧延方向に対し0°,45°,90°の各方向の耐力を調べ、各方向の耐力差の最大値(最大耐力差)を求めた。この最大耐力差が25MPaを越える場合には強度異方性不合格と判定した。
【0041】
【表1】
Figure 0004077997
【0042】
【表2】
Figure 0004077997
【0043】
【表3】
Figure 0004077997
【0044】
表1〜表3において、この発明で規定する成分組成範囲内の合金を用いてこの発明の製造プロセス条件に従って製造した製造符号A〜Cによる缶蓋材は、いずれも低耳率でかつ強度の異方性(最大耐力差)も小さいことが確認された。
【0045】
一方製造符号D〜Fは、いずれも成分組成がこの発明の範囲内の合金を用いたが、製造プロセス条件がこの発明で規定する範囲を満たさなかった比較例である。具体的には、製造符号Dは、熱間圧延の最終パスの圧延速度が遅かった例であるが、この場合は耳率が高くなってしまった。また製造符号Eは、熱間圧延終了温度が低過ぎた例であるが、この場合は耳率が高くなってしまい、また最終焼鈍を行なわないために強度の異方性も大きくなってしまった。そしてまた製造符号Fは熱間圧延の最終パスの圧下率が小さ過ぎた例であるが、この場合は耳率が高くなってしまった。
【0046】
さらに製造符号G,Hは成分組成がこの発明で規定する範囲を外れた比較合金を用いた例である。これらのうち、製造符号Gは{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)の値が23.3と高過ぎる合金No.5を用いた例であり、この場合は耳率が高くなってしまった。また製造符号Hは、Mg量が多過ぎる合金No.6を用いた例であるが、この場合は耳率が高くなってしまい、また最終焼鈍を行なわないために強度の異方性も大きくなってしまった。
【0047】
【発明の効果】
この発明の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法によれば、耳率が安定して低くかつ強度の異方性も少なく、さらには強度や成形性、引き裂き性(開缶性)等の缶蓋材に要求される一般的性能も優れた缶蓋材を確実に得ることができ、そのためこの発明の方法により得られた板を缶蓋に使用すれば、缶胴材との巻き締め加工の際において巻き締め不良が生じるおそれが少なく、また強度の異方性が少ないため缶を落下させた衝撃によりスコア部分から割れるおそれも少ないなど、優れた効果を発揮することができる。またこの発明の方法による缶蓋用アルミニウム合金硬質板は、Mnを含有する系の合金を用いているため、消費量の多い5182合金缶蓋材や3004合金缶胴材等のスクラップを利用することができ、したがってリサイクル性にも優れている。

Claims (5)

  1. Mg0.8〜3.0%(重量%、以下同じ)、Mn0.01〜1.2%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、かつ{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)が20以下であり、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊を熱間圧延するにあたり、熱間圧延開始温度を400〜580℃の範囲内とし、かつ最終パスから2パス前のパスにおける圧延速度を50m/分以上、最終パスから1パス前のパスにおける圧延速度を100m/分以上、最終パスにおける圧延速度を150m/分以上とし、さらに最終パスにおける圧下率を20〜70%の範囲内として、220〜370℃の範囲内の温度で熱間圧延を終了させ、得られた熱間圧延板に対し、320〜550℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以下の保持を行なう連続焼鈍による中間焼鈍を施し、さらに40%以上の圧延率で最終冷間圧延を行なうことを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  2. Mg0.8〜3.0%、Mn0.01〜1.2%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を含有し、かつ{Fe量(%)+Mn量(%)}/Si量(%)が20以下であり、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊を熱間圧延するにあたり、熱間圧延開始温度を400〜580℃の範囲内とし、かつ最終パスから2パス前のパスにおける圧延速度を50m/分以上、最終パスから1パス前のパスにおける圧延速度を100m/分以上、最終パスにおける圧延速度を150m/分以上とし、さらに最終パスにおける圧下率を20〜70%の範囲内として、220〜370℃の範囲内の温度で熱間圧延を終了させ、得られた熱間圧延板に対し、平均昇温速度10〜50℃/時間で220〜500℃の範囲内の温度に加熱して0.5〜24時間保持し、10〜50℃/時間の平均冷却速度で冷却するバッチ焼鈍による中間焼鈍を施し、さらに40%以上の圧延率で最終冷間圧延を行なうことを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  3. 請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、
    前記熱間圧延と中間焼鈍との間に、圧延率5〜40%の1次冷間圧延を施すことを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  4. 請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、
    前記最終冷間圧延の後、さらに100〜240℃の範囲内の温度で10時間以下加熱保持する最終焼鈍を施すことを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
  5. 請求項1もしくは請求項2に記載の缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法において、
    素材の合金として、前記各成分元素のほか、さらにCu0.01〜0.50%、Cr0.05〜0.50%のうちから選ばれた1種以上を含有する合金を用いることを特徴とする、缶蓋用アルミニウム合金硬質板の製造方法。
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