JP4950495B2 - Ppキャップ用アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
このPPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法は、Cu:0.03乃至0.30重量%、Mn:0.3乃至0.8重量%、Mg:0.2乃至0.5重量%、Si:0.1乃至0.4重量%及びFe:0.1乃至0.7重量%を含有し、Cr:0.4重量%以下、Zn:0.5重量%以下およびTi:0.2重量%以下からなる群から選択された1種または2種以上の元素を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるAl合金鋳塊を、570乃至610℃の温度で1時間以上熱処理する均質化処理工程と、均質化処理後のAl合金鋳塊に熱間圧延及び冷間圧延を施して圧延板を得る圧延工程と、前記圧延板を再結晶させる焼鈍工程と、焼鈍後の圧延板を10乃至30%の加工率で冷間圧延して製品板を得る仕上げ冷間圧延工程と、前記製品板を230乃至260℃の温度で焼鈍する仕上げ焼鈍工程とを有することを特徴とするものである。
しかし、このような手法で強度を高くすると、圧下率が高いために耳率の変化が大きくなりやすく、これが原因で、ブランクを絞り加工してカップにした際に、PPキャップに施した商標や矢印などが所定の位置からずれることがあった。
再結晶焼鈍の他にも、強度調整やシート塗装時の熱軟化変形抑制のための中間焼鈍、仕上げ焼鈍を行う必要があり、製造工程が煩雑となって生産効率向上の障害となっていた。
また、2回目に行う均質化熱処理を低温化することで表面劣化を押さえ、且つ再結晶の駆動力となる歪を効率的に導入し、アルミニウム合金組織中の再結晶方位を好適化することで、耳率の変化を低く抑える。
そして、冷間圧延の圧下率を特定の範囲に限定することによって、適正な加工硬化を得る。
本発明のPPキャップ用アルミニウム合金板は、Cu:0.3質量%以下、Mn:0.2〜0.5質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、Si:0.1〜0.3質量%、Fe:0.2〜0.7質量%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物から構成されるアルミニウム合金板であって、このアルミニウム合金板の板表面における結晶粒径が、圧延方向に平行となる圧延平行方向で50μm以下、圧延方向に垂直となる圧延垂直方向で30μm以下としている。
以下に、本発明に係るPPキャップ用アルミニウム合金板に含まれる各合金成分と、このアルミニウム合金板の板表面における結晶粒径を数値限定した理由について説明する。
Cuは、アルミニウム合金板の強度を高める役割を担う。ただし、Cuの含有量が0.3質量%を超えると、強度が高くなりすぎて、キャップ巻き締め成形性が低下するとともに、開栓性が低下する原因ともなる。
Mnは、アルミニウム合金板の強度を高めるとともに、金属間化合物を生成して亀裂伝播性、すなわちキャップ成形、巻き締め後開栓するときのブリッジ破断性を向上させる役割を担う。Mnの含有量が0.2質量%未満であると、十分な強度確保が難しい上に金属間化合物が不足し、ブリッジ破断性が低下するので開栓性が低下する。一方、Mnの含有量が0.5質量%を超えると、強度が高くなりすぎて、キャップ巻き締め成形性が低下するとともに、開栓不良の原因ともなる。
Mgは、Cuと同様に強度向上、加工硬化性を高める役割を担う。つまり、Mgを添加すると、再結晶のための加工歪の蓄積に対して有効である。Mgの含有量が0.2質量%未満であると、十分な強度を確保できない。一方、Mgの含有量が0.6質量%を超えると、強度が高くなりすぎて、キャップ巻き締め成形性が低下するとともに、開栓不良の原因ともなる。
Siは、適度に添加すると絞り成形性を向上することができ、また耳率を調整する役割を担うとともに再結晶挙動、強度特性にも影響を及ぼす。Siの含有量が0.1質量%未満であると、絞り成形性向上効果が発揮できない上に、耳率が不安定になりやすい。一方、Siの含有量が0.3質量%を超えると、却ってキャップ絞り成形性およびキャップ巻き締め成形性が低下する。
Feは、Al,MnやSiと結びついて金属間化合物を生成し、亀裂伝播性、すなわちキャップ成形、巻き締め後開栓するときのブリッジ破断性を向上させ、且つ結晶粒の微細化に効果があるとともに、固溶鉄の状態により耳率を調整する役割を担う。Feの含有量が0.2質量%未満であると、結晶粒が粗大化し易く、適正な耳率の調整が困難となり、開栓性も低下する。一方、Feの含有量が0.7質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成してキャップ絞り成形性およびキャップ巻き締め成形性が低下するだけでなく、耳の成長が大きくなり耳率の調整が困難となる。
不可避的不純物としては、Cr,Zn,Ti,Zrなどが含まれるが、これらの元素は、含有量が0.05質量%以下であれば本発明の効果を阻害するものではなく、許容される。
本発明では、結晶粒径の制御が重要となる。アルミニウム合金板の板表面における結晶粒径は、直接的には成形性に、また間接的には再結晶挙動による耳率に寄与する。結晶粒径の測定は、JIS H0501の方法に基づいて測定した。
当該アルミニウム合金板の圧延平行方向の結晶粒径が、圧延方向に平行となる圧延平行方向で50μmを超えたり、圧延方向に垂直となる圧延垂直方向で結晶粒径が30μmを超えたりすると、PPキャップを作る際の深絞り成形において破断したり加工表面の肌荒れが発生する。
本発明のPPキャップ用アルミニウム合金板によれば、再結晶焼鈍を行わないでも耳率の変化を低く抑えることができ、かつ、適性強度を具備している。したがって、PPキャップを製造した際に、印字した商標や矢印などが所定の位置からずれることがない。また、熱間圧延後の再結晶焼鈍を省略でき、表面酸化膜の成長を抑えることができるので、生産性が向上でき且つ好適な表面形態を容易に得ることができる。
次に、図1のフローチャートを参照しつつ、本発明のPPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
図1に示すように、本発明のPPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法は、前記で説明した特定の成分組成で構成されるアルミニウム合金のスラブを用いて、予備均質化熱処理工程S1と、面削工程S2と、均質化熱処理工程S3と、熱間圧延工程S4と、冷間圧延工程S5と、中間焼鈍工程S6と、仕上げ冷間圧延工程S7と、仕上げ焼鈍工程S8と、を含む各工程の工程内容を実施することでPPキャップ用アルミニウム合金板を製造することができる。
以下に、本発明に係るPPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法における各工程の工程内容について詳細に説明する。
予備均質化熱処理工程S1は、製造するアルミニウム合金板の鋳造偏析成分の均質化と再結晶に必要な析出物を適切に成長させるために行う。そのため、この予備均質化熱処理工程S1では、保持温度:550〜630℃、保持時間:1〜10時間の条件で、前記成分組成でなるアルミニウム合金のスラブに対して予備均質化熱処理を行う。
ここで、予備均質化熱処理の処理温度が550℃未満であると金属間化合物の生成が不十分となり、再結晶、キャップ開栓性に悪影響を及ぼす。また、予備均質化熱処理の処理時間が1時間未満であると、十分な均質化ができず、特性のばらつきが大きくなる。
一方、予備均質化熱処理の処理温度が630℃を超えると、Mgがバーニングを起こすので、製品表面品質上問題となる。また、予備均質化熱処理の処理時間が10時間を超えると、金属間化合物が再結晶に析出物サイズを超えて粗大成長し結晶粒、耳率がばらつく原因となる上、生産性も阻害され不適である。
面削工程S2は、予備均質化熱処理を行ったスラブの表面に生じた偏析を除去するために行う。面削工程S2におけるスラブ表面の面削量は、アルミニウム合金の成分組成や、予備均質化熱処理の処理条件などによって異なるので、事前に実験等によって適切な条件を設定するのが好ましい。
均質化熱処理工程S3は、熱間圧延温度への加温のために行う。そのため、この均質化熱処理工程S3は、保持温度:450〜530℃、保持時間:1〜10時間の条件で、前記した面削工程S2で表面を面削したスラブに対して均質化熱処理を行う。
ここで、均質化熱処理の処理温度が450℃未満であると、圧延負荷が大きくなり、熱間圧延パス回数を増やさなければならず、経済的に不利となる。また、均質化熱処理の処理時間が1時間未満であると、鋳塊全体に亘って均質な温度とすることが難しく特性がばらつき易くなる。
一方、均質化熱処理の処理温度が530℃を超えると表面酸化膜が成長し、製品表面品質に悪影響を及ぼす。また、均質化熱処理の処理時間が10時間以上実施しても、効果は変わらず却って生産性が低下するので不適である。
熱間圧延工程S4は、冷間圧延厚まで板厚を減少させるため、および最適な内部組織への制御のために行う。熱間圧延工程S4は通常、リバース圧延機にて所定厚まで板厚を減少させる熱間粗圧延と、熱間粗圧延後、一気にホットコイル厚までタンデム圧延機を使って高圧下をかける熱間仕上圧延と、に分かれる。熱間粗圧延では、最終組織が適正な再結晶状態となるよう、中途段階での組織変化を考慮した制御が実施される。
この熱間圧延工程S4は、前記した均質化熱処理工程S3で得たスラブに対して圧延終了温度:300〜380℃の条件で熱間圧延を行うことで熱間圧延板を得る。
なお、前記した予備均質化熱処理工程S1を実施しておくことで、スラブ全体に亘って再結晶に寄与する適切なサイズの析出物を分散させているので、板面全体に亘って熱間圧延工程S4終了後の再結晶組織が安定したものとなる。
熱間圧延工程S4の圧延終了温度が300℃未満であると、十分な再結晶状態を得られない。一方、熱間圧延工程Sの圧延終了温度が380℃を超えると、表面品質が劣化する。
冷間圧延工程S5は、中間焼鈍厚まで板厚を減少させるために行う。そのため、この冷間圧延工程S5は、圧下率:50〜90%の条件で、前記した熱間圧延工程S4で得た熱間圧延板に対して冷間圧延を行うことで、冷間圧延板を得る。
ここで、冷間圧延の圧下率が50%未満であると、冷間圧延で導入される歪が不十分で中間焼鈍において粗大な再結晶が生じやすくなるため不適である。一方、冷間圧延の圧下率が90%を超えると、中間焼鈍厚までの冷間圧延パス回数が増え、生産性が低下する。
中間焼鈍工程S6は、再結晶による結晶粒の微細化、および固溶硬化による焼付塗装後の強度維持を目的として行う。そのため、この中間焼鈍工程S6は、昇温速度:10℃/秒以上、保持温度:400〜530℃、保持時間:0〜10秒間、降温速度:10℃/秒以上の条件で、前記した冷間圧延工程S5で得た冷間圧延板に対して中間焼鈍を行う。
ここで、昇温速度が10℃/秒未満であると、結晶粒が成長して粗大になり易い。
また、保持温度が400℃未満であると再結晶に必要な熱エネルギーが得られず、中間焼鈍後も未再結晶粒が残る恐れがある。
一方、保持温度が530℃を超えるとバーニングを起こす危険性が高まる。
なお、前記した保持温度で冷間圧延板を処理できればよく、その保持時間は特に限定されるものではないが、10秒間以内であるのが好ましい。保持時間が10秒間を超えても、固溶硬化への効果は変わらず、処理時間が長時間化して生産性が低下する。
そして、降温速度が10℃/秒未満であると、降温中に析出が生じるため、十分な固溶硬化を得ることができない。
仕上げ冷間圧延工程S7は、製品厚へ板厚を薄肉化するため、および耳率と強度調整のために行う。そのため、この仕上げ冷間圧延工程S7は、前記した中間焼鈍工程S6で中間焼鈍を行った冷間圧延板に対して、圧下率:10〜60%の条件で仕上げ冷間圧延を行うことで、仕上げ冷間圧延板を得る。
ここで、仕上げ冷間圧延の圧下率が10%未満であると、十分な強度を得ることができない。
一方、仕上げ冷間圧延の圧下率が60%を超えると、圧延集合組織が発達して耳率が大きくなる。
仕上げ焼鈍工程S8は、PPキャップ用アルミニウム合金板の強度調整、およびPPキャップ用アルミニウム合金板の製造後に実施される塗装・印刷処理における板の塗装焼付炉内での熱変形防止のために行う。PPキャップ用アルミニウム合金板は通常、コイル形態にて製造後長手方向に切断され、シート形態で塗装・印刷処理が行われる。
塗装・印刷処理では、焼付のための熱処理(150〜200℃程度の温度で20分間×複数回)が実施されるが、その温度でPPキャップ用アルミニウム合金板が熱軟化を起こして反りが発生すると、焼付炉内で前後の板と接触して塗装外観不良を起こす危険性がある。仕上げ焼鈍は、この熱軟化による板の変形を防止する観点でも必要な工程である。
ここで、仕上げ焼鈍の保持温度が200℃未満であると、十分な軟化状態が得られず、シート印刷工程で板反りを起こす危険性がある。
一方、仕上げ焼鈍の保持温度が260℃を超えると、強度が過度に低下し、金属組織が完全に軟質化してしまう場合もある。
また、仕上げ焼鈍の保持時間が1時間未満であると、PPキャップ用アルミニウム合金板の全長に亘って、均質な状態の金属組織を得ることができない。
一方、仕上げ焼鈍の保持時間が4時間を超えても軟質程度は変わらず、却って表面酸化膜が成長し、表面品質が劣化する恐れがある。
表1の実施例1〜5および比較例1〜9に示すような成分組成を備えたアルミニウム合金のスラブを作製し、かかるスラブを、保持温度:600℃、保持時間:4時間の条件で予備均質化熱処理を行い、予備均質化熱処理を行ったスラブの表面を8mm面削した。そして、面削したスラブを、保持温度:500℃、保持時間:2時間の均質化熱処理を行った後、当該スラブを、圧延終了温度:340℃の熱間圧延を行って熱間圧延板とした。そして、当該熱間圧延板を、圧下率:80%の冷間圧延を行って、冷間圧延板とした後、当該冷間圧延板を、昇温速度:20℃/秒以上、保持温度:450℃、保持時間:1秒間、降温速度:20℃/秒以上の中間焼鈍を行った。次いで、中間焼鈍を行った当該冷間圧延板を、圧下率:50%で仕上げ冷間圧延を行って仕上げ冷間圧延板とし、その仕上げ冷間圧延板を、保持温度:220℃、保持時間:3時間で仕上げ焼鈍を行うことで、実施例1〜5および比較例1〜9に示す成分組成を備えたアルミニウム合金板を製造した。なお、表1における下線は、本発明の要件を満たしていないことを示す。
比較例2は、Mnの含有量が本発明で規定する下限値未満であり、比較例3は、Mnの含有量が本発明で規定する上限値を超えている。
比較例4は、Mgの含有量が本発明で規定する下限値未満であり、比較例5は、Mgの含有量が本発明で規定する上限値を超えている。
比較例6は、Siの含有量が本発明で規定する下限値未満であり、比較例7は、Siの含有量が本発明で規定する上限値を超えている。
比較例8は、Feの含有量が本発明で規定する下限値未満であり、比較例9は、Feの含有量が本発明で規定する上限値を超えている。
実施例1〜5および比較例1〜9のアルミニウム合金板の板表面の圧延平行方向における結晶粒径および圧延垂直方向における結晶粒径は、JIS H0501の方法に基づいて測定した。すなわち、アルミニウム合金板を研磨して鏡面仕上げとした後、表面をエッチングし、倍率が100倍の金属顕微鏡により金属組織を観察、写真撮影した。この際、圧延方向に平行および直角な方向に既知の長さの線分(例えば、1mm)を引き、線分の長さを、線分により切断された結晶粒の数で除することにより、結晶粒1個当たりの結晶粒幅を求めた(切断法)。場所を変えて同様の測定を繰返し行い(5箇所)、その平均値を各方向の平均結晶粒径とした。板表面の圧延平行方向における結晶粒径が50μm以下のものを好適と評価し、50μmを超えるものを不適と評価した。板表面の圧延垂直方向における結晶粒径が30μm以下のものを好適と評価し、30μmを超えるものを不適と評価した。
まず、実施例1〜5および比較例1〜9のアルミニウム合金板からJIS Z 2201に規定されている5号試験片を作製した。
そして、引張試験は、かかる試験片を用いてJIS Z 2241に規定の金属材料引張試験方法に準拠して行った。今般PPキャップとして要求されている天面部高強度化、耐内圧性能向上を踏まえ、引張強さは150MPa以上を好適と評価した。
耳率は、実施例1〜5および比較例1〜9のアルミニウム合金板から直径φ40mmのブランクを作製し、直径φ76.9mmのポンチで絞り(絞り率48%)、この際の絞りカップの耳高さから算出した。すなわち、通常生じる8つの山谷の平均差をカップの平均高さで除算したものである(下記数1参照)。90度耳(山)はマイナス表示、45度耳はプラス表示であり、本発明では耳率が0%以上+3%未満のものをPPキャップに用いるのに好適であると評価した。なお、耳率が前記範囲を超えると、ブランクに印字した後、絞り成形してPPキャップを製造した際に、PPキャップの側面の印字が曲がることが強く懸念されるので好ましくない。
キャップ絞り成形性は、従来の28径PPキャップのキャップシェル成形について評価を行った。キャップサイズは内径φ28mm、高さを17mmとした。これを、φ55mmのサイズのブランクから1回の絞り成形にて成形した。
なお、結晶粒径が大きい場合、強度が過剰な場合、耳率が過大な場合、絞り成形時に割れや欠円を生じる恐れがある。
キャップシェル成形にて、問題なく成形できたものを「○」と評価し、欠円や絞り成形による肌荒れが生じたもの「△」、割れや破断により成形できなかったものを「×」と評価した。
キャップの巻き締め性の評価は、密封性、開栓性を保持する上で極めて重要な特性である。キャップシェル成形後、常法によりキャップ天面付近の側壁にローレット加工を施すとともに、開口部付近側壁にミシン目加工およびスコア加工を施した後、内面に樹脂製モールドを装着した。その後、当該キャップシェルに適応したサイズのガラス瓶に専用の巻き締め機にて巻き締め成形を実施した。
このとき、結晶粒径が大きい場合や強度が過剰の場合には、回転ロールの圧入時にネジ部に肌荒れが生じることがある。また、強度が過大の場合には、ネジが十分に装入されず密封が不完全となったり、ネジ部に亀裂が生じたりする恐れがある。
キャップ巻き締め成形時に、ネジ部の深さを十分に確保でき、密封性が確保できたものを「○」、ネジ部に肌荒れが生じたものを「△」、ネジ加工が不十分で密封が不完全となったり、ネジ部に亀裂が生じたりしたもの、または、巻き締め時のロール圧入によりミシン目が破断したものを「×」と評価した。
巻き締め後にトルクメーターを使用してキャップの開栓性を測定した。開栓トルクは通常3段階で評価される。つまり、キャップと瓶が相対的に滑りを生じるトルク(第1トルク)、ミシン目の破断トルク(第2トルク)、スコア破断によるリングの脱離トルク(第3トルク)が開栓過程で極大値として測定され、評価される。
この中で特に重要なのは、キャップの巻き締め成形性の影響を受けるミシン目破断時の第2トルクであり、ネジ成形性や材料の適切な破断特性が要求される。第2トルクの適正値は用途によって様々であるが、どの様な用途であっても1Nmを超えると一般消費者は容易に開けることはできない。
良好な開栓挙動で第2トルクが1Nm以下であるものを「○」、ネジ成形深さが不十分でキャップが空回りして開栓できなかったり、第2トルクが1Nmを超えたりするものを「×」と評価した。なお、キャップ巻き締め成形性で「×」の評価が得られた場合は、キャップ開栓性の評価を行うことができないので、かかる評価を行わなかった(「−」)。
一方、比較例1〜9は、本発明で規定する要件のいずれかを満たさないので、(a)〜(d)の各項目のいずれかにおいて良好な評価結果を得ることができなかった。
比較例2は、Mnの含有量が本発明で規定する下限値未満であるので、強度および耳率が好ましくない結果となった。
比較例3は、Mnの含有量が本発明で規定する上限値を超えているので、キャップ巻き締め成形性およびキャップ開栓性が好ましくない結果となった。
比較例4は、Mgの含有量が本発明で規定する下限値未満であるので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径、強度について好ましくない結果となった。
比較例5は、Mgの含有量が本発明で規定する上限値を超えているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径、キャップ巻き締め成形性およびキャップ開栓性について好ましくない結果となった。
比較例6は、Siの含有量が本発明で規定する下限値未満であるので、キャップ絞り成形性が好ましくない結果となった。
比較例7は、Siの含有量が本発明で規定する上限値を超えているので、耳率およびキャップ絞り成形性およびキャップ巻き締め成形性が好ましくない結果となった。
比較例8は、Feの含有量が本発明で規定する下限値未満であるので、板表面の圧延平方向における結晶粒径、板表面の圧延垂直方向における結晶粒径、耳率、キャップ絞り成形性、およびキャップ巻き締め成形性について好ましくない結果となった。
比較例9は、Feの含有量が本発明で規定する上限値を超えているので、耳率、キャップ絞り成形性、およびキャップ巻き締め成形性について好ましくない結果となった。
具体的には、比較例10または比較例11は、予備均質化熱処理(表3では「予備均熱」と表示)の処理温度が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例12または比較例13は、予備均質化熱処理の処理時間が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例14または比較例15は、均質化熱処理の処理温度が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例16または比較例17は、均質化熱処理の処理時間が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例18または比較例19は、熱間圧延の圧延終了温度(表3では「熱延終了温度」と表示)が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例20または比較例21は、冷間圧延の圧下率(表3では「冷延率」と表示)が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例22または比較例23は、中間焼鈍(表3では「中鈍」と表示)の保持温度が本発明で規定する上限値または下限値をそれぞれ外れている。
比較例24は、中間焼鈍の保持時間が本発明で規定する上限値を外れている。
比較例25は、中間焼鈍の昇温速度が本発明で規定する下限値を外れている。
比較例26は、中間焼鈍の降温速度が本発明で規定する下限値を外れている。
比較例27または比較例28は、仕上げ冷間圧延の圧下率(表3では「仕上冷間圧延率」と表示)が本発明で規定する下限値または上限値をそれぞれ外れている。
比較例29または比較例30は、仕上げ焼鈍の保持温度(表3では「仕上焼鈍温度」と表示)が本発明で規定する下限値または上限値をそれぞれ外れている。
なお、仕上げ焼鈍の保持時間の作用は、コイル処理におけるロット内のばらつきと、素材表面酸化膜に影響するものであり、今回評価対象としているキャップ特性とは直接的な関連性はないので、保持時間については評価しなかった。
つまり、PPキャップ用アルミニウム合金板を問題なく製造することができる、製造可否の評価が「○」の例についてのみ、前記と同様の特性評価を行うこととした。
なお、キャップ絞り成形性で「×」の評価が得られた場合は、キャップ巻き締め成形性の評価、およびキャップ開栓性の評価を行うことができないので、これらの評価を行わなかった(「−」)。
一方、比較例11〜30は、本発明で規定する要件のいずれかを満たさないので、表面品質、生産性、(a)〜(d)の各項目のいずれかにおいて良好な評価結果を得ることができなかった。
比較例13は、予備均質化熱処理の処理時間が本発明で規定する下限値を外れているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径、キャップ絞り成形性、およびキャップ巻き締め成形性が好ましくない結果となった。
比較例17は、均質化熱処理の処理時間が本発明で規定する下限値を外れているので、耳率が好ましくない結果となった。
比較例19は、熱間圧延の圧延終了温度が本発明で規定する下限値を外れているので、未再結晶粒が残存していただけでなく、耳率およびキャップ絞り成形性が好ましくない結果となった。
比較例21は、冷間圧延の圧下率が本発明で規定する下限値を外れているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径、板表面の圧延垂直方向における結晶粒径、および耳率が好ましくない結果となった。また、キャップ絞り成形性およびキャップ巻き締め成形性が好ましくない結果となった。
比較例23は、中間焼鈍の保持温度が本発明で規定する下限値を外れているので、未再結晶粒が残存していただけでなく、耳率およびキャップ絞り成形性が好ましくない結果となった。
比較例25は、中間焼鈍の昇温速度が本発明で規定する下限値を外れているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径および耳率が好ましくない結果となった。また、キャップ絞り成形性が好ましくない結果となった。
比較例26は、中間焼鈍の降温速度が本発明で規定する下限値を外れているので、強度が低く、好ましくない結果となった。
比較例27は、仕上げ冷間圧延の圧下率が本発明で規定する下限値を外れているので、強度および耳率が好ましくない結果となった。また、キャップ絞り成形性が好ましくない結果となった。
比較例28は、仕上げ冷間圧延の圧下率が本発明で規定する上限値を外れているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径および耳率が好ましくない結果となった。また、キャップ絞り成形性、キャップ巻き締め成形性、およびキャップ開栓性が好ましくない結果となった。
比較例30は、仕上げ焼鈍の保持温度が本発明で規定する上限値を外れているので、板表面の圧延平行方向における結晶粒径、板表面の圧延垂直方向における結晶粒径、および強度が好ましくない結果となった。
S2 面削工程
S3 均質化熱処理工程
S4 熱間圧延工程
S5 冷間圧延工程
S6 中間焼鈍工程
S7 仕上げ冷間圧延工程
S8 仕上げ焼鈍工程
Claims (1)
- Cu:0.3質量%以下、Mn:0.2〜0.5質量%、Mg:0.2〜0.6質量%、Si:0.1〜0.3質量%、Fe:0.2〜0.7質量%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物から構成されるアルミニウム合金のスラブを、
保持温度:550〜630℃、保持時間:1〜10時間の条件で予備均質化熱処理を行う予備均質化熱処理工程と、
前記予備均質化熱処理を行った前記スラブの表面を面削する面削工程と、
表面を面削した前記スラブを、保持温度:450〜530℃、保持時間:1〜10時間の均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理を行った前記スラブを、圧延終了温度:300〜380℃の熱間圧延を行い、熱間圧延板とする熱間圧延工程と、
前記熱間圧延板を、圧下率:50〜90%の冷間圧延を行い、冷間圧延板とする冷間圧延工程と、
前記冷間圧延板を、昇温速度:10℃/秒以上、保持温度:400〜530℃、保持時間:0〜10秒間、降温速度:10℃/秒以上の中間焼鈍を行う中間焼鈍工程と、
前記中間焼鈍を行った前記冷間圧延板を、圧下率:10〜60%で仕上げ冷間圧延を行い、仕上げ冷間圧延板とする仕上げ冷間圧延工程と、
前記仕上げ冷間圧延板を、保持温度:200〜260℃、保持時間:1〜4時間で仕上げ焼鈍を行い、アルミニウム合金板を製造する仕上げ焼鈍工程と、
を含むことを特徴とするPPキャップ用アルミニウム合金板の製造方法。
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