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JP2745254B2 - 局部張出性に優れたアルミニウム合金硬質板およびその製造方法 - Google Patents

局部張出性に優れたアルミニウム合金硬質板およびその製造方法

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Publication number
JP2745254B2
JP2745254B2 JP3162185A JP16218591A JP2745254B2 JP 2745254 B2 JP2745254 B2 JP 2745254B2 JP 3162185 A JP3162185 A JP 3162185A JP 16218591 A JP16218591 A JP 16218591A JP 2745254 B2 JP2745254 B2 JP 2745254B2
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JP
Japan
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less
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aluminum alloy
hard plate
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JP3162185A
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Inventor
伸二 照田
富次夫 田中
政文 溝内
Original Assignee
スカイアルミニウム株式会社
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Filing date
Publication date
Application filed by スカイアルミニウム株式会社 filed Critical スカイアルミニウム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム缶の缶体
における深絞り用途の缶胴や缶の蓋材等として使用され
る成形加工用アルミニウム硬質板およびその製造方法に
関し、特に焼付塗装後の強度が高く局部張出性及び曲げ
性に優れたアルミニウム合金硬質板およびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にアルミニウム缶の蓋材としては、
高強度にもかかわらず、深絞り性、張出し性能や曲げ加
工性に良好な成形性を有することから、5052合金、
5082合金、5182合金等の5000番系の合金が
用いられている。特にビールその他の炭酸飲料用の缶の
蓋材においては内圧が加わる用途であることから、焼付
塗装後の耐力が300N/mm2以上の高強度が要求さ
れるため5182合金が主に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記した缶蓋材の製造
過程において、コイルコートと呼ばれる240〜350
℃で5〜30秒程度の比較的高温で短時間の焼付塗装が
行われ、この際に強度低下が生じる。従って、この焼付
塗装による強度低下の少ない材料または強度低下をおぎ
なう製造方法が求められる。また缶蓋としての性能とし
て、ディンプル加工やリベット成形の様に局部的な張出
し性能が良好であることやプルタブのイージーオープン
エンドの場合の開蓋時の曲げ割れが起きないことが求め
られる。
【0004】前記した缶材用合金の主流である5182
合金では、前記焼付塗装において、強度低下が大きいた
め、冷間圧下率を多くとることにより初期強度を高める
ことで強度低下を補ってきた。しかしながら、この冷間
圧下率を多くとることで初期強度を高めることには、デ
ィンプル加工やリベット成形の様に局部的な張出し性能
が悪化し、またプルタブのイージーオープンエンドの場
合開蓋時の曲げ割れの点などで不十分な性能となってい
る。今後の缶材の低コストのためには缶材の薄肉化・高
強度が要求されるが、従来の5182合金の成分範囲・
製造方法の範囲内での対応は難しいものとなってきてい
る。本発明はこれらの問題を解決するために、塗装焼付
け後の強度が高く、成形加工性に優れたアルミニウム合
金硬質板およびその製造方法を提供することを目的とす
るものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは前記問題点を
解決するために合金元素並びに製造方法を鋭意研究した
結果、焼付塗装後の強度の低下を少なくするためには時
効性を高めること、および成形時の材料の流れを阻害す
る要因である転位の低減及び転位の移動を阻害する微細
な不溶性金属間化合物を低減させることにより前記目的
が達成されることを見出した。具体的には本発明は次の
通りに構成される。
【0006】請求項1記載の発明の合金板は、Mg3.
0〜6.0wt%,Cu0.15〜0.5wt%,Fe
0.05〜0.6wt%、Si<0.3wt%を含有す
ることを必須としMn0.05〜0.6wt%Cr
<0.3wt%,Zr<0.3wt%、V<0.3wt
%、Zn<0.5wt%のうち1種または2種以上を含
有し、かつMn+Fe+Cr+Zr+V<1.0wt%
であり残部実質的にアルミニウムおよび不純物とする合
金で、長手方向の直径が0.5μm以下の不溶性の金属
間化合物が400μm2当り800個以下であることを
特徴とする局部張出性に優れたアルミニウム合金硬質板
である。また請求項2記載の発明の製造方法は、Mg
3.0〜6.0wt%,Cu0.15〜0.5wt%
Fe0.05〜0.6wt%、Si<0.3wt%を含
有することを必須としMn0.05〜0.6wt%
Cr<0.3wt%,Zr<0.3wt%、V<0.3
wt%、Zn<0.5wt%のうち1種または2種以上
を含有し、かつMn+Fe+Cr+Zr+V<1.0w
t%であり残部実質的にアルミニウムおよび不純物とす
る合金を、DC鋳造した後500〜580℃で2時間以
上の加熱を行ない、その後常法に従い圧延を施した後、
1℃/sec以上の加熱速度で400〜580℃の範囲
の温度に加熱して直ちにもしくは120sec以内の短
時間保持後、1℃/sec以上の冷却速度で冷却する中
間焼鈍を施し、さらに30%以上の圧延率で最終冷間圧
延を施すことにより、長手方向の直径が0.5μm以下
の不溶性の金属間化合物が400μm2当り800個以
下である板を得ることを特徴とする局部張出性に優れた
アルミニウム合金硬質板の製造方法である。また請求項
3記載の発明の製造方法は、請求項2記載の方法におい
て、前最終冷間圧延の後に100℃/hr以下の加熱
速度で100〜200℃の範囲の温度に加熱し30分以
上保持する最終焼鈍を施すことを特徴とする局部張出性
に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法である。以
下、本発明においては合金成分の%とはwt%を意味
し、また金属間化合物の大きさを示している0.5μm
とは長手方向の直径における値を意味するものである。
【0007】
【作用】まず本発明における素材アルミニウム合金の成
分組成範囲の限定理由を説明する。本発明の成形用アル
ミニウム硬質板における合金元素は、主として素材アル
ミニウム合金の強度を高めるとともに、塗装焼付時にお
ける軟化を抑制し、合わせて微細な金属間化合物サイズ
の適切な制御を容易とするために添加されるものであ
る。Mg;MgはCuとの共存によりG.P.ゾーン、
S'Al2CuMg、SAl2CuMgといった析出過程
により中間相の析出段階では強度向上に寄与するととも
に時効硬化に寄与する。更にMg単独でも固溶体強化に
寄与する。このように強度向上には不可欠な元素である
が、Mg量が3wt%未満では内圧容器の蓋材として必
要な強度が得られない。一方Mg量が6%を越えた場合
には加工硬化し過ぎて成形性を悪くするのみならず熱間
圧延時の圧延性を著しく阻害する。そこでMg量は3〜
6%の範囲内とした。Cu;CuはMgと同様にそれ自
体で固溶強化に寄与するとともに、焼付け処理時のAl
−Cu−Mg系析出物の析出による時効硬化によって焼
付塗装後の強度向上に寄与する元素である。Cu量が
0.5wt%を越えた場合は時効硬化は容易に得られる
ものの過度に硬化して成形性を損うため、Cu量の添加
上限を0.5wt%とした。一方0.15%未満ではそ
の効果が少なく、従ってCu量は0.15〜0.5wt
%の範囲内とした。Si;Siは一般にMgとの共存に
よりMg2Si系化合物を析出して時効硬化に寄与する
効果があるものの、Mg量が高濃度の合金系においては
巨大金属間化合物を生成しやすいため成形性を著しく阻
害する。Si量が0.3%未満では比較的その影響は少
ないため、Si量は0.3wt%未満とした。Mn;M
nは強度向上に寄与するばかりでなく、高温強度を向上
させる働きもある。MnはFeと共存することによりS
iをAl(Mn,Fe)Si系不溶性化合物の形で生成
し、従って、Mg2Siの生成を少なくする効果があ
る。Mn量が0.05%未満ではその効果がない。上記
の化合物のうち長手方向の直径が0.5μm以下の微細
化合物は、後述するように時効性及び成形性を著しく阻
害するが、Mn量が0.6%を越えてはこのAl(M
n,Fe)Si系不溶性化合物の0.5μm以下の微細
化合物量が多くなる。従ってMn量は0.05〜0.6
wt%の範囲内とした。Fe;FeはMnと共にSiの
析出を促進しMg2Siの生成を少なくするのに必要な
元素である。Fe量が0.05wt%未満ではその効果
が少なく、Fe量が0.6wt%を越えてはMnと共存
することによりAl(Mn,Fe)Si系不溶性化合物
の0.5μm以下の微細化合物量を多くする。従ってF
e量は0.05〜0.6wt%の範囲内とした。またこ
のほかに、Cr、Zr、V、ZnはいずれもCr量は
0.3wt%未満、Zr量は0.3wt%未満、V量は
0.3wt%未満、Zn量は0.5wt%未満ならば本
発明の効果を失わずに強度向上に寄与する。しかしM
n,Fe,Cr,Zr、Vが共存する状態ではアルミニ
ウムマトリックス中で微細な不溶性化合物を生成するの
で、これらの元素の総量はMn+Fe+Cr+Zr+V
<1.0wt%でなければならない。
【0008】以上の各成分の残部はAl及び不純物とす
れば良い。なお通常のアルミニウム合金においては、鋳
塊結晶粒微細化のためにTi単独あるいはTiとBを組
み合わせて微量添加することがあり、本発明においても
微量のTi、あるいはTiおよびBを含有することは許
容される。但しTiを添加する場合、その添加量は0.
01wt%未満では鋳塊結晶粒微細化の効果が得られ
ず、一方0.2wt%を越えては初晶TiAl3が晶出
して成形性を阻害することから、Ti量は0.01〜
0.2wt%の範囲内とすることが好ましい。またTi
と共にBを添加する場合、B添加量は1ppm未満では
その効果がなく、500ppmを越えるとTiB2の粗
大粒子が混入して成形性を害することから、B量は1〜
500ppmの範囲内とすることが好ましい。
【0009】本願発明の成形用アルミニウム合金硬質板
においては、前述のように各合金成分組成を規定するだ
けでなく、最終圧延板の状態においての金属間化合物の
分散状態を適切に調整することが極めて重要である。す
なわち、請求項記載のごとく0.5μm以下の不溶性の
金属間化合物が400μm2当り800個以下であるこ
とが必要である。これを模式図で示すと図1のようにな
る。このような金属間化合物の分散状態とすることによ
り、以下のような効果がある。 a)本来、時効析出による硬化現象は図1に示すように
GPゾーンのような極微細な析出物2がアルミニウムマ
トリックス中に析出して転位の移動を妨げることにより
硬化するものである。しかるに組織中に不溶性金属間化
合物1が存在すると、上記の極微細析出物は塗装焼付の
ような時効に相当する熱処理においてこの不溶性化合物
上に優先的に析出してしまい、その分強度への寄与はな
くなりその結果硬化が不充分となる。特に0.5μm以
下の不溶性の金属間化合物はAl2CuMg等の時効析
出物の析出核となりやすい。本発明では0.5μm以下
の不溶性の金属間化合物を400μm2当り800個以
下と規定することにより、時効析出物はアルミニウムマ
トリックス中に分散して存在する量が多くなり、強度向
上や軟化の抑制の効果が増大する。 b)また、時効析出物であるAl−Cu−Mg系化合物
がアルミニウムマトリックス中に存在すると、転位の動
きをピン止して強度が上がる時効硬化性を示すととも
に、焼付塗装等の熱履歴において転位をピン止して転位
の回復による軟化を抑える作用がある。従って焼付塗装
における軟化防止のためにもマトリックス中に時効析出
物を多量に析出させる必要がある。 c)また、上記の金属間化合物が多くなると成形加工時
に材料の流動を阻害し、曲げ加工時などに曲げ割れを生
じたり局部張出性が悪くなるなどの成形性の悪化が生じ
る。従って、この点においても金属間化合物は少ないほ
うが望ましい。
【0010】次に、請求項2記載の成形用アルミニウム
硬質板を製造する方法について説明する。まず前述のよ
うな合金組成を有する合金の溶湯をDC鋳造する。つい
で500〜580℃2時間以上の均熱または加熱を行
う。本発明の合金成分組成において生成する0.5μm
以下の不溶性の金属間化合物は、主に鋳塊の加熱段階で
生じる析出物である。この0.5μm以下の微細な不溶
性の金属間化合物の析出は450〜500℃近傍がもっ
とも進行し、500℃より高温側ではこの微細な析出物
は固溶して平衡関係にある比較的粗大な金属間化合物の
形態で析出し、その結果微細な析出物は減少し粗大なも
のがさらに大きくなり球状化する。従って、0.5μm
以下の金属間化合物を少なくするために、500℃以上
でしかも2時間以上の保持を行なう。一方、580℃を
越えると部分的な溶解が始り操業上好ましくない。この
ことから均熱または加熱の条件として500〜580℃
2時間以上の保持時間とする。均熱または加熱の後、常
法に従い熱間圧延及び冷間圧延を施して所要の中間板厚
とする。この時、所要の板厚によっては冷間圧延が入ら
ず熱間圧延のみによっても良い。その後、加熱速度およ
び冷却速度が1℃/sec以上で到達温度400〜58
0℃、保持時間0〜2minの中間焼鈍を施すことによ
りCu等の時効硬化に寄与する合金成分を固溶状態と
し、引続き冷間圧延で転位を導入することにより、最終
焼鈍もしくは焼付塗装処理時に時効析出物であるAl2
CuMg等が析出して軟化を抑えることができる。この
中間焼鈍においては、到達温度は400℃未満では上述
の効果が得られず一方580℃より高温では部分的な溶
解が生じCAL(連続焼鈍炉)のような通常の設備で焼
鈍することが難しくなる。また、高温での焼鈍であるこ
とから表面酸化を少なくすること等を考慮して加熱速度
および冷却速度は1℃/sec以上とし、保持時間は2
分以内であればその障害は少ない。また一旦固溶した元
素の再析出を防ぐ意味でも冷却速度は速い方がよい。特
にMn系の析出物は中間焼鈍のように転位が存在する状
態においては300℃程度の温度でも十分析出を開始す
る。従って本発明に規定するごとく0.5μm以下の金
属間化合物を少なくするために、中間焼鈍は上述のごと
く急速加熱、急速冷却の高温短時間保持とする必要があ
る。中間焼鈍後、圧延率30%以上の最終冷間圧延を施
す。冷間圧延率は30%以上でないと所望の強度が得ら
れない。なお、冷間圧延後のコイル巻取温度は110℃
以下とすることが好ましい。コイル巻取後の温度が11
0℃以上の温度になると、冷間圧延時の内部および冷延
ロールとの摩擦により一時的に温度が上昇し、時効析出
する前に転位の回復が起こるため充分な最終強度が得に
くくなる。従って比較的回復速度の遅い110℃より低
い温度で冷間圧延が仕上がれば強度低下は少ない。
【0011】また最終焼鈍は施さなくても充分に効果が
あるが、さらに高強度の材料を得るためには、請求項3
記載のごとく加熱速度100℃/hr以下で到達温度1
00〜200℃,保持時間30min以上の最終焼鈍を
施すことが望ましい。この最終焼鈍を施すことにより高
強度化することができるとともに、高強度化をそれほど
必要としない場合においてはその分の冷間加工率を下げ
ることができ成形性向上を期待することができる。缶蓋
の焼付塗装は比較的高温短時間の処理であるので、焼付
塗装処理前の状態であらかじめAl−Cu−Mg系G.
P.ゾーン、S’相の析出物を存在させることにより、
焼付塗装処理時の加熱における転位の回復をピン止して
軟化を抑える効果がある。このためにも予備時効として
最終焼鈍を施すことが望ましい。焼鈍条件として短時間
で高温に到達すると析出よりも回復が優先してしまうた
め強度向上が得られない。従って昇温時の比較的回復速
度の遅い時点から時効析出させるために加熱速度は10
0℃/hr以下であればよい。また時効析出を十分に行
なうためには、到達温度は100−200℃でかつ保持
時間は30min以上必要である。具体的には最終焼鈍
を行うことにより、塗装焼付処理後の耐力で最大20N
/mm2程度高めることが出来る。
【0012】この様にして得られたアルミニウム硬質板
においては、TEMにより3000倍の視野で、どの視
野を見ても0.5μm以下の不溶性の金属間化合物が4
00μm2当り800個以下となる組織が得られる。上
述した製造方法等による本発明の合金成分組成割合およ
び金属間化合物の分散状態を有した成形用アルミニウム
硬質板は、イージーオープン缶用の蓋等に使用される材
料として必要な塗装焼付け後の強度が従来材の5182
合金と同等ないしそれ以上であり、かつ成形性特に曲げ
性および局部張出し性が従来材より格段に優れたもので
ある。従って従来よりも缶蓋の薄肉化、軽量化を計り得
る成形用素材となる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。表
1は合金成分組成割合を示したもので、製造符号A〜E
の合金は本願発明で規定している成分組成範囲内のも
の、製造符号Fの合金はMnの組成範囲およびMn+F
e+Cr+Zr+Vの合計量が本発明の規定からはずれ
ているもの、また製造符号Gの合金は5182合金に相
当するものである。
【0014】
【表1】
【0015】表2は製造条件および本発明で規定する
0.5μm以下の不溶性化合物の個数を示したものであ
る。表1に示した各合金について表2に示す製造プロセ
スを適用して、最終板厚0.3mmの圧延板を得た。製
造においては従来例である製造符号Gの耐力値300N
/mm2にあわせて冷間圧延率を調整してある。製造符
号A、B、C、F、Gについては本発明の製造方法の範
囲内で条件を変化させたものであり、製造符号Dは中間
焼鈍時の昇温速度を本発明の製造条件より遅くしたも
の、製造符号Eは本発明に比較して均熱温度が低いもの
であり他の条件は製造符号Cと同一製造工程で製造し
た。またGは従来例である。すなわち、 Aは、本発明で請求項2の製造条件に従うもの Bは、本発明で最終焼鈍を施したもので請求項3の条件
に従うもの Cは、本発明でBと同様最終焼鈍し、最終冷間圧延率を
50%としたもの Dは、比較例で中間焼鈍時の昇温速度を遅くしたもの Eは、比較例で均熱温度が低いもの Fは、比較例で合金組成が異なるもの Gは、従来例で5182合金を本発明記載の製造条件で
製造したものである。
【0016】
【表2】
【0017】このようにして得られた材料についてその
性能を調べた結果を表3に示した。性能としては275
℃x20secの熱履歴に相当する塗装焼付処理を各材
料に施して、機械的性質、曲げ性、局部張出性の評価お
よびエリクセン試験を行なった。曲げ性の試験は、曲げ
ラインが圧延方向となる方向で曲げ半径を板厚の1/2
(実施例においては0.15mm)とした180゜曲げ
を行ない、その曲げ面の割れの評価でランクづけした。 ランク評価は 1:割れ無し 2:クビレ程度の割れ有り 3:割れが認められる 4:割れが全域に認められる 局部張り出し試験は、直径φ=2mm、先端曲率半径R
=1mmのポンチ4を用い、ダイス5上に試験材料6を
載置して局部張り出しプレス成形を行なうことらより評
価した。試験値の評価方法は、ポンチ4の長さを1.0
mmから1.9mmまで0.1mm置きに10段階に変
化させ、割れが発生した段階のポンチ長さより1段階短
いもののポンチ長さを割れの発生しない限界として表示
した。例えばポンチ長さ=1.5mmの段階で割れが発
生した場合は局部張り出し試験値は1.4mmと表示し
た。従ってこの試験値の値が大きいほど局部張り出し成
形性は良好と評価することができる。
【0018】
【表3】
【0019】表3からわかるように、本発明に係る合金
組成割合のものを本発明に規定する金属間化合物の分散
状態にした場合、強度も充分にありまた曲げ性等の成形
性も格段と良好なものが得られている。そして、本発明
の請求項2ないし請求項3の製造方法によることで、上
記の金属間化合物の分散状態を得ることができる。一
方、本発明の合金組成割合であっても製造条件が従来法
である場合は金属間化合物の分散状態が本発明と異な
り、軟化が大きく高強度も得られず従来技術と同程度の
ものでしかない。また本発明の製造条件であっても、合
金組成割合が本発明と異なる場合において同様に充分な
強度、成形性がなく従来技術と同程度でしかない。以
下、各々について説明する。Cは本願発明のうちで最良
の合金組成、冷間圧延条件および最終焼鈍方法としたも
ので、引張強さ、耐力等の強度も充分にあり、また曲げ
性ランク、エリクセン、局部張出し等の成形性において
も格段と良好なものが得られている。Aは、発明例であ
るがCに対して最終焼鈍を行なわないもので、Cの発明
例と同一強度にするためには冷間圧下率を高めざるを得
ず、性能的には若干劣っているものの従来例Gと比較し
て優れた結果となっている。Bは、発明例であるがCに
対して冷延上がり温度が高いもので、Cの発明例と同一
強度にするために冷間圧下率を高めざるを得ず、Aと同
様に性能的には若干劣っているものの従来例Gに比較し
て優れた結果となっている。Dは本発明と比較するため
中間焼鈍時の加熱速度を遅くしたもので、耐力値を合せ
るために冷間圧下率を高めてあり、金属間化合物の数は
本発明の範囲内をはずれ従来例Gより劣る性能となっ
た。Eは発明例Cに比較して、均熱条件を変えたもので
ある。この場合0.5μm以下の不溶性化合物の個数は
表2に示すように1500個/400μm2と多くなり、その
結果詳述した作用効果により耐力値で5N/mm2低く
なり、さらに曲げ性等の性能は従来例と同程度となっ
た。Fは発明例に比較して、製造方法は本発明の範囲内
であるが成分のうちMn含有量が多いものである。この
場合0.5μm以下の不溶性化合物の個数は表2に示す
ように2000個/400μm2と多くなっており、強度的に
は冷間圧延率が低くても充分な強度が得ることができる
が、曲げ性等の成形性は従来例よりも劣る結果となって
いる。Gは従来用いられている5182合金を本発明記
載の製造条件で製造したものであるが、発明例に対して
強度で10N/mm2低くまた曲げ性等の成形性も大幅
に低い。以上のように、本発明に係る合金組成および
0.5μm以下の不溶性の金属間化合物が400μm2
当り800個以下という分散状態であるアルミニウム硬
質板においては、強度ならびに成形性の面で従来より格
段と優れてものを得ることができる。また本発明材にお
いて、曲げ性等の成形性を従来材と同等で構わないなら
ば、さらに冷間圧延率を増加させることで高強度な材料
を得ることが可能である。すなわち、缶材の薄肉化に対
応した高強度材料を得ることができる。
【0020】
【効果】以上、詳述したごとく本発明の素材アルミニウ
ム合金の成分組成範囲で、かつ最終圧延板の状態におい
ての金属間化合物の分散状態を適切に調整することによ
り、塗装焼付け後の強度が従来材である5182合金と
同等ないしそれ以上であり、かつ成形性特に曲げ性およ
び局部張出し性が従来材より格段に優れた缶蓋材等に好
適なアルミニウム合金硬質板が得られる。従ってイージ
ーオープン缶用の蓋等に使用される材料として従来より
も缶蓋の薄肉化、軽量化を計り得る成形用素材となる。
また、本発明の請求項2記載の製造方法により、上記の
金属間化合物の分散状態を容易にかつ品質的に安定して
得ることができる。また、請求項3記載のごとく最終焼
鈍を施すことによりさらに高強度化することができると
ともに、高強度化をそれほど必要としない場合において
はその分の冷間加工率を下げることができ、その結果成
形性を向上することができる。具体的には最終焼鈍を行
うことにより、塗装焼付処理後の耐力で最大20N/m
2程度高めることが出来る。従って最終焼鈍を施すこ
とが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における化合物の分散状態を示
す図である。
【図2】本発明の実施例における局部張り出し試験方法
を示す断面である。
【符号の説明】
1 0.5μm以下の不溶性化合物 2 不溶性化合物上に時効析出したAl−Cu−Mg系
析出物 3 マトリックス中に時効析出したAl−Cu−Mg系
析出物 4 ポンチ 5 ダイス 6 試験材料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 686 C22F 1/00 686B 691 691A 691B 691C 692 692A 694 694A

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg3.0〜6.0wt%,Cu0.1
    5〜0.5wt%,Fe0.05〜0.6wt%、Si
    <0.3wt%を含有することを必須とし、Mn0.0
    5〜0.6wt%Cr<0.3wt%,Zr<0.3
    wt%、V<0.3wt%、Zn<0.5wt%のうち
    1種または2種以上を含有し、かつMn+Fe+Cr+
    Zr+V<1.0wt%であり残部実質的にアルミニウ
    ムおよび不純物とする合金で、長手方向の直径が0.5
    μm以下の不溶性の金属間化合物が400μm2当り8
    00個以下であることを特徴とする局部張出性に優れた
    アルミニウム合金硬質板。
  2. 【請求項2】 Mg3.0〜6.0wt%,Cu0.1
    5〜0.5wt%,Fe0.05〜0.6wt%、Si
    <0.3wt%を含有することを必須としMn0.0
    5〜0.6wt%Cr<0.3wt%,Zr<0.3
    wt%、V<0.3wt%、Zn<0.5wt%のうち
    1種または2種以上を含有し、かつMn+Fe+Cr+
    Zr+V<1.0wt%であり残部実質的にアルミニウ
    ムおよび不純物とする合金を、DC鋳造した後500〜
    580℃で2時間以上の加熱を行ない、その後常法に従
    い圧延を施した後、1℃/sec以上の加熱速度で40
    0〜580℃の範囲の温度に加熱して直ちにもしくは1
    20sec以内の短時間保持後、1℃/sec以上の冷
    却速度で冷却する中間焼鈍を施し、さらに30%以上の
    圧延率で最終冷間圧延を施すことにより、長手方向の直
    径が0.5μm以下の不溶性の金属間化合物が400μ
    2当り800個以下である板を得ることを特徴とす
    部張出性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の方法において、前最終
    冷間圧延の後に100℃/hr以下の加熱速度で100
    〜200℃の範囲の温度に加熱し30分以上保持する最
    終焼鈍を施すことを特徴とする局部張出性に優れたアル
    ミニウム合金硬質板の製造方法。
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