JP3981505B2 - 深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はレトルト容器、器物、包装容器など、深絞り加工により成形を行なう用途のアルミニウム合金軟質板の製造方法に関するものであり、特に薄質な箔の状態で、樹脂フィルムと貼り併せて用いる用途に適したアルミニウム合金軟質板であって、高強度を有するとともに絞り加工性に優れ、かつ安定して耳率が低く、また表面品質、耐食性にも優れた深絞り加工用アルミニウム合金軟質板を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にレトルト容器や器物、キャップなどには、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムを貼り合わせ(ラミネート)した箔状のアルミニウム板を深絞り加工により成形して使用することが多い。このような用途のアルミニウム合金としては、従来からJIS 1050合金、1100合金、1200合金などのAl−Fe−Si系合金の完全焼鈍軟質材(O材)あるいはH1n、H2nテンパー材などが使用されている。
【0003】
ところでこれらの用途のアルミニウム合金板には、均一な機械的性質を有すること、深絞り成形において低耳率であること、高強度を有すること、成形性が優れていること、表面品質が優れていること、さらに樹脂ラミネートアルミニウム箔として良好な耐食性を示すように樹脂フィルムとの密着性が良好であること等が要求されている。
【0004】
一方最近では主として低コスト化の観点から、上述のような樹脂ラミネートアルミニウム箔として使用されるアルミニウム合金板についても、従来よりも一層薄肉化を図ることが要求されており、それに伴なって従来より高強度を有することが求められ、またレトルト容器製品などとして、輸送時等において凹みが生じないことなど、取扱い性が良好であることが求められており、その点からもより一層の高強度が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のようなJIS 1050合金、1100合金、1200合金等のAl−Fe−Si系合金のO材は、成形性は良好であるものの、強度が低く、前述の要求には充分に応えることができないという問題あり、一方H1nテンパー材やH2nテンパー材は、強度的には前述の要求に応えることが可能であるが、成形性が劣ってしまうという根本的な問題がある。そこで3004合金などのAl−Mn−Mg系合金を用いることも考えられるが、この種の従来のAl−Mn−Mg系合金では、強度と成形性はある程度確保できるものの、樹脂フィルムとの密着性に劣り、そのため樹脂ラミネートアルミニウム箔として耐食性が低下してしまうおそれがあり、そのため実用化はためらわれていたのが実情である。
【0006】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、レトルト容器等の樹脂ラミネートアルミニウム箔などの深絞り向けの用途に使用されるアルミニウム合金板として、軟質材でも強度および絞り成形性に優れ、さらに樹脂フィルムとの密着性も良好で、また耳率も安定して低く、表面品質も優れた材料を得る方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前述の課題を解決するべく、鋭意実験・検討を重ねた結果、合金の成分系を基本的にAl−Fe−Mn−Mg系として各成分元素の含有量を適切に規制し、さらに製造プロセス、特に均質化処理、熱間圧延、1次冷間圧延、中間焼鈍、2次冷間圧延、最終焼鈍の各条件を適切に規制することによって、前述の課題を解決し得ることを見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0008】
具体的には、請求項1の発明の深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法は、Fe0.3〜0.9%、Mn0.7〜1.5%、Mg0.1〜0.7%を含有し、さらにSi0.01〜0.5%、Cu0.01〜0.5%、Cr0.01〜0.5%、Zr0.01〜0.5%、V0.01〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、B0.0001〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊に530℃以上の温度で均質化処理を施した後、熱間圧延開始温度を380〜580℃の範囲内、熱間圧延終了温度を200〜300℃の範囲内として熱間圧延を行ない、さらに50%以上の圧延率で1次冷間圧延を行なった後、250〜500℃の範囲内の温度で0.5時間以上保持する中間焼鈍を行ない、その後50%以上の圧延率で2次冷間圧延を行ない、さらに最終焼鈍として、100℃/hr以下の昇温速度で250〜500℃の範囲内の温度に加熱して0.5時間以上保持するバッチ焼鈍を行ない、これにより引張強さ120MPa以上、伸び15%以上、深絞り耳率3%以下、平均結晶粒径60μm以下の最終板を得ることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明の深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法は、Fe0.3〜0.9%、Mn0.7〜1.5%、Mg0.1〜0.7%を含有し、さらにSi0.01〜0.5%、Cu0.01〜0.5%、Cr0.01〜0.5%、Zr0.01〜0.5%、V0.01〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、B0.0001〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊に530℃以上の温度で均質化処理を施した後、熱間圧延開始温度を380〜580℃の範囲内、熱間圧延終了温度を200〜300℃の範囲内として熱間圧延を行ない、さらに50%以上の圧延率で1次冷間圧延を行なった後、250〜500℃の範囲内の温度で0.5時間以上保持する中間焼鈍を行ない、その後50%以上の圧延率で2次冷間圧延を行ない、さらに最終焼鈍として、50℃/min以上の昇温速度で350〜600℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以内の保持の連続焼鈍を行ない、これにより引張強さ120MPa以上、伸び15%以上、深絞り耳率3%以下、平均結晶粒径60μm以下の最終板を得ることを特徴とするものである。
【0010】
さらに請求項3の発明の深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法は、請求項1、請求項2の方法のいずれかによって得られた最終板に対し、珪酸ソーダ系もしくはリン酸ソーダ系または苛性ソーダ系のアルカリ洗浄液を用いたアルカリ洗浄と、硫酸系酸洗浄液を用いた酸洗浄とのうち、いずれか一方または双方を行なうことを特徴とするものである。
【0011】
そしてまた請求項4の発明の深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法は、請求項3に記載のアルカリ洗浄もしくは酸洗浄の後、化成処理としてリン酸クロメート処理を行なうことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
先ずこの発明の方法で用いる合金の成分組成限定理由について説明する。
【0013】
Fe:
Feはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であり、Al−Fe系、Al−Fe−Si系、あるいはAl−Fe−Mn系の金属間化合物を形成して、結晶粒の微細化を通じて強度向上、成形性向上、表面品質の向上等に寄与する重要な元素である。またFeの固溶と析出、金属間化合物のサイズと分布を適切に制御することによって、最終板の深絞り耳率を低く抑えることが可能となる。ここで、Fe量が0.3%未満では、上述の各効果が充分に得られず、一方0.9%を越えれば、圧延方向に対し45°方向の深絞り耳率が高くなり、また成形性も低下する。したがってFe量は0.3〜0.9%の範囲内とした。
【0014】
Mg:
Mgもこの発明で使用する合金において重要な元素であり、Mgの固溶による強度向上と、Mgの固溶に基づく加工硬化量の増大による強度向上も期待でき、したがって材料の強度向上に不可欠な元素である。またMgは加工時に転位密度を高める作用が大きく、そのため再結晶粒を微細化させるためにも有効である。ここでMg量が0.1%未満では上述の効果が充分に得られず、一方0.7%を越えれば、高強度化は図れるものの、樹脂フィルムとの密着性が悪くなって樹脂ラミネートアルミニウム箔としての耐食性を低下させるおそれがあり、さらには深絞り後にリューダースラインによる外観不良が発生するおそれがある。したがってMg量は0.1〜0.7%の範囲内とした。
【0015】
Mn:
Mnは強度と耳率とのバランス向上に寄与する有効な元素であり、特にAlおよびFeと金属間化合物を生成して、再結晶時の圧延方向に対する0°−90°方向の耳の発達を抑制し、低耳率を達成するために不可欠な元素である。Mn量が0.7%未満では上述の効果が充分に得られず、一方1.5%を越えればMn系の初晶巨大金属間化合物が生じて成形性を著しく損なってしまう。そこでMn量は0.7〜1.5%の範囲内とした。
【0016】
さらにこの発明の方法で用いる合金には、結晶粒微細化を通じて強度向上、成形性向上、および表面品質を向上させるために、Si,Cu,Cr,Zr,V,Ti,Bのうちから選ばれた1種または2種以上を添加する。以下にこれらの選択的添加元素の添加量限定理由を述べる。
【0017】
Si:
Siは通常のアルミニウム合金においても不可避的不純物として含有されることが多い元素であるが、積極的に添加することによって、結晶粒微細化、強度向上、耳率の安定化に効果がある。但しSi量が0.01%未満では上述の効果が充分に得られず、一方0.5%を越えれば耐食性の劣化を招くから、Siを積極添加する場合のSi量は0.01〜0.5%の範囲内とした。なおSiを積極添加しない場合でも、0.01%未満のSiが不可避的不純物として許容されることはもちろんである。
【0018】
Cu:
Cuも結晶粒微細化、強度向上、耳率の安定化に効果がある元素である。Cu量が0.01%未満ではこれらの効果が充分に得られず、一方0.5%を越えれば耐食性の劣化を招いてしまう。したがってCuを添加する場合のCu量は0.01〜0.5%の範囲内とした。
【0019】
Cr,Zr,V:
これらの元素はいずれも結晶粒の微細化および組織の安定化に有効な元素である。Cr,Zr,Vは、いずれもその添加量が0.01%未満では上記の効果が充分に得られず、一方いずれも0.5%を越えれば上記の効果が飽和するばかりでなく、巨大金属間化合物が生成されて絞り加工性に悪影響を及ぼすおそれがある。したがってCr,Zr,Vのいずれもその添加量は0.01〜0.5%の範囲内とした。
【0020】
Ti,B:
通常のアルミニウム合金においては、鋳塊結晶粒微細化のためにTiを単独で、あるいはTiをBと組合せて添加することが多く、この発明の方法で用いる合金においても、微量のTiを単独で、あるいは微量のBと組合せて添加しても良い。但しTi量が0.005%未満では上記の効果が得られず、一方Ti量が0.2%を越えれば巨大なAl−Ti系金属間化合物が晶出して成形性を阻害するから、Ti量の範囲は0.005〜0.2%とした。またTiとともにBを添加すれば鋳塊結晶粒微細化の効果が向上する。このようにTiと併せてBを添加する場合、B量が0.0001%未満ではBの添加効果が得られず、一方0.05%を越えればTi−B系の粗大粒子が生成されて成形性を害するから、Bを添加する場合のB添加量は0.0001〜0.05%の範囲内とした。
【0021】
なお以上の各元素のほかは、Alおよび不可避的不純物とすれば良い。
【0022】
次にこの発明の方法における製造プロセスについて説明する。
【0023】
先ず前述のような成分組成の合金溶湯を常法に従って溶製し、さらにDC鋳造法などの常法に従って鋳造し、鋳塊とする。得られた鋳塊に対しては530℃以上の温度で均質化処理を施す。この均質化処理は、鋳造時に生じた元素の偏析を解消させるばかりでなく、Fe,Mnの固溶と析出、およびこれらの金属間化合物のサイズと分布を調整して、成形性の向上と最終板の低耳率を得るために不可欠である。均質化処理の温度が530℃未満ではこれらの効果が充分に得られないから、均質化処理の温度は下限を530℃以上とした。なお均質化処理温度の上限は特に規制しないが、一般には共晶溶融が生じないように630℃以下とすることが好ましい。また均質化処理の時間も特に限定しないが、通常は1時間〜48時間程度が適当である。
【0024】
均質化処理後の鋳塊に対しては熱間圧延を施す。この熱間圧延は、最終板の機械的性質、表面品質、耳率に大きな影響を及ぼす重要な工程である。熱間圧延開始温度が380℃未満の場合には、熱間圧延中における再結晶が抑制されて、その後の耳率の調整が困難となるばかりでなく、熱間圧延終了温度(上がり温度)も低くなり、潤滑不良、水腐食などにより表面品質を低下させるおそれがある。一方熱間圧延開始温度が580℃を越えれば、熱間圧延中に形成された結晶粒が粗大化し、表面品質を低下させるおそれがある。したがって熱間圧延開始温度は380〜580℃の範囲内とする必要がある。また熱間圧延終了温度が300℃を越える場合は、不均一な粗大結晶粒が形成されるおそれがあり、一方熱間圧延終了温度が200℃未満では、潤滑不良、水腐食が発生するおそれがある。したがって熱間圧延終了温度は200〜300℃の範囲内とする必要がある。
【0025】
熱間圧延終了後には、中間焼鈍前に50%以上の圧延率で1次冷間圧延を施す。このような中間焼鈍前の50%以上の圧延率の1次冷間圧延は、その後の中間焼鈍時に微細な再結晶粒組織を得るために必要であるばかりでなく、熱間圧延条件の変動に起因する機械的性質のばらつきを解消するためにも不可欠である。ここで1次冷間圧延の圧延率が50%未満では、上記の効果が充分に得られない。なお1次冷間圧延率の上限については特に定めないが、通常は、2次冷間圧延率を確保する観点から、90%以下とすることが好ましい。
【0026】
1次冷間圧延後にはバッチ炉を用いて中間焼鈍を施す。この中間焼鈍は、材料を完全に再結晶させ、最終板の成形性を向上させるだけではなく、深絞りにおける45°方向の耳を抑制して、最終板の低耳率化に不可欠である。
【0027】
ここで、中間焼鈍の焼鈍温度が250℃未満では再結晶が進行し難く、完全再結晶状態となるまでに著しい長時間を要するようになって生産性を阻害し、一方焼鈍温度が500℃を越える高温では、結晶粒が粗大化するばかりでなく、表面に酸化皮膜が厚く形成されて、樹脂フィルムとの密着性を低下させるおそれがある。したがって中間焼鈍温度は250〜500℃の範囲内とする必要がある。なお中間焼鈍において表面酸化皮膜の形成を確実に抑制するためには、焼鈍温度は430℃以下とすることが好ましく、また不活性ガス雰囲気で焼鈍することが好ましい。また中間焼鈍における加熱保持時間が0.5時間未満では、均一な完全再結晶組織を得ることが困難となるおそれがあるから、焼鈍時間は0.5時間以上とした。なお焼鈍時間の上限は特に規制しないが、一般には経済性などから、48時間以下とすることが好ましい。
【0028】
中間焼鈍後には圧延率50%以上の2次冷間圧延を行なう。この50%以上の圧延率の2次冷間圧延は、所要の板厚とするために必要であるばかりてなく、その後の最終焼鈍時において微細な結晶粒組織を得るために必要であり、さらには絞り加工時に生じる耳の高さを最小限に抑えるためにも必要である。2次冷間圧延の圧延率が50%未満ではこれらの効果が充分に得られず、したがって2次冷間圧延の圧延率は50%以上とする必要がある。なお2次冷間圧延の圧延率の上限は特に限定しないが、通常は耳率の安定性の点から98%以下とすることが好ましい。
【0029】
2次冷間圧延後には、バッチ炉を用いた昇温速度100℃/時間以下のバッチ焼鈍もしくは連続焼鈍炉を用いた昇温速度50℃/分以上の連続焼鈍によって、最終焼鈍を行なう。この最終焼鈍は、材料を完全再結晶させ、軟質材として成形性を向上させるばかりでなく、耳率を3%以下に抑制するために必要である。
【0030】
ここで、バッチ炉を用いた最終焼鈍の場合、加熱保持温度が250℃未満では、再結晶が進行し難くなり、完全再結晶状態となるまでに著しい長時間を要するようになって生産性を損ない、一方500℃を越える高温では、結晶粒が粗大化するばかりでなく、表面に厚い酸化皮膜が形成されて、樹脂フィルムとの密着性を低下させるおそれがある。またバッチ炉による最終焼鈍の加熱保持時間が0.5時間未満では、均一な完全再結晶組織を得ることが困難となる。したがって最終焼鈍をバッチ焼鈍とする場合には、250〜500℃の範囲内の温度で0.5時間以上保持とした。なおこの場合の保持時間の上限は特に規制しないが、通常は経済性の点から48時間以内とすることが好ましい。
【0031】
一方、最終焼鈍を急速昇温−高温短時間加熱の連続焼鈍方式(CAL)によって行なえば、バッチ焼鈍を適用した場合よりも、結晶粒をより微細化することができる。このように連続焼鈍によって最終焼鈍を行なう場合、350℃未満の加熱温度では完全再結晶組織を得ることが困難であり、一方600℃を越える高温では、結晶粒の粗大化が生じるとともに、共晶融解が生じるおそれがある。また連続焼鈍における350〜600℃の範囲内での保持時間が10分を越えれば上記の効果が飽和し、経済性を損なう。したがって最終焼鈍に連続焼鈍を適用する場合の条件としては、350〜600℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以下の保持とした。
【0032】
以上のように最終焼鈍を施して得られた最終板は、引張強さが120MPa以上、伸びが15%以上、深絞り耳率が3%以下、結晶粒平均サイズが60μm以下であることが必要である。ここで引張強さが120MPa未満では、強度不足で薄肉化に充分に対応することができず、また容器等の製品の輸送時の取扱い性を充分に確保することが困難となる。また伸びが15%未満では、充分な成形性を有するとは言えない。さらに耳率が3%を越える場合は深絞り加工における歩留りを充分に向上させることができない。そしてまた結晶粒平均サイズが60μmを越えれば、成形加工時に肌荒れ等の表面品質の低下を招く。
【0033】
前述のようにして得られた最終焼鈍後の最終板については、これをそのまま樹脂フィルムとのラミネート、さらには深絞り加工に供しても良いが、最終処理としてアルカリ洗浄と酸洗浄のうちいずれか一方または双方を施したり、またアルカリ洗浄もしくは酸洗浄の後に化成処理としてリン酸クロメート処理を施したりすれば、樹脂フィルムの密着性を向上させて、樹脂ラミネートアルミニウム箔としての耐食性を、より一層改善することができる。
【0034】
ここで、アルカリ洗浄としては、珪酸ソーダ系もしくはリン酸ソーダ系、あるいは苛性ソーダ系のアルカリ洗浄液を用いることができる。また珪酸ソーダ系、リン酸ソーダ系、苛性ソーダ系のいずれを用いる場合も、珪酸ソーダもしくはリン酸ソーダまたは苛性ソーダの濃度が0.5〜5%の洗浄液を用い、液温30〜90℃で3〜30秒間洗浄することが望ましい。
【0035】
一方酸洗浄としては、硫酸濃度が5〜15%の硫酸洗浄液を用い、液温30〜80℃で3〜30秒間洗浄することが適当である。
【0036】
このようにアルカリ洗浄もしくは酸洗浄を行なうことにより、最終板の表面を粗面化して、機械的なアンカー効果によって樹脂フィルムとの密着性を向上させることができる。
【0037】
さらに、上述のようなアルカリ洗浄もしくは酸洗浄を行なった後に化成処理としてリン酸クロメート処理を施す場合、リン酸クロム濃度1〜5%、フッ酸濃度0.1〜3%の混合溶液を用い、20〜70℃で1〜20秒、塗布量1〜40mg/m2 で塗布し、その後150〜250℃で1分以内の条件で焼付けを行なうことが好ましい。そしてこのようにアルカリ洗浄もしくは酸洗浄の後にリン酸クロメート処理を施して化成皮膜を形成すれば、、樹脂フィルムとの密着性を、より一層向上させることができる。
【0038】
【実施例】
表1に示すこの発明の成分組成範囲内の合金A1〜A3およびこの発明の成分組成範囲外の合金B1,B2について、それぞれ常法にしたがってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を施した後、熱間圧延を行ない、さらに圧延板に対して1次冷間圧延を行ない、次いでバッチ炉にて中間焼鈍を行なってから2次冷間圧延を行ない、その後バッチ焼鈍(BAF)もしくは連続焼鈍(CAL)により最終焼鈍を施した。これらの工程の詳細な条件を表2に示す。なお表2中において、最終焼鈍条件の欄の「0sec」は、所定の温度に到達後、保持せずに直ちに冷却したことを表わす。
【0039】
以上のようにして得られた最終板について、機械的性質(引張強さ、耐力、伸び)および平均結晶粒サイズを調べるとともに、深絞り加工を行なって耳率および耳の発生方向を調べた。それらの結果を表3中に示す。ここで、耳率は、ポンチ径32mmφ、ブランク径56mmφの条件でカップ深絞り試験を行なった時の耳率、方向を調べた。
【0040】
また前述のようにして得られた最終板の一部について、アルカリ洗浄もしくは酸洗浄を行ない、さらにアルカリ洗浄を行なった板の一部について化成処理としてリン酸クロメート処理を行ない、各板について耐食性を調べたので、その結果を表3中に示す。なおアルカリ洗浄条件は、リン酸ソーダ系洗浄液を用い、濃度2%、温度70℃、時間約13秒とした。また酸洗浄条件は、上記のアルカリ洗浄後、硫酸濃度10%の酸洗浄液を用い、温度50℃、時間約13秒とした。さらに化成処理としてのリン酸クロメート処理条件は、上記のアルカリ洗浄後、リン酸クロム2%、フッ酸0.5%の混合溶液を用い、40℃で約5秒、塗布量10mg/m2 、焼付け温度170℃、焼付時間10秒とした。そして耐食性については、無処理の板および各処理を施した板の表面に、厚さ50μmのポリオレフィン系樹脂フィルムを貼り付けた後、クロスカットして1ケ月の塩水噴霧試験を行ない、5段階評価を行なった。なおこの耐食性の段階評価については、3以上は合格レベル、5で最も良好と評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表1〜表3において、製造番号1〜3の例はいずれも合金の成分組成がこの発明で規定する範囲内でしかも製造プロセス条件もこの発明で規定する範囲内の本発明例であり、これらの場合はいずれも強度および伸びが良好であって、引張強さ120MPa以上、伸び15%以上の条件を満たしており、しかも耳率も3%以下で充分に低く、さらに結晶粒も微細で平均結晶粒径60μm以下の条件を充分に満たし、かつまた樹脂フィルムとのラミネート後の耐食性も良好であった。
【0045】
一方製造番号4は、合金の成分組成はこの発明の範囲内であるが、製造プロセスがこの発明を逸脱した比較例、すなわち中間焼鈍および2次冷間圧延を行なわなかった比較例である。この場合は強度は高いものの、耳率が4.6%と高くなってしまった。
【0046】
また製造番号5は、この発明の成分組成範囲外の合金、すなわちMn,Mgを実質的に添加せずかつSi量が多過ぎた合金を用いた比較例であり、製造プロセスはこの発明で規定する条件を満たしているが、最終板の強度が低くなってしまった。
【0047】
さらに製造番号6も、この発明の成分組成範囲外の合金、特に0.7%を越える多量のMgを添加した合金を用いた比較例であり、製造プロセスはこの発明で規定する条件を満たしているが、樹脂フィルムとの密着性が劣り、そのため樹脂をラミネートした状態での耐食性が劣っていることが判明した。
【0048】
なお樹脂ラミネート後の耐食性については、無処理のままの板よりも、酸洗浄やアルカリ洗浄、化成処理を行なった場合に改善されていることが表3から明らかである。
【0049】
【発明の効果】
前述の実施例からも明らかなように、この発明の方法によれば、強度と成形性に優れ、さらに深絞り耳率も安定して低いとともに表面品質も良好であって、しかも樹脂フィルムとの密着性も良好で樹脂フィルムとラミネートした状態での耐食性が良好なアルミニウム合金軟質板を、確実かつ安定して得ることができる。したがってこの発明の方法は、特にレトルト容器、器物、キャップなど、樹脂とラミネートしかつ深絞り加工を施して使用される軟質板の製造に最適である。
Claims (4)
- Fe0.3〜0.9%(重量%、以下同じ)、Mn0.7〜1.5%、Mg0.1〜0.7%を含有し、さらにSi0.01〜0.5%、Cu0.01〜0.5%、Cr0.01〜0.5%、Zr0.01〜0.5%、V0.01〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、B0.0001〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊に530℃以上の温度で均質化処理を施した後、熱間圧延開始温度を380〜580℃の範囲内、熱間圧延終了温度を200〜300℃の範囲内として熱間圧延を行ない、さらに50%以上の圧延率で1次冷間圧延を行なった後、250〜500℃の範囲内の温度で0.5時間以上保持する中間焼鈍を行ない、その後50%以上の圧延率で2次冷間圧延を行ない、さらに最終焼鈍として、100℃/hr以下の昇温速度で250〜500℃の範囲内の温度に加熱して0.5時間以上保持するバッチ焼鈍を行ない、これにより引張強さ120MPa以上、伸び15%以上、深絞り耳率3%以下、平均結晶粒径60μm以下の最終板を得ることを特徴とする、深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法。
- Fe0.3〜0.9%、Mn0.7〜1.5%、Mg0.1〜0.7%を含有し、さらにSi0.01〜0.5%、Cu0.01〜0.5%、Cr0.01〜0.5%、Zr0.01〜0.5%、V0.01〜0.5%、Ti0.005〜0.2%、B0.0001〜0.05%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、その鋳塊に530℃以上の温度で均質化処理を施した後、熱間圧延開始温度を380〜580℃の範囲内、熱間圧延終了温度を200〜300℃の範囲内として熱間圧延を行ない、さらに50%以上の圧延率で1次冷間圧延を行なった後、250〜500℃の範囲内の温度で0.5時間以上保持する中間焼鈍を行ない、その後50%以上の圧延率で2次冷間圧延を行ない、さらに最終焼鈍として、50℃/min以上の昇温速度で350〜600℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは10分以内の保持の連続焼鈍を行ない、これにより引張強さ120MPa以上、伸び15%以上、深絞り耳率3%以下、平均結晶粒径60μm以下の最終板を得ることを特徴とする、深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法。
- 請求項1、請求項2の方法のいずれかによって得られた最終板に対し、珪酸ソーダ系もしくはリン酸ソーダ系または苛性ソーダ系のアルカリ洗浄液を用いたアルカリ洗浄と、硫酸系酸洗浄液を用いた酸洗浄とのうち、いずれか一方または双方を行なうことを特徴とする、深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法。
- 請求項3に記載のアルカリ洗浄もしくは酸洗浄の後、化成処理としてリン酸クロメート処理を行なうことを特徴とする、深絞り加工用アルミニウム合金軟質板の製造方法。
Priority Applications (1)
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