JP3811548B2 - タイヤトレッド用ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム組成物に関し、更に詳細には、耐摩耗性、低燃費性及び湿潤路面における制動性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点から省エネルギーの自動車が望まれている。そこで自動車部品の一つであるタイヤにおいても燃費効率の高いものが求められる様になってきた。
【0003】
従来、燃費効率の高いタイヤとするために、タイヤの転がり抵抗を低減させるタイヤトレッド用ゴム組成物が種々提案されている。例えば、タイヤトレッド用ゴム組成物にヒステリシスロスの少ないポリマーを使用する技術がある。また、大粒径のカーボンブラックを使用する方法も提案されている。また、カーボンブラックとオイルを低充填化したり、またカーボンブラックに変えてシリカを利用すること等も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、タイヤトレッド用ゴム組成物中にヒステリシスロスの少ないポリマーを使用すると、タイヤの転がり抵抗は改善されるものの、湿潤路面における制動性が低下する問題がある。また、タイヤトレッド用ゴム組成物中に大粒径のカーボンブラックを使用する場合も、タイヤの転がり抵抗は改善されるが、耐摩耗性が低下する問題がある。また、タイヤトレッド用ゴム組成物中でカーボンブラックとオイルとを低充填化した場合は、耐摩耗性、特に耐偏摩耗性が低下する。タイヤトレッド用ゴム組成物中にシリカを使用した場合は、カーボンブラックと比べると、低燃費性及び湿潤路面における制動性は向上するが、耐摩耗性及び加工性が低下する。
【0005】
本発明の課題は、高い耐摩耗性を維持しつつ、低燃費性及び湿潤路面における制動性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ガラス転移温度が−40℃〜−20℃であるとともに、ラテックスムーニー粘度(ML1+4、100℃)が120以上であり、かつ溶液重合によるスチレンブタジエンゴムであるAゴム成分、ガラス転移温度が前記Aゴム成分より低いスチレンブタジエンゴムであるBゴム成分、カーボンブラック及びシリカを含むゴム組成物であって、(1)Aゴム成分をムーニー粘度(ML1+4、100℃)が45〜75になるように油展してなる油展Aゴム成分と、(2)Bゴム成分にヨウ素吸着量が120〜180g/kgのカーボンブラックをムーニー粘度(ML1+4、100℃)が前記油展Aゴム成分の1.8倍以上になるように混入してなるカーボンマスターバッチと、(3)シリカとをブレンドしてなることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物を採用した。
【0007】
このようなゴム組成物では、カーボンマスターバッチは油展Aゴム成分に比べて粘度が極めて高いため、カーボンマスターバッチと油展Aゴム成分とは相溶性が低く、カーボンマスターバッチは油展Aゴム成分中に偏分散している。すなわち、油展Aゴム成分と、カーボンマスターバッチとは、いわゆる海島構造を形成している。なお、この海島構造において、油展Aゴム成分とカーボンマスターバッチとは、いずれが、海島構造の海部であってもよいが、本発明では、油展Aゴム成分が海部である。また、カーボンマスターバッチは油展Aゴム成分より粘度が高いので、シリカは油展Aゴム成分中に分散し易い。
【0008】
従って、上記条件下においては、シリカを含有している油展Aゴム成分と、カーボンブラックを含有しているBゴム成分との各ゴム成分がゴム組成物中にそれぞれ適度な相溶性を有しながら適度な不均一状態にて偏在していることから、油展Aゴム成分とBゴム成分の各ゴム成分が適度な不均一領域において独自の作用効果を過不足なく発揮することになる。よって、油展Aゴム成分の領域では、耐摩耗性は低下する傾向にあるが、Bゴム成分に対して相対的に高いガラス転移点を有するAゴム成分特有の作用効果である湿潤路面における制動性が向上する。また、加えて同高ガラス転移点を有する油展Aゴム成分中にはシリカが配合されていることから、このシリカ成分との相乗効果によって更に一層湿潤路面における制動性が向上し、また低燃費性も向上する。一方、Bゴム成分の領域では、相対的に低いガラス転移点を有するBゴム成分特有の作用効果である耐摩耗性が発揮されると共に、タイヤの転がり抵抗は減少して低燃費性が向上する。さらに、同低ガラス転移点を有するBゴム成分中にはカーボンブラックが配合されていることから、このカーボンブラック成分との相乗効果によって更に一層耐摩耗性が発揮される。従って、シリカ配合の油展Aゴム成分とカーボンブラック配合のBゴム成分との両ゴム成分によって、高い耐摩耗性を維持して、低燃費性と湿潤路面における制動性を改善することができる。
【0009】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、油展Aゴム成分中のゴム成分Aとカーボンマスターバッチ中のゴム成分Bとの重量比は、Aゴム成分/Bゴム成分=0.3〜1であり、ゴム組成物中のカーボンブラックとシリカとの総量(全フィラー総量)に対してシリカの割合は、25〜70重量%で、かつ全フィラー総量は、ゴム成分100重量部に対して60〜100重量部である。
【0010】
なお、Aゴム成分において、スチレン含有量は20重量%以上である。
【0011】
【発明の実施の形態】
Aゴム成分として用いられるスチレンブタジエンゴムにおいて、ガラス転移温度は−40℃〜−20℃、好ましくは−35℃〜−25℃である。Aゴム成分のガラス転移温度が−40℃未満の場合は、湿潤路面における制動性が低下する。一方、ガラス転移温度が−20℃を越える場合は低温特性が低下し、耐摩耗性が低下するとともに、タイヤの低燃費性が低下する。
【0012】
Aゴム成分のラテックスムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、120以上(例えば、120〜170)であるのが好ましい。ラテックスムーニー粘度が低すぎると、耐磨耗性が低下する。なお、ムーニー粘度はゴム分子の分子量と関係があり、ムーニー粘度が高くなると、分子量が高くなる。ムーニー粘度は、JIS K6300により測定できる。なお、ムーニー粘度の表示として、(ML1+4、100℃)は、100℃、大ローターを使用して予熱1分後更に4分後のムーニー粘度を表している。
【0013】
また、Aゴム成分であるスチレンブタジエンゴムは、溶液重合により得られるものを好適に使用できる。溶液重合では、ブロック共重合体のスチレンブタジエンゴムを得ることができるため、熱可塑性の度合いが大きく、成形性が高いゴムが得られる。また、分子量分布が狭く、耐摩耗性に優れている。
【0014】
スチレンブタジエンゴム中のスチレンの割合としては、特に制限されないが、Aゴム成分全体に対して、好ましくは15重量%以上(例えば、15〜50重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、20〜40重量%)である。また、1,2ビニル結合量は、特に制限はなく、Aゴム全体に対して、好ましくは15重量%以上(例えば、15〜50重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、20〜40重量%)である。これらの割合が低すぎると、路面把握性、すなわち、湿潤路面における制動性が低下する。なお、1,2ビニル結合量とは、1,2ビニル結合をしているブタジエンの割合のことをいう。また、スチレンの割合や1,2ビニル結合量におけるAゴム成分全体とは、スチレンの量と、1,2ビニル結合しているブタジエンの量と、トランス結合しているブタジエンの量と、シス結合しているブタジエンの量との総量をいう。
【0015】
Bゴム成分のスチレンブタジエンゴムとしては、前記Aゴム成分より低いガラス転移温度を有するものが使用できる。ゴム成分(Aゴム成分、Bゴム成分)としては、異なるガラス転移温度を有するゴム成分を用い、これらの成分を偏分散させているため、前述のように、湿潤路面における制動性と、耐摩耗性、およびタイヤの転がり抵抗の減少による低燃費性とを高いレベルで両立できるゴム組成物が得られる。
【0016】
Bゴム成分に含有させるカーボンブラックは、ヨウ素吸着量(IA)が120g/kg以上(例えば、120〜180g/kg)のものが使用できる。カーボンブラックのIAが過小であると、耐摩耗性が低下する。一方、IAが過多であると、低燃費性が低下し、タイヤの転がり抵抗が高くなる。なお、カーボンブラックにおけるヨウ素吸着量は、ASTM D1510により測定できる。
【0017】
カーボンブラックとしては、例えば、ATSMコードが、N110、N220、N234などのカーボンブラックが例示できる。
【0018】
本発明では、カーボンブラックを、Bゴム成分中に、ムーニー粘度が前記油展Aゴム成分に対して1.8倍以上になるように配合させて、カーボンマスターバッチを調製する。なお、カーボンマスターバッチの調製に際しては、オイルを用いることができる。カーボンマスターバッチのムーニー粘度が、油展Aゴム成分のムーニー粘度の1.8倍より小さいと、油展Aゴム成分と、Bゴム成分と、カーボンブラックとが混合して、それぞれの均質分散性が高くなり、したがって、ゴム組成物の不均一分散性が低下する。すなわち、本発明では、油展Aゴム成分と、この油展Aゴム成分の粘度より高い粘度を有するカーボンマスターバッチとを混合しているため、ゴム組成物中では、Aゴム成分の作用と、Bゴム成分の作用とを有効に発現できる。
【0019】
なお、Bゴム成分のスチレンブタジエンゴムは、乳化重合により得られたものであってもよく、溶液重合により得られるものであってもよい。
【0020】
このようなBゴム成分としては、例えば、日本合成ゴム(株)社から市販されている商品名:SBR0120などが使用できる。なお、この商品は乳化重合により得られたスチレンブタジエンゴムであり、ラテックスムーニー粘度(ML1+4、100℃)は110である。
【0021】
シリカとしては、ゴムの配合シリカとして慣用的に用いられているシリカ(例えば、沈降シリカなど)を用いることができる。シリカの比表面積、例えば、窒素ガスの吸着量(N2 SA)は、特に制限されないが、100〜250m2 /gであるのが好ましい。また、ジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、特に限定されないが、好ましくは150〜250ml/100gである。なお、N2 SAは、ASTM D3037に準じて測定でき、DBP吸油量は、JIS K6221に準じて測定できる。このようなシリカには、商品名:ニップシールAQ(日本シリカ社製)、商品名:ニップシールVN3(日本シリカ社製)、商品名:トクシールUR(徳山曹達社製)などが含まれる。
【0022】
本発明では、シリカは、シランカップリング剤と組み合わせて使用できる。シランカップリング剤をシリカとともに、油展Aゴム成分に配合させると、Aゴム成分とシリカとの相互作用を大きく促進することができる。シランカップリング剤としては、加水分解性シリル基を有する有機珪素化合物、特に加水分解性シリル基及び硫黄を有する有機珪素化合物を好適に使用できる。シランカップリング剤には、例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィドなどのビス−(トリC1-4 アルコキシシリル−C2-3 アルキル)−S1-4 スルフィド(S1-4 において、Sは硫黄原子を示し、数字は硫黄原子の数を示す。例えば、S2 スルフィドはジスルフィドのことを表し、S4 スルフィドはテトラスルフィドのことを表す)などが含まれる。シランカップリング剤としては、例えば、商品名Si69(デグッサ社製)などとして入手できる。なお、シランカップリング剤の使用量は、例えば、シリカの重量に対して5〜15重量%であり、通常、10重量%程度である。
【0023】
本発明のゴム組成物において、油展Aゴム成分中のゴム成分Aとカーボンマスターバッチ中のゴム成分Bとの割合は、Aゴム成分/Bゴム成分=0.3〜1(重量比)、好ましくは0.5〜0.8(重量比)である。この範囲が過小であると、湿潤路面における制動性が低下する。一方、過多であると、耐摩耗性が低下する。
【0024】
シリカの割合は、ゴム組成物中のカーボンブラックとシリカとの総量(全フィラー総量)に対して25〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。また、全フィラー総量は、ゴム成分100重量部に対して60〜100重量部、好ましくは70〜100重量部である
【0025】
本発明のゴム組成物には、慣用的に用いられる各種添加剤、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、酸化亜鉛、充填剤(無機質充填剤、有機質充填剤など)、可塑剤、粘着付与剤、ワックス、老化防止剤、オゾン亀裂防止剤、しゃく解剤等を配合してもよい。なお、本発明のゴム組成物は、タイヤトレッド用であり、加硫剤(例えば、硫黄など)、加硫促進剤を含有している。
【0026】
また、油展Aゴム成分は、カーボンブラックを含んでいてもよい。このカーボンブラックのヨウ素吸着量は、特に限定されない。このようなカーボンブラックとしては、例えば、前記カーボンマスターバッチで用いられるカーボンブラックの他、N339などが挙げられる。
【0027】
本発明のゴム組成物は、油展Aゴム成分と、カーボンマスターバッチと、シリカとを混合して調製できる。調製に際しては、(1)油展Aゴム成分中にカーボンマスターバッチが不均一分散するように、慣用の方法、例えば、バンバリーミキサーを用いて混合し、この混合物にシリカや添加剤などを配合して調製する方法、(2)油展Aゴム成分とシリカとを混合し、この混合物にカーボンマスターバッチを不均一分散するように配合して調製する方法などを採用できる。特に、本発明では、前記調製方法(1)であっても、主として油展Aゴム成分中に、シリカを分散させることができる。これは、油展Aゴム成分のムーニー粘度が、カーボンマスターバッチのムーニー粘度より、顕著に小さいからである。
【0028】
なお、カーボンマスターバッチは、スチレンブタジエンゴムと、カーボンブラックと、必要に応じてオイル(プロセスオイルなど)とを混合して調製できる。混合に際しては、慣用の方法を採用でき、例えば、混合機(バンバリーミキサーなど)による混合方法などを利用できる。
【0029】
本発明のゴム組成物は、前述のように、湿潤路面における制動性と、耐摩耗性、およびタイヤの転がり抵抗の減少による低燃費性とを高いレベルで両立できるため、タイヤトレッド用ゴム組成物として有用である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(油展ゴム成分の調製例)
表1に示す組成、ガラス転移温度及びラテックスムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有するスチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」と称する場合がある)を油展し、表1に示すムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有する油展ゴム成分(油展SBR−A〜油展SBR−F)を調製した。なお、SBRとしては、油展SBR−Aでは、乳化重合により得られたSBR(日本合成ゴム社製、商品名:SBR0120)を用い、その他の油展SBR(油展SBR−B〜油展SBR−F)では、溶液重合により調製されたSBRを用いた。以下の実施例及び比較例では、これらの油展ゴム成分を用いた。
【0031】
【表1】
【0032】
(カーボンマスターバッチの調製例)
表2に示すSBR(重合方法:乳化重合)及びカーボンブラック(以下、「CB」と称する場合がある)を用いて、表2に示すムーニー粘度を有するカーボンマスターバッチ(CMB−1〜CMB−4)を調製した。より詳細には、SBRと、CBと、オイル(プロセスオイル)とを、バンバリーミキサーにて混合してカーボンマスターバッチを調製した。以下の実施例及び比較例では、これらのカーボンマスターバッチを用いた。
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例1〜6および比較例1〜9)
表3、表4に示す重量割合(表中、括弧内の数値はゴム成分量を示す)で、混合機(バンバリミキサー)に油展ゴム成分、カーボンマスターバッチの順に投入し、さらに全ゴム成分100重量部に対してシリカ、シランカップリング剤、カーボンブラック(ATSM表示:N339、表3および表4中では「CB(N339)」と称する)、オイルと、亜鉛華3重量部、ステアリン酸2重量部、老化防止剤(N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン)1重量部、ワックス2重量部とを投入して混合し、排出する。排出された混合ゴムをシート状に成型して冷却した後、硫黄2重量部、加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフィンアミド)2重量部を添加して再度混合し、ゴム組成物を得た。
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
(ゴム組成物の評価)
実施例1〜6及び比較例1〜9で得られたゴム組成物をタイヤトレッドゴムとして用いてタイヤサイズ185/70R14のタイヤを定法により試作し、湿潤路面での制動性、低燃費性及び耐摩耗性について、それぞれ、以下に示した評価方法により評価した。その結果を表3、表4に併記する。
【0038】
(湿潤路面での制動性の評価)
湿潤路面での制動性は、上記実施例及び比較例に係るタイヤをトレーラーに装着し、水深2〜3mmで水をまいた路面において、速度60Km/hにてロックさせたときの摩擦係数を測定し、比較例1を100として指数表示する。 数値が大きいほど、湿潤路面での制動性は良好である。
【0039】
(低燃費性の評価)
低燃費性は、上記実施例及び比較例に係るタイヤを一軸ドラム試験機で速度80Km/h 、空気圧2Kg/cm2 、荷重400Kgの条件にて転がり抵抗(RR)を測定し、比較例1を100として指数表示する。数値が小さいほど、低燃費性は良好である。
【0040】
(耐摩耗試験の評価)
耐摩耗試験は、上記実施例及び比較例に係るタイヤをタクシーに装着して約2500Kmごとにローテーションし、10000Km走行後の溝深さ(溝の深さ1mmあたりの走行距離)を測定し、比較例1を100として指数表示する。数値が大きいほど、耐摩耗性は良好である。
【0041】
(評価)
表3、表4より、同じ配合組成であるにもかかわらず、比較例1に係るタイヤに対して実施例1に係るタイヤは、高い耐摩耗性を維持しつつ、低燃費性に優れ、かつ湿潤路面での制動性に優れていることが認められる。これは、油展ゴム成分中のSBRと、カーボンマスターバッチ中のSBRとの各ゴム成分がゴム組成物中にそれぞれ適度な相溶性を有しながら適度な不均一状態にて偏在していることから、高ガラス転移温度のSBR成分および低ガラス転移温度のSBR成分の各ゴム成分が適度な不均一領域において独自の作用効果を高いレベルで両立して、過不足なく発揮したためと考えられる。
【0042】
また、実施例2〜6に係るタイヤは、実施例1と同様に、耐摩耗性、低燃費性および潤路面での制動性を高いレベルで両立している。
【0043】
一方、油展ゴム成分中のSBRのガラス転移温度が−40℃未満である比較例2に係るタイヤでは、湿潤路面における制動性が低下している。これは、油展ゴム成分のSBRのガラス転移温度が低すぎるため、シリカを主として油展ゴム成分中に分散できないためである。油展ゴム成分中のSBRのガラス転移温度が−20℃を越える比較例3に係るタイヤでは耐摩耗性が低下するとともに、低燃費性も低下している。これは、油展ゴム成分中のSBRのガラス転移温度が高すぎるためである。
【0044】
また、油展ゴム成分中のSBRのガラス転移温度が、カーボンマスターバッチ中のSBRのガラス転移温度より低い比較例4に係るタイヤでは、湿潤路面における制動性が低下している。これは、ガラス転移温度が高いゴム成分中に、シリカを分散させることができず、シリカ配合の効果が減殺されているためである。
【0045】
比較例5に係るタイヤでは、転がり抵抗、すなわち、低燃費性が低下している。これは、カーボンマスターバッチのムーニー粘度が、油展ゴム成分のムーニー粘度の1.8倍より小さいため、油展ゴム成分とカーボンマスターバッチとの相溶性が高く、両者が適度な不均一状態にて偏在していないためである。
【0046】
比較例6に係るタイヤでは、耐摩耗性が低下している。これは、カーボンマスターバッチ中のカーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)が120g/kg未満であるためである。また、比較例7に係るタイヤでは、転がり抵抗、すなわち、低燃費性が低下している。これは、カーボンマスターバッチ中のカーボンブラックのIAが180g/kgを越えているためである。
【0047】
油展ゴム成分中のSBR(ゴム成分A)とカーボンマスターバッチ中のSBR(ゴム成分B)との割合(Aゴム成分/Bゴム成分(重量比))が1を越える比較例8に係るタイヤでは、転がり抵抗、すなわち、低燃費性が低下するとともに、耐摩耗性が低下している。これは、Bゴム成分の割合が少なすぎ、Bゴム成分特有の作用を有効に発現できないためである。また、ゴム成分Aとゴム成分Bとの割合(Aゴム成分/Bゴム成分(重量比))が0.3未満である比較例9に係るタイヤでは、湿潤路面における制動性が低下している。これは、Aゴム成分の割合が少なすぎ、Aゴム成分特有の作用を有効に発現できないためである。
【0048】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、特定の油展Aゴム成分と、Bゴム成分及びカーボンブラックを含むカーボンマスターバッチと、シリカとをブレンドしているため、各ゴム成分がゴム組成物中にそれぞれ適度な相溶性を有しながら適度な不均一状態にて偏在するとともに、カーボンブラックはゴム成分B中に、シリカはゴム成分A中に、それぞれ、分散しているため、各成分特有の作用効果を有効に発現できる。すなわち、本発明のゴム組成物をタイヤトレッド用ゴムとして用いると、耐摩耗性、低燃費性および湿潤路面における制動性を高いレベルで両立されたタイヤを提供することができる。
Claims (3)
- ガラス転移温度が−40℃〜−20℃であるとともに、ラテックスムーニー粘度(ML1+4、100℃)が120以上であり、かつ溶液重合によるスチレンブタジエンゴムであるAゴム成分、ガラス転移温度が前記Aゴム成分より低いスチレンブタジエンゴムであるBゴム成分、カーボンブラック及びシリカを含むゴム組成物であって、(1)Aゴム成分をムーニー粘度(ML1+4、100℃)が45〜75になるように油展してなる油展Aゴム成分と、(2)Bゴム成分にヨウ素吸着量が120〜180g/kgのカーボンブラックをムーニー粘度(ML1+4、100℃)が前記油展Aゴム成分の1.8倍以上になるように混入してなるカーボンマスターバッチと、(3)シリカとをブレンドしてなることを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
- 油展Aゴム成分中のゴム成分Aとカーボンマスターバッチ中のゴム成分Bとの重量比がAゴム成分/Bゴム成分=0.3〜1であり、ゴム組成物中のカーボンブラックとシリカとの総量(全フィラー総量)に対してシリカの割合が25〜70重量%で、かつ全フィラー総量がゴム成分100重量部に対して60〜100重量部である請求項1記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
- Aゴム成分において、スチレン含有量が20重量%以上である請求項1又は2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
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