JP3348187B2 - 高強度pc鋼棒及びその製造方法 - Google Patents
高強度pc鋼棒及びその製造方法Info
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Description
築、橋梁等のプレストレストコンクリート構造物の補強
材として広く使われているPC鋼棒に関わるものであ
り、特にスポット溶接性が良好で且つ強度が1450MP
a 以上である遅れ破壊特性に優れた高強度PC鋼棒及び
その製造方法に関するものである。
ストレストコンクリート構造物の補強材として広く使わ
れているPC鋼材は、通常、JIS G3536に規定
されているPC鋼線及びPC鋼より線、JIS G31
09に規定されているPC鋼棒が使われている。PC鋼
線に用いられる材料はJIS G3502に適合したピ
アノ線材であり、パテンティング処理をした後、伸線加
工することにより製造される。一方、PC鋼棒は、例え
ば特公平5−41684号公報に記載されているよう
に、C量が0.25〜0.35%の中炭素鋼を用いて焼
入れ・焼戻し処理をすることによって製造されている。
PC鋼線の強度はPC鋼棒に比べ高いものの、C含有量
が高いためにスポット溶接ができないという欠点があ
る。
はPC鋼線に比べ良好であるが、「プレストレストコン
クリート設計施工規準・同解説」(日本建築学会編集、
丸善)の43〜45頁に記載されているように、強度が
1275MPa(130kgf/mm2)を超えるような高強度P
C鋼棒は、PC鋼線に比べて遅れ破壊特性が劣ってい
る。また、特公平5−59967号公報に記載されてい
るように、スポット溶接部は急冷されるため、マルテン
サイトを主体とした組織となる。この結果、スポット溶
接部に遅れ破壊が発生しやすくなる。
の知見として、例えば、特公平5−59967号公報で
は、P,S含有量を低減することが有効であると提案し
ている。確かに、低P,低S化は遅れ破壊に対して有効
であるが、現行のPC鋼棒のP,S含有量はいずれも既
に0.01%前後となっており、JIS G3109で
規定されている量より低いレベルにあるのが実態であ
る。P,S含有量を更に低減化することは可能である
が、製造コストが高くなる。又、特公平5−41684
号公報では、Si,Mn含有量を規制するとともに焼入
れ処理後、焼戻し工程中で曲げ加工又は引き抜き加工を
施すことを提案している。しかし、スポット溶接性、ス
ポット溶接部の遅れ破壊特性については、述べられてい
ない。
して、例えば、特開平4−247825号公報では、鋼
材成分量を規制するとともに熱間圧延条件を限定するP
C鋼線用線材の製造方法を提案している。しかし、C含
有量を0.2%以下に制限しているため、高強度のPC
鋼線の製造は困難である。以上のように、従来の技術で
は、スポット溶接性が良好で且つ遅れ破壊特性の優れた
高強度のPC鋼棒を製造することには限界があった。
状に鑑みなされたものであって、スポット溶接性が良好
で且つ遅れ破壊特性が良好な強度が1450MPa 以上の
高強度のPC鋼棒を実現するとともに、その製造方法を
提供することを目的とするものである。
れ・焼戻し処理によって製造した種々の強度レベルのP
C鋼棒を用いて、遅れ破壊挙動を詳細に解析した。遅れ
破壊は鋼材中の水素に起因して発生していることは既に
明らかである。そこで、遅れ破壊特性について、遅れ破
壊が発生しない「限界拡散性水素量」を求めることによ
り評価した。この方法は、電解水素チャージにより種々
のレベルの拡散性水素量を含有させた後、遅れ破壊試験
中に試料から大気中に水素が抜けることを防止するため
にCdめっきを施し、その後、大気中で所定の荷重を負
荷し、遅れ破壊が発生しなくなる拡散性水素量を評価す
るものである。
の破断時間の関係について解析した一例を示す。試料中
に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど遅れ破壊に至
るまでの時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下で
は遅れ破壊が発生しなくなる。この水素量を「限界拡散
性水素量」と定義する。限界拡散性水素量が高いほど鋼
材の耐遅れ破壊特性は良好であり、鋼材の成分、熱処理
等の製造条件によって決まる鋼材固有の値である。な
お、試料中の拡散性水素量はガスクロマトグラフで容易
に測定することができる。
したPC鋼棒の強度と限界拡散性水素量の関係について
解析した一例を示す。強度の増加とともに遅れ破壊が発
生しない限界拡散性水素量が低下し始め、1500MPa
を超える強度域では著しく低下し、遅れ破壊が極微量の
拡散性水素量で発生することが明らかとなった。又、遅
れ破壊が発生した試料の破面を観察した結果、PC鋼棒
の強度にかかわらず、旧オーステナイト粒界の粒界割れ
であった。粒界偏析元素として知られているP,S含有
量を0.005%にまで低減させると、限界拡散性水素
量は増加し遅れ破壊特性が向上するが、特に1500MP
a を超えるような高強度域では、その向上代はわずかで
あった。
量を増加させる手段、即ち遅れ破壊特性を上げるべく、
オーステナイト結晶粒度、鋼材成分、熱処理条件の影響
等について更に検討を重ねた。この結果、上記の要因の
いずれを大きく変化させても、大幅な遅れ破壊特性の向
上を図ることができないことがわかった。このことは、
熱処理による高強度化手段では遅れ破壊特性の向上に対
して限界があることを示している。遅れ破壊が旧オース
テナイト粒界の粒界割れであることから、遅れ破壊特性
の大幅な向上を達成するためには、粒界割れの発生を防
止することが重要であるとの結論に達した。
防止する手段について、種々検討を重ねた結果、PC鋼
棒の表層より軸中心方向に少なくても半径の5%にわた
る領域において〈110〉集合組織を形成させれば、1
500MPa を超えるような高強度域でも旧オーステナイ
ト粒界割れを防止できることを発見した。即ち、〈11
0〉集合組織を持つ焼戻しマルテンサイト組織の鋼は、
旧オーステナイト粒界割れが発生しないため、限界拡散
性水素量が大幅に増加し、耐遅れ破壊特性が格段に向上
するという全く新たな知見を見出したのである。
して、冷間での伸線加工が極めて有効な手段であること
を明らかにした。しかし、マルテンサイト、焼戻しマル
テンサイト組織は、伸線加工性が悪いため、伸線加工中
に断線が発生しやすい欠点がある。又、伸線加工の減面
率を増加させ強度を増加させると、伸びが著しく低下す
る。そこでこれらの特性を改善するために、マルテンサ
イト、焼戻しマルテンサイト組織の伸線加工性の支配因
子を詳細に解析した。この結果、マルテンサイト又は焼
戻しマルテンサイトの伸線加工性は、主としてオーステ
ナイト粒径、強度で支配されることを明らかにし、上記
因子を最適に選択すれば伸線加工性が向上することを見
出した。
ための手段を検討した結果、最適な熱処理を伸線加工後
に施せば、伸びを向上させることができることを見出し
た。又、マルテンサイト又は焼戻しマルテンサイト組織
を有する伸線材のスポット溶接性を向上させるために
は、鋼材の成分含有量をPCM=0.15〜0.45%に
規制すれば良いことを明らかにした。
理条件、伸線加工を行う前のマルテンサイト又は焼戻し
マルテンサイトの強度、伸線加工の総減面率を最適に選
択すれば、スポット溶接性及び遅れ破壊特性に優れた高
強度PC鋼棒を実現できるという結論に達し、本発明を
なしたものである。本発明は以上の知見に基づいてなさ
れたものであって、その要旨とするところは、次の通り
である。
Si:0.05〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、
Al:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.
05%、B:0.0003〜0.0050%、P:0.
015%以下、S:0.015%以下を含有するか、あ
るいは更にCr:0.1〜2.0%、Mo:0.05〜
0.5%、Ni:0.1〜5.0%、Cu:0.05〜
0.5%、V:0.05〜0.5%、Nb:0.005
〜0.1%の1種又は2種以上を含むとともに、 PCM(%)=C+Si/30+(Mn+Cr+Cu)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B で表されるPCMが0.15〜0.45%の範囲にあり残
部はFe及び不可避的不純物よりなり、且つ焼戻しマル
テンサイト組織であって、更に表層より軸中心方向に少
なくても半径の5%にわたる領域において〈110〉集
合組織を有し、強度が1450MPa 以上であることを特
徴とする高強度PC鋼棒。
c3 〜Ac3 +200℃の温度範囲に加熱し、臨界冷却
速度以上の冷却速度で冷却することにより強度が100
0〜2000MPa のマルテンサイト組織にするか、ある
いは冷却後300℃以上の温度で焼戻し処理を行うこと
により強度が1000〜2000MPa の焼戻しマルテン
サイト組織にした後、総減面率が20%以上の伸線加工
を行い、その後14000≧T×(20+log t)≧1
1000なる関係(T:絶対温度で表示される加熱温
度、t:加熱時間(hr))を満足するように熱処理を行
うことを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方法。
明における高強度PC鋼棒とは、強度が1450MPa 以
上であるとともに、PC鋼棒に必要とされる延性、遅れ
破壊特性、スポット溶接性、リラクゼーション特性が優
れた鋼であることを意味している。次に本発明の対象と
する鋼の成分及びPCMの限定理由について述べる。 C:CはPC鋼棒の高強度化を達成する上で必須の元素
であるが、0.1%未満ではマルテンサイトもしくは焼
戻しマルテンサイトにおいて所要の強度が得られず、一
方0.4%を超えるとスポット溶接性が著しく劣化する
とともに伸線加工性も低下するため、0.1〜0.4%
の範囲に制限した。
させるとともに固溶体硬化作用によって強度を高める作
用がある。0.05%未満では前記作用が発揮できず、
一方2%を超えても添加量に見合う効果が期待できない
ため、0.05〜2.0%の範囲に制限した。 Mn:Mnは脱酸、脱硫のために必要であるばかりでな
く、マルテンサイト組織を得るための焼入れ性を高める
ために有効な元素であるが、0.2%未満では上記の効
果が得られず、一方2.0%を超えるとスポット溶接
性、伸線加工性が劣化するために0.2〜2.0%の範
囲に制限した。
lNを形成することにより、オーステナイト粒の粗大化
を防止する効果とともにNを固定し焼入れ性に有効な固
溶Bを確保する効果も有しているが、0.005%未満
ではこれらの効果が発揮されず、0.1%を超えても効
果が飽和するため0.005〜0.1%の範囲に限定し
た。 Ti:TiもAlと同様に脱酸及び熱処理時においてT
iNを形成することによりオーステナイト粒の粗大化を
防止する効果とともにNを固定し焼入れ性に有効な固溶
Bを確保する効果も有しているが、0.005%未満で
はこれらの効果が発揮されず、0.05%を超えても効
果が飽和するため0.005〜0.05%の範囲に限定
した。
粒界に偏析することにより焼入れ性を著しく高めるとと
もに、オーステナイト粒界に偏析しやすいP,Sの粒界
偏析量を低下させるため遅れ破壊特性も向上させる。
0.0003%未満では前記の効果が発揮されず、0.
0050%を超えても効果が飽和するため0.0003
〜0.0050%に制限した。 P:Pはオーステナイト粒界に偏析し、遅れ破壊特性を
低下させるために0.015%以下とした。好ましくは
0.010%以下とする。 S:SもPと同様にオーステナイト粒界に偏析し、遅れ
破壊特性を劣化させるために0.015%以下とした。
好ましくは0.010%以下とする。
あるが、本発明においては、更にこの鋼に、Cr:0.
1〜2.0%、Mo:0.05〜0.5%、Ni:0.
1〜5.0%、Cu:0.05〜0.5%、V:0.0
5〜0.5%、Nb:0.005〜0.1%の1種又は
2種以上を含有せしめることができる。 Cr:Crは焼入れ性の向上及び伸線加工後の熱処理工
程での軟化抵抗を増加させるために有効な元素である
が、0.1%未満ではその効果が十分に発揮できず、一
方2.0%を超えるとスポット溶接性、伸線加工性が劣
化するために0.1〜2.0%に限定した。
抵抗を有し熱処理後の引張強さを高めるために有効な元
素であり、更にリラクゼーション特性も向上させる効果
を有しているが、0.05%未満ではその効果が少な
く、一方0.5%を超えるとスポット溶接性、伸線加工
性が劣化するために0.05〜0.5%に制限した。 Ni:Niは高強度化に伴って劣化する延性を向上させ
るとともに熱処理時の焼入れ性を向上させて引張強さを
増加させるために添加されるが、0.1%未満ではその
効果が少なく、一方5.0%を超えても添加量に見合う
効果が発揮できないため、0.1〜5.0%の範囲に制
限した。
に有効な元素であるが、0.05%未満では効果が発揮
できず、0.5%を超えると熱間加工性が劣化するため
0.05〜0.5%に制限した。 V:Vは焼入れ処理時において炭窒化物を生成すること
によりオーステナイト粒を微細化させるとともにリラク
ゼーション値を増加させる効果があるが、0.05%未
満では前記作用の効果が得られず、一方0.5%を超え
ても効果が飽和するため0.05〜0.5%に限定し
た。 Nb:NbもVと同様に炭窒化物を生成することにより
オーステナイト粒を微細化させるために有効な元素であ
るが、0.005%未満ではその効果が不十分であり、
一方0.1%を超えるとこの効果が飽和するため0.0
05〜0.1%に制限した。
V,Nbの窒化物を生成することによりオーステナイト
粒の細粒化効果があるため、0.003〜0.015%
が好ましい範囲である。 PCM:PCM(%)=C+Si/30+(Mn+Cr+C
u)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B
で表されるPCMはスポット溶接性を示す指標であり、こ
の値が低いほどスポット溶接性が良好であることを意味
する。PCMが0.45%を超えると、スポット溶接部は
延性が低く強度の高いマルテンサイト組織となってスポ
ット溶接性が劣化し、スポット溶接部から破断しやすく
なる。又、引張試験時の伸びが低下し、更に遅れ破壊特
性も劣化するため上限を0.45%にした。一方、合金
元素量を減少させてPCMを0.15%未満にするとスポ
ット溶接性は向上するものの焼入れ性が低下するために
マルテンサイト組織が得られにくくなるとともに、所定
強度のマルテンサイト組織又は焼戻しマルテンサイト組
織を得ることが困難であるため、下限を0.15%に制
限した。
遅れ破壊特性の向上に対して最も重要な点であるPC鋼
棒の〈110〉集合組織の限定理由について述べる。図
3に焼戻しマルテンサイト組織からなるPC鋼棒の限界
拡散性水素量に及ぼす集合組織の影響について解析した
一例を示す。〈110〉集合組織を有するPC鋼棒の限
界拡散性水素量(図中本発明例で表示)は、集合組織を
有していないPC鋼棒(図中比較例で表示)、即ち従来
の焼入れ・焼戻しで製造されたPC鋼棒に比べ、はるか
に高いレベルにあることがわかる。
a に調整した焼戻しマルテンサイト組織からなるPC鋼
棒を用いて、限界拡散性水素量と〈110〉集合組織が
生成しているPC鋼棒表層から軸中心方向の深さに対す
る半径の比率の関係について解析した一例を示す。〈1
10〉集合組織の生成領域がPC鋼棒表層より軸中心方
向に対して5%未満では限界拡散性水素量の向上効果が
少ない、即ち遅れ破壊特性向上効果が少ないことがわか
る。
を表層より軸中心方向に少なくても半径の5%にわたる
領域に限定した。より一層の高強度で且つ遅れ破壊特性
の優れたPC鋼棒を得るためには、〈110〉集合組織
の生成領域として半径の10%以上が好ましい条件であ
る。なお、集合組織は、X線による極点図を測定するこ
とにより容易に求めることができる。又、PC鋼棒表層
から軸中心方向の集合組織の分布は、化学研磨又は電解
研磨後、X線による極点図を深さ方向の各点で測定する
ことにより求めることができる。
所定の組成と強度を有するマルテンサイトもしくは焼戻
しマルテンサイト組織にした後、冷間で伸線加工を施
し、その後、更に熱処理を行うものであるが、次にこの
製造条件の限定理由について述べる。まず、マルテンサ
イト、焼戻しマルテンサイトの強度であるが、強度が1
000MPa 未満であると伸線加工により強度を増加させ
るために大きな減面率を必要とし、経済的でないため下
限をいずれも1000MPa とした。一方、強度が200
0MPa を超えると伸線加工性が著しく劣化し、伸線加工
中に断線が頻発するため上限をいずれも2000MPa に
限定した。なお、マルテンサイト組織中に残留オーステ
ナイト、もしくは体積分率で5%未満のフェライト、パ
ーライト、ベイナイト組織が混在しても伸線加工性には
何等差し支えない。
織を得るための熱処理条件の限定理由は下記の通りであ
る。 加熱温度;加熱温度がAc3 未満では完全にオーステナ
イト化されず、一方、Ac3 +200℃を超えるとオー
ステナイト粒が粗大化し、オーステナイト粒径が15μ
mを超えやすくなるために加熱温度の範囲をAc3 〜A
c3 +200℃に限定した。オーステナイト粒径が15
μmを超えるようになるとマルテンサイト又は焼戻しマ
ルテンサイト組織の伸線加工性が劣化し断線が発生しや
すくなる。オーステナイト粒径は15μm以下、より好
ましくは10μm以下が良い。本発明の成分、熱処理条
件では15μm以下のオーステナイト粒径が得られる。
度未満では、得られる組織がマルテンサイトの他にフェ
ライト、ベイナイト、パーライト組織が多量に混在しや
すくなるために、臨界冷却速度以上とした。なお、冷却
媒体は特に限定しないが、水冷が好ましい。 焼戻し温度;焼戻しマルテンサイト組織を得るための温
度が300℃未満では、伸線加工性の劣った焼戻しマル
テンサイト組織になり断線が発生しやすいため、焼戻し
温度の下限を300℃に限定した。なお、熱処理は、通
常の炉加熱、ソルト浴、高周波加熱、等のいずれの方法
でも良いが、マルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサ
イト組織の伸線加工性を向上させるためには、30℃/
秒以上の加熱速度が得られるソルト浴、高周波加熱が好
ましい。
満では、PC鋼棒の強度を最終的に1450MPa 以上に
することが困難である場合があるとともに、〈110〉
集合組織を表層より軸中心方向に少なくても半径の5%
にわたる領域において形成することが困難となり遅れ破
壊特性の向上が望めないため下限を20%にした。総減
面率の上限は伸線加工前の鋼の強度によって変化するた
め特に規制しないものの80%を超えると強度が高くな
りすぎて、断線が発生しやすくなるため上限は80%が
好ましい。
焼戻しマルテンサイト組織の鋼を冷間で伸線加工したま
までは、伸び、リラクゼーション特性が悪いために、こ
れらの特性を向上させるために熱処理を行うものであ
る。又、この熱処理により前組織がマルテンサイトの場
合は、焼戻しマルテンサイト組織となる。熱処理温度と
熱処理時間で定義される熱処理パラメーター:T×(2
0+log t)が11000〜14000の範囲であれ
ば、強度が1450MPa 以上のPC鋼棒の伸びを5%以
上、リラクゼーション値を1.5%以下にすることがで
きる。ここで、Tは絶対温度、tは時間(hr)である。
伸びを5%以上、リラクゼーション値を1.5%以下に
することが困難であり、一方14000を超えるとリラ
クゼーション値を1.5%以下にすることが困難になる
とともに強度が1450MPa未満となりやすくなるため
に、T×(20+log t)の式で定義される熱処理パラ
メーターにおいて上限を14000とし、下限を110
00とした。温度は特に制限しないが、300℃未満で
は熱処理パラメーターを上記の範囲にするために時間が
かかりすぎて生産性が低下するために下限温度は300
℃以上が好ましい。又上限温度は550℃を超えると強
度が低下しやすくなるため550℃以下が好ましい。
延で所定の線径にした後、高周波加熱による熱処理で種
々の強度に調整したマルテンサイト又は焼戻しマルテン
サイト組織にした。その後、冷間で線径7.4mmまで伸
線加工を行い、次いで熱処理を行った。上記の試料を用
いてオーステナイト粒径、機械的性質、スポット溶接
性、集合組織、遅れ破壊特性、リラクゼーション値につ
いて評価した結果を表2に示す。スポット溶接性試験は
PC鋼棒とJIS G3532のSWM−Bを用いて行
った。クロス溶接後、試験本数が10本の引張試験を行
い、スポット溶接部の破断率50%以下の場合はスポッ
ト溶接性が良好であるとした(下線で表示)。遅れ破壊
特性は、スポット溶接を施した試料を用いて、前に述べ
た限界拡散性水素量で評価を行い、負荷応力は引張強さ
の80%の条件で実施した。リラクゼーション値はJI
S G3109に基づいて測定した。
8,20,21,23が本発明例で、その他は比較例で
ある。同表に見られるように本発明例はいずれもPC鋼
棒の引張強さが1450MPa 以上であるとともに、強度
が同一であれば限界拡散性水素量が従来のPC鋼棒に比
べ高いレベルにあり、遅れ破壊特性の優れたPC鋼棒が
実現されている。又、スポット溶接性、リラクゼーショ
ン値も申し分ない。これに対して比較例であるNo.1は
鋼種Aを用いて従来の焼入れ・焼戻しで製造したPC鋼
棒である。本発明例である試験No.3と強度はほぼ同じ
レベルにあるが、〈110〉集合組織が形成されていな
いため、限界拡散性水素量が低く、遅れ破壊特性が劣っ
ている。又、比較例であるNo.5も従来の焼入れ・焼戻
しで製造したものであり、限界拡散性水素量が、本発明
例であるNo.4と比較して低い。
加熱温度が不適切な例である。即ち、いずれも加熱温度
がAc3 +200℃を超えたためにオーステナイト粒径
が15μm以上となり、これにより伸線加工性が劣化
し、伸線加工途中で断線が発生した例である。比較例で
あるNo.11〜15,25,26は鋼の化学成分が不適
切な例である。即ち、No.11はC量が低すぎて焼入れ
性が低下したために、焼入れままでも強度が1000MP
a 未満であり、80%の減面率で伸線加工を行っても強
度が1450MPa に到達しなかった例である。又No.1
2はP量が、No.13はS量がそれぞれ0.015%を
超える鋼のため、限界拡散性水素量が低い例である。N
o.14はC量が0.42%と高くPCMが0.45%を
超えるため、伸びが5%未満であり、スポット溶接性も
悪い例である。
000MPa を超えたために伸線加工性が劣化し、断線が
発生した例である。更に、No.25はAl,Tiが低す
ぎる鋼を使用したためにオーステナイト粒径が粗大化
し、この結果、伸線加工性が劣化し断線が発生した例で
ある。No.26の鋼は、PCMが0.45%を超えている
ため、スポット溶接性と伸びが低く、限界拡散性水素量
も低い例である。
サイトを得るための焼戻し処理温度が300℃未満であ
るために、伸線加工性の劣化した焼戻しマルテンサイト
組織となり、伸線加工工程で断線が多発した例である。
比較例であるNo.2,8は、冷間の伸線加工の総減面率
が20%未満であるため、半径に対する〈110〉集合
組織の形成深さが5%未満となり、遅れ破壊特性の改善
効果が少ない例である。
加工後の熱処理条件が不適切な例である。No.6はT×
(20+log t)が11000未満であるために、伸び
が5%未満と低いとともにリラクゼーション値も1.5
%を超え劣化している。No.19は熱処理パラメーター
が14000を超えるため強度が1450MPa 未満にな
るとともに、リラクゼーション値も1.5%を超えてい
る。更に、No.24は、伸線加工後に熱処理を施さなか
ったために、伸びが低く、リラクゼーション値も悪い例
である。
処理後の引張強さ、伸線加工の総減面率、伸線加工後の
熱処理条件を最適に選択するとともに、〈110〉集合
組織を導入することにより、スポット溶接性が良好であ
り、遅れ破壊特性の優れた強度が1450MPa 以上の高
強度PC鋼棒及びその製造を可能にしたものであり、産
業上の効果は極めて顕著なものがある。
す図表である。
と限界拡散性水素量の関係の一例を示す図表である。
鋼棒の強度と限界拡散性水素量の関係の一例を示す図表
である。
の影響の一例を示す図表である。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、 C :0.1〜0.4%、 Si:0.05〜2.0%、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.05%、 B :0.0003〜0.0050%、 P :0.015%以下、 S :0.015%以下 を含有するとともに、下記式に示すPCMが0.15〜
0.45%の範囲にあり、残部はFe及び不可避的不純
物よりなり、且つ焼戻しマルテンサイト組織であって、
更に表層より軸中心方向に少なくても半径の5%にわた
る領域において〈110〉集合組織を有し、強度が14
50MPa 以上であることを特徴とする高強度PC鋼棒。 PCM(%)=C+Si/30+(Mn+Cr+Cu)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5B - 【請求項2】 重量%で、 Cr:0.1〜2.0%、 Mo:0.05〜
0.5%、 Ni:0.1〜5.0%、 Cu:0.05〜
0.5%、 V :0.05〜0.5%、 Nb:0.005〜
0.1% の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1記
載の高強度PC鋼棒。 - 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の化学成分を
有する鋼棒又は鋼線を、Ac3 〜Ac3 +200℃の温
度範囲に加熱し、臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却す
ることにより強度が1000〜2000MPa のマルテン
サイト組織にした後、総減面率が20%以上の伸線加工
を行い、その後14000≧T×(20+log t)≧1
1000なる関係(T:絶対温度で表示される加熱温
度、t:加熱時間(hr))を満足するように熱処理を行
うことを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方法。 - 【請求項4】 請求項1又は請求項2記載の化学成分を
有する鋼棒又は鋼線を、Ac3 〜Ac3 +200℃の温
度範囲に加熱し、臨界冷却速度以上の冷却速度で冷却
し、300℃以上の温度で焼戻し処理を行うことにより
強度が1000〜2000MPa の焼戻しマルテンサイト
組織にした後、総減面率が20%以上の伸線加工を行
い、その後14000≧T×(20+log t)≧110
00なる関係(T:絶対温度で表示される加熱温度、
t:加熱時間(hr))を満足するように熱処理を行うこ
とを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP01651994A JP3348187B2 (ja) | 1994-02-10 | 1994-02-10 | 高強度pc鋼棒及びその製造方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP01651994A JP3348187B2 (ja) | 1994-02-10 | 1994-02-10 | 高強度pc鋼棒及びその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07224355A JPH07224355A (ja) | 1995-08-22 |
JP3348187B2 true JP3348187B2 (ja) | 2002-11-20 |
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JP (1) | JP3348187B2 (ja) |
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---|---|---|---|---|
CN113073264B (zh) * | 2021-03-24 | 2021-12-14 | 钢铁研究总院 | 一种高均匀伸长率2000MPa级超高强度钢及其制备方法 |
-
1994
- 1994-02-10 JP JP01651994A patent/JP3348187B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH07224355A (ja) | 1995-08-22 |
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