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JP2016064650A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

ガスバリア性フィルム Download PDF

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JP2016064650A
JP2016064650A JP2015179399A JP2015179399A JP2016064650A JP 2016064650 A JP2016064650 A JP 2016064650A JP 2015179399 A JP2015179399 A JP 2015179399A JP 2015179399 A JP2015179399 A JP 2015179399A JP 2016064650 A JP2016064650 A JP 2016064650A
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JP2015179399A
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浩行 上林
Hiroyuki Kamibayashi
浩行 上林
森 健太郎
Kentaro Mori
健太郎 森
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

【課題】高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムの提供。【解決手段】高分子フィルム基材1の少なくとも片面に、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層2aと以下の(A)〜(C)を含む第2層2bとを高分子フィルム基材1からこの順に接して配したガスバリア性フィルム。(A)不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とする共重合体であって、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合が(a1):(a2):(a3)=20〜40質量%:10〜30質量%:30〜70質量%である。(B)イソシアネート基を有する化合物(C)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物【選択図】図1

Description

本発明は透明性に優れ、かつ水蒸気に対して高いガスバリア性を発現するガスバリア性フィルムに関するものである。
高分子フィルム基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなる透明ガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられている。
ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機ケイ素化合物の蒸気と酸素を含有するガスを用いてプラズマCVD法により基材上に、ケイ素酸化物を主体とし、炭素、水素、ケイ素及び酸素を少なくとも1種類含有した化合物からなる層を形成することによって、透明性を維持しつつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献1)。また、成膜方法以外のガスバリア性向上技術としては、基板上にエポキシ化合物である有機層とプラズマCVD法で形成されたケイ素系酸化物層を交互に積層させることで、膜応力によるクラック及び欠陥の発生を防止した多層積層構成のガスバリア性フィルムが用いられている(特許文献2)。
特開平8−142252号公報(特許請求の範囲) 特開2003−341003号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、プラズマCVD法によりケイ素酸化物を主成分としたガスバリア性の層を形成する方法では、有機ELや電子ペーパー用途で必要とされる温度40℃、湿度90%の環境下で水蒸気透過率1×10−3g/m・24hr・atm以下の高いガスバリア性を得るためには層を厚くする必要があり、そのような場合には、形成されたガスバリア性の層が非常に緻密かつ高硬度な層であるため、形成した層の応力により、ケイ素酸化物層にクラックが発生し、逆にガスバリア性が低下するという課題があった。
一方、有機層と無機層を交互に多層積層構成にしたガスバリア性の層を形成する方法では、温度40℃、湿度90%の環境下で水蒸気透過率1×10−3g/m・24hr・atm以下の高いガスバリア性を得るためには、数十層の多層積層が必要であり、層形成中にプラズマの輻射熱により高分子フィルム基材がダメージを受け、熱負けによる反りを発生し、後工程の加工で作業性が悪くなるなどの問題があった。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、厚みが薄くても高いガスバリア性が得られ、後加工におけるガスバリア性の低下や作業性の悪化を解消した高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、
(1)高分子フィルム基材の少なくとも片面に、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層と以下の(A)〜(C)を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたことを特徴とするガスバリア性フィルム。
(A)不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とする共重合体であって、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合が以下である共重合体
(a1):(a2):(a3)=20〜40質量%:10〜30質量%:30〜70質量%
(B)イソシアネート基を有する化合物
(C)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物
(2)前記高分子フィルム基材と第1層との間にアンダーコート層を有し、該アンダーコート層が芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含むことを特徴とする(1)に記載のガスバリア性フィルム。
(3)前記第1層が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)およびインジウム(In)からなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(4)前記第1層がアルミニウム(Al)を含み、前記第1層は、X線光電子分光法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が10〜35atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5〜25atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が1〜7atom%、酸素(O)原子濃度が50〜70atom%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
(5)前記第2層の厚みが0.1μm以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
水蒸気に対する高度なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明のガスバリア性フィルムの一例を示した断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムの一例を示した断面図である。 本発明のガスバリア性フィルムを製造するための枚葉式のスパッタリング装置を模式的に示す概略図である。
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材の少なくとも片面に、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層を有し、さらに以下の(A)〜(C)を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたガスバリア性フィルムである。
(A)不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とする共重合体であって、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合が以下である共重合体
(a1):(a2):(a3)=20〜40質量%:10〜30質量%:30〜70質量%
(B)イソシアネート基を有する化合物
(C)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物。
ここで、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合とは共重合体全体を100質量%とした場合における(a1)〜(a3)の各成分が占める質量割合をいう。すなわち、各成分の構造から、各成分1ユニット当たりの原子量の総和が決定できる(ここで(a1)〜(a3)の各成分の1ユニット当たりの原子量の総和をそれぞれA1、A2、A3とする)。さらに、共重合体における(a1)〜(a3)の各成分の繰り返し数をそれぞれl、m、nとする。このとき、共重合体における(a1)〜(a3)の各成分が占める質量割合は、(A1×l):(A2×m):(A3×n)で表される。これを共重合体全体を100質量%として各成分を質量%で表したものが共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合となる。
以下、「酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層」を、単に「第1層」と、「(A)〜(C)を含む第2層」を、単に「第2層」と略記することもある。
図1に本発明のガスバリア性フィルムの一例の断面図を示す。本発明のガスバリア性フィルムは、高分子フィルム基材1の片面に酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層2aと前記(A)〜(C)を含む第2層2bとを高分子フィルム基材1からこの順に接して配されている。以下では第1層2aと第2層2bとを合わせてガスバリア層2という場合もある。ガスバリア層2は酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層2aに接して前記(A)〜(C)を含む第2層2bを有することによって、第2層のガスバリア性に加えて、第1層表面のピンホールやクラック等の欠陥に第2層に含まれる(A)〜(C)が充填され、硬化による収縮によって欠陥サイズが小さくなるため、高度なガスバリア性を有するものとなる。さらに第2層は、酸やアルカリに対する耐性があり、外部からの衝撃や摩耗による第1層への傷付きやクラックを防止する効果があるため、第2層を有することにより後工程におけるガスバリア性の低下を抑制したガスバリア性フィルムを実現することができる。
また、本発明のガスバリア性フィルムの別の一例は図2に示すように、高分子フィルム基材1の片側において高分子フィルム基材1とガスバリア層2との間にアンダーコート層3を有するものである。アンダーコート層3を有することによって、高分子フィルム基材1の表面に突起や傷が存在しても、平坦化することができ、ガスバリア層が偏りなく均一に成長するため、より高いガスバリア性を発現するガスバリア性フィルムとなる。
[高分子フィルム基材]
本発明に用いられる高分子フィルム基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。
本発明に用いられる高分子フィルム基材の素材は特に限定されないが、有機高分子を主たる構成成分とするものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン、環状構造を有する非晶性環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性や汎用性、機械特性に優れた非晶性環状ポリオレフィンまたはポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。また、前記有機高分子は、単独重合体、共重合体のいずれでもよいし、有機高分子として1種類のみを用いてもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
高分子フィルム基材のガスバリア層を形成する側の表面には、密着性や平滑性を良くするためにコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンダーコート層の形成処理、等の前処理が施されていてもよい。また、ガスバリア層を形成する側の反対側には、フィルムの巻き取り時の滑り性の向上を目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が積層されていてもよい。
本発明に使用する高分子フィルム基材の厚みは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から高分子フィルム基材の厚みは10μm以上、200μm以下がより好ましい。
[酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層]
本発明のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層を有することによって高いガスバリア性を発現することができる。酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素のガラス質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい酸化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。また、結晶成長が抑制された酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む層は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の一つの金属元素からなる酸化物で形成された薄膜よりも膜の柔軟性が優れるため、熱や外部からの応力に対してクラックが生じにくく、ガスバリア性の低下を抑制できると考えられる。
本発明における酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層は、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含んでいれば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)およびインジウム(In)からなる群より選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。さらに、これらの元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいてもよい。アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)およびインジウム(In)は、周期表の族番号3B、4Bの元素であり、第1層に含まれる亜鉛(Zn)とケイ素(Si)との価電子数が同等であり、物理的、化学的に親和性が高いため、第1層の結晶成長をさらに抑制し、ガスバリア性を向上できるため好ましい。これらの中でも、原子半径が小さくかつ硬度が低い元素であるアルミニウム(Al)は、第1層を緻密化でき、柔軟性に優れるためより好ましい。アルミニウム(Al)を含む第1層として例えば、高いガスバリア性が得られる酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む以下の共存相からなる層が好適に用いられる。
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
なお、この共存相からなる層の詳細は後述する。
本発明に使用する第1層の厚みは、10nm以上、500nm以下が好ましい。層の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、高分子フィルム基材面内でガスバリア性がばらつく場合がある。また、層の厚みが500nmより厚くなると、層内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によって第1層にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。従って、第1層の厚みは10nm以上、500nm以下が好ましく、柔軟性を確保する観点から20nm以上、200nm以下がより好ましい。第1層の厚みは、通常は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定することが可能である。
本発明に使用する第1層の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaが10nmより大きくなると、第1層表面の凹凸形状が大きくなり、スパッタ粒子間に大きな隙間や欠陥ができるため、第1層表面に第2層を充填し、硬化による収縮によって、第1層表面の欠陥サイズを十分に小さくできなくなり、ガスバリア性の向上効果は得られにくくなる場合がある。従って、第1層のSRaは10nm以下であることが好ましく、より好ましくは7nm以下である。
本発明における第1層のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
本発明において第1層を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。これらの方法の中でも、簡便かつ緻密に第1層を形成可能であることから、スパッタリング法が好ましい。
[酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層]
本発明において酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層として好適に用いられる共存相について詳細を説明する。第1層は以下の(i)〜(iii)の共存相からなることが好ましい。
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
なお、「(i)〜(iii)の共存相」を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相」または「ZnO−SiO−Al」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO)が生成することがあるが、二酸化ケイ素あるいはSiOと表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、それぞれ、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAlと表記することとする。
本発明のガスバリア性フィルムにおけるガスバリア層の第1層として酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む層に、さらに酸化アルミニウムを共存させることによって、酸化亜鉛および二酸化ケイ素のみを共存させる場合に比べて、より結晶成長を抑制することができるため、クラックの生成に起因するガスバリア性低下が抑制できたものと考えられる。
酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層の組成は、後述するようにX線光電子分光法(XPS法)により測定することで得ることができる。ここで、本発明における第1層の組成は、第1層の最表層から5nm程度エッチングして除去した後、XPS法で測定される各元素の原子濃度比で表される。X線光電子分光法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度は10〜35atom%、ケイ素(Si)原子濃度は5〜25atom%、アルミニウム(Al)原子濃度は1〜7atom%、酸素(O)原子濃度は50〜70atom%であることが好ましい。
亜鉛(Zn)原子濃度が35atom%より大きくなる、またはケイ素(Si)原子濃度が5atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムが不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。亜鉛(Zn)原子濃度が10atom%より小さくなる、またはケイ素(Si)原子濃度が25atom%より大きくなると、層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合がある。また、アルミニウム(Al)原子濃度が7atom%より大きくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が過剰に高くなるため膜の硬度が上昇し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。アルミニウム(Al)原子濃度が1atom%より小さくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素の親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力を向上できないため、柔軟性が低下する場合がある。また、酸素(O)原子濃度が70atom%より大きくなると、第1層内の欠陥量が増加するため、所望のガスバリア性が得られない場合がある。酸素(O)原子濃度が50atom%より小さくなると、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなるため、ガスバリア性が低下する場合がある。かかる観点から、亜鉛(Zn)原子濃度が15〜32atom%、ケイ素(Si)原子濃度が10〜20atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が1〜4atom%、酸素(O)原子濃度が50〜64atom%であることがより好ましい。
酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層に含まれる成分は酸化亜鉛、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムが上記組成の範囲でかつ主成分であれば特に限定されず、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)等から形成された金属酸化物を含んでも構わない。ここで主成分とは、第1層の組成の50質量%以上であることを意味し、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同等の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで第1層の組成を調整することが可能である。
酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層の組成は、X線光電子分光法を使用して、亜鉛、ケイ素、アルミニウム、酸素および含有する元素の組成比を知ることができる。X線光電子分光法は、超高真空中においた試料表面に軟X線を照射した際に表面から放出される光電子をアナライザーで検出することにより、得られた束縛電子の結合エネルギー値から元素情報を把握でき、さらに結合エネルギーのピーク面積比から各検出元素を定量することができる。
酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層上に無機層や樹脂層が積層されている場合、透過型電子顕微鏡による断面観察により測定された無機層や樹脂層の厚さ分をイオンエッチングや薬液処理により除去した後、さらに酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層の厚み5nm程度をアルゴンイオンエッチングにより除去し、X線光電子分光法で分析することができる。
高分子フィルム基材上(または高分子フィルム基材上に設けられた層上(例えば後述するアンダーコート層の上))に酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウムの共存相からなる層を形成する方法は特に限定されず、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合焼結材料を使用して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの単体材料を使用する場合は、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムをそれぞれ別の蒸着源またはスパッタ電極から同時に成膜し、所望の組成となるように混合させて形成することができる。これらの方法の中でも、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア層の第1層の形成方法は、ガスバリア性と形成した層の組成再現性の観点から、混合焼結材料を使用したスパッタリング法がより好ましい。
[(A)〜(C)を含む第2層]
次に、(A)〜(C)を含む第2層について詳細を説明する。
本発明のガスバリア性フィルムは、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層に接して以下の(A)〜(C)を含む第2層が配されることによって、大幅にガスバリア性を向上させることができるものである。
(A)不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とする共重合体であって、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合が以下である共重合体
(a1):(a2):(a3)=20〜40質量%:10〜30質量%:30〜70質量%
(B)イソシアネート基を有する化合物
(C)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物。
第2層においてガスバリア性を決定する因子としては、凝集エネルギー、自由体積、結晶化度、配向性等が挙げられる。これらの因子は、ポリマー構造中の側鎖官能基に起因するところが多い。すなわち、構造中に水素結合あるいは静電的相互作用等の分子間相互作用可能な官能基を含むポリマー鎖同士は、相互作用力を駆動力として強く凝集しようとする。その結果、凝集エネルギー、配向性は高まり、自由体積は減少し、ガスバリア性は向上する。逆に、同じくポリマー構造中に立体的に嵩高い官能基を含む場合には、ポリマーの凝集を妨げ、自由体積が大きくなるためにガスバリア性は低下すると考えられる。さらに、分子間相互作用が大きくなれば、強く凝集し、自由体積空間を小さくしようという駆動力は大きくなり、結果的にポリマーの凝集密度は高まると考えることができる。本発明の第2層における(A)〜(C)の各成分がガスバリア性に寄与する詳細な説明は後述する。
また、本発明のガスバリア性フィルムは、第1層表面のピンホールやクラック等の欠陥に第2層に含まれる(A)〜(C)が充填され、硬化による収縮によって欠陥サイズが小さくなるため、第2層自体のガスバリア性に加えて、さらにガスバリアが向上する。このガスバリア性の向上効果は、第1層が酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含むことで、粒子径の小さい層になると共に、第1層の粒子が第2層の樹脂の浸透しやすい大きさ・形状に配列されていることによると推測される。また、第2層が有する水酸基は第1層の二酸化ケイ素と水素結合を形成するため、層間の結合力がより強固となりガスバリア性向上に寄与していると考えられる。
(不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1))
共重合体(A)に用いられる不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)に関して、不飽和カルボン酸エステルとして、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等が挙げられる。
その他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
これらのうち、好ましいのは、不飽和カルボン酸エステルである。不飽和カルボン酸エステルのうちメチルメタクリレート、メチルアクリレートが特に好ましく、メチルメタクリレートがさらに好ましい。
(a1)の配合量が多くなると、共重合体中に占める不飽和ニトリル(a2)及び水酸基を有する不飽和化合物(a3)の相対量が減少し、ガスバリア性が十分に発現しない場合や、架橋構造の不足に伴う塗膜強度や密着耐性が不足する場合がある。
(不飽和ニトリル(a2))
共重合体(A)に用いられる不飽和ニトリル(a2)としては、アクリロニトリルが好ましい。アクリロニトリルはその分子構造中にニトリル基を有し、ニトリル基が大きく分極した官能基であることに由来して強い水素結合形成能を持つ。すなわち、アクリロニトリルを構成成分とする共重合体(A)により形成された塗膜は、アクリロニトリルのニトリル基の寄与により、ガスバリア性を有するものとなる。ガスバリア性はアクリロニトリルの含有量によって調整することができる。
不飽和ニトリル(a2)の配合量が多くなると共重合体の有機溶剤に対する溶解性が低下するため、重合時の分子量増加を妨げるだけでなく塗料化が困難になる場合がある。さらには塗膜の造膜性、透明性も低下するなど実用的ではなくなる場合がある。逆に配合量が少なくなるとガスバリア層のガスバリア性向上効果が不十分となる場合がある。
(水酸基を有する不飽和化合物(a3))
前述の通り、ガスバリア性を高める観点からは共重合体(A)中の不飽和ニトリル(a2)の含有量を高めた方が好ましい。しかし、特に不飽和ニトリル(a2)であるポリアクリロニトリルはガラス転移温度が約300℃と高く、造膜させるには高温での処理が必要であるが、基材フィルムの融点などとの関係から造膜の温度を下げることが好ましい。また、ガスバリア性を決定する因子としては、凝集エネルギー、自由体積、結晶化度、配向性等が挙げられることは前記したが、極性の高い官能基を有するモノマー成分を共重合用モノマーとして用いる方法は、ガスバリア性を高める1つの手段である。このような観点から、水酸基も高い凝集力を示す官能基として機能し本発明では水酸基を有する不飽和化合物(a3)を用いることが好ましい。さらに水酸基を有する不飽和化合物(a3)を第2層に含有させる場合には、イソシアネート基を有する化合物(B)との間で架橋構造を形成するため、無機化合物で構成される第1層と強く密着し、塗膜強度や密着耐性を発現させることができる。
水酸基を有する不飽和化合物(a3)としては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等の不飽和化合物の単量体が挙げられる。これらの水酸基を有する不飽和化合物は単独で、または2種類以上組み合わせて選択することができる。これらの水酸基を有する不飽和化合物のうち、2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートが、良好な重合安定性が得られること、イソシアネート基との反応性が良好なことから好ましく、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。
共重合体(A)中で、水酸基を有する不飽和化合物(a3)の含有量によって第2層の造膜性やガスバリア性、さらにはイソシアネート基を有する化合物(B)との架橋点数が変動することに起因して、耐熱性、塗膜硬度などは変化する。不飽和化合物(a3)の配合量が少なくなると水酸基に由来する樹脂鎖間の凝集力が十分に働かず、ガスバリア性の向上につながらない場合がある。また、水酸基とイソシアネート基を有する化合物(B)のイソシアネート基との間の架橋反応の進行により形成される架橋点の数が十分ではなく、第2層の耐熱性が十分に発現しない場合がある。一方、水酸基を有する不飽和化合物(a3)の配合量が多くなると、共重合体中に水酸基数が増加するためイソシアネート基を有する化合物(B)配合量も増やす必要が生じ、同時にイソシアネート基を有する化合物(B)のイソシアネート基が未反応で残存し易くなり、ブロッキング等の問題を発生する要因となる場合がある。さらに、前述の(a2)、後述の(B)の含有量が減少するため、ガスバリア性向上効果が小さくなり、塗膜の造膜性が低下するなどにつながる場合がある。
(共重合体(A)における(a1),(a2),(a3)の比率)
上述のように共重合体(A)における(a1),(a2),(a3)の比率には適した範囲が存在する。例えば、不飽和ニトリル(a2)の比率は、共重合体(A)の有機溶剤に対する溶解性、および重合時の分子量増加防止、さらには塗膜の造膜性、透明性、第2層のガスバリア性の観点から、共重合体(A)中に占める割合は好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜25質量%である。
水酸基を有する不飽和化合物(a3)の比率は、第2層の造膜性やガスバリア性、イソシアネート基を有する化合物(B)との架橋点数、耐熱性、塗膜硬度、水酸基に由来する樹脂鎖間の凝集力の観点から共重合体(A)中に占める割合が30〜70質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。
また、不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との共重合体(A)中における比率(質量比)としては、(a2):(a3)が10質量%:70質量%〜30質量%:30質量%であり、好ましくは、20質量%:50質量%〜30質量%:50質量%である。
(a1)の比率は、ガスバリア性、塗膜強度、密着耐性の観点から、共重合体(A)中に占める割合は20〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。
また、不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との共重合体(A)中における比率(質量比)としては、(a1):(a2)+(a3)=40質量%:60質量%〜20質量%:80質量%であり、好ましくは、(a1):(a2)+(a3)=35質量%:65質量%〜25質量%:75質量%である。
(イソシアネート基を有する化合物(B))
本発明においては、イソシアネート基を有する化合物(B)は、前記共重合体(A)を架橋させるために用いることができる。共重合体(A)はそれを単独で塗布した場合、ガスバリア性は発現するものの塗膜強度や密着耐性といった物性は得られない傾向がある。そこで、共重合体(A)が側鎖として有する水酸基と反応するイソシアネート基を有する化合物(B)を硬化剤として用いることが好ましい。イソシアネート基を有する化合物(B)を含むことにより、架橋構造が生成されるので、ガスバリア性、塗膜強度および密着耐性といった物性を兼ね備えた第2層が形成されるため好ましい。イソシアネート基を有する化合物としては、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
使用できる芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が例示できる。
使用できる芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−又は1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が例示できる。
使用できる脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4’−、2,4’−又は2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水添XDI)等が例示できる。
使用できる脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−又は1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示できる。
これらの有機ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。なお、これらは、単独で使用しても複数を併用してもよい。
さらに、上記例示したイソシアネート化合物と水酸基を有する化合物等との部分縮合物や各種誘導体の1種またはこれらの2種以上を用いてもよい。例えば、各種低分子量のジオールからオリゴマーまで幅広いジオール類や必要に応じて3官能以上のポリオール類との部分縮合物等が挙げられる。
共重合体(A)とイソシアネート基を有する化合物(B)の架橋反応生成物により形成される第2層のガスバリア性を考慮すると、これらのイソシアネート基を有する化合物のうち、1,3−キシレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物、及び/又は1,4−キシレンジイソシアネート(XDI)およびその部分縮合物が好ましい。架橋生成物の立体的構造は、ガスバリア性に大きく影響する。ガスバリア性を発現させるためには、キシレンジイソシアネート骨格を有すると好ましい。
本発明では、第2層を構成する共重合体(A)とイソシアネート基を有する化合物(B)との配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート基を有する化合物(B)が少なすぎると共重合体(A)との間で生じる架橋反応が不十分なものとなり、塗膜が硬化不良を起こすだけでなく塗膜強度が十分発現せずに密着耐性、基材フィルムとの密着耐性等も不足する場合がある。またイソシアネート基を有する化合物(B)の配合量が多すぎる場合にはブロッキングを生じる原因となるだけでなく、余剰のイソシアネート化合物が他の層に移行するなどして後加工等において不都合を生じる場合がある。
(2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C))
本発明においては、第2層を形成する材料として、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)を用いることができる。これにより、無機化合物で構成される第1層と第2層との間の密着力が向上するため好ましい。カルボキシル基または無水カルボン酸基は、第1層を形成するアルミナやシリカといった材料が有するアルミ−酸素結合や珪素−酸素結合などの無機物中の元素と酸素の結合に対して、配位し易い性質を有する。そのため、第2層を形成する樹脂組成物に配合して塗布することで、第1層表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)が配位して、表面が有機的になり、第2層を形成する樹脂との密着力を向上させることができる。さらに、第1層が無機酸化物である場合には、無機酸化物表面に2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)が配位することで、大気中の水分が無機化合物で構成される第1層に浸透しにくくなるため、密着力の低下を生じにくくなるという効果も得られる。
1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C)としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アゼライン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸等が挙げられる。
無水カルボン酸基を持つ化合物としては無水マレイン酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、四塩基酸無水物等あるが、金属のように極性の高い基材フィルムへ塗工する場合は、特に四塩基酸無水物のように2つ以上の無水酸を持つ化合物が良好である。四塩基酸無水物としては、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7ーナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ならびに1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)等が挙げられる。これらのうち、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物や1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(無水ピロメリット酸)を使用することが好ましい。(C)の添加量は第2層の形成に用いる共重合体(A)とイソシアネート基を有する化合物(B)の和100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、第2層の経時安定性の観点から0.1〜10質量部がより好ましい。0.1質量部未満の添加量の場合には、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)の配位する効率が小さくなり、十分な密着力が得られない場合がある。一方、20質量部より多く添加した場合には、2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)以外の反応を阻害する働きがあるため塗膜のガスバリア性が低下する場合がある。
また、上記1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C)を重合した化合物を使用することもできる。前記した1分子中にカルボン酸基を2個以上または無水カルボン酸基を1個以上有する化合物(C)の数平均分子量は1,000以下であることが好ましい。
(シラン化合物(D))
本発明においては、第2層を形成する材料として、1分子中に有機官能基と加水分解性官能基を有するシラン化合物(D)を用いることも好ましい。有機官能基が第2層中の有機基と結合を形成し、また加水分解性官能基が無機化合物で構成される第1層とオキシシラン結合を形成することで、第1層と第2層との密着力を向上させる効果がある。
また、共重合体(A)中のヒドロキシル基がイソシアネート基を有する化合物(B)のイソシアネート基と架橋反応することに加え、シラン化合物(D)中の加水分解性官能基が加水分解されて生成するヒドロキシル基が無機化合物で構成される第1層表面のヒドロキシル基と水素結合することで、無機化合物で構成される第1層と第2層との密着力がさらに向上し強固なものとなるため好ましい。
シラン化合物(D)としては、無機化合物で構成される第1層と第2層の密着耐性を確保する観点から、有機官能基としてアミノ基、ビニル基、エポキシ基の群から選択される1つ以上の官能基を有することが好ましい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、Nー2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が例示できる。これらのシラン化合物は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
シラン化合物(D)の添加量は第2層の形成に用いる共重合体(A)とイソシアネート基を有する化合物(B)との和100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、第2層の経時安定性の観点から0.1〜2質量部がより好ましい。0.1質量部未満の添加量の場合にはシラン化合物の効果が薄く、十分な密着力が得られない場合がある。一方、10質量部より多く添加した場合にはシラン化合物(D)が第2層中で可塑剤のような働きをするため塗膜のガスバリア性が低下する場合がある。
上記シラン化合物(D)は水と溶剤とを配合し、公知の技術を用いて加水分解させることによって、例えばヒドロキシル基がケイ素原子に結合した化合物であるシラノールなど、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有するシラン化合物を調製する。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール等が挙げられる。
(その他の添加物)
本発明にかかる第2層には、その特性を損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化剤、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
使用できる熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、硫黄化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
使用できる強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
本発明にかかる第2層には、無機層状化合物を混合してもよい。無機層状化合物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト等が例示でき、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
[第2層の形成方法]
本発明では、前記共重合体(A)に、イソシアネート基を有する化合物(B)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物(C)、シラン化合物(D)を配合し、公知の技術を用いて架橋させて第2層を形成することが好ましい。共重合体(A)は、例えば酢酸プロピル−プロピレングリコールモノメチルエーテル−n−プロピルアルコール混合溶液などに溶解させて、上述したイソシアネート基を有する化合物(B)と混合することができる。次に、上記共重合体(A)溶液と、イソシアネート基を有する化合物(B)とを、所定量配合して溶剤中に溶解して、第2層用のコーティング液(塗剤)を得ることができる。使用できる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。
本発明においてかかる第2層を製造する方法としては、特に制限はなく、基材フィルムに対応した方法で製造することができる。例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法などの印刷方式やロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法、ナイフエッジコーティング法、グラビアコーティング法、キスコーティング法、スピンコーティング法等やこれらを組み合わせた方法を用いて、コーティング液をコーティングすればよい。
第1層上に設ける第2層の厚みは、高い水蒸気透過度を有するという観点から0.1μm以上が好ましい。また、外部からの衝撃や耐摩耗性の観点から、より好ましくは0.3μm以上である。第2層の厚みの上限は特に制限はないが、好ましくは3μmであり、より好ましくは2μmである。すなわち第2層の厚みは0.1〜3μmが好ましく、0.3〜2μmがより好ましい。第2層の厚みが、0.1μm以上であると、ガスバリア性の十分な向上および外部からの衝撃や摩耗による第1層への傷付きやクラックを防止する効果が得られ、コーティング時の加工性も高まり、膜切れやはじきなどの欠陥の少ない第2層を形成することができるため好ましい。一方、第2層の厚みが3μm以下であると、コーティング時の乾燥条件が低温、短時間であっても溶剤が十分に乾燥するので、フィルムにカール等の変形が生じにくく、製造コストが高騰するといった問題点も起こりにくく好ましい。
本発明において、コーティングにより第1層上に第2層を形成して積層する場合において、コーティング液(塗剤)に使用する溶剤にもよるが好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上の温度で乾燥させることがよい。乾燥温度が70℃より低い場合には塗膜の乾燥が不十分となり、充分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難となる場合がある。また、第2層の形成においては共重合体(A)とイソシアネート基を有する化合物(B)との間の架橋反応は主として上記乾燥時に進行するが、架橋反応をより進行させる目的でエージング処理をすることもできる。エージング処理により架橋反応はより進行し、塗膜強度、ガスバリア性、密着耐性等をより向上させることができる。
[アンダーコート層]
本発明のガスバリア性フィルムには、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上のため、前記高分子フィルム基材と前記第1層との間に芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含むアンダーコート層を設けることが好ましい。高分子フィルム基材上に突起や傷などの欠点が存在する場合、前記欠点を起点に高分子フィルム基材上に積層する第1層にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が損なわれる場合があるため、本発明のアンダーコート層を設けることが好ましい。また、高分子フィルム基材と第1層との熱寸法安定性差が大きい場合もガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層を設けることが好ましい。また、本発明に用いられるアンダーコート層は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含有することが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、有機ケイ素化合物および/または無機ケイ素化合物を含有することがより好ましい。
本発明に用いられる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物とを重合させて得ることができる。
分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールF型、レゾルシン、ヒドロキノン等の芳香族グリコールのジエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させて得ることができる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAなどを用いることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート化合物、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族系イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
前記分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物の成分比率は所望の重量平均分子量になる範囲であれば特に限定されない。本発明における芳香族環構造を有するポリウレタン化合物の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000であれば、得られる硬化皮膜の熱寸法安定性、耐屈曲性が優れるため好ましい。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用いて測定され標準ポリスチレンで換算された値である。
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
エチレン性不飽和化合物の含有量は特に限定されないが、熱寸法安定性、表面保護性能の観点から、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物との合計量100質量%中、5〜90質量%の範囲であることが好ましく、10〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
光重合開始剤としては、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性および耐屈曲性を保持することができれば素材は特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、表面保護性能の観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドから選ばれる光重合開始剤が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量100質量%中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、活性エネルギー線照射による重合活性の観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一つの有機ケイ素化合物が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
有機ケイ素化合物の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量100質量%中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
無機ケイ素化合物としては、表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(1)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
Figure 2016064650
アンダーコート層の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上、2,000nm以下がより好ましく、500nm以上、1,000nm以下がさらに好ましい。アンダーコート層の厚みが200nmより薄くなると、高分子フィルム基材上に存在する突起や傷などの欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンダーコート層の厚みが4,000nmより厚くなると、アンダーコート層の平滑性が低下して前記アンダーコート層上に積層する第1層表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。ここでアンダーコート層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
アンダーコート層の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaを10nm以下にすると、アンダーコート層上に均質な第1層を形成しやすくなり、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。アンダーコート層の表面のSRaが10nmより大きくなると、アンダーコート層上の第1層表面の凹凸形状も大きくなり、積層される第1層粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合があり、また、凹凸が多い部分で応力集中によるクラックが発生し易いため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明においては、アンダーコート層のSRaを10nm以下にすることが好ましく、より好ましくは7nm以下である。
本発明におけるアンダーコート層のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
本発明のガスバリア性フィルムにアンダーコート層を適用する場合、アンダーコート層を形成する樹脂を含む塗液の塗布手段としては、まず高分子フィルム基材上に芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗料を乾燥後の厚みが所望の厚みになるよう固形分濃度を調整し、例えばリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗布することが好ましい。また、本発明においては、塗工適性の観点から有機溶剤を用いて芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗料を希釈することが好ましい。
具体的には、キシレン、トルエン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などを用いて、固形分濃度を10質量%以下に希釈して使用することが好ましい。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。また、アンダーコート層を形成する塗料には、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、触媒、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
次いで、塗布後の塗膜を乾燥させて希釈溶剤を除去することが好ましい。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。また、乾燥処理中は湿度を相対湿度で20〜90%RHの範囲で調整しながら加熱処理してもよい。前記加熱処理は、大気中もしくは不活性ガスを封入しながら行ってもよい。
次に、乾燥後の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含む塗膜に活性エネルギー線照射処理を施して前記塗膜を架橋させて、アンダーコート層を形成することが好ましい。
かかる場合に適用する活性エネルギー線としては、アンダーコート層を硬化させることができれば特に制限はないが、汎用性、効率の観点から紫外線処理を用いることが好ましい。紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。また、活性エネルギー線は、硬化効率の観点から窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で用いることが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は、アンダーコート層の架橋度制御の観点から酸素ガス分圧は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができる。
紫外線照射の積算光量は0.1〜1.0J/cmであることが好ましく、0.2〜0.6J/cmがより好ましい。前記積算光量が0.1J/cm以上であれば所望のアンダーコート層の架橋度が得られるため好ましい。また、前記積算光量が1.0J/cm以下であれば高分子フィルム基材へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
[その他の層]
本発明のガスバリア性フィルムの最表面の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここでいう最表面とは、高分子フィルム基材上に第1層および第2層が接するようにこの順に積層された後の、第1層と接していない側の第2層の表面をいう。
[用途]
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。また、高いガスバリア性を活かして、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルム等として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。評価n数は、特に断らない限り、n=5とし平均値を求めた。
(1)層の厚み
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、第1層、第2層、アンダーコート層の厚みを測定した。
(2)水蒸気透過度(g/(m・24hr・atm))
温度40℃、湿度90%RH、測定面積50cm2の条件で、英国、テクノロックス(Technolox)社製の水蒸気透過度測定装置(機種名:DELTAPERM(登録商標))を使用して測定した。評価n数は各水準2とし、測定回数は各検体について10回とし、その平均値を水蒸気透過度(g/(m・24hr・atm))とした。また、本装置の水蒸気透過度の測定限界下限値である2.0×10−4(g/(m・24hr・atm))以下の値は、2.0×10−4以下と記載した。
(3)第1層の組成分析
第1層の組成分析は、X線光電子分光法(XPS法)により行った。
アルゴンイオンを用いたスパッタエッチングにより、最表層を5nm程度エッチングして除去した後、各元素の含有比率を測定した。第1層中における組成傾斜はないものとし、この測定点における組成比率を、第1層の組成比率とした。
XPS法の測定条件は下記の通りとした。
・装置 :ESCA 5800(アルバックファイ社製)
・励起X線 :monochromatic AlKα
・X線出力 :300W
・X線径 :800μm
・光電子脱出角度 :45°
・Arイオンエッチング :2.0kV、10mPa。
(4)全光線透過率
JIS K7361:1997に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦50mm、横50mmのサイズに切り出したフィルム3枚について行い、測定回数は各サンプルにつき5回とし、合計15回測定の平均値を全光線透過率とした。
(5)ヘイズ
JIS K7136:2000に基づき、濁度計NDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測定は、縦50mm、横50mmのサイズに切り出したフィルム3枚について行い、測定回数は各サンプルにつき5回とし、合計15回測定の平均値をヘイズ値とした。
(6)第1層と第2層の密着性評価
下記条件の高温高湿保存した後、JIS K5600−5−6:1999に準拠して、碁盤目テープ剥離試験を行った。まず、第2層を形成した側の表面に10mm×10mm中に1マスが1mm×1mmの切れ込みを計100マス形成し試験面とした。次いで、試験面の表面にセロハンテープ(「CT24」、ニチバン(株)製)を用いて貼り付け、指の腹で密着させた後に90°方向に引っ張って剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数が90マス以上の場合を「○」とし密着性があると判断した。90マス未満の場合を「×」とし密着性なしと判断した。
<高温高湿保存条件>
・使用装置:エスペック(株)製環境試験器(型式:PR−2KTH)
・温度: 85℃
・湿度: 85%RH
・保存時間:500時間。
(7)耐酸性評価
2.5mol/L(5規定)の濃度で生成した硫酸水溶液を、第1層または第2層を形成した側の表面に直径Φ10mmの範囲で滴下し、気温25℃、湿度50%RHの環境下で10分間放置した。放置後、硫酸水溶液を滴下した部分の外観を目視にて観察した。目視にて、外観に変化が見られなかった場合を「○」とし、溶解や着色、膨潤などの変化が見られた場合は「×」として判定した。
(8)共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合の測定
共重合体(A)における(a1)〜(a3)の割合は、まずヘキサフルオロイソパノール(HFIP)で基材であるポリエチレンテレフタレートを溶解し、第1層および第2層を分取する。次に、分取した第2層を固体NMR分析することにより、(a1)〜(a3)の割合を定量する。なお、表2に固体NMRにて測定した(a1)〜(a3)の割合を示す。
(9)平面摩耗試験後の水蒸気透過度評価
下記条件の平面摩耗試験を行った後、評価方法(2)に記載の方法で水蒸気透過度を測定した。まず、平面摩耗試験機の摩擦子表面に摩擦布として綿帆布を取り付け、試験サンプルの第1層または第2層形成面を荷重1,000gで往復100回摩耗した。次いで、摩耗させた位置を評価方法(2)に記載の方法で水蒸気透過度を測定した。評価n数は各水準2とし、測定回数は各検体について10回とし、その平均値を水蒸気透過度(g/(m・24hr・atm))とした。
<平面摩耗試験条件>
・使用装置: (株)太栄科学精器製作所製平面摩耗試験機(型式:PA−300A)
・摩擦子材質: アルミニウム
・摩擦子表面形状:20mm×20mm
・摩擦布: 綿帆布
・ステージ材質: ステンレス
・摩擦ストローク:30mm
・摩擦子往復速度:60回/分
・試験荷重: 1,000g
・摩擦往復回数: 100回。
[共重合体の製造]
以下の実施例、比較例に用いる共重合体は、メチルメタクリレート(MMA)、アクリロニトリル(AN)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)の各モノマーを表1に示す割合(質量比)で配合し、公知の技術により共重合して得た。得られた共重合体を酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びn−プロピルアルコールの混合溶剤に溶解させて固形分濃度が30質量%の共重合体a〜kを得た。なお、各共重合体のモノマーの混合比と得られた塗料の外観を表1に示す。
Figure 2016064650
(実施例1)
(第1層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U48)を用いた。
図3に示す枚葉式のスパッタリング装置(以降スパッタ装置と略す)4を使用し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極5に設置し、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施し、基板ホルダ6に設置した前記高分子フィルム基材1の表面に、第1層としてZnO−SiO−Al層を膜厚50nm狙いで設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極5に酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ装置4の成膜室7の中で、縦110mm、横110mmの前記高分子フィルム基材1の第1層を設ける側の面がスパッタ電極5に対向するように基板ホルダ6に設置し、真空度1.0×10−3Pa以下まで真空排気を行った。次に、真空度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流パルス電源により投入電力1,500Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記高分子フィルム基材1の表面上にZnO−SiO−Al層を形成した。厚みは、成膜時間により調整した。
この第1層の組成は、Zn原子濃度が27.8atom%、Si原子濃度が12.6atom%、Al原子濃度が1.6atom%、O原子濃度が58.0atom%であった。
(第2層のコーティング液)
信越化学工業株式会社製シラン化合物KBE−903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)3.8質量部、純水 0.9質量部、アセトン 20.3質量部を配合し、スターラーを用いて30℃120分間攪拌して加水分解させた固形分濃度15質量%のシラン化合物の加水分解物を得た。
次に、共重合体a 10.0質量部、DIC株式会社製キシレンジイソシアネートを主成分とする硬化剤 HX−75 4.9質量部、メチルエチルケトン 25.4質量部、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物のメチルエチルケトン希釈液(10質量%) 3.0質量部、シラン化合物の加水分解物1.63質量部を30分間攪拌して固形分濃度15質量%の第2層のコーティング液1を調整した。
(第2層の形成)
上記第1層上に、ワイヤーバーを用いてコーティング液1を塗布し、100℃で30秒間乾燥し、乾燥後の厚みが1,000nmとなるように第2層を設けた。
得られたガスバリア性フィルムについて、(1)〜(9)の評価を実施した。結果を表2、表3に示す。
(実施例2)
(芳香族環構造を有するポリウレタン化合物の合成)
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)を300質量部、酢酸エチル710質量部を入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
(アンダーコート層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U48)を用いた。
アンダーコート層形成用の塗液として、前記ポリウレタン化合物を150質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A)を20質量部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン(BASFジャパン社製、商品名:IRGACURE 184)を5質量部、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM−503)を3質量部、酢酸エチルを170質量部、トルエンを350質量部、シクロヘキサノンを170質量部配合して塗液を調整した。次いで、塗液を高分子フィルム基材上にマイクログラビアコーター(グラビア線番150UR、グラビア回転比100%)で塗布、100℃で1分間乾燥し、乾燥後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み1,000nmのアンダーコート層を設けた。
紫外線処理装置:LH10−10Q−G(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製)
導入ガス:N(窒素イナートBOX)
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:400mJ/cm
試料温調:室温。
次いで、アンダーコート層上に実施例1と同様の方法で第1層として厚み50nmのZnO−SiO−Al層を設けた。さらに、第1層上に実施例1と同様の方法で厚みが1,000nmの第2層を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
得られたガスバリア性フィルムについて、(1)〜(9)の評価を実施した。結果を表2、表3に示す。
(実施例3)
共重合体aのかわりに共重合体bを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例4)
共重合体aのかわりに共重合体cを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例5)
共重合体aのかわりに共重合体dを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例6)
共重合体aのかわりに共重合体eを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例7)
(アンダーコート層の形成)
高分子フィルム基材1として、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)U48)を用いた。高分子フィルム基材1の上に実施例2と同様の方法で厚み1,000nmのアンダーコート層を設けた。
(第1層の形成)
図3に示す枚葉式のスパッタリング装置(以降スパッタ装置と略す)4を使用し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素で形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極5に設置し、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを実施し、前記アンダーコート層の表面に、第1層としてZnO−SiO層を膜厚50nm狙いで設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極5に酸化亜鉛/二酸化ケイ素の組成質量比が80/20で焼結されたスパッタターゲットを設置したスパッタ装置4の成膜室7の中で、縦110mm、横110mmの前記高分子フィルム基材1の第1層を設ける側の面がスパッタ電極5に対向するように基板ホルダ6に設置し、真空度1.0×10−3Pa以下まで真空排気を行った。次に、真空度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、高周波電源により投入電力1,000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記アンダーコート層の表面上にZnO−SiO層を形成した。厚みは、成膜時間により調整した。
この第1層の組成は、Zn原子濃度が30.5atom%、Si原子濃度が12.6atom%、O原子濃度が56.9atom%であった。
次いで、共重合体aのかわりに共重合体bを用いる以外は、実施例2と同様にして、第1層上に厚みが1,000nmの第2層を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例8)
第1層の膜厚を100nmとする以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例9)
第1層の膜厚を200nmとする以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例10)
第1層の膜厚を300nmとする以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例11)
第2層の厚みを300nmとする以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例12)
第2層の厚みを200nmとする以外は、実施例3と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例1)
第2層を形成しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例2)
第2層を形成しない以外は、実施例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例3)
共重合体aのかわりに共重合体fを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例4)
共重合体aのかわりに共重合体gを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例5)
共重合体aのかわりに共重合体hを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例6)
共重合体aのかわりに共重合体iを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例7)
共重合体aのかわりに共重合体jを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例8)
共重合体aのかわりに共重合体kを用いる以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例9)
第2層のコーティング液に5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物のメチルエチルケトン希釈液を使用しないこと以外は実施例3と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例10)
実施例7において、第1層として純度99.99質量%の酸化亜鉛からなるスパッタターゲットを使用して、ZnO層を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。この第1層の組成は、Zn原子濃度が45.2atom%、O原子濃度が54.8atom%であった。
(比較例11)
実施例7において、第1層として純度99.99質量%の酸化アルミニウムからなるスパッタターゲットを使用して、Al層を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。この第1層の組成は、Al原子濃度が37.5atom%、O原子濃度が62.5atom%であった。
(比較例12)
実施例7において、第1層として純度99.99質量%の二酸化ケイ素からなるスパッタターゲットを使用して、SiO層を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。この第1層の組成は、Si原子濃度が35.3atom%、O原子濃度が64.7atom%であった。
(比較例13)
実施例7において、第1層として純度99.99質量%の二酸化チタンからなるスパッタターゲットを使用して、TiO層を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。この第1層の組成は、Ti原子濃度が31.4atom%、O原子濃度が68.6atom%であった。
(比較例14)
実施例7において、第1層として酸化アルミニウム/二酸化ケイ素の組成質量比が50/50で焼結されたスパッタターゲットを使用して、Al−SiO層を厚み50nmとなるよう設けた以外は、実施例7と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。この第1層の組成は、Al原子濃度が22.3atom%、Si原子濃度が16.0atom%、O原子濃度が61.7atom%であった。
(比較例15)
第1層の膜厚を100nmとする以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例16)
第1層の膜厚を200nmとする以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(比較例17)
第1層の膜厚を300nmとする以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
Figure 2016064650
Figure 2016064650
本発明のガスバリア性フィルムは、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れているので、例えば、食品、医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス用部材として有用に用いることができるが、用途がこれらに限定されるものではない。
1 高分子フィルム基材
2 ガスバリア層
2a 酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層
2b (A)〜(C)を含む第2層
3 アンダーコート層
4 枚葉式スパッタリング装置
5 スパッタ電極
6 基板ホルダ
7 成膜室

Claims (5)

  1. 高分子フィルム基材の少なくとも片面に、酸化亜鉛および二酸化ケイ素を含む第1層と以下の(A)〜(C)を含む第2層とを高分子フィルム基材からこの順に接して配されたことを特徴とするガスバリア性フィルム。
    (A)不飽和カルボン酸エステル、スチレン、不飽和カルボン酸、不飽和炭化水素及びビニルエステルからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物(a1)と不飽和ニトリル(a2)と水酸基を有する不飽和化合物(a3)との少なくとも3成分を単量体とする共重合体であって、共重合体に占める(a1)〜(a3)の割合が以下である共重合体
    (a1):(a2):(a3)=20〜40質量%:10〜30質量%:30〜70質量%
    (B)イソシアネート基を有する化合物
    (C)2つ以上のカルボン酸基または1つ以上の無水カルボン酸基を有する化合物
  2. 前記高分子フィルム基材と第1層との間にアンダーコート層を有し、該アンダーコート層が芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記第1層が、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)およびインジウム(In)からなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記第1層がアルミニウム(Al)を含み、前記第1層は、X線光電子分光法により測定される亜鉛(Zn)原子濃度が10〜35atom%、ケイ素(Si)原子濃度が5〜25atom%、アルミニウム(Al)原子濃度が1〜7atom%、酸素(O)原子濃度が50〜70atom%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記第2層の厚みが0.1μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
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