JP2016120460A - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、高度なガスバリア性を有し、かつ耐屈曲性、密着性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
【選択図】図1
本発明は、高度なガスバリア性を有し、かつ耐屈曲性、密着性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、高いガスバリア性が必要とされる食品、医薬品の包装用途や太陽電池、電子ペーパー、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレーなどの電子デバイス用途に使用されるガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
高分子基材の表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の無機物(無機酸化物を含む)を使用し、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を利用して、その無機物の蒸着膜を形成してなるガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品や医薬品などの包装材および薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス部材として用いられている。
ガスバリア性向上技術としては、例えば、有機ケイ素化合物の蒸気と酸素とを含有するガスを用いてプラズマCVD法により、ケイ素酸化物を主体として炭素、水素、ケイ素及び酸素からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含有した化合物を高分子基材上に設けることによって、透明性を維持しつつガスバリア性を向上させる方法が用いられている(特許文献1)。また、プラズマCVD法などの成膜方法以外のガスバリア性向上技術としては、ガスバリア性を低下させるピンホールやクラックの発生原因となる突起や凹凸を減少させた平滑基材や表面平滑化を目的としたアンダーコート層を設けた基材が用いられている(特許文献2)。他にも、成膜方法以外のガスバリア性向上技術としては、基板上にエポキシ化合物である有機層とプラズマCVD法で形成されたケイ素系酸化物層を交互に積層させることで、膜応力によるクラック及び欠陥の発生を防止した多層積層構成のガスバリア性フィルムが用いられている(特許文献3)。また、基材上に化学気相成長法で金属酸化物を含有する層を形成した後、真空紫外光を照射するエキシマ処理を施し、ポリシラザン改質層を形成する工程からなるガスバリアフィルムの製造方法(特許文献4)が知られている。
しかしながら、これらの技術を用いた場合においても、基材上に付着している異物または基材自体の凹凸に起因するピンホールにより、水蒸気透過率および酸素透過率の低下が発生する。特許文献3の技術においては、積層数を増やすことでピンホールの影響を低減できるが生産性が大きく損なわれるため量産には不向きである。また、特許文献4に記載された製造方法では薄型テレビ、太陽電池などの電子デバイス向けとしては充分なガスバリア性が確保できないという問題が残っていた。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、厚膜化や多層積層をせずとも高度なガスバリア性を有し、かつ耐屈曲性、密着性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、
(1)高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
(2)前記工程[c]における湿度条件が相対湿度40%以上である(1)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(3)前記工程[c]における温度湿度条件が20〜40℃かつ相対湿度40〜90%である(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(4)前記活性エネルギー線が波長200nm以下の波長成分を含む紫外線である(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(5)前記活性エネルギー線の積算光量が2〜10J/cm2である(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法を用いて製造されたガスバリア性フィルム。
(1)高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
(2)前記工程[c]における湿度条件が相対湿度40%以上である(1)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(3)前記工程[c]における温度湿度条件が20〜40℃かつ相対湿度40〜90%である(1)または(2)に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(4)前記活性エネルギー線が波長200nm以下の波長成分を含む紫外線である(1)〜(3)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(5)前記活性エネルギー線の積算光量が2〜10J/cm2である(1)〜(4)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法を用いて製造されたガスバリア性フィルム。
水蒸気に対する高度なガスバリア性を有し、かつ耐屈曲性、密着性に優れたガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。
発明者らは、水蒸気等に対する高度なガスバリア性を有し、耐屈曲性、密着性にも優れたガスバリア性フィルムの製造方法を得ることを目的として鋭意検討を重ねた結果、高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法における前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有することにより、優れたガスバリア性能を有するガスバリア性フィルムを安定して製造できることを見出したものである。
本発明において顕著な効果が得られる理由は以下のように推定している。すなわち、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して得られる塗膜を無機層[A]上に設け乾燥させることで、無機層[A]表面近傍に存在するピンホールやクラック等の欠陥にケイ素化合物層[B]を構成する成分が充填される。次いで、乾燥後の前記塗膜を、従来は活性エネルギー線照射処理する工程の前に水分を極力無くした状態とするが、本発明では反対に、特定条件で加湿処理を実施して充分な水分を供給したことにより、安定かつ優れたガスバリア性能を持つガスバリア性フィルムを得ることが可能となったと考えられる。さらに、活性エネルギー線照射処理時、加湿処理により供給された水分により、水酸基等の官能基が導入されるため、無機層[A]とケイ素化合物層[B]との密着性が向上することは勿論、ケイ素化合物層[B]上へ他の層が積層された場合にも優れた密着性を得ることができる。
以下、本発明の個別の構成要素について詳細に説明する。
[高分子基材]
本発明に用いられる高分子基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。
本発明に用いられる高分子基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、一軸方向あるいは二軸方向に延伸されたフィルム等を使用してもよい。
本発明に用いられる高分子基材の素材は特に限定されないが、有機高分子を主たる構成成分とするものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン、環状構造を有する非晶性環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性や汎用性、機械特性に優れた非晶性環状ポリオレフィンまたはポリエチレンテレフタレートを含むことが好ましい。また、前記有機高分子は、単独重合体、共重合体のいずれでもよいし、有機高分子として1種類のみを用いてもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
高分子基材の無機層[A]を形成する側の表面には、密着性や平滑性を良くするためにコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンダーコート層の形成処理、等の前処理が施されていてもよい。また、無機層[A]を形成する側の反対側には、フィルムの巻き取り時の滑り性の向上を目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が積層されていてもよい。
本発明に使用する高分子基材の厚みは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から高分子基材の厚みは10μm以上、200μm以下がより好ましい。
[無機層[A]]
本発明における無機層[A]は、亜鉛(Zn)やケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいれば特に限定されるものではないが、無機層[A]がケイ素酸化物を含むことが好ましく、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含むことがより好ましい。なお、高いガスバリア性が得られる無機層[A]としては、以下の(i)〜(iii)の共存相からなる無機層[A1]が好適に用いられる。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A1]の詳細は後述する。
本発明における無機層[A]は、亜鉛(Zn)やケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、スズ(Sn)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)等の元素の酸化物、窒化物、硫化物、または、それらの混合物を含んでいれば特に限定されるものではないが、無機層[A]がケイ素酸化物を含むことが好ましく、亜鉛化合物とケイ素酸化物とを含むことがより好ましい。なお、高いガスバリア性が得られる無機層[A]としては、以下の(i)〜(iii)の共存相からなる無機層[A1]が好適に用いられる。
無機層[A1]:(i)〜(iii)の共存相からなる無機層
(i)酸化亜鉛
(ii)二酸化ケイ素
(iii)酸化アルミニウム
無機層[A1]の詳細は後述する。
本発明における無機層[A]の厚みは、ガスバリア性を発現する層の厚みとして10nm以上、1,000nm以下が好ましい。無機層[A]の厚みが10nmより薄くなると、十分にガスバリア性が確保できない箇所が発生し、高分子基材面内でガスバリア性がばらつく場合がある。また、無機層[A]の厚みが1,000nmより厚くなると、無機層[A]内に残留する応力が大きくなるため、曲げや外部からの衝撃によって無機層[A]にクラックが発生しやすくなり、使用に伴いガスバリア性が低下する場合がある。従って、無機層[A]の厚みは10nm以上、1,000nm以下が好ましく、柔軟性を確保する観点から100nm以上、500nm以下がより好ましい。無機層[A]の厚みは、通常は透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定することが可能である。
本発明に使用する無機層[A]の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaが10nmより大きくなると、無機層[A]表面の凹凸形状が大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、膜厚を厚く形成してもガスバリア性の向上効果は得られにくくなる場合がある。また、SRaが10nmより大きくなると、無機層[A]上に積層するケイ素化合物層[B]の膜質が均一にならないため、ガスバリア性が低下する場合がある。従って、無機層[A]のSRaは10nm以下であることが好ましく、より好ましくは7nm以下である。
本発明における無機層[A]のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
本発明において無機層[A]を形成する方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等によって形成することができる。これらの方法の中でも、簡便かつ緻密に無機層[A]を形成可能であることから、スパッタリング法またはCVD法が好ましい。
本発明において無機層[A]として好適に用いられる(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素および(iii)酸化アルミニウムの共存相(以下、(i)酸化亜鉛、(ii)二酸化ケイ素および(iii)酸化アルミニウムの共存相を「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」と表記することもある)からなる層である無機層[A1]について詳細を説明する。なお、「酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相」を「ZnO−SiO2−Al2O3」と略記することもある。また、二酸化ケイ素(SiO2)は、生成時の条件によって、左記組成式のケイ素と酸素の組成比率から若干ずれたもの(SiO〜SiO2)が生成することがあるが、二酸化ケイ素またはSiO2と表記することとする。かかる組成比の化学式からのずれに関しては、酸化亜鉛、酸化アルミニウムについても同様の扱いとし、生成時の条件に依存する組成比のずれに関わらず、それぞれ酸化亜鉛またはZnO、酸化アルミニウムまたはAl2O3と表記することとする。
本発明のガスバリア性フィルムにおいて無機層[A1]を適用することによりガスバリア性が良好となる理由は、酸化亜鉛−二酸化ケイ素−酸化アルミニウム共存相においては酸化亜鉛に含まれる結晶質成分と二酸化ケイ素の非晶質成分とを共存させることによって、微結晶を生成しやすい酸化亜鉛の結晶成長が抑制され粒子径が小さくなるため層が緻密化し、水蒸気の透過が抑制されるためと推測している。
また、酸化アルミニウムを共存させることによって、酸化亜鉛と二酸化ケイ素を共存させる場合に比べて、より結晶成長を抑制することができるため、さらなる層の緻密化ができること、それに伴い、使用時におけるクラックの生成に起因するガスバリア性低下についても抑制できたものと考えられる。
無機層[A1]の組成は、後述するようにICP発光分光分析法により測定することができる。ICP発光分光分析法により測定される亜鉛原子濃度は20〜40atom%、ケイ素原子濃度は5〜20atom%、アルミニウム原子濃度は0.5〜5atom%、O原子濃度は35〜70atom%であることが好ましい。亜鉛原子濃度が40atom%より大きくなる、またはケイ素原子濃度が5atom%より小さくなると、酸化亜鉛の結晶成長を抑制する二酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムが不足するため、空隙部分や欠陥部分が増加し、十分なガスバリア性が得られない場合がある。亜鉛原子濃度が20atom%より小さくなる、またはケイ素原子濃度が20atom%より大きくなると、層内部の二酸化ケイ素の非晶質成分が増加して層の柔軟性が低下する場合がある。また、アルミニウム原子濃度が5atom%より大きくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素との親和性が過剰に高くなるため層の鉛筆硬度が上昇し、熱や外部からの応力に対してクラックが生じやすくなる場合がある。アルミニウム原子濃度が0.5atom%より小さくなると、酸化亜鉛と二酸化ケイ素との親和性が不十分となり、層を形成する粒子間の結合力が向上できないため、柔軟性が低下する場合がある。また、酸素原子濃度が70atom%より大きくなると、無機層[A1]内の欠陥量が増加するため、所望のガスバリア性が得られない場合がある。酸素原子濃度が35atom%より小さくなると、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの酸化状態が不十分となり、結晶成長が抑制できず粒子径が大きくなるため、ガスバリア性が低下する場合がある。かかる観点から、亜鉛原子濃度が25〜35atom%、ケイ素原子濃度が10〜15atom%、アルミニウム原子濃度が1〜3atom%、酸素原子濃度が50〜64atom%であることがより好ましい。
無機層[A1]の組成は、層の形成時に使用した混合焼結材料と同様の組成で形成されるため、目的とする層の組成に合わせた組成の混合焼結材料を使用することで無機層[A1]の組成を調整することが可能である。
無機層[A1]の組成は、ICP発光分光分析法により、亜鉛、ケイ素、アルミニウムの各元素を定量し、酸化亜鉛と二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび含有する無機酸化物の組成比として算出する。なお、酸素原子は亜鉛原子、ケイ素原子、アルミニウム原子が、それぞれ酸化亜鉛(ZnO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)として存在すると仮定して算出する。ICP発光分光分析は、試料をアルゴンガスとともにプラズマ光源部に導入した際に発生する発光スペクトルから、多元素の同時計測が可能な分析手法であり、組成分析に適用することができる。無機層[A1]上にさらに無機層や樹脂層が積層されている場合、必要に応じてイオンエッチングや薬液処理により無機層[A1]上の無機層や樹脂層を除去した後、ICP発光分光分析を行うことができる。
[ケイ素化合物層[B]]
本発明に用いるケイ素化合物層[B]の厚みは、50nm以上、2,000nm以下が好ましく、50nm以上、1,000nmがより好ましい。ケイ素化合物層[B]の厚みが50nmより薄くなると、安定した水蒸気バリア性能を得ることができない場合がある。ケイ素化合物層[B]の厚みが2,000nmより厚くなると、ケイ素化合物層[B]内に残留する応力が大きくなることによって高分子基材が反り、ケイ素化合物層[B]および/または無機層[A]にクラックが発生してガスバリア性が低下する場合がある。ケイ素化合物層[B]の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
本発明に用いるケイ素化合物層[B]の厚みは、50nm以上、2,000nm以下が好ましく、50nm以上、1,000nmがより好ましい。ケイ素化合物層[B]の厚みが50nmより薄くなると、安定した水蒸気バリア性能を得ることができない場合がある。ケイ素化合物層[B]の厚みが2,000nmより厚くなると、ケイ素化合物層[B]内に残留する応力が大きくなることによって高分子基材が反り、ケイ素化合物層[B]および/または無機層[A]にクラックが発生してガスバリア性が低下する場合がある。ケイ素化合物層[B]の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
本発明に使用するケイ素化合物層[B]の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaを10nm以下にすると、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。ケイ素化合物層[B]の表面のSRaが10nmより大きくなると、凹凸が多い部分で応力集中によるクラックが発生し易いため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明においては、ケイ素化合物層[B]のSRaを10nm以下にすることが好ましく、より好ましくは7nm以下である。本発明におけるケイ素化合物層[B]のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
[工程[a]]
本発明に用いられるケイ素化合物層[B]の原料としては、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物が好ましく用いられる。ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物としては、例えば下記の化学式(1)で表される部分構造を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。本発明においては、ガスバリア性向上の観点から下記の化学式(1)に示されるR1、R2、R3の全てが水素であるパーヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンであってもよい。また、単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。なお、nは1以上の整数を表す。
本発明に用いられるケイ素化合物層[B]の原料としては、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物が好ましく用いられる。ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物としては、例えば下記の化学式(1)で表される部分構造を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシラザン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。本発明においては、ガスバリア性向上の観点から下記の化学式(1)に示されるR1、R2、R3の全てが水素であるパーヒドロポリシラザンを用いることが好ましいが、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンであってもよい。また、単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。なお、nは1以上の整数を表す。
本発明に用いられるケイ素化合物層[B]の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。まず無機層[A]上に前記化学式(1)で表される化合物を含む塗料を乾燥後の厚みが所望の厚みになるよう固形分濃度を調整しリバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法などにより塗布することが好ましい。また、本発明においては、塗工適性の観点から有機溶剤を用いて前記化学式(1)で表される化合物を含む塗料を希釈することが好ましい。具体的には、キシレン、トルエン、ターペン、ソルベッソなどの炭化水素系溶剤、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などを用いて、固形分濃度を10質量%以内に希釈して使用することが好ましい。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ケイ素化合物層[B]を形成するケイ素化合物を含む塗料には、ケイ素化合物層[B]の効果が損なわれない範囲で、各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、触媒、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤などを用いることができる。
[工程[b]]
次いで、塗布後の塗膜を乾燥させて希釈溶剤を除去する。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。
次いで、塗布後の塗膜を乾燥させて希釈溶剤を除去する。ここで、乾燥に用いられる熱源としては特に制限は無く、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。なお、ガスバリア性向上のため、加熱温度は50〜150℃で行うことが好ましい。また、加熱処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましい。さらに、加熱処理中は温度が一定であってもよく、徐々に温度を変化させてもよい。
[工程[c]]
次に、乾燥後の塗膜に特定の湿度条件で加湿処理を施して、活性エネルギー線照射処理により塗膜組成を変性させるのに必要な水分を安定供給する。ここで、本発明における加湿処理とは、一定の温度、相対湿度に保たれた環境に晒すことをいう。
次に、乾燥後の塗膜に特定の湿度条件で加湿処理を施して、活性エネルギー線照射処理により塗膜組成を変性させるのに必要な水分を安定供給する。ここで、本発明における加湿処理とは、一定の温度、相対湿度に保たれた環境に晒すことをいう。
温度を一定に保つために用いられる熱源としては特に制限はなく、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターなど任意の熱源を用いることができる。温度は、水分の安定供給の観点から20〜40℃で行うことが好ましい。また、相対湿度は、水分の安定供給の観点から40〜90%で行うことが好ましい。
加湿処理時間は数秒〜1時間行うことが好ましく、また、加湿処理は大気中もしくは不活性ガス中に封入した状態で行ってもよい。
[工程[d]]
次に、加湿後の塗膜にプラズマ処理、紫外線照射処理、フラッシュパルス処理などの活性エネルギー線照射処理を施すことで前記塗膜の組成を変性させ、本発明のケイ素化合物層[B]を得ることができる。活性エネルギー線照射処理としては、簡便で生産性に優れ、かつ均一なケイ素化合物層[B]組成を得ることが容易であることから紫外線処理を使用することが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は、ケイ素化合物層[B]の組成制御の観点から酸素ガス分圧が1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。また、前記紫外線処理では窒素ガスを用いて酸素濃度を低下させることがより好ましい。
次に、加湿後の塗膜にプラズマ処理、紫外線照射処理、フラッシュパルス処理などの活性エネルギー線照射処理を施すことで前記塗膜の組成を変性させ、本発明のケイ素化合物層[B]を得ることができる。活性エネルギー線照射処理としては、簡便で生産性に優れ、かつ均一なケイ素化合物層[B]組成を得ることが容易であることから紫外線処理を使用することが好ましい。紫外線処理としては、大気圧下または減圧下のどちらでも構わないが、汎用性、生産効率の観点から本発明では大気圧下にて紫外線処理を行うことが好ましい。前記紫外線処理を行う際の酸素濃度は、ケイ素化合物層[B]の組成制御の観点から酸素ガス分圧が1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。相対湿度は任意でよい。また、前記紫外線処理では窒素ガスを用いて酸素濃度を低下させることがより好ましい。
紫外線発生源としては、高圧水銀ランプメタルハライドランプ、マイクロ波方式無電極ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ等、既知のものを用いることができるが、生産効率の観点から本発明では波長200nm以下の波長成分を含むキセノンランプを使用することが好ましい。
紫外線照射の積算光量は、2〜10J/cm2であることが好ましく、2.5〜7J/cm2がより好ましい。前記積算光量が2J/cm2以上であれば所望のケイ素化合物層[B]組成が得られるため好ましい。また、前記積算光量が10J/cm2以下であれば高分子基材、無機層[B]へのダメージを少なくすることができるため好ましい。
また、本発明では、紫外線処理の際、生産効率を向上させるために加湿後の塗膜を加熱しながら紫外線処理を行うことがより好ましい。加熱温度としては、50〜150℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。加熱温度が50℃以上であれば高い生産効率が得られるため好ましく、また、加熱温度が150℃以下であれば高分子基材など他の材料の変形や変質が起こりにくいため好ましい。
[アンダーコート層[C]]
本発明のガスバリア性フィルムには、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上のため、高分子基材と無機層[A]との間に芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むアンダーコート層[C]を設けてもよい。高分子基材上に突起や小擦り傷などの欠点が存在する場合、これらの欠点を起点に高分子基材上に積層する無機層[A]にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が損なわれる場合があるため、アンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、高分子基材と無機層[A]との熱寸法安定性差が大きい場合もガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、本発明に用いられるアンダーコート層[C]は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むことが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物[C2]、光重合開始剤[C3]、有機ケイ素化合物[C4]および/または無機ケイ素化合物[C5]を含有することがより好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムには、ガスバリア性向上、耐屈曲性向上のため、高分子基材と無機層[A]との間に芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むアンダーコート層[C]を設けてもよい。高分子基材上に突起や小擦り傷などの欠点が存在する場合、これらの欠点を起点に高分子基材上に積層する無機層[A]にもピンホールやクラックが発生してガスバリア性や耐屈曲性が損なわれる場合があるため、アンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、高分子基材と無機層[A]との熱寸法安定性差が大きい場合もガスバリア性や耐屈曲性が低下する場合があるため、アンダーコート層[C]を設けるのが好ましい。また、本発明に用いられるアンダーコート層[C]は、熱寸法安定性、耐屈曲性の観点から芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]を架橋して得られる構造を含むことが好ましく、さらに、エチレン性不飽和化合物[C2]、光重合開始剤[C3]、有機ケイ素化合物[C4]および/または無機ケイ素化合物[C5]を含有することがより好ましい。
[芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]]
本発明に用いられる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート(c1)、ジオール化合物(c2)、ジイソシアネート化合物(c3)とを重合させて得ることができる。
本発明に用いられる芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]は、主鎖あるいは側鎖に芳香族環およびウレタン結合を有するものであり、例えば、分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート(c1)、ジオール化合物(c2)、ジイソシアネート化合物(c3)とを重合させて得ることができる。
分子内に水酸基と芳香族環とを有するエポキシ(メタ)アクリレート(c1)としては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールF型、レゾルシン、ヒドロキノン等の芳香族グリコールのジエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させて得ることができる。
ジオール化合物(c2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、4,4’−イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビスフェノールAなどを用いることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
ジイソシアネート化合物(c3)としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート化合物、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族系イソシアネート化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
前記(c1)、(c2)、(c3)の成分比率は所望の重量平均分子量になる範囲であれば特に限定されない。本発明の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜100,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000であれば、得られる硬化皮膜の熱寸法安定性、耐屈曲性が優れるため好ましい。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用いて測定され標準ポリスチレンで換算された値である。
[エチレン性不飽和化合物[C2]]
エチレン性不飽和化合物[C2]としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
エチレン性不飽和化合物[C2]としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシアクリレート等を挙げられる。これらの中でも、熱寸法安定性、表面保護性能に優れた多官能(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
エチレン性不飽和化合物[C2]の含有量は特に限定されないが、熱寸法安定性、表面保護性能の観点から、芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]との合計量100質量%中、5〜90質量%の範囲であることが好ましく、10〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
[光重合開始剤[C3]]
光重合開始剤[C3]としては、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性および耐屈曲性を保持することができれば素材は特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤[C3]としては、本発明のガスバリア性フィルムのガスバリア性および耐屈曲性を保持することができれば素材は特に限定されない。本発明に好適に用いることができる光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]等オキシムエステル構造を持つ光重合開始剤等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、表面保護性能の観点から、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドから選ばれる光重合開始剤が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
光重合開始剤[C3]の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量100質量%中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
[有機ケイ素化合物[C4]]
有機ケイ素化合物[C4]としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
有機ケイ素化合物[C4]としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、硬化性、活性エネルギー線照射による重合活性の観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む有機ケイ素化合物が好ましい。また、これらは単一の組成で用いてもよいし、二成分以上を混合して使用してもよい。
有機ケイ素化合物[C4]の含有量は特に限定されないが、硬化性、表面保護性能の観点から、重合性成分の合計量100質量%中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
[無機ケイ素化合物[C5]]
無機ケイ素化合物[C5]としては、表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(1)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
無機ケイ素化合物[C5]としては、表面保護性能、透明性の観点からシリカ粒子が好ましく、さらにシリカ粒子の一次粒子径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、5〜80nmの範囲であることがより好ましい。なお、ここでいう一次粒子径とは、ガス吸着法により求めた比表面積sを下記の式(1)に適用することで求められる粒子直径dを指す。
[アンダーコート層[C]の厚み]
アンダーコート層[C]の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上3,000nm以下がより好ましく、500nm以上、2,000nm以下がさらに好ましい。アンダーコート層[C]の厚みが200nmより薄くなると、高分子基材上に存在する突起や小擦り傷などの欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンダーコート層[C]の厚みが4,000nmより厚くなると、アンダーコート層[C]の平滑性が低下して前記アンダーコート層[C]上に積層する無機層[A]表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。アンダーコート層[C]の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
アンダーコート層[C]の厚みは、200nm以上、4,000nm以下が好ましく、300nm以上3,000nm以下がより好ましく、500nm以上、2,000nm以下がさらに好ましい。アンダーコート層[C]の厚みが200nmより薄くなると、高分子基材上に存在する突起や小擦り傷などの欠点の悪影響を抑制できない場合がある。アンダーコート層[C]の厚みが4,000nmより厚くなると、アンダーコート層[C]の平滑性が低下して前記アンダーコート層[C]上に積層する無機層[A]表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合がある。アンダーコート層[C]の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像から測定することが可能である。
アンダーコート層[C]の中心面平均粗さSRaは、10nm以下であることが好ましい。SRaが10nm以下であると、アンダーコート層[C]上に均質な無機層[A]を得やすくなり、ガスバリア性の繰り返し再現性が向上するため好ましい。アンダーコート層[C]のSRaが10nmより大きくなると、アンダーコート層[C]上の無機層[A]表面の凹凸形状も大きくなり、積層されるスパッタ粒子間に隙間ができるため、膜質が緻密になりにくく、ガスバリア性の向上効果が得られにくくなる場合があり、また、凹凸が多い部分で応力集中によるクラックが発生し易いため、ガスバリア性の繰り返し再現性が低下する原因となる場合がある。従って、本発明においては、アンダーコート層[C]のSRaを10nm以下にすることが好ましく、さらに好ましくは7nm以下である。本発明におけるアンダーコート層[C]のSRaは、三次元表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
[その他の層]
本発明のガスバリア性フィルムのケイ素化合物層[B]の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。
本発明のガスバリア性フィルムのケイ素化合物層[B]の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性の向上を目的としたハードコート層を形成してもよいし、有機高分子化合物からなるフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。
[好適な用途]
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気等によるデバイスの性能低下を抑制することができる。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、様々な電子デバイスに用いることができる。例えば、太陽電池のバックシートやフレキシブル回路基板のような電子デバイスに好適に用いることができる。本発明のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスは、優れたガスバリア性を有するため、水蒸気等によるデバイスの性能低下を抑制することができる。
[その他の用途]
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルム等として好適に用いることができる。
本発明のガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有するため、電子デバイス以外にも、食品や電子部品の包装用フィルム等として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。なお、特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。なお、特に記載のない限り評価n数は水準当たり5検体とし、得られた5検体の測定値の平均値を測定結果とした。
(1)層の厚み
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、無機層[A]、ケイ素化合物層[B]、アンダーコート層[C]の厚みを測定した。
断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム((株)日立製作所製 FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製 H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、無機層[A]、ケイ素化合物層[B]、アンダーコート層[C]の厚みを測定した。
(2)水蒸気透過度(g/(m2・day))
特許第4407466号に記載のカルシウム腐食法により、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下での水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度サンプル数は水準当たり2検体とし、測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を水蒸気透過度(g/(m2・d))とした。
特許第4407466号に記載のカルシウム腐食法により、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下での水蒸気透過度を測定した。水蒸気透過度サンプル数は水準当たり2検体とし、測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を水蒸気透過度(g/(m2・d))とした。
(3)耐屈曲性
ガスバリア性フィルムを100mm×140mmに水準当たり2検体サンプリングし、このサンプルにおいて、図3に示すとおり、無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面側の中央部に直径5mmの金属円柱を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)から、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、10回折り曲げ動作を行った後、(3)に示す方法で水蒸気透過度評価を行った。測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を耐屈曲性試験後の水蒸気透過度とした。
ガスバリア性フィルムを100mm×140mmに水準当たり2検体サンプリングし、このサンプルにおいて、図3に示すとおり、無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面側の中央部に直径5mmの金属円柱を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)から、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲で、10回折り曲げ動作を行った後、(3)に示す方法で水蒸気透過度評価を行った。測定回数は各検体について5回とし、得られた10点の平均値を耐屈曲性試験後の水蒸気透過度とした。
(4)密着性
JIS K5600−5−6:1999に準拠し、ケイ素化合物層[B]に2mm×2mmの直角の格子パターン25マスの切り込みを入れ、密着性を評価した。評価結果を密着性良好なものから順に分類0から分類5までの6段階に分類した。
JIS K5600−5−6:1999に準拠し、ケイ素化合物層[B]に2mm×2mmの直角の格子パターン25マスの切り込みを入れ、密着性を評価した。評価結果を密着性良好なものから順に分類0から分類5までの6段階に分類した。
[無機層[A]の形成方法]
(無機層[A1]の形成)
図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置を使用し、高分子基材の片面に酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し無機層[A1]を設けた。
(無機層[A1]の形成)
図2に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置を使用し、高分子基材の片面に酸化亜鉛と二酸化ケイ素と酸化アルミニウムで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットを用いてスパッタリングを実施し無機層[A1]を設けた。
具体的な操作は以下のとおりである。まず、スパッタ電極に酸化亜鉛/二酸化ケイ素/酸化アルミニウムの組成質量比が77/20/3で焼結されたスパッタターゲットを設置した巻き取り式スパッタ装置の巻き取り室の中で、巻き出しロールに高分子基材を無機層[A1]を設ける側の面がスパッタ電極に対向するようにセットし、巻き出し、ガイドロールを介して、クーリングドラムに通した。減圧度2×10−1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流電源により投入電力4,000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより高分子基材の表面上に無機層[A1]を形成した。厚みは、フィルム搬送速度により調整した。その後、ガイドロールを介して巻き取りロールに巻き取った。
[芳香族環構造を有するポリウレタン化合物[C1]の合成]
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)300質量部と、酢酸エチル710質量部とを入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
5リットルの4つ口フラスコに、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(共栄社化学社製、商品名:エポキシエステル3000A)300質量部と、酢酸エチル710質量部とを入れ、内温60℃になるよう加温した。合成触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチル錫0.2質量部を添加し、攪拌しながらジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート(東京化成工業社製)200質量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後2時間反応を続行し、続いてジエチレングリコール(和光純薬工業社製)25質量部を1時間かけて滴下した。滴下後5時間反応を続行し、重量平均分子量20,000の芳香族環構造を有するポリウレタン化合物を得た。
(実施例1)
高分子基材として厚み100μmの非晶性環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製 “ゼオノアフィルム”ZF14)を使用し、この高分子基材の片面に無機層[A1]を厚み150nmとなるよう設けた。無機層[A1]の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。
高分子基材として厚み100μmの非晶性環状ポリオレフィンフィルム(日本ゼオン社製 “ゼオノアフィルム”ZF14)を使用し、この高分子基材の片面に無機層[A1]を厚み150nmとなるよう設けた。無機層[A1]の組成は、Zn原子濃度が27.5atom%、Si原子濃度が13.1atom%、Al原子濃度が2.3atom%、O原子濃度が57.1atom%であった。
次いで、ケイ素化合物層[B]形成用の塗液として、パーヒドロポリシラザンを主成分とするコート剤(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「NN120−20」、固形分濃度20質量%)100質量部をジブチルエーテル300質量部で希釈した塗液1を調製し、塗液1を無機層[A1]上にダイコート方式で塗布、120℃で10分間乾燥した。次いで、気温20℃、相対湿度45%で10分間加湿した。加湿後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み120nmのケイ素化合物層[B]を設けてガスバリア性フィルムを得た。
紫外線処理装置:MEIRH−M−1−152−H(エム・ディ・エキシマ社製)
導入ガス:N2
酸素濃度:600〜800ppm
積算光量:2.5J/cm2
試料温調:100℃
なお、この紫外線発生源より発生される光は波長172nmを中心に±15nmの幅を持つ波長である。
導入ガス:N2
酸素濃度:600〜800ppm
積算光量:2.5J/cm2
試料温調:100℃
なお、この紫外線発生源より発生される光は波長172nmを中心に±15nmの幅を持つ波長である。
得られたガスバリア性フィルムから縦100mm、横140mmの試験片を切り出し、水蒸気透過度の評価を実施した。結果を表1に示す。
(実施例2)
加湿条件を気温20℃、相対湿度80%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
加湿条件を気温20℃、相対湿度80%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例3)
加湿条件を気温40℃、相対湿度30%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
加湿条件を気温40℃、相対湿度30%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例4)
加湿条件を気温40℃、相対湿度80%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
加湿条件を気温40℃、相対湿度80%で10分間加湿した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例5)
紫外線照射積算光量を7.0J/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
紫外線照射積算光量を7.0J/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例6)
加湿条件を気温40℃、相対湿度80%で10分間加湿し、紫外線照射積算光量を7.0J/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
加湿条件を気温40℃、相対湿度80%で10分間加湿し、紫外線照射積算光量を7.0J/cm2に変更した以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例7)
高分子基材として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用した。
高分子基材として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 “ルミラー”(登録商標)U48)を使用した。
アンダーコート層[C]形成用の塗液として、前記ポリウレタン化合物150質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレートDPE−6A)20質量部と、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルーケトン(BASFジャパン社製、商品名:IRGACURE 184)5質量部と、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM−503)3質量部と、酢酸エチル170質量部と、トルエン350質量部と、シクロヘキサノン170質量部とを配合して塗液2を調整した。次いで、塗液2を高分子基材上にマイクログラビアコーター(グラビア線番150UR、グラビア回転比100%)で塗布、100℃で1分間乾燥し、乾燥後、下記条件にて紫外線処理を施して厚み1,000nmのアンダーコート層[C]を設けた。
紫外線処理装置:LH10−10Q−G(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製)
導入ガス:N2(窒素イナートBOX)
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:0.4J/cm2
試料温調:室温
なお、この紫外線発生源より発生される光は200nm〜500nmの波長域の発光強度を100%とした場合、200〜400nmの紫外線が占める発光強度が80%である。
紫外線処理装置:LH10−10Q−G(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製)
導入ガス:N2(窒素イナートBOX)
紫外線発生源:マイクロ波方式無電極ランプ
積算光量:0.4J/cm2
試料温調:室温
なお、この紫外線発生源より発生される光は200nm〜500nmの波長域の発光強度を100%とした場合、200〜400nmの紫外線が占める発光強度が80%である。
次いで、アンダーコート層[C]上に無機層[A1]とケイ素化合物層[B]とを、実施例1と同様に設けて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
加湿処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
加湿処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法により、水蒸気に対する高度なガスバリア性を有し、かつ耐屈曲性、密着性に優れたガスバリア性フィルムを提供することができる。
1 高分子基材
2 巻出しロール
3、4、5、6、7 ガイドロール
8 ダイヘッド
9 乾燥処理室
10 加湿処理室
11 活性エネルギー線照射処理室
12、13、14 ガイドロール
15 巻き取りロール
16 連続式スパッタリング装置
17 巻き取り室
18 巻き出しロール
19、20、21 ガイドロール
22 クーリングドラム
23 スパッタ電極
24、25、26 ガイドロール
27 巻き取りロール
28 ガスバリア性フィルム
29 金属円柱
30 無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面
31 無機層[A]
32 ケイ素化合物層[B]
33 アンダーコート層[C]
2 巻出しロール
3、4、5、6、7 ガイドロール
8 ダイヘッド
9 乾燥処理室
10 加湿処理室
11 活性エネルギー線照射処理室
12、13、14 ガイドロール
15 巻き取りロール
16 連続式スパッタリング装置
17 巻き取り室
18 巻き出しロール
19、20、21 ガイドロール
22 クーリングドラム
23 スパッタ電極
24、25、26 ガイドロール
27 巻き取りロール
28 ガスバリア性フィルム
29 金属円柱
30 無機層[A]およびケイ素化合物層[B]が形成された面と反対面
31 無機層[A]
32 ケイ素化合物層[B]
33 アンダーコート層[C]
Claims (6)
- 高分子基材の少なくとも片側に、無機層[A]とケイ素化合物層[B]とを前記高分子基材側からこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記ケイ素化合物層[B]を設ける工程が、ポリシラザン骨格を持つケイ素化合物を含む塗液を塗布して塗膜を設ける工程[a]、前記塗膜を乾燥させる工程[b]、前記塗膜を加湿する工程[c]および前記塗膜に活性エネルギー線照射処理を施す工程[d]をこの順に有するガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記工程[c]における湿度条件が相対湿度40%以上である請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記工程[c]における温度湿度条件が20〜40℃かつ相対湿度40〜90%である請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記活性エネルギー線が波長200nm以下の波長成分を含む紫外線である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 前記活性エネルギー線の積算光量が2〜10J/cm2である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの製造方法を用いて製造されたガスバリア性フィルム。
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---|---|---|---|
JP2014261816A JP2016120460A (ja) | 2014-12-25 | 2014-12-25 | ガスバリア性フィルムの製造方法 |
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JP (1) | JP2016120460A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018181457A1 (ja) * | 2017-03-31 | 2018-10-04 | 三井化学東セロ株式会社 | バリア性積層フィルム |
-
2014
- 2014-12-25 JP JP2014261816A patent/JP2016120460A/ja active Pending
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WO2018181457A1 (ja) * | 2017-03-31 | 2018-10-04 | 三井化学東セロ株式会社 | バリア性積層フィルム |
JP2018171827A (ja) * | 2017-03-31 | 2018-11-08 | 三井化学東セロ株式会社 | バリア性積層フィルム |
KR20190125388A (ko) * | 2017-03-31 | 2019-11-06 | 미쓰이 가가쿠 토세로 가부시키가이샤 | 배리어성 적층 필름 |
CN110461590A (zh) * | 2017-03-31 | 2019-11-15 | 三井化学东赛璐株式会社 | 阻隔性层叠膜 |
US11179922B2 (en) | 2017-03-31 | 2021-11-23 | Mitsui Chemicals Tohcello, Inc. | Barrier laminate film |
KR102351380B1 (ko) | 2017-03-31 | 2022-01-13 | 미쓰이 가가쿠 토세로 가부시키가이샤 | 배리어성 적층 필름 |
CN110461590B (zh) * | 2017-03-31 | 2022-03-18 | 三井化学东赛璐株式会社 | 阻隔性层叠膜 |
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