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JPH06344431A - 繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞り成形品およびその成形方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞り成形品およびその成形方法

Info

Publication number
JPH06344431A
JPH06344431A JP13788493A JP13788493A JPH06344431A JP H06344431 A JPH06344431 A JP H06344431A JP 13788493 A JP13788493 A JP 13788493A JP 13788493 A JP13788493 A JP 13788493A JP H06344431 A JPH06344431 A JP H06344431A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoplastic resin
fiber
reinforced thermoplastic
deep
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP13788493A
Other languages
English (en)
Inventor
Tadamichi Nozawa
忠道 野沢
Satoru Matoba
哲 的場
Takao Kimura
隆夫 木村
Kensuke Oono
賢祐 大野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Petrochemical Co Ltd, Nippon Steel Corp filed Critical Mitsubishi Petrochemical Co Ltd
Priority to JP13788493A priority Critical patent/JPH06344431A/ja
Publication of JPH06344431A publication Critical patent/JPH06344431A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Laminated Bodies (AREA)
  • Blow-Moulding Or Thermoforming Of Plastics Or The Like (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 成形性、外観の優れた繊維強化熱可塑性樹脂
の張り出しまたは深絞り成形品およびその成形方法を提
供する。 【構成】 単一の繊維に分散した強化繊維と、複数本の
強化繊維が集束された強化繊維束、熱可塑性樹脂からな
る繊維強化熱可塑性樹脂層の片面または両面に、接着性
素材を介して前記繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度より
高い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層を積層し
てシート状成形素材とし、さらに加熱した後、目的に応
じて装飾用表皮を重ね合わせて成形される張り出しまた
は深絞り成形品およびその成形方法。 【効果】 強化繊維束の混合による繊維強化熱可塑性樹
脂層の膨張抑制と、高融点または高軟化点の熱可塑性樹
脂層および装飾用表皮の補強効果により素材の伸び量、
破断荷重が向上して成形性が改良される。また、強化繊
維の露出が抑えられ良好な成形品外観が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂
の張り出しまたは深絞り成形品に関するものである。本
発明の成形品は、自動車の内・外装材、家庭電気製品等
のハウジング、家具等の産業用部品に広く使用すること
ができる。
【0002】
【従来の技術】最近、金属のプレス加工で製造されてい
た産業用部品が、比較的長い強化繊維と熱可塑性樹脂
(マトリックス樹脂)から構成されている繊維強化熱可
塑性樹脂のプレス成形品に代替される傾向にある。繊維
強化熱可塑性樹脂の特徴は、加熱軟化された繊維強化熱
可塑性樹脂シート状成形素材(以後、該繊維強化熱可塑
性樹脂シート状成形素材をシート状成形素材と称する)
を、室温あるいは加熱した成形型内に挿入し短時間で加
圧・冷却固化することにより複雑な成形品を得ることが
でき、さらにその成形品が高い強度を有し、軽量である
点にある。
【0003】シート状成形素材は、抄造技術を応用して
単一の繊維に分散する強化繊維と熱可塑性樹脂粉粒体を
均一に分散して不織材料を製造し、この不織材料を中間
素材とし加熱・加圧・冷却固化して製造される(特公昭
52−12283号公報、特公昭55−9119号公
報)。
【0004】このシート状成形素材を熱可塑性樹脂の軟
化点または融点以上に加熱して、金属のプレス加工で広
く行われている張り出しまたは深絞り成形することは、
低い成形圧力で大型製品が成形でき、さらに装飾用表皮
との一体成形が可能となるため優れた効果が得られる。
しかし、この方法では次のような問題点が生じる。
【0005】張り出し成形とは、クランプにより固定さ
れた素材の伸び、つまり素材の表面積の増加により立体
を形成する成形方法である。張り出し成形の成形性は、
如何に深い成形ができるかで評価され、素材の伸び量が
大きくなるに従って成形性が向上する。深絞り成形は、
素材が金型内に移動して立体が成形されるため、素材の
伸び量の他に破断荷重が重要となる。深絞り成形は、一
般的に張り出し成形に比べて深い成形が可能となるが、
素材の破断荷重が非常に小さい場合は素材が成形途中で
破断し、成形性が低下する。繊維強化熱可塑性樹脂の張
り出しまたは深絞り成形において良好な成形性を得るた
めには、加熱されたシート状成形素材が、大きな伸び量
と高い破断荷重を有することが必要となる。
【0006】従来の繊維強化熱可塑性樹脂の張り出しま
たは深絞り成形の一例を図2に示した。シート状成形素
材11は、一般的には遠赤外線加熱炉8内で熱可塑性樹
脂の融点または軟化点以上に加熱される。加熱されたシ
ート状成形素材を、成形型9に設置されたクランプ(し
わ押え)10により保持し、加圧・冷却固化することに
より繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞り成形品
12を得る。
【0007】この成形では、シート状成形素材の強化繊
維含有量が増加するに従って成形時の伸び量が減少し、
成形性の低下が生じる。単一の繊維に分散した強化繊維
と熱可塑性樹脂からなるシート状成形素材は、加熱時に
マトリックス樹脂の溶融または軟化によって強化繊維に
対する結合力が弱まり、強化繊維の元に戻ろうとするス
プリングバックにより板厚方向に膨張する。このため、
シート膨張は強化繊維含有量の増加に伴い大きくなる。
加熱されたシート状成形素材では、膨張により強化繊維
の交差部に存在して結合材の役割を果たしている熱可塑
性樹脂量が減少し、成形時の伸び量が低下するため破断
し易くなり、成形性が低下する。
【0008】さらに複雑な成形品では、局部的に大きな
変形が生じる。図2の成形品では、縦壁部13が水平部
14に比べて大きく変形する。シート状成形素材は、マ
トリックス樹脂が溶融しているために、成形時の張力が
局部的に加わり、素材の破断15による成形不良が発生
する。
【0009】また、加熱により膨張したシート状成形素
材の表面では、強化繊維が多数露出し、続いて加圧・冷
却固化して成形するため、強化繊維が成形品の表面に露
出したままとなり外観低下が生じる(16)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、成形性、外
観の優れた繊維強化熱可塑性樹脂の張り出しまたは深絞
り成形品およびその成形方法を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段および作用】本発明の要旨
とするところは次の通りである。 (1)単一の繊維に分散した強化繊維および複数本の強
化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性樹脂からなる
繊維強化熱可塑性樹脂層の片面または両面に、接着性素
材を介して前記繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度より高
い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層が積層され
てなることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂張り出し
または深絞り成形品。
【0012】(2)前記繊維強化熱可塑性樹脂層の片面
に接着性素材を介して前記繊維強化熱可塑性樹脂の成形
温度より高い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層
が積層され、他方の片面に装飾用表皮が積層されてなる
ことを特徴とする上記(1)に記載の繊維強化熱可塑性
樹脂張り出しまたは深絞り成形品。
【0013】(3)強化繊維束のバインダーが、水不溶
性のウレタン系または酢酸ビニル系バインダーである上
記(1)または(2)に記載の繊維強化熱可塑性樹脂張
り出しまたは深絞り成形品。
【0014】(4)強化繊維束が、10〜3000本の
単繊維を集束したものである上記(1)〜(3)のいず
れか一つに記載の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは
深絞り成形品。
【0015】(5)単一の繊維に分散した強化繊維およ
び複数本の強化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性
樹脂からなる抄造法による不織材料の片面または両面
に、接着性素材を介して前記不織材料の成形温度より高
い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂フィルムを積
層し、加熱・加圧・冷却固化してシート状成形素材と
し、さらに該シート状成形素材を加熱した後、張り出し
または深絞り成形することを特徴とする繊維強化熱可塑
性樹脂張り出しまたは深絞り成形品の成形方法。
【0016】(6)単一の繊維に分散した強化繊維およ
び複数本の強化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性
樹脂からなる抄造法による不織材料の片面に、接着性素
材を介して前記不織材料の成形温度より高い融点または
軟化点を有する熱可塑性樹脂フィルムを積層し、加熱・
加圧・冷却固化してシート状成形素材とし、さらに該シ
ート状成形素材を加熱した後、前記熱可塑性樹脂フィル
ムが積層されていない該シート状成形素材の表面に装飾
用表皮を重ね合わせて、張り出しまたは深絞り成形する
ことを特徴とする上記(5)に記載の繊維強化熱可塑性
樹脂張り出しまたは深絞り成形品の成形方法。
【0017】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しま
たは深絞り成形品およびその成形方法の一例を図1に示
した。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深
絞り成形品1は、繊維強化熱可塑性樹脂層2と繊維強化
熱可塑性樹脂の成形温度より高い融点または軟化点を有
する熱可塑性樹脂層3、さらに必要に応じて装飾用表皮
4から構成されている。
【0018】繊維強化熱可塑性樹脂層2は、単一の繊維
に分散した強化繊維5および複数本の強化繊維が集束さ
れた強化繊維束6が熱可塑性樹脂中に均一に分散してい
る。熱可塑性樹脂層3は、成形時に溶融または軟化せず
繊維強化熱可塑性樹脂層2の全面を覆っているために強
化繊維の露出を抑え、良好な成形品外観が得られる。さ
らに本発明の成形品に塗装を施すことは、より一層の外
観向上につながり自動車、産業機械等の外装部品への適
用が可能になる。また、加熱されたシート状成形素材に
装飾用表皮4を重ね合わせて一体成形することにより、
自動車内装材等の用途に応じた成形品を効率的に成形す
ることができる。
【0019】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しま
たは深絞り成形品の成形方法を以下に説明する。図1に
は、片面に繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度より高い融
点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層を有し、他方に
装飾用表皮を設けて一体成形する方法を示した。
【0020】本発明のシート状成形素材7は、単一の繊
維に分散する強化繊維および複数本の強化繊維が集束さ
れた強化繊維束と熱可塑性樹脂粉粒体からなる抄造法に
より製造された不織材料の片面に、接着性素材を介して
高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂フィルムを重ね合
わせ、加熱・加圧・冷却固化することにより製造され
る。このシート状成形素材7は、一般的には遠赤外線加
熱炉8内で繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度(マトリッ
クス樹脂の融点または軟化点以上)まで加熱される。高
融点または高軟化点の熱可塑性樹脂層3は、加熱時に溶
融または軟化せず繊維強化熱可塑性樹脂層2の全面を安
定して覆っており、強化繊維の露出を完全に防いでい
る。さらに、加熱されたシート状成形素材の高融点また
は高軟化点の熱可塑性樹脂を積層していない表面に成形
品の用途に応じた装飾用表皮4を重ね合わせ、これらの
積層体を成形型9に設置し、必要に応じてクランプ10
により保持して加圧・冷却固化することにより本発明の
繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞り成形品1を
成形する。
【0021】図1の成形方法では、単一の繊維に分散し
た強化繊維と複数本の強化繊維が集束された強化繊維
束、熱可塑性樹脂からなる繊維強化熱可塑性樹脂層の片
面に、高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂層を積層し
たシート状成形素材7を用い、成形時に装飾用表皮4を
重ね合わせることにより、張り出しおよび深絞り成形の
成形性が著しく向上する。
【0022】従来の成形方法では、単一の繊維に分散し
た強化繊維の含有量が増加するに従って、加熱されたシ
ート状成形素材の膨張が大きくなり、強化繊維の交差部
に存在する熱可塑性樹脂量が減少して素材の伸び量が低
下するため、成形の適用範囲が狭いものになっていた。
【0023】単一の繊維に分散した強化繊維と熱可塑性
樹脂を用いて抄造法により製造された従来の不織材料
は、強化繊維がランダムに配向しているために非常に嵩
高い(嵩密度が低い)性質を示す。不織材料の厚みは、
強化繊維の形状と抄造条件により変化するが、繊維強化
熱可塑性樹脂の成形で一般的に使用される空隙を除去し
たシート状成形素材に比べて10倍程度の厚みを有して
いる。このシート状成形素材は、加熱時にマトリックス
樹脂の溶融または軟化で強化繊維に対する結合力が弱ま
り、強化繊維の元に戻ろうとするスプリングバックによ
り板厚方向に大きく膨張する。
【0024】本発明では、単一の繊維に分散した強化繊
維と複数本の強化繊維が集束された強化繊維束を併用す
ることにより、繊維強化熱可塑性樹脂層の膨張を抑えて
素材の伸び量が低下する問題を解決した。強化繊維束
は、抄造時に単一の繊維に分散せず不織材料の嵩密度を
上げる役割を果たす。不織材料は、強化繊維束と単一の
繊維に分散した強化繊維の混合割合により、繊維分散状
態が制御され容易に調整することができる。この不織材
料を用いたシート状成形素材では、強化繊維のスプリン
グバックが減少することによって加熱時の膨張が抑制さ
れ、それによって、加熱シートの体積当たりの熱可塑性
樹脂量が増加し、強化繊維の交差部に存在している熱可
塑性樹脂量が多くなる。結果として、強化繊維交差部の
樹脂による接触面積が大きくなり、大きな変形に対して
も交差部が追従できるようになるため、素材の伸び量が
増加し成形性が向上する。
【0025】また、従来の成形方法では、複雑な成形品
における局部的な変形が成形性の低下に結びついてい
た。加熱されたシート状成形素材は、マトリックス樹脂
が溶融または軟化しているために、局部的に大きな変形
が生じるとその部分から素材が破断していた。
【0026】本発明では、高融点または高軟化点の熱可
塑性樹脂層および装飾用表皮が延伸されながら成形が進
行する。高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂層および
装飾用表皮は、成形時の張力を保持しシート全体に伝え
る役割を果たすことから、複雑な成形品における局部的
な変形を緩和し、素材の伸び量を増加させる。
【0027】本発明のシート状成形素材の破断荷重は、
繊維強化熱可塑性樹脂層が高融点または高軟化点の熱可
塑性樹脂層および装飾用表皮に補強された状態で変形す
るため、著しく向上する。シート状成形素材の破断荷重
は、繊維強化熱可塑性樹脂層中の強化繊維束の混合割合
が増加するに従って低下する傾向を示すが、補強効果が
大きく従来のシート状成形素材の破断荷重に比べて、高
いレベルを維持する。結果として、張り出し成形で重要
となる素材の伸び量と、深絞り成形で重要となる破断荷
重の両方が改善され、良好な成形性が得られる。
【0028】本発明の成形素材としては、図1のように
予め高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂フィルムが積
層されたシート状成形素材の他に、成形時の加熱に先立
って抄造法により製造された強化繊維、強化繊維束およ
び熱可塑性樹脂粉粒体からなる不織材料(またはシー
ト)の片面または両面に、接着性素材を介して高融点ま
たは高軟化点の熱可塑性樹脂フィルムを重ね、あるいは
加熱された前記不織材料(またはシート)の片面または
両面に、接着性素材を介して別に加熱した高融点または
高軟化点の熱可塑性樹脂フィルムを重ねることによって
調整することもできる。
【0029】本発明では、一般的に成形圧力100kgf/
cm2 以下で張り出しまたは深絞り成形が実施される。図
1は、雄雌型による張り出しまたは深絞り成形について
示しているが、真空、圧空、またはその併用による成形
においても、本発明の張り出しまたは深絞り成形の効果
が適用でき、良好な成形性および成形品外観が得られ
る。
【0030】繊維強化熱可塑性樹脂層の強化繊維および
強化繊維束の含有量は、強化繊維および強化繊維束の良
好な補強効果が現れる5体積%以上で、強化繊維および
強化繊維束と熱可塑性樹脂との接着が可能で機械的性質
を十分発現する40体積%以下とすることが好ましい。
【0031】単一の繊維に分散する強化繊維としては、
ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維のほかに無機繊維、有
機繊維、用途によってはこれらの混合物が用いられる。
強化繊維の形状は、直径が取り扱いの容易さと経済的な
観点により3μm以上で、十分な強度を発現させるため
に30μm以下にすることが好ましく、繊維長は強度発
現の観点から3mm以上で、均一な分散が可能な50mm以
下にすることが望ましい。また強化繊維は、水中での良
好な分散を目的として親水性を向上するために水溶性高
分子、湿潤剤等で表面処理を行うことが望ましく、さら
に強度発現を目的として熱可塑性樹脂との接着性を向上
するためにシランカップリング剤等で表面処理を行うこ
とが望ましい。
【0032】強化繊維束は、抄造時の繊維分散を抑える
ために水不溶性のウレタン系または酢酸ビニル系バイン
ダーで強固に集束する必要がある。集束剤に、強度発現
を目的としてシランカップリング剤等を添加することが
望ましい。また、集束される強化繊維は、単一の繊維に
分散する強化繊維と同様の形状のものを使用するが、集
束本数の好ましい範囲は10本から3000本である。
強化繊維束の集束本数は、多くなるに従って不織材料の
嵩密度を上げる効果を示すが、繊維分散状態の緻密さが
なくなり成形品強度の低下が生じる。
【0033】強化繊維束と強化繊維の混合割合の好まし
い範囲は、強化繊維束/強化繊維が5/95〜95/5
である。混合割合が、5/95以上で不織材料の嵩密度
を上げる効果が現れ、95/5を超えると繊維分散状態
の緻密さがなくなり成形品強度の低下が生じる。
【0034】本発明では、成形品の形状および成形方法
(シート状成形素材に求められる成形性)と、繊維強化
熱可塑性樹脂層の繊維含有量(膨張状態)に応じて、強
化繊維束の集束本数、混合割合を適宜設定し不織材料を
製造することが望ましい。
【0035】熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重
合体、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカ
ーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオ
キシド、ポリ弗化ビニリデン、ポリスルホン、ポリフェ
ニレンスルフィド等の樹脂であり、ガラス繊維等の強化
繊維による補強効果が発揮されやすい点で結晶性樹脂
が、また結晶性樹脂の中でもポリエチレン、ポリプロピ
レン等のポリオレフィンが好んで使用される。さらに、
これらの2種類またはそれ以上の混合物をも含み、これ
らに一般的に用いられる可塑剤、熱安定剤、光安定剤、
充填材、染顔料、耐衝撃剤、増量材、核剤、加工助剤等
を添加することもできる。熱可塑性樹脂の形状は、ペレ
ット、パウダー、フレーク、繊維状のものを適宜選択し
て使用する。
【0036】繊維強化熱可塑性樹脂に積層する高融点ま
たは高軟化点の熱可塑性樹脂は、フィルム状で用いるこ
とが取り扱いが容易で好ましく、繊維強化熱可塑性樹脂
の成形温度より高い温度で溶融または軟化を開始するも
のを選択する必要がある。熱可塑性樹脂は、繊維強化熱
可塑性樹脂層のマトリックス樹脂より融点または軟化点
が30℃以上高いものを選択することが望ましい。熱可
塑性樹脂として、繊維強化熱可塑性樹脂層のマトリック
ス樹脂との融点または軟化点の差が30℃未満ものを選
択した場合は、繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度と重な
り、熱可塑性樹脂層が溶融または軟化して強化繊維が成
形品表面に露出する現象が起こるので、本発明の効果が
期待できなくなる。
【0037】繊維強化熱可塑性樹脂層のマトリックス樹
脂としてポリオレフィンを用いるときは、ポリオレフィ
ンとの融点または軟化点の差、フィルムへの成形性等の
点から、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネー
ト、ポリメチルメタクリレート等の熱可塑性樹脂を選択
することが好ましい。
【0038】表層部に着色または塗装による意匠性、耐
熱性、表面硬度、耐摩耗性等の向上を必要とする場合は
異なる樹脂との混合物、またはこれらに一般的に用いら
れる可塑剤、熱安定剤、光安定剤、充填材、染顔料、耐
衝撃剤、増量材、核剤、加工助剤等を添加したフィルム
を用いることもでき、さらに異なる樹脂の多層フィルム
を用いてもよい。
【0039】熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、用途によ
り0.01〜1mmの範囲で適宜選択する。フィルム厚み
が0.01mm未満では、強化繊維の凹凸が成形品の表面
に影響し、1mm超過では、成形品の板厚当たりの強度が
低下し、経済性も悪くなる。さらに無機フィラーを添加
した熱可塑性樹脂フィルムを使用することもできる。添
加する無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク
等の微粒子状フィラー、マイカ等のフレーク状フィラ
ー、チョップドガラス繊維、ロックウール繊維等の繊維
状フィラーを用いる。無機フィラーは、熱可塑性樹脂と
の接着性を向上するために、シランカップリング剤等で
表面処理を行うことが望ましい。無機フィラーの種類
は、用途に応じて適宜選択するものとし、前記無機フィ
ラーの2種類以上の混合物を添加してもよい。無機フィ
ラーの添加量は、安定したフィルム成形が可能な30体
積%以下とすることが望ましい。
【0040】高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂層
は、何らかの方法で繊維強化熱可塑性樹脂層と接合させ
る必要がある。本発明で用いる接着性素材とは、接着性
樹脂等、またはフィルムラミネートに使用する接着剤等
のことである。
【0041】繊維強化熱可塑性樹脂層のマトリックス樹
脂としてポリオレフィンを用いるときは、接着性樹脂と
して不飽和カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、エ
ステル、アミド、イミド、金属塩等)でグラフト変性さ
れたポリプロピレン、不飽和カルボン酸またはその誘導
体でグラフト変性されたエチレンコポリマー(エチレン
−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エステ
ルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー等)
や、これらに炭化水素エラストマー(ブチルゴム等)を
添加したものを挙げることができ、さらにこれらの2種
類またはそれ以上の混合物を使用することもできる。
【0042】接着性樹脂は、高融点または高軟化点の熱
可塑性樹脂層と繊維強化熱可塑性樹脂層間に設けられ、
繊維強化熱可塑性樹脂層のマトリックス樹脂と共に溶融
し、冷却により両者を固着する。接着性樹脂は、フィル
ム状で用いることが取り扱いが容易で好ましく、またそ
の厚みは接着効果と経済性により5〜500μmとする
ことが望ましく、さらに好ましくは10〜100μmで
ある。
【0043】高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂フィ
ルムと接着性樹脂フィルムを予めラミネートした多層フ
ィルムを使用することにより、成形工程のハンドリング
性が改善される。多層フィルムは、フィルムのラミネー
ト方式として一般的な押し出しラミネート、共押し出し
ラミネート、さらには接着剤を介したラミネートにより
製造される。例えば、ポリアミド/無水マレイン酸変性
ポリプロピレンの押し出しラミネートフィルム、ポリア
ミド/無水マレイン酸変性ポリプロピレンの共押し出し
ラミネートフィルム、ポリアミド/無水マレイン酸変性
ポリプロピレン/ポリプロピレンの共押し出しラミネー
トフィルム、ポリアミド/接着剤/ポリプロピレンのド
ライラミネートフィルム等が挙げられる。
【0044】本発明において、無機フィラーおよび染顔
料を含有した熱可塑性樹脂層を、繊維強化熱可塑性樹脂
層と、透明または半透明の高融点または高軟化点の熱可
塑性樹脂層および接着性素材層の間に設けることは、成
形品の意匠性の向上につながる。無機フィラーとして
は、炭酸カルシウム、タルク等の微粒子状フィラーを使
用し、さらに熱可塑性樹脂は繊維強化熱可塑性樹脂層の
マトリックス樹脂と同じものを使用することが一般的で
ある。この場合もフィルム状で用いることが取り扱いが
容易で好ましく、その厚みは、0.1〜1mmとすること
で所望の意匠性を向上させることができる。無機フィラ
ーおよび染顔料の添加量は、安定したフィルム成形が可
能な30体積%以下とすることが望ましい。
【0045】この無機フィラーおよび染顔料を含有した
熱可塑性樹脂層は、溶融粘度が増大しているので、加熱
されたシート状成形素材においても繊維強化熱可塑性樹
脂層を安定して覆うことができ、強化繊維を隠ぺいする
働きをするので、成形品の意匠性がさらに向上する。
【0046】装飾用表皮は、通気性表皮として天然およ
び合成繊維を素材とした織布、ニードルパンチ等を行っ
た不織布、起毛織布、編布、植毛布、さらに非通気性表
皮としては平滑または布、皮模様等のシボ付け加工が施
されたプラスチックシートまたはフィルム、金属粉末を
混入したり、金属をコーティングしたプラスチックシー
トまたはフィルム等を用いる。また、これらの装飾用表
皮にポリエチレン発泡体、エチレン−プロピレンコポリ
マー発泡体、エチレン−酢酸ビニルコポリマー発泡体、
ウレタン発泡体等の多孔質シートをラミネートしたもの
を使用することもできる。装飾用表皮と繊維強化熱可塑
性樹脂層の接合は、装飾用表皮の融着、ホットメルトタ
イプ接着性樹脂フィルムまたは接着剤を介在させた接着
により行う。
【0047】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を詳細に説明す
る。 実施例1 強化繊維として水溶性高分子、湿潤剤、シランカップリ
ング剤で表面処理された直径10μm、長さ13mmのガ
ラス繊維、強化繊維束としてシランカップリング剤、ウ
レタンバインダーで直径10μm、長さ13mmのガラス
繊維が67本に集束されたガラス繊維束、さらに熱可塑
性樹脂として直径3mmの球状ペレットを機械粉砕し、そ
の粉砕品をふるい分けにより70mesh(開口径0.21
2mm)から10mesh(開口径1.7mm)までに分級した
ポリプロピレン粉粒体(融点:165℃)を使用した。
【0048】抄造法によりガラス繊維10重量%(4.
4体積%)、ガラス繊維束20重量%(8.8体積%)
とポリプロピレン70重量%(86.8体積%)の組成
で、坪量(面積当たりの重量)が2000g/m2 の不
織材料を製造した。
【0049】高融点の熱可塑性樹脂フィルムおよびホッ
トメルトタイプ接着性樹脂フィルムとして、ポリアミド
(ナイロン66:融点265℃)フィルム(厚み80μ
m)と無水マレイン酸をグラフトさせた変性ポリプロピ
レンフィルム(厚み30μm)が予めラミネートされた
多層フィルムを用いた。
【0050】不織材料の片面に接着性樹脂フィルムを接
するように多層フィルムを重ね合わせ、さらにそれらの
両面に鏡板として平滑な表面のステンレス鋼板(板厚2
mm)を重ね合わせて、210℃に温度設定された加熱プ
レス盤内に挿入し、圧力2kgf/cm2 の加圧下で不織材料
の中心部温度が190℃以上に昇温するまで、約5分間
予熱した。この温度で、ポリプロピレン、接着性樹脂は
十分溶融し、ポリアミドは溶融していなかった。続い
て、圧力5kgf/cm2 で、3分間加圧し、さらに積層体を
冷却プレス盤に挿入し、圧力5kgf/cm2 で約5分間、加
圧、冷却固化し、鏡板を取り外して、板厚1.9mmのシ
ート状成形素材を成形した。
【0051】張り出しおよび深絞り成形性の定量的な評
価として、図3に示した成形評価を行った。シート状成
形素材7を210×210mmに切断し、遠赤外線加熱炉
内で3分間加熱した。この時のシート状成形素材の表面
温度は約200℃で、繊維強化熱可塑性樹脂層のポリプ
ロピレンは溶融しているが、ポリアミド層は溶融せずガ
ラス繊維の露出を完全に抑えていることが確認された。
ポリアミドフィルムが積層されていない表面は、多くの
ガラス繊維の露出が確認された。
【0052】加熱されたシート状成形素材7を、直径1
50mmの穴が切り抜かれた架台17の上にポンチ18側
がポリアミドフィルムの積層されていない表面になるよ
うに設置し、さらに架台と同様に直径150mmの穴が切
り抜かれた平板のクランプ10により固定した。続い
て、クランプにより固定されたシート状成形素材を、直
径50mmのポンチ18で張り出しを行い、シート状成形
素材の張り出し量(ポンチの下降量)と、ポンチに設置
したロードセル19により成形時の荷重を測定した。最
大荷重時の張り出し量を張り出し成形性の指標として、
さらに最大荷重を素材の破断荷重として深絞り成形性を
評価した。
【0053】成形品外観は、ポリアミド層の表面粗度を
測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価した。結果を、表
1に示した。
【0054】実施例2 実施例1のガラス繊維、ガラス繊維束、さらにポリプロ
ピレン粉粒体を使用して、抄造法によりガラス繊維20
重量%(8.8体積%)、ガラス繊維束10重量%
(4.4体積%)とポリプロピレン70重量%(86.
8体積%)の組成で、坪量が2000g/m2 の不織材
料を製造した。不織材料の両面に、実施例1の多層フィ
ルムを接着性樹脂側が接するように重ね合わせ、実施例
1と同様に板厚2.0mmのシート状成形素材を成形し
た。
【0055】このシート状成形素材を用いて、実施例1
と同様に成形性の評価を行った。成形品外観は、表面粗
度を測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価した。結果
を、表1に示した。
【0056】実施例3 実施例1の不織材料の両面に、実施例1の多層フィルム
を接着性樹脂側が接するように重ね合わせ、実施例1と
同様に板厚2.0mmのシート状成形素材を成形した。
【0057】このシート状成形素材を用いて、実施例1
と同様に成形性の評価を行った。成形品外観は、表面粗
度を測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価した。結果
を、表1に示した。
【0058】実施例4 実施例1のシート状成形素材と装飾用表皮との一体成形
における成形性の評価を行った。装飾用表皮としては、
皮模様が施された厚み0.5mmポリ塩化ビニルフィルム
に3mmのエチレン−プロピレンコポリマー発泡体(融点
137℃、発泡倍率15倍)がラミネートされた多層表
皮を用いた。
【0059】シート状成形素材を、実施例1と同様に加
熱し、加熱されたシート状成形素材のポリアミドフィル
ムが積層されていない表面に、発泡体が接するように多
層表皮を重ね合わせ、ポリアミド層がポンチ側になるよ
うに架台・クランプで固定して成形性の評価を行った。
成形品外観は、ポリアミド層の表面粗度を測定し中心線
平均粗さ(Ra)で評価した。結果を、表1に示した。
【0060】実施例5 実施例1のシート状成形素材と装飾用表皮との一体成形
における成形性の評価を行った。装飾用表皮としては、
坪量230g/m2 のポリエステル繊維不織布を用い
た。また、接着性樹脂フィルムとして、厚み20μmの
エチレン−酢酸ビニルコポリマー・フィルムを用いた。
【0061】シート状成形素材を、実施例1と同様に加
熱し、加熱されたシート状成形素材のポリアミドフィル
ムが積層されていない表面に、接着性樹脂フィルム、ポ
リエステル繊維不織布を重ね合わせ、ポリアミド層がポ
ンチ側になるように架台・クランプで固定して成形性の
評価を行った。成形品外観は、ポリアミド層の表面粗度
を測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価した。結果を、
表1に示した。
【0062】比較例1 実施例1のガラス繊維とポリプロピレン粉粒体を使用し
て、抄造法によりガラス繊維30重量%(13.2体積
%)、ポリプロピレン70重量%(86.8体積%)の
組成で、坪量が2000g/m2 の不織材料を製造し
た。この不織材料には、ガラス繊維束が使用されておら
ず、実施例の不織材料に比べて非常に嵩高い性質を示し
ていた。不織材料にフィルム積層を行わず、実施例1と
同様に板厚1.8mmのシート状成形素材を成形した。
【0063】このシート状成形素材を用いて、実施例1
と同様に成形性の評価を行った。加熱されたシート状成
形素材の表面は、多くのガラス繊維の露出が確認され
た。成形品外観は、表面粗度を測定し中心線平均粗さ
(Ra)で評価した。結果を、表1に示した。
【0064】比較例2 実施例1の不織材料にフィルム積層を行わず、実施例1
と同様に板厚1.8mmのシート状成形素材を成形した。
このシート状成形素材を用いて、実施例1と同様に成形
性の評価を行った。加熱されたシート状成形素材の表面
は、多くのガラス繊維の露出が確認された。成形品外観
は、表面粗度を測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価し
た。結果を、表1に示した。
【0065】比較例3 比較例1の不織材料の両面にポリプロピレンフィルム
(厚み200μm)を重ね合わせ、実施例1と同様に板
厚2.2mmのシート状成形素材を成形した。さらにこの
シート状成形素材を用いて、実施例1と同様に成形性の
評価を行った。加熱されたシート状成形素材の表面は、
多くのガラス繊維の露出が確認された。成形品外観は、
表面粗度を測定し中心線平均粗さ(Ra)で評価した。
結果を、表1に示した。
【0066】比較例4 比較例1の不織材料の両面に、実施例1の多層フィルム
を接着性樹脂側が接するように重ね合わせ、実施例1と
同様に板厚2.0mmのシート状成形素材を成形した。こ
のシート状成形素材を用いて、実施例1と同様に成形性
の評価を行った。成形品外観は、表面粗度を測定し中心
線平均粗さ(Ra)で評価した。結果を、表1に示し
た。
【0067】比較例5 比較例1のシート状成形素材と実施例4の多層装飾用表
皮を用いて、実施例4と同様に表皮一体成形における成
形性の評価を行った。成形品外観は、装飾用表皮が積層
されていない成形品の表面粗度を測定し、中心線平均粗
さ(Ra)で評価した。結果を、表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】実施例では、比較例に比べて張り出し成形
性で重要となる素材の伸び量と、深絞り成形性で重要と
なる素材の破断荷重が改善されており、成形性の向上が
確認された。
【0070】比較例1,2は、シート状成形素材中のガ
ラス繊維束の混合割合の効果を示すものである。ガラス
繊維束の混合割合が多くなるに従って、加熱時のシート
状成形素材の膨張が抑えられ、張り出し量の向上と最大
荷重の低下が認められた。
【0071】本発明では、高融点または高軟化点の樹脂
層と装飾用表皮の積層により、最大荷重の低下を補って
いる。溶融していないポリアミド層および装飾用表皮
は、延伸されながら張り出されており、両者は張力をシ
ート全体に伝える役割を果たしている。溶融している繊
維強化熱可塑性樹脂層は、両者に補強された状態で変形
するため、局部的な破断が起こり難くなる。結果とし
て、局部的な変形が緩和され張り出し量がさらに増加
し、最大荷重は、ポリアミド層および装飾用表皮の変形
抵抗により増加する。
【0072】実施例2,3と比較例2,4は、繊維強化
熱可塑性樹脂層中のガラス繊維束の混合と、高融点また
は高軟化点の樹脂層の積層の複合効果を示すものであ
る。実施例では、ガラス繊維束の混合割合の増加とポリ
アミド層の補強により、張り出し量が著しく向上してい
ることが認められた。最大荷重は、ガラス繊維束の混合
割合が増加するに従って低下しているが、ポリアミド層
の補強によりポリアミド層が積層されていない素材に比
べて高いレベルを示している。
【0073】比較例3では、繊維強化熱可塑性樹脂層の
マトリックス樹脂と同じポリプロピレンフィルムを積層
したシート状成形素材の成形性を評価した。この場合
は、積層フィルムが加熱時に溶融するため、成形性、成
形品外観において改善が得られなかった。
【0074】ポリアミド層が片面の場合(実施例1と比
較例2の比較)、さらに装飾用表皮との一体成形(実施
例4,5と比較例5の比較)においても、明らかに成形
性の改善が認められた。
【0075】中心線平均粗さで比較した成形品外観は、
ポリアミド層が積層により著しく改善されていることが
確認された。実施例では、加熱されたシート状成形素材
の表面がポリアミド層で覆われ、ガラス繊維の露出が抑
えられていた。成形品は、この状態を凍結して成形され
るため良好な外観が得られる。
【0076】
【発明の効果】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出し
または深絞り成形品では、複数本の強化繊維が集束され
た強化繊維束の併用による繊維強化熱可塑性樹脂層の膨
張抑制と、補強層として高融点または高軟化点の熱可塑
性樹脂層および装飾用表皮を適用することにより、良好
な成形性が得られる。さらに、高融点または高軟化点の
熱可塑性樹脂層により強化繊維の露出が抑えられ、良好
な成形品外観が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは
深絞り成形品およびその成形方法の一例を示す概略図。
【図2】従来の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深
絞り成形品およびその成形方法の一例を示す概略図。
【図3】実施例で行った張り出し試験方法を示す概略
図。
【符号の説明】
1 本発明の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深
絞り成形品 2 繊維強化熱可塑性樹脂層 3 高融点または高軟化点の熱可塑性樹脂層 4 装飾用表皮 5 単一の繊維に分散した強化繊維 6 複数本の強化繊維が集束された強化繊維束 7 本発明のシート状成形素材 8 遠赤外線加熱炉 9 成形型 10 クランプ 11 従来のシート状成形素材 12 従来の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞
り成形品 13 成形品の縦壁部 14 水平部 15 素材の破断 16 強化繊維の露出 17 架台 18 ポンチ 19 ロードセル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 隆夫 三重県四日市市東邦町1番地 三菱油化株 式会社四日市総合研究所内 (72)発明者 大野 賢祐 三重県四日市市東邦町1番地 三菱油化株 式会社四日市総合研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単一の繊維に分散した強化繊維および複
    数本の強化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性樹脂
    からなる繊維強化熱可塑性樹脂層の片面または両面に、
    接着性素材を介して前記繊維強化熱可塑性樹脂の成形温
    度より高い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層が
    積層されてなることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂
    張り出しまたは深絞り成形品。
  2. 【請求項2】 前記繊維強化熱可塑性樹脂層の片面に接
    着性素材を介して前記繊維強化熱可塑性樹脂の成形温度
    より高い融点または軟化点を有する熱可塑性樹脂層が積
    層され、他方の片面に装飾用表皮が積層されてなること
    を特徴とする請求項1記載の繊維強化熱可塑性樹脂張り
    出しまたは深絞り成形品。
  3. 【請求項3】 強化繊維束のバインダーが、水不溶性の
    ウレタン系または酢酸ビニル系バインダーである請求項
    1または2記載の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは
    深絞り成形品。
  4. 【請求項4】 強化繊維束が、10〜3000本の単繊
    維を集束したものである請求項1〜3のいずれか一つに
    記載の繊維強化熱可塑性樹脂張り出しまたは深絞り成形
    品。
  5. 【請求項5】 単一の繊維に分散した強化繊維および複
    数本の強化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性樹脂
    からなる抄造法による不織材料の片面または両面に、接
    着性素材を介して前記不織材料の成形温度より高い融点
    または軟化点を有する熱可塑性樹脂フィルムを積層し、
    加熱・加圧・冷却固化してシート状成形素材とし、さら
    に該シート状成形素材を加熱した後、張り出しまたは深
    絞り成形することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂張
    り出しまたは深絞り成形品の成形方法。
  6. 【請求項6】 単一の繊維に分散した強化繊維および複
    数本の強化繊維が集束された強化繊維束と熱可塑性樹脂
    からなる抄造法による不織材料の片面に、接着性素材を
    介して前記不織材料の成形温度より高い融点または軟化
    点を有する熱可塑性樹脂フィルムを積層し、加熱・加圧
    ・冷却固化してシート状成形素材とし、さらに該シート
    状成形素材を加熱した後、前記熱可塑性樹脂フィルムが
    積層されていない該シート状成形素材の表面に装飾用表
    皮を重ね合わせて、張り出しまたは深絞り成形すること
    を特徴とする請求項5記載の繊維強化熱可塑性樹脂張り
    出しまたは深絞り成形品の成形方法。
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