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JP7491780B2 - 永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法および超伝導磁石装置 - Google Patents

永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法および超伝導磁石装置 Download PDF

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JP7491780B2 JP2020147076A JP2020147076A JP7491780B2 JP 7491780 B2 JP7491780 B2 JP 7491780B2 JP 2020147076 A JP2020147076 A JP 2020147076A JP 2020147076 A JP2020147076 A JP 2020147076A JP 7491780 B2 JP7491780 B2 JP 7491780B2
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Description

本発明は、超伝導磁石の永久電流スイッチを構成する永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法、および、それを用いた超伝導磁石装置に関する。
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、医療分野で画像診断に用いられており、病態の診断に必要不可欠なツールとなっている。MRI装置は、超伝導磁石が作る強磁場を利用した装置であり、磁場の時間変化を抑制するために永久電流モードで運転される。超伝導磁石は、超伝導線材によって形成された超伝導コイルをクライオスタット内に備えている。
超伝導磁石において、超伝導コイルの正極と負極は、永久電流スイッチ(Persistent Current Switch:PCS)によって短絡されている。超伝導線材は、臨界温度以下で超伝導体となる超伝導フィラメントを心線としており、超伝導コイルを形成する超伝導線材と、永久電流スイッチを構成する超伝導線材が、閉回路を形成している。
永久電流スイッチは、抵抗が高い状態(オフ状態)とゼロ抵抗の状態(オン状態)とに切り替え可能な素子であり、一般に熱式が用いられている。熱式の永久電流スイッチは、ボビン等に巻回された超伝導線材と、切り替え時に超伝導線材を加熱するヒータを備えている。永久電流スイッチは、超伝導線材が臨界温度以下に冷却されるとオン状態となり、超伝導線材が加熱されるとオフ状態となる。
超伝導コイルの正極と負極を電源と接続し、永久電流スイッチをオフ状態として、超伝導コイルへの電流を増加させると、超伝導コイルが励磁される。超伝導コイルの励磁後に、永久電流スイッチをオン状態として超伝導コイルへの電流を減少させると、永久電流スイッチで短絡された閉回路に実質的にゼロ抵抗で永久電流が流れる。
超伝導コイルと永久電流スイッチは、互いにゼロ抵抗で繋がるように超伝導体を介して超伝導接続される。超伝導コイルや永久電流スイッチは、クライオスタットの内部で冷却されるため、閉回路の抵抗は実質的にゼロとなり、永久電流モードの運転が可能になる。永久電流モードによると、電流が殆ど減衰することがなく、時間変化が極めて小さい磁場を発生させることができる。
従来、商業的に流通している超伝導磁石装置では、超伝導コイルを形成する超伝導線材に、ニオブチタン(NbTi)が用いられている。一般に、ニオブチタンの冷却には、液体ヘリウムが用いられており、クライオスタットの内部には、1500~2000Lの液体ヘリウムが充填されている。しかし、近年、ヘリウムの入手が難しくなっており、価格が高騰しているため、代替技術の開発が進められている。
ヘリウムの使用量を削減する技術としては、サーモサイフォン式の冷却機構を備えた超伝導磁石装置等が開発されており、一部で製品化されている。サーモサイフォン式によると、重力による熱対流が利用されるため、少量の液体ヘリウムであっても高い冷却能力が得られる。また、二ホウ化マグネシウム(MgB)や高温超伝導体の実用化も進められている。
MgBや高温超伝導体は、臨界温度が数十K以上と高いため、液体ヘリウムによる冷却が不要になることが期待されている。MgBや高温超伝導体を用いた超伝導線材は、従来のニオブチタンを用いた場合と比較して、クエンチ裕度が大きいという特徴がある。クエンチ裕度Δeは、装置の運転温度をTop、コアとシースとの複合材料である超伝導線材について合成した複合熱容量をC、定格電流をゼロ抵抗で通電可能な上限温度をTとしたとき、次の数式(1)で表される。
Figure 0007491780000001
非特許文献1には、超伝導線材のクエンチ裕度が、ニオブチタンの場合には、1kJm-3程度であるのに対し、MgBや高温超伝導体の場合には、その10~10000倍であることが記載されている。ニオブチタンの場合、摺動等の機械的要因によるクエンチが問題となるのに対し、MgBや高温超伝導体の場合、このようなクエンチが実質的に起こらないことを意味する。
クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体を用いた場合、クエンチのリスクが低くなるため、液体ヘリウムによる浸漬冷却の必要性が低くなる。しかし、液体ヘリウムを使用しない場合や、液体ヘリウムの使用量を減らす場合、新たな問題が生じることが懸念される。液体ヘリウムによる浸漬冷却には、冷却喪失、緊急減磁等の異常事態における防護作用があるが、このような作用が得られなくなるというものである。
液体ヘリウムは、冷却喪失の際には、クライオスタットを数時間にわたって極低温に保つ。このような作用により、冷却機能の復旧や安全な減磁を行うための十分な猶予が得られる。また、液体ヘリウムは、緊急減磁の際には、クライオスタットの内部の熱を蒸発潜熱として吸収する。このような作用により、緊急減磁中の超伝導コイルや永久電流スイッチの急激な温度上昇が抑制される。温度上昇が小さいと、液体ヘリウムの再充填による迅速な復旧が可能になる。
液体ヘリウムを使用しない場合や、液体ヘリウムの使用量を減らす場合、このような防護作用が得られなくなるため、冷却喪失の際の猶予が短くなる。また、緊急減磁の際の温度上昇が大きくなり、復旧に時間がかかるようになる。そのため、MgBや高温超伝導体を用いる場合、液体ヘリウムによる浸漬冷却の代わりに、新たな対策を講じる必要がある。
特に、クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体を用いる場合、ニオブチタンの場合と比較して、常伝導領域が自発的に拡大し難い点が問題になる。MgBや高温超伝導体は、温度上昇時に常伝導領域が広がり難いため、広範囲を積極的に加熱しない限り、蓄積されているエネルギが狭い領域で消費される。冷却喪失、緊急減磁等の異常事態に際して、エネルギが狭い領域で消費されると、超伝導線材が焼損するという問題がある。
冷却喪失、緊急減磁等の異常事態に際して、超伝導コイルを安全に減磁させるための対策としては、保護抵抗や外部電源等の緊急減磁機構の利用が考えられる。永久電流スイッチをオフ状態に切り替え、超伝導コイルに蓄積されているエネルギを保護抵抗で消費させたり、超伝導コイルの閉回路に外部電源から負電圧を印加したりすると、超伝導線材の焼損のリスクを低減することができる。
保護抵抗や外部電源等の緊急減磁機構は、クライオスタットの外部に設けられるため、緊急減磁の際に、クライオスタットの内部の温度上昇は抑制されることになる。従来用いられているニオブチタンの場合には、交流損失によってクエンチが起こり易いため、このような緊急減磁機構を利用することはできない。しかし、クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体であれば、保護抵抗や外部電源等で安全に減磁することができる。
保護抵抗や外部電源等の緊急減磁機構を利用する場合に、残された大きな問題は、永久電流スイッチの焼損を如何に回避するかである。緊急減磁の際に、永久電流スイッチを抵抗が高い状態(オフ状態)に切り替えると、一部の電流は、閉回路を短絡している永久電流スイッチに分流し得る。オフ状態の永久電流スイッチに大電流が流れると、永久電流スイッチを構成する超伝導線材がジュール熱で焼損する虞があり、超伝導線材の断線が緊急減磁後の復旧の妨げとなる。
例えば、最も普及している磁場強度1.5TのMRI装置では、超伝導コイルのインダクタンスが10~80H程度である。通常の緊急減磁においては、中心磁場を60秒以内に0.02T以下にする必要があるとされている。超伝導コイルのインダクタンスLを80H、運転電流Iopを300Aとしたとき、永久電流スイッチの切り替えに要する時間が10秒であるとすると、残りの50秒内に、6A・s-1で電流を減少させなければならない。
このような条件では、永久電流スイッチの端子間の電圧Vが、V=L・dIop/dt=480Vとなる。永久電流スイッチに流れる電流Iは、オフ状態における永久電流スイッチの抵抗をRとしたとき、I=V・R -1で表される。オフ状態における永久電流スイッチの抵抗Rは、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の線径をD、超伝導線材の長さをL、複合材料である超伝導線材の複合抵抗率をρとしたとき、R=4ρ・L/π・D である。
永久電流スイッチを構成する超伝導線材の焼損の可能性は、温度の時間変化に基づいて評価することができる。永久電流スイッチを構成する超伝導線材の温度Tの時間変化dT/dtは、断熱変化であると仮定すると、複合材料である超伝導線材の単位体積あたりの複合熱容量をcとしたとき、次の数式(2)で表される。
Figure 0007491780000002
したがって、冷却喪失、緊急減磁等の異常事態に際して、永久電流スイッチの焼損を防止するためには、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の複合抵抗率ρを高くすることや、超伝導線材の線長Lを長くすることが有効といえる。その一方で、超伝導線材の線径は、断熱変化であるとの仮定の下では、焼損の起こり易さと無関係である。
特許第6047341号公報 米国特許出願公開第2015/0018220号明細書
Supercond. Sci. Technol. 30 (2017) 053001 Supercond. Sci. Technol. 30 (2017) 014007
永久電流スイッチ用の超伝導線材は、緊急減磁中の焼損を防止する観点からは、コアとなる超伝導フィラメントやコアを覆うシースについて合成した複合抵抗率が高いことが望まれる。また、線長が長いことが望まれる。しかし、超伝導線材の線長が長いと、永久電流スイッチをオフ状態に切り替えるときに、ヒータからの入熱量を大きくせざるを得なくなる。入熱量が大きいと、クライオスタットの内部の温度上昇を招くため、クエンチのリスクが高くなったり、緊急減磁後の復旧に時間がかかったりすることが問題となる。
永久電流スイッチを構成する超伝導線材は、ヒータからの入熱量を小さくする観点からは、体積が小さく、熱容量が小さいことが望ましいといえる。超伝導線材の線径は、断熱変化であるとの仮定の下では、焼損の起こり易さと無関係であるため、必要な運転電流を流せる範囲で線径を小さくすると、緊急減磁中の焼損を防止しつつ、クライオスタットの温度上昇を抑制できるといえる。
その一方で、永久電流スイッチ用の超伝導線材は、オン状態においてゼロ抵抗で通電が可能なように、超伝導コイルに対して超伝導接続させる必要がある。超伝導接続のためには、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の端部を、超伝導コイルを形成する超伝導線材に対して、超伝導体を介して一体化させなければならない。しかし、超伝導線材の端部の線径が小さすぎると、接続作業中に折損が起こり易くなるという別の問題を生じる。
このように、永久電流スイッチ用の超伝導線材に関して、線材の体積や熱容量と、線材の端部の機械的強度や超伝導接続の接続性とは、トレードオフの関係にある。緊急減磁中の焼損を回避できるような複合抵抗率が高く線長が長い超伝導線材においても、小さい熱容量と良好な接続性とが両立するような超伝導線材が求められている。
そこで、本発明は、熱容量が小さく抑制されており、超伝導接続の接続性も良好な永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法、および、それを用いた超伝導磁石装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために本発明に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材は、超伝導磁石の永久電流スイッチを構成する永久電流スイッチ用の超伝導線材であって、超伝導線材の端部同士の間に、超伝導フィラメントの横断面積が前記端部における横断面積よりも小さい小径部を有する。
また、本発明に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材の製造方法は、マグネシウムとホウ素の粉末を金属管に充填する工程と、前記粉末が充填された前記金属管を伸線加工する工程と、伸線加工された前記金属管の端部同士の間に、スエージング加工を施して、超伝導フィラメントの横断面積が前記端部における横断面積よりも小さい小径部を形成する工程と、前記金属管に充填された前記粉末を熱処理して二ホウ化マグネシウムを生成させる工程と、を含む。
また、本発明に係る超伝導磁石装置は、超伝導コイルと、永久電流スイッチ用の超伝導線材で構成された永久電流スイッチと、前記超伝導コイルおよび前記永久電流スイッチを収容したクライオスタットと、前記超伝導コイルを減磁するときに前記超伝導コイルに蓄積されたエネルギを減衰させる減磁機構と、を備え、前記永久電流スイッチ用の超伝導線材は、超伝導線材の末端同士の間に、超伝導フィラメントの横断面積が前記末端における横断面積よりも小さい小径部を有する超伝導線材であり、前記減磁機構は、前記超伝導コイルに蓄積されたエネルギを前記クライオスタットの外部で減衰させる。
本発明によると、熱容量が小さく抑制されており、超伝導接続の接続性も良好な永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法、および、それを用いた超伝導磁石装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材を模式的に示す図である。 永久電流スイッチを備える超伝導磁石装置の等価回路を示す図である。 伸線加工後の超伝導線材の前駆体の横断面を示す画像である。 熱処理後の超伝導線材の横断面を示す画像である。 実施例に係る超伝導線材の臨界電流密度と外部磁場との関係を示す図である。 実施例に係る超伝導線材の複合抵抗率と温度との関係を示す図である。 実施例に係る超伝導線材の単位体積あたりの複合熱容量と温度との関係を示す図である。 永久電流スイッチの到達温度と超伝導線材の長さとの関係を示す図である。 永久電流スイッチの一例を模式的に示す図である。 永久電流スイッチの要部を拡大して示す断面図である。 本発明の変形例に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材を模式的に示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材、その製造方法、および、それを用いた超伝導磁石装置について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、超伝導フィラメント10を備えており、線径が相対的に大きく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に大きい端部110と、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に小さい小径部120と、を有する。
本実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、特に、熱式の永久電流スイッチを構成する超伝導線材として用いられる。超伝導線材100は、臨界温度以下で超伝導体となる超伝導フィラメント10と、超伝導フィラメント10の周囲を覆うシース11と、を備えている。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に大きい端部110と、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に小さい小径部120とを有する構造であるため、線材自体の体積や熱容量が小さくなり、且つ、末端の機械的強度や超伝導接続の接続性が良好になる。
超伝導フィラメント10の断面積が相対的に大きい端部110は、超伝導線材100の両端に設けられる。端部110は、永久電流スイッチを超伝導コイル等と超伝導接続するための接続部となる。端部110の長さは、特に制限されるものではないが、永久電流スイッチを構成するボビンから引き出される口出線として必要な長さを確保することが好ましい。
超伝導フィラメント10の断面積が相対的に小さい小径部120は、超伝導線材100の端部110同士の間に設けられる。図1において、小径部120は、テーパ状の部位を介して端部110から連続的に縮径されている。このような小径部120は、後記するように、スエージング加工によって形成することができる。
また、図1において、小径部120は、端部110同士の間に、超伝導線材100の長手方向に沿って連続的に設けられており、長手方向の中央部の横断面積は、端部の横断面積よりも常に小さく設けられている。このような小径部120であると、スエージング加工時に超伝導フィラメント10に歪みが生じ難く、小径部120が断続的に設けられる場合とは異なり、線材自体の体積や熱容量が長手方向に均一に縮小される。
図2は、永久電流スイッチを備える超伝導磁石装置の等価回路を示す図である。
図2に示すように、超伝導磁石装置200は、超伝導コイル1と、超伝導接続された接続部2と、永久電流スイッチ3と、クライオスタット4と、電流リード5と、励磁電源6と、保護抵抗7と、を備えている。図1に示す永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、図2に示すような超伝導磁石装置200の永久電流スイッチ3を構成する線材として用いることができる。
超伝導磁石装置200は、複数の超伝導コイル1を備えている。複数の超伝導コイル1は、互いに直列に超伝導接続されている。超伝導コイル1の個数は、特に限定されるものではないが、例えば、8個等とすることができる。超伝導コイル1を形成する超伝導線材と、永久電流スイッチ3を構成する超伝導線材とは、互いに超伝導接続されており、ゼロ抵抗で通電可能な閉回路を形成している。
超伝導コイル1は、MgBまたは高温超伝導体を用いた超伝導線材によって形成される。MgBや高温超伝導体は、クエンチ裕度が大きいため、冷却喪失、緊急減磁等の異常事態に際して、保護抵抗7等の緊急減磁機構の利用が可能である。そのため、保護艇庫7等の緊急減磁機構を付属した超伝導磁石装置200に好適である。高温超伝導体としては、YBCO等のイットリウム系銅酸化物や、BSCCO等のビスマス系銅酸化物等が挙げられる。
超伝導磁石装置200は、MRI装置等に用いられる場合、超伝導コイル1の合成インダクタンスが、10~80H程度とされる。超伝導コイル1に蓄積されるエネルギの合計は、2~4MJ程度である。超伝導コイル1に流される運転電流は、300~500A程度である。永久電流スイッチ3を構成する超伝導線材100には、必要な運転電流に対応した臨界電流値や、励磁や減磁を適切に行うためのオフ抵抗が求められる。
永久電流スイッチ3は、熱式であり、永久電流スイッチ用の超伝導線材100と、超伝導線材100を加熱するためのヒータと、を備える。熱式の永久電流スイッチ3は、ヒータで加熱されると、ゼロ抵抗であるオン状態から、抵抗を示すオフ状態に切り替わる。永久電流スイッチ3がオフ状態であるとき、超伝導コイル1は、励磁電源6や、保護抵抗7等の緊急減磁機構に対して閉回路を形成するように接続される。
クライオスタット4は、断熱性の容器として設けられ、真空容器や熱輻射シールド等を備える。超伝導コイル1や永久電流スイッチ3は、クライオスタット4の内部に収容される。クライオスタット4の内部は、超伝導コイル1に対して実質的にゼロ抵抗で運転電流を流せるように、臨界温度以下の極低温に冷却される。クライオスタット4の冷却は、例えば、ギフォード・マクマホン(GM)型冷凍機による伝導冷却によって行うことができる。
電流リード5は、クライオスタット4の内部にある永久電流スイッチ3で短絡された超伝導コイル1の閉回路と、クライオスタット4の外部にある励磁電源6、保護抵抗7等とを、断熱的に超伝導接続している。電流リード5は、高温超伝導体で形成され、超伝導線材同士の間に、超伝導半田による半田付けで接続される。電流リード5は、実質的にゼロ抵抗で大電流を通電可能であるが、熱伝導率が低いため、クライオスタット4の内部への熱侵入を抑制することができる。
励磁電源6は、超伝導コイル1に対してコイルを励磁するための電流を供給する電源である。励磁電源6は、クライオスタット4の外部に設置される。励磁電源6の両端子は、電流リード5を介して超伝導コイル1と超伝導接続される。超伝導コイル1は、永久電流スイッチ3がオフ状態であるとき、励磁電源6から電流を供給されて、所定の磁場を発生させる。
保護抵抗7は、緊急時に超伝導コイル1を減磁するときに、超伝導コイル1に蓄積されたエネルギを減衰させる緊急減磁機構を構成している。保護抵抗7は、クライオスタット4の外部に設置される。保護抵抗7の両端部は、電流リード5を介して超伝導コイル1と超伝導接続される。保護抵抗7には、緊急減磁の際に永久電流スイッチ3がオフ状態に切り替わると、超伝導コイル1から電流が流される。保護抵抗7は、超伝導コイル1に蓄積されているエネルギをジュール熱等として消費する。
なお、図2において、緊急減磁機構としては、超伝導コイル1に流れる電流を減衰させる保護抵抗7のみが備えられている。保護抵抗7としては、金属等を用いた固体抵抗器、導電性液体を用いた液体抵抗器等を用いることができる。しかしながら、緊急減磁機構としては、超伝導コイル1に負電圧を印加する電源を備えることもできる。
ここで、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の構成や作用について、より具体的に説明する。
図2に示すような超伝導磁石装置200の緊急減磁の際には、永久電流スイッチ3がオフ状態に切り替えられるが、超伝導コイル1から保護抵抗7等の緊急減磁機構へ向かう電流が、永久電流スイッチ3に分流し得る。永久電流スイッチ3に大電流が分流すると、永久電流スイッチ3を構成する超伝導線材が、ジュール熱で焼損する虞がある。超伝導線材が断線等を起こすと、緊急減磁後の復旧が不能になる。したがって、永久電流スイッチを構成する超伝導線材は、数式(2)で表されるように、複合抵抗率ρが高く、線長Lが長いことが好ましい。
しかし、超伝導線材の材料は、超伝導体の種類や、超伝導体の製法毎に、種々の制約の下で選択しなければならない。永久電流スイッチを構成する超伝導線材の線長Lを長くするとしても、製造上や実用上の限界がある。また、線長Lが長いほど、熱容量が大きくなるため、永久電流スイッチをオフ状態に切り替えるとき、ヒータからの入熱量を大きくせざるを得なくなる。入熱量が大きいと、クライオスタットの内部の温度が上昇するため、クエンチのリスクの増大や、緊急減磁後の復旧の長時間化が問題となる。
数式(2)で表されるように、超伝導線材の線径は、断熱変化であるとの仮定の下では、焼損の起こり易さと無関係である。したがって、永久電流スイッチを構成する超伝導線材は、熱容量を小さくする観点からは、線径を小さく設けることが好ましいといえる。但し、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の線径は、オン状態で必要な運転電流を流せる範囲で細線化しなければならない。
一般に流通しているMRI装置は、超伝導コイルの電流密度が100~150A・mm-2程度である(非特許文献2参照)。MRI装置の超伝導コイルを形成する超伝導線材は、ホルマールやガラス編組による絶縁被覆で絶縁されている。また、超伝導コイル中の超伝導線材同士の隙間には、機械的擾乱を防ぐために、絶縁性の樹脂が含浸されている。
超伝導コイルを形成する超伝導線材の断面において、絶縁被覆および含浸樹脂の体積率が15%であると仮定すると、超伝導コイルを形成する超伝導線材の電流密度は、118~176A・mm-2程度と計算される。超伝導コイルに流される運転電流は、300~500A程度であるから、超伝導コイル用の超伝導線材の線径は、1.5~2.5mm程度が一般的であるといえる。
よって、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の線径は、必要な運転電流を流せる範囲で細線化する観点からは、好ましくは2.5mmと同等かそれ以下、より好ましくは1.5mm以下と同等かそれ以下である。超伝導コイルと同様の超伝導体や製法を用いる場合、少なくともこのような線径であれば、簡単には曲がらなくなるため、折損の可能性が低くなる。小径部120の直径は、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の線径よりも小さく、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは1.5mm以下とする必要がある。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、超伝導コイル1を形成する超伝導線材と同様に、MgBまたは高温超伝導体を用いて形成することができる。MgBや高温超伝導体を用いた超伝導線材は、クエンチ裕度が大きいため、冷却喪失、緊急減磁等の異常事態に際して、保護抵抗7等の緊急減磁機構の利用が可能である。そのため、保護艇庫7等の緊急減磁機構を付属した超伝導磁石装置200に好適である。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、MgBを用いる場合、パウダーインチューブ(PIT)法によって作製することができる。PIT法では、超伝導体の原料粉末を金属管に充填し、金属管に伸線加工を施した後に、反応焼結または自己焼結のための熱処理を施して、コアの超伝導体となる超伝導フィラメントを形成する。
MgBを用いた超伝導線材の製法は、in-situ法とex-situ法とに大別される。in-situ法は、マグネシウムとホウ素の混合粉末を金属管に充填し、熱処理による反応焼結でMgBの超伝導フィラメントを形成する方法である。ex-situ法は、MgBの粉末を金属管に充填し、熱処理による自己焼結でMgBの超伝導フィラメントを形成する方法である。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、in-situ法およびex-situ法のうち、いずれの方法で作製してもよいが、in-situ法で作製することが好ましい。ex-situ法は、均一な線材の作製が容易であるとされている。in-situ法は、高い臨界電流密度を得るのに有効である。
PIT法において、原料粉末を充填する金属管としては、バリア材で形成された管が用いられる。バリア材は、マグネシウムやホウ素と反応し難い材料であり、熱処理中、原料粉末が意図しない反応を起こすのを防ぐ。熱処理中にマグネシウムやホウ素が他の物質と反応すると、超伝導フィラメントの形成が妨げられ、超伝導線材の臨界電流密度が低くなる。しかし、バリア材で形成された金属管を用いると、マグネシウムとホウ素が適切に反応するため、高い臨界電流密度が得られる。
原料粉末を充填した金属管は、熱処理後に得られる超伝導線材において、超伝導フィラメントを覆う母材ないしシースとなる。永久電流スイッチの焼損を防止する観点からは、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の複合抵抗率が高いことが好ましいため、金属管を構成するバリア材の抵抗率も高いことが好ましい。
バリア材としては、ニオブ(Nb)、鉄(Fe)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)や、これらの合金等を用いることができる。バリア材としては、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の複合抵抗率を高くする観点からは、合金が好ましく、ニオブチタンが特に好ましい。純金属は、不純物散乱が起こり難い。また、臨界温度以下の極低温では、フォノン散乱が起こり難い。これに対し、合金を用いると、永久電流スイッチのオフ抵抗を不純物散乱によって効果的に高めることができる。
ここで、永久電流スイッチ用の超伝導線材100をin-situ法で作製した実施例を示す。なお、超伝導フィラメントの材料としては、Cを添加したMgBを用いた。また、超伝導フィラメントを覆うシースの材料、すなわち、原料粉末を充填する金属管のバリア材としては、ニオブチタンを用いた。
はじめに、マグネシウム粉末(粒径<45μm、純度99.8%)、ホウ素粉末(粒径<350nm、純度98.5%)、および、炭素源としてのコロネン粉末(C2412)を、元素比がMg:B:C=1:1.94:0.06となるように秤量し、ポットミル装置を用いて十分に混合した。
次いで、得られた混合粉末を、直径20mmの二重管に充填した。なお、二重管は、内層がニオブチタン、外層が銅であり、銅で被覆されたニオブチタン製の棒材の中央に貫通孔を加工したものである。銅で被覆されたニオブチタン製の棒材は、ニオブチタンを用いた従来の超伝導線材の中間材料に相当する。
二重管に混合粉末を充填した後、二重管に伸線加工を施した。伸線加工の結果、二重管の線径を0.79mmまで縮径させることができた。伸線加工を施した後、二重管を30%硝酸に浸漬させて外層の銅を除去した。その後、アルゴンガスによる不活性雰囲気または真空雰囲気下、700℃で3時間の熱処理を施して、MgBを生成させた。得られた超伝導線材は、線径が0.64mm、MgBの体積率が64%であった。
図3は、伸線加工後の超伝導線材の前駆体の横断面を示す画像である。
図3には、外層が銅、内層がニオブチタンである二重管に、マグネシウムとホウ素の混合粉末を充填し、伸線加工を施した後に、走査型電子顕微鏡による反射電子像を撮影した結果を示す。図3に示すように、伸線加工後の超伝導線材の前駆体は、内層211と外層212を有する二重管内に、マグネシウムとホウ素の混合粉末210が充填された状態である。
銅で形成された外層212は、主として、伸線加工時の焼き付きを防ぐために設けられている。銅は、マグネシウム等と反応してMgBの生成を妨げるが、マグネシウムとホウ素の混合粉末210は、バリア材であるニオブチタンで形成された内層211で覆われているため、熱処理時の意図しない反応が防止される。なお、銅で形成された外層212は、超伝導線材の作製後に安定化材として機能し得るが、不要である場合は、熱処理の前等に除去することができる。
図4は、熱処理後の超伝導線材の横断面を示す画像である。
図4には、伸線加工後の超伝導線材の前駆体から外層のみを除去し、熱処理を施した後に、走査型電子顕微鏡による反射電子像を撮影した結果を示す。図4に示すように、熱処理後の超伝導線材は、MgBで形成された超伝導フィラメント10と、超伝導フィラメント10を覆うニオブチタン製のバリア材であるシース11と、を備えている。
MgBで形成された超伝導フィラメント10は、バリア材であるシース11の内側に微小な空隙を形成している。マグネシウムとホウ素の反応は、熱処理中、溶融・揮発したマグネシウムがホウ素粒子中に拡散することによって進む。マグネシウムとホウ素の反応でMgBが生成すると、物質としての体積は小さくなり、空隙が形成される。しかし、メカニカルミリングした混合粉末を用いると、最終的な空隙率を低減することができる。
次に、作製した実施例に係る超伝導線材の臨界電流密度を測定した結果を示す。臨界電流密度の測定は、磁気特性測定システム(Magnetic Property Measurement System:MPMS)(Quantum Design社製)を用いて磁化法で行った。線長が約4mmの超伝導線材を切り出し、垂直磁場下で磁化曲線を計測して、次の数式(3)で表される拡張Beanモデルに基づいて、臨界電流密度Jを求めた。
Figure 0007491780000003
数式(3)中、dは、超伝導フィラメントの直径、ΔMは、磁気ヒステリシスループ(M-H曲線)の幅を表す。
図5は、実施例に係る超伝導線材の臨界電流密度と外部磁場との関係を示す図である。
図5に示すように、作製した実施例に係る超伝導線材の臨界電流密度Jは、外部磁場Bに対して減少関数を示す結果となった。実施例に係る超伝導線材の臨界電流密度Jは、磁場依存性を示し、低温であるほど、外部磁場Bの増加に対する減少が小さくなった。
一般に普及している磁場強度1.5TのMRI装置の超伝導コイルは、最大経験磁場が3~5T程度である。一方、永久電流スイッチは、通常、外部磁場が低い場所に設置されており、経験磁場が1T程度以下である。作製した実施例に係る超伝導線材は、15Kにおいて、磁場強度1Tで、臨界電流Icが864Aであった。実施例に係る超伝導線材は、300~500Aの一般的な運転電流に対し、永久電流スイッチ用の超伝導線材として十分な余裕を持っている。
したがって、実施例に係る超伝導線材は、必要とされる運転電流を流せる範囲で、更なる細線化が可能であるといえる。例えば、線径を0.46mmに縮径させた場合、臨界電流Iが432Aとなるため、運転電流が300A程度であれば、十分な余裕を持つことになる。0.46mm程度の線径は、超伝導コイル用の超伝導線材の数分の一でしかなく、断面積としては一桁小さい。しかし、ある程度の運転電流を流せるため、熱容量を小さくすることができる点で好ましい線径となる。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、熱容量を小さくする観点からは、線径が小さいほど好ましく、超伝導フィラメント10の直径が、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.75mm以下、更に好ましくは0.50mm以下であり、0.46mm以下に細線化されることが特に好ましいといえる。永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、超伝導コイルよりも低磁場に設置されるため、超伝導コイル用の超伝導線材よりも細線化することができる。
図6は、実施例に係る超伝導線材の複合抵抗率と温度との関係を示す図である。
図6に示すように、作製した実施例に係る超伝導線材の複合抵抗率は、温度の低下に伴って減少し、37.7Kで超伝導転移を示した。実施例に係る超伝導線材の複合抵抗率は、40Kにおいて、38.7μΩcmであった。なお、電気抵抗の測定は、物理特性測定システム(Physical Property Measurement System:PPMS)(Quantum Design社製)を用いて行った。
実施例に係る超伝導線材の複合抵抗率は、超伝導フィラメントに不純物を添加することによって高めることができる。例えば、MgBの原料となる粉末に炭素源を添加すると、熱処理中に、MgBの結晶中のホウ素の蜂の巣格子の一部を炭素に置換することができる。異種元素による置換を行うと、原子配列の周期性が乱れるため、超伝導フィラメント自体の残留抵抗を増大させて、緊急減磁中の焼損を防止することができる。
炭素源としては、コロネン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等の炭化水素や、ステアリン酸等の有機酸や、有機酸のマグネシウム塩等や、BC、SiC等の無機炭素化合物等を用いることができる。炭素源の添加量は、超伝導フィラメントの原料あたり、2~3質量%とすることが好ましい。このような添加量であると、高い臨界電流を確保しつつ、残留抵抗を増大させる効果を十分に得ることができる。
図7は、実施例に係る超伝導線材の単位体積あたりの複合熱容量と温度との関係を示す図である。
図7において、MgBの比熱は、文献値(Phys. Rev. B 64 (2001) 172515)による。NbTiの比熱は、文献値(CERN Accelerator School-2013講義資料<https://indico.cern.ch/event/194284/contributions/1472798/attachments/281498/393574/CAS_propmat_2013.pdf>)による。MgBフィラメントの比熱は、通常、超伝導フィラメントが40%程度の空隙を生じることを考慮して、物質固有の比熱の60%として計算した値である。
図7に示すように、実施例に係る超伝導線材の単位体積あたりの複合熱容量は、比熱が大きいニオブチタンを用いることにより、従来のMgBフィラメントよりも大きくなり、40Kにおいて、1.0×10J・m-3・K-1以上、1.0×10J・m-3・K-1以下となった。よって、実施例に係る超伝導線材は、同じ体積で比較した場合に、従来のMgBフィラメントよりも、クエンチ裕度が大きくなり、数式(2)で表される温度の時間変化や積分による到達温度が小さくなる。
すなわち、実施例に係る超伝導線材は、バリア材としてニオブチタンを用いているため、同じ線長で比較した場合に、従来のMgBフィラメントよりも焼損し難いといえる。バリア材としてニオブチタンを用いると、従来のMgBフィラメントよりも現実的な線長で、緊急減磁の際の焼損を防止できることを意味する。
図8は、永久電流スイッチの到達温度と超伝導線材の長さとの関係を示す図である。
図8に示すように、永久電流スイッチの到達温度Tfは、超伝導線材の線長Lが長いほど低くなる。なお、永久電流スイッチの到達温度Tfは、超伝導線材の複合抵抗率(図6参照)と、超伝導線材の複合熱容量(図7参照)から、数式(2)に基づいて、超伝導線材の線長Lの関数として求めることができる。
永久電流スイッチを構成する超伝導線材の線長Lが250m以上であれば、永久電流スイッチの到達温度Tfが300K以下となるため、緊急減磁中の焼損が実質的に起こらなくなる。したがって、永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、複合抵抗率にもよるが、線長が250m以上であることが好ましいといえる。
一方、数百m程度の現実的な線長Lに対して、永久電流スイッチの到達温度Tfをより低くするには、高い複合抵抗率が必要である。複合抵抗率を高くするためには、超伝導フィラメントへの不純物の添加や、母材・シースの材料の選定が重要となる。但し、実際の永久電流スイッチでは、超伝導線材の周囲に含浸樹脂やボビンが存在し、含浸樹脂やボビンへの熱伝導が起こるため、到達温度Tfが低くなり、必要な線長Lも短くなる。
図8に示すように、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の焼損を防止する観点からは、超伝導線材を数百mの線長に設けることが望まれるが、超伝導線材の線長Lが長いと、超伝導線材の体積が大きくなり、全体としての熱容量が大きくなるため、永久電流スイッチを切り替えるとき、ヒータからの入熱量を大きくせざるを得なくなる。
超伝導線材の線径は、断熱変化であるとの仮定の下では、焼損の起こり易さとは無関係であるため、ある程度の線長が確保されている限り、線径の自由度がある。したがって、緊急減磁機構を利用する超伝導磁石装置200では、焼損を防止しつつ入熱量を抑制するのに、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の細線化が有効であり、製造上や実用上の線長の範囲に対して小径部120を設けることによる効果が大きいといえる。
従来、超伝導コイルにニオブチタンを用いた超伝導磁石装置が普及しているが、ニオブチタンの場合には、クエンチ裕度が小さいため、緊急減磁機構を利用した超伝導コイルの減磁が困難である。ニオブチタンで形成された超伝導コイルは、急激な電流の減少があると、交流損失によってクエンチを起こし、クライオスタットの内部でエネルギを消費することになる。
そのため、ニオブチタンを用いた従来の超伝導磁石装置では、クエンチを起こすことを前提とした設計がなされており、焼損を防止するために、超伝導コイルの広い領域でエネルギを消費するように設計されている。従来の超伝導磁石装置の永久電流スイッチを構成する超伝導線材は、高い複合抵抗率が要求されない点や、小径部120が設けられない点等で、永久電流スイッチ用の超伝導線材100と異なっている。
永久電流スイッチを構成する超伝導線材の端部は、超伝導コイルを形成する超伝導線材と超伝導接続する必要がある。永久電流スイッチを構成する超伝導線材の超伝導フィラメントと、超伝導コイルを形成する超伝導線材の超伝導フィラメントは、運転温度で超伝導転移する組み合わせでなければならない。例えば、MgBを用いた超伝導線材同士を超伝導接続する方法としては、線材同士の間にMgBのバルクを形成する方法(特許文献2等参照)を用いることができる。
はじめに、互いに超伝導接続させる各超伝導線材の端部に、切削加工、エッチングによる溶解加工等を施し、超伝導フィラメントを露出させる。そして、超伝導線材のそれぞれの端部側を接続用容器に挿入し、露出させた超伝導フィラメント同士を近接させる。その後、接続用容器内の超伝導線材の端部の周辺に、MgBの原料となる粉末を充填し、粉末を加圧して圧縮した後に、金属容器を封止して熱処理する。熱処理を行うと、端部同士の間にMgBのバルクが形成されるため、超伝導フィラメント同士が一体化して互いに超伝導接続される。
永久電流スイッチを構成する超伝導線材を超伝導接続するとき、超伝導線材の端部の線径が小さ過ぎると、ハンドリングや前駆体の圧縮等を原因として折損が起こり易くなることが問題となる。超伝導フィラメントは脆いため、過度な歪みが加わると、永久電流を流せないような損傷を受ける。また、超伝導線材の端部の線径が小さ過ぎると、超伝導体同士の接触面積が確保され難くなるため、高い臨界電流が得られなくなる。
これに対し、永久電流スイッチ用の超伝導線材100は、線径が相対的に大きく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に大きい端部110を有するため、小径部120を細線化したとしても、末端における機械的強度や、超伝導接続の作業性や、超伝導体同士の接触面積を確保することができる。線材の末端側が大径となり、線材の中央側が小径となるように、線径を長手方向で変えると、熱容量と接続性とのトレードオフに対応することができる。
小径部120における超伝導フィラメント10の横断面積は、端部110における超伝導フィラメント10の横断面積の1/2以下であることが好ましい。1/2以下であると、小径部120に対する端部110の機械的強度に大きな差異が現れ、ハンドリング時や前駆体の圧縮時等に、端部110の折損や損傷が起こり難くなる。
次に、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の製造方法を、MgBを用いる場合を例にとり、より具体的に説明する。
本実施形態に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材の製造方法は、マグネシウムとホウ素の粉末を金属管に充填する工程と、粉末が充填された金属管を伸線加工する工程と、伸線加工された金属管の端部同士の間に、スエージング加工を施して、超伝導フィラメントの横断面積が端部における横断面積よりも小さい小径部を形成する工程と、金属管に充填された粉末を熱処理して二ホウ化マグネシウムを生成させる工程と、を含む。
原料の粉末としては、マグネシウム粉末と、ホウ素粉末と、必要に応じて添加する炭素源とを、それぞれ秤量し、均一に粉砕・混合した混合粉末を用いる。混合粉末は、バリア材で形成された金属管に充填する。粉末の粉砕・混合は、ボールミル装置、遊星型ミル装置、V型ミキサ、乳鉢等で行うことができる。粉末は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気または真空雰囲気で取り扱うことが好ましい。
粉末の粉砕・混合は、メカニカルミリング法で行うことが好ましい。メカニカルミリング法では、粉末をボール等のメディアやポットの内壁と激しく衝突させて、MgBが明確には生成しない程度の衝突エネルギを加えて、強加工しながら粉砕・混合を行う。なお、MgBが明確に生成しないとは、粉末X線回折においてMgBのピークが実質的に確認されないことを意味する。
メカニカルミリング法を用いると、Mg粒子の隙間にB粒子が侵入し、MgのマトリックスにBが微細に分散した粉末組織が得られるため、充填率が高い超伝導フィラメントを形成することができる。メカニカルミリングは、例えば、ジルコニア製等のボールメディアや、ジルコニア製等のポットを用いて、遊星型ミル装置等によって行うことができる。
粉末が充填された金属管を伸線加工は、超伝導コイルを形成する超伝導線材の場合と同様に、必要な運転電流を流せる範囲で、例えば、1.5~2.5mm程度か、それ以下の線径となるまで行う。伸線加工は、引抜加工、押出加工、スエージ加工、カセットロール加工、溝ロール加工等で行うことができる。伸線加工には、ドローベンチ、静水圧押出機、伸線機、スエージャ、カセットローラダイス、溝ロール等を用いることができる。
スエージング加工は、分割されたダイスが回転しながら棒材を叩いて縮径する鍛造加工であり、回転鍛造とも呼ばれている。スエージング加工は、端部110同士の間に、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に小さい小径部120が形成されるように、線材の長手方向の中央側のみに施して、端部側に施さない方法や、線材の長手方向に沿って、絞りや圧縮力を変える方法で行うことができる。
例えば、線材の一方の末端を、加工装置のダイスに通し、細線化する部分に到達したら、絞りを変えて小径部を形成し、他方の末端に到達したら、再び絞りを戻してダイスを通過させると、線材の長手方向の中央側に小径部120を形成することができる。スエージング加工によると、線材の長手方向の一部のみを選択的に縮径させることができるため、任意の長さの小径部120を形成することができる。また、原料粉末を十分に圧縮することができるため、充填率が高い超伝導フィラメントが得られる。
例えば、粉末が充填された金属管を、線径1.5~2.0mm程度まで引抜加工で細線化した後、金属管の端部同士の間を0.46mm以下程度等までスエージング加工で縮径することができる。なお、これらの線径値は、二重管を用いる場合、二重管の外層を除いた直径を意味する。二重管を用いた場合、スエージング加工を施した後、金属管の外層を除去する。外層の銅は、硝酸で溶解させて除去することができる。
スエージング加工を施した金属管には、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で、MgBを生成させるための熱処理を施す。熱処理温度は、例えば、550~800℃、好ましくは580~700℃とすることができる。このような温度であると、マグネシウムの拡散が進む一方で、生成したMgBの粒成長が抑制されるため、粒界密度が増加して高い臨界電流密度が得られる。線材は、ボビンに巻回し、線材同士の隙間に絶縁性の樹脂を含浸する。
コイル状に巻回された超伝導線材を作製する方法には、ワインド・アンド・リアクト法と、リアクト・アンド・ワインド法がある。ワインド・アンド・リアクト法は、線材をコイル状に巻回した後に、超伝導フィラメントを形成するための熱処理を施す方法である。リアクト・アンド・ワインド法は、超伝導フィラメントを形成するための熱処理を施した後に、線材をコイル状に巻回する方法である。
永久電流スイッチ用の超伝導線材100を作製する方法としては、ワインド・アンド・リアクト法を用いることが好ましい。リアクト・アンド・ワインド法の場合、熱処理後の巻回時に歪みを生じ、超伝導フィラメントが損傷する虞があるため、多大な注意を払う必要があり作業性が悪い。ワインド・アンド・リアクト法であれば、小径部120の境界を含む歪みを低減することができる。ワインド・アンド・リアクト法の場合、高温の熱処理を経るため、絶縁被覆としては、ガラス編組を用いることが好ましい。
図9は、永久電流スイッチの一例を模式的に示す図である。
図9に示すように、永久電流スイッチ3は、ボビン301と、ボビン301に巻回された超伝導線材302と、を備えている。ボビン301に巻回する超伝導線材302として、前記の永久電流スイッチ用の超伝導線材100を用いることができる。
ボビン301は、銅で形成されることが好ましく、無酸素銅で形成されることが特に好ましい。銅は、熱伝導率が高いため、ボビン301に巻回された超伝導線材302を伝導冷却する際に、均一な温度分布を保って冷却を行うことができる。
ボビン301に巻回される超伝導線材302は、無誘導巻きとされる。無誘導巻きは、超伝導線材302の途中に折り返し部303を作り、折り返し部303からボビン301に巻き付ける方法で形成することができる。無誘導巻きでは、超伝導線材302の両端部が同じ側で口出線304となる。
図10は、永久電流スイッチの要部を拡大して示す断面図である。図10は、図9における永久電流スイッチ3のA領域を拡大して模式的に示している。
図10に示すように、永久電流スイッチ3には、永久電流スイッチ3をオフ状態に切り替えるためのヒータ305が備えられる。また、ボビン301に巻回された超伝導線材302は、絶縁性の樹脂306に含浸される。
無誘導巻きとされた永久電流スイッチ3では、超伝導線材302が二本一組でボビン301に巻回される。無誘導巻きによると、互いに隣接する超伝導線材302のそれぞれに反対方向の電流が流れるため、インダクタンスが低減される。
ボビン301に巻回された超伝導線材302の周囲には、巻線の一層毎に、ヒータ305としてフィルムヒータが挿入されている。フィルムヒータによると、超伝導線材302の端部同士の間を、線材の長手方向に沿って全体的に加熱することができる。すなわち、永久電流スイッチ用の超伝導線材100の小径部120を、線材の長手方向に沿って全体的に加熱することができるため、入熱量を最低限に抑制すると共に、局所的な加熱を防ぐことができる。
なお、図10においては、永久電流スイッチ3をオフ状態に切り替えるためのヒータ305として、フィルムヒータを用いているが、フィルムヒータに代えて、ニクロム線を用いてもよい。ニクロム線は、超伝導線材302と共にボビン301に巻回することができる。ワインド・アンド・リアクト法でニクロム線を熱処理する場合、高温の熱処理を経るため、ニクロム線の絶縁被覆としては、ガラス編組を用いることが好ましい。
以上の永久電流スイッチ用の超伝導線材や、その製造方法によると、超伝導線材の端部同士の間に、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメントの断面積が相対的に小さい小径部が設けられるため、端部について機械的強度や超伝導接続の接続性を確保しつつ、線材全体としての体積および熱容量を小さくすることができる。永久電流スイッチをオフ状態に切り替えるときに、ヒータからの入熱量が小さく済むため、クライオスタットの内部の温度上昇を抑制して、クエンチのリスクの増大や、緊急減磁後の復旧の所要時間の長時間化を防ぐことができる。
また、以上の永久電流スイッチ用の超伝導線材や、その製造方法によると、線径が相対的に大きく、超伝導フィラメントの断面積が相対的に大きい端部が設けられるため、端部の機械的強度や超伝導接続の接続性が良好になる。永久電流スイッチを超伝導接続するにあたり、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の端部において、折損や、超伝導フィラメントの損傷が抑制される。また、接続用容器等を用いる超伝導接続の作業性を改善することができる。
また、以上の永久電流スイッチ用の超伝導線材や、その製造方法によると、超伝導線材の複合抵抗率に影響する材料や、超伝導線材の線長の適切な選定により、緊急減磁中の永久電流スイッチの焼損を防止することができる。線径が相対的に小さく、超伝導フィラメントの断面積が相対的に小さい小径部を設けるにあたり、超伝導線材の線径は、焼損の起こり易さと無関係と見做せるため、線材全体としての熱容量を小さくするという目標に対して、線長の選定自由度が高くなるといえる。
よって、以上の永久電流スイッチ用の超伝導線材や、その製造方法によると、熱容量が小さい永久電流スイッチを備えた超伝導磁石装置を、良好な超伝導接続の作業性の下で提供することができる。クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体を用いることにより、保護抵抗や電源等の緊急減磁機構の利用が可能になると共に、永久電流スイッチを構成する超伝導線材の大幅な細線化が可能になる。
このような緊急減磁機構の利用や大幅な細線化は、クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体に限られた対策である可能性が高い。従来のニオブチタンでは、熱的安定性が低く、常にクエンチのリスクを伴うため、含浸樹脂のクラック等による僅かな発熱で焼損する可能性がある。クエンチ裕度が大きいMgBや高温超伝導体であれば、十分な細線化が可能であり、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメントの断面積が相対的に小さい小径部による効果を適切に得ることができる。
図11は、本発明の変形例に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材を模式的に示す図である。
図11に示すように、永久電流スイッチを構成する超伝導線材は、端部から段階的に細線化された形態(変形例に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材500)として設けることもできる。
変形例に係る永久電流スイッチ用の超伝導線材500は、線径が相対的に大きく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に大きい端部510と、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメント10の断面積が相対的に小さい小径部520と、を有している。図11において、小径部520は、後記するように、端部510から段階的に縮径されている。このような小径部520は、スエージング加工によって形成することができる。
例えば、線材の一方の末端を、加工装置を停止してダイスに通し、細線化する部分に到達したら、装置を始動して小径部を形成し、他方の末端に到達したら、再び装置を停止してダイスを通過させると、線材の長手方向の中央側に小径部520を形成することができる。或いは、線材の末端側については、小さい圧縮力・大きい絞りで加工し、中央側については、大きい圧縮力・小さい絞りで加工する方法を用いてもよい。
図11において、永久電流スイッチ用の超伝導線材500の小径部520は、端部510から一段階で縮径されているが、二以上の複数段階で縮径されてもよい。例えば、線材の端部よりも長手方向の中央側に、線径が小さい部位を形成し、その部位よりも長手方向の中央側に、線径が更に小さい部位を形成することができる。
このような永久電流スイッチ用の超伝導線材500によると、端部510から段階的に細線化される形状であるため、加工装置の簡単な操作で作製することができる。端部510から複数段階で細線化すると、小径部520の超伝導フィラメントを形成する原料粉末が急激には圧縮されないため、長手方向の均一性が高い超伝導フィラメントを形成することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記の永久電流スイッチ用の超伝導線材100,500においては、小径部120,520は、超伝導線材100,500の長手方向に沿って連続的に設けられているが、線径が相対的に小さく、超伝導フィラメントの断面積が相対的に小さい小径部は、超伝導線材の長手方向に沿って断続的に設けられてもよい。すなわち、相対的に大径に設けられた部位を挟むように、線材の長手方向に沿って複数箇所に設けられてもよい。複数の小径部は、線径が互いに同一であってもよいし、線径が互いに異なっていてもよい。
また、前記の永久電流スイッチ用の超伝導線材100,500は、一本の超伝導フィラメントを備える単芯線とされているが、複数本の超伝導フィラメントを備える多芯線とされてもよい。超伝導線材を多芯線とすると、交流損失を低減しつつ、高い運転電流を流すことができる。多芯線は、原料粉末を充填した複数の金属管を束ねて別の金属管に挿入し、伸線加工、スエージング加工、熱処理を行うことによって作製することができる。
また、前記の永久電流スイッチ用の超伝導線材100,500は、超伝導接続を適切に行うために端部110,510を設けられるが、超伝導接続の方法は、特に限定されるものではない。互いに超伝導接続させる超伝導線材の位置関係、前駆体の種類、超伝導接続に用いる容器の形状・構造、前駆体の圧縮方法等は、適宜の条件とすることができる。前駆体としては、マグネシウムとホウ素の他に、MgBの粉末を用いることもできる。
1 超伝導コイル
2 接続部
3 永久電流スイッチ
4 クライオスタット
5 電流リード
6 励磁電源
7 保護抵抗
10 超伝導フィラメント
11 シース
100 超伝導線材
110 端部
120 小径部
200 超伝導磁石装置
301 ボビン
302 超伝導線材
303 折り返し部
304 口出線
305 ヒータ
306 樹脂

Claims (9)

  1. 超伝導磁石の永久電流スイッチを構成する永久電流スイッチ用の超伝導線材であって、
    超伝導線材の端部同士の間に、超伝導フィラメントの横断面積が前記端部における横断面積よりも小さい小径部を有する超伝導線材。
  2. 請求項1に記載の永久電流スイッチ用の超伝導線材であって、
    前記小径部は、前記超伝導線材の端部同士の間に、前記超伝導線材の長手方向に沿って設けられており、
    前記超伝導線材の長手方向の中央部の前記超伝導フィラメントの横断面積が、前記超伝導線材の端部の前記超伝導フィラメントの横断面積よりも小さい超伝導線材。
  3. 請求項1に記載の永久電流スイッチ用の超伝導線材であって、
    前記小径部における前記超伝導フィラメントの横断面積は、前記端部における前記超伝導フィラメントの横断面積の1/2以下である超伝導線材。
  4. 請求項1に記載の永久電流スイッチ用の超伝導線材であって、
    前記超伝導フィラメントと、前記超伝導フィラメントの周囲を覆うバリア材と、を備え、
    前記超伝導フィラメントは、二ホウ化マグネシウムで形成されており、
    前記バリア材は、ニオブチタンで形成されている超伝導線材。
  5. 永久電流スイッチ用の超伝導線材の製造方法であって、
    マグネシウムとホウ素の粉末を金属管に充填する工程と、
    前記粉末が充填された前記金属管を伸線加工する工程と、
    伸線加工された前記金属管の端部同士の間に、スエージング加工を施して、超伝導フィラメントの横断面積が前記端部における横断面積よりも小さい小径部を形成する工程と、
    前記金属管に充填された前記粉末を熱処理して二ホウ化マグネシウムを生成させる工程と、を含む超伝導線材の製造方法。
  6. 請求項5に記載の超伝導線材の製造方法であって、
    前記金属管は、内層と外層を備える二重管であり、
    前記内層は、ニオブチタンで形成されており、
    前記外層は、銅で形成されている超伝導線材の製造方法。
  7. 請求項6に記載の超伝導線材の製造方法であって、
    前記外層は、前記スエージング加工の後、且つ、前記熱処理の前に前記二重管から除去される超伝導線材の製造方法。
  8. 超伝導コイルと、
    永久電流スイッチ用の超伝導線材で構成された永久電流スイッチと、
    前記超伝導コイルおよび前記永久電流スイッチを収容したクライオスタットと、
    前記超伝導コイルを減磁するときに前記超伝導コイルに蓄積されたエネルギを減衰させる緊急減磁機構と、を備え、
    前記永久電流スイッチ用の超伝導線材は、超伝導線材の末端同士の間に、超伝導フィラメントの横断面積が前記末端における横断面積よりも小さい小径部を有する超伝導線材であり、
    前記緊急減磁機構は、前記超伝導コイルに蓄積されたエネルギを前記クライオスタットの外部で減衰させる超伝導磁石装置。
  9. 請求項8に記載の超伝導磁石装置であって、
    前記緊急減磁機構は、電流を減衰させる保護抵抗、または、負電圧を印加する電源である超伝導磁石装置。
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