封止用樹脂シートXは、半導体チップなどの電子部品チップを封止するためのシート状の封止樹脂材であり、第1封止樹脂層11と第2封止樹脂層12とを厚さ方向に順に備える。封止用樹脂シートXは、好ましくは、第1封止樹脂層11、および、第1封止樹脂層11の厚さ方向一方面上に位置する第2封止樹脂層12のみからなる。
第1封止樹脂層11は、熱硬化性組成物(第1熱硬化性組成物)から形成される層であり、本実施形態では、少なくとも熱硬化性樹脂と、層状ケイ酸塩化合物とを含有し、無機充填材(第1無機充填材)を含有してもよい。第1封止樹脂層11は、未硬化状態(Aステージの状態)または半硬化状態(Bステージの状態)にある。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第1熱硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。第1熱硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は、例えば、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。
主剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、および、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂が挙げられる。これら主剤は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。主剤としては、好ましくは2官能エポキシ樹脂が用いられ、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
主剤のエポキシ当量は、例えば10g/eq.以上であり、好ましくは100g/eq. 以上である。主剤のエポキシ当量は、例えば500g/eq.以下であり、好ましくは450g/eq.以下である。
主剤の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは72℃以上、特に好ましくは75℃以上である。主剤の軟化点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。このような構成によると、第1熱硬化性組成物の調製時に同組成物を混合しやすく、また、混合後の同組成物の流動特性を制御しやすい。
第1熱硬化性組成物における主剤の割合は、例えば3質量%以上であり、好ましくは5質量%以上である。第1熱硬化性組成物における主剤の割合は、例えば17質量%以下であり、好ましくは15質量%以下である。
硬化剤としては、好ましくはフェノール樹脂が用いられる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。硬化剤としては、好ましくは、フェノールノボラック樹脂およびフェノールアラルキル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
エポキシ樹脂組成物において、主剤であるエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対する、硬化剤であるフェノール樹脂中の水酸基量は、例えば0.7当量以上であり、好ましくは0.9当量以上である。また、主剤であるエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対する、硬化剤であるフェノール樹脂中の水酸基量は、例えば1.5当量以下であり、好ましくは1.2当量以下である。
硬化促進剤は、加熱によって主剤の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)である。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物および有機リン化合物が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、およびメチルジフェニルホスフィンが挙げられる。硬化促進剤としては、好ましくはイミダゾール化合物が用いられ、より好ましくは2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールが用いられる。主剤100質量部に対する硬化促進剤の配合量は、例えば0.05質量部以上である。主剤100質量部に対する硬化促進剤の配合量は、例えば5質量部以下である。
層状ケイ酸塩化合物は、第1熱硬化性組成物にチキソトロピック性を発現させつつ第1熱硬化性組成物を増粘させる成分であり、第1熱硬化性組成物中に分散している。
層状ケイ酸塩化合物としては、例えば、スメクタイト、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、およびマイカが挙げられる。スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、およびスチーブンサイトが挙げられる。層状ケイ酸塩化合物としては、熱硬化性樹脂と混合しやすいことから、好ましくはスメクタイトが用いられ、より好ましくはモンモリロナイトが用いられる。
層状ケイ酸塩化合物は、表面が変性されていない未変性物でもよく、また、表面が有機成分により変性された変性物でもよい。例えば熱硬化性樹脂との親和性の観点からは、好ましくは、表面が有機成分により変性された層状ケイ酸塩化合物が用いられ、より好ましくは、表面が有機成分で変性された有機化スメクタイトが用いられ、さらに好ましくは、表面が有機成分で変性された有機化ベントナイトが用いられる。
有機成分としては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、フォスフォニウムなどの有機カチオン(オニウムイオン)が挙げられる。
アンモニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジステアリルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム、2-ヘキシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、およびトリオクチルアンモニウムが挙げられる。イミダゾリウムとしては、例えば、メチルステアリルイミダゾリウム、ジステアリルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウム、ジヘキシルイミダゾリウム、メチルオクチルイミダゾリウム、ジオクチルイミダゾリウム、メチルドデシルイミダゾリウム、およびジドデシルイミダゾリウムが挙げられる。ピリジニウムとしては、例えば、ステアリルピリジニウム、ヘキシルピリジニウム、オクチルピリジニウム、およびドデシルピリジニウムが挙げられる。フォスフォニウムとしては、例えば、ジメチルジステアリルフォスフォニウム、ジステアリルフォスフォニウム、オクタデシルフォスフォニウム、ヘキシルフォスフォニウム、オクチルフォスフォニウム、2-ヘキシルフォスフォニウム、ドデシルフォスフォニウム、およびトリオクチルフォスフォニウムが挙げられる。有機カチオンは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。有機カチオンとしては、好ましくはアンモニウムが用いられ、より好ましくはジメチルジステアリルアンモニウムが用いられる。
有機化層状ケイ酸塩化合物としては、好ましくは、表面がアンモニウムで変性された有機化スメクタイトが用いられ、より好ましくは、表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイトが用いられる。
層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。層状ケイ酸塩化合物の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
層状ケイ酸塩化合物としては、市販品を用いることができる。有機化ベントナイトの市販品としては、例えば、エスベンシリーズ(ホージュン社製)が挙げられる。
第1封止樹脂層11における層状ケイ酸塩化合物の含有割合(即ち、第1熱硬化性組成物における層状ケイ酸塩化合物の含有割合)は、好ましくは1.2質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上である。第1封止樹脂層11における層状ケイ酸塩化合物の含有割合は、好ましくは5.5質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。第1封止樹脂層11が1.2質量%以上5.5質量%以下の層状ケイ酸塩化合物を含有する構成は、第1封止樹脂層11を増粘させつつ、当該第1封止樹脂層11において、押圧力を受けるときには受けないときより低粘度化するチキソトロピック性を発現させるのに好適である。
第1無機充填材は、層状ケイ酸塩化合物以外の無機フィラーである。第1無機充填材としては、例えば、シリカや窒化ケイ素などのケイ素化合物(層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物)、および、オルトケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩などの層状ケイ酸塩化合物以外のケイ酸塩化合物が挙げられる。第1無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、および窒化ホウ素も挙げられる。第1無機充填材は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。第1無機充填材としては、好ましくは、層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物が用いられ、より好ましくはシリカが用いられる。
第1無機充填材の形状としては、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、および不定形状が挙げられ、好ましくは略球形状が挙げられる。
第1無機充填材の最大長さの平均値(略球形状の第1無機充填材であれば平均粒子径)は、例えば50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。第1無機充填材の最大長さの平均値は、例えば0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上である。第1無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
第1無機充填材は、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などの表面処理剤によって表面処理されていてもよい。
第1封止樹脂層11における第1無機充填材の含有割合(即ち、第1熱硬化性組成物における第1無機充填材の含有割合)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。このような構成は、第1封止樹脂層11において、温度変化による膨張収縮の程度を抑制するのに適する。また、第1封止樹脂層11における第1無機充填材の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。このような構成は、後述のプレス工程における第1封止樹脂層11の流動性を確保するのに適する。
第1熱硬化性組成物は、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、顔料、およびシランカップリング剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、およびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との相溶性を確保する観点から、好ましくはアクリル樹脂が用いられる。
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とを含むモノマー成分の重合物である(メタ)アクリルポリマーが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物モノマー、グリシジル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、およびアクリロニトリルが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、および無水イタコン酸が挙げられる。グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートが挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、および(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。これら共重合性モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば-70℃以上である。同ガラス転移温度は、例えば0℃以下、好ましくは-5℃以下である。ガラス転移温度は、例えば、Fox式により求められる理論値であって、その具体的な算出手法は、例えば、特開2016-175976号公報などに記載されている。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば10万以上、好ましくは30万以上である。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば200万以下、好ましくは100万以下である。樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
第1熱硬化性組成物における熱可塑性樹脂の含有割合は、例えば1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上である。熱硬化性組成物における熱可塑性樹脂の含有割合は、例えば80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下である。
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の粒子径は、例えば0.001μm以上である。顔料の粒子径は、例えば1μm以下である。顔料の粒子径は、顔料を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。また、熱硬化性組成物における顔料の含有割合は、例えば0.1質量%以上である。同含有割合は、例えば2質量%以下である。
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。エポキシ基含有のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランや3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、および、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。シランカップリング剤としては、好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが用いられ、より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。第1熱硬化性組成物におけるシランカップリング剤の含有割合は、例えば0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上である。熱硬化性組成物におけるシランカップリング剤の含有割合は、例えば10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
第1封止樹脂層11が、150℃で1時間の加熱処理後に有するガラス転移温度は、好ましくは135℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば60℃以上である。第1封止樹脂層11のガラス転移温度は、実施例に関して後述する動的粘弾性測定における損失正接(tanδ)の極大値に基づき求めることができる(第2封止樹脂層12の後出のガラス転移温度も同様である)。
第1封止樹脂層11が、150℃で1時間の加熱処理後に有する25℃での引張貯蔵弾性率(第1引張貯蔵弾性率)は、好ましくは3.5GPa以上、より好ましくは3.8GPa以上、さらに好ましくは4GPa以上である。第1引張貯蔵弾性率は、好ましくは9GPa以下、より好ましくは8GPa以下、さらに好ましくは7.7GPa以下である。引張貯蔵弾性率の値は、実施例に関して後述する動的粘弾性測定によって求められる値とする(後出の引張貯蔵弾性率の値も同様である)。
第1封止樹脂層11が、150℃で1時間の加熱処理後に有する100℃での引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.35GPa以上、より好ましくは0.38GPa以上、さらに好ましくは0.4GPa以上である。当該引張貯蔵弾性率は、好ましくは3GPa以下、より好ましくは2.8GPa以下、さらに好ましくは2.5GPa以下である。
150℃で1時間の加熱処理後の第1封止樹脂層11についてナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、好ましくは3.5GPa以上、より好ましくは3.8GPa以上、さらに好ましくは4GPa以上である。当該弾性率は、好ましくは9GPa以下、より好ましくは8GPa以下、さらに好ましくは7.7GPa以下である。
ナノインデンテーション法による弾性率の測定には、例えば、ナノインデンター(商品名「Triboindenter」,Hysitron社製)を使用できる(ナノインデンテーション法により測定される後記の各弾性率についても同様である)。本測定において、測定モードは単一押込み測定とし、測定温度は25℃とし、使用圧子はBerkovich(三角錐)型のダイヤモンド圧子とし、測定対象物に対する圧子の押込み深さは300nmとし、その圧子の押込み速度は10nm/秒とし、測定対象物からの圧子の引抜き速度は10nm/秒とする。ナノインデンテーション法に基づく弾性率は、使用装置にて導出される。具体的な導出手法については、例えば、Handbook of Micro/nano Tribology (Second Edition) Edited by Bharat Bhushan, CRC Press (ISBN 0-8493-8402-8)に説明されているとおりである。
150℃で1時間の加熱処理後の第1封止樹脂層11についてナノインデンテーション法により測定される100℃での弾性率は、好ましくは0.35GPa以上、より好ましくは0.38GPa以上、さらに好ましくは0.4GPa以上である。当該引張貯蔵弾性率は、好ましくは3GPa以下、より好ましくは2.8GPa以下、さらに好ましくは2.5GPa以下である。
第2封止樹脂層12は、熱硬化性組成物(第2熱硬化性組成物)から形成される層であり、本実施形態では、少なくとも熱硬化性樹脂を含有し、第2無機充填材を含有してもよい。第2封止樹脂層12は、未硬化状態(Aステージの状態)または半硬化状態(Bステージの状態)にある。
熱硬化性樹脂としては、例えば、第1熱硬化性組成物に関して上述した熱硬化性樹脂が挙げられる。第2熱硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有割合は、好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。第2熱硬化性組成物における熱硬化性樹脂の含有割合は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
第2熱硬化性組成物における熱硬化性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は、例えば、主剤、硬化剤および硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物として調製される。
主剤としては、例えば、第1熱硬化性組成物に関して上述した主剤が挙げられ、好ましくは2官能エポキシ樹脂が用いられ、より好ましくはビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。第2熱硬化性組成物に関し、主剤のエポキシ当量の範囲、主剤の軟化点の範囲、および、エポキシ樹脂組成物中の主剤の割合の範囲は、第1熱硬化性組成物に関して上述した主剤のエポキシ当量の範囲、主剤の軟化点の範囲、および、エポキシ樹脂組成物中の主剤の割合の範囲と同様である。
硬化剤としては、第1熱硬化性組成物に関して上述したのと同様に、好ましくはフェノール樹脂が用いられ、より好ましくはフェノールノボラック樹脂が用いられる。
第2熱硬化性組成物に関し、主剤であるエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対する、硬化剤であるフェノール樹脂中の水酸基量の範囲は、第1熱硬化性組成物に関して上述した、フェノール樹脂中の水酸基量の範囲(対エポキシ基1当量)と同様である。
硬化促進剤としては、例えば、第1熱硬化性組成物に関して上述した主剤が挙げられ、好ましくはイミダゾール化合物が用いられ、より好ましくは2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールが用いられる。主剤100質量部に対する硬化促進剤の配合量は、例えば0.05質量部以上であり、同配合量は、例えば5質量部以下である。
第2無機充填材としては、例えば、第1熱硬化性組成物に関して上述した第1無機充填材が挙げられ、好ましくは、層状ケイ酸塩化合物以外のケイ素化合物が用いられ、より好ましくはシリカが用いられる。
第2無機充填材の形状としては、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、および不定形状が挙げられ、好ましくは略球形状が挙げられる。第2無機充填材の最大長さの平均値(略球形状の第2無機充填材であれば平均粒子径)の範囲は、第1無機充填材の最大長さの平均値として上述したのと同様である。第2無機充填材は、その表面が、部分的あるいは全体的に、シランカップリング剤などの表面処理剤によって表面処理されていてもよい。
第2封止樹脂層12における第2無機充填材の含有割合(即ち、第2熱硬化性組成物における第2無機充填材の含有割合)は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。このような構成は、第2封止樹脂層11において、温度変化による膨張収縮の程度を抑制するのに適する。第2封止樹脂層12における第2無機充填材の含有割合は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは87質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。このような構成は、後述のプレス工程における第2封止樹脂層12の流動性を確保するのに適する。
第2熱硬化性組成物は、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、第1熱硬化性組成物に関して上述したのと同様の熱可塑性樹脂、顔料、およびシランカップリング剤が挙げられる。
第2封止樹脂層12が、150℃で1時間の加熱処理後に有するガラス転移温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。同ガラス転移温度は、例えば60℃以上である。
第2封止樹脂層12が、150℃で1時間の加熱処理後に有する100℃での引張貯蔵弾性率(第2引張貯蔵弾性率)は、好ましくは0.5GPa以下、より好ましくは0.4GPa以下、さらに好ましくは0.38GPa以下である。第2引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.03GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上、さらに好ましくは0.07GPa以上である。
第2封止樹脂層12が、150℃で1時間の加熱処理後に有する25℃での引張貯蔵弾性率は、好ましくは3GPa以上、より好ましくは4GPa以上、さらに好ましくは5GPa以上である。当該引張貯蔵弾性率は、好ましくは11GPa以下、より好ましくは10GPa以下、さらに好ましくは9GPa以下である。
第1引張貯蔵弾性率(150℃で1時間の加熱処理後の第1封止樹脂層の25℃における引張貯蔵弾性率)に対する、第2引張貯蔵弾性率(150℃で1時間の加熱処理後の第2封止樹脂層の100℃における引張貯蔵弾性率)の比率は、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.08以下である。同比率は、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上である。
150℃で1時間の加熱処理後の第2封止樹脂層12についてナノインデンテーション法により測定される100℃での弾性率は、好ましくは0.5GPa以下、より好ましくは0.4GPa以下、さらに好ましくは0.38GPa以下である。当該弾性率は、好ましくは0.03GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上、さらに好ましくは0.07GPa以上である。
150℃で1時間の加熱処理後の第2封止樹脂層12についてナノインデンテーション法により測定される25℃での弾性率は、好ましくは3GPa以上、より好ましくは4GPa以上、さらに好ましくは5GPa以上である。当該弾性率は、好ましくは11GPa以下、より好ましくは10GPa以下、さらに好ましくは9GPa以下である。
封止用樹脂シートXは、例えば、第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12をそれぞれ形成した後、第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12を貼り合わせることによって作製する。或いは、封止用樹脂シートXは、基材上に第1封止樹脂層11を形成し、その第1封止樹脂層11上に第2封止樹脂層12を形成することによって、作製してもよい。或いは、封止用樹脂シートXは、基材上に第2封止樹脂層12を形成し、その第2封止樹脂層12上に第1封止樹脂層11を形成することによって、作製してもよい。
第1封止樹脂層11は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、第1熱硬化性組成物に関して上記した各成分を所定割合で配合して第1熱硬化性組成物を調製する。組成物には、必要に応じて、メチルエチルケトンなどの溶媒をさらに配合する。その後、当該組成物を剥離シートなどの基材の上に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を加熱によって乾燥させる。このようにして、シート形状を有して半硬化状態にある第1封止樹脂層11を形成することができる。
第2封止樹脂層12は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、第2熱硬化性組成物に関して上記した各成分を所定割合で配合して第2熱硬化性組成物を調製する。組成物には、必要に応じて、メチルエチルケトンなどの溶媒をさらに配合する。その後、当該組成物を剥離シートなどの基材の上に塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を加熱によって乾燥させる。このようにして、シート形状を有して半硬化状態にある第2封止樹脂層12を形成することができる。
以上のようにして形成された第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12を、例えば貼り合わせることにより、封止用樹脂シートXを作製する。
封止用樹脂シートXにおいて、第1封止樹脂層11の厚さは、例えば10μm以上、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上である。第1封止樹脂層11の厚さは、例えば3000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、とりわけ好ましくは100μm以下である。
また、第2封止樹脂層12の厚さは、例えば10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。第2封止樹脂層12の厚さは、例えば3000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。
第1封止樹脂層11の厚さに対する第2封止樹脂層12の厚さの比率は、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1以上である。同比率は、好ましくは12以下、より好ましくは11以下、さらに好ましくは10以下である。
封止用樹脂シートXの厚さは、例えば20μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。封止用樹脂シートXの厚さは、例えば6000μm以下、好ましくは3000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1000μm以下、とりわけ好ましくは500μm以下、最も好ましくは300μm以下である。
封止用樹脂シートXは、下記の第1ステップ~第4ステップが実施される進入長さ評価試験において示す下記の進入長さLが、0μm以上50μm以下である。進入長さLは、好ましくは30μm以下である。
進入長さ評価試験
第1ステップ:ガラス基板と、3mm×3mm×厚さ200μmのサイズのダミーチップとを備え、前記ダミーチップが、前記ガラス基板に対して空隙を介して対向する状態で当該ガラス基板にバンプを介して接合されており、前記空隙における前記ガラス基板から前記ダミーチップまでの長さが20μmである、ダミーチップ実装基板を用意する。
第2ステップ:前記ガラス基板上の前記ダミーチップに封止用樹脂シートXの第1封止樹脂層11側が接する状態で、真空平板プレスにより、封止用樹脂シートXを、温度65℃、真空度1.6kPa以下、加圧力0.1MPa、および加圧時間40秒の条件で前記ガラス基板に向けて押圧し、前記ダミーチップ周りで前記ガラス基板に密着する第1封止樹脂層11によって前記空隙の開縁端を閉塞する。
第3ステップ:前記第2ステップの後に、大気圧下における150℃で1時間の加熱により、封止用樹脂シートXを熱硬化させる。
第4ステップ:前記第3ステップの後に、封止用樹脂シートXにおける前記空隙内への進入長さLを測定する。
封止用樹脂シートXは、下記の第1処理と、第2処理と、反り測定とが実施される反り評価試験において示す下記の反り長さDが、2mm以下である。反り長さDは、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。
反り評価試験
第1処理:90mm×90mm×厚さ150μmのサイズの42アロイ板と、当該42アロイ板の厚さ方向一方面の全体に第1封止樹脂層11側が貼り合わされた封止用樹脂シートXと、を備える積層体サンプルを、150℃で1時間加熱した後、25℃で1時間静置する。
第2処理:前記第1処理の後に、前記積層体サンプルを、100℃の加熱板の表面上で1分静置する。
反り測定:前記第2処理の後に、前記加熱板の表面と前記積層体サンプルの縁端との間の距離の最大値(積層体サンプル縁端が加熱板から浮き上がる態様で、積層体サンプルが湾曲している場合における、加熱板の表面と積層体サンプル縁端の下面との間の、鉛直方向における最大距離)を、反り長さDとして測定する。
上記の第1処理後に、積層体サンプルの42アロイ板を下側にして積層体サンプルが載置される載置面と、積層体サンプルの縁端との間の距離の最大値を、反り長さD’として測定する場合、下記の式(1)で示される反り回復率Rは、80%以上であり、好ましくは82%以上である。
式(1):R=〔(D’-D)/D’〕×100
また、反り回復率Rは、好ましくは120%以下、より好ましくは110%以下である。反り長さDが負の値をとるとき、反り回復率Rは100%を超える。上記の反り測定時に、積層体サンプルにおいてその縁端全周に囲まれた内側領域が加熱板から浮き上がる態様で、積層体サンプルが湾曲している場合、その内側領域の下面と加熱板の表面との間の鉛直方向における最大距離に負の符号を付した長さを、反り長さDとする。
図2は、封止用樹脂シートXを用いて基材上の電子部品チップを封止する方法を表す。
本方法では、まず、図2Aに示すように、封止用樹脂シートXを用意する(用意工程)。
次に、図2Bに示すように、平板プレス機が備える第1プレス板P1と第2プレス板P2との間に、ワークWおよび封止用樹脂シートXを配置する(配置工程)。
ワークWは、基板Sと、複数のチップ21とを備える。基板Sは、後に単一の実装基板に個片化される基材であり、実装面Saを有する。実装面Saには、実装用の端子(図示せず)が設けられている。チップ21は、半導体チップなどの電子部品チップであり、主面21aおよび側面21bを有する。主面21aには、外部接続用の端子(図示せず)が設けられている。チップ21は、基板Sに対して空隙Gを介して対向する状態で、バンプ電極22を介して基板Sに実装されている。各バンプ電極22は、基板Sの実装面Saに設けられた端子と、チップ21の主面21aに設けられた端子との間に介在して、基板Sとチップ21とを電気的に接続している。
基板Sとチップ21との間の離隔距離は、例えば10μm以上、好ましくは13μm以上、より好ましくは15μm以上である。同離隔距離は、例えば60μm以下、好ましくは55mm以下、より好ましくは50μm以下である。
また、複数のチップ21は、基板Sの実装面Sa上において、面方向に互いに間隔を空けて実装されている。隣り合うチップ21の間隔は、例えば50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上である。隣り合うチップ21の間隔は、例えば10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
本工程において、ワークWは、その基板Sが第1プレス板P1に接するように、第1プレス板P1上に載置される。封止用樹脂シートXは、その第1封止樹脂層11がワークWのチップ21に接するように、ワークWに対して積層される。
次に、図2Cに示すように、封止用樹脂シートXおよびワークWを、第1プレス板P1と第2プレス板P2とによって厚さ方向にプレスする(プレス工程)。具体的には、基板S上のチップ21に封止用樹脂シートXの第1封止樹脂層11側が接する状態で、封止用樹脂シートXを加熱軟化しつつ基板Sに向けて押圧する。
プレス圧は、例えば0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上である。プレス圧は、例えば10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。プレス時間は、例えば0.3分以上、好ましくは0.5分以上である。プレス時間は、例えば10分以下、好ましくは5分以下である。また、プレス時における加熱温度は、例えば40℃以上、好ましくは60℃以上である。当該加熱温度は、例えば100℃以下、好ましくは95℃以下である。
本工程において、封止用樹脂シートXは、Bステージを維持しながら、チップ21の外形に対応して変形し、各チップ21のチップ21の側面21bを被覆しつつ、平面視においてチップ21と重複しない基板Sの実装面Saに接触する。チップ21周りで基板Sに密着される第1封止樹脂層11により、空隙Gの開縁端は閉塞される。
第1封止樹脂層11が層状ケイ酸塩化合物を含有する構成は、上述のように、第1封止樹脂層11を増粘させつつ、当該第1封止樹脂層11において、押圧力を受けるときには受けないときより低粘度化するチキソトロピック性を発現させるのに好適である。そのため、封止用樹脂シートXは、本工程において、第2封止樹脂層12とともに第1封止樹脂層11が、押圧力を受けて軟化流動して、チップ21の外形に追従した変形をするのに適する。
変形した封止用樹脂シートXは、基板Sとチップ21のチップ21との間の空隙Gにわずかに進入することが許容される。具体的には、封止用樹脂シートXは、チップ21の側面21bを基準として、空隙G内に入り込んだ進入長さL’(図3C参照)を有することが許容される。進入長さL’は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。進入長さL’は、好ましくは-20μm以上、より好ましくは-10μm以上、さらに好ましくは-5μm以上である。
次に、封止用樹脂シートXによって封止がなされたワークWを平板プレス機から取り出した後、図2Dに示すように、封止用樹脂シートXを加熱して硬化させる(硬化工程)。
加熱温度(キュア温度)は、例えば100℃以上、好ましくは120℃以上である。加熱温度(キュア温度)は、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下である。加熱時間は、例えば10分以上、好ましくは30分以上である。加熱時間は、例えば180分以下、好ましくは120分以下である。
硬化工程では、第1封止樹脂層11は、層状ケイ酸塩化合物を含有することから、昇温に起因する粘度低下が抑制され、空隙Gへの更なる進入が抑制される。
硬化した封止用樹脂シートXにおける空隙G内の進入長さL(図3D参照)は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。進入長さLは、好ましくは0μm以上である。
次に、電子部品チップごとに、封止樹脂(硬化した封止用樹脂シートX)の表面に対して、レーザー印字(レーザーマーキングによる印字)などの表面加工を実施する。
この後、ブレードダイシングにより、硬化された封止用樹脂シートXおよび基板Sが所定の切断予定ラインに沿って切断されて、電子部品チップ樹脂封止体への個片化がなされる。
図2Cを参照して上述したプレス工程において、封止用樹脂シートXの第2封止樹脂層12は、押圧力を受けて流動化し、第1封止樹脂層11とは反対側の露出面の平坦化が進む。また、当該プレス工程において、封止用樹脂シートXは、上述のように、第2封止樹脂層12とともに第1封止樹脂層11が、押圧力を受けて軟化流動して、電子部品チップの外形に追従した変形をするのに適する。このようなプレス工程では、封止用樹脂シートXの一部が、基板Sとチップ21のチップ21との間の空隙Gにわずかに進入することが許容される。そして、図2Dを参照して上述のした硬化工程では、上述のように、第1封止樹脂層11は、昇温に起因する粘度低下による流動化が抑制され、空隙Gへの過度の進入が抑制される。封止用樹脂シートXにおいて、上記の進入長さ評価試験において示す進入長さLが0μm以上50μm以下である構成は、封止用樹脂シートXが用いられる上述のようなプレス工程および硬化工程を含む電子部品チップ樹脂封止体の製造過程において、基板Sと電子部品チップ21との間の空隙G内への封止樹脂進入長さを制御するのに適する。
また、封止用樹脂シートXにおいて、上記の反り評価試験において示す反り長さDが、2mm以下であり、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。このような構成は、封止用樹脂シートXが用いられる電子部品チップ樹脂封止体の製造過程において、ワーク表面の高低差を抑制するのに適する。ワーク表面の高低差の抑制は、当該ワークにおいて、封止樹脂表面に対する電子部品チップごとのレーザー印字などの表面加工を、ワーク全体にわたって精度よく実施するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上記反り回復率Rが、上述のように、80%以上であり、好ましくは82%以上であり、また、好ましくは120%以下、より好ましくは110%以下である。このような構成は、封止用樹脂シートXが用いられる電子部品チップ樹脂封止体の製造過程において、ワークW表面の高低差を抑制して、封止樹脂(硬化後の封止用樹脂シートX)表面を精度よく加工するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上述のように、第1封止樹脂層11が、150℃で1時間の加熱処理後に有する25℃での引張貯蔵弾性率(第1引張貯蔵弾性率)は、好ましくは3.5GPa以上、より好ましくは3.8GPa以上、さらに好ましくは4GPa以上である。このような構成は、封止用樹脂シートXが用いられる電子部品チップ樹脂封止体の製造過程において、ブレードダイシングによる個片化時に、電子部品チップが実装されている基材にクラックやチッピングなどの損傷が発生するのを抑制するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上述のように、第2封止樹脂層12が、150℃で1時間の加熱処理後に有するガラス転移温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。このような構成は、加熱硬化後の封止用樹脂シートXに反りが生じている場合において、当該封止用樹脂シートを100℃程度の加熱によって一旦軟化させて、当該シートの反りを低減するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上述のように、第2封止樹脂層12が、150℃で1時間の加熱処理後に有する100℃での引張貯蔵弾性率(第2引張貯蔵弾性率)は、好ましくは0.5GPa以下、より好ましくは0.4GPa以下、さらに好ましくは0.38GPa以下である。このような構成は、加熱硬化後の封止用樹脂シートXに反りが生じている場合において、当該封止用樹脂シートを100℃程度の加熱によって一旦軟化させて、当該シートの反りを低減するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上述のように、第1引張貯蔵弾性率に対する第2引張貯蔵弾性率の比率は、好ましくは0.12以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.08以下である。このような構成は、上述の反りの抑制と上述の損傷の抑制とを両立するのに適する。
封止用樹脂シートXでは、上述のように、第1封止樹脂層11の厚さに対する第2封止樹脂層12の厚さの比率は、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1以上である。このような構成は、封止用樹脂シートXが用いられる上述のようなプレス工程および硬化工程を含む電子部品チップ樹脂封止体の製造過程において、基板Sと電子部品チップ21との間の空隙G内への封止樹脂進入長さを制御するのに適する。
封止用樹脂シートXにおいては、第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12が、好ましくはエポキシ樹脂を含有し、当該エポキシ樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは72℃以上、特に好ましくは75℃以上であり、また、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。このような構成は、プレス工程における第1および第2封止樹脂層の流動性を確保するのに適し、従って、プレス工程の時間短縮、および、プレス工程における第2封止樹脂層の露出面(第2封止樹脂層において第1封止樹脂層とは反対側の面)の平坦化に、役立つ。
封止用樹脂シートXでは、好ましくは、第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12が、エポキシ樹脂とともにフェノール樹脂を含有する。このような構成は、本封止用樹脂シートが、その硬化後において、高い耐熱性と高い耐薬品性を示すのに適し、従って、封止信頼性に優れた封止材をなすのに適する。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するものの、本発明は、実施例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
〔作製例1~5〕
第1封止樹脂層形成用の作製例1~5の各第1樹脂膜を、次のようにして作製した。まず、表1に示す配合処方で各成分を混合し、組成物(ワニス)を調製した(表1において、組成を表す各数値の単位は、相対的な「質量部」である)。次に、表面がシリコーン離型処理されている厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜を、120℃で2分間、加熱乾燥し、PETフィルム上に厚さ50μmの第1樹脂膜を作製した(形成された第1樹脂膜はBステージの状態にある)。
〔作製例6~9〕
第2封止樹脂層形成用の作製例6~9の各第2樹脂膜を、次のようにして作製した。まず、表2に示す配合処方で各成分を混合し、組成物(ワニス)を調製した(表2において、組成を表す各数値の単位は、相対的な「質量部」である)。次に、表面がシリコーン離型処理されている厚さ50μmのPETフィルム上に、組成物を塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜を、120℃で2分間、加熱乾燥し、PETフィルム上に厚さ52.5μmの樹脂膜を形成した(形成された樹脂膜はBステージの状態にある)。そして、同一組成のワニスから以上のようにして形成された厚さ52.5μmの樹脂膜4枚を貼り合わせて、厚さ210μmの第2樹脂膜を作製した。
作製例1~9で用いた各成分は、以下のとおりである。
エポキシ樹脂E1:新日鐵化学社製の「YSLV-80XY」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂,高分子量エポキシ樹脂,エポキシ当量200g/eq.,常温で固体,軟化点80℃)
エポキシ樹脂E2:DIC社製の「EPICLON EXA-4850-150」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂,分子量900,エポキシ当量450g/eq.,常温で液状)
フェノール樹脂F1:群栄化学社製の「LVR-8210DL」(ノボラック型フェノール樹脂,潜在性硬化剤,水酸基当量104g/eq.,常温で固体,軟化点60℃)
フェノール樹脂F2:明和化成社製の「MEHC-7851SS」(フェノールアラルキル樹脂,潜在性硬化剤,水酸基当量201~205g/eq.,常温で固体,軟化点64~85℃)
アクリル樹脂:根上工業社製の「HME-2006M」(カルボキシル基含有のアクリル樹脂,酸価32mgKOH/g,重量平均分子量129万、ガラス転移温度(Tg)-13.9℃,固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液)
シランカップリング剤:信越化学社製の「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
層状ケイ酸塩化合物:ホージュン社製の「エスベンNX」(表面がジメチルジステアリルアンモニウムで変性された有機化ベントナイト)
無機充填材f1:デンカ株式会社製の「FB-8SM」(球状シリカ粒子、平均粒子径7.0μm,表面処理なし)
無機充填材f2:アドマテックス社製の「SC220G-SMJ」(シリカ粒子,平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の「KBM-503」)で表面処理したもの
硬化促進剤:四国化成工業社製の「2PHZ-PW」(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)
溶媒:メチルエチルケトン(MEK)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20,平均粒子径50nm
〔実施例1~4,比較例1~3〕
実施例1~4および比較例1~3の各封止用樹脂シートを作製した。具体的には、表3に示す組合せで第1樹脂膜(第1封止樹脂層)および第2樹脂膜(第2封止樹脂層)を貼り合わせることによって、厚さ260μmの封止用樹脂シートを作製した。
〈引張貯蔵弾性率の測定〉
実施例1~4および比較例1~3の各封止用樹脂シートの硬化後の第1封止樹脂層および硬化後の第2封止樹脂層について、動的粘弾性測定により、25℃での引張貯蔵弾性率および100℃での引張貯蔵弾性率を測定した。測定には、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-G2」,TAインスツルメンツ社製)を使用した。測定用の試料片(第1封止樹脂層の試料片,第2封止樹脂層の試料片)は、150℃で1時間の加熱処理によって硬化したものであり、幅10mm×長さ40mmのサイズを有する。また、測定においては、試料片保持用チャックの初期チャック間距離を20mmとし、測定モードを引張りモードとし、測定温度範囲を-10℃~260℃とし、昇温速度を10℃/分とし、周波数を1Hzとし、動的ひずみを0.05%とした。硬化後の第1封止樹脂層について測定された25℃での引張貯蔵弾性率M1(第1引張貯蔵弾性率)および100℃での引張貯蔵弾性率M1’と、硬化後の第2封止樹脂層について測定された25℃での引張貯蔵弾性率M2および100℃での引張貯蔵弾性率M2’(第2引張貯蔵弾性率)を、表3に示す。表3には、引張貯蔵弾性率M1に対する引張貯蔵弾性率M2’の比率(M2’/M1)、および、引張貯蔵弾性率M2’に対する引張貯蔵弾性率M2の比率(M2/M2’)も示す。
〈ガラス転移温度の測定〉
実施例1~4および比較例1~3の各封止用樹脂シートにおける硬化後の第1封止樹脂層および硬化後の第2封止樹脂層のガラス転移温度を、動的粘弾性測定を使用して測定される損失正接(tanδ)の極大値に基づき、求めた。測定用の試料片(第1封止樹脂層の試料片,第2封止樹脂層の試料片)は、150℃で1時間の加熱処理によって硬化したものである。測定には、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-G2」,TAインスツルメンツ社製)を使用した(測定条件は、引張貯蔵弾性率の測定に関して上記した測定条件と同じである)。その結果を表3に示す。
〈進入長さの評価〉
実施例1~4および比較例1~3の各封止用樹脂シートについて、電子部品チップが空隙を介して基材に対向する状態で当該基材に実装されている電子部品チップを封止して硬化した状態での、基材と電子部品チップとの間の空隙への進入長さを測定した。
まず、図3Aに示すように、各実施例および各比較例の封止用樹脂シートから、縦10mm×横10mm×厚さ150μmのサンプルシートX’を用意した。サンプルシートX’は、第1封止樹脂層11および第2封止樹脂層12を厚さ方向に順に備える。
一方、ワークWとして、ダミーチップ実装基板を用意した(第1ステップ)。ダミーチップ実装基板は、ガラス製の基板Sと、3mm×3mm×厚さ200μmのサイズのダミーチップ21’とを備え、ダミーチップ21’が、基板Sに対して空隙Gを介して対向する状態で基板Sにバンプ22を介して接合されており、空隙Gにおける基板Sからダミーチップ21’までの長さが20μmである。
次に、図3Bに示すように、平板プレス機が備える第1プレス板P1と第2プレス板P2との間に、上述のワークWおよびサンプルシートX’を配置した。
次に、図3Cに示すように、サンプルシートX’によって、基板S上のダミーチップ21’を、真空平板プレスにより、温度65℃、真空度1.6kPa以下、加圧力0.1MPa、および加圧時間40秒の封止条件で封止した(第2ステップ)。
次に、図3Dに示すように、サンプルシートX’を、大気圧下における150℃で1時間の加熱により、硬化させた(第3ステップ)。
そして、図3Dの拡大図に示すように、ダミーチップ21’の側面21'bを基準として、側面21'bからダミーチップ21’と基板Sとの空隙GにサンプルシートX’由来の封止樹脂(第1封止樹脂層11の一部)が進入した長さを進入長さLとして測定した(第4ステップ)。その結果を表3に示す(進入長さLが負の値をとることは、ダミーチップ21’の側面21'bより外側に突出する空間(図3Dの太い破線参照)が形成されることを意味する。「マイナス」の絶対値が、その空間の突出長さに相当する)。
〈反りの評価〉
下記の第1処理と、第2処理と、反り測定とをこの順で実施した。
まず、第1処理では、90mm×90mm×厚さ150μmのサイズの42アロイ板と、当該42アロイ板の厚さ方向一方面の全体に貼り合わされた封止用樹脂シートとを備える積層体サンプルを、150℃で1時間加熱し、その後、25℃で1時間静置した。そして、積層体サンプルの42アロイ板を下側にして積層体サンプルが載置される載置面と、積層体サンプルの縁端との間の距離の最大値を、反り長さD’として測定した。
次に、第2処理では、積層体サンプルを、100℃の加熱板の表面上で1分静置した。
次に、反り測定では、加熱板の表面と積層体サンプルの縁端との間の距離の最大値を、反り長さDとして測定した。その結果を表3に示す。また、表3には、下記の式(1)で表される反り回復率R(%)も示す。
式(1):R=〔(D’-D)/D’〕×100
〈基板の損傷〉
実施例1~4および比較例1~3の各封止用樹脂シートについて、次のようにして、基板に対する損傷抑制効果を調べた。
まず、100mm×100mm×厚さ200μmのサイズのアルミナ基板に対し、同サイズの封止用樹脂シート(厚さ260μm)を貼り合わせて、サンプルワークを作製した。具体的には、アルミナ基板の厚さ方向一方面の全体に、封止用樹脂シートを、真空平板プレスにより、温度65℃、真空度1.6kPa以下、加圧力0.1MPa、および加圧時間40秒の条件で貼り合わせた。
次に、サンプルワークを大気圧下にて150℃で1時間加熱し、サンプルワークにおける封止用樹脂シートを硬化させた。
次に、ダイシング装置(商品名「DFD651」,ディスコ社製)およびダイシングブレード(商品名「GIA850」,ディスコ社製)を使用したブレードダイシングにより、サンプルワークを1mm×1mmのサイズに個片化し、複数のサンプル個片を得た。このダイシングでは、ダイシングブレードの回転数を30000rpmとした。
次に、サンプル個片における基板の側面を光学顕微鏡によって観察し、基板におけるクラックやチッピングなどの損傷の有無を調べた(観察したサンプル個片の数は30である)。観察した30個のサンプル個片のうち、基板に損傷が生じていたサンプル個片の数を表3に示す。