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JP7121234B2 - 硬質被覆層が優れた耐チッピング性を発揮する表面切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が優れた耐チッピング性を発揮する表面切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、鋳鉄のように靱性が要求される被削材の切削加工において、特に切刃に対して衝撃的な負荷が作用する高速断続切削加工時に硬質被覆層が優れた耐チッピング性を備えることにより、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、「被覆工具」ということがある)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、「WC」で示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、「TiCN」で示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、「cBN」で示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して「工具基体」という)の表面に、硬質被覆層として、Ti-Al系の複合窒化物層をPVD法やCVD法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi-Al系の複合窒化物層や複合炭窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削条件で用いた場合にチッピング等の異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、硬質被覆層として、Ti1-xAlN層および/またはTi1-xAlC層および/またはTi1-xAlCN層(式中、xは0.65~0.95である)の上にAl層が外層として配置されている被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、硬質被覆層として、外層が、Ti1-xAlN、Ti1-xAlC、および/またはTi1-xAlCN(式中、0.65≦x≦0.9、好ましくは0.7≦x≦0.9)からなり、この外層が100~1100MPaの範囲内、好ましくは400~800MPaの範囲内の圧縮応力を有し、TiCN層またはAl層がこの外層の下に配置されている被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、工具基体と、その表面に形成された硬質被膜とを含む表面被覆切削工具であって、前記硬質被膜は、1または2以上の層により構成され、前記層のうち少なくとも1層は、CVD法により形成され、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された多層構造を含み、前記第1単位層は、Tiと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第1化合物を含み、前記第2単位層は、Alと、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とを含む第2化合物を含む、被覆工具が記載されている。
加えて、例えば、特許文献4には、工具基体と、その表面に形成された硬質被膜とを含む表面被覆切削工具であって、前記硬質被膜は1または2以上の層により構成され、前記層のうち少なくとも1層は、硬質粒子を含む層であり、前記硬質粒子は、第1単位層と第2単位層とが交互に積層された多層構造を含み、前記第1単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第1化合物を含み、前記第2単位層は、周期表の4族元素、5族元素、6族元素およびAlからなる群より選ばれる1種以上の元素と、B、C、NおよびOからなる群より選ばれる1種以上の元素とからなる第2化合物を含む、被覆工具が記載されている。
特表2011-516722号公報 特表2011-513594号公報 特開2014-128848号公報 特開2014-129562号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性が求められている。
しかし、前記特許文献1~4に記載された被覆工具は、所定の硬さを有し耐摩耗性に優れているものの靱性に劣るため、鋳鉄の高速断続切削加工等に供したときに、チッピング、欠損等の異常損耗が発生しやすく、満足できる切削性能を有しているとはいえない。
そこで、本発明は前記課題を解決し、鋳鉄の高速断続切削等に供した場合であっても、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は、TiとAlとの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「TiAlCN」と表すことがある)層を少なくとも含む硬質被覆層を工具基体に設けた被覆工具の耐チッピング性の改善を図るべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
すなわち、アモルファス相を主とする金属酸化物層がTiAlCN層の直上に存在することにより、耐酸化性が優れ、さらに、摩擦抵抗を低減し刃先で生じる切削熱を低減することによって刃先温度を下げ、熱亀裂の発生進展を抑制するという驚くべき知見を得た。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層とその直上に金属酸化物層を含む被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0~20.0μmのTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒酸化物層は、工具基体の表面と垂直な縦断面から分析した場合、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を70面積%以上含み、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層の組成を組成式:(Ti1-xAl)(C1-y)で表した場合、AlのTiおよびAlの合量に占める平均含有割合xavg、CのCおよびNの合量に占める平均含有割合yavg(ただし、xavg、yavgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0.0000≦yavg≦0.0050を満足し、
(d)前記金属酸化物層の平均層厚は0.1~5.0μmであり、
(e)前記金属酸化物層は、5.0原子%以上のAl30.0原子%以上のO原子、および0.5原子%以上20.0原子%以下のMn原子を含み、
(f)前記金属酸化物層は、アモルファス相が占める割合が50面積%~100面積%を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記金属酸化物層は、C原子を0.5原子%以上10.0原子%以下含むことを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記金属酸化物層は、Si原子を0.5原子%以上20.0原子%以下含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
である。
本発明に係る被覆工具は、TiAlCN層の直上にアモルファス相を主とする金属酸化物層が存在することにより、優れた耐酸化性を有し、特にすくい面において、当該金属酸化物層が軟質であるため切屑の排出を容易にして摩耗を低減させ刃先温度を下げることができ、熱亀裂の発生、進展を抑制するという優れた効果を発揮する。
本発明に係る被覆工具の一実施態様を示す断面模式図である。
次に、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より具体的に説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「~」で表現するとき、その範囲は上限および下限の数値を含んでいる。
1.TiAlCN層の平均層厚
TiAlCN層の平均層厚は、1.0~20.0μmとする。その理由は、平均層厚が1.0μm未満であると、層厚が薄いため長期の使用にわたって耐摩耗性を十分に発揮することができず、一方、平均層厚が20.0μmを超えると、TiAlCN層の結晶粒が粗大化しやすくなって、チッピングが発生しやすくなるためである。なお、より好ましい平均層厚は、3.0~15.0μmである。
ここで、TiAlCN層の平均層厚は、工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を研磨し、研磨した断面を走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(例えば、倍率5000倍)で測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めることができる。
2.TiAlCN層のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の面積割合
TiAlCN層におけるNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が70面積%以上存在することが必要である。その理由は、NaCl型の面心立方構造は高硬度であるため、六方晶構造の結晶粒が存在してもTiAlCN層の硬さを確保することができるが、70面積%未満であると硬さが不十分になりチッピング等の異常損傷を生じやすくなる。一方、この面積割合は高い方が望ましいため、95面積%以上であることがより望ましく、上限値は100面積%である。
ここで、NaCl型の面心立方構造の面積割合は以下のような手順で算出できる。NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の面積割合は電子線後方散乱回折装置を用いて縦断面において膜厚方向に0.1μm間隔で解析し、幅10μm、縦は膜厚の範囲内での測定を5視野で実施し、該複合窒化物または複合炭窒化物層を構成する立方晶構造を有する結晶粒に属するピクセル数を求め、前記5視野での測定において全測定ピクセル数との比によって、TiAlCN層のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒が占める面積割合(面積%)を求める(1ピクセルの大きさは、NaCl型の面心立方構造の結晶粒の大きさをもとに任意に決められるが、例えば、0.1μm×0.1μm以下の大きさが例示できる)。
3.TiAlCN層の組成
本発明のTiAlCN層の組成は、前記組成式:(Ti1-xAl)(C1-y)で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合yavg(但し、xavg、yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0.0000≦yavg≦0.0050を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合xavgが0.60未満であると、TiAlCN層は耐酸化性に劣るため、鋳鉄の断続切削加工や合金鋼等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合xavgが0.95を超えると、硬さに劣る六方晶の析出量が増大して硬さが低下するため、耐摩耗性が低下する。
また、TiAlCN層に含まれるC成分の平均含有割合yavgは、0.0000≦yavg≦0.0050の範囲の微量であるとき、TiAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてTiAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の平均含有割合yが0.0000≦yavg≦0.0050の範囲を外れると、TiAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下するため好ましくない。
ここで、TiAlCN層のAlの平均含有割合xavgは、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)を用い、試料断面を研磨した試料において、電子線を縦断面側から照射し、膜厚方向に5本の線分析を行って得られたオージェ電子の解析結果を平均したものである。また、Cの平均含有割合yavgについては、二次イオン質量分析(Secondary-Ion-Mass-Spectroscopy:SIMS)により求めることができる。すなわち、試料表面を研磨した試料において、TiAlCN層の表面側からイオンビームを70μm×70μmの範囲に照射し、イオンビームによる面分析とスパッタイオンビームによるエッチングとを交互に繰り返すことにより深さ方向の濃度測定を行う。まず、TiAlCN層についての層の深さ方向へ0.5μm以上侵入した箇所から0.1μm以下のピッチで少なくとも0.5μmの長さの測定を行ったデータの平均を求める。さらに、これを少なくとも試料表面の5箇所において繰り返し算出した結果を平均してCの平均含有割合yavgとして求めることが出来る。
4.金属酸化物層の平均層厚
金属酸化物層の平均層厚は、0.1~5.0μmとする。その理由は、平均層厚が0.1μm未満であると、層厚が薄いため長期の使用にわたって耐摩耗性を十分に発揮することができず、一方、平均層厚が5.0μmを超えると、金属酸化物層とTiAlCN層の界面において剥離が生じやすくなるためである。
ここで、金属酸化物層の平均層厚は、工具基体に垂直な方向の断面(縦断面)を研磨し、研磨した断面を透過型電子顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡を用いて適切な倍率(例えば、倍率10000~40000倍)で測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して求めることができる。
5.金属酸化物層の組成(総論)
金属酸化物層は、Al原子を5.0原子%以上およびO原子を30.0原子%以上含む。このように規定する理由は、Al原子が5.0原子%未満であると、耐熱性が低下し、酸化物層の摩滅がはやくなり、熱亀裂が発生しやすくなり、O原子が30.0原子%未満であると、耐酸化性が十分ではなくなり摩耗の進行やチッピングが発生しやすくなるためである。
そして、この金属酸化物層には、C、Si、Mn原子を含有してもよい。その他、ごく微量のTi、Zr、B、Cr、S、Cl等が含まれていても前記性能向上効果は損なわない。
6.金属酸化物層の組成(各論)
(1)C原子
金属酸化物層の組成としてC原子を0.5原子%以上10.0原子%以下含むことが好ましい。C原子を所定の範囲で含むことにより、金属酸化物層の潤滑性が高まり切屑の排出性が向上することによって刃先温度の低減を図ることが出来る。C原子が0.5原子%未満となると前記効果が小さくなり、10.0原子%を超えると切削時に金属酸化物層を維持できなくなり摩滅が進むため、金属酸化物層にC原子が存在する効果が得られなくなる。
(2)Mn原子
金属酸化物層の組成としてMn原子を0.5原子%以上20.0原子%以下含むことが好ましい。Mn原子を所定の範囲で含むことにより、金属酸化物層の高温安定性が高まり、切削時に長期にわたって金属酸化物層を維持することが出来る。Mn原子が0.5原子%未満となると前記効果が小さくなり、20.0原子%を超えるとMnが過剰となり、金属酸化物層の高温硬さが低下することで耐摩耗性が低下し、金属酸化物層にMn原子が存在する効果が得られなくなる。
(3)Si原子
金属酸化物層の組成としてSi原子を0.5原子%以上20.0原子%以下含むことが好ましい。Si原子を所定の範囲で含むことにより、金属酸化物層の潤滑性が高まり切屑の排出性が向上することによって刃先温度の低減を図ることが出来る。Si原子が0.5原子%未満となると前記効果が小さくなり、20.0原子%を超えると切削時に金属酸化物層を維持できなくなり摩滅が進むため、金属酸化物層にSiが存在する効果が得られなくなる。
各元素の平均含有割合については、二次イオン質量分析(Secondary-Ion-Mass-Spectrometry:SIMS)により求めることができる。イオンビームを表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、イオンビームによる面分析とスパッタイオンビームによるエッチングとを交互に繰り返すことにより深さ方向の濃度測定を行った。
7.アモルファス酸化物相の面積割合
アモルファス酸化物相の面積が前記金属酸化物層に対して占める面積割合は、50~100面積%とする。この面積割合とする理由は、50面積%未満となると、切削加工時に摩耗を低減させ、刃先温度を下げる効果が得られなくなる。なお、ここで、アモルファスとは実質的に非晶質であると見なせることをいう。
金属酸化物層において占めるアモルファス酸化物相の面積割合は、縦断面からナノビーム電子回折を用いた結晶性の同定、もしくは透過電子後方散乱回折(Transmission Electron BackScattered Diffraction Pattern)のマッピングによりアモルファス部分の占める面積を算出し、金属酸化物層の膜厚方向断面に占める割合を測定する。面積割合の算出は、少なくとも幅500nmの異なる領域の面積割合を5領域以上求め、平均することで算出する。ここで、アモルファス酸化物相の面積割合とは、前記金属酸化物層の中でポアや結晶質部分として測定されない部分かつ、波長分散形X線分光器(Wavelength Dispersive X-ray Spectorometer)等による元素分析から金属酸化物相であることが確認された領域の面積割合を表している。
8.その他の層
本発明の表面被覆切削工具が有する硬質被覆層(TiAlCN層)は、それだけでも十分に前記効果を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、合計で0.1~20.0μmの平均層厚を有する下部層を設けた場合には、これらの層が奏する効果と相俟って、一層優れた特性を創出することができる。Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20.0μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
9.製造方法
本発明で規定する硬質被覆層は、例えば、以下に示す化学蒸着法による製造法(製造条件)により、工具基体上に成膜することができる。
(1)TiAlCN層の形成
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:NH:2.0~3.0%、H:60~75%
ガス群B:AlCl:0.60~1.00%、TiCl:0.07~0.40%、
:0.00~0.50%、N:0.0~12.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
(2)金属酸化物層の形成
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:H:30~45%
ガス群B:AlCl:1.00~3.00%、
SiCl:0.00~2.00%、Mn(C:0.00~2.00%、
:0.00~0.50%、CHCN:0.00~5.00%、
S:0.00~0.30%、HCl:1.00~3.00%、
CO:5.0~15.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明被覆工具の具体例として、工具基体としてWC基超高圧焼結体を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、TiCN基サーメット、cBN基超高圧焼結体を用いた場合であっても同様であるし、さらには、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1~3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、ZrC粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A~CおよびISO規格CNMG120412のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体D~Fをそれぞれ製造した。
Figure 0007121234000001
次に、これら工具基体A~Fの表面に、表2および3に示す成膜条件によりCVD装置を用いて、TiAlCN層および金属酸化物層を形成し、表4に示す条件で表5に示す下部層を成膜した。
TiAlCN層の成膜条件は、表2および3に記載したとおりであるが、概ね次のとおりである。
(1)TiAlCN層の形成
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:NH:2.0~3.0%、H:60~75%
ガス群B:AlCl:0.60~1.00%、TiCl:0.07~0.40%、
:0.00~0.50%、N:0.0~12.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
(2)金属酸化物層の形成
反応ガス組成(%は容量%を表し、ガス群Aとガス群Bの和を100容量%とする)
ガス群A:H:30~45%
ガス群B:AlCl:1.00~3.00%、
SiCl:0.00~2.00%、Mn(C:0.00~2.00%、
:0.00~0.50%、CHCN:0.00~5.00%、
S:0.00~0.30%、HCl:1.00~3.00%、
CO:5.0~15.0%、H:残
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1.00~5.00秒
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒
ガス群Aとガス群Bとの供給の位相差:0.10~0.20秒
また、比較の目的で工具基体A~Fの表面に、表2および3に示す成膜条件によりCVD装置を用いて、TiAlCN層を形成し、表4に示す条件で表5に示す下部層を成膜した。
また、本発明被覆工具1~16(本発明被覆工具1、2、5、6、8~10、12~14、16は参考例である)、比較被覆工具1~16の硬質被覆層について、前述した方法を用いて、TiAlCN層の平均Al含有割合xavg、平均C含有割合yavgおよび、金属酸化物層のAl、O、C、Si、Mn原子の平均含有割合を求め、これらの結果を表6にまとめた。なお、C、Si、Mnについては、0.1原子%未満は存在しないものとして扱っている。
Figure 0007121234000002
Figure 0007121234000003
Figure 0007121234000004
Figure 0007121234000005
Figure 0007121234000006
続いて、前記本発明被覆工具および比較被覆工具について、以下に示す、鋳鉄の湿式高速断続切削試験(切削条件1)と鋳鉄の乾式高速断続切削試験(切削条件2)を実施して、いずれも切刃の逃げ面の摩耗幅を測定した。その結果を表7、表8に示す。なお、比較被覆工具については、チッピングが原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
切削条件1: 湿式高速正面フライス、センターカット切削加工
カッタ径: 125mm
被削材: JIS FCD700 幅100mm、長さ400mmブロック材
回転速度: 891/min
切削速度: 350m/min
切り込み: 2.0mm
一刃送り量: 0.3mm/刃
切削時間: 5分
(通常切削速度は、150~250m/min)
切削条件2: 乾式高速断続切削加工
被削材: JIS FCD700 長さ方向等間隔8本の縦溝入り丸棒
切削速度: 300m/min
切り込み: 1.5mm
送り: 0.3mm/rev
切削時間: 5分
(通常切削速度は、150~200m/min)
Figure 0007121234000007
Figure 0007121234000008
表7および表8に示される結果から、本発明被覆工具1~16(本発明被覆工具1、2、5、6、8~10、12~14、16は参考例である)は、いずれも、硬質被覆層とその直上の金属酸化物層を含む被覆層を含むため、鋳鉄の高速断続切削加工においてチッピングの発生がなく、長期にわたって優れた切削性能を発揮する。これに対して、本発明の被覆工具に規定される事項を一つでも満足していない比較被覆工具1~16は、鋳鉄の高速断続切削加工においてチッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
前述のように、本発明の被覆工具は、鋳鉄の高速断続切削加工のように靱性が要求される被削材の高速断続切削加工ばかりでなく、各種の被削材の被覆工具として用いることができ、しかも、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに、低コスト化に十分に満足する対応ができるものである。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層とその直上に金属酸化物層を含む被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0~20.0μmのTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
    (b)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒酸化物層は、工具基体の表面と垂直な縦断面から分析した場合、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を70面積%以上含み、
    (c)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層の組成を組成式:(Ti1-xAl)(C1-y)で表した場合、AlのTiおよびAlの合量に占める平均含有割合xavg、CのCおよびNの合量に占める平均含有割合yavg(ただし、xavg、yavgはいずれも原子比)は、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0.0000≦yavg≦0.0050を満足し、
    (d)前記金属酸化物層の平均層厚は0.1~5.0μmであり、
    (e)前記金属酸化物層は、5.0原子%以上のAl30.0原子%以上のO原子、および0.5原子%以上20.0原子%以下のMn原子を含み、
    (f)前記金属酸化物層は、アモルファス相が占める割合が50面積%~100面積%を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記金属酸化物層は、C原子を0.5原子%以上10.0原子%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記金属酸化物層は、Si原子を0.5原子%以上20.0原子%以下含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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