以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る排気ガスセンサの配置構造をスポーツタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る排気ガスセンサの配置構造を、他のタイプの自動二輪車や、バギータイプの自動三輪車、自動四輪車等に適用してもよい。また、方向について、車両前方を矢印FR、車両後方を矢印RE、車両左方を矢印L、車両右方を矢印Rでそれぞれ示す。また、以下の各図では、説明の便宜上、一部の構成を省略している。
図1を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動二輪車の概略構成を示す左側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、パワーユニット、電装品を搭載する鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム2を備えている。車体フレーム2のメインチューブ3は、前端部に位置するヘッドパイプ4から左右一対に分岐し、後方に延出されている。また、メインチューブ3は、エンジン14の後上方まで延びた後、鉛直方向下方に向かって屈曲し、エンジン14の後下方まで延びている。左右一対のメインチューブ3の下端は、車幅方向に延びるフレームロアブリッジ3aによって連結されている。車体フレーム2のダウンチューブ5は、ヘッドパイプ4から後斜め下方に延出されるように設けられている。ヘッドパイプ4の後方には、内部に燃料の収容される燃料タンク7が配置されている。この燃料タンク7の後方には、運転者が着座するシート8が搭載されている。
車体フレーム2におけるメインチューブ3及びダウンチューブ5には、単気筒のエンジン14が懸架されている。エンジン14は、ダウンチューブ5に支持されるエンジンケース16と、このエンジンケース16の上方に設けられたシリンダアセンブリ17及びシリンダヘッドカバー18とを備えている。本実施の形態では、エンジンケース16の上方にシリンダアセンブリ17(シリンダ)が前傾した状態で連結されている。エンジンケース16の車体右側(図1の紙面で手前側)にはクラッチサイドカバー19が装着され、エンジンケース16の車体左側(図1の紙面で奥側)にはマグネットサイドカバー(不図示)が装着されている。また、エンジン14後方の下側には、後輪34を浮かせた状態で車両を自立させるためのセンタースタンド20が回動可能に設けられている。
シリンダアセンブリ17(シリンダヘッド)の排気ポートには、エキゾーストパイプ21の上端(上流端)側が接続されている。エキゾーストパイプ21の下端(下流端)側にはチャンバ23が装着され、燃焼室(不図示)から排出される排気ガスがエキゾーストパイプ21を流れてチャンバ23に流れ込む。チャンバ23を経た排気ガスは、マフラ24に流れ込み、後端部の排気口25から外部に排出される。この排気ガスの排出において、チャンバ23及びマフラ24のそれぞれで排気騒音の低減が図られる。マフラ24は、チャンバ23の後方であって、後輪34の車体右側(図1の紙面で手前側)に配置されている。また、マフラ24は、後端部が後輪34の回転中心位置より前方に位置する前後長さに設定されている。チャンバ23及びその周辺部の詳細構成については後述する。
メインチューブ3の前端部には、ヘッドパイプ4に設けられたステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク27が回動可能に支持されている。ステアリングシャフトの上端部にはハンドルバー28が設けられており、ハンドルバー28の両端部にはグリップ29が装着されている。フロントフォーク27の下部には、前輪31が回転可能に支持されている。前輪31の上方は、フロントフェンダ32で覆われている。
エンジン14の後方には、スイングアーム33を介して後輪34が回転可能に支持されている。スイングアーム33と車体フレーム2との間には、路面からの衝撃を緩和させるサスペンション35が配置されている。後輪34の上方であってシート8の後方には、リヤフェンダ36が配置されている。また、車体フレーム2には、カバー等の各種車体外装が取り付けられている。
詳細は後述するが、チャンバ23内には、エンジン14の排気ガスを浄化する触媒60(図6参照)が設けられる。触媒60は、チャンバ23内に収容されている。触媒60は、例えば、三元触媒で構成され、排気ガス内の汚染物質(一酸化炭素、炭化水素や窒素酸化物等)を無害な物質(二酸化炭素、水、窒素等)に変換する。エンジン14の燃焼によって生じる排気ガスは、エキゾーストパイプ21を通じて触媒60で浄化される。そして、排気ガスは、チャンバ23及びマフラ24を通じて排気音が低減された後、外に排出される。
また、触媒60の前後には、排気ガス中の所定成分を検出する排気ガスセンサとして、上流側センサ80と下流側センサ90とが設けられている(共に図6参照)。上流側センサ80は、エキゾーストパイプ21の途中に設けられ、下流側センサ90は、チャンバ23に設けられる。上流側センサ80及び下流側センサ90は、例えば、排気ガス中の所定成分として酸素を検出するジルコニア式酸素センサで構成される。上流側センサ80及び下流側センサ90では、排気ガス内の酸素濃度に応じて出力(電流値)が変化する。当該電流値は、図示しないECU(Electronic Control Unit)に出力される。なお、排気ガスセンサは、酸素センサに限らず、例えば、空燃比センサであってもよい。
ECUは、自動二輪車1内の各種動作を統括制御する。ECUは、自動二輪車1内の各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体で構成される。メモリには、自動二輪車1の各部を制御する制御プログラム等が記憶されている。特に本実施の形態においてECUは、排気ガスセンサの出力に基づいて触媒60の劣化判定を実施する。例えば、上流側センサ80及び下流側センサ90のリッチリーン間における出力反転回数の比に基づいて触媒60の劣化が判定される。なお、触媒60の劣化を判定するために、出力反転回数の比を用いる場合に限らず、上流側センサ80及び下流側センサ90の出力差を用いてもよい。
ところで上記したように、車両用エンジンの排気システムにおいては、昨今の排ガス規制に伴い、排ガス浄化装置としての触媒の劣化状況をモニタリングすることが求められている。触媒の劣化判定を実施するためには、触媒の上流と下流に排気ガスセンサを設置する必要がある。
例えば、触媒の上流側に設けられた排気ガスセンサ(酸素センサ)で排気ガス中の酸素濃度を検出し、空燃比を制御することは従来より実施されていた。しかしながら、触媒の劣化判定を目的として、触媒の下流側にも排気ガスセンサを配置しようとすると、自動二輪車特有のレイアウトの制約から、所定の検出精度を確保しつつ触媒の下流側に排気ガスセンサを近づけて配置することが困難となっていた。
この点、自動四輪車においては、エンジンルーム内等、スペースに余裕のある場所に触媒を配置することができるため、排気ガスセンサの配置や保護は比較的容易である。一方、自動二輪車では、チャンバやマフラ内に触媒が配置されることが多く、上記したように、構造上、下流側センサを触媒に近づけて配置することが困難である。また、排気管の途中に触媒が配置される場合でも、排気管と周辺部品が近接していることが多く、排気ガスセンサを配置するためのスペースを確保することが困難である。更に、自動二輪車の排気システムは外部に露出されているため、例えば冬場や雨天走行時において、触媒の温度が低下し易く適切にセンサ出力を得ることができない場合も想定される。また、排気ガスセンサの保護も問題になってくる。
例えば、チャンバやマフラ等の消音器内に触媒が設けられる場合、外壁を凹ませて排気ガスセンサの配置スペースを確保することが考えられる。しかしながら、チャンバやマフラの容積が減少する結果、本来の機能(出力増加や消音)に影響を与えるおそれがある。また、触媒自体を車両の前側に配置することも考えられるが、そもそも触媒の配置スペースの確保が困難であることに加え、大幅な設計変更が必要となるため、あまり現実的ではない。更には、熱源である触媒がライダーに近づくことによる熱害や、出力の低下、排気ガスセンサの保護方法、外観意匠性の悪化等、様々な課題が発生する。
そこで、本件発明者は、自動二輪車1において、エンジン14の後下方に配置されるチャンバ23と、エンジンケースとの間の限られたスペースに着目して本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、エンジン14の後下方に配置されるチャンバ23の内部に触媒60を配置し、チャンバ23内で触媒60の下流側に接続される配管(バッフルパイプ70、図6参照)の少なくとも一部をチャンバ23の内壁面に沿わせる構成とした。そして、チャンバ23とバッフルパイプ70とが近接する箇所において、チャンバ23及びバッフルパイプ70を貫通するように、下流側センサ90を取り付けている。
この構成によれば、チャンバ23内に触媒60が配置される構成であっても、下流側センサ90を触媒60に近づけて配置することができる。このため、排気ガスの検出精度を損なうことがない。また、触媒60の下流側のバッフルパイプ70に下流側センサ90が取り付けられることで、触媒60で浄化された後の排気ガスが拡散されることなく直接下流側センサ90に接触する。この結果、下流側センサ90の安定的な出力を得ることができる。また、チャンバ23を凹ませることなく、下流側センサ90を配置することができるため、チャンバ23の容積を犠牲にすることもない。
次に、図2から図4を参照して、チャンバ23周辺の詳細構成について説明する。図2は、図1のチャンバ周辺の拡大図である。図3は、本実施の形態に係る自動二輪車の正面図である。図4は、本実施の形態に係る自動二輪車の下面図である。
図2から図4に示すように、エンジン14の後下方、すなわち、スイングアーム33の前下方には、チャンバ23が配置されている。スイングアーム33の揺動軸近傍における車体フレーム2には、センタースタンド20が設けられている。センタースタンド20は、左右一対の脚部40、41と、これら一対の脚部40、41の延在方向中央より先端側を連結して左右方向に延びる連結部42とを備えている。一対の脚部40、41の基端側は、支持ブラケット43を介して揺動するよう車体フレーム2に軸支されている。従って、センタースタンド20は、後輪34(図1参照)を浮かせた状態で車両を自立させる起立位置(不図示)と、図2から図4に示す収納位置との間で揺動可能となり、車両の走行状態では収納位置となる。
右側の脚部41には、センタースタンド20を収納位置へ付勢するばね部材44が設けられている。また、左側の脚部40には、フートバー45が設けられ、このフートバー45を足で踏み込むことによって、センタースタンド20を収納位置から起立位置に揺動させることができる。
また、センタースタンド20の上方には、運転者の足を保護するヒールガード46が設けられている。ヒールガード46は、後上方に向かって鋭角を成すように形成されている。また、ヒールガード46は、周辺構成を固定するためのブラケットとしても機能する。
具体的にヒールガード46には、運転者用のフートレスト47、後輪34(図1参照)用のブレーキペダル48が取り付けられている。フートレスト47及びブレーキペダル48は、ヒールガード46の外面(車幅方向外側)に設けられている。
ブレーキペダル48は、ヒールガード46の下端から前方に向かって延びている。また、ブレーキペダル48の基端側には、車幅方向外側に突出するフートレスト47が設けられている。また、フートレスト47は、ブレーキペダル48を貫通してヒールガード46に固定される。ブレーキペダル48は、フートレスト47を軸に揺動可能に構成される。
次いで、図2から図4に加え、図5から図8を参照して、本実施の形態に係る排気システムについて説明する。図5は、本実施の形態に係る排気システムの概略斜視図である。図6は、本実施の形態に係るチャンバの内部構成を示す上面図である。図7は、本実施の形態に係るチャンバの内部構成を示す右側面図である。図8は、本実施の形態に係るチャンバの内部構成を示す左側面図である。
図5に示すように、本実施の形態に係る自動二輪車1(図1参照)の排気システムは、エキゾーストパイプ21、チャンバ23、マフラ24及びその周辺構成を含んで構成される。エキゾーストパイプ21は、エンジン14(図1参照)前面の排気ポートから下方に延出し、エンジン14の下方で後方に屈曲している。エキゾーストパイプ21の下流端には、クランク状の連結部26が形成されており、当該連結部26を介してチャンバ23が接続される。
連結部26は、上半部と下半部を溶接等で結合して筒状に形成される。また、連結部26は、車両後方に突出して車幅方向左側に略直角に屈曲した後、更に後方に向かって略直角に屈曲した上面視クランク状に形成される。このように、連結部26を上下割の構造としたことで、急激な曲げRを有するクランク状に連結部26を形成することが可能となっている。詳細は後述するが、連結部26の内、車幅方向に延びる部分は、上流側センサ80が取り付けられる延長部26aを構成する。車幅方向に延びる延長部26aを設けたことで、排気管長を稼ぐことが可能である。
チャンバ23は、排気ガスが膨張する膨張室を形成する外壁部51を備えている。外壁部51は、左ケース53と右ケース54とを備えた左右に分割可能な構造とされ、外壁部51の左右方向略中間位置が分割位置とされる。外壁部51の前端部において、左ケース53と右ケース54とに跨る位置には、エキゾーストパイプ21の下流端(連結部26)側が接続され、この接続部分がチャンバ23の入口23aとなる。
図5から図8に示すように、外壁部51は、前後方向における中央領域51aが上方に隆起し、その頂面が外壁部51において最も上方に位置する最上位形成部51bを形成している。外壁部51の前方領域51cは、エキゾーストパイプ21の太さより若干大きい上下寸法に設定され、後述する触媒60を内側に収容可能な大きさに形成されている。外壁部51の後方領域51dは、前方領域51cより高く、最上位形成部51bより低い上下寸法に設定され、後述するバッフルパイプ70を収容可能な大きさに形成されている。
チャンバ23の前方領域51cには、チャンバ23を車体に固定するためのブラケット56が形成されている。ブラケット56は、前方領域51c(後述するテーパ配管57の近傍)の左右からそれぞれ車幅方向に延在して形成される。
右ケース54には、後方側における右側面に開口部54aが形成されている。開口部54aは、車両前方に向かって延びる側面視矩形状を有する。また、右ケース54には、この開口部54aを閉塞するように蓋部材55が設けられている。すなわち、蓋部材55も、車両前方に向かって延びる側面視矩形状を有する。蓋部材55は、右ケース54とは別部品となり、当該右ケース54に対して溶接等の手段により固定されている。蓋部材55は、右ケース54の右側面から右側に部分的に膨出するように形成されている。
蓋部材55は、上面視において前半部分がチャンバ23の内側(左側)に向かって凹む一方、後半部分がチャンバ23の外側(右側)に膨らむ段形状を有している。具体的に蓋部材55は、前半部分(一部分)がチャンバ23の内側(左側)に凹む凹部55aと、後半部分(他の一部分)が凹部55aに対してチャンバ23の外側(右側)に突出する凸部55bと、を有している。このように、蓋部材55によって形成される内部空間により、外壁部51が形成する膨張室の一部が形成されて拡張される。また、詳細は後述するが、凹部55aを貫通するように下流側センサ90が取り付けられ、凸部55bを貫通するようにジョイントパイプ58が取り付けられる。
蓋部材55の右側面には、チャンバ23の出口23bが形成され、当該出口23bにジョイントパイプ58が取り付けられている。ここにおいて、ジョイントパイプ58の取り付け位置となるチャンバ23の出口23bが、外壁部51におけるジョイントパイプ58の被取付部とされ、この被取付部は、左ケース53の左側面及び右ケース54の右側面のうちマフラ24が位置する方の側面側、つまり、右ケース54の右側面側に設けられる。ジョイントパイプ58の下流端(後端)側は、マフラ24の入口24aに接続されている。これにより、チャンバ23の出口23bとマフラ24の入口24aとがジョイントパイプ58を介して連通され、チャンバ23から排出された排気ガスがジョイントパイプ58を通過してマフラ24に流入される。
図2から図4に示すように、外壁部51は、エンジン14の後方に配置され、前方領域51cがエンジン14の後端側と上下に重なる位置に配置されている。外壁部51は、左右方向において、収納位置のセンタースタンド20における一対の脚部40、41の間に収まる位置に配置されている。また、外壁部51は、収納位置のセンタースタンド20における連結部42より前方に配置されている。従って、外壁部51の後方領域51dは、収納位置のセンタースタンド20における一対の脚部40、41及び連結部42に囲まれる空間に配置されている。
外壁部51は、スイングアーム33の二股に分かれる前端の間に最上位形成部51bが位置するように配置されている。従って、図2の破線で示すように、チャンバ23の上面となる最上位形成部51bは、車体側面視でスイングアーム33と重なって配置される。
図6から図8に示すように、チャンバ23内には、連結部26の後端部分が貫通しており、連結部26の後端部分には、テーパ配管57を介して触媒60の上流端が接続される。触媒60の下流端には、チャンバ23内の排気通路を構成する内側排気管としてバッフルパイプ70が接続される。
テーパ配管57は、下流(後方)に向かうに従って拡径するように形成される。テーパ配管57の後端には、上記したように触媒60が接続される。触媒60は、前後方向に延びる円柱状に形成され、エキゾーストパイプ21より大きい外径を有する。触媒60は、排気ガス中の所定成分を酸化、還元する円柱状のハニカム部を、円筒状の外筒部で覆って構成される。なお、触媒60は、ハニカム部の密度が異なる第1触媒61、第2触媒62とを前後に並べて構成される。例えば、前側に配置される第1触媒61のハニカム部の密度は、排気ガスの排出性を損なわないように、後側に配置される第2触媒62のハニカム部に比べて小さく設定されている。これら2つの触媒61、62により、排気ガスの浄化性能が向上されている。
触媒60は、エキゾーストパイプ21を通じて前方から導入された排気ガスを浄化して後方に排出可能に設けられる。また、触媒60は、図6に示す上面視において、チャンバ23の割面上に軸中心が位置するように配置されている。図4に示すように、チャンバ23の割面は、車体フレーム2の車幅方向における中心に位置するため、熱源である触媒60をできるだけ車両の内側に配置することができる。よって、乗員に対する熱の影響を抑えることができる。
更に触媒60は、側面視において、チャンバ23の上流側(前側)に配置される。この場合、触媒60をなるべく排気の上流側に配置することができる。このため、排気ガス温度が比較的高い状態で触媒60に排気ガスを導入することができ、触媒60の温度が高められる。この結果、排気ガスの浄化が促進され、浄化性能が向上する。
また、チャンバ23は、外壁部51における中央領域51a及び後方領域51dの内側に配置されるバッフルパイプ70を更に備えて構成されている。バッフルパイプ70の上流端側は、触媒60の下流端(第2触媒62の後端)側に接続されている。バッフルパイプ70は、排気ガスが流れる方向に順に、第1曲げ管71、第2曲げ管72を備え、これらの曲げ管71、72によって、触媒60から回転しながら上昇する螺旋状に形成されている。このように、バッフルパイプ70を螺旋状に形成したことで、チャンバ23全体を大きくすることなく、排気管長を確保することが可能である。
バッフルパイプ70の下流端側となる第2曲げ管72の下流端側には、開放端形成部74が設けられ、この開放端形成部74も外壁部51の内部に配置されている。開放端形成部74は、有底円筒部材の外周部分(円筒部分)に多数の排気孔74aが形成されて構成される。開放端形成部74の先端側は塞がれている。バッフルパイプ70から開放端形成部74に流れた排気ガスは、排気孔74aを介して排出され、外壁部51の内部で膨張(拡散)する。
図6に示すように、第1曲げ管71は、車体平面視(上面視)にて半円弧状若しくはU字状に湾曲(屈曲)形成される。第1曲げ管71は、湾曲した延在方向両端部が前方に向けられている一方、第2曲げ管72は、湾曲した延在方向両端部が後方に向けられている。また、図7、8に示すように、第1曲げ管71は、上流端より下流端の方が上方に位置するように形成されている。従って、チャンバ23は、第1、第2曲げ管71、72の順に接続することによって、バッフルパイプ70を流れる排気ガスを車体平面視で1回転させる。第1曲げ管71及び第2曲げ管72は、内部を流れる排気ガスの排気通路を前から後ろ、又は後ろから前に反転させる役割を果たす。
第1曲げ管71は、軸方向に交差する方向、すなわち上下方向で分割された分割体(上半部及び下半部)を溶接結合して形成される。また、第1曲げ管71は、下流側に向かうに従って断面積が小さくなるように(縮径するように)形成される。このように、第1曲げ管71を、U字の曲げ方向を規定する平面に平行な平面で二分割に構成した、すなわち上下割で構成したことにより、2つの分割体を予めプレス加工等により成形した上で第1曲げ管71の曲げ形状を形成することできる。
このため、直線状のパイプを曲げて形成する場合に比べて、第1曲げ管71の曲げ半径を小さくすることができ、急な曲げでも対応することができる。よって、第1曲げ管71のレイアウトの自由度が向上する。また、第1曲げ管71の形状に自由度が得られ、上記したように、下流に向かうに従って径を絞るような複雑な形状も可能となる。このように、第1曲げ管71の断面径を徐々に小さくしたことで、排気ガスの流速を変化させることができ、排気ガスの排出性を向上することが可能である。
また、第1曲げ管71には、下流側において上下に貫通する干渉孔73が形成されている。バッフルパイプ70内を流れる排気ガスは、当該干渉孔73からもチャンバ23内で拡散される。特に干渉孔73は、第1曲げ管71の下流側において、U字の曲げの直後でその断面径が小さくなる位置に形成されている。このため、排気ガスの流路抵抗と成り得る箇所で排気ガスの排出性が損なわれるのを防止することが可能である。なお、干渉孔73は、必ずしも設けられなくてよい。
第2曲げ管72は、第1曲げ管71の下流端に接続され、第1曲げ管71より大きい曲げ半径でU字状に屈曲されている。図6に示すように、第2曲げ管72の上流端側は、一部がチャンバ23(外壁部51)の右側面に沿うように配置される一方、第2曲げ管72の下流端側(開放端形成部74側)が、チャンバ23の左側面側に偏って配置される。
次に、本実施の形態に係る排気ガスセンサの配置構造について説明する。上記したように、排気ガスセンサ(上流側センサ80及び下流側センサ90)は、触媒60の前後に配置される。排気ガスセンサは、所定の長さを有する円柱状に形成される。排気ガスセンサは、一端側が検出部となっており、他端側に配線(不図示)が接続される。
図2から図8に示すように、上流側センサ80は、連結部26の内、車幅方向に延びる延長部26aに後方から取り付けられる。具体的に延長部26aの車幅方向略中央において、後側の割面上にナット81が溶接される。当該ナット81に上流側センサ80の一端側をねじ込んで、その先端がエキゾーストパイプ21(連結部26)内に貫通するように取り付けられる。これにより、連結部26内を流れる排気ガスを上流側センサ80で検出することが可能になる。なお、割面上にナット81を配置したことで、ナット81を溶接する際の座面確保が容易となっている。
また、上流側センサ80は、その軸方向が略前後方向に向けられており、図6に示す上面視において、チャンバ23の幅内に位置している。また、上流側センサ80は、図2から図5に示すように、上方がエンジン14、前方が延長部26a、後方がチャンバ23によって囲まれている。これにより、上流側センサ80を専用のカバーで覆うことなく飛石や水等から保護すると共に、外観上、目立たなくすることが可能である。
下流側センサ90は、蓋部材55の右側面から凹部55a及び第2曲げ管72を貫通するように取り付けられる。第2曲げ管72は、凹部55aの内面に沿うように配置されており、凹部55a及び第2曲げ管72の外面を貫通するように、ナット91が右方から溶接される。当該ナット91に下流側センサ90の一端側をねじ込んで、その先端が第2曲げ管72内に貫通するように取り付けられる。これにより、第2曲げ管72内を流れる排気ガスを下流側センサ90で検出することが可能になる。
また、下流側センサ90は、その軸方向が車幅方向に向けられている。下流側センサ90は、図2から図4に示すように、上方がスイングアーム33、下方がセンタースタンド20、前方がブレーキペダル48、後方がジョイントパイプ58によって囲まれている。これにより、下流側センサ90を専用のカバーで覆うことなく飛石や水等から保護すると共に、外観上、目立たなくすることが可能である。
また、蓋部材55の後半部分を構成する凸部55bには、ジョイントパイプ58の先端が右方から挿通されている。凸部55bにより、チャンバ23内のバッフルパイプ70(特に第1曲げ管71)とチャンバ23の壁面との距離を確保しつつ、チャンバ23の容積を拡張することが可能である。よって、当該凸部55bにジョイントパイプ58を接続したことで、チャンバ23内に拡散された排気ガスをジョイントパイプ58からマフラ24に排出する際の妨げとならない。
このように、バッフルパイプ70に対向する蓋部材55の一部分(前半部分)をバッフルパイプ70側に凹ませ、他の一部分(後半部分)をバッフルパイプ70から離れる方向に突出させたことで、バッフルパイプ70をチャンバ23の壁面に近づけて下流側センサ90の取付箇所を確保しつつも、チャンバ23の容積を小さくすることなく排気ガスの排出性を向上することが可能である。
このように、本実施の形態では、チャンバ23の側面(蓋部材55の凹部55a内面)に沿うようにバッフルパイプ70(特に第2曲げ管72)を配設し、凹部55aと第2曲げ管72とが接近する箇所に下流側センサ90を取り付けるためのナット91を溶接する構成とした。よって、触媒60の下流側に接続されるバッフルパイプ70内を流れる排気ガスを下流側センサで正確に検出することができる。
また、外壁部51とは別部材の蓋部材55を設けたことで、下流側センサ90の取付箇所を確保しつつも、チャンバ23の容積を拡張することができ、チャンバ23の容積を犠牲にすることがない。また、バッフルパイプ70をU字状の第1、第2曲げ管72で構成したことにより、チャンバ23の前後幅を抑制すると共に、チャンバ23内の触媒配置及び排気ガスセンサの配置自由度を向上させることができる。
また、第1曲げ管71を上下割で構成したことで、第1曲げ管71の曲げ半径をより小さくすることができ、チャンバ23全体の大型化を防止することが可能である。また、下流に向かうに従って第1曲げ管71の流路断面を小さくしたことにより、スムーズな排気ガス流れを実現することができ、下流側センサ90に偏りなく排気ガスを当てることができる。この結果、より高精度に排気ガス中の酸素濃度を検出することが可能である。
また、第2曲げ管72の下流端、すなわち開放端形成部74は、蓋部材55が設けられるチャンバ23の側面(右側面)とは異なる他の側面(左側面)側に偏って配置されている。このため、開放端形成部74をジョイントパイプ58の接続部分から離すことができる。よって、チャンバ23の出口から離れた障害物の少ない空間で排気ガスを開放することができ、消音性能を高めることができる。
なお、上記実施の形態では、単気筒のエンジン14を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、エンジン14は、2気筒以上の多気筒エンジンで構成されてもよく、各気筒の配置も適宜変更が可能である。
また、上記実施の形態では、車体フレーム2をクレードルタイプのフレームで構成したが、この構成に限定されない。車体フレーム2は、例えば、ダイヤモンドタイプやツインスパータイプのフレームであってもよい。
また、上記実施の形態では、触媒60全体がチャンバ23内に入り込んだ(収容された)場合について説明したが、この構成に限定されない。触媒60は、少なくとも一部がチャンバ23内に入り込んでいればよく、例えば、触媒60の上流端がチャンバ23からはみ出してもよい。
また、上記実施の形態では、バッフルパイプ70の少なくとも一部(第2曲げ管72の上流端)がチャンバ23の右側面(蓋部材55の凹部55a)に沿う構成としたが、この構成に限定されない。バッフルパイプ70全体がチャンバ23の側面に沿っていてもよく、第2曲げ管72の上流端以外の部分をチャンバ23の側面に沿わせ、その部分に下流側センサ90を配置してもよい。
また、上記実施の形態では、下流側センサ90が取り付けられる配管(バッフルパイプ70)として第2曲げ管72を例示して説明したが、これに限定されない。配管は、直線状やL字状に形成されてもよい。
また、上記実施の形態では、バッフルパイプ70が2つのU字配管(第1、第2曲げ管71、72)で形成される構成としたが、この構成に限定されない。バッフルパイプ70は、U字状に限らず、チャンバ23内の排気通路を反転させるように屈曲すれば、どのように形成されてもよい。
また、上記実施の形態では、第1曲げ管71を上面視U字状に形成し、上下割の構成としたが、この構成に限定されない。第1曲げ管71は、軸方向に交差する方向で分割された分割体を結合して構成されればよく、例えば、第1曲げ管71を側面視U字状に形成し、左右割の構成としてもよい。また、第1曲げ管71に限らず、第2曲げ管72を軸方向に交差する方向で分割された分割体を結合して構成してもよい。
また、上記実施の形態では、蓋部材55の前半部分に凹部55aを形成し、蓋部材55の後半部分に凸部55bを形成する構成としたが、この構成に限定されない。凹部55aと凸部55bの位置関係は、前後逆であってもよい。
また、上記実施の形態では、センタースタンド20を備える自動二輪車1を例にして説明したが、この構成に限定されない。例えば、図9から図11に示す構成であってもよい。ここで、図9から図11を参照して、変形例について説明する。図9は、変形例に係るチャンバ周辺の拡大図であり、図2に対応している。図10は、変形例に係るチャンバの内部構成を示す上面図であり、図6に対応している。図11は、変形例に係るチャンバの内部構成を示す右側面図であり、図7に対応している。変形例では、自動二輪車がセンタースタンドを備えず、下流側センサの取り付け箇所及びチャンバ内の配管取り回しが本実施の形態と相違する。このため、主に相違点を中心に説明し、共通する構成は、同一符号で示して適宜説明を省略する。
図9から図11に示すように、変形例では、蓋部材155の前下方において、下流側センサ90が、右ケース54の右側面を貫通するように取り付けられ、その軸方向が車幅方向に向けられている。なお、変形例に係る蓋部材155は、凹部55a(図6及び図7参照)が形成されていない点でのみ、蓋部材55と相違する。
ここで、チャンバ23の内部構成について説明する。図10及び図11に示すように、変形例に係るチャンバ23では、触媒60が単一の触媒で構成され、バッフルパイプ70の一部を構成する第2曲げ管172の曲げ形状が異なる。具体的に第2曲げ管172は、第1曲げ管71の下流端から前方に向かって延び、上面視で車幅方向内側に屈曲するクランク形状を有すると共に、側面視で前下方に屈曲した形状を有する。第2曲げ管172の下流端には、開放端形成部74が設けられる。
第2曲げ管172は、車幅方向(左右方向)で分割された分割体(左半部173及び右半部174)を溶接結合して形成される。また、分割体の一部である右半部174には、右ケース54の側面に向かって膨出する膨出部175が形成されている。膨出部175は、右ケース54の内側面に対向する平坦面を有する。当該平坦面にセンサ用の取付部としてナット91が取り付けられる。ナット91は、軸方向が左右方向に向くようにして、膨出部175及び右ケース54の側面を貫通するように右側から溶接される。当該ナット91に下流側センサ90の一端側をねじ込んで、その先端が第2曲げ管72内に貫通するように取り付けられる。これにより、第2曲げ管72内を流れる排気ガスを下流側センサ90で検出することが可能になる。
このように構成される変形例においては、下流側センサ90が蓋部材155の前下方に位置することで、下流側センサ90の基端部分の上方が蓋部材155によって隠される。このため、下流側センサ90を蓋部材155で保護することができる。また、下流側センサ90を外観上目立ち難くすることが可能である。また、蓋部材155を単純な形状にすることができ、チャンバ23の容積拡張の効果をより向上することが可能である。
また、第2曲げ管172の一部に膨出部175を形成したことで、膨出部175のみを右ケース54の側面に近づけることが可能である。これにより、第2曲げ管172全体を必要以上にチャンバ23に近づけなくて済むので、第2曲げ管172のレイアウト自由度が向上する。また、チャンバ壁面の温度上昇も抑制することが可能である。また、膨出部175及び右ケース54の側面を貫通するようにナット91を溶接することで、バッフルパイプ70全体をナット91で強固に支持することが可能である。
また、図9に示すように、下流側センサ90の配線90aは、フレームロアブリッジ3aの下方から前方を通って、メインチューブ3に沿って上方に向かうように配索される。上流側センサ80の配線80aも同様に、メインチューブ3に沿って上方に向かうように配索される。このため、ブレーキペダル48やエンジン14に接触することなく各配線を安全に配索できると共に、各配線の取り回しを簡略化することが可能である。
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。