JP6969345B2 - 多色ウォータジェット織機による製織方法 - Google Patents

Description

この発明は、多色ウォータジェット織機による製織方法に関する。

多色ウォータジェット織機は、２色以上の緯糸を織布に織り込むことが出来るウォータジェット織機であり、緯糸のカラーの種類に応じて複数の緯入れノズルを有している。そして、給水流路に設けられた切替弁やストップ弁を制御して、緯入れするカラーに応じた緯入れノズルを適宜選択し、水を供給する。

しかし、織布のデザインによっては織り込まれる緯糸のカラーに偏りが出る。そのため、特定のカラーに対応する緯入れノズルの休止時間が長くなってしまう場合がある。このような場合、所定期間以上休止した緯入れノズルの内部から水が無くなったり、緯入れノズルの内部に気泡が入り込んだりしてしまうことがあった。従って、長い休止時間が終わった緯入れノズルによって緯入れを行おうとすると、噴射水量が不足したり、ノズルの内部への気泡の混入により緯入れの搬送力が低下したりしてしまうおそれがある。

このため、特許文献１に記載されるウォータジェット織機では、休止中の緯入れノズルに外部に排出される圧力水の一部を供給し、緯入れノズルの水が不足したり、緯入れノズルの内部に気泡が混入したりすることを防いでいる。

特開２００３−３１３７５３号公報

しかしながら、特許文献１の多色ウォータジェット織機では、作動中の緯入れノズルだけでなく休止中の緯入れノズルにも常時給水がなされるため、使用水量が増加し、水道料金や排水処理費用が嵩むという問題があった。また、給水管に専用の切替弁を設けるため、休止中の緯入れノズルへの水の供給が不要な場合は、その都度、切替弁を通常のものに交換する必要があり、コストがかかるという問題もあった。

この発明は、このような問題を解決するためになされ、低コストで、所定期間以上休止した緯入れノズルの緯入れ搬送力が低下することを防止することができる多色ウォータジェット織機による製織方法を提供することを目的とする。

上記の課題を解決するために、この発明に係る製織方法は、少なくとも２つの緯入れノズルと、緯入れノズルに水を供給する給水部と、各々の緯入れノズルから飛走される緯糸の各々を貯留する測長装置と、各々の測長装置に貯留されている緯糸を係止する係止ピンと、各々の測長装置から引き出された緯糸を把持するグリッパとを有する多色ウォータジェット織機において、緯入れを休止する休止ピックが１０ピック以上連続する休止期間を有する緯入れノズルに対し、少なくとも緯入れノズルで緯入れを行う緯入れ期間の１ピック前を含むとともに休止期間よりも少ないピック数の準備水供給期間を休止期間内に設け、準備水供給期間にのみ、係止ピンが緯糸を係止した状態及びグリッパが緯糸を把持した状態で、給水部は緯入れノズルに準備水を供給する動作を行う。

また、この発明に係る製織方法では、準備水供給期間において、経糸の送り出し及び織布の巻取りを停止させてもよい。

またさらに、多色ウォータジェット織機が、給水部に設けられるポンプに同期して経糸の開口動作を行う開口装置とを備える場合に、準備水供給期間において、測長装置の係止ピンが緯糸を係止した状態及びグリッパが緯糸を把持した状態で、織布の完全組織の緯糸数に応じた回数分、給水部は、１０ピック以上連続して休止した緯入れノズルに準備水を供給する動作を行ってもよい。

この発明に係る多色ウォータジェット織機による製織方法によれば、低コストで、所定期間以上休止した緯入れノズルの緯入れ搬送力が低下することを防止することができる。

この発明の実施の形態に係る多色ウォータジェット織機の概略図である。 図２（ｉ）は平織りの織布の組織図であり、図２（ｉｉ）は、図１に示す多色ウォータジェット織機が図２（ｉ）に示すような平織りを行う場合の製織方法における緯入れ手順の例を示す表である。 図３（ｉ）は綾織りの織布の組織図であり、図３（ｉｉ）は、図１に示す多色ウォータジェット織機が図３（ｉ）に示すような綾織りを行う場合の製織方法における緯入れ手順の例を示す表である。

以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
図１に示す多色ウォータジェット織機１００は、各々異なる二色の緯糸Ｙａ，Ｙｂを用いて製織を行うものである。ここで、緯糸Ｙａの色をカラーＡとし、緯糸Ｙｂの色をカラーＢとする。多色ウォータジェット織機１００は、緯糸Ｙａを飛走させる緯入れノズルである第一ノズル１６と、緯糸Ｙｂを飛走させる緯入れノズルである第二ノズル２６とを有している。

また、多色ウォータジェット織機１００は、第一緯糸チーズ１１及び第二緯糸チーズ２１を有している。第一緯糸チーズ１１にはカラーＡの緯糸Ｙａが巻き付けられ、第二緯糸チーズ２１にはカラーＢの緯糸Ｙｂが巻き付けられている。また、第一緯糸チーズ１１及び第二緯糸チーズ２１から引き出される緯糸Ｙａ，Ｙｂは、各々、測長装置１２，２２のドラム１２ｂ，２２ｂに巻き付けられて貯留される。測長装置１２，２２のワインディングアーム（図示せず）は巻付モータ１２ａ，２２ａにより回転駆動される。また、測長装置１２，２２には係止ピン１３，２３が設けられる。係止ピン１３，２３は電磁ソレノイド１３ａ，２３ａによって駆動される。係止ピン１３，２３は測長装置１２，２２のドラム１２ｂ，２２ｂに対して突き出るように駆動されることにより、測長装置１２，２２に貯留される緯糸Ｙａ，Ｙｂを係止する。これにより、緯糸Ｙａ，Ｙｂの引き出しが制限される。また、測長装置１２，２２と第一ノズル１６及び第二ノズル２６との間にはグリッパ１５，２５が設けられる。緯糸Ｙａ，Ｙｂのうち、測長装置１２，２２から引き出された部分は、各々、グリッパ１５，２５によって把持される。

また、第一ノズル１６及び第二ノズル２６には給水部５０が接続されている。給水部５０は、多色ウォータジェット織機１００の内部に設けられた水タンク４の水を第一ノズル１６及び第二ノズル２６に供給するための機構である。給水部５０は、内部を水が流通する給水管５を有している。また、給水管５は、水タンク４の内部に連通する取水管５ａと、取水管５ａから分岐して各々、第一ノズル１６及び第二ノズル２６に連通する第一ノズル給水管部５ｂ及び第二ノズル給水管部５ｃとを有する。取水管５ａにはポンプ２が設けられている。また、第一ノズル給水管部５ｂと第二ノズル給水管部５ｃとの分岐点には切替弁３が設けられる。すなわち、給水部５０は、ポンプ２、取水管５ａ、第一ノズル給水管部５ｂ、第二ノズル給水管部５ｃ及び切替弁３を有している。

また、多色ウォータジェット織機１００は、経糸Ｔを送り出す送出装置３１と、織り上がった織布Ｗを巻き取る巻取装置３３とを有する。また、送出装置３１と巻取装置３３との間には経糸Ｔを開口するための開口装置３２が設けられる。
なお、ポンプ２と開口装置３２とはメインモータ（図示せず）によって駆動されるとともに機械的に連動するように構成されており、同期して動作するものとする。すなわち、ポンプ２が第一ノズル１６又は第二ノズル２６に水を供給する度に、開口装置３２は織布Ｗの織りのパターンに従って経糸Ｔの開口を行う。

さらに、測長装置１２，２２の電磁ソレノイド１３ａ，２３ａ、グリッパ１５，２５、切替弁３、送出装置３１及び巻取装置３３には制御装置１０が電気的に接続されている。

次に、多色ウォータジェット織機１００による製織方法について説明する。
カラーＡの緯糸Ｙａの緯入れを行う時は、通常、制御装置１０は、電磁ソレノイド１３ａを制御して係止ピン１３を測長装置１２から離すとともに、グリッパ１５による緯糸Ｙａの把持を解除する。そして、ポンプ２によって送水される水が第一ノズル給水管部５ｂを介して第一ノズル１６に供給されることにより、高圧水噴射によって緯糸Ｙａは飛走され、経糸Ｔの開口に緯入れされる。
同様に、カラーＢの緯糸Ｙｂの緯入れを行う時は、制御装置１０は、電磁ソレノイド２３ａを制御して係止ピン２３を測長装置２２から離すとともに、グリッパ２５による緯糸Ｙｂの把持を解除する。また、切替弁３を操作して、水タンク４の水が第二ノズル給水管部５ｃを流通するように切り替える。そして、第二ノズル給水管部５ｃを介して水が第二ノズル２６に供給されることにより、高圧水噴射によって緯糸Ｙｂは飛走され、経糸Ｔの開口に緯入れされる。

さらに、図２を参照して、平織りを行う場合の多色ウォータジェット織機１００の製織方法についてより詳細に説明する。
第一ノズル１６によるカラーＡの緯入れが所定期間以上連続した場合において、第二ノズル２６によるカラーＢの緯入れに切り替わる直前を含むタイミングで、制御装置１０は、第二ノズル２６から水のみを噴射させる。この時、第二ノズル２６からの緯糸Ｙｂの緯入れは行われない。このように、緯入れカラーの切り替えの前に、緯入れが行われない状態の第一ノズル１６又は第二ノズル２６に１ピック毎に供給される水を、以下の説明において「準備水」とする。すなわち、緯糸カラー切り替えの前に、係止ピン２３が緯糸Ｙｂを係止した状態及びグリッパ２５が緯糸Ｙｂを把持した状態で、制御装置１０は切替弁３を制御し、第二ノズル給水管部５ｃを介して第二ノズル２６に準備水が供給されるようにする。従って、ポンプ２の送水及び切替弁３の切り替えに伴って、給水部５０は所定期間以上の休止期間を有する第二ノズル２６に準備水を供給する動作を行う。この時、制御装置１０は、送出装置３１及び巻取装置３３の動作を一時的に停止させて、経糸Ｔの送出し及び織布Ｗの巻取りを停止する。
ここで、上述の「所定期間」とは１０ピック以上の期間をいう。従って、上述の「カラーＡの緯入れが所定期間以上連続した場合」とは、カラーＡの緯入れが１０ピック以上連続した場合、すなわち、第二ノズル２６の休止が最低でも１０ピック分の期間連続した場合をいう。
また、緯入れカラーの切り替えの「直前」とは、カラーＡ又はカラーＢの緯入れ開始の１ピック前をいう。

なお、図２（ｉ）に示すような平織りを行う場合、織布Ｗの完全組織の緯糸数、すなわち組織リピート数は２ピックである。前述のように、ポンプ２と開口装置３２とは同期して動作するため、ポンプ２が１ピック毎に第一ノズル１６又は第二ノズル２６に向けて送水を行う度に開口装置３２も動作して、その都度、経糸Ｔの位置が変化する。従って、織布Ｗの組織パターンにずれが生じないよう、図２（ｉｉ）に示すように、緯入れカラーの切り替えの前の２ピック分、第二ノズル２６に準備水を供給するとともに開口装置３を動作させ、各経糸Ｔの位置を元に戻す。
ここで、所定期間以上の休止期間を有する第一ノズル１６又は第二ノズル２６に準備水を供給するための期間を「準備水供給期間」とする。「準備水供給期間」は、カラーＡ又はカラーＢの緯入れ開始の少なくとも１ピック前を含むとともに、準備水を供給するノズルの休止期間よりも短く設定されるものとする。従って、図２に示す例では、「準備水供給期間」は、緯入れカラーをカラーＡからカラーＢに切り替える前の２ピック分の期間をいう。

また、図３（ｉ）に示すような綾織りを行う場合、織布Ｗの完全組織の緯糸数は３ピックである。従って、図２に示す場合と同様に、織布Ｗの組織パターンにずれが生じないよう、図３（ｉｉ）に示すように、緯入れカラーの切り替えの前の３ピック分、第二ノズル２６に準備水を供給するとともに開口装置３を動作させる。すなわち、この場合の第二ノズル２６に対する準備水供給期間は、緯入れカラーの切り替えの前３ピック分の期間である。
なお、準備水供給期間は緯入れカラーの切り替えの前１〜３ピック分の期間であることが好ましいが、織布Ｗの完全組織の緯糸数に合わせて、緯入れカラーの切り替えの前４ピック以上の期間であってもよい。

また、第二ノズル２６によるカラーＢの緯入れが所定ピック以上連続した場合においても、緯入れカラーがカラーＡに切り替わる前の準備水供給期間において、制御装置１０は、同様に、第一ノズル１６から準備水を噴射させる制御を行う。この間は緯糸Ｙａの緯入れは行わないものとする。

以上より、この実施の形態に係る多色ウォータジェット織機１００による製織方法では、２種類のカラーに各々対応する２つの緯入れノズルである第一ノズル１６及び第二ノズル２６が用いられる。このうち、第二ノズル２６が所定期間以上休止した場合、第二ノズル２６で緯入れを行う前の準備水供給期間においてのみ、測長装置２２を停止し、係止ピン２３が緯糸を係止した状態及びグリッパ２５で緯糸Ｙｂを把持した状態で第二ノズル２６に準備水が供給される。また、同様に、第一ノズル１６が所定期間以上休止した場合、第一ノズル１６で緯入れを行う前の準備水供給期間においてのみ、測長装置１２を停止し、係止ピン１３が緯糸を係止した状態及びグリッパ１５で緯糸Ｙａを把持した状態で第一ノズル１６に準備水が供給される。これにより、所定期間以上休止した緯入れノズルで緯入れを行う場合であっても、緯入れノズルの噴射水量が不足したり、緯入れノズルの内部に気泡が混入したりすることが防止され、充分な緯入れ搬送力を確保することができる。また、制御装置１０による制御のみで多色ウォータジェット織機１００の緯入れ搬送力の低下を防止することができるため、緯入れノズルを特殊な形状のものに交換する必要がなく、コストを抑えることができる。また、所定期間以上休止した緯入れノズルに準備水が供給されるのは、緯入れカラーの切り替え前１ピックを含む準備水供給期間のみでよい。準備水供給期間は、準備水を供給する緯入れノズルの休止期間よりも短く設定される。そのため、休止中の緯入れノズルにも常に水が供給される従来の方法と比べて使用水量の節約となる。

また、所定期間以上休止した緯入れノズルで緯入れを行う前の準備水供給期間において、送出装置３１及び巻取装置３３の動作を一時的に停止させて、経糸Ｔの送り出し及び織布Ｗの巻取りを停止する。これにより、織布Ｗの長さ方向に対して緯糸Ｙａ，Ｙｂの密度が不均一になることを防ぐことができる。

また、開口装置３２がポンプ２に同期して経糸Ｔの開口動作を行う場合、例えば、所定期間以上休止した第二ノズル２６に対しては、係止ピン２３が緯糸を係止した状態及びグリッパ２５が緯糸Ｙｂを把持した状態で、織布Ｗの完全組織の緯糸数に応じた回数分、準備水を供給する。すなわち、織布Ｗが図２（ｉ）に示すような平織りの場合は２ピック分、第二ノズル２６に準備水が供給される。また、織布Ｗが図３（ｉ）に示すような綾織りの場合は３ピック分、第二ノズル２６に準備水が供給される。また、給水部５０が第二ノズル２６に水の供給を行うタイミングは、第二ノズル２６で緯入れを行う前１ピック分を含む準備水供給期間である。これにより、所定期間以上休止した第二ノズル２６の噴射水量の不足や気泡の混入を防止することができるとともに、緯入れカラーをカラーＡからカラーＢに切り替える際に、織りのパターンにずれが発生してしまう事態を回避することができる。
なお、第一ノズル１６が所定期間以上休止した場合にも、同様の制御が行われるものとする。

なお、この実施の形態に限定されず、密度がある程度不均一であっても問題がない織布の場合は、緯入れノズルに準備水を供給する時に送出装置３１及び巻取装置３３を停止させなくてもよい。

また、ポンプ２と開口装置３２とが独立して動作可能となるように電動化されている場合は、所定期間以上休止した緯入れノズルで緯入れを行う１ピック前のタイミングで開口装置３２を停止させることができる。従って、このような場合は、所定期間以上休止した緯入れノズルへの準備水の供給は、織布Ｗの織りのパターンに依らず１回のみでよい。

また、他の緯入れノズルの動作中であっても、所定期間以上休止した緯入れノズルの準備水供給期間内であれば、準備水の供給が行われてもよい。
また、緯入れノズルへの水の供給源は水タンク４に限定されず、水道などのその他の水源であってもよい。

また、この実施の形態において多色ウォータジェット織機１００は２つの緯入れノズルである第一ノズル１６及び第二ノズル２６を有しているが、これに限定されず、緯入れカラーの種類に応じて３つ以上の緯入れノズルを有していてもよい。
また、この実施の形態におけるポンプ２は第一ノズル１６及び第二ノズル２６から高圧水噴射を行わせるものであるが、これに限らず、第一ノズル１６及び第二ノズル２６の噴射圧を適宜調整することが可能なポンプであってもよい。また、送水圧が可変であるポンプを用いる場合は、経糸Ｔの保護のために、第一ノズル１６及び第二ノズル２６から噴射される水の噴射圧は通常より低圧になるように調整されてもよい。

２ ポンプ（給水部）、３ 切替弁（給水部）、５ 給水管（給水部）、１２，２２ 測長装置、１３，２３ 係止ピン、１５，２５ グリッパ、１６ 第一ノズル（緯入れノズル）、２６ 第二ノズル（緯入れノズル）、５０ 給水部、１００ 多色ウォータジェット織機、Ｔ 経糸、Ｙａ，Ｙｂ 緯糸。

Claims (3)

1. 少なくとも２つの緯入れノズルと、
   前記緯入れノズルに水を供給する給水部と、
   各々の前記緯入れノズルから飛走される緯糸の各々を貯留する測長装置と、
   各々の前記測長装置に貯留されている緯糸を係止する係止ピンと、
   各々の前記測長装置から引き出された緯糸を把持するグリッパとを有する多色ウォータジェット織機の製織方法において、
   緯入れを休止する休止ピックが１０ピック以上連続する休止期間を有する前記緯入れノズルに対し、少なくとも前記緯入れノズルで緯入れを行う緯入れ期間の１ピック前を含むとともに前記休止期間よりも少ないピック数の準備水供給期間を前記休止期間内に設け、
   前記準備水供給期間にのみ、前記係止ピンが緯糸を係止した状態及び前記グリッパが緯糸を把持した状態で、前記給水部は前記緯入れノズルに準備水を供給する動作を行う、多色ウォータジェット織機による製織方法。
2. 前記準備水供給期間において、経糸の送り出し及び織布の巻取りを停止する、請求項１に記載の多色ウォータジェット織機による製織方法。
3. 前記多色ウォータジェット織機が、前記給水部に設けられるポンプに同期して経糸の開口動作を行う開口装置を備える場合に、
   前記準備水供給期間において、前記測長装置の前記係止ピンが緯糸を係止した状態及び前記グリッパが緯糸を把持した状態で、織布の完全組織の緯糸数に応じた回数分、前記給水部は、１０ピック以上連続して休止した前記緯入れノズルに準備水を供給する動作を行う、請求項１又は２に記載の多色ウォータジェット織機による製織方法。

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