発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。以下で参照する全ての米国特許出願公開及び特許、又は一部のみが参照されている場合にはその一部は、組み込まれた主題が本願の記述と矛盾しない範囲で参照により本願に組み込まれ、いずれのこのような矛盾においても本願の記述が優先する。
本発明の記載は、特定の用語及び表現を使用する。本明細書で使用するとき、「あるいは」は、別の明確な実施形態を指す。本明細書で使用するとき、「接触させる」は、物理的接触状態にすることを意味する。「包含する」は、非限定的であり;含む又は有すると同様に、オープンエンドである。「作用的」(Operative)は、機能的に有効であることを意味し、その効果は直接的効果でもよく、あるいは間接的効果でもよい。例えば、反応物質は、その反応において、触媒あり又はなしで、直接的な物理的接触に至らしめられてもよく;物品又はデバイスの構成部品は、「作用的接触」に至らしめられてもよく、これは、直接的な物理的接触、あるいは1つ以上の中間要素を介した間接的接触を包含する。「場合により/任意に」(optionally)とは、存在しないか、あるいは存在することを意味する。分類群及び下位分類群を含む任意のマーカッシュ群は、分類群に含まれる下位分類群を包含し、例えば、「Rはヒドロカルビル又はアルケニルである」では、Rはアルケニルであってもよく、あるいはRは他の下位分類群の中でも、アルケニルを含むヒドロカルビルであってもよい。本明細書で使用されるとき、「し得る」は、選択肢を与えるものであって、必須ではない。巨大分子材料の全ての「分子量」、例えば、ポリマーの数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)は、別途記載のない限り、ゲル透過クロマトグラフィー及びポリスチレン標準物質を用いて測定される。用語「シリコーン」は、線状、分枝状、又は線状と分枝状の混合物のポリオルガノシロキサン巨大分子を包含する。全ての「重量%」(重量パーセント)は、特に断りのない限り、組成物又は配合物を製造するために使用される全ての成分又は構成要素の総重量に基づいており、合計で100重量%になる。冠詞「a」、「an」、及び「the」はそれぞれ、別途記載のない限り、1つ又はそれ以上を指す。本出願中の全ての量、比率、及びパーセンテージは、別途記載のない限り、重量によるものである。本明細書で使用するとき、用語「ラジカル硬化性」は、フリーラジカル硬化機構によって重合可能であることを意味する。硬化機構は、熱硬化又は放射線硬化機構であってもよい。熱硬化機構は、熱ラジカル硬化性材料に熱を加える工程を伴ってもよく、熱ラジカル開始によって又は有機ホウ素開始によって開始されてもよい。有機ホウ素開始は、熱ラジカル硬化性材料に熱を加える代わりに、アミン反応性化合物が添加されたときに、その硬化を開始する場合である。放射線硬化機構は、放射線ラジカル硬化性材料に放射線をかける工程を伴ってもよく、放射線ラジカル開始又は酸化還元反応によって開始されてもよい。したがって、ラジカル硬化性材料は、過酸化物(例えば、有機過酸化物)のようなフリーラジカル開始剤を更に含んでもよく、これは、上記の熱又は放射線によって活性化され得る。ラジカル硬化性材料は、少なくとも1種のラジカル硬化性基を有する分子、又は独立して少なくとも1種のラジカル硬化性基を有する分子の集合で構成される。
本明細書で使用するとき、「ラジカル硬化性基」(例えば、R2)は、少なくとも2個の炭素原子を含有し、かつ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合、又は少なくとも1つのオキシラニルを有する、一価の有機官能基である。典型的には、各ラジカル硬化性基は、独立して、2〜12個の炭素原子、あるいは2〜10個の炭素原子、あるいは2〜8個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子、あるいは2〜4個の炭素原子、あるいは2又は3個の炭素原子、あるいは2又は4個の炭素原子、あるいは3又は4個の炭素原子を有する。典型的には、各ラジカル硬化性基(例えば、各R2)は、独立して、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、及びオキシラニルから独立して選択される基を1〜3個、あるいは1又は2個、あるいは1個、あるいは2個含有する。異なる種類のラジカル硬化性基の例は、脂肪族不飽和ヒドロカルビル基、一価脂肪族不飽和エステル基、及びエポキシ官能性一価有機基である。ラジカル硬化性基が脂肪族不飽和ヒドロカルビル基の例は、非置換脂肪族不飽和ヒドロカルビル基、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ヘキセニル、エチニル、及びプロピニルである。脂肪族不飽和ヒドロカルビル基は、SiH基とのヒドロシリル化反応によるヒドロシリル化硬化性でもある。ラジカル硬化性基である脂肪族不飽和エステル基の例は、アクリレート及びメタクリレート基である。ラジカル硬化性基であるエポキシ官能性一価有機基の例は、オキシラニル及びグリシドキシプロピル基である。
ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)のラジカル硬化性基が脂肪族不飽和ヒドロカルビル基である場合、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、脂肪族不飽和ヒドロカルビル基を含有する第1の反応物質と、SiH基を含有する第2の反応物質とをヒドロシリル化硬化することによって製造されてもよく、その際、第1の反応物質の脂肪族不飽和ヒドロカルビル基のモル量は、第2の反応物質のSiH基のモル量よりも大きい。結果として、第1の反応物質の脂肪族不飽和ヒドロカルビル基の一部はヒドロシリル化反応に関与し、第1の反応物質の脂肪族不飽和ヒドロカルビル基の残りは、存続してラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)のラジカル硬化性基になる。ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)のラジカル硬化性基が脂肪族不飽和エステル基及び/又はエポキシ官能性一価有機基である場合、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、脂肪族不飽和ヒドロカルビル基を含有する第3の反応物質と、SiH基を含有する第4の反応物質とをヒドロシリル化硬化することによって製造されてもよく、その際、第3及び第4の反応物質の少なくとも1つは、更に脂肪族不飽和エステル基及び/又はエポキシ官能性一価有機基を含有する。第3の反応物質の脂肪族不飽和ヒドロカルビル基のモル量は、第4の反応物質のSiH基のモル量と同じかそれ以上であってもよい。結果として、第3の反応物質の脂肪族不飽和ヒドロカルビル基の一部又は全部は、ヒドロシリル化反応に関与し、第3及び/又は第4の反応物質の脂肪族不飽和エステル基及び/又はエポキシ官能性一価有機基は、存続してラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)のラジカル硬化性基になる。
硬化性シリコーン組成物は、種々の機構によって硬化可能であってもよい。典型的には、硬化性シリコーン組成物は、(I)平均で、1分子当たり2個を超えるラジカル硬化性基を有する(例えば、1分子当たり>2R2)分枝状ポリオルガノシロキサン;及び(II)ラジカル開始剤パッケージを含む、ラジカル硬化性シリコーン組成物である。分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、ラジカル硬化性である。場合により、ラジカル硬化性シリコーン組成物は、更に、(III)シリコーン反応性希釈剤、及び/又は1つ以上のその他の任意選択の構成要素を含んでもよい。その他の任意選択の構成要素は、(IV)及び(V)充填剤及び充填剤処理剤、並びに(VI)(VII)及び(VIII)二次縮合硬化構成要素を含んでもよい。更なる任意選択の構成要素としては、(IX)接着促進剤、(X)反応性有機モノマー(又はオリゴマー)、(XI)重合阻害剤、(XII)着色剤、(XIII)溶媒、及び(XIV)腐食防止剤が挙げられる。任意選択の構成要素は、種々の用途、例えば、アセンブリのシール、リッドシール形成(例えば、自動車用リッドシール若しくはマイクロエレクトロニクス用リッドシール)、若しくは端子シーラントの形成等のシーラント用途;又は低温硬化接着剤、ダイ接着用接着剤、若しくは熱伝導性接着剤等の接着剤用途に望ましい特徴を提供し得る。いくつかの実施形態において、硬化性シリコーン組成物及びそれから調製される硬化生成物は、固体粒子状充填剤を含まない、あるいはシリカを含まない、あるいはいかなるヒュームドシリカも含まない、あるいは未処理ヒュームドシリカを含まない、あるいは処理済みヒュームドシリカを含まない。
構成要素(I)は、式:
(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであり、式中、各R1は独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり;各R2は、独立して、ラジカル硬化性基であり、各R3は、独立して、2〜12個の炭素原子を有する二価炭化水素であり、下付き文字mは0〜20であり、下付き文字nは0〜20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり、下付き文字oは50〜1000であり、下付き文字pは0〜100であり、下付き文字qは0〜42であり、ただし、下付き文字の和p+qは2を超え、下付き文字rは0〜42であり、ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、下付き文字sは2を超え100未満である。ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基(例えば、R2)を有する。式(I)の繰返し単位は、従来のポリオルガノシロキサンのQ、T、D及びM単位及び上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に使用されるヒドロシリル化反応によって形成される内部リンカー(R3)である。下付き文字m、n、o、p、q、r、及びsは、独立して、本明細書の定義による有利数又は無理数であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)内でのそれぞれの繰返し単位の平均モル分率を表す。下付き文字mは、独立して、式SiO4/2のQ単位の平均モル分率である。下付き文字nは、独立して、式R1SiO3/2のT型単位の平均モル分率である。下付き文字oは、独立して、式R1 2SiO2/2の第1のD型単位の平均モル分率である。下付き文字pは、独立して、式R2R1SiO2/2の第2のD型単位の平均モル分率である。下付き文字qは、独立して、式R2R1 2SiO1/2の第1のM型繰返し単位の平均モル分率である。下付き文字rは、独立して、式R1 3SiO1/2の第2のM型繰返し単位の平均モル分率である。下付き文字sは、独立して、式R3のアルキレンリンカーの平均モル分率であり、これは上記のT型、D型、又はM型繰返し単位のうち2つに共有結合する。上記式(I)の繰返し単位(下付き文字m、n、o、p、q、及びrで修飾された単位)並びにリンカー(R3)は、便宜上示したものであり、この式は、式(I)に包含される所与の巨大分子がその中に繰返し単位の任意の特定の配列を有することを要求又は表示するものではない。
いくつかの態様において、下付き文字mは>0である。いくつかの態様において、下付き文字nは0である。いくつかの態様において、下付き文字pは0である。いくつかの態様において、mは>0であり、nは0である。いくつかの態様において、mは>0であり、nは0であり、pは0であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は式(SiO4/2)m(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは1〜20であり;R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、r、及びsは上記の定義による。いくつかの実施形態において、mは1であり;oは100〜1,100、あるいは145〜1049であり;qは2〜4、あるいは2.5〜3.6、あるいは3〜3.5であり;rは0.4〜1.1、あるいは0.5〜1であり;sは2〜6、あるいは2.5〜6、あるいは3〜3.6である。いくつかの態様において、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、実施例で後述するPol1、Pol2、Pol3、Pol4、Pol6、及びPol7のいずれか1つである。
いくつかの態様において、下付き文字mは0である。いくつかの態様において、下付き文字nは>0である。いくつかの態様において、下付き文字pは0である。いくつかの態様において、下付き文字rは0である。いくつかの態様において、mは0であり、pは0であり、rは0であり、nは>0であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R3)sであり、式中、下付き文字nは1〜20であり;R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、及びsは上記の定義による。いくつかのかかる態様において、nは、0.7〜1.1、あるいは0.75〜0.9、あるいは0.8であり;oは、450〜549、あるいは475〜525、あるいは490〜510であり:qは2.0〜2.9、あるいは2.1〜2.8、あるいは2.3〜2.5であり;sは、2.0〜2.9、あるいは2.1〜2.8、あるいは2.3〜2.5である。いくつかの態様において、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、実施例で後述するPol5である。
いくつかの態様において、下付き文字mは>0であり、下付き文字nは>0であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは>0〜<20であり、下付き文字nは>0〜<20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり;R1、R2、R3、並びに下付き文字o、p、q、r、及びsは上記の定義による。いくつかのかかる態様において、下付き文字pは0であり、あるいは下付き文字rは0であり、あるいはpは0であり、かつrは0である。
R1に好適な一価有機基、及びそれとは無関係に一価有機基であるその他の「R」基としては、ヒドロカルビル基、例えば、アルキル、シクロアルキル、及びアリールが挙げられる。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシル等の(C1〜C20)アルキル;シクロヘキシル等の(C3〜C10)シクロアルキル;並びに、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチル等の(C6〜C12)アリールである。脂肪族不飽和を有する基は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(C=C)又は少なくとも1つの炭素−炭素三重結合(C≡C)を含有する有機基を意味する。R2に好適なラジカル硬化性基としては、脂肪族不飽和一価ヒドロカルビル基、例えば、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。アルケニル基の例は、ビニル、アリル、プロペニル、及びブテニル等であり;アルキニル基の例は、エチニル及びプロピニル等である。あるいは、R2は、アクリレート基又はメタクリレート基を含有する一価の有機基である。アクリレート基は、式H2C=CHCO2−のものである。メタクリレート基は、次式のいずれか1つのものである:H2C=CCH3CO2−、シスCH3HC=CHCO2−、及びトランスCH3HC=CHCO2−。R3に好適な二価有機基、及びそれとは無関係に非環式二価有機基であるその他の「R」基は、2〜12個の炭素原子であり、直鎖又は分枝鎖である。R3のかかる非環式二価有機基の例は、(C2〜C12)アルキレン、あるいは(C7〜C12)アルキレン、あるいは(C2〜C6)アルキレン、あるいは(C2〜C4)アルキレン、あるいはエチレン(すなわち、CH2CH2)、あるいはプロピレン(すなわち、CH2CH2CH2)、あるいはプロペニレン(すなわち、CH=CHCH2)、あるいはメチルエチレン(すなわち、CH2CH(CH3))、あるいはブチレン(すなわち、CH2CH2CH2CH2)、あるいはヘキシレン(すなわち、CH2CH2CH2CH2CH2CH2)である。
ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を製造するための方法又はプロセスは、(a)平均で、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b)1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の反応の生成物を与えてもよい。上記反応は、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下で実施されてもよい。場合により、反応はまた、(d)異性体濃度低下剤及び/又は(e)重合阻害剤の存在下で実施されてもよく、場合により、反応後に(f)触媒阻害剤が添加されてもよい。構成要素(a)は、ヒドロシリル化硬化性である。構成要素(b)は、別々に、ヒドロシリル化硬化性及びラジカル硬化性である。反応は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を生じ、これはラジカル硬化性材料である。
構成要素(a)、(b)、及び(c)、並びに場合により任意選択の構成要素(d)及び(e)は、一緒にブレンドされる。次いで、温度を35℃〜100℃、あるいは50℃〜85℃に上げることによって反応を開始してもよく、この温度を、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)によって約2170cm−1で観察されるSi−HピークがFT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得されてもよい)のバックグラウンドノイズまで減少することで判断して、(FT−IR検出可能な)Si−Hの全てが反応するまで維持する。別の方法として又は追加して、Si−Hの量を、後述のGC試験方法1を用いて定量的に測定してもよい。次に、所望であれば、得られた混合物に任意選択の触媒阻害剤(f)を添加して、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤(f)の導入は、構成要素(a)、(b)、及び(c)、並びに、存在する場合には任意選択の構成要素(d)及び(e)の反応混合物の温度を最低反応温度の50℃よりも低温、例えば室温(23℃)まで低下させた後に行われる。特定の実施形態において、未反応の構成要素、及び任意の揮発性副生成物は、23℃〜100℃未満、あるいは23℃〜85℃未満の温度で真空ストリッピングすることによって、反応生成物から分離されてもよい。合成されたラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、後で使用するために保管されてもよい。その後のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の使用は、後述のようにラジカル硬化反応における反応物質としての使用であってもよい。
構成要素(a)は、構成要素(b)の脂肪族不飽和基とのヒドロシリル化反応を起こすことができるケイ素結合水素基(SiH基)を、平均で1分子当たり2個を超えて有する分枝状ポリオルガノシロキサンである。構成要素(a)は、ヒドロシリル化硬化性である。構成要素(a)は、同じ分枝状ポリオルガノシロキサン分子の集合を含んでもよい。あるいは、構成要素(a)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上の分枝状ポリオルガノシロキサンを含む組合せを含んでもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
本明細書に記載される構成要素(a)の構造は、構成要素(b)と反応したときに、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)として上に記載された構造が合成されるようなものである。所望の場合には、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を含有する反応生成物は、後で使用するために保管されてもよく、又はラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が単離されて保管されてもよい。構成要素(a)の構造は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の構造とは多くの点で異なっており、例えば、構成要素(a)の構造は、1分子当たり平均で>2個のSiH基を含有するのに対し、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の構造は、FT−IR(スペクトルは各32回のスキャンを用いて取得してもよい)によって検出できるSiH基が少ないか存在しない;構成要素(a)の構造には、構成要素(b)から誘導された部分がないのに対し、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の構造は、構成要素(a)と(b)との間のヒドロシリル化反応によって構成要素(b)から誘導された部分を有する。構成要素(a)に好適なポリオルガノシロキサンは、市販されており、又は所望の構造を与えると予想される任意の手段によって製造されてもよい。
構成要素(a)は、(a1)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンを、(a2)2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキサンと、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることによって、別々のプロセスで製造されてもよい。(a2)オルガノハイドロジェンシロキサンは、(a1)の脂肪族不飽和基に対して過剰のSiH基を有し、そのため(a2)オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基のいくつかは、(a2)オルガノハイドロジェンシロキサンと(a1)分枝状ポリオルガノシロキサンとの反応の間そのまま残り、その結果製造された構成要素(a)は、平均で1分子当たり少なくとも2個のSiH基を有する。
構成要素(a1)、(a2)、及び(c)は、混合等によって、一緒にブレンドされる。次いで、混合しながら、温度を30℃〜150℃、あるいは50℃〜100℃に上げることによって、反応が開始されてもよい。反応に有用な時間及び温度は、構成要素の実際の構造及び使用される構成成分(c)のレベルに応じて変わるであろう。特定の実施形態において、未反応構成要素(a2)の残量を、真空ストリッピングによって混合物から除去してもよい。有効なストリッピングの条件は、構成要素(a2)の実際の組成物に応じて変わるであろう。生成した分枝状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)は、後で使用するために保管されてもよく、又は直ちに更に処理してラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を製造してもよい。
本明細書に記載の構成要素(a1)の構造は、反応完了時に、構成要素(a)の所望の構造が合成されるようなものである。構成要素(a1)は、同じ分枝状ポリオルガノシロキサン分子の集合を含んでもよい。あるいは、構成要素(a1)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上の分枝状ポリオルガノシロキサンを含む組合せを含んでもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。構成要素(a2)のケイ素結合水素の位置は、限定されておらず、側枝及び/又は末端でもよいが、好ましくは末端である。構成要素(a2)は、環状、分岐、又は線状であってよい。構成要素(a2)は、同じオルガノハイドロジェンシロキサン分子の集合を含んでもよい。あるいは、構成要素(a)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む組合せを含んでもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。構成要素(a2)は、2〜150の重合度(dP)を有することができる。構成要素(a2)中のケイ素結合水素原子の構成要素(a1)中の脂肪族不飽和基に対するモル比は、5:1〜1.5:1、あるいは3:1〜2:1であってもよい。構成要素(a1)の量に対して過剰な量の構成要素(a2)は、生成物の構成要素(a)から分離されてもされなくてもよいが、いくつかの態様においては、分離される。かかる分離は、例えば、真空下でのストリッピングによるものであってもよい。製造された構成要素(a)は、続いて、上記のようにラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に使用できる。
あるいは、構成要素(a)は、構成要素(b)及び構成要素(c)、並びに場合により上記構成要素(d)及び(e)の存在下における、上記の構成要素(a1)と(a2)との反応によってその場で製造され、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が直接製造されてもよい。この態様において、構成要素(a1)、(a2)、(b)、(c)、並びに場合により(d)及び(e)は、一緒にブレンドされる。次いで、混合しながら温度を35℃〜100℃、あるいは50℃〜85℃に上げることによって反応を開始してもよく、この温度を、FT−IRによって約2170cm−1で観察されるSi−HピークがFT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得されてもよい)のバックグラウンドノイズまで減少することで判断して、Si−Hの全てが反応するまで維持する。次に、得られた混合物に任意選択の触媒阻害剤(f)を添加して、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤(f)の導入は、(a1)、(a2)、(b)、(c)、並びに場合により(d)及び(e)の反応混合物の温度を最低反応温度の50℃よりも低温、例えば室温まで、低下させた後に行われる。特定の実施形態において、未反応の構成要素は、100℃未満、あるいは85℃未満の温度で真空ストリッピングすることによって、生成物から分離されてもよい。生成したラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、後で使用するために保管されてもよい。
構成要素(b)は反応種である。この反応種は、構成要素(a)のSiH基と反応してラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)内のラジカル硬化性基を提供することができる任意の種であってもよい。構成要素(b)は、別々に、ヒドロシリル化硬化性及びラジカル硬化性である。反応種は、構成要素(a)のケイ素結合水素原子との付加反応(例えば、ヒドロシリル化反応)を起こすことができる脂肪族不飽和有機基を1分子当たり平均で少なくとも1個有する。構成要素(b)は、1分子当たり1個以上のラジカル硬化性基を更に含む。ラジカル硬化性基は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)に表れそれによって分枝状ポリオルガノシロキサン(上記のプロセスによって調製された)をラジカル硬化性にするように、構成要素(b)の構成要素(a)との反応中に存続する官能性(反応性)基(例えば、R2)である。構成要素(b)のラジカル硬化性基は、任意のラジカル重合可能な基であってもよい。いくつかの態様において、構成要素(b)のラジカル硬化性基は、アクリレート基及びメタクリレート基及びこれらの組合せから選択されてもよい。あるいは、構成要素(b)のラジカル硬化性基は、アクリレート、エポキシ、メタクリレート、及びこれらの任意の2つ以上の組合せから選択されてもよい。あるいは、構成要素(b)のラジカル硬化性基は、エポキシ、及びその任意の2つ以上の組合せから選択されてもよい。いくつかの態様において、ラジカル硬化性基は、全てアクリレート、あるいはメタクリレート、あるいはエポキシ、あるいは上記ラジカル硬化性基の少なくとも2種であってもよい。(b)において好適な脂肪族不飽和有機基としては、ビニル、アリル、プロピニル、ブテニル、及びヘキセニルが挙げられる。
例えば、構成要素(b)は、式:R4 jSiR2 kR1 (4−j−k)に従うシランを含んでもよく、式中、下付き文字j及びkのそれぞれは、下付き文字(j+k)の和が4以下であることを条件として、独立して1〜3である。各R4は、独立して、脂肪族不飽和有機基であり、各R2は、独立して、ラジカル硬化性基(例えば、アクリレート基又はメタクリレート基を含有する一価の有機基)であり、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基である。R4に好適な脂肪族不飽和有機基としては、ビニル、アリル、プロピニル、ブテニル、及びヘキセニルが挙げられる。R1及びR2のそれぞれは、独立して、上記定義のとおりであってもよい。
あるいは、構成要素(b)は、有機化合物(ケイ素原子を含有しない)を含んでもよい。構成要素(b)のための有機化合物は、1分子当たり平均で1個〜2個の、アルケニル基又はアルキニル基等の脂肪族不飽和有機基、並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有してもよい。あるいは、ラジカル硬化性基は、エポキシ、及びその任意の2つ以上の組合せから選択されてもよい。いくつかの態様において、ラジカル硬化性基は、全てアクリレート、あるいはメタクリレート、あるいはエポキシ、あるいは上記ラジカル硬化性基の少なくとも2種であってもよい。構成要素(b)に好適な有機化合物の例としては、アリルアクリレート及びアリルメタクリレート(AMA)、並びにこれらの組合せが挙げられる。
ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を合成するプロセス又は方法において、反応混合物に使用される構成要素(b)の量は、構成要素(a)の種類、量、及びSi−H含有量、並びに選択される構成要素(b)の種類等の様々な要因によって決まる。構成要素(b)の量は、ケイ素結合水素の総モル数の、構成要素(a)の脂肪族不飽和基の総モル数に対する比が0.7/1〜1.2/1、あるいは0.8/1〜1.1/1となるのに十分である(ただし、モル比は上記の定義による)。ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に使用される反応混合物中には、重量%ベースで、構成要素(b)よりも多くの構成要素(a)が存在する。構成要素(a)+(b)の総重量に対して、それぞれ、構成要素(a)は>50重量%〜99重量%であってもよく、構成要素(b)は<50重量%〜1重量%であってもよい。
構成要素(c)はヒドロシリル化触媒であり、これは構成要素(a)と(b)とのヒドロシリル化反応、又は他の実施形態では構成要素(a1)、(a2)、及び(b)のヒドロシリル化反応を促進する。構成要素(c)は、構成要素(a)及び(b)の反応を促進するのに十分な量で添加されてよく、この量は、全てラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を合成するプロセス又は方法において反応混合物に使用される全ての構成要素の総重量を基準にして、例えば、0.1百万分率(ppm)〜1000ppmの白金族金属、あるいは1ppm〜500ppm、あるいは2ppm〜200、あるいは5ppm〜150ppmの白金族金属を提供するのに十分なものであり得る。
構成要素(c)に好適なヒドロシリル化触媒は、当該技術分野において一般的に知られており、市販されている。構成要素(c)は、白金(Pt)、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属から選択される白金族金属、又はこれらの有機金属化合物、又はこれらの組合せを含んでもよい。構成要素(c)の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金等の化合物、上記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造でマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されてもよい。あるいは、触媒は1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体を含んでもよい。触媒が、低分子量オルガノポリシロキサンとの白金錯体である場合、触媒の量は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を合成するプロセス又は反応において反応混合物に使用される構成要素の総重量に対して0.04重量%〜0.4重量%であってもよい。
構成要素(c)に好適なヒドロシリル化触媒は、例えば、米国特許第3,159,601号;同第3,220,972号;同第3,296,291号;同第3,419,593号;同第3,516,946号;同第3,814,730号;同第3,989,668号;同第4,784,879号;同第5,036,117号;及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、当該技術分野において一般的に知られており、米国特許第4,766,176号、及び米国特許第5,017,654号に例示されているとおりである。
任意選択の構成要素(d)は、異性体濃度低下剤である。特定の実施形態において、異性体濃度低下剤はカルボン酸化合物を含む。カルボン酸化合物は、(1)カルボン酸、(2)カルボン酸の無水物、(3)カルボン酸シリルエステル、並びに/又は(4)この方法の反応又は反応における分解により上述のカルボン酸化合物(すなわち(1)、(2)、及び/若しくは(3))を生成する物質を含み得る。これらのカルボン酸化合物の1つ又はそれ以上の混合物が、異性体濃度低下剤として利用されてもよい。例えば、カルボン酸シリルエステルは、カルボン酸の無水物と組合せて異性体濃度低下剤として利用されてもよい。加えて、1種以上のカルボン酸化合物の混合物が異性体濃度低下剤として利用されてもよい。例えば、2種の異なるカルボン酸シリルエステルが合わせて利用されてもよく、又は2種のカルボン酸シリルエステルがカルボン酸の無水物と合わせて利用されてもよい。
異性体濃度低下剤(d)が(1)カルボン酸を含む場合、カルボキシル基を有する任意のカルボン酸が利用されてもよい。カルボン酸の好適な例として、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、及びジカルボン酸が挙げられる。飽和又は不飽和脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、ハロゲン化ヒドロカルビル基、水素原子等は通常、これらのカルボン酸においてカルボキシル基以外の部分として選択される。好適なカルボンサンの具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、及びステアリン酸等の飽和モノカルボン酸;シュウ酸及びアジピン酸等の飽和ジカルボン酸;安息香酸及びパラフタル酸等の芳香族カルボン酸;カルボン酸のヒドロカルビル基の水素原子がハロゲン原子又はオルガノシリル基で置換されたカルボン酸、例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、パラクロロ安息香酸、及びトリメチルシリル酢酸;アクリル酸、メタクリル酸、及びオレイン酸等の不飽和脂肪酸;並びに、カルボキシル基に加えてヒドロキシ基、カルボニル基、又はアミノ基を有する化合物、すなわち、乳酸等のヒドロキシ酸、アセト酢酸等のケト酸(オキソ酸)、グリオキシル酸等のアルデヒド酸、及びグルタミン酸等のアミノ酸が挙げられる。
異性体濃度低下剤(d)が(2)カルボン酸の無水物を含む場合、カルボン酸の酸無水物の好適な例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸及び無水安息香酸が挙げられる。これらのカルボン酸の無水物は、塩化アセチル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、及び他のカルボン酸ハロゲン化物、酢酸亜鉛及び酢酸タリウム等のカルボン酸金属塩、並びにプロピオン酸(2−ニトロベンジル)のような光又は熱によって分解されるカルボン酸エステルを含む反応系における反応又は分解により得ることができる。
異性体濃度低下剤(d)が(3)カルボン酸シリルエステルを含む実施形態において、カルボン酸シリルエステルの好適な例は、トリアルキルシリル化カルボン酸、例えば、ギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル及びトリフルオロ酢酸トリメチルシリル;並びにジ−、トリ−、又はテトラカルボキシシリレート、例えば、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、及びシリコンテトラベンゾエートである。
異性体濃度低下剤(d)が(1)及び(2)、あるいは(1)及び(3)、あるいは(2)及び(3)を含む態様において、それぞれ(1)、(2)、及び(3)は、上記のとおりである。
異性体濃度低下剤(d)は、存在する場合、典型的には、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を合成するプロセス又は方法におけるラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の理論的総重量に対して、0.001〜1重量%、あるいは0.01〜0.1重量%の量で利用される。異性体濃度低下剤として市販されているカルボン酸シリルエステルの例は、いずれもDow Corning Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能であって、エチルトリアセトキシシラン(30%〜<50%)、メチルトリアセトキシシラン(30%〜<50%)、メチル−エチルアセトキシシランのオリゴマー(1%〜<5%)、及び無水酢酸(0.1%〜<1%)のアセトキシシラン混合物を含む、DOW CORNING(登録商標)ETS 900又はXIAMETER(登録商標)OFS−1579シランである。
異性体濃度低下剤(d)は、上記のように0.001〜1重量%等の十分な量で添加されて、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)のSi−H基の反応種(b)の脂肪族不飽和基へのα付加を、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)のSi−H基の反応種(b)の脂肪族不飽和基へのβ付加よりも有利に促進する。したがって、β付加異性体反応生成物の濃度は、反応が異性体濃度低下剤(d)の存在下で行われた場合、異性体濃度低下剤(d)が存在しないこと以外は同条件の下でのβ付加異性体反応生成物の濃度よりも低い。β位付加は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)のその後の更なる反応をもたらし、Si−OH及び関連する水酸化ケイ素生成物(D(Oz)及び/又はT(Oz)単位と呼ばれることがある)を生じる場合がある。いかなる理論にも束縛されるものではないが、Si−OHの生成は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)の湿気硬化を速めると考えられる。生成するD(Oz)単位の相対量は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(a)のSi−H基の、反応種(b)の脂肪族不飽和基へのβ位付加の量と相関し、NMRによって測定することができる。
十分な量の異性体濃度低下剤(d)を利用して本発明のプロセス又は方法の態様に従って製造されたラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、生成したラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン中に存在するD(Oz)単位の量(NMRによって測定)の低減を、特定の実施形態においては少なくとも10%の低減で生じ、これは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのSi−H基の、反応種(b)の脂肪族不飽和基へのβ付加の低減、特定の実施形態においては少なくとも10%の低減に相当する。
任意選択の構成要素(e)は重合阻害剤であり、これはプロセス安全性及び貯蔵寿命のために使用されてもよい。不飽和基(例えば、メタクリレート、アクリレート、ビニル又はアリル)はラジカル硬化性であり、ラジカルプロセスによって早期に自己重合する可能性がある。かかる早期ラジカル重合プロセスは、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造のプロセスで起こることがあり、そこに重合阻害剤を添加することによって阻害できる。アクリレート及びメタクリレート基のラジカル重合の阻害に好適な重合阻害剤の例としては、2,6,−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DBAP)、ヒドロキノン(HQ);4−メトキシフェノール(MEHQ);4−エトキシフェノール;4−プロポキシフェノール;4−ブトキシフェノール;4−ヘプトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);ヒドロキノンモノベンジルエーテル;1,2−ジヒドロキシベンゼン;2−メトキシフェノール;2,5−ジクロロヒドロキノン;2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;2−アセチルヒドロキノン;ヒドロキノンモノベンゾエート;1,4−ジメルカプトベンゼン;1,2−ジメルカプトベンゼン;2,3,5−トリメチルヒドロキノン;4−アミノフェノール;2−アミノフェノール;2−N,N−ジメチルアミノフェノール;2−メルカプトフェノール;4−メルカプトフェノール;カテコールモノブチルエーテル;4−エチルアミノフェノール;2,3−ジヒドロキシアセトフェノン;ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル;2−メチルチオフェノール;t−ブチルカテコール;ジ−tert−ブチルニトロキシド;ジ−tert−アミルニトロキシド;2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ;2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸;2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ;4−ニトロソフェノラートの塩;2−ニトロソフェノール;4−ニトロソフェノール;ジメチルジチオカルバミン酸銅;ジエチルジチオカルバミン酸銅;ジブチルジチオカルバミン酸銅;サリチル酸銅;メチレンブルー;鉄;フェノチアジン(PTZ);3−オキソフェノチアジン;5−オキソフェノチアジン;フェノチアジンダイマー;1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,4−ジメチルペンチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びその塩;酸化窒素;ニトロベンゼン;p−ベンゾキノン;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート);ジラウリルチオジプロピオネート;ジステアリルチオジプロピオネート;ジトリデシルチオジプロピオネート;テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;チオジメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;イソトリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;N,N’−ヘキサメチル(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド);イソ−オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’−エチリデンビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール);1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール;トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート;トリス−(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン;又はこれらの異性体;これらの2つ以上の組合せ;又は上記の1つ以上と酸素分子との組合せが挙げられる。存在する場合、重合阻害剤は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に使用される反応混合物の総重量に対して50ppm〜1,000ppmの量で、硬化性シリコーン組成物に添加されてもよい。
構成要素(f)は触媒阻害剤であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の合成後にヒドロシリル化触媒構成要素(c)を不活性化し、それによって、生成するラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を安定化させるために、反応混合物に添加される。好適な触媒阻害剤(f)のいくつかの例としては、エチレン性又は芳香族性不飽和アミド、アセチレン化合物、例えば、2−エチニル−イソプロパノール、2−エチニル−ブタン−2−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン;3,5−ジメチル−1−ヘキセン−1−イン;3−エチル−3−ブテン−1−イン若しくは3−フェニル−3−ブテン−1−イン;エチレン性不飽和イソシアネート;シリル化アセチレン性アルコール、例えば、トリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、ジメチル−ビス−(3−メチル−1−ブチン−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、及び((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン;不飽和炭化水素ジエステル;共役エン−イン、例えば、2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、及び3−フェニル−3−ブテン−1−イン;オレフィン性シロキサン、例えば、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、又は1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン;上記の共役エン−インと上記のオレフィン性シロキサンとの混合物;ヒドロペルオキシド;ニトリル及びジアジリジン;不飽和カルボン酸エステル、例えば、ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、及びビス−2−メトキシ−1−メチルエチルマレエート、モノ−オクチルマレエート、モノ−イソオクチルマレエート、モノ−アリルマレエート、モノ−メチルマレエート、モノ−エチルフマレート、モノ−アリルフマレート、及び2−メトキシ−1−メチルエチルマレエート;フマレート、例えば、ジエチルフマレート;アルコールがベンジルアルコール又は1−オクタノール及びエテニルシクロヘキシル−1−オールであるフマレート/アルコール混合物;窒素含有化合物、例えば、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール;類似のリン含有化合物、例えば、トリフェニルホスフィン;硫黄含有化合物;ヒドロペルオキシ化合物;又はこれらの組合せが挙げられる。
触媒阻害剤(f)は、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化するのに有効な量で使用される。この量は、ヒドロシリル化触媒(c)の種類及び量並びに選択される阻害剤(f)の種類に応じ変わるが、その量は、構成要素(I)ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンの100重量部当たり0.001〜3重量部、あるいは0.01〜1重量部であってもよい。
あるいは、第2の実施形態に従ってラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を製造するための方法又はプロセスは、(a’)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b’)1分子当たり少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種とを含む、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下、並びに場合により(d)異性体濃度低下剤の存在下、及び場合により(e)重合阻害剤の存在下での反応で、場合によりその後触媒阻害剤(f)が添加される反応の生成物を含んでもよい。
構成要素(a’)、(b’)、及び(c)、並びに場合により(d)及び(e)は、一緒にブレンドされる。次いで、温度を35℃〜100℃、あるいは50℃〜85℃に上げることによって反応を開始してもよく、この温度は、FT−IRによって約2170cm−1で観察されるSi−HピークがFT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得されてもよい)のバックグラウンドノイズまで減少することで判断して、Si−Hの全てが反応するまで維持する。次に、所望であれば、得られた混合物に任意選択の触媒阻害剤(f)を添加して、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤(f)の導入は、(a’)、(b’)、(c)、並びに場合により(d)及び(e)の反応混合物の温度を、50℃よりも低温、例えば室温まで、低下させた後に行われる。特定の実施形態において、未反応の構成要素は、100℃未満、あるいは85℃未満の温度で真空ストリッピングすることによって、生成物から分離されてもよい。生成したラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、後で使用するために保管されてもよい。
構成要素(a’)は、構成要素(b’)のケイ素結合水素基とのヒドロシリル化反応を起こすことができる脂肪族不飽和基を平均で1分子当たり2個を超えて有する分枝状ポリオルガノシロキサンである。構成要素(a’)は、同じ分枝状ポリオルガノシロキサン分子の集合を含んでもよい。あるいは、構成要素(a)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上の分枝状ポリオルガノシロキサンを含む組合せを含んでもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
本明細書に記載される構成要素(a’)の構造は、構成要素(b’)と反応したときに、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)として上に記載された構造が合成されるようなものである。構成要素(a’)に好適なポリオルガノシロキサンは、一般的に市販されているが、上記構造を与えると予想される任意の手段によって製造されてもよい。
反応種(b’)は、ケイ素結合水素(すなわち、Si−H基)とラジカル硬化性基との両方を1つの分子内に含む。反応種(b’)は、分枝状ポリオルガノシロキサン中のラジカル硬化性基を提供することができる任意の化学種であってよい。反応種(b’)は、構成要素(a’)の脂肪族不飽和基との付加反応(例えば、ヒドロシリル化反応)を経ることができるケイ素結合水素原子を平均で1分子当たり少なくとも1個有する。構成要素(b’)は、1分子当たり1個以上のラジカル硬化性基を更に含む。ラジカル硬化性基は、分枝状ポリオルガノシロキサン(上記のプロセスによって調製された)をラジカル硬化性にする官能(反応)基である。構成要素(b’)におけるラジカル硬化性基は、アクリレート基及びメタクリレート基並びにこれらの組合せから選択されてもよい。あるいは、構成要素(b’)におけるラジカル硬化性基は、アクリレート、アルコキシ、エポキシ、メタクリレート、及びこれらの組合せから選択されてもよい。
例えば、構成要素(b’)は、式:R5 jSiR2 kR1 (4−j−k)のシランを含んでもよく、式中、下付き文字j及びkのそれぞれは、下付き文字(j+k)の和が4以下であることを条件として、独立して1〜3である。各R5は、独立して、水素原子であるか又はケイ素結合水素原子を含有する一価の有機ケイ素基であり、各R2は、独立して、ラジカル硬化性基(例えば、アクリレート基及びメタクリレート基を含有する一価の有機基)であり、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基である。R1及びR2のそれぞれは、独立して、上記定義のとおりであってよい。
あるいは、構成要素(b’)は、式:H(R1 2SiO)tR1 2Si−R3−O−COC(R’)=CH2のシロキサン化合物であってもよく、式中、各R1は、独立して、上記のように脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、R3は2〜12個の炭素原子を有する二価の炭化水素である。R’はH又はCH3であり、下付き文字tは、0〜20、あるいは0、あるいは1〜20の値を有する。
構成要素(c)、及び任意選択の構成要素(d)、(e)及び(f)は、上記の実施形態に記載された同様の名称の構成要素と同じである。
構成要素(II)は、ラジカル開始剤である。ラジカル開始剤(II)は、加熱されるとラジカル硬化反応の開始及び継続に有用なラジカル種を発生する、熱ラジカル開始剤であってもよい。熱ラジカル開始剤としては、ジクミルペルオキシド、n−ブチル4,4’−ビス(ブチルペルキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド及び2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン(Luperox(登録商標)531M80);2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン;2,4−ペンタンジオンペルオキシド(Luperox(登録商標)224)、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(Luperox(登録商標)101)、2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、2−ブタノンペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド(Luperox(登録商標)DTA(登録商標))、ラウロイルペルオキシド(Luperox(登録商標)LP)、tert−ブチルヒドロペルオキシド;tert−ブチルペルアセテート;tert−ブチルペルオキシベンゾエート;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジクロロベンゾイルペルオキシド(R.T.Vanderbilt Company,Inc(Norwalk,Connecticut,USA)からVarox(登録商標)DCBPとして入手可能);ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロプロピル)ベンゼン、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルペロキシ)バレレート、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサンノエート;tert−ブチルクミルペルオキシド;ジ(4−tert−ブチルシクロへキシル)ペルオキシジカーボネート(Perkadox16として入手可能);ジセチルペルオキシジカーボネート;ジミリスチルペルオキシジカーボネート;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ジオクタノイルペルオキシド;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシピバレート;及びこれらの組合せが挙げられる。
こうした熱ラジカル開始剤の例は、以下の商標名で市販されている:Arkema,Inc.(Philadelphia,Pennsylvania,U.S.A.)より販売されているLuperox(登録商標);Akzo Nobel Polymer Chemicals LLC(Chicago,Illinois,U.S.A.)より販売されているTrigonox及びPerkadox、E.I.duPont deNemours and Co.(Wilmington,Delaware,USA)より販売されているVAZO;R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Connecticut,U.S.A.)より販売されているVAROX(登録商標);及びSyrgis Performance Initiators,Inc.(Helena,Arkansas,U.S.A.)より販売されているNorox。
あるいは、硬化剤は、有機ボランアミン錯体のような室温官能性ラジカル開始剤を含んでもよく、これは、場合により加熱を使用してもよいが、熱処理なしでラジカル硬化反応の開始及び継続に有用なラジカル種を発生し得る。有機ボランアミン錯体は、有機ボランと、周囲条件で錯体を安定にする好適なアミンとを組合せることによって形成される錯体である。有機ボランアミン錯体は、有機ボランアミン錯体をアミン反応性化合物(後述)と接触させること、及び/又は有機ボランアミン錯体を加熱することによって活性化された後で、構成要素(I)の重合又は架橋を開始することが可能である。有機ボランアミン錯体の例は、トリアルキルボランとアミンとから形成されるアルキルボランアミン錯体である。有機ボランアミン錯体におけるホウ素原子1個当たりの窒素基のモル比は変動し得るが、最適なモル比は、B原子1個当たり1〜10個の窒素含有官能基であり得る。有機ボランアミン錯体の形成に有用なトリアルキルボランの例としては、式B−R6 3のトリアルキルボランが挙げられ、式中R6は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基のような、非官能性の一価有機基を表す。R6のヒドロカルビル基は、線状でも分枝状でもよく、脂肪族でも芳香族でもよい。かかるトリアルキルボランのいくつかの例として、トリメチルボラン、トリ−n−ブチルボラン、トリ−n−オクチルボラン、トリ−sec−ブチルボラン、トリドデシルボラン、及びフェニルジエチルボランが挙げられる。
有機ボラン化合物との有機ボランアミン錯体を形成するために有用なアミンのいくつかの例として、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、及びイソホロンジアミンが挙げられる。有機ボランアミン錯体を形成するために有用なアミンの他の例は、米国特許第6,777,512号(‘512特許)並びに米国特許第6,806,330号に記載されている。
有機ボランアミン錯体を形成するためにケイ素含有アミンを使用することができ、これには、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、アミノプロピルシラントリオール、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキセトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、及び(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレン−トリアミン等の1つ以上のケイ素含有アミンが含まれる。
アミン官能性ポリオルガノシロキサンは、有機ボランアミン錯体の形成に有用であり、これには、アミン官能性ポリジオルガノシロキサン及びアミン官能性ポリオルガノシロキサン樹脂等の1つ以上のアミン官能性ポリオルガノシロキサンが含まれる。かかる態様において、アミン官能性ポリオルガノシロキサンは、3−アミノプロピル、2−アミノエチル、アミノメチル、6−アミノヘキシル、11−アミノウンデシル、3−(N−アリルアミノ)プロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチル、p−アミノフェニル、2−エチルピリジン、及び3−プロピルピロール等の少なくとも1つのアミン官能基を含有する。
アミン官能性ポリオルガノシロキサンの具体的な追加例として、末端及び/又はペンダントアミン官能性ポリジメチルシロキサンオリゴマー及びポリマー、ポリジメチルシロキサン及びポリ(3,3,3トリフルオロプロピル−メチルシロキサン)の末端及び/又はペンダントアミン官能性ランダム、グラフト及びブロックコポリマー及びコオリゴマー、ポリジメチルシロキサン及びポリ(6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロヘキシル(nonfluorohexyl)−メチルシロキサン)の末端及び/又はペンダントアミン官能性ランダム、グラフト及びブロックコポリマー及びコオリゴマー、並びにポリジメチルシロキサン及びポリフェニルメチルシロキサンの末端及び/又はペンダントアミン官能性ランダム、グラフト及びブロックコポリマー及びコオリゴマーが挙げられる。
有機ボランアミン錯体を形成するための窒素含有化合物として、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、窒素含有ポリオルガノシロキサン、及び少なくとも1個の基がイミダゾリル、アミジン、又はウレイド官能基であるポリオルガノシロキサン樹脂も有用である。アミンがポリマーである場合、その分子量は、それによる硬化性シリコーン組成物の硬化又は重合を可能にするのに十分に高い濃度のホウ素を有機ボランアミン錯体中に維持するような値となり得ることを除き、限定されない。例えば、2液型(two-part)硬化性シリコーン組成物において、有機ボランアミン錯体を含有する部分は、ラジカル開始剤として使用され、硬化性シリコーン組成物の他の構成要素で希釈されてもよく、又は有機ボランアミン錯体のみからなってもよい。
有機ボランアミン錯体が硬化剤として使用される場合、それを含有する硬化性シリコーン組成物は、有機ボランアミン錯体と混合して酸素化環境に曝露したときに硬化性シリコーン組成物の重合又は架橋を開始できるアミン反応性化合物を更に含んでもよい。アミン反応性化合物は、有機ボランアミン錯体を活性化する可能性があり、更に得られる有機ボランアミン錯体は重合又は架橋を開始する可能性があるという点で、共触媒として機能し得る。アミン反応性化合物の存在により、重合又は架橋の開始が、有機ボランアミン錯体の解離温度より低い温度(室温以下等)で起こることが可能となる。酸素の存在下での貯蔵安定性を実現するために、有機ボランアミン錯体及びアミン反応性化合物は、物理的に又は化学的に互いに単離されていてもよい。例えば、アミン反応性化合物を含有する硬化性シリコーン組成物を、多液型(multiple-part)組成物として有機ボランアミン錯体とは別々に包装することによって、空気中で安定にすることができる。あるいは、有機ボランアミン錯体、アミン反応性化合物、又は両方を、カプセル化すること、又は硬化性シリコーン組成物の別々の相において送達することができる。これは、有機ボランアミン錯体、アミン反応性化合物の一方又は両方を固体形態で導入して、有機ボランアミン錯体とアミン反応性化合物との密接混合を防止することによって達成することができる。硬化性シリコーン組成物の硬化は、(a)組成物を、固相構成要素若しくは封入された若しくは別の相の有機ボランアミン錯体及び/若しくはアミン反応性化合物のカプセル化剤の軟化温度より高い温度で加熱することによって、又は(b)カプセル化された若しくは別の相の有機ボランアミン錯体及び/若しくはアミン反応性化合物を、有機ボランアミン錯体及びアミン反応性化合物の混合を開始させる可溶化剤と接触させることによって、活性化できる。有機ボランアミン錯体及びアミン反応性化合物は、混合条件が嫌気的である容器中に2つの構成要素を包装することによって、顕著な重合又は架橋を伴わずに、単一容器中で組合せることもできる。
有機ボランアミン錯体及び酸素分子の存在下で重合又は硬化を迅速に開始することができるアミン反応基を有するいくつかのアミン反応性化合物の例として、鉱酸、ルイス酸、カルボン酸、無水物及びサクシネートのようなカルボン酸誘導体、カルボン酸金属塩、イソシアネート、アルデヒド、エポキシド、酸塩化物、並びに塩化スルホニルが挙げられる。いくつかの好適なアミン反応性化合物として、アクリル酸、ポリアクリル酸、メタクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸無水物、ポリメタクリル酸無水物、ウンデシレン酸、オレイン酸、ジイソシアン酸イソホロン、メタクリロイルイソシアナート、アセト酢酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、ウンデシレンアルデヒド、及びドデシルコハク酸無水物が挙げられる。
硬化性シリコーン組成物中の相溶性の改善のために、アミン反応性化合物は、アミン反応基を有するオルガノシラン又はオルガノポリシロキサンであってよい。いくつかの例としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン;イソシアナトメチルトリメトキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物;プロピルコハク酸無水物で官能化された線状、分枝状、樹脂性、及び多分枝状のオルガノポリシロキサン;メチルコハク酸無水物で官能化された線状、分枝状、樹脂性、及び多分枝状のオルガノポリシロキサン;シクロヘキセニル酸無水物官能性の線状、樹脂性、及び多分枝状のオルガノポリシロキサン;カルボキシデシル末端オリゴマー又はポリマー状ポリジメチルシロキサンのような、カルボン酸で官能化された線状、分枝状、樹脂性、及び多分岐のオルガノポリシロキサン;並びにウンデシレンアルデヒド末端オリゴマー又はポリマー状ポリジメチルシロキサンのような、アルデヒドで官能化された線状、分枝状、樹脂性、及び多分枝状のオルガノポリシロキサンが挙げられる。米国特許第6,777,512号は、水分に曝露させたときに酸を放出する特定の化合物を含む、使用することができるケイ素含有化合物を記載している。米国特許第6,777,512号は、錯体解離剤(decomplexation agent)と称される別のアミン反応性化合物も記載している。あるいは、錯体解離剤は、酸、無水物、イソシアネート、又はエポキシから選択されてもよい。具体例として、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、酢酸、2−カルボキシエチルアクリレート、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、及びアクリル酸が挙げられる。
あるいは、構成要素(II)ラジカル開始剤は、ラジカル重合の開始剤として機能し得るレドックス試薬を含む。レドックス試薬は、過酸化物とアミンとの組合せ又は過酸化物と遷移金属キレートとの組合せであってもよい。レドックス試薬の例としては、ベンゾイルペルオキシド及びアセチルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;チルエチルケトンペルオキシド及びシクロヘキサノンペルオキシドのようなケトンペルオキシド;ジクミルペルオキシド及びジ−t−ブチルペルオキシドのようなジアルキルペルオキシド;t−ブチルペルオキシアセテートのようなペルオキシエステル;並びにチオグリセロール(すなわち、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール)とピラゾール及び/又はピラゾロンの組合せが挙げられる。あるいは、レドックス試薬の例としては、ジメチルアニリン、3,5−ジメチルピラゾール、チオグリセロール;及びこれらの組合せが挙げられる。ラジカル開始剤として有用な好適なレドックス試薬の例は、当該技術分野において一般的に知られており、米国特許第5,459,206号に例示されるとおりである。別の好適なペルオキシドは、当該技術分野において一般的に知られており、過酸化ラウロイル(ArkemaのLuperox(登録商標)LP)、ジクロロベンゾイルペルオキシド(R.T.Vanderbilt Company,Inc.のVAROX(登録商標)DCBP)及び6N tert−ブチルヒドロペルオキシド等が市販されている。
ラジカル開始剤(II)の濃度は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.01%〜15%、あるいは0.1%〜5%、あるいは0.1%〜2%であってもよい。
構成要素(III)はシリコーン反応性希釈剤である。シリコーン反応性希釈剤(III)は、硬化性シリコーン組成物の粘度を低下させて、より流動可能とすることによって、硬化性シリコーン組成物の分配を助ける。あるいは、シリコーン反応性希釈剤は、硬化促進剤として(その硬化性シリコーン組成物中での可動性による)、あるいは分配助剤及び硬化促進剤の両方として機能し得る。あるいは又は追加的に、シリコーン反応性希釈剤は、シリコーン反応性希釈剤(III)中の1分子当たりのラジカル硬化性基の数(例えば、1分子当たりのR2基の数)が2を超える態様において、架橋剤として機能し得る。
硬化性シリコーン組成物の特定の態様において、シリコーン反応性希釈剤(III)が存在する場合、使用されるシリコーン反応性希釈剤(III)の量は、硬化性シリコーン組成物の全シリコーンマトリックス重量(すなわち、構成要素(I)及び(III)の総重量)に対して0.1〜95重量%、あるいは30〜70重量%である。
シリコーン反応性希釈剤(III)は、一官能シリコーン反応性希釈剤、二官能シリコーン反応性希釈剤のような多官能シリコーン反応性希釈剤、又はこれらの組合せであってよい。選択されるシリコーン反応性希釈剤は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)のラジカル硬化性基の構造及び数等の種々の要因によって変わるであろう。しかしながら、好適なシリコーン反応性希釈剤のラジカル硬化性基の例として、アクリレート、無水マレイン酸若しくは無水メタクリル酸等の無水物、一官能性エポキシ化合物等のエポキシ、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル、オキセタン、酢酸ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン、スチレン、又はそれらの組合せが挙げられる。
上記のシリコーン反応性希釈剤(III)は、構造:
(SiO4/2)mm(R1SiO3/2)nn(R1 2SiO)oo(R2R1SiO)pp(R2R1 2SiO1/2)qq(R1 3SiO1/2)rr(R3)ssによって表すことができ、式中、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R2は、独立して、構成要素(I)に関する上記定義によるラジカル硬化性基であり、各R3は、独立して、2〜12個の炭素原子を有する二価炭化水素であり、下付き文字mmは0〜5であり、下付き文字nnは0〜5であり、ただし、下付き文字の和mm+nnは0〜5であり、下付き文字ooは0〜400であり、下付き文字ppは0〜10であり、下付き文字qqは0〜10であり、ただし、下付き文字の和pp+qqは1以上の値を有し、下付き文字rrは0〜10であり、ただし、下付き文字の和qq+rr=nn+2mm+2であり、下付き文字ssは1〜20の値を有する。R1及びR2のそれぞれは、独立して、上記定義のとおりであってよい。いくつかの態様において、シリコーン反応性希釈剤(III)は、後で実施例に記載するDil1、Dil2、及びDil3のいずれか1つである。
第1の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)は、構成要素(aa)と(b)((aa)平均で、1分子当たり1個を超えるケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(b)1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種)の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下、並びに場合により(d)異性体濃度低下剤及び/又は(e)重合阻害剤の存在下での反応であって、場合によりその後(f)触媒阻害剤が添加される反応の反応生成物であってもよい。(b)の各脂肪族不飽和有機基は、独立して、(b)に関する上記定義のとおりであってもよい。
構成要素(aa)、(b)、(c)、並びに場合により(d)、及び(e)は、一緒にブレンドされる。次いで、混合しながら温度を35℃〜100℃、あるいは50℃〜85℃に上げることによって反応を開始してもよく、この温度を、FT−IRによって約2170cm−1で観察したときに、FT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得されてもよい)のバックグラウンドノイズまで減少したSi−Hピークの消失によって判断して、Si−H基の全てが反応するまで維持する。次に、得られた混合物に任意選択の触媒阻害剤(f)を添加して、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤(f)の導入は、(aa)、(b)、(c)、並びに場合により(d)及び(e)の反応混合物の温度を、50℃よりも低温、例えば室温まで、低下させた後に行われる。特定の実施形態において、未反応の構成要素は、23℃から100℃未満、あるいは85℃未満までの温度で真空ストリッピングすることによって、反応生成物から分離されてもよい。生成したシリコーン反応性希釈剤(III)を、硬化性シリコーン組成物への使用のような、その後の使用のために保管してもよい。
構成要素(aa)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分枝末端にケイ素結合水素原子を含んでもよく、又はケイ素結合水素原子は分子側鎖(側枝)に位置してもよい。あるいは、ケイ素結合水素原子は、分子側鎖及び末端の両方に位置してもよい。本明細書に記載される構成要素(aa)の構造は、構成要素(b)と反応したときに、得られる構造が、上記のシリコーン反応性希釈剤(III)の構造であるようなものである。
構成要素(b)は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造のための反応種(b)に関する上記記載のとおりであり、その記載をここで繰り返さない。
構成要素(aa)との反応のための構成要素(b)の量は、構成要素(aa)の種類、量、及びSiH含有量並びに選択される構成要素(b)の種類等の様々な要因によって決まる。ただし、構成要素(b)の量は、構成要素(aa)のケイ素結合水素原子の、構成要素(b)の脂肪族不飽和有機基に対するモル比を、0.7/1〜1.2/1、あるいは0.8/1〜1.1/1とするのに十分な量である。
構成要素(c)、並びに任意選択の構成要素(d)、(e)及び(f)の更なる詳細は、上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に関する上記セクションに記載のとおりであり、ここでは繰り返さない。
第2の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)は、構成要素(a’a’)と(b’)((a’a’)平均で、1分子当たり1個を超える脂肪族不飽和有機基を有するポリシロキサン;(b’)1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種)の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下、並びに場合により(d)異性体濃度低下剤及び(e)重合阻害剤の存在下での反応であって、場合によりその後(f)触媒阻害剤が添加される反応の反応生成物であってもよい。(a’a’)の各脂肪族不飽和有機基は、独立して、(b)に関する上記定義のとおりであってもよい。
構成要素(a’a’)、(b’)、及び(c)、並びに場合により(d)及び(e)は、一緒にブレンドされる。次いで、温度を35℃〜100℃、あるいは50℃〜85℃に上げることによって反応を開始してもよく、この温度を、FT−IRによって約2170cm−1で観察したときに、FT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得されてもよい)のバックグラウンドノイズまで減少したSi−Hピークの消失によって判断して、Si−Hの全てが反応するまで維持する。次に、所望であれば、得られた混合物に任意選択の触媒阻害剤(f)を添加して、ヒドロシリル化触媒(c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤(f)の導入は、(a’a’)、(b’)、(c)、並びに場合により(d)及び(e)の反応混合物の温度を、50℃よりも低温、例えば室温まで、低下させた後に行われる。特定の実施形態において、未反応の構成要素は、23℃から100℃未満、あるいは85℃未満までの温度で真空ストリッピングすることによって、生成物から分離されてもよい。生成したシリコーン反応性希釈剤(III)は、後で使用するために保管されてもよい。
特定の実施形態において、構成要素(a’a’)の不飽和ポリオルガノシロキサンは、不飽和基を分子末端に含むが、他の実施形態では、不飽和基は分子側鎖(側枝)に位置する。更に別の実施形態において、不飽和基は、分子側鎖及び末端の両方に位置してもよい。本明細書に記載される構成要素(a’a’)の構造は、構成要素(b’)と反応したときに、得られる構造が、上記のシリコーン反応性希釈剤(III)の構造であるようなものである。
構成要素(b’)は反応種である。反応種(b’)は、シリコーン反応性希釈剤(III)において硬化性基を提供することができる任意の化学種であってよい。反応種は、構成要素(a’a’)の脂肪族不飽和基との付加反応(例えば、ヒドロシリル化反応)を起こすことができるケイ素結合水素原子(SiH基)を平均で1分子当たり少なくとも1個有する。構成要素(b’)は、1分子当たり1個以上のラジカル硬化性基を更に含む。ラジカル硬化性基は、シリコーン反応性希釈剤をラジカル硬化性にする官能(反応)基である。構成要素(b’)におけるラジカル硬化性基は、アクリレート基及びメタクリレート基並びにこれらの組合せから選択されてもよい。
構成要素(b’)の構造は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に使用される構成要素(b’)に関して記載された構造と同じであってもよく、繰り返さない。
構成要素(b’)の量は、構成要素(a’a’)の種類、量、及び脂肪族不飽和基の含有量並びに選択される構成要素(b’)の種類等の様々な要因によって決まる。ただし、構成要素(b’)の量は、構成要素(b’)のケイ素結合水素原子の、構成要素(a’a’)の脂肪族不飽和有機基に対するモル比を、0.9/1〜1.4/1、あるいは1/1〜1.1/1とするのに十分な量である。
構成要素(c)、並びに任意選択の構成要素(d)、(e)及び(f)の更なる詳細は、上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の製造に関する上記セクションに記載のとおりであり、ここでは繰り返さない。
任意選択の構成要素(IV)充填剤の例としては、補強充填剤及び/又は増量充填剤、熱伝導性充填剤及び/又は電気伝導性充填剤、難燃性充填剤、酸受容充填剤、レオロジー改質充填剤、並びに着色充填剤が挙げられる。例としては、石英、シリカ(例えば、ヒュームド、粉砕、沈降)、炭酸カルシウム(例えば、ヒュームド、粉砕、沈降)、非官能性シリコーン樹脂、アルミナ、窒化ホウ素、銀、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物、二酸化チタン、珪藻土、タルク、被覆充填剤、炭素繊維、チョップドKEVLAR(登録商標)のような短繊維、又はこれらの組合せが挙げられる。硬化性シリコーン組成物中の充填剤(IV)の量は、選択される充填剤の種類及び硬化性シリコーン組成物(製造しようとする所望のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)等)の最終用途といった、種々の要因によって決まるであろう。しかしながら、充填剤(IV)の量は、硬化性シリコーン組成物中の全構成要素の総合重量に基づいて90%までであってもよい。例えば、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が伝導性硬化性シリコーン組成物に使用される場合、充填剤(IV)の量は、硬化性シリコーン組成物の総重量の40%〜90%であってもよい。あるいは、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が接着剤硬化性シリコーン組成物に使用される場合、充填剤(IV)の量は、接着剤硬化性シリコーン組成物の全構成要素の総重量に基づいて5%〜50%であってもよい。
充填剤(IV)が熱伝導性充填剤を含む態様において、この充填剤は、熱伝導性と電気伝導性の両方であってもよい。あるいは、熱伝導性充填剤は熱伝導性かつ電気絶縁性であってもよい。熱伝導性充填剤は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、炭素繊維、ダイヤモンド、黒鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、金属粒子、オニキス、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛、被覆充填剤、及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
熱伝導性充填剤は、金属充填剤、無機充填剤、溶融性充填剤、又はこれらの組合せを含んでもよい。金属充填剤として、金属の粒子及び粒子表面に層を有する金属の粒子が挙げられる。これらの層は、例えば、金属窒化物層又は金属酸化物層であってもよい。好適な金属充填剤の例としては、アルミニウム、銅、金、ニッケル、銀、及びこれらの組合せからなる群から選択される金属の粒子、あるいはアルミニウムが挙げられる。好適な金属充填剤の更なる例としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀、及びこれらの組合せからなる群から選択される層をその表面に有する、上記金属の粒子が挙げられる。例えば、金属充填剤は、表面に酸化アルミニウム層を有するアルミニウム粒子を含み得る。無機充填剤の例としては、オニキス;アルミニウム三水和物、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等の窒化物;炭化ケイ素及び炭化タングステン等の炭化物;並びにこれらの組合せが挙げられる。あるいは、無機充填剤の例には、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及びこれらの組合せが挙げられる。溶融性充填剤は、Bi、Ga、In、Sn、又はそれらの合金を含んでいてもよい。溶融性充填剤は、場合により、Ag、Au、Cd、Cu、Pb、Sb、Zn、又はこれらの組合せを更に含んでもよい。好適な溶融性充填剤の例として、Ga、In−Bi−Sn合金、Sn−In−Zn合金、Sn−In−Ag合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi−Cu−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金、及びこれらの組合せが挙げられる。溶融性充填剤は、50℃〜250℃の融点を有してもよい。溶融性充填剤は、共晶合金、非共晶合金、又は純金属であり得る。多数の好適な溶融性充填剤が市販されている。
熱伝導性充填剤は、単一の熱伝導性充填剤であってもよく、又は少なくとも1つの特性が異なる2種以上の熱伝導性充填剤の組合せであってもよい。熱伝導性充填剤は、当該技術分野において一般的に知られており、多数が市販されており、例えば、米国特許第6,169,142号(第4段、7〜33行)を参照されたい。熱伝導性充填材の平均粒径は、選択される熱伝導性充填剤の種類及び硬化性シリコーン組成物に添加する正確な量、並びに硬化性シリコーン組成物を硬化することによる効果生成物が用いられるデバイスの結合部の厚さ等の、様々な要因に依存するであろう。しかしながら、熱伝導性充填剤は、0.1マイクロメートル〜80マイクロメートルの平均粒径を有してもよい。硬化性シリコーン組成物中の熱伝導性充填剤(IV)の量は、選択される特定の熱伝導性充填剤等の様々な要因に依存する。しかしながら、利用される場合、熱伝導性充填剤の量は、伝導性硬化性シリコーン組成物の体積の30体積%〜80体積%、あるいは40体積%〜75体積%であってもよい。
特定の態様において、充填剤(IV)は、非反応性シリコーン樹脂を含んでもよい。本発明において有用な非反応性シリコーン樹脂は、R6 3SiO1/2によって表される一官能性単位及びSiO4/2によって表される四官能性単位を含有する。R6は、ラジカル機構によって硬化可能ではないヒドロカルビル基のような一価有機基、例えば、アルキル基を表す。R6に好適な非官能性の一価有機基は、独立して、上記の定義のとおりである。シリコーン樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン等の液体炭化水素中に、又は低粘度環状及び線状ポリジオルガノシロキサン等の液体有機ケイ素化合物中に可溶性である。非反応性シリコーン樹脂充填剤(IV)におけるR6 3SiO1/2単位のSiO4/2単位に対するモル比は、0.5/1〜1.5/1、あるいは0.6/1〜0.9/1であってもよい。これらのモル比は、好都合には、ケイ素29核磁気分光法(29Si NMR)によって測定される。この技法は、非反応性シリコーン樹脂の全ヒドロキシル含量に加えて、非反応性シリコーン樹脂から誘導されたR6 3SiO1/2(「M」)単位及びSiO4/2(「Q」)単位の濃度を定量的に測定することができる。非反応性シリコーン樹脂は、2.0重量%以下、あるいは0.7%以下、あるいは0.3%以下の、式XSiO3/2(式中、Xは、ヒドロキシル又は加水分解性基、例えば、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ、並びにアセトキシを表す)によって表される末端単位を更に含んでもよい。非反応性シリコーン樹脂中に存在する加水分解性基の濃度は、FT−IRを使用して決定することができる。別の方法として又は追加して、Si−Hの量を、後述のGC試験方法1を用いて定量的に測定してもよい。非反応性シリコーン樹脂の重量平均分子量Mwは、少なくとも部分的に、シリコーン樹脂の分子量及び非反応性シリコーン樹脂中に存在するR6によって表されるヒドロカルビル基の種類に依存するであろう。Mwは、本明細書で使用されるとき、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外される場合、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される分子量を表す。非反応性シリコーン樹脂のMwは、12,000〜30,000g/モル、典型的には17,000〜22,000g/モルであってもよい。非反応性シリコーン樹脂は、任意の好適な方法により調製することができる。このタイプのシリコーン樹脂は、対応するシランの共加水分解によって又は当該技術分野において一般的に知られているシリカヒドロゾルキャッピング法によって調製されている。非反応性シリコーン樹脂は、Daudtet al.(米国特許第2,676,182号)、Rivers−Farrellet al.(米国特許第4,611,042号)、及びButler(米国特許第4,774,310号)のシリカヒドロゾルキャッピングプロセスにより調製することができる。
特定の態様において、充填剤構成要素(IV)は、酸受容体を含んでもよい。酸受容体は、酸化マグネシウム等の金属酸化物を含んでいてもよい。酸受容体は当技術分野において一般的に知られており、Rhenofit F、Star Mag CX−50、Star Mag CX−150、BLP−3、及びMaxOx98LR等の商品名で市販されている。Rhenofit Fは、Chardon,OH,USAのRhein Chemie Corporation製の酸化カルシウムであった。Star Mag CX−50は、Portsmouth,NH,USAのMerrand International Corp.製の酸化マグネシウムであった。MagOX 98LRは、W.Conshohocken,PA,USAのPremier Chemicals LLC製の酸化マグネシウムであった。BLP−3は、Cincinnati,OH,USAのOmya Americas製の炭酸カルシウムであった。
構成要素(IV)の充填剤は、未処理でも、前処理されても、任意選択の充填剤処理剤(V)と共に添加されてもよく、充填剤処理剤は、そのように添加された場合に充填剤をその場で処理し得る。充填剤(IV)は、単一の充填剤でもよく、又は充填剤の種類、調製方法、処理若しくは表面化学、充填剤粒子形状、充填剤表面積、平均粒径、又は粒径分布等の少なくとも1つの特性が異なる2種以上の充填剤の組合せであってもよい。充填剤粒子の形状は、特に制限されない。しかし、丸形又は球形の粒子は、硬化性シリコーン組成物において望ましくないレベルの粘度増大を防止することがある。
任意の構成要素(V)は充填剤処理剤であり、アルコキシシラン等のシラン、アルコキシ官能性オリゴシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ジメチルシロキサン若しくはメチルフェニルシロキサン等のヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、有機ケイ素化合物、ステアレート、又は脂肪酸を含んでもよい。構成要素(V)の処理剤は、単一の処理剤を含んでもよく、又は類似の若しくは異なる種類の分子から選択された2種以上の処理剤の組合せを含んでもよい。充填剤処理剤(V)は、当該技術分野において一般的に知られている処理剤であってもよい。充填剤処理剤(V)の量は、構成要素(IV)に選択される充填剤の種類及び量、並びに充填剤(IV)がその場で充填剤処理剤で処理されるか、あるいは硬化性シリコーン組成物の他の構成要素と組み合わせる前に前処理されるか等の様々な因子に応じて変わり得る。しかしながら、硬化性シリコーン組成物は、構成要素(IV)のための充填剤の重量に基づいて、0.1重量%〜2重量%の量の任意選択の充填剤処理剤(V)を含んでもよい。
充填剤処理剤(V)は、アルコキシシランを含んでもよい。アルコキシシランは、式:R7 uSi(OR8)(4−u)を有してもよく、式中、下付き文字uは、1、2、又は3であり、あるいは、uは1である。各R8は、独立して、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子の飽和一価炭化水素である。各R7は独立して、炭素原子1〜50個の一価有機基、例えば、炭素原子1〜50個、あるいは炭素原子6〜18個の一価炭化水素基(すなわち、ヒドロカルビル基)である。R7に好適な一価炭化水素基の例としては、アルキル基及びアリール基、例えば、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルのような(C5〜C50)アルキル基又は(C5〜C20)アルキル基;並びにベンジル、フェニル及びフェニルエチル等の芳香族基のような(C6〜C20)アリール基が挙げられる。R7は、飽和又は不飽和の、分枝状又は非分枝状の一価炭化水素基であることができる。あるいは、R7は、飽和した非分枝状の一価炭化水素基であることができる。いくつかの態様において、各R7は、独立して、R1に関する上記定義のとおりである。アルコキシシラン充填剤処理剤(V)の例には、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びこれらの組合せが挙げられる。特定の態様において、アルコキシシランは、シラザンと組み合わせて使用してもよく、これは、反応性の低いアルコキシシランの表面ヒドロキシルとの反応を触媒する。そのような反応は、典型的には、100℃より高温で、高せん断で、アンモニア、メタノール及び水等の揮発性の副生成物を除去しながら実施される。
熱伝導性充填剤のための充填剤処理剤(V)、例えばアルミナ又は不動態化窒化アルミニウムは、アルコキシシリル官能性アルキルメチルポリシロキサン(例えば、式:R9 vR7 wSi(OR8)(4−v−w)の部分的加水分解縮合物、若しくは共加水分解縮合物若しくは混合物)、又は加水分解性基がシラザン、アシルオキシ若しくはオキシモを含み得る類似材料を含んでもよい。これらの全てにおいて、上記式中のR9等のSiに連結された基は、長鎖不飽和一価炭化水素又は一価芳香族炭化水素である。各R7は独立して、一価炭化水素基であり、各R8は独立して、炭素原子1〜4個の飽和一価炭化水素基である。上記式中、下付き文字vは1、2、又は3であり、下付き文字wは0、1、又は2であり、ただし、下付き文字の和(v+w)は1、2、又は3である。
アルコキシ官能性オリゴシロキサンもまた充填剤処理剤(V)として使用することができる。アルコキシ官能性オリゴシロキサン及びその調製方法は当該技術分野において一般的に知られており、例えば、欧州特許第1101167(A2)号を参照されたい。その他の充填剤処理剤には、モノ末端封鎖アルコキシ官能性ポリジオルガノシロキサン、すなわち、1つの末端にアルコキシ官能性を有するポリオルガノシロキサンが挙げられ、これは式:R10R1 2SiO(R1 2SiO)xSi(OR8)3(式中、下付き文字xは、0〜150、あるいは20〜100の値を有する)で例示できる。各R10は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、及びオクチル等のアルキル基、並びにビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニル等のアルケニル基から選択される。各R1は、独立して、上記のR1のような、脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、各R8は、上記のとおりである。一つの例において、各R10、各R1、及び各R8はメチルである。別の例において、各R10はビニルであり、各R1及び各R8はメチルである。
あるいは、充填剤処理剤(V)は、シリカ充填剤の処理に一般的に使用される有機ケイ素化合物のいずれかであってよい。有機ケイ素化合物の例としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びトリメチルモノクロロシランのようなオルガノクロロシラン;ヒドロキシ末端封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、ヘキサメチルジシロキサン、及びテトラメチルジビニルジシロキサンのようなオルガノシロキサン;ヘキサメチルジシラザン及びヘキサメチルシクロトリシラザンのようなオルガノシラザン;並びに、メチルトリメトキシシラン、C6H13Si(OCH3)3、C8H17Si(OC2H5)3、C10H21Si(OCH3)3、C12H25Si(OCH3)3、C14H29Si(OC2H5)3、及びC6H5CH2CH2Si(OCH3)3、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなオルガノアルコキシシランが挙げられる。
あるいは、ポリオルガノシロキサンは、処理剤(V)として有用である。充填剤(IV)の表面を処理するためのこのような処理剤の使用は、ポリオルガノシロキサンを充填剤表面に結び付けるための手段として、密集した若しくは分散した、のいずれか又はその両方である複数の水素結合を利用する。水素結合することができるポリオルガノシロキサンは、平均で1分子当たり少なくとも1個の水素結合可能なケイ素結合基を有する。上記基は、複数のヒドロキシル官能性を有する一価有機基又は少なくとも1個のアミノ官能基を有する一価有機基から選択されてもよい。水素結合は、ポリオルガノシロキサンの充填剤(IV)への結合の主要形態であってもよい。ポリオルガノシロキサンは、充填剤(IV)との共有結合を形成することができなくてもよい。水素結合することができるポリオルガノシロキサンは、糖−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサン、及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。あるいは、水素結合することができるポリオルガノシロキサンは、糖−シロキサンポリマーであってもよい。
金属充填剤の処理に適した別の処理剤(V)は、オクタデシルメルカプタン等のアルキルチオール、及びオレイン酸、ステアリン酸、チタネート、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤等の脂肪酸、並びにこれらの組合せからなってもよい。当業者であれば、過度の実験を行うことなく、充填剤の分散を助けるために特定の処理を最適化することができるであろう。
本明細書に記載の充填剤(IV)及び充填剤処理剤(V)を導入するためのプロセスは、第1の実施形態において、充填剤構成要素(IV)及び任意選択の充填剤処理剤(V)を構成要素(I)又は構成要素(III)と混合するか、あるいは構成要素(I)と(III)との組合せと混合する工程を含む。任意選択の充填剤(IV)及び充填剤処理剤(V)を添加するための上記プロセスは、分枝状ポリオルガノシロキサン(例えば、加水分解性基を含有するもの)との有害反応を防止又は低減することによって利益をもたらし得る。かかる有害反応の発生及び程度は、充填剤選択及び所望の処置の種類によって変わることがあり、その発生は問題となり、生成物の不安定性を招く可能性がある。
第2の実施形態において、本明細書に記載の充填剤(IV)及び充填剤処理剤(V)を導入するためのプロセスは、充填剤(IV)及び任意選択の充填剤処理剤(V)を構成要素(I)の製造に使用される構成要素(a)、(a1)若しくは(a’)と混合する工程、又は充填剤(IV)及び任意選択の充填剤処理剤(V)を構成要素(III)の製造に使用される構成要素(aa)若しくは(a’a’)と混合する工程を更に含んでもよい。この実施形態において、充填剤処理は、構成要素(I)、(III)又は(I)と(III)との組合せの合成に必要なその他の構成要素が添加される前又は後のいずれか(ラジカル硬化性官能基の導入前又はラジカル硬化性官能基の導入後のいずれか)に、その場で実施されてよい。上記のその場での充填剤表面の効率的な処理は、特定の態様において、高温及び/又は真空条件下で実施されてもよい。いくつかの例において、高温は、感熱性不飽和官能基(例えば、ラジカル硬化性基)に望ましくない場合がある。
第3の実施形態において、本明細書に記載の充填剤(IV)及び充填剤処理剤(V)を導入するためのプロセスは、充填剤(IV)及び任意選択の充填剤処理剤(V)を構成要素(I)の製造に使用される構成要素(a)、(a1)若しくは(a’)と混合する工程、又は充填剤(IV)及び任意選択の充填剤処理剤(V)を構成要素(III)の製造に使用される構成要素(aa)若しくは(a’a’)と混合する工程を更に含んでもよい。この第3の実施形態において、充填剤処理は、構成要素(I)、(III)又は(I)と(III)との組合せの合成に必要なその他の構成要素が添加される前(ラジカル硬化性官能の導入前)に、その場で実施されてよい。したがって、かかる混合の前に、充填剤(IV)は、構成要素(a)、(a1)、(a’)、(aa)又は(a’a’)の存在下で、高温及び/又は真空下にて、充填剤処理剤(V)により前処理されてもよい。好ましくは、充填剤(IV)は、構成要素(a1)、(a’)、又は(a’a’)の存在下で、高温及び/又は真空下にて、充填剤処理剤(V)により前処理されてもよい。これらの充填剤処理条件は、例えば、米国特許第6013701号に記載されているように、バッチ又は連続プロセスで実施されてもよい。処理剤(V)による充填剤(IV)の処理は、その場で実施され、処理完了後に他の構成要素が添加されてもよい。あるいは、充填剤処理は、処理済み充填剤をポリオルガノシロキサンと組み合わせるために、オフラインで実施されてもよい。この中間生成物は、次に、構成要素(I)、(III)、又は(I)及び(III)の組合せの合成に望ましいレベルの構成要素(a1)、(a’)、又は(a’a’)を提供するために使用できる。得られるポリオルガノシロキサン(a1)、(a’)、又は(a’a’)中の処理済み充填剤の組合せは、マスターバッチと称される。マスターバッチは市販されている。マスターバッチの使用により、構成要素(I)及び(III)を形成するためのプロセス実施形態に記載のように、構成要素(a1)、(a’)、又は(a’a’)の脂肪族不飽和有機基と、構成要素(a2)又は(b’)のケイ素結合水素原子との速やかな反応を、単一の低剪断工程において実施することができる。記載の方法は、改善されたレオロジー及び貯蔵特性と共に優れた引張及び接着特性を有する充填されたラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)をもたらし得る。
硬化性シリコーン組成物は、場合により、(VI)縮合硬化開始剤、(VII)架橋剤、及び(VIII)縮合硬化性樹脂若しくはポリマー又はこれらの組合せの任意の1つ以上を含んでもよい。
構成要素(IV)は、湿気硬化開始剤(すなわち、縮合触媒又は縮合反応触媒)である。縮合反応触媒の例は、当該技術分野において一般的に知られており、米国特許第4,962,076号;同第5,051,455号;同第5,053,442号;同第4,753,977号第4段35行〜第5段57行;及び同第4,143,088号第7段15行〜第10段35行に記載されている。使用される縮合反応触媒の量は、選択される触媒の種類及び硬化性シリコーン組成物中の残りの構成要素の選択を含む様々な要因によって決まるが、縮合反応触媒の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.001%〜5%であってもよい。
好適な縮合反応触媒(VI)は、ルイス酸;第一級、第二級、若しくは第三級有機アミン;金属酸化物;チタン化合物;スズ化合物;ジルコニウム化合物;又はこれらの組合せであってもよい。縮合反応触媒は、金属の起電列における鉛からマンガンまで(鉛及びマンガンを含む)から選択された金属のカルボン酸塩を含んでもよい。あるいは、縮合反応触媒は、キレート化チタン化合物、テトラアルコキシチタネート等のチタネート、チタンエステル、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。好適なチタン化合物の例として、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、テトラブトキシチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びビス(エトキシアセトアセトネート)ジイソプロポキシチタン(VI)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、縮合反応触媒は、ジブチルスズジアセテートのようなスズ化合物;ジブチルスズジラウレート;ジブチルスズオキシド;第一スズオクトエート;酸化スズ;テトラブチルチタネート、テトラエチルヘキシルチタネート及びテトラフェニルチタネートのようなチタン酸エステル;テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン及びビス(トリメチルシロキシ)−ビス(イソプロポキシ)チタンのようなシロキシチタネート;並びにビス(アセチルアセトニル)ジイソプロピルチタネートのようなβ−ジカルボニルチタン化合物;又はこれらの組合せが挙げられる。あるいは、縮合反応触媒は、ヘキシルアミンのようなアミン;又はアミンの酢酸塩若しくは第四級塩(例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム)を含んでもよい。
任意選択の構成要素(VII)は、湿気硬化用の架橋剤である。架橋剤の種類及び量は、硬化性シリコーン組成物に基づく硬化性基のタイプ及び量を含む様々な因子によって決まる。
特定の実施形態において、架橋剤(VII)は縮合反応架橋剤であって、例えば、トリアルコキシシラン、例えばプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びメチルトリエトキシシラン;アセトキシシラン、例えばメチルトリアセトキシシラン又はエチルトリアセトキシシラン;ケトキシモシラン、例えばメチルトリ(メチルエチルケトキシモ)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、及びビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン;アルキルオルトシリケート、例えばテトラエチルオルトシリケート、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及び一般的にアルキルポリシリケートと称されるこれらのオルトシリケートの縮合生成物;メチルビニルビス(n−メチルアセトアミド)シラン;並びにこれらの組合せから選択されてもよい。
使用する場合、硬化性シリコーン組成物に利用される架橋剤(VII)の量は、非常に多くの要因によって決まるが、主として、構成要素(I)及び(III)に含有される硬化性基の種類及び量に基づく。しかしながら、架橋剤の量は、硬化性シリコーン組成物の総重量に対して0.1重量パーセント〜10重量パーセントで変動し得る。
任意選択の構成要素(VIII)は、湿気硬化樹脂若しくはポリマー又はこれらの組合せである。この構成要素は、任意選択の構成要素(VI)及び(VII)と共に使用されて、ラジカル硬化性である主要硬化機構を有する硬化性シリコーン組成物に二次的な硬化機構を提供し、それにより、(ラジカル)硬化性シリコーン組成物の基本的態様の曝露表面の酸素阻害によって生じる潜在的な表面粘着を克服し得る。
構成要素(VIII)は、R11 yR6 (3−y)SiO1/2単位及びSiO4/2単位を含むアルコキシ官能性シリコーン樹脂を含んでもよく、式中、下付き文字yは>0〜<3である。各R6は、独立して、ラジカル機構によって硬化可能ではない非官能性の一価有機基、例えば、上記のR6のようなヒドロカルビル基、例えば、アルキル基であり、各R11は、1個以上のケイ素結合アルコキシ基を含有する一価の有機ケイ素基である。R11の構造は、式−R3R6 hSi(OR8)(3−h)で表すことができ、式中、下付き文字hは0、1、又は2である。各R8は、1〜4個の炭素原子の飽和一価炭化水素基であり、R3は、2〜12個の炭素原子を有する二価炭化水素である。R11 yR6 (3−y)SiO1/2単位の樹脂のSiO4/2単位に対するモル比は、0.5/1〜1.5/1の値を有する。構成要素(VIII)の樹脂は、好ましくは、12,000〜30,000g/モルの重量平均分子量Mwを有する。
構成要素(VIII)は、あるいは、2個を超えるケイ素結合アルコキシ基を含有するオルガノシロキサンポリマーを含んでもよい。このポリマーに好適な構造の例は、式R11(R6 2Si)(R6 2SiO)z(R6 2Si)R11によって表すことができ、式中、各R6は、独立して、ラジカル機構によって硬化可能ではない非官能性の一価有機基、例えば、上記のR6のようなヒドロカルビル基、例えばアルキル基であり、各R11は、上述の1個以上のケイ素結合アルコキシ基を含有する一価の有機ケイ素基である。下付き文字zは40〜100であり、あるいはzは40〜1000である。
構成要素(VIII)は、樹脂構造、ポリマー構造、又は上記の樹脂構造とポリマー構造との組合せを含んでもよい。特定の実施形態において、構成要素(VIII)における樹脂対ポリマーの重量比は、25/75〜65/35で変動し得る。構成要素(VIII)に有用な湿気硬化性樹脂及びポリマー構造の例は、国際公開第2014124364号に更に記載されている。構成要素(VIII)の湿気硬化性樹脂及びポリマーを調製できる方法も、国際公開第2014124364号に記載されており、具体的には、ヒュームドシリカ充填剤を使用しない方法である。任意選択の構成要素(VIII)が使用される態様において、樹脂、ポリマー、又はこれらの組合せは、硬化性シリコーン組成物の全シリコーンマトリックス重量(すなわち、構成要素(I)及び(III)の総重量)の5〜50重量%であってもよい。
硬化性シリコーン組成物は、場合により、1つ以上の追加構成要素を更に含んでもよい。追加構成要素は、例えば、(IX)接着促進剤、(X)反応性有機モノマー(又はオリゴマー)、(XI)重合阻害剤、(XII)着色剤、(XIII)溶媒、(XIV)腐食防止剤、及びこれらの組合せである。
任意選択の構成要素(IX)は、接着促進剤である。接着促進剤は、当該技術分野において広く検討されている。好適な接着促進剤の例として、エポキシ官能性アルコキシシラン、メタクリレート官能性アルコキシシラン、又はメルカプト官能性アルコキシシラン等のアルコキシシラン;アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンの組合せ;メルカプト官能性化合物;アクリレート若しくはメタクリレート官能性化合物;不飽和化合物;エポキシ官能性シラン;エポキシ官能性シロキサン;エポキシ官能性シラン若しくはエポキシ官能性シロキサンとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンの反応生成物のような、組合せ;又はこれらの組合せが挙げられる。好適な接着促進剤は当該技術分野において一般的に知られており、市販されている。例えば、Silquest(登録商標)A186はCrompton OSi Specialties(Middlebury,Connecticut,USA)から市販されているβ−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランである。CD9050は、金属基板への接着性をもたらし、ラジカル硬化性組成物用に設計される接着促進剤として有用な一官能酸エステルである。CD9050はSartomer Co.から市販されている。SR489Dはトリデシルアクリレートであり、SR395はイソデシルアクリレートであり、SR257はステアリルアクリレートであり、SR506はイソボロニルアクリレートであり、SR833Sはトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、SR238は1,6−ヘキサンジオールジアクリレートであり、SR351はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、これらも全てSartomer Co.から市販されている。硬化性シリコーン組成物に添加する接着促進剤の量は、選択される具体的な接着促進剤、硬化性シリコーン組成物の他の構成要素、及び硬化性シリコーン組成物の最終用途等の様々な要因によって決まる。典型的には、その量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.1%〜5%であってもよい。金属への接着性を促進するために有用である別の好適な接着促進剤として、無水マレイン酸、無水メタクリル酸、及びメタクリル酸グリシジルが挙げられる。
構成要素(IX)は、不飽和又はエポキシ官能性化合物であり得る。好適なエポキシ官能性化合物は、当該技術分野において一般的に知られており、市販されており、例えば、米国特許第4,087,585号、同第5,194,649号、同第5,248,715号及び同第5,744,507号(第4〜5段)を参照されたい。構成要素(IX)は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、式R12 uSi(OR8)(4−u)を有することができ、式中、下付き文字uは1、2、又は3であり、あるいはuは1である。R8は、各々独立して、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子の非置換飽和ヒドロカルビル基である。R8は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルにより例示される。各R12は、独立して、上にR1に関して独立に記載したような一価有機基であるが、ただし、少なくとも1つのR12は、不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基である。R12のエポキシ官能性有機基は、3−グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルにより例示される。R12の不飽和有機基は、3−メタクリロイルオキシプロピル、3−アクリロイルオキシプロピル、並びに、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニル等の不飽和一価炭化水素基により例示される。
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組合せが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン及びこれらの組合せが挙げられる。あるいは、好適な接着促進剤の例として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組合せが挙げられる。
構成要素(IX)は、上述したヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンド等のエポキシ官能性シロキサンを含んでもよい。構成要素(IX)は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組合せを含んでもよい。例えば、構成要素(IX)の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物の混合物、又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンの混合物、又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーの混合物が挙げられる。反応生成物としてではなく物理的ブレンドとして使用される場合、これらの構成要素は、多液型(multiple-part)キットに別々に保管されてもよい。
好適なメルカプト官能性化合物として、オルガノメルカプタン、メルカプト含有シラン、又はそれらの組合せが挙げられる。好適なメルカプト含有シランとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。好適なメルカプト官能性化合物は、米国特許第4,962,076号において開示されている。当業者は、本明細書に記載のある特定の構成要素が、2つ以上の又は異なる目的のために硬化性シリコーン組成物に添加されてもよいことを認識するであろう。例えば、アルコキシシランは、接着促進剤、充填剤処理剤として、及び/又は縮合反応硬化性シリコーン組成物において架橋剤として使用されてもよい。更に、例えば、本明細書に接着促進剤として記載されているメルカプト官能性化合物を、別の方法として、充填剤処理剤(V)に加えて又はその代わりに使用してもよい。
任意選択の構成要素(X)は、上記のシリコーン反応性希釈剤(III)とは異なる反応性有機モノマー(又はオリゴマー)である。構成要素(X)は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の官能基及び/又はシリコーン反応性希釈剤(III)の官能基と反応する反応性有機モノマー(又はオリゴマー)であってもよい。反応性有機構成要素(X)は、一官能性反応性構成要素、二官能性反応性構成要素、多官能性反応性構成要素、又はこれらの組合せであってもよい。反応性有機モノマー(又はオリゴマー)の選択は、構成要素(I)のラジカル硬化性基及び場合により任意選択の構成要素(III)の硬化性基に依存するであろう。しかしながら、好適な反応性モノマー(又はオリゴマー)構成要素の例として、アクリレート、無水マレイン酸又はメタクリル酸無水物等の酸無水物、一官能性エポキシ化合物等のエポキシ、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル、オキセタン、酢酸ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニルピロリドン、スチレン、又はこれらの組合せが挙げられる。
一官能性アクリレート及びメタクリレートエステルは、Sartomer、RohmHaas、Hitachi Chemical、Arkema,Inc.、Cytec、Sans Ester Corp、Rahn、及びBomar Specialties Co.等の会社から市販されている。具体例としては、メチルアクリレート;メチルメタクリレート;エチルアクリレート;エチルメタクリレート;ブチルアクリレート;ブチルメタクリレート;シクロヘキシルアクリレート;ヘキシルアクリレート;2−エチルヘキシルアクリレート;イソデシルメタクリレート;イソボルニルメタクリレート;ヒドロキシエチルメタクリレート;ヒドロキシプロピルアクリレート;ヒドロキシプロピルメタクリレート;n−オクチルアクリレート;シクロヘキシルメタクリレート;ヘキシルメタクリレート;2−エチルヘキシルメタクリレート;デシルメタクリレート;ドデシルメタクリレート;ラウリルアクリレート;tert−ブチルメタクリレート;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N−tert−ブチルアクリルアミド;N−tert−オクチルアクリルアミド;N−ブトキシアクリルアミド;γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;ジシクロペンタジエニルオキシエチルメタクリレート;2−シアノエチルアクリレート;3−シアノプロピルアクリレート;テトラヒドロフルフリルメタクリレート;テトラヒドロフルフリルアクリレート;グリシジルアクリレート;アクリル酸;メタクリル酸;イタコン酸;グリシジルメタクリレート;1,12−ドデカンジオールジメタクリレート;1,3−ブチレングリコールジアクリレート;1,3−ブチレングリコールジメタクリレート;1,3−ブチレングリコールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート;ジメチレングリコールジアクリレート;ジメチレングリコールジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート;エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジメタクリレート;ポリプロピレングリコールジメタクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;N,N’−m−フェニレンジマレイミド;トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;金属ジアクリレート:金属ジメタクリレート;金属モノメタクリレート;金属ジアクリレート(二官能性);金属ジメタクリレート(二官能性);トリエトキシシリルプロピルメタクリレート;トリブトキシシリルプロピルメタクリレート;ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート;ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート;ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート;ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート;ジメトキシシリルプロピルメタクリレート;ジエトキシシリルプロピルメタクリレート;ジブトキシシリルプロピルメタクリレート;ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート;トリメトキシシリルプロピルアクリレート;トリエトキシシリルプロピルアクリレート;トリブトキシシリルプロピルアクリレート;ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート;ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート;ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート;ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート;ジメトキシシリルプロピルアクリレート;ジエトキシシリルプロピルアクリレート;ジブトキシシリルプロピルアクリレート;及びジイソプロポキシシリルプロピルアクリレートが挙げられる。
好適なビニルエーテルの例としては、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及びこれらの組合せが挙げられる。ビニルエーテルは当該技術分野において一般的に知られており、欧州、ドイツのBASF AGから市販されている。
構成要素(X)の量は、選択される特定の反応性構成要素等の様々な要因によって決まるが、この量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.5%〜50%であってもよい。当業者は、本明細書に記載の反応性構成要素のいくつか(二官能性及び多官能性アクリレート及びメタクリレート等)を、構成要素(I)の製造方法の構成要素(b)として上記の反応種に加えて、又はその代わりに、使用してもよいことを認識するであろう。あるいは、当業者は、本明細書に記載の反応性構成要素のいくつかは、接着促進剤として機能し得ることを認識するであろう。
任意選択の構成要素(XI)は、重合阻害剤である。アクリレート及びメタクリレートラジカル硬化性基に好適な重合阻害剤の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DBAP)、ヒドロキノン(HQ);4−メトキシフェノール(MEHQ);4−エトキシフェノール;4−プロポキシフェノール;4−ブトキシフェノール;4−ヘプトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);ヒドロキノンモノベンジルエーテル;1,2−ジヒドロキシベンゼン;2−メトキシフェノール;2,5−ジクロロヒドロキノン;2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;2−アセチルヒドロキノン;ヒドロキノンモノベンゾエート;1,4ージメルカプトベンゼン;1,2−ジメルカプトベンゼン;2,3,5−トリメチルヒドロキノン;4−アミノフェノール;2−アミノフェノール;2−N,N−ジメチルアミノフェノール;2−メルカプトフェノール;4−メルカプトフェノール;カテコールモノブチルエーテル;4−エチルアミノフェノール;2,3−ジヒドロキシアセトフェノン;ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル;2−メチルチオフェノール;t−ブチルカテコール;ジ−tert−ブチルニトロキシド;ジ−tert−アミルニトロキシド;2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ;2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸;2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ;4−ニトロソフェノラートの塩;2−ニトロソフェノール;4−ニトロソフェノール;ジメチルジチオカルバミン酸銅;ジエチルジチオカルバミン酸銅;ジブチルジチオカルバミン酸銅;サリチル酸銅;メチレンブルー;鉄;フェノチアジン(PTZ);3−オキソフェノチアジン;5−オキソフェノチアジン;フェノチアジンダイマー;1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,4−ジメチルペンチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びその塩;酸化窒素;ニトロベンゼン;p−ベンゾキノン;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート);ジラウリルチオジプロピオネート;ジステアリルチオジプロピオネート;ジトリデシルチオジプロピオネート;テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;チオジメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;イソトリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;N,N’−ヘキサメチル(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド);イソ−オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’−エチリデンビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール);1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール;トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート;トリス−(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート;ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン;又はこれらの異性体;これらの2つ以上の組合せ;又は上記の1つ以上と酸素分子との組合せが挙げられる。存在する場合、重合阻害剤は、100ppm〜4,000ppmの量で硬化性シリコーン組成物に添加されてもよい。重合阻害剤は当該技術分野において一般的に知られており、例えば、欧州特許第1359137号に開示されている。
任意選択の構成要素(XII)は着色剤(例えば、染料又は顔料)である。好適な着色剤の例として、カーボンブラック、Stan−Tone 40SP03 Blue(PolyOneから市販されている)及びColorant BA 33酸化鉄顔料(Cathay Pigments(USA),Inc.(Valparaiso,IN 46383 USA)から市販されている)が挙げられる。着色剤の例は当該技術分野において一般的に知られており、米国特許第4,962,076号;同第5,051,455号;及び同第5,053,442号に開示されている。硬化性シリコーン組成物に添加される着色剤の量は、硬化性シリコーン組成物の他の構成要素、及び選択される着色剤の種類を含む様々な要因によって決まり、着色剤(XII)の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.001%〜20%であってもよい。
任意選択の構成要素(XIII)は、溶媒である。好適な溶媒の例としては、有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、デシルアルコール又はウンデシルアルコール等のアルコール、及びこれらの組合せ;並びに非架橋性シリコーン溶媒、例えば、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン、並びにこれらの組合せが挙げられる。シリコーン溶媒の例は当該技術分野において一般的に知られており、例えば、Dow Corning Corporation(Midland,Michigan,U.S.A.)からDow Corning(登録商標)OS Fluidsとして市販されている。任意選択の構成要素(XIII)の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.001%〜90%であってもよい。
任意選択の構成要素(XIV)は、腐食防止剤である。好適な腐食防止剤の例としては、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、並びに市販の腐食防止剤、例えば、R.T.Vanderbiltの2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体(CUVAN(登録商標)826)及びアルキルチアジアゾール(CUVAN(登録商標)484)が挙げられる。構成要素(XIII)の量は、硬化性シリコーン組成物の重量に対して0.05%〜0.5%であってもよい。
本明細書に記載の硬化性シリコーン組成物は、例えば、シーラント用途(例えば、アセンブリのシール、熱伝導性シーラント、自動車用リッドシール、マイクロエレクトロニクス用リッドシール、若しくは端子シーラント)、接着剤用途(例えば、汎用低温硬化接着剤、ダイ接着用接着剤、若しくは熱伝導性接着剤等)、又はカプセル化等の様々な用途に使用できる。
本明細書に記載の硬化性シリコーン組成物は、その硬化によって発明的硬化シリコーンを調製するために使用できる。硬化性シリコーン組成物、及び硬化性シリコーン組成物の硬化によって調製される硬化シリコーンは、マイクロエレクトロニクス及びマクロエレクトロニクス用途の両方を含む電子工学用途だけでなく、光電子工学用途並びに熱伝導性接着剤の製造のような熱伝導性の電子工学用途において有用である。こうした硬化性シリコーン組成物から調製された硬化シリコーン接着剤は、ガラス、金属(例えば、アルミニウム、銅、及び無電解ニッケル)等の各種基板;並びにFR4、ナイロン、ポリカーボネート、Lucite(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びSolvay液晶ポリマーのようなポリマー基板に接着することができる。
本発明のいくつかの実施形態は、以下の態様のいずれか1つ以上を含む。
態様1.式:(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンであり、式中、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R2は、独立して、ラジカル硬化性基であり、各R3は、独立して、2〜12個の炭素原子を有するアルキレンであり、下付き文字mは0〜20であり、下付き文字nは0〜20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり、下付き文字oは50〜1000であり、下付き文字pは0〜100であり、下付き文字qは0〜42であり、ただし、下付き文字の和p+qは2を超え、下付き文字rは0〜42であり、ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、下付き文字sは2を超え100未満であり、分枝状ポリオルガノシロキサンは、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基(例えば、R2)を有する。
態様2.各ラジカル硬化性基が、独立して、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含有する一価の有機基である、請求項1に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
態様3.(a)平均で、1分子当たり2個を超えるケイ素結合水素原子を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b)1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種とを含む構成要素の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応の反応生成物である、請求項1又は2に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
態様4.(a’)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b’)1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物である、請求項1又は2に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
態様5.請求項1〜4のいずれか一項に記載の分枝状ポリオルガノシロキサンであって、式中、下付き文字nは0であり、下付き文字pは0であり、分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは1〜20であり、R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、r、及びsは上記の定義のとおりであるか、又は、式中、下付き文字mは0であり、下付き文字pは0であり、下付き文字rは0であり、分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R3)sであり、式中、下付き文字nは1〜20であり、R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、及びsは上記の定義のとおりであるか、又は、下付き文字mは>0であり、下付き文字nは>0であり、上記分枝状ポリオルガノシロキサンは、式(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは>0〜<20であり、下付き文字nは>0〜<20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり、R1、R2、R3、並びに下付き文字o、p、q、r、及びsは上記の定義による、分枝状ポリオルガノシロキサン。
態様6.硬化性シリコーン組成物であって、(I)式:(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(式中、各R1脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R2は、独立して、ラジカル硬化性基であり、各R3は、独立して、2〜12個の炭素原子を有するアルキレンであり、下付き文字mは0〜20であり、下付き文字nは0〜20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり、下付き文字oは50〜1000であり、下付き文字pは0〜100であり、下付き文字qは0〜42であり、ただし、下付き文字の和p+qは2を超え、下付き文字nは0〜42であり、ただし、下付き文字の和q+r=n+2m+2であり、下付き文字sは2を超え100未満であり、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、平均で、1分子当たり少なくとも2個のラジカル硬化性基を有する)及び(II)ラジカル開始剤を含む、硬化性シリコーン組成物。
態様7.R2が、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含有する一価の有機基である、請求項6に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様8.上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が、(a)平均で、1分子当たり2個を超えるケイ素結合水素原子を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b)1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物を含む、請求項6又は7に記載の分枝状ポリオルガノシロキサン。
態様9.構成要素(a)が、(a1)平均で1分子当たり2個を超えるケイ素結合水素原子を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(a2)2個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンとを含む構成要素の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物を含む、請求項8に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様10.構成要素(a)が、(a1)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(a2)2個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノシロキサンと、を含む構成要素の(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物を含む、請求項8に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様11.上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)が、(a’)平均で、1分子当たり2個を超える脂肪族不飽和基を有する分枝状ポリオルガノシロキサンと、(b’)1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物である、請求項6又は7に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様12.請求項6〜11のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物であって、式中、下付き文字nは0であり、下付き文字pは0であり、分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(SiO4/2)m(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは1〜20であり;R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、r、及びsは上記の定義のとおりであり、又は、式中、下付き文字mは0であり、下付き文字pは0であり、下付き文字rは0であり、分枝状ポリオルガノシロキサン(I)は、式(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1 2SiO1/2)q(R3)sであり、式中、下付き文字nは1〜20であり、R1、R2、R3、並びに下付き文字o、q、及びsは上記の定義のとおりであり、又は、下付き文字mは>0であり、下付き文字nは>0であり、分枝状ポリオルガノシロキサンは、式(SiO4/2)m(R1SiO3/2)n(R1 2SiO2/2)o(R2R1SiO2/2)p(R2R1 2SiO1/2)q(R1 3SiO1/2)r(R3)sであり、式中、下付き文字mは>0〜<20であり、下付き文字nは>0〜<20であり、ただし、下付き文字の和m+nは1〜20であり、R1、R2、R3、並びに下付き文字o、p、q、r、及びsは上記の定義による、硬化性シリコーン組成物。
態様13.請求項6〜12のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物であって、(III)式:(SiO4/2)mm(R1SiO3/2)nn(R1 2SiO2/2)oo(R2R1SiO2/2)pp(R2R1 2SiO1/2)qq(R1 3SiO1/2)rr(R3)ssのシリコーン反応性希釈剤を更に含み、式中、各R1は独立して、脂肪族不飽和を含まない一価の有機基であり、各R2は、独立して、構成要素(I)に関する上記定義によるラジカル硬化性基であり、各R3は、独立して、2〜12個の炭素原子を有する二価炭化水素であり、下付き文字mmは0〜5であり、下付き文字nnは0〜5であり、ただし、下付き文字の和(mm+nn)は0〜5であり、下付き文字ooは0〜400であり、下付き文字ppは0〜10であり、下付き文字qqは0〜10であり、ただし、下付き文字の和(pp+qq)は1以上であり、下付き文字rrは0〜10であり、かつ、下付き文字の和qq+rr=nn+2mm+2であり、下付き文字ssは1〜20である、硬化性シリコーン組成物。
態様14.R2が、アクリレート基、メタクリレート基、又はこれらの組合せを含む一価の有機基である、請求項13に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様15.上記シリコーン反応性希釈剤(III)が、(aa)平均で1分子当たり1個を超えるケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(b)1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物を含む、請求項13又は14に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様16.上記シリコーン反応性希釈剤(III)が、(a‘a’)平均で、1分子当たり1個を超える脂肪族不飽和有機基を有するポリシロキサンと、(b’)1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合水素並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上のラジカル硬化性基を有する反応種と、を含む構成要素の、(c)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応の反応生成物を含む、請求項13又は14に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様17.上記反応種(b’)が、式:R5 jSiR2 kR1 (4−j−k)であり、式中、下付き文字j及びkのそれぞれは、下付き文字(j+k)の和が4以下であることを条件として、独立して1〜3であり、各R5は、独立して、水素原子であるか又はケイ素結合水素原子を含有する一価の有機ケイ素基であり、各R2は、独立して、ラジカル硬化性基であり、各R1は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価有機基である、請求項11〜16のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様18.上記ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を構成要素(I)及び(III)の総重量の0.5〜99.9重量%含み、上記シリコーン反応性希釈剤(III)を構成要素(I)及び(III)の総重量の、99.5〜0.1重量%含む、請求項13〜16のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様19.(IV)充填剤を更に含む、請求項6〜18のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
態様20.上記充填剤(IV)が、増量充填剤、補強充填剤、熱伝導性充填剤、難燃性充填剤、レオロジー改質充填剤、及びこれらの組合せから選択される、請求項19に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様21.(V)充填剤処理剤を更に含む、請求項19又は20に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様22.(VI)湿気硬化開始剤及び(VII)架橋剤を更に含む、請求項6〜21のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様23.(VIII)湿気硬化樹脂、ポリマー、又はこれらの組合せを更に含む、請求項22に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様24.(IX)接着促進剤、(X)反応性有機モノマー又はオリゴマー、(XI)重合阻害剤、(XII)着色剤、(XIII)溶媒、(XIV)腐食防止剤、及びこれらのいずれか2つ以上の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの追加構成要素を更に含む、請求項6〜23のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物。
態様25.硬化物品を製造するための方法であって、請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を基材に塗布する工程、及び該基材上に塗布した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程を含む方法。
態様26.上記基材上に塗布した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程が、塗布した硬化性シリコーン組成物を上記基材上で加熱する工程を含む、請求項25に記載の方法。
態様27.請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物の電子工学用途における使用。
態様28.請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物のシーラントとしての使用。
態様29.請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物の接着剤としての使用。
態様30.請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物の、それを含むデバイスの熱伝導性部材としての使用。
態様31.請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物の硬化生成物。
態様32.電子デバイスであって、請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物又は請求項31に記載の硬化生成物及び該デバイスと作用的に接触する少なくとも1つのその他のデバイスコンポーネントを含む電子デバイス。
態様33.基材及びその上の作用的接触を封止して配置されたシーラントを含む製造物品であって、上記シーラントが請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物又は請求項31に記載の硬化生成物を含む、製造物品。
態様34.第1及び第2の基材並びにその間に接着作用で接触して配置された接着剤を含むアセンブリを含む製造物品であって、上記接着剤が請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物又は請求項31に記載の硬化生成物を含む、製造物品。
態様35.熱伝導性部材及びそれと熱的連通する少なくとも1つのその他のコンポーネントを含むデバイスであって、熱伝導部材が請求項6〜24のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物又は請求項31に記載の硬化生成物を含む、デバイス。
以下の試験方法を、材料の特性決定に使用してもよい。
85℃硬化開始時間試験方法:市販のムービングダイレオメータ−・モデルMDR−2000(Alpha Technologies)を使用して測定。この試験では、予め秤量した未硬化試料を、予熱したダイに置き、制御された歪振動応力を加える。振動を維持するために必要なトルクを測定する。この値は、時間が経過すると材料が硬化して硬くなると共に増大する。試験条件は、85℃及び歪み14%に設定した。硬化開始速度は、比較の目的で、組成物が、0.06ニュートン−メートル(N−m)(0.5ポンド−インチ(lb−in))のトルクを記録する点まで硬化し硬くなるために必要な時間(分)として定義される。
デュロメーター−ショアA試験方法:InstronショアA型デュロメーターに、自動操作スタンドのモデル902を用いて、ASTM method D2240に従って測定した。試験試料は、100℃に予熱したホットプレス内に置いたチェースを用いて、1時間硬化した。試料は、試験規格に従って、必要な厚さに達するまで積み重ねた。試験は、23℃及び相対湿度(RH)50%で実施した。デュロメーターの値は、ショアA単位で測定する。
ガスクロマトグラフィー(GC)試験方法1:オルガノシロキサン試験試料中のSiH基を定量するために使用。計器:熱伝導率検出器を備えたガスクロマトグラム、150℃;30メートル(m)×0.32ミリメートル(mm)×25マイクロメートル(μm)のSiモレキュラーシーブのフィルム;オーブン40℃、入口140℃、スプリット比10:1;注入体積0.5mL;キャリアガス 窒素ガス、流量1.5mL毎分及び速度32センチメートル毎秒(cm/s)。ブチルゴムセプタムキャップ付きバイアル中の試験試料を、水酸化カリウム(KOH)のエタノール溶液に撹拌及びわずかに加熱しながら1時間接触させることによって、バイアル瓶内の試験試料から水素ガスを発生させる。発生した水素ガスは、キャップしたバイアル瓶のヘッドスペースに捕捉される。ガスタイトシリンジを使用して、バイアル瓶から0.5ミリリットル(mL)のヘッドスペースを抜き取り、GCに注入する。外部標準は、SiH官能性シリコーンを200ポリジメチルシロキサン流体で所望のキャリブレーション濃度まで希釈することによって作製し、この標準を処理して、前述のように水素ガスを発生させる。
引張特性(破断点伸び、引張モジュラス、及び引張強度)試験方法:ASTM規格D412に従って、Instron張力計モデル5566を用いて測定。試験試料は、100℃に予熱したホットプレス内に置いたチェースを用いて、1時間硬化して、直接ASTM D412Cダンベル形に成形した。試料を、5センチメートル毎分(2インチ毎分)の速度で、破壊するまで引っ張った。破断点伸び及び破断点応力(引張強度としても知られる)並びに20%伸長時モジュラスを報告した。記載の値は、各組成物について試験した5点の試験片の平均である。
25℃における動的粘度試験方法:式(I)のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン及び未硬化組成物の動的粘度は、Brookfield DV−IIIプログラマブルレオメータで、標準スピンドル52番及び25℃に設定した等温水循環を用いて測定した。
当業者が本明細書に教示する発明を理解及び認識できるように以下の実施例が示され、これらの実施例は本明細書に添付される請求項に見出される本発明の範囲を制限するために使用されるべきではないことが理解されている。特に反対の記載がない限り、実施例における全ての部及び百分率は、重量基準であり、全ての測定値は25℃で得た。
実施例
硬化性シリコーン組成物の有用性の説明を助ける例を提供するため、数種類の構造を合成した。本明細書で構成要素(I)のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサンに関して開示された構造に合致する種々の構造を有する、7種類の発明的ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を合成し、ポリマー1〜7(又は短縮して、「Pol1」〜「Pol7」)と呼ぶ。比較のため、当該技術分野において一般的に知られる2種類の他の構造も合成した。比較ポリマーAは、メタクリレート官能基を末端に有する線状ポリオルガノシロキサンである。比較ポリマーBは、国際公開第2014124364号の特許に開示のとおり、クラスタ化されたメタクリレート官能基を末端に有する線状ポリオルガノシロキサンである。所与の重量のポリマー1〜7又は比較ポリマーA若しくはBにおける反応基の数は、様々であり、一定ではなかった。本発明者らは、メタクリレート官能性の重量%がより少ない組成物に余剰のメタクリル化環を加え、組成物が生成したときに全ての組成物でメタクリレート含有量が同じになるようにした。ポリマー1〜7の異なる1つと比較ポリマーA及びBとでこれらの反応部位の重量%の違いを補正することで、構成要素(I)のポリマー構造がそれを含有する硬化性シリコーン組成物の実施例の硬化速度及び物理的特性に与える影響の比較が改善される。この補正を可能にするため、及びシリコーン反応性希釈剤構成要素(III)の有用性を実証するためにも、3種の異なる構造のシリコーン反応性希釈剤も合成し、これを本明細書でDil1、Dil2、及びDil3と呼ぶ。次いで、シリコーン反応性希釈剤(III)をポリマー1〜7の異なる1つ並びに比較ポリマーA及びBとブレンドして、このセクションで開示する実施例を得た。これらのブレンドは、生成する硬化性シリコーン組成物のメタクリレート官能基の総重量%が全ての実施例で同じになるように調製した。
調製1:反応性希釈剤の調製。希釈剤1(Dil1)は、94mmolのテトラメチルシクロテトラシロキサンと43mmolのペンタメチルシクロペンタシロキサンとの混合物を、700mmolのアリルメタクリレートと、285ppmのブチル化ヒドロキシトルエンと、触媒としての5ppmの白金との混合物にゆっくりと添加し、反応温度を60℃以下に維持することによって調製した。添加は、20分かけて実施し、その後72時間混合して、式(R2R1SiO2/2)4.2(式中、R1はCH3であり、R2は−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2である)を有するDil1を得た。最終的な材料は、GCにより、5ppm未満のSiHを含有することが確認された。
調製2:反応性希釈剤の調製。実施例5及び6で使用した希釈剤2(Dil2)は、実施例1のポリマー1と同様に調製し、この場合、出発ポリマーは[Si(CH3)2O]150[Si(CH=CH2)CH3O]3[Si(CH=CH2)(CH3)2O1/2]2であった。Dil2は、式(R1 2SiO)150(R2R1SiO)3(R2R1 2SiO1/2)2(R3)5を有し、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。
調製3:実施例3で使用した希釈剤3(Dil3)の調製。実施例6のポリマー6と共にその場で調製され、その調製方法は既に記載されている。Dil3は、式(R1 2SiO)100(R2R1 2SiO1/2)2を有し、式中、R1はCH3であり、R2は−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2である。
調製4:反応種7−b’:H−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2の調製。実施例7のポリマー7を調製するため、反応種7−b’、より具体的にはSiH官能性及びメタクリレート官能性分子、H−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2を最初に調製した。0.93モルのテトラメチルジシロキサンと触媒としての7ppmの白金を調製し、50℃に加熱した。これに、阻害剤として、0.22モルのアリルメタクリレート及び290ppmのブチル化ヒドロキシトルエンの混合物を、滴下により、50分かけて加えた。次いで、この混合物に、50℃の温度で、1.3キロパスカル(kPa)(10トル)未満の圧力を80分かけてストリッピングし、過剰のテトラメチルジシロキサンを除去した。この最終生成物に、安定剤として、215ppmのジアリルマレエートを添加した。最終生成物はH−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であることが、1H NMRによるH−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2に対応する約4.15ppmのピークと、H−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−CH2CH2CH2O2CC(CH3)=CH2に対応する約3.45ppmのピークの比から確認された。
本発明は、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の合成に使用される中間体、及び硬化性シリコーン組成物の配合に使用に使用される新規構成要素を含む。本発明の実施例は、Dil1、Dil2、Dil3、及び反応種7−b’を含む。
上の表の全ての実施例において、Dilは希釈剤を意味し、Polはポリマーを意味し、R1は、メチル基又はラジカル硬化による反応を起こし得ない一価有機基のいずれかであり;R2はプロピルメタクリレート基であり;R3は、エチレン連結基又はその他の二価炭化水素基のいずれかである。全ての実施例は、構成要素(I)及び(III)の合計が、等しい標的総重量%のメタクリレートを含有するように設計した。
実施例の構造の形成に使用した方法及び実施例に使用した希釈剤の総重量%を下の表に示す:
実施例1:ポリマー1(Pol1)の調製。アクリレート官能性分枝状ポリオルガノシロキサン(実施例1で使用するポリマー1)を調製するために、9ミリモル(mmol)の[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]150[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは、約85mol%のビニル(−CH=CH2)と15mol%のメチル(−CH3)とのブレンドである)及び48mmolのテトラメチルジシロキサン、及び触媒としての10ppmの白金触媒からなるブレンドを調製した。9/48というモル比は、テトラメチルジシロキサンが過剰になり、したがって鎖延長を最小限に抑えて所望のキャッピング反応が得られるように設定した。このブレンドを50℃の温度まで加熱し、30分間混合して、ヒドロシリル化反応を完了させ、その後80℃及び1.3キロパスカル(kPa)(10トル)未満の圧力で1時間ストリッピングした。得られた残留SiH官能性材料に、100ppmのブチル化ヒドロキシトルエン、100ppmのメチルトリアセトキシシラン及び100ppmのエチルトリアセトキシシラン(いずれもDOW CORNING(登録商標)ETS 900より)、及び4.3mmolのアリルメタクリレートを添加した。この混合物を、90℃に加熱して2時間混合し、FT−IRスペクトル(約2160cm−1)においてSi−HピークがFT−IRスペクトル(各32回のスキャンを用いて取得)のバックグラウンドノイズへと消失することで、反応の完了を確認した。次いで、過剰のアリルメタクリレートを、90℃及び0.67kPa(5トル)未満の圧力で0.5時間のストリッピングにより除去し、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例を、次式のPol1として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)150(R2R1 2SiO1/2)3.4(R1 3SiO1/2)0.6(R3)3.4、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。最終的な材料は、GC試験方法1に従うガスクロマトグラフィー(GC)により、0.3ppm未満のSiHを含有することが確認された。
実施例1a:実施例1のPol1をDil1とブレンドして、実施例1aのブレンドを得た。
実施例2:ポリマー2(Pol2)の調製。実施例2で使用したポリマー2は、出発ポリマーが[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]400[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは、約88.5mol%のビニル(−CH=CH2)と12.5mol%のメチル(−CH3)とのブレンドである)であることを除いて、実施例1のポリマー1と同様に調製し、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例をPol2として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)400(R2R1 2SiO1/2)3.5(R1 3SiO1/2)0.5(R3)3.5、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。
実施例2a:実施例2のPol2をDil1とブレンドして、実施例2aのブレンドを得た。
実施例3:ポリマー3(Pol3)の調製。実施例3のポリマー3は、出発ポリマーが[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]600[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは約75mol%のビニル(−CH=CH2)と25mol%のメチル(−CH3)とのブレンドである)であることを除いて、実施例1のポリマー1と同様に調製し、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノロキサン(I)の実施例をPol3として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)600(R2R1 2SiO1/2)3(R1 3SiO1/2)1(R3)3、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。
実施例3a:実施例3のPol3をDil1とブレンドして、実施例3aのブレンドを得た。
実施例4:ポリマー4(Pol4)の調製。実施例4のポリマー4は、出発ポリマーが[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]1000[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは約100mol%のビニル(−CH=CH2)である)であることを除いて、実施例1のポリマー1と同様に調製し、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例をPol4として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)1000(R2R1 2SiO1/2)4(R3)4、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。
実施例4a:実施例4のPol4をDil1とブレンドして、実施例4aのブレンドを得た。
実施例5:ポリマー5(Pol5)の調製。実施例5のポリマー5は、出発ポリマーが[SiCH3O3/2]0.8[Si(CH3)2O]500[SiR(CH3)2O1/2]2.4(式中、Rは約100mol%のビニル(−CH=CH2)である)ことを除いて、実施例1のポリマー1と同様に調製し、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例をPol5として得た:(SiO4/2)0.8(R1 2SiO)500(R2R1 2SiO1/2)2.4(R3)2.4、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。
実施例5a:実施例5のPol5をDil1及びDil2とブレンドして、実施例5aのブレンドを得た。
実施例6:ポリマー6(Pol6)の調製。実施例6で使用したポリマー6は、希釈剤3の存在下で調製した。アクリレート官能性分枝状シロキサンポリマーとアクリレート官能性線状シロキサンポリマーとの混合物を、9mmolの[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]150[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは、約85mol%のビニル(−CH=CH2)と15mol%のメチル(−CH3)とのブレンドである)、78mmolの[Si(CH3)2O]100[SiH(CH3)2O1/2]2、及び150mmolのアリルメタクリレートを、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン、75ppmのメチルトリアセトキシシラン及び75ppmのエチルトリアセトキシシラン(いずれもDOW CORNING(登録商標)ETS900より)、並びに触媒としての3ppmの白金と混合することによって調製した。この混合物を80℃の温度に加熱し、30分間混合した後、過剰のアリルメタクリレート及び揮発物を90℃及び13kPa(100トル)未満の圧力で1時間除去し、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例をPol6として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)500(R2R1 2SiO1/2)3.4(R1 3SiO1/2)0.6(R3)3、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。最終的な材料は、GCにより、0.1ppm未満のSiHを含有することが確認された。
実施例6a:実施例6のPol6をDil2とブレンドして、実施例6aのブレンドを得た。
実施例7:ポリマー7(Pol7)の調製。次いで、アクリレート官能性分枝状シロキサンポリマー7を、9mmolの[SiO4/2]1[Si(CH3)2O]150[SiR(CH3)2O1/2]4(式中、Rは約85mol%のビニル(−CH=CH2)と15mol%のメチル(−CH3)とのブレンドである)、及び33mmolのH−Si(CH3)2−O−Si(CH3)2−(CH2)3O2CC(CH3)=CH2(反応種7−b’に関する上記記載のように調製)を、100ppmのメチルトリアセトキシシラン及び100ppmのエチルトリアセトキシシラン(いずれも、DOW CORNING(登録商標)ETS 900より)並びに触媒としての6ppmの白金と混合することによって調製した。得られた混合物を60℃の温度に加熱して1時間保持した後、60℃及び1.3kPa(10トル)未満の圧力で2.5時間ストリッピングして、次式のラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の実施例をPoll7として得た:(SiO4/2)1(R1 2SiO)150(R2R1 2SiO1/2)3(R1 3SiO1/2)1(R3)3、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。IRスペクトル(約2160cm−1)においてSiHピークがスペクトルバックグラウンドまで消失することで、反応の完了を確認した。最終的な材料は、GCにより、0.3ppm未満のSiHを含有することが確認された。
実施例7a:実施例6のPol6をDil1及びDil3とブレンドして、実施例7aのブレンドを得た。
実施例8a:実施例7のPol7をDil1とブレンドして、実施例7aのブレンドを得た。
比較例(CE)1a:CE1の比較ポリマーAは、出発ポリマーが[Si(CH3)2O]500[SiR(CH3)2O1/2]2(式中、Rは約100mol%のビニル(−CH=CH2)である)であることを除き、実施例1のポリマー1と同様に調製した。比較ポリマーAは、式:(R1 2SiO)500(R2R1 2SiO1/2)2(R3)2であり、式中、R1はCH3であり、R2は−Si(CH 3 ) 2 −O−Si(CH 3 ) 2 −(CH2)3O2CC(CH3)=CH2であり、R3はCH2CH2である。比較ポリマーAをDil1とブレンドして、CE1aのブレンドを得た。
比較例(CE)2a:CE2の比較ポリマーBは、国際公開第2014124364号に記載の方法に従って調製した。比較ポリマーBは、式:(R1 2SiO)500(R2R1SiO2/2)6.4(R1 3SiO1/2)2(R3)2であり、式中、R1はCH3であり、R2はメタクリレート含有官能基であり、R3はCH2CH2である。比較ポリマーBをDil1及びDil3とブレンドして、CE2aのブレンドを得た。
各実施例に関して上に記載した硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン、比較材料、及びシリコーン反応性希釈剤を使用した硬化性シリコーン組成物の実施例は、下の表に示す配合に従って構成要素をブレンドすることによって、試験用に調製した。
実施例1b〜8b並びにCE1b及びCE2b:硬化性シリコーン組成物及びそれを硬化することによって得られる硬化生成物。実施例1a〜8aのラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)/反応性希釈剤ブレンド並びに比較例CE1a及びCE2aのブレンドをそれぞれ用いた硬化性シリコーン組成物を、所与の基本配合に従って製造し、硬化速度及び強度等の基本特性について試験して、それぞれ実施例1b〜8b並びにCE1b及びCE2bの硬化性シリコーン組成物及び硬化生成物を得た。組成物は、ヒュームドシリカを含まなかった。試験の結果を、下の表に示す:
上の表において、試験材料(例えば、硬化組成物)は、センチポアズ単位で報告される動的粘度(「組成物粘度(cP)」)、分単位で報告される硬化開始時間(「85℃硬化開始時間(分)」)、ショアA単位で報告されるデュロ硬度(「デュロメーター(ショアA)」)、ポンド毎インチ(psi)及びキロパスカル(kpa)単位で報告される20%歪時引張モジュラス(「20%引張モジュラス(psi)」)、ポンド毎インチ(psi)及びキロパスカル(kpa)単位で報告される引張強度(「引張強度(psi)」)及びパーセント単位で報告される破断点伸び(「破断点伸び(%)」)によって特徴づけられる。85℃硬化開始時間は、ムービングダイレオメータ−(MDR)を用いて、0.06ニュートン−メートル(N−m)(0.5ポンド−インチ(lb−in))のトルクに達するために必要な時間の長さ(分)として定義される。予熱したMDR内で試験されている未硬化材料は、架橋又は硬化を開始すると、装置に登録されるトルクが上昇し始める。このトルクの上昇は、典型的には、任意の架橋反応(これは、予め設定した温度で起こり、トルク読取値に影響すると予想される)が完了するまでの時間にわたって継続する。装置に登録されるトルクが上昇を開始し、ユーザー設定値(例えば、7分)を超える時点での時間を、硬化開始と呼ぶ。硬化開始時間は、特定の硬化性シリコーン組成物が所与の温度でいかに急速に硬化を開始すると予想されるかを測定するものであり、硬化速度の尺度として使用される。加熱したプレスを用いて硬化した材料で測定されるデュロメーター、引張、伸び(DTE);硬化条件:100℃で1時間加熱。動的粘度及びDTE測定は、25℃で実施した。デュロメーター(ショアA)は、硬度の尺度である。デュロメーター(ショアA)値が高いほど、その材料(例えば、硬化組成物)は硬い。20%引張モジュラスは、剛性の尺度である。psi(ポンド毎平方インチ)単位の20%引張モジュラスの値が高いほど、その材料を変形するためにより多くの応力が必要になる。引張強度は、破断時の応力の尺度である。psi(ポンド毎平方インチ)単位の引張強度の値が高いほど、引張変形下の試験材料(例えば、硬化組成物)を破断するため必要な応力が大きい。破断点伸び(%)は、試験材料の破断点における、変化した長さと初期長さとの間の比の尺度である。破断点伸びのパーセント値が高いほど、試験材料(例えば、硬化組成物)が破断せずに伸び(伸長)に耐える能力が大きい。
硬化は速いが物理的特性が最適に達しない硬化性シリコーン組成物、及び十分な物理的特性(例えば、非脆性、機械的強度、又は破断点伸び)を有するが硬化が遅い硬化性シリコーン組成物の実施形態が想到される。いくつかの態様において、硬化性シリコーン組成物は、より速い硬化と十分な物理的特性(非脆性)のような、配合製品に最適な特性の組合せを有する。十分な硬化速度とは、硬化開始時間<7分であり、非脆性とは、>25%の破断点伸びを有すると定義される。これらの標的特性を満足することで、例えば、補強充填剤、熱伝導性充填剤、又はその他の構成要素と共に容易に配合されて、多数の用途に有用な配合製品が得られる硬化性シリコーン組成物の態様が可能になると考えられる。硬化開始速度と物理的特性のその他の組合せを有する硬化性シリコーン組成物の実施形態が想到され、他の用途に有用となり得る。比較例1bは、強度基準に適合するが、本発明者らは単純な長鎖線状ポリマーを期待したことから、硬化速度基準に適合しない。実施例1b、2b、4b、6b、7b、及び8bは、1つ以上の追加構成要素を有する配合製品の製造に最適な有用性を有する。
上記実施例で実証されるように、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)を用いた(ラジカル)硬化性シリコーン組成物は、速い硬化速度、高い強度、高い伸び(靭性)等の特性及び/又は種々の用途に望ましいその他の特性の最適な組合せを有するように設計されている。実施例で実証されるように、ラジカル硬化性分枝状ポリオルガノシロキサン(I)の構造並びにそのラジカル硬化性官能基の利用可能性及びレベルは、特性に大きな影響を有し、材料が多数の用途で有用となるように適切に設計される可能性がある。
本発明の特性の態様は、以下の特許請求の範囲に定義される。かかる請求項は、参照により番号を付与した態様として本明細書に援用され、その「請求項」という語は「態様」に変更される。