以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態における説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、本発明の一態様には、半導体装置、コンピュータ、電子機器の他、表示装置、記憶装置、撮像装置、RF(Radio Frequency)タグなど、あらゆる装置がその範疇に含まれる。また、表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、電子ペーパー、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などが、その範疇に含まれる。
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも、図又は文章に記載されているものとする。ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。又は、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅又は電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とが、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
また、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いることがある。
また、図面上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置について説明する。
<半導体装置の構成例>
図1に、半導体装置10の構成例を示す。半導体装置10は、セルアレイ20、駆動回路30、アナログ処理回路40を有する。半導体装置10は、記憶装置として用いることが可能な装置である。
セルアレイ20は、複数のメモリセル21を有する。図1には、セルアレイ20がm行×n列(m、nは自然数)のメモリセル21(メモリセル21[1,1]乃至[m,n])を有する構成を示す。
メモリセル21は、データを記憶する機能を有する回路である。メモリセル21に記憶されるデータは2値であってもよいし、3値以上であってもよい。メモリセル21により多くの値を記憶することにより、半導体装置10の単位面積あたりの記憶容量を増大させることができる。
メモリセル21は、配線WL及び配線BLと接続されている。配線WLは、特定の行のメモリセル21を選択するための信号(以下、選択信号ともいう)を伝える機能を有する。配線BLは、メモリセル21に書き込むデータに対応する信号(以下、書き込み信号ともいう)、及びメモリセル21に記憶されたデータDmに対応する信号(以下、読み出し信号ともいう)を伝える機能を有する。
駆動回路30は、所定のメモリセル21を選択する機能を有する回路である。駆動回路30によって、データの書き込みや読み出しを行う特定の行のメモリセル21が選択される。具体的には、駆動回路30は、配線WL[1]乃至[m]のうち特定の配線WLに、選択信号を供給する機能を有する。駆動回路30は、デコーダなどを用いて構成することができる。
アナログ処理回路40は、入力されたデータの処理を行う機能を有する。具体的には、アナログ処理回路40は、外部から入力されたデータDin、及びメモリセル21に記憶されたデータDmを処理する機能を有する。図1には、アナログ処理回路40にn種類のデータDin(データDin[1]乃至[n])、及びn種類のデータDm(データDm[1]乃至[n])に対応する電流Ip[1]乃至[n]が入力される構成を示している。
アナログ処理回路40は、データ処理回路50及び電流制御回路60を有する。データ処理回路50は、データDinをメモリセル21に書き込む機能、及びデータDinとデータDmとを比較する機能を有する。データ処理回路50は、n個の回路51(回路51[1]乃至[n])を有する。回路51はそれぞれ、配線BLを介してメモリセル21と接続されている。回路51[1]乃至[n]にはそれぞれ、データDin[1]乃至[n]、及びデータDm[1]乃至[n]に対応する電流Ip[1]乃至[n]が入力される。
回路51は、データDinに対応する電流Icを生成する機能を有する。生成された電流Icは、配線BLを介してメモリセル21に供給される。このように、データDinに対応する電流Icを書き込み信号としてメモリセル21に供給することにより、メモリセル21へのデータの書き込みを行う。
また、メモリセル21はそれぞれ、そのメモリセル21に記憶されたデータDmに対応する電流Ipを生成する機能を有する。生成された電流Ipは、配線BLを介して回路51に供給される。このように、データDmに対応する電流Ipを読み出し信号として回路51に供給することにより、メモリセル21からのデータの読み出しを行うことができる。
また、データDinとデータDmの両方が回路51に入力されると、回路51において、データDinに対応する電流Ic、及びデータDmに対応する電流Ipが発生する。ここで、データDinとデータDmが一致する場合、電流Icと電流Ipは等しい値となる。一方、両者が一致しない場合、電流Icと電流Ipは異なる値となる。そのため、電流Icと電流Ipを比較することにより、データDinデータDmとが一致するか否かを判別することができる。
このように回路51は、アナログ値である電流値を比較することによってデータの比較を行うことができる。そのため、データの比較にあたってアナログ値である電流値をデジタル値に変換する必要がなく、データの比較を高速に行うことができる。よって、半導体装置10の動作速度を向上させることができる。また、A/D変換回路を設ける必要がないため、半導体装置10の面積を縮小することができる。
電流制御回路60は、データ処理回路50の内部に流れる電流を制御する機能を有する。具体的には、電流制御回路60は、回路51に入力されたデータDinとメモリセル21に記憶されたデータDmとが異なる場合に、回路51の内部に流れる電流を制御する機能を有する。
電流Ipが電流Icよりも小さい場合は、電流Ipと電流Icの差分(Ic−Ip)に相当する電流(以下、第1の差分電流ともいう)が、電流制御回路60から配線MLを介して回路51に供給される。一方、電流Ipが電流Icよりも大きい場合は、電流Icと電流Ipの差分(Ip−Ic)に相当する電流(以下、第2の差分電流ともいう)が、回路51から配線PLを介して電流制御回路60に供給される。これにより、回路51に流れる電流が補正される(以下、この補正を「差分電流の補正」ともいう)。このように、データDinとデータDmとが異なる場合、電流制御回路60によって差分電流の補正が行われる。なお、電流制御回路60からデータ処理回路50に流れる電流I(−)は、n個の回路51に発生する第1の差分電流の和に相当する。また、データ処理回路50から電流制御回路60に流れる電流I(+)は、n個の回路51に発生する第2の差分電流の和に相当する。差分電流の補正が行われる際の電流制御回路60の動作の詳細については、後述する。
また、電流制御回路60は、差分電流の補正の有無に対応する信号CMを出力する機能を有する。例えば、電流制御回路60は、差分電流の補正があったときは信号CMとしてハイレベルの信号を出力し、差分電流の補正がなかったときは信号CMとしてローレベルの信号を出力することができる。これにより、データDinとデータDmが一致するか否かの情報を、外部に出力することができる。
以上のように、半導体装置10は、外部から入力されたデータとメモリセル21に記憶されたデータの比較を、電流の比較により行うことができる。
次に、半導体装置10が備える各回路の構成例について説明する。
<メモリセルの構成例>
図2に、メモリセル21の構成例を示す。なお、ここでは代表例としてメモリセル21[1,1]、[1,2]、[2,1]、[2,2]を示しているが、他のメモリセル21も同様の構成とすることができる。
メモリセル21は、トランジスタ101乃至103、容量素子104を有する。トランジスタ101のゲートはトランジスタ103のソース又はドレインの一方と接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタ102のソース又はドレインの一方と接続され、ソース又はドレインの他方は配線VHと接続されている。トランジスタ102のゲートは配線RWLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線BLと接続されている。トランジスタ103のゲートは配線WWLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線VRと接続されている。容量素子104の第1の電極はトランジスタ101のゲートと接続され、第2の電極はトランジスタ101のソース又はドレインの一方と接続されている。容量素子104の第2の電極と接続されたノードを、ノードN1とする。
ここではトランジスタ101乃至103がnチャネル型である場合について説明するが、トランジスタの極性は適宜変更することができる。また、配線WWL及び配線RWLは図1における配線WLに対応し、駆動回路30と接続されている。
なお、本明細書等において、トランジスタのソースとは、活性層として機能する半導体層の一部であるソース領域や、当該半導体層と接続されたソース電極などを意味する。同様に、トランジスタのドレインとは、当該半導体層の一部であるドレイン領域や、当該半導体層と接続されたドレイン電極などを意味する。また、ゲートとは、ゲート電極などを意味する。
また、トランジスタが有するソースとドレインは、トランジスタの導電型及び各端子に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がソースと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれる。また、pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる端子がドレインと呼ばれ、高い電位が与えられる端子がソースと呼ばれる。本明細書では、便宜上、ソースとドレインとが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係にしたがってソースとドレインの呼び方が入れ替わる。
以下、メモリセル21[1,1]の動作例について説明する。なお、メモリセル21[1,2]、[2,1]、[2,2]、及びその他のメモリセル21も、メモリセル21[1,1]と同様に動作させることができる。また、以下、配線WWL[1]を配線WWL、配線RWL[1]を配線RWL、配線BL[1]を配線BLと表記して説明する。また、ここでは配線VH及び配線VRにハイレベルの電位が供給されている場合について説明する。
[データの書き込み]
データの書き込み時、回路51にはメモリセル21に書き込むデータDinが入力されている。そして、回路51ではデータDinに対応する電流Icが生成され、電流Icは配線BLに供給されている。
まず、配線RWL及び配線WWLの電位をハイレベルとし、トランジスタ102及びトランジスタ103をオン状態とする。これにより、ノードN1には配線BLの電位が供給され、トランジスタ101のゲートには配線VRの電位が供給される。
ここで、トランジスタ101を流れる電流が、回路51で生成された電流Icよりも大きい場合、ノードN1の電位が上昇する。そして、トランジスタ101を流れる電流が電流Icと等しくなると、ノードN1の電位が一定となる。一方、トランジスタ101を流れる電流が、回路51で生成された電流Icよりも小さい場合、ノードN1の電位が下降する。そして、トランジスタ101を流れる電流が電流Icと等しくなると、ノードN1の電位が一定となる。
このときのノードN1の電位は、回路51に入力されたデータDinに対応する値となる。より具体的には、ノードN1の電位が、回路51によって生成されたデータDinに対応する電流と等しい電流を、配線BLに流すことが可能となる電位に設定される。そのため、上記の動作により、データDinのメモリセル21への書き込みを行うことができる。
[データの保持]
次に、配線WWLの電位をローレベルとし、トランジスタ103をオフ状態とする。これにより、容量素子104の第1の電極と第2の電極の間の電圧が保持され、メモリセル21に書き込まれたデータが保持される。
[データの読み出し]
メモリセル21にデータDmが記憶されている状態で、配線RWLの電位をハイレベルとし、トランジスタ102をオン状態とする。このとき、トランジスタ101には電流Ipが流れる。そして、電流Ipは配線BLを介して回路51に供給される。
ここで、電流Ipは、容量素子104の第1の電極と第2の電極の間の電圧に応じた電流、すなわち、メモリセル21に記憶されたデータDmに対応する電流である。そのため、電流Ipの値から、メモリセル21に記憶されたデータDmを判別することができる。
以上の動作により、メモリセル21におけるデータの書き込み、保持、読み出しを行うことができる。
ここで、メモリセル21におけるデータの書き込みは、トランジスタ101に流れる電流が電流Icと等しくなるまで、ノードN1の電位を変化させることによって行う。これは、メモリセル21間でトランジスタ101の特性にばらつきがある場合に、各メモリセル21において、トランジスタ101の特性を補正してデータの書き込みを行う動作に相当する。よって、半導体装置10の信頼性を向上させることができる。また、データの書き込み時、フラッシュメモリで必要とされるベリファイ動作を省略することができるため、データの高速な書き込みが可能となり、半導体装置10の動作速度を向上させることができる。
また、ノードN1には、3以上の多値のデータに対応する電位を書き込むこともできるため、メモリセル21に2値のデジタルデータを書き込む場合と比較して、記憶容量を増大させることができる。
トランジスタ101乃至103には、チャネル形成領域に酸化物半導体を含むトランジスタ(以下、OSトランジスタともいう)を用いることができる。酸化物半導体は、シリコンなどの他の半導体よりもバンドギャップが広く、またキャリア密度を低くすることができるため、OSトランジスタのオフ電流は極めて小さい。そのため、トランジスタ103、又は、トランジスタ101及びトランジスタ102にOSトランジスタを用いることにより、容量素子104の第1の電極と第2の電極間の電圧を長期間にわたって保持することができる。よって、所定の周期で再度書き込みを行う動作(リフレッシュ動作)が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて少なくすることができる。また、メモリセル21への電力の供給が停止された期間においても、長期間データを保持することができる。したがって、半導体装置10における消費電力を低減することが可能となる。
また、メモリセル21に多値データを記憶する場合、メモリセル21における電荷のリークが微小であっても、メモリセル21に記憶されたデータDmの変動が生じ得る。しかしながら、メモリセル21にオフ電流が極めて小さいOSトランジスタを用いることにより、電荷のリークを極めて小さく抑えることができる。よって、メモリセル21に記憶された多値データを正確に保持することができ、半導体装置10の信頼性を向上させることができる。
また、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタともいう)と比べて耐圧性が高い。そのため、メモリセル21にOSトランジスタを用いることにより、メモリセル21に保持される電位の範囲を広げることができる。そのため、メモリセル21に記憶する情報量を増加させることができる。
また、メモリセル21が有するトランジスタとして、チャネル形成領域が単結晶半導体を有する基板の一部に形成されるトランジスタ(以下、単結晶トランジスタともいう)を用いることもできる。単結晶半導体を有する基板としては、単結晶シリコン基板や単結晶ゲルマニウム基板などがあげられる。単結晶トランジスタは高速な動作が可能であるため、メモリセル21に単結晶トランジスタを用いることにより、メモリセル21の動作速度を向上させることができる。
また、メモリセル21には、酸化物半導体以外の半導体を含む膜にチャネル形成領域が形成されるトランジスタを用いることもできる。酸化物半導体以外の半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、有機半導体などがあげられる。これら酸化物半導体以外の半導体は、単結晶半導体であってもよいし、非晶質半導体、微結晶半導体、多結晶半導体などの非単結晶半導体であってもよい。
なお、メモリセル21は、半導体材料が異なる複数のトランジスタを有していてもよい。例えば、トランジスタ103としてオフ電流が低いOSトランジスタを用い、トランジスタ101、102として高速動作が可能なトランジスタ(例えば、単結晶シリコン又は多結晶シリコンにチャネル形成領域が形成されるトランジスタなど)を用いることができる。この場合、トランジスタ103のオフ電流を低減して容量素子104の第1の電極と第2の電極間の電圧を正確に保持しつつ、トランジスタ101、102を用いて高速なデータの読み書きを行うことができる。
<入力回路の構成例>
図3に、データ処理回路50に含まれる回路51の構成例を示す。なお、ここでは代表例として回路51[1]、[2]を示しているが、他の回路51も同様の構成とすることができる。
回路51は、トランジスタ201乃至204、回路210を有する。ここでは、トランジスタ201乃至204がnチャネル型である場合について説明するが、トランジスタの極性は適宜変更することができる。
トランジスタ201のゲートは回路210と接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタ202のソース又はドレインの一方、及びメモリセル21と接続され、ソース又はドレインの他方は配線VLと接続されている。トランジスタ202のゲートは配線CAと接続され、ソース又はドレインの他方はトランジスタ203のソース又はドレインの一方、及びトランジスタ204のソース又はドレインの一方と接続されている。トランジスタ203のゲートはトランジスタ203のソース又はドレインの他方、及び配線MLと接続されている。トランジスタ204のゲートはトランジスタ204のソース又はドレインの一方と接続され、ソース又はドレインの他方は配線PLと接続されている。
配線ML及び配線PLは、回路51[1]乃至[n]において共有されており、電流制御回路60と接続されている。
次に、回路51の動作について説明する。以下、回路51[1]の動作例について説明する。なお、回路51[2]、及びその他の回路51も、回路51[1]と同様に動作させることができる。また、以下、データDin[1]をデータDin、配線BL[1]を配線BLと表記して説明する。また、ここでは配線VLにローレベルの電位が供給されている場合について説明する。
[データの書き込み]
まず、外部から入力されたデータDinをメモリセル21に書き込む際の、回路51の動作について説明する。書き込み動作時は、配線CAの電位をローレベルとしてトランジスタ202をオフ状態とした状態で、回路210にデータDinを入力する。
回路210は、デジタル信号をアナログ信号に変換する機能を有する回路である。すなわち、回路210はD/A変換回路としての機能を有する。データDinがデジタル信号である場合、データDinは回路210によってアナログ信号に変換され、トランジスタ201のゲートに供給される。なお、データDinがアナログ信号である場合は、回路210を省略することができる。
図4に、回路210の具体例を示す。回路210は、トランジスタ251、トランジスタ252を用いて構成することができる。図4においては、sビット(sは自然数)のデジタル信号D(D_1乃至D_s)が入力され、s個のトランジスタ251(トランジスタ251[1]乃至[s])が設けられた回路210の構成例を示している。なお、ここではトランジスタ251がpチャネル型、トランジスタ252がnチャネル型である場合について説明するが、トランジスタの極性は適宜変更することができる。
s個のトランジスタ251は並列に接続され、それぞれのゲートにはデータD_1乃至D_sのいずれかが入力される。各トランジスタ251のソースまたはドレインの一方はトランジスタ252のゲート、トランジスタ252のソース又はドレインの一方、及びトランジスタ201のゲートと接続され、ソース又はドレインの他方は配線VHと接続されている。トランジスタ252のソース又はドレインの他方は、配線VLと接続されている。ここでは、配線VHにハイレベルの電位が供給され、配線VLにローレベルの電位が供給されている場合について説明する。
トランジスタ251は、ゲートに入力されたデータD_1乃至D_sのいずれかに応じた電流を流す機能を有する。例えば、トランジスタ251[1]は、データD_1に応じた電流Id[1]をソース−ドレイン間に流す機能を有する。なお、s個のトランジスタ251は、飽和領域で動作させることが好ましい。
ここで、トランジスタ251[1]乃至[s]はそれぞれ、ゲートに同じ電位を供給した際に、ソース−ドレイン間に流れる電流Idが異なるように設計されている。具体的には、トランジスタ251[1]乃至[s]のゲートに同じ電位を供給した際、Id[1]:Id[2]:Id[s]が、20:21:2s−1となるように設計する。例えば、トランジスタ251[1]乃至[s]のチャネル幅の比を20:21:・・・:2s−1としてもよい。または、トランジスタ251[1]乃至[s]をそれぞれ、同サイズのトランジスタを20個、21個、・・・、2s−1個並列に接続することによって構成してもよい。このような構成とすることにより、データD_1乃至D_sに応じて回路210に流れる電流Ic(電流Id[1]乃至[s]の和に相当)が一義的に決まる。
そして、トランジスタ251[1]乃至[s]によって得られた電流Icは、トランジスタ252とトランジスタ201で構成されるカレントミラー回路によって配線BLに供給される。これにより、デジタル信号であるD_1乃至D_sをアナログ信号である電流Icに変換して、配線BLに供給することができる。
図3において、回路210にデータDinが入力されると、トランジスタ201のゲートにデータDinに対応する電位が供給される。このとき、トランジスタ201にはゲートの電位に対応する電流Icが流れる。なお、データの書き込み時においては、トランジスタ201を飽和領域で動作させることが好ましい。
電流Icは、配線BLを介してメモリセル21に供給される。この電流Icは書き込み信号に対応する。そして、前述の通り、メモリセル21のノードN1には電流Icに対応する電位が供給され、保持される。このような動作により、データDinのメモリセル21への書き込みが行われる。
[データの比較]
回路51には、データDinと、メモリセル21に記憶されたデータDmが入力される。そして、データDinとデータDmの両方が回路51に入力されたとき、配線BLには電流Icと電流Ipが流れる。なお、電流Ipは、前述したメモリセル21の読み出し動作により生成される。
ここで、電流Icと電流Ipを比較することにより、データDinとデータDmの比較を行うことができる。具体的には、データDinとデータDmが一致する場合は、電流Icと電流Ipが等しくなる。一方、データDinとデータDmが一致しない場合は、電流Icと電流Ipが異なる値をとる。よって、電流Icと電流Ipが一致するか否かを判別することにより、データDinとデータDmが一致するか否かを判別することができる。
以下、データDinとデータDmとの比較を行う際の、回路51の動作について説明する。
まず、配線CAをハイレベルとしてトランジスタ202をオン状態とする。そして、回路210にデータDinを入力するとともに、回路51と接続されたメモリセル21において読み出し動作を行う。
回路210にデータDinが入力されると、トランジスタ201及び配線BLには、データDinに対応する電流Icが流れる。また、回路51と接続されたメモリセル21において読み出し動作が行われると、当該メモリセル21に記憶されたデータDmに対応する電流Ipが生成されて配線BLに流れ、回路51に供給される。
ここで、電流Icと電流Ipが等しい場合は、配線ML及び配線PLに電流は流れず、差分電流の補正は行われない。差分電流の補正が行われないことは、データDinとデータDmが一致していることを意味する。
一方、電流Ip<電流Icである場合は、トランジスタ201に供給される電流を補うため、電流制御回路60から配線ML及びトランジスタ203を介して回路51に電流i(−)が流れ、トランジスタ201に供給される。このときの電流i(−)は、電流Icと電流Ipの差分に対応する。そして、配線MLには、回路51[1]乃至[n]においてそれぞれ発生する電流i(−)(電流i(−)[1]乃至[n])の和に相当する、電流I(−)が流れる。
また、電流Ip>電流Icである場合は、トランジスタ201に供給される電流を制限するため、回路51から配線PL及びトランジスタ204を介して電流制御回路60に電流i(+)が流れる。このときの電流i(+)は、電流Ipと電流Icの差分に対応する。そして、配線PLには、回路51[1]乃至[n]においてそれぞれ発生する電流i(+)(電流i(+)[1]乃至[n])の和に相当する、電流I(+)が流れる。
このように、電流Ipと電流Icが異なる場合、電流i(−)又は電流i(+)が発生し、差分電流の補正が行われる。そのため、差分電流の補正の有無により、データDinとデータDmとが一致するか否かを判別することができる。なお、差分電流の補正があったか否かの情報は、電流制御回路60から信号CMとして出力することができる。
データDinとデータDmの比較が完了した後は、配線CAにローレベルの電位を供給してトランジスタ202をオフ状態とする。これにより、データの比較動作が終了する。
このように回路51は、アナログ値である電流Icと電流Ipを比較することによって、データの比較を行うことができる。なお、メモリセル21に記憶されたデータDmは、前述のように、トランジスタ101の特性を補正して書き込まれたデータである。そのため、回路51はデータDinとデータDmの比較を正確に行うことができ、半導体装置10の信頼性を向上させることができる。また、電流Ipをデジタル値に変換することなく、データDinとデータDmの比較を行うことができる。そのため、データの比較を高速に行うことができ、半導体装置10の動作速度を向上させることができる。また、A/D変換回路を省略して半導体装置10の面積を縮小することができる。
なお、図3においては、各回路51において同時にデータの比較が行われ、データDinとデータDmが一致しない列が少なくとも1つ存在すると、電流I(−)又は電流I(+)が発生して差分電流の補正が行われる。そのため、例えば、Din[1]乃至[n]の各々、及びデータDm[1]乃至[n]の各々がsビットのデータであるとすると、外部から入力されたs×nビットのデータDinと、セルアレイ20のある行に属するn個のメモリセル21に記憶されたs×nビットのデータDmとを一括で比較することができる。
<電流制御回路の構成例>
図5に、電流制御回路60の構成例を示す。電流制御回路60は、コンパレータ301、コンパレータ302、トランジスタ303乃至309を有する。ここでは、トランジスタ303、305、307、308がpチャネル型であり、トランジスタ304、306、309がnチャネル型である場合について説明するが、トランジスタの極性は適宜変更することができる。
コンパレータ301の非反転入力端子は配線MLと接続され、反転入力端子は電位Vref(−)が入力される端子と接続され、出力端子はトランジスタ303のゲート、及びトランジスタ305のゲートと接続されている。コンパレータ302の非反転入力端子は配線PLと接続され、反転入力端子は電位Vref(+)が入力される端子と接続され、出力端子はトランジスタ304のゲート、及びトランジスタ306のゲートと接続されている。トランジスタ303のソースまたはドレインの一方は配線MLと接続され、ソースまたはドレインの他方は高電源電位VDDが供給される端子と接続されている。トランジスタ304のソースまたはドレインの一方は配線PLと接続され、ソースまたはドレインの他方は低電源電位VSSが供給される端子と接続されている。トランジスタ305のソースまたはドレインの一方はトランジスタ308のソース又はドレインの一方、及びトランジスタ309のソース又はドレインの一方と接続され、ソースまたはドレインの他方は高電源電位VDDが供給される端子と接続されている。トランジスタ306のソースまたはドレインの一方はトランジスタ307のゲート、トランジスタ308のゲート、およびトランジスタ307のソースまたはドレインの一方と接続され、ソースまたはドレインの他方は低電源電位VSSが供給される端子と接続されている。トランジスタ307のソースまたはドレインの他方は高電源電位VDDが供給される端子と接続されている。トランジスタ308のソースまたはドレインの他方は高電源電位VDDが供給される端子と接続されている。トランジスタ309のゲートは所定の電位BIASが供給される端子と接続され、ソースまたはドレインの他方は低電源電位VSS2が供給される端子と接続されている。
トランジスタ305のソースまたはドレインの一方、トランジスタ308のソース又はドレインの一方、及びトランジスタ309のソース又はドレインの一方と接続されたノードの電位が、信号CMとして外部に出力される。なお、信号CMの外部への出力は、バッファを介して行ってもよい。また、トランジスタ307とトランジスタ308は、カレントミラー回路を形成している。
次に、電流制御回路60の動作の一例について説明する。
前述の通り、データDinとデータDmを比較する場合において、電流Icと電流Ipが異なると、配線MLに流れる電流I(−)、又は配線PLに流れる電流I(+)が発生し、差分電流の補正が行われる。電流制御回路60は、これらの電流I(−)、電流I(+)を生成する機能と、差分電流の補正の有無に対応する信号CMを生成し、外部に出力する機能を有する。
まず、電流Ip<電流Icであり、配線MLに電流I(−)が流れる場合の動作を説明する。
電流Ip<電流Icである場合、コンパレータ301とトランジスタ303は、回路51のトランジスタ201に流れる電流を補うように動作し、配線MLには電流I(−)が流れる。トランジスタ303を介して配線MLに流れる電流が電流I(−)として要求される電流よりも少ない場合は、コンパレータ301の非反転入力端子の電位が低下し、コンパレータ301の出力も低下する。これにより、トランジスタ303のゲートの電位が低下し、トランジスタ303を介して配線MLに流れる電流が増加するため、配線MLに電流I(−)として要求される電流を流すことができる。一方、トランジスタ303を介して配線MLに流れる電流が電流I(−)として要求される電流よりも多い場合は、コンパレータ301の非反転入力端子の電位が上昇し、コンパレータ301の出力も上昇する。これにより、トランジスタ303のゲートの電位が上昇し、トランジスタ303を介して配線MLに流れる電流が減少するため、配線MLに電流I(−)として要求される電流を流すことができる。
また、コンパレータ301の出力は、トランジスタ305のゲートにも供給される。配線MLに電流I(−)が流れる場合、トランジスタ305のゲートの電位が低下し、トランジスタ305に電流が流れる。これにより、信号CMはハイレベルとなる。
次に、電流Ip>電流Icであり、配線PLに電流I(+)が流れる場合の動作を説明する。
電流Ip>電流Icである場合、コンパレータ302とトランジスタ304は、回路51のトランジスタ201に流れる電流を制限するように動作し、配線PLには電流I(+)が流れる。トランジスタ304を介して配線PLに流れる電流が電流I(+)として要求される電流よりも少ない場合は、コンパレータ302の非反転入力端子の電位が上昇し、コンパレータ302の出力も上昇する。これにより、トランジスタ304のゲートの電位が上昇し、トランジスタ304を介して配線PLに流れる電流が増加するため、配線PLに電流I(+)として要求される電流を流すことができる。一方、トランジスタ304を介して配線PLに流れる電流が電流I(+)として要求される電流よりも多い場合は、コンパレータ302の非反転入力端子の電位が低下し、コンパレータ302の出力も低下する。これにより、トランジスタ304のゲートの電位が低下し、トランジスタ304を介して配線PLに流れる電流が減少するため、配線PLに電流I(+)として要求される電流を流すことができる。
また、コンパレータ302の出力は、トランジスタ306のゲートにも供給される。配線PLに電流I(+)が流れる場合、トランジスタ306のゲートの電位が上昇し、トランジスタ306に電流が流れる。そして、トランジスタ306に流れる電流はトランジスタ307にも流れ、トランジスタ307に流れる電流はカレントミラー回路の作用によりトランジスタ308にも流れる。これにより、信号CMはハイレベルとなる。
なお、電流Icと電流Ipが等しい場合は、電流I(−)及び電流I(+)は発生せず、信号CMはローレベルとなる。
以上のように電流制御回路60は、データDinとデータDmを比較する際、電流Icと電流Ipの大小関係に応じて、電流I(−)及び電流I(+)を生成することができる。そして、データが一致するか否かの情報を含む信号CMを生成し、外部に出力することができる。
なお、コンパレータ301、コンパレータ302は、例えば図6に示すような回路によって構成することができる。図6に示すコンパレータは、トランジスタ321乃至327を有する。なお、端子INPはコンパレータの非反転入力端子に対応し、端子INMはコンパレータの反転入力端子に対応し、端子OUTはコンパレータの出力端子に対応する。また、トランジスタ327のゲートには適切なバイアス電圧Vbが供給される。
<半導体装置の動作例>
次に、半導体装置10の具体的な動作例を、図7に示すタイミングチャートを用いて説明する。ここでは特に、図2に示すメモリセル21、図3に示す回路51、図5に示す電流制御回路60の動作例について詳しく説明する。なお、図7において、時刻T1乃至T8はデータDinのメモリセル21への書き込みを行う期間に相当し、時刻T10乃至T14はデータDinとデータDmの比較を行う期間に相当する。
まず、時刻T1乃至T2において、配線RWL[1]及び配線WWL[1]の電位をハイレベルとし、配線RWL[2]、配線WWL[2]、配線RWL[m]、配線WWL[m]の電位をローレベルとする。これにより、メモリセル21[1,1]乃至[1,n]においてトランジスタ102及びトランジスタ103がオン状態となる。また、データDin[1]乃至[n]として、それぞれ信号D11乃至Dn1を回路51[1]乃至[n]に入力する。また、配線CAの電位をローレベルとする。
ここで、信号D11乃至Dn1はそれぞれ、回路51[1]乃至[n]が有する回路210によってアナログ信号に変換される。そして、回路51[1]乃至[n]において、信号D11乃至Dn1に対応する電流Ic[1]乃至[n]が、トランジスタ201に流れる。なお、時刻T1乃至T2においてトランジスタ201は飽和領域で動作させることが好ましい。
また、メモリセル21[1,1]乃至[1,n]では、配線VRの電位(ハイレベル)がトランジスタ103を介してトランジスタ101のゲートに供給され、配線BLの電位がトランジスタ102を介してノードN1に供給される。
ここで、トランジスタ101を流れる電流が、同列の回路51が供給し得る電流よりも大きい場合は、ノードN1の電位が上昇し、トランジスタ101を流れる電流が減少する。一方、トランジスタ101を流れる電流が、同列の回路51が供給し得る電流よりも小さい場合は、ノードN1の電位が下降し、トランジスタ101を流れる電流が増加する。そして、トランジスタ101を流れる電流が同列の回路51が供給し得る電流(Ic)と等しい値なると、ノードN1の電位が一定となる。
このときのメモリセル21[1,1]乃至[1,n]におけるノードN1の電位は、それぞれ信号D11乃至Dn1に対応する電位となる。したがって、上記の動作により、信号D11乃至Dn1に対応するデータをメモリセル21[1,1]乃至[1,n]に書き込むことができる。
次に、時刻T2乃至T3において、配線WWL[1]の電位をローレベルとする。これにより、メモリセル21[1,1]乃至[1,n]においてトランジスタ103がオフ状態となる。これにより、容量素子104の第1の電極と第2の電極間の電圧は、同列の回路51が供給し得る電流とトランジスタ101を流れる電流を等しくする電圧に維持される。よって、信号D11乃至Dn1に対応するデータをメモリセル21[1,1]乃至[1,n]に保持することができる。
次に、時刻T3乃至T5において、時刻T1乃至T3と同様の動作により、信号D12乃至Dn2に対応するデータをメモリセル21[2,1]乃至[2,n]に書き込み、保持する。また、時刻T6乃至T8において、信号D1m乃至Dnmに対応するデータをメモリセル21[m,1]乃至[m,n]に書き込み、保持する。
以上の動作により、データDinをメモリセル21に書き込むことができる。
次に、外部から入力されるデータDinと、メモリセル21に記憶されたデータDmとの比較を行う。時刻T10乃至T14において、回路51[1]乃至[n]にはそれぞれ、信号D12乃至Dn2が入力されているものとする。
まず、時刻T10乃至T11において、配線RWL[1]の電位をハイレベルとし、配線WWL[1]、配線RWL[2]、配線WWL[2]、配線RWL[m]、配線WWL[m]の電位をローレベルとする。これにより、メモリセル21[1,1]乃至[1,n]においてトランジスタ102がオン状態となる。また、配線CAの電位をハイレベルとする。
ここで、メモリセル21[1,1]乃至[1,n]におけるトランジスタ101には、それぞれ信号D11乃至Dn1に対応する電流Ip[1]乃至[n]が流れる。そして、電流Ip[1]乃至[n]はそれぞれ、配線BL[1]乃至[n]を介して回路51[1]乃至[n]に供給される。
一方、回路51[1]乃至[n]にはそれぞれ信号D12乃至Dn2が入力されており、信号D12乃至Dn2に対応する電流Ic[1]乃至[n]が流れる。なお、時刻T10乃至T11において、トランジスタ201は飽和領域で動作させることが好ましい。
ここで、時刻T10乃至T11においては、電流Ip[1]<電流Ic[1]、電流Ip[2]>電流Ic[2]、電流Ip[n]=電流Ic[n]とする。このとき、回路51[1]においては、電流Ip[1]と電流Ic[1]の差分に相当する電流がトランジスタ203に流れる。また、回路51[2]においては、電流Ip[2]と電流Ic[2]の差分に相当する電流がトランジスタ204に流れる。そして、電流制御回路60におけるコンパレータ301は、回路51[1]乃至[n]のトランジスタ203に流れる電流の総和に相当する電流I(−)が配線MLに供給されるように、トランジスタ303のゲートの電位を制御する。また、電流制御回路60におけるコンパレータ302は、回路51[1]乃至[n]のトランジスタ204に流れる電流の総和に相当する電流I(+)が配線PLに供給されるように、トランジスタ304のゲートの電位を制御する。
また、電流I(−)に対応する電流はトランジスタ305にも流れ、電流I(+)に対応する電流はトランジスタ306、トランジスタ307、及びトランジスタ308にも流れる。その結果、電流制御回路60から出力される信号CMはハイレベルとなる。これは、データDinとデータDmが異なることを意味する。
次に、時刻T11乃至T12において、配線RWL[2]の電位をハイレベルとし、配線RWL[1]、配線WWL[1]、配線WWL[2]、配線RWL[m]、配線WWL[m]の電位をローレベルとする。これにより、メモリセル21[2,1]乃至[2,n]においてトランジスタ102がオン状態となる。
ここで、メモリセル21[2,1]乃至[2,n]におけるトランジスタ101には、それぞれ信号D12乃至Dn2に対応する電流Ip[1]乃至[n]が流れる。そして、電流Ip[1]乃至[n]はそれぞれ、配線BL[1]乃至[n]を介して回路51[1]乃至[n]に供給される。
一方、回路51[1]乃至[n]にはそれぞれ信号D12乃至Dn2が入力されており、信号D12乃至Dn2に対応する電流Ic[1]乃至[n]が流れる。なお、時刻T11乃至T12においてトランジスタ201は飽和領域で動作させることが好ましい。
ここで、時刻T11乃至T12においては、電流Ip[1]=電流Ic[1]、電流Ip[2]=電流Ic[2]、電流Ip[n]=電流Ic[n]とする。このとき、回路51[1]乃至[n]において、トランジスタ203を流れる電流及びトランジスタ204を流れる電流は生じず、電流I(−)及び電流I(+)も生じない。よって、電流制御回路60におけるトランジスタ305、トランジスタ306はオフ状態となり、電流制御回路60から出力される信号CMはローレベルとなる。これは、データDinとデータDmが一致していることを意味する。
次に、時刻T13乃至T14において、配線RWL[m]の電位をハイレベルとし、配線RWL[1]、配線WWL[1]、配線RWL[2]、配線WWL[2]、配線WWL[m]の電位をローレベルとする。これにより、メモリセル21[m,1]乃至[m,n]においてトランジスタ102がオン状態となる。
ここで、メモリセル21[m,1]乃至[m,n]におけるトランジスタ101には、それぞれ信号D1m乃至Dnmに対応する電流Ip[1]乃至[n]が流れる。そして、電流Ip[1]乃至[n]はそれぞれ、配線BL[1]乃至[n]を介して回路51[1]乃至[n]に供給される。
一方、回路51[1]乃至[n]にはそれぞれ信号D12乃至Dn2が入力されており、信号D12乃至Dn2に対応する電流Ic[1]乃至[n]が流れる。なお、時刻T13乃至T14においてトランジスタ201は飽和領域で動作させることが好ましい。
ここで、時刻T13乃至T14においては、電流Ip[1]<電流Ic[1]、電流Ip[2]<電流Ic[2]、電流Ip[n]>電流Ic[n]とする。このとき、回路51[1]においては、電流Ip[1]と電流Ic[1]の差分に相当する電流がトランジスタ203に流れる。また、回路51[2]においては、電流Ip[2]と電流Ic[2]の差分に相当する電流がトランジスタ203に流れる。また、回路51[n]においては、電流Ip[n]と電流Ic[n]の差分に相当する電流がトランジスタ204に流れる。そして、電流制御回路60におけるコンパレータ301は、回路51[1]乃至[n]のトランジスタ203に流れる電流の総和に相当する電流I(−)が配線MLに流れるように、トランジスタ303のゲートの電位を制御する。また、電流制御回路60におけるコンパレータ302は、回路51[1]乃至[n]のトランジスタ204に流れる電流の総和に相当する電流I(+)が配線PLに流れるように、トランジスタ304のゲートの電位を制御する。
また、電流I(−)に対応する電流はトランジスタ305にも流れ、電流I(+)に対応する電流はトランジスタ306、トランジスタ307、及びトランジスタ308にも流れる。その結果、電流制御回路60から出力される信号CMはハイレベルとなる。これは、データDinとデータDmが異なることを意味する。
以上のような動作により、データDinのメモリセル21への書き込み、及びデータDinとデータDmの比較を行うことができる。
本発明の一態様は、上記のような構成を有することにより、高速且つ正確なデータの書き込み及び比較を行うことができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置10の他の構成例について説明する。
<メモリセルの変形例>
図8、図9、図10に、半導体装置10に用いることができるメモリセルの変形例を示す。なお、図8、図9、図10に示すメモリセルは、以下に説明する点以外は、メモリセル21と同様の構成、動作を適用することができる。
図8に、メモリセル22の構成を示す。メモリセル22は、トランジスタ101がpチャネル型であり、低電源電位が供給される配線VLと接続されている点、配線VRにローレベルの電位が供給される点において、図2に示すメモリセル21と異なる。
メモリセル22におけるデータの書き込み、保持、及び読み出し動作は、メモリセル21と同様である。ただし、トランジスタ101にはノードN1から配線VLに向かう方向に電流が流れる。
また、図9にメモリセル21の変形例であるメモリセル23を示す。メモリセル23には配線VRが設けられておらず、素子の接続関係がメモリセル21と異なる。
メモリセル23は、トランジスタ111乃至113、容量素子114を有する。トランジスタ111のゲートはトランジスタ113のソース又はドレインの一方と接続され、ソース又はドレインの一方はトランジスタ112のソース又はドレインの一方、及びトランジスタ113のソース又はドレインの他方と接続され、ソース又はドレインの他方は低電源電位が供給される配線VLと接続されている。トランジスタ112のゲートは配線RWLと接続され、ソース又はドレインの他方は配線BLと接続されている。トランジスタ113のゲートは配線WWLと接続されている。容量素子114の第1の電極はトランジスタ111のソース又はドレインの他方と接続され、第2の電極はトランジスタ111のゲートと接続されている。容量素子114の第2の電極と接続されたノードを、ノードN2とする。
メモリセル23に書き込むデータに対応する電位は、ノードN2に保持される。そして、トランジスタ111には、トランジスタ112のソース又はドレインの一方から配線VLに向かう方向に電流が流れる。
また、図10にメモリセル24の構成を示す。メモリセル24は、トランジスタ111がpチャネル型であり、高電源電位が供給される配線VHと接続されている点において、図9に示すメモリセル23と異なる。
メモリセル24におけるデータの書き込み、保持、及び読み出し動作は、メモリセル23と同様である。ただし、トランジスタ111には配線VHからトランジスタ112のソース又はドレインの一方に向かう方向に電流が流れる。
また、図2に示すメモリセル21又は図8に示すメモリセル22において、トランジスタ102を、トランジスタ101と、配線VH又は配線VLとの間に配置してもよい。図36に、トランジスタ102がトランジスタ101と配線VHとの間に配置されたメモリセル25の構成を示す。
また、図9に示すメモリセル23又は図10に示すメモリセル24において、トランジスタ112を、トランジスタ111と、配線VL又は配線VHとの間に配置してもよい。図37に、トランジスタ112がトランジスタ111と配線VLとの間に配置されたメモリセル26の構成を示す。
<データ処理回路の変形例>
図11に、データ処理回路50に設けられる回路51の変形例である、回路52の構成を示す。回路52は、トランジスタ201がpチャネル型であり、高電源電位が供給される配線VHと接続されている点において、図3に示す回路51と異なる。
回路52におけるデータの書き込み及び比較動作は、回路51と同様である。ただし、電流Ic及び電流Ipは、配線VHからメモリセル21に向かう方向に流れる。図8、図9に示すように、メモリセル内のトランジスタが低電源電位が供給される配線VLと接続されている場合、図11に示すように、トランジスタ201は高電源電位が供給される配線VHと接続されている構成とすることが好ましい。
また、図12に、図4における回路210の変形例である、回路211の構成を示す。回路211は、トランジスタ251[1]乃至[s]がnチャネル型であり、低電源電位が供給される配線VLと接続されている点、トランジスタ252がpチャネル型であり、高電源電位が供給される配線VHと接続されている点において、図4に示す回路210と異なる。
回路211の動作は回路210と同様である。ただし、電流Id[1]乃至[s]及び電流Icの流れる方向は、回路210と逆になる。図11に示すようにトランジスタ201が高電源電位が供給される配線VHと接続されている場合、図12に示す回路211を用いることが好ましい。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置を、コンピュータにおける記憶装置として用いた場合の構成例について説明する。
図13(A)は、コンピュータの構成例を示すブロック図である。
コンピュータ400は、入力装置410、出力装置420、中央演算処理装置430、主記憶装置440を有する。
中央演算処理装置430は、制御回路431、演算回路432、記憶装置433及び記憶装置434を有する。
入力装置410は、コンピュータ400の外部からのデータを受信する機能を有する。また、出力装置420は、コンピュータ400の外部にデータを出力する機能を有する。
制御回路431は、入力装置410、出力装置420、主記憶装置440、演算回路432、記憶装置433及び記憶装置434に制御信号を出力する機能を有する。演算回路432は、入力されたデータを用いて演算を行う機能を有する。記憶装置433は、演算回路432における演算に用いられるデータを保持することができ、レジスタとしての機能を有する。記憶装置434は、主記憶装置440内のデータの一部を記憶することができ、キャッシュメモリとしての機能を有する。
上記実施の形態における半導体装置10は、記憶装置433、記憶装置434、又は主記憶装置440に用いることができる。なお、図13(A)において記憶装置434は中央演算処理装置430の内部に設けられているが、中央演算処理装置430の外に設けられていてもよいし、中央演算処理装置430の内部と外部の両方に設けられていてもよい。また、記憶装置434は、中央演算処理装置430の内部と外部の両方に、それぞれ複数設けられていてもよい。記憶装置434が中央演算処理装置430の内部と外部の両方に設けられている場合、内部に設けられた記憶装置434は一次キャッシュとして用いることができ、外部に設けられた記憶装置434は二次キャッシュとして用いることができる。
記憶装置433、記憶装置434は、主記憶装置440よりも高速な動作が可能である。また、主記憶装置440の容量は記憶装置434の容量よりも大きく、記憶装置434の容量は記憶装置433の容量よりも大きい構成とすることができる。
キャッシュメモリとしての機能を有する記憶装置434を設けることにより、中央演算処理装置430の処理速度を向上させることができる。
次に、記憶装置434をキャッシュメモリとして用いた場合の詳細を説明する。図13(B)に、記憶装置434の構成例を示す。
記憶装置434は、記憶領域451、比較回路452、及び選択回路453を有する。記憶領域451には、主記憶装置440に記憶されたデータの一部のコピーを記憶することができる。具体的には、記憶領域451は所定の情報量を記憶することができる複数の記憶領域(以下、ラインともいう)を有する。図13(B)には、記憶領域451がt行(tは自然数)のラインを有する場合を例示している。また、各ラインは、データが記憶される記憶領域であるデータフィールドDFと、データフィールドDFに記憶されているデータに対応するアドレスが記憶される記憶領域であるタグフィールドTFを有する。タグフィールドTFに記憶されるデータをタグデータという。タグフィールドTFには、同一のラインに複数のタグデータを記憶することもできる。
比較回路452は、制御回路431から入力されたアドレス信号ADDRと、タグフィールドTFに記憶されているタグデータとを比較し、比較の結果を選択回路453に出力する機能を有する。この比較により、キャッシュヒットであるかキャッシュミスであるかを判別することができる。
選択回路453は、データフィールドDFに記憶されたデータから、キャッシュヒットしたラインのデータを選択して、制御回路431に信号DATAとして出力する機能を有する。また、選択回路453は、キャッシュヒットであるかキャッシュミスであるかの情報を含む信号CHを、制御回路431に出力する機能を有する。
比較回路452におけるアドレス信号ADDRとタグデータの比較の結果、キャッシュヒットであった場合、選択回路453から制御回路431に出力されたデータが中央演算処理装置430における処理に用いられる。
次に、上記実施の形態で説明した半導体装置10をキャッシュメモリに用いた場合の、具体的な構成例について説明する。
図14に、上記実施の形態で説明した半導体装置10を記憶装置434に用いた場合の、具体的な構成例を示す。ここでは、記憶領域451としてセルアレイ20を用い、比較回路452としてアナログ処理回路40を用いている。また、記憶領域451として用いられるセルアレイ20は、上記実施の形態で説明したメモリセルを複数有し、複数のメモリセルを用いてデータDmの集合を記憶する機能を有する。
タグフィールドTFに記憶されたタグデータは、記憶領域451として用いられるセルアレイ20に記憶された、データDmの集合に対応する。また、制御回路431からアナログ処理回路40に入力されたアドレス信号ADDRは、上記実施の形態におけるデータDinの集合に対応する。そして、アナログ処理回路40は、タグデータとアドレス信号ADDRが一致するか否かの判別を行い、その判別結果を信号CMとして選択回路453に出力する。
なお、ここではタグフィールドTF及びデータフィールドDFが同一のセルアレイ20に設けられている例を示しているが、データフィールドDFは別のセルアレイ20、又は別の記憶装置に設けられていてもよい。また、タグフィールドTFの一部が別のセルアレイ20に設けられていてもよい。
キャッシュメモリには、フル連想方式、ダイレクトマップ方式、セット連想方式などの種類がある。半導体装置10は、上記の方式のいずれにも適用することができる。それぞれの方式について、以下説明する。
<フル連想方式>
図14(A)は、半導体装置10をフル連想方式のキャッシュメモリに適用した場合の構成である。フル連想方式は、タグフィールドにアドレス信号の全ビット(複数のデータをまとめて同一のラインに格納する場合には、アドレス信号の下位ビットを除く。以下同様。)を記憶する方式である。
制御回路431からアクセスがあると、駆動回路30にアクセス信号が入力され、駆動回路30はタグデータが記憶されたメモリセルを順次選択する。これにより、タグフィールドTFに記憶された全てのタグデータがアナログ処理回路40に出力される。そして、アナログ処理回路40は、制御回路431から入力されたアドレス信号ADDRと、タグフィールドTFから入力されたタグデータとを順次比較し、その比較結果を信号CMとして選択回路453に出力する。
そして、データフィールドDFに記憶されたデータに対応する信号DATAと、当該データがアドレス信号ADDRに対応するか否か(キャッシュヒットであるか否か)を示す信号CHとが、選択回路453から制御回路431に出力される。キャッシュヒットである場合、選択回路453から出力された信号DATAが中央演算処理装置430における処理に用いられる。
なお、フル連想方式においては、セルアレイ20にアドレス信号の全ビットを記憶する必要があるため、大きな記憶容量が要求される。本発明の一態様に係る半導体装置10は、メモリセルにアナログ値を正確に記憶することができるため、記憶容量を容易に増大させることができる。
<ダイレクトマップ方式>
図14(B)は、半導体装置10をダイレクトマップ方式のキャッシュメモリに適用した場合の構成である。ダイレクトマップ方式は、アドレス信号の下位ビット又は上位ビットの一方に対応する信号ADDRaによって、データを記憶するラインを一義的に決定し、当該ラインに、アドレス信号の下位ビット又は上位ビットの他方に対応する信号ADDRbを記憶する方式である。
制御回路431からアクセスがあると、信号ADDRaは駆動回路30に入力される。このとき駆動回路30は、信号ADDRaによって一義的に決定されるラインに対応するメモリセルを選択する。そして、当該メモリセルからタグデータが読み出され、アナログ処理回路40に出力される。また、信号ADDRbは、制御回路431からアナログ処理回路40に出力される。
アナログ処理回路40は、制御回路431から入力されたアドレス信号ADDRbと、信号ADDRaによって指定されたラインのタグフィールドTFから読み出されたタグデータとを比較し、その比較結果を信号CMとして選択回路453に出力する。
そして、信号ADDRaによって一義的に決定されるラインのデータフィールドDFに記憶されたデータに対応する信号DATAと、当該データがアドレス信号ADDRbに対応するか否か(キャッシュヒットであるか否か)を示す信号CHとが、選択回路453から制御回路431に出力される。キャッシュヒットである場合、選択回路453から出力された信号DATAが中央演算処理装置430における処理に用いられる。
ダイレクトマップ方式においては、スラッシングによる中央演算処理装置430の動作速度の低下が生じ得る。しかしながら、本発明の一態様に係る半導体装置10はデータの比較を高速に行うことができるため、中央演算処理装置430の動作速度の低下を緩和することができる。
<セット連想方式>
図14(C)は、半導体装置10をセット連想方式のキャッシュメモリに適用した場合の構成である。セット連想方式は、アドレス信号の下位ビット又は上位ビットの一方に対応する信号ADDRaによって、データを記憶するラインを決定し、当該ラインに、アドレス信号の下位ビット又は上位ビットの他方に対応する信号ADDRbを記憶する方式である。ただし、ダイレクトマップ方式と異なり、信号ADDRaによって特定されるラインが複数存在する。図14(C)には一例として、タグフィールドTFとデータフィールドDFを有するセルアレイ20が2セット設けられ(セルアレイ20a、セルアレイ20b)、信号ADDRaによって特定されるラインが、セルアレイ20a、セルアレイ20bのそれぞれに存在する構成例を示す。
制御回路431からアクセスがあると、信号ADDRaが駆動回路30に入力される。このとき駆動回路30は、セルアレイ20aに設けられたメモリセルのうち、信号ADDRaによって決定されるラインに対応するメモリセル、及び、セルアレイ20bに設けられたメモリセルのうち、信号ADDRaによって決定されるラインに対応するメモリセルを選択する。そして、セルアレイ20a及びセルアレイ20bのそれぞれからタグデータが読み出され、アナログ処理回路40に出力される。また、信号ADDRbは、制御回路431からアナログ処理回路40に出力される。
なお、ここではセルアレイ20a及びセルアレイ20bを同一の駆動回路30によって駆動しているが、セルアレイ20aとセルアレイ20bをそれぞれ別の駆動回路によって駆動してもよい。
アナログ処理回路40は、制御回路431から入力されたアドレス信号ADDRbと、信号ADDRaによって指定されたラインのタグフィールドTFから読み出された2つのタグデータとをそれぞれ比較し、その比較結果を信号CMとして選択回路453に出力する。
そして、信号ADDRaによって決定されるラインのデータフィールドDFに記憶されたデータに対応する信号DATAと、当該データがアドレス信号ADDRbに対応するか否か(キャッシュヒットであるか否か)を示す信号CHとが、選択回路453から制御回路431に出力される。キャッシュヒットである場合、選択回路453から出力された信号DATAが中央演算処理装置430における処理に用いられる。
なお、図14(C)においては、タグフィールドTFとデータフィールドDFを有するセルアレイ20が2セット設けられた構成を示したが、セット数は特に限定されず、3セット以上設けることもできる。
セット連想方式は、フル連想方式とダイレクトマップ方式の双方を取り入れた方式といえる。そのため、半導体装置10をフル連想方式又はダイレクトマップ方式のキャッシュメモリに用いた場合の効果は、半導体装置10をセット連想方式のキャッシュメモリに用いた場合においても得ることができる。
また、図14(A)乃至(C)において、タグフィールドTFにタグデータを書き込む際は、アナログ処理回路40にデータDinとしてタグデータを入力する。そして、上記実施の形態で説明したデータの書き込み動作を行うことによって、タグデータをセルアレイ20が有するメモリセルに書き込むことができる。
半導体装置10を記憶装置434に用いることにより、上記のどの方式を用いた場合においても、アドレス信号とタグデータの比較を正確かつ高速に行うことができる。よって、コンピュータ400の信頼性及び動作速度を向上させることができる。
なお、本実施の形態においては半導体装置10をキャッシュメモリとして用いる場合について詳述したが、半導体装置10の応用例はこれに限られない。例えば、半導体装置10を仮想メモリにおけるTLB(Translation Look−aside Buffer)などに用いることもできる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係るトランジスタについて説明する。
なお、本発明の一態様に係るトランジスタは、実施の形態6で説明するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜、またはnc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)膜を有することが好ましい。
<トランジスタの構成例1>
図15(A)乃至図15(C)は、トランジスタ1400aの上面図および断面図である。図15(A)は上面図である。図15(B)は、図15(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図15(C)は、図15(A)に示す一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図15(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。なお、一点鎖線A1−A2をトランジスタ1400aのチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をトランジスタ1400aのチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。
トランジスタ1400aは、基板1450と、基板1450上の絶縁膜1401と、絶縁膜1401上の導電膜1414と、導電膜1414を覆うように形成された絶縁膜1402と、絶縁膜1402上の絶縁膜1403と、絶縁膜1403上の絶縁膜1404と、絶縁膜1404上に、金属酸化物1431、金属酸化物1432の順で形成された積層と、金属酸化物1432の上面及び側面と接する導電膜1421と、同じく金属酸化物1432の上面及び側面と接する導電膜1423と、導電膜1421上の導電膜1422と、導電膜1423上の導電膜1424と、導電膜1422、導電膜1424上の絶縁膜1405と、金属酸化物1431、金属酸化物1432、導電膜1421乃至導電膜1424及び絶縁膜1405と接する金属酸化物1433と、金属酸化物1433上の絶縁膜1406と、絶縁膜1406上の導電膜1411と、導電膜1411上の導電膜1412と、導電膜1412上の導電膜1413と、導電膜1413を覆うように形成された絶縁膜1407と、絶縁膜1407上の絶縁膜1408を有する。なお、金属酸化物1431、金属酸化物1432および金属酸化物1433をまとめて、金属酸化物1430と呼称する。
金属酸化物1432は半導体であり、トランジスタ1400aのチャネルとしての機能を有する。
また、金属酸化物1431及び金属酸化物1432は、領域1441及び領域1442を有する。領域1441は、導電膜1421と、金属酸化物1431、金属酸化物1432が接する領域の近傍に形成され、領域1442は、導電膜1423と、金属酸化物1431、金属酸化物1432が接する領域の近傍に形成される。
領域1441、領域1442は低抵抗領域としての機能を有する。金属酸化物1431、金属酸化物1432は、領域1441を有することで、導電膜1421との間のコンタクト抵抗を低減させることが可能になる。同様に、金属酸化物1431、金属酸化物1432は、領域1442を有することで、導電膜1423との間のコンタクト抵抗を低減させることが可能になる。
導電膜1421、導電膜1422は、トランジスタ1400aのソース電極又はドレイン電極の一方としての機能を有する。導電膜1423、導電膜1424は、トランジスタ1400aのソース電極又はドレイン電極の他方としての機能を有する。
導電膜1422は導電膜1421よりも酸素を透過しにくい機能を有する。これにより、酸化による導電膜1421の導電率の低下を防ぐことが可能になる。
同様に、導電膜1424は導電膜1423よりも酸素を透過しにくい機能を有する。これにより、酸化による導電膜1423の導電率の低下を防ぐことが可能になる。
導電膜1411乃至導電膜1413は、トランジスタ1400aの第1のゲート電極としての機能を有する。
導電膜1411、導電膜1413は、導電膜1412よりも酸素を透過しにくい機能を有する。これにより、酸化による導電膜1412の導電率の低下を防ぐことが可能になる。
絶縁膜1406は、トランジスタ1400aの第1のゲート絶縁膜としての機能を有する。
導電膜1414は、トランジスタ1400aの第2のゲート電極としての機能を有する。
導電膜1411乃至導電膜1413と導電膜1414は同じ電位が与えられてもよいし、異なる電位が与えられてもよい。また導電膜1414は、場合によっては省略してもよい。
絶縁膜1401乃至絶縁膜1404は、トランジスタ1400aの下地絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁膜1402乃至絶縁膜1404は、トランジスタ1400aの第2のゲート絶縁膜としての機能も有する。
絶縁膜1405、1407、1408は、トランジスタ1400aの保護絶縁膜又は層間絶縁膜としての機能を有する。
図15(C)に示すように、金属酸化物1432の側面は、導電膜1411に囲まれている。上記構成をとることで、導電膜1411の電界によって、金属酸化物1432を電気的に取り囲むことができる。ゲート電極の電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s−channel)構造とよぶ。金属酸化物1432の全体(バルク)にチャネルが形成されるため、s−channel構造は、トランジスタのソース−ドレイン間に大電流を流すことができ、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
s−channel構造は、高いオン電流が得られるため、LSI(Large Scale Integration)など微細化されたトランジスタが要求される半導体装置に適した構造といえる。トランジスタを微細化できるため、該トランジスタを有する半導体装置は、集積度の高い、高密度化された半導体装置とすることが可能となる。
トランジスタ1400aにおいて、ゲート電極として機能する領域は、絶縁膜1405などに形成された開口部1415を埋めるように自己整合(self align)的に形成される。
図15(B)に示すように、導電膜1411と導電膜1422は、絶縁膜を間に介して、互いに重なる領域を有する。同様に、導電膜1411と導電膜1424は、絶縁膜を間に介して、互いに重なる領域を有する。これらの領域は、ゲート電極と、ソース電極又はドレイン電極との間に生じた寄生容量として機能し、トランジスタ1400aの動作速度を低下させる原因になり得る。トランジスタ1400aは、絶縁膜1405を設けることで、上述の寄生容量を低下させることが可能になる。絶縁膜1405は、比誘電率の低い材料からなることが好ましい。
図16(A)は、トランジスタ1400aの中央部を拡大したものである。図16(A)において、導電膜1411の底面が、絶縁膜1406及び金属酸化物1433を介して、金属酸化物1432の上面と平行に面する領域の長さを、幅LGとして示す。幅LGは、ゲート電極の線幅を表す。また、図16(A)において、導電膜1421と導電膜1423の間の長さを、幅LSDとして示す。幅LSDは、ソース電極とドレイン電極との間の長さを表す。
幅LSDは最小加工寸法で決定されることが多い。図16(A)に示すように、幅LGは、幅LSDよりも小さい。すなわち、トランジスタ1400aは、ゲート電極の線幅を、最小加工寸法より小さくすることが可能になる。具体的には、幅LGは、5nm以上かつ60nm以下、好ましくは5nm以上かつ30nm以下とすることが可能になる。
図16(A)において、導電膜1421及び導電膜1422の厚さの合計、又は、導電膜1423及び導電膜1424の厚さの合計を高さHSDと表す。
絶縁膜1406の厚さを、高さHSD以下とすることで、ゲート電極からの電界がチャネル形成領域全体に印加することが可能になり好ましい。絶縁膜1406の厚さは、30nm以下、好ましくは10nm以下とする。
また、導電膜1422と導電膜1411の間に形成される寄生容量、及び、導電膜1424と導電膜1411の間に形成される寄生容量の値は、絶縁膜1405の厚さに反比例する。例えば、絶縁膜1405の厚さを、絶縁膜1406の厚さの3倍以上、好ましくは5倍以上とすることで、寄生容量は無視できるほど小さくなり、好ましい。その結果、トランジスタ1400aを高周波数で動作させることが可能になる。
以下、トランジスタ1400aの各構成要素について説明を行う。
[金属酸化物]
まず、金属酸化物1431乃至金属酸化物1433に適用可能な金属酸化物について説明を行う。
トランジスタ1400aは、非導通状態においてソースとドレインとの間を流れる電流(オフ電流)が低いことが好適である。オフ電流が低いトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタが挙げられる。
金属酸化物1432は、例えば、インジウム(In)を含む酸化物半導体である。金属酸化物1432は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、金属酸化物1432は、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)またはスズ(Sn)などとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素(B)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、金属酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、金属酸化物1432は、亜鉛(Zn)を含むと好ましい。金属酸化物は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
ただし、金属酸化物1432は、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。金属酸化物1432は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。
金属酸化物1432は、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物半導体を用いる。金属酸化物1432のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上かつ4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上かつ3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上かつ3.5eV以下とする。
金属酸化物1432は、後述するCAAC−OS膜であることが好ましい。
例えば、金属酸化物1431および金属酸化物1433は、金属酸化物1432を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される金属酸化物である。金属酸化物1432を構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から金属酸化物1431および金属酸化物1433が構成されるため、金属酸化物1431と金属酸化物1432との界面、および金属酸化物1432と金属酸化物1433との界面において、界面準位が形成されにくい。
なお、金属酸化物1431がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高いとする。金属酸化物1431をスパッタリング法で成膜する場合、例えば、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4などの原子数比を満たすスパッタリングターゲットを用いることができる。
また、金属酸化物1432がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。金属酸化物1432をスパッタリング法で成膜する場合、例えば、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1などの原子数比を満たすスパッタリングターゲットを用いることができる。特に、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される金属酸化物1432の原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。
また、金属酸化物1433がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。例えば、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4などが好ましい。また、金属酸化物1433は、金属酸化物1431と同種の金属酸化物を用いても構わない。
また、金属酸化物1431または金属酸化物1433がインジウムを含まなくても構わない場合がある。例えば、金属酸化物1431または金属酸化物1433が酸化ガリウムであっても構わない。
次に、金属酸化物1431乃至金属酸化物1433の積層により構成される金属酸化物1430の機能およびその効果について、図16(B)に示すエネルギーバンド構造図を用いて説明する。図16(B)は、図16(A)にY1−Y2の鎖線で示した部位のエネルギーバンド構造を示している。また、図16(B)は、トランジスタ1400aのチャネル形成領域とその近傍のエネルギーバンド構造を示している。
図16(B)中、Ec1404、Ec1431、Ec1432、Ec1433、Ec1406は、それぞれ、絶縁膜1404、金属酸化物1431、金属酸化物1432、金属酸化物1433、絶縁膜1406の伝導帯下端のエネルギーを示している。
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータを用いて測定できる。また、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定できる。
絶縁膜1404と絶縁膜1406は絶縁体であるため、Ec1406とEc1404は、Ec1431、Ec1432、およびEc1433よりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)。
金属酸化物1432は、金属酸化物1431および金属酸化物1433よりも電子親和力の大きい金属酸化物を用いる。例えば、金属酸化物1432として、金属酸化物1431および金属酸化物1433よりも電子親和力の0.07eV以上かつ1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上かつ0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上かつ0.4eV以下大きい金属酸化物を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、金属酸化物1433がインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。
このとき、ゲート電圧を印加すると、金属酸化物1431、金属酸化物1432、金属酸化物1433のうち、電子親和力の大きい金属酸化物1432にチャネルが形成される。
このとき、電子は、金属酸化物1431、金属酸化物1433の中ではなく、金属酸化物1432の中を主として移動する。そのため、金属酸化物1431と絶縁膜1404との界面、あるいは、金属酸化物1433と絶縁膜1406との界面に、電子の流れを阻害する界面準位が多く存在したとしても、トランジスタのオン電流にはほとんど影響を与えない。金属酸化物1431、金属酸化物1433は、絶縁膜のように機能する。
金属酸化物1431と金属酸化物1432との間には、金属酸化物1431と金属酸化物1432との混合領域を有する場合がある。また、金属酸化物1432と金属酸化物1433との間には、金属酸化物1432と金属酸化物1433との混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、金属酸化物1431、金属酸化物1432および金属酸化物1433の積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
金属酸化物1431と金属酸化物1432の界面、あるいは、金属酸化物1432と金属酸化物1433との界面は、上述したように界面準位密度が小さいため、金属酸化物1432中で電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることが可能になる。
例えば、トランジスタ中の電子の移動は、チャネル形成領域の物理的な凹凸が大きい場合に阻害される。トランジスタのオン電流を高くするためには、例えば、金属酸化物1432の上面または下面(被形成面、ここでは金属酸化物1431の上面)の、1μm×1μmの範囲における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における平均面粗さ(Raともいう。)が1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における最大高低差(P−Vともいう。)が10nm未満、好ましくは9nm未満、さらに好ましくは8nm未満、より好ましくは7nm未満とすればよい。RMS粗さ、RaおよびP−Vは、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製走査型プローブ顕微鏡システムSPA−500などを用いて測定することができる。
チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高い場合にも、電子の移動は阻害される。例えば、金属酸化物1432が酸素欠損(VOとも表記。)を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことでドナー準位を形成することがある。以下では酸素欠損のサイトに水素が入り込んだ状態をVOHと表記する場合がある。VOHは電子を散乱するため、トランジスタのオン電流を低下させる要因となる。なお、酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したがって、金属酸化物1432中の酸素欠損を低減することで、トランジスタのオン電流を高くすることができる場合がある。
例えば、金属酸化物1432のある深さにおいて、または、金属酸化物1432のある領域において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される水素濃度は、1×1016atoms/cm3以上、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1016atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3以下とする。
金属酸化物1432の酸素欠損を低減するために、例えば、絶縁膜1404に含まれる過剰酸素を、金属酸化物1431を介して金属酸化物1432まで移動させる方法などがある。この場合、金属酸化物1431は、酸素透過性を有する層(酸素を通過または透過させる層)であることが好ましい。
なお、トランジスタがs−channel構造を有する場合、金属酸化物1432の全体にチャネルが形成される。したがって、金属酸化物1432が厚いほどチャネル領域は大きくなる。即ち、金属酸化物1432が厚いほど、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、金属酸化物1433は薄いほど好ましい。金属酸化物1433は、例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下の領域を有していればよい。一方、金属酸化物1433は、チャネルの形成される金属酸化物1432へ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、金属酸化物1433は、ある程度の厚さを有することが好ましい。金属酸化物1433は、例えば、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有していればよい。また、金属酸化物1433は、絶縁膜1404などから放出される酸素の外方拡散を抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
また、信頼性を高くするためには、金属酸化物1431は厚く、金属酸化物1433は薄いことが好ましい。金属酸化物1431は、例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有していればよい。金属酸化物1431の厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と金属酸化物1431との界面からチャネルの形成される金属酸化物1432までの距離を離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、金属酸化物1431は、例えば、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有していればよい。
例えば、金属酸化物1432と金属酸化物1431との間に、例えば、SIMS分析において、1×1016atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、2×1018atoms/cm3未満のシリコン濃度となる領域を有する。また、金属酸化物1432と金属酸化物1433との間に、SIMSにおいて、1×1016atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、2×1018atoms/cm3未満のシリコン濃度となる領域を有する。
また、金属酸化物1432の水素濃度を低減するために、金属酸化物1431および金属酸化物1433の水素濃度を低減すると好ましい。金属酸化物1431および金属酸化物1433は、SIMSにおいて、1×1016atoms/cm3以上、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1016atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3以下の水素濃度となる領域を有する。また、金属酸化物1432の窒素濃度を低減するために、金属酸化物1431および金属酸化物1433の窒素濃度を低減すると好ましい。金属酸化物1431および金属酸化物1433は、SIMSにおいて、1×1016atoms/cm3以上、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1016atoms/cm3以上、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1017atoms/cm3以下の窒素濃度となる領域を有する。
金属酸化物1431乃至金属酸化物1433の成膜は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて行えばよい。
金属酸化物1431、金属酸化物1432を形成した後に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上かつ650℃以下、好ましくは450℃以上かつ600℃以下、さらに好ましくは520℃以上かつ570℃以下で行えばよい。第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、金属酸化物1431、金属酸化物1432の結晶性を高めることや、水素や水などの不純物を除去することが可能になる。
上述の3層構造は一例である。例えば、金属酸化物1431または金属酸化物1433のない2層構造としても構わない。または、金属酸化物1431の上もしくは下、または金属酸化物1433上もしくは下に、金属酸化物1431、金属酸化物1432および金属酸化物1433として例示した半導体のいずれか一を有する4層構造としても構わない。または、金属酸化物1431の上、金属酸化物1431の下、金属酸化物1433の上、金属酸化物1433の下のいずれか二箇所以上に、金属酸化物1431、金属酸化物1432および金属酸化物1433として例示した半導体のいずれか一を有するn層構造(nは5以上の整数)としても構わない。
[基板]
基板1450としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
また、基板1450として、可撓性基板を用いてもよい。なお、可撓性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可撓性の基板上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可撓性基板である基板1450に転置する方法もある。その場合には、非可撓性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板1450として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板1450が伸縮性を有してもよい。また、基板1450は、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板1450の厚さは、例えば、5μm以上かつ700μm以下、好ましくは10μm以上かつ500μm以下、さらに好ましくは15μm以上かつ300μm以下とする。基板1450を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板1450を薄くすることで、ガラスなどを用いた場合にも伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめた際に、元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板1450上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
可撓性基板である基板1450としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。可撓性基板である基板1450は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可撓性基板である基板1450としては、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板である基板1450として好適である。
[下地絶縁膜]
絶縁膜1401は、基板1450と導電膜1414を電気的に分離させる機能を有する。
絶縁膜1401又は絶縁膜1402は、単層構造または積層構造の絶縁膜で形成される。絶縁膜を構成する材料には、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどがある。なお、本明細書において、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいい、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。
また、絶縁膜1402として、TEOS(Tetra−Ethyl−Ortho−Silicate)若しくはシラン等と、酸素若しくは亜酸化窒素等とを反応させて形成した段差被覆性の良い酸化シリコンを用いてもよい。
また、絶縁膜1402を成膜した後、その上面の平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理を行ってもよい。
絶縁膜1404は、酸化物を含むことが好ましい。特に加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を含むことが好ましい。好適には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、加熱により一部の酸素が脱離する。絶縁膜1404から脱離した酸素は金属酸化物1430に供給され、金属酸化物1430の酸素欠損を低減することが可能となる。その結果、トランジスタの電気特性の変動を抑制し、信頼性を高めることができる。
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、例えば、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上かつ700℃以下、または100℃以上かつ500℃以下の範囲が好ましい。
絶縁膜1404は、金属酸化物1430に酸素を供給することができる酸化物を含むことが好ましい。例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。
または、絶縁膜1404として、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等の金属酸化物を用いてもよい。
絶縁膜1404に酸素を過剰に含有させるためには、例えば酸素雰囲気下にて絶縁膜1404の成膜を行えばよい。または、成膜後の絶縁膜1404に酸素を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成してもよく、双方の手段を組み合わせてもよい。
例えば、成膜後の絶縁膜1404に、酸素(少なくとも酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成する。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理などを用いることができる。
酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることができる。酸素を含むガスとしては、例えば酸素、亜酸化窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素などを用いることができる。また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガスを含ませてもよい。または、水素等を含ませてもよい。例えば、二酸化炭素、水素及びアルゴンの混合ガスを用いるとよい。
また、絶縁膜1404を成膜した後、その上面の平坦性を高めるためにCMP法等を用いた平坦化処理を行ってもよい。
絶縁膜1403は、絶縁膜1404に含まれる酸素が、導電膜1414に含まれる金属と結びつき、絶縁膜1404に含まれる酸素が減少することを防ぐパッシベーション機能を有する。
絶縁膜1403は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜1403を設けることで、金属酸化物1430からの酸素の外部への拡散と、外部から金属酸化物1430への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
絶縁膜1403としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
トランジスタ1400aは、電荷捕獲層に電子を注入することで、しきい値電圧を制御することが可能になる。電荷捕獲層は、絶縁膜1402又は絶縁膜1403に設けることが好ましい。例えば、絶縁膜1403を酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケート等で形成することで、電荷捕獲層として機能させることができる。
[ゲート電極]
導電膜1411乃至導電膜1414して、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)の低抵抗材料からなる単体、合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
[ソース電極、ドレイン電極]
導電膜1421乃至導電膜1424として、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)の低抵抗材料からなる単体、合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
また、導電膜1421乃至導電膜1424には、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、ストロンチウムルテナイトなど、貴金属を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。これらの導電性酸化物は、酸化物半導体と接しても酸化物半導体から酸素を奪うことが少なく、酸化物半導体の酸素欠損を作りにくい。
[低抵抗領域]
領域1441、領域1442は、例えば、導電膜1421、導電膜1423が、金属酸化物1431、金属酸化物1432の酸素を引き抜くことで形成される。酸素の引き抜きは、高い温度で加熱するほど起こりやすい。トランジスタの作製工程には、いくつかの加熱工程があることから、領域1441、領域1442には酸素欠損が形成される。また、加熱により該酸素欠損のサイトに水素が入りこみ、領域1441、領域1442に含まれるキャリア密度が増加する。その結果、領域1441、領域1442が低抵抗化する。
[ゲート絶縁膜]
絶縁膜1406は、比誘電率の高い絶縁体を有することが好ましい。例えば、絶縁膜1406は、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物などを有することが好ましい。
また、絶縁膜1406は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンと、比誘電率の高い絶縁体と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、比誘電率の高い絶縁体と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。例えば、酸化アルミニウム、酸化ガリウムまたは酸化ハフニウムを金属酸化物1433側に有することで、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンに含まれるシリコンが、金属酸化物1432に混入することを抑制することができる。
また、例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを金属酸化物1433側に有することで、酸化アルミニウム、酸化ガリウムまたは酸化ハフニウムと、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンと、の界面にトラップセンターが形成される場合がある。該トラップセンターは、電子を捕獲することでトランジスタのしきい値電圧をプラス方向に変動させることができる場合がある。
[層間絶縁膜、保護絶縁膜]
絶縁膜1405は、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、絶縁膜1405は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、絶縁膜1405は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
絶縁膜1407は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜1407を設けることで、金属酸化物1430からの酸素の外部への拡散と、外部から金属酸化物1430への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
絶縁膜1407としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。なお、窒化物絶縁膜の代わりに、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設けてもよい。酸化物絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、および酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高いので絶縁膜1407に適用するのに好ましい。
絶縁膜1407は、スパッタリング法またはCVD法などにより酸素を含むプラズマを用いて成膜することで、絶縁膜1405、絶縁膜1406の側面及び表面に、酸素を添加することが可能になる。また、絶縁膜1407を成膜した後、何れかのタイミングにおいて、第2の加熱処理を行うことが好ましい。第2の加熱処理によって、絶縁膜1405、絶縁膜1406に添加された酸素が、絶縁膜中を拡散し、金属酸化物1430に到達し、金属酸化物1430の酸素欠損を低減することが可能になる。
図17(A)、図17(B)は、絶縁膜1407を成膜する際に絶縁膜1405、絶縁膜1406に添加された酸素が、第2の加熱処理によって絶縁膜中を拡散し、金属酸化物1430に到達する様子を描いた模式図である。図17(A)は、図15(B)の断面図において、酸素が拡散する様子を矢印で示している。同様に、図17(B)は、図15(C)の断面図において、酸素が拡散する様子を矢印で示している。
図17(A)、図17(B)に示すように、絶縁膜1406の側面に添加された酸素が、絶縁膜1406の内部を拡散し、金属酸化物1430に到達する。また、絶縁膜1407と絶縁膜1405の界面近傍に、酸素を過剰に含む領域1461、領域1462及び領域1463が形成される場合がある。領域1461乃至1463に含まれる酸素は、絶縁膜1405、絶縁膜1404を経由し、金属酸化物1430に到達する。絶縁膜1405が酸化シリコンを含み、絶縁膜1407が酸化アルミニウムを含む場合、領域1461乃至1463は、シリコンとアルミニウムと酸素の混合層が形成される場合がある。
絶縁膜1407は、酸素をブロックする機能を有し、酸素が絶縁膜1407より上方に拡散することを防ぐ。同様に、絶縁膜1403は、酸素をブロックする機能を有し、酸素が絶縁膜1403より下方に拡散することを防ぐ。
なお、第2の加熱処理は、絶縁膜1405、絶縁膜1406に添加された酸素が金属酸化物1430まで拡散する温度で行えばよい。例えば、第1の加熱処理についての記載を参照しても構わない。または、第2の加熱処理は、第1の加熱処理よりも低い温度が好ましい。第1の加熱処理と第2の加熱処理の温度差は、20℃以上かつ150℃以下、好ましくは40℃以上かつ100℃以下とする。これにより、絶縁膜1404から余分に酸素が放出することを抑えることができる。なお、第2の加熱処理は、同等の加熱処理を各層の成膜時の加熱によって兼ねることができる場合、行わなくてもよい場合がある。
このように、金属酸化物1430は、絶縁膜1407の成膜及び第2の加熱処理によって、上下方向から酸素が供給されることが可能になる。
また、In−M−Zn酸化物など、酸化インジウムを含む膜を絶縁膜1407として成膜することで、絶縁膜1405、絶縁膜1406に酸素を添加してもよい。
絶縁膜1408には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上含む絶縁体を用いることができる。また、絶縁膜1408には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を用いることもできる。また、絶縁膜1408は上記材料の積層であってもよい。
<トランジスタの構成例2>
図15に示すトランジスタ1400aは、導電膜1414及び絶縁膜1402、絶縁膜1403を省略してもよい。その場合の例を図18に示す。
図18(A)乃至図18(C)は、トランジスタ1400bの上面図および断面図である。図18(A)は上面図である。図18(B)は、図18(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図18(C)は、図18(A)に示す一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図18(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。なお、一点鎖線A1−A2をトランジスタ1400bのチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をトランジスタ1400bのチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。
図15に示すトランジスタ1400aにおいて、導電膜1421、導電膜1423は、ゲート電極(導電膜1411乃至導電膜1413)と重なる部分の膜厚を薄くしてもよい。その場合の例を図19に示す。
図19(A)乃至図19(C)は、トランジスタ1400cの上面図および断面図である。図19(A)は上面図である。図19(B)は、図19(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図19(C)は、図19(A)に示す一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図19(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。なお、一点鎖線A1−A2をトランジスタ1400cのチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をトランジスタ1400cのチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。
図19(B)のトランジスタ1400cにおいて、ゲート電極と重なる部分の導電膜1421が薄膜化され、その上を導電膜1422が覆っている。同様に、ゲート電極と重なる部分の導電膜1423が薄膜化され、その上を導電膜1424が覆っている。
トランジスタ1400cは、図19(B)に示すような構成にすることで、ゲート電極とソース電極との間の距離、又は、ゲート電極とドレイン電極との間の距離を長くすることが可能になり、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間に形成される寄生容量を低減することが可能になる。その結果、高速動作が可能なトランジスタを得ることが可能になる。
<トランジスタの構成例3>
図19に示すトランジスタ1400cにおいて、A3−A4方向に、金属酸化物1431、1432の幅を広げてもよい。その場合の例を図20に示す。
図20(A)乃至図20(C)は、トランジスタ1400dの上面図および断面図である。図20(A)は上面図である。図20(B)は、図20(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図20(C)は、図20(A)に示す一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図20(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。なお、一点鎖線A1−A2をトランジスタ1400dのチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をトランジスタ1400dのチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。
トランジスタ1400dは、図20に示す構成にすることで、オン電流を増大させることが可能になる。
<トランジスタの構成例4>
図19に示すトランジスタ1400cにおいて、A3−A4方向に、金属酸化物1431、金属酸化物1432から成る領域(以下、フィンと呼ぶ)を複数設けてもよい。その場合の例を図21に示す。
図21(A)乃至図21(C)は、トランジスタ1400eの上面図および断面図である。図21(A)は上面図である。図21(B)は、図21(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図21(C)は、図21(A)に示す一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、図21(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。なお、一点鎖線A1−A2をトランジスタ1400eのチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をトランジスタ1400eのチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。
トランジスタ1400eは、金属酸化物1431a、金属酸化物1432aから成る第1のフィンと、金属酸化物1431b、金属酸化物1432bから成る第2のフィンと、金属酸化物1431c、金属酸化物1432cから成る第3のフィンと、を有している。
トランジスタ1400eは、チャネルが形成される金属酸化物1432a乃至金属酸化物1432cを、ゲート電極が取り囲むことで、チャネル全体にゲート電界を印加することが可能になり、オン電流が高いトランジスタを得ることが可能になる。
<トランジスタの構成例5>
図22(A)乃至図22(D)は、トランジスタ1400fの上面図および断面図である。図22(A)は、トランジスタ1400fの上面図であり、図22(B)は図22(A)に示す一点鎖線A1−A2に対応する断面図であり、図22(C)は一点鎖線A3−A4に対応する断面図である。なお、一点鎖線A1−A2をチャネル長方向、一点鎖線A3−A4をチャネル幅方向という場合がある。トランジスタ1400fもトランジスタ1400a等と同様に、s−channel構造のトランジスタである。トランジスタ1400fでは、ゲート電極を構成する導電膜1412の側面に接して、絶縁膜1409が設けられている。絶縁膜1409および導電膜1412が絶縁膜1407に覆われている。絶縁膜1409はトランジスタ1400fのサイドウォール絶縁膜として機能する。トランジスタ1400aと同様に、ゲート電極を導電膜1411乃至導電膜1413の積層としてもよい。
絶縁膜1406及び導電膜1412は、少なくとも一部が導電膜1414及び金属酸化物1432と重なる。導電膜1412のチャネル長方向の側面端部と絶縁膜1406のチャネル長方向の側面端部は概略一致していることが好ましい。ここで、絶縁膜1406はトランジスタ1400fのゲート絶縁膜として機能し、導電膜1412はトランジスタ1400fのゲート電極として機能し、絶縁膜1409はトランジスタ1400fのサイドウォール絶縁膜として機能する。
金属酸化物1432は、金属酸化物1433および絶縁膜1406を介して導電膜1412と重なる領域を有する。金属酸化物1431の外周が金属酸化物1432の外周と概略一致し、金属酸化物1433の外周が金属酸化物1431及び金属酸化物1432の外周よりも外側に位置することが好ましい。ここでは、金属酸化物1433の外周が金属酸化物1431の外周よりも外側に位置する形状となっているが、本実施の形態に示すトランジスタはこれに限られるものではない。例えば、金属酸化物1431の外周が金属酸化物1433の外周より外側に位置してもよいし、金属酸化物1431の側面端部と、金属酸化物1433の側面端部とが概略一致する形状としてもよい。
図22(D)に図22(B)の部分拡大図を示す。図22(D)に示すように、金属酸化物1430には、領域1461a、1461b、1461c、1461d及び1461eが形成されている。領域1461b乃至領域1461eは、領域1461aと比較してドーパントの濃度が高く、低抵抗化されている。さらに、領域1461b及び領域1461cは、領域1461d及び領域1461eと比較して水素の濃度が高く、より低抵抗化されている。例えば、領域1461aは、領域1461bまたは領域1461cのドーパントの最大濃度に対して、5%以下の濃度の領域、2%以下の濃度の領域、または1%以下の濃度の領域とすればよい。なお、ドーパントを、ドナー、アクセプター、不純物または元素と言い換えてもよい。
図22(D)に示すように、金属酸化物1430において、領域1461aは導電膜1412と概ね重なる領域であり、領域1461b、領域1461c、領域1461d及び領域1461eは、領域1461aを除いた領域である。領域1461b及び領域1461cにおいては、金属酸化物1433の上面が絶縁膜1407と接する。領域1461d及び領域1461eにおいては、金属酸化物1433の上面が絶縁膜1409又は絶縁膜1406と接する。つまり、図22(D)に示すように、領域1461bと領域1461dの境界は、絶縁膜1407と絶縁膜1409の側面端部の境界と重なる部分である。領域1461cと領域1461eの境界についても同様である。ここで、領域1461d及び領域1461eの一部が、金属酸化物1432の導電膜1412と重なる領域(チャネル形成領域)の一部と重なることが好ましい。例えば、領域1461d及び領域1461eのチャネル長方向の側面端部は、導電膜1412の側面端部より距離dだけ導電膜1412の内側に位置することが好ましい。このとき、絶縁膜1406の膜厚t406および距離dは、0.25t406<d<t406を満たすことが好ましい。
このように、金属酸化物1430の導電膜1412と重なる領域の一部に領域1461d及び領域1461eが形成される。これにより、トランジスタ1400fのチャネル形成領域と低抵抗化された領域1461d及び領域1461eが接し、領域1461dおよび領域1461eと、領域1461aとの間に、高抵抗のオフセット領域が形成されないため、トランジスタ1400fのオン電流を増大させることができる。さらに、領域1461d及び領域1461eのチャネル長方向の側面端部が上記の範囲を満たして形成されることで、領域1461d及び領域1461eがチャネル形成領域に対して深く形成されすぎて常に導通状態になってしまうことも防ぐことができる。
領域1461b、領域1461c、領域1461d及び領域1461eは、イオン注入法などのイオンドーピング処理により形成される。このため、図22(D)に示すように、領域1461d及び領域1461eのチャネル長方向の側面端部の位置が、金属酸化物1433上面から深くなるにしたがって、金属酸化物1430のチャネル長方向の側面端部側にシフトする場合がある。このとき、距離dは、最も導電膜1412の内側の近くに位置する、領域1461d及び領域1461eのチャネル長方向の側面端部と導電膜1412のチャネル長方向の側面端部との距離とする。
この場合、例えば、金属酸化物1431中に形成される領域1461d及び領域1461eが導電膜1412と重なる領域に形成されない場合がある。この場合、金属酸化物1431又は金属酸化物1432に形成される領域1461d及び領域1461eの少なくとも一部が導電膜1412と重なる領域に形成されることが好ましい。
また、金属酸化物1431、金属酸化物1432及び金属酸化物1433の絶縁膜1407との界面近傍に低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452が形成されることが好ましい。低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452は、絶縁膜1407に含まれる元素の少なくとも一が含まれる。低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452の一部が、金属酸化物1432の導電膜1412と重なる領域(チャネル形成領域)と概略接するか、当該領域の一部と重なることが好ましい。
また、金属酸化物1433は絶縁膜1407と接する領域が大きいため、低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452は金属酸化物1433に形成されやすい。金属酸化物1433における低抵抗領域1451と低抵抗領域1452は、金属酸化物1433の低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452ではない領域(例えば、金属酸化物1433の導電膜1412と重なる領域)より、絶縁膜1407に含まれる元素の濃度が高い。
領域1461b中に低抵抗領域1451が形成され、領域1461c中に低抵抗領域1452が形成される。金属酸化物1430の理想的な構造は、例えば、添加元素の濃度が最も高い領域が低抵抗領域1451、1452であり、次に濃度が高い領域が、領域1461b、領域1461c―1461eの低抵抗領域1451、1452を含まない領域であり、濃度が最も低い領域が領域1461aであることである。添加元素とは、領域1461b、1461cを形成するためのドーパント、および低抵抗領域1451、1452に絶縁膜1407から添加される元素が該当する。
なおトランジスタ1400fでは低抵抗領域1451、1452が形成される構成としているが、本実施の形態に示す半導体装置は、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、領域1461b及び領域1461cの抵抗が十分低い場合、低抵抗領域1451及び低抵抗領域1452を形成する必要はない。
<トランジスタの構成例6>
図23(A)及び図23(B)は、トランジスタ1680の上面図および断面図である。図23(A)は上面図であり、図23(A)に示す一点鎖線A−B方向の断面が図23(B)に相当する。なお、図23(A)及び図23(B)では、図の明瞭化のために一部の要素を拡大、縮小、または省略して図示している。また、一点鎖線A−B方向をチャネル長方向と呼称する場合がある。
図23(B)に示すトランジスタ1680は、第1のゲートとして機能する導電膜1689と、第2のゲートとして機能する導電膜1688と、半導体1682と、ソース及びドレインとして機能する導電膜1683及び導電膜1684と、絶縁膜1681と、絶縁膜1685と、絶縁膜1686と、絶縁膜1687と、を有する。
導電膜1689は、絶縁表面上に設けられる。導電膜1689と、半導体1682とは、絶縁膜1681を間に挟んで、互いに重なる。また、導電膜1688と、半導体1682とは、絶縁膜1685、絶縁膜1686及び絶縁膜1687を間に挟んで、互いに重なる。また、導電膜1683及び導電膜1684は、半導体1682に、接続されている。
導電膜1689及び導電膜1688の詳細は、図15に示す導電膜1411乃至導電膜1414の記載を参照すればよい。
導電膜1689と導電膜1688は、異なる電位が与えられてもよいし、同時に同じ電位が与えられてもよい。トランジスタ1680は、第2のゲート電極として機能する導電膜1688を設けることで、しきい値を安定化させることが可能になる。なお、導電膜1688は、場合によっては省略してもよい。
半導体1682の詳細は、図15に示す金属酸化物1432の記載を参照すればよい。また、半導体1682は、一層でも良いし、複数の半導体層の積層でも良い。
導電膜1683及び導電膜1684の詳細は、図15に示す導電膜1421乃至1424の記載を参照すればよい。
絶縁膜1681の詳細は、図15に示す絶縁膜1406の記載を参照すればよい。
なお、図23(B)では、半導体1682、導電膜1683及び導電膜1684上に、順に積層された絶縁膜1685乃至絶縁膜1687が設けられている場合を例示しているが、半導体1682、導電膜1683及び導電膜1684上に設けられる絶縁膜は、一層でも良いし、複数の絶縁膜の積層でも良い。
半導体1682に酸化物半導体を用いた場合、絶縁膜1686は、化学量論的組成以上の酸素が含まれており、加熱により上記酸素の一部を半導体1682に供給する機能を有する絶縁膜であることが望ましい。ただし、絶縁膜1686を半導体1682上に直接設けると、絶縁膜1686の形成時に半導体1682にダメージが与えられる場合、図23(B)に示すように、絶縁膜1685を半導体1682と絶縁膜1686の間に設けると良い。絶縁膜1685は、その形成時に半導体1682に与えるダメージが絶縁膜1686の場合よりも小さく、なおかつ、酸素を透過する機能を有する絶縁膜であることが望ましい。ただし、半導体1682に与えられるダメージを小さく抑えつつ、半導体1682上に絶縁膜1686を直接形成することができるのであれば、絶縁膜1685は必ずしも設けなくとも良い。
例えば、絶縁膜1685及び絶縁膜1686として、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用いることが好ましい。または、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等の金属酸化物を用いることもできる。
絶縁膜1687は、酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を有することが、望ましい。或いは、絶縁膜1687は、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を有することが、望ましい。
絶縁膜は、密度が高くて緻密である程、また未結合手が少なく化学的に安定である程、より高いブロッキング効果を示す。酸素、水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜は、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いて、形成することができる。水素、水の拡散を防ぐブロッキング効果を示す絶縁膜は、例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等を用いることができる。
絶縁膜1687が水、水素などの拡散を防ぐブロッキング効果を有する場合、パネル内の樹脂や、パネルの外部に存在する水、水素などの不純物が、半導体1682に侵入するのを防ぐことができる。半導体1682に酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体に侵入した水または水素の一部は電子供与体(ドナー)となるため、上記ブロッキング効果を有する絶縁膜1687を用いることで、トランジスタ1680の閾値電圧がドナーの生成によりシフトするのを防ぐことができる。
また、半導体1682に酸化物半導体を用いる場合、絶縁膜1687が酸素の拡散を防ぐブロッキング効果を有することで、酸化物半導体からの酸素が外部に拡散するのを防ぐことができる。よって、酸化物半導体中において、ドナーとなる酸素欠損が低減されるので、トランジスタ1680の閾値電圧がドナーの生成によりシフトするのを防ぐことができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態に示す半導体装置10に適用可能なトランジスタ等の構成例について、図24乃至図27を用いて説明を行う。
<断面図1>
図24(A)、図24(B)は半導体装置10の断面図の一部を示している。図24(A)は、半導体装置10を構成するトランジスタのチャネル長方向の断面図を表している。また、図24(B)は、半導体装置10を構成するトランジスタのチャネル幅方向の断面図を表している。
トランジスタTrAは、例えば、図2、図8におけるトランジスタ101、又は、図9、図10におけるトランジスタ111に対応させることができる。また、トランジスタTrB、TrCは、例えば、図2、図8におけるトランジスタ102、103、又は、図9、図10におけるトランジスタ112、113に対応させることができる。しかし、トランジスタTrA、TrB、TrCはこれらに限定されず、上記実施の形態で説明したトランジスタに適宜適用することができる。
図24(A)、図24(B)に示す半導体装置10は、下から順に、層L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12を有している。
層L1は、基板1700と、基板1700に形成されたトランジスタTrAと、素子分離層1701と、導電体1710、導電体1711などの複数の導電体を有する。
層L2は、配線1730、配線1731などの複数の配線を有する。
層L3は、導電体1712、導電体1713などの複数の導電体と、複数の配線(図示せず)を有する。
層L4は、絶縁体1706と、トランジスタTrBと、絶縁体1702と、絶縁体1703と、導電体1714、導電体1715などの複数の導電体を有する。
層L5は、配線1732、配線1733などの複数の配線を有する。
層L6は、導電体1716などの複数の導電体を有する。
層L7は、トランジスタTrCと、絶縁体1704、絶縁体1705と、導電体1717などの複数の導電体を有する。
層L8は、配線1734、配線1735などの複数の配線を有する。
層L9は、導電体1718などの複数の導電体と、複数の配線(図示せず)を有する。
層L10は、配線1736などの複数の配線を有する。
層L11は、容量素子C1と、導電体1719などの複数の導電体とを有している。また、容量素子C1は、第1の電極1751と、第2の電極1752と、絶縁体1753と、を有している。
層L12は、配線1737などの複数の配線を有している。
トランジスタTrB、トランジスタTrCは、実施の形態4に示したOSトランジスタを適用することが好ましい。図24(A)、図24(B)は、トランジスタTrB、トランジスタTrCに、図19に示すトランジスタ1400cを適用した例を示している。
トランジスタTrAは、トランジスタTrB、トランジスタTrCとは異なる半導体材料で形成されることが好ましい。図24(A)、図24(B)では、トランジスタTrAにSiトランジスタを適用した例を示している。
基板1700としては、シリコンや炭化シリコンからなる単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムからなる化合物半導体基板や、SOI基板などを用いることができる。
また、基板1700として、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルム、などを用いてもよい。また、ある基板を用いて半導体素子を形成し、その後、別の基板に半導体素子を転置してもよい。図24(A)、図24(B)では、一例として、基板1700に単結晶シリコンウェハを用いた例を示している。
図26(A)、図26(B)を用いて、トランジスタTrAの詳細について説明を行う。図26(A)にはトランジスタTrAのチャネル長方向の断面図を示し、図26(B)にはトランジスタTrAのチャネル幅方向の断面図を示している。トランジスタTrAは、ウェル1792に設けられたチャネル形成領域1793と、低濃度不純物領域1794及び高濃度不純物領域1795(これらを合わせて単に不純物領域とも呼ぶ)と、該不純物領域に接して設けられた導電性領域1796と、チャネル形成領域1793上に設けられたゲート絶縁膜1797と、ゲート絶縁膜1797上に設けられたゲート電極1790と、ゲート電極1790の側面に設けられた側壁絶縁層1798、側壁絶縁層1799とを有する。なお、導電性領域1796には、金属シリサイド等を用いてもよい。
図26(B)において、トランジスタTrAはチャネル形成領域1793が凸形状を有し、その側面及び上面に沿ってゲート絶縁膜1797及びゲート電極1790が設けられている。このような形状を有するトランジスタをFIN型トランジスタと呼ぶ。本実施の形態では、半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体層を形成してもよい。
なお、トランジスタTrAは、FIN型トランジスタに限定されず、図27(A)、図27(B)に示すプレーナー型トランジスタを用いてもよい。図27(A)は、トランジスタTrAのチャネル長方向の断面図を示し、図27(B)はトランジスタTrAのチャネル幅方向の断面図を示している。図27に示す符号は、図26に示す符号と同一である。
図24(A)、図24(B)において、絶縁体1702乃至絶縁体1706は、水素、水等に対するブロッキング効果を有することが好ましい。水、水素等は酸化物半導体中にキャリアを生成する要因の一つであるので、水素、水等に対するブロッキング層を設けることにより、トランジスタTrBおよびトランジスタTrCの信頼性を向上させることが可能になる。水素、水等に対するブロッキング効果を有する絶縁物には、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等がある。
配線1730乃至配線1737、及び、導電体1710乃至導電体1719には、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)の低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
図24において、符号及びハッチングパターンが与えられていない領域は、絶縁体で構成されている。上記絶縁体には、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどから選ばれた一種以上の材料を含む絶縁体を用いることができる。また、当該領域には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の有機樹脂を用いることもできる。
上記実施の形態に示すトランジスタ101にOSトランジスタを用いる場合、トランジスタ101は、層L4又は層L7に形成されることが好ましい。また、図8に示すように、メモリセル21を積層する場合は、あるメモリセル21が有するトランジスタ101を層L4に形成し、他のメモリセル21が有するトランジスタ101を層L7に形成すればよい。
半導体装置10は、図24に示す構成にすることで、占有面積を小さくし、メモリセルを高集積化することが可能になる。
<断面図2>
半導体装置10は、半導体装置10が有する全てのOSトランジスタを、同一の層に形成してもよい。その場合の例を、図25(A)、図25(B)に示す。図24と同様に、図25(A)は半導体装置10のメモリセル21を構成するトランジスタのチャネル長方向の断面図を表し、図25(B)は半導体装置10のメモリセル21を構成するトランジスタのチャネル幅方向の断面図を表している。
図25(A)、図25(B)は、層L6乃至L8が省かれ、層L5の上に層L9が形成されている点で、図24(A)、図24(B)に示す断面図と相違する。図25(A)、図25(B)のその他の詳細は、図24(A)、図24(B)の記載を参酌することができる。
半導体装置10は、図25(A)、図25(B)に示す構成にすることで、製造工程を単純化することが可能になる。
なお、図24、図25においては、トランジスタTrAを1つ図示しているが、層L1にはトランジスタTrAが複数設けられていてもよい。例えば、図25において層L1に2つのトランジスタTrAを設け、層L4に1つのトランジスタTrBを設けることもできる。この場合、2つのトランジスタTrAを、例えば、図2、図8におけるトランジスタ101、102、又は、図9、図10におけるトランジスタ111、112に対応させることができる。また、トランジスタTrBは、例えば、図2、図8におけるトランジスタ103、又は、図9、図10におけるトランジスタ113に対応させることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したOSトランジスタに適用可能な酸化物半導体膜の構造について説明する。
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
<酸化物半導体の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体およびnc−OSなどがある。
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さない、などといわれている。
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a−like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である。不安定であるという点では、a−like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近い。
<CAAC−OS>
まずは、CAAC−OSについて説明する。
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一種である。
CAAC−OSをX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析した場合について説明する。例えば、空間群R−3mに分類されるInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、図31(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSでは、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、空間群Fd−3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAAC−OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
一方、CAAC−OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、図31(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGaZnO4に対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図31(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、CAAC−OSの被形成面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、図31(D)に示すような回折パターン(制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図31(E)に示す。図31(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プローブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図31(E)における第1リングは、InGaZnO4の結晶の(010)面および(100)面などに起因すると考えられる。また、図31(E)における第2リングは(110)面などに起因すると考えられる。
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
図32(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fなどによって観察することができる。
図32(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認することができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAAC−OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
また、図32(B)および図32(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図32(D)および図32(E)は、それぞれ図32(B)および図32(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方法について説明する。まず、図32(B)および図32(C)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得したFFT像において原点を基準に、2.8nm−1から5.0nm−1の間の範囲を残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列を示している。
図32(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部である。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペレットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
図32(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を点線で示し、格子配列の向きの変化を破線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形や、五角形または/および七角形などが形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において原子配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
以上に示すように、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、CAAC−OSを、CAA crystal(c−axis−aligned a−b−plane−anchored crystal)を有する酸化物半導体と称することもできる。
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
次に、nc−OSについて説明する。
nc−OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れない。即ち、nc−OSの結晶は配向性を有さない。
また、例えば、InGaZnO4の結晶を有するnc−OSを薄片化し、厚さが34nmの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、図33(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測される。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)を図33(B)に示す。図33(B)より、リング状の領域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc−OSは、プローブ径が50nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を入射させることでは秩序性が確認される。
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると、図33(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンを観測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc−OSが秩序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いているため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
図33(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc−OSの断面のCs補正高分解能TEM像を示す。nc−OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所などのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさであり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(micro crystalline oxide semiconductor)と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
このように、nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。
図34に、a−like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、図34(A)は電子照射開始時におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図34(B)は4.3×108e−/nm2の電子(e−)照射後におけるa−like OSの高分解能断面TEM像である。図34(A)および図34(B)より、a−like OSは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。また、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低密度領域と推測される。
鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。以下では、a−like OSが、CAAC−OSおよびnc−OSと比べて不安定な構造であることを示すため、電子照射による構造の変化を示す。
試料として、a−like OS、nc−OSおよびCAAC−OSを準備する。いずれの試料もIn−Ga−Zn酸化物である。
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料は、いずれも結晶部を有する。
なお、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In−O層を3層有し、またGa−Zn−O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnO4の結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa−b面に対応する。
図35は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例である。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図35より、a−like OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。図35より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e−)の累積照射量が4.2×108e−/nm2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×108e−/nm2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。図35より、電子の累積照射量によらず、nc−OSおよびCAAC−OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H−9000NARを用いた。電子線照射条件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×105e−/(nm2・s)、照射領域の直径を230nmとした。
このように、a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られない。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結晶の密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3である。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満である。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満である。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置10を構成する絶縁層、導電層、半導体層等の成膜方法について説明する。
半導体装置を構成する絶縁層、導電層、半導体層等の成膜方法としては、スパッタ法や、プラズマCVD法が代表的である。その他の方法、例えば、熱CVD法により形成すること可能である。熱CVD法として、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やALD法を使用することができる。
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。熱CVD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行ってもよい。
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り換えて2種類以上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子層上に積層されて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なFETを作製する場合に適している。
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示された導電膜や半導体膜を形成することができ、例えば、InGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、(CH3)3Inである。また、トリメチルガリウムの化学式は、(CH3)3Gaである。また、ジメチル亜鉛の化学式は、(CH3)2Znである。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式(C2H5)3Ga)を用いることもでき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式(C2H5)2Zn)を用いることもできる。
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF6ガスとH2ガスを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてSiH4ガスを用いてもよい。
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnOX(X>0)膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してInO2層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを用いてGaO層を形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを用いてZnO層を形成する。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO2層やInZnO2層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形成してもよい。なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスで水をバブリングして得られたH2Oガスを用いてもよいが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスにかえて、In(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Ga(CH3)3ガスにかえて、Ga(C2H5)3ガスを用いてもよい。また、Zn(CH3)2ガスを用いてもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置または記憶装置を電子部品に適用する例、及び該電子部品を具備する電子機器に適用する例について、図28、図29を用いて説明する。
<電子部品>
図28(A)では上記実施の形態で説明し半導体装置を電子部品に適用する例について説明する。なお電子部品は、半導体パッケージ、又はIC用パッケージともいう。この電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例について説明することにする。
上記実施の形態に示すトランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。
後工程については、図28(A)に示す各工程を経ることで完成させることができる。具体的には、前工程で得られる素子基板が完成(ステップS1)した後、基板の裏面を研削する(ステップS2)。この段階で基板を薄膜化することで、前工程での基板の反り等を低減し、部品としての小型化を図るためである。
基板の裏面を研削して、基板を複数のチップに分離するダイシング工程を行う。そして、分離したチップを個々にピックアップしてリードフレーム上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップS3)。このダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接着は、樹脂による接着や、テープによる接着等、適宜製品に応じて適した方法を選択する。なお、ダイボンディング工程は、インターポーザ上に搭載し接合してもよい。
なお、本実施の形態において、基板の一方の面に素子が形成されていたとき、基板の一方の面を表面とし、該基板の他方の面(該基板の素子が形成されていない側の面)を裏面とする。
次いでリードフレームのリードとチップ上の電極とを、金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する、ワイヤーボンディングを行う(ステップS4)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。また、ワイヤーボンディングは、ボールボンディングや、ウェッジボンディングを用いることができる。
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施される(ステップS5)。モールド工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、機械的な外力による内蔵される回路部やワイヤーに対するダメージを低減することができ、また水分や埃による特性の劣化を低減することができる。
次いでリードフレームのリードをメッキ処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップS6)。このめっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。
次いでパッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップS7)。そして最終的な検査工程(ステップS8)を経て電子部品が完成する(ステップS9)。
以上説明した電子部品は、上述の実施の形態で説明した半導体装置を含む構成とすることができる。そのため、信頼性に優れた電子部品を実現することができる。
また、完成した電子部品の斜視模式図を図28(B)に示す。図28(B)では、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。図28(B)に示す電子部品4700は、リード4701及び回路部4703を示している。図28(B)に示す電子部品4700は、例えばプリント基板4702に実装される。このような電子部品4700が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板4702上で電気的に接続されることで電子機器の内部に搭載することができる。完成した回路基板4704は、電子機器等の内部に設けられる。
<電子機器>
次に上述した電子部品を適用した電子機器について説明する。
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、医療機器などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図29に示す。
図29(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5201、筐体5202、表示部5203、表示部5204、マイクロホン5205、スピーカ5206、操作キー5207、スタイラス5208等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯型ゲーム機の各種集積回路に用いることができる。なお、図29(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5203と表示部5204とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
図29(B)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示部5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、携帯情報端末の各種集積回路に用いることができる。第1表示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体5602に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部5605により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続部5605により変更が可能である。第1表示部5603における映像を、接続部5605における第1筐体5601と第2筐体5602との間の角度に従って、切り替える構成としても良い。また、第1表示部5603及び第2表示部5604の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示装置を用いるようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチパネルを設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。
図29(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部5402、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ノート型パーソナルコンピュータの各種集積回路に用いることができる。
図29(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体5301、冷蔵室用扉5302、冷凍室用扉5303等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、電気冷凍冷蔵庫の各種集積回路に用いることができる。
図29(E)はビデオカメラであり、第1筐体5801、第2筐体5802、表示部5803、操作キー5804、レンズ5805、接続部5806等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、ビデオカメラの各種集積回路に用いることができる。操作キー5804及びレンズ5805は第1筐体5801に設けられており、表示部5803は第2筐体5802に設けられている。そして、第1筐体5801と第2筐体5802とは、接続部5806により接続されており、第1筐体5801と第2筐体5802の間の角度は、接続部5806により変更が可能である。表示部5803における映像を、接続部5806における第1筐体5801と第2筐体5802との間の角度に従って切り替える構成としてもよい。
図29(F)は乗用車であり、車体5701、車輪5702、ダッシュボード5703、ライト5704等を有する。本発明の一態様にかかる半導体装置は、乗用車の各種集積回路に用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置または記憶装置を備えることができるRFタグの使用例について図30を用いながら説明する。RFタグの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図30(A)参照)、記録媒体(DVDやビデオテープ等、図30(B)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図30(C)参照)、乗り物類(自転車等、図30(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、薬品や薬剤を含む医療品、または電子機器(液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは各物品に取り付ける荷札(図30(E)、図30(F)参照)等に設けて使用することができる。
本発明の一態様に係るRFタグ4000は、表面に貼る、または埋め込むことにより、物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであれば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFタグ4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証書類等に本発明の一態様に係るRFタグ4000を設けることにより、認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFタグを取り付けることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
以上のように、本発明の一態様に係わるRFタグを本実施の形態に挙げた各用途に用いることにより、情報の書込みや読み出しを含む動作電力を低減できるため、最大通信距離を長くとることが可能となる。また、電力が遮断された状態であっても情報を極めて長い期間保持可能であるため、書き込みや読み出しの頻度が低い用途にも好適に用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。