以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1に本発明のモータ制御システム1の第1実施形態の全体構成を示す。
本実施形態のモータ制御システム1は、図1に示すように、電動モータ10、およびファン20を備える。
電動モータ10は、図1、図2、および図3に示すように、回転軸30、センターピース31、軸受け32、抑え部33、ステータ35、ロータ36、およびホールセンサ37a、37bを備える。
回転軸30は、ロータ36の回転力をファン20に伝える回転軸である。ファン20は、その穴部20aに回転軸30の軸線方向他方側端部が嵌合されることにより、ファン20に回転軸30が連結されている。本実施形態では、ファン20として、例えば、遠心ファンが用いられている。
センターピース31は、筒部31a、およびフランジ部31bを備える支持部材である。筒部31aは、回転軸30の回転中心線M1(図8参照)を中心とする筒状に形成されている。筒部31aの中空部内には、回転軸30が配置されている。フランジ部31bは、筒部31aの軸線方向一方側から径方向の外側に突起するように形成されている。センターピース31は、プレート40に固定されている。径方向とは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする径方向である。
軸受け32は、回転軸30の軸線方向一方側を回転自在に支持する機械的軸受けである。軸受け32は、センターピース31の筒部31aに対して径方向内側に配置されている。軸受け32は、筒部31aにより支持されている。軸受け32は、抑え板41によって軸線方向一方側から支持されている。本実施形態では、軸受け32として、例えば、転が
り軸受が使用されている。転がり軸受は、回転軸30の外周側に配置される軌道と、回転軸30および軌道の間に配置される転動体とを備え、転動体が転がり運動することによって回転軸30を支持する周知の軸受けである。
抑え部33は、ロータケース60のうちロータ支持部60aと軸受け32との間に配置されている。抑え部33は、回転軸30の回転中心線M1を中心とするリング状に形成されている。
抑え部33および回転軸30の間には、隙間が形成されている。抑え部33は、回転軸30の回転中心線M1から回転軸30が大きく傾いた状態で回転軸30を支える軸受け部である。抑え部33は、センターピース31の筒部31aによって支持されている。本実施形態の抑え部33は、潤滑性を有する樹脂材料によって形成されている。
ステータ35は、図1に示すように、コイル50a、50b、50c、コイル51a、51b、51c、およびステータコア52を備える。
ステータコア52は、コイル50a、50b、50cから発生する磁束(すなわち、磁界)を通過させるものである。さらに、ステータコア52は、コイル51a、51b、51cから発生する磁束(すなわち、磁界)を通過させるものである。ステータコア52は、複数の永久磁石61とともに磁気回路を構成する。
具体的には、ステータコア52は、図1および図2に示すように、リング部53、およびティース54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、54h、54i、54j、54k、54lを備える。リング部53は、センターピース31の筒部31aに対して回転軸30の軸線M2を中心とする径方向外側に配置されている。リング部53は、筒部31aに固定されている。
ティース54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、54h、54i、54j、54k、54lは、リング部53から径方向外側に突出するように形成されている。ティース54a、54b、・・・54lは、それぞれ、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向に同一間隔で並べられている。
ティース54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、54h、54i、54j、54k、54lは、それぞれ先端側が円周方向に延びるように形成されている。
本実施形態のコイル51a、51b、51cは、ロータ36を回転させるための回転磁界を発生する回転駆動用コイルである。図3に本実施形態のコイル51a、51b、51cの配置を示す。図3では、説明の便宜上、コイル50a、50b、50cの図示を省略する。図3において、コイル51a、51b、51cにおいて、×印は、紙面垂直方向の手前側から奥側に向けて電流が流れる状態を示し、黒点は、紙面垂直方向の奥側から手前側に向けて電流が流れる状態を示している。
まず、コイル51aは、U1相コイルであって、ティース54c、54d、54i、54jに巻かれている。ティース54c、54iは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度180度オフセットして配置されている。ティース54d、54jは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向に角度180度オフセットして配置されている。
ここで、ティース54cに巻かれているコイル50aとティース54dに巻かれているコイル50aとは、異なる方向に巻かれている。ティース54iに巻かれているコイル50aとティース54jに巻かれているコイル50aとは、異なる方向に巻かれている。
コイル51bは、V1相コイルであって、ティース54a、54b、54g、54hに、巻かれている。ティース54a、54gは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度180度オフセットして配置されている。ティース54b、54hは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向に角度180度オフセットして配置されている。
ここで、ティース54aに回巻きされているコイル50bとティース54bに回巻きされているコイル50bとは、異なる方向に巻かれている。ティース54gに回巻きされているコイル50bとティース54hに回巻きされているコイル50bとは、異なる方向に巻かれている。
コイル51cは、W1相コイルであって、ティース54e、54f、54k、54lに、巻かれている。ティース54e、54kは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度180度オフセットして配置されている。ティース54f、54lは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向に角度180度オフセットして配置されている。
ここで、ティース54eに回巻きされているコイル50cとティース54fに回巻きされているコイル50cとは、異なる方向に巻かれている。ティース54kに回巻きされているコイル50cとティース54lに回巻きされているコイル50cと異なる方向に巻かれている。
本実施形態のコイル50a、50b、50cは、回転軸30の支持力を発生させる傾き制御用コイルである。図4に本実施形態のコイル50a、50b、50cの配置を示す。図4では、説明の便宜上、コイル51a、51b、51cの図示を省略する。図4において、コイル50a、50b、50cにおいて、×印は、紙面垂直方向の手前側から奥側に向けて電流が流れる状態を示し、黒点は、紙面垂直方向の奥側から手前側に向けて電流が流れる状態を示している。
コイル50aは、U2相コイルであって、ティース54a、54d、54g、54jに巻かれている。ティース54a、54d、54g、54jは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度90度ずつオフセットして並べられている。
コイル50bは、V2相コイルであって、ティース54c、54f、54i、54lに巻かれている。ティース54c、54f、54i、54lは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度90度ずつオフセットして配置されている。
コイル50cは、W2相コイルであって、ティース54b、54e、54h、54kに巻かれている。ティース54b、54e、54h、54kは、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向において角度90度ずつオフセットして並べられている。
本実施形態では、コイル51a、51b、51cは、コイル50a、50b、50cに対して、ロータ36側(すなわち、回転中心線M1を中心とする径方向外側)に配置されている。
このようにコイル50a、50b、50cとコイル51a、51b、51cとは、共通のステータコア52に巻かれている。つまり、コイル50a、50b、50cとコイル51a、51b、51cとは、ステータコア52を介してセンターピース31に取り付けられている。そして、コイル50a、50b、50cに流れる電流とコイル51a、51b、51cに流れる電流とは、電子制御装置(図1中ECUと記す)70により制御される。
ロータ36は、図1および図5に示すように、ロータケース60、および複数の永久磁石61を備える。ロータケース60は、コイル51a、51b、51c、50a、50b、50cから発生される磁束、および複数の永久磁石61から発生される磁束を通過させる磁路を構成するものであって、回転軸30の軸線M2を中心とする筒状に形成されているヨークである。
ロータケース60は、ロータ支持部60a、蓋部60c、側壁60d、および凸部60eを備える。蓋部60cは、軸線M2を中心とする円板状に形成されている。蓋部60cは、ステータ35に対して軸線方向他方側に配置されている。
ロータ支持部60aは、蓋部60cのうち軸線M2側から軸線方向他方側に突出して貫通孔60bを有する円筒状に形成されている。ロータ支持部60aの貫通孔60bは、その軸線が回転軸30の軸線M2に一致している。回転軸30がロータ支持部60aの貫通孔60b内に貫通した状態でロータ支持部60aが回転軸30に接続されている。ロータ支持部60aは、ロータ36のうち回転軸30に支持されている部位である。
側壁60dは、回転軸30の軸線M2を中心とする円筒状に形成されている。側壁60dは、蓋部60cのうち回転軸30の軸線M2を中心とする径方向外側から軸線方向一方側に突出している。
凸部60eは、図1および図6に示すように、側壁60dのうち軸線方向一方側から軸線方向一方側に凸となるように形成されている。凸部60eは、ロータ36のロータケース60のうち基準位置に設けられたものであって、ロータケース60のうち基準位置と基準位置以外の他の部位とで磁気抵抗を相違させるために設けられている。具体的には、凸部60eは、ロータケース60のうち基準位置の磁気抵抗を他の部位の磁気抵抗よりも小さくするために設けられている。
複数の永久磁石61は、側壁60dに対して軸線M2を中心とする径方向内側に配置されている。複数の永久磁石61は、回転軸30の軸線M2を中心とする円周方向に並べられている。複数の永久磁石61は、側壁60dに固定されている。
複数の永久磁石61は、ロータ36において複数の磁極を形成するものである。複数の永久磁石61は、それぞれの磁極が軸線M2を中心とする径方向内側に向くように配置されている。
具体的には、磁極としてのS極およびN極が軸線M2を中心とする円周方向に交互に並ぶように複数の永久磁石61が配列されている。本実施形態では、12個の永久磁石61が配置されている。
ホールセンサ37a、37bは、それぞれ、複数の永久磁石61から発生される磁束を検出する磁気センサである。ホールセンサ37a、37bは、ロータケース60の側壁60dおよび複数の永久磁石61に対して軸線方向一方側に配置されている。
ホールセンサ37a、37bは、図6に示すように、配置されている。図6では、回転軸30の回転中心線M1に直交してホールセンサ37aと回転軸30の回転中心線M1とを結ぶ仮想線を直線yとする。回転軸30の回転中心線M1に直交してホールセンサ37bと回転中心線M1とを結ぶ仮想線を直線xとしている。
本実施形態では、ホールセンサ37aは、回転中心線M1が延びる方向から視て、直線xに対して回転中心線M1を中心とする円周方向にオフセットしている。本実施形態では、ホールセンサ37aのZ座標とホールセンサ37bのZ座標とが一致している。
ホールセンサ37a、37bは、センターピース31のフランジ部31bに固定されている。ロータケース60の側壁60dおよび複数の永久磁石61とホールセンサ37a、37bとの間には、隙間が設けられている。
ホールセンサ37a、37bは、回転軸30の回転角度、回転速度、および傾き角度を検出するためのもので、複数の永久磁石61のから生じる磁界を検出するホール素子から構成されている。
このように構成された電動モータ10では、回転軸30のうち軸受け32側を支点として、回転軸30の回転中心線M1から回転軸30が傾くことが可能に構成される(図7、図8参照)。
図7、図8では、前記支点を原点0とし、回転軸30の回転中心線M1をZ軸とし、回転中心線M1に直交するX軸とY軸とを設定し、Z軸に対して回転軸30が角度θ傾いた例を示している。図7中の(x0、y0)は、回転軸30のうち軸線方向他方側の端部(すなわち、ファン20)のX−Y座標を示している。
次に、本実施形態のモータ制御システム1の電気的構成について説明する。
電子制御装置70は、図9に示すように、インバータ回路71、72、および制御回路73を備える。
インバータ回路71は、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を備える。
トランジスタSW1、SW2は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。トランジスタSW3、SW4は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。トランジスタSW5、SW6は、正極母線71aおよび負極母線71bの間に直列接続されている。
トランジスタSW1、SW2の間の共通接続端子T1は、コイル50aに接続されている。トランジスタSW3、SW4の間の共通接続端子T2は、コイル50bに接続されている。トランジスタSW5、SW6の間の共通接続端子T3は、コイル50cに接続されている。コイル50a、50b、50cは、スター結線により接続されている。
インバータ回路72は、トランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6を備える。
トランジスタSY1、SY2は、正極母線72aおよび負極母線72bの間に直列接続されている。トランジスタSY3、SY4は、正極母線72aおよび負極母線72bの間に直列接続されている。トランジスタSY5、SY6は、正極母線72aおよび負極母線72bの間に直列接続されている。
トランジスタSY1、SY2の間の共通接続端子D1は、コイル51aに接続されている。トランジスタSY3、SY4の間の共通接続端子D2は、コイル51bに接続されている。トランジスタSY5、SY6の間の共通接続端子D3は、コイル51cに接続されている。コイル51a、51b、51cは、スター結線により接続されている。正極母線71a、72aは、直流電源Baの正極電極に接続されている。負極母線71b、72bは、直流電源Baの負極電極に接続されている。
制御回路73は、マイクロコンピュータやメモリ等に構成されているもので、メモリに記憶されているコンピュータプログラムにしたがって、ロータ36に回転力を発生させるとともに、回転軸30を支持する支持力を出力する制御処理を実行する。そして、制御回路73は、制御処理の実行に伴って、ホールセンサ37a、37bの出力信号に基づいて、トランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6、およびトランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6をスイッチング制御する。
共通接続端子T1、T2、T3からコイル50aに電流が出力されたときには、図10に示すように、コイル50aおよび複数の磁極(すなわち、永久磁石61)の間には、複数の永久磁石61によって生じる磁束Gaに基づいて、電磁力としての反発力、吸引力が発生する。
具体的には、ティース54a、54d、54g、54jに巻かれているコイル50aと複数の永久磁石61との間には、電磁力としての反発力、吸引力が発生する。このようなコイル50aと複数の永久磁石61との間に生じる反発力、吸引力が合成されて電磁力fu1が発生する。電磁力fu1は、ロータ36を第1方向に移動させる力である。第1方向は、回転軸30の軸線を中心として紙面右側に延びる軸をX軸としたとき、X軸から時計回り方向に225°回転した方向である。
なお、図9、図10、図11において、径方向外側を向いた矢印が反発力を示し、径方向内側を向いた矢印が吸引力を示している。
共通接続端子T1、T2、T3からコイル50bに電流が出力されたときには、図11に示すように、コイル50bおよび複数の磁極の間には、複数の永久磁石61によって生じる磁束Gbに基づいて、電磁力としての反発力、吸引力が発生する。
具体的には、ティース54c、54f、54i、54lに巻かれているコイル50bと複数の永久磁石61との間には、電磁力としての反発力、吸引力が発生する。このようなコイル50bと複数の永久磁石61との間に生じる反発力、吸引力が合成されて電磁力fv1が発生する。電磁力fv1は、ロータ36を第2方向に移動させる力である。第2方向は、上記X軸から時計回り方向に105°回転した方向である。
共通接続端子T1、T2、T3からコイル50cに電流が出力されたときには、図12に示すように、コイル50cおよび複数の磁極の間には、複数の永久磁石61によって生じる磁束Gcに基づいて、電磁力として反発力、吸引力が発生する。
具体的には、ティース54b、54e、54h、54kに巻かれているコイル50cと複数の永久磁石61との間には、電磁力としての反発力、吸引力が発生する。このようなコイル50cと複数の永久磁石61との間に生じる反発力、吸引力が合成されて電磁力fw1が発生する。電磁力fw1は、ロータ36を第3方向に移動させる力である。第3方向は、上記X軸から反時計回り方向に15°回転した方向である。
ここで、電磁力fu1の方向、電磁力fv1の方向、および電磁力fw1の方向は、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向に同一間隔で並べられている。
具体的には、電磁力fu1の方向は、電磁力fv1の方向に対して角度120℃オフセットしている。電磁力fv1の方向は、電磁力fw1の方向に対して角度120℃オフセットしている。電磁力fw1の方向は、電磁力fu1の方向に対して角度120℃オフセットしている。ここで、電磁力fu1、fv1、fw1をそれぞれ単位ベクトルとする。
このような電磁力fu1、fv1、fw1、および電磁力fu1、fv1、fw1に掛ける係数K1、K2、K3を用いて、回転中心線M1に回転軸30の軸線M2(図8参照)を近づけるための支持力Faを下記の数式1で表すことができる(図13参照)。
Fa=K1・fu1+K2・fv1+K3・fw1・・・(数式1)
制御回路73がトランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を制御して共通接続端子T1、T2、T3からコイル50a、50b、50cに流す電流を制御する。このため、係数K1、K2、K3が制御されることにより、支持力Faの大きさ、および方向をそれぞれ制御することができる。
制御回路73がトランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6を制御して共通接続端子D1、D2、D3からコイル51a、51b、51cに電流が出力される。このため、コイル51a、51b、51cから回転磁界Ya、Yb、Ycが順次に発生する(図14参照)。回転磁界Ya、Yb、Ycは、複数の永久磁石61に回転力を発生させる。
回転磁界Yaは、ティース54c、54dの間に配置されるコイル51aとティース54i、54jの間に配置されるコイル51aとから発生される。回転磁界Ybは、ティース54g、54hの間に配置されるコイル51bとティース54a、54bの間に配置されるコイル51bとから発生される。回転磁界Ycは、ティース54e、54fの間に配置されるコイル51cとティース54k、54lの間に配置されるコイル51cとから発生される。
次に、本実施形態の制御回路73の制御処理について図15〜図17を参照して説明す
る。
制御回路73は、図15、図16、図17のフローチャートにしたがって制御処理を実行する。
まず、図15のステップ100において、ホールセンサ37a、37bによって複数の永久磁石61によって生じる磁界を検出する。
次のステップ110において、ホールセンサ37a、37bの出力信号に基づいて、ロータ36の回転角度を求める。
ホールセンサ37a、37bは、それぞれ、1つのN極と1つのS極とを1周期とする交流信号にインパルス状の出力信号(図18中Pa参照)を重畳した信号を出力する。交流信号は、時間とともに信号値が正側と負側とに交互に変化する信号である。交流信号の周期は、ロータ36の回転速度によって変化する。交流信号の信号値は、ホールセンサ37a(或いは、37b)で検出される磁束量によって変化する。
インパルス状の出力信号(図18中Pa参照)は、ホールセンサ37a、37bがロータ36の凸部60eを通過した磁束を検出した際にホールセンサ37a、37bから出力される信号である。
つまり、ロータ36の凸部60eがホールセンサ37a(或いは、37b)に対して軸線方向他方側に位置するときに、ホールセンサ37a(或いは、37b)がインパルス状の出力信号(図18中Pa参照)を出力することになる。インパルス状の信号とは、幅が極めて小さいパルス信号である。本実施形態のインパルス状の信号は、センサ出力(すなわち、信号値)が正側に凸となる信号である。
本実施形態のロータ36では、6つのS極と6つのN極とが1つずつ交互に並ぶように複数の永久磁石61が配置されている。そして、ロータ36に1つの凸部60eが設けられている。このため、交流信号の6周期がロータ36の1回転に相当する。したがって、ホールセンサ37a、37bは、それぞれ、交流信号の6周期毎に1つのインパルス状の出力信号を出力することになる。
制御回路73は、ホールセンサ37a、37bから出力されるインパルス状の出力信号に基づいてロータ36の基準位置を識別する。つまり、制御回路73は、ホールセンサ37a(或いは、37b)からインパルス状の出力信号が与えられたとき、ロータ36の凸部60e(すなわち、基準位置)がホールセンサ37a(或いは、37b)に対して軸線方向他方側に位置していると判定する。
制御回路73は、ホールセンサ37a(或いは、37b)からのインパルス状の出力信号を検出したときから経過した時間をカウントして、このカウントされた時間によってロータ36の基準位置の回転角度を識別する。
次に、制御回路73は、回転軸30が回転中心線M1から傾くことを妨げる支持制御(ステップ120)と、回転軸30を回転させる回転制御(ステップ130)とを並列的に実行する。なお、支持制御(ステップ120)、および回転制御(ステップ130)の詳細は後述する。
次に、制御回路73は、ロータ36の回転方向が正常であるか否かを判定する(ステップ140)。
ここで、ホールセンサ37a、37bの間において回転中心線M1を中心とする時計回りに形成される角度を角度θ1とする。ホールセンサ37a、37bの間において回転中心線M1を中心とする反時計回りに形成される角度を角度θ2とする。角度θ1は、角度θ2よりも小さくなる(θ1<θ2)。
そこで、制御回路73は、ホールセンサ37aから出力されたインパルス状の出力信号が検出したときからホールセンサ37bから出力されたインパルス状の出力信号を検出する迄の時間TM(37a→37b)をカウントする。
これに加えて、制御回路73は、ホールセンサ37bから出力されたインパルス状の出力信号が検出したときからホールセンサ37aから出力されたインパルス状の出力信号を検出する迄の時間TS(37b→37a)をカウントする。
制御回路73は、時間TM(37a→37b)が時間TS(37b→37a)よりも短い時間であるとき(時間TS(37b→37a)>TM(37a→37b))、図6においてロータ36の回転方向が時計回り方向であると判定する。
一方、制御回路73は、時間TM(37a→37b)が時間TS(37b→37a)よりも長い時間であるとき(TM(37b→37a)<TM(37a→37b))、図6においてロータ36の回転方向が反時計回り方向であると判定する。
制御回路73は、このように判定されたロータ36の回転方向(以下、判定回転方向という)が予め想定した回転方向に一致するか否かを判定する。
制御回路73は、ロータ36の判定回転方向が予め想定した回転方向に一致するときには、ロータ36の回転方向が正常であるとしてYESと判定して、次のステップ150に移行する。
ここで、予め想定した回転方向とは、コイル51a、51b、51cから発生される回転磁界Ya、Yb、Ycの回転方向のことである。つまり、ステップ150において、ロータ36の判定回転方向が回転磁界Ya、Yb、Ycの回転方向に一致するか否かを判定することになる。
次に、ステップ150では、回転軸30の回転を続行するか否かを判定する。このとき、回転軸30の回転を続行するとして、ステップ150でYESと判定すると、ステップ100に戻る。次いで、制御処理を停止させる停止指令が外部から入力されるまで、ステップ100、110、120、130、ステップ140YES判定、およびステップ150YES判定を繰り返す。その後、停止指令が外部から入力されると、ステップ150でN0と判定して、制御処理を終了する。
なお、制御回路73は、ロータ36の判定回転方向が予め想定した回転方向に一致しない場合には、ロータ36の回転方向が異常であるとしてNOと判定して、制御処理を終了する。
次に、回転制御(ステップ130)について図16を参照して説明する。図16は図15のステップ130の処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップ131において、上記ステップ110で算出される現時刻の回転軸30の回転角度に基づいて、コイル51a、51b、51cのうち励磁すべきコイルを選択する。この選択したコイルに流す電流を、上記ステップ110で算出された現時刻の回転軸30の回転角度に基づいて算出する(ステップ132)。その後、この算出した電流を上記選択したコイルに出力するためのトランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6をスイッチング制御する(ステップ133)。これにより、インバータ回路71のトランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6がスイッチングして、共通接続端子D1、D2、D3から上記選択したコイルに電流を出力する。ステップ131〜133の処理は周知の回転制御処理を用いることができる。
このようなコイルの選択処理(ステップ131)、電流値の算出処理(ステップ132)、および電流出力処理(ステップ133)と、図13のホールセンサ検出処理(ステップ100)、および回転角度算出処理(ステップ110)を繰り返す。
すると、トランジスタSY1、SY2、SY3、SY4、SY5、SY6がスイッチングして、共通接続端子D1、D2、D3からコイル51a、51b、51cに三相交流電流を出力する。このため、コイル51a、51b、51cから回転磁界Ya、Yb、Ycが発生する。これにより、複数の永久磁石61には、回転磁界に同期して回転する回転力が発生する。これに伴い、回転軸30は、ロータ36とともに回転する。
次に、支持制御(ステップ120)について図17を参照して説明する。図17は図15のステップ120の処理の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップ121において、ホールセンサ37a、37bの出力信号に基づいて、回転軸30の回転中心線M1に対する回転軸30の傾きθ(図8参照)を算出する。
具体的には、ホールセンサ37aと回転中心線M1とを結んで回転中心線M1に直交する軸をy軸とし、ホールセンサ37bと回転中心線M1とを結んで回転中心線M1に直交する軸をx軸とするX−Y座標を設定する。
ホールセンサ37aの出力信号Haの振幅値A1と基準信号k1の振幅値A0との差分dS(=A1−A0)を求める。そして、差分dSによって、ファン20のY座標(すなわち、回転軸30の軸線方向他方側端部のY座標)を求める。
基準信号k1は、ロータ36に凸部60eが設けられていない場合において、回転軸30の軸線M2が回転中心線M1に一致した状態で、ロータ36が回転したときにホールセンサ37aから出力される出力信号の理論値である。差分(A1−A0)が大きくなるほど、Y座標(y0)が大きくなり、差分(A1−A0)が小さくなるほど、Y座標(y0)が小さくなる。
一方、ホールセンサ37bの出力信号Hbの振幅値B1と基準信号k2の振幅値B0との差分dG(=B1−B0)を求める。そして、差分dGによって、ファン20のX座標(すなわち、回転軸30の軸線方向他方側端部のX座標)を求める。
基準信号k2は、ロータ36に凸部60eが設けられていない場合において、回転軸30の軸線M2が回転中心線M1に一致した状態で、ロータ36が回転したときにホールセンサ37bから出力される出力信号の理論値である。差分dGが大きくなるほど、X座標(x0)が大きくなり、差分dGが小さくなるほど、X座標(x0)が小さくなる。
このように求められたファン20のXY座標(x0、y0)に基づいて回転中心線M1に対する回転軸30の傾きθ(角度)を算出する。なお、本実施形態では、傾きθは、Z軸および回転軸30の軸線M2の間でZ軸から回転軸30の軸線M2に向けて時計回り方向に形成される角度である(図8参照)。
次に、ステップ122において、ファン20のXY座標(x0、y0)に基づいて、回転中心線M1に対する回転軸30の軸線M2を近づけるために励磁すべきコイルをコイル50a、50b、50cから選択する。つまり、傾いた回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づけるのに通電すべきコイルをコイル50a、50b、50cから選択する。以下、このように選択したコイルを選択コイルという。
次に、ステップ123において、ロータ36の回転速度が閾値以上であるか否かを判定することにより、ロータ36の回転速度が高速であるか否かについて判定する。
具体的には、ホールセンサ37aから出力されるインパルス状の出力信号を検出してからホールセンサ37bから出力されるインパルス状の出力信号を検出するに経過した時間を求め、この求められた時間に基づいてロータ36の回転速度(以下、算出回転速度Vという)を求める。
この求められた算出回転速度Vが閾値以上であるときには、ロータ36の回転速度が高速であるとしてステップ123でYESと判定する。この場合、回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づけるのに必要な支持力Faをコイル50a、50b、50cおよび複数の磁極の間で発生させるために、上記選択コイルに出力するべき電流を、(x0、y0)および傾きθに基づいて算出する(ステップ124)。
一方、算出回転速度Vが閾値未満であるとき、回転軸30の回転速度が低速であるとしてステップ123でNOと判定する。この場合、回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づけるのに必要な支持力Faをコイル50a、50b、50cおよび複数の磁極の間で発生させるために、上記選択コイルに出力するべき電流を、(x0、y0)および傾きθに基づいて算出する(ステップ126)。
ここで、傾きθが大きいほど、回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づけるのに必要な支持力Faは、大きくなる。これに加えて、回転軸30の回転速度が高くなる程、回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づけるのに必要な支持力Faは、小さくなる。すなわち、回転軸30が高速で回転しているときには、回転軸30が低速で回転しているときに比べて、支持力Faは、小さくなる(図19参照)。
図19は、縦軸を支持力Faとし、横軸を傾き角度θとし、回転軸30が低速、或いは高速で回転している場合において、支持力Faと傾き角度θとの関係を示すグラフである。回転軸30が低速で回転しているときグラフは、回転軸30が高速で回転しているときのグラフよりも勾配が大きい。
そこで、回転軸30が高速で回転しているときに、図19の高速回転時の支持力Fa−傾きθの関係を示すグラフに基づいて、上記選択コイルに出力するべき電流を算出する(ステップ126)。
一方、回転軸30が低速で回転しているときに、図18の低速回転時の支持力Fa−傾きθの関係を示すグラフに基づいて、上記選択コイルに出力するべき電流を算出する(ステップ124)。
このように回転軸30の回転速度、(x0、y0)、および傾きθに基づいて、上記選択コイルに出力するべき電流を算出する。これに伴い、この算出した電流を上記選択コイルに出力するために、インバータ回路71のトランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を制御する。これにより、共通接続端子T1、T2、T3から上記選択コイルに電流が出力される。このため、選択コイルおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間で支持力Faが発生する。よって、支持力Faによって回転中心線M1に回転軸30を近づけることができる。
ここで、同一傾き角度θの場合において回転軸30が低速で回転している場合には、回転軸30が高速で回転している場合に比べて、選択コイルおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間で支持力Faが大きくなる。
以上説明した本実施形態によれば、電動モータ10は、センターピース31に支持されて、回転軸30の軸線方向一方側を回転自在に支持する軸受け32と、回転軸30のうち軸受け32に対して軸線方向他方側に支持されて、複数の永久磁石61を備えるロータ36とを備える。電動モータ10は、センターピース31に支持されて、ロータ36を回転軸30とともに回転させる回転力を複数の永久磁石61との間に発生させる磁界を発生するコイル51a、51b、51cと、センターピース31に取り付けられて、複数の永久磁石61との間に電磁力を発生させて、軸受け32よりも回転軸30の軸線方向他方側を回転自在に支持する磁気軸受けを構成するコイル50a、50b、50cとを備える。
電動モータ10は、回転軸30の回転中心線M1を中心とする円周方向にオフセットして配置されて、複数の永久磁石61から発生される磁束を検出するホールセンサ37a、37bを備える。回転軸30のうち軸受け32側を支点として回転軸30が回転軸32の回転中心線M1に対して傾くことが可能に構成されている。
電子制御装置70は、ホールセンサ37a、37bの検出信号に基づいて回転軸30の回転中心線M1に対する傾き角度θを求め、この求められた傾き角度θに基づいてコイル50a、50b、50cに流れる電流を制御して複数の磁極およびコイル50a、50b、50cの間の電磁力によって回転中心線M1に回転軸30の軸線M2を近づけるようになっている。
さらに、ステータ35(すなわち、コイル50a、50b、50c、51a、51b、51c)が、軸受け32に対して軸線方向他方側に配置されている。ロータ36のうち回転軸30に支持されているロータ支持部60aが、ステータ35に対して軸線方向他方側に配置されている。
したがって、回転軸30のうち軸受け32側を支点として回転軸30の回転中心線M1から回転軸30の軸線M2が傾いた場合において、ロータ支持部60aがステータ35および軸受け32の間に配置されている場合に比べて、回転中心線M1と軸線M2との間に形成される角度θに対する、ファン20のXY座標(x0、y0)が大きくなる。
つまり、回転軸30の回転中心線M1から回転軸30の軸線M2が傾いた際に、ロータ支持部60aがステータ35および軸受け32の間に配置されている場合に比べて、回転軸30のずれ量(y0、x0)が大きくなる。
このため、回転中心線M1に対して回転軸30の軸線M2が傾いた際に生じるホールセンサ37a、37bの出力信号の変化量は大きくなる。これにより、回転中心線M1に対する回転軸30の軸線M2の傾きを精度よく検出することができる。
したがって、電子制御装置70が回転中心線M1に回転軸30の軸線M2を近づける制御を精度良く実施することができる。
本実施形態では、回転軸のうち軸受け32よりも軸線方向他方側を回転自在に支持するために電磁力を発生させる役割とロータ36を回転させる回転力を発生させる磁界を発生する役割とを共通の複数の永久磁石61によって果たしている。このため、回転軸30の軸線方向他方側を回転自在に支持するために電磁力を発生させるための永久磁石とロータを回転させる回転磁界を発生させる永久磁石とを別々に設ける場合に比べて電動モータ10の体格を小型化することができる。
本実施形態では、ロータ36のうち基準位置には、凸部60eが設けられている。ホールセンサ37a、37bは、ロータ36の凸部60eを通過した磁束を検出した際にインパルス状の出力信号を出力する。このため、電子制御装置70は、ホールセンサ37a、37bから出力されるインパルス状の出力信号に基づいてロータ36の基準位置を識別することができる。
ここで、回転中心線M1に直交してホールセンサ37bと回転中心線M1とを結ぶ仮想線を直線xとすると、ホールセンサ37aは、直線xに対して、回転中心線M1を中心とする円周方向にオフセットしている。このため、電子制御装置70は、ホールセンサ37a、37bの検出信号によってロータ36の回転方向、および回転角度を求めることができる。
本実施形態では、ホールセンサ37a、37bは、センターピース31とロータケース60の側壁60dとの間に配置されている。このため、電動モータ10の回転中心線M1が延びる方向の寸法を小さくすることができる。
図20において、横軸は、回転軸30の回転数N(すなわち、回転速度)である。縦軸は、電動モータ10の振動系を示す伝達関数である。伝達関数では、回転軸30の傾き振動を振動源としてこの振動源から生じる遠心力を入力としている。回転軸30の傾き振動とは、回転軸30が回転する際に、回転中心線M1を中心とする径方向に回転軸30が揺れ動く現象のことである。
伝達関数では、電動モータ10のうち回転軸30およびロータ36以外の所定部位(例えば、センターピース31)の振動加速度を出力としている。実線で示すDeは、本実施形態の電動モータ10の振動系を示す伝達関数である。鎖線は、支持力Faを小さくしたときの電動モータ10の振動系を示す伝達関数である。一点鎖線は、支持力Faを大きくしたときの電動モータ10の振動系を示す伝達関数を示している。
ここで、支持力Faが小さい場合の伝達関数のピークは、回転軸30の回転数が低速であるときに生じている。支持力Faが大きい場合の伝達関数のピークは、回転軸30の回転数が高速であるときに生じている(図20参照)。このため、支持力Faが小さい場合には、回転軸30の回転数が低速であるときに電動モータ10に共振が生じる。一方、支持力Faが大きいときには、回転軸30の回転数が高速であるときに電動モータ10に共振が生じる。
そこで、本実施形態では、回転軸30が高速で回転しているとき支持力Faを小さくし、回転軸30が低速で回転しているとき支持力Faを大きくする。すなわち、回転軸30の回転数によって、支持力Faの大きさを切り替えている。このため、電動モータ10の振動系において、ピークを抑えた伝達関数Deを形成することになる。これにより、電動モータ10において共振が生じ難くすることができる。
以上により、回転軸30の傾き振動が起因して、電動モータ10に生じる振動加速度Skを回転速度Nの使用範囲に亘って低減することができる(図21参照)。使用範囲は、電動モータ10において実際に使用される回転軸30の回転数Nの範囲である。
なお、図21において、横軸は、回転軸30の回転数Nである。縦軸は、電動モータ10のうち回転軸30、ロータ36以外の所定部位(例えば、センターピース31)に生じる振動加速度である。鎖線は支持力Faを小さくしたとき電動モータ10の上記所定部位に生じる振動加速度を示し、一点鎖線は支持力Faを大きくしたときに電動モータ10のうち上記所定部位に生じる振動加速度を示している。実線で示すSKは、本実施形態の電動モータ10の上記所定部位に生じる振動加速度を示す。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、ロータ36のうち基準位置に凸部60eを設けた例について説明したが、これに代えて、ロータ36のうち基準位置に凹部60fを設けた第2実施形態について説明する。
図21に本発明の第2実施形態のモータ制御システム1の全体構成を示す。
凹部60fは、ロータ36のうち基準位置と基準位置以外の他の箇所とで磁気抵抗を相違させるために設けられたものである。凹部60fは、ロータケース60のうち基準位置の磁気抵抗を他の部位の磁気抵抗よりも大きくするために設けられている。
ホールセンサ37a、37bは、それぞれ、ロータ36の凹部60fを通過した磁束を検出した際にインパルス状の出力信号を出力するものである。本実施形態のインパルス状の信号は、センサ出力(すなわち、信号値)が負側に凸となる信号である。
電子制御装置70は、ホールセンサ37a、37bから出力されるインパルス状の出力信号に基づいてロータ36の基準位置を識別する。このため、上記第1実施形態と同様、ホールセンサ37a、37bの検出信号に基づいてロータ36の回転角度、および回転方向を判定することができる。
本実施形態では、制御回路73は、ホールセンサ37a、37bで検出されるロータ36からの磁束の変化量に応じて回転軸30のずれ量としてのXY座標(x0、y0)を求める。ホールセンサ37a、37bは、ロータ36に対して回転中心線M1を中心とする径方向外側に配置されている。このため、回転軸30が回転中心線M1に対して傾く際にホールセンサ37a、37bで検出される磁束の変化量が大きくなる。したがって、回転軸30のずれ量(y0、x0)を精度良く求めることができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、回転軸30の軸線M2が回転中心線M1から傾くことを妨げるために、回転軸30の軸線M2を回転中心線M1に近づける支持力Faを発生させた例について説明したが、これに代えて、回転軸30をその回転方向に移動させる復元力Fbを発生させる本第3実施形態について説明する。
本実施形態と上記第1実施形態とは、制御回路73の支持制御(ステップ120)が相違する。そこで、以下、本実施形態の支持制御(ステップ120)について説明する。図24は、制御回路73の支持制御の詳細を示すフローチャートである。
まず、ステップ123において、回転軸30の回転速度が高速であるか否かについて判定する。
具体的には、ホールセンサ37aから出力されるインパルス状の出力信号を検出してからホールセンサ37bから出力されるインパルス状の出力信号を検出するに経過した時間を求め、この求められた時間に基づいてロータ36の回転速度(以下、算出回転速度Vという)を求める。この求められた算出回転速度Vが閾値以上であるか否かを判定する。
算出回転速度Vが閾値以上であるとき、回転軸30の回転速度が高速であるとしてステップ123でYESと判定する。この場合、回転中心線M1から回転軸30を傾くことを妨げる復元力Fbをコイル50a、50b、50cおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間で発生させるために、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流を算出する(ステップ126A)。
一方、算出回転速度Vが閾値未満であるとき、回転軸30の回転速度が低速であるとしてステップ123でNOと判定する。この場合、回転中心線M1から回転軸30を傾くことを妨げる復元力Fbをコイル50a、50b、50cおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間で発生させるために、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流を算出する(ステップ124A)。
本実施形態の復元力Fbは、ファン20(すなわち、回転軸30)を回転方向に移動させる電磁力である。復元力Fbは、ファン20の軸心と回転中心線M1との間の距離をLとし、ファン20(すなわち、回転軸30)の回転数をVとし、減衰係数をCとしたとき、復元力Fbは(L×V×C)から定まる電磁力である(図25参照)。本実施形態のファン20の軸心は、回転軸30の軸方向他端側端部の軸心である。
ここで、距離Lは、ファン20の軸心のXY座標(x0、yo)によって求められる。
X座標(x0)は、上記第1実施形態で説明したように、ホールセンサ37bの出力信号Hbの振幅値B1と基準信号k2の振幅値B0との差分dG(=B1−B0)に基づいて求められる。
Y座標(yo)は、ホールセンサ37aの出力信号Haの振幅値A1と基準信号k1の振幅値A0との差分dS(=A1−A0)に基づいて求められる。
回転速度は、上述の如く、ホールセンサ37aから出力されるインパルス状の出力信号を検出してからホールセンサ37bから出力されるインパルス状の出力信号を検出するに経過した時間に基づいて求められる。ファン20(すなわち、回転軸30)の回転方向は、上述の如く、ホールセンサ37a、37bの出力信号によって求められる。
そこで、本実施形態では、ステップ124A、126Aにおいて、ファン20のXY座標(x0、yo)、および(L×V×C)に基づいて、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流を算出する。復元力Fbが大きくなるほど、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流は大きくなる。
このようにステップ124A、126Aで算出した電流をコイルに出力するために、インバータ回路71のトランジスタSW1、SW2、SW3、SW4、SW5、SW6を制御する。これにより、共通接続端子T1、T2、T3からコイル50a、50b、50cに電流が出力される(ステップ125)。このため、コイル50a、50b、50cおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間には、回転中心線M1を中心とするファン20の回転方向にファン20を移動させる復元力Fbとしての電磁力が発生する。
このように回転方向に作用する復元力Fbは、コイル50a、50b、50cおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間に作用する。このため、外乱等によって回転中心線M1から回転軸30の軸線M2が傾くことが妨げられる。
ここで、回転軸30の回転速度が早くなる程、回転中心線M1から回転軸30から傾くことを妨げるのに必要な復元力Fbは、小さくなる。すなわち、回転軸30が高速で回転しているときには、回転軸30が低速で回転しているときに比べて、上記必要な復元力Fbは、小さくなる。
そこで、回転軸30が高速で回転しているとしてステップ123でYESと判定したときには、減衰係数Cを小さくして、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流を小さくする(ステップ126A)。一方、回転軸30が低速で回転しているとしてステップ123でNOと判定したときには、減衰係数Cを大きくして、コイル50a、50b、50cに出力するべき電流を大きくする(ステップ124A)。つまり、回転軸30が高速で回転しているときには、回転軸30が低速で回転しているときに比べて、減衰係数Cを小さくして、コイル50a、50b、50cに流れる電流を小さくすることができる。
以上説明した本実施形態によれば、電子制御装置70は、インバータ回路71を制御して、ファン20の軸心と回転中心線M1との間の距離をLとし、減衰係数をCとしたとき、ファン20の回転方向に移動させる復元力Fb(=L×V×C)をコイル50a、50b、50cおよび複数の磁極(すなわち、複数の永久磁石61)の間に発生させる。これにより、外乱が生じても、回転軸30の回転中心線M1から回転軸30の軸線M2が傾くことが妨げられる。
以上により、複数の永久磁石61およびコイル50a、50b、50cから構成される磁気軸受けと軸受け32とから回転軸30が回転自在に支持されることになる。これにより、回転軸30を支えるために1つの磁気軸受けを用いることになる。したがって、回転軸30を支えるための消費電力を低減することができる。
本実施形態では、回転軸30が高速で回転しているときには、回転軸30が低速で回転しているときに比べて、インバータ回路71からコイル50a、50b、50cに出力される電流を小さくする。このため、回転軸30が高速で回転しているときには、回転軸30が低速で回転しているときに比べて、復元力Fbを小さくしている。したがって、復元力Fbを発生させるために、コイル50a、50b、50cで消費される電力を低減することができる。
図26において、回転軸30の回転数Nを横軸とし、電動モータ10の振動系を示す伝達関数を縦軸としたグラフを示す。伝達関数では、回転軸30の傾き振動を振動源としてこの振動源から生じる遠心力を入力としている。伝達関数では、電動モータ10のうち回転軸30およびロータ36以外の所定部位(例えば、センターピース31)の振動加速度を出力としている。
グラフDeは、本実施形態の電動モータ10の振動系を示す伝達関数を示す。鎖線のグラフは、減衰係数Cが小さい場合の伝達関数であり、一点鎖線は減衰係数Cが大きい場合の伝達関数である。
ここで、回転軸30が低速で回転しているときには、減衰係数C(すなわち、復元力Fb)が小さい方が、減衰係数Cが大きい場合に比べて、伝達関数が大きくなる(図22参照)。一方、回転軸30が高速で回転しているときには、減衰係数Cが小さい場合に比べて、減衰係数Cが大きい場合の方が、伝達関数が大きくなる。
そこで、本実施形態では、回転軸30が高速で回転しているとき減衰係数Cを小さくし、回転軸30が低速で回転しているとき減衰係数Cを大きくする。すなわち、回転軸30の回転数によって、減衰係数C(すなわち、復元力Fb)の大きさを切り替えて、伝達関数が大きくなることを抑制する。これにより、電動モータ10において、共振が生じ難くすることができる。
以上により、減衰係数Cを回転数Nによって切り替えるので、上記第1実施形態と同様に、回転数Nの使用範囲に亘って、電動モータ10において振動加速度を低減することができる。これにより、低振動化を図ることができる。
(他の実施形態)
(1)上記第1〜3実施形態では、ロータ36のうち複数の永久磁石61がステータ35に対して軸線Sを中心とする径方向外側に配置されているアウタロータ型の電動モータ10を本発明の電動モータとする例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、ロータ36のうち複数の永久磁石61がステータ35に対して軸線M2を中心とする径方向内側に配置されているインナロータ型の電動モータ10を本発明の電動モータとする。
この場合、ロータケース60のうち回転軸30に接続される支持部60aがステータ35(すなわち、コイル50a、50b、50c、コイル51a、51b、51c)に対して軸線方向の他方側に配置されている。
(2)上記第1実施形態では、ロータケース60に凸部60eを形成した例について説明したが、これに代えて、複数の永久磁石61のうちいずれか1つの永久磁石61に凸部60eを形成してもよい。この場合、凸部60eがロータ36の基準位置を示すことになる。
(3)上記第2実施形態では、ロータケース60に凹部60fを形成した例について説明したが、これに代えて、複数の永久磁石61のうちいずれか1つの永久磁石61に凹部60fを形成してもよい。この場合、凹部60fがロータ36の基準位置を示すことになる。
(4)上記第1実施形態では、ロータケース60の側壁60dおよび複数の永久磁石61に対して軸線方向一方側にホールセンサ37a、37bを配置した例について説明したが、これに代えて、ステータ35に対して軸線方向一方側にホールセンサ37a、37bを配置してもよい。
(5) 上記第1〜第3実施形態では、本発明の電動モータ10として同期型の三相交流モータを構成した例について説明したが、これに代えて、誘導型の電動機、或いは直流電動機を本発明の電動モータ10としてもよい。
(6) 上記第1〜第3実施形態では、機械的軸受けである軸受け32として、転がり軸受を用いた例について説明したが、これに代えて、軸受け32として、すべり軸受、および流体軸受を用いてもよい。すべり軸受は、すべり面で軸を受ける軸受である。流体軸受は、液体、または気体によって支持される軸受である。
(7)上記第1〜第3実施形態では、コイル50a、50b、50cをスター結線で接続した例について説明したが、これに代えて、コイル50a、50b、50cをデルタ結線で接続してもよい。
或いは、制御回路73が、直流電源Baからコイル50a、50b、50cのそれぞれに流れる電流をコイル毎に独立して制御してもよい。
(8)上記第1〜第3実施形態では、コイル51a、51b、51cをスター結線で接続した例について説明したが、これに代えて、コイル51a、51b、51cをデルタ結線で接続してもよい。
(9)上記第1〜第3実施形態では、ホールセンサ37aのZ座標とホールセンサ37bのZ座標とが一致するようにした例について説明したが、これに代えて、ホールセンサ37aのZ座標とホールセンサ37bのZ座標とが不一致になるようにホールセンサ37a、37bを配置してもよい。
(10)上記第1〜第3実施形態では、ホールセンサ37aと回転軸30の回転中心線M1とを結ぶ直線yとホールセンサ37bと回転中心線M1とを結ぶ直線xとが直交するようにホールセンサ37a、37bが配置した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
ホールセンサ37aと回転軸30の回転中心線M1とを結ぶ直線yとホールセンサ37bと回転中心線M1とを結ぶ直線xとが一致しないのであれば、ホールセンサ37aと回転軸30の回転中心線M1とを結ぶ直線yとホールセンサ37bと回転中心線M1とを結ぶ直線xとがなす角度は、90度以外の角度でもよい。
(11)上記第1〜第3実施形態では、コイル51a、51b、51cをスター結線で接続した例について説明したが、これに限らず、コイル51a、51b、51cに流れる電流をコイル毎に独立して制御する電流制御回路を採用してもよい。
(12)上記第1〜第3実施形態では、コイル50a、50b、50cをスター結線で接続した例について説明したが、これに限らず、コイル50a、50b、50cに流れる電流をコイル毎に独立して制御する電流制御回路を採用してもよい。
(13)上記第1実施形態では、ロータ36に1つ凸部60eを設けた例について説明したが、これに限らず、ロータ36に2つ以上の凸部60eを設けてもよい。
同様に、上記第2実施形態では、ロータ36に1つ凹部60fを設けた例について説明したが、これに限らず、ロータ36に2つ以上の凹部60fを設けてもよい。
(14)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記1〜3実施形態、および他の実施形態の一部または全部に記載された第1の観点によれば、支持部材に支持されて、回転軸の軸線方向一方側を回転自在に支持する機械的軸受けと、回転軸のうち機械的軸受けに対して軸線方向他方側に支持されて、複数の磁極を形成する永久磁石を備えるロータと、支持部材に支持されて、ロータを回転軸とともに回転させる回転力を永久磁石との間に発生させる磁界を発生する第1コイルと、支持部材に支持されて、複数の磁極との間に電磁力を発生させて、機械的軸受けよりも回転軸の軸線方向他方側を回転自在に支持する磁気軸受けを構成する第2コイルと、複数の磁極から発生される磁束を検出する複数の磁気センサと、を備え、回転軸のうち機械的軸受け側を支点として当該回転軸が回転軸の回転中心線に対して傾くことが可能に構成されており、複数の磁気センサの検出信号に基づいて制御装置が回転軸の回転中心線に対する傾き角度を求め、この求められた傾き角度に基づいて制御装置が第2コイルに流れる電流を制御して複数の磁極および第2コイルの間の電磁力によって回転中心線に回転軸の軸線を近づけるようになっており、第1コイルおよび第2コイルが、機械的軸受けに対して軸線方向他方側に配置され、ロータのうち回転軸に支持されているロータ支持部が、第1コイルおよび第2コイルに対して軸線方向他方側に配置されている。
第2の観点によれば、ロータのうち基準位置には、凹部が設けられており、複数の磁気センサは、それぞれ、ロータの凹部を通過した磁束を検出した際にインパルス状の出力信号を出力するものであり、制御装置は、複数の磁気センサから出力されるインパルス状の出力信号に基づいてロータの基準位置を識別する。
これにより、ロータの回転方向や回転速度を求めることができる。
第3の観点によれば、ロータのうち基準位置には、凸部が設けられており、複数の磁気センサは、それぞれ、ロータの凸部を通過した磁束を検出した際にインパルス状の出力信号を出力するものであり、制御装置は、複数の磁気センサから出力されるインパルス状の出力信号に基づいてロータの基準位置を識別する。
これにより、ロータの回転方向や回転速度を求めることができる。
第4の観点によれば、複数の磁気センサとしての第1磁気センサおよび第2磁気センサを備えており、回転中心線に直交して第1磁気センサおよび回転中心線を結ぶ仮想の直線を仮想線としたとき、第2磁気センサは、仮想線に対して、回転中心線を中心とする円周方向にオフセットしている。
これにより、2つの磁気センサによってロータの回転方向や回転速度を求めることができる。
第5の観点によれば、ロータは、ロータ支持部を構成し、かつ第1コイルおよび第2コイルを軸線方向他方側から覆うように形成されて、第1コイルおよび第2コイルのそれぞれから発生される磁束が通過するヨークと、ヨークに支持されている永久磁石とを備える。
第6の観点によれば、支持部材に支持されて、回転軸の軸線方向一方側を回転自在に支持する機械的軸受けと、回転軸のうち機械的軸受けに対して軸線方向他方側に支持されて、複数の磁極を形成する永久磁石を備えるロータと、支持部材に支持されて、ロータを回転軸とともに回転させる回転力を永久磁石との間に発生させる磁界を発生する第1コイルと、支持部材に支持されて、複数の磁極との間に電磁力を発生させて、機械的軸受けよりも回転軸の軸線方向他方側を回転自在に支持する磁気軸受けを構成する第2コイルと、回転軸の回転中心線を中心とする円周方向にオフセットして配置されて、複数の磁極から発生される磁束を検出する複数の磁気センサと、制御装置と、を備え、回転軸のうち機械的軸受け側を支点として当該回転軸が回転軸の回転中心線に対して傾くことが可能に構成されており、制御装置は、複数の磁気センサの検出信号に基づいて回転軸の回転中心線に対する傾き角度を求め、この求められた傾き角度に基づいて第2コイルに流れる電流を制御して永久磁石および第2コイルの間の電磁力によって回転中心線に回転軸の軸線を近づけるようになっており、第1コイルおよび第2コイルが、機械的軸受けに対して軸線方向他方側に配置され、ロータのうち回転軸に支持されているロータ支持部が、第1コイルおよび第2コイルに対して軸線方向他方側に配置されている。