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JP6464144B2 - ステアリドン酸の精製方法 - Google Patents

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JP6464144B2 JP2016505034A JP2016505034A JP6464144B2 JP 6464144 B2 JP6464144 B2 JP 6464144B2 JP 2016505034 A JP2016505034 A JP 2016505034A JP 2016505034 A JP2016505034 A JP 2016505034A JP 6464144 B2 JP6464144 B2 JP 6464144B2
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Description

本発明は、ステアリドン酸の精製の分野に関連する。
魚油や藻類等に多く含まれるω3系の脂肪酸であるα−リノレン酸(ALA)やステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエンサン(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、高脂血症や動脈硬化の改善能を有し、さらに免疫や炎症反応などについても生理活性が報告されていることから、様々な用途に活用できる素材である(非特許文献1、特許文献1)。
しかしEPAやDHAを利用する際には酸化安定性の低さが問題となり、食品などへの応用が困難な場合がある。ALAは、EPAやDHAと比較すると酸化安定性が高く、生体内においてEPAのプレカーサーとなるが、生理活性の高さについてはEPAやDHAより低く、またEPAへの変換効率が低いことが問題となっている(非特許文献2)。
一方で、ALAからEPAに代謝される際の中間生成物であるSDAは、EPAやDHAより酸化安定性が高く、さらにALAよりEPAへの変換効率が高いことから体内摂取後、EPAのプレカーサーとして利用できる可能性がある。
SDAの天然の供給源としては、麻やクロスグリ、エキウムの種子があり(特許文献2)、近年では遺伝子組み換えによってSDA含有大豆も開発されている(特許文献3)。アンチョビもまた、SDAの供給源であり、その漁獲量は年間約1000万トンあることからSDAの原料として期待されているものの、SDA含有量が約3wt%程度と低く、精製が困難である。
脂肪酸の精製方法としては、分子蒸留法、クロマトグラフィー法、硝酸銀処理法、尿素付加法が公知(特許文献4、特許文献5)となっており、工業的規模においても利用可能であるものの、アンチョビ油などの原料からSDAを効率よく精製する方法は存在しない。
特表2012−531911号公報 特表2004−536801号公報 特表2012−531911号公報 特開平11−209786号公報 特開平7−242895号公報
万倉三正および鹿山 光、「AA,EPA,DHAの生理機能と利用」、AA,EPA,DHA−高度不飽和脂肪酸、鹿山光編、恒星社厚生閣(東京)、1995年、pp.207−224 Walker CG et al.、「Stearidonic acid as a supplemental source of ω−3 polyunsaturated fatty acids to enhance status for improved human health.」、Nutrition,2013,29,pp.363−369.
そのため、アンチョビ油などの原材料からSDAを高純度および/または高収率で生産
・精製する方法が求められている。
SDAを含む原材料(例えば、アンチョビ油)からSDAを分離精製するにあたり、エチルエステル化(例えば、(a)脂質分解酵素(例えば、リパーゼ)処理によるエチルエステル化、または、(b)アルカリ処理によるエチルエステル化)と硝酸銀処理法を組み合わせることにより高品質且つ高純度なSDAを高回収率で生産できることを見い出し、本発明を完成した。本発明においては、さらに、(1)薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によってSDAエチルエステルを精製することによって、SDA含有率80wt%以上の精製品を得ることができる。また、本発明の生産方法においては、吸着剤を用いて、脂質の過酸化物、着色成分、原料由来の異物などの不純物を除去してもよい。
SDAエチルエステルのような脂肪酸エチルエステルの高度精製に際しては、従来、一般に長時間の蒸留などの高温処理を伴うため、臭い、色などの官能評価上の問題点を有していた。本発明の精製法は蒸留工程を含むものの、エチルエステル化反応(例えば、酵素反応もしくはアルカリ処理)および/または硝酸銀処理などを低温にて行うことにより、臭いや色などの官能評価上の問題を生じることなく、SDAエチルエステル含有率80wt%以上の高品質のエチルエステルを取得することを可能とする。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
ステアリドン酸エチルエステルの生産方法であって、以下の工程:
(a)ステアリドン酸を含む出発原料を無水条件下において脂質分解酵素処理してステアリドン酸エチルエステルを生成し、ステアリドン酸エチルエステルを含む画分を調製する工程;
(b)ステアリドン酸エチルエステルを含む画分に銀塩を含む水性媒体溶液を混合して、ステアリドン酸エチルエステルと銀の錯体を形成する工程;および
(c)ステアリドン酸エチルエステルと銀との錯体を含む水性媒体相を分離し、該分離した水性媒体相に疎水性溶媒を添加して、該錯体から解離したステアリドン酸エチルエステルを含む疎水性媒体相を得る工程;
を包含する、方法。
(項目2)
さらに、
(d)前記工程(c)において得られた疎水性媒体相を、薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によって精製する工程、
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
さらに、
(e)前記工程(d)によって得られた精製物を吸着剤処理して不純物を除去する工程、を包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記脂質分解酵素が、Alcaligenes属、Candida属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aspergillus属、Mucor属、Rhizomucor属、および、Rhizopus属からなる群から選択される属の細菌に由来するリパーゼである、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記脂質分解酵素の反応条件が、以下:
反応温度が30〜60℃;
反応時間が6〜72時間;および、
脂質分解酵素添加量が出発原料1gあたり50〜1000U
である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記、錯体を形成する条件が、以下:
反応温度が10〜30℃;および、
錯体を形成させる時間が5〜60分;
であり、そして、錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる条件が、以下:
反応温度が30〜80℃;および、
錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる時間が5〜90分;
である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記工程(d)が薄膜式真空精密蒸留法であり、そして、蒸留装置塔頂の真空度が0.2mmHg以下であり、蒸留温度が150〜200℃である、項目2に記載の方法。
(項目8)
前記工程(e)において使用する吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、バーライト、および、アルミナからなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記工程(e)において使用する吸着剤が、脱ガスし、窒素置換した活性白土であって、該活性白土の量が、前記工程(d)によって得られた生成物重量の1〜20wt%である、項目8に記載の方法。
(項目10)
項目3、8、または、9に記載の方法によって得られるステアリドン酸エチルエステルを含む組成物であって、
ステアリドン酸エチルエステルの含有率が80wt%以上;
酸価が0.1mg KOH/g以下;
過酸化物価が2meq/kg以下;
ガードナー法による色が4以下;
官能的に無臭;
である、組成物。
(項目11)
ステアリドン酸エチルエステルの生産方法であって、以下の工程:
(a)ステアリドン酸を含む出発原料をエチルエステル化してステアリドン酸エチルエステルを生成し、ステアリドン酸エチルエステルを含む画分を調製する工程;
(b)ステアリドン酸エチルエステルを含む画分に銀塩を含む水性媒体溶液を混合して、ステアリドン酸エチルエステルと銀の錯体を形成する工程;および
(c)ステアリドン酸エチルエステルと銀との錯体を含む水性媒体相を分離し、該分離した水性媒体相に疎水性溶媒を添加して、該錯体から解離したステアリドン酸エチルエステルを含む疎水性媒体相を得る工程;
を包含する、方法。
(項目12)
前記エチルエステル化が、アルカリ処理によって行われる、項目11に記載の方法。
(項目13)
さらに、
(d)前記工程(c)において得られた疎水性媒体相を、薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によって精製する工程、
を包含する、項目11に記載の方法。
(項目14)
さらに、
(e)前記工程(d)によって得られた精製物を吸着剤処理して不純物を除去する工程、を包含する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記、錯体を形成する条件が、以下:
反応温度が10〜30℃;および、
錯体を形成させる時間が5〜60分;
であり、そして、錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる条件が、以下:
反応温度が30〜80℃;および、
錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる時間が5〜90分;
である、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記工程(d)が薄膜式真空精密蒸留法であり、そして、蒸留装置塔頂の真空度が0.2mmHg以下であり、蒸留温度が150〜200℃である、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記工程(e)において使用する吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、バーライト、および、アルミナからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記工程(e)において使用する吸着剤が、脱ガスし、窒素置換した活性白土であって、該活性白土の量が、前記工程(d)によって得られた生成物重量の1〜20wt%である、項目17に記載の方法。
(項目19)
項目14、17、または、18に記載の方法によって得られるステアリドン酸エチルエステルを含む組成物であって、
ステアリドン酸エチルエステルの含有率が80wt%以上;
酸価が0.1mg KOH/g以下;
過酸化物価が2meq/kg以下;
ガードナー法による色が4以下;
官能的に無臭;
である、組成物。
本発明によって、高品質且つ高純度なステアリドン酸(SDA)エチルエステルを高回収率で生産できる。本発明は、色や臭い、味などの官能面においてもまた安全面においても優れたSDAエチルエステルの製造方法を提供する。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。また、本明細書において「wt%」は、「質量パーセント濃度」と互換可能に使用される。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「出発原料」とは、ステアリドン酸(SDA)を含む原料をいう。好ましくは、出発原料のステアリドン酸(SDA)含有率は、3wt%以上である。出発原料は、脱酸処理されていても、されていなくてもよい。出発原料は、天然物そのものであっても、天然物の粗精製物であってもよい。好ましくは、本発明の出発原料は、魚類由来の油脂類であり、より好ましくは、本発明の出発原料は、アンチョビ油である。
本明細書において使用される用語「アンチョビ」とは、カタクチイワシ科の魚をいう。本発明のアンチョビとしては、例えば、アンチョベータ(英名:anchoveta 学名:Engraulis ringens)、カタクチイワシ(英名:Japanese anchovy 学名:Engraulis japonicus)、ヨーロッパカタクチイワシ(英名:European anchovy 学名:Engraulis encrasicolus)、ミナミアフリカカタクチイワシ(英名:southern African anchovy 学名:Engraulis capensis)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明において好ましいアンチョビは、アンチョベータである。アンチョベータは世界年間漁獲量が約1000万トンあり、その油脂にはステアリドン酸が含まれる。
本明細書において使用される用語「グリセリド」とは脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドからなる群から選択される成分を含む。本発明において、そうでないと規定しない限り、「グリセリド」は、リン脂質や糖脂質を含まない。
本明細書において使用される用語「エチルエステル化」とは、出発原料に含まれる脂肪酸(例えば、ステアリドン酸(SDA))の少なくとも一部または全部をステアリドン酸エチルエステルにする反応をいう。本発明で用いるエチルエステル化としては、例えば、脂質分解酵素処理およびアルカリ処理が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される用語「脂質分解酵素」とは、脂質を分解する酵素であり、代表的には、リパーゼまたはコレステロールエステラーゼである。好ましくは、本発明の「脂質分解酵素」は、リパーゼである。本発明において使用される「脂質分解酵素」は、天然の酵素であっても、組換え酵素であってもよい。また、本発明において使用される「脂質分解酵素」は、溶液の形態であっても、固定化された形態であってもよい。例えば、出発原料に含まれる脂肪酸(例えば、SDA)を脂質分解酵素によってエチルアルコール存在下でエチルエステル化する。
本発明において使用するリパーゼは、特に限定されることはないが、代表的には、Alcaligenes属、Candida属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aspergillus属、Mucor属、Rhizomucor属、および、Rhizopus属からなる群から選択される属の細菌に由来するリパーゼである。あるいは、ブタなど哺乳動物の膵臓由来のリパーゼを用いてもよい。本発明のリパーゼとしては、以下に列挙する市販のリパーゼが利用可能である:(1)名糖産業:リパーゼQLM(Alcaligenes属)、リパーゼPL(Alcaligenes属)、リパーゼPLC(Alcaligenes属)、リパーゼQLC(Alcaligenes属)、リパーゼOF(Candida属);(2)天野エンザイム:リパーゼAY(Candida属)、リパーゼG(Penicillium属)、リパーゼR(Penicillium属)。好ましいリパーゼは、リパーゼQLM(Alcaligenes属)である。使用する酵素量としては、50U〜1000U、好ましくは100U〜900U、より好ましくは200U〜800U、最も好ましくは400U〜600Uである。
本明細書において使用される、ステアリドン酸の「アルカリ処理」とは、出発原料に存在する脂肪酸のグリセリド又は他のエステルを塩基触媒存在下でエチルアルコールと反応させるアルコリシスによってエチルエステル化することをいう。塩基性触媒にはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウムが好ましく、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との水酸化物が該当するがこれらに限定されない。触媒の使用量は、出発原料に対して0.1%〜5%で、好ましくは0.2%〜2%であるがこれらに限定されない。反応温度は20〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜70℃であるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される用語「吸着剤」とは、精製中に発生した脂質の過酸化物、着色成分、原料由来の異物などの不純物を吸着する物質をいう。本発明において使用する吸着剤としては、例えば、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、バーライト、および、アルミナが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において使用される用語「精製」とは、精製の目的となる物質の濃度を高める任意の操作をいう。
本明細書において使用される用語「SMBクロマトグラフィー」とは、液体クロマトグラフィーの原理を利用する分離法であって、原料中の特定の成分と、別の特定の成分に対して異なる選択的吸着能力を有する吸着剤が充填された複数の単位充填層を直列に連結するとともに、最下流部の単位充填層と最上流部の単位充填層とを連結し、無端状の循環系を形成した移動層を用いるクロマトグラフィーをいう。本願明細書において、「SMBクロマトグラフィー」は、「擬似移動層クロマトグラフィー」と互換可能に使用される。
本明細書において使用される用語「銀塩」とは、水溶性の銀化合物で、高度不飽和脂肪酸のπ電子と錯体形成能を有する塩類をいう。本発明において使用する銀塩としては、例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、四フッ化ホウ素酸銀、および、酢酸銀が挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用する銀塩は、好ましくは、硝酸銀である。
本明細書で用いる脂肪酸組成分析法、ならびに、酸価、過酸化物価(以下、「POV」
という)およびアニシジン価の測定法は、周知であり、例えば、2003年版基準油脂分
析試験法((社)日本油化学会編纂)に記載されるとおりである。
(本発明の生産方法)
本発明のステアリドン酸エチルエステルの生産方法は、
(a)ステアリドン酸を含む出発原料をエチルエステル化(例えば、無水条件下において脂質分解酵素処理によるか、もしくは、アルカリ処理による)してステアリドン酸エチルエステルを生成し、ステアリドン酸エチルエステルを含む画分を調製する工程;
(b)ステアリドン酸エチルエステルを含む画分に銀塩を含む水性媒体溶液を混合して、ステアリドン酸エチルエステルと銀の錯体を形成する工程;および
(c)ステアリドン酸エチルエステルと銀との錯体を含む水性媒体相を分離し、該分離した水性媒体相に疎水性溶媒を添加して、該錯体から解離したステアリドン酸エチルエステルを含む疎水性媒体相を得る工程;
を包含する。
(工程a)
脂質分解酵素処理における「無水条件下」としては、水分含量を出発原料の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または、10%以下とする条件である。無水条件下は、代表的には、無水エタノール溶媒存在下である。脂質分解酵素(例えば、リパーゼ)によるエチルエステル化反応の反応温度は、30〜60℃、好ましくは40℃である。エチルエステル化反応の反応時間は、6〜72時間、好ましくは24時間である。
アルカリ処理によるエチルエステル化の反応条件としては、出発原料に対して0.1〜5%、好ましくは0.5%〜3%、より好ましくは2%の塩基性触媒(例えば水酸化ナトリウム)を添加する条件下であるがこれらに限定されない。反応温度は20〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜70℃であるがこれらに限定されない。撹拌速度は50〜500rpmが好ましいが、反応物が均一にされればこの限りではない。反応時間は15分〜120分が好ましいが、より好ましくは60分であるがこれらに限定されない。
必要であれば、脂質分解酵素またはアルカリ処理によるエチルエステル化反応の後、疎水性溶媒(例えば、ノルマルヘキサン)を添加し、疎水性溶媒層とエタノール層の2層になるまで静置し、SDAエチルエステルを含む疎水性溶媒層を回収し、必要に応じてエタノールおよび水で洗浄する。さらに必要であれば、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによってグリセリド画分を除去する。
(工程b)
本発明において使用する銀塩としては、例えば、硝酸銀、過塩素酸銀、四フッ化ホウ素酸銀、および、酢酸銀が挙げられるがこれらに限定されない。本発明において使用する銀塩は、好ましくは、硝酸銀である。銀塩を含む水性媒体溶液の遊離脂肪酸含量は、特に限定されることはないが、好ましくは銀1gあたり0.2meq以下である。銀塩水溶液(例えば、硝酸銀水溶液)の濃度は、反応溶液あたり20〜70wt%が好ましく、50wt%が最も好ましい。SDAエチルエステルと銀塩の錯体形成温度は、10〜30℃であり、好ましくは20℃である。錯体形成時間は、5〜60分であり、好ましくは、20分である。
(工程c)
本発明において、錯体からSDAエチルエステルを解離させる温度は、30〜80℃であり、好ましくは、60℃である。錯体からエチルエステルを解離させる時間は、5〜90分であり、好ましくは、30分である。錯体からエチルエステルを解離させる溶媒としては任意の疎水性溶媒が利用可能であるが、好ましくは、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、クロロホルム、アセトン、トルエン、または、キシレンである。好ましくは、ノルマルヘキサンおよび/またはシクロヘキサンである。
(工程d)
本発明の生産方法においては、必要に応じて、上記工程(c)において得られた疎水性媒体相を、薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によって精製してもよい。
(d1:薄膜式真空精密蒸留法)
薄膜式真空精密蒸留法とは、各成分の沸点差を利用して分離する方法である。SDAエチルエステルの場合、SDAエチルエステルを含む炭素鎖数が18の成分は炭素鎖数20以上の成分と比較すると魚油脂肪酸の中で比較的低い沸点に位置している。SDAエチルエステルの精製のためには、代表的には、蒸留装置内の真空度を0.2mmHg以下とし、150〜200℃で複数回処理を行うが、この条件に限定されることはない。蒸留温度は、好ましくは、174℃である。
(d2:擬似移動床式クロマトグラフィー法)
擬似移動床式クロマトグラフィー法(SMBクロマトグラフィー法)では、無端状の循環系に対して原料と溶離液とを供給し、カラム内(単位充填層)を高速で移動するX成分(すなわち、弱親和性成分)と、カラム内を低速で移動するY成分(すなわち、親和性成分)とをそれぞれ異なる位置から抜き出す。そして、SMBクロマトグラフィーは、原料供給位置、溶離液供給位置、X成分抜き出し位置、およびY成分抜き出し位置を、一定の位置関係に保ちながら流体循環方向下流側に順次移動させることで、原料供給を連続的に行う処理操作を擬似的に実現する。その結果、層内での各成分の分布状態はほぼ一定の幅で移動し、各成分の抜出位置も、純度・濃度ともに高い部分を取り続けることが可能な操作方式である。
(d3:尿素付加法)
尿素付加法とは、溶解した尿素が結晶化する際に直鎖の分子を取り込みながら六角柱状の付加物結晶を形成する性質を利用する精製法である。例えば、原料と尿素メタノール溶液を混合し冷却し、飽和脂肪酸やモノ不飽和脂肪酸を取り込んだ尿素付加物を形成させ、これをろ別することにより精製を行う。代表的には、尿素付加物からn−ヘキサン抽出し、シリカゲル処理の後、n−ヘキサンを留去して目的の不飽和脂肪酸を得る。
(d4:分子蒸留法)
分子蒸留法は、例えば、遠心式分子蒸留法、又は、流下薄膜式分子蒸留法によって行うことが出来る。例えば、流下薄膜式分子蒸留の場合、特開2000−342291号公報に記載されるように、真空度0.005mmHg、蒸発面温度200℃、流速30g/Lの条件で処理を行い、留分として遊離脂肪酸画分、残分としてグリセリド画分を取得できる。流下薄膜式分子蒸留の場合、分子蒸留操作における真空度、蒸発面温度、および/または、フィード量は、装置の型式、原料油の違いにより当業者が適宜変更することができる。
(工程e)
本発明の生産方法においては、必要に応じて、上記工程(d)によって得られた精製物を吸着剤処理して不純物を除去してもより。本発明において使用する吸着剤としては、例えば、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、および、アルミナが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、吸着剤は、活性白土またはシリカゲルである。活性白土は、好ましくは、脱ガスし、窒素置換した活性白土であって、活性白土の添加量は、工程(d)によって得られた生成物重量の1〜20wt%である。
本発明によって得られたSDAエチルエステルを含む画分(組成物)は、代表的には:ステアリドン酸エチルエステルの含有率が80wt%以上;酸価が0.1mg KOH/g以下;過酸化物価が2meq/kg以下;ガードナー法による色が4以下;官能的に殆ど無臭、である。
(ガードナー法)
精製標品の色の評価としては、例えば、ガードナー法を用いることができる。ガードナー法は、試料をガードナー・ホルト試料管に入れた後、標準色ガラスセットの標準色と比較してガードナー標準色番号を表示する方法である。
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
アンチョビ油1000gに対してリパーゼQLM(Alcaligenes属由来、名糖産業)を500,000Uおよび水分含量0.02wt%以下の無水エタノールを1000mL加えて40℃で24時間撹拌後、ノルマルヘキサン2000mLを加えて分液ロートで2層になるまで静置した。エチルエステル画分を含むヘキサン層を回収した後、エタノール及び水で水洗し、ノルマルヘキサン:ジエチルエーテル=95:5(vol/vol)を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってグリセリド画分を除去しエチルエステル300.1gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製は、石塚稲男、「カラムクロマトグラフィー」生化学データブック(I)日本生化学会編,東京化学同人,東京,1979,pp.869に従った。
このアンチョビ油エチルエステル300.1gに対して50wt%硝酸銀水溶液(w/w)2500gを加えて20℃で撹拌することによって錯体を形成し、分液ロートで40分間静置した後、下層の錯体画分を回収し、その画分にヘキサン2500gを加えて60℃で撹拌することにより錯体を解離させてヘキサンにエチルエステルを溶解させ、そのエチルエステルを含むヘキサンをロータリーエバポレーターによって濃縮することにより、SDA含有率21.3wt%のエチルエステル126.7gを得た。
続いて薄膜式真空精密蒸留により精製するため、硝酸銀処理によって得られたエチルエステル126.7gを蒸留器に入れた後、塔頂における真空度0.18mmHg、蒸留温度173〜175℃の操作条件で蒸留処理を行い、目的とする主留画分21.3gを得た。この留分は、SDA含有率が83.2wt%であった。その他の主な類縁物質であるEPA含有率は6.2wt%、DHA含有率は4.0wt%であった。薄膜式真空精密蒸留によって得られたエチルエステルに活性白土を5wt%添加して35℃で30分間撹拌後、ろ過を行い、酸価0.03mg KOH/g、過酸化物価0.9meq/kg、アニシジン価2.8、官能評価的に殆ど無臭で色が3(ガードナー)であるSDA含有率83.2wt%のエチルエステル20.6gを得た。出発原料に対するSDAの回収率は55.3%であった。
出発原料であるアンチョビ油及び各処理後のSDA、EPA、DHAの含有率は以下の通りである。
(実施例2)
アンチョビ油1000gを実施例1同様にリパーゼ処理および硝酸銀処理を行って、ステアリドン酸含有率21.3wt%のエチルエステルを得た後、該エチルエステルを200g/Lになるようにメタノールに溶解した。この試料をODSカラム(φ10mm×H500mm)6本を用いた2成分分離の擬似移動床式クロマトグラフィー法によって精製するため、1時間・充填剤1L当たりの原料供給量を17.5ml(17.5mL/l−R/h)、メタノールを溶離液として1時間・充填剤1L当たりの流量350mL(0.35L/L−R/h)の条件に設定して精製することで、ステアリドン酸含有率81.5wt%のエチルエステルを得た。その他の主な類縁物質であるエイコサペンタエン酸の含有率は8.4wt%、ドコサヘキサエン酸は5.2wt%であった。得られたエチルエステルに活性白土を5wt%添加して35℃で30分間撹拌後、ろ過を行い、酸価0.06mg KOH/g、過酸化物価1.8meq/kg、アニシジン価は3.5、官能評価的に殆ど無臭で色が3(ガードナー)であるSDA含有率81.5wt%のエチルエステル19.6gを得た。出発原料に対するSDAの回収率は51.5wt%であった。
(実施例3)
アンチョビ油1000gを実施例1と同様にリパーゼ処理および硝酸銀処理を行って、ステアリドン酸含有率21.3wt%のエチルエステルを得た後、該エチルエステルを尿素400gとエタノール1350mLの混合溶液に加えて75℃で60分間撹拌して溶解させた後、常温まで冷却して沈殿物(尿素付加品)と上清を濾別し、その上清を回収してエタノールを除去した。エタノール除去後の残渣に水200mLを加えて溶解し、6N塩酸によってpHを3〜4に調整することより上層に分離浮上した油分を回収し、この油分をpHが中性になるまで複数回水洗することによって尿素の除去を行い、尿素付加精製品を得た。この精製品のステアリドン酸含有率は80.4wt%で、その他の主な類縁物質であるエイコサペンタエン酸の含有率は8.7wt%、ドコサヘキサエン酸は4.9wt%であった。得られたエチルエステルに活性白土を5wt%添加して35℃で30分間撹拌後、ろ過を行い、酸価0.10mg KOH/g、過酸化物価1.9meq/kg、アニシジン価3.1、官能評価的に殆ど無臭で色が3(ガードナー)であるSDA含有率80.4wt%のエチルエステルのエチルエステル17.3gを得た。出発原料に対するSDAの回収率は44.9wt%であった。
(実施例4)
アンチョビ油1000gに2wt%の水酸化ナトリウムエタノール溶液500gを加え、40℃、200rpmで60分間撹拌した後、該反応物を回収してpHが中性になるまで複数回水洗することによって該反応物中から水酸化ナトリウムの除去を行い、アンチョビ油エチルエステル807.3gを得た。得られたアンチョビ油エチルエステルについて実施例1と同様に硝酸銀処理を実施し、SDA含有率7.0wt%のエチルエステル337.5gを得た後、薄膜式真空精密蒸留を行い、目的とする主留画分22.0gを得た。この留分はSDA含有率が80.8%であった。得られたエチルエステルを実施例1と同様に活性白土を添加して撹拌、ろ過を行い、酸価0.02mg KOH/g、過酸化物価1.1meq/kg、アニシジン価3.6、官能評価的に殆ど無臭で色が3(ガードナー)であるSDA含有率80.2wt%のエチルエステル19.7gを得た。出発原料に対するSDAの回収率は50.1%であった。
(比較例1)
アンチョビ油1000gを実施例1と同様にリパーゼ処理を行い、エチルエステル300.1gを得た。該エチルエステルを尿素900gとエタノール3000mLの混合溶液に加えて75℃で60分間撹拌して溶解させた後、常温まで冷却して沈殿物(尿素付加品)と上清を濾別し、その上清を回収してエタノールを除去した。エタノール除去後の残渣に水200mLを加えて溶解し、6N塩酸によってpHを3〜4に調整することより上層に分離浮上した油分を回収し、この油分をpHが中性になるまで複数回水洗することによって尿素の除去を行い、尿素付加精製品を得た。この精製品のステアリドン酸含有率は24.7wt%で、その他の主な類縁物質であるエイコサペンタエン酸の含有率は7.1wt%、ドコサヘキサエン酸は3.6wt%であった。得られたエチルエステルに活性白土を5wt%添加して35℃で30分間撹拌後、ろ過を行い、酸価0.17mg KOH/g、過酸化物価2.8meq/kg、アニシジン価4.4、官能評価的にわずかに臭いがあり、色が5(ガードナー)であるエチルエステルを得た。
(比較例2)
アンチョビ油1000gに1wt%の水酸化ナトリウム−エタノール溶液500gを加えて40℃で2時間撹拌した後、上層の油層を回収した。該油層に水250gを添加して70℃で30分間撹拌し、下層の水層を廃棄した。同様操作を水層が中性になるまで複数回繰り返すことによって、油層の洗浄を行った。該油層に無水硫酸ナトリウムを50g添加した後、ろ過してアンチョビ油エチルエステルを947.2g得た。続いて薄膜式真空精密蒸留により精製するため、該エチルエステルを蒸留器に入れた後、塔頂における真空度0.18mmHg、蒸留温度173〜175℃の操作条件で蒸留処理を行い、目的とする主留画分85.7gを得た。この留分は、SDA含有率が25.8wt%であった。その他の主な類縁物質であるEPA含有率は41.2wt%、DHA含有率は9.2wt%であった。得られたエチルエステルに活性白土を5wt%添加して35℃で30分間撹拌後、ろ過を行い、酸価0.06mg KOH/g、過酸化物価1.2meq/kg、アニシジン価3.9、官能評価的に殆ど無臭で色が改善されたエチルエステルを得た。分析結果を表2に示す。
(実施例と比較例の対比)
実施例1〜3は、脂質分解酵素処理と銀塩処理とを組み合わせた実施例であり、実施例4は、アルカリ処理と銀塩処理とを組み合わせた実施例である。実施例1および4では、さらに、蒸留精製と活性白土処理とを行った。実施例2では、さらに、擬似移動床式クロマトグラフィー法による精製と活性白土処理とを行った。実施例3では、さらに、尿素処理と活性白土処理とを行った。実施例1〜4の結果から、エチルエステル化(例えば、(a)脂質分解酵素処理によるエチルエステル化、または、(b)アルカリ処理によるエチルエステル化)と銀塩処理とを組み合わせることによって、高品質且つ高純度なステアリドン酸(SDA)エチルエステルを高回収率で生産できることが実証された。
本発明の優れた効果は、例えば、実施例3と、比較例1(脂質分解酵素処理を行ったが、銀塩処理を行わなかった)ないし比較例2(脂質分解酵素処理も銀塩処理も行わなかった)とを比較すること(特に、SDA含有率、臭い、および、色を比較すること)によって、一層明らかとなる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によって、高品質且つ高純度なステアリドン酸(SDA)エチルエステルを高回収率で生産できる。本発明は、色や臭い、味などの官能面においてもまた安全面においても優れたSDAエチルエステルの製造方法を提供する。本発明によって得られた高純度SDAエチルエステルはω3脂肪酸エチルエステルとして一般食品、健康食品、化粧品素材など広範囲の産業分野において利用可能であり、人間の健康維持、増進に有効である。

Claims (17)

  1. ステアリドン酸エチルエステルの生産方法であって、以下の工程:
    (a)ステアリドン酸を含む出発原料を無水条件下において脂質分解酵素処理してステアリドン酸エチルエステルを生成し、ステアリドン酸エチルエステルを含む画分を調製する工程;
    (b)ステアリドン酸エチルエステルを含む画分に銀塩を含む水性媒体溶液を混合して、ステアリドン酸エチルエステルと銀の錯体を形成する工程;および
    (c)ステアリドン酸エチルエステルと銀との錯体を含む水性媒体相を分離し、該分離した水性媒体相に疎水性溶媒を添加して、該錯体から解離したステアリドン酸エチルエステルを含む疎水性媒体相を得る工程;
    を包含する、方法。
  2. さらに、
    (d)前記工程(c)において得られた疎水性媒体相を、薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によって精製する工程、
    を包含する、請求項1に記載の方法。
  3. さらに、
    (e)前記工程(d)によって得られた精製物を吸着剤処理して不純物を除去する工程、を包含する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記脂質分解酵素が、Alcaligenes属、Candida属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aspergillus属、Mucor属、Rhizomucor属、および、Rhizopus属からなる群から選択される属の細菌に由来するリパーゼである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記脂質分解酵素の反応条件が、以下:
    反応温度が30〜60℃;
    反応時間が6〜72時間;および、
    脂質分解酵素添加量が出発原料1gあたり50〜1000U
    である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記、錯体を形成する条件が、以下:
    反応温度が10〜30℃;および、
    錯体を形成させる時間が5〜60分;
    であり、そして、錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる条件が、以下:
    反応温度が30〜80℃;および、
    錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる時間が5〜90分;
    である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記工程(d)が薄膜式真空精密蒸留法であり、そして、蒸留装置塔頂の真空度が0.2mmHg以下であり、蒸留温度が150〜200℃である、請求項2に記載の方法。
  8. 前記工程(e)において使用する吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、バーライト、および、アルミナからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  9. 前記工程(e)において使用する吸着剤が、脱ガスし、窒素置換した活性白土であって、該活性白土の量が、前記工程(d)によって得られた生成物重量の1〜20wt%である、請求項8に記載の方法。
  10. ステアリドン酸エチルエステルの生産方法であって、以下の工程:
    (a)ステアリドン酸を含む出発原料をエチルエステル化してステアリドン酸エチルエステルを生成し、ステアリドン酸エチルエステルを含む画分を調製する工程;
    (b)ステアリドン酸エチルエステルを含む画分に銀塩を含む水性媒体溶液を混合して、ステアリドン酸エチルエステルと銀の錯体を形成する工程;および
    (c)ステアリドン酸エチルエステルと銀との錯体を含む水性媒体相を分離し、該分離した水性媒体相に疎水性溶媒を添加して、該錯体から解離したステアリドン酸エチルエステルを含む疎水性媒体相を得る工程;
    を包含する、方法。
  11. 前記エチルエステル化が、アルカリ処理によって行われる、請求項1に記載の方法。
  12. さらに、
    (d)前記工程(c)において得られた疎水性媒体相を、薄膜式真空精密蒸留法、擬似移動床式クロマトグラフィー法、尿素付加法、および、分子蒸留法からなる群から選択される精製法によって精製する工程、
    を包含する、請求項1に記載の方法。
  13. さらに、
    (e)前記工程(d)によって得られた精製物を吸着剤処理して不純物を除去する工程、を包含する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記、錯体を形成する条件が、以下:
    反応温度が10〜30℃;および、
    錯体を形成させる時間が5〜60分;
    であり、そして、錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる条件が、以下:
    反応温度が30〜80℃;および、
    錯体からステアリドン酸エチルエステルを解離させる時間が5〜90分;
    である、請求項1に記載の方法。
  15. 前記工程(d)が薄膜式真空精密蒸留法であり、そして、蒸留装置塔頂の真空度が0.2mmHg以下であり、蒸留温度が150〜200℃である、請求項1に記載の方法。
  16. 前記工程(e)において使用する吸着剤が、酸性白土、活性白土、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、ゼオライト、カオリン、バーライト、および、アルミナからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記工程(e)において使用する吸着剤が、脱ガスし、窒素置換した活性白土であって
    、該活性白土の量が、前記工程(d)によって得られた生成物重量の1〜20wt%である、請求項1に記載の方法。
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