本発明の実施形態に係る水晶デバイスの製造方法で製造される水晶デバイスは、図1および図2に示されているように、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121と、水晶片121が実装されているパッケージ110と、パッケージ110と接合され水晶片121を気密封止している蓋体140と、から構成されている。
パッケージ110は、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121を実装するためのものである。パッケージ110は、例えば、平板部110aと、この平板部110aの上面の縁部に沿って設けられている枠部110bと、から構成されており、パッケージ110の上面に凹部111が形成されている。この凹部111の底面には、一対の搭載パッド112が設けられており、パッケージ110の下面には複数の外部端子113が設けられている。また、パッケージ110には、搭載パッド112と外部端子113と電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。
ここで、図面に合わせて、凹部111が形成されているパッケージ110の面をパッケージ110の上面とし、外部端子113が設けられているパッケージ110の面をパッケージ110の下面とする。また、枠部110bが設けられている平板部110aの面を平板部110aの上面とし、この平板部110aの上面と反対側を向く平板部110aの面を平板部110aの下面とする。
平板部110aは、例えば、矩形形状の平板状となっており、平板部110aの上面には、縁部に沿って枠部110bが設けられている。また、平板部110aは、上面に一対の搭載パッド112が設けられており、下面に複数の外部端子113が設けられている。また、平板部110aには、一対の搭載パッド112と所定の二つの外部端子113とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。この配線パターンは、平板部110aの内部に設けられていてもよいし、平板部110aの表面に設けられていてもよい。平板部110aは、例えば、アルミナセラミクッス、または、ガラスーセラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。平板部110aは、絶縁層を一層で用いたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
枠部110bは、平板部110aの上面の縁部に沿って設けられており、凹部111を形成するためのものである。また、枠部110bの上面には、縁部に沿って封止用導体パターン114が設けられている。また、枠部110bには、封止用導体パターン114と所定の他の外部端子113とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)が設けられている。また、枠部110bは、平板部110aと一体となっており、例えば、アルミナセラミックス、または、ガラス―セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなっている。枠部110bは、絶縁層を一層で設けたものであっても、絶縁層を複数積層させたものであってもよい。
凹部111は、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121を収容するための空間である。凹部111は、その底面の大きさが水晶片121の主面の大きさより大きくなっている。また、凹部111の底面、つまり、枠部110b内であって平板部110aの上面には、一対の搭載パッド112が設けられている。
ここで、パッケージ110は、パッケージ110の上面を平面視したとき、長辺の寸法が1.0〜5.0mmであり、短辺の寸法が0.6〜3.2mmとなっている。また、凹部111の大きさは、長辺の寸法が0.8〜4.6mmとなっており、短辺の寸法が0.4〜2.8mmとなっており、上下方向の深さの寸法が0.2〜0.5mmとなっている。
搭載パッド112は、水晶片121に形成されている引出電極123と電気的に接着されるものである。搭載パッド112は、平板部110aの上面であって枠部110b内に設けられている。また、搭載パッド112は、一対となっており、例えば、パッケージ110の上面を平面視して、枠部110bの内周側の短辺に沿って二つ並んで設けられている。
外部端子113は、電子機器等のマザーボードに実装するためのものであり、電子機器等のマザーボードに実装する際、マザーボード上にある所定の実装パッド(図示せず)に接続固着される。外部端子113は、例えば、四つ設けられており、パッケージ110の下面の四隅に一つずつ設けられている。外部端子113のうち所定の二つは、一対の搭載パッド112と電気的に接続されており、所定の他の外部端子113は、配線パターン、封止用導体パターン114および接合部材150を介して、蓋体140と電気的に接続されている。従って、マザーボードに実装する際、蓋体140と電気的に接続される外部端子113を基準電位であるグランド電位と接続された実装パッドと接続固着させることで、蓋体140をグランド電位と同電位とすることが可能となる。
封止用導体パターン114は、蓋体140を接合部材150によって接合する際に、接合部材150に濡れ性をよくするためのものである。封止用導体パターン114は、枠部110bの上面の縁部に沿って設けられている。また、封止用導体パターン114は、例えば、タングステンまたはモリブデン等からなる導体パターンの表面にニッケルメッキおよび金メッキを順次、枠部110bの上面に環状で囲む形態で施し、形成している。
ここで、パッケージ110の作製方法について、説明する。パッケージ110を構成する平板部110aおよび枠部110bがアルミナセラミックスからなる場合、まず、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤を添加し混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面、または、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施し予め設けておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等を用いて導体パターンとなる位置に所定の導電ペーストを塗布する。次に、平板部110aとなるセラミックグリーンシートの上面に枠部110bとなるセラミックグリーンシートを積層し、プレス加工した後、高温で焼成する。焼成後、導体パターンの所定の部位、具体的には、搭載パッド112、外部端子113、封止用導体パターン114および配線パターンとなる部分に、ニッケルメッキ、または、金メッキ等を施すことにより、パッケージ110が作製される。また、導電性ペーストは、例えば、タングステン、モリブデン、銅、銀またはパラジウム等の金属粉末の焼結体から構成されている。
ここで、励振電極122が形成されている水晶片121の面を水晶片121の主面とし、図面に合わせて、水晶片121の主面のうちパッケージ110側を向く水晶片121の主面を水晶片121の下面とし、水晶片121の下面と反対側を向く水晶片121の主面を水晶片121の上面とする。
振動素子120は、安定した機械振動を得ることができ、電子機器等の基準信号を発信するためのものである。振動素子120は、水晶片121と、水晶片121の両主面に互いに対向するように形成された一対の励振電極122と、一端が励振電極122に接続され他端が水晶片121の端部に位置するように形成されている一対の引出電極123と、から構成されている。振動素子120は、導電性接着剤130によってパッケージ110の搭載パッド112と振動素子120の引出電極123とが接続、固着され、パッケージ110に実装される。
水晶片121には、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、水晶が用いられる。水晶片121は、図4(b)に示すように、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有しており、例えば、矩形形状の平板状となっている。水晶片121の主面は、X軸およびZ軸と平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっており、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。水晶片121の側面の一部には、Z軸に平行なm面121aが形成されている。m面121aは、水晶片121の主面となす角度が90°と回転角度とを合わせた角度をなしており、例えば、約123°となっている。このため、水晶片121は、水晶片121の両主面に電圧を印加し厚みすべり振動により振動させたとき、m面121aが形成されている水晶片121の端部で厚みすべり振動を生じさせにくくさせることができ、水晶片121の端部で振動変位の減衰量を大きくすることが可能となっている。
励振電極122は、水晶片121に電圧を印加するためのものである。励振電極122は、一対となっており、水晶片121の両主面に互いが対向するように設けられている。また、励振電極122は、上下方向の厚みが外縁側に向かうにつれて薄くなっている。励振電極122に電圧が印加されると、励振電極122には、電荷が蓄えらえる。このとき、電荷は、励振電極122の中央付近で最も密な状態となり、励振電極122の縁部に向かうにつれて減少し、励振電極122の縁部で最も疎の状態となっている。励振電極122の上下方向の厚みを、外縁側に向かうにつれて薄くすることにより、電圧が印加され励振電極122に電荷が蓄積されるとき、励振電極122の縁部での電荷をより疎の状態にすることができる。このため、励振電極122の縁部において水晶片121の振動変位の減衰量を大きくすることが可能となる。結果、励振電極122に電圧を印加させ水晶片121の一部を振動させたときに、振動エネルギーの閉じ込め効果を高めることができる。
引出電極123は、一端が励振電極122に接続され、他端が水晶片121の主面の端部に位置するように、設けられており、振動素子120の外部から励振電極122に電圧を印加するためのものである。引出電極123は、上下方向の厚みが引出電極123の縁部において引出電極123の外縁側に向かうにつれて薄くなっている。このため、電圧が印加されるときに、引出電極123が原因で生じるスプリアス振動を抑制させることが可能となる。引出電極123に電圧が印加されると、電荷の分布は、励振電極122に電圧を印加した場合と同様に、引出電極123の中央部で最も密な状態となり、引出電極123の縁部で最も疎な状態となる。引出電極123の上下方向の厚みが引出電極123の縁部において引出電極123の外縁側に向かうにつれて薄くすることで、従来の引出電極123の上下方向の厚みが一定の場合と比較して引出電極123の縁部での電荷密度を疎の状態にすることができる。このため、それぞれの引出電極123において水晶片121の中心側に位置する引出電極123の縁部に蓄えられる電荷により、一対の引出電極123間で生じる電界強度を小さくすることが可能となる。この結果、一対の引出電極123間で生じる電界強度を小さくすることができるので、引出電極123の縁部に蓄積されている電荷により生じるスプリアス振動を低減させることが可能となる。従って、引出電極123の上下方向の厚みは、引出電極123の縁部において引出電極123の外縁側に向かうにつれて薄くなっていることが望ましい。
また、ここで、振動素子120の動作について説明する。振動素子120は、外部から引出電極123に電圧が印加されると、引出電極123に接続されている励振電極122に電圧が印加される。これにより、励振電極122には、異なる電荷が蓄積されることとなり、逆圧電効果によって励振電極122に挟まれている水晶片121の一部に歪みが生じ、変形する。その結果、水晶片121は、変形前の姿に戻ろうとするため、圧電効果により励振電極122に最初に蓄積された電荷と反対の電荷が蓄積される。つまり、励振電極122に電圧が印加されると、振動素子120は、圧電効果および逆圧電効果により励振電極122に挟まれた水晶片121の一部が振動する。従って、振動素子120に交流電圧を印加すると、励振電極122に異なる電荷が交互に蓄積され変形することとなり、励振電極122に挟まれている水晶片121の一部を振動させることができる。
導電性接着剤130は、振動素子120の引出電極123とパッケージ110の搭載パッド112とを電気的に接着、保持し、振動素子120をパッケージ110に実装するためのものである。導電性接着剤130は、引出電極123と搭載パッド112との間に設けられている。導電性接着剤130は、シリコーン系の樹脂バインダーの中に導電フィラーとしての導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケルまたはニッケル鉄のいずれか、或いはこれら組み合わせたものを含むものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、シリコーン系の樹脂、エポキシ系の樹脂、ポリイミド系の樹脂、または、ビスマレイミドの樹脂が用いられる。
導電性接着剤130を用いて、引出電極123と搭載パッド112とを電気的に接着する方法について説明する。まず、導電性接着剤130が、例えば、ディスペンサによって、搭載パッド112上に塗布される。その後、振動素子120が導電性接着剤130上に搬送され、引出電極123と搭載パッド111とで導電性接着剤130を挟むように振動素子120が載置され、その状態で加熱硬化される。これにより、引出電極123と搭載パッド112とが電気的に接着される。
蓋体140は、パッケージ110の上面に設けられた封止用導体パターン114と接合部材150により、パッケージ110の上面と接合されて、真空状態または窒素ガスが充填された凹部111内に、実装されている振動素子120を気密封止するためのものである。具体的には、蓋体140は、所定の雰囲気中で蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられている封止用導体パターン114の上面との間に接合部材150を設けて、熱を加え接合部材150を溶融させた後、固化させることで、蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられた封止用導体パターン114とが溶融接合される。
接合部材150は、蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられた封止用導体パターン114とを接合するためのものである。また、接合部材150は、蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられた封止用導体パターン114の上面との間であって、封止用導体パターン114に相対する蓋体140の場所に設けられている。また、接合部材150は、例えば、銀ロウまたは金錫からなる。
次に、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法について説明する。本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法は、図3〜図11に示したように、水晶ウエハ形成工程、水晶片形成工程、ウエハ貫通穴形成工程、水晶ウエハ固定工程、電極形成工程、実装工程、封止工程、から構成されている。
水晶ウエハ形成工程は、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した平板状の水晶ウエハを形成する工程である。水晶ウエハ形成工程では、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した人工水晶体が用いられる。水晶ウエハ形成工程で形成される水晶ウエハ160の主面は、例えば、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに所定の角度、例えば、約37°回転させた面と平行となっている。また、水晶ウエハ形成工程で形成される水晶ウエハ160は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断された後、両主面が研磨されて、その上下方向の厚みが所定の厚みとなっている。
ここで、水晶ウエハ160は、例えば、略矩形形状の平板状となっており、平面視したときの寸法が、所定の一辺の寸法が、10.0〜101.6mmであり、所定の一辺に接続している一辺の寸法が、10.0〜101.6mmとなっている。このとき、水晶ウエハ160の上下方向の厚みは、0.020〜0.070mmとなっている。なお、水晶ウエハ160が略矩形形状の平板状となっている場合について説明しているが、円形形状または楕円形状の平板状となっていてもよく、平面視したときの大きさは、直径が10.0〜101.6mmとなっている。
水晶片形成工程は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハの所定の位置に、矩形形状の平板に形成されつつ主面の所定の一辺側で固定されている水晶片となる部分を形成する工程である。水晶片形成工程では、まず、従来周知のフォトリソグラフィー技術を用いて、水晶ウエハ160の両主面の全面に金属膜を被着させ、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光、現像する。その後、従来周知のエッチング技術を用いて、水晶ウエハ160を所定のエッチング溶液に浸漬させて、水晶片形成用貫通穴161を形成している。これにより、水晶ウエハ160には、複数の水晶片121となる部分が形成される。また、結晶軸の軸方向によってエッチングのされ方が異なることを利用することで、水晶片121となる部分の側面の一部にZ軸と平行なm面121aを容易に形成することができる。
ウエハ貫通穴形成工程は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、水晶ウエハ160の所定の位置に、水晶ウエハ160の上面から下面にかけて貫通しているウエハ貫通穴162を形成する工程である。なお、ここでは、ウエハ貫通穴形成工程を水晶片形成工程と別々に行っている場合について説明しているが、ウエハ貫通穴形成工程を水晶片形成工程と同時に行っても構わない。
ウエハ貫通穴162は、後述する電極形成工程において、金属膜形成用治具170のガイドピン173を挿入するためのものである。また、ウエハ貫通穴162は、例えば、二つ形成されており、水晶ウエハ160を平面視すると、水晶ウエハ160の外周が、二つのウエハ貫通穴162を結ぶ仮想線L1に対して線対称となっている。なお、ここで、仮想線L1は、ウエハ貫通穴162の開口部の中心、または、中心付近を通過している。
ウエハ貫通穴162は、水晶ウエハ160の主面を平面視して、その開口部が略矩形形状となっている。水晶ウエハ160は、結晶軸の軸方向によってエッチンのされ方が異なるため、その開口部を矩形形状とすることで、その開口部が円形形状の場合と比較して、エッチングの残渣を予想しやすく、ウエハ貫通穴162の内周面のエッチング後の形状を管理することが可能となる。また、水晶片形成工程と同時にウエハ貫通穴形成工程を行う場合、ウエハ貫通穴162に開口部が略矩形形状となっていると、水晶片121の主面が略矩形形状の平板状となっているので、水晶片121の側面の一部に形成されるm面121aを確認することで、ウエハ貫通穴162の内周面に形成されるZ軸と平行な面を確認することができる。そのため、ウエハ貫通穴162の開口部の形状が円形形状や三角形の場合と比較して、ウエハ貫通穴162の内周面に形成されるZ軸と平行な面の管理が容易となる。
水晶ウエハ固定工程は、下板172と、上板174と、下板172と上板174との間に載置される一対のマスク171と、下板172に設けられているガイドピン173と、からなる金属膜形成用治具170の一対のマスク171の間に水晶ウエハ160を載置し、水晶ウエハ160のウエハ貫通穴162にガイドピン173を挿入することで、水晶ウエハ160を金属膜形成用治具170に固定する工程である。
金属膜形成用治具170は、一対のマスク171と、下板172と、ガイドピン173と、上板174とから構成されおり、下板172、一対のマスク171、上板174の順に重なる構成となっている。金属膜形成用治具170を金属膜形成用治具170に水晶ウエハ160を固定するとき、水晶ウエハ160は、一対のマスク171の間に載置される。
金属膜形成用治具170は、図6(b)に示すように、ガイドピン173によって、一対のマスク171と下板172と上板174とを重ねたときの位置合わせをすることができる構造となっている。具体的には、下板172に形成された下板貫通穴、一対のマスク171に形成されたマスク貫通穴、上板174に形成された上板貫通穴が、金属膜形成用治具170を平面視して、重なる位置に形成されており、これらの貫通穴にガイドピン173を挿入することで、位置合わせをすることができる構造となっている。金属形成用治具170をより詳細に説明すると、下記に示したような構成となっている。金属膜形成用治具170の下板172とガイドピン173は、下板170に形成されている下板貫通穴にガイドピン173が挿入され、下板172の上面側にガイドピン173が凸となった状態で、下板172とガイドピン173とが溶接等により接合された状態となっている。一対のマスク171にはガイドピン173と対応する位置にマスク貫通穴が形成されており、このマスク貫通穴を下板172に接合され設けられているガイドピン173に、挿入することで、下板172とマスク171との位置合わせを行っている。また、上板174にはガイドピン173と対応する位置に上板貫通穴が形成されており、この上板貫通穴を下板172に接合され設けられているガイドピン173に、挿入することで、下板172とマスク171との位置合わせを行っている。
また、金属膜形成用治具170は、水晶ウエハ160を載置した状態で、具体的には、下板172、一方のマスク171、水晶ウエハ160、他方のマスク171、上板174の順で重ねた状態で保持することができる構成となっている。例えば、上板174と下板172にはねじ切りがされているネジ用の穴が設けられており、ネジにより下板172と上板174とが固定され、水晶ウエハ160を載置した状態で保持することができる構成となっている。なお、ここで、ネジを用いて保持している場合について説明しているが、下板172に磁石を設け、磁石を用いて上板174と下板172とを固定し水晶ウエハ160を載置した状態で保持してもよい。
マスク171には、励振電極122および引出電極123と同じ形状となっているマスク被着用貫通部171aが形成されている。マスク171は、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有し、主面がX軸およびY軸と平行となっている水晶板から構成されている。このため、マスク171と水晶ウエハ160との熱膨張率を、マスク171が金属からなる場合と比較して、近づけることができるため、後述する電極形成工程において蒸着またはスパッタを行い金属膜を被着させるときに、熱膨張率の違いによりマスク171と水晶ウエハ160との間に隙間が生じる量を低減させることが可能となる。このようなマスク171は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって形成されており、主面をX軸およびY軸と平行となるようにすることで、マスク被着用貫通部171aの内周面とマスク171の主面との角度をほぼ直角とするように形成することが可能となる。
下板172および上板174は、一対のマスク171が後述する電極形成工程において蒸着またはスパッタを行い、金属膜を被着させるときに生じる熱の影響により歪みが生じマスク171と水晶ウエハ160との間に隙間が生じるのを防ぐためのものであり、一対のマスク171を挟むように載置される。また、下板172および上板174は、上下方向の厚みがマスク171の上下方向の厚みと比較して厚くし変形しにくくなっている。このため、マスク171に熱による歪みが生じても下板172および上板174により抑えることができ、マスク171と水晶ウエハ160との間に隙間が生じる量を低減させることが可能となる。
ここで、例えば、マスク170の上下方向の厚みが0.1〜0.8mmとなっており、下板172および上板174の上下方向の厚みが0.8〜2.0mmとなっている。
電極形成工程は、金属膜形成用治具170に固定された水晶ウエ160の水晶片121となる部分の所定の位置に金属膜を被着させ、励振電極122および引出電極123を形成する工程である。金属膜形成工程では、蒸着技術またはスパッタリング技術によって、水晶ウエハ160の水晶片121となる部分の所定の位置に金属膜が被着される。
電極形成工程では、水晶ウエハ固定工程において、平面視して、下板172の下板貫通穴、一対のマスク171のマスク貫通穴、上板174の上板貫通穴、およびウエハ貫通穴162が、重なる位置に載置され、これらの貫通穴にガイドピン173が挿入された状態で、金属膜形成用治具170に固定された水晶ウエハ160に金属膜が被着される。従って、電極形成工程では、ガイドピン173により、金属膜形成用治具170と水晶ウエハ160を位置合わせした状態で、水晶ウエハ160の水晶片121となる部分に金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成することとなり、水晶ウエハ160と一対のマスク171との位置ずれに起因する励振電極122および引出電極123の位置ずれを低減させることができる。つまり、水晶片121となる部分が形成されている水晶ウエハ160の状態で、水晶片121の所定の位置に励振電極122および引出電極123をより正確に形成することが可能となり、励振電極123の位置ずれによる振動の漏れを低減させて、水晶デバイスのクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑えることが可能となる。
また、電極形成工程では、水晶ウエハ固定工程において、水晶ウエハ160に二つ設けられているウエハ貫通穴162により、水晶ウエハ160と一対のマスク171との位置合わせされた水晶ウエハ160に金属膜を被着させている。水晶ウエハ160に設けられているウエハ貫通穴162を結ぶ仮想線L1に対して水晶ウエハ160の外周が線対称となっているので、電極形成工程において、金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成したときの水晶ウエハ160と一対のマスク171と位置ずれが、仮想線L1を基準にずれることとなる。従って、基準から水晶ウエハ160の外周までの距離を短くすることができるため、仮に一対のマスク171と水晶ウエハ160とで位置ずれが発生したとしても、電極形成工程後の水晶ウエハ160の面内での位置ずれの量をさらに低減させることが可能となる。
個片化工程は、水晶ウエハ160に形成された水晶片121の主面の所定の一辺側を折り取り、または、切断し、水晶片121を個片化する工程である。個片化工程前の水晶ウエハ160は、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121となる部分が、水晶片121となる部分の所定の一辺側で固定されている。個片化工程では、水晶片121となる部分ごとに個片化され、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121が形成される。
実装工程は、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121をパッケージ110に実装する工程である。実装工程では、まず、導電性接着剤130が、例えば、ディスペンサ等によって、搭載パッド112上に塗布される。その後、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121が導電性接着剤130上に搬送され、引出電極123と搭載パッド112とで導電性接着剤130を挟むように載置され、その状態で加熱硬化される。これにより、引出電極123と搭載パッド112とが電気的に接着され、励振電極122および引出電極123が形成されている水晶片121がパッケージ110に実装される。
封止工程は、パッケージ110と蓋体140とを接合し、励振電極122および引出電極123が形成された水晶片121を気密封止する工程である。封止工程では、例えば、真空雰囲気または窒素雰囲気中で、蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられている封止用導体パターン114の上面との間に接合部材150を設けて、熱を加え接合部材150を溶融させた後、固化させる。従って、封止工程では、蓋体140の下面とパッケージ110の上面に設けられた封止用導体パターン114とが接合部材150により、溶融接合されている。
本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法は、平面視して、下板172の下板貫通穴、一対のマスク171のマスク貫通穴、上板174の上板貫通穴、およびウエハ貫通穴162が、重なる位置に載置され、これらの貫通穴にガイドピン173が挿入された状態で、金属膜形成用治具170に水晶ウエハ160が固定される。従って、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、ガイドピン173により、水晶ウエハ160を金属膜形成用治具170に載置したとき、下板172、一対のマスク171、上板174および水晶ウエハ160の位置合わせを容易にすることができる。このため、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、ガイドピン173により水晶ウエハ160と一対のマスク171との位置合わせを行った状態で、金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成しているので、水晶ウエハ160が一対のマスク171に対して位置ずれ起こすことによる励振電極122および引出電極123のずれを低減させることができる。この結果、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶片121となる部分が形成されている水晶ウエハ160の状態で、水晶片121の所定の位置に励振電極122および引出電極123を形成することが可能となり、励振電極123の位置ずれによる振動の漏れを低減させて、水晶デバイスのクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑え、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法は、ウエハ貫通穴形成工程において形成されるウエハ貫通穴162の開口部が、水晶ウエハ160の主面を平面視したとき略矩形形状となっている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、開口部が円形形状の場合と比較して、エッチングの残渣を予想しやすく、ウエハ貫通穴162の内周面のエッチング後の形状を管理することが可能となる。このため、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶ウエハ固定工程において、ガイドピン173をウエハ貫通穴162に挿入したときに、水晶ウエハ160と一対のマスク171との位置合わせを精度よく行うことが可能となり、電極形成工程において金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成したときの励振電極122および引出電極123の位置ずれによるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑えることができる。この結果、この結果、所定の位置からの位置ずれに起因した性能ばらつきを抑え、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法は、ウエハ貫通穴形成工程において形成されるウエハ貫通穴162の開口部が、水晶片121となる部分の主面と同じ、略矩形形状となっている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶片121の側面の一部に形成されるm面121aを確認することで、ウエハ貫通穴162の内周面に形成されるZ軸と平行な面を確認することができるため、ウエハ貫通穴162の開口部の形状が円形形状や三角形の場合と比較して、ウエハ貫通穴162の内周面に形成されるZ軸と平行な面の管理が容易となる。このため、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶ウエハ固定工程において、ガイドピン173をウエハ貫通穴162に挿入したときに、水晶ウエハ160と一対のマスク171との位置合わせを精度よく行うことが可能となり、電極形成工程において金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成したときの励振電極122および引出電極123の位置ずれによるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑えることができる。この結果、この結果、所定の位置からの位置ずれに起因した性能ばらつきを抑え、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶ウエハ160に二つのウエハ貫通穴162が形成されており、このウエハ貫通穴162を結ぶ仮想線L1に対し水晶ウエハ160の外周が線対称となっている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、この二つのウエハ貫通穴162により位置合わせをされることなり、二つのウエハ貫通穴162を結ぶ仮想線L1からの距離が長くなるにつれて位置ずれが大きくなっていくこととなる。このため、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、水晶ウエハ160の外周に対し仮想線L1に対して線対称となるようにウエハ貫通穴162を形成することで、水晶ウエハ160内での位置ずれの量(幅)をさらに低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、電極形成工程において金属膜を被着させ励振電極122および引出電極123を形成したときの励振電極122および引出電極123の位置ずれによるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑えることができる。この結果、この結果、所定の位置からの位置ずれに起因した性能ばらつきを抑え、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、マスク171が互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有し、主面がX軸およびY軸と平行となっている水晶板から構成されている。従って、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、蒸着時またはスパッタ時に、マスク171と水晶ウエハ160との熱膨張率を、マスク171が金属からなる場合と比較して、近づけることができるため、熱膨張率の違いによりマスク171と水晶ウエハ160との間に隙間が生じる量を低減させることが可能となる。この結果、本実施形態に係る水晶デバイスの製造方法では、クリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑えることができる。この結果、この結果、所定の位置からの位置ずれに起因した性能ばらつきを抑え、生産性を向上させることが可能となる。
(変形例)
以下、本実施形態の変形例に係る水晶デバイスの製造方法について説明する。なお、本実施形態の変形例における水晶デバイスの製造方法のうち上述した水晶デバイスの製造方法と同様の部分について、同一の符号を付して適宜説明を省略する。本実施形態の変形例に係る水晶デバイスの製造方法は、図11に示すように、ウエハ貫通穴形成工程において、ウエハ貫通穴262が三つ形成されている点で本実施形態と異なる。
ウエハ貫通穴形成工程では、ウエハ貫通穴262が三つ以上形成されており、例えば、三つ形成されている。このとき、ウエハ貫通穴162は、水晶ウエハ260の外縁部に沿って設けられている。ウエハ貫通穴262を水晶ウエハ260の外縁部に沿って、三つ形成することにより、水晶ウエハ260と一対のマスクとの位置合わせを三点で行うこととなるため、より精度よく位置合わせをすることが可能となる。
本実施形態の変形例における水晶デバイスの製造方法では、ウエハ貫通穴262を水晶ウエハ260の外縁に沿って三つ以上設けることにより、水晶ウエハ260とマスクと、より精度よく位置合わせすることが可能となる。従って、本実施形態の変形例における水晶デバイスの製造方法では、励振電極122および引出電極123の位置ずれによるクリスタルインピーダンス値が大きくなることを抑え、生産性を向上させることが可能となる。