本発明による収穫機の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて本発明を特徴付けている収量測定と収量表示との基本原理を説明する。図1で模式的に示されている収穫機は、米、麦、トウモロコシのなどの農作物を収穫する収穫機であり、収穫物タンク9を搭載している。収穫作業では、圃場を走行しながら収穫した収穫物が連続的に収穫物タンク9に貯留される。収穫物タンク9に貯留された収穫物の量(以下収量とも称する)を測定するための測定器2が備えられている。測定器2の種類とその測定方法は、本出願において特に限定されていない。しかしながら、収穫物を含む収穫物タンク9の重量を測定し、その重量から収穫物タンク9の重量を差し引いて、収穫物タンク9に貯留されている収穫物の重量を算定し、その算定された重量から収量を算定するような測定方法が好ましい。収量算定部5は、測定器2から出力された測定結果に基づいて収量を算定する機能を有する。
さらに、収穫機の運転状態を検出する種々の状態検出器を含む状態検出器群3が配置されている。この状態検出器群3の検出結果から、測定器2の測定環境が高信頼度測定をもたらす高信頼度測定状況か、または低信頼度測定をもたらす低信頼度測定状況かを判定する測定状況判定部60が備えられている。高信頼度測定状況は、収穫機が停止している状態や水平姿勢を維持している状態、収穫物タンク9に偏った荷重が掛からない状態などによって得られるものであるが、逆にこれらの状態が欠けると低信頼度測定状況となる。したがって、状態検出器群3には、収穫機の停止状態、収穫機の水平姿勢、収穫作業用機器への動力伝達状態、収穫作業用機器の非作業状態、収穫物排出用機器の状態などを検出するセンサやスイッチなどが含まれる。
収穫機が収穫対象となる圃場に到着して、走行しながらの収穫作業が開始されると、所定の測定周期で出力される測定器2からの測定結果が、順次、収量算定部5に入力される。各測定結果が高信頼度測定状況でのものであったか、あるいは低信頼度測定状況でのものであったかは、測定状況判定部60によって判定されているので、その判定結果が各測定結果には関係づけられる。図1の図例では、高信頼度測定状況との判定結果には識別符号「A」が付与され、低信頼度測定状況との判定結果には「B」が付与される。
収量算定部5は、受け取った測定結果に基づいて収量を算定する。その際、対応する測定結果に関係づけられていた判定結果は、そのまま算定された収量に引き継がれる。つまり、高信頼度測定状況下での測定結果から算定された収量は高信頼度収量となり「A」が付与され、低信頼度測定状況下での測定結果から算定された収量は低信頼度収量となり「B」が付与されている。
収量算定部5で算定された各収量は、それが高信頼度収量であるかまたは低信頼度収量であるかにかかわらず、表示部7に送られる。表示部7は、受け取った収量を液晶パネル70などのディスプレイを用いて、運転者が把握できる形態で表示する。その表示形態は、アナログ(図表)表示またはディジタル(数値)表示のいずれであってもよいが、測定周期が短く、表示される収量の更新間隔が短い場合には、段階棒グラフや面積比率グラフのようなアナログ表示の方が見易くなる。
高信頼度収量と低信頼度収量とを区別できる形態で表示する要求を満たすためには、高信頼度収量と低信頼度収量とを別の領域で表示させるとよい。あるいは高信頼度収量と低信頼度収量との表示色を変えてもよいし、それらを識別できるような識別子(マークやイラスト)をそれぞれの収量表示に付与してもよい。高信頼度収量と低信頼度収量とを区別なしで表示する場合には、高信頼度収量と低信頼度収量とを同一表示箇所でかつ同一表示形態で表示すればよい。
この実施形態においては、表示部7は、表示すべき収量が高信頼度収量であるか低信頼度収量であるかに関係なく、その収量を表示する。これにより、横揺れを伴った走行中などで、高信頼度収量が得られるような測定環境でなくても、信頼度が低いながらもその時点の収量が、逐次表示されるので、運転者は、収穫物タンク9に貯留されている収穫物のおおよその量(収量)をリアルに把握することができる。また、何らかの要因で、収穫機が停車し、収穫物タンク9が測定のために好適な安定状態となった時には、高信頼度収量の表示が行われるので、その収量表示を通じて、運転者は、実際の収量に近似する収量を把握することができる。
さらに、この収穫機には、強制的に高信頼度測定状況が現出されるように収穫機の各機器を制御するための収量測定スイッチ(以後、収量測定SWとも記す)32が設けられている。この収量測定SW32をON操作することにより、運転者は、高信頼度収量を表示部7に表示させることができる。つまり、収量測定SW32をON操作すると、高信頼度測定条件現出指令である収量測定指令が生成される。この収量測定指令(高信頼度測定条件現出指令)に応答して、収穫機車体の停車、収穫機車体の水平姿勢への移行、収穫作業用機器への動力遮断、収穫作業用機器の非作業位置への復帰、アンロード作業用機器の収納位置での固定などの動作のうちの、予め設定された動作が実行される。この収量測定指令に起因して算定された収量にも高信頼度測定状況下での測定結果に基づくものであることを関係づけることができるので、図1の図例では、この収量にも高信頼度収量であることがわかる識別符号「Z」が付与されている。この収量測定指令に応答して現出される測定環境を、測定状況判定部60における判定条件としての測定環境より、厳しくしておけば、収量測定SW32をON操作することにより、最高信頼度の収量が算定されることになる。
次に、図面を用いて、本発明による収穫機の具体的な実施形態の1つを説明する。図2は、収穫機の一例であるコンバインの側面図であり、図3は平面図である。このコンバインは、自脱型コンバインであり、機体を構成する機体フレーム10が、左右一対のクローラ走行装置11によって対地支持されている。収穫対象の植立穀稈を刈り取るとともにその刈取穀稈を機体後方に向けて搬送する刈取部12が機体前部に配置され、その後方に、操作台13を備えた操縦部14、さらには、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀装置15、脱穀装置15にて選別回収された穀粒を貯留する穀粒タンク9、穀粒タンク(収穫物タンクの一種)9から穀粒を排出するアンロード装置8、排ワラを処理する排ワラ処理装置16等が配置されている。操作台13には、操縦レバーや変速レバーとともに、各種情報を表示するための制御モジュールである表示部7の構成要素である液晶パネル70が装備されている。
脱穀装置15は、刈取部12から搬送された刈取穀稈の穂先側を脱穀処理し、脱穀装置15の内部に備えられた選別機構(図示せず)による選別作用により、単粒化した穀粒とワラ屑等の塵埃とに選別し、単粒化した穀粒を収穫物として穀粒タンク9に搬送する。脱穀処理されたあとの排ワラは排ワラ処理装置16にて細断処理される。
図2と図3とから理解できるように、脱穀装置15から穀粒タンク9に穀粒を送り込むための穀粒搬送機構が配置されている。この穀粒搬送装置は、脱穀装置15の底部に設けられた一番物回収スクリュー17aと、スクリューコンベア式の揚穀装置17bとからなる。一番物回収スクリュー17aにて横送りされた穀粒は、揚穀装置17bにて上方に搬送されて、穀粒タンク9の上部に形成された投入口を通して穀粒タンク9内に送り込まれる。なお、図示は省略されているが、揚穀装置17bの上端領域には、穀粒を穀粒タンク9内に向けて跳ね飛ばす回転羽根が設けられ、穀粒が穀粒タンク9内に極力均一な水平分布状態で貯留させるように工夫されている。
アンロード装置8は、穀粒タンク9の底部に設けられた底部スクリュー81と、穀粒タンク9の機体後部側に設けられた縦送りスクリューコンベア82と、脱穀装置15の上方を延びている横送りスクリューコンベア83とを備えている。穀粒タンク9内に貯留される穀粒は、底部スクリュー81から縦送りスクリューコンベア82を経て横送りスクリューコンベア83に送られ、横送りスクリューコンベア83の先端に設けられた排出口84から外部に排出される。縦送りスクリューコンベア82は、電動モータ85の作動により縦軸芯P2周りで回動操作可能に構成され、横送りスクリューコンベア83は油圧シリンダ86により基端部の水平軸芯P1周りで上下揺動操作可能に構成されている。これにより、穀粒を機外の運搬用トラック等に排出することができる位置に、横送りスクリューコンベア83の排出口84を位置決めすることができる。横送りスクリューコンベア83がほぼ水平で、横送りスクリューコンベア83の全体が平面視で収穫機の外形内に収まる位置姿勢が、横送りスクリューコンベア83のホームポジション(アンロード装置8のホームポジション)であり、このホームポジションで、横送りスクリューコンベア83は保持装置87によって下からしっかりと保持固定される。
図4に示されているように、穀粒タンク9の底部は、左底壁91と右底壁92とが、下方に向かった楔形状を作り出すように互いに傾斜しており、その尖端領域に底部スクリュー81が配置されている。左底壁91と右底壁92のそれぞれの上端と接続している左側壁93と右側壁94はほぼ直立している。左側壁93と右側壁94との上端は天壁95によって連結されている。このような穀粒タンク9の構造により、穀粒タンク9に投入された穀粒は底部スクリュー81に向けて流下する。
詳しくは図示されていないが、穀粒タンク9の後端部には筒状の揺動支軸部90が設けられている(図2参照)。この揺動支軸部90の揺動軸芯は、縦軸芯P2に一致しており、穀粒タンク9は、図3の点線で示すように、縦軸芯P2周りで外方の水平揺動可能である。つまり、穀粒タンク9は、揚穀装置17bから穀粒を受け取ることができる作業位置と、横側外方に張り出して前部側が脱穀装置15から離間して操縦部14の後方及び脱穀装置15の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって位置変更可能である。
このコンバインには、圃場における収量を求めるため、穀粒タンク9に貯留される穀粒の重量を測定結果として出力する測定器2を構成するロードセル20が備えられている。このロードセル20は、作業位置に位置する穀粒タンク9の荷重を受け止めて重量を計測可能なように機体フレーム10に支持される状態で設けられている。穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動するに伴って、穀粒タンク9の下端支持部を受け止め支持しながらロードセル20にて重量計測が可能な重量計測位置Z(図5参照)まで案内する受け止め案内体21が備えられている。
図4及び図5に示すように、受け止め案内体21にて案内される穀粒タンク9の下端支持部は、水平軸芯周りで回転可能に支持されて受け止め案内体21上を転動可能なローラ22にて構成されている。このローラ22は、穀粒タンク9の前側下部に取り付けられた支持部材97に対して、その支持部材97の下端部よりも下方に突出する状態で横向き支持軸22aにより回動自在に支持されている。また、このローラ22は、穀粒タンク9が作業位置にあるとき、穀粒タンク9の機体前後方向視で穀粒タンク9の左右幅方向の略中央部に下方に位置する状態で設けられている。なお、支持部材97は、図4に示すように、穀粒タンク9の前側壁96の下端部に固定されている。
受け止め案内体21は、ロードセル20の上部に備えられる重量検知部20aに対して上方から載置される荷重受け止め状態と、ロードセル20の上方を開放するように外方に退避する退避状態とに切り換え自在に設けられている。すなわち、図5及び図6に示すように、機体フレーム10にブラケット10aを介して固定されている。ブラケット10aにより機体前後軸芯P4周りで回動自在に受け止め案内体21の基端部が支持されている。
受け止め案内体21が荷重受け止め状態に切り換えられると、図5の実線にて示すように、受け止め案内体21の案内載置面21aが基端部よりも機体内方側に位置する状態となり、受け止め案内体21が退避状態に切り換えられると、図5の仮想線にて示すように、案内載置面21aが基端部よりも機体外方側に位置する。
図5に示すように、案内載置面21aは、荷重受け止め状態に切り換えられた状態で、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動するに伴って転動案内されるローラ22が上方に変位するように緩い傾斜角での傾斜状態となるように傾斜姿勢に形成されている。
荷重受け止め状態に切り換えられた受け止め案内体21の下方側に位置して重量検知部20aにて受け止め案内体21を受け止める状態で、且つ、ロードセル20の本体部20bが載置支持される状態でロードセル20が機体フレーム10に取り付けられている。
上述したように、作業位置にある穀粒タンク9の機体前部側の荷重が受け止め案内体21を介してロードセル20にて受け止められるので、ロードセル20により穀粒タンク9に貯留されている穀粒の重量を測定することができる。なお、穀粒タンク9を揺動自在に機体フレーム10に支持する揺動支軸部90においては、穀粒タンク9の前端側が上下方向に少しだけ傾動可能なように融通(図示せず)が形成されており、その融通を利用してロードセル20にて穀粒タンク9の荷重を受け止めることができ、貯留穀粒の重量が測定可能となる。
ロードセル20の測定結果(測定値)は、コンバインの機体が傾斜すると、そのことに起因して誤差が生じるおそれがあるが、このような機体の傾斜に起因する計測誤差を修正するようになっている。これは、図示されていない、機体の左右傾斜角を検出する左右傾斜角センサと、前後傾斜角を検出する前後傾斜角センサとからの検出値と、予め実験等により求められた修正用の演算式とを用いて、ロードセル20の測定結果が補正される。刈取作業が行われるのに伴って逐次変化する穀粒タンク9内での穀粒の貯留量(収量)が、ロードセル20によって測定され、その測定結果に基づいて算定された収量が、以下に詳しく述べる方法で液晶パネル70に表示される。
図7には、収量(収穫量)を測定表示する制御系における制御ユニット100を中心とする機能が示されている。この制御系、図1で説明した収量測定及び収量表示の原理を流用している。この制御の中核となる制御ユニット100には、ロードセル20の測定結果、操作入力デバイス30からの操作入力データ、状態検出器群3からの検出結果が入力される。状態検出器群3は、コンバインを構成する機器の状態を検出するセンサやスイッチ(SWと略称される)などの総称である。状態検出器群3には、例えば、コンバインの停車を検出する速度検出器、コンバインに装備されている車体の水平制御機構のホームポジションである水平姿勢への移行を検出する検出器、刈取部12や脱穀装置15への動力伝達を制御するクラッチの状態を検出する検出器、横送りスクリューコンベア83の保持装置87によって保持固定された状態であるアンロード装置8のホームポジション(アンロード装置8の収納位置)を検出する検出器、などが含まれている。操作入力デバイス30は、制御系に制御指令を与えるために運転者(作業者)によって操作されるデバイスであり、作業開始SW31や収量測定SW32などが含まれている。
収穫作業対象の圃場に到着した際に、当該圃場を確定した上で、作業開始SW31が操作されると、収穫作業の初期設定処理などをトリガーする指令が与えられる。この初期設定処理には、制御ユニット100で用いられる各種変数や制御パラメータのリセットや記憶すべきデータ(圃場単位の収量など)の記憶や転送なども含まれている。収穫作業中または収穫作業終了時に、収量測定SW32を操作することで、高信頼度測定状況が現出されるように各種動作機器を駆動させるとともに、現出された高信頼度測定状況での収量測定を実行させる指令が与えられる。なお、この操作入力デバイス30は、操作台13に装備されるタッチパネルを通じて統合的に構築することができる。
制御ユニット100には、収量算定部5、測定状況判定部60、表示データ生成部71が構築されている。測定状況判定部60は、状態検出器群3からの検出結果に基づいて、ロードセル20の測定環境が、高信頼度測定をもたらす高信頼度測定状況か、または低信頼度測定をもたらす低信頼度測定状況かを判定し、その判定結果を出力する。収量算定部5は、高信頼度測定状況下におけるロードセル20の測定結果から高信頼度収量である収量を算定するとともに、低信頼度測定状況下におけるロードセル20の測定結果から低信頼度収量である収量を算定する。
収量算定部5には、第1算定部51と、第2算定部52と、積算部53とが含まれている。第1算定部51は、ロードセル20の測定結果から収量を算定するが、その際、算定された収量は、測定状況判定部60の判定結果に基づいて、低信頼度収量と高信頼度収量とに区分けされる。第2算定部52は、第1算定部51で算定された高信頼度収量を、非積算用収量と積算用収量とに区分けする。1つの圃場での収穫作業において、穀粒が穀粒タンク9の容量の複数倍収穫される場合、この圃場の収量を算定するためには、穀粒タンク9がアンロード(穀粒排出)される毎に、それまでに貯留されていた穀粒を測定し、その測位結果から算定された収量を積算しなければならない。この積算に用いられる高信頼度収量が積算用収量であり、それ以外のアンロード作業とは関係ない時点で得られた高信頼度収量が非積算用収量である。第2算定部52は、受け取った高信頼度収量がアンロード作業に付随して行われた測定結果に基づくものであるかどうかを、測定状況判定部60からの判定結果によって決定することができる。積算用収量は積算部53に転送され、圃場単位の収量算定のために圃場積算値としてメモリに記憶され、必要に応じて、前回までの積算用収量に積算される。非積算用収量は、その時点で穀粒タンク9に貯留されている高信頼度の収穫物量を示しているので、高信頼度の現在タンク収量として表示するために用いることができる。積算部53は、順次受け取った積算用収量を積算して、圃場単位の積算収量として出力する。1つの圃場における収穫作業終了後の圃場積算値の総計は圃場総収量となり、圃場IDと関係づけられて記録される。収穫作業前の段階では、圃場積算値の総計はその時点までに得られた圃場収量であり、その後に算定された高信頼度収量である非積算用収量または低信頼度収量と加算され、圃場現在収量として表示に用いられる。
表示データ生成部71は液晶パネル70とともに表示部7を構成する。表示データ生成部71は、収量算定部5から受け取る各収量に基づいて、穀粒タンク9に貯留中の穀粒の量を示すタンク現在収量の表示データ、圃場単位の現在収量または圃場総収量を示す圃場収量の表示データを生成する。図3で例示しているように、液晶パネル70では、運転者による選択に応じて、タンク現在収量、圃場単位の現在収量、圃場総収量が、図示されていない食味測定器によって算定される、収穫穀粒の平均タンパク、平均水分などともに表示される。なお、圃場単位の現在収量や圃場総収量は、数値で表示されているが、タンク現在収量は、穀粒タンク9の全容積に占める割合がわかりやすいように、積み上げ棒グラフのような、階層表示で表示される。
上述した制御系における、測定、算定、表示の時系列的な流れの一例を図8と図9とを用いて説明する。図8は、圃場Aにおける作業開始から最初のアンロード作業まで流れを示しており、図9は、圃場Aにおける、さらなるアンロード作業(通常は複数回のアンロード作業)を通じて、総収量を算定し、次の圃場Bに移行するまでの流れを示している。
まず、時点T11で、収穫作業を行うべき圃場Aを確認し、作業開始SW31を操作し、作業条件等を設定して、収穫作業を開始する。なお、この実施形態では、作業開始SW31は、液晶パネル70における画面表示の切り替えのための表示切替SWと兼用化されており、この表示切替SWの長押しによって、作業開始SW31としての機能が起動する。また圃場確認作業を簡単にするため、作業開始SW31の操作に基づいて、液晶パネル70に圃場の地図が表示される。この表示画面から、該当する圃場をタッチすることで、当該圃場の属性データが表示されるので、作業対象となる圃場を間違いなく確認することができる。なお、作業開始SW31の操作によって、各種バッファや一時記憶メモリの初期化(リセット)を含む初期化処理が実行される。その際、この初期化処理の結果を運転者が視認できるように、図3で例示したような液晶パネル70における各種表示値が「0」ないし、初期値となっている様子が表示される。
収穫走行中のロードセル20による所定の測定周期での重量測定によって、測定値が出力される。この測定値は、図8では、添え字付き「a」で示されており、添え字は時系列を示す序数である。以後に出てくる添え字も時系列を示す序数である。測定タイミングは白丸で示されており、各白丸の上に付されている数字は測定値を示す模式的な数値である。収量算定部5での算定処理に用いられる測定結果は、所定時間間隔で得られた測定値をパラメータとするフィルタ関数で導出された代表値としての測定値であり、図では添え字付き「A」で示されている。そのフィルタ関数の最も簡単なものは算術平均や移動平均である。なお、この測定結果が得られるタイミングは、黒丸で示されており、各黒丸の上に付されている数字はその内容を示す数値である。この測定結果から収量算定部5で算定される収量は、添え字付き「Q」で示されている。ここでも、図中の「Q」の周辺に付されている数字は収量を示しているが、ここでは便宜上測定値と同じ数値を用いている。この収量は、低信頼度収量として取り扱われるが、液晶パネル70のタンク内収量を示す表示値(図中Kで示されている)として利用される。さらに、圃場収量を示す表示値として利用される。この表示値は、図中H(数値)で示されており、この数値は圃場識別番号であり、積算用の変数としてSが用いられている。つまり、H(数値)=S+Kとなる。
液晶パネル70に表示されているタンク内収量は、低信頼度収量であるので、高信頼度収量を得るために、時点T12で収量測定SW32が操作されたとする。これにより、コンバインは停車し、水平姿勢に戻り、収穫機器は非作業状態となる。この状況で得られた測定結果(図では大きな白丸とA10で示されている)から算定された収量は高信頼度収量(図ではQ10)となる。
なお、より高信頼度の収量測定にとって重要な条件の1つは、アンロード装置8の横送りスクリューコンベア83が保持装置87の受け台にしっかりと重量がかかるように収められていることである。確実に収まっていないと、穀粒タンク9の重量が正確に測定できず、その結果、算定される収量が不正確となる。このため、収量測定SW32が操作されると、横送りスクリューコンベア83を保持装置87の受け台に下降する下降指令が出される。この下降指令が出たのちの所定時間経過後の測定結果が、高信頼度収量の算定のために用いられる。
穀粒タンク9が満杯状態になった時点T13で、アンロード作業が行われる。アンロード作業時には、コンバインは停車し、水平姿勢に戻り、収穫機器は非作業状態となるので、このタイミングで、穀粒タンク9に貯留されている穀粒の測定が行われ、高信頼度測定状況での測定結果A20が得られる。さらに、測定結果A20から高信頼度収量Q20が算定される。さらに、積算用の変数であるSにQ20が代入される。以後、再び収穫作業が開始され、低信頼度収量Q21が得られると、タンク内収量として表示されるとともに、積算用の変数のSの値であるQ20と加算され、H(1)の値である圃場収量としても表示される。
時点T14で、圃場Aでの収穫作業が完了すると、穀粒タンク9に貯留されている穀粒を排出する最後のアンロード作業が行われるが、それに先立って、高信頼度測定状況での測定が行われる。この測定結果(図では大きな白丸とA30で示されている)が得られるとともに、高信頼度収量(図ではQ30)も算定される。この最後に算定された高信頼度収量をこれまで積算された積算値に加えることで、この圃場Aでの総収量が算定される。この図例では、総収量は、H(1)=Q20+・・・+Q30となり、圃場Aの総収量として記録される。
コンバインは、時点T21で、圃場Aから圃場Bに移行し、再び収穫作業を開始し、同様な穀粒測定、収量算定、収量表示の制御が実行される。
図8と図9との説明では触れられていないが、アンロード作業後において穀粒タンク9に穀粒の残量が発生していた場合、その残量は、次の収量測定における誤差となってしまう。この誤差を避けるため、制御ユニット100には、測定結果から穀粒タンク9に残量が存在していることを検知して、これを報知し、残量を排出することを促す警告を行う機能が備えられている。さらに、警告にもかかわらず、残量が排出されなかった際の例外処理として、推定される残量を算定し、圃場収量を算定する際その推定残量で修正する機能が積算部53に備えられている。
アンロード作業に先立って行われる収量算定は、圃場収量を算定するために必要であるので、収量算定を行うために収量測定SW32を操作することがアンロード操作手順に組み込まれている。しかしながら、収量測定SW32を操作して、高信頼度測定状況を完全に現出させてから収量算定を行うことがわずらわしいと感じる運転者もいる。このため、そのような収量測定SW32の操作を省略し、単にアンロード作業の操作をするだけで、穀粒排出前に収量測定を自動的に行う簡易モードを備えてもよい。
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、穀粒タンク9の重量測定は、一端側を揺動支点として他端側を浮き構造として、その浮き構造の下端部と機体フレーム10との間にロードセル20を配置する構成を採用したが、これに代えて、穀粒タンク9を機体フレーム10に対して複数の支持点で支え、その支持点にロードセル20を配置するような構成を採用してもよい。
(2)さらに、穀粒タンク9に貯留した穀粒の収量算定のための測定器2として、穀粒タンク9を含めてその重量を測定する以外に、直接穀粒の重量または容積を測定するような測定器を採用してもよい。
(3)図7で示された機能部の区分けは一例であり、それぞれの機能部の統合や、各機能部の分割は任意である。本発明の制御機能が実現するものであればどのような構成でもよいし、またそれらの機能は、ハードウエアまたはソフトウエアあるいはその両方で実現させてもよい。
(4)収量算定のため、ロードセル20を用いて穀粒タンク9の重量を測定するための構造に関する別実施形態が、図10と図11とに示されている。図10は、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置への移行途中での、ロードセル20付近の斜視図である。図11は、穀粒タンク9が作業位置に戻った際のロードセル20付近の断面図である。この別実施形態においても、ロードセル20は、機体フレーム10上に取り付けられている。穀粒タンク9の下部をロードセル20の重量検知部20aに向けて案内する受け止め案内片121が、ロードセル20を覆うように配置されている。受け止め案内片121は、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に向けて回動するに伴って、穀粒タンク9の下端を受け止め支持しながら、穀粒タンク9をロードセル20の重量検知部20aの上方まで案内し、そこで、ロードセル20による穀粒タンク9の重量計測が行われる。受け止め案内片121には、穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に回動するに伴って、穀粒タンク9を持ち上げながら案内するように、傾斜面が形成されている。この傾斜面からさらに平坦面が延び、その先に位置する先端部は、下方に傾斜した傾斜面となっている。
受け止め案内片121は、スカート部を有し、機体フレーム10に固定されたブラケット110aに対して機体前後方向に沿う機体前後軸芯P4周りで揺動可能に枢支ピンによって枢支されている。この枢支ピンを挿通させるためにブラケット110aに形成された貫通孔は、その上下方向のサイズが枢支ピンのサイズより大きい。その結果、枢支ピンと貫通孔との間に融通が作り出される。この融通により、機体前後軸芯P4に対して、受け止め案内片121は所定範囲内で上下位置変位可能である。つまり、受け止め案内片121は、ロードセル20の重量検知部20aに対して上方から覆う状態に位置する荷重受け止め状態と、ロードセル20の上方を開放するように上方外方に退避する退避状態とに切り換え自在である。さらに、この構造により、ロードセル20の上方を開放すると、受け止め案内片121の脱着作業を要さずにロードセル20の脱着を行うことも可能となる。なお、この別実施形態では、図11に示すように、ロードセル20の重量検知部20aには、下向き円筒状に形成されたキャップ部材20Aが上方から被せられている。したがって、穀粒タンク9の作業位置において、キャップ部材20Aの上面は受け止め案内片121の下面と接当し、キャップ部材20Aの下面は重量検知部20aの受圧面に上方から接当する。つまり、穀粒タンク9の前側の荷重が、受け止め案内片121とキャップ部材20Aとを介してロードセル20によって受け止められる。
次に、作業位置において受け止め案内片121に穀粒タンク9の前側の荷重がかかるための構造を説明する。穀粒タンク9の下部には、アングル状の支持台123が取り付けられており、この支持台123の垂直壁123aに横向き支持軸22aを介してローラ22が回動自在に支持されている。ローラ22が受け止め案内片121に接当案内されるように、ローラ22の下端は支持台123の水平壁123bの下面より下方に位置している。このため、ローラ22が受け止め案内片121に案内されている状態では支持台123の水平壁123bが受け止め案内片121に対して接触せず、ローラ22が受け止め案内片121の先端部から離脱することで初めて、支持台123の水平壁123bが受け止め案内片121の平坦面に面接触する。この面接触を確実にするため、支持台123は、アジャスト機構を介して高さ調整可能に穀粒タンク9に取り付けられている。アジャスト機構は、図11に示すように、例えば、長孔を用いて支持台123を穀粒タンク9に固定する固定ボルトと、穀粒タンク9の下面に対して上端を押し当てるアジャストボルトとの組み合わせによって簡単に構成することができる。
さらに、穀粒タンク9の下部には、支持台123に隣接して、補助案内体190が設けられている。補助案内体190は、支持部材97の前面に取り付けられたそり状部材であり、補助ローラ191を備えている。穀粒タンク9がメンテナンス位置から作業位置に移動する際、補助ローラ191は機体フレーム10に設けられた傾斜台111の傾斜面に沿って転動する。補助案内体190と傾斜台111とは、ローラ22が受け止め案内片121を通り抜けた時に、補助ローラ191も傾斜台111を離れる相互位置関係を有するように設計されている。つまり、穀粒タンク9の作業位置において、ローラ22と補助ローラ191との何れもが宙に浮いた状態となり、支持台123の水平壁123bの下面と受け止め案内片121の平坦面とが面接触している安定した状態で、穀粒タンク9の重量がロードセル20によって測定される。