JP6273842B2 - iPS細胞クローンの選択方法、及びその選択方法に用いる遺伝子の選択方法 - Google Patents
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Description
(1)iPS細胞クローンの選択方法であって,未分化状態のiPS細胞において、以下の第1〜第12遺伝子群のいずれかの遺伝子群において、少なくとも一つの遺伝子について、発現レベルを調べる工程、を含む方法。
(2)第1項に記載の選択方法であって,前記発現レベルを、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンにおける当該遺伝子の発現レベル、及び、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおける当該遺伝子の発現レベルと比較する工程、をさらに含む方法。
(3)第1項に記載の選択方法であって,前記iPS細胞クローンにおいて、第1〜第12遺伝子群のいずれかの遺伝子群に属する全ての遺伝子の発現レベルを調べる工程と,調べた遺伝子群において、発現レベルに異常のある遺伝子の個数を調べる工程と、調べた遺伝子の個数を、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンにおける発現レベルに異常のある遺伝子の個数、及び、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおける発現レベルに異常のある遺伝子の個数と比較する工程、をさらに含む方法。
(4)第3項に記載の選択方法であって、腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞の発現レベルと比較することによって、前記発現レベルが異常かどうか判断することを特徴とする、方法。
(5)第1項に記載の選択方法であって,前記iPS細胞クローンにおいて、第1〜第12遺伝子群のいずれかの遺伝子群に属する全ての遺伝子の発現レベルを調べる工程と,調べた遺伝子群について、前記iPS細胞クローンにおける発現レベルと、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンにおける発現レベルとを指標にして、iPS細胞クローンのclustering分析を行う工程と、当該iPS細胞クローンが、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンと正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンのいずれに分類されるかを調べる工程と、を含む方法。
(6)第5項に記載の選択方法であって、腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞の発現レベルとの相対値を指標にして、前記iPS細胞クローンのclustering分析を行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
(7)iPS細胞クローンを選択するために発現レベルを調べる遺伝子の選択方法であって、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすい複数の第1のiPS細胞クローンと、腫瘍化を起こしにくい複数の第2のiPS細胞クローンにおいて、未分化状態のiPS細胞で、1以上の遺伝子を含む候補遺伝子群に属する遺伝子の発現レベルを調べる工程、を含む方法。
(8)前記候補遺伝子群に属する遺伝子が、多能性幹細胞で分化細胞より発現の高い遺伝子、及びDNA修復に関与する遺伝子であることを特徴とする、第7項に記載の方法。
(9)前記候補遺伝子群に属する遺伝子が、第1遺伝子群及び第2遺伝子群のいずれかに属する遺伝子であることを特徴とする、第7項に記載の方法。
(10)第7項に記載の選択方法であって、複数の第1のiPS細胞クローンにおいて得られた第1の発現レベルと、複数の第2のiPS細胞クローンにおいて得られた第2の発現レベルとを比較する工程と、第1の発現レベルと第2の発現レベルとが異なるかどうか調べる工程と、を含む方法。
(11)第7項に記載の選択方法であって、複数の第1のiPS細胞クローンにおいて得られた発現レベルにおいて、発現レベルに異常のある遺伝子の第1の個数と、複数の第2のiPS細胞クローンにおいて得られた発現レベルのうち、発現レベルに異常のある遺伝子の第2の個数とを比較する工程と、第1の個数と第2の個数とが異なるかどうか調べる工程と、を含む方法。
(12)第11項に記載の選択方法であって、腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞の発現レベルと比較することによって、前記発現レベルが異常かどうか判断することを特徴とする、方法。
(13)第7項に記載の選択方法であって、前記iPS細胞クローンについて、前記発現レベルを指標にしてclustering分析を行う工程と、複数の第1のiPS細胞クローンと複数の第2のiPS細胞クローンが、それぞれ別のclusterに分類されるかどうか調べる工程と、を含む方法。
(14)第13項に記載の選択方法であって、腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞の発現レベルとの相対値を指標にして、前記iPS細胞クローンについてclustering分析を行うことを特徴とする、方法。
本出願は、2011年2月25日付で出願した日本国特許出願2011−40979、及び2011年3月22日付で出願した米国仮出願US61/466298に基づく優先権を主張するものであり、当該基礎出願を引用することにより、本明細書に含めるものとする。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.; Juan S. Bonifacino (Bethesda, Maryland); Mary Dasso (Bethesda, Maryland); J. B. Harford, J. L-Schwartz, K. M. Yamada (Ed.), Current Protocols in Cell Biology, John Wiley & Sons Ltd.等の標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
iPS細胞は、分化した細胞に初期化因子を導入し、脱分化させることによって製造できる。(Takahashi K & Yamanaka S. Cell 2006 vol.126: p.663-676; Takahashi K, et al., Cell 2007 vol.131: p.861-872)。
本発明にかかるiPS細胞クローンの選択方法は、未分化状態のiPS細胞において、表1〜12に示す第1〜第12の遺伝子群など、所定の遺伝子群において、少なくとも一つの遺伝子について、発現レベルを調べる工程を含む。
遺伝子の発現レベルの調べ方は、特に限定されず、例えば、未分化状態のiPS細胞から常法によって全mRNAを抽出し、そのmRNAを用いて、調べたい遺伝子をプローブにしてノザンブロッティングを行ったり、逆転写の後PCRを行ったりすることで、その遺伝子の発現レベルを知ることができる。複数の遺伝子について同時に発現を調べる場合は、DNAアレイを用いることが好ましい。すなわち、調べたい遺伝子に対するプローブが固定されたDNAアレイに対し、標識した全mRNAをハイブリダイズさせ、得られたシグナルの強度を解析することによって、その遺伝子の発現レベルを知ることができる。
これまで、未分化状態のiPS細胞の遺伝子発現レベルを調べることによって、そのiPS細胞が分化した時にどのような性状を示すかを予測する方法は知られていなかった。しかし、本発明の一実施形態においては,未分化状態のiPS細胞において特定の遺伝子の発現レベルを調べ、その発現レベルを指標にすることによって、そのiPS細胞が腫瘍化を起こしにくいかどうか、を予測することが可能である。以下,その予測方法について,具体的な方法を説明するが、本発明の方法は、下記のものに限定されない。なお、本明細書で「iPS細胞クローンが腫瘍化を起こしにくい」とだけ言う時、in vitroで分化した時あるいはin vivoに移植して分化した場合に、そのクローンが腫瘍化しにくいということを意味するのであって、分化しない場合は含まないものとする。
所定の遺伝子群のうちの少なくとも一つの遺伝子について、予め、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンにおける当該遺伝子の発現レベルと、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおける当該遺伝子の発現レベルとを、それぞれ1以上のiPS細胞クローンを用いて決定し、そして、これらの発現(以下、対象発現と称する)のレベルを、性状を調べたいiPS細胞クローンにおける当該遺伝子の発現のレベルと比較する。
あるいは、予め、1以上の正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンと1以上の腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおいて、所定の遺伝子群の全ての遺伝子の発現レベルを決定し、発現レベルに異常のある遺伝子の個数を算出し、それぞれのiPS細胞クローンにおいて発現レベルに異常のある遺伝子の個数を決定(以下、対照個数と称する)する。そして、性状を調べたいiPS細胞クローンにおいて発現レベルに異常のある遺伝子の個数を対照個数と比較する。
あるいは、予め、1以上の正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンと1以上の腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおいて、所定の遺伝子群の全ての発現レベルを決定する。ここで、そして、性状を調べたいiPS細胞クローンにおいても、同じ遺伝子群の全ての発現レベルを決定し、各iPS細胞クローンのclustering解析を行なう。
(1)で述べたように、未分化状態のiPS細胞クローンにおいて、第1〜第12遺伝子群など、所定の遺伝子群のうちの少なくとも一つの遺伝子について、発現レベルを調べることによって、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンを選択できる。
例えば、第1のクローンの発現レベルと、第2のクローンの発現レベルが異なるかどうか調べる。
あるいは、第X遺伝子群の中で、第1及び第2のiPS細胞クローンにおいて、正常な多能性幹細胞クローンと発現レベルが異なる遺伝子の個数を測定し、それらの個数が異なれば、この第X遺伝子群は、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンを選択するための遺伝子群として用いることができる。なお、正常な多能性幹細胞クローンとは、in vitroまたはin vivoに移植した時に、腫瘍化を起こしにくいことが判明している多能性幹細胞クローンのことであって、腫瘍化を起こしにくいのであれば、ES細胞であってもよく、iPS細胞であってもよい。
この方法は、第X遺伝子群に属する遺伝子について、第1及び第2のiPS細胞クローンにおいて、正常な多能性細胞クローンと発現レベルを比較し、その比較結果を用いて、iPS細胞をclustering解析し、第1及び第2のiPS細胞クローンが、それぞれ別のclusterとして分類されれば、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンを選択するための遺伝子群として用いることができる。clusteringの方法は、(1)[3]で述べたのと同じ方法を用いることができる。
実施例においては、ヒトES細胞クローンとして、KhES1〜KhES3の3クローン(Suemori et al. Biochem Biophys Res Commun. 2006 vol.345: p.926-32.)、ヒトiPS細胞クローンとして、201B6、201B7、253G1、253G4の各クローン(Takahashi et al..Cell. 2007 131:861-72; Nakagawa et al. Nat Biotechnol. 2008 vol.26: p.101-6.)を用いた。培養は、通常に使用される方法を用いた(Suemori et al. Biochem Biophys Res Commun. 2006 vol.345: p.926-32.)。
ニューロスフェアが形成された3系統について、2回継代した後、3次ニューロスフェアを、公知の方法(国際公開WO2010/090007号公報)を用いて神経系細胞に分化誘導したところ、大部分が神経細胞に分化し、グリア細胞はほとんど分化しなかった。なお、対照として、KhES1細胞をin vitroで分化させたものを用いた。
マイクロアレイにより、遺伝子発現profileを検討すると、ヒトiPS細胞から誘導した神経幹細胞も、ヒトES細胞から誘導した神経幹細胞とほぼ同様のProfileを示した(後述の(6)比較例参照)。なお、ヒトiPS細胞分化後の3次ニューロスフェアでは、TRA−1−60、TRA−1−81、NCAMなどの未分化マーカーはほとんど検出されず、これらのヒトiPS細胞クローンには、分化抵抗性の細胞や未分化細胞の残存はほとんど無いことが確認された。
また、ニューロスフェアが形成された3クローンについては、電気生理学的に解析をしたが、ヒトES細胞と同様に活動電位が記録され、これらの3クローンは機能的なニューロンに分化できることが示された。
ここでは、これらのヒトiPS細胞クローンを、3次ニューロスフェアに分化誘導し、細胞を分離して、NOS/SCIDマウスの脳に移植し、in vivoにおける分化能と造腫瘍性を解析した。
特に、脳の組織切片上でvenusの発現している面積を調べたところ、253G1及び253G4では腫瘍化の兆候が見られ、特に253G4の移植組織では、移植細胞由来の巨大な腫瘤が観察された(図14)。なお、201B7では、対照のKhES1と同様、移植細胞に以上は見られなかった。
ここでは、多能性幹細胞で分化細胞より発現の高い遺伝子群、DNA修復に関与する遺伝子群、及びそれらに共通する遺伝子群から、様々な遺伝子群を抽出し、それらについて、ES細胞及びiPS細胞における未分化状態での発現パターンを調べ、その発現パターンによって、腫瘍化を起こしにくいクローンと、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいクローンが区別できることを示す。
まず、マイクロアレイHuman U-133 Plus 2.0 Array (Affymetrix社)を用いて、多能性幹細胞で分化細胞より発現の高い遺伝子として、22種類のヒト組織(骨髄、小脳、大脳皮質、胎児脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、唾液腺、骨格筋、小腸、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管支、子宮)の発現レベルと、KhES1〜KhES3のES細胞クローンの発現レベルを比較し、
1.FDR(False Discovery Rate)のq値が0.05未満であること
2.ES3クローン全てがpフラグであること
3.ES3クローン全てで、ヒト組織の発現レベルの平均より5倍以上高いこと。
の3つの条件を満たすプローブ1340個(表1)(特定された遺伝子種929個;対応遺伝子が特定されていないプローブ102個を含む)を選択し、特定された遺伝子種929個を第1遺伝子群とした。ここで、特定された遺伝子とは、遺伝子名が判明し、単一に数えられた遺伝子のことを言う。
マイクロアレイとして、Affymetrix社 U133plus2.0を用いた。
正常ヒト組織(骨髄、小脳、大脳皮質、胎児脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓、前立腺、唾液腺、骨格筋、小腸、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管支、子宮)のRNAは、Clontech, Ambion, Cell Applications, Stratagene社から購入した。他の細胞などに関しては、Trizol(InVitrogen社)にて全RNAを回収し、RNAeasy mini kit(Quiagen社)を用いてカラム精製を行った。また、キアゲン社のRNAase-free DNaseにより処理し、混入するDNAを分解した。RNAの品質は、Bioanalyzer 2100 (Agilent社)を用いて確認した。
ここでは、第1遺伝子群の遺伝子を含むプローブにおいて、各iPS細胞の発現レベルが、ES3クローンの発現レベルの平均に比べて、0.667倍以下あるいは1.5倍以上という異常な発現レベルを示すプローブの個数を調べ、その結果を図1にグラフ化した。
ここでは、第2〜第10遺伝子群の遺伝子を含むプローブについて、ES3クローンの発現レベルの平均に対する、各iPS細胞の発現レベルの割合を計算し、Log2(ratio)で表した(表2〜表10)。これらのデータに対し、Cluster 3.0を用いて、clustering解析を行い、得られた結果をJava Treeview(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターDNA情報解析分野によるフリーウェア;M. J. L. de Hoon, S. Imoto, J. Nolan, and S. Miyano: Open Source Clustering Software. Bioinformatics, 20 (9): 1453--1454 (2004).;http://bonsai.hgc.jp/~mdehoon/software/cluster/)を用いて、treeを作製した(図2〜図10)。
例えば、本実施例では、表10に記載のsuppressor of Ty 16 homolog (S. cerevisiae)の発現レベルは、ES3クローンと、正常に分化しないか(201B6)、分化しても腫瘍化を起こしやすい(253G1、253G4)とでは、有意に差がある。そして、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞(201B7)の発現レベルは、ES3クローンと差がなく、腫瘍化を起こしやすいiPS細胞とは顕著な差がある。
ここでは、第1遺伝子群及び第3遺伝子群に属する各遺伝子を含むプローブに対し、表2及び表3に示された発現レベルを表す数値に基づき、ES3クローンと201B7のグループ及び201B6、253G1、253G4のグループの間でSAMの検定を行い、各遺伝子群でp<0.1またはp<0.05で有意差のあったプローブを、それぞれ27個(表11)(特定された遺伝子26個を含む)と19個(表12)(特定された遺伝子17個を含む)抽出し、特定された遺伝子種26個と17個を第11遺伝子群及び第12遺伝子群とした。(3)[3]と同様に、clustering解析をしたところ、図11及び図12のtreeに示されているように、調べたiPS細胞のうち、201B7だけがヒトES細胞と同じグループに分類されており、201B6、253G1、253G4は、それとは別に一つのグループに分類されていた。
本発明は、未分化状態のiPS細胞における、DNA修復に関与する遺伝子の発現の異常が、分化後のiPS細胞の造腫瘍性に影響があるという発見に基づくものである。以下、そのメカニズムとして、未分化状態におけるDNA修復に関与する遺伝子の異状によって、DNAに多数の傷が生じ、それが原因となって、iPS細胞が正常に分化できないか、あるいはiPS細胞が分化したときに腫瘍化するということを示す。
本比較例では、いずれかのクローン中で発現が検出されたプローブ全てを対象とし、Rというclustering解析用ソフトウェアを用い(http://www.r-project.org/)、Ward's hierarchial clustering methodとEluclidian distanceによって、clustering解析を、行なった。その結果を図17に示すが、本発明のように適切な遺伝子群を選択しなければ、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞と、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞は、clusterによって区別することができなかった。
エピソーマルベクターを用いて作製したヒトiPS細胞株409B2及び414C2(Okita et al., Nat Methods 2011)について、比較する対照の細胞株として、KhES1、KhES2、KhES3、201B7、409B2、414C2、201B6、253G4、253G1の各クローンを用い、第4遺伝子群及び第12遺伝子群について、マイクロアレイを用いて(3)と同様の方法で、発現の解析及びclustering分析を行った。その結果、図18及び図19のtreeに示されるように、どちらの場合も、409B2及び414C2は、ES細胞及び201B7と同じ枝に分類された。
また、第12遺伝子群の19プローブについて、3つのES細胞における発現の平均値から、シグナル強度に1.5倍以上の差があるプローブの個数を測定したところ、図20に示すように、その個数が、409B2、414C2、201B7では6個以内、201B6、253G4、253G1では、10個以上となり、2つのグループで有意に(t検定でp=0.017)差が見られた。
次に、409B2及び414C2について、(2)と同様の方法で、造腫瘍性の評価を行なったところ、図21に示すように、409B2及び414C2は、ES細胞及び201B7と同様に、精巣移植後の腫大は観察されなかった。また、409B2及び414C2を移植した精巣のパラフィン切片を作製し、HE染色を行なって、移植細胞由来のテラトーマの組織像を観察したところ、図22及び図23に示すように、253G4、253G1より腫瘍化傾向が低く、十分に分化した神経細胞及びグリア細胞が観察された。
このように、本発明の遺伝子群は、iPS細胞を、正常に分化しないか、分化しても腫瘍化を起こしやすいクローンと、腫瘍化を起こしにくいクローンに分類するのに有用である。
Claims (4)
- iPS細胞クローンの選択方法であって,
未分化状態のiPS細胞クローンにおいて、第2〜第10遺伝子群のいずれかの遺伝子群において、少なくとも一つの遺伝子について、発現レベルを調べ、前記iPS細胞クローンにおける発現レベルと、正常に分化できないか、あるいは分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンにおける発現レベルと、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンにおける発現レベルとを指標にして、iPS細胞クローンのclustering分析を行う第1の工程と、
前記clustering分析の結果に基づいて、当該iPS細胞クローンが、正常に分化できないか、あるいは分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンと、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンのいずれに分類されるかを調べる第2の工程と、を含む方法。 - 請求項1に記載の選択方法であって、
腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞クローンの発現レベルとの相対値を指標にして、前記iPS細胞クローンのclustering分析を行うことを特徴とする、方法。 - iPS細胞クローンを、正常に分化できないか、あるいは分化しても腫瘍化を起こしやすいiPS細胞クローンと、腫瘍化を起こしにくいiPS細胞クローンのいずれに分類するために発現レベルを調べる遺伝子の選択方法であって、
正常に分化できないか、あるいは分化しても腫瘍化を起こしやすい複数の第1のiPS細胞クローンと、腫瘍化を起こしにくい複数の第2のiPS細胞クローンにおいて、未分化状態の各iPS細胞クローンで、1以上の遺伝子を含む候補遺伝子群に属する遺伝子の発現レベルを調べる工程と、
前記iPS細胞クローンについて、前記発現レベルを指標にしてclustering分析を行う工程と、
複数の第1のiPS細胞クローンと複数の第2のiPS細胞クローンが、それぞれ別のclusterに分類されるかどうか調べる工程と、
を含む方法。 - 請求項3に記載の選択方法であって、
腫瘍化を起こしにくい多能性幹細胞クローンの発現レベルとの相対値を指標にして、前記iPS細胞クローンについてclustering分析を行うことを特徴とする、方法。
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2012
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